特許第6564319号(P6564319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564319
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】フェアリング
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B64G1/64 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-244469(P2015-244469)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109568(P2017-109568A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒田 禎彦
(72)【発明者】
【氏名】福野 一郎
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−012200(JP,A)
【文献】 特開2009−292250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0052231(US,A1)
【文献】 特開2000−185699(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1063843(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
F42B 15/36 − 15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットの先端に取り付けられ、後端部、中間部、及び先端部がこの順で載置されているフェアリングであって、
前記後端部と前記中間部の接合部に設けられた第1締結孔を介して、前記後端部及び前記中間部を締結する第1締結部材と、
前記中間部と前記先端部の接合部に設けられた第2締結孔を介して、前記中間部と前記先端部を締結する第2締結部材と、を備え、
前記第1締結孔及び前記第2締結孔は、それぞれ、開口面積が同じになるように形成され、
前記先端部は、円錐状に形成され、
前記中間部は、円筒状に形成され、
前記後端部は、円錐台状、円環状、及び円筒状のうち、いずれか1つの形状に形成され、かつ、搭載アダプタと結合され、
隣接する前記第1締結孔における弧度と、隣接する前記第2締結孔における弧度と、が同じになるように配置されている、フェアリング。
【請求項2】
前記第1締結孔と前記第2締結孔は、前記ロケットの進行方向から見て、重なるように配置されている、請求項1に記載のフェアリング。
【請求項3】
前記第1締結孔の配置数と前記第2締結孔の配置数が同じである、請求項1又は2に記載のフェアリング。
【請求項4】
前記第1締結部材と前記第2締結部材の大きさが同じである、請求項1〜のいずれか1項に記載のフェアリング。
【請求項5】
前記第1締結部材の配置数と前記第2締結部材の配置数が同じである、請求項1〜のいずれか1項に記載のフェアリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星等の宇宙航行体(ペイロード)を打ち上げるロケットには、宇宙航行体を保護するためのフェアリングが配置されている。フェアリングは、通常、複数の分割体から構成されていて、これらの分割体は、締結部材(例えば、ボルトとナット)により締結されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、宇宙機又は航空機では、機体の軽量化が要求されるため、設計荷重に対して、過剰なマージンとならないように、部材の厚み及びボルトの径、本数が最適化されている。フェアリングにおいては、先端から後方に向かうにつれ、飛行荷重が大きくなるため、先端部よりも後端部の方が、高い構造強度が必要となる。このため、従来のフェアリングでは、先端部よりも後端部の方が、分割体を締結するボルトの径を大きくし、また、ボルトの本数を多くすることで、後端部の強度を担保していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−185699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなフェアリングでは、ロケットに搭載される宇宙航行体の大きさに対応するように、その形状及び寸法が決定されるため、1種類のロケットに対して、数種類の異なる形状のフェアリングを設計する必要がある。そして、宇宙航行体の大きさが決定すると、その大きさに対応したフェアリングを製造するため、異なる種類のフェアリングを製造するたびに、製造治具の段取り替えが発生し、組立手順も異なる等、量産によるコストメリットが得られにくいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、生産コストを低減することができる、フェアリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフェアリングは、ロケットの先端に取り付けられ、後端部、中間部、及び先端部がこの順で載置されているフェアリングであって、前記後端部と前記中間部の接合部に設けられた第1締結孔を介して、前記後端部及び前記中間部を締結する第1締結部材と、前記中間部と前記先端部の接合部に設けられた第2締結孔を介して、前記中間部と前記先端部を締結する第2締結部材と、を備え、前記第1締結孔及び前記第2締結孔は、それぞれ、開口面積が同じになるように形成されている。
【0008】
これにより、ロケットに搭載される宇宙航行体の大きさにかかわらず、後端部と先端部を毎回共通で製造することができ、生産コストを低減することができる。また、宇宙航行体の大きさが決まる前に、先端部と後端部の製造を開始することができ、フェアリングの製造スケジュールの安定化を図ることができる。
【0009】
また、ある宇宙航行体の打ち上げが大幅に遅れた場合に、他の宇宙航行体のフェアリングとして使用することができるため、ロケット打ち上げスケジュールの変更に柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフェアリングによれば、生産コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施の形態1に係るフェアリングをロケットに装着された状態を示す模式図である。
図2A図2Aは、図1に示すA−A線断面図である。
図2B図2Bは、図1に示すB−B線断面図である。
図3A図3Aは、図1に示すフェアリングの中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。
図3B図3Bは、図1に示すフェアリングの先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
図4A図4Aは、従来のフェアリングにおける図1に示すA−A線断面図である。
図4B図4Bは、従来のフェアリングにおける図1に示すB−B線断面図である。
図5A図5Aは、従来のフェアリングにおける中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。
図5B図5Bは、従来のフェアリングにおける先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
図6A図6Aは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。
図6B図6Bは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。
図6C図6Cは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。
図6D図6Dは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。
図6E図6Eは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。
図7A図7Aは、本実施の形態2に係るフェアリングの中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。
図7B図7Bは、本実施の形態2に係るフェアリングの先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0013】
(実施の形態1)
[フェアリングの構造]
図1は、本実施の形態1に係るフェアリングをロケットに装着した状態を示す模式図である。図2Aは、図1に示すA−A線断面図である。図2Bは、図1に示すB−B線断面図である。図3Aは、図1に示すフェアリングの中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。図3Bは、図1に示すフェアリングの先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
【0014】
図4Aは、従来のフェアリングにおける図1に示すA−A線断面図である。図4Bは、従来のフェアリングにおける図1に示すB−B線断面図である。図5Aは、従来のフェアリングにおける中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。図5Bは、従来のフェアリングにおける先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
【0015】
なお、図1図3A図3B図5A、及び図5Bにおいては、フェアリングの上下方向を図における上下方向として示している。また、図2A図5Bにおいては、フェアリングの一部を省略している。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態1に係るフェアリング100は、円錐台状の後端部101、円筒状の中間部102、及び円錐状の先端部103を備えていて、搭載アダプタ300に後端部101が結合された状態で、ロケット200の先端部に装着されている。また、フェアリング100は、後端部101、中間部102、及び先端部103がこの順で配置されている。すなわち、後端部101が下方に位置し、先端部103が上方に位置するように構成されている。
【0017】
また、フェアリング100は、ロケット200の進行方向(図における上下方向)に沿って分割されるように構成されている。具体的には、2つのフェアリング片100aとフェアリング片100bに分離開頭するように構成されている。
【0018】
フェアリング片100aとフェアリング片100bとの上下方向の分割面が、接合面100cを構成し、フェアリング片100a及びフェアリング片100bと搭載アダプタ300との径方向の分割面が、接合面100dを構成する。
【0019】
また、フェアリング片100aとフェアリング片100bの接合面100cは、後述する締結部材111により結合(連結)されている。さらに、フェアリング片100a及びフェアリング片100bと搭載アダプタ300との接合面100dは、締結部材112により結合(連結)されている。
【0020】
搭載アダプタ300は、略錐台(円錐台)状に形成されている。搭載アダプタ300の上底部分には、人工衛星等の宇宙航行体400が接続される航行体側接続部が設けられていて、搭載アダプタ300の下底部分には、ロケット200の先端部が接続されるロケット側接続部が設けられている。
【0021】
また、搭載アダプタ300には、後端部101が載置されている。具体的には、例えば、搭載アダプタ300の下部外周部に、外方に突出したツバ部を設け、該ツバ部の上面に後端部101を載置してもよい。搭載アダプタ300と後端部101の間(すなわち、接合面100d)は、分離機能を有する締結部材112により結合(連結)されている。
【0022】
締結部材111及び締結部材112は、例えば、フランジブルボルト式分離機構から構成されていてもよい。具体的には、締結部材111は、搭載アダプタ300と後端部101を締結するノッチボルト(切断を容易にする溝(刻み目)を有するボルト)及びナットと、ノッチボルトを切断するための火工品(ESMDC(膨脹型密封導爆線;Expanding Shielded Mild Detonating Cord))と、から構成されていてもよい。この場合、搭載アダプタ300の上面と後端部101の下面をノッチボルトとナットで締結する。また、火工品は、ノッチボルトの頭部近傍に配置される。
【0023】
なお、本実施の形態1においては、締結部材111と締結部材112をフランジブルボルト式分離機構で構成される形態を採用したが、これに限定されない。締結部材111と締結部材112を、フランジブルボルト式分離機構とは異なる、締結部材(分離機構)で構成される形態を採用してもよい。例えば、締結部材111及び締結部材112の少なくともいずれか一方を、複数のナット片からなる分離ナットとボルトと火工品等を有する分離機構で形成される形態を採用してもよい。
【0024】
また、搭載アダプタ300と後端部101には、ヒンジ部材21が配設されている。具体的には、ヒンジ部材21は、接合面100dを跨ぐように、搭載アダプタ300と後端部101に取り付けられている。
【0025】
本実施の形態1においては、一対のヒンジ部材21は、フェアリング100の軸心100e(図2A及び図2B参照)を挟んで、互いに対向するように、搭載アダプタ300と後端部101に取り付けられていてもよい。換言すると、一対のヒンジ部材21のうち、一方のヒンジ部材21が取り付けられている位置(フェアリング100の軸心100eを中心とした場合の周方向の位置)を0°とすると、他方のヒンジ部材21が、180°の位置に取り付けられている。なお、以下の説明においては、一方のヒンジ部材21が取り付けられている位置を0°として、他の部材の配置位置を説明する。
【0026】
また、本実施の形態1においては、二組の一対のヒンジ部材21が、搭載アダプタ300と後端部101に取り付けられていてもよい。この場合、対となるヒンジ部材21が、それぞれ、フェアリング100の軸心を挟んで、互いに対向するように取り付けられる。すなわち、一方の一対のヒンジ部材21が、それぞれ、2°と178°の位置に取り付けられ、他方の一対のヒンジ部材21が、それぞれ、−2°と−178°の位置に取り付けられていてもよい。
【0027】
また、後端部101、中間部102、及び先端部103は、それぞれ、ハニカムコアの両面にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)又はアルミ板等を接着したハニカムサンドイッチ構造を有するパネルと、該パネルを締結する締結部材(例えば、ボルトとナット)と、を備えている(いずれも図示せず)。後端部101は、曲面状の複数のパネルを締結部材によって締結することにより、円錐台状に形成される。同様に、曲面状の複数のパネルを締結部材によって締結することにより、中間部102は円筒状に形成され、先端部103は略円錐状に形成される。
【0028】
そして、後端部101の上端部に中間部102が載置され、後端部101と中間部102の接合面(接合部)が、第1締結部材11により結合(締結)されている。また、中間部102の上端部に先端部103が載置され、中間部102と先端部103の接合面(接合部)が、第2締結部材12により結合(締結)されている。
【0029】
具体的には、図2A及び図3Aに示すように、後端部101の上端部には、第1接合面(フランジ)101Aが形成されていて、第1接合面101Aには、第1貫通孔(第1締結孔)101Bが設けられている。また、中間部102の下端部には、第1接合面(フランジ)102Aが形成されていて、第1接合面102Aには、第1貫通孔(第1締結孔)102Bが設けられている。
【0030】
後端部101と中間部102は、後端部101の第1貫通孔101Bと中間部102の第1貫通孔102Bが連通するように配置されていて、第1貫通孔101Bと第1貫通孔102Bには、第1締結部材11を構成する第1ボルト11Aの軸部が挿通されている。
【0031】
第1締結部材11は、第1ボルト11A、第1ワッシャ11B、及び第1ナット11Cを備えている。上述したように、第1ボルト11Aの軸部が、第1ワッシャ11B、第1貫通孔101B、及び第1貫通孔102Bを挿通しており、第1ボルト11Aと第1ナット11Cにより、後端部101と中間部102が締結されている。
【0032】
また、図2B及び図3Bに示すように、中間部102の上端部には、第2接合面(フランジ)102Cが形成されていて、第2接合面102Cには、第2貫通孔(第2締結孔)102Dが設けられている。また、先端部103の下端部には、第2接合面(フランジ)103Cが形成されていて、第2接合面103Cには、第2貫通孔(第2締結孔)103Dが設けられている。
【0033】
中間部102と先端部103は、中間部102の第2貫通孔102Dと先端部103の第2貫通孔103Dが連通するように配置されていて、第2貫通孔102Dと第2貫通孔103Dには、第2締結部材12を構成する第2ボルト12Aの軸部が挿通されている。
【0034】
第2締結部材12は、第2ボルト12A、第2ワッシャ12B、及び第2ナット12Cを備えている。上述したように、第2ボルト12Aの軸部が、第2ワッシャ12B、第2貫通孔102D、及び第2貫通孔103Dを挿通しており、第2ボルト12Aと第2ナット12Cにより、中間部102と先端部103が締結されている。
【0035】
ここで、図2A図5Bを参照しながら、本実施の形態1に係るフェアリング100と、従来のフェアリング100との相違点について、詳細に説明する。
【0036】
図4A図5Bに示すように、従来のフェアリング100では、後端部101の第1貫通孔101B及び中間部102の第1貫通孔102Bの方が、中間部102の第2貫通孔102D及び先端部103の第2貫通孔103Dよりも、その開口面積が大きくなるように形成されている。換言すると、従来のフェアリング100では、中間部102と先端部103を締結する第2締結部材12よりも後端部101と中間部102を締結する第1締結部材11の方が、軸径の大きいボルトが用いられている。
【0037】
また、従来のフェアリング100では、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bの方が第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dよりも、その配置数が多くなるように、形成されている。換言すると、従来のフェアリング100は、第2締結部材12よりも第1締結部材11の方が、配置数が多くなるように構成されている。
【0038】
これらにより、従来のフェアリング100では、機体を軽量化することができる。
【0039】
一方、図2A図3Bに示すように、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bの開口面積と、第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dの開口面積と、が同じになるように形成されている。換言すると、本実施の形態1に係るフェアリング100では、後端部101と中間部102を締結する第1締結部材11と、中間部102と先端部103を締結する第2締結部材12は、同じ軸径のボルトが用いられている。これにより、中間部102と先端部103の接合強度が、後端部101と中間部102の接合強度と同じになる。
【0040】
また、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bと第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dは、その配置数が同じになるように形成されている。すなわち、ロケット200の進行方向から見て、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bと第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dは、重なるように配置されている。
【0041】
換言すると、隣接する2つの第1貫通孔101B、101B間における弧度及び隣接する2つの第1貫通孔102B、102B間における弧度と隣接する2つの第2貫通孔102D、102D間における弧度及び隣接する2つの第2貫通孔103D、103D間における弧度と、が同じになるように形成されている。そして、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第1締結部材11と第2締結部材12の配置数が同じになるように構成されている。
【0042】
なお、隣接する2つの第1貫通孔101B、101B間における弧度は、第1貫通孔101Bの中心、フェアリング100の軸心100e、及び第1貫通孔101Bの中心のなす角度α(rad)である。同様に、隣接する2つの第1貫通孔102B、102B間における弧度は、第1貫通孔102Bの中心、フェアリング100の軸心100e、及び第1貫通孔102Bの中心のなす角度(rad)である。また、隣接する2つの第2貫通孔102D、102D間における弧度は、第2貫通孔102Dの中心、フェアリング100の軸心100e、及び第2貫通孔102Dの中心のなす角度β(rad)である。さらに、隣接する2つの第2貫通孔103D、103D間における弧度は、第2貫通孔103Dの中心、フェアリング100の軸心100e、及び第2貫通孔103Dの中心のなす角度(rad)である。
【0043】
これらにより、ロケット200に搭載される宇宙航行体400の大きさにかかわらず、後端部101と先端部103を毎回、共通で製造することができ、生産コストを低減することができる。
【0044】
なお、本実施の形態1においては、後端部101を円錐台状に形成されている態様を採用したが、これに限定されず、後端部101が円環状又は円筒状に形成されている態様を採用してもよい。
【0045】
また、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第1締結部材11と第2締結部材12の配置数が同じにする形態を採用したが、これに限定されず、第2締結部材12よりも第1締結部材11の方が、その配置数が多い形態を採用してもよい。
【0046】
この場合であっても、フェアリング100は、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bと第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dは、その配置数が同じになるように形成されている。すなわち、フェアリング100は、複数の第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dうち、ある一部の第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dには、第2締結部材12が配置されていないように構成されていてもよい。
【0047】
[フェアリングの組立方法]
次に、本実施の形態1に係るフェアリング100の組立方法について、図1図6Eを参照しながら、説明する。
【0048】
図6A図6Eは、本実施の形態1に係るフェアリングの組立作業を模式的に示す工程図である。なお、図6B図6Dにおいては、フェアリングの一部を省略している。
【0049】
まず、図6Aに示すように、工場にて、後端部101、中間部102、先端部103、及び搭載アダプタ300のそれぞれを製造する(工程Z)。上述したように、後端部101は、複数のパネルを円錐台状に配置して、それぞれのパネルを締結部材で締結する。また、フェアリング片100aとフェアリング片100bに分離開頭するときに、分離する面(接合面100c)は、締結部材111により結合(連結)する。
【0050】
同様に、中間部102は、複数のパネルを円筒状に配置して、それぞれのパネルを締結部材で締結する。先端部103は、複数のパネルを略円錐状に配置して、それぞれのパネルを締結部材で締結する。また、フェアリング片100aとフェアリング片100bに分離開頭するときに、分離する面(接合面100c)は、締結部材111により結合(連結)する。
【0051】
次に、図6Bに示すように、図示されないクレーンに吊り下げられた後端部101を搭載アダプタ300の上方に移動させ、その後、後端部101を下方に移動させて、搭載アダプタ300に載置する。そして、搭載アダプタ300と後端部101の接合面100dを締結部材112により結合(締結)し、ヒンジ部材21を搭載アダプタ300と後端部101に取り付ける(工程A)。
【0052】
具体的には、搭載アダプタ300の上面に火工品を配置し、当該火工品をノッチボルトの頭部と搭載アダプタ300の上面とで挟むようにして、搭載アダプタ300の上面と、後端部101の下面と、をノッチボルトとナットで締結する。ついで、ヒンジ部材21の上部を後端部101に取り付け、その後、ヒンジ部材21の下部を搭載アダプタ300に取り付ける。
【0053】
次に、図6Cに示すように、図示されないクレーンに吊り下げられた先端部103を中間部102の上方に移動させ、その後、先端部103を下方に移動させて、中間部102に載置する。そして、中間部102と先端部103の接合面を第2締結部材12により結合(締結)し、中間部102と先端部103の接合体を製造する(工程B)。
【0054】
具体的には、中間部102の第2接合面102Cに設けられた第2貫通孔102Dと、先端部103の第2接合面103Cに設けられた第2貫通孔103Dと、が一致(連通)するように、先端部103を中間部102に載置する。そして、第2ワッシャ12B、第2貫通孔103D、第2貫通孔102Dに第2ボルト12Aを挿通し、該第2ボルト12Aに第2ナット12Cを取り付けて、先端部103と中間部102を締結し、先端部103と中間部102の接合体を製造する。
【0055】
なお、このとき、上述したように、全ての第2締結孔(第2貫通孔103D及び第2貫通孔102D)に第2締結部材12を配置して、先端部103と中間部102を締結してもよく、ある一部の第2締結孔には、第2締結部材12が配置しないようにして、先端部103と中間部102を締結してもよい。
【0056】
次に、図6Dに示すように、ロケット200の打ち上げ射場にて、搭載アダプタ300に宇宙航行体400を載置する(工程C)。
【0057】
次に、図6Eに示すように、図示されないクレーンに吊り下げられた先端部103と中間部102の接合体を後端部101と搭載アダプタ300の接合体の上方に移動させ、その後、先端部103と中間部102の接合体を下方に移動させて、先端部103と中間部102の接合体を後端部101と搭載アダプタ300の接合体に載置する。ついで、後端部101と中間部102の接合面を第1締結部材11により結合(締結)する(工程D)。
【0058】
具体的には、後端部101の第1接合面101Aに設けられた第1貫通孔101Bと、中間部102の第1接合面102Aに設けられた第1貫通孔102Bと、が一致(連通)するように、先端部103と中間部102の接合体を後端部101と搭載アダプタ300の接合体に載置する。
【0059】
ついで、第1ワッシャ11B、第1貫通孔102B、及び第1貫通孔101Bに第1ボルト11Aを挿通し、該第1ボルト11Aに第1ナット11Cを取り付けて、中間部102と後端部101を締結し、フェアリング100を製造する。
【0060】
そして、このようにして組み立てられたフェアリング100をロケット200の先端部に載置して、フェアリング100とロケット200を結合させる。
【0061】
このように構成された、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bの開口面積と、第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dの開口面積と、が同じになるように形成されている。
【0062】
これにより、後端部101と中間部102を締結する第1締結部材11と、中間部102と先端部103を締結する第2締結部材12と、を共通して使用することができる。このため、フェアリングの生産コストを低減することができる。
【0063】
また、本実施の形態1に係るフェアリング100では、ロケット200の進行方向から見て、第1貫通孔101B及び第1貫通孔102Bと第2貫通孔102D及び第2貫通孔103Dは、重なるように配置されている。換言すると、隣接する2つの第1貫通孔101B、101B間における弧度及び隣接する2つの第1貫通孔102B、102B間における弧度と隣接する2つの第2貫通孔102D、102D間における弧度及び隣接する2つの第2貫通孔103D、103D間における弧度と、が同じになるように形成されている。
【0064】
これにより、ロケット200に搭載される宇宙航行体400の大きさにかかわらず、後端部101と先端部103を毎回共通で製造することができ、フェアリングの生産コストを低減することができる。また、宇宙航行体400の大きさが決まる前に、先端部103と後端部101の製造を開始することができ、フェアリングの製造スケジュールの安定化を図ることができる。
【0065】
また、大型の宇宙航行体400の打ち上げが大幅に遅れた場合に、当該宇宙航行体400のために、製造していた後端部101と先端部103を用いて、小型の宇宙航行体400のフェアリング100として使用することができる。逆に、小型の宇宙航行体400のフェアリング100として製造していた後端部101と先端部103を大型の宇宙航行体400用のフェアリング100として使用することができる。
【0066】
このため、本実施の形態1に係るフェアリング100は、ロケット打ち上げスケジュールの変更に柔軟に対応することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態1に係るフェアリング100では、第2締結部材12よりも第1締結部材11の方が、その配置数を多くしてもよい。
【0068】
これにより、従来のフェアリングと同様に、設計荷重に対して、過剰なマージンとならないように、第2締結部材12の最適化を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態1に係るフェアリング100では、従来は、ロケット200の打ち上げ射場にて、取り付けられていたヒンジ部材21を、後端部101を製造する工場で取り付けることができる。このため、打ち上げ射場での作業時間を短縮することができ、打ち上げ射場での作業コストを低減することができる。したがって、フェアリング100の組立作業全体のコストも低減することができる。
【0070】
さらに、本実施の形態1に係るフェアリング100では、打ち上げ射場にて、後端部101に上方から先端部103と中間部102の接合体を載置するだけでよく、後端部101と先端部103と中間部102の接合体の位置決めが容易となる。
【0071】
このため、打ち上げ射場において、1対のフェアリング片を、1つずつ、ロケットの先端部に配置していた従来の組立作業に比して、打ち上げ射場での作業時間を短縮することができる。これにより、打ち上げ射場での作業時間を短縮することができ、打ち上げ射場での作業コストを低減することができる。したがって、フェアリング100の組立作業全体のコストも低減することができる。
【0072】
(実施の形態2)
図7Aは、本実施の形態2に係るフェアリングの中間部と後端部の接合面近傍の断面図である。図7Bは、本実施の形態2に係るフェアリングの先端部と中間部の接合面近傍の断面図である。
【0073】
なお、図7A及び図7Bにおいては、フェアリングの上下方向を図における上下方向として示している。また、図7A及び図7Bにおいては、フェアリングの一部を省略している。
【0074】
図7A及び図7Bに示すように、本実施の形態2に係るフェアリング100は、実施の形態1に係るフェアリング100と基本的構成は同じであるが、中間部102と後端部101の接合部、及び先端部103と中間部102の接合部における接合の態様が異なる。
【0075】
具体的には、図7Aに示すように、中間部102の下端部と後端部101の上端部との間に、断面が略H字状で、円環状に形成されている第1接合部材121が配置されている。第1接合部材121は、上方に開口する凹部121Aと下方に開口する凹部121Bを有している。凹部121Aは、中間部102の下端部(接合部)が嵌合するように形成されている。また、凹部121Bは、後端部101の上端部(接合部)が嵌合するように形成されている。
【0076】
また、第1接合部材121の凹部121Aを構成する内周壁と外周壁の上部には、それぞれ、貫通孔121E、121Fが形成されている。中間部102の内周壁の下端部には、貫通孔121Eと連通するように、第1貫通孔(第1締結孔)102Eが設けられている。同様に、中間部102の外周壁の下端部には、貫通孔121Fと連通するように、第1貫通孔(第1締結孔)102Fが設けられている。
【0077】
そして、第1締結部材11は、中間部102と第1接合部材121を締結している。より詳細には、第1ボルト11Aの軸部が、第1ワッシャ11B、貫通孔121F、第1貫通孔102F、第1貫通孔102E、及び貫通孔121Eを挿通するように配置されていて、第1ボルト11Aと第1ナット11Cにより、中間部102と第1接合部材121が締結されている。
【0078】
なお、後端部101と第1接合部材121との接合(締結)は、図示しないが、中間部102と第1接合部材121との接合と同様の態様であってもよく、異なる態様であってもよい。
【0079】
また、図7Bに示すように、先端部103の下端部と中間部102の上端部との間に、断面がH字状で、円環状に形成されている第2接合部材122が配置されている。第2接合部材122は、上方に開口する凹部122Aと下方に開口する凹部122Bを有している。凹部122Aは、先端部103の下端部(接合部)が嵌合するように形成されている。また、凹部122Bは、中間部102の上端部(接合部)が嵌合するように形成されている。
【0080】
また、第2接合部材122の凹部122Aを構成する内周壁と外周壁の上部には、それぞれ、貫通孔122E、122Fが形成されている。また、本実施の形態2においては、ロケット200の進行方向から見て、貫通孔121Eと貫通孔122Eが、互いに重なるように形成されている。また、ロケット200の進行方向から見て、貫通孔121Fと貫通孔122Fが、互いに重なるように形成されている。
【0081】
先端部103の内周壁の下端部には、貫通孔122Eと連通するように、第2貫通孔(第2締結孔)103Gが設けられている。同様に、先端部103の外周壁の下端部には、貫通孔122Fと連通するように、第2貫通孔(第2締結孔)103Hが設けられている。
【0082】
そして、第2締結部材12は、先端部103と第2接合部材122を締結している。より詳細には、第2ボルト12Aの軸部が、第2ワッシャ12B、貫通孔122F、第2貫通孔103H、第2貫通孔103G、及び貫通孔122Eを挿通するように配置されていて、第2ボルト12Aと第2ナット12Cにより、先端部103と第2接合部材122が締結されている。
【0083】
なお、中間部102と第2接合部材122との接合(締結)は、図示しないが、先端部103と第2接合部材122との接合と同様の態様であってもよく、異なる態様であってもよい。
【0084】
また、第1接合部材121は、1つの部材で円環状に形成される形態であってもよく、複数の円弧状の部材により、全体として、円環状に形成される形態であってもよい。同様に、第2接合部材122は、1つの部材で円環状に形成される形態であってもよく、複数の円弧状の部材により、全体として、円環状に形成される形態であってもよい。
【0085】
なお、本実施の形態2においては、後端部101を円錐台状に形成されている態様を採用したが、これに限定されず、後端部101が円環状又は円筒状に形成されている態様を採用してもよい。
【0086】
このように構成された、本実施の形態2に係るフェアリング100であっても、実施の形態1に係るフェアリング100と同様の作用効果を奏する。
【0087】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良又は他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のフェアリングは、生産コストを低減することができるため、有用である。
【符号の説明】
【0089】
11 第1締結部材
11A 第1ボルト
11B 第1ワッシャ
11C 第1ナット
12 第2締結部材
12A 第2ボルト
12B 第2ワッシャ
12C 第2ナット
21 ヒンジ部材
100 フェアリング
100a フェアリング片
100b フェアリング片
100c 接合面
100d 接合面
100e 軸心
101 後端部
101A 第1接合面
101B 第1貫通孔
102 中間部
102A 第1接合面
102B 第1貫通孔
102C 第2接合面
102D 第2貫通孔
102E 第1貫通孔
102F 第1貫通孔
103 先端部
103C 第2接合面
103D 第2貫通孔
103G 第2貫通孔
103H 第2貫通孔
111 締結部材
112 締結部材
121 第1接合部材
121A 凹部
121B 凹部
121E 貫通孔
121F 貫通孔
122 第2接合部材
122A 凹部
122B 凹部
122E 貫通孔
122F 貫通孔
200 ロケット
300 搭載アダプタ
400 宇宙航行体

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B