(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向に沿って延びる刷版装着溝及び該刷版装着溝に設けられたレジスターピンを有する版胴に対して、該レジスターピンに嵌合可能な切欠き部が形成された咥え側端部及び咥え尻側端部を有する刷版を装着させる刷版自動装着装置であって、
前記版胴の周面に対して進退可能に構成された可動ベース部材と、
該版胴の軸方向と平行な回転軸を中心として該版胴の周方向に沿って回転可能に構成された複数の押さえコロ部材と、
前記レジスターピンと整合する位置に設けられ、前記刷版の前記咥え尻側端部近傍を前記版胴の前記刷版装着溝に向けて押圧可能に構成された押し込み突起部と
を備え、
前記複数の押さえコロ部材及び前記押し込み突起部は、前記可動ベース部材に設けられ、該可動ベース部材と共に前記版胴の周面に対して進退可能に構成されており、
前記複数の押さえコロ部材は、互いに等しい径を有し、それぞれ、前記版胴の周面に向けて前進した前進位置において該版胴の周面に前記刷版を押さえ付け可能に構成されており、
前記版胴に対する前記刷版の装着時において、前記刷版装着溝のエッジ部に前記刷版の前記咥え側端部が係止された状態で順方向に回転する前記版胴に対して、前記複数の押さえコロ部材によって該刷版を押し付け、かつ、該刷版装着溝に到達した該刷版の前記咥え尻側端部を前記押し込み突起部によって該刷版装着溝に押し込むことで、前記レジスターピンに該咥え尻側端部に形成された前記切欠き部を嵌合させるよう構成されている
ことを特徴とする刷版自動装着装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機の構成について、
図1〜
図10を用いて説明する。第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、連続紙(被印刷体)をロール状に巻いたロール紙をセットする連続紙供給ユニット(図示せず)と、連続紙供給ユニットから供給される連続紙の両面にオフセット印刷を施す複数の印刷ユニット2a,2bと、オフセット印刷後の連続紙を断裁して個々の枚葉状シートを形成すると共に、一枚の枚葉状シート又は複数の枚葉状シートからなる枚葉状シート群を折り畳んで折丁を形成する折機(図示せず)と、折機により形成された折丁を更に二つ折りする等の所定の処理を行い集積する後処理機構(図示せず)と、各構成の各種制御を実行する一又は複数の制御部(図示せず)とを備えている。なお、第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、連続紙供給ユニット、折機、後処理機構及び制御部は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0017】
上段印刷ユニット2a及び下段印刷ユニット2bは、それぞれ、
図1に示すように、多数のインキ供給ローラーを有する一対のインキ供給装置4と、刷版(図示せず)が装着される一対の版胴6と、印刷用ブランケット(図示せず)が装着される一対のブランケット胴8と、操作側の版胴6に近接して配置された刷版自動装着装置10とを備えている。各印刷ユニット2a,2bは、従来の印刷ユニットと同様に、インキ供給装置4から供給されたインキが版胴6の刷版を介してブランケット胴8の印刷用ブランケットに供給され、印刷用ブランケットが走行する連続紙(被印刷体)と所定の圧力で接触することにより、連続紙に刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう構成されている。なお、第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、インキ供給装置4及びブランケット胴8は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0018】
版胴6は、円柱状に形成された印刷胴であり、
図2に示すように、両端部にそれぞれ設けられた取付け軸6aと、4頁分の刷版7を軸方向に並べて装着可能な刷版装着領域Rを有する周面と、軸方向に沿って延びる刷版装着溝6bと、刷版装着溝6bに連続する内部空間である収容部(図示せず)と、刷版装着溝6bに設けられた複数の(本実施形態では4つの)レジスターピン6cと、刷版装着領域Rよりも端部側にそれぞれ形成された操作開口部6dとを有している。本実施形態において、版胴6は、その周面が、新聞1頁の横方向の長さの4倍に略等しい軸方向の長さ(W)と、新聞1頁の縦方向の長さと略等しい周方向の長さ(L)とを有する、所謂4(W)×1(L)型の版胴である。
【0019】
版胴6は、両端部の取付け軸6aが軸受け(図示せず)を介して一対のフレームF,Fに取り付けられ、一方の取付け軸6aに接続された回転駆動手段(図示せず)により所定の速度で回転駆動されるよう構成されている。レジスターピン6cは、1枚の刷版7に対して1つ設けられており、本実施形態では、1頁分の刷版7を軸方向に4枚並べて装着する構成であるため、版胴6の軸方向に所定の間隔をおいて4つ設けられている。収容部には、刷版7の咥え尻側端部7bを刷版装着溝6b内に引き込むことで、刷版7を版胴6の周面に巻き付けるよう構成された刷版締め付け機構50が埋設されている。操作開口部6dは、刷版締め付け機構50の第1〜第4操作機構52a〜52dを操作するための開口である。なお、第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、版胴6は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0020】
刷版7は、新聞1頁に相当する大きさを有する可撓性の金属製薄板材から形成されており、従来の刷版110と同様に、版胴6の刷版装着溝6bの一方側のエッジ部に係止可能な咥え側端部7aと、刷版締め付け機構50によって刷版装着溝6b内に引き込まれるよう構成された咥え尻側端部7bとを有している(
図5等参照)。刷版7の咥え側端部7a及び咥え尻側端部7bには、それぞれ、版胴6のレジスターピン6cに嵌合可能な切欠き部7c(
図8参照)が形成されており、これら切欠き部7cをレジスターピン6cに嵌合させることにより、刷版7の位置決めを行うよう構成されている。なお、第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、刷版7は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
【0021】
刷版締め付け機構50は、4つの角変位軸(図示せず)が同軸となるように軸方向に沿って連結されることにより構成された係止バー部材(図示せず)と、係止バー部材の各角変位軸を独立して回転させる4つの操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)とを備える所謂ロックアップ式版締め装置である。刷版締め付け機構50は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略するが、概略的には、以下の構成を備えている。
【0022】
4つの角変位軸は、それぞれ、新聞1頁の横方向の長さに略等しい軸方向の長さを有しており、刷版7の咥え尻側端部7bがそれぞれ係止可能に構成されている。また、4つの角変位軸は、それぞれ異なる操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)と接続されており、接続された操作機構を操作することにより、軸を中心としてそれぞれ独立して刷版7を牽引又は緩める方向に軸回転(角変位)するよう構成されている。
【0023】
第1〜第4操作機構52a〜52dは、それぞれ、対応する角変位軸を操作するための操作レバー54を備えている。操作レバー54は、揺動することにより、刷版7を版胴6の外周面上に締め付ける装着位置と、係止バー部材と刷版7の咥え尻側端部7bとの係合が解除される解除位置との間において、対応する角変位軸を角変位させるよう構成されている。具体的には、各操作レバー54は、各操作レバー54の先端部側が下方(版胴6の径方向内側)に押し下げられることにより、対応する角変位軸を締めつけ方向に回転させ、刷版7の咥え尻側端部7bを係止バー部材により版胴6の内部に引き込むよう構成されている(
図12(f)参照)。また、各操作レバー54は、対応する角変位軸が装着位置に到達した際にロックされるよう構成されている。さらに、各操作レバー54は、ロック状態において基端部側が下方(版胴6の径方向内側)に押し下げられることにより、ロックが解除され、これにより、対応する角変位軸を締めつけ方向とは反対の方向に回転させ、係止バー部材と刷版7の咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている(
図13(f)参照)。
【0024】
刷版自動装着装置10は、版胴6に対して刷版7を自動で装着させることが可能で、かつ、版胴6から刷版7を自動で取り外すことが可能に構成されている。具体的には、刷版自動装着装置10は、例えば
図3及び
図6に示すように、左右一対のブラケット14を介して一対のフレームF,F間に懸架された固定ベース部材12と、版胴6に対して進退可能な状態で固定ベース部材12に取り付けられた刷版押え機構20(
図4〜
図8参照)及び刷版着脱操作機構30(
図3、
図9及び
図10参照)と、固定ベース部材12の前面を覆うように取り付けられた前部カバー16と、刷版押え機構20及び刷版着脱操作機構30の動作を制御する制御部(図示せず)とを備えている。
【0025】
前部カバー16は、固定ベース部材12の上面の前端縁部から下方に向けて延在して設けられた薄板部材であり、固定ベース部材12に取り付けられた刷版押え機構20の前面を覆い隠すよう構成されている。なお、
図3は、刷版自動装着装置10の正面図であり、
図4及び
図5は、刷版押え機構20を示す側面図である。
図6は、前部カバー16を取り除いた状態の刷版自動装着装置10の正面図であり、
図7は、前部カバー16と後述するガードブラケット26及びガード部材27とを取り除いた状態の刷版自動装着装置10の正面図である。
図8は、刷版押え機構20の押し込み突起部27aの機能を説明する概略拡大図であり、
図9及び
図10は、刷版着脱操作機構30を示す側面図である。
【0026】
固定ベース部材12は、
図3に示すように、版胴6の軸方向の長さと略等しい長さを有する長尺部材であり、
図4及び
図5に示すように、上面部及び背面部を有する断面逆L字状に形成されている。固定ベース部材12は、その一端部がブラケット14を介して一方のフレームFに固定され、他端部がブラケット14を介して他方のフレームFに固定されている。固定ベース部材12の背面部の内面(正面)には、例えば
図6に示すように、長手方向に所定の間隔をおいて複数(本実施形態では4つ)の直動ガイド13が取り付けられている。各直動ガイド13は、固定ベース部材12の背面部の内面(正面)に固定されたリニアブッシュ13aと、刷版押え機構20の後述する可動ベース部材24に固定されたシャフト13bとからなり、固定ベース部材12に対する可動ベース部材24の進退移動をガイドするよう構成されている。
【0027】
刷版押え機構20は、例えば
図6に示すように、版胴6の刷版装着領域Rと対応する領域に亘って設けられている。刷版押え機構20は、例えば
図4に示すように、固定ベース部材12の上面部の内面(下面)に取り付けられたエアーシリンダー22と、エアーシリンダー22のシリンダーロッド23の先端に取り付けられた可動ベース部材24と、可動ベース部材24に固定されたガードブラケット26と、ガードブラケット26に取り付けられたガード部材27と、可動ベース部材24に取り付けられた複数の押さえコロ部材28a,28bとを備えている。
【0028】
エアーシリンダー22は、例えば
図6に示すように、固定ベース部材12の長手方向に所定の間隔をおいて複数(本実施形態では3つ)設けられており、シリンダーロッド23の進退動作によって可動ベース部材24を版胴6に対して進退移動させるよう構成されている。なお、
図6(a)は、シリンダーロッド23が後退した状態、すなわち、可動ベース部材24が版胴6から離間した状態を示しており、
図6(b)は、シリンダーロッド23が前進した状態、すなわち、可動ベース部材24が版胴6に接近した状態を示している。本実施形態に係る刷版押え機構20は、例えば
図3及び
図4(a)に示すように、シリンダーロッド23が後退した状態において、エアー配管(図示せず)等を含め、前部カバー16の内側に隠れるよう構成されている。なお、本実施形態において、エアーシリンダー22は、種々の公知のものを任意に用いることが可能であるため、その説明を省略する。また、可動ベース部材24を版胴6に対して進退移動させることが可能な構成であれば、エアーシリンダーでなくても良い。
【0029】
可動ベース部材24は、例えば
図6に示すように、版胴6の刷版装着領域Rの軸方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、例えば
図4に示すように、その上面が各エアーシリンダー22のシリンダーロッド23の先端に連結されている。可動ベース部材24の下面には、その前端縁部に、下方に向けて突出するようにガードブラケット26が取り付けられると共に、ガードブラケット26よりも後方側の領域に、複数の押さえコロ部材28a,28bが取り付けられている。
【0030】
ガードブラケット26は、例えば
図6に示すように、可動ベース部材24の長手方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、例えば
図4に示すように、複数の押さえコロ部材28a,28bよりも前面側において、可動ベース部材24の下面に取り付けられている。このガードブラケット26は、版胴6に対する刷版7の着脱時に、誤って指等を版胴6と押さえコロ部材28a,28bとの間に巻き込まないようにするためのフィンガーガードとして機能するよう構成されている。
【0031】
ガード部材27は、例えば
図6に示すように、刷版7の横方向(版胴6の軸方向)の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、ガードブラケット26の下端縁部に取り付けられている。ガード部材27は、1枚の刷版7に対して1つ設けられている。本実施形態では、1頁分の刷版7を軸方向に4枚並べて装着する構成であるため、ガードブラケット26の下端縁部に沿って略隙間無く4つ並べて設けられている。このガード部材27は、ガードブラケット26よりも柔軟な材料、例えばポリアミド等の樹脂材料等から形成されており、版胴6に対する刷版7の着脱時に、ガードブラケット26に刷版7が直接接触して損傷しないようにするためのガードとして機能するよう構成されている。
【0032】
各ガード部材27は、例えば
図6に示すように、版胴6のレジスターピン6cと整合する位置、本実施形態では各ガード部材27の長手方向の中央部に、版胴6に向けて突出する押し込み突起部27aを有している。
【0033】
押し込み突起部27aは、
図5(a)に示すように、エアーシリンダー22のシリンダーロッド23が前進し、可動ベース部材24が版胴6の周面に接近した状態において、押し込み突起部27aと版胴6の周面との距離Dが、刷版7の咥え尻側端部7bの折り曲げ高さdよりもやや小さくなるよう形成されている。このように形成されることにより、押し込み突起部27aは、
図5(c)に示すように、版胴6の刷版装着溝6bに到達した刷版7の咥え尻側端部7bの近傍を刷版装着溝6bに向けて押圧し、咥え尻側端部7bを刷版装着溝6b内に押し込むことで、版胴6のレジスターピン6cに咥え尻側端部7bに形成された切欠き部7cを嵌合させることが可能に構成されている。
【0034】
また、押し込み突起部27aは、刷版7の咥え尻側端部7bに形成された切欠き部7cの幅(版胴6の軸方向に沿った長さ)と略同一又はこれよりも大きい幅(版胴6の軸方向に沿った長さ)を有している。このように形成されることにより、押し込み突起部27aは、
図8に示すように、咥え尻側端部7bに形成された切欠き部7cの応力集中による版割れを起こすことなく開口端が広がるよう、咥え尻側端部7bを押圧することが可能となるため、版胴6のレジスターピン6cに対する咥え尻側端部7bの切欠き部7cの嵌合をスムーズかつ確実に行うことが可能となる。
【0035】
複数の押さえコロ部材28a,28bは、例えば
図4に示すように、版胴6の軸方向と平行な回転軸を中心として、版胴6の周方向に沿って回転可能に構成されたローラー部材であり、互いに等しい径を有している。複数の押さえコロ部材28a,28bは、
図4(b)及び
図5(a)〜
図5(c)に示すように、エアーシリンダー22のシリンダーロッド23が前進し、可動ベース部材24が版胴6の周面に接近した状態(前進位置)において、版胴6の周面に刷版7を押さえ付け可能に構成されている。押さえコロ部材28a,28bとしては、例えば、直径25mmの円筒状のウレタン製ローラーを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
押さえコロ部材28a,28bは、例えば
図6及び
図7に示すように、1枚の刷版7に対して3つ設けられており、本実施形態では、1頁分の刷版7を軸方向に4枚並べて装着する構成であるため、可動ベース部材24の長手方向に沿って、所定の間隔をおいて計12個並べて設けられている。1枚の刷版7に対応する3つの押さえコロ部材28a,28bは、各ガード部材27の押し込み突起部27aと対応する位置(すなわち、各刷版7の短辺方向(版胴6の軸方向)の略中央部と整合する位置)に配された1つの中央押さえコロ部材28aと、押し込み突起部27aと対応する位置以外に配された2つの周辺押さえコロ部材28bとから構成されている。2つの周辺押さえコロ部材28bは、本実施形態では、各刷版7の横方向(版胴6の軸方向)の一方側の端部近傍と対応する位置に配された周辺押さえコロ部材28bと、各刷版7の横方向の他方側の端部近傍と対応する位置に配された周辺押さえコロ部材28bとからなる。これら中央押さえコロ部材28aと、周辺押さえコロ部材28bとは、互いに回転軸が同軸となるよう、版胴6の軸方向に沿って整列して配置されている。
【0037】
本実施形態に係る刷版押え機構20は、以上の構成を備えることにより、例えば
図4及び
図5に示すように、版胴6に対する刷版7の装着時において、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止された状態で順方向に回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7を押し付けるよう構成されている。また、本実施形態に係る刷版押え機構20は、例えば
図5(c)に示すように、刷版装着溝6bに到達した刷版7の咥え尻側端部7bを押し込み突起部27aによって刷版装着溝6bに押し込むことで、レジスターピン6cに咥え尻側端部7bに形成された切欠き部7cを嵌合させるよう構成されている。さらに、本実施形態に係る刷版押え機構20は、版胴6からの刷版7の取り外し時においても、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止された状態で逆方向に回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7を押し付けることが可能に構成されている。
【0038】
刷版着脱操作機構30は、例えば
図3に示すように、第1〜第4操作機構52a〜52dと整合する位置にそれぞれ1つずつ設けられている。本実施形態では、第1及び第2操作機構52a,52bと整合する位置に配された2つの刷版着脱操作機構30は、例えば
図3及び
図9に示すように、1つのブラケット32を介して固定ベース部材12の長手方向の一方側の端部近傍に取り付けられており、第3及び第4操作機構52c,52dと整合する位置に配された2つの刷版着脱操作機構30は、1つのブラケット32を介して固定ベース部材12の長手方向の他方側の端部近傍に取り付けられている。
【0039】
各刷版着脱操作機構30は、例えば
図9に示すように、ブラケット32に取り付けられたエアーシリンダー34と、エアーシリンダー34のシリンダーロッド36の先端に取り付けられたレバー押圧部材38とを備えている。
【0040】
エアーシリンダー34は、例えば
図9に示すように、シリンダーロッド36の進退動作によってレバー押圧部材38を版胴6に対して進退移動させるよう構成されている。なお、
図9(a)は、シリンダーロッド36が後退した状態、すなわち、レバー押圧部材38が版胴6から離間した状態を示しており、
図9(b)は、シリンダーロッド36が前進した状態、すなわち、レバー押圧部材38が版胴6に接近した状態を示している。なお、本実施形態において、エアーシリンダー34は、種々の公知のものを任意に用いることが可能であるため、その説明を省略する。また、レバー押圧部材38を版胴6に対して進退移動させることが可能な構成であれば、エアーシリンダーでなくても良い。
【0041】
レバー押圧部材38は、例えば
図9に示すように、その上面がエアーシリンダー34のシリンダーロッド36の先端に連結されている。レバー押圧部材38の下面には、下方(版胴6に向かう方向)に向けて突出した突出部が形成されている。
【0042】
本実施形態に係る刷版着脱操作機構30は、以上の構成を備えることにより、例えば
図9に示すように、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止され、刷版装着溝6b内に咥え尻側端部7bが押し込まれた状態の版胴6に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)の操作レバー54の先端部側を下方(版胴6の径方向内側)に押し下げることにより、対応する角変位軸を締めつけ方向に回転させ、版胴6の周面に刷版7を装着させるよう構成されている。また、本実施形態に係る刷版着脱操作機構30は、例えば
図10に示すように、刷版7が装着された状態の版胴6に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)の操作レバー54の基端部側を下方(版胴6の径方向内側)に押し下げることにより、操作レバー54のロックを解除し、ロックが解除された角変位軸を締めつけ方向とは反対の方向に回転させ、これにより、刷版締め付け機構50の係止バー部材と刷版7の咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている。
【0043】
制御部は、版胴6を制御する制御部と、刷版自動装着装置10を制御する制御部とを備えている。制御部は、以上の構成を備えることにより、版胴6の回転動作を検知可能に構成されており、版胴6の回転動作に合わせて、刷版押え機構20及び刷版着脱操作機構30を適宜のタイミングで動作させるよう構成されている。
【0044】
すなわち、版胴6を制御する制御部は、版胴6の取付け軸6a上、または取付け軸6aに接続された回転駆動手段(例えば、サーボモーター等)に設けられた回転位置検出器(例えば、エンコーダー等)により検出された版胴6の回転動作の情報(回転速度や回転位置等)を基に、版胴6を各刷版着脱工程における所定の停止位置に正確に停止させる。そして、版胴6の回転動作の情報は制御部から刷版自動装着装置10を制御する制御部に伝えられ、版胴6の回転動作に合わせて、刷版押え機構20及び刷版着脱操作機構30を適宜のタイミングで動作させる。
【0045】
下段印刷ユニット2bの一対のフレームF,F間には、版掛位置釦(図示せず)と、版掛準備釦(図示せず)と、版掛釦(図示せず)と、版取外釦(図示せず)とが配された操作部3(
図1参照)が設けられている。制御部は、これらの釦が作業者によって押下されることで、版胴6及び刷版自動装着装置10を自動で動作させるよう構成されている。また、操作部3には、上段印刷ユニット2a及び下段印刷ユニット2bにそれぞれ設けられている刷版自動装着装置10の刷版着脱操作機構30の中から動作させる刷版着脱操作機構30を選択するための面選択釦(図示せず)が更に配されている。
【0046】
具体的には、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版掛位置釦が押下された際に、版胴6を制御する制御部によって、刷版装着溝6bが作業者側に露出し、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置(版掛位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(
図11参照)。
【0047】
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、作業者が刷版7の咥え側端部7aを刷版装着溝6bのエッジ部に係止させた後、版掛準備釦が押下された際に、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版押え機構20を版胴6に対して前進させ、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7を押さえ付けるよう構成されている(
図12(a)参照)。
【0048】
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、刷版押え機構20により版胴6の周面に刷版7を押さえ付けた状態において、版胴6を制御する制御部によって、版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部が刷版着脱操作機構30のレバー押圧部材38の突出部と整合する位置(締め付け位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(
図12(d)参照)。また、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版胴6が締め付け位置にて停止した状態において、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版着脱操作機構30を版胴6に対して前進させ、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部を押し下げることで、版胴6に対して刷版7を装着させるよう構成されている(
図12(f)参照)。さらに、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版胴6に対する刷版7の装着が完了した後に、刷版押え機構20及び刷版着脱操作機構30を版胴6から後退させるよう構成されている(
図12(g)及び
図12(h)参照)
【0049】
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版取外釦が押下された際に、版胴6を制御する制御部及び刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、版胴6及び刷版自動装着装置10に次の動作を実行させるよう構成されている。
【0050】
すなわち、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、まず、版胴6を制御する制御部によって、版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部が刷版着脱操作機構30のレバー押圧部材38の突出部と整合する位置(咥え尻取り外し位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(
図13(b)参照)。
【0051】
また、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版胴6が咥え尻取り外し位置にて停止した状態において、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版押え機構20を版胴6に対して前進させ、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7を押さえ付けるよう構成されている(
図13(c)参照)。
【0052】
さらに、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版着脱操作機構30を版胴6に対して前進させ、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部を押し下げ、操作レバー54のロックを解除することで、刷版締め付け機構50の係止バー部材と刷版7の咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている(
図13(f)参照)。
【0053】
またさらに、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、係止バー部材と咥え尻側端部7bとの係合が解除された後に、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版着脱操作機構30を版胴6から後退させるよう構成されている(
図14(b)参照)。また、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、刷版着脱操作機構30が後退した後に、版胴6を制御する制御部によって、作業者が刷版装着溝6bのエッジ部から刷版7の咥え側端部7aを取り外すことが可能となる位置(咥え取り外し位置)に到達するまで版胴6を逆方向に回転させるよう構成されている(
図14(c)及び
図14(d)参照)。さらに、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、版胴6が咥え取り外し位置にて停止した状態において、刷版自動装着装置10を制御する制御部によって、刷版押え機構20を版胴6から後退させるよう構成されている(
図14(e)参照)。
【0054】
次に、本実施形態に係る刷版自動装着装置10を用いて刷版7を版胴6に自動で装着する方法について、
図11及び
図12を用いて説明し、版胴6から刷版7を自動で取り外す方法について、
図13及び
図14を用いて説明する。
【0055】
まず、刷版自動装着装置10の作動に先立ち、作業者によって、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aを係止させる作業が行われる(版掛準備工程)。具体的には、作業者によって操作部3の版掛位置釦が押下されることで、
図11(a)〜
図11(d)に示すように、版胴6が版掛位置(刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置)まで順方向に回転する。そして、版胴6が版掛位置において停止した状態において、作業者によって、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止される。なお、
図11(a)は、版掛位置に向けて版胴6が順方向に回転している状態における刷版押え機構20を示し、
図11(b)は、同状態における刷版着脱操作機構30を示している。また、
図11(c)は、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止された状態における刷版押え機構20を示し、
図11(d)は、同状態における刷版着脱操作機構30を示している。
【0056】
次に、作業者によって版掛準備釦が押下されることで、
図12(a)に示すように、刷版自動装着装置10の刷版押え機構20が版胴6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7を押さえ付ける(刷版押え機構前進工程)。なお、
図12(a)は、刷版押え機構前進工程における刷版押え機構20を示し、
図12(b)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0057】
次に、作業者によって版掛釦が押下されることで、
図12(c)及び
図12(d)に示すように、版胴6が締め付け位置(操作レバー54の先端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)まで順方向に略1回転する(版掛工程)。そして、このように刷版押え機構20が版胴6に対して前進した状態において版胴6が略1回転することにより、
図5(a)〜
図5(c)に示すように、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7を版胴6に対して均一に押さえ付けた状態で、版胴6の周面に刷版7が巻き付けられると共に、押し込み突起部27aによって刷版7の咥え尻側端部7bが刷版装着溝6bに押し込まれ、咥え尻側端部7bの切欠き部7cがレジスターピン6cに嵌合される。なお、
図12(c)は、版掛工程における刷版押え機構20を示し、
図12(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0058】
版胴6が締め付け位置にて停止した後に、
図12(f)に示すように、刷版着脱操作機構30が版胴6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部が押し下げられる(版装着工程)。これにより、対応する角変位軸が締めつけ方向に回転し、刷版7の咥え尻側端部7bが版胴6の内部に引き込まれることで、版胴6の周面に刷版7が装着される。なお、
図12(e)は、版装着工程における刷版押え機構20を示し、
図12(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0059】
版胴6に対する刷版7の装着が完了した後に、
図12(g)及び
図12(h)に示すように、刷版押え機構20及び刷版着脱操作機構30が版胴6から後退する(刷版自動装着装置後退工程)。これにより、刷版7の装着に関する刷版自動装着装置10の一連の動作が終了する。なお、
図12(g)は、刷版自動装着装置後退工程における刷版押え機構20を示し、
図12(h)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0060】
所定の印刷が完了した後に、作業者によって版取外釦が押下されることで、版胴6から刷版7を自動で取り外す処理が実行される。具体的には、まず、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、版胴6が咥え尻取り外し位置(操作レバー54の基端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)に到達するまで順方向に回転する。なお、
図13(a)は、咥え尻取り外し位置に向けて版胴6が順方向に回転している状態における刷版押え機構20を示し、
図13(b)は、同状態における刷版着脱操作機構30を示している。
【0061】
版胴6が咥え尻取り外し位置にて停止した後に、
図13(c)に示すように、刷版自動装着装置10の刷版押え機構20が版胴6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7を押さえ付ける(刷版押え機構前進工程)。なお、
図13(c)は、刷版押え機構前進工程における刷版押え機構20を示し、
図13(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0062】
刷版押え機構20が前進した後に、
図13(f)に示すように、刷版着脱操作機構30が版胴6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部が押し下げられる(ロック解除工程)。これにより、操作レバー54のロックが解除され、対応する角変位軸が締めつけ方向とは反対の方向に回転することで、係止バー部材と刷版7の咥え尻側端部7bとの係合が解除される。なお、
図13(e)は、ロック解除工程における刷版押え機構20を示し、
図13(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0063】
係止バー部材と咥え尻側端部7bとの係合が解除された後に、
図14(b)に示すように、刷版着脱操作機構30が版胴6から後退する(刷版着脱操作機構後退工程)。また、刷版着脱操作機構30が後退した後に、
図14(c)及び
図14(d)に示すように、版胴6が咥え取り外し位置(刷版装着溝6bのエッジ部から刷版7の咥え側端部7aを取り外すことが可能となる位置)に到達するまで逆方向に回転する(逆方向回転工程)。そして、版胴6が咥え取り外し位置にて停止した状態において、刷版押え機構20が版胴6から後退する(刷版押え機構後退工程)。これにより、作業者が刷版装着溝6bのエッジ部から刷版7の咥え側端部7aを取り外すことが可能となり、刷版7の取り外しに関する刷版自動装着装置10の一連の動作が終了する。なお、
図14(a)は、刷版着脱操作機構後退工程における刷版押え機構20を示し、
図14(b)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。また、
図14(c)は、逆方向回転工程における刷版押え機構20を示し、
図14(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。さらに、
図14(e)は、刷版押え機構後退工程における刷版押え機構20を示し、
図14(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30を示している。
【0064】
以上説明したとおり、本実施形態に係る刷版自動装着装置10は、軸方向に沿って延びる刷版装着溝6b及び刷版装着溝6bに設けられたレジスターピン6cを有する版胴6に対して、レジスターピン6cに嵌合可能な切欠き部7cが形成された咥え側端部7a及び咥え尻側端部7bを有する刷版7を装着させる刷版自動装着装置10であって、版胴6の周面に対して進退可能に構成され、かつ、版胴6の軸方向と平行な回転軸を中心として版胴6の周方向に沿って回転可能に構成された複数の押さえコロ部材28a,28bと、レジスターピン6cと整合する位置に設けられ、刷版7の咥え尻側端部7b近傍を版胴6の刷版装着溝6bに向けて押圧可能に構成された押し込み突起部27aとを備え、複数の押さえコロ部材28a,28bは、互いに等しい径を有し、それぞれ、版胴6の周面に向けて前進した前進位置において版胴6の周面に刷版7を押さえ付け可能に構成されており、版胴6に対する刷版7の装着時において、刷版装着溝6bのエッジ部に刷版7の咥え側端部7aが係止された状態で順方向に回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7を押し付け、かつ、刷版装着溝6bに到達した刷版7の咥え尻側端部7bを押し込み突起部27aによって刷版装着溝6bに押し込むことで、レジスターピン6cに咥え尻側端部7bに形成された切欠き部7cを嵌合させるよう構成されている。
【0065】
このような刷版自動装着装置10によれば、複数の押さえコロ部材28a,28bが互いに等しい径を有していることにより、均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7を押さえ付けることが可能となるため、刷版7を版胴6の周方向に対して真っすぐ巻き付けることが可能となる。また、本実施形態に係る刷版自動装着装置10によれば、刷版7の咥え尻側端部7bを刷版装着溝6bに押し込むことが可能な押し込み突起部27aが設けられているため、版胴6に巻き付けられた刷版7の咥え尻側端部7bを自動で刷版装着溝6b内に挿入させ、咥え尻側端部7bの切欠き部7cをレジスターピン6cに嵌合させることが可能となる。特に、本実施形態に係る刷版自動装着装置10では、押し込み突起部27aが、版胴6のレジスターピン6c及び刷版7の咥え尻側端部7bの切欠き部7cと整合する位置に設けられ、切欠き部7cの開口端が広がるように咥え尻側端部7bを押圧することが可能であるため、版胴6のレジスターピン6cに対する咥え尻側端部7bの切欠き部7cの嵌合をスムーズかつ確実に行うことが可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係る刷版自動装着装置10は、刷版締め付け機構50の操作レバー54と対応する位置に設けられ、操作レバー54に対して進退可能に構成された刷版着脱操作機構30を更に備え、刷版着脱操作機構30は、操作レバー54に対して前進し、操作レバー54を操作することで、係止バー部材を回転させるよう構成されている。このような刷版自動装着装置10によれば、版胴6に対する刷版7の巻き付け及び刷版装着溝6b内への咥え尻側端部7bの挿入に加え、刷版締め付け機構50による刷版7の牽引や、版胴6からの刷版7の取り外しも自動で行うことが可能となる。すなわち、本実施形態に係る刷版自動装着装置10によれば、刷版装着溝6bのエッジ部に対する刷版7の咥え側端部7aの着脱以外の作業について、全て自動で行うことが可能となる。
【0067】
ここで、本実施形態に係る版胴6を制御する制御部が、版胴6を上述した各工程における所定の停止位置に正確に停止させる方法について、
図15を用いて説明する。
【0068】
刷版自動装着装置10を用いて、刷版を自動で装着及び取り外しを行う場合には、まず作業者による操作部3の操作が行われることで、版胴6を制御する制御部は、停止していた版胴6を緩動速度(クローリング速度)v1にて回転させる。次に、版胴6が所定の停止位置手前のある一定の位置に接近したことを回転位置検出器が検出したことで、版胴6を停止寸前速度v2に一旦減速させ、その速度をしばらく保った後に版胴6を停止させる。
【0069】
このように、版胴6を緩動速度v1から一気に減速して停止させるのではなく、停止寸前速度v2に一旦減速させ、その速度をしばらく保った後に版胴6を停止させることにより、慣性モーメントの影響による版胴6の停止位置のばらつきを最小限にすることができるため、版胴6を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。これにより、刷版自動装着装置10を正常に作動させることが可能となる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るオフセット輪転印刷機の構成について、
図16及び
図17を用いて説明する。なお、第2実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、第1実施形態に係るオフセット輪転印刷機と異なる構成は、刷版自動装着装置の可動ベース部材、ガードブラケット及び複数の押さえコロ部材のみであるため、当該異なる構成のみについて説明し、共通する構成については説明を省略する。なお、
図16及び
図17において、第1実施形態に係る刷版自動装着装置10の各構成と同じ符号を付したものについては、第1実施形態に係る刷版自動装着装置10の各構成と同じ構造を有するものであることを意味している。
図16は、第2実施形態に係る刷版自動装着装置10´を底面方向(版胴6側)から見た状態を一部省略して示す概略図であり、
図17は、第2実施形態に係る刷版押え機構20´を側面方向から見た状態を示す概略図である。
【0071】
第2実施形態に係る刷版自動装着装置10´は、
図16及び
図17に示すように、刷版7毎に、刷版押え機構20´が配されており、これら複数(本実施形態では4つ)の刷版押え機構20´がそれぞれ独立して動作するよう構成されている。具体的には、可動ベース部材24´及びガードブラケット26´は、それぞれ、刷版7の横方向の長さと略等しい長さを有しており、1枚の刷版7に対して1つ設けられている。本実施形態では、1頁分の刷版7を軸方向に4枚並べて装着する構成であるため、可動ベース部材24´及びガードブラケット26´は、固定ベース部材12の長手方向に沿って4つ並べて設けられている。これら4つの可動ベース部材24´には、それぞれ、ガードブラケット26´、ガード部材27及び複数の押さえコロ部材28a´,28b´が取り付けられている。また、4つの可動ベース部材24´は、固定ベース部材12に設けられたエアーシリンダー22及び直動ガイドに連結されており、それぞれ独立して動作可能に構成されている。
【0072】
第2実施形態に係る複数の押さえコロ部材28a´,28b´は、第1実施形態に係る複数の押さえコロ部材28a,28bと同様に、各ガード部材27の押し込み突起部27a(図示せず)と対応する位置に配された1つの中央押さえコロ部材28a´と、押し込み突起部27aと対応する位置以外に配された2つの周辺押さえコロ部材28b´とから構成されている。中央押さえコロ部材28a´及び周辺押さえコロ部材28b´は、互いに等しい径を有しており、均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7を押さえ付けることが可能に構成されている。2つの周辺押さえコロ部材28b´は、互いに回転軸が同軸となるよう、版胴6の軸方向に沿って整列して配置されている。中央押さえコロ部材28a´は、
図16及び
図17に示すように、2つの周辺押さえコロ部材28b´よりも、版胴6の順方向の上流側に微小距離x(例えば、1〜5mm)だけ位置をずらして配されている。
【0073】
以上のような第2実施形態に係る刷版自動装着装置10´によれば、刷版7毎に刷版押え機構20´が設けられ、これら複数の刷版押え機構20´がそれぞれ独立して動作するよう構成されているため、装着又は取り外しが必要な刷版7に対応する刷版押え機構20´及び刷版着脱操作機構30のみを動作させることが可能となる。特に、装着時においては、作業者が刷版7の咥え側端部7aを版胴6の刷版装着溝6bのエッジ部にしっかりと係止させた状態で対応する刷版押え機構20´を動作させることが可能となるため、刷版7の装着精度をより一層向上させることが可能となる。
【0074】
また、第2実施形態に係る刷版自動装着装置10´によれば、中央押さえコロ部材28a´が周辺押さえコロ部材28b´よりも版胴6の順方向の上流側に位置をずらして配されていることにより、周辺押さえコロ部材28b´に先行して、中央押さえコロ部材28a´によって刷版7の横方向の略中央部を押圧することが可能となる。これにより、押し込み突起部27aと中央押さえコロ部材28a´とが協働して刷版7の咥え尻側端部7bの近傍を刷版装着溝6bに向けて押圧することが可能となるため、咥え尻側端部7bの切欠き部7cの開口端をより一層広げることができ、版胴6のレジスターピン6cに対する咥え尻側端部7bの切欠き部7cの嵌合をより一層スムーズかつ確実に行うことが可能となる。また、中央押さえコロ部材28a´及び周辺押さえコロ部材28b´によって均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7を押さえ付けた状態において、中央押さえコロ部材28a´から各周辺押さえコロ部材28b´に向かう方向、すなわち、刷版7の横方向の中央部から両端部に向かう方向に向けて刷版7に押さえ付け力を付与することが可能となるため、刷版7の装着精度をより一層向上させることが可能となる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0076】
例えば、上述した実施形態における説明では、版胴6が、所謂4(W)×1(L)型の版胴であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば所謂4(W)×2(L)型の版胴等、種々の版胴を用いることが可能である。また、刷版7が、新聞1頁に相当する大きさを有し、版胴6の軸方向に沿って4枚並べて装着されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば新聞2頁に相当する大きさを有する刷版等、種々の刷版を用いることが可能である。
【0077】
上述した実施形態では、刷版自動装着装置10,10´が固定ベース部材12、刷版押え機構20,20´、刷版着脱操作機構30及び前部カバー16を備えるものとして説明したが、これに限定されず、版胴6の周面に対して進退可能に構成された複数の押さえコロ部材28a,28b,28a´,28b´と、刷版7の咥え尻側端部7b近傍を版胴6の刷版装着溝6bに向けて押圧可能に構成された押し込み突起部27aとを少なくとも有していれば良い。また、複数の押さえコロ部材28a,28b,28a´,28b´と共に押し込み突起部27aも版胴6の周面に対して進退可能に構成されるものとして説明したが、これに限定されず、複数の押さえコロ部材28a,28b,28a´,28b´のみが版胴6の周面に対して進退可能な構成としても良い。
【0078】
上述した実施形態では、押さえコロ部材28a,28b,28a´,28b´が1枚の刷版7に対して3つ設けられるものとして説明したが、これに限定されず、押さえコロ部材の設置数は任意の数とすることができる。また、押さえコロ部材28a,28b,28a´,28b´が中央押さえコロ部材28a,28a´と周辺押さえコロ部材28b,28b´とから構成されるものとして説明したが、これに限定されず、押さえコロ部材は任意の位置に配置することが可能である。
【0079】
上述した実施形態では、版取外釦が押下された際に、版胴6から刷版7を取り外す処理が実行されるものとして説明したが、これに限定されず、印刷作業の完了時に刷版自動装着装置10,10´及び版胴6が自動で作動し、版胴6から刷版7を取り外す処理が実行される構成としても良い。