特許第6564326号(P6564326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルマテス・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

特許6564326有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法
<>
  • 特許6564326-有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法 図000002
  • 特許6564326-有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法 図000003
  • 特許6564326-有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法 図000004
  • 特許6564326-有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564326
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/28 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190808BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20190808BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C23C14/28
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   H05B33/28
   C23C14/08 D
   C23C14/24 S
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-537210(P2015-537210)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2015-533390(P2015-533390A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2013071429
(87)【国際公開番号】WO2014060356
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】12188835.8
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511052015
【氏名又は名称】ソルマテス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Solmates B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・マテイン・デッケルス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・アルナウト・ヤンセンス
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−287383(JP,A)
【文献】 特開2001−085163(JP,A)
【文献】 特表2012−500901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135848(US,A1)
【文献】 特開2000−144387(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0098668(US,A1)
【文献】 特表2011−524463(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037358(WO,A1)
【文献】 MEYER J,APPLIED PHYSICS LETTERS,米国,AMERICAN INSTITUTE OF PHYSICS (AIP),2008年 8月22日,V93 N7,P073308-1 - 073308-3
【文献】 MAN,Particle velocity,electron temperature,and density profiles of pulsed laser-induced plasmas in air at different ambient pressures,Applied Physics B,1998年,Vol.67,p.241-245
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/28
C23C 14/08
C23C 14/24
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子機能材料上にターゲット材を堆積する方法であって、
有機電子機能材料を有する基材を準備し、
ターゲット材の蒸気プルームを、パルスレーザ堆積によって生成し、
前記有機電子機能材料上にターゲット材の第1層を堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第1最大粒子速度をプリセット値より低く制御し、ここで、前記プリセット値は、堆積の間に、前記粒子が前記有機電子機能材料を貫通し及び/又は損傷しないように選択されており、
ターゲット材の第2層を、ターゲット材の前記第1層上に堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第2最大粒子速度を前記プリセット値より高く制御する、ステップを含み、
前記プリセット値は、前記第1最大粒子速度と前記第2最大粒子速度との間であり、
前記第1層は、第1圧力の状態を使用する間に堆積され、
前記第2層は、第2圧力の状態を使用する間に堆積され、
前記第2圧力は、前記第1圧力よりも低い方法。
【請求項2】
有機電子機能材料上にターゲット材を堆積する方法であって、
有機電子機能材料を有する基材を準備し、
ターゲット材の蒸気プルームを、パルスレーザ堆積によって生成し、
前記有機電子機能材料上にターゲット材の第1層を堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第1最大粒子速度をプリセット値より低く制御し、ここで、前記プリセット値は、堆積の間に、前記粒子が前記有機電子機能材料を貫通し及び/又は損傷しないように選択されており、
ターゲット材の第2層を、ターゲット材の前記第1層上に堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第2最大粒子速度を前記プリセット値より高く制御する、ステップを含み、
前記プリセット値は、前記第1最大粒子速度と前記第2最大粒子速度との間であり、
前記蒸気プルームは、前記有機電子機能材料の表面にわたって移動させられ、
前記蒸気プルームは、前記プルームのコアにある粒子の最大速度が、前記プリセット値より高く、前記コア周辺の粒子の最大速度が、前記プリセット値よりも低いように、制御される方法。
【請求項3】
有機電子機能材料上にターゲット材を堆積する方法であって、
有機電子機能材料を有する基材を準備し、
ターゲット材の蒸気プルームを、パルスレーザ堆積によって生成し、
前記有機電子機能材料上にターゲット材の第1層を堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第1最大粒子速度をプリセット値より低く制御し、ここで、前記プリセット値は、堆積の間に、前記粒子が前記有機電子機能材料を貫通し及び/又は損傷しないように選択されており、
ターゲット材の第2層を、ターゲット材の前記第1層上に堆積しつつ、前記蒸気プルームの堆積される粒子の第2最大粒子速度を前記プリセット値より高く制御する、ステップを含み、
前記プリセット値は、前記第1最大粒子速度と前記第2最大粒子速度との間であり、
前記ターゲット材と前記基材との間の距離は、前記第1層の堆積中は増大し、
前記距離は、前記第2層の堆積中は減少する方法。
【請求項4】
前記蒸気プルームの移動は、前記有機電子機能材料の表面の外側で開始する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
結合された前記第1層及び前記第2層は、透明な伝導酸化物である、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記透明な伝導酸化物は、インジウムスズ酸化物を含んでいる、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機電子機能材料は、放射電界発光層を含んでいる、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子機能材料にターゲット材を堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
堆積方法、特に物理蒸着方法は、粒子を含んだ蒸気プルーム(vapor plume)を使用し、それは基材材料に照射される。蒸気のこのプルームは、粒子がターゲット材から開放されるように、ターゲット材を、例えばイオン又は光子を使用して励起することによって生じる。励起により、粒子は、粒子を基材に移動させる運動エネルギを得て、そのエネルギは、粒子を、基材に付着させ又は基材材料を貫通させることに使用される。基材材料及び得られた運動エネルギに依拠して、粒子は、基材材料のある程度の深さまで貫通し、及び/又は照射により材料を損傷する。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)の分野では、透明なOLEDを供給する努力がなされている。OLEDは、ガラス又は透明なプラスチック層、第1伝導層、放射電界発光層、及び第2伝導層の積層構造を、概して有している。第1及び第2伝導層への電圧の供給によって、放射電界発光層は、発光するように電力が供給される。
【0004】
透明な放射電界発光層は、透明な伝導層と同様に周知である。概して、インジウムスズ酸化物層が、透明な伝導層に用いられ、それは、物理蒸着方法で基材上に配置される。しかしながら、周知の物理蒸着方法は、透明な放射電界発光層に対して、インジウムスズ酸化物又は類似の透明な伝導酸化物を堆積させるのに使用される場合、粒子の衝撃は、放射電界発光層を、電力が供給されたときにもはや発光しない程度又はその効率が漏電又は短絡のために強く減少する程度、にまで損傷する。
【0005】
OLEDの作成に使用される一般的な物理蒸着方法は、スパッタ堆積である。スパッタ堆積は、ターゲット材を、イオン又は電子による照射によって励起する原理を使用する。これらの粒子のエネルギが十分に高い場合、エネルギは、粒子をターゲット材からプラズマに放出する。このプラズマは、紫外線、反応性イオン、及びオゾンを、概して含んでいる。イオン及びオゾンは、放射電界発光層に損傷を生じながら、放射電界発光層に反応する。紫外線は、放射電界発光層上で、機能的結合を破壊する反対の反応を生じる。
【0006】
粒子は、十分高いエネルギで励起されたときにターゲット材から放出されるのみであるので、放出された粒子は、少なくとも最少エネルギを有している。粒子のこの最少エネルギは、特にインジウムスズ酸化物(ITO)のような一般的なターゲット材で、電界発光層に損傷をすでに与える。
【0007】
さらに、スパッタ堆積によって生じたプラズマの濃度は、スパッタ堆積の作動原理の結果として低い。そのため、粒子は、他の粒子に接触することなく、別個の反応性イオンとして、放射電界発光層に到着する傾向を有し、放射電界発光層の表面に到着するとき依然としてかなりの運動エネルギを有しつつ、相対的にかなりの距離にわたって放射電界発光層に平行に広がる。この高エネルギは、粒子の反応性とは別に、放射電界発光層に損傷を生じる。
【0008】
Kowalsky W.他:「シースルーOLEDディスプレイ」,予稿集 SPIE 6486,発光ダイオード:研究,製造,適用XI,64860F(2007年2月13日);doi:10.1117/12.696402には、一般的なスパッタリング技術法及びパルスレーザ堆積法によれば、効率のよいOLEDを製造できないことが示されている。この刊行物には、放射電界発光層と透明な伝導性の上部電極との間にバリヤ層を使用する必要があることが示されている。そのようなバリヤ層は、OLEDの透明性を減少させるので、望ましくない。それ故、スパッタリング堆積及びパルスレーザ堆積のような一般的な物理蒸着法によれば、効率のよいOLEDを製造できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kowalsky W.他:「シースルーOLEDディスプレイ」,予稿集 SPIE 6486,発光ダイオード:研究,製造,適用XI,64860F(2007年2月13日);doi:10.1117/12.696402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
放射電界発光層上に銀堆積を用いることも周知である。銀は、放射電界発光層を損傷しないような条件下で堆積され得る利点を有する。しかしながら、銀層の透明性も、限定される。概して、伝導層の1つとしての銀層を有するOLEDは、40%までの透明性を有し得る。
【0011】
周知の方法の他の不利益は、特にレーザ堆積法は、紫外線を用いることである。紫外線は、OLEDの製造に概して使用される材料を損傷する。紫外線は、粒子の照射と組み合わさって、OLED製造に使用される有機材料を、概して損傷する。
【0012】
紫外線をブロックする他の材料の保護層を配置することは可能である。しかしながら、そのような層は、透明でない場合が多く、伝導層が配置されている場合に、保護層は、伝導層を放射電界発光層から絶縁する。
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述した不利益を低減し又は防止する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、プリアンブル(preamble)に係る方法で達成され、その方法は、放射電界発光層のような有機電子機能材料を有する基材を供給し、ターゲット材の蒸気プルームを、パルスレーザ堆積によって生成し、ターゲット材の第1層を、有機電子機能材料に堆積しつつ、堆積した粒子の最大粒子速度を、プリセット値より低く維持し、ターゲット材の第2層を、ターゲット材の第1層に堆積しつつ、堆積した粒子の最大粒子速度が、プリセット値よりも高い、ステップを備えている。
【0015】
有機電子機能材料によって、有機材料は理解され、それは、電力が供給されたときに発光する有機放射電界発光層のように、電力が供給されたときにある機能を提供する。そのような有機電子機能材料は、周知の物理蒸着法によって、材料の機能が失われ又はかなり減少するような程度まで概して損傷される。有機放射電界発光によれば、これは、電力が供給されたときの生成される光量の減少又は完全な失敗に至る。
【0016】
本発明に係る方法によれば、ターゲット材の第1層は、破壊することなく有機電子機能材料に配置される。これは、最大粒子速度をプリセット値よりも低く維持することを確保することによって達成される。粒子の粒子速度及びそれによる運動エネルギが、プリセット値より低いとき、粒子は、有機電子機能材料に付着するが、有機材料に悪影響を与えるように有機材料を貫通し及び/又は損傷しない。
【0017】
パルスレーザ堆積を使用することによって、先行技術の不利益は解消される。パルスレーザ堆積は、ターゲット材を励起するために、イオンの代わりに光子を用いる。結果として、粒子がスパッタリング堆積のような方法に比して低い運動エネルギを一般的には有するように、粒子を低エネルギでターゲット材から開放できる。
【0018】
さらに、パルスレーザ堆積において、生成されたプラズマプルームは、過飽和され、すなわち、粒子は互いに近接に充填される。ターゲットに生成した如何なるイオンも、過飽和したプラズマに互いに接触する大きな可能性を有し、それほど有害ではない粒子に反応する。これは、有機電子機能材料を損傷する機会を減少させる。
【0019】
ターゲット材を堆積させるためにパルスレーザ堆積を使用する場合、他の物理蒸着法に比して、許容できる堆積率を依然として維持しながら、最大粒子速度を制御することは、容易である。
【0020】
最適なプロセスパラメータを決定することは、当業者にとって周知のプロセスであるが、各物理蒸着法が、それ自身の最適なパラメータ及び限定事項を有しているかもしれないことを、理解することを要求する。例えば、スパッタリング堆積を使用する場合、有機電子機能材料への損傷を生じない運動エネルギを有する粒子を有するプラズマを供給することは、概して可能ではない。
【0021】
紫外線レーザを蒸気プルームの生成に使用する場合、第1層は、より高い紫外線強度が第2層の堆積の間に使用され得るように、有機電子機能材料用の紫外線保護を提供することもできる。本発明の実施形態では、ターゲット材と基材との間の距離は、第1層の堆積中は増大し、上記距離は、第2層の堆積中は減少する。これは、基材上の粒子の衝撃に関するより低い最大粒子速度と、第1層が堆積されたときに基材上のより低い紫外線強度をも生じる。
【0022】
次に、第2層が、第1層上に堆積される。すでに堆積した層は、有機電子機能材料に保護層を提供するので、第2層用のターゲット材粒子は、第1層に使用されるターゲット材粒子よりも、堆積の間、より高い速度を有することができる。
【0023】
本発明に係る方法によれば、第1層のために、それ故、従来の方法で、ターゲット材を有機電子機能材料上に堆積でき、そうでなければ、有機材料を損傷する。
【0024】
プリセット値は、プリセット値がターゲット材の材料と、物理蒸着法と、選択された堆積パラメータと、有機電子機能材料とに、少なくも依拠するように実験によって決定されなければならない。これは、当業者に一般的な慣習の範囲内である。
【0025】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、第1層は、第1圧力の状態(pressure regime)を使用しながら堆積され、第2層は、第2圧力の状態を使用しながら堆積され、第2圧力は第1圧力より低い。
【0026】
物理的な堆積法によれば、真空に近い環境が、堆積を実行するところに生成される。真空又はこの環境の圧力を制御することによって、粒子の衝突速度を制御できる。より高い圧力の状態が使用されるとき、蒸気プルーム中のターゲット材の粒子は、基材上の衝突がそれほど衝撃的でなく傷つき易い材料がもはや影響を受けないように、より減速される。より高い圧力の状態によれば、粒子は、有機電子機能材料上に”ソフトランディング”する。
【0027】
第1層をターゲット材と共に堆積するとすぐに、粒子が下層の有機電子機能材料を損傷することなく、速度を保って十分なエネルギで第1層に衝突できるように、圧力の状態を低くできる。
【0028】
第1及び第2層を同じ材料で堆積することは最も一般的であるが、第2層を堆積する前にターゲット材を変更することも可能である。2つの異なるターゲット材を使用することによって、特異的性質を、有機電子機能材料上に堆積した層に達成できる。
【0029】
本発明に係る方法のさらに好ましい実施形態において、蒸気プルームは、有機電子機能材料の表面にわたって移動させられて、プルームのコアにある粒子の最大速度がプリセット値より高く且つコア周辺の粒子の最大速度がプリセット値より低くなるように、蒸気プルームは制御される。
【0030】
蒸気プルームが、ターゲット材を例えばレーザビームで励起することによって生成される場合、蒸気プルームは、高い速度を有する高濃度の粒子を含んだコアを有する。このコアは、より低濃度の粒子を含んだエンベロープで囲まれている。エンベロープ中の粒子は、より低い速度を有する。
【0031】
蒸気プルームを、有機電子機能材料の表面にわたって移動させることによって、より低い粒子の集中を含んだエンベロープは、有機電子機能材料上にまず堆積する。これは、ターゲット材の第1層を有する有機電子機能材料を、プルームの経路に沿って供給する。プルームがさらに移動しつつ、コアは、プルームのエンベロープによって既に堆積された材料上を通過する。プルームのコア内の粒子は、ターゲット材の第2層を、次に堆積する。
【0032】
好ましくは、蒸気プルームの移動は、有機電子機能材料の表面の外側で開始する。これは、ターゲット材の第1層及び第2層の両方とも、有機電子機能材料の全表面に延びることを、確かにする。
【0033】
蒸気プルームが、有機電子機能材料の表面にわたって移動させられる場合、プルームのコア中の粒子の最大速度は、プリセット値よりも高く、コア周辺の粒子の最大速度は、プリセット値よりも低いことが必要である。蒸気プルームを生成する方法により、コア内の粒子の粒子速度と、コアを包む粒子の粒子速度とに、違いが既にある。適切な圧力の状態を選択することは、コア中の最大速度をより高くしながら、エンベロープ中の粒子の最大粒子速度をプリセット値より低くすることを、確実にする。
【0034】
本発明に係る方法の更なる実施形態において、結合された第1及び第2層は、透明な伝導酸化物、特にインジウムスズ酸化物である。
【0035】
透明な伝導酸化物は、本発明に係る方法なしに、放射電界発光層のような有機電子機能材料に配置できない典型的な材料である。
【0036】
本発明は、本発明にかかる方法で製造される中間生成物にも関し、生成物は、放射電界発光層のような有機電子機能材料を含んだ基材と、有機電子機能材料に堆積されたターゲット材の第1層と、を有し、堆積された粒子は、有機電子機能材料を、わずかに貫通し及び/又は損傷する。
【0037】
本発明の中間生成物によれば、ターゲット材の第1層は、有機電子機能材料を含んだ基材に配置される。堆積された材料は、有機電子機能材料が影響を受けないように、有機材料をわずかに貫通する。粒子は、有機電子機能材料上に配置され、有機電子機能材料を貫通せず又はわずかにのみ貫通する。
【0038】
本発明は、有機発光ダイオードにも関し、有機発光ダイオードは、基材層と、基材層に配置された第1電導層と、第1電導層に配置された放射電界発光層と、放射電界発光層に配置された第2電導層と、を有し、第2電導層は、本発明に係る方法を使用して配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1A及び図1Bは、本発明に係る第1実施形態の2つのステップを示している。
図2図2は、本発明に係る方法の第2実施形態を示している。
図3図3は、本発明に係る有機発光ダイオードの実施形態の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明のこれら及び他の特徴は添付の図面と併せて説明される。
【0041】
図1Aは、本発明に係る方法の第1実施形態の第1ステップを示している。基材1は、有機電子機能材料2の層を備えている。ターゲット材の粒子を含んだ蒸気プルーム3は、パルスレーザ堆積法で生成される。この蒸気プルーム3は、コア4とエンベロープ5とを有している。
【0042】
蒸気プルーム3が生成される圧力の状態を制御することによって、プルーム3の届く範囲と、プルーム3内の粒子の衝撃とを、制御できる。図1Aに示されるステップにおいて、プルーム3内の粒子の運動エネルギが減少されて、粒子が有機電子機能材料の表面に”ソフトランディング”し、ターゲット材6の第1層を形成するように、圧力は相対的に高い。
【0043】
図1Bに示されるステップにおいて、プルーム3内の粒子がその運動エネルギを保って、ターゲット材6の第1層の上部に、ターゲット材の第2層を形成するように、従来の方法で堆積されるように、圧力を減少する。第1層6が、有機電子機能材料2の上部に既に配置されているので、この層2を保護し、第2層の従来の堆積を可能にする。
【0044】
図2は、本発明に係る方法の第2実施形態を示している。基材10は、有機電子機能材料の層11を備えている。さらに、蒸気プルーム12が生成される。この蒸気プルーム12は、相対的に高い速度を有する粒子を含んだコア13と、コア13の周辺の相対的に低い速度の粒子を含んだエンベロープ14と、を有している。
【0045】
プルーム12は、有機電子機能材料11の表面にわたって移動させられる。エンベロープ14は、有機材料11のターゲット材の第1層15を、まず堆積する。トレーリングコア13は、第2層16を、既に堆積された第1層15上に次に堆積する。第1層15及び第2層16は、同じターゲット材粒子で堆積されるので、有機材料11の上部にターゲット材の実質的に同種の層が、生成される。
【0046】
図3は、有機発光ダイオード(OLED)の実施形態20を示している。このOLED20は、ガラス層のような基材層21を有している。第1伝導層22は、従来の物理蒸着法で、この基材層21上に堆積される。次に、放射電界発光層23が、伝導層22の上部に提供される。
【0047】
本発明に係る方法によれば、第2伝導層24,25は、傷つき易い放射電界発光層23の上部に配置されている。透明な伝導材料の第1層24が、まず堆積され、その後、透明な伝導材の第2層25が堆積される。両方の層24,25は続いて堆積されるので、同種の層が、放射電界発光層23上に供給される。
【0048】
2つの伝導層22及び24,25に電圧をかけると、放射電界発光層23は発光する。両方の伝導層は、例えばインジウムスズ酸化物を使用して透明に作成されているので、十分に透明なOLEDが得られる。
図1A
図1B
図2
図3