特許第6564342号(P6564342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564342
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】エンドブラケット
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   E04F11/18
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-84366(P2016-84366)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-193865(P2017-193865A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年11月9日
【審判番号】不服2018-11878(P2018-11878/J1)
【審判請求日】2018年9月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智裕
(72)【発明者】
【氏名】多田 智晴
【合議体】
【審判長】 井上 博之
【審判官】 富士 春奈
【審判官】 西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3098123(JP,U)
【文献】 特開2003−328521(JP,A)
【文献】 特開2010−70994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に、壁面に固定される壁面固定座が、他端に、手摺の端部を保持する手摺保持部が設けられるとともに、これら壁面固定座と手摺保持部との間の湾曲部に、該湾曲部の外側に開口する開口部が設けられたブラケット本体と、このブラケット本体の前記開口部を閉塞するカバーとを有する手摺用エンドブラケットにおいて、
前記カバーには、その一端部に第一係合部が設けられるとともに、他端部に第二係合部が設けられる一方、
前記ブラケット本体には、前記壁面固定座に、前記第一係合部と係合する第一被係合部が設けられるとともに、前記手摺保持部に、前記第二係合部と係合する第二被係合部が設けられ、
前記第一係合部と第一被係合部とは、それらの係合し合う方向が前記壁面と直交する方向に略沿う方向とされ、前記第二係合部と第二被係合部とは、前記第一係合部と第一被係合部とが係合状態にあるときに係合される構成であり、
前記ブラケット本体の壁面固定座には、該ブラケット本体が入隅部に設置された際に該壁面固定座が固定される壁面と隣接する壁面に当接し、該隣接する壁面と前記ブラケット本体との間に前記カバーの前記開口部への着脱を許容し得るだけの間隙を確保する延出部が設けられた、
ことを特徴とする手摺用エンドブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手摺を壁面に取付けるエンドブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手摺を壁面に取付けるためのエンドブラケットとして、例えば特許文献1には、湾曲した割管状本体の両端部に座を設け、前記本体周壁の外側部分を両端の座間で開口させ、この開口に前記本体の周壁に連続するカバーを着脱自在に被せた手摺用接続具において、前記カバーの一端部に差込片を延設すると共に、前記カバーの他端部から内側へ延びる弾性板の先端部に係合突起を形成し、前記差込片を一方の座側の差込穴に差込み、前記弾性板を撓ませつつ前記係合突起を他方の座側の掘込部に係合させて、該カバーを本体に固定する構成の手摺用接続具(エンドブラケット)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−076477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたようなエンドブラケットのカバーを本体の開口部に固定する際には、まずカバーを傾けてその一端の差込片を手摺取付側の座の差込穴に差込み、その後該差込片を軸にカバーを旋回させ、他端の弾性板を撓ませつつ係合突起を壁面取付側の座の掘込部に係合させる。
【0005】
このように上記従来のエンドブラケットにあっては、ブラケット本体の壁面取付側の座の掘込部にカバーの他端の係合突起を係合させるにはブラケット本体の手摺取付側の差込穴に差し込んだカバーの差込片を軸としてカバーを旋回させる必要があるため、壁面取付側の座の端部より外側に、その旋回の振れ幅を許容し得る空間が必要となる。
【0006】
このため、このようなエンドブラケットを入隅部に取り付ける場合、ブラケット本体を、それを固定する壁面(以下、固定面という。)に隣接する壁面(以下、隣接面という。)から上記空間に相当する距離だけ離間させる必要がある。その結果、エンドブラケットを入隅部のコーナーぎりぎりに、つまりエンドブラケットを固定面に、隣接面と接するくらいに近付けて取り付けることができず、このためエンドブラケットと隣接面との間に不体裁な空間が必ずできることから入隅部の美観が損なわれてしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、入隅部に取付ける場合に、エンドブラケットと隣接面との間に上記したような不体裁な空間を生じさせることなく、入隅部の美観を損ねる虞のない手摺用エンドブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次のとおりの構成としている。
【0009】
本発明の手摺用エンドブラケットは、一端に、壁面に固定される壁面固定座が、他端に、手摺の端部を保持する手摺保持部が設けられるとともに、これら壁面固定座と手摺保持部との間の湾曲部に、該湾曲部の外側に開口する開口部が設けられたブラケット本体と、このブラケット本体の前記開口部を閉塞するカバーとを有する手摺用エンドブラケットにおいて、前記カバーには、その一端部に第一係合部が設けられるとともに、他端部に第二係合部が設けられる一方、前記ブラケット本体には、前記壁面固定座に、前記第一係合部と係合する第一被係合部が設けられるとともに、前記手摺保持部に、前記第二係合部と係合する第二被係合部が設けられ、前記第一係合部と第一被係合部とは、それらの係合し合う方向が前記壁面と直交する方向に略沿う方向とされ、前記第二係合部と第二被係合部とは、前記第一係合部と第一被係合部とが係合状態にあるときに係合される構成であることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、カバーを取付ける際、まずカバーの第一係合部を壁面固定座の第一被係合部に係合させるが、ここで第一係合部と第一被係合部とは、それらの係合し合う方向が、固定面と直交する方向に略沿う方向とされているから、ブラケット本体の壁面取付座が隣接面に近接していてもブラケット本体と隣接面との間にカバーを差し入れて第一係合部と第一被係合部とを係合させることができる。また、第二係合部と第二被係合部との係合は、第一係合部と第一被係合部とが係合状態にあるときに、カバーを第一係合部を軸に旋回させることにより行われるが、カバーの旋回幅は旋回軸に近いほど小さくなることから、ブラケット本体と隣接面との間におけるカバーの旋回幅は他の部位におけるそれと比べて極めて小さいため、上記従来のものに比べてブラケットを入隅部のコーナーぎりぎりに取り付けることができる。
【0011】
また、前記ブラケット本体の壁面固定座には、該ブラケット本体が入隅部に設置された際に該壁面固定座が固定される壁面と隣接する壁面に当接し、該隣接する壁面と前記ブラケット本体との間に前記カバーの前記開口部への着脱を許容し得るだけの間隙を確保する延出部が設けられている
【0012】
この構成によれば、延出部を隣接面に当接させるだけで、カバーを着脱するための最低限の間隙を隣接面との間に確保することができるから、施工時に、ブラケット本体と隣接面との間隔を一々計測したりする必要がなく、取付作業がし易いとともに、一定の作業品質を確保することができるので、作業者の能力によってブラケットと隣接面との隙間が異なるなどといった不具合の発生を防止することができる。また、延出部を隣接面に当接させるだけで、手摺の取付位置に関してその基準を瞬時に出すことができ、手摺を壁面の所定位置に正確に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、入隅部に取付ける場合に、エンドブラケットと隣接面との間に不体裁な空間を生じさせることなく、入隅部の美観を損ねる虞のない手摺用エンドブラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る手摺用エンドブラケットのブラケット本体とカバーとを示す分解斜視図である。
図2】カバーを裏側から見た斜視図である。
図3】カバーをブラケット本体に取付ける工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の手摺用エンドブラケットの実施形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る手摺用エンドブラケットのブラケット本体とカバーとを示す分解斜視図である。図2は、カバーを裏側から見た斜視図である。図3は、カバーをブラケット本体に取付ける工程を示す断面図である。
−手摺用エンドブラケット1の構成−
本実施形態の手摺用エンドブラケット1は、図1〜3に示すように、一端に、壁面(固定面)W1に固定される壁面固定座3が、他端に、手摺(図示省略)の端部を保持する手摺保持部4が設けられるとともに、これら壁面固定座3と手摺保持部4との間の湾曲部20に、該湾曲部20の外側に開口する開口部21が設けられたブラケット本体2と、このブラケット本体2の開口部21を閉塞するカバー5とを有する。
【0019】
また、カバー5には、その一端部に差込片51(第一係合部)が設けられるとともに、他端部に弾性を有する弾性片52(第二係合部)が設けられる一方、ブラケット本体2には、壁面固定座3に、差込片51と係合する差込孔30(第一被係合部)が設けられるとともに、手摺保持部4に、弾性片52と係合する係合孔40(第二被係合部)が設けられている。差込片51と差込孔30とは、それらの係合し合う方向が壁面W1と直交する方向に略沿う方向とされ、弾性片52と係合孔40とは、差込片51と差込孔30とが係合状態にあるときに係合される構成となっている。なお、図1において、符号54は、カバー5をブラケット本体2から取り外す際に使用する工具(例えば、マイナスドライバー)を差し込むための切欠部を示す。
【0020】
ブラケット本体2は、その湾曲部20において、壁面固定座3と手摺保持部4とが略90度の角度をなすように湾曲している。このブラケット本体2は、手摺の荷重を支える必要から金属等の高い強度を備えた材料が好ましいが、合成樹脂材であってもよい。
【0021】
壁面固定座3は、その底面が略矩形状に形成されており、ブラケット本体2内部から壁面W1に向かって固定ネジ(図示省略)を通すための固定具挿通孔32〜32が複数貫設されている。また、壁面固定座3には、図3に示すように、ブラケット本体2が入隅部に設置された際に該壁面固定座3が固定される壁面W1と隣接する壁面(隣接面)W2に当接し、該壁面W2とブラケット本体2との間にカバー5の開口部21への着脱を許容し得るだけの間隙を確保する延出部31が設けられている。ここで、上述の差込孔30は、壁面固定座3の延出部31が設けられる辺に沿って貫設されている。
【0022】
次に、図3を参照して、この延出部31の延出長さtについて詳述する。カバー5の開口部21への着脱にあたって、弾性片52と係合孔40との係脱が、差込片51と差込孔30とが係合状態にあるときに、カバー5を差込片51を軸に旋回させることにより行われるので、その最小の旋回幅(図3において符号aで示す二点鎖線と符号bで示す実線(装着時におけるカバー5の外面)との幅)がブラケット本体2と壁面W2との間に確保し得るよう、延出部31の延出長さtが設定されている。
【0023】
ここで、カバー5の旋回幅は旋回軸(差込片51)に近いほど小さくなることから、ブラケット本体2と壁面W2との間におけるカバーの旋回幅は極めて小さく、したがって、上記延出部31の延出長さtは、図3に示すように、非常に短いものとなっている。このため、本発明のブラケット1にあっては従来に比べて入隅部のコーナーぎりぎり、つまり壁面W2に接するくらいに近付けて取り付けることができる。
【0024】
なお、図示例では延出部31の上面をテーパ面としているが、これに限らず、水平面としてもよい。また、延出部31は必ずしも設ける必要はなく、その場合、ブラケット本体2を壁面W1に固定する際、壁面固定座3と壁面W2との間に、上記tの寸法に相当する間隙を確保すればよい。さらに、延出部31は、その幅寸法(図3において紙面と垂直な方向の寸法)を壁面固定座3の幅寸法より小さくしておくと、入隅部への取付後において延出部31が外から見て目立たず、入隅部の仕舞いがすっきりしたものとなる。
【0025】
手摺保持部4には、手摺の端部が嵌め込まれる円筒状の手摺嵌合筒41が設けられている。また、手摺嵌合筒41の底面にあたる部位には、ブラケット本体2内部から手摺の端部に対し固定ネジ(図示省略)を通すための固定具挿通孔42〜42が複数貫設されるとともに、弾性片52と係合する係合孔40が貫設されている。
【0026】
カバー5は、ブラケット本体2の開口部21に取付けられるよう、該開口部21の形状に合わせて湾曲している。カバー5を構成する材料は金属でもよいが、合成樹脂を用いてもよい。上述の差込片51は、壁面固定座3の差込孔30に対して、壁面W1と直交する方向に略沿う方向で差し込めるよう、カバー5の一端部から延設されている。カバー5の他端部に設けられた弾性片52は、その基端部が、カバー5の他端部の裏面に設けられた弾性片取付部53に固定されている。弾性片52は、カバー5の端部において、該カバー5の内側へ向かって垂設されており、その先端部分には、手摺保持部4の係合孔40に嵌り込む先端凸部52aが設けられている。
−手摺用エンドブラケット1の取付方法−
以下、手摺用エンドブラケット1を用いて、手摺の端部を部屋等の入隅部に設置する方法について説明する。
【0027】
まず、手摺保持部4の手摺嵌合筒41に手摺の端部を嵌め込み、その状態でブラケット本体2内部から手摺保持部4の固定具挿通孔42〜42を通して固定ネジを手摺の端部にねじ込むことにより、手摺の端部にブラケット本体2を固定する。なお、手摺の反対側も入隅部に位置させる場合は、上記と同様に、手摺の反対側の端部にもう一つのブラケット本体2を固定する。
【0028】
次に、ブラケット本体2の壁面固定座3を入隅部の壁面W1に当接させるとともに、壁面固定座3の延出部31の端を壁面W2に当接させる。これにより、壁面W2とブラケット本体2との間にカバー5の開口部21への着脱を許容し得るだけの間隙が確保されることになる。
【0029】
続いて、ブラケット本体2の内部から壁面固定座3の固定具挿通孔32〜32を通して固定ネジを壁面W1にねじ込むことにより、該ブラケット本体2を壁面W1に固定する。
【0030】
以上のようにしてブラケット本体2を壁面W1に固定したならば、カバー5を、図3において白抜き矢符で示すように、その差込片51を先にしてブラケット本体2と壁面W2との間に差し入れていき、差込片51を壁面固定座3の差込孔30に差し込んで両者を係合させる(図3において、下側に二点鎖線で示されるカバー5参照)。このとき、差込片51と差込孔30の係合し合う方向が壁面W1と直交する方向に略沿う方向とされているため、ブラケット本体2の壁面固定座3が壁面W2に近接していてもブラケット本体2と壁面W2との間にカバー5を差し入れるだけで差込片51と差込孔30とが係合される。
【0031】
最後に、カバー5を、差込片51を軸に手摺保持部4へ向かって旋回させる。そしてカバー5の弾性片52を撓ませつつ手摺保持部4の係合孔40に該弾性片52の先端凸部52aを係合させることにより、該カバー5をブラケット本体2に固定し、これによって開口部21がカバー5で閉塞され、手摺の入隅部における取付作業が完了する。
【0032】
なお、壁面固定座3の形状は、上記したような略矩形状である必要はなく、例えば、円形、楕円形など、任意の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 手摺用エンドブラケット
2 ブラケット本体
3 壁面固定座
4 手摺保持部
5 カバー
20 湾曲部
21 開口部
30 差込孔(第一被係合部)
31 延出部
40 係合孔(第二被係合部)
51 差込片(第一係合部)
52 弾性片(第二係合部)
W1 壁面
W2 隣接する壁面
図1
図2
図3