特許第6564345号(P6564345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564345
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電気検査方法及び電気検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20190808BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20190808BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G01R31/00
   G01R31/28 K
   G01R1/073 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-104690(P2016-104690)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-211277(P2017-211277A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 徹
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−033527(JP,A)
【文献】 特開平04−132970(JP,A)
【文献】 特開平11−002653(JP,A)
【文献】 特開平10−038980(JP,A)
【文献】 特開2014−185912(JP,A)
【文献】 米国特許第06034524(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/28
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と当接する当接面に複数のプローブが配設されている第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドでプリント基板を挟み込むことにより、前記複数のプローブをプリント基板の導電パターンに当接させる電気検査方法であって、
前記プリント基板の外縁部を把持する把持工程と、
前記第1電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する第1圧接工程と、
前記第1圧接工程後に第2電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する第2圧接工程と
を備え、
前記第1圧接工程において、プリント基板の外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面より第2電気検査ヘッド側に第1電気検査ヘッドの当接面を突出させ、プリント基板を当接面に沿う平板状に引き延ばし、プリント基板の反り及び/又はうねりを除去し、
前記第2圧接工程において、前記第2電気検査ヘッドを、前記第1圧接工程において反り及び/又はうねりが除去されたプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接することを特徴とする電気検査方法。
【請求項2】
前記第1電気検査ヘッドをプリント基板の導電パターンの配線幅が大きい側に圧接する請求項1に記載の電気検査方法。
【請求項3】
前記第1圧接工程での第1電気検査ヘッドの当接面の基準平面からの突出量が対向する把持位置の平均間隔の0.1%以上1%以下である請求項1又は請求項2に記載の電気検査方法。
【請求項4】
プリント基板と当接する当接面に複数のプローブが配設され、プリント基板を挟み込む第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドと、
前記第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドを駆動する第1駆動機構及び第2駆動機構と、
前記プリント基板の外縁部を把持する把持機構と、
前記第1駆動機構及び第2駆動機構を制御するコントローラーと
を備え、
前記コントローラーが、
前記第1電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接するよう第1駆動機構を制御する第1圧接制御要素と、
前記第1電気検査ヘッドの位置決め及び圧接後に、第2電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接するよう第2駆動機構を制御する第2圧接制御要素と
を有し、
前記第1圧接制御要素が、プリント基板の外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面よりも第2電気検査ヘッド側に第1電気検査ヘッドの当接面を突出させ、プリント基板を当接面に沿う平板状に引き延ばし、プリント基板の反り及び/又はうねりを除去するよう構成され
前記第2圧接制御要素が、第2電気検査ヘッドを前記反り及び/又はうねりが除去されたプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接するよう第2駆動機構を制御することを特徴とする電気検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気検査方法及び電気検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の製造現場では、複数のプローブ(電気接触子)を有する電気検査ヘッドをプリント基板に圧接し、プローブをプリント基板の測定点に接触させてプリント基板の電気的な特性を検査する電気検査装置が使用されている。従来の電気検査装置では、検査するプリント基板に反りやうねりがあると、電気検査ヘッドを圧接する際にプリント基板が位置ずれする場合がある。
【0003】
そこで、例えば特開2010−237061公報には、プローブを案内する複数の貫通孔を有し、基板の一部の領域に圧接されるトレイ(板状体)を用いる電気検査装置が提案されている。前記公報には、基板の一部の領域を圧接することにより、基板全体を圧接する場合に比べて基板の位置ずれを抑制できると記載されている。
【0004】
近年、プリント基板の配線密度がますます大きくなっており、前記公報に記載されるようにプリント基板の比較的小さい領域に板状体を圧接する場合でも、プリント基板の反りやうねりに起因する位置ずれにより、プローブがプリント基板の測定点から外れてプリント基板の特性を正確に検査できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−237061公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記不都合に鑑みて、本発明は、プリント基板の特性を比較的確実に検査できる電気検査方法及び電気検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた発明は、プリント基板と当接する当接面に複数のプローブが配設されている第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドでプリント基板を挟み込むことにより、前記複数のプローブをプリント基板の導電パターンに当接させる電気検査方法であって、前記プリント基板の外縁部を把持する把持工程と、前記第1電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する第1圧接工程と、前記第1圧接工程後に第2電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する第2圧接工程とを備え、前記第1圧接工程でプリント基板の外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面より第2電気検査ヘッド側に第1電気検査ヘッドの当接面を突出させることを特徴とする電気検査方法である。
【0008】
前記第1電気検査ヘッドをプリント基板の導電パターンの配線幅が大きい側に圧接するとよい。
【0009】
前記第1圧接工程での第1電気検査ヘッドの当接面の基準平面からの突出量としては、対向する把持位置の平均間隔の0.1%以上1%以下が好ましい。
【0010】
前記課題を解決するためになされた別の発明は、プリント基板と当接する当接面に複数のプローブが配設され、プリント基板を挟み込む第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドと、前記第1電気検査ヘッド及び第2電気検査ヘッドを駆動する第1駆動機構及び第2駆動機構と、前記プリント基板の外縁部を把持する把持機構と、前記第1駆動機構及び第2駆動機構を制御するコントローラーとを備え、前記コントローラーが、前記第1電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接するよう第1駆動機構を制御する第1圧接制御要素と、前記第1電気検査ヘッドの位置決め及び圧接後に、第2電気検査ヘッドをプリント基板に対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接するよう第2駆動機構を制御する第2圧接制御要素とを有し、前記第1圧接制御要素が、プリント基板の外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面よりも第2電気検査ヘッド側に第1電気検査ヘッドの当接面を突出させるよう構成されることを特徴とする電気検査装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気検査方法及び電気検査装置は、プリント基板の外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面よりも第2電気検査ヘッド側に第1電気検査ヘッドの当接面を突出させることによりプリント基板に張力を作用させて反りやうねりを除去した状態で、第2電気検査ヘッドを押圧するので、特に第2電気検査ヘッドをプリント基板に対して正確に位置決めして圧接することができる。このため、当該電気検査方法及び電気検査装置は、プリント基板の特性を比較的確実に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の電気検査装置の構成を示す模式図である。
図2図1の電気検査装置のコントローラーの第1圧接制御要素による制御時の様子を示す模式図である。
図3図1の電気検査装置のコントローラーの第2圧接制御要素による制御時の様子を示す模式図である。
図4図1の電気検査装置を用いる電気検査方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0014】
[電気検査装置]
図1に示す本発明の一実施形態に係る電気検査装置は、可撓性を有し、反りやうねりが生じ得るプリント基板Pの電気的特性を検査することができる。
【0015】
当該電気検査装置は、プリント基板Pを挟み込む第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2と、この第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2をそれぞれ駆動する第1駆動機構3及び第2駆動機構4と、プリント基板Pの外縁部を把持する把持機構5と、プリント基板Pを撮影する第1カメラ6及び第2カメラ7と、第1駆動機構3及び第2駆動機構4を制御するコントローラー8とを備える。
【0016】
また、当該電気検査装置は、各構成要素を支持する不図示のフレーム等をさらに備えることができる。
【0017】
<プリント基板>
当該電気検査装置により電気的特性を検査するプリント基板Pとしては、典型的には、平面視方形状の可撓性を有するシート状の基材の上に複数の機能部が形成され、最終的に各機能部を含む部分を切り出して複数の電子部品を得るものが想定される。
【0018】
このようなプリント基板Pは、個々の機能部又は少数の機能部を含む比較的小さい領域が第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2によって検査される検査対象部とされる。換言すると、プリント基板Pは、複数の検査対象部を有する。このため、プリント基板Pは、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2によって場所を変えて繰り返し挟持されて、各検査対象部の電気的特性が順番に検査される。
【0019】
<電気検査ヘッド>
第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2は、プリント基板Pを挟んで対向するよう配設され、複数のプローブ9と、この複数のプローブ9がそれぞれ挿入される複数のガイド孔を有するガイドプレート10とをそれぞれ有する。
【0020】
(プローブ)
複数のプローブ9は、ガイドプレート10に垂直、かつそれぞれの先端がガイドプレート10から僅かに突出するよう保持される。また、複数のプローブ9は、プリント基板Pの導電パターンの所定の測定点に当接できるよう配置される。
【0021】
(ガイドプレート)
ガイドプレート10は、絶縁性を有する材料から形成され、プリント基板Pに対向し、電気検査の際にプリント基板と当接する平坦な当接面11を有する。
【0022】
また、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2は、複数のプローブ9を介してプリント基板Pの電気的特性を測定するための回路を有するものとすることが好ましい。つまり、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2は、プリント基板Pの電気的特性を測定し、測定結果を比較的少数の配線を介してコントローラー8に出力することができるような測定回路を有するとよい。
【0023】
さらに、後で詳しく説明するように先にプリント基板Pに圧接される第1電気検査ヘッド1は、プリント基板Pの表裏面のうち導電パターンの配線幅が相対的に大きい側の面に圧接されることが好ましい。逆に言うと、当該電気検査装置を使用するときは、プリント基板Pを導電パターンの配線幅が大きい側が第1電気検査ヘッド1に対向するよう配置することが好ましい。
【0024】
また、当該電気検査装置では、後述するように、第1電気検査ヘッド1によりプリント基板Pに張力を付与することでプリント基板Pの反りやうねりを除去する際に重力によってプリント基板Pが当接面11に密着しやすいよう、第1電気検査ヘッド1が第2電気検査ヘッド2の下方に配置されることが好ましい。換言すると、当該電気検査装置では、プリント基板Pが略水平に保持され、第1電気検査ヘッド1がプリント基板Pに下方から圧接され、第2電気検査ヘッド2がプリント基板Pに上方から圧接されるものであることが好ましい。
【0025】
<駆動機構>
第1駆動機構3及び第2駆動機構4は、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2の3次元の位置決めを行うことができるものであればよく、さらにプリント基板Pの法線方向の軸を中心に第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2の回転位置決めを行うことができるものが好ましい。
【0026】
第1駆動機構3及び第2駆動機構4としては、多関節ロボットを用いてもよいが、コスト及び占有スペースが比較的小さい直交座標型駆動システムを採用することが好ましい。この直交座標型駆動システムとしては、プリント基板Pの平面方向に2軸の位置決めが可能な直交座標型ロボットと、この直交座標型ロボットの末端に配設される昇降デバイスと、この昇降デバイスにより昇降可能に保持され、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2をそれぞれ回転位置決め可能に保持する回転位置決めデバイスとを備える構成とすることができる。
【0027】
また、第1駆動機構3及び第2駆動機構4は、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2によりプリント基板Pを挟持する際、プリント基板Pに作用する圧接力を適正化できるよう、プリント基板Pの法線方向に弾性変形する緩衝部を有してもよい。
【0028】
<把持機構>
把持機構5は、プリント基板Pの外縁部を把持することにより、プリント基板Pを法線方向に第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2による挟持位置に概略保持する。
【0029】
この把持機構としては、例えばプリント基板の周縁を全周に亘って挟持する1対の枠体、プリント基板Pの四辺をそれぞれ連続的に把持する幅広の4つのクリップ、プリント基板Pの四辺にそれぞれ間隔を空けて複数配設される多数のクリップ等を用いることができる。
【0030】
<カメラ>
第1カメラ6及び第2カメラ7は、プリント基板Pの位置情報を取得するために、プリント基板Pの画像を撮影し、後述するコントローラー8に画像データを提供する。
【0031】
第1カメラ6及び第2カメラ7は、当該電気検査装置の不図示のフレーム等に保持されてもよいが、第1駆動機構3及び第2駆動機構4によって第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2と共に少なくともプリント基板Pの平面方向に移動可能に保持されるとよい。第1カメラ6及び第2カメラ7を第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2と共に移動させることにより画像処理の範囲を限定し、必要とされるカメラの画素数及びコントローラーの演算能力が比較的小さくなるので、当該電気検査装置を比較的安価にできると共に、プリント基板Pの検査サイクルを短縮することができる。
【0032】
第1カメラ6及び第2カメラ7が撮影した画像データは、コントローラー8において公知の画像処理技術によって解析され、プリント基板Pの検査対象部の特徴点の座標を特定するために用いられる。具体的には、第1カメラ6及び第2カメラ7が撮影した画像データから、第1カメラ6又は第2カメラ7とプリント基板Pの検査対象部との相対位置、ひいてはプリント基板Pの検査対象部の絶対位置が特定される。
【0033】
なお、第1カメラ6及び第2カメラ7によってプリント基板Pのディジタル画像を撮影する際、第1カメラ6及び第2カメラ7のプリント基板Pの法線方向の位置(プリント基板Pからの離間距離)を一定にすることによって、第1カメラ6及び第2カメラ7とプリント基板Pの検査対象部との平面方向の相対位置を比較的容易に算出することができる。
【0034】
画像処理において抽出する特徴点は、プリント基板Pの導電パターンの中で予め設定される特徴的な形状の部分であってもよく、プロント基板Pに画像処理専用に設けられるマーキングであってもよい。
【0035】
<コントローラー>
コントローラー8としては、例えばプログラマブルロジックコントローラー、パーソナルコンピューター等が用いられる。
【0036】
コントローラー8は、第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pに対して平面方向に位置決めしてから法線方向に圧接するよう第1駆動機構3を制御する第1圧接制御要素と、第1電気検査ヘッド1の位置決め及び圧接後に、第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pに対して平面方向に位置決めしてから法線方向に圧接するよう第2駆動機構4を制御する第2圧接制御要素とを有する。
【0037】
前記第1圧接制御要素及び第2圧接制御要素は、例えばパートプログラム、サブルーチン等のソフトウェアによって実現することができる。
【0038】
(第1圧接制御要素)
第1圧接制御要素は、第1カメラ6を用いてプリント基板Pの位置情報を取得するステップ〔第1位置情報取得ステップ〕と、第1駆動機構3を用いて第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの検査対象部に正対するよう平面方向に位置決めするステップ〔第1平面方向位置決めステップ〕と、第1駆動機構3を用いて第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの法線方向に移動させてプリント基板Pに圧接するステップ〔第1圧接ステップ〕とを順番に行うものである。
【0039】
〔第1位置情報取得ステップ〕
第1圧接制御要素は、第1位置情報取得ステップにおいて、第1カメラ6によりプリント基板Pを撮影し、撮影した画像データを画像処理することにより、第1カメラ6に対するプリント基板Pの測定対象部の平面方向の相対位置を特定する。これにより、第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの測定対象部に正対させるために必要な平面方向の移動量を算出する。
【0040】
〔第1平面方向位置決めステップ〕
第1圧接制御要素は、第1平面方向位置決めステップにおいて、第1駆動機構3により、第1位置情報取得ステップで算出した必要な移動量だけ第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの平面方向に移動させることで、第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの検査対象部に正対させる。
【0041】
〔第1圧接ステップ〕
第1圧接制御要素は、第1圧接ステップにおいて、第1電気検査ヘッド1の当接面11をプリント基板Pに圧接することにより、第1電気検査ヘッド1の複数のプローブ9をプリント基板Pの一方の面の複数の測定点に圧接する。
【0042】
また、第1圧接ステップでは、図2に示すように、把持機構5によるプリント基板Pの外縁部の各把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面よりも第2電気検査ヘッド2側に第1電気検査ヘッド1の当接面11を突出させる。
【0043】
このように第1電気検査ヘッド1の当接面11を基準平面よりも突出させることによって、プリント基板Pに張力が作用することで、プリント基板Pの測定対象部が第1電気検査ヘッド1の当接面11に密着する。つまり、第1圧接制御要素は、第1電気検査ヘッド1の当接面11を基準平面よりも突出させることにより、プリント基板Pの測定対象部を当接面11に沿う平板状に引き延ばすことで反りやうねりを除去することができる。
【0044】
この第1電気検査ヘッド1の当接面11の基準平面からの突出量の下限としては、プリント基板Pの把持機構5による対向する把持位置の平均間隔の0.1%が好ましく、0.2%がより好ましい。一方、第1電気検査ヘッド1の当接面11の基準平面からの突出量の上限としては、プリント基板Pの把持機構5による対向する把持位置の平均間隔の1%が好ましく、0.5%がより好ましい。第1電気検査ヘッド1の当接面11の基準平面からの突出量が前記下限に満たない場合、プリント基板Pの反りやうねりを十分に除去できないおそれがある。逆に、第1電気検査ヘッド1の当接面11の基準平面からの突出量が前記上限を超える場合、プリント基板Pに過剰な応力が作用してプリント基板Pを損傷するおそれがある。なお、「把持位置の平均間隔」とは、対向する把持領域の間隔の極小値の平均を意味し、把持領域の間隔が極小となる部分が連続する場合には間隔の極小値を間隔が極小となる部分の長さで加重平均した値(例えばプリント基板Pの各片を平行な棒状の部材で挟み込んで保持する場合、棒状の部材の間隔を長さで重み付けした平均値)を意味するものとする。
【0045】
また、この第1圧接ステップでは、第1電気検査ヘッド1の圧接によりプリント基板Pの反りやうねりを除去する際に、プリント基板Pが僅かに位置ずれするおそれがある。このため、この第1圧接ステップにおいては、第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pの導電パターンの配線幅が大きい側に圧接することが好ましい。
【0046】
(第2圧接制御要素)
第2圧接制御要素は、第2カメラ7を用いてプリント基板Pの位置情報を取得するステップ〔第2位置情報取得ステップ〕と、第2駆動機構4を用いて第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの検査対象部に正対するよう平面方向に位置決めするステップ〔第2平面方向位置決めステップ〕と、第2駆動機構4を用いて第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの法線方向に移動させてプリント基板Pに圧接することで、第1電気検査ヘッド1との間にプリント基板Pを挟持するステップ〔第2圧接ステップ〕とを順番に行うものである。
【0047】
〔第2位置情報取得ステップ〕
第2圧接制御要素は、第2位置情報取得ステップにおいて、第2カメラ7によりプリント基板Pを撮影し、撮影した画像データを画像処理することにより、第2カメラ7に対するプリント基板Pの測定対象部の平面方向の相対位置を特定する。これにより、第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの測定対象部に正対させるために必要な平面方向の移動量を算出する。
【0048】
〔第2平面方向位置決めステップ〕
第2圧接制御要素は、第2平面方向位置決めステップにおいて、第2駆動機構3により、第2位置情報取得ステップで算出した必要な移動量だけ第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの平面方向に移動させることで、第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの検査対象部に正対させる。
【0049】
〔第2圧接ステップ〕
第2圧接制御要素は、第2圧接ステップにおいて、図3に示すように、第2駆動機構4により第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pに圧接し、第1電気検査ヘッド1の当接面11と第2電気検査ヘッド2の当接面11との間にプリント基板Pを挟持する。
【0050】
また、この第2圧接ステップは、第1圧接ステップにおいてプリント基板Pの反りやうねりが除去された後に行われるため、プリント基板Pが殆ど位置ずれしない。このため、この第2圧接ステップにおいては、第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pの導電パターンの配線幅が小さい側に圧接することが好ましい。
【0051】
つまり、プリント基板Pの反りやうねりに起因してプローブ9の当接位置が僅かにずれるおそれがある第1圧接ステップでは、プリント基板Pの導電パターンの配線幅が大きい側の面にプローブ9を当接させることで、プローブ9の当接位置のずれによる測定不良を抑制することができる。一方、プリント基板Pの反りやうねりに起因するプローブ9の当接位置のずれが生じ難い第2圧接ステップでは、プリント基板Pの導電パターンの配線幅が小さい側の面にプローブ9を当接させることで、測定不良を防止することができる。
【0052】
[電気検査方法]
本発明の実施形態に係る電気検査方法は、図1の電気検査装置を用いて行うことができる。
【0053】
当該電気検査方法は、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2でプリント基板Pを挟み込むことにより、複数のプローブ9をプリント基板Pの導電パターンの測定点に当接させることによって、プリント基板Pの電気的特性を検査する方法である。
【0054】
当該電気検査方法は、図4に示すように、把持機構5でプリント基板Pの外縁部を把持する工程<ステップS1:把持工程>と、第1電気検査ヘッド1をプリント基板Pに対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する工程<ステップS2:第1圧接工程>と、第1圧接工程後に第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pに対して平面方向に位置決めして法線方向に圧接する工程<ステップS3:第2圧接工程>と、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2によりプリント基板Pの各部の電気的特性を測定する工程<ステップS4:測定工程>とを備える。
【0055】
また、当該電気検査方法は、ステップS4の測定工程後に第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pから離間させる工程<ステップS5:離間工程>を備える。この離間工程により、当該電気検査装置は、前記把持工程から測定工程までを再度行うことが可能となる。つまり、当該電気検査装置を用いる検査方法は、ステップS2の第1圧接工程、ステップS3の第2圧接工程及びステップS4の測定工程を再度行うことができる。
【0056】
つまり、当該電気検査方法は、同一のプリント基板Pに対して、ステップS2の第1圧接工程、ステップS3の第2圧接工程及びステップS4の測定工程及びステップS5の離間工程を測定対象部を変えながら繰り返して行うことで、プリント基板Pの全ての測定対象部の電気的特性を順に検査することが好ましい。
【0057】
ステップS1の把持工程は、自動化してもよいが、自動化には過大な設備コストが必要となるため、オペレーターがマニュアルで行ってもよい。一方、ステップS2の第1圧接工程、ステップS3の第2圧接工程、ステップS4の測定工程及びステップS5の離間工程は、コントローラー8によって自動的に行われることが好ましい。
【0058】
<把持工程>
ステップS1の把持工程では、把持機構5によってプリント基板Pの外縁部を把持させることで、プリント基板Pの厚さ方向中心を略基準平面上に保持する。
【0059】
<第1圧接工程>
ステップS2の第1圧接工程では、コントローラー8の第1圧接制御要素によって、第1カメラ6及び第1駆動機構3を用いて、上述の第1位置情報取得ステップ、第1平面方向位置決めステップ及び第1圧接ステップを行う。
【0060】
これにより、第1電気検査ヘッド1の複数のプローブ9をプリント基板Pの一方の面の複数の測定点に当接させると共に、プリント基板Pの反りやうねりを取り除く。
【0061】
<第2圧接工程>
ステップS3の第2圧接工程では、コントローラー8の第2圧接制御要素によって、第2カメラ7及び第2駆動機構4を用いて、上述の第2位置情報取得ステップ、第2平面方向位置決めステップ及び第2圧接ステップを行う。
【0062】
<測定工程>
ステップS4の測定工程では、例えば複数のプローブ9間に電圧を印可して電流値を測定する等の方法により、プリント基板Pの回路の各部の電気的特性をそれぞれ測定する。
【0063】
<離間工程>
ステップS5の離間工程では、第1駆動機構3及び第2駆動機構4により、第1電気検査ヘッド1及び第2電気検査ヘッド2をプリント基板Pから離間させる。
【0064】
<利点>
当該電気検査装置及び当該電気検査方法は、プリント基板Pの外縁部の把持位置の厚さ方向中心を含む基準平面よりも第2電気検査ヘッド2側に第1電気検査ヘッド1の当接面11を突出させることにより、プリント基板Pに張力を作用させて反りやうねりを除去することができる。また、当該電気検査装置及び当該電気検査方法は、第1電気検査ヘッド1の圧接によりプリント基板Pの反りやうねりを除去した状態で、第2電気検査ヘッド2を押圧するので、特に第2電気検査ヘッド2の複数のプローブ9をプリント基板Pの測定点に対してより正確に位置決めして圧接することができる。このため、当該電気検査方法及び電気検査装置は、プリント基板Pの特性を比較的確実に検査することができる。
【0065】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0066】
当該電気検査装置は、第2電気検査ヘッド側にのみカメラを備え、このカメラを用いて取得した位置情報に基づいて第1電気検査ヘッドをプリント基板に対して位置決めしてもよい。
【0067】
当該電気検査装置及び当該電気検査方法により検査するプリント基板は、表裏で粗密の差がないものであってもよく、一方の面にのみ導電パターンを有する片面基板であってもよい。片面基板の検査をする場合には、第1電気検査ヘッドをプリント基板の導電パターンがない側の面に圧接するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る電気検査装置は、可撓性を有し、反りやうねりを生じ得るプリント基板の電気検査に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 第1電気検査ヘッド
2 第2電気検査ヘッド
3 第1駆動機構
4 第2駆動機構
5 把持機構
6 第1カメラ
7 第2カメラ
8 コントローラー
9 プローブ
10 ガイドプレート
11 当接面
P プリント基板
S1 把持工程
S2 第1圧接工程
S3 第2圧接工程
S4 測定工程
S5 離間工程
図1
図2
図3
図4