(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
大きな地震が起こると、砂地地盤等では液状化が発生し、この結果、ライフラインの断絶、構造物の沈下及び倒壊等の被害を受けることになりかねない。
近年、この液状化を防ぐために、地盤の浅い部分の地下水を抜いて地下水位を低下させ、非液状化層の厚みを増大し、地下水位以深の液状化層への拘束圧を増強して液状化を抑制する地下水位低下工法が注目されている。
地下水位を低下させるためには、多孔のドレイン管を地中に埋設し、地中の雨水や湧水をドレイン管内に集めて排出するのが一般的である。
【0003】
地中に埋設されるドレイン管として、プラスチック製細線を円筒状に編み込んで形成された中空ネット管(特許文献1)、線状合成樹脂を重ねた中空円筒状の排水材(特許文献2)、複数の糸状ストランドを螺旋状に溶融押出して筒状に形成した硬質合成樹脂の網目状樹脂管(特許文献3)が知られている。また、管状ではないがドレイン部材として、多数本のモノフィラメントをランダムなループ状に堆積して形成された硬質合成樹脂製の集排水処理材(特許文献4)やランダムな螺旋状の熱可塑性合成樹脂製線状物が点結合した平板上の立体網状構造体(特許文献5)が知られている。
さらに、前記特許文献1,2には、まず、ケーシングを地中へ縦方向に建込んで削孔し、次いでケーシング内にドレイン材を挿し込み、そしてケーシングを引き抜いてドレイン材を地中へ残置する工法が記載されている。その際、特許文献2では合成樹脂製のジョイントを用いて前記の排水材を継ぎ足して所定の長さにすることも記載されている。
さらに、特許文献6には、断面において凹凸となる環状の突条を有するプラスチック管が記載され、前記環状突条を鞘管の外周に形成された溝に嵌め込んで両側の樹脂管を連結する構造が説明されている。
【0004】
しかし、ドレイン管は地中へ水平に埋設するのが広い範囲で集水効率を高める点から好ましいが、ドレイン管を水平に埋設するには、従来、埋設対象となる地盤を開削して、ドレイン管の直径よりも幅広く、ドレイン管の全長に達する長い溝を形成する。そして、溝内にドレイン管を配置してから、採石を被せ、さらに土を埋め戻している。
この開削工法は、構造物や既存埋設物が多い市街地や、交通量の多い道路では施工が困難である。また、開削によって出る多量の土砂の処理が難しいだけでなく、大規模な掘削工事が必要なためコスト高となる。しかも、埋設後は、地盤開削以外にドレイン管に近づく術がなく、埋設後の設備を維持管理するのが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、市街地や交通量の多い道路でも容易に施工でき、コストが低廉で維持管理が容易な設備となる非開削ドレイン管埋設工法に用いるドレイン管、その製造方法およびその製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地面に距離をおいて掘削した発進立坑と到達立坑の間に横抗を貫通させ、横抗内に透水性のドレイン管を埋設する非開削ドレイン管埋設工法であって、地表から発進立坑及び到達立坑を掘削した後、前記発進立坑から到達立坑に向かって掘削と共に鞘管を推進させて横抗を形成し、同時に該横抗内に鞘管を設置し、次いで、前記鞘管内にドレイン管を配置し、次に、前記横抗から前記鞘管を引き抜いて、前記横抗内にドレイン管を残すことを特徴とする。ドレイン管は、透水性であって埋設土中で充分な耐圧性能を有するものであれば特に限定されないが、ポリプロピレンなどの紐状ストランドを螺旋状に溶融押し出しながら全体として管状に成形した熱可塑性樹脂の3次元網状構造体が好ましい。紐状ストランドとは前記特許文献等において太径モノフィラメントとか糸状ストランドあるいは線状合成樹脂とよばれているものである。
【0008】
前記鞘管、ドレイン管を前記発進立坑及び到達立坑で扱える長さの単位鞘管、単位ドレイン管とし、これを発進立坑から順次到達立坑へ向けて押込む工程と後進の単位鞘管及び単位ドレイン管を先進の単位鞘管及び単位ドレイン管に連繋させる工程を繰り返して、発進立坑から到達立坑に至る鞘管、ドレイン管としてあり、ドレイン管を到達立坑に到達させた後、到達立坑側に鞘管を引き抜き、到達立坑で鞘管を単位鞘管に分解して順次回収する工法とする場合もある。
鞘管と共に横坑に配置されたドレイン管に緊結パイプを挿し通し、さらに緊結パイプにプッシュロッドを貫通させ、プッシュロッドを利用して鞘管を到達立坑へ引き抜いたり、緊結パイプを発進立坑へ引き出したりすることがある。
請求項1に係る発明は、透水性の3次元網状構造体の
3次元網状構造の外周面に熱溶融によって形成された環状溝を有し、前記環状溝には連結部材が取付けられることを特徴とするドレイン管である。
請求項2に係る発明は、透水性の3次元網状構造体の外周面を有するドレイン管を回転させ、
加熱ローラを前記ドレイン管の外周面に押し当てて、前記3次元網状構造体の外周面に熱溶融によって連結部材が取付けられる環状溝を形成することを特徴とするドレイン管の製造方法である。
請求項3に係る発明は、前記
加熱ローラの外周囲には、フランジが形成されており、前記フランジを前記ドレイン管の外周面に押し当てることを特徴とする請求項2に記載のドレイン管の製造方法である。
請求項4に係る発明は、前記
加熱ローラは、揺動アームに取付けられ上昇下降可能であることを特徴とする請求項2または3に記載のドレイン管の製造方法である。
請求項5に係る発明は、透水性の3次元網状構造体の
3次元網状構造の外周面に熱溶融によって形成された環状溝を有し、前記環状溝に連結部材が取付けられるドレイン管の製造装置であって、前記3次元網状構造体の
3次元網状構造の外周面を熱溶融させ前記環状溝を形成する加熱ローラを有することを特徴とするドレイン管の製造装置である。
請求項6に係る発明は、前記
加熱ローラの外周囲には、フランジが形成されていることを特徴とする請求項5のドレイン管の製造装置である。
請求項7に係る発明は、前記
加熱ローラは、揺動アームに取付けられ上昇下降可能であることを特徴とする請求項5または6に記載のドレイン管の製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の非開削ドレイン管埋設工法によれば、ドレイン管の埋設に地盤を開削する必要がないので、市街地や道路に比較的容易にドレイン管を埋設することが可能となる。
立坑と横坑の掘削が必要であるが、掘削量は少なく、掘削によって生ずる土砂の処理に要する費用も少なく施工コストも低く押えることができる。
ドレイン管でつながる発進立坑と到達立坑は、土中から除去した地中滞留水(ドレイン)の一次貯留タンクとして利用される。また、これら縦坑を利用して、ドレイン管内の清掃や点検、縦坑内に配置する排水ポンプの点検等の維持管理を容易に行うことができる。
【0010】
この発明のドレイン管は紐状ストランドを絡ませたものを利用できるので、ドレイン管として空隙が大きく透水性が高い。また紐状ストランドを絡ませた前記ドレイン管は頑丈で耐圧性が高いので、地盤の比較的深い位置に埋設可能であり、非液状化層の層厚を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。数値はすべてこの実施例においてのものであり、実際には現場の状況に拠る。
本発明は、
図1に示すように、地面に互いに距離をおいて掘削した発進立坑1と到達立坑2の間に横抗3を貫通させ、横抗3内に透水性のドレイン管4(
図11)を埋設する非開削ドレイン管埋設工法である。
本実施例では、ドレイン管4を地表から4mの深さに、全長20mに亘って埋設する。
図1〜
図9は、主として施工の工程を示し、
図10以降に実施例において使用する部材ないし機材の詳細を図示している。
【0013】
〔設備〕
発進立坑1と到達立坑2を設け、発進立坑1に発進坑口を、到達立坑2に到達坑口をそれぞれ設け、坑口機材3a、3bを取付ける。
発進立坑1は直径2.5m、到達立坑2は直径1.5mとして約20mの中心間距離をおいて設けられ、それぞれ地面から5.5mの深さである。
坑口機材3a、3bは、発進立坑1と到達立坑2の相互に対向した位置に配置される。
発進立坑1に推進機5が設置される。
推進機5は装着される機具を横坑3へその軸方向へ押し込む油圧機構と、装着される機具を必要に応じて回転させる駆動機構を備える。
また、発進立坑1には施工中に生じる掘削土砂や湧水(ドレイン)を除去するバケットやポンプが配置される。ポンプは到達立坑2にも配置される。
【0014】
〔使用機材〕
使用機材の主なものは、前記の推進機5に加え、
図3に示すように、仮管6、掘削カッター7、ブラシ型滞水ヘッド8及びスクリューコンベア9を有する掘削装置と、鞘管10、ドレイン管4、緊結パイプ11(
図4)及びプッシュロッド12(
図6)を有する配備用装置とを備える。これらに付属する部材については順次説明する。
【0015】
前記掘削装置は、前記配備用装置の鞘管10と組み合わせて使用され、鞘管10の内部にスクリューコンベア9が配置される(
図3)。スクリューコンベア9は、発進立坑1、到達立坑2の内部で作業ができる長さに分割されており、複数の単位スクリューコンベア9a(
図3〔イ〕)が接続されている。スクリューコンベア9の発進側は推進機5に接続されて推進力と回転力を受けるようにされており、到達側には前記ブラシ型滞水ヘッド8が取り付けられている。ブラシ型滞水ヘッド8の先端側に掘削カッター7が取り付けられ、その到達立坑2側に回転ジョイント13を介して仮管6の基部が取り付けられている。仮管6も単位仮管6a(
図3〔ロ〕)を接続して構成される。
【0016】
鞘管10は、複数の前記単位鞘管10aを接続して構成される。
単位鞘管10aは内径約440mm、長さ1mよりやや長い鋼管である。
単位鞘管10aは、
図10に示すように、一端部に雄ネジ部14が設けられ、他端部に雌ネジ部15が設けられている。したがって、雄ネジ部14と雌ネジ部15を螺合することにより、複数の単位鞘管10aを順次連結していくことができる。この実施例では、発進立坑1と到達立坑2間の横抗3(約20m)を貫通させるのに20本の単位鞘管10aが必要ということになる。
【0017】
ドレイン管4(
図11)は、複数の単位ドレイン管4aを接続して構成される。
単位ドレイン管4aは、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂の3次元網状構造体を外径400mm、内径220mmの筒形の壁に成形してあり、長さ1mである。
前記3次元網状構造体は、前記樹脂による直径約2mmのストランド(紐状体)を絡ませて、ストランドどうしの接点を接合したものである。この構造を有する管は耐圧強度が高く、土被り厚さ7m程度の圧力に耐えることができる。
単位ドレイン管4aは、この実施例において
図11に示すように、両端部外周囲にそれぞれ2条の環状溝16が形成され、また、両端部の環状溝16間の外周面が不織布の透水性フィルタ材17で被覆され、さらに、その外周面が硬質樹脂製の網体18で被覆されている。
単位ドレイン管4aの外周囲を透水性フィルタ材17で被覆したことにより、地中に埋設したドレイン管4内に砂等が侵入してすぐに目詰まりして透水性が阻害されてしまうのを防止する。また、網体18は、単位ドレイン管4aを鞘管10内へ押し込む時に、透水性フィルタ材17の先端部が鞘管10内面との摩擦によりめくり上がって押し縮められるのを防止する。
【0018】
前記緊結パイプ11は、複数の単位緊結パイプ11a(
図12)を接続して構成される。
単位緊結パイプ11aは外径約220mm、長さ1mよりやや長い鋼管である。
単位緊結パイプ11aは、
図12に示すように、一端部に雄ネジ部19が設けられ、他端部に雌ネジ部20が設けられている。したがって、雄ネジ部19と雌ネジ部20を螺合することにより、複数の単位緊結パイプ11aを順次連結していくことができる。この実施例では、単位鞘管10aと同様に20本の単位緊結パイプ11aが必要ということになる。
【0019】
プッシュロッド12〔
図13〕は、前記緊結パイプ11に貫通して配置されるロッドであって、やはり、複数個の単位プッシュロッド12aに分割されている。単位プッシュロッド12aは、長さ1mより少し長い程度の鋼棒であって、端部どうしを相互にネジ結合してプッシュロッド12に構成される。
単位プッシュロッド12aにはそれぞれスペーサ24が取り付けられプッシュロッド12の軸線が緊結パイプ11の軸線と略一致するようにされている。
【0020】
〔工法〕
次の工程を基本とする。なお、以下の工程は実施例に基づくものであり、本願発明の実施にここに掲げるすべての工程が必ず必要ということではない。ここに掲げる工程には同時に施工したり、順序を入れ替えて施工したり、均等の工程と置換したり、あるいは他の基本的ではない工程を付加したり、省略したりすることがある。
〔工程1〕(
図1)
発進立坑1及び到達立坑2を掘削し、発進立坑1に設けた発進坑口に坑口機材3aを取付け、到達立坑2に設けた到達坑口に坑口機材3bを取り付ける。発進立坑1及び到達立坑2の側面は大きな円筒形に溶接した鋼材で土止めされ、前記の坑口機材3a,3bはこの側壁に設けた開口に取付けられる。発進立坑1に推進機5を発進坑口に向け設置する。
破線は予定される横坑3である。
〔工程2〕(
図2,3)
発進立坑1から到達立坑2へこれらの立坑間をつなぐ横坑3を掘削しながら複数の単位鞘管10aを順次接続して横坑3の掘削推進に合わせて押し込んでいく。すなわち、先端に掘削カッター7を取り付けた単位スクリューコンベア9a(
図3)を単位鞘管10aの内部に嵌め込み、これらの発進側端部を推進機5に取付け、到達側端部を坑口機材3aが取り付けられた発進坑口に挿し込む。そして、単位スクリューコンベア9aが推進機5によって駆動回転されると共に、到達立坑2に向けて前記鞘管10と共に押し込まれる。
推進される鞘管10の外面と横坑3の内面との摩擦を軽減するために、鞘管10と前記スクリューコンベア9が備えたインナーケーシングとの間に細いチューブを通して生物分解性滑材(グリス)を前記鞘管10の外面と横坑3の内面との間に圧入してもよい。
【0021】
横坑3の掘削が進行するのにつれて、掘削された土砂はスクリューコンベア9によって後方(発進側)に送られ、発進立坑1に吐き出される。掘削の進行に同期して前記の単位鞘管10aと単位スクリューコンベア9aを順次地中へ押込む。
この場合に、まず、仮管6(
図2)を発進立坑1の発進坑口から到達立坑2へ向けて貫通させておくと、この貫通孔がガイドとなって、前記スクリューコンベア9と鞘管10の掘削と推進の方向が定まり、掘削推進作業を正確に行える。仮管6も単位仮管6aに分割されており、単位仮管6aの端部をねじ結合しながら推進機5で到達立坑2に向けて押込む。そして、仮管6の先端が到達立坑2に達したところで、仮管6の後端(発進側)に前記掘削カッター7を取付ける。さらに単位スクリューコンベア9aと単位鞘管10aを連結し、これらの後部を推進機5に装着する。仮管6は、工程の進行に伴って到達立坑2へ押し出されてくる毎に分解して回収する。
【0022】
先行する単位スクリューコンベア9aと単位鞘管10aの全体が発進坑口にすべて押し込まれてしまう前に発進立坑1内において次の単位スクリューコンベア9aの先端を先の単位スクリューコンベア9aの後端にネジ結合し、また、次の単位鞘管10aの雄ネジ部14を先の単位鞘管10aの雌ネジ部15に螺合させて結合する。このようにして、単位スクリューコンベア9aと単位鞘管10aを連結してスクリューコンベア9と鞘管10を形成する。鞘管10の先端が到達立坑2に到達すると、その内部のスクリューコンベア9は到達立坑2において、単位スクリューコンベア9aに分解されて回収され、鞘管10が横坑3に残置される。
すなわち、横抗3が形成されると同時にこの横抗3内に鞘管10が設置される。
【0023】
〔工程3〕(
図4〔イ〕)
単位ドレイン管4aと単位緊結パイプ11aを準備し、単位ドレイン管4aの内側に単位緊結パイプ11aを挿入して取付ける。単位緊結パイプ11aは雄ネジ部19を単位ドレイン管4aの一端から突出させておく。
〔工程4〕(
図4)
単位緊結パイプ11aを備えた単位ドレイン管4a(
図4〔イ〕)を発進立坑1から前記鞘管10内に、前記単位ドレイン管4aの端部どうし及び単位緊結パイプの端部どうしを順次接続しながら押し込み、発進立坑1と到達立坑2の間にドレイン管4と緊結パイプ11を挿入配置する。
【0024】
単位ドレイン管4aを鞘管10内に押し込む際に、各単位ドレイン管4aの先端側外周囲に、生物分解性滑材(プラスチックを素材とするグリス)を盛り付けておく。このグリスは、単位ドレイン管4aを鞘管10内に押し込む際に鞘管10の内面に当たって均され、単位ドレイン管4aの外周面全面に塗布される。この結果、施工中に単位ドレイン管4a内へ泥水が侵入するのを防ぐことができ、また、鞘管10に対する単位ドレイン管4aの滑りを良くする。
前記グリスはドレイン管4が地中に埋設された後、土中の生物により分解されて消失するので、前記グリスによってドレイン管4の集水機能が阻害される恐れはなく、また、環境が汚染される心配もない。
【0025】
単位ドレイン管4aの端部どうしは、(
図4〔イ〕)及び
図14〜18に示すように、連結外筒21を用いて結合する。
連結外筒21は、変形し難い硬質合成樹脂を素材とし、周面に断面四角形の環状突条22を、この実施例において4条形成してあり、
図16に示すように、横断面を2分割した一対の半割21a、21bより成る。
単位ドレイン管4aどうしを突き合わせ、両側の端部間に連結外筒21の半割21a、21bを被せ、単位ドレイン管4aの環状溝16に半割21a,21bの環状突条22を合わせ、さらにその外側に金属バンド23を巻き付けて固定する(
図15)。
この連結作業は、単位ドレイン管4aを後端部の環状溝16が発進立坑1に残っている状態まで押し込んでから行う。
【0026】
連結外筒21は、径方向外側から簡単に単位ドレイン管4aの突き合わせ部分の外周面に被せることができ、作業が簡単である。また、突き合わせ部分の外周面に連結外筒21を被せて単位ドレイン管4aを連結してあるので、地震等の際にせん断力が加わっても単位ドレイン管4aの突き合わせ部分がずれ難い。さらに、断面四角形の環状溝16に断面四角形の環状突条22を嵌合させて取り付けてあるため、引っ張り強度も高い。そして、半割21a,21bとした連結外筒21は、取付け易く、また、成形しやすい。
連結外筒21は、半割とせず、側面を1か所で軸方向に切断した形状とし、切断した端部を両側へ開くようにして単位ドレイン管4aの端部を挟み付けるようにして取付けることもできる。
【0027】
単位緊結パイプ11aは、その雄ネジ部19を先行の単位緊結パイプ11aの雌ネジ部20へねじ込んで結合する。
この工程4によって緊結パイプ11が発進立坑1と到達立坑2の間に配置されるが、ドレイン管4の内側に緊結パイプ11が存在するので、施工中の湧水がドレイン管4の内側に溜まるのを阻止でき、大量の湧水によって作業が邪魔されるのを防ぐことができる。
なお、連結内筒31を単位ドレイン管4aの接続に利用することがある(
図17,18)。連結内筒31は、薄く強度が高い硬質合成樹脂製であり、その両端部に複数の係止爪32を形成してある。係止爪32は、先端が軸方向中央部に向くよう外側へ傾斜させて切起こしてあり、連結内筒31の端部を単位ドレイン管4aの内側へ挿入すると、連結内筒31を単位ドレイン管4aから引き抜こうとしても、前記係止爪32が単位ドレイン管4aの内周面に食い込んで抜くことはできず、抜け止めとなる。
【0028】
この連結内筒31は、
図18に示すように、地上において予めその一端部を単位ドレイン管4aの後端部における単位ドレイン管4aの内面と単位緊結パイプ11aの外面との間に存在する隙間を利用して挿入しておく。そして、単位ドレイン管4aを鞘管10内に後端部が露出するまで押し込んでから、露出した連結内筒31の他端部を後続の単位ドレイン管4aの前端部において前記のように、単位ドレイン管4aと単位緊結パイプ11aの外面との間に嵌入して、単位ドレイン管4aどうしを連結する。連結内筒31による単位ドレイン管4aの連結は、前記連結外筒21を被せる前に行う。
突き合わせた単位ドレイン管4aは、連結外筒21だけでなく連結内筒31でも連結されるので、単位ドレイン管4aの結合箇所における接合強度がさらに高まる。
なお、単位ドレイン管4aの加工方法については後述する。
【0029】
〔工程5〕
緊結パイプ11の端部であって発進坑口から突出した部分に発進側緊結ナット25を螺合し(
図5)、坑口機材3aに当接させる。また、緊結パイプ11の到達立坑側の端部にシールヘッド26を取り付けてドレイン管4の到達立坑2側の面に当接させ、これを緊結パイプ11に螺合させた到達側緊結ナット27で固定する。これにより、ドレイン管4が鞘管10内を到達立坑側へ移動できないようにされる。
【0030】
〔工程6〕
鞘管10の発進立坑側端部(最後部)の周縁にテールシール30をネジと金属バンドを使って取り付ける(
図5)。テールシール30は、可撓性と伸縮性を有する軟質合成樹脂を素材とし、
図19に示すように、後端に向かって次第に径小となるテーパー筒状である。テールシール30の末端部の内径はドレイン管4の外径よりも僅かに小さな直径とされ、ドレイン管4の外面に接するようにされている。
〔工程7〕(
図6)
発進立坑1から緊結パイプ11内に複数の単位プッシュロッド12aを順次接続しながら押し込み挿入して、プッシュロッド12を前記到達立坑に到達させる。各単位プッシュロッド12aには緊結パイプ11の内面に当接して移動するスペーサ24を有する。
到達立坑側では、鞘管10の先端に鞘管押出金具28を取付け、プッシュロッド12の先端に鞘管押出ヘッド29を取付けて、鞘管押出金具28に鞘管押出ヘッド29を押し当て、プッシュロッド12と鞘管10を連繋させる。
なお、連繋の構造はこのような押し当てに限らず、プッシュロッド12の押圧力が鞘管10に伝達される構造であればよく、プッシュロッド12と鞘管10間を固定する必要はない。
【0031】
〔工程8〕(
図7)
そして、プッシュロッド12を推進機5で押すと、鞘管押出ヘッド29が鞘管押出金具28を押し、鞘管10を到達立坑2に引き抜く。このとき、前記のように、ドレイン管4は緊結パイプ11と緊結ナット25,27及びシールヘッド26により軸方向で到達立坑2側への移動ができないようにされているので、鞘管10の移動と共にドレイン管4が到達立坑2側へ引きずられてくることはない。
また、鞘管10の後部では前記のテールシール30がその後縁部でドレイン管4の周面に接しながら移動する。すなわち、鞘管10が引き抜かれるにつれて湧水と共に土砂がドレイン管4と鞘管10との間に入り込むのが防止される。これにより、ドレイン管4と鞘管10の間に入り込んだ土砂によって引抜きの際の摩擦が増大して、プッシュロッド12を押す推進機5に過大な負荷がかかったり、鞘管10を移動させること自体が不能になったりすることを防止できる。
なお、この実施例においてはテールシール30を用いるが、工程としては鞘管10を到達立坑2に引き抜くことであり、その達成のために、工程7では鞘管10の先端に取付けた鞘管押出金具28とプッシュロッド12の先端に取付けた鞘管押出ヘッド29を連繋させ、プッシュロッド12で鞘管10を到達立坑2へ引き抜くことが基本である。したがって、前記ドレイン管4と鞘管10の間に入り込んだ土砂によって生じる引抜きの際の摩擦は他の手段によって解決してもよい。
【0032】
到達立坑2内に引き抜かれてくる単位鞘管10aと単位プッシュロッド12aをそれぞれ分解して回収する。すなわち、前記到達立坑2内に引き出した単位鞘管10aと単位プッシュロッド12aを順次後続のものから分離して回収すると共に、前記鞘管押出金具28と鞘管押出ヘッド29を次の単位鞘管10aと単位プッシュロッド12aに付け変え、前記工程7,8を繰り返しながら、前記発進立坑1から到達立坑2に向かって前記プッシュロッド12を押し出し、横抗3から鞘管10とプッシュロッド12を引き抜き、前記横抗3内にドレイン管4を残していく(
図7)。
最後の単位鞘管10aは前記テールシール30とともに回収する。
結果として、横坑3内に緊結パイプ11を備えたドレイン管4が残置される。
【0033】
〔工程9〕
前記の発進側緊結ナット25と到達側緊結ナット27を取り外し、また、シールヘッド26を取り除いて、前記工程5において到達立坑2側への移動ができないようにされていたドレイン管4の移動不可、すなわち、緊結パイプ11とドレイン管4との拘束を解除する。
〔工程10〕
プッシュロッド12の先端と緊結パイプ11の先端を緊結パイプ引出し金具33で連繋させ、推進機5を前記とは逆に引き作動させる。すると、プッシュロッド12は前記とは逆に発進立坑1側へ引き出され、緊結パイプ11とプッシュロッド12はドレイン管4から発進立坑1に引き出される(
図8)。そして、発進立坑1側で単位緊結パイプ11aと単位プッシュロッド12aに分解され回収される。
〔工程11〕
前記工程10を繰り返して、発進立坑1と到達立坑2間の横坑3にドレイン管4のみが残置される(
図9)。
単位ドレイン管4aの突き合わせ部分の外周面に連結外筒21を被せ、単位ドレイン管4aの環状溝16に連結外筒21の環状突条22を嵌合させてあるので、地震等によって単位ドレイン管4aの連結部分がずれたり、引き離され難い。
単位ドレイン管4aの環状溝16は熱溶融によって形成してあるので、環状溝16を形成した部分の強度が低下せず、しかも、環状溝16の溝面が平坦となって環状突条22をしっかり嵌合することができるため、さらに単位ドレイン管4aどうしの連結強度が増す。
そして、横抗3内に残されたドレイン管4には土中滞留水が集まって湧水となり、ドレイン管4を通って発進立坑1及び到達立坑2に集水される。発進立坑1及び到達立坑2に集水された湧水はポンプで地上に送られ排水される。
なお、
図9では、横坑3の発進立坑1側、到達立坑2側の開口が坑口機材3a、3bにより閉じられ、蛇口34を取り付けて応急処置がなされている。
【0034】
〔単位ドレイン管の加工〕
単位ドレイン管4aの環状溝16は、単位ドレイン管4aの壁を構成する3次元網状構造体の外面を熱溶融させて形成される。
環状溝16を形成するには、
図20〜23に示す加工装置100を用いる。
加工装置100は、対向して立設された前部支持台101及び後部支持台102と、前部支持台101と後部支持台102の間に設置された管受け台103と、前部支持台101と管受け台103の間において、前部支持台101近傍の上方に上下揺動可能に設けられた加熱ローラ104を備える。
【0035】
後部支持台102は前部支持台101に対して遠近に移動が可能であり、前部支持台101及び後部支持台102の対向面にはそれぞれ回転盤105を設けてある。前後の回転盤105の対向する面には複数の支持爪106を突出し、前部支持台101の回転盤105はモータ107で回転駆動されるようになっている。
図21に示すように、管受け台103の上端には断面半円形の受け部108が設けられ、受け部108の上面には複数の支持ローラ109が周方向に等間隔で設置されている。
【0036】
加熱ローラ104は、中空の円筒形であり、外周囲には断面四角形のフランジ113が2条形成されている(
図21、
図23)。
また、加熱ローラ104は、支柱110から上下揺動可能に張り出した揺動アーム111の先端に取り付けられ、揺動アーム111に連結したチェーン112を巻き上げることにより上昇し、チェーン112を巻き戻すと自重で下降するようになっている。加熱ローラ104の下方には、加熱ローラ104の下限位置を規制するストッパ114を設けてある(
図21)。ストッパ114は上下に位置を調節可能とされている。
加熱ローラ104の内部にはヒータ115を搭載してあり、加熱ローラ104全体を単位ドレイン管4aの素材である熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱できるようになっている(
図23のロ)。
【0037】
加工装置100で環状溝16を形成するには、まず、後部支持台102を後退させて前部支持台101から遠ざけておき、
図22に示すように、管受け台103の支持ローラ109の上に単位ドレイン管4aを載せる。
次いで、後部支持台102を前進させて前部支持台101と後部支持台102で単位ドレイン管4aを挟み、前部支持台101及び後部支持台102の支持爪106を単位ドレイン管4aの両端面に食い込ませる。
この状態で前部支持台101の回転盤105を回転させると、単位ドレイン管4a及び後部支持台102の回転盤105が回転する。
【0038】
次に、加熱ローラ104を下降させて、加熱ローラ104のフランジ113を単位ドレイン管4aの外周に押し当てる。単位ドレイン管4aの外周面において加熱ローラ104が当った部分は、加熱ローラ104の熱(ポリプロピレンの場合200〜220℃)で溶融されて陥没し、加熱ローラ104は次第に下降する。
この時、単位ドレイン管4aは回転しているので、単位ドレイン管4aの外周には周方向に沿って溝が形成される。加熱ローラ104の接触で溶融した樹脂ストランドが加熱ローラ104に付着するような場合は、薄い耐熱性フィルムやアルミホイル等を巻き付けてから押圧する。
加熱ローラ104は、フランジ113よりも内側の部分が単位ドレイン管4aに接触しない高さでストッパ114により下降が制限され、単位ドレイン管4aの一端部にフランジ113の断面と同形状の環状溝16が2条形成される。ストッパ114の高さを調節することで前記環状溝16の深さを調節できる。また、単位ドレイン管4aの管径が変わった場合にも適応できる。
なお、環状溝16が形成される速度は、紐状ストランドの太さや密度、気温による。
【0039】
単位ドレイン管4aの一端部に環状溝16を形成した後、加熱ローラ104を上昇させると共に、後部支持台102を後退させて単位ドレイン管4aを解放し、さらに、単位ドレイン管4aを前後逆にして加工装置100にセットし、同様にして単位ドレイン管4aの他端部にも2条の環状溝16を形成する。加熱ローラ104を単位ドレイン管4aの両端部に相当する箇所に配置しておけば、単位ドレイン管4aを前後逆に置き直す必要はない。
このように熱溶融によって環状溝16を形成するので、切削屑が出ず、また、環状溝16を形成した部分の強度が低下しない。むしろ、環状溝16の内面は樹脂ストランドが溶けて、溝面に露出するストランド端面同士をつなぎ合わされて強度が向上する。さらに、溝面が平坦となって前記連結外筒21の環状突条22をしっかり嵌合することができる。このため、単位ドレイン管4a間の連結箇所は強固に連結される。
【0040】
本発明は上記実施例に限定されない。
単位鞘管、単位緊結パイプ及び単位プッシュロッドの連結構造は、連結強度が高く、着脱可能なものであればよく、ねじ結合に限らない。
一つの発進立坑1と複数の到達立坑2の間に横抗3を貫通させ、横抗3内にそれぞれドレイン管4を設置する集水構造も可能である。
単位鞘管、単位ドレイン管、単位緊結パイプ等の寸法は、地盤の状態や湧水量に応じて適宜変更できる。