特許第6564361号(P6564361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564361
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】核酸送達のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20190808BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61K47/42
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/08
   A61K47/22
   A61K31/7088
   A61K31/7105
   A61K48/00
   A61P35/00
【請求項の数】5
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2016-506488(P2016-506488)
(86)(22)【出願日】2015年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2015056144
(87)【国際公開番号】WO2015133449
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-44573(P2014-44573)
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 正行
(72)【発明者】
【氏名】関口 聡裕
(72)【発明者】
【氏名】米木 菜緒
(72)【発明者】
【氏名】戸村 有宏
(72)【発明者】
【氏名】今野 広海
【審査官】 古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−529214(JP,A)
【文献】 特表2009−523823(JP,A)
【文献】 特開平6−206815(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005376(WO,A1)
【文献】 Robert D.SIMON,THE BIOSYNTHESIS OF MULTI-L-ARGINYL-POLY(L-ASPARTIC ACID) IN THE FILAMENTOUS CYANOBACTERIUM ANABAENA,Biochimica et Biophysica Acta,1976年,422(2),p.407-418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00−47/69
A61K 31/00−33/44
A61K 48/00
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)、
ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)、並びに
ビタミンD誘導体及びビタミンE誘導体からなる群から選択される1種以上の脂溶性添加剤(c)、
を含有することを特徴とする核酸輸送用組成物であって、
前記二官能性ポリマー(a)が、一般式(1)
【化1】
[式中、
は、水素原子、(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C10)のアラルキル基を示し、
は、メチレン基またはエチレン基を示し、
は、水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、
は、(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基及び(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の炭化水素基を示し、
は、水酸基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R)CONH(R)からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、該R及びRは、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、若しくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、
は、(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または(C7〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基を示し、
、X及びXは、結合基又は結合を示し、
a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれ独立に0〜200の整数を示し、
ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は、15〜200の整数であり、(a+b)は10〜150の整数であり、(c+d)は5〜100の整数であり、(a+b):(c+d)が1〜3:1であり、
アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムに配列する。]
で示されるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体であり、
前記ブロック型コポリマー(b)が、一般式(2)
【化2】
[式中、
11は、水素原子若しくは(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示し、
12は、メチレン基またはエチレン基を示し、
13は、水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、
14は、(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基及び(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であり、
15は、水酸基及び/または−N(R17)CONH(R18)を示し、ここでR17及びR18は同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖、分岐鎖状または環状のアルキル基もしくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、
16は、(C1〜C6)のアルキレン基を示し、
11は、結合基又は結合を示し、
tは、5〜11500の整数を示し、
m、n、o、p及びqは、独立に0〜200の整数を示し、
ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(m+n+o+p+q)は、6〜150の整数を示し、(m+n)は3〜150の整数であり、
14が結合した構成単位、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムに配列する。]
で示されるブロック型コポリマーであり、
前記ビタミンD誘導体が、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、一般式(6)
【化3】
[式中、R31は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコールを示す。]
で表される化合物、及び一般式(7)
【化4】
[式中、R32は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコールを示す。]
で表される化合物からなる群から選択される1種以上であり、
前記ビタミンE誘導体が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、及び一般式(8)
【化5】
[式中、R41は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコールを示す。]
で表される化合物からなる群から選択される1種以上である、
核酸輸送用組成物。
【請求項2】
前記二官能性ポリマー(a)、前記ブロック型コポリマー(b)及び前記脂溶性添加剤(c)の含有比率(w/w)が、(a):(b):(c)=1:0.1〜5:0.1〜5である、請求項1に記載の核酸輸送用組成物。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の核酸輸送用組成物に、核酸を含有させた医薬組成物。
【請求項4】
前記核酸が、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記請求項3または4に記載の医薬組成物を含有する遺伝子治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸医薬を標的患部の細胞内に送達するための核酸輸送用組成物、及び核酸医薬を用いた医薬組成物とその用途に関する。特にsiRNA等の短鎖核酸医薬を、疾病標的組織へ安定に送達するための核酸輸送用組成物及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子が原因となる疾患に対し、その原因遺伝子の機能発現を抑制する核酸医薬を用いる遺伝子治療が開発されている。この遺伝子治療は、疾病原因に直接的に作用する治療方法であり、酵素阻害剤などの従来の低分子医薬品では治療効果が得られにくい疾患に対しても、治療効果が期待できる新しい治療技術である。
近年、遺伝子治療の一つの方法として、RNA干渉(RNA interference、以下RNAiと略す)が発見された。RNAiは、30塩基以下の短鎖RNAが疾病原因遺伝子の機能抑制発現にかかわる主要分子である。この短鎖RNAは、siRNA(small interfering RNA)と名付けられている(特許文献1)。2001年に哺乳類細胞におけるRNAiが報告されて以来(非特許文献1)、RNAiをあらゆる疾患治療へ適用することを目指した研究開発が活発に行われている。しかしながら、核酸医薬は一般的に化学的安定性に乏しく、静脈内投与等の全身投与による治療効果を得ることはできない。特にRNAは、血中に存在する様々な酵素により容易に分解される物性であり、siRNAを核酸医薬として用いることの大きな障害となっている。このためsiRNAを核酸医薬として用いる治療剤は、目や呼吸器など、siRNAの局所投与により治療効果が得られる疾病に限られており、治療できる疾病の適応範囲が限定的である。このため、siRNA等の遺伝子治療に用いる核酸医薬を血中投与に適用して、体内の疾病患部に安定かつ効率的に送達する技術の開発が求められている。
【0003】
核酸医薬を血中投与して、体内の疾病患部にて治療効果を発揮させるためには、(1)血中における該核酸医薬の安定性の確保、(2)核酸医薬の標的組織への効率的な送達、(3)核酸医薬の標的組織細胞内への導入、の3つの課題を克服する必要がある。このため、核酸医薬を安定に保持し、標的細胞へ送達できる核酸送達システムが必要である。該核酸送達システムは、核酸医薬を保持して血中安定性を確保し、血中投与後は、血流を利用して標的患部組織へ到達するように血中滞留性を有するとともに、標的患部以外の組織細胞への非選択的な遺伝子導入を抑制する機能が要求される。一方で、標的患部組織へ到達した際には、該核酸医薬を標的細胞内に導入させて、更に該核酸医薬を細胞質内にて放出して、核酸医薬を作用させて疾病原因遺伝子の機能抑制をすることにより治療効果をもたらす能力が要求される。加えて、該核酸送達システムは、生体親和性を有し、投与において生体防御反応や細胞死を誘導しないことも必要である。
以上のように、全身投与型核酸送達システムを完成させるには、(i)投与から標的患部到達までの間、核酸を安定に保持して血中分解酵素との接触を回避して安定性を確保すると共に、標的患部組織以外の細胞への核酸導入を抑制すること、(ii)患部到達後は、核酸を保持したまま細胞内に侵入すること、(iii)細胞質内に到達後は、核酸(siRNA)を放出すること、(iv)生体親和的であること、が求められる。
【0004】
核酸医薬の生体内に対する血中投与を目標にした核酸輸送システムの開発は幾つか知られている。例えば特許文献2では、PEGとカチオン性ポリマーからなるブロック型コポリマーとカチオン性ポリマーからなる核酸輸送用組成物を用い、これと核酸医薬との複合体とすることで細胞取込能を向上させた核酸輸送システムを提案している。また、非特許文献2では、PEGと疎水性ポリマーからなるブロック型コポリマー、疎水性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる核酸輸送用組成物を用い、これと核酸医薬との複合体とすることで血中安定性の高い核酸輸送システムを提案している。
しかしながら、特許文献2記載の方法では、カチオンとアニオンとの静電相互作用のみでミセルを形成しているため、プラスミドDNAと比較して電荷密度の低いsiRNA等では静電相互作用が弱く、血中安定性の確保が困難である。また、非特許文献2記載の方法では、粒子安定性が高く優れた血中滞留性を確保できるものの、siRNA等を放出するための技術的要素が考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO01/75164号
【特許文献2】国際公開WO2012/005376号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature、vol. 411、p.494−498、2001
【非特許文献2】J.Controled.Release. 2013、166、p.106−114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血中投与により機能発現させる核酸医薬において、該核酸医薬の安定性を確保すると共に、細胞内導入率が高く、効率的に該核酸医薬の機能発現をさせることができる核酸輸送用組成物が求められている。特にsiRNAのような短鎖核酸医薬にも適用できる核酸輸送用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、核酸医薬と静電的相互作用により複合体を形成できるカチオン性官能基と疎水性炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(内核形成ポリマー)と、自己会合性を有して粒子化することにより血中滞留性を示すポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントからなるブロック型コポリマー(外殻形成ポリマー)、並びに二官能性ポリマー(内核形成ポリマー)とブロック型コポリマー(外殻形成ポリマー)の双方ポリマー間の弱い親和性によって性急な粒子崩壊が起こることを防ぐため、トコフェロールのような脂溶性添加剤を含有する核酸輸送用組成物が、包含する核酸分子の安定性を確保した上で標的組織へ送達し、その後、核酸分子を該組織の細胞内に導入して機能発現させることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下の[1]〜[15]に関する。
[1] カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)並びにビタミンA誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンE誘導体、ビタミンK誘導体及びコレステロール誘導体からなる群から選択される1種以上の脂溶性添加剤(c)、を含有することを特徴とする核酸輸送用組成物。
[2] 前記二官能性ポリマー(a)の前記炭化水素基が、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基及び直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の炭化水素基である前記[1]に記載の核酸輸送用組成物。
[3] 前記二官能性ポリマー(a)の前記カチオン性官能基が、アミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基及びグアニジル基からなる群から選択される1種以上のカチオン性官能基である前記[1]または[2]に記載の核酸輸送用組成物。
[4] 前記二官能性ポリマー(a)が、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体であり、該ポリアスパラギン酸誘導体または該ポリグルタミン酸誘導体は、側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して、前記カチオン性官能基及び前記炭化水素基が導入されており、該二官能性ポリマー1分子当りの該カチオン性官能基導入率が10〜100モル当量/ポリマー分子であり、該カチオン性官能基と該炭化水素基の含有モル当量比率(カチオン性官能基含有モル当量:炭化水素基含有モル当量)が1〜5:1である前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物。
[5] 前記ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)が、該疎水性ポリマーセグメントがポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体であり、該ポリアスパラギン酸誘導体または該ポリグルタミン酸誘導体は、側鎖カルボキシ基に疎水性基が直接または結合基を介して結合したセグメント構造であり、該疎水性基が、直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C2〜C30)のアルケニル基または直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C30)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上である前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物。
[6] 前記ブロック型コポリマー(b)が、ポリエチレングリコールセグメントが、エチレンオキシ単位;(CHCHO)が5〜11,500の繰り返し単位構造であり、疎水性ポリマーセグメントが、アスパラギン酸誘導体単位またはグルタミン酸誘導体単位が5〜200の繰り返し単位構造のポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体であり、該ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に、前記疎水性基が直接または結合基を介して結合したアスパラギン酸誘導体単位またはグルタミン酸誘導体単位が3〜200である前記[5]に記載の核酸輸送用組成物。
[7] 前記二官能性ポリマー(a)が、一般式(1)
【化1】
[式中、Rは水素原子、(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C10)のアラルキル基を示し、Rはメチレン基またはエチレン基を示し、Rは水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基並びに直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、Rは水酸基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R)CONH(R)からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、該R及びRは、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、若しくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、Rは(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または(C7〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基を示し、X、X及びXは結合基又は結合を示し、a、b、c、d、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は10〜200の整数であり、(a+b)は5〜200の整数であり、(c+d)は5〜200の整数であり、アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。]で示されるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体である前記[1]〜[6]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物。
[8] 前記一般式(1)で示される二官能性ポリマー(a)において、Rは(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基及び(C8〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の炭化水素基を示し、(a+b+c+d+e+f+g)は15〜200の整数であり、(a+b)は10〜150の整数であり、(c+d)は5〜100の整数であり、(a+b):(c+d)が1〜3:1である前記[7]に記載の核酸輸送用組成物。
[9] 前記ブロック型コポリマー(b)が、一般式(2)
【化2】
[式中、R11は水素原子若しくは(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示し、R12はメチレン基またはエチレン基を示し、R13は水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R14は(C1〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、(C2〜30)の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基、(C7〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸からなる群から選択される1種以上の基を示し、R15は水酸基及び/または−N(R17)CONH(R18)を示し、ここでR17及びR18は、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖、分岐鎖状または環状のアルキル基もしくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、R16は(C1〜C6)のアルキレン基を示し、X11は結合基又は結合を示し、tは5〜11500の整数を示し、m、n、o、p及びqは独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(m+n+o+p+q)は5〜200の整数を示し、(m+n)は3〜200の整数を示し、R14が結合した構成単位、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。]で示されるブロック型コポリマーである前記[1]〜[8]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物。
[10] 前記一般式(2)で示されるブロック型コポリマーにおいて、R14が直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルケニル基及び直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C20)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であり、(m+n+o+p+q)は6〜150の整数を示し、(m+n)は3〜150の整数である前記[9]に記載の核酸輸送用組成物。
[11] 前記二官能性ポリマー(a)、前記ブロック型コポリマー(b)及び前記脂溶性添加剤(c)の含有比率(w/w)が(a):(b):(c)=1:0.1〜5:0.1〜5である前記[1]〜[10]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物。
[12] 前記[1]〜[11]の何れか一項に記載の核酸輸送用組成物に、核酸を含有させた医薬組成物。
[13] 前記核酸がRNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである前記[12]に記載の医薬組成物。
[14] 前記[12]または[13]に記載の医薬組成物を含有する遺伝子治療剤。
[15] 一般式(1)
【化3】
[式中、Rは水素原子、(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C10)のアラルキル基を示し、Rはメチレン基またはエチレン基を示し、Rは水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基並びに直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、Rは水酸基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R)CONH(R)からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、該R及びRは、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、若しくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、Rは(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または(C7〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基を示し、X、X及びXは結合基又は結合を示し、a、b、c、d、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は10〜200の整数であり、(a+b)は5〜200の整数であり、(c+d)は5〜200の整数であり、アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。]で示されるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、核酸医薬と静電的相互作用により複合体を形成するカチオン性官能基と、疎水性の炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(内核形成ポリマー)と核酸医薬とが形成する複合体と、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(外殻形成ポリマー)が相互作用して、ナノ粒子状会合体を形成することができる。これに、更に脂溶性添加剤を添加することにより、前記ナノ粒子状会合体の会合性を高め、核酸医薬を安定に保持できる核酸輸送用組成物を提供する。また、前記核酸輸送用組成物を用いて、核酸医薬を包含する核酸医薬組成物を提供する。
当該核酸医薬組成物の、核酸医薬と前記二官能性ポリマー(内核形成ポリマー)の複合体と、前記ブロック型コポリマー(外殻形成ポリマー)は、比較的弱い疎水性相互作用による会合体が形成されるため、該複合体は比較的容易に放出され得る。一方、脂溶性添加剤が、該複合体と該ブロック型コポリマーの会合体形成力を高める。以上の構成を用いた本発明は、核酸医薬の安定な保持と放出性の確保を両立する核酸輸送用組成物を提供する。
本発明の核酸輸送用組成物を用いた核酸医薬は、核酸分解酵素に対する抵抗性を示すことから核酸安定性に優れ、血中投与に適用することができる。また、投与された該核酸医薬は、標的部位において核酸医薬を放出し、標的組織細胞内へ取り込ませ、細胞質内で核酸医薬を放出して機能発現させることを可能とする。該核酸医薬は、細胞質内での核酸放出と、核酸機能発現の目安となる標的タンパク発現の抑制作用(サイレンシング効果)が認められており、本発明は、血中投与にて機能発現させる核酸医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の核酸輸送用組成物を用いたsiRNA複合体及び比較例siRNA複合体の、RNaseに対する安定性を、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により評価した結果を示す図である。
図2】本発明の核酸輸送用組成物を用いたFAM標識したsiRNA(FAM−siLuc)複合体の細胞取込み試験において、感作細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察した図面代用写真である。
図3】本発明の核酸輸送用組成物を用いたFAM標識したsiRNA(FAM−siLuc)複合体の細胞取込み試験において、感作細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察した図面代用写真である。
図4】本発明の核酸輸送用組成物を用いたsiRNA(FAM−siLucまたはsiLuc)複合体による、ルシフェラーゼ安定発現細胞株に対するルシフェラーゼ阻害評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)、並びにビタミンA誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンE誘導体、ビタミンK誘導体並びにコレステロール誘導体から選択される1種以上の脂溶性添加剤(c)、を含有することを特徴とする核酸輸送用組成物に関する。以下に、その詳細について説明する。
【0013】
[カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)について]
本発明において、カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)とは、単鎖のポリマー主鎖に、複数のカチオン性官能基と複数の炭化水素基が、それぞれ分岐型に官能基修飾されたポリマー構造体である。
当該二官能性ポリマーのポリマー主鎖は、カチオン性官能基と炭化水素基の2つの官能基修飾可能なカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の反応性置換基を複数有する単鎖ポリマーが好ましい。該単鎖ポリマー主鎖構造としては、ポリアミノ酸、ポリビニル誘導体、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリウレタン類を挙げることができ、これらの単鎖ポリマーにカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の反応性置換基を複数有する単鎖ポリマーが好ましい。中でも好ましくは、複数のカルボキシ基で修飾された単鎖ポリマーであり、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ(スチレン−マレイン酸)等のポリカルボン酸高分子誘導体を挙げることができる。すなわち、これらのポリカルボキシ基修飾ポリマーを主鎖として用い、側鎖のカルボキシ基に、複数のカチオン性官能基と複数の炭化水素基をエステル結合またはアミド結合により、それぞれの官能基を導入した二官能性ポリマーを用いることが好ましい。
該二官能性ポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、本発明は血中投与を指向していることから、本発明組成物として水溶液で用いられる分子量を用いることが好ましい。該二官能性ポリマーは、平均分子量として1,000〜100,000のポリマーを用いることが好ましい。なお、該平均分子量はGPC法等の常法のポリマー分子量測定方法により測定される分子量にて規定される値を用いてもよい。しかしながら、該二官能性ポリマーは、カチオン性官能基と炭化水素基を導入する必要があることから、単位重量当たりの側鎖官能基含量にて平均分子量を算出する方法が好ましい。側鎖官能基がカルボキシ基である場合は、NMR法または滴定法によりカルボキシ基含量を求めることが好ましい。より好ましくは滴定法によるカルボキシ基含量を用い、該二官能性ポリマーの分子量を規定することが望まれる。
【0014】
二官能性ポリマー(a)のポリマー主鎖は、好ましくはポリアミノ酸である。カチオン性官能基及び炭化水素基を導入するための反応性置換基として、カルボキシ基を有するポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸またはポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)共重合体を用いることが好ましい。これらの側鎖カルボキシ基を有するポリアミノ酸は、α−アミド結合型重合体であっても、側鎖カルボキシ基とのβまたはγ−アミド結合型重合体であっても、その混合物であってもよい。該ポリアミノ酸の平均分子量としては、1,000〜100,000であることが好ましく、重合数としては8〜800の範囲のものを用いることが好ましい。より好ましくは、重合数として10〜200のポリアミノ酸である。
【0015】
前記二官能性ポリマー(a)において、導入される炭化水素基とは、該二官能性ポリマーと核酸により形成される複合体が、疎水性となるための機能を付与する官能基である。該炭化水素基とは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C3〜C60)のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C3〜C60)のアルケニル基、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C60)のアラルキル基を挙げることができる。
好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基または置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基である。特に好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルケニル基または置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアラルキル基である。
前記置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルキル基としては、例えば、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルケニル基としては、例えば、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアラルキル基としては、例えば、2‐フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
【0016】
なお、前記置換基を有していてもよい炭化水素基における該置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上に置換基を有する場合の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
【0017】
前記炭素環若しくは複素環アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。複素環アリール基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
前記アルキルチオ基としては(C1〜C8)のアルキルチオ基を示し、例えば、メチルチオ基、イソプロピルチオ基、ベンジルチオ基等が挙げられる。
前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
前記アルキルスルフィニル基としては(C1〜C8)のアルキルスルフィニル基を示し、例えば、メチルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、ピリジルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アルキルスルホニル基としては(C1〜C8)のアルキルスルホニル基を示し、例えば、メチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ベンジルスルホニル基等が挙げられる。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ピリジルスルホニル基等が挙げられる。
前記スルファモイル基としては、例えば、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等が挙げられる。
【0018】
前記アルコキシ基としては(C1〜C8)のアルコキシ基を示し、例えばメトキシ基、イソプロポキシ基、ベンジルオキシ基等の1級アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基等の2級アルコキシ基、若しくはtert−ブトキシ基等の3級アルコキシ基が挙げられる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
前記アシルオキシ基としては(C1〜C8)のアシルオキシ基を示し、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニルオキシ基としては(C1〜C8)のアルコキシカルボニルオキシ基を示し、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
前記カルバモイルオキシ基としては、例えば、ジメチルカルバモイルオキシ基、フェニルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0019】
前記置換または無置換アミノ基としては、例えば無置換アミノ基、非環状の1級アミノ基または非環状の2級アミノ基、若しくは環状の2級アミノ基を示す。該非環状の脂肪族1級アミノ基としては、(C1〜C10)の直鎖状、分岐鎖状、または環状アルキル基がN−モノ置換したアミノ基である。例えば、メチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基等が挙げられる。該非環状の脂肪族2級アミノ基としては、同一であっても異なっていてもよく、(C1〜C10)の直鎖状、分岐鎖状、または環状アルキル基がN,N−ジ置換したアミノ基である。例えばジメチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。該環状の脂肪族2級アミノ基としては、モルホリノ基、ピペラジン−1−イル基、4−メチルピペラジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピロリジン−1−イル基等が挙げられる。
前記アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
前記ウレイド基としては、例えば、トリメチルウレイド基、1−メチル−3−フェニル−ウレイド基等が挙げられる。
前記スルホニルアミノ基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等が挙げられる。
前記スルファモイルアミノ基としては、例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基等が挙げられる。
前記アシル基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記カルバモイル基としては、例えば、ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
前記シリル基としてはトリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
前記二官能性ポリマー(a)に導入される炭化水素基は、二官能性ポリマー(a)と核酸により形成される複合体が、疎水性を示す物性を付与できる炭化水素基であれば良く、置換基を有していてもよい炭化水素基としては、特に限定されるものではなく適用することができる。特に好ましくは無置換体、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基である。無置換体の炭化水素基を用いることが、特に好ましい。
【0020】
前記二官能性ポリマー(a)において、導入されるカチオン性官能基とは、核酸のリン酸基と静電的相互作用して、該二官能性ポリマーと該核酸との複合体を形成させる機能を担うものである。該カチオン性官能基とは、核酸のリン酸基と静電的相互作用を惹起できるものであれば特に限定されるものではない。好ましくはアミン性窒素官能基であり、例えば、アミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基、グアニジル基を挙げることができる。
前記ジアルキルアミノ基としては、好ましくは(C1〜C8)のジアルキルアミノ基を示し、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。また、2つのアルキル基が環状である環状2級アミノ基も含まれ、例えば、モルホリノ基、ピペラジン−1−イル基、4−メチルピペラジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピロリジン−1−イル基等が挙げられる。
前記トリアルキルアンモニウム基としては、好ましくは(C1〜C8)のトリアルキルアンモニウム基を示し、例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリイソプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリペンチルアンモニウム基、トリヘキシルアンモニウム基等が挙げられる。
【0021】
カチオン性官能基は、前記アミノ基、前記ジアルキルアミノ基、前記トリアルキルアンモニウム基、前記グアニジル基等のアミン性窒素官能基を含む置換基として前記二官能性ポリマー(a)に導入される。
前記アミン性窒素官能基を含む置換基としては、前記アミン性窒素官能基が置換した他の置換基を有していてもよい(C1〜10)のアルキル基であってもよい。好ましくは置換基を有していてもよい−(CH−X基(該X基が前記アミン性窒素官能基であり、hは1〜10の整数を示す)または置換基を有していてもよい−(CH−NH−(CH−X基(該X基が前記アミン性窒素官能基であり、i及びjは1〜5の整数を示す)である。
【0022】
前記アミン性窒素官能基が置換した、他の置換基を有していてもよい(C1〜10)のアルキル基は、適当な結合基を介して前記二官能性ポリマー主鎖に導入される。該結合基としては、二官能性ポリマーの置換基結合性側鎖官能基の種類に応じて適宜設定されるものである。例えば、二官能性ポリマーの置換基結合性側鎖官能基がカルボキシ基である場合、該結合基としては、−NH−、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)が挙げられる。好ましくは、−NH−または酸素原子(−O−)である。
すなわち、置換基を有していてもよい−NH−(CH−X基(該X基及びhは前述と同義である)若しくは置換基を有していてもよい−NH−(CH−NH−(CH−X基(該X基及びi、jは前述と同義である)、または置換基を有していてもよい−O−(CH−X基(該X基及びhは前述と同義である)若しくは置換基を有していてもよい−O−(CH−NH−(CH−X基(該X基及びi、jは前述と同義である)が好ましい。
前記置換基において、有していてもよい置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルアミド基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。
【0023】
該置換基として、中でもアルコキシカルボニル基(−CO−ORa;該Ra基が(C1〜C10)のアルキル基、(C7〜C12)のアラルキル基を示す)またはN−アルキルアミド基(−CO−NH−Rb;該Rb基が(C1〜C10)のアルキル基、(C7〜C12)アラルキル基を示す)が好ましい。特に好ましくは、アルコキシカルボニル基(−CO−ORa;該Ra基が(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C12)のアラルキル基を示す)またはN−アルキルアミド基(−CO−NH−Rb;該Rb基が(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C12)のアラルキル基を示す)が置換された−NH−(CH−X基(該X基が前記アミン性窒素官能基であり、hは1〜10の整数を示す)または置換基を有していてもよい−NH−(CH−NH−(CH−X基(該X基が前記アミン性窒素官能基であり、i及びjは1〜5の整数を示す)である。
特に、アルコキシカルボニル基(−CO−ORa;該Ra基が(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C12)アラルキル基を示す)またはN−アルキルアミド基(−CO−NH−Rb;該Rb基が(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C12)アラルキル基を示す)が置換された−NH−(CH−X基(該X基が前記アミン性窒素官能基であり、hは1〜10の整数を示す)が殊更好ましい。
前記−NH−(CH−X基の−NH−に隣接するメチレン基に、該アルコキシカルボニル基またはN−アルキルアミド基を有する場合、アミノ酸誘導体が特に好ましく、アミノ酸エステル誘導体またはアミノ酸アミド誘導体を用いることができる。すなわち、アミン性窒素官能基を有するリジン誘導体、オルニチン誘導体、アルギニン誘導体が好ましい。より好ましくはアルギニン誘導体である。
前記アルギニン誘導体としては、例えば、アルギニンアルキルエステルまたはアルギニンアルキルアミドを挙げることができる。アルギニンアルキルエステルとしては、例えば、アルギニンメチルエステル、アルギニンエチルエステル、アルギニンイソプロピルエステル、アルギニン−tert−ブチルエステル、アルギニンベンジルエステル等が挙げられる。アルギニンアルキルアミドとしてはアルギニンメチルアミド、アルギニンエチルアミド、アルギニンイソプロピルアミド、アルギニン−tert−ブチルアミド、アルギニンベンジルアミド、アルギニンジメチルアミド等が挙げられる。
【0024】
本発明の二官能性ポリマー(a)は、ポリマー主鎖に前記炭化水素基と前記カチオン性官能基を併せ持つものであり、ポリマー主鎖に該炭化水素基と該カチオン性官能基を、それぞれ複数モル当量をグラフト型に置換させた二官能性ポリマーである。すなわち、2種類の機能性置換基を複数モル当量で具備させたポリマーとすることで、核酸と静電的相互作用による複合体形成するためのポリカチオン性と、形成された該複合体に疎水性を付与させることを指向したものである。
【0025】
本発明の二官能性ポリマー(a)は、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸を該ポリマーの主鎖として、側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介してカチオン性官能基及び炭化水素基を導入した二官能性ポリマーであることが好ましい。
主鎖として用いるポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸としては、α−アミド結合酸型重合体であっても、側鎖カルボキシ基とのβ−アミド結合型またはγ−アミド結合型であっても、その混合物であってもよい。該ポリアミノ酸の平均分子量としては、1,000〜100,000であることが好ましく、重合数としては8〜800の範囲のものを用いることが好ましい。より好ましくは、平均分子量が2,000〜50,000であり、重合数としては20〜400の範囲のポリアミノ酸である。
【0026】
二官能性ポリマーの好ましい態様としては、このポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸の複数の側鎖カルボキシ基に対し、該カチオン性官能基及び該炭化水素基を、それぞれ適当な当量にて直接または結合基を介して結合させた構造である。ここで、該カチオン性官能基及び該炭化水素基の詳細は前述と同義である。
ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸の側鎖カルボキシ基と、該カチオン性官能基及び該炭化水素基を結合させる態様としては、側鎖カルボキシ基に直接的に結合させてもよく、適当な結合基を介して結合させてもよい。
該結合基としては特に限定されるものではないが、例えば、片末端がカルボニル基との結合性官能基であり、もう一方の片末端が前記カチオン性官能基及び前記炭化水素基との結合性官能基を有する連結基が挙げられる。
該結合基としては、例えば、酸素原子(−O−)、−NH−、硫黄原子(−S−)、−NH−(CH−(xは1〜10の整数を示す)、−NH−(CH−O−(xは1〜10の整数を示す)、−NH−(CH−NH−(xは1〜10の整数を示す)、−NH−(CH−S−(xは1〜10の整数を示す)、−O−(CH−(yは1〜10の整数を示す)、−O−(CH−O−(yは1〜10の整数を示す)、−O−(CH−NH−(yは1〜10の整数を示す)、−O−(CH−S−(yは1〜10の整数を示す)等を挙げることができる。
また、該結合基としてアミノ酸を用いてもよい。結合基として用いられるアミノ酸は、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでよく、L体であってもD体であってもよい。アミノ酸を結合基として用いる場合は、二官能性ポリマーのポリスパラギン酸またはポリグルタミン酸のカルボニル基と、該アミノ酸のN末アミノ基が結合し、他方C末カルボキシ基とエステル結合またはアミド結合を介して、前記カチオン性官能基及び前記炭化水素基を結合させる態様を挙げることができる。結合基として用いるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン等を挙げることができる。
【0027】
該二官能性ポリマー(a)のポリマー主鎖1分子当りに、前記カチオン性官能基が10〜100モル当量を導入させることが望ましい。好ましくは、ポリマー主鎖1分子当りのカチオン性官能基が、15〜80モル当量を有するポリマーである。カチオン性基が10モル当量/ポリマー分子未満の場合、核酸との静電的相互作用の総和が小さく、該二官能性ポリマー(a)と核酸との複合体形成が弱くなり好ましくない。一方、カチオン性官能基が100モル当量/ポリマー分子を超える場合、前記炭化水素基の置換基導入量のバランスをとるために、用いる主鎖ポリマーの分子量を大きくして、ポリマー主鎖における該カチオン性基及び該炭化水素基との結合性官能基数を多くする必要がある。したがって、主鎖ポリマーの分子量が大きくなりすぎて適当な濃度の水性溶液が得られないため好ましくない。
一方、該二官能性ポリマー(a)において、前記炭化水素基は前記核酸との複合体に疎水性を具備させるために必要であり、該二官能性ポリマー(a)のポリマー1分子当りに該カチオン性官能基が10モル当量以上を有することが望ましい。前記炭化水素基と前記カチオン性官能基との導入比率は、好ましくは、カチオン性官能基モル当量と前記置換基を有していてもよい炭化水素基のモル当量の比率(カチオン性官能基モル当量:前記置換基を有していてもよい炭化水素基モル当量)が1〜5:1である。より好ましくは該比率が1〜3:1である。
【0028】
前記カチオン性官能基と前記炭化水素基は、二官能性ポリマーの主鎖において側鎖修飾官能基として、それぞれ複数当量で結合させたものである。該カチオン性置換基と該炭化水素基がポリマー主鎖に結合する配列は特に限定はなく、任意に設定することができる。例えば、ポリマー主鎖に複数存在する結合性側鎖官能基に対し、該カチオン性官能基と該炭化水素基が交互に結合した配列の二官能性ポリマーであってもよく、該カチオン性官能基と該炭化水素基がそれぞれ偏局在した結合配列の二官能性ポリマーでもよく、また該カチオン性官能基と該炭化水素基がランダムな配列で結合した態様であってもよい。該二官能性ポリマー(a)としては、該カチオン性官能基と該炭化水素基が、ポリマー主鎖の側鎖結合性官能基に対し、特に制御されておらずランダムな配列でそれぞれ結合した態様が好ましい。
【0029】
本発明の二官能性ポリマー(a)の好ましい態様として、下記一般式(1)
【化4】
[式中、Rは水素原子、(C1〜C10)のアルキル基または(C7〜C10)のアラルキル基を示し、Rはメチレン基またはエチレン基を示し、Rは水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基から選択される1種を示し、Rは直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基並びに直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、Rは水酸基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R)CONH(R)からなる群から選択される1種以上の置換基を示し、該R及びRは、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、若しくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、Rは直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C10)のアルキル基または直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C10)のアラルキル基を示し、X、X及びXは結合基又は結合を示し、a、b、c、d、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は10〜200の整数であり、(a+b)は5〜200の整数であり、(c+d)は5〜200の整数であり、アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。]で示されるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体を挙げることができる。
【0030】
前記R及びRにおける(C1〜C10)のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C10)のアルキル基を示す。前記直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n−デシル基等を挙げることができる。前記分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、tert−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。前記環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
また前記R及びRにおける(C7〜C10)のアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基等を挙げることができる。
一般式(1)において、Rは、一分子中において同一官能基であっても、異なった置換基の組み合せであってもよい。好ましくは、Rは同一の官能基を用いることである。
【0031】
前記Rにおける(C1〜C6)のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等が挙げられる。
前記Rにおける(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0032】
前記Rは、二官能性ポリマー(a)における炭化水素基に相当する。該Rにおける直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルキル基とは、例えばオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
該Rにおける直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアルケニル基とは、例えば9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
該Rにおける直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C40)のアラルキル基としては、例えば2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
これら該Rの(C8〜C40)のアルキル基、(C8〜C40)のアルケニル基及び(C8〜C40)のアラルキル基は、それぞれ適当な置換基を有していてもよい。
該置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。該置換基の定義は前述と同義である。
一般式(1)において、一分子中におけるRは、同一官能基であっても、異なった置換基の組み合せであってもよい。好ましくは、Rは同一の官能基を用いることである。
【0033】
前記Rにおけるカルボキシ基が保護されたアミノ酸とは、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでもよく、該アミノ酸のカルボキシ基がエステル誘導体またはアミド誘導体として変換された官能基を示す。
エステル誘導体としては、直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C10)のアルキルエステルが好ましい。前記直鎖状アルキルエステルとしては、例えばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、n−へキシルエステル、n−デシルエステル等を挙げることができる。前記分岐鎖状アルキルエステルとしては、例えばイソプロピルエステル、tert−ブチルエステル、1−メチル−プロピルエステル、2−メチル−プロピルエステル、2,2−ジメチルプロピルエステル等が挙げられる。前記環状アルキルエステルとしては、例えばシクロプロピルエステル、シクロブチルエステル、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル、アダマンチルエステル等が挙げられる。
前記アミド誘導体としては、直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C10)のアルキルアミドが好ましい。直鎖状アルキルアミドとしては、例えばメチルアミド、エチルアミド、n−プロピルアミド、n−ブチルアミド、n−へキシルアミド、n−デシルアミド等を挙げることができる。前記分岐鎖状アルキルアミドとしては、例えばイソプロピルアミド、tert−ブチルアミド、1−メチル−プロピルアミド、2−メチル−プロピルアミド、2,2−ジメチルプロピルアミド等が挙げられる。前記環状アルキルアミドとしては、例えばシクロプロピルアミド、シクロブチルアミド、シクロペンチルアミド、シクロヘキシルアミド、アダマンチルアミド等が挙げられる。
【0034】
前記Rにおいて、−N(R)CONH(R)の該R及び該Rにおける(C3〜C6)の直鎖、分岐または環状アルキル基としては、1−プロピル基、2−プロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
該R及びRにおける3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基としては、3−ジメチルアミノプロピル基、5−ジメチルアミノペンチル基等が挙げられる。
一般式(1)において、前記Rは、水酸基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸または−N(R)CONH(R)であるが、一分子中においてこれらを1種以上含む置換基である。好ましくは、水酸基と−N(R)CONH(R)が共存した置換基である。
【0035】
一般式(1)におけるX、X及びXは、ポリマー主鎖のカルボニル基と、アルギニン誘導体、RまたはRを連結するための結合基である。該X、X及びXにおける結合基としては、片末端がカルボニル基と結合性を示す官能基を有する連結基である。例えば、−NH−(CH−(kは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−(kは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−(kは0〜6の整数を示す)、−NH−(CH−NH−(kは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−NH−(kは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−NH−(kは0〜6の整数を示す)等を挙げることができる。
また、該結合基としてアミノ酸を用いてもよい。結合基として用いられるアミノ酸は、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでもよく、L体であってもD体であってもよい。アミノ酸を結合基として用いる場合は、主鎖ポリマーの側鎖カルボニル基と、該アミノ酸のN末アミノ基が結合し、他方C末カルボキシ基とエステル結合またはアミド結合を介して、アルギニン誘導体、RまたはRを結合させる態様を挙げることができる。結合基として用いるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン等を挙げることができる。
また、カルボニル基と、アルギニン誘導体、RまたはRが直接結合できる場合であって、相当する結合性官能基がない場合は、該X、X及びXは結合を表す。
一般式(1)において、該X、X及びXは一分子中で同一結合基であってもよく、異なる結合基の混合体であってもよい。
【0036】
一般式(1)においてRがメチレン基の場合、二官能性ポリマー(a)の主鎖はポリアスパラギン酸である。ポリアスパラギン酸誘導体の主鎖の構成単位は、α−アミド型重合体、β−アミド型重合体及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位を有する。一方、一般式(1)においてRがエチレン基の場合、二官能性ポリマー(a)の主鎖がポリグルタミン酸である。ポリグルタミン酸誘導体も同様に、主鎖の構成単位は、α−アミド型重合体、γ−アミド型重合体及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位を有していて良い。
【0037】
一般式(1)におけるa、b、c、d、e、f及びgは、ポリマー主鎖にアルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位について、それぞれの含有量を示す。該a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれ独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数で、ポリマー主鎖の重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は10〜200の整数であってよい。
そのうち、アルギニン誘導体が結合した構成単位は必須構成であり、その総含量数(a+b)は5〜200の整数である。疎水性の炭化水素基であるRが結合した構成単位も必須構成であり、その総含量数(c+d)は5〜200の整数である。なお、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位は、任意の構成である。
【0038】
なお、一般式(1)で表されるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体において、アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位、Rが結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列であって良い。すなわち、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に、アルギニン誘導体が結合した構成単位、Rが結合した構成単位及びRが結合した構成単位、並びに側鎖カルボキシ基が分子内環化型をとる構成単位が、それぞれ任意の順番で配列した態様であってもよく、それぞれの構成単位が局在化して偏局した配列の態様であって良く、それぞれの構成単位に規則性がないランダム配列で構成されたポリマー構造である。
【0039】
なお、一般式(1)で示される二官能性ポリマーは、核酸と複合体を形成するためのグアニジル基と、該複合体を疎水的物性とするための炭化水素基を有する新規なポリマーである。該二官能性ポリマーは、核酸を医薬品として用いるための核酸輸送用ポリマーとして有用である。したがって、一般式(1)で表される二官能性ポリマーも、本発明に含まれる。
【0040】
前記一般式(1)で示される二官能性ポリマー(a)において、Rは(C8〜C30)のアルキル基、(C8〜C30)のアルケニル基及び(C8〜C30)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の炭化水素基であることが好ましい。
また、ポリマー主鎖の重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は15〜200の整数であることが好ましい。
更に、アルギニン誘導体が結合した構成単位の総含量数(a+b)は10〜150の整数であり、疎水性の炭化水素基であるRが結合した構成単位の総含量数(c+d)は5〜100の整数であり、(a+b):(c+d)が1〜3:1であることが好ましい。
【0041】
次に本発明の二官能性ポリマー(a)の製造方法を開示する。
本二官能性ポリマー(a)は、官能基修飾が可能なカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の反応性官能基を複数有する単鎖ポリマーに対し、適当な結合性官能基を有するカチオン性官能基含有化合物と、適当な結合性官能基を有する炭化水素基含有化合物を反応させることで調製することができる。主鎖に用いる単鎖ポリマーは、市販品をそのまま用いてもよく、重合反応により合成したものを用いてもよい。2つの官能基の反応様式は、該単鎖ポリマーの反応性官能基と、該カチオン性官能基含有化合物及び該炭化水素基含有化合物の各結合性官能基の組み合せにより、適宜設定することができる。
好ましくは、該単鎖ポリマーは反応性官能基がカルボキシ基である高分子化ポリカルボン酸化合物を用い、該カチオン性官能基含有化合物及び該炭化水素基含有化合物の各結合性官能基はアミノ基及び/または水酸基であり、アミド結合様式及び/またはエステル結合様式で結合させた二官能性ポリマーが用いられる。その場合、高分子化ポリカルボン酸化合物と、該カチオン性官能基含有化合物及び該炭化水素基含有化合物を、適当な縮合条件で反応させることで、当該二官能性ポリマーを合成することができる。縮合条件は、通常の有機合成反応で用いることができる方法を適宜使用することができる。
【0042】
前記二官能ポリマー(a)の主鎖ポリマーとして、好ましく用いられるポリアスパラギン酸の合成方法の一態様を開示する。
適当な1級アミン化合物または1級アルコール化合物に、N−カルボニルアスパラギン酸無水物を順次反応させ、片末端に1級アミン結合残基または1級アルコール結合残基を有するポリアスパラギン酸誘導体を合成する。この場合、N−カルボニルアスパラギン酸無水物において、アスパラギン酸側鎖のカルボキシ基は、ベンジルエステル等の適当なカルボン酸保護基修飾体を用いることが好ましい。得られたポリアスパラギン酸誘導体は、更に任意に、もう一方の末端基(N末端)をアシル化することもできる。このポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基の保護基を、適当な条件により脱保護基反応を行うことにより、二官能性ポリマー(a)の主鎖ポリマーとなるポリアスパラギン酸を得ることができる。
【0043】
このポリアスパラギン酸に対し、アミノ基及び/または水酸基を有する該カチオン性官能基含有化合物並びに該炭化水素基含有化合物を、カルボジイミド脱水縮合剤等の縮合反応条件にて反応させればよい。この製造方法によれば、ポリアスパラギン酸に、一般式(1)に係るRに相当する−N(R)CONH(R)基を同時に導入することができることから、有利な製造方法である。
該カルボジイミド脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)等を用いることができる。該脱水縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。
本発明において、カチオン性官能基と炭化水素基の導入量は、脱水縮合反応において、各官能基含有化合物の仕込み量を適宜増減させることで調整することができる。なお、カルボジイミド縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いた場合、−N(R)CONH(R)のR及びRはシクロへキシル基となる。ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いて縮合反応を行った場合、R及びRはイソプロピル基となる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、−N(R)CONH(R)のR及びRはエチル基と3−ジメチルアミノプロピルの混合置換体となる。
前記反応終了後に任意の精製工程を経由して本発明の二官能性ポリマー(a)を製造することができる。
前記二官能性ポリマー(a)の主鎖ポリマーとして、好ましく用いられるポリグルタミン酸の合成方法は、前述の合成例におけるN−カルボニルアスパラギン酸無水物に代えて、N−カルボニルグルタミン酸無水物を用いてポリグルタミン酸を得て、その後、該カチオン性官能基含有化合物並びに該炭化水素基含有化合物を導入させれば、主鎖ポリマーがポリグルタミン酸の二官能性ポリマー(a)を合成することができる。
【0044】
[ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)について]
本発明において、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)が用いられる。該ブロック型コポリマー(b)は、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが適当な連結基にて結合したABブロック型コポリマーである。
該ポリエチレングリコールセグメントとは、(CHCHO)単位構造の重合度が5〜20,000のポリエチレングリコール鎖を含むポリマー部を示す。好ましくは、該重合度が5〜11,500である。特に好ましくは、該重合度が40〜2,500のポリエチレングリコール鎖を含むポリマー部である。該ポリエチレングリコールフラグメントのポリエチレングリコール相当の平均分子量は、500〜900,000、好ましくは500〜500,000であり、特に好ましくは2,000〜100,000である。なお、該ポリエチレングリコールセグメントの分子量とは、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法(Gel Permeation Chromatography)により測定されるピークトップ分子量である。
【0045】
該疎水性ポリマーセグメントとしては、前記ポリエチレングリコールセグメントと比較して、相対的に疎水性を示すものであれば特に限定されずに用いることができる。例えば、疎水性側鎖を有するポリアミノ酸及びポリアミノ酸誘導体、ポリアクリル酸エステルまたはポリアクリル酸アミド誘導体、ポリメタクリル酸エステル誘導体またはポリメタクリル酸アミド誘導体、ポリマレイン酸エステル誘導体またはポリマレイン酸アミド誘導体、ポリスチレン、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のポリカルボン酸含有ポリマーまたはその誘導体、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体等が挙げられる。
該疎水性ポリマーセグメントとしては、疎水性の程度を容易に調整することが可能である理由から、ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸含有ポリマーを用い、このカルボキシ基に複数の疎水性置換基を導入したポリカルボン酸エステルまたはポリカルボン酸アミドを用いることが好ましい。より好ましくは、ポリアスパラギン酸の側鎖に、疎水性官能基を結合させたポリアスパラギン酸エステル若しくはポリアスパラギン酸アミド、またはポリグルタミン酸の側鎖に、疎水性官能基を結合させたポリグルタミン酸エステル若しくはポリグルタミン酸アミドである。
【0046】
該疎水性ポリマーセグメントの分子量は、前記ポリエチレングリコールセグメントに対し疎水性を示し、該ブロック型コポリマー(b)が親水性−疎水性の両親媒性を示すことができる程度の繰り返し重合に基づく分子量であれば、特に制限なく用いることができる。該ブロック型コポリマー(b)において、前記ポリエチレングリコールセグメントの平均分子量が2,000〜100,000である場合、該疎水性ポリマーセグメントの構造相当分子量は、セグメント相当の平均分子量として1,000〜100,000の構造部分が好ましく、特に好ましくは3,000〜60,000である。
該疎水性ポリマーセグメントとしてポリカルボン酸含有ポリマーを用いる場合、疎水基を導入するためのカルボン酸基当量に基づき該疎水性ポリマーセグメントの分子量を規定することが好ましい。該カルボン酸当量は、疎水性ポリマーセグメント当りカルボキシ基が10モル当量〜300モル当量が好ましく、より好ましくはカルボキシ基が15モル当量〜100モル当量である。すなわち、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸を用いた場合、その重合数としては10〜300が好ましく、重合数15〜100がより好ましい。
【0047】
前記ポリカルボン酸含有ポリマーを、該疎水性ポリマーセグメントの主鎖ポリマーに用いる場合、カルボキシ基に疎水性官能基を結合させて該セグメントを疎水性とする必要がある。カルボキシ基に結合させる疎水性官能基としては、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基が挙げられる。好ましくは直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C2〜C30)のアルケニル基、若しくは直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C30)のアラルキル基が挙げられる。
該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
該アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
該アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、4−フェニルブチル基等が挙げられる。
前記の疎水性官能基は、ポリカルボン酸含有ポリマーのカルボキシ基とエステル型またはアミド型で結合されることが好ましい。したがって、前記疎水性官能基としては、対応する疎水性官能基を有するアルコール誘導体またはアミン誘導体としてポリカルボン酸含有ポリマーに導入される態様が好ましい。
【0048】
前記疎水性官能基は、ポリカルボン酸含有ポリマーの全てのカルボキシ基に導入されていてもよく、一部のカルボキシ基に導入されていてもよい。該疎水性官能基が導入されないカルボキシ基は、カルボン酸状態であっても、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等のカルボン酸塩であっても、その他の置換基が導入された構造であってもよい。
前記疎水性官能基は、該ブロック型コポリマー(b)の疎水性ポリマーセグメントの疎水性物性を構成するものであり、該疎水性官能基の導入量及び導入率により疎水性ポリマーセグメントの疎水性物性が決定される。すなわち、該疎水性官能基の導入量が多く、また該疎水性官能基の導入率が高い程、高い疎水性物性となる。疎水基導入率は、ブロック型コポリマー(b)の両親媒性を考慮して決定するべきである。
【0049】
ブロック型コポリマー(b)における該疎水性ポリマーセグメントは、主鎖ポリマー構造がポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体であることが好ましい。更に、該疎水性ポリマーセグメントにおいて、該ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体が、側鎖カルボキシ基に疎水性基が直接または結合基を介して結合したセグメント構造を有し、該疎水性基が、直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C2〜C30)のアルケニル基または直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C30)のアラルキル基から選択される1種以上であることが好ましい。
より好ましくは、ブロック型コポリマー(b)において、ポリエチレングリコールセグメントが、エチレンオキシ単位;(CHCHO)が5〜11,500の繰り返し単位構造である。また、疎水性ポリマーセグメントが、アスパラギン酸誘導体単位またはグルタミン酸誘導体単位が5〜200の繰り返し単位構造のポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体である。更には、該疎水性基が側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して結合しており、該疎水性基が、直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C2〜C30)のアルケニル基または直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C30)のアラルキル基から選択される1種以上の疎水性基であり、疎水性基が結合したアスパラギン酸誘導体単位または疎水基が結合したグルタミン酸誘導体単位が3〜200を有するブロック型コポリマー(b)である。
【0050】
疎水性基とポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸の側鎖カルボキシ基の結合を介する結合基とは、片末端がカルボニル基との結合性官能基であり、もう一方の片末端が、前記炭化水素基との結合性官能基を有する連結基である。
例えば、酸素原子(−O−)、−NH−、硫黄原子(−S−)、−NH−(CHx’−(x’は1〜10の整数を示す)、−NH−(CHx’−O−(x’は1〜10の整数を示す)、−NH−(CHx’−NH−(x’は1〜10の整数を示す)、−NH−(CHx’−S−(x’は1〜10の整数を示す)、−O−(CHy’−(y’は1〜10の整数を示す)、−O−(CHy’−O−(y’は1〜10の整数を示す)、−O−(CHy’−NH−(y’は1〜10の整数を示す)、−O−(CHy’−S−(y’は1〜10の整数を示す)等を挙げることができる。
また、該結合基としてアミノ酸を用いてもよい。アミノ酸としては、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでも良い。結合基としてのアミノ酸は、N末端アミノ基がポリマー主鎖のカルボキシ基とアミド結合し、もう一方のC末端カルボキシ基が、エステル結合またはアミド結合を介して、前記疎水性基と結合した態様を挙げることができる。
【0051】
本発明のポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマーブロック型コポリマー(b)の好ましい態様として、下記一般式(2)
【化5】
[式中、R11は水素原子若しくは(C1〜C10)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示し、R12はメチレン基またはエチレン基を示し、R13は水素原子、(C1〜C6)のアシル基及び(C1〜C6)のアルキルオキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R14は(C1〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、(C2〜30)の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基、(C7〜C30)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸からなる群から選択される1種類以上の基を示し、R15は水酸基及び/または−N(R17)CONH(R18)を示し、ここでR17及びR18は、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基もしくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基を示し、R16は(C1〜C6)アルキレン基を示し、X11は結合基又は結合を示し、tは5〜11500の整数を示し、m、n、o、p及びqは独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数である(m+n+o+p+q)は5〜200の整数を示し、(m+n)は3〜200の整数を示し、R14が結合した構成単位、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。]で示されるブロック型コポリマーを挙げることができる。
【0052】
前記R11における(C1〜C10)のアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C10)のアルキル基を示す。直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n−デシル基等を挙げることができる。分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、tert−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0053】
一般式(2)において、tは(CHCHO)単位構造の重合度を示し、5〜11,500である。好ましくはtが10〜5,000である。
前記R13の(C1〜C6)のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等が挙げられる。
前記R13における(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0054】
前記R14の(C1〜C30)のアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C1〜C30)のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−へキシル基、1−オクチル基、1−ドデシル基、1−テトラデシル基、1−ヘキサデシル基、1−オクタデシル基等を挙げることができる。
前記R14の(C2〜C30)のアルケニル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C2〜C30)のアルケニル基である。例えば、エチレン基、プロピレン基、2−ブテニル基、シクロヘキセニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
前記R14の(C7〜C30)アラルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C30)アラルキル基である。例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、6−フェニルへキシル基等を挙げることができる。
【0055】
前記置換基において、有していてもよい置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。該置換基の定義は、二官能性ポリマー(a)における置換基の記載事項と同義である。
【0056】
前記R14の、カルボキシ基が保護されたアミノ酸とは、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでもよく、該アミノ酸のカルボキシ基においてエステル誘導体またはアミド誘導体として変換された置換基を示す。
該エステル誘導体は直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C10)のアルキルエステルが好ましい。直鎖状アルキルエステルとしては、例えばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、n−ブチルエステル、n−へキシルエステル、n−デシルエステル等を挙げることができる。分岐鎖状アルキルエステルとしては、例えばイソプロピルエステル、tert−ブチルエステル、1−メチル−プロピルエステル、2−メチル−プロピルエステル、2,2−ジメチルプロピルエステル等が挙げられる。環状アルキルエステルとしては、例えばシクロプロピルエステル、シクロブチルエステル、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル、アダマンチルエステル等が挙げられる。
該アミド誘導体としては、直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C10)アルキルアミドが好ましい。直鎖状アルキルアミドとしては、例えばメチルアミド、エチルアミド、n−プロピルアミド、n−ブチルアミド、n−へキシルアミド、n−デシルアミド等を挙げることができる。分岐鎖状アルキルアミドとしては、例えばイソプロピルアミド、tert−ブチルアミド、1−メチル−プロピルアミド、2−メチル−プロピルアミド、2,2−ジメチルプロピルアミド等が挙げられる。環状アルキルアミドとしては、例えばシクロプロピルアミド、シクロブチルアミド、シクロペンチルアミド、シクロヘキシルアミド、アダマンチルアミド等が挙げられる。
【0057】
前記R15は、−N(R17)CONH(R18)であってもよい。該R17及びR18は、同一でも異なっていてもよく、(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基、若しくは3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基である。該(C3〜C6)の直鎖状、分岐鎖状または環状アルキル基としては、1−プロピル基、2−プロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基が挙げられる。該3級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)のアルキル基としては、3−ジメチルアミノプロピル基、5−ジメチルアミノペンチル基等が挙げられる。
【0058】
前記R16は、ポリエチレングリコールセグメントと、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントを結合するための連結基であり、(C1〜6)のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基を挙げられる。
【0059】
一般式(2)におけるX11は、カルボニル基とR14基を連結するための結合基である。該X11における結合基としては、片末端がカルボニル基と結合性を示す官能基を有する連結基である。例えば、酸素原子(−O−)、−NH−、硫黄原子(−S−)、−NH−(CH−O−(rは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−O−(rは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−O−(rは0〜6の整数を示す)、−NH−(CH−NH−(rは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−NH−(rは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−NH−(rは0〜6の整数を示す)、−NH−(CH−NHCO−(rは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−NHCO−(rは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−NHCO−(rは0〜6の整数を示す)、−NH−(CH−CONH−(rは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−CONH−(rは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−CONH−(rは0〜6の整数を示す)、−NH−(CH−CO−O−(rは0〜6の整数を示す)、−O−(CH−CO−O−(rは0〜6の整数を示す)、−S−(CH−CO−O−(rは0〜6の整数を示す)等を挙げることができる。
また、X11はカルボニル基とR14が直接結合できる場合であって、相当する結合性官能基がない場合は、該X11は結合を表す。
更に、X11としてアミノ酸結合残基を結合基して用いてもよい。結合基として用いられるアミノ酸は、天然型アミノ酸、非天然型アミノ酸のいずれでもよい。X11がアミノ酸結合残基であり、該結合基としてアミノ酸を用いる場合、疎水性ポリマーセグメントのカルボニル基と、該アミノ酸のN末アミノ基が結合し、他方C末カルボキシ基とエステル結合またはアミド結合を介してR14基を結合させる態様を挙げることができる。したがって、X11としてアミノ酸結合残基を用いる場合、X11は−NH−C(R20)−COO−(R20は用いるアミノ酸の側鎖を示す)で示される結合基である。
【0060】
一般式(2)において、R12がメチレン基の場合、該ブロック型コポリマー(b)の疎水性ポリマーセグメントの主鎖は、ポリアスパラギン酸となる。該ポリアスパラギン酸の構成単位は、α−アミド型重合体、β−アミド型重合体及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位を有する。一方、一般式(2)においてR12がエチレン基の場合、該ブロック型コポリマー(b)における疎水性ポリマーセグメントの主鎖はポリグルタミン酸となる。該ポリグルタミン酸も同様に、主鎖の構成単位は、α−アミド型重合体、γ−アミド型重合体及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型の構成単位を有していてもよい。
【0061】
一般式(2)における、m、n、o、p及びqは、疎水性ポリマーセグメントのポリマー主鎖にR14が結合した構成単位、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位において、それぞれの含有量を示す。該m、n、o、p及びqは、それぞれ独立に0〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体の単位構成の総重合数で、疎水性ポリマーセグメントであるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体のポリマー主鎖の重合数である(m+n+o+p+q)は5〜200の整数である。そのうち、R14が結合した構成単位は必須構成であり、その総含量数(m+n)は3〜200の整数である。なお、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位は、任意の構成である。
なお、一般式(2)において、疎水性ポリマーセグメントであるポリアスパラギン酸誘導体セグメントまたはポリグルタミン酸誘導体セグメントにおいて、R14が結合した構成単位、R15が結合した構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型構成単位は、それぞれ独立してランダムな配列である。すなわち、ポリアスパラギン酸誘導体セグメントまたはポリグルタミン酸誘導体セグメントの側鎖カルボキシ基に、R14が結合した構成単位及びR15が結合した構成単位、並びに側鎖カルボキシ基が分子内環化型構造をとる構成単位が、それぞれ任意の順番で配列した態様であってもよく、それぞれの構成単位が局在化して偏局した配列の態様であってもよく、それぞれの構成単位に規則性がないランダム配列で構成されたポリマー構造であってもよい。
【0062】
前記一般式(2)で示されるブロック型コポリマー(b)において、R14が直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の(C8〜C30)アルケニル基、直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C20)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であり、X11が酸素原子(−O−)または−NH−であることが好ましい。
また、疎水性ポリマーセグメントであるポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体のポリマー主鎖の重合数である(m+n+o+p+q)は6〜150の整数であり、R14基が結合した構成単位の総含量数(m+n)が3〜150の整数であることが好ましい。
【0063】
次に、本発明のポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントを連結した構造体であるブロック型コポリマー(b)の製造方法について説明する。
本発明のブロック型コポリマー(b)の製造方法は特に限定されるものではないが、あらかじめそれぞれ調製したポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントを結合する方法でもよく、ポリエチレングリコールセグメントに対し、疎水性ポリマーセグメントの重合性モノマー体を逐次重合反応させてブロック型コポリマーを構築する方法であってもよい。若しくは、ポリエチレングリコールと疎水性ポリマーセグメントの前駆体を結合させたABブロック型コポリマーをあらかじめ調製し、これに適当な疎水性官能基を導入して調製する方法であってもよい。
好ましくは、疎水性ポリマーセグメントの前駆体として、ポリアスパラギン酸等のポリカルボン酸ポリマーセグメントを用い、ポリエチレングリコールとポリカルボン酸ポリマーセグメントを結合させたABブロック型コポリマーをあらかじめ調製し、これに適当な疎水性官能基をアミド結合様式及び/またはエステル結合様式により、適当な縮合条件で反応させることで製造することができる。縮合条件は、通常の有機合成反応で用いることができる方法を適宜使用することができる。
【0064】
前記ブロック型コポリマー(b)の主鎖ポリマーとして、好ましく用いられるポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントが連結したABブロック型コポリマーを用い、これに疎水性官能基を導入して該ブロック型コポリマー(b)を得る製造方法の一態様を説明する。
一方の末端がアミノ基であるポリエチレングリコール誘導体(例えば、メトキシポリエチレングリコール−1−プロピルアミン)に、β−ベンジルエステル等の適当な側鎖カルボキシ基保護のN−カルボニルアスパラギン酸無水物を順次反応させて、逐次重合によりポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントが連結したABブロック型コポリマー骨格を構築する。その後、適当な脱保護反応を施し、複数のカルボン酸を備えるABブロック型コポリマーを合成する。ポリアスパラギン酸側鎖がβ−ベンジルエステルの場合、アルカリ条件下での加水分解や、加水素分解反応により脱保護基反応をすることができる。
この複数のカルボン酸を備えるABブロック型コポリマーに対し、アミノ基及び/または水酸基を有する炭化水素基等の疎水性基含有化合物を、カルボジイミド脱水縮合剤等の縮合反応条件にて反応させればよい。この製造方法によれば、ABブロック型コポリマーに、一般式(2)に係るR15に相当する−N(R17)CONH(R18)基を同時に導入することができることから、有利な製造方法である。
【0065】
該カルボジイミド脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)等を用いることができる。該脱水縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。
ブロック型コポリマー(b)の炭化水素基等の疎水性官能基の導入量は、脱水縮合反応において、各疎水性基含有化合物の仕込み量を適宜増減させることで調整することができる。なお、カルボジイミド縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いた場合、−N(R17)CONH(R18)のR17及びR18はシクロへキシル基となる。ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いて縮合反応を行った場合、R17及びR18はイソプロピル基となる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、−N(R17)CONH(R18)のR17及びR18はエチル基と3−ジメチルアミノプロピルの混合置換体となる。
前記反応終了後に、任意の精製工程を経由して本発明のブロック型コポリマー(b)を製造することができる。
前記ブロック型コポリマー(b)の疎水性ポリマーセグメントとして、好ましく用いられるポリグルタミン酸の合成方法は、前述の合成例におけるN−カルボニルアスパラギン酸無水物に代えて、N−カルボニルグルタミン酸無水物を用いてポリグルタミン酸を得て、その後、該炭化水素基含有化合物を導入させれば、疎水性ポリマーセグメントがポリグルタミン酸のブロック型頃リマー(b)を合成することができる。
【0066】
[脂溶性添加剤(c)について]
本発明における脂溶性添加剤(c)としては、例えば、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンD及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンK及びその誘導体並びにコレステロール及びその誘導体等が挙げられる。
【0067】
ビタミンA及びその誘導体としては、例えば、レチノール、レチナール、レチノイン酸、下記一般式(3)で表される化合物
【化6】
[式中、R20はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1種を示す。]、下記一般式(4)で表される化合物
【化7】
[式中、X21はNH、酸素原子、硫黄原子を示し、R21はアルキル基、アルケニル基等を示す。]、及び下記一般式(5)で表される化合物
【化8】
[式中、X22はNH、酸素原子、硫黄原子を示し、R22はアルキル基、アルケニル基、ポリエチレングリコール等を示す。]等が挙げられる。
【0068】
一般式(3)で表される化合物中、R20としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0069】
一般式(4)で表される化合物中、X21はNHもしくは酸素原子が好ましい。
21としてはアルキル基、アルケニル基が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基が挙げられる。
【0070】
一般式(5)で表される化合物中、X22はNHもしくは酸素原子が好ましい。
22としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基、または分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0071】
前記R20、R21、R22における前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
前記R20、R21、R22における前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
前記R20における前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、ドデカノキシ基、オクタドデカノキシ基等が挙げられる。
前記R20における前記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、n−オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
前記R20における前記アルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、9−ヘキサデセニルオキシ基、cis−9−オクタデセニルオキシ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルオキシ基等が挙げられる。
前記R20における前記アルケニルアミノ基としては、例えば、エテニルアミノ基、1−プロペニルアミノ基、1−ブテニルアミノ基、9−ヘキサデセニルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルアミノ基等が挙げられる。
前記R20における前記ポリエチレングリコールとしては、(CHCHO)基の繰り返し構造を含む基であり、分子量100〜10,000のセグメント構造を指す。該ポリエチレングリコールの末端基としては、水酸基、(C1〜C6)のアルコキシ基である。また、一般式(3)における結合側末端は、結合、酸素原子(−O−)、−NH−、−OCO−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−O−(n’は1〜4の整数を示す)等の結合基であってよい。
【0072】
脂溶性添加剤(c)において、ビタミンD及びその誘導体としては、例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、下記一般式(6)で表される化合物
【化9】
[式中、R31はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等を示す。]及び下記一般式(7)で表される化合物
【化10】
[式中、R32はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等を示す。]等が挙げられる。
【0073】
一般式(6)で表される化合物中、R31としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
一般式(7)で表される化合物中、R32としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基、または分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0074】
前記R31、R32における前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、ドデカノキシ基、オクタドデカノキシ基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、n−オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記アルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、9−ヘキサデセニルオキシ基、cis−9−オクタデセニルオキシ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルオキシ基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記アルケニルアミノ基としては、例えば、エテニルアミノ基、1−プロペニルアミノ基、1−ブテニルアミノ基、9−ヘキサデセニルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルアミノ基等が挙げられる。
前記R31、R32における前記ポリエチレングリコールとしては、(CHCHO)基の繰り返し構造を含む基であり、分子量100〜10,000のセグメント構造を指す。該ポリエチレングリコールの末端基としては、水酸基、(C1〜C6)のアルコキシ基である。また、一般式(6)及び(7)における結合側末端は、結合、酸素原子(−O−)、−NH−、−OCO−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−O−(n’は1〜4の整数を示す)等の結合基であってよい。
【0075】
脂溶性添加剤(c)おいて、ビタミンE及びその誘導体としては、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、及び下記一般式(8)で表される化合物
【化11】
[式中、R41はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等を示す。]等が挙げられる。
【0076】
一般式(8)で表される化合物中、R41としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基または分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0077】
前記R41における前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
前記R41における前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
前記R41における前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、ドデカノキシ基、オクタドデカノキシ基等が挙げられる。
前記R41における前記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
前記R41における前記アルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、9−ヘキサデセニルオキシ基、cis−9−オクタデセニルオキシ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルオキシ基等が挙げられる。
前記R41における前記アルケニルアミノ基としては、例えば、エテニルアミノ基、1−プロペニルアミノ基、1−ブテニルアミノ基、9−ヘキサデセニルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルアミノ基等が挙げられる。
前記R41における前記ポリエチレングリコールとしては、(CHCHO)基の繰り返し構造を含む基であり、分子量100〜10,000のセグメント構造を指す。該ポリエチレングリコールの末端基としては、水酸基、(C1〜C6)のアルコキシ基である。また、一般式(8)における結合側末端は、結合、酸素原子(−O−)、−NH−、−OCO−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−O−(n’は1〜4の整数を示す)等の結合基であってよい。トコフェロール−ポリエチレングリコール結合誘導体の結合基としては、コハク酸結合基が好ましく、例えば、α−トコフェロール−ポリエチレングリコールコハク酸エステル、β−トコフェロール−ポリエチレングリコールコハク酸エステル、γ−トコフェロール−ポリエチレングリコールコハク酸エステル、δ−トコフェロール−ポリエチレングリコールコハク酸エステル等を用いることができる。
【0078】
脂溶性添加剤(c)において、ビタミンK及びその誘導体としては、例えば、フィロキノン、メナキノン、メナジオン、メナジオール等が挙げられる。
【0079】
脂溶性添加剤(c)において、コレステロール類及びその誘導体としては、例えば、コレステロール、コレスタノール、ストロファンチジン、及び下記一般式(9)で表される化合物
【化12】
[式中、R51はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等を示す。]等が挙げられる。
【0080】
一般式(9)で表される化合物中、R51としてはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、アルケニルアミノ基、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは(C1〜C20)のアルキル基、(C2〜C20)のアルケニル基、(C1〜C20)のアルコキシ基、(C1〜C20)のアルキルアミノ基、(C2〜C20)のアルケニルオキシ基、(C2〜C20)のアルケニルアミノ基及び分子量100〜10,000のポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0081】
51における前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。
51における前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、9−ヘキサデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニル基等が挙げられる。
51における前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、ドデカノキシ基、オクタドデカノキシ基等が挙げられる。
51における前記アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
51における前記アルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、9−ヘキサデセニルオキシ基、cis−9−オクタデセニルオキシ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルオキシ基等が挙げられる。
51における前記アルケニルアミノ基としては、例えば、エテニルアミノ基、1−プロペニルアミノ基、1−ブテニルアミノ基、9−ヘキサデセニルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、cis、cis−9、12−オクタデカジエニルアミノ基等が挙げられる。
前記R51における前記ポリエチレングリコールとしては、(CHCHO)基の繰り返し構造を含む基であり、分子量100〜10,000のセグメント構造を指す。該ポリエチレングリコールの末端基としては、水酸基、(C1〜C6)のアルコキシ基である。また、一般式(9)における結合側末端は、結合、酸素原子(−O−)、−NH−、−OCO−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−COO−(n’は1〜4の整数を示す)、−O−(CHn’−O−(n’は1〜4の整数を示す)等の結合基であってよい。
【0082】
本発明において、脂溶性添加剤(c)として好ましくは、ビタミンE誘導体、ビタミンD誘導体またはコレステロール誘導体を用いることが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。特に好ましくは、ビタミンE誘導体であるトコフェロール及びトコフェロール−ポリエチレン結合誘導体、ビタミンD誘導体であるエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロール、コレステロール誘導体であるコレステロール及びコレステロールアシル誘導体を用いることが好ましい。
本発明で用いる脂溶性添加剤(c)としては、市販品として入手できるものであり、流通している化合物をそのまま用いてよい。
【0083】
本発明の核酸輸送用組成物は、カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)及び脂溶性添加剤(c)を含有するものである。該二官能性ポリマー(a)、該ブロック型コポリマー(b)及び該脂溶性添加剤(c)の混合比は特に限定されるものではないが、好ましくは、各成分の質量比で、該二官能性ポリマー(a):該ブロック型コポリマー(b):該脂溶性添加剤(c)=1:0.1〜10:0.1〜10である。より好ましくは、該二官能性ポリマー(a):該ブロック型コポリマー(b):該脂溶性添加剤(c)=1:0.1〜5:0.1〜5である。
該核酸輸送用組成物において、該ブロック型コポリマー(b)及び該脂溶性添加剤(c)の添加量を増やすことにより、これらの成分に強固な相互作用が生じ、強い会合性複合体を調製することができ、核酸医薬の強固な保持と血中投与における血中滞留性を指向することができる。一方、該ブロック型コポリマー(b)及び該脂溶性添加剤(c)の添加量を減量することで、緩やかな相互作用による会合性複合体とすることができ、核酸医薬成分の速い放出を指向することができる。
【0084】
本発明の核酸輸送用組成物は、該二官能性ポリマー(a)、該ブロック型コポリマー(b)及び脂溶性添加剤(c)は上述したそれぞれの構造の構成成分を用いれば、特にその組み合わせは限定されず、各構成成分を任意に選択して組み合わせて使用することができる。しかしながら、本発明の核酸輸送用組成物は、生体投与後に被輸送体である核酸分子を効率的に細胞内にて放出させることを目的とする場合には、核酸成分の放出性を高める組成物とする必要がある。
核酸放出性を高めた核酸輸送用組成物とする場合、該二官能性ポリマー(a)と該ブロック型コポリマー(b)は、互いの疎水性官能基及びポリマー主鎖が異なる構造とすることが好ましい。すなわち、例えば該二官能性ポリマー(a)がポリグルタミン酸をポリマー主鎖とし、疎水性官能基として直鎖状の(C8〜C30)のアルキル基を結合させた構造の場合、該ブロック型コポリマー(b)は疎水性ポリマーセグメントのポリマー主鎖をポリアスパラギン酸とし、疎水性官能基として(C7〜C30)のアラルキル基を結合させた構造を組み合わせる組成を挙げることができる。またその逆の態様として、ポリアスパラギン酸を主鎖として、疎水性官能基として(C7〜C30)のアラルキル基を導入した該二官能性ポリマー(a)を用いた場合、組み合わせる該ブロック型コポリマー(b)は、ポリグルタミン酸を疎水性ポリマーセグメントの主鎖とし、直鎖状の(C8〜C30)のアルキル基疎水性官能基として付与した組成とすることが好ましい。
このような組成とすることにより、該二官能性ポリマー(a)が核酸と形成する複合体と、該ブロック型コポリマー(b)の間に生じる疎水性相互作用は比較的弱くなるため、該複合体と該ブロック型コポリマー(b)による会合体形成は弱い凝集力に基づくものとなる。したがって、生体内に投与された後に、核酸を包含する該複合体の速やかな解離−放出を促すことができる。このように、本発明の核酸輸送用組成物の二官能性ポリマー(a)及びブロック型コポリマー(b)の各ポリマー構造は、核酸成分の放出性を調整することを目的に、適宜、設計すればよい。
【0085】
本発明の核酸輸送用組成物は、核酸と混合して該核酸を生体内に投与し、標的組織へ送達させた後、標的組織細胞へ該核酸を輸送することに用いられる。したがって本発明には、前記二官能性ポリマー(a)、前記ブロック型コポリマー(b)及び前記脂溶性添加剤(c)を含む核酸輸送用組成物に、核酸を含有させた核酸医薬組成物も含まれる。
本発明において、核酸医薬組成物に使用される核酸は制限されない。即ち、該核酸としてはDNA、RNA、天然または非天然の核酸類縁体(例えばペプチド核酸等)、改変核酸、修飾核酸等が挙げられるが、何れであってもよい。また、核酸は一本鎖でも二本鎖でも良く、タンパク質のコード化の有無やその他の機能の有無も制限されない。
但し、核酸としては、生体内に送達された場合に生体、組織、細胞等に対して何らかの作用を及ぼしうる機能性核酸であることが好ましい。機能性核酸としては、プラスミドDNA、siRNA、miRNA(マイクロRNA)、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ核酸、リボザイム、DNA酵素、各種抑制遺伝子(癌抑制遺伝子等)、機能性の改変核酸・修飾核酸(例えば、核酸のリン酸部分がホスホロチオエート、メチルホスホナート、ホスフェートトリエステル、ホスホロアミデート等に改変された核酸や、コレステロールやビタミンE等の疎水性官能基が結合された核酸)等が挙げられる。これらは核酸送達用組成物の用途に応じて選択される。
【0086】
プラスミドDNAとしては、標的細胞・組織において所望の機能を発揮し得るものであればよい。斯かるプラスミドDNAは種々のものが知られており、当業者であれば核酸送達用組成物の用途に応じて所望のプラスミドDNAを選択することが可能である。
また、siRNAとしては、RNA干渉(RNAi)を利用して目的の遺伝子の発現を抑制し得るものであればよい。RNA干渉の目的遺伝子としては、癌(腫瘍)遺伝子、抗アポトーシス遺伝子、細胞周期関連遺伝子、増殖シグナル遺伝子等が好ましくあげられる。また、siRNAの塩基長は限定されないが、通常30塩基未満、好ましくは10〜25塩基である。
本発明において、核酸としては、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAを用いることが好ましく、siRNA、miRNA、アンチセンスRNAを用いることが好ましい。特に好ましくは、塩基長が10〜25塩基であるsiRNAを適用することが好ましい。
【0087】
本発明の核酸輸送用組成物は、核酸と混合して複合体を形成することにより核酸医薬組成物として用いることができる。該核酸医薬組成物を調製する場合、該核酸は前記二官能性ポリマー(a)と静電的相互作用により複合体を形成する。このため、核酸の適用量は、二官能性ポリマー(a)との適用量で設定され、核酸のリン酸基(P)と該二官能性ポリマー(a)のカチオン電荷(N)の比で規定される。核酸と適用量である、核酸のリン酸基(P)と該二官能性ポリマー(a)のカチオン電荷(N)の比(N/P)は特に限定されるものではないが、好ましくはN/P=0.5〜50であり、より好ましくはN/P=1〜20である。
【0088】
本発明の核酸医薬組成物は、カチオン性官能基と炭化水素基が導入された二官能性ポリマー(a)、ポリエチレングリコールセグメントと疎水性ポリマーセグメントが連結したブロック型コポリマー(b)及び脂溶性添加剤(c)を含む核酸輸送用組成物と、核酸との混合物を調製することにより作製される。該核酸医薬組成物は、核酸を含む全ての構成成分が相互作用することにより、会合体が形成されるものである。すなわち、核酸のアニオン電荷と該二官能性ポリマー(a)のカチオン電荷による静電的相互作用による複合体(ポリイオンコンプレックス、PICともいう)形成により核酸が保持される。該複合体は、二官能性ポリマー(a)に由来する炭化水素基を具備していることから疎水性である。このため該複合体は、ブロック型コポリマー(b)及び脂溶性添加剤(c)との疎水性相互作用により会合体が形成される。該会合体は、動的光散乱法による分析で明確な光散乱強度が観測されることから、数ナノメートル〜数百ナノメートル程度のナノ粒子状の会合体を形成していると考えられる。
【0089】
当該会合体の調製方法は特に限定されるものではないが、二官能性ポリマー(a)、ブロック型コポリマー(b)を、水を含む溶媒に溶解し、これに核酸水溶液を添加した後、脂溶性添加剤(c)のアルコール溶液を添加することにより調製することができる。または、二官能性ポリマー(a)、ブロック型コポリマー(b)を、水を含む溶媒に溶解し、これに脂溶性添加剤(c)のアルコール溶液を添加した後、核酸水溶液を添加することにより調製することができる。
【0090】
本発明の核酸医薬組成物は、インビトロまたはインビボにおいて、核酸を標的細胞または組織に送達するために使用できる。本発明の核酸医薬組成物によれば、標的細胞内へ安定したまま送達することが困難であった核酸を、容易に安定化した状態で送達することができる。更に、遺伝子の発現を抑制する核酸を用い、これを細胞または組織に送達して効果を発現させる場合には、本発明の核酸医薬組成物を用いることにより、高い遺伝子発現抑制効率を得ることが可能となる。
本発明の核酸医薬組成物を用いて核酸を標的細胞または組織に送達するには、核酸医薬組成物が標的細胞または組織と接触し得る状態にすればよい。
インビトロで本発明の核酸医薬組成物と標的細胞または組織との接触を達成するには、本発明の核酸医薬組成物の存在下で、標的細胞または組織を培養するか、標的細胞または組織の培養物中に該核酸医薬組成物を添加すればよい。
インビボで本発明の核酸医薬組成物と標的細胞または組織との接触を達成するには、遺伝子治療等の当該技術分野で常用されている投与方法により、本発明の核酸医薬組成物を、当該核酸の導入を必要とする個体(または処置すべき個体)に投与すればよい。このような個体としては、限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、鳥類等を挙げることができる。投与方法としては、標的細胞または組織の近傍または組織内への直接導入または移植、静脈注入、動脈注入、筋肉注入、経口投与、経肺投与等を挙げることができる。投与量、投与回数及び投与期間などの各条件は、被験動物の種類及び状態等に合わせて適宜設定することができる。
【0091】
本発明の核酸医薬組成物による治療対象となる疾患としては、遺伝子の不適切な機能発現により引き起こされる疾患であれば、特に限定されるものではないが、例えば癌(肺癌、膵臓癌、脳腫瘍、肝癌、乳癌、大腸癌、神経芽細胞種及び膀胱癌等)、循環器疾患、運動器疾患、中枢系疾患等が挙げられる。
【0092】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤において一般に用いられている、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、賦形剤、増量剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等が挙げられる。斯かる他の添加剤は1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。これらの他の成分の種類や使用量等の詳細は、医薬組成物の目的、用途、使用方法等に応じて、当業者であれば適宜決定することが可能である。
本発明の医薬組成物の形態も任意であるが、通常は静脈内注射剤(点滴を含む)が採用され、例えば単位投与量アンプルまたは他投与量容器の状態等で提供される。
本発明の医薬組成物の使用方法も任意である。核酸輸送用組成物を含む医薬組成物であればそのまま投与することが可能である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
なお使用したsiRNAは、siCON(ランダム配列(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);北海道システムサイエンス社製)、siLuc(ルシフェラーゼコード(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);北海道システムサイエンス社製)、FAM−siLuc(ルシフェラーゼコードの蛍光標識体(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);北海道システムサイエンス社製)、siR2B(RRM2コード(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);コスモ・バイオ株式会社製)を用いた。
また本発明品及び比較例において、水溶液中で構成する会合体の分析平均粒子径は、動的光散乱法(ゼータサイザーナノ−ZS、Malvern社製)にて測定した。
【0094】
[合成例1] 化合物1(平均重合数55のポリグルタミン酸)の合成
n−ブチルアミン(東京化成製)23μLをDMSO20mLに溶解後、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N−カルボン酸無水物3gを加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液に、エタノール80mL及びジイソプロピルエーテル320mLを加えて、室温にて3時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、40mL)で洗浄した。
沈析物を真空乾燥して得られた固形物(2.6g)を、DMF50mLに50℃にて溶解後、室温にて無水酢酸1mLを加えて、同温度で一夜攪拌した。反応液に、酢酸エチル100mL及びジイソプロピルエーテル400mLを加えて、室温にて3時間攪拌した。沈析物を濾取して、酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、50mL)で洗浄した。沈析物を真空乾燥して得られた固形物(2.5g)を得た。
この沈析固形物2gに、DMF42mLを添加して50℃で溶解後、室温にて、5%パラジウム−炭素(NEケムキャット社製)200mgを加え、室温にて一夜、加水素分解を行った。反応液に活性炭400mgを加えたのち、濾過を行い、触媒等を濾別した。その後、反応液に酢酸エチル192mL及びジイソプロピルエーテル768mLを加えて、室温にて3時間攪拌し、沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100mL)で洗浄した。沈析物を真空乾燥して、化合物1(1.6g)を得た。
H−NMR(400MHz、DO、ppm):0.70(t、n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.16(dd、グルタミン酸αCH、1H、積分値54.93)
積分値から算出されたモル比から、重合数は55と算出された。
【0095】
[合成例2] 化合物2(平均重合数102のポリグルタミン酸)の合成
n−ブチルアミン(東京化成製)11μLをDMSO40mlに溶解後、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N−カルボン酸無水物3gを加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液に、酢酸エチル160mL及びジイソプロピルエーテル640mLを加えて、室温にて3時間攪拌し、沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100mL)で洗浄した。
沈析物を真空乾燥して得られた固形物(2.4g)を、DMF50mLに50℃にて溶解後、室温にて無水酢酸1mLを加えて、同温度で一夜攪拌した。反応液に、酢酸エチル100mL及びジイソプロピルエーテル400mLを加えて、室温にて3時間攪拌し、沈析物を濾取して、酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、50mL)で洗浄した。沈析物を真空乾燥して、固形物(2.4g)を得た。
この沈析固形物2gに、DMF42mLを添加して50℃にて溶解後、室温にて5%パラジウム−炭素(NEケムキャット社製)200mgを加え、室温にて一夜、加水素分解を行った。反応液に活性炭400mgを加えたのち、濾過を行い、触媒等を濾別後、反応液に酢酸エチル192mL及びジイソプロピルエーテル768mLを加えて室温にて3時間攪拌し、沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100mL)で洗浄した。沈析物を真空乾燥して、化合物2(1.5g)を得た。
H−NMR(400MHz、DO、ppm):0.71(t、n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.15(dd、グルタミン酸αCH、1H、積分値101.73)
積分値から算出されたモル比から、重合数は102と算出された。
【0096】
[合成例3] 化合物3(重合数が55のグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)の合成
合成例1で得られた化合物1(76mg)をDMF2mLに溶解し、25℃にてステアリルアミン(東京化成製)48mg、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、HOBtと記載)88mg、ジイソプロピルカルボジイミド(以下、DIPCIと記載)183μLを加えて、25℃にて1時間撹拌後、別容器にて調製したL‐アルギニンメチルエステル2塩酸塩(国産化学製)108mg、トリエチルアミン115μL、DMF1.4mLの混合液を投入し、さらに25℃にて一夜撹拌した。反応液に、エタノール13mL及びジイソプロピルエーテル53mLを加えて、室温にて2時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20mL)で洗浄した。得られた沈析物を0.1N塩酸水1mLに懸濁後、アセトン20mLを加えて30分撹拌した。沈析物を集め、アセトン5mLで洗浄し乾燥後、水40mLに溶解し、不溶物を濾別後、アセトニトリル100mLを加え、イオン交換樹脂カラム(ダウケミカル製 ダウエックス50(H)、5mL)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、10mL)にて溶出した。得られた溶出画分から、アセトニトリルを減圧下留去し、次いで、凍結乾燥することにより化合物3(132mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO、ppm):1.1〜1.3(Br、ステアリルCH+アルギニンCH、34H、積分値66.52)、3.61(s、アルギニンメチルエステル、3H、積分値9.43)、4.22(Br、アルギニンαCH+グルタミン酸αCH、2H、積分値8.17)
各積分値から、化合物3に結合したステアリルアミンとL‐アルギニンメチルエステルの平均個数は、グルタミン酸の重合数が55個に対して、ステアリルアミンは20.5個、L‐アルギニンメチルエステルは34.3個と算出された。
【0097】
[合成例4] 化合物4(重合数が102のグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)の合成
合成例2で得られた化合物2(76mg)をDMF2mLに溶解し、25℃にてステアリルアミン(東京化成製)48mg、HOBt88mg、DIPCI183μLを加えて、25℃にて1時間撹拌後、別容器にて調製したL‐アルギニンメチルエステル2塩酸塩(国産化学製)108mg、トリエチルアミン115μL、DMF1.4mLの混合液を投入し、さらに25℃にて一夜撹拌した。反応液にエタノール13mL及びジイソプロピルエーテル53mLを加えて室温にて2時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20mL)で洗浄した。得られた沈析物を0.1N塩酸水1mLに懸濁後、アセトン20mLを加えて30分撹拌した。沈析物を集め、アセトン5mLで洗浄し乾燥後、水40mLに溶解し不溶物を濾別後、アセトニトリル100mLを加え、イオン交換樹脂カラム(ダウケミカル製 ダウエックス50(H)、5mL)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、10mL)にて溶出した。得られた溶出画分からアセトニトリルを減圧下留去し、次いで、凍結乾燥することにより化合物4(141mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO、ppm):1.1〜1.3(Br、ステアリルCH+アルギニンCH、34H、積分値74.32)、3.61(s、アルギニンメチルエステル、3H、積分値10.19)、4.21(Br、アルギニンαCH+グルタミン酸αCH、2H、積分値9.65)
各積分値から、化合物4に結合したステアリルアミンとL‐アルギニンメチルエステルの平均個数は、グルタミン酸の重合数が102個に対して、ステアリルアミンは34.3個、L‐アルギニンメチルエステルは55.3個と算出された。
【0098】
[合成例5] 化合物5(重合数が102のグルタミン酸と、オレイルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)の合成
合成例2で得られた化合物2(100.0mg)をDMF3.6mLに溶解し、25℃にてオレイルアミン(Sigma Aldrich製)61.6mg、HOBt129.3mg、DIPCI193.8μLを加えて、25℃にて1時間撹拌後、別容器にて調製したL‐アルギニンメチルエステル2塩酸塩(国産化学製)140.4mg、ジイソプロピルエチルアミン187.2μL、DMF1.4mLの混合液を投入し、さらに25℃にて一夜撹拌した。反応液にエタノール18mL及びジイソプロピルエーテル72mLを加えて室温にて1時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20mL)で洗浄した。得られた沈析物をジメチルアセトアミドに溶解させ、透析膜(MWCO 3,500)を用いて、外液を0.1N塩酸アセトニトリル/水(1/1(v/v)、500mL)及び水500mLを用いて、透析を行った。次いで、凍結乾燥することにより化合物5(116.2mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO、ppm):3.61(s、アルギニンメチルエステル、3H、積分値3.13)、4.22(Br、アルギニンαCH+グルタミン酸αCH、2H、積分値3.16)、5.30(Br、オレイルアミン、2H、積分値1.66)
各積分値から、化合物5に結合したオレイルアミンとL‐アルギニンメチルエステルの平均個数は、グルタミン酸の重合数が102個に対して、ステアリルアミンは39.9個、L‐アルギニンメチルエステルは50.1個と算出された。
【0099】
[合成例6] 化合物6(重合数が102のグルタミン酸と、4−フェニルブチルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)の合成
合成例2で得られた化合物2(78mg)をDMF2mLに溶解し、25℃にて4−フェニルブチルアミン(東京化成製)29μL、HOBt90mg、DIPCI188μLを加えて、25℃にて1時間撹拌後、別容器にて調製したL‐アルギニンメチルエステル2塩酸塩(国産化学製)111mg、トリエチルアミン118μL、DMF1.4mLの混合液を投入し、さらに25℃にて一夜撹拌した。反応液にエタノール13mL及びジイソプロピルエーテル53mLを加えて室温にて2時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20mL)で洗浄した。得られた沈析物を0.1N塩酸水1mLに溶解後、アセトン20mLを加えて30分撹拌した。沈析物を集めアセトン5mLで洗浄し乾燥後、水4mLに溶解し不溶物を濾別後、アセトニトリル16mLを加え、イオン交換樹脂カラム(ダウケミカル製 ダウエックス50(H)、3mL)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、9mL)にて溶出した。得られた溶出画分からアセトニトリルを減圧下留去し、次いで、凍結乾燥することにより化合物6(131mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DO、ppm):3.57(Brs、アルギニンメチルエステル、3H、積分値15.81)、4.21(m、アルギニンαCH+グルタミン酸αCH、2H、積分値15.81)、6.83(m、4−フェニルブチルアミンのフェニル、5H、積分値17.88)
各積分値から、化合物6に結合したステアリルアミンとL‐アルギニンメチルエステルの平均個数は、グルタミンの重合数が102個に対して、4−フェニルブチルアミンは34.6個、L‐アルギニンメチルエステルは50.9個と算出された。
【0100】
[合成例7] 化合物7(重合数が102のグルタミン酸と、ドデシルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)の合成
合成例2で得られた化合物2(100.0mg)をDMF3.4mLに溶解し、25℃にてドデシルアミン(東京化成製)52.9μL、HOBt129.3mg、DIPCI237.8μLを加えて、25℃にて1時間撹拌後、別容器にて調製したL‐アルギニンメチルエステル2塩酸塩(国産化学製)140.4mg、ジイソプロピルエチルアミン187.2μL、DMF1.6mLの混合液を投入し、さらに25℃にて一夜撹拌した。反応液に、エタノール18mL及びジイソプロピルエーテル72mLを加えて、室温にて1時間攪拌し、沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20mL)で洗浄した。得られた沈析物を、0.1N塩酸水1.3mLに溶解後、アセトン1.3mLを加え、透析膜(MWCO 3,500)を用いて、外液を水500mLを用いて透析を行った。次いで、凍結乾燥することにより化合物7(161.5mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DO、ppm):1.1〜1.4(Br、ドデシルCH+アルギニンCH、22H、積分値112.25)、3.61(s、アルギニンメチルエステル、3H、積分値27.42)、4.23(Br、アルギニンαCH+グルタミン酸αCH、2H、積分値25.4)
各積分値から、化合物7に結合したドデシルアミンとL‐アルギニンメチルエステルの平均個数は、グルタミン酸の重合数が102個に対して、ドデシルアミンは29.4個、L‐アルギニンメチルエステルは57.2個と算出された。
【0101】
[合成例8] 化合物8(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が43のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体と4−フェニルブチルアミンとの結合体:一般式(2)のR11=メチル基、R16=トリメチレン基、R13=アセチル基、R14=4−フェニルブチルアミノ基、R15=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、m+n+o+p+q=43、t=273)の合成
特開平6−206815号公報に記載された方法に基づき調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12,000、ポリアスパラギン酸の重合数43)5gと、4−フェニルブチルアミン(東京化成製)1.2mLを、DMF90mLに溶解し、DMAP1.6g、DIPCI7.9mLを加え、23℃にて47時間撹拌した。
反応液に、酢酸エチル540mL及びn−ヘプタン1,080mLを加え、室温にて2時間攪拌した。その後、沈析物を濾取し、酢酸エチル/n−ヘプタン(1/2(v/v)、300mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(9/1(v/v)、265mL)に溶解後、イオン交換樹脂カラム(ダウケミカル社製 ダウエックス50(H)、20mL)に通塔し、アセトニトリル/水(9/1(v/v)、30mL)にて溶出した。得られた溶出画分に、水70mLを加えた後、減圧濃縮を行い、終了後、水にて溶液量を200mLに調製したうえで凍結乾燥し、化合物8(6.0g)を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO、ppm):3.49(m、PEG、273×4=1092H、積分値1786)、7.1〜7.3(m、フェニル、5H、積分値215)
各積分値から、化合物8に結合した4−フェニルブチルアミンの平均個数は、アスパラギン酸の重合数が43個に対して、26.3個と算出された。
【0102】
[合成例9] 化合物9(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が42のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体と4−フェニルブタノールとの結合体:一般式(2)のR11=メチル基、R16=トリメチレン基、R13=アセチル基、R14=4−フェニルブトキシ基、R15=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、m+n+o+p+q=42、t=273)の合成
特許第4757633号公報に記載された方法に基づき、化合物9を合成した。
得られた化合物9を50mg量り、アセトニトリル4mLを加えて溶解し、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液4mLを加えて混合し、20分間静置することで加水分解した。この液に、1mol/L塩酸2mLを加え、水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて正確に50mLとした。この溶液を、HPLCを用いて4−フェニルブタノールを定量分析した。分析値から、化合物9に結合した4−フェニルブチルアルコールの個数が、アスパラギン酸の重合数42個に対して21.6個と算出された。
【0103】
[合成例10] 化合物10(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が43のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体とステアリルアミンとの結合体:一般式(2)のR11=メチル基、R16=トリメチレン基、R13=アセチル基、R14=ステアリルアミノ基、R15=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、m+n+o+p+q=43、t=273)の合成
特開平6−206815号公報に記載された方法に基づき調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(アスパラギン酸の重合数43)200mgと、ステアリルアミン(シグマアルドリッチ製)27.4mgを、DMF4mLに溶解し、N,N’−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAP)62.1mg、DIPCI157.4μLを加え、25℃にて27時間撹拌した。
反応液に、酢酸エチル26.7mL及びn−ヘプタン53.3mLを加え、室温にて1時間攪拌した。その後、沈析物を濾取し、酢酸エチル/n−ヘプタン(1/2(v/v)、10mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(9/1(v/v)、10mL)に溶解後、イオン交換樹脂カラム(ダウケミカル社製 ダウエックス50(H)、2mL)に通塔し、アセトニトリル/水(9/1(v/v)、5mL)にて溶出した。得られた溶出画分の減圧濃縮を行いた後に凍結乾燥し、化合物10(199.6mg)を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO、ppm):1.1〜1.4(Br、ステアリルアミン、32H、積分値21.73)、3.51(m、PEG、273×4=1092H、積分値100)
各積分値から、化合物10に結合した4−フェニルブチルアミンの平均個数は、アスパラギン酸の重合数が43個に対して、7.4個と算出された。
【0104】
[実施例1−1] 化合物3(重合数が55のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
化合物3/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーを用いて浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から17μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siCON、100μM)25μLを、化合物3のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が10となるように添加して、siRNAとの複合粒子を調製した。そのうちの8μLに、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(6.1mg/mL)8μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水184μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物3の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/0.25/0.5となる実施例1−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ250nmであった。
【0105】
[実施例1−2] 化合物3(重合数が55のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(FAM−siLuc)複合体の調製
化合物3/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーを用いて浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から3.6μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(FAM−siLuc、100μM)5μLを、化合物3のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が10となるように添加して複合粒子を調製した。そこに、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(6mg/mL)9μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水182μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物3の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/0.25/0.5となる実施例1−2のsiRNA複合体溶液を調製した。
【0106】
[実施例2−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーを用いて浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から9μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siCON、100μM)25μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が5となるように添加して複合粒子を調製した。そのうちの6μLに、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(4.0mg/mL)6μLを加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水188μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/0.25/0.5となる実施例2−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ293nmであった。
【0107】
[実施例2−2] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(FAM−siLuc)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーを用いて浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から7.2μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(FAM−siLuc、100μM)5μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように添加して複合粒子を調製した。そこに、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(9mg/mL)12μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水176μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/0.25/0.5となる実施例2−2のsiRNA複合体溶液を調製した。
【0108】
[実施例3−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を6mg/6mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーを用いて浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から6.9μLを採取し、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(17.1mg/mL)12μLを加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次いで、siRNAのHEPES溶液(siR2B、100μM)5.1μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水318.8μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例3−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ47nmであった。
【0109】
[実施例3−2] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(FAM−siLuc)複合体の調製
前記実施例3−1において、用いるsiRNAをsiR2BからFAM−siLucに変更し、その他を実施例3−1と同様の手法を用いることで化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例3−2のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ50nmであった。
【0110】
[実施例3−3] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
前記実施例3−1において、用いるsiRNAをsiR2BからsiCONに変更し、その他を実施例3−1と同様の手法を用いることで化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例3−3のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、25nm及び150nmの混成であった。
【0111】
[実施例3−4] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siLuc)複合体の調製
前記実施例3−1において、用いるsiRNAをsiR2BからsiLucに変更し、その他を実施例3−1と同様の手法を用いることで化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例3−4のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、58nmと305nmの混成であった。
【0112】
[実施例4−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロール−ポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(TPGS)によるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物4/化合物8/TPGS/蒸留水を6mg/6mg/21.1mg/1.0mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と、超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から200μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siR2B、50μM)50μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール−ポリエチレングリコール1000コハク酸エステル=1/1/1となる実施例4−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ5nmであった。
【0113】
[実施例5−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)と化合物8とコレカルシフェロールによるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を30mg/30mg/1mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から100μLを採取し、コレカルシフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(17.1mg/mL)175.4μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。そのうちの15.7μLに、siRNAのHEPES溶液(siR2B、100μM)4.3μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水265.7μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてコレカルシフェロール=1/1/1となる実施例5−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ88nmであった。
【0114】
[実施例6−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物9及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物4/化合物9/蒸留水を6mg/6mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から24.0μLを採取し、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(17.4mg/mL)42.0μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。そのうちの22.0μLに、siRNAのHEPES溶液(siR2B、100μM)6.0μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水372.0μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物9のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例6−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、20nm及び116nmの混成であった。
【0115】
[実施例6−2] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物9及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(FAM−siLuc)複合体の調製
前記実施例6−1において、用いるsiRNAをsiR2BからをFAM−siLucに変更し、その他を実施例6−1と同様の手法を用いることで化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物9のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例6−2のしRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ85nmであった。
【0116】
[実施例7−1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物10及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物4/化合物10/蒸留水を6mg/6mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から24.0μLを採取し、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(17.4mg/mL)42.0μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。そのうちの22.0μLに、siRNAのHEPES溶液(siR2B、100μM)6.0μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水372.0μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物4の二官能性ポリマー(a):化合物10のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例7−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ20nmであった。
【0117】
[実施例8−1] 化合物5(重合数が102のグルタミン酸と、オレイルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siR2B)複合体の調製
化合物5/化合物8/蒸留水を6mg/6mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から30.3μLを採取し、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(18.8mg/mL)48.3μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。そのうちの26.2μLに、siRNAのHEPES溶液(siR2B、100μM)6.0μLを、化合物5のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が20となるように加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水373.7μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して化合物5の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例8−1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ21nm及び90nmの混成であった。
【0118】
[実施例8−2] 化合物5(重合数が102のグルタミン酸と、オレイルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(FAM−siLuc)複合体の調製
前記実施例8−1において、用いるsiRNAをsiR2BからFAM−siLucに変更し、その他を実施例8−1と同様の手法を用いることで化合物5の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例8−2のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ59nmであった。
【0119】
[実施例8−3] 化合物5(重合数が102のグルタミン酸と、オレイルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
前記実施例8−1において、用いるsiRNAをsiR2BからsiCONに変更し、その他を実施例8−1と同様の手法を用いることで化合物5の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例8−3のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、31nm及び129nmの混成であった。
【0120】
[実施例8−4] 化合物5(重合数が102のグルタミン酸と、オレイルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siLuc)複合体の調製
前記実施例8−1において、用いるsiRNAをsiR2BからsiLucに変更し、その他を実施例8−1と同様の手法を用いることで化合物5の二官能性ポリマー(a):化合物8のブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)としてD−α−トコフェロール=1/1/1となる実施例8−4のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、46nm及び433nmの混成であった。
【0121】
[比較例1] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)及び化合物8によるsiRNA(siCON)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から9μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siCON、100μM)25μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が5となるように加えて添加して複合粒子を調製した。そのうちの6μLに、蒸留水194μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して、比較例1のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ、83nmと398nmの混成であった。
【0122】
[比較例2] 化合物4(重合数が102のポリグルタミン酸と、ステアリルアミン及びアルギニンメチルエステルとのアミド結合体)及び化合物8と4−フェニルブタノールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
化合物4/化合物8/蒸留水を6mg/1.5mg/0.2mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から9μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siCON、100μM)25μLを、化合物4のカチオン基(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が5となるように添加して複合粒子を調製した。そのうちの6μLに、4−フェニルブタノール(東京化成製)のエタノール溶液(40mg/mL)6μLを加えてボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水188μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して、比較例2のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ323nmであった。
【0123】
[比較例3] ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、化合物8及びD−α−トコフェロールによるsiRNA(siCON)複合体の調製
ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成製)/化合物8/蒸留水を30mg/10mg/1mLになるように混合し、40℃程度まで加温しながら、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して溶解液を調製した。得られた溶解液から5μLを採取し、siRNAのHEPES溶液(siCON、100μM)25μLを、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドの添加当量(N)とsiRNAのリン酸基(P)によるN/P比が5となるように添加して、複合粒子を調製した。そのうちの5μLに、D−α−トコフェロール(東京化成製)のエタノール溶液(2.5mg/mL)5μLを加えて、ボルテックスミキサーで浸透撹拌した。次に蒸留水190μLを徐々に加え、ボルテックスミキサーでの浸透撹拌と超音波処理を繰り返して比較例3のsiRNA複合体溶液を調製した。
動的散乱法でsiRNA複合体の平均粒子径を測定したところ354nmであった。
【0124】
[試験例1] RNase中でのsiRNAの安定性評価
本発明の核酸輸送用組成物を構成要素とするsiRNA複合体が、生体内に存在する核酸分解酵素によるsiRNAの分解に対して高い抵抗性を示すことを検証するため、siRNAを含む本発明の核酸複合体の、RNase A(QIAGEN社)中での安定性を調べた。
実施例1−1〜8−1及び比較例1、2によるsiRNA複合体(siRNA:最終濃度1μM)に、RNase(終濃度50μg/ml,QIAGEN社)を加え、37℃で約3時間インキュベートした。その後、終濃度0.04%になるようにラウリル硫酸ナトリウム(SDS、ナカライテスク)を加えることで、分解反応を停止させ、該siRNA複合体からsiRNAを解離させた。
得られた試験試料を、15%ポリアクリルアミドゲル(Tris−ホウ酸−EDTA(TBE))を用いて、100ボルト、60分の条件で電気泳動を行い、SYBR GREEN II (ライフテクノロジーズジャパン社)で染色することで、試験試料に含まれるsiRNAを検出した。ゲル中のsiRNAのバンドを、モレキュラー・イメージャーFX(BioRad社)で解析し、siRNAの安定性を評価した。なお、siRNAのコントロール試料として、Liciferase(GL3)(コスモバイオ社)を用いた。結果を表1及び図1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
RNase処理前の実施例1−1〜8−1は、上記電気泳動にてsiRNAのバンドが検出されなかった。したがって、siRNAと二官能性ポリマー(a):ブロック型ポリマー(b):脂溶性添加剤(c)による核酸輸送用組成物が複合体を形成して、該siRNAを保持していることが示された。同様に、比較例1及び2も、電気泳動によりsiRNAが検出されなかった。したがって、二官能性ポリマー(a)等と複合体形成していることが示唆された。一方、二官能性ポリマー(a)を使用せずに、カチオン性低分子化合物(ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド)を用いた比較例3は、電気泳動によりsiRNAが検出された。この結果は、siRNAと該組成物による安定な複合体形成が認められなかった。したがって、比較例3は、siRNAを保護する機能がなく、RNaseに対する分解耐性は期待できないと考えられた。
本発明の核酸輸送用組成物を用いたsiRNA複合体である実施例1−1〜8−1は、RNaseで3時間処理した後においても、siRNAのバンドが確認されており、RNaseに対する安定性が確認された。一方、脂溶性添加剤(c)が存在しない比較例1や適当な脂溶性添加剤(c)ではない比較例2は、RNase処理によりsiRNAのバンドが確認されず、siRNAがRNaseにより分解していることが確認された(図1及び表1)。
【0127】
[試験例2] siRNA複合体の細胞取り込み能の検証
本発明の核酸輸送用組成物を構成要素とするsiRNA複合体が、siRNAを培養条件下において細胞内に取り込ませることができることを検証するため、蛍光標識siRNAを含む本発明の核酸複合体を用いて、経時的な細胞内取り込み能を調べた。
10% 胎児牛血清(Tissue Culture Biologicals社製)を添加したEagle‘s Medium Essential Medium培地(Corning社)を用いて、ヒト膠芽種細胞U87MG(ATCC)を、37℃、5%COインキュベーター下で継代培養維持した。
ヒト膠芽種細胞U87MGを、100,000細胞/ガラスボトムディッシュ(1mL)になるように播種して、37℃のCOインキュベーターで4日間培養を行った。その後、蛍光標識siRNAであるFAM−siLucを含有する実施例1−2、2−2、3−2、6−2、8−2を100nM(siRNA濃度)で培地に添加し、U87MG細胞に接触させた。各siRNA複合体添加後、2時間、7時間及び24時間後に、共焦点顕微鏡(Leica社)を用いて、試験細胞の画像を採取した。得られた画像写真を図2及び3に示した。
なお、本試験はsiRNA導入試薬の陽性対照として、市販キャリアであるLipofectamine RNAi Max(ライフテクノロジー社)を用い、製造者の指示に基づいてFAM−siLucとの複合体を調製して用いた。また,陰性対照として、FAM−siLucのみ(naked FAM−siLuc)を添加した。
試験細胞の画像を市販の画像処理ソフト(Media Cybernetics社、Image−Pro Plus)によって、1細胞当たりのFAM蛍光量をpixcel数としてカウントし、各サンプルにおける画像から10細胞の平均pixcel数を求めた。結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
本発明の実施例1−2、2−2、3−2、6−2及び8−2は、U87MG細胞に添加後2時間では蛍光強度が弱く、FAM−siLucの細胞内取り込み量が低いものの、細胞接触7時間後、24時間後と時間が経過するに従い細胞中の蛍光強度の増加が確認された。したがって、本発明のsiRNA複合体は、時間経過とともに細胞内に取り込まれていくことが確認された。一方、Lipofectamineは、細胞に添加後7時間で強い蛍光が確認され、24時間経過すると蛍光強度の低下が確認された。このことから、Lipofectamineによる細胞内siRNA取込みは、早い時間から取り込まれ、比較的速く機能消失することが明らかとなった。一方、naked FAM−siLucは、いずれの時間においても細胞への取り込みは確認されなかった。本発明のsiRNA複合体は、従来用いられているLipofectamineと比較し、siRNAの高い細胞内取り込みを達成することが明らかとなった。
【0130】
[試験例3] siRNA複合体の遺伝子サイレンシングの検討
本発明の核酸輸送用組成物に、ルシフェラーゼを標的とするsiLucあるいはFAM−siLucを用いたsiRNA複合体を調製し、これを用いて細胞内のルシフェラーゼ遺伝子の発現が抑制されることを検証するため、ルシフェラーゼ安定発現ヒト膠芽種細胞U87MGを構築し、ルシフェラーゼ阻害活性を評価した。
【0131】
3−1.ルシフェラーゼ安定発現細胞の作製
培養細胞に遺伝子発現ベクターを導入し、薬剤耐性マーカーによる選択圧をかけることで定常発現株を樹立する方法により、ルシフェラーゼ安定発現細胞を作製した。薬剤は、Geneticine(Invitrogen社製)を使用した。10cmシャーレに、5×10個のヒト膠芽種細胞U87MGを播種し、37℃、5%COインキュベーター下で1日間培養した。その後、ルシフェラーゼ発現ベクターであるpGL3neo(promega社製)ベクターを、Lipofectamine 2000(Invitrogen社製)を用いて、製造者の指示に従いU87MG細胞に導入した。37℃、5%COインキュベーター下で2日間培養後、0.25% Tripsin(Invitrogen社製)/0.02% EDTA(Invitrogen社製)により細胞を剥離し、10倍希釈した細胞を新たな培養メディウムに移し、37℃、5%COインキュベーター下で1晩培養した。細胞がシャーレに張り付いたことを確認し、300μg/mL濃度のGeneticine(Invitrogen社製)を含む培養メディウムを用いて、37℃、5%COインキュベーター下で培養した。1週間ごとにメディウムを交換し、Geneticine耐性コロニーが直径3〜5mmになったら、滅菌したクローニングリング(IWAKI、直径5mm)を用いて単離することにより、ルシフェラーゼ安定発現ヒト膠芽種細胞U87MGを作製した。
【0132】
3−2.ルシフェラーゼ活性の評価
樹立したルシフェラーゼ安定発現ヒト膠芽種細胞U87MG細胞を、96ウエルプレートへ9×10細胞/ウエル播種し、37℃、5%COインキュベーター下で1日間培養した。その後、実施例1−2(FAM−siLuc)、2−2(FAM−siLuc)、3−4(siLuc)及び8−4(siLuc)によるsiRNA複合体(siRNA濃度として100nM,n=3)を添加した。添加から、3日後に、該U87MG細胞のルシフェラーゼの発光活性を、Steady−Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いて検出した。なお、RNA干渉効果は、対応するsiCONを含有するsiRNA複合体(実施例1−1、2−1、3−3、8−3)を添加した場合のルシフェラーゼの発光値(Relative Light Unit、RLU)を比較対象として、下記の式を用いて本発明のsiRNA複合体(実施例1−2、2−2、3−4及び8−4)のルシフェラーゼ発現阻害率(%)を求め、RNA干渉効果を評価した。結果を図4に示した。
[式] 発現阻害率(%)=(siCONの発光値−siLUCの発光値)/siCONの発光値 × 100
【0133】
本発明のsiRNA複合体(実施例1−2,2−2,3−4及び8−4)は、100nMのsiRNA濃度において、それぞれ約53%、44%、61%、55%の阻害率を示した(図4参照)。このことから、本発明のsiRNA複合体は、包含するsiRNAを細胞内に導入し、siRNAによるRNA干渉効果を発現させ、標的遺伝子機能を抑制できることが明らかとなった。
【0134】
本発明のsiRNA複合体(実施例1−2,2−2,3−4及び8−4)は、100nMのsiRNA濃度において、それぞれ53%、44%、61%、55%阻害率を示した(図4参照)。このことから、本発明のsiRNA複合体は、包含するsiRNAを細胞内に導入し、siRNAによるRNA干渉効果を発現させ、標的遺伝子機能を抑制できることが明らかとなった。
【0135】
本発明の二官能性ポリマー(a)、ブロック型ポリマー(b)、脂溶性添加剤(c)による核酸輸送用組成物を用いたsiRNA複合体は、包含するsiRNAをRNaseなどの核酸分解酵素から保護できることが示され(試験例1の結果参照)、静脈内投与等の血中投与に適用できる。また、本発明のsiRNA複合体は、細胞内にsiRNAを効率的に導入できるとともに、長時間、siRNAの存在を維持することができる(試験例2の結果参照)。更に、本発明のsiRNA複合体は、細胞に作用させることで、RNA干渉効果を発揮させることができ、細胞内に導入させたsiRNAを機能発現させることができる(試験例3の結果参照)。
以上の、試験例1〜3の結果から、本発明の二官能性ポリマー(a)、ブロック型ポリマー(b)、脂溶性添加剤(c)による核酸輸送用組成物を用いた核酸医薬複合体は、血中投与に適用し、該核酸医薬を標的組織まで送達し、標的組織細胞へ導入して、細胞内にて該核酸医薬を機能発現させる機能を具備することが示された。
図1
図2
図3
図4