(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば、原油または原油留分等の炭化水素供給原料から、例えば、硫黄化合物、窒素化合物、及び有機金属化合物等の難分解性有機ヘテロ原子化合物を除去することは、HDT、例えば脱硫及び/または脱窒素プロセス中のこれらの化合物の頑固な性質によって、困難なプロセスであり得る。それ故に、炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を分離することは、エネルギー的にも費用的にもコストがかかり過ぎる場合がある。加えて、脱硫及び/または脱窒素を使用すると、分離プロセスを妨害するか、あるいは更なる不純物を炭化水素供給原料へと導入し得る副反応を制御することが難しくなり得る。また、HDTプロセスは典型的には、有機ヘテロ原子化合物の分解を結果としてもたらし得、(多くの貴重な使用法、例えば化学製造プロセスのための合成基本単位としての使用法を有する)これらの構成成分を、そのような用途にとって無益とする。
【0010】
本明細書の一部の実施形態は、可逆性/切換可能/調整可能溶媒(以下、「調整可能溶媒」と呼ぶ)を用いて、炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を分離及び回収するための方法を含む。本明細書に記載されるどの実施形態において使用される場合でも、調整可能溶媒は、好ましくは水性溶媒である。実施形態において、水性溶媒は、加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体を含む。二酸化炭素は、超臨界状態、亜臨界状態、または両方で存在してもよい。一部の実施形態において、調整可能溶媒は、超臨界二酸化炭素及び水を含む。
【0011】
本明細書において考察されるどの実施形態において使用される場合でも、用語「有機ヘテロ原子化合物」は、炭素及び水素以外の少なくとも1つの原子を含有する有機化合物を指す。一部の実施形態において、ヘテロ原子化合物は、電子供与体として振る舞い得る少なくとも1つのヘテロ原子を含有する化合物であり得、好ましくはそのヘテロ原子は硫黄または窒素である。より好ましくは、有機ヘテロ原子化合物は、少なくとも複素環式環の一部を形成する硫黄または窒素原子を含有する複素環式化合物であり、その環は不飽和である。特に、有機ヘテロ原子化合物は、複素環式芳香族部分を含む。有機ヘテロ原子化合物は、単環式または多環式であり得る。有機ヘテロ原子化合物の例としては、硫黄含有複素環式化合物等の有機硫黄化合物、窒素含有複素環式化合物等の有機窒素化合物、及びポルフィリン等の有機金属化合物が挙げられる。一部の実施形態において、有機ヘテロ原子化合物は、ピロール、ピリジン、キノリン、カルバゾール、インドール、ニッケルテトラフェニルポルフィリン、バナジルテトラフェニルポルフィリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、及び7,8,9,10−テトラヒドロベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン、ペーノール(pehnol)、フラン、ベンゾフラン、イソキノリン、アクリジン、ベンゾカルバゾール、ならびにそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態において、ヘテロ原子化合物は、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、またはチオシクロヘキサン等の非芳香族硫黄化合物を含み得る。一部の実施形態において、有機ヘテロ原子化合物は、例えば原油または原油留分等の炭化水素供給原料において見出される天然不純物であり得る。調整可能溶媒は、有機ヘテロ原子化合物が、炭化水素供給原料からの分離時にそれらの物理的及び化学的特性を維持することを可能にする。したがって、HDTとは対照的に、本プロセスは有利なことに、非破壊的様式で炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を除去することを可能にする。有機ヘテロ原子化合物はその後、他の化学製造プロセスにおいて用いることができる。
【0012】
一部の実施形態において、調整可能溶媒は、イオン性液体、ガス膨張したイオン性液体、または有機ヘテロ原子化合物を選択的に引き付ける別の溶媒であり得る。調整可能溶媒は、有機ヘテロ原子化合物と可逆性錯体を形成し得る。一部の実施形態において、調整可能溶媒の様々な特性は、調整可能溶媒の本来のイオン性がより強くまたは弱くなり、したがって1つ以上の選択された有機ヘテロ原子化合物に選択的に引き付けられるか、あるいはそれと可逆性錯体を選択的に形成し得るように制御することができる。
【0013】
異なる炭化水素供給原料、特に原油または原油留分に由来するものは、異なる種類の有機ヘテロ原子化合物を含有し得る。例えば、任意の標的有機ヘテロ原子化合物の極性の利用等、標的有機ヘテロ原子化合物の溶解度パラメータを調節することによって、炭化水素供給原料中の不純物は、調整可能溶媒を用いて炭化水素供給原料から選択的に分離することができる。一部の実施形態において、調整可能溶媒は、標的有機ヘテロ原子化合物が、例えば可逆性溶媒錯体の形成によって溶媒系内で溶質として維持されるように、溶媒系の圧力、温度、及び/またはpHを調節することによって修正することができる。有機ヘテロ原子化合物がいったん溶媒和されたら、溶媒系の圧力、温度、及び/またはpHの更なる調節で溶媒和を逆転させてもよく、それによって有機ヘテロ原子化合物は、凝集体、沈殿物、液体、油等として容易に回収することができる。
【0014】
一部の実施形態において、調整可能溶媒は、その溶媒を調整してある特定の極性を有する標的有機ヘテロ原子化合物を引き付けるように、あるいはそれと錯体形成するように、例えば接触器内の圧力を調節することによって等、例えば溶媒系の圧力を調節することによって修正してもよい。そのような選択的溶媒を使用することで、標的有機ヘテロ原子化合物ではない不純物からの干渉は、他の分離プロセスよりも起こりにくくなり得る。例えば、不純物を例えば不純物の沸点及び凝縮点に基づいて分離する分離プロセスは、標的有機ヘテロ原子化合物以外の不純物、特に標的有機ヘテロ原子化合物と類似する沸点を有するものを分離する可能性があり得る。対照的に、本明細書の実施形態に従う調整可能溶媒は、それらが標的有機ヘテロ原子化合物(複数可)のみを選択的に分離するように、正確に調整することができる。他の実施形態において、調整可能溶媒は、その調整可能溶媒が炭化水素から有機ヘテロ原子化合物を分離するように、溶媒系の圧力を調節すること等によって修正してもよい。例えば、一部の実施形態において、調整可能溶媒は、溶媒系内で最も極性の強い有機ヘテロ原子化合物を引き付けるか、あるいは溶質としてそれと錯体形成するように修正してもよい。他の実施形態において、調整可能溶媒は、例えば、弱い双極モーメント等の弱い極性を有する有機ヘテロ原子化合物すら引き付けるように修正してもよい。圧力に加えて、溶媒系の平衡を修正するために、温度を実施形態において使用することができる。
【0015】
任意の実施形態において、好適な圧力は、使用される調整可能溶媒及び標的有機ヘテロ原子化合物(複数可)に応じて異なり得る。一部の実施形態において、圧力は、約20バール〜約275バール、約50バール〜約250バール、または約75バール〜約225バール等の、約2バール〜約300バールであり得る。本発明のどの実施形態においても、圧力は約100バール〜約200バールであり得る。更なる他の実施形態において、接触器内の圧力は、約150バール等の約125バール〜約175バールであり得る。上記の範囲は開示された終端点の間の各点を含むことが意図され、2バール〜300バールの各圧力点が本開示において想定されることを理解されたい。
【0016】
また、温度は、有機複素環式分子の溶解度に影響を及ぼすように使用されてもよい。有機複素環式分子の増加した溶解度は、溶媒系の抽出及び選択性を増加させ得、それによって、温度は、調整可能溶媒を微調整するために使用され得る。したがって、調整可能溶媒及び炭化水素供給原料が混合される温度は、使用される調整可能溶媒及び標的有機ヘテロ原子化合物に応じて異なり得る。二酸化炭素が調整可能溶媒であるどの実施形態においても、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約20℃高い温度等、二酸化炭素の臨界温度以上であり得る。一部の実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約60℃高い温度等、二酸化炭素の臨界温度よりも40℃以上高い。実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約80℃高い温度以下等、二酸化炭素の臨界温度よりも約100℃高い温度以下であり得る。実施形態において、収縮器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約50℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約70℃高い温度以下等の、二酸化炭素の臨界温度よりも約40℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約80℃高い温度以下等の、二酸化炭素の臨界温度よりも約20℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約100℃高い温度以下である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、接触器内の圧力は約2バール〜約300バールの範囲内であり、温度は二酸化炭素の臨界温度よりも約20℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約100℃高い温度以下の範囲内であり、より好ましくは、収縮器内の圧力は約50バール〜約250バールの範囲内であり、温度は二酸化炭素の臨界温度よりも約50℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約70℃高い温度以下の範囲内であり、特に好ましい収縮器内の圧力は約20バール〜約275バールの範囲内であり、温度は二酸化炭素の臨界温度よりも約40℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約80℃高い温度以下の範囲内である。
【0018】
一部の実施形態に従う、炭化水素原料から有機ヘテロ原子化合物を回収するための方法においては、例えば原油または原油留分等の炭化水素供給原料は、1つ以上の有機ヘテロ原子化合物を溶質として溶媒系内に引き付けるように修正または調整可能である調整可能溶媒と接触させてもよい。好ましくは、調整可能溶媒は水性溶媒である。炭化水素供給原料の調整可能溶媒との接触は、炭化水素供給原料を接触器へと供給することと、水性溶媒を接触器へと供給して、水性溶媒と炭化水素供給原料との抽出混合物を形成することとを含み得る。調整可能溶媒は、加圧二酸化炭素、水、及び粘度調整剤等の任意選択の調整剤から形成され得る。溶媒系の圧力の変化は、特定の有機ヘテロ原子化合物を溶質として溶媒系内に引き付けるように調整可能溶媒を調整するために使用することができる。したがって、これらの方法は、少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物との溶媒錯体を選択的に形成するように、共に水性溶媒を調整する、接触器内の抽出混合物の接触器圧力及び接触器温度を設定することを含み得る。
【0019】
一部の実施形態において、水性溶媒は、超臨界二酸化炭素を含む。一部の実施形態において、水性溶媒は、亜臨界二酸化炭素を含む。他の実施形態において、水性溶媒は、超臨界二酸化炭素及び亜臨界二酸化炭素の両方を含む。本明細書に記載されるどの実施形態においても、調整可能溶媒は水性溶媒である。特に、水性溶媒は水及び二酸化炭素を含む混合物であり、二酸化炭素は亜臨界、超臨界、または両方である。好ましくは、どの実施形態においても、水性溶媒は水及び二酸化炭素から本質的になる混合物であり、二酸化炭素は亜臨界、超臨界、または両方である。
【0020】
理論に束縛されることを意図しないが、ここで、有機ヘテロ原子化合物を回収するための方法の実施形態に適用可能な溶媒系の特徴を、下の等式及び記載を用いて説明する。以下の等式において、ガス状二酸化炭素は「CO
2(g)」で示され、分圧P
CO2を有し得、溶解した二酸化炭素は「CO
2(aq)」で示され、溶解した炭酸は「H
2CO
3(aq)」で示される。一部の実施形態において、溶解した二酸化炭素は、溶解した構成成分の約95.0%以上等の、溶解した構成成分の約90.0mol%以上を占め得る。他の実施形態において、溶解した二酸化炭素、特に溶解した二酸化炭素ガスは、溶解した構成成分の約99.0mol%以上等の、溶解した構成成分の約97.0mol%以上を占め得る。一部の実施形態において、溶解した二酸化炭素は、溶解した構成成分の99.85mol%を占め得、溶解した炭酸は、溶解した構成成分の0.15mol%を占め得る。溶媒系内の溶解した構成要素は、下の等式(A)において示されるように、H
2CO
3*として示され得る。
【0022】
圧力に関しては、ガス状二酸化炭素は、下の式(B)及び(C)に従って、溶解した炭酸と平衡であり得る。
【0025】
したがって、溶解した二酸化炭素及び溶解した炭酸は、等式(D)に示される関係を有し得る。
【0027】
ガス状二酸化炭素は、等式(E)に示されるように、ヘンリーの法則に従って接触器内において水性相の二酸化炭素と平衡であり得、ここではヘンリー定数は、k
H(モル/kg・atm)として示されている。
【0029】
従って水性相の二酸化炭素の溶解度は、一部の実施形態に従う方法で用いられる溶媒系の増加する圧力に関して、増加し得る。加えて、水または水性相中のガス状二酸化炭素の溶解度は、溶媒系の温度が下がるにつれて増加する。しかしながら、溶媒系内の二酸化炭素の超臨界挙動を維持するために、実施形態によれば、溶媒系の温度及び圧力は、二酸化炭素の臨界温度及び圧力よりも上で維持され得る。結果として、調整可能溶媒中の二酸化炭素及び水の併用効果は、炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を溶質として溶媒系内に引き付けるか、あるいはそれと錯体形成させるように溶媒を使用することを可能にする、独特の特性を達成する。
【0030】
様々な実施形態において含まれる調整可能溶媒系の特性が下の等式において記載され、K
1は第一解離定数であり、a(j)は、関与する種「j」の活性である。
【0032】
pH及びpKの一般に既知の定義を用いると、等式(F)は、等式(G)として書き換えることができる。
【0034】
等式(G)において、γ
aは、HCO
3−の活量係数である。中性種の活量係数は、単一であると推測できる。
【0035】
上記の等式によって示されるように、本明細書の実施形態による溶媒系内の二酸化炭素は、分離プロセスにおいて複数の役割を果たし得る。超臨界二酸化炭素は、良好な拡散率と他の溶媒よりも低い粘度とを有するため、炭化水素供給原料を通じて拡散し得、これが、二酸化炭素が有機ヘテロ原子化合物を溶質として溶媒系内に引き付ける物質移動を良好に開始することを可能とする。例えば、実施形態において、難分解性硫黄化合物、窒素化合物、及び有機金属化合物の極性の性質は、有機物を溶媒の可逆性の水性相へと運び得る。例えば、有機ヘテロ原子化合物の極性特徴は、H
2CO
3*(aq)相のHCO
3−によって引き付けられ得る。
【0036】
一部の実施形態において、溶媒系の温度、溶媒系の圧力、または両方は、例えばHCO
3−等のイオンをより多くまたはより少なく含有するように溶媒系を調整し、それによって、溶媒系のイオン性難分解性構成成分に対する引力を強くまたは弱くするように調節することができ、あるいは調整可能溶媒と有機ヘテロ原子化合物との間で錯体を形成するための溶媒系の能力を調整するように調節することができる。例えば標的有機硫黄化合物、標的有機窒素化合物、標的有機金属化合物、またはそれらの組み合わせ等の標的難分解性構成成分を除去するためには、標的有機ヘテロ原子化合物の沸点等の特性、ならびに化学構造が、溶媒系の選択性に帰着する温度パラメータ及び圧力パラメータに影響を及ぼし得る。様々な有機硫黄化合物、有機窒素化合物、及び有機金属化合物が、様々な実施形態において炭化水素供給原料から除去され得る有機ヘテロ原子化合物の例として、表1に示される。下に列挙される化合物は本質的に例示的であるに過ぎず、本開示の実施形態に従って除去され得る全ての有機ヘテロ原子化合物の網羅的リストであることを意図するものではないことを理解されたい。
【0039】
表1の有機ヘテロ原子化合物から明白であるように、様々な実施形態に従って炭化水素供給原料から除去され得る化合物は、様々な化学構造を有し得る。したがって、炭化水素供給原料から除去されるべき化合物は、影響力を有し、例えば溶媒系の圧力及び/または温度の調節等の必要とされる溶媒調整の適切な量を決定し得る。加えて、実施形態においては、炭化水素から特定の有機ヘテロ原子化合物を分離するための調整可能溶媒の選択は、抽出混合物の相分離に起因する、炭化水素相から溶媒相への有機ヘテロ原子化合物の物質移動に強い影響を及ぼし得る。
【0040】
本開示の実施形態に従う、調整可能溶媒と、例えば原油または原油留分等の炭化水素から除去されるべき有機ヘテロ原子化合物とについて上に説明してきた。有機ヘテロ原子化合物を分離するために調整可能溶媒を使用するための方法及びシステムの実施形態を、下に提供する。下に記載される方法及びシステムは例示的であるに過ぎず、調整可能溶媒を用いて炭化水素から有機ヘテロ原子化合物を分離するための他の方法及びシステムが、本開示の範囲内にあることを理解されたい。
【0041】
調整可能溶媒の単一のストリームまたは一連のストリームが、炭化水素から例えば有機硫黄化合物、有機窒素化合物、及び/または有機金属化合物等の有機ヘテロ原子化合物を選択的に分離するために使用されてもよい。実施形態においては、分離は、例えば充填床接触器、流動床接触器、及びバッフル付接触器等の、一連の逆流または向流接触器内で調整可能溶媒及び炭化水素を流すことによって進行してもよい。
【0042】
本発明のどの実施形態の方法も、バッチ運転または連続運転として行われてもよい。好ましくは、本方法は、連続運転として行われる。
【0043】
図1を参照すると、典型的なプロセス編成100が表される。原油等の炭化水素供給原料131は、炭化水素貯蔵装置130から、底部噴霧ノズル112等によって、接触器110の底部へと分散され得る。同様に、調整可能溶媒150は、二酸化炭素貯蔵装置120からの二酸化炭素121と、水貯蔵装置140からの水141とを混合することによって形成され得る。調整可能溶媒150は、頂部噴霧ノズル114等によって、接触器100の頂部へと分散され得る。炭化水素131の液滴及び噴霧液は、噴霧の推進力及び炭化水素131による接触器110の底部の充填等によって、上向きに流れ得る。調整可能溶媒150の液滴及び噴霧液は、噴霧の推進力及び重力等によって、接触器110内を下向きに流れ得る。更に、実施形態においては、炭化水素131及び調整可能溶媒150は、調整可能溶媒150の密度が、炭化水素131の密度よりも大きいように選択され得る。この密度における差異が、調整可能溶媒150の炭化水素131との接触及び炭化水素相を通る横断を引き起こし得る。したがって、実施形態においては、炭化水素131及び調整可能溶媒150は向流接触で進行し、それによって、炭化水素131と調整可能溶媒150との間の接触の滞留時間を増加させる。好ましくは、炭化水素131は炭化水素供給原料であり、より好ましくは、炭化水素供給原料は原油または原油留分である。
【0044】
一部の実施形態において、炭化水素131は、任意選択で、標的有機ヘテロ原子化合物の炭化水素131からの分離をそれが接触器110内に供給される前に開始するために、炭化水素131が接触器110内に導入される前に超臨界二酸化炭素122と予混合してもよい。例えば、超臨界二酸化炭素単独で、または溶媒中の構成成分として等、任意の好適な形態の超臨界二酸化炭素を、二酸化炭素貯蔵装置120から炭化水素131へと送ってもよい。
【0045】
一部の実施形態において、炭化水素131及び調整可能溶媒150両方の液滴は合体して、接触器110のそれらそれぞれの出口(すなわち、調整可能溶媒150は接触器110の底部、ならびに炭化水素131は接触器110の頂部)において、分離した均質な相を形成し得る。炭化水素131が調整可能溶媒150よりも密度が高い実施形態においては、接触器へのこれらの構成成分の流れは逆転させてもよい(すなわち、より密度が高い炭化水素131を接触器110の頂部へと導入してもよく、調整可能溶媒150を接触器110の底部へと導入してもよい)。
【0046】
どの実施形態においても、炭化水素131と調整可能溶媒150との接触中、有機ヘテロ原子化合物は、例えば調整可能溶媒との錯体を形成することによって、溶質として調整可能溶媒150の溶媒層へと引き付けられ得る。したがって、炭化水素131及び調整可能溶媒150が暫くの間相互作用した後、接触器110の中間部から希薄炭化水素132が抽出され得る。有機ヘテロ原子化合物が豊富な溶質豊富溶媒151は、接触器110の底部から除去され得る。
【0047】
上に考察したように、実施形態においては、接触器内の圧力及び/または温度を修正して、炭化水素供給原料内の極性構成成分を引き付けるイオンを溶媒が有するように調整することができる。例えば有機硫黄化合物、有機窒素化合物、及び有機金属化合物等の標的有機ヘテロ原子化合物は、分子構造内に極性を元来有する。例えば、上の表1に示されるジベンゾチオフェンは、他の結合する炭素原子よりも電気陽性である硫黄原子を有する。具体的には、ジベンゾチオフェンの非局在化電子が、その環構造の内部に引き寄せられ得、したがって硫黄原子の外殻もまた、電子に向かって内部に引き寄せられ得る。結果として、環に結合する硫黄原子が電気陽性になり、極性特性をジベンゾチオフェンに提供する。
【0048】
上述されるジベンゾチオフェン等、様々な有機ヘテロ原子化合物が極性を有するため、それらは、極性有機ヘテロ原子化合物とHCO
3−イオンとの一時的な錯体を形成することで、HCO
3−イオンによって炭化水素相から溶媒の水性相へと分離することができる。例えば、ジベンゾチオフェンとHCO
3−との間で形成される一時的な錯体が、下に示される。
【0050】
窒素を含有する有機ヘテロ原子化合物もまた、極性の挙動を有し得る。しかしながら、有機硫黄化合物とは異なり、HCO
3−またはH
+が有機窒素化合物を引き付けることができ、これは、ある特定の化合物においては窒素結合が正の極性または負の極性を有する場合があるためである。例えば、カルバゾールでは、N−H結合は正の極性または負の極性を取り得、したがって、以下の錯体が極性溶媒とカルバゾールとの間で形成され得る。
【0052】
上の反応機序は例示的であるに過ぎず、本明細書のいかなる実施形態の範囲も制限することを意図しない。同様の反応機序が、例えば表1の化合物のいずれか等、他の有機ヘテロ原子化合物の分離に関して起こり得る。
【0053】
実施形態に従う抽出機序の更なる説明が、
図2を参照してなされ得、この
図2は、調整可能溶媒と炭化水素との反応中の、接触器110内の相を示す。
図2は、調整可能溶媒150の密度が炭化水素供給原料131の密度よりも大きく、それ故に調整可能溶媒が好ましくは接触器の頂部に供給され、炭化水素供給原料が接触器の底部に供給される実施形態を表す。しかしながら、以下はまた、調整可能溶媒の密度が炭化水素供給原料の密度よりも小さく、調整可能溶媒が接触器の底部に供給される一方で、炭化水素供給原料が接触器の頂部に供給される実施形態に対しても適用可能である。
図2において、接触器110内の流体は、4つの相領域210、220、230、及び240へと分割される。各相領域は、隣接する相領域(複数可)から、相境界(点線で表される)によって分離される。一部の実施形態によれば、接触器110の頂部は、超臨界二酸化炭素及び亜臨界二酸化炭素を含む相210を含み得る。相210の下は、希薄炭化水素及び二酸化炭素を含み得る相220である。実施形態において、接触器110から抽出される希薄炭化水素132は、相220から抽出され得る。相220の下は、水性二酸化炭素、水、水素イオン、炭酸、炭化水素、及び超臨界二酸化炭素の混合物を含む相230である。調整可能溶媒150及び炭化水素131は、噴霧ノズル112及び114を通じた噴霧等によって、相220において接触器110へと導入される。接触器の底部には相240があり、これは水性二酸化炭素、水素イオン、水、炭酸、及び溶質豊富溶媒を含み得る。接触器から抽出される溶質豊富溶媒151は、相240から抽出され得る。
【0054】
図2に示される相等の接触器110内の相を用いて、接触器110内の溶媒系における圧力の効果を、上の等式(C)を参照して理解することができる。例えば、上に示される錯体等の、有機ヘテロ原子化合物と溶媒との錯体は、溶媒系内の圧力上昇によって形成が促進され得る。圧力がどのように有機ヘテロ原子化合物と溶媒との錯体形成を促進するかの一例が
図3において示されるが、これは例示的であるに過ぎず、いかなる実施形態の範囲も制限するものではない。
図3は、H
2CO
3*(aq)、H
+(aq)、及びHCO
3−(aq)の形成が、溶媒系の圧力を上昇させることによって促進されることを示している。
図3において、調整可能溶媒は310で表され、ヘテロ原子重炭酸塩イオン錯体は320で表される。
図3に示される機序において、H
2CO
3*(aq)、H
+(aq)、及びHCO
3−(aq)が、調整可能溶媒を構成している。加えて、水中の二酸化炭素の溶解度は、溶媒系の温度が下がるにつれて増加する。しかしながら、HCO
3−とジベンゾチオフェンとの錯体の形成もまた、HCO
3−(aq)の濃度が維持され得るように、水中でH
2CO
3*(aq)を形成する正反応を促進する。したがって、平衡は、H
2CO
3*(aq)の、H
+(aq)及びHCO
3−(aq)への平衡の脱会合を通じて錯体が形成された直後に設定される。したがって、実施形態において、接触器内の圧力を上昇させることは、1つのHCO
3−(aq)イオンと有機ヘテロ原子化合物の1つの分子との錯体の形成を促進する。同様に、圧力の減少は上の機序を反対方向に追いやり、イオンと有機ヘテロ原子化合物との錯体の形成を減少させることになるか、あるいは既に溶液中に存在した任意の錯体を分解する場合がある。したがって、有機ヘテロ原子化合物は溶媒から駆出され得るか、あるいは例えば接触器内の圧力を減少させることによって溶媒から凝集または沈殿させ得ることが明白であろう。
【0055】
接触器内の圧力は、様々な特定の有機ヘテロ原子化合物を引き付けるために、より多くまたはより少ないHCO
3−を生成するように圧力を変動させる等、使用される調整可能溶媒150及び標的有機ヘテロ原子化合物に応じて異なり得る。しかしながら、実施形態において、接触器内の圧力は、約20バール〜約275バール等の約2バール〜約300バールであり得る。一部の実施形態において、接触器内の圧力は、約75バール〜約225バール等の約50バール〜約250バールであり得る。更なる他の実施形態において、接触器内の圧力は、約100バール〜約200バールであり得る。更なる他の実施形態において、接触器内の圧力は、約150バール等の約125バール〜約175バールであり得る。上記の範囲は開示された終端点の間の各点を含むことが意図され、2バール〜300バールの各圧力点が本開示において想定されることを理解されたい。
【0056】
接触器内の温度は、使用される調整可能溶媒150及び標的有機ヘテロ原子化合物に応じて異なり得る。水性二酸化炭素が調整可能溶媒である実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約20℃高い温度等、二酸化炭素の臨界温度以上であり得る。一部の実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約60℃高い温度等、二酸化炭素の臨界温度よりも40℃以上高い。実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約80℃高い温度以下等、二酸化炭素の臨界温度よりも約100℃高い温度以下であり得る。したがって、実施形態において、接触器内の温度は、二酸化炭素の臨界温度よりも約60℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約80℃高い温度以下等の、二酸化炭素の臨界温度よりも約40℃以上高い温度〜二酸化炭素の臨界温度よりも約100℃高い温度以下であり得る。
【0057】
図1を再度参照すると、実施形態において、接触器110の中間部から抽出された希薄炭化水素132は、容器160に送られ、ここで希薄炭化水素132は減圧され、それによって任意の残留二酸化炭素及び/または水の排出ストリーム133が希薄炭化水素132から分離され、容器160から除去される。排出ストリーム133は更に処理されて二酸化炭素及び水を分離し得、これらはそれぞれ、二酸化炭素貯蔵装置120及び水貯蔵装置140に戻され得る。他の実施形態においては、排出ストリームは処分されてもよい。
【0058】
実施形態において、接触器110の底部から抽出され得る溶質豊富調整可能溶媒151は、回収容器170に供給され得、ここでそれは減圧されて、溶質豊富溶媒151のイオン性特性を調整して下げ、それによって例えば有機ヘテロ原子化合物等の溶質171を駆出する。駆出された溶質171はその後貯蔵され、ある他の能力で使用されてもよい。一部の実施形態において、駆出される溶質171は、溶質豊富溶媒151から濾過されてもよい。他の実施形態において、駆出される溶質171は、芳香族溶媒抽出によって溶質豊富溶媒151から除去されてもよい。いずれの実施形態においても(すなわち、溶質が濾過で除去されるか、あるいは芳香族抽出によって除去されるかに関わらず)、溶質豊富溶媒151の圧力を低下させることによって放出された二酸化炭素123(
図1に標識123は図示せず)は、再加圧され、二酸化炭素貯蔵装置120に戻され、ここで二酸化炭素123は水141と共に接触器へと分散されるか、炭化水素131と予混合され得る。
【0059】
芳香族溶媒抽出が、溶質171を溶質豊富溶媒151から分離するために使用される実施形態において、溶質豊富芳香族溶媒は追加的な容器に送られ得、ここで芳香族溶媒は、芳香族溶媒の沸点までの加熱等によって蒸発させられ、したがって溶質171を駆出する。蒸発した芳香族溶媒はその後凝縮させられ、溶質豊富溶媒151から更なる溶質171を抽出するために再使用され得、溶質171は貯蔵され、別の能力で使用されてもよい。
【0060】
図1はただ1つの接触器110のみを示しているが、実施形態においては、除去されるべき有機ヘテロ原子化合物の数及び特徴に応じて、複数の接触器が直列で使用されてもよいことを理解されたい。例えば、第1の接触器内の調整可能溶媒が、第1の有機ヘテロ原子化合物を分離するように調整されてもよく、例えば、第1の接触器内の圧力とは異なる第2の接触器内の圧力または温度を有するもの等、第2の接触器を、第2の接触可能溶媒を調整して第2の有機ヘテロ原子化合物を分離するために使用してもよい。同様に、
図1は、溶質171を溶質豊富溶媒151から駆出するための回収容器170を1つのみ示しているが、駆出される溶質のための複数の容器を使用してもよい。例えば、溶質豊富溶媒151が異なる沸点をもつ複数の溶質を含む場合、複数の容器が、溶質豊富溶媒151から複数の溶質を駆出するために使用され得る。
【0061】
電界アシスト物質移動
炭化水素供給原料からの有機ヘテロ原子化合物の分離は更に、電界を用いることで増進することができる。
図4を参照すると、一部の実施形態において、コンデンサの2枚の電気板410と420との間に電界が生成され得る。この電界が、電
界内のイオン種の
整列につながり、それによってイオン間の物質移動を向上させ得る。粒子430は、双極性水性溶媒粒子であり得、これらは電気板410及び420の外側では
整列しない。粒子450は、電気板410及び420の外側では
整列しない有機双極性粒子であり得る。電気板の間にあるのは、
整列している、例えば調整可能溶媒と上述の有機ヘテロ原子化合物との錯体等のヘテロ原子錯体440であり得る。調整可能溶媒と炭化水素供給原料との間の滞留時間及び接触は、電気板410と420との間でイオンを
整列させることによって増加し得る。更に、粒子を
整列させるために電界を使用することは、調整可能溶媒が有機ヘテロ原子化合物に対するより高い親和力を有することを可能にし、極性イオンを引き付けることにより2枚の板の間の物質移動を促進し得る。
【0062】
実施形態において、電気板は、電界に関して炭化水素供給原料からの有機ヘテロ原子化合物の
整列を引き起こし、それによってそれらの調整可能溶媒に向かう移動を促進し得、ここで、有機ヘテロ原子化合物は、上に考察された機序を介して溶媒の水性相へと引き付けられる。有機ヘテロ原子化合物で飽和した送出される調整可能溶媒は次いで、別の容器に送られ得、ここで有機ヘテロ原子化合物は、調整可能溶媒から芳香族抽出によって、あるいは溶媒系の圧力を低減して調整可能溶媒による溶質の駆出を可能にすることによって除去され得、この場合溶質は例えば濾過によって収集され得る。分離後、調整可能溶媒は再加圧され、接触器に戻されてもよく、有機ヘテロ原子化合物溶質は貯蔵され、別の能力で使用されてもよい。
【0063】
実施形態において、電気板410及び420は、電気板の間での粒子の移動を促進するように、貫通孔を有してもよい。一部の実施形態において、電気板のバンクを、接触器110等の接触器内にバッフルまたはパッキング材料を形成するために使用してもよい。板のバンクは、互いからずらされていてもよい。
【0064】
このように、炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を回収するための方法の様々な実施形態について記載してきた。本方法において、加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体等の水性溶媒は、原油または原油留分等の炭化水素供給原料と接触させ得る。この接触は、炭化水素供給原料中の有機ヘテロ原子化合物との錯体を選択的に形成するように水性溶媒系を調整する圧力及び温度において、接触器容器内で起こり得る。錯体は次いで、回収容器に移動させられてもよく、この中では、圧力、温度、または両方が、有機ヘテロ原子化合物が溶液から出てくるように調節され得る。それによって、有機ヘテロ原子化合物は、更なる用途のために使用され得る。原油等の炭化水素供給原料について使用される一般的な脱窒素または脱硫プロセスによるものとは異なり、これらの有機ヘテロ原子化合物はそれらの化学構造を維持し、以前は廃棄されていた石油精製の貴重な副生成物として活用することができる。
【0065】
当業者には、特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を本明細書に記載される実施形態に対してなし得ることが明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に修正及び変形が入るならば、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態のそのような修正及び変形を網羅することが意図される。
他の実施態様
1.炭化水素供給原料から有機ヘテロ原子化合物を回収するための方法であって、
少なくとも1つの炭化水素及び少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を含む炭化水素供給原料を、少なくとも1つの接触器へと供給する工程と、
加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体を含む水性溶媒を、前記接触器へと供給して、前記水性溶媒と前記炭化水素供給原料との抽出混合物を形成する工程と、
前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物との溶媒錯体を選択的に形成するように、共に前記水性溶媒を調整する、前記接触器内の前記抽出混合物の接触器圧力及び接触器温度を設定する工程と、
前記接触器内の前記抽出混合物から回収容器に前記溶媒錯体を抽出する工程と、
前記回収容器の回収温度、前記回収容器の回収圧力、または両方を調節して、前記回収容器内の前記溶媒錯体を、二酸化炭素及び前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物へと分解する工程と、
前記回収容器から前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収する工程と、
を有してなる、前記方法。
2.前記炭化水素供給原料が原油または原油留分である、実施態様1に記載の前記方法。
3.前記少なくとも1つのヘテロ原子化合物が、窒素含有複素環式化合物、硫黄含有複素環式化合物、ポルフィリン類、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから選択される、実施態様1または実施態様2に記載の前記方法。
4.前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物が、ピロール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ベンゾカルバゾール、カルバゾール、インドール、ニッケルテトラフェニルポルフィリン、バナジルテトラフェニルポルフィリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、及び7,8,9,10−テトラヒドロベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン、ならびにそれらの組み合わせから選択される、実施態様1〜3のいずれかに記載の前記方法。
5.前記接触器が電気板を備え、前記方法が、前記電気板を作動させて、前記イオン性液体のイオンと前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物のイオンとを整合させる工程を更に含む、実施態様1〜4のいずれかに記載の前記方法。
6.前記水性溶媒中の前記加圧二酸化炭素が、超臨界CO2、亜臨界CO2、またはその両方を含む、実施態様1〜5のいずれかに記載の前記方法。
7.前記接触器圧力が、約2バール〜約300バール、約20バール〜約275バール、約50バール〜約250バール、約75バール〜約225バール、約100バール〜約200バール、または約125バール〜約175バールであり、好ましくは約150バールである、実施態様1〜6のいずれかに記載の前記方法。
8.前記接触器圧力が、CO2の臨界圧力以上である、実施態様1〜7のいずれかに記載の前記方法。
9.前記接触器温度が、二酸化炭素の臨界温度以上である、実施態様1〜8のいずれかに記載の前記方法。
10.前記接触器温度が、二酸化炭素の臨界温度よりも約20℃高いか、二酸化炭素の臨界温度よりも40℃以上高いか、または二酸化炭素の臨界温度よりも約60℃高い、実施態様1〜9のいずれかに記載の前記方法。
11.前記接触器内の温度が約100℃以下であり、好ましくは約80℃以下である、実施態様1〜10のいずれかに記載の前記方法。
12.前記接触器温度が、二酸化炭素の臨界温度超〜約100℃である、実施態様11に記載の前記方法。
13.前記炭化水素供給原料及び前記水性溶媒が、前記炭化水素供給原料及び水性溶媒が前記接触器内で向流であるように、前記接触器へと供給される、実施態様1〜12のいずれかに記載の前記方法。
14.前記炭化水素供給原料及び前記水性溶媒が、前記接触器の両端へと供給される、実施態様1〜13のいずれかに記載の前記方法。
15.前記炭化水素供給原料が、前記炭化水素供給原料を前記接触器の底部へと噴霧する工程を含む方法によって、前記接触器へと供給され、前記水性溶媒が、前記水性溶媒を前記接触器の頂部へと噴霧する工程を含む方法によって、前記接触器へと供給される、実施態様13または実施態様14に記載の前記方法。
16.前記回収容器の回収温度、前記回収容器の回収圧力、または両方を調節する工程が、前記回収圧力を前記接触器圧力未満に低減する工程を含む、実施態様1〜15のいずれかに記載の前記方法。
17.前記回収容器の回収温度、前記回収容器の回収圧力、または両方を調節する工程が、前記回収温度を前記接触器温度未満に低下させる工程を含む、実施態様1〜16のいずれかに記載の前記方法。
18.前記水性溶媒の密度が前記炭化水素供給原料の密度よりも大きく、それによって、前記抽出混合物が少なくとも有機相及び水性相へと分離し、前記溶媒錯体の少なくとも一部が前記水性相へと移行する、実施態様1〜17のいずれかに記載の前記方法。
19.前記溶媒錯体を抽出する工程が、前記溶媒錯体の前記少なくとも一部を、前記水性相または前記接触器内で前記水性相の上に形成されるCO2相から除去する工程を含む、実施態様1〜18のいずれかに記載の前記方法。
20.前記溶媒錯体を前記回収容器内で減圧して、前記溶媒錯体を分解して1つ以上のヘテロ原子化合物(複数可)、二酸化炭素、及び水を含む混合物を形成し、前記少なくとも1つ以上のヘテロ原子化合物を回収する、実施態様1〜19のいずれかに記載の前記方法。
21.前記回収容器内での前記溶媒錯体の減圧中に放出された二酸化炭素の少なくとも一部を、前記接触器に再循環させる工程を更に含む、実施態様20に記載の前記方法。
22.前記二酸化炭素が、前記接触器に供給される前記水性溶媒を形成するために使用される、実施態様21に記載の前記方法。
23.前記炭化水素供給原料が、前記接触器へと供給される前に、超臨界CO2及び水を含有する前記水性溶媒と混合される、実施態様1〜22のいずれかに記載の前記方法。
24.前記超臨界二酸化炭素が、実施態様21に記載の前記方法で再循環された二酸化炭素を含む、実施態様23に記載の前記方法。
25.前記回収容器から前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収する工程が、芳香族溶媒を1つ以上のヘテロ原子化合物(複数可)及びイオン性溶媒を含有する前記混合物と混合する工程と、好ましくは前記有機ヘテロ原子化合物を前記芳香族溶媒中に抽出し、その後前記芳香族溶媒を除去する工程とを含む、実施態様1〜24のいずれかに記載の前記方法。
26.前記回収容器から前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収する工程が、1つ以上のヘテロ原子化合物(複数可)及びイオン性溶媒を含有する前記混合物を濾過する工程を含む、実施態様1〜25のいずれかに記載の前記方法。
27.前記収縮器から希薄炭化水素を抽出及び回収する工程を更に含む、実施態様1〜26のいずれかに記載の前記方法。
28.前記希薄炭化水素が、減圧して希薄炭化水素、二酸化炭素、及び水を含有する混合物を生成すること、ならびに前記希薄炭化水素を回収することによって前記収縮器から回収される、実施態様27に記載の前記方法。
29.前記二酸化炭素及び/または水が任意選択で分離され、前記接触器に供給される前記水性溶媒を形成するために使用される、実施態様28に記載の前記方法。
30.1つの接触器が用いられる、実施態様1〜29のいずれかに記載の前記方法。
31.複数の接触器が直列で用いられ、好ましくは各接触器が、前記炭化水素供給原料から異なる有機ヘテロ原子化合物を回収するために用いられる、実施態様1〜30のいずれかに記載の前記方法。
32.2つ以上の回収容器が用いられ、好ましくは各回収容器が、前記分解された溶媒錯体から異なる有機ヘテロ原子化合物を回収するために用いられる、実施態様30または実施態様31に記載の前記方法。
33.前記方法がバッチ運転または連続運転であり、好ましくは連続運転である、実施態様1〜32のいずれかに記載の前記方法。
34.炭化水素供給原料から少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収するための錯化剤としての、加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体の使用であって、好ましくは、前記炭化水素供給原料が原油または原油留分を含む、前記使用。
35.炭化水素供給原料から少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を除去または低減するための作用剤としての、加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体の使用であって、好ましくは、前記炭化水素供給原料が原油または原油留分を含む、前記使用。
36.前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物が、窒素含有複素環式化合物、硫黄含有複素環式化合物、ポルフィリン類、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様34または実施態様35に記載の使用。
37.前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物が、ピロール、ピリジン、キノリン、カルバゾール、インドール、ニッケルテトラフェニルポルフィリン、バナジルテトラフェニルポルフィリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、及び7,8,9,10−テトラヒドロベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様36に記載の使用。
38.炭化水素供給原料から1つ以上の有機ヘテロ原子化合物を低減または除去して希薄炭化水素を形成するための方法であって、
少なくとも1つの炭化水素及び少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を含む炭化水素供給原料を、接触器へと供給する工程と、
加圧二酸化炭素及び水から形成されるイオン性液体を含む水性溶媒を、前記接触器へと供給して、前記水性溶媒と前記炭化水素供給原料との抽出混合物を形成する工程と、
希薄炭化水素及び前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物との溶媒錯体を含有する混合物を選択的に形成するように、共に前記水性溶媒を調整する、前記接触器内の前記抽出混合物の接触器圧力及び接触器温度を設定する工程と、
前記接触器内の前記抽出混合物から回収容器に前記溶媒錯体を抽出する工程と、
前記接触器から前記希薄炭化水素を回収する工程と、
を有してなる、前記方法。
39.前記溶媒錯体から前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収する工程を更に含む、実施態様38に記載の方法。
40.前記回収容器の回収温度、前記回収容器の回収圧力、または両方を調節して、前記回収容器内の前記溶媒錯体を、二酸化炭素及び前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物へと分解することと、前記回収容器から前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物を回収することとによって、前記有機ヘテロ原子化合物が前記溶媒錯体から回収される、実施態様39に記載の方法。
41.前記炭化水素供給原料が原油または原油留分を含む、実施態様38〜40のいずれかに記載の方法。
42.前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物が、窒素含有複素環式化合物、硫黄含有複素環式化合物、ポルフィリン類、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様38〜41のいずれかに記載の方法。
43.前記少なくとも1つの有機ヘテロ原子化合物が、ピロール、ピリジン、キノリン、カルバゾール、インドール、ニッケルテトラフェニルポルフィリン、バナジルテトラフェニルポルフィリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、及び7,8,9,10−テトラヒドロベンゾ[b]ナフト[2,3−d]チオフェン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様42に記載の前記方法。