(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1漏洩部と前記第2漏洩部は、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバの保護被覆を除去して前記クラッドの表面を露出させた保護被覆除去部を備える請求項1に記載の光パワーモニタ装置。
前記保護被覆除去部から露出するクラッドの表面の少なくとも一部に、クラッドを伝搬する光を前記クラッドの外側に逃がすためのクラッド光除去処理が施されている請求項2に記載の光パワーモニタ装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光パワーモニタ装置およびレーザ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面において、同じ部材には同じ参照符号を付している。また、異なる図面において、同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。なお、これらの図面は見易くするために、縮尺を適宜変更している。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る光パワーモニタ装置の概念的な構成を示すブロック図である。光ファイバ部分については模式的な断面図で示している。
光パワーモニタ装置1は、少なくともコア21、31とその外周を覆うクラッド22、32とをそれぞれ備えた第1光ファイバ2と第2光ファイバ3とを備えている。第1光ファイバ2と第2光ファイバ3の端面同士は結合され、結合部4を形成している。また、第1光ファイバ2は、結合部4の近傍に、第1光ファイバ2のクラッド22の外側に光が漏れ出す第1漏洩部23を有し、第2光ファイバ3は、結合部4の近傍に、第2光ファイバ3のクラッド32の外側に光が漏れ出す第2漏洩部33を有している。第1漏洩部23には、この第1漏洩部23から漏れ出した光パワーを受光して検出し、その検出結果を出力する第1光検出部5が配置され、第2漏洩部33には、この第2漏洩部33から漏れ出した光パワーを受光して検出し、その検出結果を出力する第2光検出部6が配置されている。これら各部の全体は、外部へのレーザ光の漏洩を防ぐため、あるいは、外部からの光の入射を遮るために、ケース内に収容しても良い。
【0032】
第2光ファイバ3のコア径は、第1光ファイバ2のコア径よりも大きい。このため、結合部4において、第1光ファイバ2のクラッド22の端面のうちの少なくとも内周側の一部は、第2光ファイバ3のコア31の端面と接して結合している。第1光ファイバ2のコア径に対する第2光ファイバ3のコア径の大きさの範囲は、数倍から十数倍程度の範囲であって良いが、この範囲に限定するものではない。また、第1光ファイバ2の外径と第2光ファイバ3の外径は、図示するように略同じであって良いが、略同じ外径であることに限定するものではない。但し、第2光ファイバ3のコア径は、第1光ファイバ2のクラッド22の外径よりも小さい。このため、結合部4において、第2光ファイバ3のクラッド32の端面のうちの少なくとも内周側の一部は、第1光ファイバ2のクラッド22の端面と接して結合している。
なお、結合部4は、第1光ファイバ2と第2光ファイバ3の端面同士を突き合わせて結合したものであっても良いが、結合部4における光の伝搬損失を抑える観点から、第1光ファイバ2と第2光ファイバ3の端面同士を融着して結合したものであることが好ましい。
【0033】
次に、かかる光パワーモニタ装置1において、第1光ファイバ2および第2光ファイバ3を光が伝搬する様子について
図2から
図4を用いて説明する。まず、
図2は、
図1に対して、第1光ファイバ2のコア21を第2光ファイバ3の方向に伝搬してきた光を点線で例示的に書き加えた図である。
図2に示したように、第1光ファイバ2のコア21を第2光ファイバ3の方向に伝搬してきた光は、結合部4ではコア径が大きくなるだけなので、光は第1光ファイバ2のコア21から第2光ファイバ3のコア31に伝搬し、結合部4を通過する際に第1光ファイバ2のコア21から第2光ファイバ3のクラッド32に漏れ出す光パワーの割合は小さい。従って、第1光ファイバ2のコア21から第2光ファイバ3の方向に伝搬してきた光は、結合部4での光パワーの損失も少なく、コア21、31を伝搬して光パワーモニタ装置1を通過できる。これにより、例えば、第1光ファイバ2のコア21を第2光ファイバ3の方向に伝搬してきた光がレーザ装置からのレーザ出力光であった場合、レーザ出力光は光パワーモニタ装置1を低損失で通過できることになる。
【0034】
一方、
図3は、
図1に対して、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光を点線で例示的に書き加えた図である。
図3において、白抜きの矢印は、第1漏洩部23から第1光ファイバ2の外側に漏れ出して第1光検出部5に入射する光を模式的に表している。
図3に示したように、第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は、結合部4ではコア径が小さくなるので、結合部4で第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出す光パワーの割合がかなり大きくなる。結合部4で第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出した光は、第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬して、更に第1漏洩部23からクラッド22の外側に漏れ出して第1光検出部5で検出される。結合部4で第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出す光パワーの割合はかなり大きいので、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光を第1光検出部5で高精度に検出できる。
【0035】
更に、
図4は、
図1に対して、第2光ファイバ3のクラッド32を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光を点線で例示的に書き加えた図である。
図4において、白抜きの矢印は、第1漏洩部23から第1光ファイバ2の外側に漏れ出して第1光検出部5に入射する光と、第2漏洩部33から第2光ファイバ3の外側に漏れ出して第2光検出部6に入射する光を模式的に表している。
図4に示したように、第2光ファイバ3のクラッド32を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は、第2光ファイバ3の第2漏洩部33において容易にクラッド32から第2光ファイバ3の外側に漏れ出し、第2光検出部6によって高精度に検出される。第2漏洩部33の位置では、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は、未だ殆どコア31からクラッド32の方に漏れ出していないので、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は、第2漏洩部33からは殆ど漏れ出さない。従って、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬した光は、第2光検出部6では殆ど検出されない。
一方、第2光ファイバ3のクラッド32を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光の一部は、第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬して第1漏洩部23からクラッド22の外側に漏れ出し、第1光検出部5でも検出され得るが、前述のように、第2光検出部6では、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は殆ど検出されないので、第1光検出部5の検出結果に含まれる第2光ファイバ3のクラッド32から第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬してきた光の寄与分が無視できない程ある場合でも、その寄与分は容易に算出でき、その影響を取り除くことができる。
【0036】
従って、この光パワーモニタ装置1によれば、第2光ファイバ3のコア31を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光パワーと、第2光ファイバ3のクラッド32を第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光パワーとを区別して共に高精度に検出することができる。これにより、例えば、第2光ファイバ3から第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光が、レーザ装置からのレーザ出力光とは逆方向に伝搬するワーク等からの反射光であった場合、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光の光パワーとクラッド32を伝搬してきた反射光の光パワーとを区別して高精度に検出できることになる。
【0037】
なお、第1光ファイバ2および第2光ファイバ3は、
図1から
図4に示したように、それぞれの外周面に、第1光ファイバ2および第2光ファイバ3内を伝搬する光を全く透過しないまたは殆ど透過しない保護被覆24、34を有している。第1漏洩部23と第2漏洩部33の具体的構成は、この保護被覆24、34の外側に光を漏洩させることができるものであれば特に限定されない。例えば、第1漏洩部23と第2漏洩部33に相当する保護被覆24、34のそれぞれの部位に、光が透過可能な樹脂等で形成した部位を備えることもできるが、第1漏洩部23と第2漏洩部33は、これら第1漏洩部23と第2漏洩部33に相当する保護被覆24、34の部位を除去して、それぞれのクラッド22、32の表面を露出させた保護被覆除去部25、35を備えることが好ましい。これにより、クラッド22、32に漏れ出してきた光を、第1光検出部5や第2光検出部6で検出できるように、第1光ファイバ2および第2光ファイバ3の外側に更に漏れ出し易いようにする効果が容易に得られる。また、クラッド22、32に漏れ出してきた光がレーザ装置からのレーザ出力光とは逆方向に伝搬するワークからの反射光であった場合、クラッド22、32に漏れ出してきた光で保護被覆24、34が過熱して焼損する等の障害の発生を防ぐことができる。この場合、結合部4を含む所定領域も、例えば結合部4でクラッド22、32に漏れ出した光等によって、保護被覆24、34が過熱して焼損する等の障害の発生を防ぐために、
図1から
図4に示したように、保護被覆24、34を除去することによって保護被覆除去部を設けることが好ましい。
【0038】
図1から
図4に示したように、保護被覆除去部25、35を備えた第1漏洩部23および第2漏洩部33を構成した場合、第1光検出部5と第2光検出部6のそれぞれの受光面は、保護被覆除去部25、35に対向する位置に設けることが好ましい。これによって、第1光検出部5と第2光検出部6が保護被覆除去部25、35から漏れ出してくる光を効率的に検出できる。このとき、保護被覆除去部25、35から漏れ出してくる光を第1光検出部5や第2光検出部6の受光面に効率的に集光あるいは導光するために、図示しないが、保護被覆除去部25と第1光検出部5との間あるいは保護被覆除去部35と第2光検出部6との間に、集光あるいは導光のための光学部品を配置しても良い。集光あるいは導光のための光学部品は、第1光検出部5や第2光検出部6の受光面を構成する透過窓を兼ねていても良い。
【0039】
保護被覆24、34を除去した保護被覆除去部は、第1光ファイバ2および第2光ファイバ3から漏れ出した光を第1光検出部5および第2光検出部6によってそれぞれ検出できるように、少なくともこれら第1光検出部5および第2光検出部6が配置される保護被覆24、34の部位に備えられていれば良いが、
図1から
図4に示した保護被覆除去部25、35は、第1光ファイバ2と第2光ファイバ3の保護被覆24、34を全周に亘って除去している。この場合、図示しないが、これら保護被覆除去部25、35を挟んで、第1光検出部5や第2光検出部6を設置した側と反対側に鏡面反射部材を配置するようにしても良い。これにより、保護被覆除去部25、35から第1光検出部5や第2光検出部6の反対側に漏れ出した光を、第1光検出部5や第2光検出部6の受光面に効率的に入射させることができ、第1光検出部5や第2光検出部6によってより高精度な検出を行うことができる。このような鏡面反射部材の鏡面は、保護被覆除去部25、35から漏れ出した光を第1光検出部5や第2光検出部6の受光面に更に効率的に集光できるように、曲面状の鏡面であっても良い。
【0040】
保護被覆除去部25、35から露出するクラッド22、32の表面の少なくとも一部には、図示しないが、クラッド22、32を伝搬する光を該クラッド22、32の外側に効果的に逃がすためのクラッド光除去処理を施すことも好ましい。クラッド光除去処理を施すことによって、クラッド22、32を伝搬している光が光ファイバの外側に漏れ出し易くなり、クラッド22、32を伝搬している光の検出精度が向上する。また、クラッド22、32を伝搬する光が保護被覆24、34の過熱による焼損等を引き起こす可能性がある光である場合、光ファイバ外に逃げ易くして、保護被覆24、34の損傷を防ぐ効果もある。
具体的なクラッド光除去処理としては、クラッド22、32の外側の表面を少し荒れた状態に粗面加工する方法、クラッド22、32の外側の表面に微細なパターンを形成する方法等の他に、クラッド22、32の外側の表面に漏れ出した光が透過する、クラッド22、32よりも高屈折率の樹脂等を塗布する等の方法を採用することができる。
【0041】
図5は、本発明の他の実施形態に係る光パワーモニタ装置の一部分の概念的な構成を示すブロック図であり、光ファイバ部分については模式的な断面図で示している。
図5において、白抜きの矢印は、第1漏洩部23から漏れ出して第1光検出部5に入射する光を模式的に表している。
前述した第1漏洩部23と第2漏洩部33のうちの少なくとも一方は、湾曲部を備えていることも好ましい。
図5は、第1漏洩部23と第2漏洩部33のうちの第1漏洩部23が湾曲部26を備えている場合の光パワーモニタ装置の関連部分を示している。湾曲部26を備えることによって、前述のようなクラッド光除去処理をクラッド22の表面に施さなくても、クラッド22内を伝搬する光が外部に漏洩し易くなり、第1光検出部5による検出精度が向上する。もちろん、湾曲部26に更にクラッド光除去処理を施しても良い。このような湾曲部は第2漏洩部33にも同様に備えることができる。
【0042】
図5に示した湾曲部26は、第1光ファイバ2を、第1漏洩部23を中心にして円弧状に約180°湾曲させることによって形成しているが、これに限定されない。湾曲部は、第1漏洩部23や第2漏洩部33の部位で光ファイバが曲線状に湾曲した部位を有するものであれば良い。従って、例えば、図示しないが、第1漏洩部23や第2漏洩部33の全体を円形となるように湾曲させることによって湾曲部を形成しても良い。
なお、湾曲部を備える場合、光検出部は、
図5に示した第1光検出部5と第1光ファイバ2の湾曲部26との配置関係のように、クラッド22、32から漏れ出した光をより効果的に検出できるように、湾曲した部位の少なくとも凸側(外周側)に配置することが好ましい。
【0043】
その他、図示しないが、第1漏洩部23や第2漏洩部33における光ファイバの外側への漏れ光を増やすために、図示しないが、第1漏洩部23や第2漏洩部33に光ファイバと光ファイバの端面同士を融着等によって結合した第2の結合部を、結合部4とは別に設けても良い。第2の結合部については、必ずしもコア径の異なる光ファイバを結合した結合部でなくても良い。
【0044】
図6は、本発明の更に他の実施形態に係る光パワーモニタ装置の概念的な構成を示すブロック図であり、光ファイバ部分については模式的な断面図で示している。
図6において、白抜きの矢印は、第1漏洩部23、第2漏洩部33から漏れ出して第1光検出部5、第2光検出部6に入射する光を模式的に表している。
この光パワーモニタ装置1は、第1光検出部5と第2光検出部6をそれぞれ複数の光検出部で構成している。第1光検出部5や第2光検出部6を複数の光検出部で構成すると、光検出部の劣化や故障によって生じる不正確な検出結果や、不正確な検出結果に基づく不適切な光出力制御による様々な不具合を回避でき、検出結果の信頼性向上を図ることができる。なお、複数の光検出部で構成する場合、検出結果の信頼性をより向上させる観点からは、
図6に示したように、第1光検出部5と第2光検出部6の両方をそれぞれ複数の光検出部で構成した方が好ましいが、第1光検出部5と第2光検出部6のうちのいずれか一方のみを複数の光検出部で構成するだけでも良い。
【0045】
図6に示した第1漏洩部23および第2漏洩部33は、第1光ファイバ2と第2光ファイバ3の全周に亘る保護被覆除去部25、35を備えたものであり、光ファイバを挟んでそれぞれ2つずつの第1光検出部5、第2光検出部6が対向するように配置されているが、全周に亘る保護被覆除去部25、35を備える場合、例えば、図示しないが、1つの漏洩部当たり3つ以上の光検出部を、光ファイバを中心として周方向に配置するようにしても良い。光ファイバからの漏れ光は、光ファイバを中心として必ずしも等方的に出射されている訳ではないので、光ファイバを中心として周方向に複数の光検出部を配置することにより、漏れ光の検出精度が向上するという効果が得られる。但し、複数の光検出部の配置は、このような光ファイバを中心とした周方向に限定されるものではなく、光ファイバの軸方向に沿って並べて配置しても良いし、周方向の配置と軸方向の配置とを組み合わせても良い。
【0046】
1つの漏洩部当たり複数の光検出部を配置する場合、その複数の光検出部は、波長感度の異なる光検出部から構成されていることも好ましい。例えば
図6に示したように、1つの漏洩部に2つの光検出部(第1漏洩部23の第1光検出部5、5または第2漏洩部33の第2光検出部6、6)を配置した場合、それら2つの光検出部の間(第1光検出部5と5の間または第2光検出部6と6の間)で波長感度が互いに異なるようにして、複数の光検出部のうちに波長感度の異なる光検出部が含まれるようにする。
波長感度を異ならせるには、例えば、光学的なバンドパスフィルタやローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を使用することができる。これにより、特定の波長範囲の光だけを高感度で検出できるようになり、例えば、
図7に示したファイバレーザにおける誘導ラマン散乱によるストークス光のように、波長がシフトしたために、ファイバレーザにおけるFBG(Fiber Bragg Grating)で反射されず、励起用半導体レーザまで戻って、励起用半導体レーザに損傷を与える等、ファイバレーザのレーザ出力光の反射光以上に有害な光等をレーザ出力光や通常の反射光とは区別して検出することができ、より適切な光出力制御が可能になる。
【0047】
なお、第1光検出部5と第2光検出部6の具体的構成は、第1漏洩部23、第2漏洩部33から漏れ出した光を受光して検出し、その検出結果を出力可能な構成であれば特に限定されないが、第1光検出部5と第2光検出部6のうちの少なくとも一方はフォトダイオードであることが好ましい。フォトダイオードは、光を熱に変換して検出するタイプの光検出部に比べて光応答速度が速い。光応答速度が速いと反射光パワーの変化を高速に検出できるので、光出力の制御に高速にフィードバックできる。従って、反射光がレーザ装置からのレーザ出力光とは逆方向に伝搬するワークからの反射光であった場合、レーザ発振器や光ファイバの損傷を未然に防止することができる。
【0048】
図8は、本発明の更に他の実施形態に係る光パワーモニタ装置の概念的な構成を示すブロック図であり、光ファイバ部分については模式的な断面図で示している。
図8に示すように、光パワーモニタ装置1は、更に放熱部材7を備え、第1光ファイバ2、第2光ファイバ3、結合部4、第1漏洩部23、第2漏洩部33、第1光検出部5、第2光検出部6のうちの少なくとも1つ以上が、放熱部材7と熱的に接続するように設置されていることも好ましい。このように各部を放熱部材7と熱的に接続することによって、漏れ光やクラッド22、32から保護被覆24、34に照射される光等による各部の温度上昇が抑制され、光パワーモニタ装置1の信頼性が向上する。第1光検出部5と第2光検出部6については、放熱部材7と熱的に接続することによって温度が安定し、温度が変化することによる光検出感度の変化や出力値のドリフト等が抑制され、光検出精度が向上する。また、各部と熱的に接続している放熱部材7の温度をモニタすると、故障による発熱等の障害発生を検知できるようになる。
【0049】
図8では、各部は1つの放熱部材7と熱的に接続するようにしているが、放熱部材は1つに限らず、複数に分かれていても良い。また、
図8では、光パワーモニタ装置1内に放熱部材7があり、光パワーモニタ装置1に専用の放熱部材のように描いているが、放熱部材は光パワーモニタ装置1に専用である必要はなく、他の発熱部品の熱を放熱するための放熱部材と兼用であっても良い。なお、具体的な放熱部材としては、例えば、水冷ヒートシンク等を挙げることができる。
【0050】
図9は、本発明の更に他の実施形態に係る光パワーモニタ装置の概念的な構成を示すブロック図であり、光ファイバ部分については模式的な断面図で示している。
図9に示したように、光パワーモニタ装置1が更に1つ以上の温度検出部8を備え、第1光検出部5と第2光検出部6のうちの少なくとも一方が、温度検出部8と熱的に接続しており、第1光検出部5や第2光検出部6の所定の部位の温度を検出できるように温度検出部8が設置されていることも好ましい。これにより、光検出部の温度変化による感度の変化や出力値のドリフトが校正でき、漏れ光をより精度良く検出できる。第1光検出部5や第2光検出部6は、温度検出部8と熱的に接続すると共に、例えば
図8に示したような放熱部材7と熱的に接続した構造であっても良い。
【0051】
図10は、本発明の一実施形態に係るレーザ装置の概念的な構成を示すブロック図である。
図10に示すレーザ装置100は、前述した光パワーモニタ装置1と、レーザ発振器101と、レーザ発振器101から出力されたレーザ出力光をレーザ光出射端(
図10では図示せず。)に向けて伝搬する出力用光ファイバ102と、レーザ発振器101に駆動電力を供給するレーザ電源103と、光パワーモニタ装置1の第1光検出部5および第2光検出部6(例えば
図1参照)から出力される検出信号を受取り、その検出結果に基づいてレーザ電源103に対してレーザ発振器101への駆動電力の供給を指令する出力指令値を出力することができる制御部104とを備えている。レーザ装置100において、レーザ光出射端の具体的構成は特に限定されない。
【0052】
図10に示す出力用光ファイバ102は、光パワーモニタ装置1から見て、レーザ発振器101から出力されるレーザ出力光を伝搬する入力側の光ファイバ102aと、光パワーモニタ装置1からレーザ光出射端に向けてレーザ出力光を伝搬する出力側の光ファイバ102bとで構成されている。そして、光パワーモニタ装置1は、レーザ発振器101から出力されたレーザ出力光が、第1光ファイバ2から第2光ファイバ3の方向に伝搬するように、出力用光ファイバ102の途中に設置されている。
【0053】
光パワーモニタ装置1を出力用光ファイバ102の途中に設置する具体的構成としては、この出力用光ファイバ102のうち、入力側の光ファイバ102aと光パワーモニタ装置1における第1光ファイバ2とを融着等によって結合し、出力側の光ファイバ102bと光パワーモニタ装置1における第2光ファイバ3とを融着等によって結合することにより行っても良いし、光パワーモニタ装置1の第1光ファイバ2、第2光ファイバ3を、それぞれ入力側の光ファイバ102a、出力側の光ファイバ102bによって構成しても良い。
【0054】
図11は、このように光パワーモニタ装置1を出力用光ファイバ102の途中に設置した場合に、光パワーモニタ装置1の第1光ファイバ2および第2光ファイバ3を伝搬するレーザ出力光と反射光の様子を示している。
図11に示すように、レーザ発振器101側から第1光ファイバ2のコア21を伝搬してきたレーザ出力光(光線A)は、結合部4でコア径が大きくなる方に変わるだけなので、結合部4で第1光ファイバ2のコア21から第2光ファイバ3のクラッド32に漏れ出す光パワーの割合が少ない。従って、レーザ発振器101から出力されたレーザ出力光は光パワーモニタ装置1を低損失で通過できる。
【0055】
一方、レーザ光出射端側から出力側の光ファイバ102bを伝搬して光パワーモニタ装置1に戻ってくる反射光のうち、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光(光線B)は、第2光ファイバ3のコア31に閉じ込められているので、第2漏洩部33から第2光ファイバ3の外側に漏れ出す反射光は殆ど無い。しかし、その反射光が結合部4まで伝搬してくると、結合部4においてコア径が小さくなるので、第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のコア21に入れなかった反射光は、結合部4において第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出す。第1光ファイバ2のコア径に対する第2光ファイバ3のコア径の大きさの比率が大きいと、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光のうち、第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出す光パワーの割合も大きくなるので、かなりの割合で第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出すようにすることができる。
【0056】
光パワーモニタ装置1の内部において、第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬していく反射光の一部は、レーザ発振器101に向けて伝搬して行くにつれて第1光ファイバ2のコア21に吸収されるが、結合部4で第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出した反射光の大部分は、第1漏洩部23まで第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬して行く。結合部4から第1漏洩部23までは近いので、第1光ファイバ2のクラッド22に漏れ出した反射光は、第1漏洩部23から第1光ファイバ2の外側に漏れ出して、第1光検出部5で検出され、その検出結果が制御部104に出力される。通常の構造では、コアからクラッドに漏れ出す反射光の光パワーの割合は小さいので、出力用光ファイバに設けた光パワーモニタ装置でコアを伝搬する反射光を高精度に検出することは困難であるが、本発明によれば、反射光についてはコアからクラッドに漏れ出す光パワーの割合を大きくできるので、第2光ファイバ3のコア31を伝搬する反射光を高精度に検出することができる。
【0057】
次に、第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してきた反射光(光線C)は、クラッド32を伝搬してきているので、第2漏洩部33から容易に第2光ファイバ3の外側に漏れ出し、第2光検出部6で高精度に検出することができる。その検出結果は制御部104に出力される。また、第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してきた反射光は、全てが第2漏洩部33で第2光ファイバ3の外側に漏れ出す訳ではないので、一部は結合部4を経由して第1光ファイバ2のクラッド22へも伝搬し、第1漏洩部23から第1光ファイバ2の外側に漏れ出して第1光検出部5で検出され得る。しかし、前述のように、第2光検出部6では、第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた光は殆ど検出されないので、第1光検出部5の検出結果に含まれる第2光ファイバ3のクラッド32から第1光ファイバ2のクラッド22を伝搬してきた光の寄与分が無視できない程ある場合でも、その寄与分は容易に算出でき、その影響を取り除くことができる。従って、第2光ファイバ3のコア31から第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた反射光の光パワーと、第2光ファイバ3のクラッド32から第1光ファイバ2の方向に伝搬してきた反射光の光パワーとを区別して共に高精度に検出することができる。
【0058】
これにより、レーザ光出射端からレーザ出力光を出射している間、光パワーモニタ装置1の第1光検出部5、第2光検出部6から出力される検出信号を制御部104にフィードバックして、制御部104がレーザ電源103からレーザ発振器101に供給する駆動電力を適切に制御することによって、反射光によるレーザ発振器101や出力用光ファイバ102等の損傷を未然に防ぎながら、高いレーザ出射性能を維持し続けることができるようになる。光パワーモニタ装置1は、前述したように、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してくる反射光パワーとクラッド32を伝搬してくる反射光パワーとを区別して高精度にモニタできるため、そのモニタ結果をレーザ光出力の制御に適確にフィードバックすることにより、高品質のレーザ出力光の出射が行えるようになると共に、反射光による損傷も受けにくい高性能かつ高信頼性のレーザ装置とすることができる。
【0059】
以上のように、レーザ出力光を低損失で出射できると共に、レーザ出力光とは逆方向の第2光ファイバ3から第1光ファイバ2の方向に伝搬してくる反射光を、レーザ発振器101等に損傷を与える第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光の光パワーと、光ファイバの保護被覆24、34の過熱や焼損の原因となる第2光ファイバ3のクラッド32を反射してきた反射光の光パワーとを区別して高精度に検出して、それぞれの反射光の影響の仕方や影響の大きさを考慮して、反射光による損傷を回避しながら適切にレーザ出力光が制御できるので、高信頼性かつ高性能なレーザ装置を実現することができる。
また、反射光はレーザ発振器101よりも手前で光パワーモニタ装置1によって検出できるので、より速く光出力を低減して反射光を減少させる等の制御が可能になり、反射光がレーザ発振器101まで伝搬して損傷を与えるリスクを低減できる。
【0060】
図12は、本発明の他の実施形態に係るレーザ装置の概念的な構成を示すブロック図である。
図12に示すレーザ装置100は、出力用光ファイバ102にレーザ光出射端の一例である加工ヘッド105を備え、ワーク106に対してレーザ加工を行うレーザ加工装置を例示している。このようなレーザ加工装置に前述した光パワーモニタ装置1を備えることにより、レーザ出力光を低損失で出射できると共に、レーザ出力光とは逆方向の第2光ファイバ3から第1光ファイバ2の方向に伝搬してくる反射光を、レーザ発振器101等に損傷を与える第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光の光パワーと、光ファイバの保護被覆24、34の過熱や焼損の原因となるクラッド32を反射してきた反射光の光パワーとを区別して高精度に検出して、それぞれの反射光の影響の仕方や影響の大きさを考慮して、反射光による損傷を回避しながら、制御部104によって、必要以上にレーザ出力を抑えて加工不良を発生させないように適切にレーザ出力光が制御できるので、高信頼性かつ高性能なレーザ装置とすることができる。
また、ワーク106の表面で反射された反射光をレーザ発振器101の手前で光パワーモニタ装置1によって検出できるので、より速く光出力を低減して反射光を減少させる等の制御が可能になり、反射光がレーザ発振器101まで伝搬して損傷を与えるリスクを低減できる。
【0061】
なお、
図12において、白抜きの矢印L1はレーザ出力光を模式的に表し、白抜きの矢印L2は反射光を模式的に表している。レーザ出力光は、通常、加工ヘッド105内の集光光学系でワーク106の表面付近に焦点を結ぶように出射されるので、白抜きの矢印L1は加工ヘッド105から出射されるレーザ出力光の方向を模式的に表している。また、反射光は出力用光ファイバ102の中を伝搬していくが、白抜きの矢印L2は、反射光の方向が分かるように便宜的に出力用光ファイバ102の外側に描いたものであり、反射光の方向を模式的に表しているに過ぎない。
【0062】
なお、レーザ発振器101は、レーザ出力光の波長が光ファイバで伝搬できる波長であれば、どのようなレーザ発振器でも良く、特に限定されない。例えば、半導体レーザから出射されたレーザ光をレーザ出力光とするダイレクト・ダイオードレーザ発振器、半導体レーザから出射されたレーザ光を励起光とし、レーザ共振器もファイバで構成されたファイバレーザ発振器、半導体レーザから出射されたレーザ光等を励起光とするNd:YAGレーザ発振器等の固体レーザ発振器等が該当する。レーザ共振器もファイバで構成されたファイバレーザ発振器以外は、レーザ発振器から出射されたレーザ光を光ファイバに導光する光学系が必要であるが、本発明では、レーザ発振器というブロックには、光ファイバに導光するための光学系が必要なレーザ発振器については、光ファイバに導光するための光学系も含めるとしている。
【0063】
図13は、本発明の更に他の実施形態に係るレーザ装置の概念的な構成を示すブロック図である。
図13に示すレーザ装置200は、
図12に示したレーザ装置100に更に記録部107と算出部108とを備えたものである。記録部107には、レーザ加工対象であるワーク106からの反射光が無い状態における、制御部104からレーザ電源103へ出力される出力指令値に対する光パワーモニタ装置1の第1光検出部5による検出値の関係を表す第1検出特性と、ワーク106からの反射光が無い状態における、制御部104からレーザ電源103へ出力される出力指令値に対する光パワーモニタ装置1の第2光検出部6による検出値の関係を表す第2検出特性とが予め記録してある。
また、算出部108は、レーザ加工時における、制御部104からレーザ電源103へ出力される出力指令値に対する光パワーモニタ装置1の第1光検出部5による検出値と記録部107に予め記録された第1検出特性とから第1反射光パワーを算出すると共に、制御部104からレーザ電源103へ出力される出力指令値に対する光パワーモニタ装置1の第2光検出部6による検出値と記録部107に予め記録された第2検出特性とから第2反射光パワーを算出し、これら第1反射光パワーと第2反射光パワーを制御部104に出力する。
【0064】
図13に示すレーザ装置200は、算出部108によって算出された第1反射パワーと第2反射光パワーの両方の反射光パワーに対して、それぞれ個別に少なくとも1つ以上の閾値が設定され、第1反射光パワーと第2反射光パワーの値が閾値を越えた場合に、制御部104が出力指令値として光出力の遮断を指令するか、あるいは出力指令値を所定の基準に沿って変更するように動作するようになっている。閾値は、制御部104に予め設定される。
【0065】
図14A、
図14Bは、
図13に示したレーザ装置200の動作の一例を表すフローチャートである。
図13を参照しつつ、
図14A、
図14Bに示すフローチャートに基づいてレーザ装置200の動作の一例を説明する。なお、光パワーモニタ装置1の構成部位は、
図1を参照する。
まず、レーザ装置200を起動すると、反射光がない状態でレーザ光を出力した場合に、レーザ装置200の制御部104からレーザ電源103に対して出力される出力指令値P
cに対する光パワーモニタ装置1の第1光検出部5で検出された検出値d
1の関係を示す第1検出特性d
1(P
c)と、同じく出力指令値P
cに対する光パワーモニタ装置1の第2光検出部6で検出された検出値d
2の関係を示す第2検出特性d
2(P
c)とが記録部107に記録されているかを判定する(ステップS101)。
【0066】
第1検出特性d
1(P
c)や第2検出特性d
2(P
c)がないと判定された場合は、ワーク106の代わりに、反射光が殆ど発生しない黒体のアドソーバー等を設置する等の方法で反射光がない状態にして、出力指令値P
cと光パワーモニタ装置1の第1光検出部5から出力される検出値d
1との関係を示す第1検出特性d
1(P
c)と、出力指令値P
cと光パワーモニタ装置1の第2光検出部6から出力される出力値d
2との関係を示す第2検出特性d
2(P
c)を測定によって取得する(ステップS102)。そして、取得した第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)のデータを記録部107に記録し(ステップS103)、ステップS104に進む。
【0067】
記録部107に記録する第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)は、出力指令値P
cが変化した時に 第1検出特性d
1(P
c)や第2検出特性d
2(P
c)がどのように変化するかという特性データなので、
図15に示すd
1(P
c)やd
2(P
c)を変数P
cの関数とする近似式の形式で記録しても良いし、データテーブルの形式で記録しても良い。
図15では、d
1(P
c)やd
2(P
c)は、簡単にP
cの一次関数として示している。
【0068】
なお、
図15からも分かるように、本発明に係る光パワーモニタ装置1は、反射光が少ない状態では、第1光検出部5や第2光検出部6をレーザ出力光の光パワーモニタとして利用できる。特に、コア径の小さい光ファイバを伝搬するレーザ出力光はシングルモードに近く、モードが安定しているので、コア径の小さい第1光ファイバ2側に設置した第1光検出部5は、レーザ出力光の光パワー検出部として有用である。
また、上記の測定においては、より正確に制御されたレーザ光パワーが出力できるように、アドソーバーの代わりに、同様に反射の少ない光パワーメータを設置して、出力指令に対して実際に出射されるレーザ光パワーを同時に測定しても良い。
【0069】
次に、ステップS104では、第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)の更新時期でないかを判定する。レーザ発振器101は長時間駆動すると光出力特性が変化する場合があるので、第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)のデータも所定のスケジュールに従って更新することが望ましい。但し、このステップS104を設けることは本発明において必須ではない。
【0070】
なお、第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)のデータを更新するスケジュールは、出力指令に対して実際に出射されるレーザ光パワーの関係を示すデータを更新するタイミングに合わせて設定して、同時に行っても良い。ステップS104で、データ更新時期であると判定された場合は、ステップS102と同様に、反射光がない状態にして、第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)を測定によって取得し(ステップS105)、記録部107に予め記録されている第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)を、新しく取得した第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)で更新し(ステップS106)、ステップS107に進む。
また、最初のステップS101で第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)のデータが既にあると判定された場合は、直接ステップS104に進み、ステップS104で、第1検出特性d
1(P
c)と第2検出特性d
2(P
c)のデータ更新時期ではないと判定された場合は、直接ステップS107に進む。
【0071】
ステップS107では、レーザ装置200の図示しない入力部等からレーザ出力の指示が出ているかを判定し、レーザ出力の指示が出ている場合は、出力指令値
Pcに従ってレーザ光を出力する(ステップS108)。ここで、出力指令値P
cは変数を表すのに対して、制御部104からレーザ電源103に出力されたある出力指令値は、変数の出力指令値P
cと区別するために、Pに下線を付けた
Pcを使用するものとする。この出力指令値
Pcは、一定値に限定されるものではなく、時間的に変化しても良いし、パルス光出力指令値であっても良い。
【0072】
レーザ加工が始まると、ワーク106で反射した反射光が光パワーモニタ装置1の第1光検出部5と第2光検出部6で検出されるようになるので、第1光検出部5から該第1光検出部5の検出値D
1(
Pc)を算出部108に出力し(ステップS109)、第2光検出部6から該第2光検出部6の検出値D
2(
Pc)を算出部108に出力する(ステップS110)。そして、記録部107に予め記録してある第1検出特性d
1(P
c)を参照して、第1光検出部5の検出値との差分ΔD
1(
Pc)=D
1(
Pc)−d
1(
Pc)として第1反射光パワーを算出し(ステップS111)、同様に記録部107に予め記録してある第2検出特性d
2(P
c)を参照して、第2光検出部6の検出値の差分ΔD
2(
Pc)=D
2(
Pc)−d
2(
Pc)として第2反射光パワーを算出する(ステップS112)。
【0073】
ここで、第1反射光パワーΔD
1(
Pc)=D
1(
Pc)−d
1(
Pc)と第2反射光パワーΔD
2(
Pc)=D
2(
Pc)−d
2(
Pc)は、
図15に示したように、反射光によって第1光検出部5の検出値と第2光検出部6の検出値が増加した分に相当し、反射光を定量的に検出した結果である。また、前述のように第1反射光パワーは、光パワーモニタ装置1の第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光が検出されたものであり、第2反射光パワーは、光パワーモニタ装置1の第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してきた反射光が検出されたものである。
【0074】
次に、第1反射光パワーΔD
1(
Pc)が第1閾値以上か否かを判定し(ステップS113)、第1反射光パワーΔD
1(
Pc)が第1閾値以上であると判定された場合は、制御部104がΔD
1(
Pc)の大きさに応じて出力指令値を所定の基準に沿って変更する(ステップS114)。そして、出力指令値を所定の基準に沿って所定の時間の間だけ変更した後に、出力指令の実行が完了したか否かを判定し(ステップS115)、出力指令の実行が完了していない場合は、ステップS108に戻ってレーザ加工を継続する。
【0075】
ステップS113で、第1反射光パワーΔD
1(
Pc)が第1閾値以上でないと判定された場合は、第2反射光パワーΔD
2(
Pc)が第2閾値以上か否かを判定し(ステップS116)、第2反射光パワーΔD
2(
Pc)が第2閾値以上であると判定された場合は、制御部104がΔD
2(
Pc)の大きさに応じて出力指令値を所定の基準に沿って変更する(ステップS117)。そして、ステップS115に進み、ステップS116で、第2反射光パワーΔD
2(
Pc)が第2閾値以上でないと判定された場合は、直接ステップS115に進む。ステップS115で、出力指令の実行が完了していると判定された場合は、新たなレーザ出力の指示が出ているか否かを判定し(ステップS118)、新たなレーザ出力の指示が出ている場合は、ステップS104に戻り、新たなレーザ出力の指示が出ていない場合はレーザ装置200を停止する。
【0076】
以上のように、
図13に示すレーザ装置200は、レーザ発振器101の損傷を招き易い第2光ファイバ3のコア31を伝搬してくる反射光と、光ファイバの保護被覆24、34等の外部光学系には影響を与えるが、レーザ発振器101への影響が少ない第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してくる反射光に対して個別に閾値を設けているので、以上のステップS101からS118のフローチャートに従ってレーザ装置200が動作することにより、必要以上に光出力を低減し過ぎてワーク106に対する高品質なレーザ加工ができなかったり、逆に反射光への対応が不十分でレーザ装置200が損傷を受けたりすることを適確に防止できる。
なお、ステップS108からステップS117までについては、第1反射光パワーの算出とその算出結果による判定と判定に基づく処置までを第2反射光パワーの算出等に先行して完了する等の順序の入替えが可能である。
【0077】
また、以上の動作の変形として、以下のように動作するようにしても良い。
第1の変形としては、光パワーモニタ装置1での反射光の検出において、第2光検出部6では、第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してくる反射光は検出されても、コア31を伝搬してきた反射光は殆ど検出されないが、第1光検出部5では、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してきた反射光が主に検出される。しかし、第1光検出部5では第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してきた反射光も検出され得るので、第1反射光パワーから第2光ファイバ3のクラッド32を伝搬してきた反射光の寄与分を除去するため、第1反射光パワーをΔD
1(
Pc)=D
1(P
c)−d
1(
Pc)−k×{D
2(
Pc)−d
2(
Pc)}で算出しても良い。kは通常1以下の正の数であり、他のレーザ装置のレーザ光を出射端側からクラッドに入射させた時の第1光検出部5と第2光検出部6の検出値の比から求めることができる。
【0078】
第2の変形としては、光パワーモニタ装置1の第1光検出部5や第2光検出部6で検出される反射光は反射光全体の一部であるので、他のレーザ装置からパワーの分かったレーザ光を出射端側から第2光ファイバ3のコア31に入射させた場合とクラッド32に入射させた場合の第1光検出部5と第2光検出部6による検出値を測定して、第1光検出部5と第2光検出部6による検出値から第2光ファイバ3のコア31とクラッド32を伝搬してくる反射光全体のパワーが換算できるようにしておき、コア31を伝搬してくる反射光全体のパワーとクラッド32を伝搬してくる反射光全体のパワーに対して閾値を設定しても良い。
【0079】
第3の変形として、第1反射光パワーや第2反射光パワーについて閾値は1つの数値に限定されず、1番目の閾値を越えるとレーザ光出力を絞り、2番目の閾値を越えるとレーザ光出力を中断する等、1つの反射光パワーに対して複数の閾値を設定しても良い。
【0080】
第4の変形として、閾値の設定は固定した数値に限定するものではなく、反射光パワーが所定の閾値を越えた時間が所定の時間以上越えた場合に出力指令を変更するようにしても良いし、反射光パワーの所定の時間長における平均値が所定の閾値を越えた場合に出力指令を変更するようにしても良い。
【0081】
第5の変形として、第1反射光パワーと第2反射光パワーの両方を変数とする関数F(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))に対して閾値を設けて、この関数が閾値を越えた場合に、出力指令値を所定の基準に沿って変更しても良い。例えば、第2光ファイバ3のコア31を伝搬してくる反射光の方が、レーザ装置200に対する悪影響が大きく、コア31を伝搬してくる反射光のパワーが大きくなると累進的に悪影響が大きくなる場合、第1反射光パワーの大きさがより大きく影響するように、F(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))={ΔD
1(
Pc)−k×ΔD
2(
Pc)}
2+m×ΔD
2(
Pc)のような関数に対して閾値を設定しても良い。
【0082】
この場合、
図14A、
図14Bのフローチャートは少し変形が必要であり、
図16A、
図16Bのようになる。
図14BのフローチャートのステップS113からステップS117が、
図16BのフローチャートではステップS213とステップS214に置き換わっている点が、
図14A、
図14Bのフローチャートと異なっている。すなわち、第1反射光パワーと第2反射光パワーの両方を変数とする関数F(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))が第3閾値以上か否かが判定される(ステップS213)。そして、F(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))が第3閾値以上の場合には、出力指令をF(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))の大きさに応じて所定の基準に沿って変更して(ステップS214)、ステップS215に進み、ステップS213の判定の結果、F(ΔD
1(
Pc),ΔD
2(
Pc))が第3閾値以上でない場合は、直接ステップS215に進むようになっている。
【0083】
図17は、本発明の更に他の実施形態に係るレーザ装置の概念的な構成を示すブロック図である。なお、光パワーモニタ装置1の構成部位は、
図1を参照する。
図17に示すレーザ装置300は、レーザ発振器101を複数備えており、レーザ発振器101に駆動電力を供給するレーザ電源103も、レーザ発振器101毎にそれぞれ設けられている。また、このレーザ装置300は、複数のレーザ光を光学的に結合させる1つのビームコンバイナ109を備えている。ビームコンバイナ109は、各レーザ発振器101から出力されたレーザ出力光をそれぞれ伝搬する個別の光ファイバ102cを介して、各レーザ発振器101からのレーザ出力光を結合させる。ビームコンバイナ109によって光学的に結合されたレーザ出力光は、光パワーモニタ装置1の入力側の光ファイバ102aと出力側の光ファイバ102bによって、図示しない加工ヘッド等のレーザ光出射端に向けて伝搬され、高出力のレーザ光を出射するようになっている。
そして、光パワーモニタ装置1は、ビームコンバイナ109からレーザ出射端に向けて出力されたレーザ出力光が、第1光ファイバ2から第2光ファイバ3の方向に伝搬するように、出力用光ファイバ102のうちのビームコンバイナ109とレーザ光出射端とを接続する部位の途中に設置されている。この場合の光パワーモニタ装置1を出力用光ファイバ102の途中に設置する具体的構成は、
図10に示した光パワーモニタ装置1と同様の構成を適用できる。
【0084】
このように、レーザ発振器101を複数備えた高出力レーザ装置において、ビームコンバイナ109よりもレーザ光出射端側に光パワーモニタ装置1を設置することによって、1台の光パワーモニタ装置1であっても、反射光によるビームコンバイナ109や複数のレーザ発振器101の損傷を回避できる。
【0085】
なお、
図17に示したように、複数のレーザ発振器101からの複数のレーザ出力光をビームコンバイナ109によって光学的に結合させるレーザ装置300においても、
図13に示したレーザ装置200のように、記録部107および算出部108を備え、
図14A、
図14Bから
図16A、
図16Bに示したフローチャートと同様のフローチャートに従って動作させることができる。