特許第6564440号(P6564440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564440
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/65 20060101AFI20190808BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20190808BHJP
   A45D 7/06 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61K8/65
   A61Q5/04
   A45D7/06
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-203434(P2017-203434)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2019-77620(P2019-77620A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2018年12月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久下 宗一
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】福原 雄大
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−94360(JP,A)
【文献】 特開昭60−4114(JP,A)
【文献】 特開2001−247436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 5/04
A45D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布する第1工程と、
前記水性組成物が塗布された毛髪にカールデザインまたはストレートデザインを形成する第2工程と、
前記カールデザインまたはストレートデザインが形成された毛髪に対して、該毛髪が水分を保持した状態で、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行う第3工程と
を少なくとも備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項2】
毛髪にカールデザインまたはストレートデザインを形成する第1工程と、
加水分解ケラチンを含有する水性組成物を前記カールデザインまたはストレートデザインが形成された毛髪に塗布する第2工程と、
前記水性組成物が塗布された毛髪に対して、該毛髪が水分を保持した状態で、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行う第3工程と
を少なくとも備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項3】
前記加温処理の時間が、3〜45分であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
前記第3工程の後、前記毛髪を冷却することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に対してカールデザインまたはストレートデザインを形成する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマネントウェーブ処理に代表される毛髪の還元処理を伴う毛髪変形処理では、還元処理の後に毛髪を酸化処理させて変形を定着させる。
【0003】
より具体的には、まず、チオグリコール酸等の還元剤を主成分とし、アルカリ剤を含有する第1剤により毛髪ケラチンのシスチン結合を切断する還元工程と、臭素酸塩等の酸化剤を主成分とする第2剤により再びシスチン結合に戻す酸化工程により毛髪にカールデザインまたはストレートデザインを形成する。
【0004】
ここで、上記毛髪処理方法においては、アルカリ下においての還元処理、酸化処理を行うため、毛髪へのダメージが大きく、また、パーマネントウェーブ処理による効果が不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、これらの不都合を解消すべく、毛髪を加温処理する方法が提案されている。より具体的には、毛髪に還元剤を含有する第1剤を塗布して洗浄した後、通電により毛髪を加熱可能なロッドに巻き付け、ロッドを加熱して毛髪を加温し、ロッドを外した毛髪に酸化剤を含有する第2剤を塗布する方法が提案されている。そして、このような処理方法により、パーマネントウェーブ処理による毛髪の損傷が少なく、毛髪に強力なカールデザインを付与することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上記毛髪へのダメージを軽減すべく、一浴式のパーマネントウェーブ形成剤を使用した毛髪処理方法が提案されている。より具体的には、平均分子量が25,000〜35,000の加水分解ケラチンを含有する一浴式のパーマネントウェーブ形成剤を損傷した毛髪に塗布し、毛髪をロッドに巻き付けた後、所定時間、放置し、その後、ロッドを取り外して洗浄する方法が提案されている。そして、このような処理方法により、損傷毛に対してパーマネント処理を行う際に、当該パーマネントウェーブ処理による毛髪への更なるダメージを低減することができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−262798号公報
【特許文献2】特開2001−247436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の処理方法においては、還元処理された毛髪に対しての加温処理を行うため、当該加温処理に起因して毛髪が損傷するとともに、加温処理中における反応臭や毛髪処理後の残臭が発生するという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の処理方法においては、損傷毛髪におけるダメージを低減することはできるものの、対象毛が損傷毛に限定されていた。健常毛髪の表面は疎水性が高く、平均分子量が25,000〜35,000の加水分解ケラチンの浸透が不十分になるため、十分な毛髪変形効果(カール形状の強さ)を得ることが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、健常毛及び損傷毛のいずれの毛髪においても、毛髪処理に起因する毛髪の損傷及び不快臭の発生を抑制するとともに、十分な毛髪変形効果を得ることができる毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の毛髪処理方法は、加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布する第1工程と、水性組成物が塗布された毛髪にカールデザインを形成する第2工程と、カールデザインが形成された毛髪に対して、毛髪が濡れた状態で、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行う第3工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、健常毛及び損傷毛のいずれの毛髪においても、毛髪処理に起因する毛髪の損傷を抑制することができるとともに、優れた毛髪変形の効果を得ることができる。また、毛髪処理に起因する不快臭の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、適宜、変更して適用することができる。
【0014】
本発明の毛髪処理方法は、加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布する第1工程と、水性組成物が塗布された毛髪にカールデザインを形成する第2工程と、カールデザインが形成された毛髪に対して、毛髪が濡れた状態で加温処理を行う第3工程とを備えており、上記従来の酸化処理、及び還元処理は行わない。
【0015】
(第1工程)
本発明の毛髪処理方法においては、毛髪に加水分解ケラチンを含有する水性組成物を塗布する。
【0016】
この加水分解ケラチンは、シスチンを多く含んでいるため、毛髪に非常になじみやすく、このような加水分解ケラチンを含有する水性組成物を塗布することにより、毛髪のダメージを低減させて、優れた毛髪変形の効果を得ることができる。
【0017】
この加水分解ケラチンとしては、特に限定されず、通常、毛髪化粧料に用いられるものであればよい。
【0018】
また、この加水分解ケラチンにおける平均分子量は特に限定されないが、加水分解ケラチンの平均分子量は10000以上であることが好ましい。これは、平均分子量が10000未満の場合、後述の「毛髪が濡れた状態での加温処理」を行う際に、毛髪内部へ浸透されるものの、分子サイズが小さいため、毛髪に対する定着が不十分となり、結果として、毛髪変形効果が十分に発揮されない場合があるためである。
【0019】
また、この加水分解ケラチンにおける化学修飾の有無は特に限定されないが、化学修飾がされていない加水分解ケラチンを使用することが好ましい。これは、カチオン化やシリル化等の化学修飾が施された加水分解ケラチンを用いた場合、後述の「毛髪が濡れた状態での加温処理」を行うことにより、仕上がり感(やわらかさ、すべりなど)が向上するものの、化学修飾に起因して、主要効果である毛髪変形効果が低下する場合があるためである。
【0020】
例えば、平均分子量35000の加水分解ケラチンを含む「プロティキュート Uアルファ」(一丸ファルコス社製)、平均分子量35000のヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン(カチオン化修飾)を含む「プロティキュート Cアルファ」(一丸ファルコス社製)、平均分子量10000の加水分解ケラチンを含む「プロモイス WK−GB」(成和化成社製)、平均分子量4000の加水分解ケラチンを含む「プロモイス WK−L」(成和化成社製)、平均分子量1000の加水分解ケラチンを含む「プロモイス WK−H」(成和化成社製)、平均分子量400の加水分解ケラチンを含む「プロモイス WK」(成和化成社製)、平均分子量1200の(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン(シリル化修飾)を含む「プロモイス WK−HSIG」(成和化成社製)、平均分子量600のヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン(カチオン化修飾)を含む「プロモイス WK−Q」(成和化成社製)、平均分子量1000のヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン(カチオン化修飾)を含む「ケラタイドTK−C」(東洋羽毛工業社製)等の市販品を使用することができる。
【0021】
なお、本発明の水性組成物としては、例えば、水等の溶媒に上記加水分解ケラチンを分散させたものが使用できるが、毛髪のダメージ低減効果と変形効果を十分に発揮させるとの観点から、水性組成物の全体に対する加水分解ケラチンの配合量は、0.1〜20質量%が好ましい。
【0022】
(第2工程)
本発明の毛髪処理方法におけるカールデザインを形成する方法としては、美容技術として一般的に用いられる方法であれば特に限定されず、例えば、発熱体を用いる方法、ロッドと呼ばれる器具を用いる方法、及び加熱可能なロッドを用いる方法等が挙げられる。
【0023】
(第3工程)
本発明の毛髪処理方法においては、カールデザインが形成された毛髪に対して、毛髪が濡れた状態で加温処理を行うことにより、カールデザインを定着させる点に特徴がある。
【0024】
なお、ここで言う「毛髪が濡れた状態」とは、「第2工程におけるカールデザイン処理後の、水性組成物またはシャワー等による洗い流しにより濡れた状態にある毛髪を、乾燥させることなくそのままの状態で」、あるいは「第2工程におけるカールデザイン処理後の、水性組成物またはシャワー等による洗い流しにより濡れた状態にある毛髪に水分を浸漬させた状態で(即ち、毛髪が水分を保持した状態で)」という意味である。
【0025】

そして、この加熱工程においては、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加熱を行う点に特徴がある。
【0026】
これは、カールデザインを定着する際の処理温度が40℃以下の場合は、毛髪変形効果(カール形状の強さ)を得るために必要な温度が不十分になるため、所望のカールデザインが得られない場合があるためである。
【0027】
また、カールデザインを定着する際の処理温度が100℃以上の場合は、カールデザインを確実に形成することはできるものの、高温処理に起因して、不快臭の発生や、毛髪内成分が熱ダメージを受けるため、良好な仕上がり感(良好な柔らかさ、良好なすべり感)が得られない場合があるためである。
【0028】
即ち、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行うことにより、健常毛及び損傷毛のいずれの毛髪においても、毛髪の損傷を抑制することができるとともに、優れた毛髪変形の効果を得ることが可能になる。更に、加温処理に起因する不快臭の発生を抑制することが可能になる。
【0029】
なお、毛髪変形の効果、及び仕上がり感を向上させるとの観点から、加熱工程における温度は、50℃以上90℃以下が好ましい。
【0030】
また、加温処理を行う処理時間は、3分以上45分以下が好ましい。これは、3分未満の場合は、加温時間不足に起因して毛髪変形効果が不十分になるという不都合が生じる場合があるためであり、45分よりも長い場合は、過剰な加温時間に起因して仕上がり感が低下するという不都合が生じる場合があるためである。
【0031】
また、毛髪が濡れた状態で加温処理を行うのは、加温する際に毛髪が乾燥している場合、水性組成物中の加水分解ケラチンが毛髪内部へ効率よく浸透することができず、毛髪変形効果が不十分になり、所望のカールデザインが得られない場合があるためである。
【0032】
本工程の具体例としては、温水(40℃よりも高く、100℃未満)にカールデザインされた毛髪を浸漬して加温処理を行う場合や、カールデザインされた毛髪を保湿が可能なカバーで包み込んだ状態で加温処理を行う場合などが挙げられる。
【0033】
(その他の成分)
本発明の水性組成物において使用される溶媒(分散媒)は特に限定されず、水が使用されるが、必要に応じて、エタノール、イソプロパノール等の有機溶媒を、人体に接触しても無害な濃度で、水に含有させてもよい。
【0034】
また、本発明の水性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整成分(例えば、炭酸グアニジン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、セスキ炭酸塩、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、酒石酸、クエン酸、乳酸、リン酸等)、油性成分(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド類、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、リン脂質、ラノリン、ラノリン脂肪酸誘導体、パーフルオロポリエーテル等)、植物油(例えば、オリーブ油、シア脂、マカデミアナッツ油等)、ロウ類(例えば、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等)、炭化水素(例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ワセリン、イソドデカン、イソヘキサデカン等)、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、分岐脂肪酸(C(炭素数)14−28)、ヒドロキシステアリン酸等)、アルコール類(例えば、セテアリルアルコール、セタノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、水添ナタネ油アルコール、コレステロール、シトステロール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等)、糖及びその誘導体類(例えば、ブドウ糖、ショ糖、D−ソルビトール、マルトース、トレハロース、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、グリセリルグルコシド等)、エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセリル、コハク酸ジエトキシエチル、乳酸セチル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル等)、シリコーン類(例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチコノール、PCAジメチコン等)、アミノ酸及びその誘導体類(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、セリン、メチオニン、トリメチルグリシン、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、N−ラウロイル−L−リジン等)、PPT及びタンパク類(例えば、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解ダイズ、加水分解コラーゲン、シリル化加水分解シルク、シリル化加水分解コムギ、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、ケラチン等)、天然高分子及びその誘導体類(例えば、アルギン酸塩、マンナン、アラビアゴム、タマリンドガム、キトサン、カラギーナン、ムチン、セラック、ヒアルロン酸塩、カチオン化ヒアルロン酸、キサンタンガム、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、ハチミツ等)、合成高分子(例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等)、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルグルタミン酸、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、リン酸ジセチル等)、カチオン性界面活性剤(例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩等)、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、新油型モノステアリン酸グリセリル等)、染料(例えば、タール色素、天然色素等)、植物エキス類(例えば、カミツレエキス、コンフリーエキス、セージエキス、ローズマリーエキス、カキタンニン、チャ乾留液、銅クロロフィリンナトリウム等)、ビタミン類(例えば、L−アスコルビン酸、DL−α−トコフェロール、D−パンテノール、天然ビタミンE等)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、フェルラ酸等)、防腐剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、フェノキシエタノール、メチルイソチアゾリノン等)、酸化防止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン等)、金属封鎖剤(例えば、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等)、その他無機化合物(例えば、酸化チタン、銀、白金、塩化鉄、酸化鉄等)、その他有機化合物(例えば、尿素、ヒドロキシエチル尿素、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルコン酸銅等)、溶剤(例えば、ベンジルアルコール等)、噴射剤(例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、窒素ガス、炭酸ガス等)、香料等の公知の化粧品各成分を配合することができる。
【0035】
本発明の水性組成物は、公知の方法により、液状、ミルク状、クリーム状、泡状(使用時形状)、霧状(使用時形状)等の剤形とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0037】
上記実施形態における第1工程と第2工程は、その工程順を、適宜、入れ替えることが可能である。即ち、毛髪にカールデザインを形成した後、加水分解ケラチンを含有する水性組成物をカールデザインが形成された毛髪に塗布し、その後、水性組成物が塗布された毛髪を濡れた状態にして、上記加温処理を行ってもよい。このような工程順であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、上記第3工程の後、毛髪を冷却処理してもよい。より具体的には、室温で放置する、ドライヤー等により冷風をあてる、毛髪を冷水に浸漬する等の処理を行う。
【0039】
そして、このような冷却処理を行うことにより、毛髪の変形状態での定着効果が高まるため、カール形状の強さ及びカール形状の持続性を高めることができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、カールデザインが形成された毛髪を対象としたが、本発明の毛髪処理方法は、くせ毛に対してストレートデザインを形成する場合にも適用することができる。例えば、加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布した後、水性組成物が塗布された毛髪にストレートデザインを形成する。次に、ストレートデザインが形成された毛髪に対して、該毛髪が濡れた状態で、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行うことができる。また、例えば、毛髪にストレートデザインを形成した後、加水分解ケラチンを含有する水性組成物をストレートデザインが形成された毛髪に塗布する。次に、水性組成物が塗布された毛髪に対して、該毛髪が濡れた状態で、40℃よりも高く、100℃未満の温度で加温処理を行うことができる。この場合も、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0042】
(実施例1〜18及び比較例1〜3)
<毛髪変形用処理剤の製造>
水(イオン交換水)と各原料を配合して、表1〜表3に示す組成(質量%)を有する実施例1〜18及び比較例1〜3の毛髪変形用処理剤を製造した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
<サンプル用の毛髪の準備>
長さ25cmの直毛の毛髪からなる毛束(1g)を用い、化学的処理として市販のヘアカラーによる2回の染色処理を行い、さらに市販のパーマ液で、1回パーマネントウェーブ処理後、50℃に保ったポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5質量%)に一晩浸漬後、十分に水洗したものをサンプル毛髪とした。
【0047】
<実施例1〜18及び比較例1〜3における毛髪処理>
次に、準備した毛髪に対して、下記(A)〜(F)の処理を行った。
(A)まず、準備した毛髪の毛束を水で濡らした。
(B)次に、実施例1〜18及び比較例1〜3の加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布し、5分間、室温で放置した。
(C)次に、流水中で30秒間すすぎ、毛髪を濡れた状態にした。
(D)次に、毛髪をロッドに巻き付けた。
(E)次に、実施例1〜18及び比較例1〜3の各温度に設定した温水にロッドに巻きつけられた状態の毛髪を浸漬し、実施例1〜18及び比較例1〜3の各処理時間の間、加温処理を行った。
(F)そして、加温処理が終了した後、3分間、室温で放置する冷却工程を経て、ロッドを取り除き毛髪を水洗いした。
【0048】
<評価基準>
次に、上記(A)〜(F)の処理を行った毛髪に対して、上記(E)の処理における処理温度や処理時間が、カールデザインの形成、臭い、及び毛髪処理の仕上がり感に及ぼす影響について、官能評価を行った。
【0049】
より具体的には、(1)カール形状の強さ、(2)カール形状の持続性、(3)やわらかさ、(4)すべり感、(5)褪色・変色、及び(6)臭いの6項目について、専門パネラー10名による評価を行った。各評価項目における評価基準を以下に示す。
【0050】
(1)カール形状の強さ
毛髪処理の最終水洗直後の状態で、カール形状の強さを比較し、下記評価基準に従って評価した。
ウェーブ効率が非常に高く、非常にしっかりとカールデザインが形成されている:◎
ウェーブ効率が高く、しっかりとカールデザインが形成されている:○
ウェーブ効率が低く、ゆるやかにカールデザインが形成されている:△
ウェーブ効率が非常に低く、非常にゆるやかにカールデザインが形成されている:×
【0051】
(2)カール形状の持続性
毛髪処理から2週間程度経過した場合と同程度の状態にするために、毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛髪を、60℃の温水に20分間浸漬し、時間経過処理を行った。
【0052】
また、毛髪処理の最終水洗直後の毛髪が濡れている状態におけるカール形状(処理直後のウェット時)と、上記時間経過処理後の濡れている状態におけるカール形状(時間経過処理後のウェット時)を比較し、下記評価基準に従って評価した。
毛髪処理直後と時間経過後の差がほとんどなく、持続性が非常に高い:◎
毛髪処理直後と時間経過後の差がややあるが、持続性が高い:○
毛髪処理直後と時間経過後の差があり、持続性が低い:△
毛髪処理直後と時間経過後の差がかなりあり、持続性が非常に低い:×
【0053】
(3)やわらかさ
毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の手触りのやわらかさを、下記評価基準に従って評価した。
非常にやわらかい:◎
やわらかい:○
硬さがややある:△
硬さがある:×
【0054】
(4)すべり感
毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の指通り(すべり感)を、下記評価基準に従って評価した。
すべりが非常によい:◎
すべりがよい:○
すべりがやや悪い:△
すべりが悪い:×
【0055】
(5)褪色・変色
毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛束の毛髪処理前の毛束と比較しての褪色及び変色を、下記評価基準に従って評価した。
褪色及び変色が非常に少ない:◎
褪色及び変色が少ない:○
褪色及び変色がやや多い:△
褪色及び変色が多い:×
【0056】
(6)臭い
毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛束の香気(臭い)を、下記評価基準に従って評価した。
不快臭が非常に少ない:◎
不快臭が少ない:○
不快臭がやや多い:△
不快臭が多い:×
【0057】
なお、上記(1)〜(6)の各評価において、「◎」は特に優れていると評価し、「○」は優れていると評価した。また、「△」と「×」は不十分であると評価した。以上の結果を表1〜表3に示す。
【0058】
表1〜表3に示すように、第3工程における「濡れた状態の毛髪に対する加温処理」の温度が40℃よりも高く、100℃未満である実施例1〜18においては、毛髪変形処理(カールデザイン形成)の効果(即ち、上記(1)〜(2)の各評価における効果)が十分に得られるとともに、良好な仕上がり感(即ち、上記(3)〜(4)の各評価における効果)を得ることができることが分かる。また、毛髪の損傷を抑制する効果(即ち、上記(3)〜(5)の評価における効果)が得られるとともに、加温処理に起因する不快臭発生の抑制効果(即ち、上記(6)の評価における効果)を得ることができることが分かる。
【0059】
一方、処理温度が40℃以下である比較例1〜2においては、不快臭の発生は抑制できるものの、処理温度が低いため、毛髪変形処理の効果(即ち、上記(1)〜(2)の各評価における効果)が不十分であることが分かる。
【0060】
また、処理温度が100℃以上である比較例3においては、カールデザインを確実に形成することはできるものの、処理温度が高いため、高温処理に起因して、不快臭が発生するとともに、毛髪内成分が熱ダメージを受けるため、良好な仕上がり感(即ち、上記(3)〜(4)の各評価における効果)が得られないことが分かる。
【0061】
(実施例19〜28及び比較例4〜6)
<毛髪変形用処理剤の製造>
水(イオン交換水)と各原料を配合して、表4〜表5に示す組成(質量%)を有する実施例19〜28及び比較例4〜6の毛髪変形用処理剤を製造した。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
<サンプル用の毛髪の準備>
長さ30cmのくせ毛の毛髪からなる毛束(5g)を用い、化学的処理として市販のヘアカラーによる2回の染色処理を行い、さらに市販のパーマ液で、1回パーマネントウェーブ処理後、50℃に保ったポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5質量%)に一晩浸漬後、十分に水洗したものをサンプル毛髪とした。
【0065】
<実施例19〜28及び比較例4〜6における毛髪処理>
次に、準備した毛髪に対して、下記(a)〜(f)の処理を行った。
(a)まず、準備した毛髪の毛束を水で濡らした。
(b)次に、実施例19〜28及び比較例4〜6の加水分解ケラチンを含有する水性組成物を毛髪に塗布し、5分間、室温で放置した。
(c)次に、流水中で30秒間すすぎ、毛髪を濡れた状態にした。
(d)次に、毛髪をガラス板に貼り付けてストレート形状に固定した。
(e)次に、実施例19〜28及び比較例4〜6の各温度に設定した温水にストレート形状に固定した状態の毛髪を浸漬し、実施例19〜28及び比較例4〜6の各処理時間の間、加温処理を行った。
(f)そして、加温処理が終了した後、3分間、室温で放置する冷却工程を経て、ガラス板から毛髪を取り除き水洗いした。
【0066】
<評価基準>
次に、上記(a)〜(f)の処理を行った毛髪に対して、上記(e)の処理における処理温度や処理時間が、ストレートデザインの形成、臭い、及び毛髪処理の仕上がり感に及ぼす影響について、官能評価を行った。
【0067】
より具体的には、上述の(3)やわらかさ、(5)褪色・変色、(6)臭いの3項目に加え、(7)ストレート形状の強さ、(8)ストレート形状の持続性、及び(9)ツヤ感について、専門パネラー10名による評価を行った。(7)ストレート形状の強さ、(8)ストレート形状の持続性、及び(9)ツヤ感の評価項目における評価基準を以下に示す。
【0068】
(7)ストレート形状の強さ
毛髪処理の最終水洗直後に乾燥させた毛束をほぐした時のストレート形状の強さ(くせの無さ)を毛髪処理前の状態と比較し、下記評価基準に従って評価した。
くせがほとんど無い:◎
くせがやや残っている:○
くせが残っている:△
くせが全くとれていない:×
【0069】
(8)ストレート形状の持続性
毛髪処理から2週間程度経過した場合と同程度の状態にするために、毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛髪を、60℃の温水に20分間浸漬し、時間経過処理を行った。
【0070】
また、毛髪処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時のストレート形状の強さ(処理直後のくせの無さ)と、上記時間経過処理後におけるストレート形状の強さ(時間経過処理後のくせの無さ)を比較し、下記評価基準に従って評価した。
毛髪処理直後と時間経過後の差がほとんどなく、持続性が非常に高い:◎
毛髪処理直後と時間経過後の差がややあるが、持続性が高い:○
毛髪処理直後と時間経過後の差があり、持続性が低い:△
毛髪処理直後と時間経過後の差がかなりあり、持続性が非常に低い:×
【0071】
(9)ツヤ感
毛髪処理の最終水洗直後に乾燥させた毛束をほぐした後、ツヤの有無を下記評価基準に従って評価した。
ツヤが非常にある:◎
ツヤがある:○
ツヤがややない:△
ツヤがない:×
【0072】
なお、上記(7)〜(9)の各評価において、「◎」は特に優れていると評価し、「○」は優れていると評価した。また、「△」と「×」は不十分であると評価した。以上の結果を表4〜表5に示す。
【0073】
表4〜表5に示すように、第3工程における「濡れた状態の毛髪に対する加温処理」の温度が40℃よりも高く、100℃未満である実施例19〜28においては、毛髪変形処理(ストレートデザイン形成)の効果(即ち、上記(7)〜(8)の各評価における効果)が十分に得られるとともに、良好な仕上がり感(即ち、上記(3)、(9)の各評価における効果)を得ることができることが分かる。また、毛髪の損傷を抑制する効果(即ち、上記(3)、(5)、(9)の評価における効果)が得られるとともに、加温処理に起因する不快臭発生の抑制効果(即ち、上記(6)の評価における効果)を得ることができることが分かる。
【0074】
一方、処理温度が40℃以下である比較例4〜5においては、不快臭の発生は抑制できるものの、処理温度が低いため、毛髪変形処理の効果(即ち、上記(7)〜(8)の各評価における効果)が不十分であることが分かる。
【0075】
また、処理温度が100℃以上である比較例6においては、ストレートデザインを確実に形成することはできるものの、処理温度が高いため、高温処理に起因して、不快臭が発生するとともに、毛髪内成分が熱ダメージを受けるため、良好な仕上がり感(即ち、上記(3)、(9)の各評価における効果)が得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、パーマネントウェーブ処理に代表される毛髪処理に、特に有用である。