特許第6564450号(P6564450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564450
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】二重ラッチング・マイクロバルブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/28 20060101AFI20190808BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20190808BHJP
   F16K 7/06 20060101ALI20190808BHJP
   F16K 31/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61M39/28
   A61M5/145
   F16K7/06 B
   F16K7/06 Z
   F16K31/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-507987(P2017-507987)
(86)(22)【出願日】2015年8月14日
(65)【公表番号】特表2017-526430(P2017-526430A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015045251
(87)【国際公開番号】WO2016025822
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年3月29日
(31)【優先権主張番号】62/037,474
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515056037
【氏名又は名称】エスエフシー フルーイディクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイン、フォレスト、ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ランプス、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ダス、チャンパク
(72)【発明者】
【氏名】クマー、サイ
(72)【発明者】
【氏名】シェマイン、アシュリー
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−065737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0053557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/28
A61M 5/145
F16K 7/06
F16K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重ラッチング・マイクロバルブであって、
a. 第1のバルブ・アーム端部を含み、圧縮可能な第1のチューブを受け入れるようになされた第1のバルブ・アーム受け入れ領域をさらに含む第1のバルブ・アームと、
b. 第1のバルブを形成するように、前記第1のバルブ・アームの前記第1のバルブ・アーム受け入れ領域内に、前記第1のチューブに隣接して配置された第1の弁座と、
c. 第2のバルブ・アーム端部を含み、圧縮可能な第2のチューブを受け入れるようになされた第2のバルブ・アーム受け入れ領域をさらに含む第2のバルブ・アームであって、前記第2のバルブ・アーム端部が前記第1のバルブ・アーム端部と係合するように、前記第1のバルブ・アームに対して配置される第2のバルブ・アームと、
d. 第2のバルブを形成するように、前記第2のバルブ・アーム受け入れ領域内に、前記第2のチューブに隣接して配置された第2の弁座と、
e. 前記第1のバルブ・アームに取り付けられた第1の作動機構と、
f. 前記第2のバルブ・アームに取り付けられた第2の作動機構と、
g. 前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構の1つ又は複数と回路中で電気接続された少なくとも1つの電源とを含み、
前記電源からの電流で前記第2の作動機構に電荷を与えると、前記第2のバルブ・アームが移動し、前記第1のバルブ・アーム端部が、前記第2のバルブ・アーム端部に対して移動することが可能になり、それによって、前記第2のチューブが前記第2のバルブ・アーム受け入れ領域内で前記第2の弁座に対して圧縮されて、前記第2のチューブが圧縮された状態で保持され、したがって前記第2のバルブが閉じられ、一方前記第1のチューブが圧縮されない状態のままであることが可能にされ、したがって、前記第1のバルブは、前記電源からのさらなる電力の追加なしに、開かれたままの状態であることが可能になり、
前記電源からの電流で前記第1の作動機構に電荷を与えると、前記第1のバルブ・アームが移動し、前記第2のバルブ・アーム端部が、前記第1のバルブ・アーム端部に対して摺動することが可能になり、それによって、前記第2のチューブが、前記第2のバルブ・アーム受け入れ領域内で圧縮されないままであることが可能になり、したがって、前記第2のバルブが開かれたままであることが可能になり、一方前記第1のチューブが前記第1のバルブ・アーム受け入れ領域内で前記第1の弁座に対して圧縮され、前記第1のチューブが圧縮された状態で保持され、それによって、前記第1のバルブは、前記電源からのさらなる電力の追加なしで、閉じられる、二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項2】
a. 前記第1のバルブ・アームを前記第1の弁座に向けて偏倚させるように前記第1のバルブ・アームと係合した第1の弾性部材と、
b. 前記第2のバルブ・アームを前記第2の弁座に向けて偏倚させるように前記第2のバルブ・アームと係合した第2の弾性部材と
をさらに含む、請求項1に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項3】
前記第1及び第2の弾性部材は、ばねを含む、請求項2に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項4】
前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構の1つ又は複数が、形状記憶材料を含む、請求項1に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項5】
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブの両方が、前記第1及び第2のチューブを通る単一流路に適用され、
前記第1及び第2のバルブの一方が、前記第1及び第2のバルブの他方が開かれているとき、閉じられなければならない、請求項1に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項6】
前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構は、ソレノイド、モータ、空気圧作動機構及び油圧作動機構からなる群から選択される、請求項1に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項7】
前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構の1つ又は複数が、カム又はラチェットを含む、請求項1に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項8】
a. 流体を保持するための容器と、
b. 前記第1のチューブによって前記容器に流体接続される投与チャンバとをさらに含み、
前記第1のバルブが開かれ、前記第2のバルブが閉じられたとき、前記流体は、前記容器から前記投与チャンバに引き出され、
前記第2のバルブが開かれ、前記第1のバルブが閉じられたとき、前記流体は、前記投与チャンバから押し出されて患者に注入される、請求項5に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項9】
前記流体は薬物であり、
前記投与チャンバの最大容量が、前記患者に送達される前記薬物を収容するような大きさに作られる、請求項8に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項10】
前記投与チャンバからの前記薬物の送達は、入力信号に基づいて時間調節される、請求項9に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項11】
前記第1のバルブ及び前記第2のバルブは、前記容器と前記投与チャンバの間で混合作用を生成するように構成される、請求項8に記載の二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項12】
請求項5に記載の二重ラッチング・マイクロバルブであって、
a. 第2の二重ラッチング・マイクロバルブと、
b. 1の二重ラッチング・マイクロバルブ及び前記第2の二重ラッチング・マイクロバルブに流体接続される両側ポンプと、
c. 者に対する前記薬物のほぼ連続的な送達のために、前記両側ポンプに流体接続される物を保持するための容器とをさら含む、二重ラッチング・マイクロバルブ。
【請求項13】
請求項5に記載の二重ラッチング・マイクロバルブであって、
a. 第2の二重ラッチング・マイクロバルブと、
b. 1の二重ラッチング・マイクロバルブ及び前記第2の二重ラッチング・マイクロバルブに流体接続される両側ポンプと、
c. 前記患者に対する薬物の複数の投与量の間欠的な送達のために、前記両側ポンプに流体接続される前記薬物を保持するための容器とをさら含む、二重ラッチング・マイクロバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「Multifunctional Microvalves」と題する2014年8月14日出願の米国仮特許出願第62/037,474号に基づいて優先権を主張する。当該出願は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明の分野は、マイクロ流体の用途のためのバルブであり、詳細には容器から流体を安全で制御された形で送達するためにかかるマイクロバルブを使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
流体マイクロバルブは、形状記憶合金から構築することができる。たとえば、米国特許第7260932号には、ピンチ・バルブを開閉させる電流を受け取る形状記憶合金を使用する流体制御ピンチ・バルブが教示されている。同様に、米国特許第6843465号には、形状記憶ワイヤ駆動の制御バルブが教示されており、形状記憶ワイヤは、電気プラットフォームに接続され、且つ伝達機構に機械的に結合される。アクチュエータが形状記憶ワイヤを通じて電流を伝導させることによって作動されて、ワイヤを収縮させ、それによって伝達機構を作動させ、伝達機構は、伝達機構を作動及び停止することによりバルブが開閉するように、流体制御バルブに動作可能に結合されている。米国特許第6742761号には、形状記憶合金ワイヤを含むアクチュエータ機構によって、小型ラッチング・バルブを開閉させるために使用されるポペット・バルブが教示されている。形状記憶合金ワイヤの形状変化によって、ポペットが、弁座に向けて、又はそこから離れるように移動され、それによって、バルブが開かれる、又は閉じられる。米国特許第6840257号には、形状記憶合金アクチュエータを使用し、形状記憶合金の駆動部材の制御の下で弁座から、且つそれに向けて軸方向に移動可能なシャッタを備える比例バルブが教示されている。
【0004】
バルブは、マイクロ流体システムのクリティカルな構成要素である。小型化されたバルブは、溶液の容量がマイクロリットル又はナノリットル(又はそれより少ない)のパルス流及び/又は一定流を供給するために、小型化されたポンプと組み合わせて使用することができる。バルブ自体は、小さくなければならず、電力をほとんど使用せずに作動しなければならない。さらなる電力は、任意の1つの状態に留まるために電力を必要としないラッチング・バルブを使用することによって、節約することができる。ラッチング・バルブは、常時開状態でも常時閉状態でも設計されず、むしろ、それらは、どちらの状態にでも留まることができる。薬物送達及び他の用途では、ラッチング・バルブは、適切に構成されたとき、重要な安全機能になるものである、というのは、ラッチング・バルブは、システム故障の場合、大きな容器から患者までの直接流路ができないようにするからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7260932B1号
【特許文献2】米国特許第6843465号
【特許文献3】米国特許第6742761号
【特許文献4】米国特許第6840257号
【特許文献5】米国特許第7,718,047号
【特許文献6】米国特許第8,343,324号
【特許文献7】米国特許第8,187,441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、全体的に、バルブに、及び流体を制御して送達するために、且つバルブの状態が、電源喪失又は他の故障にかかわらず、維持されるフェイルセーフをもたらすためにバルブを使用するシステムに関する。これは、ある実施例では、時間をかけて医薬品を患者に正確に送達することなどの用途において、ある利点をもたらす。ある実施例では、バルブは、薬物を送達する多重のチューブと接続して使用することができ、且つ送達するための薬物を含む流体を移動させるために、電気化学式ポンプなどのポンプとともに使用することができる。ある用途では、2つ以上の医薬品を送達することができ、多重の容器及びバルブとともに単一ポンプを使用してそれぞれ独立して計量することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する主題のこれら及び他の特徴、目的並びに利点は、以下の詳細な説明、図面及び本発明を対象とする特許請求の範囲を検討すれば、より良く理解されるものになるはずである。この簡単な概要、以下の詳細な説明及び図面は、単に例示的なものであり、特許請求の範囲に述べる本発明の範囲を限定することなく、様々な実装形態をさらに説明することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】開かれた位置(a)及び閉じられた位置(b)にある単一滑りラッチング・ニチノール・バルブの概略図である(先行技術である米国特許第7260932B1号に基づく)。
図2図1の単一滑りラッチング・ニチノール・バルブが開いている、及び閉じているとき、流体センサを通る流体の流れを示すグラフである。
図3】注入口が開いていて/流出口が閉じられた位置(a)にある、及び流出口が開いていて/注入口が閉じられた位置(b)にある二重滑りラッチング・ニチノール・バルブの概略図である。
図4】二重ピボットのラッチング・ニチノール・バルブの概略図である。
図5図4の二重ピボットのラッチング・バルブを通る流体の流れを示すグラフである。
図6図4の二重ピボットのラッチング・バルブと結合された注射器ポンプ、及び13.79kPa(2psi)で加圧された容器に流体の流れを送達した結果を示すグラフである。
図7】往復動ポンプからの流体の流れを制御するために使用される1つの二重ラッチング・バルブを示す図である。
図8】両側往復動の電気化学式ポンプを備える2つの二重ラッチング・バルブを示し、薬物送達における2つのステップを示す図である。
図9】2つの異なる薬物を制御された量で患者に送達するための両側往復動の電気化学式ポンプを備える2つの二重ラッチング・バルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図1(先行技術である米国特許第7260932B1号に基づく)を参照すると、単一滑りラッチング・ニチノール・バルブが、開かれた位置(図1(a))及び閉じられた位置(図1(b))で示されている。チューブ115が、バルブ・アーム109と固定位置にある弁座121の間の開いた受け入れ領域に位置決められている。図1(b)に示すように、バルブを閉じるために、バルブ・アーム109に取り付けられたニチノール・ワイヤ101が、付随回路103によって励起されてバルブ・アーム109を引っ張り、バルブ・アームは、それによってチューブ115を締め付けて閉じる。ラッチ・アーム112上の、ばね106などの弾性部材が、ラッチ・アーム112を押すので、ラッチ・アームが、バルブ・アーム109が戻らないように妨げ、それによって、追加の電源の必要なしに、チューブ115が締め付けられて閉じられた状態のままになる。バルブを開くために、電流が回路104に印加され、回路104は、ラッチ・アーム112に取り付けられたニチノール・ワイヤ102を励起する。ばね105が、バルブ・アーム109をその開いた位置に押しやり、バルブ・アーム109は、追加の電源なしに、バルブが開いたままの状態になるように、ラッチ・アーム112の戻り経路を妨げる。このようにして、外部電源を追加せずに、無期限の期間、バルブが閉じられた位置から開かれた位置に、又は開かれた位置から閉じられた位置に移動されるまで、所望の位置に留まる形状記憶合金ワイヤを使用する単一滑りバルブを用いることができる。バルブは、一度どちらかの位置に設定されると、電力の有る無しに依存しない。往復動ポンプを含む薬物送達装置では、2つのこれらのバルブは、その一方を注入口バルブとして、他方を流出口バルブとして使用することができる。この場合、どちらのバルブが開いている、又は閉じられているのかどうかに対する制約が全くないので、いずれの時点でも、両方のバルブが開いている、両方のバルブが閉じている、又は一方が開いていて、さらに他方が閉じていることができるはずである。両方のバルブが、システム故障のために開いている場合、容器から送達部位までの開いた経路ができるはずであり、そのことは、薬物送達用途において、破滅的な結果をもたらす可能性がある。
【0010】
図2のグラフは、図1に示すバルブの開閉の実験結果を示す。図2から分かるように、チューブ115を通る流れが、迅速に、効率的にバルブの動作によって開かれる、及び閉じられる。
【0011】
図3は、単一流体経路の2つの部分(又は2つの別々の流体経路)305及び307が、両方とも同時に開いた位置にあることができないという、図1のバルブを超える進歩性を示す。図3(a)の構成では、チューブ305が、開いており、一方チューブ307が、締め付けられて閉じられている。図3(b)の構成では、チューブ305が、締め付けられて閉じられていて、一方チューブ307が開いている。図3の二重滑りラッチング・ニチノール・バルブは、両方のバルブが切り替え状態の間、閉じていて、且つ両方のチューブ305及び307が同時に開いていることが機械的に不可能であり、それによって故障の場合、システムを通る流体の意図しない流れを常に防止するように、設計される。
【0012】
図3(a)の構成から図3(b)の構成に移ると、注入口バルブ・アーム301に取り付けられたニチノール・ワイヤ101が、付随回路103を通じて電流を流すことによって励起される。これによって、バルブ・アーム301が上昇して、注入口チューブ305を締め付け、それによって、ばね106が、流出口バルブ・アーム302を、流出口チューブ307が開かれて、注入口バルブ・アーム301がその元の位置に戻らないように防止される位置に押しやることが可能になる。図3(a)の構成に戻ると、流出口バルブ・アーム302に取り付けられたニチノール・ワイヤ102は、付随回路104を通じて電流を流すことによって励起される。これによって、流出口バルブ・アーム302が、図に示すように右側に移動され、それによって、流出口チューブ307が締め付けられて閉じ、そしてばね105が、注入口バルブ・アーム301を、注入口チューブ305が開かれ、流出口バルブ・アーム302がその開かれた位置に戻らないように防止される位置に押しやることが可能になる。各移行の間、注入口チューブ305と流出口チューブ307の両方が、どちらも閉じられる短い期間が存在するが、しかし注入口チューブ305と流出口チューブ307の両方が開いているときが全くない、というのは、この動作は、機械的に防止されるからであることが分かる。この構成は、故障の場合、流れを遮り、そのことは、バルブが容器から患者への医薬の送達のために使用されるとき、極めて重要なものである。
【0013】
図4は、二重ピボットのラッチング・ニチノール・バルブを使用する、この設計に対する変形を示す。この図は、流出口バルブ・アーム404によって締め付けられて閉じられた流出口チューブ409の位置を示す。バルブ位置を変化させるために、注入口アーム401に取り付けられたニチノール・ワイヤ101が励起されて、注入口アーム401を移動させて注入口チューブ405が締め付けられる。このときの間、流出口チューブ409が開くように(注入口チューブ405は閉じられる)、且つ流出口アーム404が、注入口アーム401がそのノーマル位置から戻らないように防止するように、ばね407が、流出口アーム404を押しやって移動させる。流出口アーム404に取り付けられたニチノール・ワイヤ102のその後の励起によって、図4に示すように、バルブが、開かれた位置に戻される(注入口チューブ405が開かれ、流出口チューブ409が閉じられる)。図3に示す構成と同様に、プロセス中に、チューブ405と409の両方が開いているときが全くないことが分かる。そのような動作は、バルブの設計によって機械的に阻止され、それによって、バルブ故障の場合における安全機構がもたらされる。ピボット・アームの使用によって、機械的な利点が、バルブ位置を切り替えるために必要になるニチノール・ワイヤ101及び102の長さを短くするために使用されるという利点がある。したがって、より小さく、よりエネルギー効率が良いバルブが得られる。
【0014】
本発明の様々な実施例を、流体、具体的には薬物の送達に関連する特定の用途を参照して本明細書に述べてきたが、本発明は、そのように限定されないことが明らかになるはずである。さらに、二重バルブによる安全機構は、たとえばラチェット作用又は適切に形作られたカムを用いて実現することができる。さらにまた、結合されたバルブのバルブ状態を切り替えるために、ソレノイド、磁気、空気圧若しくは油圧の制御、ステッピングモータ又は手動動作を含む、任意の作動機構を使用することができる。さらに、前述の記載は、滑り又は旋回部材の二次元レイアウトに重点を置いてきたが、しかしレイアウトは、非平面状で構成される作用部材に拡張することができる。二重ラッチング・バルブのより大規模の、又はより小規模の実施例は、いかなる規模でも安全が高められた流れ制御のために使用することができるはずである。
【0015】
図5のグラフは、図4の二重ピボットのラッチング・ニチノール・バルブの開閉からの正規化された結果を示す。図5から分かるように、図2と同様に、流出口チューブ409及び注入口チューブ405のそれぞれを通る流れが、バルブによって効率的に切り替えられている。しかし、また、図5は、バルブのどちらか1つが開くことが、他のバルブの閉じることと常に直接一致することを示す。このグラフでは、y軸は、0では流れがなく、1では流れていることを示す。x軸は、開かれた状態と閉じられた状態の間で2つのバルブ・アームが交互に切り替えられるサイクルを示す。流体がバルブの両方を通じて流れているときが全くない、というのは、流出口チューブ409と注入口チューブ405の両方が開いているときが全くないからであり、それによって、両方を通って同時に流れることが防止される。
【0016】
図6のグラフは、図4の二重ピボットのラッチング・バルブを備える、流体変位源として注射器ポンプを使用した実験結果を示す。流体が、重さ読みをもたらす天秤から移されて、13.79kPa(2psi)の圧力で保たれた容器に送達される。図6から分かるように、流体は、天秤から段階的に送達され、天秤からの流体の取り出しは、バルブが閉じられていて、流体がバランスの崩れた容器に送達されているときの期間と交互に行われ、時間をかけて、比較的一様な送達でなされる。また、このデータは、加圧された容器から天秤上への逆流がないことを示し、両方のバルブ・アームが開いているときが決してないことを例示する。
【0017】
図7は、本明細書に述べるような二重ラッチング・バルブの、電気化学式ポンプ又は「ePump」725を用いる用途を示す。本発明によって使用するのに適切な電気化学式ポンプは、たとえば米国特許第7,718,047号、第8,343,324号及び第8,187,441号に教示されており、それらは、参照によって本明細書に援用される。本実施例では、二重ラッチング・バルブが、薬物を患者821に投与することなど、流体の制御された投与のために使用される。第1のステップでは、注入口バルブ・アームが開いていて(流出口バルブが閉じられている)、ePumpが、投与量の流体を、取り出して流路705に沿ってチャンバ706中に入れるために使用される。第2のステップでは、流出口バルブが開いていて(注入口バルブが閉じられている)、ePumpは、チャンバ706から流体を押し出して患者821に注入するために使用される。容器から患者まで開いている経路がいずれの時点でも全くなく、それは、薬物送達における重要な安全機能であることにどうか留意されたい。
【0018】
図8は、ほぼ連続的な制御された、薬物などの流体の患者821への投与を発生させるために、2つの二重ラッチング・バルブと組み合わせて使用される両側ePump825の用途を示す。両側ePump825は、2つのチャンバ806及び816を有する。ポンプ動作が、流体を引き出して上部チャンバ806中に入れるとき、ポンプ動作は、底部チャンバ816から流体を押し出している。逆に、流体が底部チャンバ816中に引き込まれるとき、流体は、上部チャンバ806から押し出されている。図8で分かるように、容器801から患者821にまで走る2つのはっきりと異なる流体経路805−806−807及び815−816−817が存在する。各経路を通る流れは、二重ラッチング・バルブによって制御される。上側の二重ラッチング・バルブは、経路805−806−807を通る流れを制御する注入口バルブ・アーム401及び流出口バルブ・アーム404を有する。ちょうど図4で述べたように、注入口バルブ401が開いているとき、流出口バルブ404は、閉じられていなければならない。そして、流出口バルブ404が開いているとき、注入口バルブ401は、閉じられていなければならない。この重要な制御及び安全機能によって、送達されることになる流体の計量された投薬量(チャンバ806の容量)の送達だけが可能になり、容器801から患者にまで走る開かれたチャネルの存在する可能性が回避される。注入口バルブ411及び流出口バルブ414の同じ編成によって、経路815−816−817に沿った流体移動が制御される。
【0019】
或いは、注入口ライン805及び流出口ライン817を、両方がバルブ・アーム401を通って走るように、且つ流出口ライン807及び注入口ライン815を、両方がバルブ・アーム404を通って走るように構成することによって、一方の二重ラッチング・バルブだけが、容器801から患者821までの流れをもたらすために、必要になる。なおこの構成では、容器から患者まで開かれた流体の流路が、いずれの時点でも存在しない。
【0020】
以下のステップでは、どのようにして流体の計量された投与量が、ほぼ連続的に容器801から患者に送達されるのかを述べる。この場合、システムは、両方の流体経路が流体で満たされているように、既にプライミングされている。ステップ(1)では、注入口バルブ401及び流出口バルブ414が開いていて、流出口バルブ404及び注入口バルブ411が閉じられている。ePump825が作動されたとき、それは、まず、薬物容器801から流路805を通じて流体を引き出して、流体が貯蔵されるチャンバ806中に入れる。同時に、ePump825は、チャンバ816中に貯蔵された流体を、経路817を通じて押し出して患者に注入する。ステップ(2)では、バルブは、出力口バルブ404及び入力口バルブ411が開いていて、入力口バルブ401及び出力口バルブ414が閉じられているように反転される。この場合、ポンプは、容器801から流路815を通じて流体を引き出して、流体が貯蔵されるチャンバ816中に入れる。同時に、チャンバ806に貯蔵された計量された容量の流体(ステップ1から)が、流路807を通じて押し出されて患者に注入される。ステップ1及び2を繰り返すと、患者に対する流体(この場合、薬物)の制御された投与量のほぼ連続的な(又は間欠的な)、且つ安全な送達が施されることになる。
【0021】
図9は、図8の構成の変形を示し、2つの異なる薬物を、2つの異なる容器901及び902から患者821に投薬することができる。図8に述べたステップを使用して、容器901中の薬物Aが、容器902中の薬物Bと交互に送達されることになるはずである。しかし、より多くの投与量で薬物Aを、より少ない投与量で薬物Bを送達することが望まれる場合がある。たとえば、インシュリン及びグルカゴンは、糖尿病の治療のために併用して使用される場合があるが、しかしインシュリンは、グルカゴンより多くの容量で、及び/又はより頻繁に(又は、代替としてより少ない頻度で)投薬する必要があり得る。以下のステップによって、1つだけの両側ePumpと2つの二重ラッチング・バルブを使用する、2つの薬物の差別的な制御された送達が、可能になるはずである。たとえば、容器902中の薬物Bの1投薬量が患者に送達される前に、容器901中の薬物Aの9投薬量が必要であるとする。それぞれの流体、薬物Aと薬物Bで満たされた両方の流体経路805−806−807と815−816−817を備える、完全にプライミングされたシステムから始める。ステップ1では、注入口バルブ401及び411が両方とも開いていて、流出口バルブ404及び414が両方とも閉じられている。ePump825の最初の動作は、計量された量の流体を容器Aから引き出して、流体が貯蔵されるチャンバ806中に入れることである。同時に、流体が、チャンバ816から唯一開いている経路、つまり容器902中に戻る経路を通じて押し出される。ステップ2では、上部二重ラッチング・バルブは、注入口バルブ401が閉じられ、流出口バルブ404が開かれるように、位置を切り替える。これは、ePump825の二番目の動作が、容器806中に貯蔵された流体を経路807通じて押し出して患者821中に注入することである。ステップ1及び2を繰り返すと、容器901(薬物A)からの流体だけが患者に送達され、さらに容器902からの流体(薬物B)は、容器902とチャンバ816の間で行ったり来たり循環され、この行ったり来たりする循環は、容器の内容物に対して混合させる、又はかき回す作用を及ぼすことになる。一度容器902からの流体を患者821に送達することが所望されると、底部二重ラッチング・バルブは、注入口バルブ411が閉じられ、流出口バルブ414が開かれるように位置を切り替えることになるはずなので、チャンバ816中に貯蔵された流体が、患者821にまで押し出される。上記手順と反対の手順によって、容器Bから送達されることになる流体が、患者に繰り返して送達され、容器Aからの流体が容器901とチャンバ806の間で行ったり来たり循環することになるはずである。2つの二重ラッチング・バルブを選択的に操作することによって、各薬物は、その元の容器中にポンプによって選択的に戻すことができ、又は必要に応じて患者に送達される。
【0022】
本発明の様々な実施例を、流体、具体的には薬物の送達に関連する特定の用途を参照して本明細書に述べてきたが、本発明は、そのように限定されず、その代りに、流体の正確な送達がフェイルセーフの形で所望される他の分野で用途を見出すことになることが明らかになるはずである。さらにまた、本発明のある実施例を、ePumpと接続状態で使用するために述べてきたが、本発明は、そのように限定されず、他のタイプのポンプを本明細書で述べたような本発明のバルブと接続して使用することができるはずであることは、明らかになろう。さらに、本明細書で述べたある実施例では、ニチノールが形状記憶合金として使用されているが、他の形状記憶合金、材料又は駆動方法は、結果として本発明の範囲内で置き替えることができるはずであることを理解されたい。
【0023】
他に特に明記していない限り、本明細書で使用される、すべての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。また、本明細書に述べたものと同様又は等価な任意のシステム及び材料を、本発明の実施又は試験において使用することができ、限られた数の例示的なシステム及び材料が、本明細書に述べられている。さらに多くの修正が、本明細書の発明の概念から逸脱せずに可能であることが、当業者には明らかになろう。本明細書に使用されるすべての用語は、文脈と一致してもっとも広くて可能なように解釈すべきである。本明細書に表された範囲は、述べられた範囲内のすべての個別の値を含み、さらにまた述べられた範囲内に含まれるすべての部分的な範囲を含むことが意図される。
【0024】
本発明は、前述の具体的な実装形態を参照して述べてきた。これらの実装形態は、単に例示的なものであり、本発明の全範囲を限定しないものであることが意図される。上記の教示の観点から、多くの変形及び修正が可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲に述べたようにしか限定されないことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9