特許第6564461号(P6564461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイドルマイアー ホールディング ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6564461プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル
<>
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000002
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000003
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000004
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000005
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000006
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000007
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000008
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000009
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000010
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000011
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000012
  • 特許6564461-プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564461
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】プラスチックから射出成形部品を製造するための射出成形ノズル
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/20 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   B29C45/20
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-533693(P2017-533693)
(86)(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-527478(P2017-527478A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2015001825
(87)【国際公開番号】WO2016037704
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】A50631/2014
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】517087266
【氏名又は名称】ハイドルマイアー ホールディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HAIDLMAIR HOLDING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】パトリック コーンバーガー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリバルト ウィンダーガー
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−254927(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第04125975(DE,A1)
【文献】 特開平08−057905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットゲートを介して、溶融プラスチックを射出成形ツールの成形キャビティに誘導するための射出成形ノズルであって、
細長い端縁を有し、ハウジングの開口部に受容されるノズルコアを備え、
前記ノズルコアは、その一部が前記ハウジングから離間していることにより、前記ハウジングと前記ノズルコアとの間に、溶融プラスチック源と前記スロットゲートとの間を流体連通させるノズルフローチャネルを画定し、
前記ノズルフローチャネルは、少なくとも下流部分において前記ノズルコアを全面的に包囲する射出成形ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形ノズルであって、前記フローチャネルの下流部分は、細長い端縁に向けて先細りとなるノズルコアの外側テーパ部分と、前記スロットゲートに向けて先細りとなるハウジングの内側テーパ部分との間の、流れ方向に向けて先細りとなるノズルランナーを含む射出成形ノズル。
【請求項3】
請求項2に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルフローチャネルは、前記ノズルランナーと前記溶融プラスチック源との間を流体連通するマニホールドを含む射出成形ノズル。
【請求項4】
請求項3に記載の射出成形ノズルであって、前記マニホールドの断面領域は、下流方向に向けて減少する射出成形ノズル。
【請求項5】
請求項4に記載の射出成形ノズルであって、前記マニホールドは、フィーダチャネルに流体連通する入口と、前記ノズルコアを中心に延在する出口とを有する射出成形ノズル。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルフローチャネルは、スロットルゾーンを含み、前記スロットルゾーンによって、前記マニホールドは、前記ノズルランナーと流体連通する射出成形ノズル。
【請求項7】
請求項6に記載の射出成形ノズルであって、前記スロットルゾーンは、前記ノズルコアを中心に完全に延在する溶融プラスチックのフロー狭窄部を形成する射出成形ノズル。
【請求項8】
請求項6に記載の射出成形ノズルであって、前記スロットルゾーンの流動抵抗は、前記スロットゲートの長さに沿って変化する射出成形ノズル。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルランナーは、前記スロットルゾーンに接続する流入部分と、前記スロットゲートに繋がる下流流出部分とを形成し、前記流出部分は、流出方向に関して、流入部分と比較して、より小さい傾斜角度を有する射出成形ノズル。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルランナーは、前記ノズルコアを包囲しつつ、2つのマニホールドと流体連通している射出成形ノズル。
【請求項11】
請求項10に記載の射出成形ノズルであって、第1のマニホールドの流端は、第2のマニホールドの各流端と流体連通している射出成形ノズル。
【請求項12】
請求項10〜11のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、第1のマニホールドの流端は、前記スロットルゾーンより手前で、第2のマニホールドの各流端に接続されている射出成形ノズル。
【請求項13】
請求項3〜12のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記マニホールドの内部境界は、前記ノズルコアにおいて、凹状に設計されている射出成形ノズル。
【請求項14】
請求項13に記載の射出成形ノズルであって、前記マニホールドの外部境界は、前記ハウジングにおいて、前記開口部の側壁によって画定される射出成形ノズル。
【請求項15】
請求項6〜13のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、更に、前記開口部に受容され、前記ノズルコアを包囲するスリーブを備え、前記マニホールドの外部境界は、前記スリーブの内壁によって画定される射出成形ノズル。
【請求項16】
請求項15に記載の射出成形ノズルであって、前記スリーブの内壁は、更に、前記スロットルゾーンの外部境界の少なくとも一部を画定する射出成形ノズル。
【請求項17】
請求項15〜16のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記スリーブは、前記開口部の内部肩部と、前記ノズルコアの外部肩部との間に配置される射出成形ノズル。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記スリーブは、前記ノズルコアのフローチャネルから上流にある前記ノズルコアの本体部分と流体シールを形成する射出成形ノズル。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記スリーブは、前記ノズルコアおよび/または前記ハウジングを製造する材料よりも、より断熱性を有する材料から製造される射出成形ノズル。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルコアおよび前記開口部は横長であり、それぞれの長さは、それらの幅よりも長い射出成形ノズル。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルコアおよび前記ハウジングは円筒形状を有する射出成形ノズル。
【請求項22】
請求項21に記載の射出成形ノズルであって、前記スロットゲートは、複数のブランチを備え、前記ノズルコアは、前記複数のスロットブランチに対応する複数ペアの屋根領域を備え、前記屋根領域のペアは、前記スロットゲートの形状に対応する複数の端縁において終端する射出成形ノズル。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ハウジングは、前記スロットゲートの長手方向軸と整列された冷却チャネルを含む射出成形ノズル。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、更に、前記ノズルコアに組み込まれたヒーターを備える射出成形ノズル。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ノズルコアは、前記スロットゲートを閉口するため、前記ハウジング内を移動可能である射出成形ノズル。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一項に記載の射出成形ノズルであって、前記ハウジングは、成形用型板の開口部に受容可能なインサートによって形成され、前記インサートは、前記成形キャビティの一部の範囲を定め、前記成形キャビティに繋がる前記スロットゲートを画定する射出成形ノズル。
【請求項27】
請求項25に記載の射出成形ノズルであって、前記ハウジングは、前記成形キャビティの一部の範囲を定める成形用型板によって形成され、前記成形用型板は、前記成形キャビティに繋がる前記スロットゲートを画定する射出成形ノズル。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の射出成形ノズルを有する射出成形ツールであって、仕切によって分離された一対の成形キャビティを含み、前記一対の成形キャビティは、前記仕切の両側上を延在する共通の射出成形ノズルによって充填される射出成形ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の射出成形ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
このような射出成形ノズルは、特許文献1:ドイツ特許出願公開第4125975号明細書より既知である。この文献によると、溶融プラスチックを単一の溶融ストリームとしてノズルに流入させ、2つの分離した帯状の押出成形物に分割した後にスロットゲートを通じて射出する。分割された帯状の押出成形物は、流路を横断するトーピードによって相互に離間し続け、トーピードから下流部に至るまで再結合することが不可能である。この場合には、トーピードの下流側でスロットゲートの直前において2つの押出成形物が合流するため、往々にして成形部分に傷を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第4125975号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第2607644号明細書
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の基本的な課題は、射出成形部品の品質における許容しがたい欠陥を生じることなく、溶融プラスチックを成形キャビティ内に射出することのできる射出成形ノズルを提供することである。
【0005】
本発明は、請求項1に記載の射出成形ノズルを提供することにより、目先の問題を解決する。本発明によると、ハウジングの開口部に受容されるノズルコアの一部は、その間に、マニホールド、スロットルゾーン、およびノズルランナーを含むノズル流路を画定するように、ハウジングから離間している。ノズル流路は、溶融プラスチック源とスロットゲートとの間で流体連通しており、ノズル流路の少なくとも下流部分は、ノズルコアを全面的に包囲することにより、ノズルコアとスロットゲートの前方またはスロットゲートの前のハウジングとの間における成形材料の連続的なフローフロントを生成する。ノズルコアを全面的に包囲するノズル流路の下流部分における成形材料のフローフロントは、端部において接続された離間した長手面を有しており、この長手面の長さおよび幅は、スロットゲートに向かう流れ方向に見て先細り形状であることが好ましい。そのような構成は、成形材料の成形キャビティ内への比較的高いスループットを促進すると共に、溶接線または射出成形部分の他の欠陥の可能性を減少させる。
【0006】
本発明の一態様は、スロットノズルを通じてキャビティ内に射出される溶融プラスチックのせん断応力は、直径がスロット幅に概ね対応する円型ノズルのせん断応力と同等であるとの認識に基づく。
【0007】
本発明の一態様によると、メルトスループットは、帯状の押出成形物の幅の選択によって、受け入れがたいせん断応力の増加や、続いて発生するプラスチックの溶融における許容温度を超える温度上昇による潜在的に有害な結果を恐れる必要なしに、随意に増加させることができる。射出成形部品を離型する間のスプルーと射出成形部品との間の移行領域におけるプラスチックの温度依存型の機械的強度により、付き絞りネジを必要とすることなく、ノズル開口部の領域においてスプルーの切り離しが生じるように、射出成形部品の離型に際してスプルーの切り離しにまず必要となるのは、冷却キャビティ内の溶融プラスチックと、スロットノズルの好適な長手方向延在部に亘るスプルーとの間の適切な温度勾配である。スプルーと凝固した射出成形部品の間の移行領域におけるそのような温度勾配の調節は、冷却キャビティにおいて、射出成形部品の凝固中にプラスチックが溶融状態であり続ける領域において、スプルーに熱を供給することによって達成される。除去すべきスプルーを形成するノズル領域は、結果として、射出成形ノズルのホットランナーの一部となる。即ち、溶融液体と凝固したプラスチック体との間のノズル開口部の領域に薄層の形態で製造される移行部により、ノズル開口部におけるスプルーの切り離しが生じる故に、射出成形部品の狭い表面領域に沿って切り離しが生じることによって、一般的に不必要な切り離し点の後処理をする。
【0008】
本発明の一態様によると、キャビティ内に射出する間における溶融プラスチックの有利な温度制御を達成するため、採用され、一般的に冷却されるプラスチックの凝固温度に従って温度を制御し、加熱可能なノズルコアを受容するハウジングを有し、ノズル開口部において終端し、ハウジングとノズルコアとの間の流れ方向に向けて先細り形状となるノズルランナーを有すると共に、溶融プラスチック用フィーダとノズルランナーとの間のマニホールドを有する射出成形ノズルをベースとして使用することができる。この種の既知の射出成形ノズルとは対照的に、ノズル開口部は、スロットゲートの形態であり、スロットゲートに適応されるノズルランナーは、スロットルゾーンによってノズルランナーと流体連通する、少なくとも1つのマニホールドに接続する。溶融プラスチックを射出成形ツールのキャビティ内にスロットゲートを介して有利に導入するための一態様においては、レオロジー基準に従って、スロットゲートの長さに亘ってメルトフローを供給する。なぜなら、この方法のみにより、本質的にスロット長に依拠する、溶融におけるスループットの増加を促進することが可能となるためである。この理由から、スロットゲートに適応されるノズルランナーは、スロットルゾーンによってマニホールドに接続されており、このスロットルゾーンは、マニホールドに対応するスロットゲートの長手方向部分の長さに亘って延在するフロー断面の狭窄部によって形成されることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様によると、スロットルゾーンに溶融プラスチックが好適な拡張範囲に亘って充填され、スロットゲートの長さに亘る各レオロジー要件を満たすメルトフローの供給を促進するように、フィーダチャネルを通じて供給される溶融プラスチックは、最初に、マニホールドによって、マニホールドに対応するスロットゲートの長手方向部分の長さに対応するフロー部分に亘って供給される。更に、温度およびフロー供給を制御されるメルトフローによって、溶融プラスチックが、プラスチックの有害な負荷を恐れる必要なしに、有利な形態で、射出成形ツールのキャビティ内に導入され得るように、メルトフローの温度を、ノズルスロットから出現する前に、ノズルランナーの壁部を形成する加熱されたノズルコアによって制御することができる。本発明の一実施形態の一態様によると、不変の、または低下した流速に応じて、より多くのプラスチック材料をキャビティ内に導入することができる。より低い流速は、一般的に、溶融プラスチック上へのせん断応力がより低いことを意味するため、許容しがたい材料の損傷と、結果的な強度の損失のリスクを低減する。これにより、比較的迅速なサイクルタイムを維持しつつ、例によって、高品質な射出成形部品の形成を促進する。
【0010】
本発明の一態様によると、メルトフローを流れ方向に関連してスロットルゾーンの横の拡張範囲に亘って供給し、デッドフロースペースを回避するため、マニホールドのフロー断面は、流れ方向に見て先細りのテーパ形状であってもよい。更に、スロットルゾーンの流動抵抗は、マニホールドに対応するノズルスロット部分の長さによって変化し得る。ノズルスロットから出現する溶融プラスチックのフロー供給は、これらの措置の1つまたは相互の組み合わせに影響され得る。
【0011】
本発明の一態様によると、スロットルゾーンに溶融プラスチックを充填するマニホールドは、ハウジングに配置され得る。しかしながら、より簡素な設計条件として、ノズルコアがハウジングに向けて開口する凹状のマニホールドを形成する場合、ノズルコアの外側に配置することで、簡単に取り扱えるアクセスを設けることができる。更に、ノズルコアの領域におけるマニホールドの拡張された表面は、加熱されたノズルコアから溶融プラスチックへの熱伝達に有益な硬化を有する。ノズルコアの凹部の反対に配置されたマニホールドの余地は、ハウジングによって形成され得るが、ハウジングインサートによっても形成され得る。
【0012】
本発明の一態様によると、ノズルランナーがノズルコアを全面的に包囲する場合、特に、ノズルスロットの端部において、溶融プラスチックのより均一な温度分布を達成することができる。更に、メルトフローの改善された誘導は、結果的に、ノズルスロットの端部において、製造される射出成形部品の品質の強化に繋がる。
【0013】
本発明の一態様によると、スロットルゾーンにおける好適な拡張範囲に亘るメルトフローの改善された供給のため、ノズルランナーは、ノズルコアを包囲する少なくとも2つのマニホールドに接続され得る。また、ノズルコアによって、溶融プラスチックをより正確に供給することができる。これは、ノズルスロットの長手方向軸に関連して相互に対向するノズルコアの長手面からの全てのメルトの供給に適用される。続いて、ノズルコアは、相互の一マニホールドにそれぞれ対向し、スロットルゾーンによってノズルランナーに接続された長手面上に提供され得る。
【0014】
本発明の一態様によると、2つのマニホールド間の接合領域におけるスロットルゾーンの均一な充填は、流端において相互に接続されたマニホールドによって改善され得る。この措置は、そのような接合領域による溶接線の形成の回避にも役立つ。更に、共通射出成形ノズルを使用して、異なるプラスチックを射出成形ツールのキャビティ内に、別個のフィーダチャネルから成形材料を受領する2つ以上のマニホールドを介して射出することができる。
【0015】
本発明の一態様によると、ノズルスロットからの溶融プラスチックの流出条件を改善するため、ノズルコアは、ノズルランナーの領域におけるスロットルゾーンに接続する流入部分と、流入部分のノズル流出方向と比較してより小さい角度の傾斜を有する下流流出部分とを形成してもよい。流出部分は、溶融プラスチック用ガイド面を提供することにより、溶融プラスチックは、ノズルスロットの流出方向に転換される。
【0016】
本発明の一態様によると、射出成形ノズルのハウジングは、ノズルスロットを備える外面と共に、射出成形ツールの成形面を形成し、この成形面によりキャビティの範囲を定めることによって、多くの用途、特に冷却される射出成形ツールの場合において、少なくともこの外側領域において冷却される。ノズルコアを介して溶融プラスチックに熱が加わるため、いくつかの用途においては、ハウジングに、加熱されるノズルコアに対する断熱性を付与することが推奨される。これは、エネルギー管理の効果を有するだけでなく、有利には、メルトフロー内の温度プロファイルに影響を与え、その結果、特定の環境下では、射出圧力を減少させることができる。
【0017】
本発明の一態様によると、スプルーの切り離しに建設的に影響を与え得るため、キャビティにプラスチックが充填された後、ノズルスロットを閉口し、スプルーを射出成形部品から分離することができるように、ノズルスロットを閉口するためのノズルコアは、ハウジングに移動可能に取り付けられ、好適なアクチュエータに接続されてもよい。更に、ノズル開口部の領域における溶融プラスチックが凝固するまで待つ必要がないため、キャビティにおける射出成形部品のドウェル時間は、短縮できることが多い。
【0018】
本発明の一態様によると、上述したように、射出成形ツールの温度は、キャビティ内に射出される溶融プラスチックが、短いサイクルタイムを維持しつつ、射出成形部品内で凝固するように、使用される各プラスチックの凝固温度に応じて制御されることが好ましい。ノズルスロットの領域における溶融プラスチックの凝固の経過は、スプルーの切り離しに関するこのケースにおいては、特に重要である。この理由から、ハウジングは、ノズルスロットの領域において冷却され、凝固した射出成形部品と、ノズルスロットの領域における溶融スプルーとの間の意図される温度勾配が促進されるという効果が生じる。
【0019】
本発明の一態様によると、ハウジングが射出成形ツールのキャビティの範囲を定める成形用型板を形成するとき、特に好ましい設計条件となる。なぜなら、これにより、ハウジングを成形用型板用のフラッシュフィット・インサートとして作成する必要がなくなるからである。更に、射出ノズル用ハウジングを形成する成形用型板は、射出成形ツールの均一な温度制御を促進することもできる。
【0020】
本発明の一態様によると、せん断応力を有害に増加することなく利用可能な限定的な空間量において、射出成形ノズルによってメルトスループットを増加させ得るため、メルトスループットを決定するノズルスロットの長さが、スロット供給によって、より詳しくは、ハウジングのための限定された空間的要件によって、複数のブランチ内に延在するように、ノズルスロットおよびノズルスロットに繋がるノズルランナーは、好ましくは、星形に整列された複数のブランチを備えることができる。
【0021】
本発明の一態様によると、ノズルコアは、ノズルスロットの長手方向軸に対して、かつ、ノズルランナーの領域におけるノズルスロットのブランチに対して対称的な2つの屋根領域を有する平坦な円筒形の基礎形状を有する。いくつかの用途において、これは、円型ノズルの使用によって周知であるため、設計条件上、有利である。例えば、十字穴の形成を通じて、ノズルスロットが複数のブランチに分割されない場合、円筒形のコア体の直径を制限する結果、メルトスループットは限定されたままとなる。
【0022】
本発明の一態様によると、ノズルスロットを有する本明細書に記載したタイプの射出成形ノズルは、少なくとも2つのキャビティに、キャビティ間の仕切の両側上を延在するノズルスロットを有する共通射出成形ノズルを配置する場合、2つまたは複数のキャビティを有する射出成形ツールからなる簡素な設計となり得る。
【0023】
本発明における前述した特徴および利点、並びに、その他の特徴および利点は、添付図面に示すように、本発明の実施形態に関する以下の説明から明白となる。本明細書に引用され、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の原理を更に説明し、当業者に本発明の実施を可能とするのに資する。添付図面は、正確な寸法比を反映するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるノズルスロットまたはスロットゲートを介して、溶融プラスチックを射出成形ツールの成形キャビティに誘導するための射出成形ノズルの部分断面図である。
図2】スロットゲートに対して垂直に見た、図1の射出成形ノズルの断面図である。
図3図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4図1の射出成形ノズルのノズルコアの側面図である。
図5図4のノズルコアの端面図である。
図6】射出成形ツールの一部に配置され、移動可能に取り付けられたノズルコアを有する、本発明の一実施形態による射出成形ノズルの断面図である。
図7】円筒形の基礎形状および2つの屋根領域を有する、本発明の一実施形態によるノズルコアの側面図である。
図8図7のノズルコアの頂面図である。
図9】十字形状のスロットゲートを有するハウジングと共に使用するための、本発明の一実施形態によるノズルコアの斜視図である。
図10図9のノズルコアの拡大頂面図である。
図11図9および図10のノズルコアと共に使用するためのノズルハウジングの斜視断面図である。
図12】射出成形ツールに配置され、2つの成形キャビティ間を延在する、本発明の一実施形態による射出成形ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の特定の実施形態を、添付図面を参照して説明する。添付図面において、同様の参照番号は、同一の、または機能的に同様の要素を示すものである。以下の詳細な説明は、単なる例示に過ぎず、本発明またはその用途および使用方法を限定するものではない。以下の説明において、「下流」とは、射出成形機の射出ユニットから射出成形ツールの成形キャビティに溶融プラスチックの流れ方向、および、成形材料が射出ユニットから成形キャビティに流れる際に通過する部品の順序または特徴に関して使用される。一方、「上流」とは、反対方向に関して使用される。更に、上述した技術分野、背景技術、発明の概要、または以下の詳細な説明において、任意の明示的または黙示的な理論に拘束されることを意図するものではない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形ノズルNの部分断面図である。この実施形態の特徴および態様は、適宜、別の実施形態と使用され得る。図1図5に示されるように、射出成形ノズルNは、2つの長手面の間およびノズルスロット2の2つの端部を横断する長手方向軸Aを有するノズルスロット2を形成するハウジング1を含む。本明細書において使用されるように、「ノズルスロット」という用語は、「スロットゲート」という用語と交換可能である。ノズルコア3およびハウジング1の間にあるハウジング1の開口部1Aに組み込まれるか、または受容されるノズルコア3に加えて、ノズルランナー4が続いている。ノズルランナー4は、流れ方向に見て(即ち、下流方向に向けて)先細りのテーパ形状となり、ノズルコア3を完全に包囲することが好ましい。図1に加えて図2および図3も参照すると、図2は、スロットゲート2に対して垂直に見た、図1の射出成形ノズルNの断面図であり、図3は、スロットゲート2に平行なIII−III線に沿って見た、図2の断面図である。ノズルランナー4は、端縁3Bにおいて終端するノズルコア3の外方に向けて先細りとなる外側テーパ端部3Aと、スロットゲート2に向けて先細りとなり、かつ、ハウジング1の開口部1の内方に向けて先細りとなる内側テーパ部分1Bとの間に画定される。ノズルコア3がハウジング1に配置されると、ノズルコア3の端縁3Bは、スロットゲート2と整列され、スロットゲート2から分離されている。図2および図3に示すように、屈曲しているか、または円形の端部によって接続された2つの細長い側面を有するフローチャネルを画定し、ノズルチャネルの各端部と側面との間の長さおよび幅が下流方向にスロットゲート2に向けて減少するように、ノズルランナー4は、長手方向軸Aに向けて内方に先細りとなり、かつ、長手方向軸Aに対して短手方向内方に向けて先細りとなり得る。ノズルランナー4を溶融プラスチックで充填するため、ノズルコア3は、中央フィーダチャネル5を備え、この中央フィーダチャネル5に、ノズルコア3の長手面の両側上に設けられたマニホールドまたは供給チャネル6,6´が接続している。しかしながら、共通フィーダチャネル5から延在する各分岐またはブランチチャネル7,7´によって、両方のマニホールド6,6´に供給するのではなく、代替的に、例えば、層となる異なるプラスチックを射出可能とするため、別個の独立したフィーダチャネルによって、マニホールド6,6´に別々に供給することも可能である。いずれの場合も、マニホールド6,6´は、ノズルコア3の一側面上に入口を有し、この入口は、円形であることが好ましく、フィーダチャネル5と流体連通しており、ノズルコア3を中心に延在する出口を含む。
【0027】
この実施形態において、ノズルコア3は、基部3C、本体部分3D、およびテーパ端部3Aを含む。ノズルコア3と、ノズルコア3を受容する開口部1Aとは、全体的に横長であり、それらの幅Wよりも長い長さLを有する。この実施形態において、ハウジング1は、横長のインサートによって形成されており、射出成形ツールの成形用型板の開口部に受容可能であって、インサートにより、成形キャビティの一部の範囲を定め、成形キャビティに繋がるスロットゲート2も画定する。
【0028】
図1図3と併せて図4および図5も参照すると、図4は、図1の射出成形ノズルNのノズルコア3の側面図であり、図5は、図4のノズルコア3の端面図である。マニホールド6,6´は、スロットゲート2の長手方向軸Aに関して対称的である。更に、マニホールド6,6´(簡素化するため、一方のみを以下に説明する)は、中央フィーダ5の各分岐7から離れるか、または延在する。図4のページビューにおいて示すように、マニホールド6は、全体的にVまたはU字状となるよう、ノズルコア3の端部に向けて、全体的に上方に屈曲している。各マニホールド6は、流れ方向に向けて先細りのテーパ形状となる、2つの対称的に設計されたランナーブランチ6A,6Bを形成する。マニホールド6の断面領域のサイズは、下流方向にマニホールド6の流端に向けて減少する。マニホールド6,6´の断面領域におけるこの変化により、成形材料のフローがマニホールド6,6´から放出される際に、ノズルコア3の長手面の端部や中間において、何れの場合も比較的均一なフローフロントを有するよう促進する。各ランナーブランチ6A,6Bの流端は、マニホールド6´の対応するランナーブランチ6A´,6B´の下流端と流体連通しており、ノズルコア3の対向側面上にある。即ち、対となるマニホールド6,6´が、ノズルコア3を中心に各分岐7,7´から受容される成形材料を供給して、ノズルコア3を包囲する成形材料のフローを生成するように、マニホールド6と関連する、対となるランナーブランチ6A,6Bは、ノズルコア3を中心に延在し、ノズルコア3の対向側面上のマニホールド6´の各ランナーブランチ6A´,6B´と流体連通している。これによって、溶融プラスチックのフロー構成における設計上の必要条件を整えることにより、拡張範囲またはスロットゲート2の長さに亘るレオロジー要件に有利となる。実施例によると、マニホールド6,6´は、ノズルコア3の長手面に凹状に設計され、ハウジングの開口部1Aの側壁1Cに対して開口している。この配置において、ノズルコア3によって、マニホールド6の内部境界が画定され、ノズルハウジングの側壁1Cによって、外部境界が画定される。これにより、簡単な製造条件をもたらし、加熱されたノズルコア3から、マニホールド6の領域内の溶融プラスチックへの熱伝導も促進し、凹部によりノズルコア3の表面領域を増加する結果となる。(図示する)代替的な実施形態において、マニホールド6,6´は、ノズルコア3に対して開口するハウジング1の側壁1Cにおいて凹状に設計される。また、更なる代替的な実施形態において(図示せず)、マニホールド6,6´は、ノズルコアおよびハウジングの両方において凹状に設計される。概して、本明細書に記載の実施形態において、マニホールド6,6´は、ノズルコア3およびハウジング1の間に画定される。
【0029】
2つのマニホールド6,6´を図示するが、ノズルランナー4と溶融プラスチック源との間で流体連通する単一のマニホールドを使用して、ノズルコア3の周囲に溶融プラスチックを供給することも可能である。この場合、単一のマニホールドは、ノズルコア3の周囲の流れ方向に向けてテーパ形状となり、マニホールドの出口がノズルコア3を中心に完全に延在するように、単一のマニホールドの流端は、マニホールドの入口の反対側のノズルコアの側面上で合流する。
【0030】
いくつかの用途において、ノズルコアの周囲およびスロットゲート2の拡張範囲または長さに沿った溶融プラスチックの供給は重要であるが、スロットゲート2の長手方向延在部に亘る、意図するフロー供給またはフローレートを確立するには十分ではない。これは、スロットルゾーン8を介して、ノズルランナー4に、マニホールド6,6´を通じて供給される溶融プラスチックを充填することによって達成することができる。このスロットルゾーン8によって、マニホールド6,6´は、ノズルランナー4と流体連通または接続される。溶融プラスチックがスロットゲート2の拡張範囲に亘って所与の圧力条件に曝されるように、スロットルゾーン8は、全体的に、マニホールド6に対応するスロットゲート2の部分の長さに亘って延在する、溶融プラスチックのフローの断面の狭窄部によって、ノズルコア3の周囲に確立されることが好ましい。即ち、ノズルランナー4の、最終的にはスロットゲート2を通じた成形材料の所望のフローフロントを促進するように、スロットルゾーン8により、マニホールド6,6´から流出する成形材料のフローフロントの速度を変化させる。ノズルコア3のマニホールド6,6´から下流は、ノズルコアを中心に延在することが好ましいスロットルゾーン8を画定するように、ハウジングの開口部1Aの側壁1Cから離間している。スロットルゾーン8の内部境界は、ノズルコア3によって画定され、各端部によって接合される、スロットゲート2の長手方向軸Aに平行に延在する2つの離間した長手面を含む。ノズルランナー4は、スロットルゾーン8から延在し、スロットルゾーン8における平坦な環状の成形材料の流れを、スロットゲート2を通じて射出される帯状の材料の流れに転換する、流れ方向に向けて先細りのテーパ形状となる。図1および図5に示すように、この実施形態において、第1マニホールド6の流端は、スロットルゾーン8の前に第2マニホールド6´の各流端に接続している。更に、図1図5に示す実施形態において、スロットルゾーン8の長さは、マニホールド6の入口付近においては比較的長く、この場合、マニホールド6の断面領域も、各ランナーブランチ6A,6Bの端部付近において、スロットルゾーン8の長さと比較して比較的大きく、この場合、マニホールド6の断面領域は比較的小さい。スロットルゾーン8の長さにおけるこの差異は、フローを制限または減少させるため、スロットルゾーン8が比較的短い場合と比較して比較的長い場合に、射出成形材料の速度は比較的速くなる。結果的に、この実施形態において、成形材料の流速は、スロットゲート2の中間よりも端部においてより速くなる。いくつかの用途においては、スロットルゾーン8を上述した流速を形成するように構成することが有益である一方、別の用途においては、スロットゲート2の長さに沿った一様または均一な流速を促進するようにスロットルゾーン8を構成することが有益である場合もある。また、更に別の用途においては、スロットゲート3の端部よりも中間においてより速い流速を促進するようにスロットルゾーン8を構成することが有益であり得る。換言すると、スロットゲート2を通じた溶融プラスチックの所望のスループットを達成するため、スロットルゾーンによって生成される抵抗力が、スロットゲートの長さに沿った流れ供給に影響するために、ノズルコアの周囲の流れ断面に亘って異なるように、スロットルゾーンを構成することができる。
【0031】
特に、図1および図5から分かるように、いくつかの用途において、スロットゲート2から出現する溶融プラスチックのためのフロー条件を改善するため、ノズルコア3の下流端部および/またはハウジング1は、ノズルランナー4が、スロットルゾーン8に接続する流入部分9と、ノズル流出方向に関して、流入部分9よりもより小さい傾斜角度を有する下流流出部分10とを形成するように成形され得る。流入部分9の傾斜角度と比較して流出部分10の傾斜角度がより小さいことにより、溶融プラスチックは、スロットゲート2の方向に付加的に偏向する。
【0032】
本明細書の実施形態によると、ハウジングの開口部1Aに受容されるノズルコア3の一部は、その間に、マニホールド6、スロットルゾーン8、およびノズルランナー4を含むノズルフローチャネルを画定するように、ハウジング1から分離される。ノズルフローチャネルは、溶融プラスチック源およびスロットゲート2の間を流体連通しており、ハウジング1およびノズルコア3の間のノズルフローチャネルの少なくとも下流部分は、連続的な成形材料のフローフロントをノズルコア3とスロットゲート2の前のハウジング1との間に生成するように、ノズルコア3を全面的に包囲している。ノズルコア3の全面を包囲するノズルフローチャネルの下流部分における成形材料のフローフロントは、長手方向端部によって接続された離間された長手面を有しており、その長さおよび幅は、スロットゲート2に向かう流れ方向に見て先細りのテーパ形状となる。そのような構成は、射出成形部分におけるウェルドラインの可能性を減らしつつ、成形材料の成形キャビティ内への比較的高いスループットを促進する。
【0033】
射出成形部品を離型する際のスプルーの切り離しにおいて不可欠なのは、溶融プラスチックがノズルランナー4において凝固しないことである。従って、ノズルコア3は、ノズルランナー4の領域における溶融プラスチックにも熱を供給することができるよう、適宜に加熱される。ハウジング1を加熱することを介して、ノズルコア3を加熱することにより、成形材料を加熱することもできるが、いくつかの用途においては、ノズルコア3が直接的に加熱される際には、より好ましい加熱条件もある。この目的のため、この実施形態によると、関連する熱電対(図示せず)と共に電気加熱カートリッジ11がノズルコア3に組み込まれることで、ノズルコア3の加熱を制御する。ヒーターおよび/または熱電対と関連するワイヤ(図示せず)を収容するため、ノズルコア3は、その上流端に溝3Eを設けてもよく、この溝3Eを通じて、ワイヤを走らせる。図3に示す実施例によると、加熱カートリッジ11は、空間的条件によって、スロットゲート2に垂直に走行することによって、ノズルコア3の先細り形状の端部内への入熱が促進される。しかしながら、熱カートリッジ11のこの配置は、必須ではない。例えば、図6に示すように、スロットゲート2に並走する熱カートリッジ11を有するノズルコア3を含む。代替的な実施形態(図示せず)において、電気加熱は、ノズルコア3におけるチャネルを通じて伝わる熱媒体による加熱と置換可能である。
【0034】
溶融プラスチックからハウジング1への電熱による熱損失を減少させるため、ハウジング1は、開口部において受容され、ノズルコア3を包囲するスリーブ12の形態の断熱材によって、ノズルコア3に対して遮蔽されてもよい。スリーブ12の内壁12Aは、有利には、少なくとも部分的に、マニホールド6,6´の外部境界を画定するハウジング側壁1Cを形成する。この実施形態において、スリーブ12は、全体的に細長い楕円形状の本体を有し、開口部1Aの内部肩部1Dとノズルコアの外部肩部3Fとの間に配置される。より具体的には、この実施形態において、スリーブ12の下流端部は、開口部1Aの内部肩部1Dに接触し、スリーブ12の上流端部は、ノズルコア3の外部肩部3Fに接触する。この方法において、スリーブ12は、ハウジング1のノズルコア3を支持する。マニホールド6から上流において、スリーブ12の内面は、ノズルコア3の本体部分3Dと共に流体シールを形成する。スリーブの外面12bは、開口部1Aに受容される大きさである。ハウジング1およびノズルコア3の間に配置される際、スリーブ12は、ノズルコア3と共に、マニホールド6,6´と、スロットルゾーン8の少なくとも一部とを画定する、ハウジング1の一部と見なすことができる。図2に示すように、スロットルゾーン8の上流部分は、スリーブ12の内面とノズルコア3との間に画定され、スロットルゾーンの下流部分は、ノズルコア3とハウジング1の開口部1Aとの間に画定される。ノズルコア2を包囲するスリーブ12は、ノズルコア3および/ハウジング1を製造する材料よりもより断熱性を有する材料から製造され得るが、スリーブ12は、スリーブ12とハウジング1との間の間隙におけるエアギャップによって、例えば、縦溝を設けたスリーブ12の外面によって、ハウジングから分離され得るため、スリーブ12自体は、必ずしも断熱性材料から製造される必要はない。この実施形態によると、いくつかの用途において、スリーブ12は、本質的に不十分な熱伝導体を構成する、ノズルコア3とハウジング1との間の溶融プラスチックを使用して、ノズルコア3からハウジングへの伝熱を妨害または減少することが可能である場合、省いてもよい。そのような実施形態において、ハウジング1の開口部1Aの形状は、例えば、ハウジング1用にノズルコア3を支持するため、スリーブ12がない状態に適応するように変更される。
【0035】
次に、図6は、本発明の一実施形態による、射出成形ノズルNの断面図である。この実施形態の特徴および態様は、別の実施形態と共に、適宜に使用され得る。図1図5に記載の実施形態とは反対である図6の実施例によると、ノズルコア3は、スロットゲート2の開閉を容易にするため、ハウジング1に移動可能に取り付けられている。この実施例において、ウェッジギアの形態で設計されたアクチュエータ13は、図6に示す閉口位置から開口位置(図示せず)の間のノズルコア3の位置を調整または移動するのに役立つ。この場合、ノズルコア3は、スロットゲート2から引き込まれるか、分離されることにより、成形材料がそこを通じて流れ得る。ノズルコア3の開閉移動を適応させるため、フィーダ5の上流端部は、23として示すように、摺動または伸縮接続によって、上流ランナー部品22と係合されている。更に、図6の実施形態に示すように、ハウジング1は、射出成形ツールの成形キャビティ15の一部の範囲を定める成形用型板16によって形成され、成形用型板16は、成形キャビティに繋がるスロットゲート2を画定する。この構成において、そのような成形用型板16に組み込まれる射出成形ノズルN用のインサートの形態の別個のハウジング1は、不要となり得る。
【0036】
次に、図7および図8を参照すると、図7は、本発明の一実施形態によるノズルコア3の側面図であり、図8は、図7のノズルコアの頂面図である。この実施形態の特徴および態様は、別の実施形態と共に、適宜に使用され得る。図7および図8は、ノズルコア3の平坦な円筒形の基礎形状が、より一般的な既知の円形の射出成形ノズルの基礎形状と対応する際の、いくつかの用途における、ノズルコア3の特定の有利な実施形態を示す。平坦な円筒形の基礎形状によって、ノズルコア3とハウジング1との間に簡単な封止条件を実現することができる。容易に封止するため、ノズルコア3は、本体部分3Dから外方に半径方向に延在し、ノズルコア3とノズルコアが受容されるハウジングとの間の上流方向における成形材料の放出を制限または防止するように、ハウジングの開口部(図示せず)に接触する大きさを有する封止リング3Gを含む。ノズルランナー4のスロットゲート2における終端の達成を容易にするため、ノズルランナー4の領域に、2つの屋根領域17,17´を有する円筒形ノズルコア3を設ける。この屋根領域17,17´は、端縁3Bにおいて終端しており、操作に際しては、スロットゲートと整列される(図7および図8に図示せず)。屋根領域17,17´は、スロットゲート2の長手方向軸Aに対称的であり、マニホールド6,6´およびノズルランナー4の内部境界の範囲を定める。この実施形態において、メルトは、マニホールド6,6´が接続された分岐7,7´を有する中央フィーダ5を通じて供給される。また、図7および図8に示すように、ノズルコア3は、中央フィーダ5の両側上およびスロットゲートに沿った2つの屋根領域17,17´の間を延在する一対のヒーター11を受容するように構成される。図7および図8に示すノズルコア3の構成において、スロットゲート2の長さは、ノズルコア3の直径に制限され得る。この実施形態において、成形材料の流れにおける断面の狭窄部によって、スロットルゾーン8を通じたノズルランナー4の充填も容易となるが、明白化するため、更なる詳細は省くことにする。
【0037】
次に、図9図10および図11を参照すると、図9は、本発明の一実施形態による、十字形のスロットゲート3を有するハウジング1と共に使用するためのノズルコア3の斜視図であり、図10は、図9のノズルコア3の拡大した頂面図であり、図11は、図9および図10のノズルコア3と共に使用するためのノズルハウジング1の斜視断面図である。この実施形態における特徴および態様は、別の実施形態と共に、適宜に使用され得る。円筒形ノズルコア3を受容する円筒形ハウジング1によって規定される空間的な制限に関わらず、メルトスループットを増加させるため、スロットゲート2およびスロットゲート2において終端するノズルランナー4は、図9図11に示すように、複数のブランチ18を備えることができる。図11に記載の実施例によると、ハウジング1は、中央から外方に繋がる4つのブランチ18を有する十字穴形状のスロットゲート2を形成する。図10において、十字穴または開口部を形成するように接続する4つのブランチ18を有するスロットゲート2は、ノズルコアの反対位置に点鎖線によって示される。図9および図10に従って、ノズルランナー4の領域に、相互に横断的に配置され、スロットゲート2のブランチ18と対毎に対応する2つの対となる屋根領域17を有し、円筒形の基礎形状を有するノズルコア3を設ける。十字状の端縁3B,3B´における端部は、スロットゲート2の十字形状と対応する。ノズルコア3の屋根領域17と、対応するハウジング1の外部フロー境界面19との間において、ハウジング1に組み込まれたノズルコア3によって、十字穴に繋がるノズルランナー4が形成され、ここにノズルコア3に形成された2対のマニホールド6,6´が区分的に配置される。マニホールド6,6´の各ペアは、各分岐7,7´によって、ノズルコア3の相互に反対側における各フィーダ5に接続される。結果として得られるメルトチャネル構成は、ノズルコア3の周囲に均一に配置された4つのマニホールド6を含み、各マニホールド6は、屋根領域17の先端に向けてランナーブランチ6A,6Bを有する。この場合におけるスロットルゾーンを通じたノズルランナー4の充填は、対応する断面狭窄部によって容易化されるが、明白化するため、更なる詳細は省くこととする。図9および図11に示すように、ノズルコア3は、中央加熱カートリッジ11によって加熱される。
【0038】
図12は、本発明の一実施形態による射出成形ノズルNの断面図であり、射出成形ノズルNは、射出成形ツールに配置されており、2つの成形キャビティの間を延在している。この実施形態の特徴および態様は、適宜に別の実施形態と共に使用され得る。図12に示すように、射出成形ツールが、仕切20によって相互に分離された複数のキャビティ15を備える場合、キャビティ15は、共通の射出成形ノズルNによって、充填または供給されることができ、射出成形ノズルNのスロットゲート2は、図9に従って、仕切20の両側に延在している。図12にも示すように、仕切20は、溝内またはノズルコアの下流端における窪み3Hに突出するように成形される。この実施形態において、スロットゲート2の拡張範囲に亘る溶融プラスチックの供給に関して、仕切20の進路を考慮する。
【0039】
溶融プラスチックを射出成形ツールのキャビティ15内にスロットゲート2を通じて誘導することにより、可能なメルトスループットに関連した溶融プラスチックのせん断応力を比較的低く保つことができ、これは、溶融プラスチックが成形キャビティ15内に射出される際、溶融プラスチックの所望の特性を保護するための重要な要素となり得る。スプルーの切り離しは、スロットゲート2の領域において支配的なプラスチックの強度特性に依拠する。このプラスチックは、離型中のキャビティ15内では固体であるが、スプルー領域においては溶融しており、キャビティ15からノズルランナー4までの転換領域においては、高い温度勾配により、スロットゲート2の領域において薄い層になり、スロットゲート2の開口部によって決定される領域に沿ったスプルーの切り離しのために不可欠なものとなる。この目的のため、ハウジングをスロットゲート2の領域において冷却することが推奨される。図1図2および図6において、この目的のための、スロットゲート2の長手方向軸Aと整列する冷却チャネル21を示す。従って、影響を与えるパラメータの好適な選択によって、スプルーの切り離しに際する何らかの後処理を必要とする可能性を減らしつつ、切り離した表面を各射出成型部品の成形面内に移送することができる。即ち、スプルーは、溶融したままノズルランナー4の領域に移動される。
【0040】
いくつかの用途において、スロットゲート2をノズルコア3によって閉口する可能性がある場合、特に有利な離型条件は、この文脈においては図6に記載の条件である。
【0041】
本明細書に記載した方法および装置の更なる実施態様を例示すれば、以下のとおりである。
【0042】
A1;射出成形ツールを使用してプラスチックから射出成形部品を製造するための方法において、射出成形部品が離型される前に、溶融プラスチックを、少なくとも1本の帯状の押出成形物の形態でスロットルゲート2を通じて射出成形ツールのキャビティ15内に射出する。その際、溶融プラスチックは、キャビティ15において凝固される間、熱を有する状態でスプルー領域に供給し、スプルーは、射出成形部品を離型中、凝固した射出成形部品とスプルー領域における溶融プラスチックとの間の温度勾配によって、ノズルスロット2に沿って切り離す。
【0043】
射出成形ツールの場合、射出成形ノズルにおける溶融プラスチックのクールダウンを確実に防止するため、射出成形ノズルの円形ノズル開口部を備えるハウジングに、ハウジングとノズルコアの円錐状先端部との間において、溶融プラスチック用ノズルランナーが流れ方向に向けて先細りの環状テーパ形状となり、かつ、ハウジングの円形ノズル開口部において終端するように円錐状先端部において終端する、加熱可能な熱伝導ノズルコアをノズル開口部と同軸に配置することは既知である(特許文献2:ドイツ特許出願公開第2607644号明細書)。この種の射出成形ノズルにおける欠点は、流速の増加により、ノズルランナー内の溶融プラスチックのせん断応力が増加し、ひいては溶融プラスチックの温度の付加的な上昇による材料損のリスクが生じるため、達成され得るメルトスループットが制限されることである。他方で、ノズル開口部のサイズを大きくすると、ノズル開口部の中央領域におけるより高い溶融温度が予測され、成形ツールのキャビティ内に誘導されるメルトフローの不均一な凝固が生じる。これは、射出成形部品の品質における損失をもたらすだけでなく、スプルーの切り離しも困難にする。上記の理由から、より大量の射出成形部品を製造するために複数の射出成形ノズルを使用するが、これは、比較的複雑な制御システムを必要とし、特定の環境下においては、メルトフローと合体するキャビティ内の接合領域におけるウェルドラインの発生のリスクを増加させ、一方では、ウェルドラインの領域においては材料損が、他方では、射出成型部品の視覚的外観の欠陥が予測される。
【0044】
溶融プラスチックを、射出成形部品の形状に適用したフローにおける成形ツールのキャビティ内に射出可能とするため、特に、プレート型の射出成形部品用に、溶融プラスチックは、帯状の押出成形物のキャビティ内にフィルムゲートによって誘導される。この場合、フィルムゲートは、キャビティ内にスロットゲートの開口部の長さに亘って広がるノズルランナーを備える。ノズル開口部を通じた溶融スループットは、この種のフィルムゲートによって高めることができるが、フィルムゲートは、キャビティ内の溶融プラスチックと共に凝固するため、射出成形部品と共に離型されるフィルムゲートを射出成形部品から分離する必要がある。
【0045】
従って、当面の問題は射出成形部品の品質における許容し難い欠陥を恐れる必要なしに、メルトスループットの高さに関わらず、容認可能なスプルーの切り離しが確保される方法により、キャビティ内に溶融プラスチックを射出する方法を開発することである。
【0046】
前述したタイプの方法に基づいて、キャビティ内での凝固中、熱を有する溶融プラスチックが成形領域に供給され、かつ、射出成形部品の離型中、スプルーが少なくとも部分的に、凝固した射出成形部品とスプルー領域の溶融プラスチックとの間の温度勾配によって、スロットゲートに沿って切り離すという上記の問題が解決される。
【0047】
B1;溶融プラスチックを、ノズル開口部において終端し、ハウジング1およびノズルコア3の間の流れ方向に見て先細りとなるノズルランナー4を有し、かつ、溶融プラスチック用フィーダ5とノズルランナー4との間にマニホールド6を有する加熱可能なノズルコア3を受容するハウジング1を有する射出成形ツールのキャビティ15内に導入するための射出成形ノズルにおいて、ノズル開口部は、ノズルスロット2を形成し、ノズルスロット内には、ノズルスロット2に適応されたノズルランナー4が少なくとも1つのマニホールド6に接続しており、このマニホールドは、スロットルゾーン8によってノズルランナー4と流体連通している。
【0048】
B2;B1に記載の射出成形ノズルにおいて、スロットルゾーン8は、マニホールド6に対応するノズルスロット2の長手方向部分の長さに亘って延在するフロー断面の狭窄部を形成する。
【0049】
B3;B1またはB2に記載の射出成形ノズルにおいて、マニホールド6のフロー断面は、流れ方向に見て先細りのテーパ形状である。
【0050】
B4;B1〜B3のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、スロットルゾーン8の流動抵抗は、マニホールド6に対応するノズルスロット2の長手方向部分の長さに亘って変化する。
【0051】
B5;B1〜B4のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルコア3は、ハウジング1に対して開口する凹状のマニホールド6を形成する。
【0052】
B6;B1〜B5のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルランナー4は、ノズルコア3を全面的に包囲する。
【0053】
B7;B1〜B6のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルランナー4は、少なくとも2つのマニホールド6に接続される。
【0054】
B8;B7に記載の射出成形ノズルにおいて、マニホールド6は、その流端において相互に接続される。
【0055】
B9;B1〜B8のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルコア3は、ノズルランナー4の領域にスロットルゾーン8に接続する流入部分9と、流入部分9と比較して、ノズル流出方向により小さい傾斜角度を有する下流流出部分10とを形成する。
【0056】
B10;B1〜B9のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ハウジング1は、加熱されたノズルコア3に対して断熱性を備える。
【0057】
B11;B1〜B10のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルスロット2を閉口するためのノズルコア3は、ハウジング1に移動可能に取り付けられる。
【0058】
B12;B1〜B11のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ハウジング1は、ノズルスロット2の領域において冷却される。
【0059】
B13;B1〜B12のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ハウジング1は、射出成形ツールのキャビティ15の範囲を定める成形用型板16を形成する。
【0060】
B14;B1〜B13のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルスロット2およびノズルスロット2に繋がるノズルランナー4は、好ましくは星形に配置された、いくつかのブランチ18を備える。
【0061】
B15;B1〜B14のいずれかに記載の射出成形ノズルにおいて、ノズルコア3は、ノズルランナー4の領域におけるノズルスロット2およびノズルスロット2の各ブランチ18の長手方向軸に対称的な2つの屋根領域17を含む平坦な円筒形の基礎形状を有する。
【0062】
B16;B1〜B15のいずれかに記載の射出成形ノズルを有する射出成形ツールにおいて、2つまたは複数のキャビティ15の配置における共通の射出成形ノズルは、キャビティ15間の仕切20の両側上を延在するノズルスロット2によって、少なくとも2つのキャビティ15に配置される。
【0063】
以上、多様な実施形態について記述したが、これらは本発明の単なる例示であり、本発明を限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態や詳細において多様な変更を加え得ることは、言うまでもない。即ち、本発明の技術的範囲は、任意の上述した実施例によって制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるべきである。本明細書に記載した各実施形態の各特徴および本明細書に引用した各引用文献の各特徴は、任意の別の実施形態の特徴と組み合わせて使用できるものである。本明細書において引用した全ての特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12