(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材が、外面を被覆する少なくとも一つのバリア層を有する金属ワイヤを含み、前記バリア層が、銅、真鍮、ニッケル、またはそれらの組み合わせの群から選択される金属を含む、請求項1に記載の砥粒品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、砥粒品、加工対象物を鋸挽きし切削するのに適した砥粒品を特に目的とするものである。特定の実例では、本明細書における砥粒品はワイヤ鋸を形成することができ、エレクトロニクス業界、光学業界、および他の関連業界において、傷つきやすい結晶性材料の加工に使用することができる。
【0012】
図1は、一実施形態にしたがって砥粒品を形成する工程が得られるフローチャートを含む。工程は、基材を提供することによりステップ101において開始することができる。基材は、そこに砥粒材料を固着させるための表面を提供することにより、砥粒品の切削能力を高めることができる。
【0013】
一実施形態によれば、基材を提供する工程は、長尺体を有する基材を提供する工程を含むことができる。特定の実例では、この長尺体は、長さ:幅のアスペクト比が10:1以上であってもよい。他の実施形態では、この長尺体は、約100:1以上、例えば1000:1以上、またさらには約10,000:1以上のアスペクト比を有することができる。基材の長さは、基材の長手方向の軸に沿って測定された最長寸法とすることができる。幅は、長手方向の軸に対して垂直に測定された基材の2番目に長い(場合によっては最小の)寸法とすることができる。
【0014】
さらに、基材は、約50メートル以上の長さを有する長尺体の形態をとることができる。実際、他の基材はさらに長くとることができ、約100メートル以上、例えば、約500メートル以上、約1,000メートル以上、またさらには約10,000メートル以上の平均長さを有することができる。
【0015】
さらに基材は、その幅が約1cm以下であってもよい。実際、長尺体は、0.5cm以下、例えば、約1mm以下、約0.8mm以下、またはさらには約0.5mm以下の平均幅を有することができる。さらに基材は、約0.01mm以上、例えば、約0.03mm以上の平均幅を有していてもよい。基材が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にある平均幅を有していてもよいことは、理解されよう。
【0016】
特定の実施形態においては、長尺体は、一体に編みこまれた複数のフィラメントを有するワイヤとすることができる。すなわち基材は、互いに絡み合った、一体に編みこまれた、または他の物体、例えば中心のコアワイヤに固定された、多数のさらに小さいワイヤから形成することができる。特定の設計では、基材用の好適な構造としてピアノ線を利用してもよい。例えば基材は、約3Gpa以上の破壊強度を有する高強度鋼線とすることができる。基材破壊強度は、キャプスタン・グリップ(capstan grip)を用いて金属性材料の張力試験用のASTM E−8により測定することができる。ワイヤは、特定の材料の層、例えば、真鍮を含む金属の層で被覆されていてもよい。さらに他の実例では、ワイヤは、その外面上に被膜が本質的になくてもよい。
【0017】
長尺体は特定の形状を有することができる。例えば長尺体は、概して円筒形状であって、円形断面の輪郭を有するようにすることができる。長尺体の長手方向の軸を横切って延びる平面内で見て円形断面形状を有する長尺体を使用する場合である。
【0018】
長尺体は、例えば、無機材料、有機材料(例えば、ポリマーおよび天然に存在する有機材料)、ならびにそれらの組み合わせを含むさまざまな材料から作製することができる。好適な無機材料には、セラミックス、ガラス、金属、合金、サーメット、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実例では、長尺体は、金属または合金材料から作製することができる。例えば長尺体は、遷移金属または遷移金属合金材料から作製してもよく、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、モリブデン、バナジウム、タンタル、タングステン、およびこれらの組み合わせである元素を含んでいてもよい。
【0019】
好適な有機材料には、ポリマーを挙げることができ、ポリマーには、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特に有用なポリマーには、ポリイミド、ポリアミド、樹脂、ポリポリウレタン、ポリエステルなどを挙げることができる。さらに、長尺体が天然有機材料、例えばゴムを含むことができることは理解されよう。
【0020】
さらに、本明細書における砥粒品は、特定の疲労抵抗を有する基材を形成することができる。例えば基材は、Rotary Beam Fatigue TestまたはHunter Fatigue Testで測定した300,000サイクル以上の平均疲労寿命を有することができる。この試験は、MPIF Std. 56とすることができる。回転梁疲労試験では、指定された応力(例えば700MPa)、すなわち、一定応力において、または、10
6までの複数の反復サイクルを用いたサイクル疲労試験でワイヤが破断しなかった応力(例えば、応力は疲労強度を表す)において、ワイヤ破断までのサイクル数を測定する。他の実施形態では、基材は、さらに高い疲労寿命、例えば、約400,000サイクル以上、約450,000サイクル以上、約500,000サイクル以上、またはさらには約540,000サイクル以上を示すことがある。さらに基材は、約2,000,000サイクル以下の疲労寿命を有していてもよい。
【0021】
ステップ101において基材を提供した後、工程は、ステップ102を続行することができ、このステップは、砥粒粒子と、粘着材料を含む微粒子とを含む混合物に基材を通して移送することを含む。砥粒品の加工と形成を容易にするために、基材を巻き取り機構に接続してもよい。例えばワイヤは、送りスプール(spool)と受容スプールの間で移送することができる。送りスプールと受容スプール間でワイヤを移送することにより加工が容易になり、例えば、ワイヤを送りスプールから受容スプールに移送している間に、所望の形成工程に通して移送するようにして、最終的に形成される砥粒品の構成成分層を形成するようにしてもよい。
【0022】
基材を提供する工程についてさらに言うと、加工を容易にするために、送りスプールから受容スプールに基材を特定の速度で巻き取ることができることは理解されよう。例えば基材は、約5m/分以上の速度で送りスプールから受容スプールに巻き取ることができる。他の実施形態では、巻き取りの速度は、さらに大きくすることができ、例えば、約8m/分以上、約10m/分以上、約12m/分以上、またはさらには約14m/分以上とすることができる。特定の実例では、巻き取り速度は、約500m/分以下、例えば200m/分以下であってもよい。巻き取りの速度は、上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内とすることができる。巻き取り速度が、最終的に形成される砥粒品を形成できる速度を表し得ることは、理解されよう。
【0023】
特定の実例では基材は、基材の外面を被覆する1層または複数層の随意のバリア層を含むことができる。一態様によればバリア層は、基材の外(すなわち、外周)面と直接接触するように基材の外面を被覆することができ、より詳細には、基材の外面に直接接合されるようにすることができる。一実施形態ではバリア層は、バリア層と基材との間の拡散接合領域を画定するように基材の外面に接合することができ、この領域は、基材の少なくとも一つの金属元素とバリア層の一つの元素との相互拡散によって特徴づけられる。特定の一実施形態ではバリア層は、基材と、他の被覆層、例えば、粘着層、接合層、被膜層、1種もしくは複数種の砥粒粒子の層、またはそれらの組み合わせを含む層との間に配置することができる。
【0024】
バリア層を有する基材を提供する工程は、そのような構造の調達、またはそのような基材およびバリア層構造の作製を含むことができる。バリア層は、例えば、堆積工程を含むさまざまな技術によって形成することができる。いくつかの適切な堆積工程には、印刷、噴霧、浸漬塗膜、ダイコーティング(die coating)、メッキ(例えば、電解または無電解)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態によれば、バリア層を形成する工程は、低温工程を含むことができる。例えば、バリア層を形成する工程は、約400℃以下、例えば約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、またはさらには約250℃以下の温度で行うことができる。さらに、バリア層を形成した後、例えば、洗浄、乾燥、硬化、固化、熱処理、およびそれらの組み合わせを含むさらなる工程を行えることは理解されよう。バリア層は、引き続くメッキ工程において、さまざまな化学種(例えば水素)によるコア材料の化学含浸に対するバリアとして機能することができる。さらにバリア層は、機械的耐久性を向上させやすくすることもある。
【0025】
一実施形態ではバリア層は、単一層の材料とすることができる。バリア層は、基材の全外周面を被覆する、連続的な被膜の形態をとることができる。バリア材料は、無機材料、例えば金属または合金材料を含むことができる。バリア層に使用するのに適切ないくつかの材料には遷移金属元素を挙げることができ、遷移金属元素には、スズ、銀、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。別の実施形態においてはバリア層は、真鍮を含んでいてもよい。一実施形態ではバリア層は、本質的にスズからなる単一層の材料とすることができる。特定の一実例ではバリア層は、純度が99.99%以上であるスズの連続的な層を含有することができる。特に、バリア層は、実質的に純粋な非合金材料とすることができる。すなわち、バリア層は、単一の金属材料から作製された金属材料(例えば、スズ)とすることができる。
【0026】
他の実施形態では、バリア層は合金とすることができる。例えばバリア層は、スズ合金、例えば、スズと別の金属、例えば銅、銀などの遷移金属種との組み合わせを含む組成物を含むことができる。いくつかの適切なスズ系合金には、銀を含むスズ系合金、詳細にはSn96.5/Ag3.5、Sn96/Ag4、およびSn95/Ag5合金を挙げることができる。他の適切なスズ系合金は銅を含むことができ、詳細にはSn99.3/Cu0.7およびSn97/Cu3合金を挙げることができる。さらに、特定のスズ系合金には、ある百分率の銅および銀を含むことができ、例えばSn99/Cu0.7/Ag0.3、Sn97/Cu2.75/Ag0.25、およびSn95.5/Ag4/Cu0.5合金を挙げることができる。さらに別の実施形態においてバリア層は、銅およびニッケルの組み合わせを含む合金を含むことができ、より具体的には、本質的に銅およびニッケルからなる合金を含んでいてもよい。
【0027】
別の態様ではバリア層は、例えば2層以上の離散的な層を含む、複数の離散的な層から形成することができる。例えばバリア層は、内層と、内層を被覆する外層とを含むことができる。一実施形態によれば、内層および外層を互いに直接接触させて、外層が内層を直接被覆して界面で結合するようにできる。したがって内層および外層は、基材の長さに沿って延びる界面で結合することができる。
【0028】
一実施形態では、内層は、上記のバリア層のいかなる特徴も含むことができる。例えば内層は、スズ、銅、ニッケル、またはそれらの組み合わせを含む材料の連続的な層を含むことができる。また、内層と外層は、互いに異なる材料から形成することができる。すなわち、例えばそれらの層のうち一層に存在する1種以上の元素が、他の層内には存在しないようすることができる。特定の一実施形態では、外層は、内層内に存在しない元素を含むことができる。
【0029】
外層は、上記バリア層のいかなる特徴も含むことができる。例えば外層は、金属または合金などの無機材料を含むように形成することができる。より詳細には外層は、遷移金属元素を含むことができる。例えば、特定の一実施形態では外層は、ニッケルを含むことができる。別の実施形態では外層は、本質的にニッケルからなるように形成することができる。
【0030】
特定の実例では外層は、内層と同一の方法、例えば堆積工程により形成することができる。しかしながら外層を、内層と同一の方法で形成する必要はない。一実施形態によれば外層は、メッキ、噴霧、印刷、浸漬、ダイコーティング、堆積、およびそれらの組み合わせを含む堆積工程を通じて形成することができる。特定の実例ではバリア層の外層は、比較的低い温度、例えば約400℃以下、約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、またはさらには250℃以下の温度で形成することができる。特定の一工程によれば外層は、非メッキ処理、例えばダイコーティングによって形成することができる。さらに、外層を形成するのに使用される工程には、他の方法、例えば、加熱、硬化、乾燥、およびそれらの組み合わせを挙げてもよい。そのような方法で外層を形成することにより、不要な化学種がコアおよび/または内層へ含浸するのを制限しやすくなる場合のあることは理解されよう。
【0031】
一実施形態によれば、バリア層の内層は、化学バリア層として作用するのに適切な特定の平均厚さを有するように形成することができる。例えばバリア層は、約0.05ミクロン以上、例えば、約0.1ミクロン以上、約0.2ミクロン以上、約0.3ミクロン以上、またはさらには約0.5ミクロン以上の平均厚さを有することができる。さらに内層の平均厚さは、約8ミクロン以下、例えば、約7ミクロン以下、約6ミクロン以下、約5ミクロン以下、またはさらには約4ミクロン以下であってもよい。内層が上記の最小値と最大厚さのいずれかの間の範囲内にある平均厚さを有してもよいことは理解されよう。
【0032】
バリア層の外層は、特定の厚さを有するように形成することができる。例えば一実施形態では、外層の平均厚さは、約0.05ミクロン以上、例えば、約0.1ミクロン以上、約0.2ミクロン以上、約0.3ミクロン以上、またはさらには約0.5ミクロン以上とすることができる。さらに、特定の実施形態においては外層は、約12ミクロン以下、約10ミクロン以下、約8ミクロン以下、約7ミクロン以下、約6ミクロン以下、約5ミクロン以下、約4ミクロン以下、またはさらには約3ミクロン以下の平均厚さを有することができる。バリア層の外層が上記の最小厚さおよび最大厚さのいずれかの範囲内にある平均厚さを有してもよいことは理解されよう。
【0033】
特に、少なくとも一つの実施形態においては、内層は、外層の平均厚さとは異なる平均厚さを有するように形成することができる。このような設計により、さらなる加工に好適な接合構造も提供しつつ、特定の化学種に対する耐含侵性を向上させやすくなる場合がある。例えば、他の実施形態では、内層は、外層の平均厚さより大きい平均厚さを有するように形成することができる。しかし、代替の実施形態では内層は、外層の平均厚さよりも小さくなるような平均厚さを有するように形成してもよい。
【0034】
特定の一実施形態によればバリア層は、その内層の平均厚さ(t
i)と外層の平均厚さ(t
0)との厚さ比[t
i:t
0]が、約3:1と約1:3との範囲内とすることができる。他の実施形態では、厚さ比は、約2.5:1と約1:2.5との間の範囲内、例えば、約2:1と約1:2の範囲内、約1.8:1と約1:1.8の間の範囲内、約1.5:1と約1:1.5との間の範囲内、またはさらには約1.3:1と約1:1.3との間の範囲内とすることができる。
【0035】
特に、バリア層(少なくとも内層および外層を含む)は、約10ミクロン以下の平均厚さを有するように形成することができる。他の実施形態では、バリア層の平均厚さはそれより小さくてもよく、例えば約9ミクロン以下、約8ミクロン以下、約7ミクロン以下、約6ミクロン以下、約5ミクロン以下、またはさらには3ミクロンであってもよい。さらにバリア層の平均厚さは、約0.05ミクロン以上、例えば、0.1ミクロン以上、0.2ミクロン以上、0.3ミクロン以上、または0.5ミクロン以上とすることができる。バリア層が上記の最小厚さおよび最大厚さのいずれかの範囲内にある平均厚さを有してもよいことは理解されよう。
【0036】
さらに、別の実施形態では基材は必ずしも、外面上にバリア層またはいかなる被膜も含んでいなくてもよい。例えば基材は、バリア層を本質的に含んでいなくともよく、基材は本質的にバリア層を含まない。少なくとも一実施形態では基材は、混合物に基材を通して移送する工程に先立って、被膜形成されていないワイヤとすることができ、混合物については、本明細書においてはステップ102に記載する。より詳細には基材は、ステップ102に記載の混合物にワイヤを通して移送する工程に先立って、外面上にいかなる被膜層も本質的に含んでいない金属ワイヤとすることができる。
【0037】
基材を提供した後、工程は、ステップ102を続行することができ、このステップは、砥粒粒子と、粘着材料を含む微粒子材料とを含む混合物に基材を通して移送することを含む。
図2Aは、一実施形態に係る砥粒品を形成する工程の例示を含む。
図2Bは、一実施形態に係る砥粒品を形成する工程の一部分の例示を含む。例示のとおり、基材201は方向202の向きに、混合物204を含む容器203内で移送することができる。基材201は、容器内で一つまたは複数のローラ205上で移送することにより、基材201の方向の制御および適切な処理を行いやすくしてもよい。
【0038】
特定の一実施形態によれば、砥粒品の一部分を形成する工程は、スラリー浸漬塗膜工程を含むことができ、基材201は、砥粒粒子212と、本明細書における実施形態の特徴を有する砥粒品を形成しやすくすることができる粘着材料を含む微粒子213とを含む混合物204に通して移送される。特に、混合物204は、砥粒粒子212と微粒子213とを含むことができるので、最終的に形成される砥粒品に、離散的な粘着領域と離散的な形成物とが形成されやすくなる場合がある。さらに、本明細書に記載されるとおり、他の従来方法とは異なり、混合物204は、微粒子213と砥粒粒子212とを含むことができ、したがって、砥粒粒子212と微粒子213の両方を基材201に同時に付着させやすくなる。
【0039】
本明細書において砥粒粒子について言う場合、それは、例えば第1の種類の砥粒粒子または第2の種類の砥粒粒子を含む、本明細書に記載の複数種類の砥粒粒子のいずれかを指す。砥粒粒子には、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、酸窒化物、酸ホウ化物、ダイヤモンド、およびそれらの組み合わせなどの材料を挙げることができる。特定の実施形態においては、砥粒粒子に超砥粒材料を組み込むことができる。例えば一つの適切な超砥粒材料にはダイヤモンドが含まれる。特定の実例では、砥粒粒子は本質的にダイヤモンドからなっていてもよい。本明細書で述べるように、混合物は、例えば第1の種類の砥粒粒子および第2の種類の砥粒粒子を含む、複数種類の砥粒粒子を含むことができる。第1および第2の種類の砥粒粒子は、互いに異なる少なくとも一つの砥粒特性を有していてもよく、その砥粒特性は、組成、平均粒子サイズ、硬度、靭性、脆弱性、構造、形状、またはそれらの組み合せを含むことができる。さらに、混合物が2種類以上の砥粒粒子を含む特定の実例では、異なる種類の砥粒粒子の含有量は、混合物中で異なっていてもよく、したがって、最終的に形成される砥粒品中で異なっていてもよい。
【0040】
一実施形態では砥粒粒子は、約10GPa以上のVickers硬度を有する材料を含むことができる。他の実例では、砥粒粒子は、約25GPa以上、例えば、約30GPa以上、約40GPa以上、約50GPa以上、またはさらには約75GPa以上のVickers硬度を有することができる。さらに、少なくとも一つの非限定的な実施形態では、砥粒粒子は、約200GPa以下、例えば、約150GPa以下、またはさらには約100GPa以下のVickers硬度を有することができる。砥粒粒子が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあるVickers硬度を有してもよいことは理解されよう。
【0041】
砥粒粒子は、特定の形状、例えば、細長い、等軸の、楕円形の、箱型の、長方形の、三角形の、不規則な形状を含む群から得られる形状を有することができる。また、特定の実例では、砥粒粒子は、特定の結晶構造、例えば、多結晶、単結晶、多面体、立方体、六面体、四面体、八面体、複雑な炭素構造(例えば、バッキーボール)、及びそれらの組み合わせを有することができるが、これらには限定されない。
【0042】
さらに、砥粒粒子は、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくすることが可能な特定の粒度分布を有していてもよい。例えば砥粒粒子は、混合物中に、そして砥粒品上に、正規またはガウス分布で存在することができる。さらに別の実例では、砥粒粒子は、非ガウス分布、例えば多モード分布や広いグリットサイズ(grit size)分布で混合物に存在することができる。広いグリットサイズ分布の場合、約1ミクロンから約100ミクロンの間の平均粒子サイズの範囲にわたって、砥粒粒子の少なくとも80%が、約30ミクロン以上の範囲内に含まれる平均粒子サイズを有することができる。一実施形態では、広いグリットサイズ分布は2モード粒子サイズ分布をとることができ、この場合、2モード粒子サイズ分布は、第1のメジアン粒子サイズ(M1)を定める第1のモードと、第1のメジアン粒子サイズとは異なる第2のメジアン粒子サイズ(M2)を定める第2のモードとを含む。特定の実施形態によれば、第1のメジアン粒子サイズおよび第2のメジアン粒子サイズは、式((M1−M2)/M1)×100%に基づいて5%以上異なる。さらに他の実施形態では、第1のメジアン粒子サイズおよび第2のメジアン粒子サイズは、約10%以上異なることができ、例えば約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、またはさらには約90%以上異なることができる。さらに、別の非限定的な実施形態においては、第1のメジアン粒子サイズは、第2のメジアン粒子サイズに対して、約99%以下異なっていてもよく、例えば約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、またはさらには約10%以下異なっていてもよい。第1のメジアン粒子サイズと第2のメジアン粒子サイズとの間の差が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0043】
特定の実施形態では、砥粒粒子は凝集粒子を含むことができる。より詳細には、砥粒粒子は、本質的に凝集粒子からなっていてもよい。特定の実例では、混合物は、凝集砥粒粒子と非凝集砥粒粒子の組み合わせを含んでいてもよい。一実施形態によれば、凝集粒子は、接合剤材料によって互いに接合した砥粒粒子を含むことができる。接合剤材料のいくつかの適切な例には、無機材料、有機材料、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。より詳細には、接合剤材料は、セラミック、金属、ガラス、ポリマー、樹脂、およびそれらの組み合わせであってもよい。少なくとも一つの実施形態では、接合剤材料は、金属または合金であってもよく、これは1種または複数種の遷移金属元素を含んでいてもよい。一実施形態によれば、接合剤材料は、砥粒品の構成成分層、例えば、バリア層、粘着材料、接合層、またはそれらの組み合わせから得られる少なくとも1種の金属元素を含むことができる。より詳細な実施形態では、接合剤は、少なくとも一つの活性接合剤を含む金属材料とすることができる。活性接合剤は、窒化物、炭化物、およびそれらの組み合わせを含む元素または組成物であってもよい。特定の例示的な一つの活性接合剤は、チタン含有組成物、クロム含有組成物、ニッケル含有組成物、銅含有組成物、およびそれらの組み合わせを含むことができる。別の実施形態では、接合剤材料は、砥粒品に接触する加工対象物と化学反応するように構成された化学薬品を含むことができ、これにより、砥粒品が機械的除去工程も同時に実行しつつ加工対象物の表面上の化学的除去工程を実行し易くする場合がある。いくつかの適切な化学薬品には、酸化物、炭化物、窒化物、酸化剤、pH調整剤、界面活性剤、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0044】
本明細書における実施形態の凝集粒子は、特定含有量の砥粒粒子、特定含有量の接合剤材料、および特定含有量の細孔を含むことができる。例えば、凝集粒子は、接合剤材料の含有量より多量の砥粒粒子を含むことができる。または凝集粒子は、砥粒粒子の含有量よりも多量の接合剤材料を含むことができる。例えば、一実施形態では凝集粒子は、凝集粒子の全体積に対して約5体積%以上の砥粒粒子を含むことができる。他の実例では、凝集粒子の全体積に対する砥粒粒子の含有量はさらに多くてもよく、例えば約10体積%以上、例えば、約20体積%以上、約30体積%以上、約40体積%以上、約50体積%以上、約60体積%以上、約70体積%以上、約80体積%以上、またはさらには約90体積%以上であってもよい。さらに、別の非限定的な実施形態では、凝集粒子の全体積に対して、凝集粒子中の砥粒粒子の含有量は、約95体積%以下、例えば、約90体積%以下、約80体積%以下、約70体積%以下、約60体積%以下、約50体積%以下、約40体積%以下、約30体積%以下、約20体積%以下、またはさらには約10体積%以下とすることができる。凝集粒子内の砥粒粒子の含有量が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0045】
別の態様によれば、凝集粒子は、凝集粒子の全体積に対して約5体積%以上の接合剤材料を含むことができる。他の実例では、凝集粒子の全体積に対する接合剤材料の含有量はさらに多くともよく、例えば約10体積%以上、約20体積%以上、約30体積%以上、約40体積%以上、約50体積%以上、約60体積%以上、約70体積%以上、約80体積%以上、またさらには約90体積%以上であってもよい。さらに、別の非限定的な実施形態では、凝集粒子の全体積に対して、凝集粒子中の接合剤材料の含有量は、約95体積%以下、例えば約90体積%以下、約80体積%以下、約70体積%以下、約60体積%以下、約50体積%以下、約40体積%以下、約30体積%以下、約20体積%以下、またさらには約10体積%以下であってもよい。凝集粒子内の接合剤材料の含有量が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0046】
さらに別の態様では、凝集粒子は特定含有量の細孔を含むことができる。例えば、凝集粒子は、凝集粒子の全体積に対して、約1体積%以上の細孔を含むことができる。他の実例では、凝集粒子の全体積に対して、細孔の含有量はさらに多くてもよく、例えば約5体積%以上、約10体積%以上、約20体積%以上、約30体積%以上、約40体積%以上、約50体積%以上、約60体積%以上、約70体積%以上、またはさらには約80体積%以上であってもよい。さらに、他の非限定的実施形態では、凝集粒子の全体積に対して、細孔の含有量は、約90体積%以下、約80体積%以下、約70体積%以下、約60体積%以下、約50体積%以下、約40体積%以下、約30体積%以下、約20体積%以下、またはさらには約10体積%以下であってもよい。凝集粒子内の細孔の含有量が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0047】
凝集粒子内の細孔は、さまざまな種類であってもよい。例えば細孔は、閉じた細孔であってもよく、これは概して、凝集粒子の体積内で互いに離間した離散的な孔として定義される。少なくとも一つの実施形態では、凝集粒子内の細孔の大部分は、閉じた細孔であってもよい。あるいは細孔は、開いた細孔であってもよく、これは、凝集粒子の体積を通じて延びる相互接続した通路のネットワークとして定義される。特定の実例では、細孔の大部分が開いた細孔であってもよい。
【0048】
凝集粒子は、供給元から調達することができる。あるいは、砥粒品を形成するのに先立って、凝集粒子を形成してもよい。凝集粒子を形成するのに好適な工程には、選別、混合、乾燥、固化、無電解メッキ、電解メッキ、焼結、ロウ接、噴霧、印刷、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
特定の一実施形態によれば、凝集粒子は、砥粒品の形成とともにその場形成することができる。例えば、凝集粒子は、砥粒品の一つまたは複数の構成成分層を形成しつつ形成してもよい。凝集粒子を、砥粒品とともにその場形成するのに好適な工程には、堆積工程を挙げることができる。特定の堆積工程には、メッキ、電気メッキ、浸漬、噴霧、印刷、被膜形成、重力被覆、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。少なくとも一つの特定の実施形態では、凝集粒子を形成する工程は、メッキ工程を通じて接合層と凝集粒子とを同時に形成することを含む。
【0050】
少なくとも一つの実施形態によれば、砥粒粒子は粒子被膜層を有することができる。特に、粒子被膜層は、砥粒粒子の外面を被覆することができ、より詳細には、砥粒粒子の外面と直接接触していてもよい。粒子被膜層として使用するのに好適な材料には、金属または合金を挙げることができる。特定の一実施形態によれば、粒子被膜層は、遷移金属元素、例えばチタン、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、マンガン、タンタル、タングステン、およびそれらの組み合わせを含むことができる。一つの特定の粒子被膜層は、ニッケル、例えばニッケル合金、そしてさらには、第1の粒子被膜層内に存在する他の種と比較して、重量パーセントで測定してニッケルが主要な含有量を占める合金を含むことができる。より詳細な実例では粒子被膜層は、単一の金属種を含むことができる。例えば第1の粒子被膜層は、本質的にニッケルからなっていてもよい。粒子被膜層はメッキ層とすることができ、電解メッキ層および非電解メッキ層としてもよい。
【0051】
粒子被膜層は、砥粒粒子の外面の少なくとも一部分を被覆するように形成することができる。例えば粒子被膜層は、砥粒粒子の外表面積の約50%以上を被覆していてもよい。他の実施形態では、粒子被膜層の被覆率はさらに大きくすることができ、例えば、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、またはさらには本質的に砥粒粒子の全外面とすることができる。
【0052】
粒子被膜層は、加工を容易にするために、第1の種類の砥粒粒子の含有量に対して特定含有量を有するように形成されてもよい。例えば粒子被膜層は、砥粒粒子それぞれの全重量の約5%以上とすることができる。他の実例では、砥粒粒子それぞれの全重量に対する粒子被膜層の相対含有量はもっと多くすることができ、例えば約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、またはさらには約80%以上とすることができる。さらに、別の非限定的な実施形態では、砥粒粒子の全重量に対する粒子被膜層の相対含有量は約99%以下、例えば、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、またはさらには約10%以下であってもよい。砥粒粒子の全重量に対する粒子被膜層の相対含有量が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0053】
一実施形態によれば、粒子被膜層は、加工を容易にするのに適した特定の厚さを有するように形成することができる。例えば粒子被膜層は、約5ミクロン以下、例えば約4ミクロン以下、約3ミクロン以下、またはさらには約2ミクロン以下の平均厚さを有することができる。さらに、非限定的な一実施形態によれば、粒子被膜層は、約0.01ミクロン以上、0.05ミクロン、約0.1ミクロン以上、またはさらには約0.2ミクロン以上の平均厚さを有することができる。粒子被膜層の平均厚さが上記の最小値と最大値のいずれかの範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0054】
本明細書における特定の態様によれば、粒子被膜層は、複数の離散的な膜層から形成することができる。例えば粒子被膜層は、砥粒粒子を被覆する第1の粒子膜層と、第1の粒子膜層を被覆し第1の粒子膜層とは異なる第2の粒子膜層とを含んでいてもよい。第1の粒子膜層は、砥粒粒子の外面に直接接触していてもよく、第2の粒子膜層は、第1の粒子膜層に直接接触していてもよい。第1の粒子膜層および第2の粒子膜層は、少なくとも一つの材料パラメータ、例えば平均厚さ、組成、融点、またはそれらの組み合わせに基づいて、互いに異なるものとすることができる。
【0055】
少なくとも一実施形態によれば、砥粒粒子は、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくする特定のサイズを有していてもよい。例えば、砥粒粒子212は、500ミクロン以下、例えば、300ミクロン以下、200ミクロン以下、150ミクロン以下、100ミクロン以下、80ミクロン以下、70ミクロン以下、60ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、またはさらには20ミクロン以下の平均粒子サイズ(PSa)を有することができる。さらに、非限定的な実施形態では、砥粒粒子212は、約0.1ミクロン以上、例えば約0.5ミクロン以上、約1ミクロン以上、約2ミクロン以上、約5ミクロン以上、またはさらには約8ミクロン以上の平均粒子サイズ(PSa)を有していてもよい。平均粒子サイズが、例えば1ミクロン以上かつ100ミクロン以下、または2ミクロン以上かつ80ミクロン以下を含め、上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0056】
混合物204は、特定含有量の砥粒粒子212を含むことができ、これにより、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくなることもある。例えば混合物204は、混合物の全重量に対して5重量%以上の砥粒粒子を含んでいてもよい。さらに、他の実例では、混合物204中の砥粒粒子212の含有量はさらに多くすることができ、混合物の全重量に対して、例えば、8重量%以上、または10重量%以上、または12重量%以上、または14重量%以上、または16重量%以上、または18重量%以上、または20重量%以上、または22重量%以上、または24重量%以上、または26重量%以上、または28重量%以上、または30重量%以上、または32重量%以上、または34重量%以上、または36重量%以上、または38重量%以上、または40重量%以上、または42重量%以上、または44重量%以上、または46重量%以上、または48重量%以上、または50重量%以上とすることができる。さらに、少なくとも一つの非限定的な実施形態では、混合物204中の砥粒粒子212の含有量は、混合物の全重量の重量に対して、80重量%以下、例えば、75重量%以下、または70重量%以下、または65重量%以下、または60重量%以下、または55重量%以下、または50重量%以下、または45重量%以下、または40重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%とすることができる。混合物204が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかを含む範囲内にある含有量の砥粒粒子212を含むことができるのは理解されよう。さらに、混合物204中の砥粒粒子212の含有量を、基材のサイズ(例えば、幅または直径)、砥粒粒子の平均粒子サイズ、および最終的に形成される砥粒品中の基材上に存在する砥粒粒子の所望の濃度に応じて制御し修正することができる。
【0057】
本明細書に記載されているように、混合物204は、微粒子213をさらに含んでいてもよく、この微粒子は粘着材料を含むことができる。微粒子213は、粉末材料、例えば、本明細書の実施形態に記載されるような、離散的な粘着領域および離散的な形成物を形成するのに適した原料粉末であってもよい。微粒子213は、本質的に粘着材料からなっていてもよい。さらなる加工、例えば接合層の塗布であってもよいが、この加工を完了させて基材201に砥粒粒子を永久に固定できるようになるまで、微粒子213によって基材201に砥粒粒子212を暫定的に接合させやすくしてもよい。
【0058】
一実施形態によれば、粘着材料は、金属、合金、金属マトリックス複合材、およびそれらの組み合わせから形成することができる。特定の一実施形態では粘着材料は、遷移金属元素を含む材料から形成することができる。例えば粘着材料は、遷移金属元素を含む合金とすることができる。いくつかの適切な遷移金属元素には、鉛、銀、銅、亜鉛、インジウム、スズ、チタン、モリブデン、クロム、鉄、マンガン、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、パラジウム、白金、金、ルテニウム、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の一実施形態によれば、粘着材料は、スズおよび鉛を含む合金から形成することができる。スズおよび鉛のそうした合金は特に、鉛と比較して、含まれるスズが主要な含有量を占めていてもよく、約60/40以上のスズ/鉛組成物が挙げられるがこれに限定されない。
【0059】
別の実施形態では、粘着材料は、主要な含有量がスズである材料から作製することができる。実際、特定の砥粒品では、粘着材料は、本質的にスズからなっていてもよい。単体のまたはハンダ中のスズは、約99%以上、例えば約99.1%以上、約99.2%以上、約99.3%以上、約99.4%以上、約99.5以上、約99.6%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、またはさらには約99.9%以上の純度を有することができる。別の態様では、スズは、約99.99%以上の純度を有することができる。特定の一実例では、粘着材料はマットスズ材料を含むことができる。粘着材料は、メッキされた材料(すなわち粘着層)の全重量に対して約0.5重量%以下の有機物含有量を有していてもよい。
【0060】
一実施形態によれば、粘着材料は、ハンダ材料とすることができる。ハンダ材料が特定の融点、例えば約450℃以下の融点を有する材料を含んでいてもよいことは理解されよう。ハンダ材料は、ロウ接材料とは異なっており、ロウ接材料は概して、ハンダ材料よりもかなり高い融点、例えば450℃以上、より典型的には500℃以上の融点を有する。さらに、ロウ接材料は、異なる組成を有していてもよい。一実施形態によれば、本明細書における実施形態の粘着材料は、約400℃以下、例えば、約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、またはさらには約250℃以下の融点を有する材料から形成してもよい。さらに粘着材料は、約100℃以上、例えば、約125℃以上、約150℃以上、またはさらには約175℃以上の融点を有していてもよい。粘着材料が上記の最小温度と最高温度のいずれかの間の範囲内にある融点を有していてもよいことは理解されよう。
【0061】
一実施形態によれば、粘着材料がバリア層と同一の材料を含むことができ、これによって、バリア層と粘着材の組成物は、少なくとも1種の元素が共通するようにしてもよい。さらに別の実施形態では、バリア層および粘着材料は全く異なる材料とすることができる。
【0062】
少なくとも一つの実施形態によれば、粘着材料を含む微粒子は、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくする特定の粒子サイズを有していてもよい。例えば、微粒子213は、50ミクロン以下、例えば40ミクロン以下、30ミクロン以下、25ミクロン以下、20ミクロン以下、18ミクロン以下、15ミクロン以下、12ミクロン以下、10ミクロン以下、8ミクロン以下、5ミクロン以下、またはさらには3ミクロン以下の平均粒子サイズ(PSp)を有することができる。さらに、非限定的な実施形態では、微粒子213は、約0.01ミクロン以上、例えば、約0.05ミクロン以上、約0.1ミクロン以上、約0.22ミクロン以上、約0.5ミクロン以上、またはさらには約1ミクロン以上の平均粒子サイズ(PSp)を有していてもよい。平均粒子サイズが、例えば、0.01ミクロン以上かつ50ミクロン以下、0.1ミクロン以上かつ10ミクロン以下、またはさらには0.5ミクロン以上かつ7ミクロン以下を含め、上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0063】
混合物204は、粘着材料を含む特定含有量の微粒子213を含むことができ、これにより、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくなる場合がある。例えば混合物204は、混合物の全重量に対して0.1重量%以上の微粒子を含んでいてもよい。さらに、他の実例では、混合物204中の微粒子213の含有量はさらに多くすることができ、混合物の全重量に対して、例えば、0.2重量%以上、または0.3重量%以上、または0.4重量%以上、または0.5重量%以上、または0.8重量%以上、または1重量%以上、または1.2重量%以上、または1.5重量%以上、または1.8重量%以上、または2重量%以上、または2.2重量%以上、または2.5重量%以上、または2.8重量%以上、または3重量%以上、または4重量%以上、または5重量%以上、または6重量%以上、または7重量%以上、または8重量%以上、または9重量%以上、または10重量%以上とすることができる。さらに、少なくとも一つの非限定的な実施形態では、粘着材料を含む微粒子213の、混合物204中の含有量は、混合物の全重量に対して、25重量%以下、または22重量%以下、または20重量%以下、または18重量以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、または9重量%以下、または8重量%以下、または7重量%以下、または6重量%以下5重量%以下、または4重量%以下、または3重量%以下とすることができる。混合物204が、0.2重量%以上かつ20重量%以下、またはさらには0.5重量%以上かつ10重量%以下を含め、上述した最小百分率と最大百分率のいずれかの範囲内にある含有量の、粘着材料を含む微粒子213を含んでいてもよいことは理解されよう。さらに、混合物204中の微粒子の含有量を、基材のサイズ(例えば、幅または直径)と、砥粒粒子の平均粒子サイズと、最終的に形成される砥粒品中の基材上に存在する砥粒粒子の所望の濃度とに応じて制御し修正することができる。
【0064】
別の実施形態によれば混合物204は、含まれる砥粒粒子212および微粒子213の平均粒子サイズが、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくする特定の関係をとるようにすることができる。例えば、混合物204は、平均粒子サイズ(PSa)を有する砥粒粒子212と、平均粒子サイズ(PSp)を有する微粒子とを含むことができ、この場合、混合物204は、比(PSp/Psa)が1以下となるように形成することができる。他の実例では、比(PSp/PSa)はもっと小さくすることができ、例えば0.9以下、または0.8以下、または0.7以下、または0.6以下、または0.5以下、または0.4以下、または0.3以下、または0.2以下、または0.18以下、または0.16以下、または0.15以下、または0.014以下、または0.13以下、または0.12以下、または0.11以下、または0.1以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下、または0.05以下、または0.04以下、または0.03以下、または0.02以下とすることができる。さらに、少なくとも一つの非限定的な実施形態では、混合物204は、比(PSp/PSa)が0.01以上、例えば、0.02以上、または0.03以上、または0.04以上、または0.05以上、または0.06以上、または0.07以上、または0.08以上、または0.09以上、または0.1以上、または0.11以上、または0.12以上、または0.13以上、または0.14以上、または0.15以上、または0.16以上、または0.17以上、または0.18以上、または0.19以上、または0.2以上、または0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上となるように形成することができる。混合物204は、比(PSp/PSa)が、例えば、0.01以上かつ1以下、0.01以上かつ0.5以下、またはさらには約0.025以上かつ約0.25以下を含め、上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。さらには、比(PSp/PSa)を、基材のサイズ(例えば、幅または直径)、および最終的に形成される砥粒品中の基材上に存在する砥粒粒子の所望の濃度に応じて制御し修正してもよい。
【0065】
別の実施形態によれば混合物204は、重量パーセントで測定して、含まれる砥粒粒子212および微粒子213の、混合物中でのそれぞれの含有量が、砥粒品の製造および/または性能を向上させやすくすることができる特定の関係をとるようすることができる。例えば、混合物204は、砥粒粒子の含有量(Cap)および微粒子の含有量(Cp)を有し、混合物204は、比(Cp/Cap)が10以下となるように形成することができる。他の実例では、比(Cp/Cap)は、もっと小さくすることができ、例えば、5以下、または3以下、または2以下、または1以下、または0.9以下、または0.8以下、または0.7以下、または0.6以下、または0.5以下、または0.4以下、または0.3以下、または0.2以下、または0.18以下、または0.16以下、または0.15以下、または0.014以下、または0.13以下、または0.12以下、または0.11以下、または0.1以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下、または0.05以下、または0.04以下、または0.03以下、または0.02以下とすることができる。さらには、少なくとも一つの非制限的実施形態では、混合物204は、比(Cp/Cap)が0.001以上、または0.0025以上、または0.004以上、または0.006以上、または0.008以上、または0.01以上、または0.02以上、または0.03以上、または0.04以上、または0.05以上、または0.06以上、または0.07以上、または0.08以上、または0.09以上、または0.1以上、または0.11以上、または0.12以上、または0.13以上、または0.14以上、または0.15以上、または0.16以上、または0.17以上、または0.18以上、または0.19以上、または0.2以上、または0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上となるように形成することができる。混合物204は、比(Cp/Cap)が、例えば、0.001以上かつ1以下、さらには0.01以上かつ0.5以下、またはさらには0.025以上かつ0.25以下を含め、上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。さらに、比(Cp/Cap)は、基材のサイズ(例えば幅または直径)および最終的に形成される砥粒品中の基材上に存在する砥粒粒子の所望の濃度に応じて制御し修正してもよい。
【0066】
別の実施形態によれば、混合物204は、砥粒粒子212と、微粒子213と、任意の添加剤とを懸濁させるための担体を含むことができる。一実施形態によれば担体は水を含むことができ、混合物は水性スラリーとなる。
【0067】
別の実施形態では混合物204は、特定の添加剤を含んでいてもよい。例えば混合物204は、フラックス材料211を含むことができ、この材料は、基材201を混合物204に通して移送する際に、この基材に塗布してもよい。特定の一実施形態によれば、加工時にはフラックス材料211は、基材201が移送され混合物204から脱出する際に、基材上に概して連続的でコンフォーマル(conformal)な被膜を形成してもよく、これにより、砥粒粒子212と微粒子213を基材201上に適切に結合させやすくすることができる。フラックス材料211は、液体またはペーストの形態をとることができる。例示的な少なくとも一つの実施形態では、フラックス材料211は、塩化物、酸、界面活性剤、溶媒、有機物、水、およびそれらの組み合わせなどの材料を含むことができる。特定の一実施形態では、フラックス材料211は、塩酸塩、塩化亜鉛、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0068】
図2Aおよび2Bに例示するように、この工程を実行して、混合物に由来する砥粒粒子212、微粒子213、およびフラックス211の少なくとも一部分が基材201に付着するようにすることができる。特に、基材201が混合物204から脱出するさいに、フラックス材料211と、砥粒粒子212と、粘着材料を含む微粒子213とを含む材料の層を、基材201に同時に付着させることができる。混合物204のレオロジーおよび基材201の移送速度を制御して、フラックス材料211、砥粒粒子212、および微粒子213を基材201に適切に塗布しやすくしてもよいことは理解されよう。特に、フラックス材料211、砥粒粒子212、および微粒子213を基材201に付着させる工程は、1℃以上かつ300℃以下を含む範囲内の温度で実行することができる。特にこの温度範囲では、微粒子材料が、液(例えば溶融した)相とは反対の固相にあることが保証される場合があるので、本明細書における実施形態の特徴を有する砥粒品を形成しやすくすることができる。特に、混合物204中の微粒子213は、基材201に最初に付着したときに固体の形態および固体の形態をとることができる。その後の工程、例えば処理の工程中に、微粒子213の相を固相から液相に変化させてもよい。
【0069】
混合物204は、形成工程を容易にする特定の特性、例えば粘度を有するように形成してもよい。一実施形態によれば、混合物204は、25℃の温度、1 1/sのせん断速度での粘度が、0.1mPa・s以上かつ1Pa・s以下であるニュートン流体であってもよい。また、混合物204は、その粘度が、25℃の温度での測定、10 1/sのせん断速度で、1mPa・s以上かつ100Pa・s、またはさらには約10Pa・s以下である非ニュートン流体であってもよい。粘度は、TA InstrumentsのAR−G2回転レオメーターを用い、25mmの平行平板、約2mmの間隙、25℃の温度で0.1〜10 1/sのせん断速度を用いて測定することができる。一つまたは複数の粘度調整剤を、混合物204への添加剤として添加してもよい。例えば、混合物204は少量の添加剤を含んでいてもよく、その中に粘度調整剤が含まれていてもよい。いくつかの好適な粘度調整剤には、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの有機材料を挙げることができる。
【0070】
工程は、ステップ102において基材201を混合物204に通して移送した後、基材を処理して砥粒品プリフォームに形成することによりステップ103を続行することができる。一実施形態によれば処理は、100℃以上かつ450℃以下の範囲内の温度にプリフォームを加熱することを含む。処理工程は、微粒子213の少なくとも一部分を融解させて流体または半流動状態にしやすくしてもよく、これにより、微粒子213の少なくとも一部分が、砥粒粒子の少なくとも一部分に接触して、砥粒粒子212を基材212の表面に暫定的に接合させる。さらに、処理工程は、基材201の表面上の微粒子材料についてのみ、その特定の部分を蓄積しやすくして、特定の離散的な形成物が形成されるようしてもよい。処理は、基材201をヒーター206に通して移送することを含んでいてもよく、これにより、離散的な粘着領域において基材201の表面に暫定的に接合した砥粒粒子212を有する砥粒品プリフォームの加熱と形成、そしてまた、本明細書において以下に記載する離散的な形成物の形成が行いやすくなる。また本開示に照らして理解されるように、基材201の表面に、砥粒粒子212、微粒子213、およびフラックス材料211を付着させこの物品を処理する工程により、基材201の表面上に粘着材料の不連続な被膜が形成されやすくなる場合がある。
【0071】
処理の後、さらなる加工ための準備として、砥粒品プリフォームを洗浄し、余分なフラックスと他の不要な材料を除去してもよい。一実施形態によれば、洗浄工程は、水、酸、塩基、界面活性剤、触媒、溶媒、およびそれらの組み合わせの一つまたは組み合わせを利用してもよい。特定の一実施形態では、洗浄工程は、段階的工程とすることができ、概して中性の材料、例えば水または脱イオン水を用いた砥粒品のすすぎから始める。水は、室温、または熱くて約40℃以上の温度を有していてもよい。すすぎ操作の後、洗浄工程はアルカリ処理を含んでいてもよく、この場合、砥粒品は特定のアルカリ度を有する浴に通され、この浴はアルカリ性材料を含んでいてもよい。アルカリ処理は、室温、または高温で行ってもよい。例えば、アルカリ処理の浴は、その温度が約40℃以上、例えば、約50℃以上、またはさらには約70℃以上、かつ約200℃以下であってもよい。砥粒品を、アルカリ処理の後にすすいでもよい。
【0072】
アルカリ処理の後、砥粒品を活性化処理に通してもよい。活性化処理は、酸、触媒、溶媒、界面活性剤、およびそれらの組み合わせを含む、特定の元素または化合物を有する浴に、砥粒品を通すことを含んでいてもよい。特定の一実施形態では、活性化処理は、酸、例えば強酸、より詳細には、塩酸、硫酸、およびそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実例では、活性化処理は、ハロゲン化物またはハロゲン化物含有材料を含んでいてもよい触媒を含むことができる。触媒のいくつかの適切な例には、フッ化水素カリウム、重フッ化アンモニウム、二フッ化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0073】
活性化処理は、室温、または高温で行ってもよい。例えば、活性化処理の浴は、その温度が、約40℃以上、しかし約200℃以下であってもよい。砥粒品は、活性化処理後にすすいでもよい。
【0074】
一実施形態によれば、砥粒品を適切に洗浄した後、随意の工程を使用して、砥粒品の完成後に露出面を有する砥粒品を形成しやすくしてもよい。例えば、一実施形態では、砥粒粒子上の粒子被膜層の少なくとも一部分を選択的に除去する随意の工程を利用してもよい。この選択的除去工程は、粒子被膜層の材料が除去される一方で、砥粒品の他の材料、例えば、粘着層はそれほど影響されない、または本質的に影響されないように行なってもよい。特定の実施形態によれば、この選択的除去の工程は、エッチングを含む。いくつかの適切なエッチング工程には、ウェットエッチング、ドライエッチング、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実例では、砥粒粒子の粒子被膜層の材料を選択的に除去し粘着層をそのまま残すように構成された特定のエッチング剤を使用してもよい。いくつかの適切なエッチング剤には、硝酸、硫酸、塩酸塩の酸、有機酸、硝酸塩、硫酸塩、塩化物の塩、アルカリ性シアン化物系溶液、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0075】
この工程は、ステップ103での処理の後、ステップ104で砥粒品プリフォーム上に接合層の形成を続行してもよい。接合層の形成により、耐摩耗性および粒子保持性を含むがこれらに限定されない性能を向上させた砥粒品を、形成しやすくすることができる。一実施形態によれば、接合層は、砥粒粒子、粘着材料の部分、および基材の部分に直接接合させることができる。
【0076】
接合層の形成は、堆積工程を含むことができる。いくつかの適切な堆積工程には、メッキ(電解または無電解)、噴霧、浸漬、印刷、被膜形成、およびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の一実施形態によれば、接合層はメッキ工程によって形成することができる。少なくとも一つの特定の実施形態では、メッキ工程は電解メッキ工程とすることができる。別の実施形態では、メッキ工程は、無電解メッキ工程を含むことができる。
【0077】
接合層は、基材の外面および砥粒粒子の外面の大部分を被覆していてもよい。さらに特定の例では、接合層は、基材の外面および砥粒粒子の外面の大部分を被覆していてもよい。特定の実施形態では接合層は、砥粒品プリフォームおよび最終的に形成される砥粒品の外面の90%以上を被覆するように形成することができる。他の実施形態では、接合層の被覆率はもっと大きくすることができ、例えば、砥粒品プリフォームおよび最終的に形成される砥粒品全体の約92%以上、約95%以上、またはさらには約97%以上を被覆するようにすることができる。特定の一実施形態では、接合層は、砥粒品の外面の本質的にすべてを被覆するように形成することができる。さらに別の実施形態では、接合層を選択的に配置して、露出領域を砥粒品上に形成できるようにすることができる。
【0078】
接合層は、有機材料、無機材料、およびそれらの組み合わせなどの特定の材料から作製することができる。いくつかの適切な有機材料には、UV硬化性ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびそれらの組み合わせなどのポリマーを挙げることができる。他のいくつかの好適なポリマー材料には、ウレタン、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、アクリレート、ポリビニル、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0079】
接合層に使用する好適な無機材料には、金属、合金、サーメット、セラミックス、複合材料、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。一つの特定の実例では、接合層は、少なくとも1種の遷移金属元素を有する材料、より詳細には、遷移金属元素を含む合金から形成することができる。接合層に使用するいくつかの適切な遷移金属元素には、ニッケル、鉛、銀、銅、亜鉛、スズ、チタン、モリブデン、クロム、鉄、マンガン、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、パラジウム、白金、金、ルテニウム、またはそれらの組み合せを挙げることができる。特定の実例では、接合層は、ニッケルを含むことができ、ニッケルを含む合金、またはさらにはニッケル系合金であってもよい。さらに他の実施形態では、接合層は本質的にニッケルからなっていてもよい。
【0080】
一実施形態によれば、接合層は、硬度が粘着材料のものよりも大きい、例えば複合材料などの材料から形成することができる。例えば接合層は、式((Hb−Ht)/Hb)×100%の絶対値に基づいて、そのVickers硬度を粘着材料のVickers硬度より約5%以上硬くすることができ、ここで、Hbは接合層の硬度を表し、Htは粘着層の硬度を表す。一実施形態では接合層は、粘着層の硬度よりも約10%以上硬くすることができ、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約75%以上、約90%以上、またはさらには約99%以上硬くすることができる。さらに、別の非限定的な実施形態では、接合層は、粘着材料の硬度よりも約99%以下硬くてもよく、例えば、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下硬くてもよい。接合層と粘着材料の硬度の間の差が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0081】
さらに、接合層は、式((Tb−Tt)/Tb)×100%の絶対値に基づいて、圧痕法によって測定されたその破壊靭性(K1c)を粘着材料の平均破壊靱性より約5%以上大きくすることができ、ここでTbは接合層の破壊靭性を表し、Ttは粘着材料の破壊靭性を表す。一実施形態では接合層は、その破壊靭性を、粘着材料の破壊靭性よりも約8%以上大きくすることができ、例えば約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、またはさらには約40%以上大きくすることができる。さらに、他の非限定的な実施形態では、接合層の破壊靭性は、粘着材料の破壊靭性の約90%以下大きくともよく、例えば、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、またはさらには約10%以下大きくともよい。接合層の破壊靭性と粘着材料の破壊靭性との間の差異が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0082】
随意に、接合層は充填材料を含むことができる。充填材は、最終的に形成される砥粒品の性能特性を向上させるのに適したさまざまな材料とすることができる。いくつかの適切な充填材料には、砥粒粒子、中空球などの細孔形成材、ガラス球、発泡アルミナ、殻および/または繊維などの天然素材、金属粒子、黒鉛、潤滑性材料、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0083】
特定の一実施形態では、接合層は、電解メッキ工程により形成することができ、所望の特性を有する接合層を生成するために一つまたは複数の添加剤、例えば湿潤剤、硬化剤、応力低減剤、およびレベリング剤がメッキ液に含まれていてもよく、これにより、砥粒品の性能が向上することもある。例えば、イオウ、または最終的に形成される層にイオウを形成する材料を含有する添加剤をメッキ液に含ませることにより、硬度および引張応力を制御するためのイオウを含む接合層を製造することができる。そのような添加剤のいくつかの適切な例には、サッカリン、メタベンゼンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。接合層は、特定含有量のイオウ、例えば接合層の全重量に対して50ppm以上のイオウを含んでいてもよい。さらに他の実例では、接合層中のイオウの含有量は、もっと大きくすることができ、接合層の全重量に対して、例えば60ppm以上、または70ppm以上、または80ppm以上、または90ppm以上、または100ppm以上、または120ppm以上、または140ppm以上、または160ppm以上、または180ppm以上、または200ppm以上、または250ppm以上、または300ppm以上、または350ppm以上、または400ppm以上とすることができる。さらには、少なくとも一つの非限定的な実施形態では、接合層中のイオウの含有量は、接合層の全重量に対して2000ppm以下とすることができ、例えば、1500ppm以下、1000ppm以下、900ppm以下、800ppm以下、700ppm以下、600ppm以下、500ppm以下とすることができる。接合層中のイオウの含有量が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかを含む範囲内にあることは理解されよう。
【0084】
特定の一実施形態では接合層は、充填材を砥粒粒子の形態で含むことができ、この砥粒粒子は、混合物に含まれ基材201に付着する砥粒粒子212と同一でも異なっていてもよい。砥粒粒子充填材は、特にサイズに関して、砥粒粒子212と顕著に異なっていてもよく、これにより特定の実例では、砥粒粒子充填剤が、砥粒粒子212の平均粒子サイズよりも実質的に小さい平均粒子サイズ有するようにすることができる。例えば、砥粒粒子充填材は、砥粒粒子212の平均粒子サイズの少なくとも約2分の1の平均グレインサイズを有することができる。実際、砥粒充填材は、その平均粒子サイズがさらに小さくてもよく、例えば、砥粒粒子212の平均粒子サイズの、少なくとも3分の1の程度、例えば少なくとも約5分の1、少なくとも約10分の1の程度、特に約2分の1から約10分の1の範囲内にあってもよい。
【0085】
接合層内の砥粒グレイン充填材は、炭化物、炭素系材料(例えばフラーレン)、ダイヤモンド、ホウ化物、窒化物、酸化物、酸窒化物、酸ホウ化物、およびそれらの組み合わせなどの材料から作製することができる。特定の実例では、砥粒グレイン充填材は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、またはその組み合わせなどの超砥粒材料とすることができる。
【0086】
ステップ106において接合層を形成した後、工程は随意に、接合層を被覆する被膜層を形成することを含んでいてもよい。少なくとも一つの実例では、被膜層は、接合層の少なくとも一部分と直接接触するように形成することができる。被膜層の成形は、堆積工程を含むことができる。いくつかの適切な堆積工程には、メッキ(電解または無電解)、噴霧、浸漬、印刷、被膜形成、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0087】
被膜層は、有機材料、無機材料、およびそれらの組み合わせを含むことができる。一態様によれば、被膜層は、金属、合金、サーメット、セラミック、有機物、ガラス、およびそれらの組み合わせなどの材料を含むことができる。より詳細には被膜層は、遷移金属元素、例えば、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、マンガン、タンタル、タングステン、及びそれらの組み合わせの群から得られる金属を含むことができる。特定の実施形態では、被膜層は、ニッケルが主要な含有量を占めることができ、実際に、ニッケルから本質的になっていてもよい。あるいは、被膜層は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびそれらの組み合わせを含むことができる。一実例では被膜層は樹脂材料を含んでおり、溶媒は本質的に含まなくてもよい。
【0088】
特定の一実施形態では、被膜層は、充填材料を含むことができ、この充填材料は微粒子材料であってもよい。特定の実施形態では、被膜層充填材料は、砥粒粒子の形態をとっていてもよく、この粒子は、基材201上に付着した砥粒粒子212と同一であっても異なっていてもよい。被膜層充填材料として使用される砥粒粒子の特定の好適な種類には、炭化物、炭素系材料(例えば、ダイヤモンド)、ホウ化物、窒化物、酸化物、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの代替充填材料には、中空球などの細孔形成材、ガラス球、発泡アルミナ、殻および/または繊維などの天然素材、金属粒子、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0089】
被膜充填材料は、特にサイズに関して砥粒粒子212と大きく異なっていてもよく、特定の実例では、被膜層充填材料は、その平均粒子サイズが、実質的に砥粒粒子212の平均粒子サイズ未満となるようにすることができる。例えば、被膜層充填材料は、その平均粒子サイズが砥粒粒子212の平均粒子サイズの少なくとも約2分の1とすることができる。実際、被膜層充填材料は、その平均粒子サイズがさらに小さくともよく、砥粒粒子212の平均粒子サイズの、例えば少なくとも3分の1、例えば、少なくとも約5分の1、少なくとも約10分の1、特に約2分の1から約10分の1の範囲内にあってもよい。
【0090】
図3の実施形態は、一実施形態にしたがって形成された砥粒品の断面の例示を含む。例示のように、砥粒品300は、長尺体、例えばワイヤの形態をとる基材201を含むことができる。さらに例示のように、砥粒品300は、基材201の外面を被覆する複数の離散的な粘着領域303を含むことができる。砥粒品300はさらに、砥粒粒子212を含むことができ、これらの粒子は、離散的な粘着領域303において基材201に接合することができる。砥粒品300はさらに、基材201を被覆することができる離散的な形成物305を含むことができる。さらに、砥粒品300は、基材201と、砥粒粒子212と、離散的な粘着領域303と、離散的な形成物305とを被覆する接合層301を含むことができる。例示にはないが、砥粒品が、本明細書に記載の他の構成成分層、例えばバリア層、被膜層などを含んでいてもよいことは理解されよう。
【0091】
一実施形態によれば、離散的な粘着領域303は、粘着材料304の離散的な部分によって画定することができ、この粘着材料が砥粒粒子212に接合して、加工中に砥粒粒子212を基材201に暫定的に接合させる場合がある。加工方法に起因して、処理中に砥粒粒子に最も近い微粒子材料が、砥粒粒子の周りに優先的に集まることがあり、これにより、粘着材料304の連続的なそしてコンフォーマルな被膜とは反対の、離散的な粘着領域が形成される。したがって、離散的な粘着領域303は、粘着材料304を含むことができ、粘着材料は、本明細書に記載された粘着材料の特徴のいずれかを有する。例えば、例示のように、離散的な粘着領域303は、基材を被覆する粘着材料304の部分のような、不連続な分布の特徴とすることができる。特定の実例では、少なくとも一つの離散的な粘着領域を別の離散的な粘着領域から分離し離間させることにより、離散的な粘着領域どうしの間の領域が、粘着材料304を本質的に含まないようにすることができる。したがって、基材201の表面上の粘着材料304は不連続層を画定して、開口部または間隙を画定し、この場合には基材201の上面は、粘着材料304を本質的に含まないものとすることができる。離散的な粘着領域303は、基材201に直接接合することができる。一実施形態では本質的に、砥粒品全体は、離散的な粘着領域303を含むことができ、砥粒品303は、粘着材料304の連続的な層を本質的に含まないものとすることができる。
【0092】
離散的な粘着領域303の少なくとも一部分を、間隙領域307によって互いに切り離すことができ、これらの間隙領域は、接合層301を被覆する粘着材料304が存在しない砥粒品の部分を画定する。したがって接合層301は、間隙領域307において、基材201に直接接触し直接接合することができる。特定の実例では砥粒品300は、離散的な粘着領域303の含有量と比較して、砥粒品300の表面上の間隙領域307の含有量が(面積で測定して)さらに大きくてもよい。さらに他の実施形態では砥粒品300は、間隙領域307の含有量と比較して、砥粒品300の表面上の離散的な粘着領域303の含有量が(面積で測定して)さらに大きくてもよい。
【0093】
さらに、
図3に例示するように、離散的な粘着領域303は、基材201の表面上に不規則に分布することができる。したがって、離散的な粘着領域303のサイズおよび配置は、不規則であってもよい。さらに、間隙領域307のサイズおよび配置も不規則であってもよい。
【0094】
一実施形態では、砥粒品300は、基材201を被覆する、より詳細には基材201に直接接合する離散的な形成物305を含む。離散的な形成物305のそれぞれは、基材201に直接接合することができる。一実施形態によれば、少なくとも一つの離散的な形成物305は、金属材料を含むことができる。より詳細には、離散的な形成物305のぞれぞれは、粘着材料304のような金属材料を含むことができる。少なくとも一つの実施形態では、離散的な形成物305は、本質的に粘着材料304からなるものとすることができ、離散的な粘着領域304の粘着材料304と本質的に同一の組成を有していてもよい。離散的な形成物305は、粘着材料304を含むことができ、本明細書における実施形態に記載されている、粘着材料304の特徴のいずれかを有することができる。例えば、離散的な形成物は、ハンダ材料を含むことができ、スズを含んでいてもよく、より詳細には、本質的にスズからなっていてもよい。離散的な粘着領域304、および離散的な形成物305は、本質的に金属間化合物を含まない材料を含んでいてもよい。
【0095】
図3に例示するように、離散的な形成物305は、基材201の表面上に不規則に分布していてもよい。したがって、離散的な形成物305のサイズおよび配置は、不規則であってもよい。さらには、間隙領域307のサイズおよび配置も、不規則であってもよい。さらに例示されるように、離散的な形成物305は、互いにサイズおよび形状が異なっていてもよい。
【0096】
一実施形態では、少なくとも一つの離散的な形成物305を、間隙領域307によって他の離散的な形成物から切り離すことができる。すなわち、間隙領域307が、2つ以上の離散的な形成物305の間に延びてこれらを切り離すことができ、これにより、離散的な形成物305のそれぞれを形成する材料中に間隙が存在し、この間隙が接合層301で充填される。さらに、少なくとも一つの離散的な形成物305は、間隙領域によって、離散的な粘着領域303から切り離すことができる。同様に、間隙領域307が、離散的な形成物305と離散的な粘着領域303の間に延びてこれらを切り離すことができ、これにより、離散的な形成物305と離散的な粘着領域303を形成する材料中に間隙が存在し、この間隙が接合層301で充填される。少なくとも一つの実施形態では、離散的な形成物305は、砥粒粒子212を本質的に含まなくてもよい。
【0097】
少なくとも一つの実施形態では、離散的な形成物305は、断面で見て、および/または上から見て、概して丸い形状を有することができる。離散的な形成物305は、砥粒粒子の近傍には存在しなかったものの加工条件のせいで基材201の表面上の場所に蓄積される微粒子から、加工中に形成されることもある。したがって、離散的な形成物305は、砥粒粒子から離間させることができ、その特徴を、基材201の表面上の領域であって砥粒粒子に接合していない、またはそれと繋がっていないものとしてよい。対照的に、離散的な粘着領域303は、基材201の表面上の離散的なまたは分離した領域であり、その領域と繋がった、そしてその領域内に接合した少なくとも一つの砥粒粒子を有する。
【0098】
特定の理論に拘束されるのを望むものではないが、離散的な形成物305が存在することにより、これが、接合層内で開始する可能性のあるあらゆる亀裂に対して、砥粒品の処理中の亀裂停止材として作用する場合がある。材料の連続的な被膜とは異なり、離散的な粘着領域303および離散的な形成物305を特徴とする粘着材料の不連続な被膜により、亀裂停止が改善し砥粒品の砥粒能力が改善することもある。
【0099】
さらに例示されるように、接合層301は、基材201、砥粒粒子212、離散的な粘着領域303、および離散的な形成物305を被覆することができる。特定の実例では、接合層301は、基材201、砥粒粒子212、離散的な粘着領域303、および離散的な形成物305に直接接触し直接接合することができる。
【0100】
別の実施形態によれば、砥粒品300は、特定含有量の金属材料(例えば、粘着材料)を複数の離散的な粘着領域303および複数の離散的な形成物305の中に含んでいてもよく、この金属材料により、製造および/または性能を向上させやすくなることがある。例えば、砥粒品300は、複数の離散的な粘着領域303および複数の離散的な形成物305の中に2g/km以下の含有量(Cmm)の金属を含むことができ、ここでCmmは、砥粒品300の長さ1キロメートルあたりの金属材料のグラム数として測定される。さらに別の実施形態では、金属材料の含有量(Cmm)は、1g/km以下、または0.8g/km以下、または0.6g/km以下、または0.4g/km以下、または0.2g/km以下、または0.1g/km以下、または0.08g/km以下、または0.06g/km以下、または0.04g/km以下、または0.02g/km以下、またはさらには0.01g/km以下とすることができる。さらに、別の非制限的な実施形態では、複数の離散的な粘着領域303および複数の離散的な形成物305における金属材料の含有量(Cmm)は、0.001g/km以上とすることができ、例えば、0.002g/km以上、または0.004g/km以上、または0.006g/km以上、または0.008g/km以上、または0.01g/km以上、または0.02g/km以上、または0.04g/km以上、または0.06g/km以上、または0.08g/km以上、または0.01g/km以上とすることができる。複数の離散的な粘着領域303および複数の離散的な形成物305における金属材料の含有量(Cmm)が上述の最小値と最大値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0101】
さらに別の実施形態では、砥粒品300は、金属の含有量(Cmm)と、Capで表せる砥粒粒子212の含有量との間に特定の関係を有するように形成してもよく、ここでCapは、砥粒品300の長さ1キロメートルあたりの砥粒粒子212のグラム数として定義される。砥粒品300のCmmおよびCapは、誘導結合プラズマ質量分光法などのいずれかの標準的な分析方法によって計算してもよい。特に、次の方法を使用して、砥粒品のCmmとCapを計算してもよい。1)取付け長さの砥粒品300を熱酸に溶解させてもよい。2)砥粒グレインをろ過によって取得し、それらの重量を決定してもよい。3)酸溶液中の金属(すなわち、粘着材料)の重量を、誘導結合プラズマ分光法を使用して決定してもよい。4)砥粒品300の単位取付け長さあたりのCmmおよびCapを計算してもよい。一実施形態によれば、砥粒品は、1以下、例えば、0.9以下、または0.8以下、または0.7以下、または0.6以下、または0.5以下、または0.4以下、または0.3以下、または0.2以下、または0.18以下、または0.16以下、または0.15以下、または0.014以下、または0.13以下、または0.12以下、または0.11以下、または0.1以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下、または0.05以下、または0.04以下、または0.03以下、またはさらには0.02以下である特定の比(Cmm/Cap)を有するように形成することができる。さらに別の非限定的な実施形態では、砥粒品300は、0.002以上、例えば、0.004以上、0.006以上、または0.008以上、または0.01以上、または0.02以上、または0.03以上、または0.04以上、または0.05以上、または0.06以上、または0.07以上、または0.08以上、または0.09以上、または0.1以上、または0.12以上、または0.14以上、または0.16以上、または0.18以上、または0.2以上、または0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上である比(Cmm/Cap)を有するように形成してもよい。比(Cmm/Cap)が、例えば、0.002以上かつ1以下、さらには0.01以上かつ0.5以下、またはさらには0.025以上かつ0.25以下を含め、上記の最小値と最大値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0102】
別の実施形態では、砥粒品300は、粘着材料の特定の被覆率(TMc)を有するように形成してもよく、この被覆率は、粘着材料で覆われている基材表面の百分率として定義される。砥粒品300のTMcは、砥粒品300の試料断面を作製し、この断面の画像を走査型電子顕微鏡またはエネルギー分散型X線分光法により400Xの倍率で撮影することによって決定してもよい。基材、粘着材料、および被膜材料は、画像上で異なる色で示されることになる。TMcの計算は、式TMc=((TSC/SC)*100)に基づいており、ここでScは、400Xの倍率の断面画像上で、画像解析ソフトウェア(例えばImageJ画像解析ソフトウェア)を用いて測定した基材の外周であり、TScは、400Xの倍率の断面画像上で、画像解析ソフトウェア(例えばImageJ画像解析ソフトウェア)を用いて測定した、粘着材料で覆われている基材の外周のあらゆる部分の長さの総和である。砥粒品のTMcは、砥粒品300の長さに沿って異なる場所における、統計的に意味のある試料サイズの断面画像の平均TMcとして測定されるものとする。一実施形態によれば、砥粒品300は、約50%以下、例えば約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、またはさらには約5%以下である特定のTMcを有するように形成してもよい。さらに別の実施形態によれば、砥粒品300は、約0.01%以上、例えば約0.1%以上、またはさらには約1%以上である特定のTMcを有するように形成してもよい。砥粒品300のTMcが上記の最小値および最大値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0103】
接合層301は、連続的な被膜の形態をとることができ、砥粒粒子212の平均粒子サイズに対する厚さに関して特定の関係を有していてもよい。例えば、接合層301は、砥粒粒子212の平均粒子サイズの約5%以上の平均厚さを有することができる。平均粒子サイズに対する接合層301の相対平均厚さは、式(Tb/Tp)×100%の絶対値によって計算することができ、ここでTpは平均粒子サイズを表し、Tbは接合層301の平均厚さを表す。他の実施形態では、接合層301の平均厚さは、さらに大きくすることができ、例えば、約8%以上、約10%以上、約15%以上、またはさらには約20%以上とすることができる。さらに別の非限定的な実施形態では、接合層301の平均厚さは限定することができ、砥粒粒子212の平均粒子サイズの約50%以下、約40%以下、約30%以下、またさらには約20%となるようにすることができる。接合層301が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかを含む範囲内の平均厚さを有してもよいことは理解されよう。
【0104】
より詳細な実例では、接合層205は、1ミクロン以上の平均厚さを有するように形成することができる。他の砥粒品の場合、接合層205は、さらに大きな、例えば、約2ミクロン以上、約3ミクロン以上、約4ミクロン以上、約5ミクロン以上、約7ミクロン以上、またはさらには約10ミクロン以上である平均厚さを有することができる。特定の砥粒品は、約60ミクロン以下、例えば、約50ミクロン以下、例えば、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下、またはさらには約20ミクロン以下である平均厚さを有する接合層205を有することができる。接合層205が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にある平均厚さを有してもよいことは理解されよう。
【0105】
別の態様では、砥粒品300は、特定の濃度の砥粒粒子212を有するように形成することができ、これにより砥粒品の性能が向上しやすくなることがある。一実施形態によれば砥粒品300は、基材1mmあたり10個以上、例えば、基材1mmあたり20個以上、または基材1mmあたり30個以上、または基材1mm当たり40個以上の砥粒粒子濃度を有することができる。さらに別の非限定的な実施形態では、砥粒粒子濃度を、基材1mmあたり800個以下、例えば、基材1mmあたり700個以下、または基材1mmあたり600個以下、または基材1mmあたり500個以下、または基材1mmあたり400個以下、または基材1mmあたり300個以下、または基材1mmあたり200個以下とすることができる。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0106】
さらに別の実施形態では砥粒品300は、砥粒粒子212が特定の濃度を有するように形成することができ、これにより、砥粒品の性能が向上しやすくなることがある。一実施形態によれば、砥粒品300は、砥粒品1キロメートル当たり0.5カラット以上、例えば、1キロメートル当たり1.0カラット以上、砥粒品1キロメートル当たり約1.5カラット以上、1キロメートル当たり5カラット以上、砥粒品1キロメートル当たり約10カラット以上、1キロメートル当たり15カラット以上、砥粒品1キロメートル当たり約20カラット以上である砥粒粒子濃度を有することができる。さらに別の非制限的な実施形態では、砥粒粒子濃度は、1キロメートル当たり30カラット以下、例えば1キロメートル当たり25カラット以下、または1キロメートル当たり20カラット以下、または1キロメートル当たり18カラット以下、または1キロメートル当たり16カラット以下、または1キロメートル当たり14カラット以下、または1キロメートル当たり12カラット以下、または1キロメートル当たり10カラット以下、または1キロメートル当たり8カラット以下、またはさらには1キロメートル当たり6カラット以下とすることができる。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0107】
別の実施形態では、砥粒品300は、特定の砥粒粒子表面凝集量(APsa)を有するように形成してもよい。APsaは、100個以上の砥粒粒子212が付着した基材の部分の表面を目視検査することによって計算してもよい。目視検査は、400Xの倍率の下で実行するものとする。APsaの計算は、式APsa=((TAP/TP)*100)に基づくが、ここでTPは、目視検査した表面上の砥粒粒子の全数(すなわち100個以上の砥粒粒子)であり、TAPは、目視検査した表面上の凝集粒子の全数である。凝集砥粒粒子は、基材の目視検査した表面上のあらゆる砥粒粒子212として定義され、ここで砥粒粒子212を被覆する接合層205は、少なくとも一つの他の砥粒粒子212を被覆する接合層205に直接接触している。例示を目的として、
図12は、400Xの倍率下での砥粒品300の一部分の画像を含む。本明細書で定義されるように、砥粒粒子212aは、砥粒品300の表面上の、凝集砥粒粒子ではない砥粒粒子の例であり、砥粒粒子212bは、砥粒品300の表面上の、凝集砥粒粒子である砥粒粒子の例である。一実施形態では砥粒品300は、約60%以下、例えば、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、またはさらには約10%以下である特定のAPsaを有するように形成してもよい。APsaが上記の値のいずれかを含む範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0108】
図4は、一実施形態に係る砥粒品の一部分の画像を含む。
図5は、
図4の砥粒品の一部分の断面画像を含む。
図6は、
図4の砥粒品の一部分の断面画像を含む。例示のように、砥粒品400は、基材401と、離散的な粘着領域403において基材401に付着した砥粒粒子412とを含むことができる。さらに例示のように、砥粒品400は複数の離散的な形成物405を含むことができ、これらの構造は、基材401の表面に直接結合することができ、そしてさらには間隙領域420によって、互いから、そして離散的な粘着領域403から離間することができる。したがって、砥粒品400は、不連続な粘着層を含んでおり、この粘着層は、砥粒粒子412と繋がった、そしてこれらに接合した複数の離散的な粘着領域403を含み、さらには砥粒粒子412と離散的な粘着領域403とから離間した離散的な形成物405を含む。
【0109】
例示のように、一実施形態によれば、離散的な粘着領域403は、断面で見てそれらに接着する砥粒粒子412の長さと実質的に同一である平均長さを有していてもよい。対照的に、離散的な形成物403は、それらの形状およびサイズがさらに多様であってもよく、離散的な粘着領域403、および砥粒粒子412の平均粒子サイズより大きくても小さくてもよい。
【0110】
図5および
図6にさらに示すように、砥粒品400は、接合層407と基材401と間の直接接触の界面を含むことができる。さらに、離散的な粘着領域403の周辺では、砥粒品400は、接合層407と、基材401と、離散的な粘着領域403の粘着材料との間の直接接触を含む三重点境界も含む。さらに、離散的な形成物405の周辺では、砥粒品400は、接合層407と、基材401と、離散的な形成物405の材料(例えば、粘着材料)との間の直接接触を含む三重点境界を有することができる。
【0111】
本明細書の実施形態の砥粒品は、加工対象物を薄切りするのに特に適したワイヤ鋸としてもよい。加工対象物には、セラミック、半導体材料、絶縁体材料、ガラス、天然素材(例えば、石)、有機材料、およびそれらの組み合わせを含むがそれらには限定されないさまざまな材料を挙げることができる。より詳細には、加工対象物には、酸化物、炭化物、窒化物、鉱物、岩石、単結晶材料、多結晶材料、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。少なくとも一つの実施形態では、本明細書における実施形態の砥粒品は、サファイア、石英、シリコンカーバイド、およびそれらの組み合わせの加工対象物を薄切りするのに適していることもある。
【0112】
少なくとも一つの態様によれば、これらの実施形態の砥粒品は、特定の機械上で使用することができ、従来品と比較して、向上したそして予想外の結果をもたらす特定の動作条件で使用してもよい。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これら実施形態の特徴の間にいくつかの相乗効果が存在する可能性が考えられる。
【0113】
概して、砥粒品(すなわち、ワイヤ鋸)と加工対象物との互いに対する相対的な移動により、切断、薄切り、レンガ形状への切り出し、正方形状への切り出し、または他のいかなる操作も実行することができる。加工対象物に対する砥粒品のさまざまな種類や向きを利用することにより、加工対象物を、ウェーハ、レンガ形状、長方形の棒、角柱状断面などに分割するようにしてもよい。
【0114】
これは、リール・ツー・リール(reel−to−reel)機械を使用して実行してもよく、この場合、移動には、第1の位置と第2の位置との間でワイヤ鋸を往復させることが含まれる。特定の実例では、第1の位置と第2の位置の間での砥粒品の移動には、直線経路に沿って砥粒品を前後に移動させることが含まれる。ワイヤが往復運動している間、加工対象物も動かしてもよく、例えば、加工対象物を回転させてもよい。
【0115】
あるいは、振動機械を、本明細書における実施形態に係るいずれかの砥粒品と共に利用してもよい。振動機械の使用には、加工対象物に対して砥粒品を第1の位置と第2の位置の間で移動させることが含まれる。加工対象物は、移動、例えば回転させてもよく、さらに加工対象物とワイヤを両方とも互いに対して同時に移動させることができる。振動機械は、加工対象物に対するワイヤ・ガイド(wire guide)の前後の動きを利用する場合もあるが、この場合、リール・ツー・リール機械は必ずしもそのような動きを利用するとは限らない。
【0116】
いくつかの応用の場合には工程はさらに、薄切りの操作中にワイヤ鋸と加工対象物との界面に冷却剤を提供することを含んでいてもよい。いくつかの適切な冷却剤には、水性材料、油性材料、合成材料、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0117】
特定の実例では薄切りは、可変速度の操作として実行することができる。可変速度の操作は、第1のサイクルの間ワイヤと加工対象物を互いに対して相対的に移動させ、第2のサイクルの間ワイヤと加工対象物を互いに対して相対的に移動させることを含んでいてもよい。特に、第1のサイクルと第2のサイクルは同一であっても異なっていてもよい。例えば、第1のサイクルは、第1の位置から第2の位置に砥粒品を移送することを含んでいてもよく、これは特に、前方および逆方向のサイクルを通じて砥粒品を移送することを含んでいてもよい。第2のサイクルは、第3の位置から第4の位置に砥粒品を移送することを含んでいてもよく、これはまた、前方および逆方向のサイクルを通じて砥粒品を移送することを含んでいてもよい。第1のサイクルの第1の位置は、第2のサイクルの第3の位置と同一とすることができ、あるいは第1の位置と第3の位置が異なっていてもよい。第1のサイクルの第2の位置は、第2のサイクルの第4の位置と同一とすることができ、あるいは第2の位置と第4の位置が異なっていてもよい。
【0118】
特定の実施形態によれば、本明細書における実施形態の砥粒品を可変速度のサイクル操作において使用するということには、第1のサイクルが含まれていてもよく、このサイクルは、砥粒品を、開始位置から第1の方向(例えば、前方)に一時的な位置まで、そしてこの一時的な位置から第2の方向(例えば後方)に移送して、同一の開始位置、または開始位置の近くに戻すのにかかる実行時間を含むものである。そうしたサイクルは、ワイヤを前方に0m/sから設定ワイヤスピードまで加速するための継続時間と、ワイヤを設定ワイヤスピードで前方に移動させるための実行時間と、ワイヤを設定ワイヤスピードから0m/sまで前方に減速させるための実行時間と、ワイヤを0m/sから設定ワイヤスピードまで後方に加速させるための実行時間と、ワイヤを設定ワイヤスピードで後方に移動させるための実行時間と、ワイヤを設定ワイヤスピードから0m/sまで後方に減速させるための実行時間とを含むことができる。
【0119】
特定の一実施形態によれば、第1のサイクルは、約30秒以上、例えば約60秒以上、またはさらには約90秒以上とすることができる。さらに、非限定的な一実施形態では、第1のサイクルは約10分以下とすることができる。第1のサイクルが上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にある継続時間を有していてもよいことは理解されよう。
【0120】
さらに別の実施形態では、第2のサイクルは、約30秒以上、例えば約60秒以上、またはさらには約90秒以上とすることができる。さらに、非限定的な一実施形態では、第2のサイクルは約10分以下とすることができる。第2のサイクルが上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にある継続時間を有していてもよいことは理解されよう。
【0121】
切断工程のサイクルの総数は変化してもよいが、約20サイクル以上、約30サイクル以上、またはさらには約50サイクル以上とすることができる。特定の実例では、サイクルの数は約3000サイクル以下であってもよく、またさらには約2000サイクル以下であってもよい。切断操作は、約1時間以上、またはさらには約2時間以上の継続時間だけ続けてもよい。さらには、操作に応じて、切断工程はさらに長くてもよく、例えば約10時間以上、またはさらには20時間の連続的な切断であってもよい。
【0122】
特定の切断操作では、本明細書におけるいずれの実施形態のワイヤ鋸も、特定の送り速度での操作に対して特に適している場合がある。例えば、薄切り操作は、約0.05mm/分以上、約0.1mm/分以上、約0.5mm/分以上、約1mm/分以上、またはさらには約2mm/分以上の送り速度で実行することができる。さらに、非限定的な一実施形態では、送り速度は約20mm/分以下であってもよい。送り速度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0123】
少なくとも一つの切断操作に対しては、本明細書のいずれの実施形態のワイヤ鋸も、特定のワイヤ張力での操作対して特に適している場合がある。例えば、薄切り操作は、ワイヤ破断負荷の約30%以上、例えば、ワイヤ破断負荷の約50%以上、またはさらにはワイヤ破断負荷の約60%以上のワイヤ張力で実行することができる。さらに、非限定的な一実施形態では、ワイヤ張力は、破断負荷の約98%以下であってもよい。ワイヤ張力が上記の最小百分率と最大百分率のいずれかの範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0124】
別の切断操作によれば、砥粒品は、性能向上を容易にするようなVWSRの範囲を有することができる。VWSRは可変ワイヤスピード比であって、概して式t2/(t1+t3)で記述することができ、ここでt2は、砥粒ワイヤが前方または後方に設定ワイヤスピードで移動する実行時間であり、t1は、砥粒ワイヤが前方または後方に0ワイヤスピードから設定ワイヤスピードまで移動する実行時間であり、t3は、砥粒ワイヤが前方または後方に一定のワイヤスピードから0ワイヤスピードまで移動する実行時間である。例えば、本明細書における一実施形態に係るワイヤ鋸のVWSRの範囲は、約1以上、約2以上、約4以上、またはさらには約8以上とすることができる。さらに、非限定的な一実施形態では、VWSR率は、約75以下、またはさらには約20以下であってもよい。VWSR率が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。一実施形態では、可変ワイヤスピード比の切断操作向けの例示的な機械はMeyer Burger DS265 DW Wire Sawマシンとすることができる。
【0125】
特定の薄切り操作は、シリコンを含む加工対象物上で実行してもよく、シリコンは単結晶シリコンまたは多結晶シリコンとすることができる。一実施形態によれば、一実施形態に係る砥粒品の使用で、約8m
2/km以上、例えば、約10m
2/km以上、約12m
2/km以上、またはさらには約15m
2/km以上の寿命が実証されている。ワイヤ寿命は、使用される砥粒ワイヤ1キロメートル当たりに生じるウェーハ面積に基づいたものとすることができ、生じるウェーハ面積は、ウェーハ表面の一方の側に基づいて計算される。こうした実例では砥粒品は、例えば、基材1キロメートル当たり約0.5カラット以上、基材1キロメートル当たり約1.0カラット以上、基材1キロメートル当たり約1.5カラット以上、またはさらには基材1キロメートル当たり約2.0カラット以上の特定の砥粒粒子濃度を有していてもよい。さらにこの濃度は、基材1キロメートルあたり約20カラット以下、またはさらには基材1キロメートルあたり約10カラット以下であってもよい。砥粒粒子の平均粒子サイズは約20ミクロン未満とすることができる。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。薄切り操作は、本明細書に開示される送り速度で実行してもよい。
【0126】
別の操作によれば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンを含むシリコン加工対象物は、一実施形態に係る砥粒品を用いて薄切りすることができ、この砥粒品は、約0.5m
2/km以上、例えば、約1m
2/km以上、またはさらには約1.5m
2/km以上の寿命を有することができる。そうした実例では砥粒品は、例えば、基材1キロメートル当たり約0.5カラット以上、基材1キロメートル当たり約1カラット以上、基材1キロメートル当たり少なくとも約2カラット以上、基材1キロメートル当たり少なくとも約3カラット以上の特定の砥粒粒子濃度を有していてもよい。さらにその濃度は、基材1キロメートルあたり約30カラット以下、またはさらには基材1キロメートルあたり約15カラット以下であってもよい。砥粒粒子の平均粒子サイズは約20ミクロン未満とすることができる。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0127】
薄切り操作は、約0.5mm/分以上、約1mm/分以上、約2mm/分以上、約3mm/分以上の送り速度で実行してもよい。さらに非限定的な一実施形態では、送り速度は約20mm/分以下であってもよい。送り速度が上記最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0128】
別の操作によれば、サファイア加工対象物を、本明細書における一実施形態の砥粒品を使用して薄切りすることができる。サファイア加工対象物は、c面サファイア、a面サファイア、またはr面サファイア材料を含んでいてもよい。少なくとも一つの実施形態については、砥粒品は、サファイア加工対象物を薄切りすることができ、約0.1m
2/km以上、例えば、約0.2m
2/km以上、約0.3m
2/km以上、約0.4m
2/km以上、またはさらには約0.5m
2/km以上の寿命を示すことができる。こうした実例では砥粒品は、例えば基材1キロメートル当たり約5カラット以上、基材1キロメートル当たり10カラット以上、基材1キロメートル当たり約20カラット以上、基材1キロメートル当たり40カラット以上である特定の砥粒粒子濃度を有していてもよい。さらにその濃度は、基材1キロメートルあたり約300カラット以下、またはさらには基材1キロメートルあたり約150カラット以下であってもよい。砥粒粒子の平均粒子サイズは約20ミクロンより大きくてもよい。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0129】
サファイアの加工対象物上での前述した薄切り操作は、約0.05mm/分以上、例えば、約0.1mm/分以上、またはさらには約0.15mm/分以上の送り速度で実行してもよい。さらに非限定的な一実施形態では、送り速度は約2mm/分以下であってもよい。送り速度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0130】
さらに別の態様においては砥粒品は、シリコンカーバイド、例えば単結晶シリコンカーバイドを含む加工対象物を薄切りするのに使用してもよい。少なくとも一実施形態の場合には砥粒品は、シリコンカーバイドの加工対象物を薄切りすることができ、約0.1m
2/km以上、例えば、約0.2m
2/km以上、約0.3m
2/km以上、約0.4m
2/km以上、またはさらには約0.5m
2/km以上の寿命を示すことができる。こうした実例では砥粒品は、例えば、基材1キロメートル当たり約1カラット以上、基材1キロメートル当たり2カラット以上、基材1キロメートル当たり約3カラット以上、基材1キロメートル当たり4カラット以上である特定の砥粒粒子濃度を有していてもよい。さらにその濃度は、基材1キロメートルあたり約50カラット以下、またはさらには基材1キロメートルあたり約30カラット以下であってもよい。砥粒粒子濃度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0131】
シリコンカーバイドの加工対象物上での前述した薄切り操作は、約0.05mm/分以上、例えば約0.10mm/分以上、またはさらには約0.15mm/分以上の送り速度で実行してもよい。さらには非限定的な一実施形態では、送り速度は約2mm/分以下であってもよい。送り速度が上記の最小値と最大値のいずれかの間の範囲内にあってもよいことは理解されよう。
【0132】
さらに別の実施形態によれば、本明細書に記載の実施形態に係る砥粒品は、特定の製造速度で製造してもよい。本明細書に記載される砥粒品の実施形態の製造速度は、1分あたりの基材のメートル数で表した、砥粒品形成のスピードであってもよく、砥粒品は、長尺体を有する基材と、基材を被覆する粘着層と、粘着層を被覆し第1の砥粒粒子濃度を基材1mmあたり約10個以上の粒子と定めた砥粒粒子と、接合層の構造とを含む。特定の実施形態では製造速度は、毎分約10メートル以上、例えば、毎分約12メートル以上、毎分約14メートル以上、毎分約16メートル以上、毎分約18メートル以上、毎分約20メートル以上、毎分約25メートル以上、毎分約30メートル以上、毎分約40メートル以上、またはさらには毎分約60メートル以上であってもよい。
【0133】
特定の実例では、本方法を使用することにより、高濃度の砥粒粒子を有する砥粒ワイヤ鋸を効率的に製造しやすくすることができる。例えば、上記特徴的な砥粒粒子濃度のいずれかを有する、本明細書における実施形態の砥粒品を、前述のいずれかの製造速度で形成するとともに、この業界の諸性能パラメータを維持するまたはこれらを凌駕することができる。特定の理論に拘束されるのを望むものではないが、理論的には、粘着工程および接合工程を別々に使用することにより、従来の電気メッキ工程など、単一ステップの付着および接合工程よりも製造速度を向上させやすくすることができると言える。
【0134】
本明細書における実施形態の砥粒品は、本明細書における実施形態の特徴の少なくとも一つを伴わない従来の砥粒ワイヤ鋸と比較して、使用中の砥粒粒子の保持性が向上していることを実証した。例えばこの砥粒品は、一つまたは複数の従来試料に対して、砥粒粒子の保持性が約2%以上向上している。さらに他の実例では、砥粒粒子の保持性の向上は、約4%以上、約6%以上、約8%以上、約10%以上、約12%以上、約14%以上、約16%以上、約18%以上、約20%以上、約24%以上、約28%以上、約30%以上、約34%以上、約38%以上、約40%以上、約44%以上、約48%以上、またはさらには約50%以上とすることができる。さらに、非限定的な一実施形態では、砥粒粒子の保持性の向上は、約100%以下、例えば、約95%以下、約90%以下、またはさらには約80%以下とすることができる。
【0135】
本明細書における実施形態の砥粒品は、本明細書の実施形態の特徴の少なくとも一つを伴わない従来の砥粒ワイヤ鋸と比較して、砥粒粒子の保持性が向上していることを実証し、さらに使用寿命の向上を実証した。例えば、本明細書の砥粒品は、一つまたは複数の従来試料と比較して、使用寿命を約2%以上増加させることができる。さらに他の実例では、本明細書における実施形態の砥粒品の使用寿命の増加は、従来品と比較して、約4%以上、約6%以上、約8%以上、約10%以上、約12%以上、約14%以上、約16%以上、約18%以上、約20%以上、約24%以上、約28%以上、約30%以上、約34%以上、約38%以上、約40%以上、約44%以上、約48%以上、またはさらに約50%以上とすることができる。さらに、非限定的な一実施形態では、使用寿命の向上は、約100%以下、例えば、約95%以下、約90%以下、またはさらには約80%以下とすることができる。
【0136】
多くのさまざまな態様および実施形態が可能である。これらの態様および実施形態のいくつかは、本明細書で説明されている。当業者は本明細書の読了時に、それらの態様および実施形態が単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙される実施形態のいずれか一つまたは複数にしたがうものであってもよい。
【0137】
実施形態1. 長尺体を含む基材と;
前記基材を被覆する不連続な分布の特徴を画定する複数の離散的な粘着領域であって、前記複数の離散的な粘着領域の少なくとも一つが、450℃以下の融点を有する金属材料を含む粘着領域と;
前記基材を被覆し、前記複数の離散的な粘着領域から離間した複数の離散的な形成物と;
前記基材、複数の離散的な粘着領域、および複数の離散的な形成物を被覆する接合層とを含む、砥粒品。
【0138】
実施形態2. 長尺体を含む基材と;
前記基材を被覆する金属材料を含む複数の離散的な粘着領域であって、少なくとも一つの離散的な粘着領域が、別の離散的な粘着領域から分離し、少なくとも一つの砥粒粒子が、少なくとも一つの離散的な粘着領域と繋がっている粘着領域と、
前記複数の離散的な粘着領域、前記少なくとも一つの砥粒粒子を被覆し、前記基材の少なくとも一部分に直接接触している接合層とを含む、砥粒品。
【0139】
実施形態3. 長尺体を含む基材と;
前記基材を被覆する複数の離散的な粘着領域であって、前記複数の離散的な粘着領域のそれぞれの間に間隙領域を画定する粘着領域と;
前記複数の離散的な粘着領域を被覆する砥粒粒子と;
前記基材を被覆し、前記複数の離散的な粘着領域および前記砥粒粒子から離間した複数の離散的な形成物とを含む、砥粒品。
【0140】
実施形態4. 前記複数の離散的な粘着領域が450℃以下の融点を有する金属材料を含む、実施形態2および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0141】
実施形態5. 前記複数の離散的な粘着領域が100℃以上の融点を有する金属材料を含む、実施形態1および4のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0142】
実施形態6. 前記複数の離散的な粘着領域うちの少なくとも一つの前記離散的な粘着領域が、遷移金属元素の合金を含む金属材料を含み、少なくとも一つの前記離散的な粘着領域がさらに、鉛、銀、銅、亜鉛、チタン、モリブデン、クロム、鉄、マンガン、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、パラジウム、白金、金、ルテニウム、及びそれらの組み合わせからなる金属の群から選択される金属を含み、少なくとも一つの前記離散的な粘着領域がハンダ材料を含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0143】
実施形態7. 前記ハンダ材料がスズを含む、実施形態6に記載の砥粒品。
【0144】
実施形態8. 前記ハンダ材料がスズから本質的になる、実施形態6に記載の砥粒品。
【0145】
実施形態9. 前記基材を被覆し前記複数の離散的な粘着領域から離間した複数の離散的な形成物をさらに含む、実施形態2に記載の砥粒品。
【0146】
実施形態10. 複前記数の離散的な形成物うちの少なくとも一つの前記離散的な形成物が金属材料を含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0147】
実施形態11. 前記複数の離散的な形成物のうちの少なくとも一つの前記離散的な形成物が、100℃以上かつ450℃以下の融点を有する金属材料を含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0148】
実施形態12. 前記複数の離散的な形成物のうちの少なくとも一つの前記離散的な形成物がハンダ材料を含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0149】
実施形態13. 前記複数の離散的な形成物のうちの少なくとも一つの前記離散的な形成物がスズを含む、実施形態1、3および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0150】
実施形態14. 前記複数の離散的な形成物のうちのそれぞれの前記複数の離散的な形成物がハンダ材料を含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0151】
実施形態15. 前記複数の離散的な形成物のうちの少なくとも一つの前記離散的な形成物が、前記複数の離散的な粘着領域の材料と実質的に同一の材料を含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0152】
実施形態16. それぞれの前記離散的な形成物が前記基材に直接接合している、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0153】
実施形態17. 前記複数の離散的な形成物が、前記基材の表面上に不規則に分布している、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0154】
実施形態18. 前記複数の離散的な形成物の間に延びて存在し前記複数の離散的な形成物を互いから切り離し、さらには前記複数の離散的な形成物を前記複数の離散的な粘着領域から切り離す間隙領域をさらに含む、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0155】
実施形態19. 前記複数の離散的な形成物が概して丸い形状を有する、実施形態1、3、および9のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0156】
実施形態20. 前記基材が本質的にバリア層を含まない、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0157】
実施形態21. 前記基材が、被膜形成されていないワイヤである、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0158】
実施形態22. 前記基材が金属ワイヤを含み、金属ワイヤは外面にバリア層を本質的に含まない、実施形態1、2、および3のいずれかに記載の砥粒品。
【0159】
実施形態23. 前記基材が金属ワイヤを含み、金属ワイヤが、外面を被覆する少なくとも一つのバリア層を有し、前記バリア層が、銅、真鍮、ニッケル、またはそれらの組み合わせの群から選択される金属を含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0160】
実施形態24. 前記複数の離散的な粘着領域が、前記基材の表面上に不規則に分布している、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0161】
実施形態25. 前記複数の離散的な粘着領域を被覆する砥粒粒子をさらに含む、実施形態1および2のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0162】
実施形態26. 前記砥粒粒子が、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、酸窒化物、酸ホウ化物、ダイヤモンド、及びそれらの組み合わせの群から選択される材料を含む、実施形態3および25のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0163】
実施形態27. 前記砥粒粒子が超砥粒材料を含む、実施形態3および25のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0164】
実施形態28. 前記砥粒粒子がダイヤモンドを含む、実施形態3および25のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0165】
実施形態29. 前記砥粒粒子が、約10GPa以上のVickers硬度を有する材料を含む、実施形態3および25のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0166】
実施形態30. 前記複数の離散的な粘着領域を被覆する接合層をさらに含む、実施形態3に記載の砥粒品。
【0167】
実施形態31. 前記接合層の少なくとも一部分が前記基材に直接接合している、実施形態1、2、および30のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0168】
実施形態32. 前記接合層の少なくとも一部分が、前記複数の離散的な粘着領域と複数の離散的な形成物との間の前記間隙領域において、前記基材に直接接合している、実施形態1、2、および30のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0169】
実施形態33. 前記接合層の少なくとも一部分が、前記複数の離散的な粘着領域と複数の離散的な形成物とに直接接合している、実施形態1、2、および30のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0170】
実施形態34. 前記接合層が、金属、合金、サーメット、セラミックス、複合材料、およびこれらの組み合わせからなる材料の群から選択される材料を含み、前記接合層は遷移金属元素を含み、前記接合層は遷移金属元素の合金を含み、前記接合層は、鉛、銀、銅、亜鉛、スズ、チタン、モリブデン、クロム、鉄、マンガン、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、パラジウム、パラジウム、白金、金、ルテニウム、およびそれらの組み合わせからなる金属の群から選択される金属を含み、前記接合層はニッケルを含み、前記接合層は本質的にニッケルからなる、実施形態1、2、および30のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0171】
実施形態35. 前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数として測定して、2g/km以下、1g/km以下、0.8g/km以下、0.6g/km以下、0.4g/km以下、0.2g/km以下、0.1g/km以下、0.08g/km以下、0.06g/km以下、0.04g/km以下、0.02g/km以下、0.01g/km以下である、前記複数の離散的な粘着領域および複数の離散的な形成物における金属材料の含有量(Cmm)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0172】
実施形態36. 前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数として測定して、0.001g/km以上、または0.002g/km以上、または0.004g/km以上、または0.006g/km以上、または0.008g/km以上、または0.01g/km以上、または0.02g/km以上、または0.04g/km以上、または0.06g/km以上、または0.08g/km以上、または0.01g/km以上である、前記複数の離散的な粘着領域および複数の離散的な形成物における金属材料の含有量(Cmm)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0173】
実施形態37. 前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数で測定した前記砥粒粒子の含有量(Cap)と、前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数で測定した、前記複数の離散的な粘着領域および複数の離散的な形成物における金属材料の含有量(Cmm)とをさらに含み、1以下、または0.9以下、または0.8以下、または0.7以下、または0.6以下、または0.5以下、または0.4以下、または0.3以下、または0.2以下、または0.18以下、または0.16以下、または0.15以下、または0.014以下、または0.13以下、または0.12以下、または0.11以下、または0.1以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下、または0.05以下、または0.04以下、または0.03以下、また0.02以下である比(Cmm/Cap)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0174】
実施形態38. 前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数で測定した前記砥粒粒子の含有量(Cap)と、前記基材の長さ1キロメートル当たりのグラム数で測定した、前記複数の離散的な粘着領域および複数の離散的な形成物における金属材料の含有量(Cmm)とをさらに含み、0.002以上、または0.004以上、または0.006以上、または0.008以上、または0.01以上、または0.02以上、または0.03以上、または0.04以上、または0.05以上、または0.06以上、または0.07以上、または0.08以上、または0.09以上、または0.1以上、または0.12以上、または0.14以上、または0.16以上、または0.18以上、または0.2以上、または0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上である比(Cmm/Cap)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0175】
実施形態39. 基材1mm当たり10個以上、基材1mm当たり20個以上、基材1mm当たり30個以上、かつ基材1mm当たり800個以下の砥粒粒子濃度をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0176】
実施形態40. 前記基材1キロメートル当たり約0.5カラット以上、基材1キロメートル当たり約1.0カラット以上、基材1キロメートル当たり約1.5カラット以上、かつ基材1キロメートル当たり約30.0カラット以下の砥粒粒子濃度をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれかに記載の砥粒品。
【0177】
実施形態41. 長尺体を有する基材を、砥粒粒子と、粘着材料を含む微粒子とを含む混合物に通して移送することと;
前記砥粒粒子および微粒子の少なくとも一部分を前記基材に付着させることと;
前記基材を処理して砥粒品プリフォームを形成することとを含む、砥粒品を形成する方法であって、
砥粒品プリフォームが、前記基材を被覆する複数の離散的な粘着領域であって、それぞれの前記離散的な粘着領域の間に間隙領域を画定する粘着領域と;
前記複数の離散的な粘着領域を被覆する砥粒粒子と;
前記基材を被覆し、前記複数の離散的な粘着領域および前記砥粒粒子から離間した複数の離散的な形成物とを含む、砥粒品を形成する方法。
【0178】
実施形態42. 前記混合物が、前記混合物の全重量に対して5重量%以上かつ80重量%以下の前記砥粒粒子を含む、実施形態41に記載の方法。
【0179】
実施形態43. 前記混合物が、前記粘着材料を含む前記微粒子を含み、前記微粒子が、前記混合物の全重量に対して0.2重量%以上かつ20重量%以下である、実施形態41に記載の方法。
【0180】
実施形態44. 前記砥粒粒子が、2ミクロン以上かつ80ミクロン以下を含む範囲内にある平均粒子サイズ(PSa)を有する、実施形態41に記載の方法。
【0181】
実施形態45. 前記微粒子が、0.01ミクロン以上かつ25ミクロン以下を含む範囲内にある平均粒子サイズ(PSp)を含む、実施形態41に記載の方法。
【0182】
実施形態46. 前記砥粒粒子が平均粒子サイズ(PSa)を有し、前記微粒子が平均粒子サイズ(PSp)を含み、前記混合物が、1以下、または0.9以下、または0.8以下、または0.7以下、または0.6以下、または0.5以下、または0.4以下、または0.3以下、または0.2以下、または0.18以下、または0.16以下、または0.15以下、または0.014以下、または0.13以下、または0.12以下、または0.11以下、または0.1以下、または0.09以下、または0.08以下、または0.07以下、または0.06以下、または0.05以下、または0.04以下、または0.03以下、または0.02以下である比(PSp/PSa)を含む、実施形態41に記載の方法。
【0183】
実施形態47. 前記砥粒粒子が平均粒子サイズ(PSa)を有し、前記微粒子が平均粒子サイズ(PSp)を含み、前記混合物が、0.01以上、または0.02以上、または0.03以上、または0.04以上、または0.05以上、または0.06以上、または0.07以上、または0.08以上、または0.09以上、または0.1以上、または0.11以上、または0.12以上、または0.13以上、または0.14以上、または0.15以上、または0.16以上、または0.17以上、または0.18以上、または0.19以上、または0.2以上、または0.3以上、または0.4以上、または0.5以上、または0.6以上、または0.7以上、または0.8以上、または0.9以上である比(PSp/PSa)を含む、実施形態41に記載の方法。
【0184】
実施形態48. 処理が、100℃以上かつ450℃以下を含む範囲内の温度に前記プリフォームを加熱することを含む、実施形態41の方法。
【0185】
実施形態49. 前記混合物がフラックスを含む、実施形態41に記載の方法。
【0186】
実施形態50. 前記混合物が、前記砥粒粒子および前記微粒子のための担体を含むスラリーであって、前記担体が水を含む、実施形態41に記載の方法。
【0187】
実施形態51. 前記基材および前記砥粒粒子を被覆する接合層を形成することをさらに含み、前記接合層が堆積工程により形成され、前記堆積工程が、メッキ、電気メッキ、浸漬、噴霧、印刷、被膜形成、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
【0188】
実施形態52. 前記付着の工程が、1℃以上かつ300℃以下を含む範囲内の温度で混合物から前記砥粒粒子と前記微粒子を付着させることを含む、実施形態41に記載の方法。
【0189】
実施形態53. 約0.025以上かつ約0.25以下である比(PSp/PSa)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0190】
実施形態54. 約0.025以上かつ約0.25以下である比(Cp/Cap)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0191】
実施形態55. 0.002以上かつ1以下、0.01以上かつ0.5以下、0.025以上かつ0.25以下である比(Cmm/Cap)をさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0192】
実施形態56. 約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下であるTMcをさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0193】
実施形態57. 約0.01%以上、約0.1%以上、および約1%以上であるTMcをさらに含む、実施形態1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【0194】
実施形態58. 約60%以下、例えば約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、またはさらには約10%以下であるAPsaをさらに含む、実施態様1、2、および3のいずれか一つに記載の砥粒品。
【実施例1】
【0195】
ある長さの高強度炭素鋼線を、基材として取得する。高強度炭素鋼線は、真鍮被膜層および約175ミクロンの平均径を有する。このワイヤを混合物に通して移送するが、混合物は、ABC Warren Superabrasives製の20%Ni被覆ミクロンダイヤモンドとして市販され約35マイクロメートルの平均粒子サイズを有する約40重量%のダイヤモンドと、Atlantic Equipment Engineers製のSN−101スズ粉末として市販され1〜5マイクロメートルの平均粒子サイズを有する約2重量%のスズ微粒子材料と、ZnClフラックスを含む約10重量%の添加剤とを含む。混合物はまた、粘度調整剤の形態で添加剤を含んでおり、この粘度調整剤は、混合物が室温で3〜5センチポアズの粘度を示すようにするには十分な量で存在した。ワイヤは、約20〜30m/分の速度で移送する。
【0196】
ワイヤを混合物から鉛直に引き出し、このさいにダイヤモンド、微粒子、およびフラックスをワイヤに付着させ、この構造を摂氏220〜280℃の範囲の温度で0.2〜0.5秒の継続時間の間、加熱して、砥粒品プリフォームを形成する。
【0197】
その後、砥粒品プリフォームを10%スルファミン酸で洗浄した後、脱イオン水ですすぐ。すすいだ物品にニッケルを電気メッキして、砥粒粒子と基材の一部分とに直接接触して被覆する接合層を形成する。
図4〜6は、実施例1の工程から形成された砥粒品の画像を含む。
【実施例2】
【0198】
試料砥粒ワイヤS1を、本明細書に記載の実施形態に従って形成した。試料砥粒ワイヤS1用に、ある長さの高強度炭素鋼線を基材として取得した。30ミクロンから50ミクロンの間の平均粒子サイズを有するダイヤモンドグレインを、離散的なSn粘着領域(すなわち、ワイヤ表面の粘着材料の不連続な分布)を使用し、本明細書に記載の実施形態にしたがって、ワイヤに付着させた。ダイヤモンドグレイン、離散的なSn粘着領域、および露出したワイヤ表面を洗浄し、10ミクロンの厚さを有するNi接合層の被膜を形成した。
図7Aは、試料砥粒ワイヤS1の断面画像を含む。
【0199】
比較を目的として、比較試料砥粒ワイヤCS1を形成した。比較試料砥粒ワイヤCS1用に、ある長さの高強度炭素鋼線を基材として取得した。30ミクロンから50ミクロンの間の平均粒子サイズを有するダイヤモンドグレインを、Sn粘着材料の連続的な層を使用してワイヤに付着させた。ダイヤモンドグレインおよびSn粘着層を洗浄し、10ミクロンの厚さを有するNi接合層の被膜を形成した。
図7Bは、試料砥粒ワイヤS1の断面画像を含む。
【0200】
被膜密着性試験を、
図8に示す実験設定にしたがって実行した。
図8に示すように、試料砥粒ワイヤ800(例えば、試料砥粒ワイヤS1またはCS1)を、顎面815を有する2つの締め具810に通して引く。顎面815は角度が付いていて、それらの上縁が試料砥粒ワイヤ800に接触するようになっている。その後、試料砥粒ワイヤ800上のNi接合の密着強度を評価するため、試料砥粒ワイヤ800を2つの締め具810に通して引っ張るさいに、空気圧コントローラを使用して締め付け圧を系統的に増加させる。
【0201】
比較試料砥粒ワイヤCS1の場合、Ni接合は、20psiの締め付け圧で砥粒ワイヤの表面からはずれた。
図9Aは、密着試験後の比較試料砥粒ワイヤCS1の画像を含み、Ni接合がワイヤの表面からはずれているのを示すものである。
【0202】
試料砥粒ワイヤS1のNi接合は、締め付け圧が20psiではワイヤの表面に密着したままであった。
図9Bは、密着試験後の試料砥粒ワイヤS1の画像を含み、Ni接合層は無傷で、被膜表面上に小さなひっかき傷しかないのを示すものである。
図9Aおよび
図9Bの比較を通じて示されたように、砥粒ワイヤ試料S1上のNi接合は、砥粒ワイヤ試料CS1上のNi接合と比較して、基材へのより良好な密着性を有していた。
【実施例3】
【0203】
試料砥粒ワイヤS2を、本明細書に記載の実施形態にしたがって形成した。試料砥粒ワイヤS2用に、ある長さの高強度炭素鋼線を基材として取得する。8ミクロンから12ミクロンまでの平均粒子サイズを有するダイヤモンドグレインを、離散的なSn粘着領域(すなわち、ワイヤ表面の粘着材料の不連続な分布)を使用し、本明細書に記載の実施形態にしたがって、ワイヤに付着させた。ダイヤモンドグレイン、離散的なSn粘着領域、および露出したワイヤ表面を洗浄し、4ミクロンの厚さを有するニッケル接合層の被膜を形成した。
【0204】
比較を目的として、比較試料砥粒ワイヤCS2を形成した。比較試料砥粒ワイヤCS2用に、ある長さの高強度炭素鋼線を基材として取得する。8ミクロンから12ミクロンの間の平均粒子サイズを有するダイヤモンドグレインを、連続的な層のSn粘着材料を使用してワイヤに付着させた。ダイヤモンドグレインおよびSn粘着層を洗浄し、4ミクロンの厚さを有するNi接合層の被膜を形成した。
【0205】
シリコン切断試験を、Meyer Burger DS 271ワイヤ鋸で実行した。試験条件を、以下の表1に列挙する。
【0206】
【表1】
【0207】
試料砥粒ワイヤS2および比較試料砥粒ワイヤCS2のワイヤたわみ性能を、200mmシリコン・インゴット全体の4箇所の異なる場所で測定した。
図10は、4箇所の測定場所における試料砥粒ワイヤS2と比較試料砥粒ワイヤCS2の定常状態でのワイヤたわみのプロットを含む。概して、ワイヤ鋸の性能において、定常状態でのワイヤたわみは小さい方が好ましいが、それは、作業材料上での切断がさらに効果的になると考えられるからである。
図10に示すように、試料砥粒ワイヤS2は、加工対象物全体の4箇所すべての測定箇所で、生じた定常状態でのワイヤたわみが比較試料砥粒ワイヤCS2よりも小さかった。
【実施例4】
【0208】
3つの試料砥粒ワイヤS3、S4、およびS5を、浸漬塗膜工程を使用して形成した。
【0209】
試料砥粒ワイヤS3は、約100ミクロンの厚さを有する真鍮被膜鋼線を使用して形成した。このワイヤを6%塩酸塩溶液で前処理して、ワイヤの表面上の過剰な酸化物を除去した。次いでコアワイヤを、スラリー混合物に通して浸漬塗膜したが、この混合物は、2〜5ミクロンのSn粉末5グラム、8〜16ミクロンのダイヤモンドグレイン100グラム、塩酸塩、塩化亜鉛、グリセリン、および水であった。次いで、被膜形成したワイヤを加熱して、ダイヤモンドグレインをワイヤに付着させ、熱酸および水浴を用いて洗浄した。次いで、被膜形成したワイヤに、4ミクロンの厚さを有するニッケル接合層を電気メッキした。
【0210】
スラリー中の粘着材料が充分でなかったせいで、試料砥粒ワイヤS3に首尾よく粘着したダイヤモンドグレインは最低限であり、このため、このワイヤは最終的に使用不可能になった。
【0211】
試料砥粒ワイヤS4を、約100ミクロンの厚さを有する真鍮被膜鋼線を使用して形成した。このワイヤを6%塩酸塩溶液で前処理して、ワイヤの表面上の過剰な酸化物を除去した。次いでコアワイヤを、スラリー混合物に通して浸漬塗膜したが、この混合物は、2〜5ミクロンのSn粉末40グラム、8〜16ミクロンのダイヤモンドグレイン100グラム、塩酸塩、塩化亜鉛、グリセリン、および水であった。次いで、被膜形成したワイヤを加熱して、ダイヤモンドグレインをワイヤに付着させ、熱酸および水浴を用いて洗浄した。次いで、被膜形成したワイヤに、4ミクロンの厚さを有するニッケル接合層を電気メッキした。
【0212】
試料砥粒ワイヤS4の目視検査により、ダイヤモンドグレインがワイヤに首尾よく付着し、電気メッキされたニッケルの被膜が形成されているのが示された。
図11Aは、試料砥粒ワイヤS4の表面SEM画像を含む。
図11Aに示すように、ダイヤモンドグレインの凝集物が観測された。特定の理論に拘束されるのを好むものではないが、ダイヤモンドグレインの凝集は、Sn粉末の粒子サイズが最適でないこととスラリー中のSn粉末濃度が最適でないことに起因して発生したと考えられる。
【0213】
試料砥粒ワイヤS5を、約100ミクロンの厚さの真鍮被膜鋼線を使用して形成した。ワイヤを6%塩酸塩溶液で前処理して、ワイヤの表面上の過剰な酸化物を除去した。次いでコアワイヤを、スラリー混合物に通して浸漬塗膜したが、この混合物は、1〜2ミクロンのSn粉末10グラム、8〜16ミクロンのダイヤモンドグレイン100グラム、塩酸塩、塩化亜鉛、グリセリン、および水であった。次いで、被膜形成したワイヤを加熱して、ダイヤモンドグレインをワイヤに付着させ、熱酸および水浴を用いて洗浄した。次いで、被膜形成したワイヤに、4ミクロンの厚さを有するニッケル接合層を電気メッキした。
【0214】
試料砥粒ワイヤS5の目視検査により、ダイヤモンドグレインがワイヤに首尾よく付着し、電気メッキされたニッケルの被膜が形成されているのが示された。
図11Bは、試料砥粒ワイヤS4の表面SEM画像を含む。
図11Bに示すように、ダイヤモンドグレインは、ワイヤの表面上に一様に分布しており、凝集はわずかであった。
【0215】
比較を目的として、比PSp/PSa、比Cp/Cap、比Cmm/Cap、TMc、およびAPsaを、試料砥粒ワイヤS4およびS5について本明細書に記載の手順にしたがって測定し計算した。試料砥粒ワイヤS4およびS5のこれらの測定結果を、以下の表2に要約する。
【0216】
表2:試料測定
【0217】
【表2】
【0218】
他に定義のない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術的そして科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、制限を意図するものではない。ここに記載のない限りでは、特定の材料および加工動作に関する詳細の多くは従来のものであり、本構造に関する技術および対応する製造技術を範囲とする参考書籍および他の情報源に見出される場合がある。
【0219】
上記に開示された主題は、例示のためであって限定のためではないと見なされるものであり、添付の「特許請求の範囲」は、本発明の真の範囲内に収まるそうした変更、強化、およびその他の実施形態すべてを網羅することを意図したものである。したがって本発明の範囲は、以下の「特許請求の範囲」およびその均等物の最大限許容できる解釈によって、法律で認められる最大限広く決定されるものであって、前述の詳細な記載によって限定または制限されないものとする。
【0220】
「要約書」は、特許法を遵守するものと規定され、「特許請求の範囲」の意味または範囲を解釈または制限するために使用されるものではないとの理解のもとで提示される。さらに、前記の「図面の詳細な説明」では、さまざまな特徴は、開示を効率的にすることを目的として、ひとつにまとめてもよいし、単一の実施形態として記載してもよい。特許請求された実施形態には各請求項に明示的に記載されている以上の特徴が要求されているとする意図を、この開示が反映しているとは解釈されないものとする。むしろ、以下の特許請求の範囲に反映されているとおり、進歩性のある主題は、開示されたいずれかの実施形態の全特徴未満となるよう指示される場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、各特許請求の範囲が、特許請求された主題を個別に定めるものとしてそれ自体で独立しつつ、「図面の詳細な説明」に取り込まれている。