特許第6564491号(P6564491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564491
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】複室容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20190808BHJP
   B65D 30/22 20060101ALI20190808BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61J1/05 351A
   B65D30/22 F
   B65D30/22 G
   B65D81/32 D
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-78289(P2018-78289)
(22)【出願日】2018年4月16日
(62)【分割の表示】特願2017-53246(P2017-53246)の分割
【原出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-149312(P2018-149312A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-287303(P2012-287303)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-136902(P2013-136902)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513141418
【氏名又は名称】エイワイファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088731
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】野上 藤男
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 千春
(72)【発明者】
【氏名】村松 康宏
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−000228(JP,A)
【文献】 特開2005−288022(JP,A)
【文献】 特開2004−313487(JP,A)
【文献】 特開2005−152618(JP,A)
【文献】 特開2003−062038(JP,A)
【文献】 特開2006−247378(JP,A)
【文献】 特開2002−136570(JP,A)
【文献】 特表2000−504956(JP,A)
【文献】 特開平09−327498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 30/22
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルムより袋状に形成されて成る外側容器と、外側容器の外周部に固着され、薬剤を排出するための排出口と、前記排出口と離間側において外側容器の内部を区画し、外側容器への外力により開通可能な第1の隔壁と、前記排出口と近接側において外側容器の内部を区画し、第1の隔壁を開通させる外力より大きい外側容器への外力により開通可能な第2の隔壁と、第1の隔壁の排出口から離間側において外側容器内部に形成され、第1の液状薬剤を収容する第1の隔室と、第1の隔壁と第2の隔壁間において外側容器内部に形成され、第2の液状薬剤を収容する第2の隔室と、外側容器内部において排出口の内端が開口する排出制御室と、第2の隔室と排出口との間において外側容器内部に配置され、補助薬剤を収容し、外周に沿って剥離可能に溶着することで開封可能に構成された封止部を有した内側容器と、第2の隔室と近接側に沿って内側容器を外側容器の対向内面に固着し、内側容器の前記封止部の開通のための外力を付与する外力付与部とを備え、かつ前記第2の隔壁は、内側容器の第2の隔室との近接側における封止部と、内側容器の第2の隔室との近接側における封止部を両端において外側容器の対向外周側部に第2の隔室とを分離するべく連結する連結部とから構成され、外力付与部は、両端の連結部に至るまで、内側容器の第2の隔室との近接側における封止部に沿って外側容器と内側容器対向面を剥離不能に溶着する強シール部として構成されると共に、排出制御室内における排出口と近接した封止部は内側容器の内面に対して全幅において、又は内側容器の開通及びその姿勢維持の目的若しくは複室容器製造工程中における排出ポートの設置の容易化目的による剥離不能溶着部としての補助的外力付与部の設置の場合はその補助的外力付与部を除いた全幅において、外側容器の対向面に対してフリーである複室容器。
【請求項2】
請求項に記載の発明において、内側容器の封止部における第2の隔室との近接側は外側容器の全幅近くまで延びている複室容器。
【請求項3】
請求項に記載の発明において、内側容器の封止部における両側側部は前記連結部の連接部である外側容器外周の強シール部と一体連結されている複室容器。
【請求項4】
請求項1に記載の発明において、前記連結部は、内側容器の封止部における第2の隔室との近接側両端部とこれに対向した外側容器の外周における強シール部とを接続し、内側容器の対向内面間を封止する強シール部である複室容器。
【請求項5】
請求項に記載の発明において、外力付与部における内側容器の外側容器の対向内面への固着部は内側容器の前記封止部より第2の隔室側に向け幾分延在する複室容器。
【請求項6】
請求項に記載の発明において、外力付与部における内側容器の外側容器の対向内面への固着部は内側容器の封止部と実質的に被らないようにされる複室容器。
【請求項7】
請求項1−のいずれか一項に記載の発明において、前記第2の隔室における排出口側において外側容器は幅が狭められた形状を呈し、内側容器は外側容器の幅が狭められた部位に設置される複室容器。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の発明において、内側容器はその内部を複数の隔室に区画する内側容器区画部を備えた複室容器。
【請求項9】
請求項に記載の発明において、内側容器を構成する可撓性フィルムは溶融温度が低い樹脂を素材とする層と溶融温度が高い樹脂を素材とする層とを具備した多層構造より成り、内側容器の封止部は対向した可撓性フィルム片における高溶融温度層の対向面同士の溶着により構成され、外力付与部は可撓性フィルム片における低溶融温度の層を外側容器に対向面同士で溶着することにより構成される複室容器。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の発明において、内側容器を構成する可撓性フィルムは薬剤収容のための空洞部を画成するための加熱成形された凹部を備える複室容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は輸液等に使用するための可撓性(軟弱)合成樹脂フィルムよりなるバッグ(袋状体)として構成され、内部を剥離可能溶着部により仕切ることにより、多種類の薬剤を個別に収納するようにした複室容器及びそのシール方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
術後の患者等のための高カロリー輸液用の輸液バッグとして、合成樹脂フィルムを素材として、混合により経時的な品質の変化のおそれがあるアミノ酸を含む液状薬剤と、ブドウ糖を含む液状薬剤とを弱シール部(隔壁)により区画された別個の隔室に分離収容しておくものが近年は広く採用されている。輸液時直前に一方の薬液収容部分を外部より手のひら等により加圧することで輸液バッグを弱シール部との接続部において拡開変形させて弱シール部に外圧を加えることで、隔室間を分離する弱シール部の剥離及び双方の薬剤の混合に至らしめ、輸液に供することができる。このような2液混合型の輸液バッグの改良として、長期にわたり輸液を継続する患者のためビタミン等の微量栄養素の補給のため隔室の内部に小型の袋状体を収納したものも提案されている(特許文献1−3)。即ち、特許文献1及び2の技術では、複室容器はいずれもが合成樹脂フィルムにて形成された容器本体と容器本体内部に収容された小型容器(内側容器)とからなり、内側容器は外周が対向面にて弱シールされ、この弱シール部が外側の容器本体の対向面に固着(強シール)されている。そのため、隔室間の弱シール開通時の容器本体の対向面の拡開・離間は内側容器の開封につながり、内側容器に収容されていた薬剤は隔室に収容されていた薬剤と混合せしめられ、排出口より排出(輸液)することが可能となる。
【0003】
また、特許文献3の技術では小容器は隔室の間に配置されて幅方向に延設されており、小容器の上下を封止部(弱シール)として構成し、開封部を外側の容器の対向面に溶着(強シール)されている。そのため、隔室連通のための外圧による容器拡開時に小容器の開封部が剥離・開通され、内側容器に収容されていた薬剤は隔室に収容されていた薬剤と混合され、排出口より排出されるに至る。
【0004】
他方、内側容器を備えたものではないが、隔室を区画するための弱シール部(第1の隔壁)に加えて、この弱シール部より開通のための外圧値がより大きな弱シール部(第2の隔壁)を排出口に近接して設け、第1の隔壁の開通による薬液の混合、これについで更なる加圧により第2の隔壁の開通を起こさせ、隔室間の薬剤を混合を確実に起こさせてから排出を行うようにしたものが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4096200号公報
【特許文献2】特許第4822860号公報
【特許文献3】特開2004−313487号公報
【特許文献4】特許第4236131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1−3においては、弱シール部の開通は排出口から離間側の隔室における薬液部分を加圧することにより行うことを前提としており、したがって、内側容器は加圧される側の隔室に設けられており、これにより隔室の開通と内側容器の開封とを連動させることができる。さらに、未開通のまま輸液がされないように、輸液に先立って所定部位(排出口から離間側の隔室)において加圧することにより開通作業を行なうことの必要性についての注意書きが製品の表面に印刷されている。しかしながら、従来の技術においては排出口側(下側)の隔室は直接排出口に開口しているため、開通を行わなくても輸液セットの穿刺を行えば下側の隔室からの輸液の排出は可能であり、この場合は輸液の混合も少量薬剤の導入もされないままの輸液が行なわれてしまう恐れがある。
【0007】
特許文献4は隔室間の第1の隔壁に加え、排出口の手前に第2の隔壁を設け、第2の隔壁の剥離開通のための外力を第1の隔壁のそれより大きくし、開通順序を第1の隔壁、次いで第2の隔壁としているが、内側容器を備えたものではなく、内側容器を備えた輸液バッグにおける上記問題点に対する解決策をなんら提示してはいない。
【0008】
この発明は内側容器を内蔵した複室容器における以上の問題点に鑑みなされたものであり、隔室間の第1の隔壁の最初の開通、それに次いでの排出口手前の第2の隔壁の開通という開通順序を確実とすることができ、かつ内側容器の確実な開通も行なわせ、一部の薬剤のみで輸液が行われてしまうという誤操作の可能性を確実に排除できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の複室容器は、可撓性フィルムより袋状に形成されて成る外側容器と、外側容器の外周部に固着され、薬剤を排出するための排出口と、前記排出口と離間側において外側容器の内部を区画し、外側容器への外力により開通可能な第1の隔壁と、前記排出口と近接側において外側容器の内部を区画し、第1の隔壁を開通させる外力より大きい外側容器への外力により開通可能な第2の隔壁と、第1の隔壁の排出口から離間側において外側容器内部に形成され、第1の液状薬剤を収容する第1の隔室と、第1の隔壁と第2の隔壁間において外側容器内部に形成され、第2の液状薬剤を収容する第2の隔室と、第2の隔室と排出口との間において外側容器内部に形成され、かつ排出口と連通した排出制御室と、可撓性フィルムより形成され、第2の隔室の排出口と近接側における排出制御室の内側に配置され、補助薬剤を収容し、外周に沿って開封可能に構成された封止部を有した内側容器と、第2の隔室と近接側に沿って内側容器を外側容器の対向内面に固着し、内側容器の前記封止部の開通のための外力を付与する外力付与部とを備えて成る。
内側容器を構成する可撓性フィルムは薬剤収容のための空洞部を形成するための凹部を加熱成形することができる。
【0010】
第2の隔壁は、第2の隔室との近接側における内側容器の封止部と、内側容器の封止部の第2の隔室との近接側両端部を外側容器側部に第2の隔室と排出制御室とを分離するべく連結する連結部とから構成することができる。
【0011】
外力付与部に沿った内側容器の第2の隔室側端部において、外力付与部における内側容器の外側容器の対向内面への固着部は内側容器の前記封止部より第2の隔室側に幾分延在させることができる。また、固着部を内側容器の封止部と実質的に被らないようにすることができる。
【0012】
内側容器の封止部における第2の隔室との離間側を局部的に外側容器の対向面に固着する補助的外力付与部を設けることができる。補助的外力付与部(局部的シール部)は排出口を挟むように一対設置することができる。
【0013】
また、本発明は以上の複室容器のシール方法であって、隔室と離間側で外周が未シールの外側容器を準備すると共に、他方、内部に補助薬剤を収容し外周を封止部により封止した内側容器を準備し、内側容器を前記未シール部より外側容器に挿入し、隔室と近接側において内側容器の封止部を外側容器の対向内面と溶着することにより外力付与部とすることを特徴とする複室容器のシール方法を提供するものである。そして、内側容器を構成する可撓性フィルムは外力付与部形成のための溶着温度より高い溶着温度の内層を備えたものであり、また、内側容器を構成する可撓性フィルムは隔室との近接側における封止部より隔室側に延出する延出部を備え、外力付与部の形成のため延出部もカバーする大きさの加熱面を備えたシール金型を用いて外力付与部のシールを行うことができる。
【0014】
複室容器における内側容器の製造に際しては、平坦化された袋状フィルムシートの幅方向中間部を剥離可能にセンターシールすると共に閉じた両端をカットすることにより開放し、シート開放部を介しセンターシールに沿うように注液ノズルを挿入し、シール金型により、シートに剥離可能にサイドシール及びクロスシールによるボトムシールを形成することにより空洞部を画成し、シートに送りをかけた後空洞部に注液ノズルより所定量の薬剤を注入し、クロスシールにより薬剤注入後の空洞部のトップ側の閉塞を行う。このように、シートの送りと適宜協働させながら、サイドシール及びクロスシールによるボトムで閉鎖された空洞部の画成、薬剤の注入及びクロスシールによるトップの閉塞の諸工程を繰り返し、シートを薬剤充填部の連鎖体に構成する。次工程において内側容器としたとき最外面となるシート面に保護膜が剥離可能に貼着されており、外側容器への装着時に保護膜は剥離される。
【0015】
薬液を注入する空洞部は、シール時にフィルムを注液ノズルの外径部(注液本体)においてシール金型により加圧成形し、形状固定された空洞部とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
内側容器を第2の隔室と排出制御室との間において外側容器内部に配置し、かつ第2の隔室と近接側に沿って内側容器を外側容器の対向内面に固着して成る外力付与部を設け、かつ開封のための外圧を第1の隔壁に比較して第2の隔壁を大きくすることによって、第1の隔壁開通に後続した第2の隔壁の開通に連動して内側容器の封止部を開封することができ、第1及び第2の隔室に収容されていた薬剤を内側容器に収容されていた薬剤と確実に混合して排出口に導入することができる。
【0017】
また、内側容器の封止部における第2の隔室との近接側を第2の隔壁の形成に与らせることにより外力による内側容器の開封機能が損なわれることなく、外側容器の限定された内部空間の有効利用が可能となり、他方、内側容器の外表面は実質的に全面(溶着部以外)において排出制御室に開放のままとすることができ、滅菌時に排出制御室に収容された少量の注射用水の蒸気により、内側容器及び排出制御室内を滅菌することができる。
【0018】
外力付与部における内側容器の外側容器の対向内面への固着部第2の隔室側に向け延在させることで、開封時における外側容器を構成するフィルム間の拡開による外力を内側容器の封止部に効率的に伝達することができ、効率的な開封に至らしめることができる。
【0019】
第2の隔室からの離間側において内側容器の封止部を補助的外力付与部により局部的に外側容器の対向内面に固着することにより、第2の隔壁に加わる外力を内側容器の効率的な開封に寄与させることができる。他方、内側容器は外面においては実質的全面において排出制御室に露出したままであり、内側容器の上記滅菌機能が損なわれることはない。また、補助的外力付与部は、容器形状によって内側容器が第2の隔室側に引き込まれるとすると起こり得る、内側容器の姿勢の崩れを防止し、開封時における内側容器の姿勢を適正に維持し、内側容器のスムースな開封動作を実現することができる。
【0020】
袋状フィルムシートよりシール・充填を行う薬剤充填部の連鎖体から内側容器を1個1個に切り出すようにすることで、内側容器の効率的な製造が可能となり、またシール時に薬剤収容のための空洞部を加熱成形することで、シートの凸面形状が固定化され、潰れ難くなるため小量の薬剤のための小容積部分を確実に確保することができる。また、保護膜により外側容器への装着に至るまでの間において異物の付着防止や無菌状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1はこの発明の第1の実施形態における複室型容器の平面図である。
図2図2図1のII−II線に沿った矢視断面図である。
図3図3図1のIII−III線に沿った矢視断面図である。
図4図4図1のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
図5図5図1の複室型容器の製造工程における段階(a)−(c)を概略的に示す図である。
図6図6図5に後続するこの段階(d)−(f)を概略的に示す図である。
図7図7図5(C)のVII−VII線に沿った断面図であり、外力付与部としての強シール部形成時におけるシール金型による外袋を構成する樹脂素材に対する内袋の溶着工程(a)(b)を概略的に示す図である。
図8図8はこの発明の第2の実施形態における複室型容器の平面図である。
図9図9図8のIX−IX線に沿った矢視断面図である。
図10図10はこの発明の第3の実施形態における複室型容器の平面図である。
図11図11はこの発明の第4の実施形態における複室型容器の平面図である。
図12図12図11のXII−XII線に沿った矢視断面図である。
図13図13図11のXIII−XIII線に沿った矢視断面図である。
図14図14はこの発明の第5の実施形態における複室型容器の平面図である。
図15図15はこの発明の第6の実施形態における複室型容器の平面図である。
図16図16図15のXVI−XVI線に沿った矢視断面図である。
図17図17図16における部分図であるが、外力付与部としての強シール形成時におけるシール金型と外袋及び内袋との位置関係を模式的に示す図である。
図18図18はこの発明の第7の実施形態における複室型容器の平面図である。
図19図19はこの発明の第8の実施形態における複室型容器の平面図である。
図20図20図19の複室容器における内袋の製造装置の概略的側面図である。
図21図21図19の複室容器における内袋の製造装置の概略的正面図である。
図22図22図19の複室容器における内袋を構成するフィルムの模式的断面図である。
図23図23図20のXXIII−XXIII線に沿った矢視断面図である。
図24図24図20のXXIV−XXIV線に沿った矢視断面図である。
図25図25図21のXXV−XXV線に沿った矢視断面図である。
図26図26図20のXXVI−XXVI線に沿った矢視断面図であり、(a)はシール金型の合体前の状態を示し、(b)は合体後の状態を示す。
図27図27図21のXXVII−XXVII線に沿った矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下輸液用バッグとして実施されるこの発明の複室容器の第1の実施形態を説明すると、図1において10はインフレーション等により成形された外袋(この発明の外側容器)であり、厚さ200μmといったポリエチレンフィルムなどの多層構造の合成樹脂軟質フィルム(本発明の可撓性フィルム)を素材とする。外袋10は平べったい実質的な矩形をなし、図2及び図3に示すように外袋10を構成する合成樹脂軟質フィルムは一対(上下)のフィルム片12及び14を備えており、その外縁部全周を対向面において沿って剥離不能溶着、即ち強シールすることにより袋状に形成して構成される。外袋10に沿ったこの強シール部を図1において符号16にて表す。強シール部16の溶着に際しては、外袋10の薬液収容部位を外部から加圧した場合にもシール面の剥離が起こらないように、即ち、強シール部16においては対向フィルム面の完全固着状態が維持されるように溶着温度及び溶着時間の設定が行われている。強シール部16には外袋10の下部において排出口18が、外袋10の上部には混注口20が流密状態を維持するように固着されている。外袋10の排出口18及び混注口20は、外袋10を構成する合成樹脂軟質フィルムとの溶着性を高めるため、これと同質の素材にて金型にて成形される。即ち、外袋10がポリエチレンを素材とする場合は排出口18及び混注口20もポリエチレンを素材に形成される。排出口18及び混注口20は上下のフィルム片12及び14に剥離不能溶着することにより外袋10と一体化されている。外袋10と排出口18及び混注口20と一体化のため、外袋10を構成するフィルム片12及び14は排出口18及び混注口20を挟んで全周にて液密になるようにかつ外袋10の外周の強シール部16と切れ目なく接続するように剥離不能に溶着(強シール)されている。強シール部16における排出口18、混注口20との夫々の溶着部を16A, 16Bにて表す(図1)。排出口18及び混注口20はその筒形状を維持し得る肉厚の合成樹脂の金型成形品であり、その構造は基本的には同様であるが、排出口18について説明すると、排出口18は図2に示すように、筒状本体22とキャップ24とゴム栓26を備え、筒状本体22は先端部22-1が上記の溶着部16Aによって外袋10と一体化され、筒状本体22はテーパ部22-2を介して外袋10の外部に突出し、筒状本体22の端部にキャップ24がゴム栓26を挟んで固着(溶着)されている。ゴム栓26は輸液セットのニードルを穿刺するためものものである。混注口20(図1)は排出口18と同様な構成を有したものであり、図示しないが、排出口18のゴム栓26と同様なゴム栓を供えており、混注用のニードルの穿刺を行うことができるようになっている。
【0023】
この実施形態において強シール部(剥離不能溶着部)及び弱シール部(剥離可能溶着部)はすべてフィルム対向面を溶着することにより構成されるが、断面(図2図3図4及び他実施形態であるが図9図12図13図16、及び図17)では明確化のため強シール部及び弱シール部における溶着部位は太線(強シールは実線、弱シールは破線)にて表している。
【0024】
外袋10における外周の強シール部16における上部には輸液時に輸液スタンドに懸架するための開口部27(図1)が形成される。
【0025】
図1において、28は外袋10を構成する上下のフィルム片12及び14を対向面にて剥離可能に溶着して構成される弱シール部(この発明の第1の隔壁)である(図2及び図3参照)。弱シール部28は外袋10の高さ方向の中間部位を全幅にわたり、即ち、外袋10の両側の強シール部16まで強シール部16と流密に一体連接するように延設されており、そのため、外袋10の内部空間は上下の第1及び第2の隔室29, 30に分離される。第1及び第2の隔室29, 30に液状薬剤が個々に(分離状態で)収容されるが、液状薬剤としては高カロリー輸液用の場合は、夫々、アミノ酸を含有する薬液とブドウ糖を含有する薬液とである。弱シール部28の溶着に際しては、隔室29, 30の薬液収容部位を外部から加圧した場合における弱シール部28との接続部での外袋10の拡開変形によりシール面の剥離が起こるように溶着温度及び溶着時間を適当に設定される。強シール部16についても弱シール部28についても、同じポリエチレンフィルムの対向面同士であることから、ポリエチレンの融点>強シール部16のシール温度>弱シール部28のシール温度とはなる。具体的にはポリエチレンフィルム同士の強シール部16(後述の強シール部42も)のシール温度は150℃程度、弱シール部28のシール温度は130℃程度である。
【0026】
内袋32(この発明の内側容器)は高カロリー輸液用の場合はビタミン等の補助薬剤を収納するためのものである。内袋32は平たく細長い矩形をなし外袋10の内部における下側隔室30と排出口18との間に収容されている。内袋32は後述の外力付与部(強シール部42)によって外袋10に連結・固着され、外袋10の内部の液圧に応動して開封が行われる。強シール部の内側に固着され強シール部16, 42と重なった内袋32の外縁を図1において破線32´にて示す。内袋32は素材としては外袋10と同様に多層ポリエチレンフィルムにより構成されることは外袋10と同様であるが耐薬品性のための薬剤と直接接触する特殊な表面層を備えたものとすることができ、例えば、微量又は微量薬剤がビタミンの場合は多層ポリエチレンフィルムより成る基材層の上に環状ポリオレフィン系樹脂(COP)表面層(内袋32の内面となる層)を形成することができる。基材層を構成するポリエチレン層とCOP樹脂層とは樹脂間の強い親和性によりインフレーション成形による加熱下で強固に一体化した状態で袋状に成形することができる。内袋32を構成する多層フィルムの構成については図19に示す別実施形態に関する図23の説明を参照されたい。図2に示すように、内袋32は上下のフィルム片34, 36よりなり、この実施形態では簡明のため一液のみを収容するようになっており、上下のフィルム片34, 36は全周に沿って溶着されており、この溶着部は弱シール部38(この発明の封止部)として構成され、内部に薬剤収容室39を形成し、ここにビタミン等の微量薬剤が収容される。内袋32は矩形形状をなしていることから、弱シール部38は図1に示すように左右両側部38-1, 38-2及び上下側部38-3, 38-4から構成される。そして、弱シール部38を剥離開通させるための外力の値は隔室29, 30間の弱シール部28を剥離開通させるための外力の値より適当に大きくなるように溶着温度及び溶着時間が設定される。これにより、外袋10に対する内袋32の後述固着構造により、外力により弱シール部28の開通による隔室29, 30間の薬液の混合、次いで、弱シール部38の開通による混合薬液への微量薬剤の導入という一連の開通順序の確保を行うことができる。弱シール部28の溶着面はポリエチレンフィルム、他方、弱シール部38の溶着面は環状ポリオレフィン系樹脂フィルムであるため、同じ剥離可能シールでも溶着条件は別個に設定し、弱シール部28の開通のための外力<弱シール部38の開通のための外力とする必要がある。同じ開封可能な弱シール部であっても隔室29, 30間を区画する弱シール28はポリエチレンフィルム同士であり、上記のように温度として130℃程度であり、他方、内袋32の弱シール部38のシール温度は環状ポリオレフィン系樹脂フィルム同士の溶着であり、素材の溶融温度が高くなるため、弱シール部28の開通のための外力<弱シール部38の開通のための外力とする必要も加味すると、弱シールといっても180℃程度と高くなる。
【0027】
排出制御室40は下側隔室30と排出口18との間において外側容器10の内部に形成され、かつ排出口18に常時開口している。また、内袋32との一般的位置関係であるが第2の隔室30と排出口18との間において排出制御室40の内側に内袋32は配置されている。
【0028】
次に、この発明の実施形態における外袋10に対する内袋32の固着構造について詳細に説明すると、この実施形態では内袋32は外袋10の全幅近く即ち外袋10の左右対向側縁の少し手前まで延びており、換言すれば内袋32はその幅が外袋10の幅より幾分狭くなっている。図5及び図6にて後述する輸液バッグ製造工程から明らかとなろうが、内袋32の弱シール部38(封止部)の上側部38-3の両端及び左右両側部38-1, 38-2は外縁部が外袋を構成するフィルム片12, 14により挟まれ、この部位において強シール部16はその幅が幾分広くとられ、幅広部16-1を構成している(内袋32を保持し得るものであれば幅広とせず同一幅のままでも良い)。内袋32の弱シール部38の上側部38-3の幅方向両端は強シール部16の幅広部16-1における上下フィルム片12, 14間で強シールされることにより一体化され、下側隔室30の下縁が区切られまた下側隔室30と排出制御室40とが液密的に隔離される。即ち、内袋32の弱シール部38の上側部38-3(内側容器の第2の隔室30との近接側における弱シール部38)と、強シール部16の幅広部16-1(内側容器の第2の隔室30との近接側における弱シール部38を両端において外側容器の対向外周側部16に下側隔室30と排出制御室40とを分離するべく連結する本発明の連結部を構成する)とがこの実施形態における本発明の第2の隔壁を構成する。即ち、下側隔室30は、第1の隔壁としての弱シール部28と、内袋32の弱シール部38の上側部38-3が強シール16の幅広部16-1に一体化されることにより構成される第2の隔壁と、の間に位置している。排出制御室40は上述のように排出口18に常時開口しているが、この実施形態においては、内袋32の弱シール部38の上側部38-3を強シール16の幅広部16-1に一体化することにより構成される第2の隔壁が排出制御室40の上側を区切ることになる。そして、排出制御室40は弱シール部38の開通時に隔室29, 30の薬液を内袋32の少量薬剤と共に排出口18に導く役割を果たすことになる。内袋32の弱シール部38の上側部38-3を下側隔室30の下縁となる第2の隔壁と兼用させたこの実施形態の構造は外袋10の限定された内部空間の有効利用が可能となり、他方、内袋32の外表面は強シール(16, 42)との溶着部(38-3, 38-1, 38-2, 44)以外において排出制御室40に開放のままであるため、後述のように内袋32の滅菌に有利である。そして、この実施形態においては、内袋32の弱シール部38の左右両側部38-1, 38-2も幅広部16-1を構成するフィルム片12, 14間に挟着され強シールされている。即ち、内袋32の上側部38-3の両端と溶着して本発明の連結部を構成する強シール部16(幅広部16-1)はこれに連接して及び内袋32の左右両側部38-1, 38-2にも強溶着される構造となっている。この構造は開通時に内袋32の左右両側部38-1, 38-2を保持することで、内袋32の上側部38-3及び下側部38-4に外力を集中的に加えてその開通に至らせ薬液の円滑な排出に寄与させることができる点で有利である。
【0029】
次に、外袋10に対する外力よって内袋32を開通させるための、外袋10に対する内袋32の固着構造について詳細に説明すると、内袋32は外周に沿った弱シール部38における幅方向における左右両側部38-1, 38-2(図1)が外袋10の強シール部16(幅広部16-1)を構成する上下のフィルム片12及び14間において強溶着され、かつ上側部38-3(図1図3及び図4)が全幅に沿って外袋10の上下のフィルム片12及び14の対向面に強シール(剥離不能溶着=固着)されている。内袋32の上側部38-3を外袋10の対向面に対する強シール部は符号42にて表され、この強シール部42(本発明の外力付与部)は強シール部16の左右両側部分に一体連接するように全幅に沿ってかつ内袋32の弱シール部38における上側側部38-3と上下殆ど重なるように(図2及び図3参照)延設されている。強シール部42により、外袋10の内部に内袋32が第2の隔室と近接側において固着され、かつ外部から加圧することにより生ずる液圧を受けて内袋32を拡開・開通に至らしめることができる。そして、内袋32は外周に沿った弱シール部38における下側側部38-4(排出口18と近接側)については次に説明のポイントシール部44を除き外袋10とはフリー(非溶着)である。そのため、内袋32の外面における非溶着部を排出制御室40に開口させることができる。排出制御室40には輸液バックの製造工程における湿熱下の滅菌のための少量の水を充填することができる。そして、内袋32は外周に沿った弱シール部38における下側側部38-4(内袋32における封止部の第2隔室30との離間側)における幅方向の中央部位において、外袋10の対向面に局部的に強シール(所謂ポイントシール)され、この局部的な強シール部(本発明の補助的外力付与部)を44にて表す(図2も参照)。局部的な強シール部44は外力による内袋32の全周の開通及び開通時の姿勢維持に寄与させることができる。本発明の外力付与部としての強シール部42は外袋10の内面に対する内袋32の外面の溶着であるため、ポリエチレン同士の溶着であり、溶着温度は前述の通り150℃程度であり、シール金型間で挟着しても環状ポリオレフィン同士である内袋32の内面同士が溶着されることはなく、強シール部42と内袋の弱シール部38(の上側部38-3)とを重ねた実施形態の配置としても弱シール部38は弱シール部のままである。
【0030】
輸液バッグ開通時の外袋10への外力を内袋32にその開封のため伝達する本発明の外力付与部は強シール部42により構成され、強シール部42は内袋32の弱シール部38における上側部38-3に上下で重なるように幅方向に設けられている。そして図2及び図3の断面図において強シール部42(対向面間の溶着部を太い実線にて示す)と弱シール部38の上側部38-3とは紙面と直交して実質的に全幅に延びている。内袋32の弱シール部38(対向面間の溶着部を太い点線にて示す)の上側部38-3においては、実質的全幅において、内袋32を構成する上下合成樹脂フィルム片34, 36の端縁部34-1, 36-1は外袋10を形成する上下合成樹脂フィルム片12, 14の内面に沿って隔室30内に向け幾分延出されており、この端縁部34-1, 36-1は外袋10を構成する上下フィルム片12, 14の対向面に全幅で強溶着(強シール部42における端縁部34-1, 36-1の溶着部を42´にて示す)され、他方内袋32を構成するフィルム片34, 36の端縁部34-1, 36-1は内面同士は当然に分離されている。換言すれば、内袋32を構成するフィルム片34, 36間の内面同士の太い点線にて示す溶着部(弱シール部38の上側部38-3)と比較して、外袋10を構成する上下フィルム片12, 14の内面と内袋32を構成するフィルム片34, 36の外面との太い実線にて示す溶着部(強シール部42)はより隔室(30)側に延在している。外袋10を構成する上下フィルム片12, 14が、強シール部42(42´)にて内袋32を構成するフィルム片34, 36における隔室(30)側の延出部34-1, 36-1に強溶着されているこの構成は、開封時における外袋10を構成するフィルム片12, 14間の拡開による外力を隔室側の端縁部34-1, 36-1を介して内袋32の弱シール部38、特に、内袋32の開封の起点となる上側側部38-3に効率的に伝達することを可能とし、内袋32の開封を確実化することに役立てることができる。
【0031】
本発明では内袋32の内面を構成する樹脂層は環状ポリオレフィン系樹脂フィルム等であり、この上に外袋10と同素材(ポリエチレン)を多層とした構造(図19の実施形態に関連して図22を参照されたい)であるが、内袋32の内面を構成する樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂等)はその溶融温度がその上層を構成する樹脂(ポリエチレン等)の溶融温度より相当高く、そのため、薬剤を収容し外周(38)を弱シールして完成した内袋32を外袋10の内部に収容し、シール金具で外部から挟着することにより外袋10内面と内袋32外面との間(実施形態ではポリエチレンフィルム同士)で強シール(42, 42', 44)しても(シール温度は150℃程度)、内袋32の内面同士(実施形態では環状ポリオレフィン系樹脂フィルム同士)が溶着に至ることはないし、シール金具の温度により内袋32の弱シール部38(シール温度は180℃程度)の適正な弱シール状態が損なわれてしまうこともない。
【0032】
図5及び図6の(a)−(f)は第1の実施形態の輸液バッグの製造工程の一例を順を追って説明するものであり、筒状合成樹脂フィルムはロールに巻かれており、ロールから引き出されたシートに輸液バッグの輪郭形状に従って強シール及び弱シールを行い、外袋となる素材48は、ロールから引き出された筒状ポリエチレン多層フィルムシートに製品における強シール及び弱シールとなる一部の部位を含めて予め強シール及び弱シールを施し(筒状シートの上下対向面を溶着し)、その後外袋10の輪郭に従ってトリミングしたものを示す。素材48の外周部は所々に強シールされておりこれは製品の強シール部16(図1)の一部となる。また、弱シール部28は既に形成されている。後に混注口の装着部位となる未シール部を48-1にて示す。
【0033】
次の工程(b)は予め製造済の内袋32の挿入工程を示す。内袋32は図1図4を参照して既に説明のように、外周を弱シール部38とし、内部に微量薬剤が収納済となっており、かつ表裏面を離可能な保護膜により被覆した状態で提供される。内袋32の幅W1は外袋となる素材48の幅W2より幾分狭くとられており、外袋の排出口装着側となる素材48の端部48-2は未溶着であり、端部48-2における上下フィルム片間に内袋32が表裏面の保護膜を剥離された後、個々にカットされ、所定位置まで挿入される(矢印A)。内袋の製造工程の具体例については図19の実施形態との関連において後述する。
【0034】
工程(c)は挿入後の内袋素材48に対する固着(強シール)工程を示し、対向する一対の加熱面が幅方向に延びるシール金型の挟着により内袋32の外周弱シール部38における内側(隔室側)側部38-3が外袋素材48の対向内面に強溶着され、強シール部42(図2及び図3の42´の部位も含む)が形成され、同時に強シール部16における内袋32の側部38-1, 38-2を固着している幅広部位16-1も形成される。強シール部(42)の形成のためのシール金型は強シール部の大きさに準じた大きさの加熱面を持っているが、外袋10を構成するフィルム片12, 14の内面と内袋32を構成するフィルム34, 36の外面とはポリエチレンフィルム同士であり、前述のように150℃程度の温度で、シール金型により図2及び図3に示す内袋32の隔室30の側への延出端部34-1, 36-1に至るまで強シールされ、強シール部42(42´で示す部位も)が形成される。シール金型は、当然に、内袋32を構成するフィルム片34, 36における隔室30の側への延出端部34-1, 36-1の内面同士も加圧するが、内袋32の内面を構成する環状ポリオレフィン系樹脂は溶融温度が高いため、150℃程度に加熱したシール金型では内袋32を構成するフィルム片34, 36における隔室30の側への延出端部34-1, 36-1は内面同士では溶着されない。また、内袋32の弱シール部38にもシール金型の熱が加わるが弱シール部38は弱シールのままである。
【0035】
図7(a)(b)はシール金型による強シール部42の形成を模式的に示す断面図であり、金型は上部ダイ102と下部ダイ104(図6の紙面直交方向に全幅に延びる)とを備え、上述の150℃程度といった所定温度に加熱された上下のダイ102, 104間で外袋素材48と内袋32とが挟着され、外袋素材48と内袋32とは対向面で上下のダイ102, 104による加熱下で図7(a)のように密着される。この際、内袋32を構成するフィルム片34, 36における封止部38-3だけでなく封止部38-3からの延出端部34-1, 36-1も加熱かつ加圧される。したがって、封止部38-3の外面だけでなく延出端部34-1, 36-1の外面も低溶融温度故外袋素材48の対向内面に強シールされる。そして、延出端部34-1, 36-1の内面同士は高溶融温度層同士であるためダイ102, 104による加熱下での加圧に関わらず溶着は起こらない。封止部38-3は内面を構成する樹脂フィルム層の高溶融温度(上述のように180℃程度)故にシール金型からの熱に関わらず弱シールとして維持される。所定溶着時間経過後に上下のダイ102, 104が図7(b)で示すように離間する。外袋素材48の内面と内袋32の外面とが強溶着(太実線)されることで、強シール部42が形成され、延出端部34-1, 36-1の外面も外袋素材48の対向内面に強シール(太実線で表す)され、封止部38(下側側部38-4)は弱シール(太破線)のままであり、図3における外袋10に対する内袋32の取り付け構造が得られる。尚、作図上図3図7とで位置関係が左右反対となっていることに注意されたい。
【0036】
図6に示す、工程(d)では外袋の外周の強シール部16の一部である素材48の排出口側の端部48-4が強シールされ、内袋32を排出口側で外袋対向面に固着するポイントシール部44(図2)も形成されるが、48-5の部位は排出口18の装着用の開口部として未シールのまま残される。
【0037】
工程(e)においては未シール部位48-5への排出口18の装着及び強シールがされ、これについては図1及び図2に既に説明の通りであり、また、素材48の状態で未シールのままの部位48-1(図5(a)も参照)には混注口20が挿入され、排出口18と同様に強シールされ、強シール部16A, 16B(図1も参照)が形成される。これにより、排出制御室40が封止形成される。排出制御室40の封止形成に先立って、後述の湿熱下の滅菌のため微量の蒸留水の充填が行われる。この状態では素材48の部位48-6, 48-7が未シールのまま残っている。
【0038】
次の工程では素材48の未シール部位48-6, 48-7より夫々の薬液の充填が行なわれる(矢印 B,C)。薬液充填は同時に行なうことができる。薬液充填後に未シール部位48-6, 48-7の強シールが行なわれ、夫々の薬液を充填した隔室29, 30が得られる。(f)は輸液バッグとして完成したもの(図1のものと同じ)を示す。
【0039】
完成した輸液バッグはこの後蒸気滅菌機による滅菌工程が実施される。輸液バッグの内袋32は側部位38-1, 38-2及び第2隔室側の側部38-3が強シール部16, 42によって外袋対向面に固着されているが、排出口側の側部38-4はポイントシール部44で外袋対向面に固着されているのみであり、内袋32は強溶着部を除いたその全外面で排出制御室40に露出しているため、内袋32の外面は湿熱下での滅菌を受けることができる。即ち、工程(e)における排出制御室40への充填水は蒸気滅菌機での加熱により蒸発し水蒸気となって排出制御室40内に充満し、内袋32の外面を全面的に湿熱下で効率的に滅菌することができる。
【0040】
以上説明の実施形態の輸液バッグにおいて輸液時の開封は輸液バッグを机などの台上に載置し、隔室29, 30の薬液収容部位の一方又は双方を外部から手のひらで加圧して行なう。混注口20の側の隔室29の側のみで加圧を行なった場合は外袋10は隔室29側で弱シール28との接続部位で拡開され、隔室29, 30間を区画する弱シール28に加わる外力により弱シール28を最初に開通させる。これに対して、隔室29, 30の双方の加圧又は排出口18側の隔室30のみ加圧を行なった場合、外袋10は隔室30側における弱シール28の接続部位及び弱シール38(上側部38-3)への接続部位でも拡開される。弱シール38の上側部38-3への接続部位への力伝達は外袋10を構成する合成樹脂フィルム片が強シール部42によって弱シール38の上側部38-3に固着されていることによる。しかしながら、前述のように、弱シール部38を剥離開通する外力>弱シール部28を剥離開通させる外力となっているため、最初は隔室29, 30間を区画する弱シール28が剥離し、更なる加圧の継続により弱シール38を剥離開通させる。即ち、弱シール38は外袋10への接続部位である上側部38-3を起点に剥離開通されるが、外部からの加圧の継続による外袋10を構成する合成樹脂フィルム片12, 14の拡開により排出制御室40側の部位38-4でも剥離開通に至る。そのため、上側隔室29に収容された薬液及び下側隔室30に収容された薬液更には内袋32に収容された薬剤は全て排出口18に導くことができ、薬剤が未混合で輸液されてしまう恐れを排除している。
【0041】
そして、図2及び図3において断面で示すように、強シール部(本発明の外力付与部)42は弱シール38の上側部38-3に沿って設けられる(図2及び図3の紙面直交方向)。そして、内袋32を構成する上下合成樹脂フィルム34, 36の端部34-1, 36-1が隔室30に向けて延出しており、隔室30側への延出端部34-1, 36-1に至るまで外袋10を構成する上下フィルム12, 14の内面に強シールされており、そのため、輸液バッグ開通時の外袋10を構成する上下フィルム12, 14の拡開による外力は上下フィルム12, 14に追従して拡開する内袋32を構成する上下フィルム端部34-1, 36-1を介して、内袋32を構成する上下フィルム34, 36の内面同士の溶着部である弱シール部38の上側部38-3に効率的に伝達され、ここを開封の基点に内袋32の弱シール部38の確実な開封を促すことができる。また、図1において内袋32の弱シール部38は左右両側部38-1, 38-2においても強シール部16(図1の幅広部16-1)に一体化されている構成により、外力が弱シール部38にかかるときに内袋32が外袋10の内面対向部に引っ張られる力を強シール部16が受け、内袋32が内側に引っ張り込まれることがないため、輸液の流れ方向である弱シール部38の上、下側部38-3, 38-4を確実に開封し、輸液を隈なく排出口18に導くことができる。さらに、内袋32は排出制御室42側の側部38-4でポイントシール部44により外袋対向面に強シールされているため、内袋32の全幅での開通を促し、輸液を隈なく排出口18に導くことができかつ開通時において内袋32が排出口離間側に引っ張り込まれることがないため内袋32の姿勢を適性に維持することにも役立てることができる。
【0042】
図8及び図9はこの発明の第2の実施形態を示し、第1の実施形態との相違点は内袋32の上下フィルム片34, 36を剥離可能に溶着する弱シール部60(本発明の内側容器区画部)を備えており、弱シール部60によって内袋32の内部は左右の隔室62, 64に区画され、それぞれの隔室62, 64に別々の補助薬剤を収容することができる。そのため、外袋10における薬液の外部からの加圧下での外力付与部(強シール部42)による内袋32の外周の弱シール部38の開封時に弱シール部60も開封され、隔室62, 64内の薬剤を排出口18に向けて排出することができる。
【0043】
図10は別の実施形態を示し、外袋10の下端10-1(第2の隔室側)が排出口18に向けて幅が徐々に狭められた形状をなしている。この外袋10の下端部10-1に内袋32が位置する。内袋32が外周に沿って弱シール部38(本発明の封止部)を有し、弱シール部38は左右側部38-1, 38-2及び上下側部38-3, 38-4より成る。左右側部38-1, 38-2は外袋10の下端10-1 の形状に倣って傾斜しているが、強シール部16における幅広部16-1を構成する上下フィルムに溶着される。内袋32の弱シール部38の隔室30との近接側(上側側部38-3)と強シール16のこの部位16-1とで下側隔室30と排出制御室40とを隔離する第2の隔壁が形成されることは同様である。また、外袋10の上下フィルム片が内袋32の弱シール部38の上側側部38-3に重なるように強溶着されて、外力付与部となる強シール部42を構成していることも同様である。そして、この実施形態では内袋32の内部は内側容器区画部としての弱シール部60により上下の隔室72, 74に区画されている。
【0044】
図11は更に別の本発明の実施形態を示し、内袋32は、外周の弱シール部38(本発明の封止部)の上側部分38-3の両端が外袋10の外周の強シール部16の左右側部から相当に間隔をおいて終端している。そして、内袋32の外周の弱シール部38の両側部分38-1, 38-2の下端も外袋10の外周の強シール部16の下側部から間隔をおいて終端している。内袋32は弱シール部38の上側部分38-3及び両側部分38-1, 38-2に沿って外袋10の対向面に強シールされ、この強シール部42が本発明の外力付与部を構成し、外袋10への外力により弱シール部38が剥離され、内袋32の開封が行なわれるのは第1の実施形態と同様である。そして、強シール部42は弱シール部38の上側部分38-3及び両側部分38-1, 38-2の下端を越えて、外袋10の外周の強シール部16の下側部まで延設される延出部42-1, 42-2を備えている(図13も参照)。延出部42-1, 42-2は外袋を構成する合成樹脂フィルム対向部を溶着している。即ち、この実施形態では弱シール部38の上側部分38-3並びに両側部分38-1及び38-2が弱シール部38における下側隔室30との近接側となるが、強シール部42に延出部42-1, 42-2を設けることにより下側隔室30と排出制御室40が流密分離され、即ち、強シール部42の延出部42-1, 42-2が内側容器の第2の隔室との近接側における封止部(38-1, 38-2及び38-3)を両端において外側容器の対向外周側部(強シール部)16に下側隔室30と排出制御室40とを分離しつつ連結する本発明の連結部を構成することになる。換言すれば、弱シール部38の上側部分38-3及び両側部分38-1, 38-2と強シール42の延出部42-1, 42-2とが協働することで第2の隔室30と排出制御室40とを分離する本発明の第2の隔壁が構成される。また、内袋32は横方向に延びる弱シール部60(この発明の内側容器区画部)によって内部を夫々が補助薬剤を収容する隔室72, 74に分離している(図12も参照)。
【0045】
図14は別実施形態を示し、外袋10の幅が狭められた下端部10-1Aを有しており、この点図10の実施形態に類似するが、図14では下端部10-1Aはネック状に絞られており、この部位10-1に内袋32(強シール部16, 42と重なった輪郭線を破線にて示す)が収容される。内袋32が封止部38(38-1, 38-2, 38-3及び38-4) を備え、封止部38における下側隔室30と近接した上側部38-3に沿って強シール部42は外袋10の内面を対向した内袋32(弱シール部60により上下の隔室72, 74に区画されている)の内面に固着した構成は図1及びその他の実施形態と相違がない。また、封止部38の上側部38-3の両端及び左右の両側部38-2が外袋10の外周の強シール部16の形成時、外袋10を構成する上下のフィルム片間に挟着され、流密構造を得る構造についても相違がない。尚、この実施形態においては、強シール部16は封止部38の左右の両側部38-2との固着部においても幅は同一を維持している。
【0046】
図14の実施形態では内袋32が外袋10のネック状の下端部10-1Aに収容されており、内袋32が小型化され、寸法精度を出しやすくなる。また、封止部38における輸液流通方向における上下側部38-3, 38-4の長さが短縮し、開通時の応力がより集中的に加わるため、内袋32の剥離開通が容易・確実となる。
【0047】
以上の実施形態においては、強シール部42は内袋32の封止部38における下側隔室30と近接側、即ち、上側部38-3と上下に重なる(被る)又は実質的に重なる(被る)固着(強溶着)構造を採用しているが、強シール部42が封止部38の上側部と被らない構造(強シール部42における対向溶着部が実質的に隔室30側のみに位置する構造)を採用することが可能であり、以下、この実施形態につき、図15を参照して説明すると、図5図1と基本的には同様であり、内袋32は外袋10の外周の強シール部16まで延びており、下側隔室30排出室40間の流密構造を得ている。尚、図1とは相違して、強シール部16は幅広部16-1は備えず、内袋32の両端は強シール部16を構成する上部フィルム間で挟着・シールされる。図1と同様に封止部(弱シール部)38は左右の側部38-1, 38-2及び上下の上下側部38-3, 38-4を備える。縦方向の弱シール部60によって内袋32の内部は左右の隔室62, 64に区画されている。外力付与部としての強シール部42は他の実施形態と同様、外袋10の内面を内袋32の対向外面に固着するが、強シール部42は封止部38-3より隔室30側にずれており、両者は殆ど又は全然被らない配置となっている。即ち、図16に示すように、外袋10を構成する上下フィルム12, 14と内袋32を構成する上下合成樹脂フィルム片34, 36との強溶着は実質的に端縁部34-1, 36-1のみで行われている。外袋10を構成する合成樹脂フィルム片12, 14は内袋32を構成する合成樹脂フィルム片34, 36とは封止部38-3においては溶着されていない。
【0048】
図17はこの実施形態におけるシール金型による強シール部42の形成を図7(b)に準じて模式的に示す断面図であり、所定温度に加熱された上下のダイ102, 104間で外袋30と内袋32とが挟着され、外袋10を挟んで、内袋32を構成するフィルム片34, 36における封止部38-3から第2の隔室32への延出端部34-1, 36-1の加圧が行なわれる。上下のダイ102, 104は外袋10と内袋32との対向面の加圧は延出端部34-1, 36-1より封止部38-3側では行なわない。従って、封止部38-3とは実質的に被らないように延出端部34-1, 36-1が外袋10を構成する上下フィルム片12, 14の対向面に溶着され(延出端部34-1, 36-1の対向内面同士は高溶融温度層同士で溶着は起こらず)、外力付与部としての強シール部42の形成が行なわれる(図16)。
【0049】
この実施形態においても、開封時における外袋10を構成するフィルム片12, 14間の拡開による外力を隔室側の端縁部34-1, 36-1を介して開封部38-3に効率的に伝達することができるため、確実な開封を実現することができる。そして、外力付与部としての強シール部42とが開封部38-3とが重なった溶着構造との比較では、強シール部42とが開封部38-3とが重なった構造の場合は、図3等に示すように溶着部が上下で4箇所重なり、この部位で容器が硬くなり易いが、この実施形態では強シール部42(太実線)と弱シールである開封部38-3(太破線)とは重ならないか又は実質上重ならないため容器が局部的に硬くなりすぎることを防止することができる。
【0050】
図18図8の実施形態の変形実施形態であり、内袋32の封止部(弱シール部)38は左右の側部38-1, 38-2及び上下側部38-3, 38-4を備える。しかしながら、内袋32は小型化され左右の幅が狭くなっており、上下側部38-3, 38-4は左右両側の強シール部16に届いていない。外力付与部としての強シール部42は外袋10の内面を封止部38の上側部38-3において内袋32の外面に強シールする。強シール部42は封止部38の上側部38-3を超えた部分42A, 42Bが外袋10の左右両側の強シール部16まで延びここに一体連結されている。隔室30と排出制御室40との間の流密分離(本発明の第2の隔壁の形成)は内袋32の封止部38の上側部38-3がその両側の強シール部42における外袋10の上下フィルム片を溶着する部分42A, 42Bを介し強シール部16まで延びここに一体連結されていることにより行なわれることになる。部分42A, 42Bは外袋10の対向内面を剥離可能に溶着する弱シールとして構成することも可能である。外力付与部としての強シール部42は図3及び図7に準じて内袋32の封止部38における上側部38-3と被るような構成とし、隔室30と排出制御室40との流密分離状態を確保することができる。即ち、強シール部42が図16のように、内袋32の封止部38における上側部38-3と重ならない構造であると、内袋32の封止部38の上側部38-3と強シール部42の部分42A, 42Bとの接続部において液漏れが生じ、本発明の第2の隔壁としての機能が喪失されることになるから、その機能確保のためシール部42, 38-3の重なりが必要である。
【0051】
図19は第8の実施形態の複室容器を示しており、図14の実施形態と似通っているが、薬液バッグの下部の形状が幾分異なっており、また、外袋10内に内袋32を固定する外袋10の強溶着部16-1の形態にも相違がある。すなわち、強溶着部16-1は外袋10の外周の強シール部16から内袋32に向けて幅の狭い先端部16-1Aが内袋32の上側(隔室30側)隅部まで延設される。そして、内袋32の弱シール部38における左右両側部38-1, 38-2と上側側部38-3との接続部が強溶着部16-1により外袋10に固定されている。先端部16-1Aより排出口18側においては内袋32は外袋10に対しては基本的にはフリーであるが、内袋32は下側側部38-4における両端において、即ち、排出口18を挟むように、ポイントシール部44-1, 44-2により外袋10に固定される。即ち、外袋10の上下フィルム面は内袋32の弱シール部38における下側側部38-4に44-1, 44-2にて示す局所的部位において剥離不能に強溶着されている。図14の実施形態と内袋32は外袋10の幅方向に細長い長方形状をなし、その内部は内側容器区画部としての弱シール部60により上下の隔室72, 74に区画されている。ポイントシール部44-1, 44-2を両側に設置することにより図6(d)(e)にて説明した排出口18の装着時に開口部48-5を構成するフィルム間を広げ易くなり、所定位置への排出口18の挿入をより容易・確実に行なうことができる。
【0052】
次に、この第8の実施形態における内袋32の製造方法を説明すると、図20及び図21において、内袋32を構成する筒状シート状素材80はインフレーション等により成形されたロールRに巻かれている。図22はシート状素材80を構成するフィルムFの断面形状を模式的に示しており、多層ポリエチレンフィルムより成るポリエチレン基材層F1の片面(内袋32の内面となる層)に環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2を形成し、他面(内袋32の外面となる層)にポリアミド樹脂(ナイロン)よりなる保護膜F3を剥離可能に貼着してなる。図20に示すように、ロールRからシート状素材80を引き出すための駆動部82-1, 82-2が下流側に設置される。駆動部82-1, 82-2は適宜の駆動装置を備えており、ロールRからシート状の素材80の所期の引き出し運動の制御を行うことができるように構成される。尚、素材80のインフレーションの際にフィルムFを構成するポリエチレン基材層F1、環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2及び保護膜となるポリアミド樹脂層F3は多重溶融押し出しノズルを使用することにより形成されるが、ポリアミド樹脂層F3は基材層F1に対しては一体化するほどの親和性は無いが、相互の粘着(剥離は可能)は維持してインフレーションが行われる。このため、筒状シート状素材80に対する以下説明の内袋連鎖体成形工程においてポリアミド樹脂層F3(保護膜)は粘着したままに維持される。保護膜F3は、ポリエチレン基材層と親和性の弱い樹脂であれば特に限定されずポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体等を用いることもできる。
【0053】
図23はロールRから引き出された直後のシート状素材80の断面形状を模式的に示しており、扁平であるが両端が閉じた袋状をなしており、シート状素材80の対向内面が図22における環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2となっている。
【0054】
図20に示すようにガイドローラ84, 85間にセンター用シール装置(金型)86-1, 86-2が配置され、金型86-1, 86-2の箇所で一旦停止されたシート状素材78はシール金型86-1, 86-2が図24に示すように合体することにより内面(環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2)同士が幅方向の中心にて所定幅にて剥離可能溶着(弱シール)される。シール金型86-1, 86-2の開放状態での加熱面の長さ分の移動及びこれに継続するシール金型86-1, 86-2の合体によるシールの繰り返しにより図21に示すように弱シール部(センターシール)80Aはシート状素材78の中心線に沿うように全長にわたり形成され、図19における小袋38の弱シール部60となる。センターシール80Aを形成する環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2同士の弱シール温度は図の実施形態に関連して既に説明の通り180℃程度である。
【0055】
ガイドローラ84-2の下流にカッタ88が配置され、カッタ88によりシート状素材80がその幅方向の両端縁部が切除され、シート状素材80はその両側に図25に示すように開口部80B-1, 80B-2を形成する。
【0056】
図20において、カッタ88の下流にはシート状素材80の移動方向に沿って延びる円形柱状の注液本体90-1, 90-2 (後述のようにシートに凸面形状を付与するための成形金型としても役立つ)が配置され、注液本体90-1, 90-2は両側よりシート状素材80の開口部80B-1, 80B-2を介してシート状素材80の内部においてセンターシール80Aに沿うように挿入位置されている(図26(a)も参照)。筒状をなす注液本体90-1, 90-2にその中心線に沿って全長を超えて注液ノズル92-1, 92-2が嵌挿固定されている。注液ノズル92-1, 92-2の上端は液状薬剤の供給管93-1, 93-2(図21)に接続され、薬剤供給管93-1, 93-2はシート状素材80の開口部80B-1, 80B-2より外部に延出され、図示しない夫々の薬剤供給源(タンク及びポンプ等)に接続されている。シート状素材80を介して注液本体90-1, 90-2を挟むようにサイド用シール金型94-1, 94-2 が配置される。図26(a)に示すように、シール金型94-1, 94-2 は横断面において注液本体90-1, 90-2の外径の上及び下半分を略倣う形状の凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bを形成している。この凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bは図20に示すように金型94-1, 94-2の上端面から下端面まで延びている。図26に示すように、金型94-1, 94-2における凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bの両側は平坦面94-1C, 94-2Cを呈しており、この平坦面94-1C, 94-2Cがシート状素材80の両サイドのシールを行う。図20に示すようにサイド用シール金型94-1, 94-2の下方の位置(一つの薬剤封止部の長さ分離間した位置)にクロス用のシール金型95-1, 95-2が配置される。
【0057】
図26(a)はシール金型94-1, 94-2の開放位置を示し、図26(b)は図26(a)の位置からシール用金型94-1, 94-2を合体させたシール位置を示す。平坦面94-1C, 94-2Cがシート状素材80を挟んで合体(図20の左右)することによりシート状素材80にサイドシール80C-1, 80C-2(図19の内袋32の弱シール部38における上下側部38-3, 38-4となる)が形成され、また、シール金型95-1, 95-2が合体(図20の左右)することによりシート状素材80にクロスシール80D(図10の内袋32の弱シール部38における左右両側部38-1, 38-2となる)が形成される。また、金型94-1, 94-2の凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bが注液本体90-1, 90-2の外径の上及び下半分を略倣う形状を呈していることから、シート状素材80は凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bと注液本体90-1, 90-2の外径面との間で挟着され、かつ環状ポリオレフィン系樹脂(COP)層F2同士の弱シール温度である180℃程度で加熱を受けるため凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bの湾曲形状に準じて熱セットされる。そのため、シート状素材80は、シール用金型94-1, 94-2から出てきた状態において、断面が図27に示すように凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bの湾曲形状に準じて凸形状に固定され、シール用金型94-1, 94-2の長さに応じた長さを有した空洞部80E-1, 80E-2が形成される。この空洞部80E-1, 80E-2が図19の内袋32の弱シール部38における上下の隔室72, 74となる。
【0058】
駆動部82-1, 82-2によるシート状素材80の移動とシール用金型94-1, 94-2及び95-1, 95-2によるシール動作と薬剤の注入との連携について説明すると、シート状素材80の移動が停止され、薬剤供給管93-1, 93-2を挟んだ状態でシール用金型94-1, 94-2が図26(b)に示すように合体され、面94-1D, 94-2Dによるサイドシール80C-1, 80C-2の形成が行われる。また、シート状素材80は凹面94-1A, 94-1B; 94-2A, 94-1Bと注液本体90-1, 90-2の外径面との間で挟着されることから、その湾曲形状に準じた凸面形状に熱セットされる。また、シール金型94-1, 94-2から一つの薬剤封止部の長さ分下流の位置ではシール用金型95-1, 95-2は合体されクロスシール80Dの形成が行われる。そして、シール用金型94-1, 94-2及び95-1, 95-2は図20に示すように左右に別れる。このとき、クロスシール80Dは、今回のシール用金型95-1, 95-2の合体により新たに画成された空洞部80E-1, 80E-2に連接された前回のシール用金型95-1, 95-2の合体により画成された空洞部80E-1, 80E-2のボトムを閉塞する。そして、連接した空洞部80E-1, 80E-2はトップ側は未だ開いており、注液ノズル92-1, 92-2の下端92-1A, 92-2Aは上端が未だ開放したままの空洞部80E-1, 80E-2を開口している(図21)。そして、上端が未だ開放したままの空洞部80E-1, 80E-2に夫々の薬剤供給源(ポンプ等)より薬剤96-1, 96-2が注液ノズル92-1, 92-2の下端92-1A, 92-2Aから所定量注入される。そして、シール用金型94-1, 94-2及び95-1, 95-2が再び合体され、シール用金型95-1, 95-2の合体によってクロスシール80Dを形成するが、このクロスシール80Dは薬剤96-1, 96-2の注入が完了した、前回のシール用金型95-1, 95-2の合体により画成された空洞部80E-1, 80E-2のトップを閉塞し、ボトム、サイド及びトップの全周で封止された一つの薬剤封止部が構成され、他方、シール用金型94-1, 94-2の合体により新たなサイドシール80C-1, 80C-2が形成されるとともに、上部が開放した新たな空洞部80E-1, 80E-2が画成され、以下同様の作業の繰り返しにより各々が図19の複室容器の内袋32となる多数の薬剤充填部の連鎖体M(以下内袋連鎖体)が構成される。
【0059】
内袋連鎖体Mは図23にて説明のように保護膜F3が表裏面に貼着されたままであり、この状態で図5及び図6の工程を行う複室型容器製造設備まで移送される。保護膜F3により移送工程中等での内袋連鎖体Mの異物付着防止や無菌状態を確保することができる。そして、図5の複室容器製造工程の実施に際して内袋連鎖体Mにおける保護膜F3を剥離し、次いでクロスシール80Dを中間にて切断することで一つの内袋32として完全分離され、図5(b)で説明のように内袋32の挿入工程を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…外袋(この発明の外側容器)
12, 14…外袋を構成するフィルム片
16…強シール部
16-1…強シール部16の幅広部(本発明の連結部)
18…排出口
20…混注口
28…弱シール部(この発明の第1の隔壁)
32…内袋(この発明の内側容器)
34, 36…内袋を構成するフィルム片
34-1, 36-1…端縁部
38…内袋外周の弱シール部
38-1, 38-2…弱シール部の左右両側部
38-3, 38-4…弱シール部の上下側部
40…排出制御室
42…強シール部(本発明の外力付与部)
42´…端縁部の溶着部
44…ポイントシール部(本発明の補助的外力付与部)
80…シート状素材
80A…センターシール
80B -1, 80B-2…開口部
80C -1, 80C-2…サイドシール
80D…クロスシール
80E-1, 80E-2…空洞部
82-1, 82-2…駆動部
86-1, 86-2…センター用シール金型
88…カッタ
90-1, 90-2…注液本体
92-1, 92-2…注液ノズル
93-1, 93-2…薬剤注入管
94-1, 94-2…サイド用シール金型
95-1, 95-2…クロス用シール金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27