(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交換可能なバッテリによりモータを駆動して走行可能な電動車両と,前記バッテリを充電速度を調節して充電可能なバッテリステーションとに対して,通信網を介して接続された管理サーバであって,
少なくとも前記電動車両の位置及び当該電動車両に搭載されたバッテリの電池残量に基づいて,前記バッテリステーションに格納された前記バッテリの交換可能性を定量的に評価し,当該バッテリの交換可能性の評価値に基づいて,当該バッテリステーションによる当該バッテリの充電速度を決定し,決定した充電速度に関する制御情報を当該バッテリステーションに送信する
管理サーバ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0025】
図1は,バッテリ管理システム100の概要を示す全体図である。
図1に示されるように,バッテリ管理システム100は,交換可能なバッテリ1を搭載した複数の電動車両2と,交換用のバッテリ1の充電を行う複数のバッテリステーション3と,本システム全体の管理を行う管理サーバ4と,電動車両2のユーザが所有するユーザ端末5を含む。電動車両2,バッテリステーション3,管理サーバ4,及びユーザ端末5は,インターネットやBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信によって互いに情報の送受信を行なうことができる。例えば,電動車両2,バッテリステーション3,及びユーザ端末5は,それぞれインターネットを介して管理サーバ4に接続されている。また,ユーザ端末5は,電動車両2やバッテリステーション3との間で近距離無線通信を行なうことができる。また,バッテリ1自体がネットワーク通信機能及び近距離無線通信機能を有しており,バッテリ1が電動車両2,バッテリステーション3,管理サーバ4,及びユーザ端末5と直接通信することもできる。
【0026】
電動車両2は,車両に搭載された一又は複数のバッテリ1から供給される電力により,モータを駆動させることで走行する。電動車両2の例は,電動自動車(電動四輪車)や,電動三輪車,電動スクーター(電動二輪車),電動自転車である。駆動用のバッテリ1の電池残量が低下すると,電動車両2は近くのバッテリステーション3に立ち寄る。バッテリステーション3では,複数のバッテリ1が保管され,充電されている。電動車両2のユーザは,バッテリステーション3から必要な数の充電済みバッテリ1を取り出し,電動車両2に搭載されている消費済みバッテリ1と入れ替える。これにより,電動車両2は,充電済みのバッテリ1を利用して走行を続けることができる。他方,バッテリステーション3には,電池残量の少なくなったバッテリ1が装填される。そうすると,バッテリステーション3は,電力網等の電源から電力供給を受けて,内部に装填されたバッテリ1の充電を開始する。
【0027】
また,本システムにおいて,バッテリ1は規格化されたものであり,様々なタイプの電動車両2で利用できるものであることが好ましい。例えば,同じバッテリ1を電動自動車と電動スクーターの動力源として利用することができることが好ましい。また,電動自動車と電動スクーターでは走行に必要なバッテリ1の数を変えることで,それぞれの車両タイプに併せて出力を調節することもできる。
【0028】
本発明のシステムは,特に電動車両2のシェアリングサービスに適用されることが好ましい。中でも,本発明のシステムは,ドックレス方式の電動車両のシェアリングサービスに適している。具体的に説明すると,ドックレス方式では,交換可能なバッテリ1を搭載した電動車両2が任意の場所に駐車されており,ユーザはその電動車両2を自由に利用することができる。電動車両2はインターネットを介して管理サーバ4に接続されており,管理サーバ4は電動車両2の現在位置をすべて把握している。このため,管理サーバ4はユーザの持つユーザ端末5に電動車両2の駐車場所の案内情報を送ることもできる。また,ユーザはユーザ端末5を介して電動車両2の利用予約を行なうこともできる。また,各電動車両2には施錠装置が設けられており,この施錠装置は管理サーバ4により制御されている。このため,ユーザは,利用を希望する電動車両2を発見した場合,ユーザ端末5を操作して管理サーバ4に対して事前申請を行なうか,あるいは電動車両2に設けられた2次元コード(例えばQRコード(登録商標))をユーザ端末5で読み取ってその車両の識別情報を管理サーバ4に送信するか,あるいはユーザ端末5と電動車両2とで近距離無線通信を行ってその車両から識別情報を取得して管理サーバ4に送信するなどして,利用を希望する電動車両2に関する情報を管理サーバ4へと送信する。管理サーバ4は,電動車両2の利用申請を行ったユーザについて認証処理を行い,そのユーザがその車両の利用権限を有すると判断した場合には,ユーザが指定した電動車両2の施錠装置を解錠する。これにより,ユーザは指定した電動車両2に乗車して移動することができる。
【0029】
また,各バッテリステーション3のバッテリ格納室にも施錠装置が設けられており,この施錠装置は管理サーバ4により制御されている。このため,ユーザは,バッテリステーション3内のバッテリを利用する場合,ユーザ端末5を操作して管理サーバ4に対して事前申請を行なうか,あるいはバッテリステーション3に設けられた2次元コード(例えばQRコード(登録商標))をユーザ端末5で読み取ってそのバッテリの識別情報を管理サーバ4に送信するか,あるいはユーザ端末5とバッテリステーション3とで近距離無線通信を行ってそのステーションから識別情報を取得して管理サーバ4に送信するなどして,利用を希望するバッテリステーション3に関する情報を管理サーバ4へと送信する。管理サーバ4は,バッテリステーション3の利用申請を行ったユーザについて認証処理を行い,そのユーザがそのバッテリステーション3の利用権限を有すると判断した場合には,バッテリステーション3の空きバッテリ格納室の施錠装置を解錠する。これにより,電動車両2から取り出した消費済みバッテリを,バッテリステーション3の空きバッテリ格納室に格納し,管理サーバ4からの制御に基づいて充電が開始される。さらに,バッテリステーション3のバッテリ格納室から充電済みのバッテリを取り出して,電動車両2に搭載することができる。なお,ここでは,消費したバッテリ1をバッテリステーション3に格納した後に,充電されたバッテリ1をバッテリステーション3から取り出せる仕組みとなっているが,本発明はこれに限らず,充電されたバッテリ1をバッテリステーション3から取り出した後に,消費したバッテリ1をバッテリステーション3に格納することとしてもよい。
【0030】
続いて,本システムに含まれる各装置の具体的構成について詳しく説明する。
【0031】
図2は,バッテリ1を搭載した電動車両2の構成を示したブロック図である。電動車両2は,主に交換可能なバッテリ1と車両制御部20を含む。車両制御部20は,バッテリ1に電力線を介して接続されており,このバッテリ1から電力の供給を受けてモータ24を駆動する。なお,電動車両2の種類によって,車両に搭載されるバッテリ1の数は増減する。すなわち,電動車両2に搭載されるバッテリ1の数は,一個であってもよいし複数個であってもよい。また,本システムで利用されるバッテリ1には,それぞれ識別番号(ID)が付与されている。各バッテリ1の識別番号(ID)は,後述する管理サーバ4のバッテリデータベース42に記憶されて一元管理されている。
【0032】
バッテリ1は,主に,バッテリ制御装置(BMS:Battery Management System)10,通信装置11,GPS(Global Positioning System)12,及びバッテリセル13を備える。
【0033】
バッテリ制御装置10は,主に集積回路及び各種のセンサ等で構成されている。バッテリ制御装置10は,一又は複数のバッテリセル13の制御を行なうと共に,電池残量及び充電回数等を含むバッテリ充電情報を計測及び算出することができる。また,バッテリ制御装置10により取得されるバッテリ充電情報には,識別番号(ID)及び電池残量の他に,充電回数,バッテリの電圧,電流,温度,及び満充電容量等が含まれることとしてもよい。なお,バッテリ1の種類又は実施形態においては,バッテリ1にバッテリ制御装置10を必ずしも設ける必要はない。
【0034】
バッテリ1の通信装置11は,バッテリ制御装置10が取得したバッテリ充電情報を外部へ通信する通信機能を持つ。すなわち,バッテリ制御装置10より取得される電池残量等のバッテリ充電情報は,有線通信(CANなど)又は近距離無線通信(Bluetooth(登録商標)など)で,車両制御部20に搭載された残量計27やバッテリステーション3に搭載された検出機32等へ送信されることが好ましい。また,バッテリ1の通信装置11は,インターネットなどの通信網を介して管理サーバ4と双方向通信を行うことができる。すなわち,通信装置11は,バッテリ制御装置10により取得されたバッテリ情報を管理サーバ4に向けて送信したり,又は管理サーバ4からの情報を受信することができる。さらに,バッテリ1の通信装置11は,近距離無線通信によってユーザの所有するユーザ端末5に情報を送信するものであってもよい。なお,バッテリ1の種類又は実施形態においては,バッテリ1に通信装置11を必ずしも設ける必要はない。
【0035】
GPS12は,バッテリ1の現在位置を測定し,これを特定する情報を得るための装置である。GPS12は,複数のGPS衛星から送られた電波に含まれる電波送信時間の情報に基づき,それぞれの電波を受信するのに要した時間を測定して,その時間を示す時間情報をバッテリ制御装置10に送出する。GPS12で取得されたバッテリ1の位置情報は,通信装置11を介して管理サーバ4に送信されることが好ましい。なお,例えば,車両制御部20にGPS23が設けられている実施形態においては,バッテリ1にGPS12を必ずしも設ける必要はない。また,バッテリ1が近距離無線通信でユーザ端末5とペアリングされている場合,ユーザ端末5のGPS53を利用してバッテリ1の位置情報を取得することができるため,この場合もバッテリ1にGPS12を設ける必要はない。
【0036】
バッテリセル13には,公知の充電可能なニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池を使用することができる。
【0037】
車両制御部20は,電子制御装置21,通信装置22,GPS23,モータ24,動力制御装置25,速度計26,残量計27,及び施錠装置28を備える。
【0038】
電子制御装置21は,車両制御部20を構成する各要素22〜28を制御する。電子制御装置21は,CPUなどのプロセッサにより実現できる。電子制御装置21は,例えば残量計27より取得されたバッテリ1の電池残量等を含むバッテリ情報,GPS23により取得された自車の現在の位置情報,及び速度計26により計測された自車の走行速度を適宜得ることができる。また,電子制御装置21は,各種機器から得られた情報の演算処理を行い,通信装置22を介して管理サーバ4に送信できる。電子制御装置21は,管理サーバ4からの制御情報に基づいて,施錠装置28の解錠及び施錠を制御する。
【0039】
通信装置22は,インターネットなどの通信網を介して管理サーバ4と双方向通信を行うことができる。すなわち,通信装置22は,電子制御装置21で演算処理された情報を管理サーバ4に向けて送信し,又は管理サーバ4からの情報を受信することができる。また,通信装置22は,バッテリ1の通信装置11に有線又は無線で接続されていてもよい。すなわち,通信装置22は,バッテリ制御装置10により取得されたバッテリ情報を管理サーバ4に向けて送信し,又は管理サーバ4からの情報を受信することができる。さらに,通信装置22は,近距離無線通信によってユーザの所有するユーザ端末5に情報を送信するものであってもよい。なお,バッテリ1に通信装置11が設けられており,電動車両2の電子制御装置21で演算処理された情報をバッテリ1の通信装置11によってインターネットなどの通信網を介して管理サーバ4と双方向通信を行うことができる実施形態においては,車両制御部20に通信装置22を必ずしも設ける必要はない。また,電動車両2が近距離無線通信でユーザ端末5とペアリングされている場合,ユーザ端末5を中継して,電動車両2と管理サーバ4との間で情報の授受を行なうこともできる。
【0040】
GPS23は,電動車両2の現在位置を測定し,これを特定する情報を得るための装置である。車両制御部20のGPS23は,バッテリ1のGPS12と同様に,複数のGPS衛星から送られた電波に含まれる電波送信時間の情報に基づき,それぞれの電波を受信するのに要した時間を測定して,その時間を示す時間情報を電子制御装置21に送出する。なお,バッテリ1にGPS12が設けられている実施形態においては,車両制御部20にGPS23を必ずしも設ける必要はない。また,電動車両2が近距離無線通信でユーザ端末5とペアリングされている場合,ユーザ端末5のGPS53を利用して電動車両2の位置情報を取得することができるため,この場合も電動車両2にGPS23を設ける必要はない。
【0041】
モータ24は,動力制御装置25を介してバッテリ1から得られた電力を回転出力に変換し,動力伝達機構に伝達する。モータ24からの出力が,動力伝達機構を介して車輪に伝わることで,電動車両2が走行する。
【0042】
動力制御装置25は,バッテリ1のバッテリセル13から供給される電力を制御して,その電力をモータ24に伝達する機能を備える。
【0043】
速度計26は,モータ24や動力伝達機構などの回転数又は位置情報取得装置(GPS)22に基づいて,電動車両2の瞬間の走行速度を算出する計器である。なお,電動車両2の種類又は実施形態においては,電動車両2に速度計26を必ずしも設ける必要はない。
【0044】
残量計27は,バッテリ1の識別番号及び電池残量等を含むバッテリ充電情報を取得する。残量計27は,バッテリ1が備えるバッテリ制御装置10からバッテリ充電情報を取得することとしてもよいし,バッテリ1が接続されたときにバッテリ1の識別番号及び電池残量等を有線通信(CANなど)又は無線通信(Bluetooth(登録商標)など)等を経由して直接検出及び測定することとしてもよい。残量計27によって取得されたバッテリ充電情報は,電子制御装置21へと出力される。なお,電動車両2の種類又は実施形態においては,電動車両2に残量計27を必ずしも設ける必要はない。
【0045】
施錠装置28は,電動車両2を実質的に走行不能にするための施錠機構を有する。例えば,施錠装置28は,電動車両2のタイヤをロックするものであってもよいし,ハンドルをロックするものであってもよい。また,施錠装置28は,電動車両2を電子的にオン又はオフにするものであってもよい。また,施錠装置28は,バッテリ1と電動車両2を同時に施錠するものであってもよいし,別々に施錠するものであってもよい。施錠装置20の解錠は,管理サーバ4からの制御情報に基づいて電子制御装置21により自動で行われることが好ましい。他方で,施錠装置28の施錠は,管理サーバ4からの制御情報に基づいて電子制御装置21により自動で行われてもよいし,ユーザにより手動で行われてもよい。
【0046】
図3は,バッテリステーション3の構成を示したブロック図である。バッテリステーション3は,主に制御装置30,複数の充電器31,検出機32,通信装置33,電源34,及び複数の施錠装置35を備えている。複数の充電器31のそれぞれには,バッテリ1を装填することができる。バッテリ1が装填された充電器31は,制御機30による制御に従って,電源34から電力供給を受けて,バッテリ1を充電する。
【0047】
バッテリステーション3の制御装置30は,複数の充電器31,検出機32,及び通信装置33,及び施錠装置35に接続されている。このため,制御装置30は,通信装置33を介して管理サーバ4から受信した制御情報に基づいて,充電器31によるバッテリ1の充電速度を制御することができる。また,制御装置30は,検出機32がバッテリ1から取得した検出情報を加工し,通信装置33を介して管理サーバ4へと送信することができる。さらに,制御装置30は,バッテリ1の格納室ごとに設けられた施錠装置35を解錠又は施錠することで,バッテリ1の取り出しの可否をコントロールすることができる。
【0048】
充電器31は,バッテリ1と電気的に接続され,電源34からの電力供給を受けて,バッテリ1に対する充電操作を行う装置である。充電器31は,例えば,定電流定電圧方式(CC−CV方式)によりバッテリ1を充電する。この定電流定電圧方式(CC−CV方式)とは,充電初期から一定の電流値で充電を行い,充電の進行に伴ってバッテリの電圧が所定の値に達したときに,その電圧を維持しながら連続的に充電電流値を減少させてゆく充電方式である。
【0049】
また,充電器31は,制御装置30からの制御信号に従って,バッテリ1の充電速度を可変させることができる。例えば,充電器31は,少なくとも,通常の速度で充電する普通充電と,普通充電よりも高速に充電する高速充電の2段階で,充電速度を可変できることが好ましい。また,充電器31は,普通充電と高速充電の他,普通充電よりも低速で充電する低速充電を行うことができるものであってもよい。また,定電流定電圧方式で充電するバッテリ1では,充電速度と充電電流値が一定の電池残量範囲では,ほぼ正比例の関係となる。このため,充電器31からバッテリ1に供給される充電電流値を制御することで,バッテリ1の充電速度を自由に調節できる。例えば,バッテリ1は,主に安全性と耐久性の面から,充電速度と充電電流値に上限が設けられている。このため,充電速度と充電電流値の上限により近い充電は高速充電とし,充電速度と充電電流値の下限により近い充電は低速充電とし,高速充電と低速充電の間の電流値により行う充電を普通充電とすればよい。換言すると,一定範囲内の標準的な速度で行う充電を普通充電といい,普通充電の範囲よりもより高速な充電を高速充電といい,普通充電の範囲よりもより低速な充電を低速充電ということができる。
【0050】
検出機32は,充電状態にあるバッテリ1から識別番号及び電池残量等を含むバッテリ充電情報を取得するための装置である。検出機32は,バッテリ1が備えるバッテリ制御装置10からバッテリ充電情報を取得するものであってもよいし,バッテリ1が接続されたときにバッテリ1の識別番号及び電池残量等を有線通信(CANなど)又は無線通信(Bluetooth(登録商標)など)等を経由して直接検出及び測定するものであってもよい。また,バッテリ1の電池残量は,例えばバッテリ制御装置10によってバッテリ1の充放電電流値を計測し,電流を積算して得られる電気量を満充電の状態の電池残量から減算することで検出することができる。検出機32により検出されたバッテリ充電情報は,制御装置30へと送出される。
【0051】
通信装置33は,バッテリステーション3が通信網を介して管理サーバ4と双方向通信を行うための装置である。通信装置33は,制御装置30で加工された情報を管理サーバ4に向けて送信し,又は管理サーバ4からの情報を受信することができる。また,バッテリステーション3の通信装置33とバッテリ1の通信装置11との間で近距離無線通信を行なうこともできる。
【0052】
電源34は,充電器31に対して電力を供給できるものであれば,公知のものを採用できる。例えば,電源34として,自然エネルギー発電機34aにより得られた再生可能エネルギーを利用することとしてもよい。自然エネルギー発電機34aの例は,太陽光発電機,太陽熱発電機,及び風力発電機等である。自然エネルギー発電機34aは,バッテリステーション3の近傍に設置されたものであることが好ましい。つまり,自然エネルギー発電機34aは,バッテリステーション3に搭載されていてもよいし,バッテリステーション3の近くに配置されていてもよい。また,バッテリステーション3は,電力会社が保有する自然エネルギー発電機34aから,電力網を介して電力の供給を受けてもよい。また,電源34としては,電力網34bから供給される商用電力を利用することとしてもよい。また,電源34は,再生可能エネルギーと商用電力を併用することも可能である。なお,バッテリ1内に蓄えられている電力は,バッテリステーション3を介して外部に販売することができる。例えば,バッテリステーション3は,電力網を介して,バッテリ1内に蓄えられている電力を,電力会社や,会社,一般家庭などに販売することができる。また,バッテリステーション3に装填されているバッテリ1を貸し出したり交換したりすることを通じて,バッテリ1内に蓄えられている電力をユーザに販売することも可能である。
【0053】
施錠装置35は,各バッテリ1をバッテリステーション3から実質的に取出不能にするための施錠機構を有する。施錠装置35は,バッテリ1のそれぞれに対して設けられ,バッテリ1ごとに施錠又は解錠を行なう。例えば,施錠装置35は,バッテリ1自体をバッテリステーション3にロックするものであってもよいし,バッテリ1の格納室を開閉する蓋をロックするものであってもよい。施錠装置35の解錠は,管理サーバ4からの制御情報に基づいて制御装置30により自動で行われることが好ましい。他方で,施錠装置35の施錠は,管理サーバ4からの制御情報に基づいて制御装置30により自動で行われてもよいし,ユーザにより手動で行われてもよい。
【0054】
図4は,管理サーバ4の構成を示したブロック図である。管理サーバ4は,制御部40,通信部41,バッテリデータベース42,電動車両データベース43,ステーションデータベース44,及びユーザデータベース45を有している。管理サーバ4は,バッテリ1,電動車両2,バッテリステーション3,及びユーザに関する情報を一元管理することで,本システムを統制する機能を担う。管理サーバ4は,一つのサーバ装置によってこれらの機能を実行するものであってもよいし,複数のサーバ装置によってこれらの機能を実行するものであってもよい。管理サーバ4の制御部40は,メインメモリに記憶されたプログラムを読み出し,読み出したプログラムに従って所定の演算処理を行う。
【0055】
管理サーバ4の制御部40は,通信部41及び各種データベース42〜45に接続されている。制御部40は,通信部41を介してバッテリ1や,電動車両2,バッテリステーション3,ユーザ端末5から受信した情報を,各種データベース42〜45に記録する。また,制御部40は,各種データベース42〜45に記録された情報に基づいて,電動車両2及びバッテリステーション3に対する制御信号を生成し,その制御信号を通信部41を介して送信することができる。制御部40は,CPUなどのプロセッサによって構成される。
【0056】
通信部41は,管理サーバ4が,通信網を介して,バッテリ1,電動車両2,バッテリステーション3,ユーザ端末5のぞれぞれと双方向通信を行うための装置である。例えば,通信部41は,制御部40が生成した制御信号を,電動車両2及びバッテリステーション3に向けて送信する。また,通信部41は,バッテリ1,電動車両2,バッテリステーション3,及びユーザ5から送信された各種情報を受信できる。
【0057】
バッテリデータベース42は,本システムにおいて利用される複数のバッテリ1のそれぞれについて,その管理情報を記録するための記憶手段である。
図4には,バッテリデータベース42のデータ構造の一例が示されている。
図4に示されるように,バッテリステーション42は,バッテリ1の識別番号(バッテリID)をキー情報として,種々の管理情報を関連付けて記憶している。バッテリ1の管理情報には,例えば,バッテリの現所在場所,充電回数,電池残量,満充電容量,及び劣化度に関する情報が含まれる。
【0058】
また,バッテリデータベース42に,過去に使用された複数のバッテリに関する情報を記憶しておくことで,バッテリの統計データを得ることができる。各バッテリについて,過去に使用された同種のバッテリの統計データをバッテリデータベース42に記録しておくことで,管理サーバ4は,これらの情報から,バッテリの劣化度をより正確に把握することができる。すなわち,バッテリの劣化度は,バッテリ単体の充電回数及び満充電容量以外に,過去の同種バッテリ多数の統計データと比較することで,より正確な予測が可能になる。
【0059】
バッテリの現所在場所の情報としては,バッテリ1が格納されている電動車両2の識別番号(車両ID)や,バッテリステーション3の識別番号(ステーションID)などが記録される。また,バッテリ1が電動車両2やバッテリステーション3に格納されていない場合には,管理サーバ4がバッテリ1自体から受信した現在位置情報(緯度経度情報)が記録されていてもよい。また,電動車両2やバッテリステーション3が,複数のバッテリを格納できるものである場合,バッテリの現所在場所の情報は,車両2やバッテリステーション3が有する複数の格納場所のうち,どの場所にバッテリが格納されているかを示す情報であることが好ましい。これにより,バッテリステーション3が複数のバッテリ1を格納可能なものである場合に,管理サーバ4がバッテリステーション3のどの格納室にどのバッテリ1が格納されているかを把握することができる。なお,
図4に示した例では,頭文字が「V」となっている識別番号は電動車両の識別番号であり,頭文字が「S」となっている識別番号はバッテリステーションの識別番号であり,「−」(ハイフン)以降の番号は電動車両又はバッテリステーションの格納室の部屋番号である。
【0060】
また,バッテリの充電回数に関する情報としては,バッテリがバッテリステーション3に格納された回数の情報を記録することとしてもよいし,バッテリが満充電となった回数を記録することとしてもよいし,又はバッテリ充電後の電池残量が特定された数値または割合以上となった回数を記録することとしてもよい。ただし,バッテリの充電回数を求める方法は,上記した方法に限られず,その他公知の方法を採用することができる。また,
図4に示されるように,バッテリの充電回数に関する情報は,高速充電を行った回数,普通充電を行った回数,及び低速充電を行った回数のように,充電速度に分けて記録されていることが好ましい。充電速度別に充電回数をカウントすることにより,バッテリの劣化度の算出の精度を向上させることができる。
【0061】
また,バッテリの識別番号及び電池残量等を含むバッテリ充電情報に関しては,電動車両2又はバッテリステーション3によって送信された最新のバッテリ充電情報を記録することが好ましい。すなわち,バッテリ1の現所在場所が電動車両2である場合,電動車両2の通信装置22から管理サーバ4に送信されたバッテリ充電情報が記録される。また,バッテリ1の現所在場所がバッテリステーション3である場合,バッテリステーション3の通信装置33から管理サーバ4に送信されたバッテリ充電情報が記録される。また,バッテリ1が電動車両2とバッテリステーション3のいずれにも格納されていない場合,バッテリ1から管理サーバ4に直接送信されたバッテリ充電情報が記録される。なお,バッテリデータベース42において,バッテリ充電情報は,常に最新のものに更新されることが好ましい。
【0062】
また,バッテリの満充電容量に関する情報としては,バッテリの定格満充電容量と,満充電容量とが記録されていることが好ましい。
図4においては,満充電容量の他に,定格満充電容量をカッコ書きで示している。バッテリ1が満充電容量の計測及び算出することのできるバッテリ制御装置10を備えている場合には,このバッテリ制御装置10によってバッテリ1の満充電容量を計測及び算出してもよい。
【0063】
また,バッテリ1がバッテリ制御装置10を備えないものである場合や,バッテリ1がバッテリ制御装置10を備えるものであっても,実際にバッテリ制御装置10が満充電容量を計測及び算出しない場合には,バッテリ使用開始前(新品状態であるとき)の定格満充電容量と,バッテリの劣化を考慮して制御部40により補正された満充電容量等が,バッテリデータベース42に記録されていることが好ましい。通常,バッテリの使用回数が多くなればなるほど,満充電容量の値が小さくなる。このとき,満充電容量は,高速充電の回数,普通充電の回数,及び低速充電の回数に基づいて,定格満充電容量を補正することで,求められた値であることが好ましい。更に,高速充電の方が普通充電よりもバッテリを劣化させ,普通充電の方が低速充電よりもバッテリを劣化させる場合がある。従ってこの場合,高速充電,普通充電,及び低速充電に応じて,バッテリの劣化に与える影響度の重み付けを変化させて,満充電容量を求めることがより好ましい。このように,バッテリデータベース42に,各バッテリの高速充電,普通充電,及び低速充電の回数を記録し,この充電回数の記録と過去の統計データを比較することにより,満充電容量をより正確に推測することができる。なお,上記した満充電容量を求める計算は,制御部40が,バッテリデータベース42に記録されている充電回数に関する情報と,定格満充電容量に関する情報とに基づいて行う。ただし,バッテリの満充電容量を求める方法は,上記した方法に限られず,その他公知の方法を採用することができる。例えば,バッテリ1を充電する際の電気抵抗値を逐次記録していくことで,満充電容量を求めることとしてもよい。また,例えば,バッテリ1自体に満充電容量を逐次記憶するためのバッテリ制御装置10以外のメモリを搭載することも可能である。
【0064】
また,バッテリの劣化度に関する情報は,バッテリデータベース42に記録されている情報に基づいて制御部40が算出する。例えば,劣化度は,A(新しい)からE(古い)までの5段階でランク付けされることとしてもよい。例えば,劣化度Aはバッテリが新品又はそれに近い状態を意味し,劣化度Eはバッテリを廃棄する必要があることを意味する。また,ランク付けの一例としては,制御部40により,満充電容量を比較し,定格満充電容量から実際の満充電容量にまで減少した度合いを,劣化度として求めることができる。しかしながら,実際にバッテリ制御装置10等によりバッテリ単体から計測及び算出された満充電容量は,外部環境や使用負荷によってのバラつきや正確性が低い場合がある。この場合,高速充電の回数,普通充電の回数,及び低速充電の回数に基づいて補正した劣化度を求めることも好ましい。このように,バッテリデータベース42に,各バッテリの高速充電,普通充電,及び低速充電の回数を記録し,この充電回数の記録と過去の統計データを比較することにより,より正確に劣化度を推測することができる。ただし,バッテリの劣化度を求める方法は,上記した方法に限られず,その他公知の方法を採用することができる。
【0065】
さらに,本システムにおいて,バッテリ1は,その劣化度に応じて,利用可能な電動車両2やその他電動機器のカテゴリが定められていることが好ましい。例えば,
図4に示されるように,電動車両2は,電気自動車などの大型電動車両と,電動スクーターや電動アシスト自転車などの小型電動車両にカテゴリ分けされる。また,その他の電動機器は,電動工具や屋外照明機器などのポータブル電源と,家庭用蓄電池や電力系統用蓄電池などの定置型蓄電池にカテゴリ分けされる。そして,各バッテリ1は,その劣化度に応じて,管理サーバ4により,どのカテゴリの電動車両やその他電動機器に利用されるかが決定される。例えば,劣化度Aのバッテリは大型電動車両用の電源に利用され,劣化度Bのバッテリは小型電動車両用の電源に利用され,劣化度Cのバッテリはポータブル電源に利用され,劣化度Dのバッテリは定置型蓄電池用の電源に利用される。このように,管理サーバ4は,各バッテリ1の劣化度に応じて,バッテリ1の利用可能な電動車両等のカテゴリを管理する。例えば,管理サーバ4は,カテゴリの異なる電動車両2や電動機器に対してはバッテリ1から電力が供給されないように,各バッテリ1や,各電動車両2,各電動機器を制御することとしてもよい。また,管理サーバ4は,電動車両2や電動機器のユーザがカテゴリの異なるバッテリ1を受け取ることができないように,バッテリステーション3のバッテリ格納室の蓋の施錠状態を制御することもできる。このようにすれば,バッテリの劣化度に応じて,各バッテリを最適な用途に用いることができる。
【0066】
電動車両データベース43には,本システムに含まれる複数の電動車両2のそれぞれについて,識別番号(車両ID)や,車両の現在位置,車両の車種,バッテリの利用履歴などが関連付けて記録されていることが好ましい。車両の車種に関する情報としては,電動車両2の種類や,重量,燃費,年式,あるいは上記バッテリ1の用途に関わるカテゴリに関する情報が含まれる。バッテリの利用履歴には,電動車両2において利用されたバッテリの識別番号(ID)や,そのバッテリを入手したバッテリステーションの識別番号(ID)などが含まれる。
【0067】
ステーションデータベース44には,本システムに含まれる複数のバッテリステーション3のそれぞれについて,識別番号(ステーションID)や,所在地,バッテリの利用履歴,バッテリの充電履歴などが関連付けて記録されていることが好ましい。バッテリの利用履歴には,バッテリステーション3からバッテリ1が取り出された回数や,日付,日時,天候,及び取り出されたバッテリ3の識別番号などの情報が含まれる。バッテリの充電履歴には,バッテリステーションにおいて充電を行ったバッテリの識別番号などの情報が含まれる。
【0068】
ユーザデータベース45には,本システのユーザのそれぞれについて,識別番号(ユーザID)や,パスワード,氏名,連絡先,利用料金の支払口座情報(又はクレジットカード情報),そのユーザが利用可能な電動車両の車種,そのユーザが所有するユーザ端末5の個体識別番号などが関連付けて記録されていることが好ましい。また,管理サーバ4がユーザ端末5から現在位置情報を取得した場合には,その現在位置情報をユーザデータベース45に随時記録しておくこともできる。ユーザデータベース45は,ユーザが電動車両2の利用開始申請を管理サーバ4に送信した際に,管理サーバ4においてユーザが電動車両2の利用権限を有するかどうか,あるいはユーザが電動車両2に関する利用料金の支払能力を有するかどうかの認証処理を行なうときに参照される。
【0069】
図4に示されるように,管理サーバ4の制御部40は,交換可能性評価部40a,プロモーション発信部40b,充放電必要性評価部40c,充放電制御部40d,バッテリ用途管理部40eといった機能部を有することが好ましい。これらの各機能部40a〜40eは,制御部40がメインメモリに格納されたプログラムを読み出し,読み出したプログラムを実行することにより機能する。これらの各機能部40a〜40eの詳細については後述する。
【0070】
図5は,ユーザ端末5の構成を示したブロック図である。ユーザ端末5は,スマートフォンやタブレット型端末などの携帯端末であり,電動車両2を利用することを希望するユーザによって所有されている。ユーザ端末5は,端末制御装置50,記憶部51,通信装
置52,GPS53,表示装置54,及び操作装置55を有する。なお,ここにはユーザ端末5の機能の一例が挙げられているが,その他にユーザ端末5は公知のスマートフォン等が通常備える機能を有していてもよい。
【0071】
ユーザ端末5の端末制御装置50は,ユーザ端末5が備える他の要素51〜55を制御する処理を行う。端末制御装置50としては,CPUいったプロセッサを利用することができる。端末制御装置50は,記憶装置51に記憶されているアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を読み出し,このアプリケーションプログラムに従って他の要素を制御する。また,端末制御装置50は,アプリケーションプログラムに従った演算結果を記憶装置51に適宜書き込んだり読み出したりすることができる。
【0072】
ユーザ端末5の記憶装置51は,端末制御装置50での演算処理等に用いられる情報を記憶するための要素である。具体的に説明すると,記憶装置51は,汎用的な携帯型の情報通信端末を,本発明に係るバッテリ管理システム100におけるユーザ端末5として機能させるアプリケーションプログラムを記憶している。このアプリケーションプログラムは,インターネットを経由してユーザ端末5にダウンロードされたものであってもよいし,ユーザ端末5にプリインストールされたものであってもよい。なお,記憶装置51には,本システム用のアプリケーションプログラム以外にも,その他のプログラムが記憶されていてもよい。ユーザからの指示により,本システム用のアプリケーションプログラムが起動されると,このプログラムに従った処理が実行される。また,記憶装置51には,ユーザ固有の識別情報や,ユーザ端末固有の個体識別情報などが記憶されている。記憶装置51のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また,記憶装置51は,端末制御装置50よる演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有していてもよい。記憶装置51のメモリ機能は,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。
【0073】
ユーザ端末5の通信装置52は,管理サーバ4との間で,インターネット等の通信網を介して情報の授受を行うための装置である。通信装置52は,端末制御装置50の制御に従って,各種情報を管理サーバ4へ送信したり,あるいは各種情報を管理サーバ4から受信したりすることができる。また,ユーザ端末5の通信装置52は,バッテリ1や,電動車両2,バッテリステーション3との間で近距離無線通信することのできる機能を有していてもよい。
【0074】
GPS53は,ユーザ端末5の現在位置を測定し,これを特定する情報を得るための装置である。ユーザ端末5のGPS53は,バッテリ1のGPS12などと同様に,複数のGPS衛星から送られた電波に含まれる電波送信時間の情報に基づき,それぞれの電波を受信するのに要した時間を測定して,その時間を示す時間情報を端末制御装置50に送出する。
【0075】
表示装置54は,端末制御装置50の制御に従って所定の画像等を表示するディスプレイである。表示部22としては,液晶ディスプレイや有機ELなどの公知のディスプレイを用いればよい。
【0076】
操作装置55は,ユーザからユーザ端末5に対する情報の入力を受け付けるための要素である。操作装置55を介して入力された情報は,端末制御装置50へと伝達される。操作装置55は,公知の情報通信端末に利用されている種々の入力装置を採用することができる。操作装置55の例は,タッチパネル,ボタン,カーソル,マイクロフォン,キーボード,及びマウスであるが,これらに限定されない。また,タッチパネルをディスプレイに重ねてタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0077】
続いて,
図6を参照して,ユーザが電動車両2を利用するとき,及びユーザがバッテリステーション3で電動車両2のバッテリ交換を行うときに,本発明に係るバッテリ管理システム100内でやり取りされる情報の概要について説明する。特に,
図6は,電動車両2のシェアリングサービスに,本発明のシステムを適用した実施形態を示している。
【0078】
まず,ユーザが電動車両2を利用する際の情報処理の流れについて説明する。電動車両2は,GPS23にて現在の位置情報を取得し,取得した位置情報を自己の車両IDとともに定期的に管理サーバ4に送信している。また,電動車両2は,自己に搭載されているバッテリ1の電池残量を計測し,計測した電池残量をそのバッテリIDとともに定期的に管理サーバ4に送信している。このため,管理サーバ4は,各電動車両2について,その現在位置とバッテリ1の残量を把握していることとなる。このため,ユーザは,ユーザ端末5のGPS53で取得した現在の位置情報を管理サーバ4に送信することで,管理サーバ4から,ユーザの現在位置付近に存在する電動車両2の位置や,その電動車両2の車種,あるいは電動車両2に搭載されているバッテリ1の残量などの車両情報を得ることができる。例えば,ユーザの現在位置付近の電動車両2の車両情報は,ユーザ端末5の表示装置54に表示されることとなる。
【0079】
次に,ユーザは,乗車を希望する電動車両2を実際に発見すると,例えば電動車両2に設けられた2次元コード(QRコード(登録商標)等)をユーザ端末5で読み取る。電動車両2の2次元コードは,その電動車両2の車両IDなどがコード化されたものであり,ユーザ端末5がこれを読み取ることで,乗車を希望する電動車両2の車両IDを取得できる。また,2次元コードの読み取りに代えて,例えば電動車両2とユーザ端末5の間で近距離無線通信を行い,電動車両2からユーザ端末5に対して車両IDを送信してもよい。また,その際に電動車両2からユーザ端末5にバッテリ1の残量情報を送信することもできる。
【0080】
ユーザは,電動車両2の車両IDを取得すると,ユーザ端末5から管理サーバ4へと車両の利用要求を送信する。車両の利用要求には,ユーザ自身のユーザIDや,各ユーザのパスワード,乗車を希望する電動車両2の車両IDなどの情報が含まれる。管理サーバ4は,ユーザ端末5から車両利用要求を受信すると,そのユーザがその電動車両2の利用権限を有するかどうかを確認する認証処理を行なう。例えば,管理サーバ4は,利用要求を行ったユーザのパスワードが正しいかどうかを確認する。また,管理サーバ4は,ユーザアカウントに有効期限がある場合には,有効期限内であるかどうかを確認したり,利用料金支払いのためのクレジットカードが有効期限内であるかどうかを確認すればよい。また,管理サーバ4は,ユーザアカウントに利用可能な電動車両2の車種の制限がある場合には,利用要求に係る電動車両2の車種がそのユーザの利用可能なものであるかどうかを確認する。さらに,電動車両2の利用予約が可能な場合には,管理サーバ4は,あるユーザの利用要求に係る電動車両2が,すでに他のユーザによって予約されているものでないかどうかを確認する。これらの認証処理を経て,管理サーバ4は,ユーザが電動車両2の利用権限を有する者であると判断した場合,インターネットを介して,その電動車両2に対して施錠装置28の解錠情報(解錠命令)を送信する。これにより,電動車両2の施錠装置28が解錠されて,ユーザはその電動車両2を利用することができる。なお,管理サーバ4から電動車両2に対して解錠情報を送信することに代えて,例えば管理サーバ4がユーザ端末5にインターネットを介して解錠情報を送信し,そのユーザ端末5から電動車両2に近距離無線通信で解錠情報を転送するようにしてもよい。
【0081】
また,ユーザは,電動車両2を実際に発見した場合にその場で利用要求を管理サーバ4に送信することに代えて,予め電動車両2の利用予約を管理サーバ4に送信しておくこともできる。例えば,車両の利用予約に関する情報には,ユーザ自身のユーザIDや,ユーザのパスワード,乗車を希望する電動車両2の車両IDに加えて,利用開始予約日時や,利用終了予定日時の情報が含まれていてもよい。この場合,管理サーバ4は,あるユーザによって予約された電動車両2については,利用開始予約日時まで他のユーザが利用できないように制限する。
【0082】
ユーザが電動車両2の利用を開始すると,電動車両2は,その利用開始情報を管理サーバ4に送信する。利用開始情報には,例えば利用開始場所や利用開始日時に関する情報が含まれる。また,電動車両2は,ユーザによる利用期間中,現在位置情報を定期的に管理サーバ4に送信することが好ましい。このように,電動車両2が定期的に現在の位置情報を管理サーバ4に送信することで,管理サーバ4は各電動車両2の移動経路を把握することができる。
【0083】
ユーザによる電動車両2の利用が終了すると,電動車両2は,その利用終了情報を管理サーバ4に送信する。利用終了情報には,例えば利用終了場所や利用終了日時に関する情報が含まれる。また,ユーザは,電動車両2の終了時に,手動で電動車両2の施錠装置28を施錠する。施錠装置28が施錠されたときには,電動車両2はその施錠情報を管理サーバ4に送信する。これにより,管理サーバ4は,電動車両2の利用が終了し,また施錠がなされたことを把握できる。なお,管理サーバ4において,電動車両2の施錠を制御することもできる。例えば,管理サーバ4は,電動車両2の利用が終了してから一定期間電動車両2の施錠が行われていないと判断した場合,電動車両2に施錠情報(施錠命令)を送信して,電動車両2を施錠する。また,例えば,電動車両2の利用可能時間に予め制限がある場合には,管理サーバ4は,まずユーザ端末5に利用終了情報を送信し,利用終了時刻が近づいていることをユーザに知らせる。その後,ユーザが電動車両2から下車したことを確認した段階で,管理サーバ4は,電動車両2に施錠情報を送信する。なお,管理サーバ4から電動車両2に対して施錠情報を送信することに代えて,例えば管理サーバ4がユーザ端末5にインターネットを介して施錠情報を送信し,そのユーザ端末5から電動車両2に近距離無線通信で施錠情報を転送するようにしてもよい。
【0084】
続いて,ユーザが電動車両2のバッテリを交換する際の情報処理の流れについて説明する。まず,バッテリステーション3は,管理サーバ4に対して,自己のステーションIDとともに,自身に格納されている一又は複数のバッテリ1それぞれのバッテリIDや電池残量を含むバッテリ情報を定期的に送信している。また,バッテリ情報には,バッテリの充電回数や,低速・普通・急速充電の回数などが含まれていてもよい。これにより,管理サーバ4は,バッテリステーション3内の各バッテリ1について,その電池残量や劣化度を把握することができる。
【0085】
ユーザは,電動車両2のバッテリ1の交換を行なうにあたり,ユーザ端末5のGPS53で取得した現在の位置情報を管理サーバ4に送信することで,管理サーバ4から,ユーザの現在位置付近に存在するバッテリステーション3のステーション情報を得ることもできる。このステーション情報には,バッテリステーション3の位置情報や,バッテリステーション3に格納されているバッテリ1に関する情報が含まれる。バッテリ1に関する情報には,例えばバッテリ1の電池残量や,バッテリ1を利用可能な車両のカテゴリに関する情報が含まれることが好ましい。例えば,ユーザの現在位置付近のバッテリステーション3の情報は,ユーザ端末5の表示装置54に表示されることとなる。なお,ユーザは,バッテリステーション3の位置を事前確認したり事前予約したりせずに,バッテリステーション3に立ち寄ってバッテリ1を交換することも当然に可能である。
【0086】
また,管理サーバ4は,ユーザ端末5に対して,バッテリ交換に関するプロモーション情報を発信することもできる。プロモーション情報には,ユーザを誘導したいバッテリステーション3に関する情報や,ユーザに付与する特典などの情報が含まれる。プロモーション情報には,例えば,バッテリステーション3が設置されている商店の情報や,その商店で使えるクーポンなどが含まれる。あるいは,プロモーション情報には,ユーザが管理サーバ4によって指摘されたバッテリステーション3でバッテリ交換を行った場合に,そのユーザに対して付与されるポイント(本システム内で利用可能な金銭的価値を持つポイント)などの情報が含まれていてもよい。これにより,システムの運営者にとって都合の良いバッテリステーション3にユーザを誘導したり,指定のバッテリステーション3でバッテリ交換を行なうことの動機づけをユーザに与えることができる。
【0087】
ユーザは,電動車両2に乗ってバッテリステーション3に到着すると,例えばバッテリステーション3に設けられた2次元コード(QRコード(登録商標)等)をユーザ端末5で読み取る。また,バッテリステーション3が複数の格納室を持つものである場合,2次元コードは,バッテリステーション3の格納室ごとにそれぞれ設けられたものであっておよい。バッテリステーション3の2次元コードは,バッテリステーション3のステーションIDや,バッテリ1を格納している格納室の部屋番号などがコード化されたものである。このため,ユーザ端末5がこの2次元コードを読み取ることで,交換を希望するバッテリ1を格納したバッテリステーション3や格納室のIDを取得できる。また,2次元コードの読み取りに代えて,例えばバッテリステーション3とユーザ端末5の間で近距離無線通信を行い,バッテリステーション3からユーザ端末5に対してステーションIDや格納室のIDを送信してもよい。また,その際にバッテリステーション3からユーザ端末5にバッテリ1の残量情報を送信することもできる。
【0088】
ユーザは,ユーザ端末5から管理サーバ4に対してバッテリの交換要求を送信する。バッテリの交換要求には,ユーザ自身のユーザIDや,ユーザのパスワード,バッテリ交換を希望する電動車両2の車両ID,バッテリステーション3のステーションID,バッテリ1が格納された格納室のIDなどの情報が含まれる。管理サーバ4は,ユーザ端末5からバッテリ交換利用要求を受信すると,そのユーザがそのバッテリステーション3においてバッテリを交換する権限を有するかどうかを確認する認証処理を行なう。例えば,管理サーバ4は,交換要求を行ったユーザのパスワードが正しいかどうかを確認する。また,前述のように,バッテリ1の劣化度に応じてそのバッテリを利用可能な車両のカテゴリに制限がある場合には,管理サーバ4は,バッテリステーション3に格納されているバッテリ1を利用可能なカテゴリが,バッテリ交換の対象となっている電動車両と一致しているかどうかを確認する。さらに,バッテリ交換の予約が可能な場合には,管理サーバ4は,あるユーザの交換要求に係るバッテリ1が,すでに他のユーザによって交換予約されているものでないかどうかを確認する。これらの認証処理を経て,管理サーバ4は,ユーザがバッテリ1の交換権限を有する者であると判断した場合,インターネットを介して,バッテリステーション3に対して施錠装置35の解錠情報(解錠命令)を送信する。これにより,バッテリ1の施錠装置35が解錠されて,ユーザはバッテリステーション3から充電済みのバッテリ1を取り出すことができる。なお,管理サーバ4からバッテリステーション3に対して解錠情報を送信することに代えて,例えば管理サーバ4がユーザ端末5にインターネットを介して解錠情報を送信し,そのユーザ端末5からバッテリステーション3に近距離無線通信で解錠情報を転送するようにしてもよい。
【0089】
また,ユーザは,電動車両2から消費済みのバッテリ1を取り外し,バッテリステーション3から取り出した充電済みのバッテリ1を電動車両2に取り付ける。また,ユーザは,電動車両2から取り外した消費済みのバッテリ1をバッテリステーション3に格納する。バッテリステーション3は,消費済みバッテリ1を受け取ると,管理サーバ4に対して交換完了情報を送信する。この交換完了情報には,ユーザに渡した充電済みバッテリ1に関する情報(バッテリID等)や,ユーザから受け取った消費済みバッテリ1に関する情報(バッテリID等)が含まれる。そして,バッテリステーション3は,管理サーバ4の制御に従ってバッテリ1の充電を行なう。このとき,管理サーバ4からバッテリステーション3に対して充電制御情報が送信される。この充電制御情報には,バッテリ1の充電又は放電の命令や,充放電の速度に関する命令が含まれる。この管理サーバ4が生成した充電制御情報に従い,バッテリステーション3は各バッテリ1の充放電やその速度を制御する。
【0090】
また,ユーザは,バッテリの交換完了後に,手動でバッテリステーション3の施錠装置35を施錠する。施錠装置35が施錠されたときには,バッテリステーション3はその施錠情報を管理サーバ4に送信する。これにより,管理サーバ4は,バッテリの交換が完了し,またバッテリステーション3の施錠がなされたことを把握できる。なお,管理サーバ4において,バッテリステーション3の施錠を制御することもできる。例えば,管理サーバ4は,バッテリ1の交換が終了してから一定期間電動車両2の施錠が行われていないと判断した場合,バッテリステーション3に施錠情報(施錠命令)を送信して,バッテリ1の格納室を施錠する。なお,管理サーバ4からバッテリステーション3に対して施錠情報を送信することに代えて,例えば管理サーバ4がユーザ端末5にインターネットを介して施錠情報を送信し,そのユーザ端末5からバッテリステーション3に近距離無線通信で施錠情報を転送するようにしてもよい。
【0091】
なお,ここでは,電動車両2が管理サーバ4やユーザ端末5との間で通信を行なう例について説明した。ただし,電動車両2に搭載されたバッテリ1が外部との通信機能を持つ場合,電動車両2が管理サーバ4やユーザ端末5との間で送受信していた情報の全部又は一部を,バッテリ1と管理サーバ4やユーザ端末5との間で送受信するようにしてもよい。同様に,ここでは,バッテリステーション3が管理サーバ4やユーザ端末5との間で通信を行なう例について説明した。ただし,バッテリステーション3に格納されたバッテリ1が外部との通信機能を持つ場合,バッテリステーション3が管理サーバ4やユーザ端末5との間で送受信していた情報の全部又は一部を,バッテリ1と管理サーバ4やユーザ端末5との間で送受信するようにしてもよい。
【0092】
続いて,
図7から
図10を参照して,管理サーバ4がバッテリステーション3におけるバッテリ1の充電制御情報を生成する処理の流れを説明する。
図7は,充電制御情報生成処理のメインフローを示し,
図8は,
図7のフローに従って各バッテリ1の充電速度を定量的に決定したスコア表の一例を示している。また,
図9は,
図7に示したステップ1のサブフローを示し,
図10は,電動車両2やバッテリステーション3の位置関係を模式的に示している。
【0093】
図7に示されるように,まず,管理サーバ4の交換可能性評価部40aは,本システムに含まれる複数の電動車両の利用状況に応じて,各バッテリの交換可能性を評価する(ステップ1)。電動車両の利用状況には,少なくとも,各電動車両2の位置情報と,各電動車両2に搭載されたバッテリ1の電池残量に関する情報が含まれる。特に,電動車両2の位置情報は,ユーザによって利用開始された地点における位置情報であることが好ましい。例えば,ユーザが電池残量の少ないバッテリ1を搭載した電動車両2を利用開始した場合,その電動車両2の近くに存在するバッテリステーション3に格納されているバッテリは交換可能性が高いと評価される。他方で,ユーザが電池残量の多いバッテリ1を搭載した電動車両2を利用開始した場合,その電動車両2の近くに存在するバッテリステーション3に格納されているバッテリは交換可能性が低いと評価される。また,交換可能性評価部40aは,電動車両2の利用開始時の位置情報とそこに搭載されているバッテリ1の電池残量とに基づいて,その電動車両2の走行可能範囲の限界地点を推定してもよい。そして,交換可能性評価部40aは,電動車両2の走行可能範囲の限界地点付近に存在するバッテリステーション3については,そこに格納されているバッテリ1の交換可能性が高いと評価する。つまり,電動車両2が順調に走行した場合に,バッテリ1の電池残量が少なくなってきた地点付近において,ユーザはその電動車両2のバッテリ1を交換する可能性が高いと考えられる。このように,交換可能性評価部40aは,ユーザによる利用開始時点における電動車両2の位置情報や電池残量などに基づいて,各バッテリステーション3内のバッテリ1の交換可能性を評価するとよい。これにより,ユーザが電動車両2を利用開始した時点からすぐにバッテリ1の充電速度等を制御することが可能になるため,ユーザがバッテリステーション3に到着したにも関わらずバッテリ1の充電が済んでいないといった状況を回避できる。
【0094】
また,電動車両の利用状況としては,その他,電動車両2の進行方向や,電動車両2の分布密度,電動車両2のユーザの分布密度,電動車両2の利用履歴などを考慮してもよい。これらの複合的な利用状況を考慮して各バッテリ1の交換可能性を評価することで,その評価処理の精度を高めることができる。なお,ステップ1については,
図9及び
図10を参照して,その評価方法の詳細を後ほどさらに詳しく説明する。
【0095】
次に,管理サーバ4の交換可能性評価部40aは,プロモーション発信部40bからユーザに発信されたプロモーション情報に応じて,各バッテリ1の交換可能性をさらに評価する(ステップ2)。例えば,管理サーバ4のプロモーション発信部40bは,例えば,電動車両2の出発時,電動車両2の走行時,又は電動車両2の利用終了時などのタイミングで,ユーザ端末5に対して,管理サーバ4側で指定したバッテリステーション3へと誘導するためのプロモーション情報を発信する。例えば,プロモーション発信部40bは,ユーザ端末5から車両利用要求又は車両利用予約,あるいはバッテリ交換要求又はバッテリ交換予約を受信したときに,プロモーション情報を発信してもよい。プロモーション情報の内容は特に制限されないが,バッテリステーション3が設置された店舗の広告や,その他ユーザに利益を提供する内容であることが好ましい。例えば,プロモーション情報は,ユーザに対してクーポン,ポイント,あるいは金銭の付与を提示するものであってもよい。このように,プロモーション情報の対象となったバッテリステーション3に格納されているバッテリ1については,ユーザによるバッテリ交換の可能性が高まるといえる。そこで,交換可能性評価部40aは,そのようなプロモーション情報の内容に応じて,各バッテリの交換可能性を評価する。例えば,あるバッテリステーション3内のバッテリ1を対象として,ユーザに対して価値の高いクーポン等を含むプロモーション情報が発信されている場合,交換可能性評価部40aは,そのバッテリ1の交換可能性は高いと評価する。このように,プロモーション情報の価値の高さを基準として,交換可能性を評価してもよい。
【0096】
プロモーション情報発信の条件としては,例えば以下のようなものが考えられる。
<1.出発時にプロモーション情報を発信する場合>
1a.電動車両2の出発地点付近のバッテリステーション3は,充電済みのバッテリ1が不足しているか,もしくは電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて売電(放電)を行いたいので,ユーザが出発地点付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を行なうことを避けたい。この場合,ユーザの行き先(通過地点と到着地点)付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
1b.ユーザの行き先付近のバッテリステーション3では電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて買電(充電)をしたいので,ユーザが出発地点付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を行なうことを避けつつ,尚且つ行き先付近のバッテリステーション3の充電容量を多くしたい。この場合,ユーザの行き先付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
1c.ユーザの出発地点付近のバッテリステーション3で,電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて買電(充電)をすぐに開始したい。この場合,出発地点付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
1d.ユーザの行き先には充電済みのバッテリ1又はバッテリ高残量の電動車両2が少ない。この場合,出発地点付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
1e.第1のユーザが電動車両2を利用し終えた後,その電動車両2を次に利用する第2のユーザがバッテリ交換をせざるを得ない状況であると,第2のユーザに不便性を感じさせてしまう。しかしながら,第1のユーザの通過地点付近や到着地点付近には,交換可能なバッテリ1が存在しない。この場合,出発地点付近のバッテリステーション3で第1のユーザにバッテリ交換を促すために,第1のユーザに対してプロモーション情報を発信する。
【0097】
<2.走行中にプロモーション情報を発信する場合>
2a.ユーザの通過地点のバッテリステーション3は,充電済みのバッテリ1が不足しているか,もしくは電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて売電(放電)を行いたいので,ユーザが通過地点のバッテリステーション3でバッテリ交換を行なうことを避けたい。この場合,その後のユーザの行き先(通過地点と到着地点)付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
2b.ユーザのその後の行き先付近のバッテリステーション3では電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて買電(充電)をしたいので,ユーザが通過地点のバッテリステーション3でバッテリ交換を行なうことを避けつつ,尚且つその後の行き先付近のバッテリステーション3の充電容量を多くしたい。この場合,その後のユーザの行き先(通過地点と到着地点)付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
2c.ユーザの通過地点のバッテリステーション3で,電力市場からの要求に応じて買電(充電)をすぐに開始したい。この場合,通過地点のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
2d.ユーザのその後の行き先には充電済みのバッテリ1又はバッテリ高残量の車両が少ない。この場合,通過地点のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
2e.第1のユーザが電動車両2を利用し終えた後,その電動車両2を次に利用する第2のユーザがバッテリ交換をせざるを得ない状況であると,第2のユーザに不便性を感じさせてしまう。しかしながら,第1のユーザの出発地点付近や到着地点付近には,交換可能なバッテリ1が存在しない。この場合,通過地点のバッテリステーション3で第1のユーザにバッテリ交換を促すために,第1のユーザに対してプロモーション情報を発信する。
【0098】
<3.利用終了時にプロモーション情報を発信する場合>
3a.ユーザの到着地付近のバッテリステーション3で,電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近からの要求に応じて買電(充電)をすぐに開始したい。この場合,到着地付近のバッテリステーション3でバッテリ交換を促すために,プロモーション情報を発信する。
3b.第1のユーザが電動車両2を利用し終えた後,その電動車両2を次に利用する第2のユーザがバッテリ交換をせざるを得ない状況であると,第2のユーザに不便性を感じさせてしまう。しかしながら,第1のユーザの出発地点付近や通過地点付近には,交換可能なバッテリ1が存在しない。この場合,到着地付近のバッテリステーション3で第1のユーザにバッテリ交換を促すために,第1のユーザに対してプロモーション情報を発信する。
【0099】
次に,管理サーバ4の充放電必要性評価部40cは,電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近の需要と供給に基づいて各バッテリ1の充放電の必要性を評価する(ステップ3)。基本的には,電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近において電力余剰(需要<供給)が発生している場合に,バッテリステーション3のバッテリ1に充電(買電)を行っておき,電力市場又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近において電力不足(需要>供給)が発生している場合に,バッテリステーション3のバッテリ1から電力網又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近に放電(売電)するように,充放電必要性評価部40cは,各バッテリ1の充放電の必要性を評価する。また,実際の生じている電力の需要と供給だけでなく,時間帯,天候,気温などの外部要因に基づいて電力の需要と供給を予測し,その予測値に基づいて各バッテリ1の充放電の必要性を評価することとしてもよい。
【0100】
充放電必要性評価部40cは,バッテリ1の充放電の必要性を評価する際に,例えば以下の情報を参考とすることができる。
a.実際の又は予測した需要供給要求タイミング
b.実際の又は予測した電力料金
c.実際の又は予測したCO
2排出量
d.実際の又は予測した炭素税・カーボンクレジット
【0101】
ここで,
図8の表は,上記ステップ1からステップ3に基づいて評価した各バッテリの交換可能性と充放電必要性をスコア化して示している。
図8に示されるように,複数のバッテリステーション(例:ステーション1〜4)のそれぞれに,複数のバッテリ(バッテリA〜L)が格納されていることを想定している。一例として,ステップ1で各バッテリの交換可能性を0〜2の3段階で評価し,ステップ2で各バッテリの交換可能性を0〜5の6段階で評価し,さらにステップ3で各バッテリの充電必要性を0〜2の3段階,放電必要性を0〜−5の6段階で評価している。そして,ステップ1〜3までの評価値を合計した値を充電優先度(最小0〜最大9)とし,その充電優先度に応じて各バッテリの充電速度を決定する。
【0102】
上記評価を終えた後に,管理サーバ4の充放電制御部40cは,バッテリステーション3ごとに,各ステーションが充電対象であるか,それとも放電対象であるかを判断する(ステップ4)。本実施形態では,各バッテリステーション3が,そこに格納された複数のバッテリ1について充電と放電を同時に行なうことができない例を想定している。つまり,バッテリステーション3は,そこに格納された各バッテリ1について充電するかしないか,あるいは放電するかしないかしか制御できず,あるバッテリ1については充電を行い他のバッテリ1については放電を行うといった制御ができない。ここで,充放電制御部40cは,ステップ3で評価した充放電必要性に基づいて,バッテリステーション3ごとに充電対象か放電対象かを判断する。例えば,
図8に示した表では,ステーション4では,バッテリK及びバッテリLの放電必要性が高いと評価されている。例えば,バッテリK及びバッテリLの放電必要性は「−5」であり,それぞれの絶対値が,バッテリJの充電必要性「2」の絶対値を上回っている。このように,例えば,充電必要性のあるバッテリの最大値(絶対値)と放電必要性のあるバッテリの最大値(絶対値)を比較し,前者が後者を上回っている場合には,そのバッテリステーション3全体が放電対象に指定される。このため,ステップ4では,ステーション4が放電対象と判断され,それ以外のステーション1〜3は充電対象と判断される。
【0103】
次に,充放電制御部40cは,放電対象として判断されたバッテリステーション3に格納されている各バッテリ1について,充電優先度が一定の閾値よりも高いか否かを判断する(ステップ5)。充電優先度が一定の閾値よりも高いバッテリ1のみが充電の対象となる。例えば,
図7及び
図8に示した例では,充電優先度が2」以上のバッテリのみが充電の対象と認定される。具体的には,充電優先度が2以上であるバッテリA,B,E,F,G,H,Iのみが充電対象とされ,充電優先度が1以下であるバッテリC,Dについては充電対象から除外される。なお,バッテリC,Dについて充電は行われない。
【0104】
次に,充放電制御部40cは,ステップ1〜ステップ3の評価値から得られた充電優先度に基づいて,充電対象として選定された各バッテリ1の充電速度を制御する(ステップ6)。例えば,充電対象であるバッテリA,B,E,F,G,H,Iのうち,バッテリGの充電優先度は最も高い「6」となり,バッテリFの充電優先度は最も低い「2」となっている。このため,充放電制御部40は,これらの充電対象のバッテリの中では,バッテリGが最も速く充電され,バッテリFが最も遅く充電されるように,各バッテリステーション3に対する充電制御情報を生成する。なお,充電対象と認定された各バッテリについても,それらの充電優先度に応じた充電速度で充電を行なうように,各バッテリステーション3に対する充電制御情報が生成される。管理サーバ4は,充放電制御部40cで生成した充電制御情報を充電対象となっている各バッテリステーション3に送信する。バッテリステーション3は,管理サーバ4から受け取った充電制御情報に従い,そこに格納されている各バッテリ1の充電速度を調整しながら充電を行なう。
【0105】
他方で,ステップ4において充電対象から除外されたバッテリステーション3(ステーション4)について,充放電制御部40cは,そのバッテリステーション3に格納されている各バッテリ1がそれぞれ放電対象か否かを判断する(ステップ7)。例えば,
図7及び
図8に示された例では,ステーション4内のバッテリJ,K,Lのうち,バッテリJは放電が必要とされていないものであるため放電対象から除外され,バッテリK,Lは放電が必要とされているものであるため放電対象と判断される。なお,バッテリJについては,充電又は放電は行われない。
【0106】
次に,充放電制御部40cは,ステップ3で評価した放電必要性に基づいて,放電対象と認定されたバッテリ1の放電速度を制御する(ステップ8)。例えば,バッテリK,Lは放電必要性が「5」と評価されているため,充放電制御部40cは,この評価結果に応じてバッテリK,Lから電力網又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近に放電(売電)を行なう。充放電制御部40cは,放電が必要なバッテリについて放電制御情報を生成し,これを放電対象のバッテリステーション3へと送信する。バッテリステーション3は,管理サーバ4から受け取った放電制御情報に従い,そこに格納されている各バッテリ1の充電速度を調整しながら電力網又はバッテリステーションが設置された施設若しくはその付近への放電を行なう。
【0107】
続いて,
図9及び
図10を参照して,
図7に示したステップ1の詳細について説明する。ステップ1において電動車両2の利用状況に応じて各バッテリ1の交換可能性を評価する場合,管理サーバ4は,どのユーザが,どの電動車両2を,何時,利用開始するのかを判断又は予測する(ステップ1−1)。例えば,管理サーバ4は,ユーザ端末5から受信した車両利用要求や車両利用予約に基づいて,シェアリングサービスを利用するユーザや,ユーザの利用に係る電動車両2,及び電動車両2の利用開始時を特定することができる。また,その他,管理サーバ4は,特定のユーザの利用履歴に基づいてそのユーザの将来の利用状況を予測してもよいし,不特定多数の一般ユーザの利用履歴に基づいてユーザ全体の将来の利用状況を予測することもできる。
【0108】
次に,管理サーバ4は,ステップ1−1での特定又は予測に基づいて,電動車両2に乗車したユーザの移動範囲を予測して,その移動範囲内のバッテリステーション3を判断する(ステップ1−2)。例えば,管理サーバ4は,電動車両2の出発地点(利用開始場所)と,その電動車両2に搭載されたバッテリ1の電池残量から,その出発地点を中心とした移動可能距離を予測し,その移動可能距離を半径とした円をユーザの移動範囲とする。また,管理サーバ4は,電動車両2から定期的に位置情報を取得し,その位置情報に基づいて電動車両2の過去の移動経路を求め,さらにその移動経路から将来の移動方向を予測してもよい。ユーザの将来の移動方向を予測することで,電動車両2に乗車したユーザの移動範囲予測の精度を高めることができる。その他,管理サーバ4は,特定のユーザの利用履歴に基づいてそのユーザの移動範囲を予測してもよいし,不特定多数の一般ユーザの利用履歴に基づいてユーザ全体の移動範囲を予測することもできる。
【0109】
次に,管理サーバ4は,ユーザが利用する電動車両2に搭載されているバッテリ1の交換必要性を評価する(ステップ1−3)。特に,ここでは,ユーザの電動車両2の利用開始時点(出発時点)でのバッテリ1の交換必要性の評価を行なう。例えば,電動車両2のバッテリ1の電池残量が少なければ交換必要性は高いと評価され,電池残量が多ければ交換必要性は低いと評価される。また,管理サーバ4は,ステップ1−2で予測した電動車両2の移動範囲から,その移動によるバッテリ消費量を予測し,その消費量に基づいてバッテリの交換必要性を予測してもよい。その他,管理サーバ4は,特定のユーザの利用履歴に基づいてその電動車両2に搭載されたバッテリ1の交換必要性を予測してもよいし,不特定多数の一般ユーザの利用履歴に基づいて電動車両2全体のバッテリの交換必要性を予測することもできる。
【0110】
次に,管理サーバ4は,ステップ1−1〜ステップ1−3までの判断,予測,評価結果に基づいて,各バッテリステーション内の各バッテリ1について交換可能性を評価する(ステップ1−4)。
図10の例を参照すると,ステップ1−2において,管理サーバ4は,各電動車両について,その利用開始時点の位置と,その予測される電動車両の移動方向から,電動車両の移動範囲を予測した。また,ステップ1−3において,管理サーバ4は,各電動車両に搭載されたバッテリの残量から,バッテリの交換必要性を評価した。これらの前提の下,管理サーバ4は,ステップ1−4において,各バッテリステーション内のバッテリの交換可能性を評価する。特に,ユーザによる電動車両の利用開始時点の情報を元にして,各バッテリの交換可能性を評価することが好ましい。
【0111】
具体的に説明すると,
図10に示した例において,各バッテリステーションの交換可能性が0〜2の3段階で評価される。例えば,ステーション1は,車両A及び車両Bの予測移動範囲内にあり,且つ,車両A及び車両Bの予測移動先に位置している。このため,ステーション1内のバッテリについては,交換可能性が高く,交換可能性「2」と評価される。また,ステーション2,4,5は,いずれも車両A又は車両Bの予測移動範囲内に属している。このため,これらのステーション2,4,5は,交換可能性が一定程度存在することから,交換可能性「1」と評価される。また,ステーション6の近くには,車両Cが位置しているものの,その車両Cにはユーザはまだ乗車していない。ただし,この車両Cには既にあるユーザからの乗車予約がなされており,一定時間内に車両Cの利用が開始されると予測される。さらに,この車両Cに搭載されているバッテリは残量が10%と少なくなっている。このため,ステーション6内のバッテリについては,交換可能性が高く,交換可能性「2」と評価される。他方で,ステーション3は,車両Aの予測移動範囲内に位置しているものの,車両Aの現在位置に近く,また車両Aはバッテリ残量が90%であり十分な残量を有している。このため,ステーション3については,バッテリの交換可能性が低く,交換可能性「0」と評価される。また,ステーション7,8,9については,どの車両の予測移動範囲内にも属しておらず,また各車両の移動先にも存在していないことから,バッテリの交換可能性が低く,交換可能性「0」と評価される。このように,電動車両の利用開始時点の状況に応じて,バッテリステーション内の各バッテリについて交換可能性の評価が行われる。なお,
図10では単純化してバッテリの交換可能性の評価例を示しているが,実際にはより複雑な条件を考慮してバッテリの交換可能性が評価されることとなる。
【0112】
図4に示されるように,管理サーバ4の制御部40は,バッテリ用途管理部40eを有する。このバッテリ用途管理部40eは,基本的に,各バッテリの劣化度に応じて,そのバッテリの利用用途を決定し管理する。前述したとおり,本実施形態では,各バッテリの劣化度に応じて,大型電動車両用(劣化度A),小型電動車両用(劣化度B),ポータブル電源用(劣化度C),定置型蓄電池用(劣化度D)といったように,バッテリの用途が定められている。バッテリ用途管理部40eは,このようなバッテリの用途に基づいて,それを利用することのできる電動車両やその他電動機器のカテゴリを決定する。例えば,大型電動車両用(劣化度A)のバッテリは,電動自動車カテゴリ専用のバッテリであり,小型電動車両の電源,ポータブル電源,あるいは定置型蓄電池としては利用できない。このため,バッテリ用途管理部40eは,この大型電動車両用(劣化度A)のバッテリは,電動自動車以外のユーザが利用できないように,そのバッテリを格納しているバッテリステーションの施錠装置を制御すればよい。あるいは,バッテリ用途管理部40eは,バッテリ自体に直接制御信号を送り,大型電動車両用(劣化度A)のバッテリが電動自動車以外の電動車両に搭載された場合であっても,その車両に電力を車両に供給しないようにバッテリを制御することとしてもよい。また,バッテリ用途管理部40eは,電動車両に直接制御信号を送り,大型電動車両用(劣化度A)のバッテリが電動自動車以外の電動車両に搭載された場合に,そのバッテリから電力を受け取らないように電動車両を制御することとしてもよい。また,例えば,劣化度Bのバッテリ数量が,劣化度Aのバッテリ数量より,ユーザ需要をベースに相対的に量が少ない場合は,劣化度Aのバッテリを重点的にユーザに利用させたりするなどして,充放電の回数を増やしたり,充放電の速度を高めたりすることで,劣化度Aのバッテリの劣化を意図的に早めたりすることもできる。あるいは,劣化度Bのバッテリを充放電する必要が発生した場合は,そのバッテリの劣化を意図的に遅らさせるために,劣化度Bのバッテリの充放電速度を遅くすることとしてもよい。このように,バッテリ用途管理部40eは,各バッテリの劣化度に応じて,そのバッテリの利用用途を決定し,その用途でバッテリが利用されるように,バッテリステーションや,電動車両,バッテリ自体を制御することができる。
【0113】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【解決手段】バッテリ管理システム100は,交換可能なバッテリ1によりモータを駆動して走行可能な電動車両2と,充電速度を調節してバッテリ1を充電可能なバッテリステーション3と,電動車両2及びバッテリステーション3に対して通信網を介して接続された管理サーバ4を含む。管理サーバ4は,少なくとも電動車両2の位置及び当該電動車両2に搭載されたバッテリ1の電池残量に基づいて,バッテリステーション3に格納されたバッテリ1の交換可能性を予測し,当該バッテリ1の交換可能性に基づいて,当該バッテリステーション3による当該バッテリ1の充電速度を決定し,決定した充電速度に関する制御情報を当該バッテリステーション3に送信する。