特許第6564514号(P6564514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564514
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】テコビリマットの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/76 20060101AFI20190808BHJP
   C07D 207/50 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C07D209/76
   C07D207/50CSP
   A61K31/403
   A61P31/20
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-195480(P2018-195480)
(22)【出願日】2018年10月17日
(62)【分割の表示】特願2017-148805(P2017-148805)の分割
【原出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2019-31533(P2019-31533A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/683,905
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506388691
【氏名又は名称】シガ テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ドンチャン
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535705(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101912389(CN,A)
【文献】 J. Org. Chem.,1972年,37(12),2040-2042
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドを生成するための方法であって、
(a)式:
【化3】
の化合物4を、無水マレイン酸(化合物2)と反応させて、式:
【化4】
の化合物9を形成することと、
(b)化合物9を、シクロヘプタトリエン(化合物1)と反応させることと、
(c)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドを回収することと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、o−キシレン中で行われ、反応物が、還流加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、少なくとも75℃の温度のトルエン中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)で回収された前記N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドが、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドを生成するための方法であって、
(a)無水マレイン酸(化合物2)を、tert−ブチルカルバザート(化合物5)と反応させて、式:
【化5】
の化合物10を形成することと、
(b)化合物10を、酸と反応させて、式:
【化6】
の化合物11またはその塩を形成することと、
(c)化合物11を、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルハロゲン化物(化合物8)と反応させて、式:
【化7】
の化合物9を形成することと、
(d)化合物9を、シクロヘプタトリエン(化合物1)と反応させることと、
(e)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドを回収することと、を含む、方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、窒素雰囲気下において無水トルエン中で行われ、反応物が、還流加熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記酸が、HClである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
化合物10が、ステップ(b)の反応の前にi−PrOAc中に溶解される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
塩基が、ステップ(c)の前記反応において存在し、前記塩基が、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、およびジイソプロピルエチルアミンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルハロゲン化物が、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリドである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、10〜25℃の温度で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(d)が、110℃を超える温度で窒素雰囲気下においてトルエン中で行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(e)で回収された前記N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミドが、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製される、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
以下の式:
【化8】
を有する化合物9。
【請求項15】
以下の式:
【化9】
を有する化合物10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年8月16日に出願された米国仮特許出願第61/683,905号
の利益を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
ウイルス感染およびそれに関連した疾患、具体的には、オルソポックスウイルスにより
引き起こされるウイルス感染および関連疾患の治療または予防のためのテコビリマット(
Tecovirimat)を調製するための方法が記載される。商標名ST−246(登
録商標)のテコビリマットは、N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)
−3,3a,4,4a,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6
−エテノシクロプロプ[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロ
メチル)−ベンズアミドの化学名を有する。
【背景技術】
【0003】
オルソポックス属(オルソポックスウイルス科)は、ポックスウイルス科およびコロポ
ックスウイルス(Choropoxivirinae)亜科の一構成員である。この属は
、ヒト及び動物集団において有意な疾患を引き起こす多数のウイルスからなる。オルソポ
ックス属のウイルスには、ウシ痘、サル痘、ワクシニア、および痘瘡(天然痘)が挙げら
れ、これらはすべて、ヒトに感染し得る。
【0004】
天然痘(痘瘡)ウイルスは、特に重要である。生物兵器としての天然痘ウイルスの使用
に対する近ごろの懸念により、オルソポックスウイルスを標的とする小分子療法の開発の
必要性が強調されている。痘瘡ウイルスは、高伝染性であり、ヒトにおいて重症疾患を引
き起こし、結果的に高い死亡率をもたらす(Henderson et al.(199
9)JAMA. 281:2127−2137)。さらに、生物兵器として痘瘡ウイルス
が使用された前例がある。フレンチ・インディアン戦争(1754〜1765)中、英国
兵士は、天然痘患者が使用した毛布をアメリカインディアンに配布して天然痘を流行させ
た(Stern,E.W.and Stern,A.E.1945. The effe
ct of smallpox on the destiny of the Ame
rindian.Boston)。その結果として大流行が生じて、幾つかのインディア
ン部族では50%が死亡した(Stern,E.W.and Stern,A.E.)。
より最近では、ソビエト政府が、極めて有毒な兵器として使用される形態のエアロゾル化
された懸濁液中の痘瘡を生産する計画に着手した(Henderson、上記)。さらな
る関心事は、予防接種した動物において疾病を引き起こす可能性がある組換え型のポック
スウイルスが発現しているという観察報告である(Jackson et al.(20
01)J.Virol.,75:1205−1210)。
【0005】
天然痘ワクチンプログラムは、1972年に終了した。そのため、多くの人には、もは
や、天然痘感染に対する免疫がない。予防接種を受けた人でさえ、特にウイルスの極めて
有毒なまたは組換株からは、もはや完全には防御されないかもしれない(Downie
and McCarthy.(1958)J Hyg.56:479−487;Jack
son、上記)。したがって、痘瘡ウイルスが故意または偶然にのいずれかでヒト集団に
再び持ち込まれたら、死亡率は高くなるであろう。
【0006】
痘瘡ウイルスは、エアロゾル化された液滴により呼吸粘膜に自然伝染し、そこでのリン
パ組織における複製により1〜3日続く無症状感染が生じる。ウイルスは、そのリンパに
より皮膚に広がり、そこでの真皮小血管における複製、結果として起こる感染および隣接
表皮細胞の溶解により皮膚障害が生じる(Moss,B.(1990)Poxvirid
ae and Their Replication,2079−2111. In B
.N.Fields and D.M.Knipe(eds.),Fields Vir
ology.Raven Press,Ltd.,New York)。2つの疾患形態
が、痘瘡ウイルス感染に関係する:最も一般的な疾患形態であり30%の死亡率をもたら
す大痘瘡、およびあまり流行せず、めったに致死とならない(1%未満)小痘瘡である。
死亡は、播種性血管内凝固、低血圧および心血管虚脱の結果であり、これらは、希少な出
血性タイプの天然痘では凝固障害により悪化し得る(Moss、上記)。
【0007】
最近のサル痘ウイルスの大流行により、オルソポックス属のウイルスを標的とする小分
子療法の開発の必要が強調されている。米国におけるサル痘の出現は、新生感染の代表で
ある。サル痘と天然痘は、ヒトでは似たような疾患を引き起こすが、サル痘の死亡率のほ
うが低い(1%)。
【0008】
予防接種は、オルソポックスウイルス疾患、特に天然痘疾患を予防する現行手段である
。天然痘ワクチンは、局所的に複製するワクシニアウイルスの弱毒株を使用して開発され
たものであり、予防接種を受けた個体の95%より多くに痘瘡ウイルスに対する防御免疫
をもたらす(Modlin(2001)MMWR(Morb Mort Wkly Re
p)50:1−25)。予防接種に伴う有害事象の出現は頻繁に発生しており(1:50
00)、全身性痘疱および予防接種部位からの痘疹の偶発的移行が挙げられる。脳炎など
のさらに深刻な合併症は、1:300,000の率で発生しており、これは、多くの場合
、致命的である(Modlin、上記)。有害事象の危険性は、免疫無防備状態の個体で
はより一層顕著である(Engler et al.(2002)J Allergy
Clin Immunol.110:357−365)。よって、予防接種は、AIDS
またはアレルギー性皮膚病に罹患している人々には禁忌である(Englerら)。防御
免疫は、長年にわたって持続するが、天然痘予防接種に対する抗体反応は、接種後10か
ら15年で有意に減少する(Downie、上記)。加えて、予防接種は、組換え型オル
ソポックスウイルスに対する防御にならないことがある。最近の研究により、IL−4を
発現している組換え型マウス痘ウイルスにより、予防接種を受けたマウスが死亡すること
が示された(Jackson、上記)。予防接種に伴う副作用、免疫無防備状態の個体の
忌避、および組換えウイルス株から防御不能のため、天然痘ウイルス感染を治療するため
のより良い予防法及び/又は新規治療法が必要とされている。
【0009】
ワクシニアウイルス免疫グロブリン(VIG)は、予防接種後の合併症の治療に使用さ
れてきた。VIGは、ワクシニアウイルスワクチンを受けた個体から得た血漿の免疫グロ
ブリン画分の等張滅菌溶液である。これは、種痘性湿疹および幾つかの進行性痘疹の形態
を治療するために使用される。この製品は、利用できる量に制限があり、入手が困難なた
め、全身性天然痘大発生の際、使用は指示されていない(Modlin、上記)。
【0010】
シドホビル(Cidofovir)([(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニ
ルメトキシプロピル)シトシン][HBMPC])は、AIDS患者におけるCMV網膜
炎の治療用に承認されたヌクレオシド類似体である。シドホビルは、アデノウイルス、ヘ
ルペスウイルス、ヘパドナウイルス、ポリオーマウイルス、乳頭腫ウイルスおよびオルソ
ポックスウイルスを含むいくつかのDNA含有ウイルスに対してインビトロで活性を有す
ることが示された(Bronson et al.(1990)Adv.Exp.Med
.Biol.278:277−83、De Clercq et al.(1987)A
ntiviral Res.8:261−272、de Oliveira et al
.(1996)Antiviral Res.31:165−172、Snoeck e
t al.(2001)Clin Infect.Dis.33:597−602)。シ
ドホビルは、忠実な痘瘡ウイルス複製を阻害することも判明した(Smee et al
.(2002)Antimicrob.Agents Chemother.46:13
29−1335)。
【0011】
しかしながら、シドホビルの投与は、いくつかの問題点を伴う。シドホビルは、生体利
用可能が不良であり、静脈内投与しなければならない(Laezari et al.(
1997)Ann.Intern.Med.126:257−263)。さらに、シドホ
ビルは、静脈内投与すると用量規定腎毒性を生じる(Lalezariら)。加えて、多
数のウイルスについてのシドホビル耐性が、注目されてきた。シドホビル耐性ウシ痘、サ
ル痘、ワクシニアおよびラクダ痘ウイルス変異体が、研究所において薬物存在下で反復継
代により単離された(Smee、上記)。シドホビル耐性は、オルソポックスウイルスの
複製を処置するためのこの化合物の使用についての有意な制限を意味する。よって、生体
利用可能の不良、静脈内投与の必要および耐性ウイルスの普及が、オルソポックスウイル
ス感染を治療するためのさらなる療法および代替療法を開発する必要性を強調している。
【0012】
シドホビルなどのウイルスポリメラーゼ阻害剤に加えて、オルソポックスウイルスの複
製を阻害するいくつかの他の化合物が報告されている(De Clercq.(2001
)Clin Microbiol.Rev.14:382−397)。歴史的には、メチ
サゾン(基本型チオセミカルバゾン)が、天然痘感染の予防的治療に使用されてきた(B
auer et al.(1969)Am.J Epidemiol.90:130−1
45)。しかしながら、この化合物クラスは、重症悪心および嘔吐などの一般に許容され
ない副作用のため、天然痘の撲滅以来、あまり注目を集めていない。作用機構の研究は、
メチサゾンがL遺伝子の翻訳に干渉することを示唆している(De Clercq(20
01)、上記)。シドホビルと同様に、メチサゾンは、比較的非特異的な抗ウイルス性化
合物であり、アデノウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、アルボウイルスおよび
ミクソウイルス(同文献)を含むいくつかの他のウイルスを阻害し得る。
【0013】
ポックスウイルスの治療に潜在的に有用な化合物のもう1つのクラスの代表は、S−ア
デノシルホモシステインヒドロラーゼ(SAH)の阻害剤である。この酵素は、S−アデ
ノシルホモシステインのアデノシンおよびホモシステインへの変換(ウイルスmRNAの
メチル化および成熟に必要な段階)に関与する。この酵素の阻害剤は、インビトロおよび
インビボでのワクシニアウイルスの阻害に効力を示した(De Clercq et a
l.(1998)Nucleosides Nucleotides.17:625−6
34.)。構造的には、今日までに報告されているすべての活性阻害剤が、ヌクレオシド
アデノシンの類似体である。多くが、炭素環式誘導体であり、例は、ネプラシンA(Ne
placin A)及び3−デアザネプラシンA(3−Deazaneplacin A
)である。これらの化合物は、動物モデルにおいて多少の効力を示したが、多くのヌクレ
オシド類似体同様、全身毒性および/または薬物動力学的特性の低下に悩まされている(
Coulombe et al.(1995)Eur.J Drug Metab Ph
armacokinet.20:197−202、Obara et al.(1996
)J Med.Chem.39:3847−3852)。これらの化合物を経口投与でき
る見込みはなく、天然痘感染に対して予防的に作用し得るか否かは、今のところは不明で
ある。SAHヒドラーゼの非ヌクレオシド阻害剤、ならびに経口生体利用可能であり、望
ましい薬物動態(PK)および吸収、分布、代謝、排泄(ADME)特性を有する、他の
化学的に扱いやすい痘瘡ウイルスゲノム標的の特定は、報告されているヌクレオシド類似
体に対する有意な改善となろう。要約すれば、天然痘ウイルスの複製を阻害する現在利用
可能な化合物は、一般に非特異的であり、使用を制限する毒性および/または疑わしい効
能に悩まされている。
【0014】
米国特許第6,433,016号(2002年8月13日)および米国特許出願公開第
2002/0193443 A1(2002年12月19日発行)には、一連のイミドジ
スルファミド誘導体が、オルソポックスウイルス感染に有用であると記載されている。
【0015】
オルソポックス感染によって引き起こされる感染症及び疾患のための新規治療法および
予防法が、明らかに必要とされている。
【0016】
共同所有のPCT出願第WO2004/112718号(2004年12月29日公開
)は、ウイルス感染およびそれに関連する疾患、具体的には、オルソポックスウイルスに
よって引き起こされるそれらのウイルス感染および関連疾患を治療または予防するための
、二環式、三環式、および四環式アシルヒドラジド誘導体および類似体ならびにそれらを
含有する医薬組成物の使用を開示している。共同所有の米国特許出願第2008/000
4452号(2008年1月3日公開)は、ST−246を生成するためのプロセスをさ
らに開示している。しかしながら、現在のプロセスは、ジアステレオ選択性(エンド対エ
キソ)、いくつかのステップにおける低収率、遺伝毒性化合物および非常に吸湿性の無水
物の使用、ならびにいくつかの原材料を保護することの困難性に直面している。よって、
ST−246を生成するためのより効果的なプロセスを急速に開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、スキーム1に概説されるST−246を作製するためのプロセスを提供する

【化1】
【0018】
本発明は、スキーム2に概説されるST−246を作製するためのプロセスも提供する

【化2】
【0019】
本発明は、スキーム3に概説されるST−246を作製するためのプロセスをさらに提
供する。
【化3】
【0020】
本発明は、スキーム4に概説されるST−246を作製するためのプロセスをさらに提
供する。
【化4】
【0021】
本発明は、スキーム5に概説されるST−246を作製するためのプロセスをさらに提
供する。
【化5】
【0022】
本発明は、ST−246の合成に有用な以下の化合物:
(a)以下の式:
【化6】
を有する化合物6、
(b)以下の式:
【化7】
を有する化合物9、
(c)以下の式:
【化8】
を有する化合物10、および
(d)以下の式:
【化9】
を有する化合物13も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ST−246を生成するためのプロセスが本明細書に記載される。ST−246の化学
名は、N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,
5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[
f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミド
であり、以下の式を有する。
【化10】
【0024】
したがって、ST−246が合成経路Iと呼ばれるプロセスによって調製することがで
きることが発見され、このプロセスは、
(a)式:
【化11】
の化合物3を、tert−ブチルカルバザート(化合物5)と反応させて、式:
【化12】
の化合物6を形成することと、
(b)化合物6を、酸と反応させて、式:
【化13】
の化合物7またはその塩を形成することと、
(c)化合物7を、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(化合物
8)と反応させることと、
(d)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,
5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[
f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミド
を回収することとを含む。
【0025】
合成経路Iに関して、ステップ(b)の酸は、好ましくはHClである。また好ましく
は、化合物6は、ステップ(b)の反応の前にi−PrOAc中に溶解される。さらに好
ましくは、塩基は、ステップ(c)の反応において存在し、この塩基は、ピリジン、4−
ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、およびジイソプロピルエチルアミンからな
る群から選択される。ステップ(c)は、好ましくは、約20℃未満の温度で行われる。
【0026】
ST−246が合成経路IIと呼ばれるプロセスによって調製することができることが
発見され、このプロセスは、
(a)式:
【化14】
の化合物4を、無水マレイン酸(化合物2)と反応させて、式:
【化15】
の化合物9を形成することと、
(b)化合物9を、シクロヘプタトリエン(化合物1)と反応させることと、
(c)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,
5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[
f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミド
を回収することとを含む。
【0027】
合成経路IIに関して、ステップ(a)は、好ましくは、o−キシレン中で行われ、反
応物は、還流加熱される。また好ましくは、ステップ(b)は、少なくとも約75℃の温
度のトルエン中で行われる。
【0028】
ST−246が合成経路IIIと呼ばれるプロセスによって調製することができること
がさらに発見され、このプロセスは、
(a)無水マレイン酸(化合物2)を、tert−ブチルカルバザート(化合物5)と反
応させて、式:
【化16】
の化合物10を形成することと、
(b)化合物10を、酸と反応させて、式:
【化17】
の化合物11またはその塩を形成することと、
(c)化合物11を、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルハロゲン化物(化合物8)
と反応させて、式:
【化18】
の化合物9を形成することと、
(d)化合物9を、シクロヘプタトリエン(化合物1)と反応させることと、
(e)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a,
5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ[
f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミド
を回収することとを含む。
【0029】
合成経路IIIに関して、ステップ(a)は、好ましくは、窒素雰囲気下の無水トルエ
ン中で行われ、反応物は、還流加熱される。また好ましくは、ステップ(b)の酸は、H
Clである。化合物10が、ステップ(b)の反応の前にi−PrOAc中に溶解される
ことも好ましい。さらに、塩基は、好ましくは、ステップ(c)の反応において存在し、
この塩基は、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、およびジイソ
プロピルエチルアミンからなる群から選択される。また好ましくは、4−(トリフルオロ
メチル)ベンゾイルハロゲン化物は、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリドで
ある。ステップ(c)は、好ましくは、約10〜約25℃の温度で行われ、ステップ(d
)は、約110℃を超える温度で窒素雰囲気下においてトルエン中で行われる。
【0030】
ST−246が、合成経路IVと呼ばれるプロセスによって調製することができること
がさらに発見され、このプロセスは、
(a)無水マレイン酸(化合物2)を、tert−ブチルカルバザート(化合物5)
と反応させて、式:
【化19】
の化合物10を形成することと、
(b)化合物10を、シクロヘプタトリエン(化合物1)と反応させて、式:
【化20】
を有する化合物6を形成することと、
(c)化合物6を、酸と反応させて、式:
【化21】
の化合物7またはその塩を形成することと、
(d)化合物7を、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド(化合物8)と反
応させることと、
(e)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a
,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ
[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミ
ドを回収することとを含む。
【0031】
合成経路IVに関して、ステップ(a)は、好ましくは、窒素雰囲気下の無水トルエン
中で行われ、反応物は、還流加熱される。また好ましくは、ステップ(b)は、少なくと
も約75℃の温度の窒素雰囲気下において行われる。ステップ(c)の酸は、好ましくは
、HClである。化合物6は、ステップ(c)の反応の前にi−PrOAc中に溶解され
ることも好ましい。また好ましくは、塩基は、ステップ(d)の反応において存在し、こ
の塩基は、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、およびジイソプ
ロピルエチルアミンからなる群から選択される。ステップ(d)は、約20℃未満の好ま
しい温度で行われる。
【0032】
ST−246が合成経路Vと呼ばれるプロセスによって調製することができることがさ
らに発見され、このプロセスは、
(a)式:
【化22】
を有する化合物7を、4−ヨードベンゾイルクロリド(化合物12)と反応させて、式:
【化23】
を有する化合物13を形成することと、
(b)化合物13を、メチル2,2−ジフルオロ−2−(フルオロスルホニル)アセテ
ートと反応させることと、
(c)N−[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)−3,3a,4,4a
,5,5a,6,6a−オクタヒドロ−1,3−ジオキソ−4,6−エテノシクロプロプ
[f]イソインドール−2(1H)−イル]−4−(トリフルオロメチル)−ベンズアミ
ドを回収することとを含む。
【0033】
合成経路Vに関して、塩基は、好ましくは、ステップ(a)の反応において存在し、こ
の塩基は、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、およびジイソプ
ロピルエチルアミンからなる群から選択される。また好ましくは、ステップ(a)は、約
20℃未満の温度の窒素雰囲気下において行われ、ステップ(b)は、ジメチルホルムア
ミド、メチル2,2−ジフルオロ−2−(フルオロスルホニル)アセテート、およびヨウ
化第1銅の存在下で行われる。
【0034】
任意に、合成経路I〜Vのステップの各々において回収されたST−246は、カラム
クロマトグラフィーによりさらに精製される。
【実施例】
【0035】
実施例1:合成経路I
【化24】

ステップA.化合物6の合成(P=Boc)
【0036】
EtOH(80mL、EMD、AX0441−3)中の化合物3(5.0g、26.3
mmol、国際公開第WO04112718号に従って合成)の混合物に、tert−ブ
チルカルバザート5(3.65g、27.6mmol、Aldrich、98%)を添加
した。窒素雰囲気下で4時間、反応混合物を還流加熱した。反応混合物のLC−MS分析
は、5%未満の化合物3が残存したことを示した。減圧下で反応混合物を蒸発させた。残
留物をEtOAc−ヘキサンから再結晶化し、固体を濾過し、ヘキサン(50mL)で洗
浄し、真空下で乾燥させ、白色固体として化合物6を得た(3.1g、39%収率)。濾
液を濃縮し、ヘキサン中25%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより
精製し、白色固体としてさらに3.64g(46%収率)の化合物6を得た。合計収量:
6.74g(84%収率)。CDCl中でのH NMR:δ 6.30(br s,
1H),5.79(t,2H),3.43(s,2H),3.04(s,2H),1.4
6(s,9H),1.06〜1.16(m,2H),0.18〜0.36(m,2H);
質量スペクトル:327.2(M+Na)

ステップB.化合物7の合成(HCl塩)
【0037】
化合物6(3.6g、11.83mmol)をi−PrOAc(65mL、Aldri
ch、99.6%)に溶解した。ジオキサン中4MのHCl(10.4mL、41.4m
mol、Aldrich)を滴加して、上述の溶液に添加し、20℃未満の温度に保った
。室温で一晩(18時間)、窒素雰囲気下で、反応混合物を攪拌した。結果として得られ
た固体を濾過し、i−PrOAc(15mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、白色固体と
して化合物7のHCl塩を得た(1.9g、67%収率)。濾液をその容積の1/3に濃
縮し、30分間、10〜15℃で攪拌した。固体を濾過し、最小容積のi−PrOAcで
洗浄し、乾燥させ、さらに0.6g(21%収率)の化合物7を得た。合計収量:2.5
g(88%収率)。DMSO−d6中でのH NMR:δ 6.72(br s,3H
),5.68(m,2H),3.20(s,2H),3.01(s,2H),1.07〜
1.17(m,2H),0.18〜0.29(m,1H),−0.01〜0.07(m,
1H);質量スペクトル:205.1(M+H)

ステップC.ST−246の合成
【0038】
乾燥ジクロロメタン(19mL)中の化合物7(0.96g、4mmol)の混合物に
、トリエチルアミン(1.17mL、8.4mmol、Aldrich)を添加し、20
℃未満の温度に保った。15〜20℃で5分間、結果として得られた溶液を攪拌し、それ
に、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド8(0.63mL、4.2mmol
、Aldrich、97%)を滴加し、室温で一晩(18時間)、反応混合物を攪拌した
。LC−MSおよびTLC分析は、ST−246の正分子量およびR値を示したが、反
応は完了しなかった。さらに0.3mL(2mmol、0.5eq)の4−(トリフルオ
ロメチル)ベンゾイルクロリド8を15〜20℃の反応混合物に添加した。次いで、室温
で一晩(19時間)、反応物を攪拌した。LC−MS分析は、約5%の出発材料7がまだ
残存していることを示した。反応が停止し、ジクロロメタン(30mL)を添加した。有
機相を、水(30mL)、飽和水性NHCl(30mL)、水(15mL)、および飽
和水性NaHCO(30mL)で洗浄した。有機相を分離し、NaSO上で乾燥さ
せ、濾過し、濃縮して、粗生成物を得た。ヘキサン中30〜50%のEtOAcで溶出す
るカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、灰白色の固体としてST−246
(0.34g、23%収率)を得た。分析データ(共注入によるH NMR、LC−M
SおよびHPLC)は、国際公開第WO04112718号に従って合成されたST−2
46の分析データと一致し、一貫性があった。

実施例2:合成経路II
【化25】

ステップA.化合物9の合成
【0039】
ディーン・スターク・トラップ装置を用いて、o−キシレン(100mL、Aldri
ch 無水、97%)中の化合物4(2.0g、9.8mmol)と無水マレイン酸2(
0.96g、9.8mmol、Aldrich 粉末、95%)の混合物を一晩還流加熱
した。18時間後、215nmでのLC−MS分析は、所望の生成物9(86%)、非環
化生成物(2.6%)、および二量体副産物(11.6%)を示した。
【化26】
【0040】
反応混合物を45℃に冷却し、減圧下で蒸発させた。残留物をEtOAc(50mL)
に溶解し、濾過により不溶性固体(大半は非環化生成物)を除去した。濾液を濃縮し、ヘ
キサン中50%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、灰白色
固体として、化合物9(1.5g、54%収率)を得た。CDCl中でのH NMR
:δ 8.44(s,1H),7.91(d,2H),7.68(d,2H),6.88
(s,2H);質量スペクトル:285.1(M+H)

ステップB.ST−246の合成(経路II)
【0041】
トルエン(50mL、Aldrich 無水)中の化合物9(0.97g、3.4mm
ol)とシクロヘプタトリエン1(0.51mL、4.42mmol、使用前に蒸留、A
ldrich tech 90%)の混合物を、窒素雰囲気下で95℃に加熱した。95
℃で1.5時間後、254nmでのLC−MS分析は、29%が所望の生成物(エンド:
エキソ=94:6)に変換されたことを示した。結果として得られた溶液を同一の温度で
一晩加熱し続けた。95℃で18時間後、LC−MS分析は、比率94:6のエンド:エ
キソで75%の変換を示した。反応温度を110℃に上昇させ、反応物を監視した。11
0℃で7時間加熱した後、254nmでのLC−MS分析は、96.4%が所望の生成物
(エンド:エキソ=94:6)に変換されたことを示した。減圧下での蒸発により揮発物
を除去し、ヘキサン中30%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより残
留物を精製し、白色固体として、ST−246(0.29g、22.6%収率、HPLC
面積99.7%純度、および100%エンド異性体)を得た。分析データ(共注入による
H NMR、LC−MS、およびHPLC)は、国際公開第WO04112718号に
従って合成されたST−246の分析データと一致し、一貫性があった。さらに0.5g
のST−246(38.9%収率、エンド:エキソ=97:3)をカラムクロマトグラフ
ィーにより回収した。合計収量:0.84g(65.4%収率)。CDCl中でのST
−246エキソ異性体のH NMR:δ 8.62(s,1H),7.92(d,2H
),7.68(d,2H),5.96(m,2H),3.43(s,2H),2.88(
s,2H),1.17(s,2H),0.24(q,1H),0.13(m,1H);質
量スペクトル:377.1(M+H)

実施例3:合成経路III
【化27】

ステップA.化合物10の合成
【0042】
ディーン・スターク・トラップ装置を用いて、無水トルエン(150mL、Aldri
ch 無水)中の無水マレイン酸2(15.2g、155mmol、Aldrich 粉
末95%)とtert−ブチルカルバザート5(20.5g、155mmol、Aldr
ich、98%)の混合物を窒素雰囲気下で還流加熱した。2時間還流した後、出発材料
2は残存せず、254nmでのLC−MS分析は、所望の生成物10(HPLC面積の2
0%)、イミン副産物(18%)、および二置換された副産物(56%)を示した。反応
混合物を濃縮し、ヘキサン中25%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに
より精製し、白色固体として化合物10(5.98g、18%収率、HPLC面積>99
.5%純度)を得た。DMSO−d6中でのH NMR:δ 9.61(s,1H),
7.16(s,2H),1.42(s,9H);質量スペクトル:235.1(M+Na

【化28】
ステップB.化合物11の合成(HCl塩)
【0043】
化合物10(3.82g、18mmol)をi−PrOAc(57mL、Aldric
h、99.6%)に溶解した。ジオキサン中の4M HCl(15.8mL、63mmo
l、Aldrich)を上述の溶液に滴加し、20℃未満の温度に保った。窒素雰囲気下
で一晩(24時間)、室温で溶液を攪拌した。結果として得られた固体を濾過し、i−P
rOAc(10mL)で洗浄し、真空下で1時間、45℃で乾燥させ、白色固体として、
化合物11のHCl塩(2.39g、89%収率)を得た。CDOD中でのH NM
R:δ 6.98(s,2H);質量スペクトル:113.0(M+H)

ステップC.化合物9の合成(経路III)
【0044】
乾燥ジクロロメタン(24mL)中の化合物11(1.19g、8mmol)の混合物
に、ジイソプロピルエチルアミン(2.93mL、16.8mmol、Aldrich
再蒸留グレード)を添加し、20℃未満の温度に保った。結果として得られた溶液を15
〜20℃で5分間攪拌し、これに、4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド8(
1.31mL、8.8mmol、Aldrich、97%)を滴加した。反応物を室温で
5時間攪拌した。LC−MS分析は、正MWを示したが、反応は完了しなかった。さらに
0.48mL(0.4当量)の4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド8を15
〜20℃の反応混合物に添加し、反応混合物を室温で一晩(21時間)攪拌した。反応が
停止し、ジクロロメタン(50mL)を添加した。有機相を、水(50mL)、飽和水性
NHCl(50mL)、水(30mL)、および飽和水性NaHCO(30mL)で
洗浄した。有機相を分離し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を
得た。ヘキサン中30〜35%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより
粗生成物を精製し、淡ピンク色の固体として、化合物9(0.8g、35%収率)を得た
。分析データ(H NMRおよびLC−MS)は、合成経路IIで得た化合物9の分析
データと一致した。

ステップD.ST−246の合成(経路III)
【0045】
トルエン(10mL、Aldrich 無水)中の化合物9(0.5g、1.76mm
ol)とシクロヘプタトリエン1(0.33mL、3.17mmol、使用前に蒸留、A
ldrich tech 90%)の混合物を、窒素雰囲気下で110〜115℃に加熱
した。6時間後、254nmでのLC−MS分析は、95%が所望の生成物(エンド:エ
キソ=94:6)に変換されたことを示した。結果として得られた溶液を同一の温度で一
晩(22時間)加熱した。254nmでのLC−MS分析は、出発材料9の残存、および
所望の生成物(エンド:エキソ=93:7)を示さなかった。反応混合物を濃縮し、ヘキ
サン中25〜35%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、白
色固体としてST−246(0.39g、比率がエンド:エキソ=99:1のHPLC面
積>99.5%純度)を得た。分析データ(共注入によるH NMR、LC−MS、お
よびHPLC)を国際公開第WO04112718号に従って合成されたST−246の
分析データと比較し、一貫性があることが分かった。さらに0.18gのST−246(
HPLC面積>99.5%純度、エンド:エキソ=91:9)をカラムクロマトグラフィ
ーにより回収した。合計収量:0.57g(86%収率)。

実施例4;合成経路IV:
【化29】

ステップA.化合物10の合成
【0046】
ディーン・スターク・トラップ装置を用いて、無水トルエン(51mL、Aldric
h)中の無水マレイン酸2(3.4g、34.67mmol、Aldrich粉末、95
%)とtert−ブチルカルバザート5(4.6g、34.67mmol、Aldric
h、98%)の混合物を窒素雰囲気下で還流加熱した。2.5時間の還流後、出発材料2
は残存せず、254nmでのLC−MS分析は、所望の生成物10(19%のHPLC面
積)、イミン副産物(18%)、および別の副産物(56%)を示した。反応混合物を濃
縮し、ヘキサン中30%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し
、白色固体として、化合物10(1.0g、13.6%収率、HPLC面積>99%純度
)を得た。分析データ(H NMRおよびLC−MS)は、合成経路IIIで得られた
化合物10の分析データと一致した。
【化30】

ステップB.化合物6の合成
【0047】
トルエン(88mL、20容積、Aldrich無水)中の化合物10(4.4g、2
0.74mmol)とシクロヘプタトリエン1(3.22mL、31.1mmol、使用
前に蒸留、Aldrich tech 90%)の混合物を、窒素雰囲気下で95℃に加
熱した。95℃で15時間後、LC−MS分析は、83%が所望の生成物に変換されたこ
とを示した。反応混合物を一晩105℃に加熱した。95〜105℃で合計40時間後、
254nmでのLC−MS分析は、約99%が所望の生成物(エンド:エキソ=93:7
)に変換されたことを示した。反応混合物を濃縮し、ヘキサン中25〜50%のEtOA
cで溶出するカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、白色固体として化合物
6(2.06g、32.6%収率、HPLC面積99.9%純度、および100%エンド
異性体)を得た。H NMRおよびLC−MSは、合成経路Iで得た化合物6の分析デ
ータと一致した。さらに4.0gの6(63.4%収率、比率がエンド:エキソ=91:
9のHPLC面積93%純度)をカラムクロマトグラフィーにより回収した。合計収量:
6.06g(96%収率)。

ステップC.化合物7の合成(HCl塩)
【0048】
化合物6(2.05g、6.74mmol)をi−PrOAc(26mL、Aldri
ch、99.6%)に溶解した。ジオキサン中の4M HCl(5.9mL、23.58
mmol、Aldrich)を上述の溶液に滴加し、20℃未満の温度に保った。窒素雰
囲気下で一晩(18時間)、室温で溶液を攪拌した。結果として得られた固体を濾過し、
i−PrOAc(5mL)で洗浄し、真空下で乾燥させ、白色固体として、化合物7のH
Cl塩(1.57g、97%収率)を得た。分析データ(H NMRおよびLC−MS
)は、合成経路Iの化合物7の分析データと一致した。

ステップD.ST−246の合成(経路IV)
【0049】
ジクロロメタン(13mL)中の化合物7(0.84g、3.5mmol)の混合物に
、ジイソプロピルエチルアミン(1.34mL、7.7mmol)を添加し、20℃未満
の温度に保ち、結果として得られた溶液を5〜10分間攪拌した。4−(トリフルオロメ
チル)ベンゾイルクロリド8(0.57mL、3.85mmol、Aldrich、97
%)を上述の溶液に添加し、20℃未満の温度に保った。反応混合物を室温で2時間攪拌
した。さらに0.2mL(0.4当量)の4−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリ
ド8を反応物に添加し、20℃未満の温度に保った。反応物を室温で一晩(24時間)攪
拌した。反応混合物をジクロロメタン(20mL)で希釈した。有機相を、水(20mL
)、飽和水性NHCl(20mL)、水(20mL)、および飽和水性NaHCO
20mL)で洗浄した。有機相を分離し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して
、粗生成物を得た。ヘキサン中30〜35%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラ
フィーにより粗生成物を精製し、白色固体としてST−246(0.25g、19%収率
、HPLC面積>99.5%純度)を得た。分析データ(H NMRおよびLC−MS
)は、国際公開第WO04112718号に従って合成されたST−246の分析データ
と一致した。

実施例5:合成経路V:
【化31】

ステップA.化合物13の合成
【0050】
ジクロロメタン(80mL,)中の化合物7(1.6g、6.65mmol、合成経路
Iに従って合成)の混合物に、トリエチルアミン(2.04mL、14.63mmol)
を添加し、20℃未満の温度に保ち、結果として得られた溶液を5〜10分間攪拌した。
4−ヨードベンゾイルクロリド12(1.95g、7.31mmol、1.1当量、Al
drich)を、窒素雰囲気下で、上述の溶液に滴添加し、20℃未満の温度に保った。
反応混合物を室温で一晩攪拌した。17時間および19時間後、さらに0.35g(0.
2当量)の酸塩化物12を反応物に添加し、20℃未満の温度に保った。24時間後、さ
らに0.18g(0.1当量、合計1.6当量使用)の酸塩化物12を添加し、反応物を
室温で一晩(合計43時間)攪拌し続けた。215nmでのLC−MS分析は、43%の
所望の生成物(13)および約5%の化合物7を示した。反応物をジクロロメタン(10
0mL)で希釈した。有機相を、飽和水性NHCl(100mL)、水(100mL)
、および飽和水性NaHCO(100mL)で洗浄した。有機相を分離し、NaSO
上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を得た。ヘキサン中25〜50%のEtO
Acで溶出するカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、白色固体として、化
合物13(1.63g、57%収率、HPLC面積93%純度)を得た。DMSO−d6
中でのH NMR:δ 11.19および10.93(積分比が1.73:1の2つの
一重線、合計1H、2つの回転異性体の同一のプロトン),7.93(d,2H),7.
66(d,2H),5.80(s,2H),3.36(s,2H),3.27(s,2H
),1.18(s,2H),0.27(q,1H),0.06(s,1H);質量スペク
トル:435.0(M+H)

ステップB.ST−246の合成(経路V)
【0051】
無水DMF(6mL)を、化合物13(0.2g、0.46mmol)、メチル2,2
−ジフルオロ−2−(フルオロスルホニル)アセテート(0.44mL、3.45mmo
l、Aldrich)、およびヨウ化第1銅(90mg、0.47mmol)の混合物に
添加した。反応混合物を約90℃で4時間攪拌した。254nmでのLC−MS分析は、
出発材料13の残存を示さず、48%のHPLC面積がST−246であることを示した
。反応混合物を45℃に冷却し、減圧下でDMFを除去した。残留物をEtOAc(30
mL)中でスラリー化し、濾過により不溶性固体を除去した。濾液を濃縮し、ヘキサン中
25〜35%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、灰白色固
体として、ST−246(55mg、32%収率、254nmでのHPLCにより95%
純度)を得た。分析データ(H NMRおよびLC−MS)は、国際公開第WO041
12718号に従って合成されたST−246の分析データと一致した。