(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、金属酸化物粒子材料を電子材料用フィラーに応用するに当たって、物理吸着水の量以外にも含有する水(結合水など)についても減少させることによって電気的特性(例えば誘電正接:Df)を向上することができるとの知見を得た。
【0007】
ここで、特許文献2に開示の発明においては、請求項1に粒径が20〜100μmと規定されている通り、比較的粒径の大きな粒子を扱うことを想定している。近年の電子材料用フィラーは半導体素子構造や回路の微細化に伴い粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーにまで小さくなっている。物理吸着している水分量は粒子材料の表面積に比例して大きくなるため、粒径が小さくなると表面積も大きくなって物理吸着水の量も大きくなる。例えば、粒径がサブミクロンからナノメートルオーダーになった粒子材料では、特許文献2にて規定するところの「水分量を50ppm以下」と同等の水分量は数十倍となって1000ppmを超えるような量となった。その程度の水分量を目指して水分量を減少させることを目的として加熱しても電気的特性の向上が実現できるほどにまで含まれる水分(結合水など)を減少することは期待できず、充分な電気的特性とはならなかった。特に物理吸着水の量を減らしても、その後に空気中の水分が速やかに再結合することもあった。
【0008】
本発明者らは、物理吸着水以外に含有する水分の量を減少することにより電気的特性に優れた電子材料用フィラー及びその製造方法、電子材料用樹脂組成物の製造方法、高周波用基板、並びに電子材料用スラリーを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決する本発明の電子材料用フィラーの製造方法は、乾式法にて製造されたシリカ粒子材料を調製する調製工程と、
ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて前記シリカ粒子材料を表面処理して第1表面処理済粒子材料とする第1表面処理工程と、
を有し、
前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m
2/g〜35m
2/gである。
【0010】
乾式法にて製造されたシリカ粒子材料を用い、その後の工程においても水と接触させないことで電子材料用フィラーを構成するシリカ粒子材料中に含まれる水分量を低減することができるため、Df値などの電気的特性が向上できる。特に粒径は600nm以下とすることが好ましく、比表面積は5m
2/g以上とすることが好ましい。
【0011】
上述した(1)の発明は、下記(2)及び(3)のうちの少なくとも1つの構成要素を備えることができる。
【0012】
(2)オルガノシラザンにて前記第1表面処理済粒子材料を表面処理して第2表面処理済粒子材料とする第2表面処理工程を有し、
前記第2表面処理工程で用いる前記オルガノシラザンの量は、前記第1表面処理済粒子材料の表面に残存する前記オルガノシラザンに反応可能な官能基の量以上で、表面にOH基が実質的に残存しない量である。
【0013】
(3)前記調製工程は、乾式法にてシリカを製造後、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m
2あたり40ppm以下になるように加熱乾燥する乾燥工程を含む。200℃にて加熱したときに生成する水分量が40ppm以下であると誘電正接の値が低くできるとの知見に基づく。
【0014】
本明細書において所定の温度(例えば200℃や500℃)で加熱したときに生成する水分量の測定は、所定の温度まで加熱したときに生成する水分量をカールフィッシャー法にて測定することで行う。200℃で加熱することにより物理吸着水の量が脱離・測定されている。
【0015】
なお、200℃を超えた温度(例えば300℃)で加熱することにより物理吸着水に加えて結合水も除去される。結合水が存在すると、物理吸着水の量が増加しやすくなるため、結合水を減少させることで物理吸着水の量を減少することができる。なお、この水分量が40ppmを超えていても誘電正接の値が高すぎない場合もあるが水分量を減少させることにより誘電正接などの電気的特性が相対的に向上する。
【0016】
(4)上記課題を解決する本発明の電子材料用フィラーの製造方法は、乾式法によりシリカ粒子材料を製造するシリカ粒子材料製造工程と、
200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m
2あたり40ppm以下になるように加熱乾燥して乾燥シリカ粒子材料を得る乾燥工程と、
を有し、
前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m
2/g〜35m
2/gである。
【0017】
シリカ粒子材料の表面に物理的に吸着した物理吸着水だけではなくそれ以外に含有する水分の量までも制御することにより電気的特性が向上できる。特に粒径は600nm以下とすることが好ましく、比表面積は5m
2/g以上とすることが好ましい。
【0018】
上述した(3)又は(4)の発明は、下記(5)の構成要素をもつことができる。
【0019】
(5)前記乾燥工程は、500℃で加熱したときに生成する水分量が、表面積1m
2あたり70ppm以下になるように加熱乾燥する工程である。200℃を超えて500℃以上にまで加熱することでより強固に結合している水分が生成される。このような水分であっても電気的特性に影響を与えることが明らかになったため、その含有量を規定した。
【0020】
(6)上記課題を解決する本発明の電子材料用樹脂組成物の製造方法は、上述の電子材料用フィラーの製造方法にて電子材料用フィラーを製造する工程と、
前記電子材料用フィラーを液体状の水に接触させずに樹脂材料中に混合・分散させる混合分散工程とを有する。用いる樹脂材料は、水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
【0021】
(7)上記課題を解決する本発明の電子材料用フィラーは、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m
2/g〜35m
2/gであり、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m
2あたり40ppm以下であり、
ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて表面処理されているシリカ粒子材料である。特に粒径は600nm以下とすることが好ましく、比表面積は5m
2/g以上とすることが好ましい。
【0022】
(8)そして上記課題を解決する本発明の電子材料用フィラーは、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m
2/g〜35m
2/gであり、200℃で加熱したときに生成する表面積1m
2あたり40ppm以下であり、式(A):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(B):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とを表面にもち、表面にOH基を実質的に有さないシリカ粒子材料である。特に粒径は600nm以下とすることが好ましく、比表面積は5m
2/g以上とすることが好ましい。
(上記式(A)、(B)中;X
1はビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基であり;X
2、X
3は−OSiR3及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択され;Y
1はRであり;Y
2、Y
3はR及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択される。Y
4はRであり;Y
5及びY
6は、R及び−OSiR3からそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。)
【0023】
(9)上記課題を解決する本発明の高周波用基板は、上述の電子材料用フィラーと、前記電子材料用フィラーを分散する樹脂材料とを有する。上述の電子材料用フィラーはDf値が低いため誘電正接が小さくなって高周波信号などの高周波を扱う基板に用いることで電力の損失が抑制できる。特に、前記樹脂材料は、水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
【0024】
(10)上記課題を解決する本発明の電子材料用スラリーは、上述の電子材料用フィラーと、前記電子材料用フィラーを分散し、水分を実質的に含有しない液体状の分散媒とを有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子材料用フィラーの製造方法は、上記構成を有することによりDf値などの電気的特性に優れた電子材料用フィラーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電子材料用フィラー及びその製造方法、電子材料用樹脂組成物の製造方法、高周波用基板、並びに電子材料用スラリーについて、以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。
【0027】
(電子材料用フィラー)
本実施形態の電子材料用フィラーは、電子部品の封止材、基板材料、伝熱材料などの材料として用いることができる。特に後述する電子材料用樹脂組成物として用いることが好ましい。
【0028】
本実施形態の電子材料用フィラーは、粒径が100nm〜2000nmであるか又は比表面積が2m
2/g〜35m
2/gである、シリカ粒子材料である。そして、200℃で加熱したときに生成する水分量が表面積1m
2あたり40ppm以下である。
【0029】
粒径は、下限値として150nmが採用でき、上限値として1000nm、800nm、600nm、500nmが採用できる。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせて採用することができる。粒径は動的散乱法など一般的な方法にて測定できる。
【0030】
比表面積は、下限値として3m
2/g、5m
2/g、10m
2/gが採用でき、上限値として30m
2/gが採用できる。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせて採用することができる。比表面積の測定は窒素によるBET法にて測定した値である。
【0031】
粒径と比表面積とは関連があり、粒径が小さいほど、比表面積が大きくなる傾向にある。粒径(比表面積)は、この下限値以上(上限値以下)にすることにより樹脂中添加時の流動性が良好であり、上限値以下(下限値以上)にすることによりスラリー組成物にした際の安定性が良好である。
【0032】
200℃で生成する水分量(以下「生成水量200℃」と称する)は前述のようにカールフィッシャー法により測定する。生成水量200℃とは、常温(25℃)から200℃までの昇温に伴い生成する水分である。
【0033】
生成水量200℃の値としては、電子材料用フィラーの質量あたりに含まれる水分量(ppm)を算出する。そしてある電子材料用フィラーについて、生成水量200℃の値を比表面積(m
2/g)で除することで、表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値が算出される。表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値の上限としては40ppmが例示できる。
【0034】
表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値は、できるだけ低いことが好ましい。なお、生成水量200℃の値が低い場合には誘電正接の値が低くなるが、誘電正接の値が低い場合でも表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値は必ずしも低くなるとは限らない。生成水量200℃を調節する方法については後述する。
【0035】
また、500℃で生成する水分量(以下「生成水量500℃」と称する)は、生成水量200℃の値の測定方法における加熱温度を200℃から500℃に変更して算出される値である。表面積1m
2あたりの生成水量500℃の値も、表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値の算出方法と加熱温度以外は同様の方法にて算出でき、その上限値は70ppmであることが好ましい。表面積1m
2あたりの生成水量500℃もできるだけ低いことが好ましい。
【0036】
本実施形態の電子材料用フィラーは、以下の(1)及び(2)のうちの少なくとも一方の特徴を有する。
【0037】
(1)ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて表面処理されている。特にビニル基、フェニル基、炭素数4以上のアルキル基を有するシラン化合物にて表面処理することが好ましい。表面処理を行うシラン化合物の量は特に限定しないが、表面処理前のシリカ粒子材料の表面に存在するOH基が全て無くなる程度にすることが好ましい。これらの官能基をもつシラン化合物により表面処理することによりシリカ粒子材料内に水分が浸透することが抑制される。
【0038】
シラン化合物による表面処理は、シラン化合物を含む表面処理剤(例えばシラン化合物を溶媒に溶解した溶液)を表面に接触することで行う。表面処理は、水を用いずに行う。ここで、水を用いないとは、シラン化合物を含む表面処理剤中に含まれる水分量を1000ppm以下にすることを意味する。詳しくは後述する。
【0039】
(2)式(A):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(B):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とを表面にもち、表面にOH基を実質的に有さない。
(上記式(A)、(B)中;X
1はビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基であり;X
2、X
3は−OSiR3及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択され;Y
1はRであり;Y
2、Y
3はR及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択される。Y
4はRであり;Y
5及びY
6は、R及び−OSiR3からそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。)
【0040】
この官能基は前述した(1)の表面処理などにより導入可能な官能基である。これらの官能基が存在することによりシリカ粒子材料内に水分が浸透することが抑制される。
【0041】
(電子材料用フィラーの製造方法:その1)
本実施形態の電子材料用フィラーの製造方法は、調製工程と第1表面処理工程とその他必要な工程とを有する。本実施形態の電子材料用フィラーの製造方法は、上述の本実施形態の電子材料用フィラーの製造に好適に用いることができる方法である。製造される電子材料用フィラーは、前述の本実施形態の電子材料用フィラーと同様の粒径又は比表面積を備える。後述する調製工程にて製造するシリカ粒子材料の粒径を小さくすると電子材料用フィラーの粒径は小さくなり比表面積は大きくなる。(後述する第1表面処理工程にて反応させるシラン化合物の量を多くすると粒径が大きくなり比表面積が小さくなる。)
【0042】
・調製工程
調製工程は、乾式法にてシリカ粒子材料を調製する工程である。乾式法としては水との接触をすることなしにシリカ粒子材料を形成する方法である。乾式法としては、金属ケイ素からなる金属からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼、急冷することでシリカ粒子材料を調製するVMC法や、シリカからなる粉粒体を火炎中に投入することにより溶融させた後に急冷してシリカ粒子材料とする溶融法などがある。VMC法、溶融法は、火炎などの高温雰囲気下に投入して燃焼させたり、加熱溶融させたりするとき以降において水に接触させないことで乾式での製造方法(本明細書における乾式法)として扱われる。VMC法、溶融法共に、投入する粉粒体の粒度分布や、投入する量を調節することにより調製されるシリカ粒子材料の粒度分布が制御できる。例えば、投入する粉粒体の粒径が小さかったり、投入する量が少なかったりするほど調製されるシリカ粒子材料の粒径も小さくなる。
【0043】
なお、VMC法、溶融法において、原料となる粉粒体を投入する空間内に存在する水分量を低くすることが好ましい。例えば、原料となる粉粒体は、何らかの分散媒に分散させて搬送するが、その分散媒中の水分を除去することが望ましい。また、VMC法における酸化雰囲気ガス、溶融法における高温雰囲気において含有する水分を除去することが好ましい。水分の除去は一般的な除湿法(温度を低下させて含有する水分を凝縮除去する、乾燥剤にて水分を除去するなど)が採用できる他、もともと含まれる水分量が低いとき(季節や天候などにより変化する空気を利用する)に操作を行うことでも達成できる。
【0044】
・第1表面処理工程
第1表面処理工程は、調製工程で調製されたシリカ粒子材料に対して表面処理を行い第1表面処理済粒子材料とする工程である。表面処理はシラン化合物にて行う。シラン化合物は、ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有する。シラン化合物の量は特に限定しないがシリカ粒子材料の表面に存在するOH基を全て反応できる量にすることができる。表面にOH基が残存する量のシラン化合物にて表面処理を行う時には後述する第2表面処理工程を採用して表面のOH基を全て反応させることが好ましい。
【0045】
表面処理は、液体状の水に接触させずに行う。液体状の水とはシリカ粒子材料の表面にて液体状になっている水を意味し、水を含む液体の他、水蒸気がシリカ粒子材料の表面にて凝縮する場合も含む。なお、水の含有量が5000ppm以上である場合(好ましくは1000ppm以上である場合)に、水を含む液体と判断する。
【0046】
表面処理を行う際にシラン化合物はそのままシリカ粒子材料の表面に接触させたり、気化させてシリカ粒子材料の表面に接触させたり、何らかの溶媒(水を含まない)に溶解させた溶液としてシリカ粒子材料の表面に接触させたりする。表面処理時には加熱することもできる。
【0047】
・その他の工程(第2表面処理工程)
第1表面処理工程にて製造した第1表面処理済粒子材料に対して表面処理を行い第2表面処理済粒子材料とする工程である。表面処理はオルガノシラザンにて行う。オルガノシラザンは特に限定しないがヘキサメチルジシラザンが例示できる。オルガノシラザンにて表面処理する量としては表面に存在するOH基を全て反応できる量にすることが好ましい。
【0048】
・その他の工程(加熱工程)
加熱工程は加熱により電子材料用フィラー中に含有する水分を除去する工程である。加熱工程後の水分量としては前述の本実施形態の電子材料用フィラーにおいて説明した水分量になるように加熱条件を設定する。なお、表面積1m
2あたりの生成水量200℃の値を満足するようにするために行う加熱工程は200℃以上での加熱を行うことが、表面積1m
2あたりの生成水量500℃の値を満足するようにするために行う加熱工程は500℃以上での加熱を行うことが好ましい。加熱工程はシリカ粒子材料が溶融したり、焼結したりしない程度の温度で行うことができる。
【0049】
加熱を行うのは製造工程中の何時でも良いが、特に調製工程にてシリカ粒子材料を調製するのと同時に加熱を行うことが好ましい。加熱の条件としては粒子の間が加熱により凝集しない程度の温度及び時間の組み合わせで行うことができる。特に200℃以上で加熱することが好ましく、400℃以上、更には500℃にて加熱することがより好ましい。加熱時間は特に限定されないが、前述した水分量に到達するまで行うことが好ましい。
【0050】
具体的な加熱方法としては、電熱炉、ガス炉を用いて加熱する方法である。具体的な装置としては、ロータリーキルンや、流動層炉、焼成炉などが挙げられる。
【0051】
(電子材料用フィラーの製造方法:その2)
本実施形態の電子材料用フィラーの製造方法は、シリカ粒子材料製造工程と、乾燥工程とを有する。シリカ粒子材料製造工程は、上述した電子材料用フィラーの製造方法(その1)における調製工程のうち乾燥工程を有しないものと同様である。乾燥工程は、上述した電子材料用フィラーの製造方法(その1)における乾燥工程と同様である。製造された電子材料用フィラーの粒径又は比表面積は上述した電子材料用フィラーの製造方法(その1)におけるものと同じである。
【0052】
(電子材料用樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の電子材料用樹脂組成物の製造方法は、前述した本実施形態の電子材料用フィラーの製造方法(その1又はその2)にて電子材料用フィラーを製造する工程と、製造された電子材料用フィラーを液体状の水に接触させずに樹脂材料中に混合・分散させる混合分散工程とを有する。製造された電子材料用樹脂組成物における、電子材料用フィラーと樹脂材料との混合比は特に限定しないが電子材料用フィラーの含有量はできるだけ多い方が好ましい。例えば電子材料用フィラー:樹脂材料は質量比で10:90〜90:10程度で混合することができる。
【0053】
樹脂材料としては特に限定しないが、エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂などの一般的な樹脂が挙げられる。樹脂材料は、水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。
【0054】
電子材料用フィラーは表面処理がなされていることが好ましい。表面処理では用いる樹脂材料との間での親和性が向上できるようにすることが好ましい。
【0055】
・高周波用基板
本実施形態の高周波用基板は高い周波数を扱う電子機器の配線用の基板に用いることができる。本実施形態の電子材料用フィラーはDf値が低いため高周波を流すような用途に用いても損失の発生が少なくできる。
【0056】
本実施形態の高周波用基板は、前述の電子材料用フィラーとその電子材料用フィラーを分散する樹脂材料とからなる硬化物である。樹脂材料は、水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。
【0057】
高周波用基板における、電子材料用フィラーと樹脂材料との混合比は特に限定しないが電子材料用フィラーの含有量はできるだけ多い方が好ましい。例えば電子材料用フィラー:樹脂材料は質量比で10:90〜90:10程度で混合することができる。
【0058】
樹脂材料としては特に限定しないが、熱硬化性樹脂(硬化前、硬化後の何れでも良い)、熱可塑性樹脂などの一般的な樹脂材料、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)が挙げられる。樹脂材料は、単一で用いたり、又は、複数種類の樹脂材料を混合(アロイ化など)して用いたりすることができる。樹脂材料は、水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。
【0059】
電子材料用フィラーは表面処理がなされていることが好ましい。表面処理では用いる樹脂材料との間での親和性が向上できるようにすることが好ましい。
【0060】
・電子材料用スラリー
本実施形態の電子材料用スラリーは半導体基板材料などに用いることができる。本実施形態の電子材料用スラリーは、前述の電子材料用フィラーとその電子材料用フィラーを分散する液体状の分散媒とからなる。分散媒は、水分を実質的に含有せず、特に水分の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。
【0061】
電子材料用スラリーにおける、電子材料用フィラーと分散媒との混合比は特に限定しないが電子材料用フィラーの含有量はできるだけ多い方が好ましい。なお、電子材料用フィラーの混合量が多くなると粘度が高くなる傾向にあるため、取り扱い性を考慮して許される限りの粘度になるまで電子材料用フィラーを混合することができる。例えば電子材料用フィラー:樹脂材料は質量比で20:80〜80:20程度で混合することができる。
【0062】
分散媒としては特に限定しないが、有機溶媒、シリコーンオイル、エポキシ樹脂前駆体、ポリエステル前駆体、シリコーン樹脂前駆体などの一般的な樹脂前駆体などが挙げられる。
【0063】
電子材料用フィラーは表面処理がなされていることが好ましい。表面処理では用いる分散媒や最終的に使用されるときに接触する相手部材との間での親和性が向上できるようにすることが好ましい。
【実施例】
【0064】
本発明の電子材料用フィラーについて実施例に基づき以下詳細に説明を行う。
【0065】
(試験1:加熱工程における加熱温度の評価)
金属ケイ素からなる粉粒体を酸化雰囲気ガス中にて燃焼させることでシリカ粒子材料を製造した(VMC法:シリカ粒子材料製造工程)。製造したシリカ粒子材料は体積平均粒径が0.3μm、比表面積が16m
2/gであった。なお、実施例においてシリカ粒子材料を製造した方法として「乾式法」と記載している場合にはVMC法にて製造している。
【0066】
製造したシリカ粒子材料について300℃、500℃、700℃、800℃、900℃で加熱(加熱工程)して含有する水分を除去した試料を調製した(全て合わせて調製工程)。
【0067】
得られたシリカ粒子材料について生成水量200℃及び生成水量500℃を前述の方法に準じて測定した。実施例の各表における水分の量の単位はppmである。結果を表1に示す。更に、各試験例の試料について1GHzにおける誘電正接を測定した。誘電正接の測定はJIS C 2138に準拠して行った。具体的には、ネットワークアナライザー(キーサイト社製、E5071C)と空洞共振器摂動法を用いて、1GHzにおける比誘電率、誘電正接を測定した。この測定はASTMD2520(JIS C2565)に準拠して行った。
【0068】
【表1】
【0069】
表より明らかなように、各温度における生成水量が少なくなるにつれて誘電正接の値が小さくなることが分かった。200℃で加熱した時に生成する単位面積あたりの水分量[=(生成水量200℃:ppm)÷(比表面積:m
2/g):a/b]が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。また、500℃で加熱した時に生成する単位面積あたりの水分量[=(生成水量500℃:ppm)÷(比表面積:m
2/g):c/b]が70ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。なお、加熱工程後においては、各試験例の試料は全て常温に放置した場合でも生成水量200℃及び生成水量500℃の増加は認められなかった。
【0070】
(試験2:加熱工程における加熱温度の評価:表面処理を行った場合)
試験例2〜6の試料について、それぞれビニルシランとヘキサメチルジシラザン(HMDS)にて2段階での表面処理を行った(第1表面処理工程及び第2表面処理工程)。ビニルシランによる表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。HMDSによる表面処理は残ったOH基を全て反応させるため、第1の表面処理剤量の当量以上の量にて処理を行い第2表面処理済粒子材料の試験試料とした。なお、以下の試験においても第2表面処理工程にて用いるオルガノシラザンはHMDSを用いた。
【0071】
得られた試験試料(処理後)について生成水量200℃及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表2に示す。なお、表2中において(a*)及び(c)の「生成水量」とは表面処理を行う前のシリカ粒子材料をその後に記載の温度に加熱した時に生成する水分量を示す(以下同じ)。
【0072】
【表2】
【0073】
表2より明らかなように、第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行うことで、表面処理前の試験例2〜6の試験試料と比べて誘電正接の値が小さくできることが分かった。処理後の粒子材料についての単位面積あたりの水分量(a/b)が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。
【0074】
(試験3:表面処理に用いるシラン化合物の評価及びシリカ粒子材料の粒径の評価)
シリカ粒子材料製造工程(調製工程)でのVMC法の製造条件を変更することにより体積平均粒径0.5μmのシリカ粒子材料(試験例12〜16)、体積平均粒径0.2μmのシリカ粒子材料(試験例17)、体積平均粒径0.1μmのシリカ粒子材料(試験例18)、体積平均粒径2μmのシリカ粒子材料(試験例19)を製造し、それぞれ加熱工程として800℃で加熱を行った。
【0075】
試験例14、17〜19については試験例7〜11と同様にビニルシラン及びHMDSにて第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行い第2表面処理済粒子材料を製造し、各試験例の試験試料とした。試験例12、13、15、16については第1表面処理工程としてそれぞれフェニルアミノシラン、フェニルシラン、ヘキシルシラン、デシルシランにて表面処理を行った。第1表面処理済工程における表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。得られた試験試料について生成水量200℃及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3より明らかなように、第1表面処理工程としてビニルシランを用いて表面処理を行った試験例14が、それぞれフェニルアミノシラン、フェニルシラン、ヘキシルシラン、デシルシランにて表面処理を行った試験例12、13、15、16と比べて低い誘電正接の値を示すことが分かった。また、試験例19(2μm)、試験例14(0.5μm)、試験例10(0.3μm)、試験例17(0.2μm)、試験例18(0.1μm)と体積平均粒径が小さくなっていくにつれて比表面積が大きくなると、誘電正接の値も大きくなっていくことが分かった。また、単位面積あたりの水分量(a/b)が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。
【0078】
(試験4:加熱工程を行わない時の表面処理の評価)
試験例18、17、7、14、及び、19の試料について、それぞれ加熱工程を行う前のシリカ粒子材料に対して、ビニルシランとヘキサメチルジシラザン(HMDS)にて2段階での表面処理を行った(第1表面処理工程及び第2表面処理工程)。ビニルシランによる表面処理は表面シラノール基量の2倍当量程度の量にて処理を行った。HMDSによる表面処理は残ったOH基を全て反応させるため、第1の表面処理剤量の当量以上程度の量にて処理を行い第2表面処理済粒子材料の試験試料とした。
【0079】
得られた試験試料について生成水量200℃及び誘電正接を試験1の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4より明らかなように、体積平均粒径0.3μmの、試験例1(製造直後のシリカ粒子材料)と試験例22(試験例1の試料に対して表面処理を行ったもの)との比較から、第1表面処理工程及び第2表面処理工程を行うことにより生成水量200℃の値が小さくなり、誘電正接の値も低くなることが分かった。試験例22は、加熱工程を行っている試験例7〜11よりも誘電正接の値は高いものの、試験例1の試料よりは誘電正接の値が低く、電子材料用フィラーとして充分に優れていることが分かった。
【0082】
体積平均粒径が0.1μm、0.2μm、0.5μm、2μmの試験例20、21、23、24についても加熱工程を行っている、試験例18、17、14、19よりは誘電正接の値は僅かに高いか同等のものが得られ、充分に優れた電子材料用フィラーであることが分かった。また、単位面積あたりの水分量(a/b)が40ppm以下になると誘電正接の値も小さくなることが分かった。
【0083】
(試験5:加熱工程における加熱温度及び生成水量200℃の値の評価)
体積平均粒径が0.1μm(試験例25)、0.2μm(試験例26)、0.3μm(試験例27)、0.5μm(試験例28)のシリカ粒子材料に対して、800℃で加熱する加熱工程を行い各試験例25〜28の試験試料とした。それぞれの試験試料の生成水量200℃の値と誘電正接の値を表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より明らかなように、800℃と言った高温での加熱工程を採用することにより、水分を充分に除去することが可能となり誘電正接の値を小さくすることができた。単位面積あたりの水分量(a/b)の値が40ppm以下になっていた。
【0086】
(試験6:第2表面処理工程の評価)
試験5にて評価した試験例25〜28の試験試料について第1表面処理工程としてビニルシランによる表面処理を追加で行い試験例29〜32の試験試料とした。ビニルシランの量は、表面シラノール基量の2倍当量により決定した。結果を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
表5及び6から明らかなように、比表面積が大きい場合(5m
2/g超:試験例29〜31)には、ビニルシランによる表面処理を行うことでa/bの値は第1表面処理工程を行う前の値(a*/b)よりも小さくでき、更には誘電正接の値を小さくすることが分かった。なお、比表面積が小さくa/bの値が小さくならなかった試験例32の試験試料であっても、誘電正接の値は小さくできた。
【0089】
(試験7:水分を接触させることの評価)
湿式法(ゾルゲル法)にて体積平均粒径0.1μm(試験例33)及び0.5μm(試験例34)のシリカ粒子材料を製造した後、ビニルシラン及び水を含有する表面処理剤にて表面処理を行った(第1表面処理工程)。その後、HMDS及び水分を含有する表面処理剤にて第2表面処理工程を行い試験試料とした。
【0090】
そして、乾式法にて体積平均粒径0.3μmのシリカ粒子材料を調製した後、試験例31及び32と同様の第1表面処理工程(水分を含有する)及び第2表面処理工程を行って試験例35の試験試料とした。また、乾式法にて体積平均粒径0.3μmのシリカ粒子材料を調製した後、試験例7と同様の第1表面処理工程(水分を含有しない)と、試験例33及び34と同様の第2表面処理工程を行って試験例36の試験試料とした。結果を表7に示す。
【0091】
【表7】
【0092】
試験例33〜36は、何れかの段階において液体状の水に接触しているため、誘電正接の値が非常に大きな値になることが分かった。また、a/bの値も40ppmを遙かに超えた値となった。更に、第1及び第2表面処理工程の何れかにおいて湿式での表面処理を行う前に単位面積あたりの水分量の値(a*/b)が40ppm以下であった試験例33及び34についても湿式処理を行うことにより水分量が増加して誘電正接の値も大きくなってしまった。
【解決手段】乾式法にて製造されたシリカ粒子材料を調製する調製工程と、ビニル基、フェニル基、フェニルアミノ基、炭素数4以上のアルキル基、メタクリル基、又はエポキシ基を有するシラン化合物にて前記シリカ粒子材料を表面処理して第1表面処理済粒子材料とする第1表面処理工程とを有し、前記シリカ粒子材料が乾式法にて製造された後は、液体状の水に接触させず、且つ、粒径が100nm〜600nmであるか又は比表面積が5m
/gである。乾式法にて製造されたシリカ粒子材料を用い、その後の工程においても水と接触させないことで電子材料用フィラーを構成するシリカ粒子材料中に含まれる水分量を低減することができるため、Df値などの電気的特性が向上できる。