特許第6564531号(P6564531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564531携帯型電気エネルギー貯蔵セル用フレーム発明の背景
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564531
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】携帯型電気エネルギー貯蔵セル用フレーム発明の背景
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20190808BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20190808BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 F
   H01M10/653
   H01M10/658
【請求項の数】19
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-516129(P2018-516129)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-530875(P2018-530875A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】US2016053749
(87)【国際公開番号】WO2017058722
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】62/235,981
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514022545
【氏名又は名称】ゴゴロ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】リウ タイツン
(72)【発明者】
【氏名】イェー ポチャン
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−011956(JP,A)
【文献】 特開2012−216410(JP,A)
【文献】 特開2013−030384(JP,A)
【文献】 特表2010−519712(JP,A)
【文献】 特開2011−049011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/653
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置であって、
複数のレセプタクルを含むフレームであって、前記複数のレセプタクルの少なくとも1つが、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れ、フレームは第1の材料から形成される、フレームと、
第2の材料から形成されるキャップであって、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つに隣接する前記フレームを覆い、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つ内に受け入れられた前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの前記1つの前記端部を覆い、前記第2の材料は、前記第1の材料とは異なる、キャップとを備え、
前記フレームが、さらに、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つと、別の個々の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための前記複数のレセプタクルの別の隣接する1つとの間を延びる通路を備え、前記第2の材料は、前記通路内に配設される、携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つが、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第1のレセプタクルを含み、前記第1のレセプタクルは、前記フレームの第1の壁部分および前記フレームの第2の壁部分によって囲まれ、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記第1のレセプタクルと前記第2のレセプタクルとの間を延びる前記通路を含み、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記フレームの前記第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい、請求項1に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記フレームの前記第2の壁部分の厚さが、前記フレームの前記第1の壁部分の厚さよりも小さい、請求項2に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記第1のレセプタクルと前記第2のレセプタクルとの間を延びる前記通路の少なくとも一部分内に配置され、前記第2の材料から形成されたプラグをさらに備える、請求項2に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記プラグが、前記第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料を含む、請求項4に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記フレームが、前記フレームの周囲に位置する複数の周囲レセプタクルをさらに備え、前記周囲レセプタクルの各々は、周壁によって囲まれ、各周壁は、前記周壁を通って延びる通路が存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つが、第1の壁部分および第2の壁部分を含み、前記第2の壁部分は、熱エネルギー移動に対する耐性が前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回るセクションと、前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する前記第2の壁部分の前記セクションよりも、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいセクションとを含む、請求項1に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記第1の壁部分と、前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する前記第2の壁部分の前記セクションより熱エネルギー移動に対する耐性が小さい前記フレームの前記第2の壁部分の前記セクションとが、同じ材料を含む、請求項7に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを形成する方法であって、
複数のレセプタクルの少なくとも1つは、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるためのものであり、前記フレームは第1の材料から形成される、前記複数のレセプタクルを含むフレームを提供することと、
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つ内に、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの前記端部を受け入れることと、
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つに隣接する前記フレーム上にわたって、および前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つ内に受け入れられた前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの前記端部上にわたって、第1の材料とは異なる第2の材料のキャップを形成することと、
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つと、別の個々の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための前記複数のレセプタクルの別の隣接する1つとの間を延びる通路を形成することとを含み、前記第2の材料は、前記通路内に配設される、方法。
【請求項10】
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つが、第1のレセプタクルを含み、前記第1のレセプタクルは、前記フレームの第1の壁部分および前記フレームの第2の壁部分によって囲まれ、前記フレームの前記第2の壁部分は、個々の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記フレームの前記第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さく、前記方法は、
前記フレームの前記第2の壁部分内に、前記第1のレセプタクルと前記第2のレセプタクルとの間を延びる前記通路を形成することと、
前記第2の材料から形成されたプラグを前記通路内に配設することとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プラグが、前記第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フレームの前記第1の壁部分と、前記フレームの前記第2の壁部分とは、同じ材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームであって、
複数のレセプタクルであって、前記複数のレセプタクルの少なくとも1つは、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れ、前記フレームは第1の材料から形成される、レセプタクルと、
第2の材料から形成されるキャップであって、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つに隣接する前記フレームを覆い、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つ内に受け入れられた前記1つの電気エネルギー貯蔵セルの前記端部を覆い、前記第2の材料は前記第1の材料とは異なる、キャップとを備え、
前記フレームが、さらに、前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つと、別の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための前記複数のレセプタクルの別の隣接する1つとの間を延びる通路を備え、前記第2の材料は前記通路内に配設される、フレーム。
【請求項14】
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つが、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第1のレセプタクルを含み、前記第1のレセプタクルは、前記フレームの第1の壁部分および前記フレームの第2の壁部分によって囲まれ、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記第1のレセプタクルと前記第2のレセプタクルとの間を延びる前記通路を含み、前記フレームの前記第2の壁部分は、前記フレームの前記第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【請求項15】
前記フレームの前記第2の壁部分の厚さが、前記フレームの前記第1の壁部分の厚さよりも小さい、請求項14に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【請求項16】
前記第1のレセプタクルと前記第2のレセプタクルとの間を延びる前記通路の少なくとも一部分内に配置され、前記第2の材料から形成されたプラグをさらに備える、請求項14に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【請求項17】
前記プラグが、前記第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料を含む、請求項16に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個別の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【請求項18】
前記複数のレセプタクルの前記少なくとも1つが、第1の壁部分および第2の壁部分を含み、前記第2の壁部分は、熱エネルギー移動に対する耐性が前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回るセクションと、前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する前記第2の壁部分の前記セクションよりも、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいセクションとを含む、請求項13に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個別の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【請求項19】
前記第1の壁部分と、前記第1の壁部分と等しい、または前記第1の壁部分を上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する前記第2の壁部分の前記セクションより熱エネルギー移動に対する耐性が小さい前記フレームの前記第2の壁部分の前記セクションとが同じ材料を含む、請求項18に記載の携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個別の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、携帯型電気エネルギー貯蔵セル装置内のアレイ内に個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを含む、複数の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを収容する携帯型電気エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの電池は、より小型で軽量のユニットにより多くのエネルギーを充填することで知られている。リチウムイオン電池は、携帯電話、タブレット、ラップトップ、電動工具および他の高電流機器などの携帯型電子装置に給電において、広く応用されている。低重量および高エネルギー密度により、リチウムイオン電池を、ハイブリッド車および完全電動車両への使用に関して魅力的なものにしている。
【0003】
リチウムイオン電池の潜在的な欠点は、それらの電解質溶液である。電解液が酸または塩基の水溶液からなる他のタイプの電池とは異なり、リチウムイオンセル内の電解液は、典型的には、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネート(可燃性であり得る)などの有機溶媒中のリチウム塩からなる。
【0004】
通常の作動では、リチウムイオン電池を充電すると、電解質溶液中のリチウムイオンは、薄い多孔質ポリマーセパレータを通ってカソードから移動し、アノード内に挿入される。電荷平衡電子もまたアノードに移動するが、充電器内の外部回路を通って進行する。放電時には、逆のプロセスが起こり、電子は給電されている装置を通って流れる。
【0005】
ごくまれな状況において、リチウムイオン電池の内部または外部の短絡が発生し得る。たとえば、リチウムイオン電池を含む電動装置が激しい衝撃または衝突を受けると、電池内に裂け目が生じ、その結果短絡を招く可能性がある。ポリマーセパレータの薄い性質のために、切断、プレス、粉砕、または他の電池製造ステップ中に発生したマイクロメートルサイズの金属粒子が、電池セル内に存在、または入り込む可能性がある。これらの小さな金属粒子は蓄積し、最終的にアノードとカソードとの間に短絡を形成する可能性がある。このような短絡は、カソードが電解質溶液と反応して電解質溶液を分解し、熱および炭化水素などの反応性ガスを発生させ得る温度が生じる可能性があるため、回避されるべきである。典型的には、通常の作動温度では、リチウムイオン電池は非常に安定しているが、ある特定の温度より高くなると、リチウムイオン電池の安定性は予測が難しくなり、高温では、電池ケース内の化学反応によってガスが生成され、その結果電池ケース内の内圧が増大する。これらのガスはさらに、カソードと反応して、より多くの熱を放出し、電池内または電池付近に、酸素の存在下で電解液を発火させ得る温度を生成する可能性がある。電解液が燃焼すると、少量の酸素が生成され、これが燃料の燃焼を助長し得る。ある時点で、電池ケース内の圧力が上昇した結果、電池ケースの破裂が生じる。漏れたガスは発火して燃焼することがある。一部の電池製造業者は、万一セルが破裂および発火した場合、燃焼を助長するガスが所定の場所および方向でセルから逃げるようにセルを設計している。たとえば、従来のAAAまたはAAセルの形状の電池セルは、カソードおよびアノードの近くのセルの各端部に位置する終端部から排気するように設計され得る。
【0006】
単一のリチウムイオン電池のみが使用される用途では、電池の故障および燃焼の可能性は、望ましくない状況を作り出す。この状況は、複数のリチウムイオン電池が電池バンクまたはモジュールの形態で配備されるときに重大性を増す。1つのリチウムイオン電池が故障したときに起こる燃焼は、他のリチウムイオン電池が通常安定している温度より高い局所温度を生成することがあり、それによってこれらの他の電池は故障し、破裂し、ガスを排気し、このガスはその後発火し、燃焼する。したがって、リチウムイオンセルのバンク内の単一セルの破裂は、バンク内の他のセルを破裂させ、発火して燃焼するガスを排出する可能性がある。幸いにも、リチウムイオン電池は非常に安全であることが証明されており、リチウムイオン電池の故障及び結果として生じる破裂は、非常にまれである。それにもかかわらず、破裂のリスク、および破裂したリチウムイオン電池から逃げるガスの発火を低減するための取り組みがなされてきている。たとえば、カソードに使用される材料の開発により、広く使用されているリチウムコバルト酸化物から作製されたカソードよりも耐熱性に優れたリチウムベースのカソード材料が製造されてきた。最近になって開発されたこうした材料は、耐熱性においてより優れ得るが、この利点はかなりの代償を払う。たとえば、リチウムマンガン酸化物カソードは、リチウムコバルト酸化物よりも低い充電容量を有し、依然として高温において分解する。リチウム鉄リン酸塩カソードは、特に熱的乱用によく耐えるが、それらの作動電圧および体積ベースのエネルギー密度は、コバルト酸リチウムカソードに比べ低い。
【0007】
他の取り組みは、ポリマーセパレータおよびその設計に焦点を当てている。たとえば、軽度の過熱に対してある程度の保護を提供する取り組みとして、ポリプロピレンの2つの層の間にポリエチレンの層を挟むポリマーセパレータを利用することが提案されている。セルの温度が、セルの安定性が予測不能になる温度に近づき始めるにつれて、ポリエチレンは溶融し、ポリプロピレン中の孔を塞ぐ。ポリプロピレンの孔がポリエチレンで塞がれると、リチウムの拡散が阻止され、セルが発火する前にセルを効果的に遮断する。他の取り組みは、ポリプロピレンよりも高い融点を有するポリマーセパレータの利用に焦点を当てている。たとえば、ポリイミドから作製されたセパレータおよび高分子量ポリエチレンから作製されたセパレータおよび埋め込まれたセラミック層が、頑強な高融点ポリマーセパレータを形成するために提案されている。低い可燃性の電解液および不揮発性、不燃性イオン性液体、フルオロエーテルおよび他の高度フッ化溶媒を電池電解液として調合し利用することも検討されている。研究者は、液体を全く含まないリチウムイオン電池を開発している。これらの固体電池は無機リチウムイオン伝導体を含むが、これは本質的に不燃性であるため非常に安定していて、安全であり、サイクル寿命および保管寿命が長い。しかし、これらの固体電池の製造には、高価で労力を要する真空蒸着方法を必要とする。
【0008】
個々の電池セルの構造に焦点を当てたこれらの取り組みに加えて、個々の電池セルを分離し、それらを電池モジュールまたは電池パックを形成するために所定場所に保持するために使用される構成要素の設計にも焦点を当てた取り組みもある。他の取り組みは、電池モジュールまたは電池パックを構成する他の構成要素に焦点をあてている。個々の電池セルならびに電池モジュールおよび電池パックを保持するために使用される構成要素の設計に影響を及ぼす1つの要因として、電池パックのサイズ、および電池モジュールまたは電池パック内にできるだけ多くの個々の電池セルを含めたいという願望への強い関心がある。たとえば、一部の用途では、可能な限り多くの電池セルを可能な限り小さな電池パックに含ませることが望まれる。
【0009】
これらの取り組みにもかかわらず、電気エネルギー貯蔵セルの故障、特に複数セル配備におけるそのような故障の結果として生成されるガスの燃焼、故障したセルに隣接する損傷していない電池セルに熱エネルギーを誘発する故障の伝播、および万一そうした事態が発生した場合、ユーザに対する危険も効果的に管理するサイズ基準および電池密度を満たす携帯型電気エネルギー貯蔵装置に引き続き関心がもたれている。
【発明の概要】
【0010】
本出願に説明する実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを対象とする第1の実施形態に関する。フレームは、個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを受け入れるためのレセプタクルを含む。レセプタクルはフレームの壁によって囲まれる。本明細書に説明する実施形態によると、第1のレセプタクルを囲むフレームの壁は、第1のレセプタクルを囲むフレームの壁の第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい第2の壁部分を含む。フレームの第2の壁部分は、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路を含む。本明細書に説明する一部の実施形態によると、プラグが、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路の少なくとも一部分内に配置される。プラグの熱エネルギー移動に対する耐性は、第2の壁部分の熱エネルギー移動に対する耐性よりも大きい。
【0011】
本明細書に説明する第2の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームが、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を受け入れるための第1のレセプタクルを含む、第1の実施形態を対象とする。第1のレセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれる。フレームの第2の壁部分はまた、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲む。フレームの第2の壁部分は、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路を含む。第2の壁部分は、フレームの第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい。
【0012】
本明細書に説明する第3の実施形態は、プラグが第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路の少なくとも一部分内に配置される、第1および第2の実施形態を対象とする。
【0013】
本明細書に説明する第4の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを形成する方法であって、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を受け入れるための第1のレセプタクルを含むフレーム前駆体を提供するステップを含む、方法を対象とする。第1のレセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれる。フレーム前駆体の第2の壁部分は、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲む。本方法は、フレームの第2の壁部分内に通路を形成するステップを含み、この通路は第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる。
【0014】
本明細書で説明する第5の実施形態は、第2の壁部分内に形成された通路内にプラグを配設するステップを含む第4の実施形態を対象とし、プラグは、除去されているかまたは存在せず、通路を形成する第2の壁部分の一部分を含む、第2の壁部分の一部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい。
【0015】
本明細書に説明する第6の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームであって、第1の壁部分を含む、フレームを対象とする。フレームは、第2の壁部分も含む。第2の壁部分は、熱エネルギー移動に対する耐性がフレームの第1の壁部分と等しい、またはこれを上回るセクションと、第1の壁部分と等しい、またはこれを上回る、熱エネルギー移動に対する耐性を有する第2の壁部分のセクションよりも、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいセクションとを含む。フレームは、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を受け入れるためのレセプタクルを含み、レセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれる。
【0016】
本明細書に説明する第7の実施形態は、本明細書に説明する第1から第3の実施形態の態様によるフレームを含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置を対象とする。
【0017】
本明細書に説明する第8の実施形態は、提供される、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置であって、複数のレセプタクルを含むフレームを含み、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れ、フレームは第1の材料から形成される、携帯型電気エネルギー貯蔵装置を対象とする。第1の材料とは異なる第2の材料から形成されたキャップは、複数のレセプタクルの少なくとも1つに隣接するフレームを覆い、複数のレセプタクルの少なくとも1つ内に受け入れられた1つの電気エネルギー貯蔵セルの端部を覆う。
【0018】
本明細書に説明する第9の実施形態は、フレームが、複数のレセプタクルの少なくとも1つと、別の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための複数のレセプタクルの別の隣接するレセプタクルとの間を延びる通路を含み、第2の材料は通路内に配設される、第8の実施形態を対象とする。
【0019】
本明細書に説明する第10の実施形態は、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第1のレセプタクルを含み、第1のレセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれ、フレームの第2の壁部分は、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、フレームの第2の壁部分は、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路を含み、フレームの第2の壁部分は、フレームの第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい、第8および第9の実施形態を対象とする。
【0020】
本明細書に説明する第11の実施形態は、フレームの第2の壁部分の厚さがフレームの第1の壁部分の厚さよりも小さい第8から第10の実施形態を対象とする。
【0021】
本明細書に説明する第12の実施形態は、プラグが第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路の少なくとも一部分内に配置される第8から第11の実施形態を対象とする。特定の実施形態では、プラグは、第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料である。
【0022】
本明細書に説明する第13の実施形態は、複数の周囲レセプタクルがフレームの周囲に位置し、各周囲レセプタクルは周囲壁によって囲まれ、各周囲壁は、部分的には、周囲壁を通って延びる通路が存在しないことを特徴とする、第8から第12の実施形態を対象とする。
【0023】
本明細書に説明する第14の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置の複数のレセプタクルの少なくとも1つは、第1の壁部および第2の壁部を含み、第2の壁部分は、熱エネルギー移動に対する耐性が第1の壁部分と等しい、またはこれを上回るセクションと、第1の壁部分と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する第2の壁部分のセクションよりも、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいセクションとを含む、第8から第13の実施形態を対象とする。
【0024】
本明細書に説明する第15の実施形態は、第1の壁部分は第1の材料を含み、第1の壁部分と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する第2の壁部分のセクションより熱エネルギー移動に対する耐性が小さいフレームの第2の壁部分のセクションは、第2の材料を含み、第1の材料および第2の材料は同じである、第8から第14の実施形態を対象とする。
【0025】
本明細書に説明する第16の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを形成する方法を対象とする。説明する実施形態は、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるためのものであり、フレームは第1の材料から形成される、複数のレセプタクルを含むフレームを提供するステップと、複数のレセプタクルの少なくとも1つ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるステップと、複数のレセプタクルの少なくとも1つに隣接するフレーム上にわたっておよび複数のレセプタクルの少なくとも1つ内に受け入れられた複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部上にわたって、第1の材料とは異なる第2の材料のキャップを形成するステップとを含む。
【0026】
本明細書に説明する第17の実施形態は、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、第1のレセプタクルを含み、第1のレセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれ、フレームの第2の壁部分は、個々の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、フレームの第2の壁部分は、フレームの第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さく、また、フレームの第2の壁部分内に、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路を形成するステップと、プラグを通路に配設するステップとを含む、第16の実施形態と対象とする。
【0027】
本明細書に説明する第18の実施形態は、プラグが、第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料である、第16および第17の実施形態を対象とする。
【0028】
本明細書に説明する第19の実施形態は、フレームの第1の壁部分が第1の材料を含み、フレームの第2の壁部分が第2の材料を含み、第1の材料および第2の材料は同じである、第16から第18の実施形態を対象とする。
【0029】
本明細書に説明する第20の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームを対象とする。そのようなフレームは、複数のレセプタクルを含み、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れ、フレームは、第1の材料から形成される。そのようなフレームはまた、第2の材料から形成されたキャップを含み、このキャップは、複数のレセプタクルの少なくとも1つに隣接するフレームを覆い、複数のレセプタクルの少なくとも1つ内に受け入れられた1つの電気エネルギー貯蔵セルの端部を覆い、第2の材料は第1の材料とは異なる。
【0030】
本明細書に説明する第21の実施形態は、通路が、複数のレセプタクルの少なくとも1つと、別の電気エネルギー貯蔵セルの端部を受け入れための複数のレセプタクルの別の隣接する1つとの間を延び、第2の材料は通路内に配設される、第20の実施形態を対象とする。
【0031】
本明細書に説明する第22の実施形態は、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第1のレセプタクルを含み、第1のレセプタクルは、フレームの第1の壁部分およびフレームの第2の壁部分によって囲まれ、フレームの第2の壁部分は、複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルの1つの端部を受け入れるための第2のレセプタクルの一部分を囲み、フレームの第2の壁部分は、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路を含み、フレームの第2の壁部分は、フレームの第1の壁部分よりも熱エネルギー移動に対する耐性が小さい、第20および第21の実施形態を対象とする。
【0032】
本明細書に説明する第23の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームの第2の壁部分の厚さが、フレームの第1の壁部分の厚さより小さい、第20から第22の実施形態を対象とする。
【0033】
本明細書に説明する第24の実施形態は、プラグが、第1のレセプタクルと第2のレセプタクルとの間を延びる通路の少なくとも一部分内に配置される、第20から第23の実施形態を対象とする。
【0034】
本明細書に説明する第25の実施形態は、プラグが、第2の壁部分を含む材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料である、第20から第24の実施形態を対象とする。
【0035】
本明細書に説明する第26の実施形態は、複数のレセプタクルの少なくとも1つは、第1の壁部分および第2の壁部分を含み、第2の壁部分は、熱エネルギー移動に対する耐性が第1の壁部分と等しい、またはこれを上回るセクションと、第1の壁部分と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する第2の壁部分のセクションより、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいセクションとを含む、第20から第25の実施形態を対象とする。
【0036】
本明細書に説明する第27の実施形態は、第1の壁部分は第1の材料を含み、第1の壁部分と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する第2の壁部分のセクションより、熱エネルギー移動に対する耐性が小さいフレームの第2の壁部分のセクションは、第2の材料を含み、第1の材料および第2の材料は同じである、第20から第26の実施形態を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図において、同一の参照番号は同様の要素または動作を特定する。図中の要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。たとえば、さまざまな要素の形状および角度は縮尺通りに描かれておらず、これらの要素の一部は、図の見やすさを改善するために任意に拡大され配置される。さらに、描かれた要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する情報を伝達することを意図するものではなく、図における認識を容易にするためにのみ選択されている。
【0038】
図1】1つの非限定的に示す実施形態による、本明細書に説明するさまざまな構成要素または構造の一部を含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームの上部の等角図である。
図2】1つの非限定的に示す実施形態による、図1のフレームの拡大部分の等角図である。
図3】1つの非限定的に示す実施形態による、本明細書に説明し、図2には示さない構成要素を備えた、図1のフレームの拡大部分の等角図である。
図4】1つの非限定的に示す実施形態による、図1のフレームの上部の平面図である。
図5図4の線5−5に沿った断面図である。
図6図3に示す1つの非限定的に示す実施形態による、本明細書に説明するさまざまな構成要素または構造の一部を含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームの上部平面図である。
図7図6の線7−7に沿った断面図である。
図8図4の8−8線に沿った断面図である。
図9】1つの非限定的に示す実施形態による、本明細書に説明し、図2には示さない構成要素または構造を備えた、図1のフレームの拡大部分の等角図である。
図10】携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の携帯型エネルギー貯蔵装置を保持するためのフレームの別の非限定的な実施形態の等角図である。
図11図6および図10の線11−11に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本出願の主題の具体的な実施形態が例示のために本明細書に説明されているが、開示する主題の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな改変がなされ得ることは、容易に理解されるであろう。したがって、本出願の主題は、添付の特許請求の範囲によるものを除いて限定されない。
【0040】
以下の説明では、開示するさまざまな実施形態の完全に理解するために、特定の具体的な詳細が記載される。しかし、当業者であれば、これらの具体的な詳細の1つまたは複数を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施形態を実施できることを認識するであろう。他の例として、たとえば電池などの携帯型電気エネルギー貯蔵セル、および電池パックなどの携帯型電気エネルギー貯蔵装置に関連する周知の構造は、実施形態の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために詳細に示されず、または説明されていない。
【0041】
文脈において別の解釈が必要でない限り、明細書および特許請求の範囲を通して、「備える」という単語およびその変形、「備える」および「備えている」などは、「それだけには限定されないが、含む」とする開放的な包括的意味で解釈されるものとする。
【0042】
本明細書を通して、「1つの実施形態」または「一実施形態」の参照は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通してさまざまな箇所での「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という語句は、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているわけではない。
【0043】
第1、第2、および第3などの序列の使用は必ずしもランク付けされた序列の観念を意味するのではなく、むしろ動作または構造の複数の事例を区別するだけのものであり得る。
【0044】
携帯型電力貯蔵装置または電気エネルギー貯蔵装置への参照は、それだけに限定されないが、電池、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタを含む、電力を貯蔵し、貯蔵された電力を放出することができる任意の装置、および複数のそれら装置から構成されるモジュールを意味する。携帯型電気エネルギー貯蔵セルへの参照は、たとえば、それだけに限定されないが、ニッケル−カドミウム合金電池セルまたはリチウムイオン電池セルを含む、たとえば充電式または二次電池セルなどの化学的貯蔵セルまたはその複数の化学的貯蔵セルを意味する。携帯型電気エネルギー貯蔵セルの非限定的な例は、図面では円筒形として、たとえば従来のAAAサイズの電池に類似するサイズおよび形状で示されているが、本開示は、ここに例示するフォームファクタに限定されない。
【0045】
携帯型電力貯蔵装置または携帯型電気エネルギー貯蔵装置の例は、追加の装置なしに手で容易に移動できる、複数の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを含むパックである。
【0046】
本明細書に提供する開示の見出しおよび要約は、便宜上のものにすぎず、実施形態の範囲または意味を解釈するものではない。
【0047】
一般的に説明すると、本開示は、1つまたは複数の電気エネルギー貯蔵セルを含む、電動またはハイブリッド型車両、たとえばオートバイ、スクータおよび電気自転車、電動工具、電動芝生および園芸用機器などの電気装置に給電するのに適した携帯型電気エネルギー貯蔵装置の例を対象とする。本明細書に説明する実施形態による携帯型電気エネルギー貯蔵装置のさらなる説明は、電動スクータで使用される携帯型電気エネルギー貯蔵装置の文脈で提供されるが、本明細書に説明する実施形態による携帯型電気エネルギー貯蔵装置は、電動スクータにおける用途に限定されないことを理解されたい。さらに、携帯型電気エネルギー貯蔵装置は、複数の電気エネルギー貯蔵セルを含む単一の電気エネルギー貯蔵セルモジュールを参照して以下に説明される。本説明は、単一の電気エネルギー貯蔵セルモジュールのみを含む電気エネルギー貯蔵装置に限定されず、2つ以上の電気エネルギー貯蔵セルモジュールを含む携帯型電気エネルギー貯蔵装置を包含する。本開示はまた、電気エネルギー貯蔵セルモジュールの一部を形成する携帯型電気エネルギー貯蔵セルの空間的配置に関する具体的な実施形態も説明する。本説明は、本明細書に具体的に示す電気エネルギー貯蔵セルモジュール内の携帯型電気エネルギー貯蔵セルの具体的な空間的配置に限定されない。本開示はまた、本明細書に具体的に示すまたは説明するものとは異なる、電気エネルギー貯蔵セルモジュール内の携帯型電気エネルギー貯蔵セルの空間的配置にも適用される。本開示はまた、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームに関する具体的な実施形態を説明する。本説明は、本明細書に説明する例示的なフレームの具体的な空間的配置に限定されない。本開示はまた、本明細書で具体的に示し説明するものとは異なる、携帯型電気エネルギー貯蔵装置内のアレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームにも適用される。たとえば、本明細書に説明する実施形態によるフレームは、多かれ少なかれレセプタクルを含むことができ、レセプタクルは、本明細書に具体的に示し説明するレセプタクルの幾何学的パターンとは異なる幾何学的パターンで配置され得る。さらに、本説明の図は、図示するフレームの周縁および上面の特徴を示している。本説明は、そのような特徴を含むフレームに限定されない。本明細書に説明する実施形態によるフレームは、そのような特徴を省略し、および/または他の特徴を含むことができる。
【0048】
図1を参照すると、アレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セル(図2の200)を保持するためのフレーム100の例示的な実施形態が示されている。フレーム100は、複数の第1の平行な列、および第1の平行な列とは異なる方向またはこれに対して垂直に延びる複数の第2の平行な列に配置された複数のレセプタクル102の2次元アレイを含む。さらに、例示的なフレーム100は、フレーム100の周囲に位置する参照記号Y(図4)によって特定される複数のレセプタクルを含む。本明細書に説明する実施形態による、アレイ内に複数の個々の電気エネルギー貯蔵セルを保持するためのフレームは、図1に示すものとは異なる形状を有するレセプタクルを含むことを理解されたい。たとえば、レセプタクルは、フレームに受け入れられる携帯型電気エネルギー貯蔵セルの形状と一致する正方形、矩形、五角形、六角形、または他の多角形または非多角形の形状とすることができる。たとえば、携帯型電気エネルギー貯蔵セルがAA型電池またはAAA型電池に類似する形状を有する場合、レセプタクルは丸い形状を有し、電気エネルギー貯蔵セルが、精密公差でレセプタクル内に受け入れられることを可能にする直径のものとなる。公差は、携帯型電気エネルギー貯蔵セルがレセプタクル内に容易に摺動できないほどきつくするべきではないが、電気エネルギー貯蔵セルが、レセプタクル内に配置された後に携帯型電気エネルギー貯蔵セルの長手方向軸に対して半径方向に変位することができるほど緩くされてはならない。
【0049】
さらに図2を参照すると、フレーム100は、フレーム100の上面101に配置された複数のタブ104を含む。タブ104は、それぞれのレセプタクル102の小さな部分上にわたって延びている。図1に示す実施形態では、一部のレセプタクルは、レセプタクルの一部分上にわたって延びる4つのタブ104を含み、他のレセプタクルは、より少ないタブ104、例えば2つまたは3つのタブを含む。本明細書に説明する実施形態によれば、より少ないタブ104、たとえば1つのタブを特有のレセプタクルに設けることができる。タブ104は、下方からレセプタクル内に挿入される携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の上部に接触し、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200のさらなる挿入を制限するストッパの役割を果たす。
【0050】
フレーム100は、軽量で強く、回転成形、射出成形、ブロー成形または圧縮成形などのプラスチック成形プロセスにより成形することができる材料(例えば、第1の材料)から作製される。プラスチック成形プロセスにより成形することができる材料は、ASTM D648によって決定される、熱変形温度が約95から約120℃の範囲内の材料を含む。フレーム100を形成する材料は、特に1つのレセプタクルを隣接するレセプタクルから分離するフレームの壁を通る熱エネルギー移動に対する耐性を有する(たとえば熱バリアとして作用する)。そのような熱エネルギー移動に対する耐性は、伝導、対流または放射の結果生じるフレームの壁を通る熱エネルギー移動に耐える能力を含む。熱エネルギー移動に対する耐性は、フレーム100を形成する材料が、携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障した場合にフレームが曝される温度において耐火性であることによって示され(例示的な適切な材料は、Underwriters Laboratories UL−94 V−0標準試験を満たす耐火特性を有するが、適切な材料は、UL−94 V−0試験を満たすものに限定されない)、および/または携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障した場合にフレームが曝される温度より高い融点を有することによって示される(例示的な適切な材料は、約270℃程度の融点を有するが、適切な材料は、約270℃の融点を有することに限定されない)。適切な材料はまた、より高いまたはより低い融点を有する材料、および/または所望の断熱特性を有する材料を含む(例示的な適切な材料は、約0.19から約0.22W/m−K程度の熱伝導率を有するが、適切な材料は、この範囲内の熱伝導係数を有することに限定されない。適切な材料はまた、より高いまたはより低い熱伝導率係数を有する材料も含む)。
【0051】
フレーム100が形成され得る材料の例は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイミド、メラミンホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、ポリエポキシドおよびポリイミドなどの熱可塑性材料および熱硬化性材料を含む。上記に列挙したものは包括的ではなく、フレーム100は、携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障したときにフレームの壁を通る熱エネルギー移動に耐えることができる他の材料から形成され得ることが理解される。
【0052】
そのようなセルがフレーム100の複数のレセプタクル102内に保持されるときに形成される個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200のアレイは、米国特許出願公開第2015/000645514号明細書に記載され示される、ハウジングなどの携帯型電気エネルギー貯蔵装置ハウジングのハウジング(図示せず)内に含まれ得る。図1には、単一フレーム100のみが示されているが、第2のフレーム(図示せず)を、(たとえば、図1のフレーム100が上部フレームとしての役割を果たすとき)図1に示すフレーム100内に受け入れられない携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の端部を受け入れるための底部フレームとして利用できることを理解されたい。フレーム100がこのように使用される場合、図1のフレーム100は、図1に示す向きから180度回転し、それによって図1のフレーム100内に受け入れられた携帯型電気エネルギー貯蔵セルの端部とは反対側の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の端部を受け入れることができることが、理解される。
【0053】
携帯型電気エネルギー貯蔵装置が、たとえば、互いに重ね合わされた複数の携帯型電気エネルギー貯蔵セルモジュールの形態の、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の複数のアレイを含む実施形態では、本明細書に説明する実施形態によるフレーム100の改変形態は、上側モジュールを構成する携帯型電気エネルギー貯蔵セルの底部を受け入れるように構成された一側面と、下側モジュールを構成する携帯型電気エネルギー貯蔵セルの上部を受け入れるように構成された対向側面とを有する単一フレームを含む。
【0054】
図2を参照すると、図2の各レセプタクル102は、少なくとも1つの第1の壁部分106および少なくとも1つの第2の壁部分108によって囲まれている。図2の図示する実施形態では、レセプタクル102Aは、レセプタクル102Aの両側の2つの第1の壁部分106レセプタクル102Aの両側の2つの第2の壁部分108によって囲まれる。したがって、図2では、レセプタクル102Aを囲む第1の壁部分106および第2の壁部分108は、互いに90°だけ半径方向にずらされていると概ね説明することができる。
【0055】
小さいフォームファクタおよび高密度の携帯型電気エネルギー貯蔵セルを有するコンパクトな携帯型電気エネルギー貯蔵セルモジュールを形成することに関して、図1図2図4図5、および特に図8に示す例示的な実施形態では、第2の壁部分108の厚さT2は、第1の壁部分106の厚さT1よりも小さい。この説明は厚さT1およびT2に限定されず、第1の壁部分106が第2の壁部分108の厚さより大きい厚さを有することにも限定されないことを理解されたい。たとえば、厚さT2を厚さT1より大きくすることができる。本説明による他の実施形態では、レセプタクル102を、厚さT1を有する第1の壁部分106、およびT1とは異なる厚さを有する異なる第1の壁部分106によって囲むことができる。本説明によるさらに他の実施形態では、レセプタクル102を、厚さT2を有する第2の壁部分108、およびT2とは異なる厚さを有する別の第2の壁部分108によって囲むことができる。具体的な厚さT1およびT2は、フレーム100が形成される具体的な材料および熱エネルギー移動に対するその材料の耐性を考慮して選択することができる。たとえば、フレーム100を形成するために使用される材料に応じて、T2は約1mmより大きくてよく、T1は約1mm未満であってもよい。T1およびT2に対するこれらの厚さの範囲は例示的なものであり、T2は1mm未満でもよく、T1は1mmを上回ってもよいことが理解される。
【0056】
一部の実施形態では、第1の壁部分106は、第1の壁部分106が熱エネルギー移動に対し十分な耐性を有することを可能にする厚さT1で形成される。
【0057】
図2を参照すると、図示する例示的な実施形態では、第2の壁部分108は、別の形で第2の壁部分108によって分離された、レセプタクル102Aと隣接するレセプタクル102Bとの間を延びる通路または開口部110を含む。図2の図示する実施形態では、通路110は概ね矩形のプロファイルであるが、本説明は、概ね矩形のプロファイルの通路110に限定されない。通路110のプロファイルは、図2に具体的に示すものとは異なるものとすることができる。たとえば、通路110のプロファイルは、半円形または異なる多角形とすることができる。
【0058】
図4図7を参照すると、図2に示す通路110の深さは、第2の壁部分108の高さの約1/2である。通路110の深さは、図2の例示的な実施形態に示す深さよりも大きくても小さくてもよい。しかし、通路110は、フレーム100の上部101からフレーム100の底部103まで完全には延びないことが好ましい。各通路110が同じ深さを有する必要はなく、すなわち、異なる通路が異なる深さを有することができる。以下により詳細に説明するように、通路110の具体的な深さは、携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障したときに携帯型電気エネルギー貯蔵セルが最も破裂しやすいと考えられる場所によって部分的に決定される。
【0059】
一部の実施形態では、フレーム100は、フレーム100の上部101からフレーム100の底部103まで完全に延びる1つの通路110を含む、フレーム100の壁によって画定された少なくとも1つのレセプタクルを有する。
【0060】
通路110は、本明細書に説明する実施形態により、いくつかの異なる方法で形成することができる。たとえば、通路110は、フレーム100を成形するプロセスにおいて形成することができる。あるいは、通路110は、フレーム100を成形した後にフレーム100の一部分を除去して通路110を形成することによって形成することができる。
【0061】
いかなる特定の理論にも限定されることを意図するものではないが、(本説明によるフレームと組み合わせて携帯型電気エネルギー貯蔵セルモジュールを形成するタイプの、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの故障時に生成される)高温ガスは、通常、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの上部カバーおよび/または底部カバーに隣接する携帯型電気エネルギー貯蔵セルから逃げると考えられている。この所見の理由ははっきりとは分からないが、製造プロセス、特に上部カバーまたは底部カバーの携帯型電気エネルギー貯蔵セルへの取り付け中にセルに付与される応力に関連している可能性がある。そのような高温ガスが、上部カバーおよび/または底部カバーに隣接する携帯型電気エネルギーセルから逃げるとき、これら(および/または逃げるガスの燃焼から生じる炎)は、第1の壁部分106または第2の壁部分108またはその両方に衝突する。これらの第1の壁部分106および第2の壁部分108の熱エネルギー移動に対する耐性は、部分的に、フレーム100を形成する材料および第1の壁部分106および第2の壁部分108の厚さに依存する。第1の壁部分106および第2の壁部分108が同じ材料から形成される場合、壁部分が厚いほど、通常、熱エネルギー移動に対する耐性はより高く、またはより大きくなる。
【0062】
通路110のサイズおよび場所は、故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルからの逃げた高温ガスおよび/または炎が第2の壁部分108および/または第2の壁部分の、熱エネルギー移動に対する耐性が最も小さいセクションに衝突する場所を含む、多数の要因に基づいて決定することができる。高温ガスおよび/または炎が、セルの上部カバーの近くの故障している携帯型電気エネルギーセルから逃げるとき、通路110の下方の第2の壁部分108のセクションと比較してより大きい割合のそのようなガスおよび炎が、通路110の近傍の第2の壁部分108と衝突する。
したがって、通路110の深さは、故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルがフレーム100内に保持されているとき、高温ガスおよび炎が故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルから逃げる場所を考慮して選択することができる。フレーム100の物理的完全性を維持するために、通路110は、フレーム100の上部101から底部103まで完全に延びないことが好ましい。一部の実施形態では、通路110が形成された後に残る第2の壁部分108のセクションは、通路110を形成するために除去された第2の壁部分108の部分よりも厚い。通路110が形成された後に残っている第2の壁部分108のセクションのこの増加した厚さは、第2の壁部分108のこの残りの部分が通路110を形成するために除去された第2の壁部分108のセクションと同じ厚さである場合と比較して、熱エネルギー移動に対してさらに耐性をもたらす。特定の実施形態では、第2の壁部分108は、フレーム100の第1の壁部分106と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有するセクションを含む。さらに、特定の実施形態では、第2の壁部分108は、第1の壁部分106と等しい、またはこれを上回る熱エネルギー移動に対する耐性を有する、第2の壁部分108のセクションより熱移動に対する耐性が小さいセクションを含む。
【0063】
第1の壁部分106および第2の壁部分108が同じ材料から形成され、第2の壁部分108の厚さT2が第1の壁部分106の厚さT1より小さいとき、第2の壁部分108は、故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルの一部分を含むレセプタクル102Aから、故障していない携帯型電気エネルギー貯蔵セルを含む隣接するレセプタクル102Bまでの熱エネルギー移動に対する耐性は小さい(すなわち、より厚い第1の壁部分106と比較して第2の壁部分108を通る熱エネルギー移動を遅らせるまたは防止する能力は低い。)そのような熱エネルギー移動を遅らせるおよび/または防止することで、隣接するレセプタクル102B内の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の温度が、そのような携帯型電気エネルギー貯蔵セルの故障が発生し得るレベルに達する可能性が低減される。そのような熱エネルギー移動を遅らせるおよび/または防止することで、故障した携帯型電気エネルギー貯蔵セルから逃げる高温ガスまたは炎が、隣接するレセプタクル102B内の故障していない携帯型電気エネルギー貯蔵セルに外部から物理的損傷を引き起こす可能性も低減される。
【0064】
図3を参照すると、本明細書に説明する例示的な実施形態により、通路110は、プラグ112を含む。プラグ112は、通路110が第2の壁部分108の部分を除去することによって形成されているか、または通路110がフレーム100が成形または形成されるときに形成されているかに関係なく、通路110の形状とほぼ同じまたは類似の形状を有することができる。プラグ112は、第2の壁部分108を構成する材料よりも熱エネルギー移動に対する耐性が大きい(またはより高い耐火性定格を有する)材料(たとえば、第2の材料)から形成される。プラグ112が通路110内に設けられたとき、故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セル200を含むレセプタクル102Aから、故障が始まっていない携帯型電気エネルギー貯蔵セルを含む隣接するレセプタクル102Bへの熱エネルギー移動は、低減される。特に第2の壁部分108の近傍で、そのような熱エネルギー移動に耐性を有する、または防止するフレーム100の能力を増大させることで、隣接するレセプタクル102B内の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200が、高温に曝されることによって、および/または故障が始まっていない携帯型電気エネルギー貯蔵セルのケースを損傷することによって故障する可能性は低下する。一部の実施形態では、プラグ112を形成する材料が有する熱エネルギー移動に対する増大した耐性は、フレーム100を形成する材料が有する熱エネルギー移動に対する耐性の約1.5から約3倍の範囲である。
【0065】
材料は、伝導、対流および/または放射によって伝達される熱エネルギーがより少ない場合、別の材料と比較して熱エネルギー移動に対する耐性が大きい。プラグ112に適した材料は、軽量で強く、回転成形、射出成形、ブロー成形または圧縮成形などのプラスチック成形プロセスにより成形することができる材料を含む。そのような材料は、第2の壁部分108を形成する材料より、熱エネルギー移動に対する耐性が大きく、可燃性が低く、難燃効果が高く、耐火性が高く、火炎伝播をより良好に防止または低減することができ、融点が高く、変形に対する耐性が大きく、燃焼を反対側に伝播させることなく一方側の炎または高温ガスへの暴露に対しより良好に耐えることができ、および/または優れた断熱材である材料を含む。プラグ112を形成するのに適した材料は、第2の壁部分108を形成する材料に依存する。しかし、適切な材料は、ガラス繊維、ナイロン66などの難燃性材料を補足した第2の壁部分108を形成するために使用される材料を含む。他の適切な材料は、ガラス繊維、ナイロン66などの難燃性材料と混合された難燃性接着剤を含む。プラグ112はまた、シリコンベースの材料またはシリコンベースの接着剤、マイカおよびガラスから形成することもできる。プラグ112が形成され得る材料の他の例は、フレーム100が形成され得るものを含み、提供されたプラグ112は、第2の壁部分108を形成する材料よりも、熱エネルギー移動に対する耐性が大きい材料から形成される。そのような材料は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、マレイミド、メラミンホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、ポリエポキシドおよびポリイミドなどの熱可塑性材料および熱硬化性材料を含む。上記に列挙したものは網羅的ではなく、プラグ112は、第2の壁部分108を形成する材料より熱エネルギー移動に対する耐性が大きい他の材料から形成され得ることが理解される。プラグ112はまた、プラグ112が携帯型電気エネルギー貯蔵セルの電極と電気的に接触しないように寸法決めされ配置される場合、金属材料から形成されてもよい。
【0066】
プラグ112は、インサイチュまたはエクスサイチュで形成することができる。インサイチュ形成は、通路110内にプラグ112を形成する前に、個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200をレセプタクル102に置くことを含む。携帯型電気エネルギー貯蔵セル200が定位置に置かれると、プラグ112を形成する材料またはそのような材料の流体前駆体が通路110に注入されるかまたは通路110に流入され得る。いったん定位置に置かれると、そのような材料またはその前駆体を硬化する、または固くなる。あるいは、プラグ112は、プラグ112を形成する材料を通路110内に注入または流入させる前に携帯型電気エネルギー貯蔵セルのアレイの治具または複製品をフレーム100に挿入することによって、電気エネルギー貯蔵セル200をフレーム100内に配置する前に通路110内にインサイチュで形成することができる。プラグ112を形成するために使用される特定の材料に応じて、プラグ112と第1の壁部分106との間の接着は、たとえば化学保持剤を介してプラグ112を定位置に保持するのに十分なものになり得る。プラグ112のエクスサイチュ形成は、金型を使用してプラグ112を形成し、プラグ112が固まった、または硬化した後に金型から取り外すことを含むことができる。あるいは、プラグ112は、スタンピングまたは切断プロセスにより形成されてもよい。その後、エクスサイチュ形成プラグ112を、携帯型電気エネルギー貯蔵セルをそれぞれのレセプタクルに挿入する前または後に、通路110内に固定することができる。エクスサイチュ形成されたプラグ112は、摩擦嵌めによって機械的に、または接着剤を用いて化学的に通路110内に固定することができる。図示していないが、通路110または通路110の一部には、プラグ112を通路110内に固定するためにプラグ上の対応する雌型または雄型の特徴部と対合するのに適した雄型または雌型の特徴部を設けることができる。あるいは、図9に示すように、機械的締結具または保持具902を設けて、プラグ112を通路110内に機械的に固定することができる。図9に示す実施形態では、機械的保持具902は、プラグ112の一部分に固定された一端904と、フレーム100の特徴部に永久的または可逆的に固定された別の端部905とを含む。たとえば、図9では、プラグ112に固定された端部904とは反対側の機械的保持具902の端部905は、フレーム100の開口部908内に形成されたリップ906に固定される。プラグ112は、図9に具体的に示すものとは異なる設計の機械的保持具または締結具を使用して、通路110内に機械的に固定することができることを理解されたい。たとえば、保持具902の端部904は、図9に示す位置以外の場所でプラグ112に固定することができる。同様に、機械的保持具902の端部905は、図9に示すものとは異なる方法でフレーム100に固定することができる。複数のプラグ112はまた、フレーム100内の複数の通路の場所と一致するように空間的に配置されたプラグの相互連結されたアレイとして形成することもできる。そのような複数のプラグの配置は、その後、1回のステップで複数の通路に挿入することができる。
【0067】
図10および図11を参照すると、プラグ112が上記で説明したインサイチュ技術の実施形態によって形成されるとき、プラグ112が形成される第2の材料またはそのような材料の流体前駆体が、(フレームのレセプタクル内に携帯型電気エネルギー貯蔵装置を受け入れる)フレーム100の上部に施与され、通路110内に流入する。材料は通路110を充填し、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200とフレーム100との間の隙間にも流れる。通路110が充填されるにつれて、材料は、フレーム100の上部および携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の上部にわたって広がる。材料が広がるにつれて、材料はフレーム100の上部と、フレーム100によって受け入れられた携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の上部を覆う。図10および図11には示さないが、フレーム100内に受け入れられた個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セル100の端子は、導電性コネクタによって互いに接続される。第2の材料は、これらの電気コネクタと個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セルとの間の隙間および電気コネクタとフレームとの間の隙間に流入する。例示的な実施形態では、フレーム100の上部、フレーム100内の携帯型電気エネルギー貯蔵装置の上部、および電気コネクタは、第2の材料に埋め込まれるかまたは包まれる。図10および図11に示すように、施与された第2の材料は、フレーム100の上部にキャップ、カバーまたは層910を形成する。キャップ910を形成する材料に応じて、キャップ910は、万が一個々の携帯型電気エネルギー貯蔵セル200が故障した場合の爆発、火災伝播および/または爆発性ガスの漏出のリスクを低減する構造体を形成する。キャップ910は、携帯型電気エネルギー貯蔵セルの上部周りに、故障したまたは故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルから漏出し得る可燃性ガスが通過できないシールを作り出すことによって、故障した、または故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セルからの爆発性ガスの爆発および/または漏出のリスクを低減する。故障したセルから漏出した可燃性ガスの燃焼を助長するのに必要な酸素もまた、キャップ910によって提供されるシールを通過することはできない。キャップ910は、炎が通過できない障壁として作用することにより、火災伝播のリスクを低減する。キャップ910はまた、故障している携帯型電気エネルギー貯蔵セル200が位置するキャップ910の一方の側から、故障していない携帯型電気エネルギー貯蔵セル200が位置するキャップ910の反対側まで熱エネルギーを伝達することを妨げる熱障壁としての役割を果たすこともできる。さらに、キャップ910がフレーム100、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200および携帯型電気エネルギー貯蔵セル200間の電気的接続を堅固な固定関係で保持する場合、電気コネクタが携帯型電気エネルギー貯蔵セル200および/または他の電気端子から離脱するリスクが、低減される。
【0068】
図10を参照すると、フレーム100の外周は、とりわけ、第2の材料がキャップ910を形成するためにフレーム100の上部に流入または注入される場合にこの材料を含む役割を果たす上方に延びるフランジ914を含む。第2の材料がフレーム100の上部に施与された後に流れる程度を限定する粘度および/または硬化速度を有する実施形態では、第2の材料がフレーム100の上部の側面にわたって流れることを防止するために上方に延びるフランジ914を利用することは必要ではない。他方では、第2の材料が、フレーム100の外周を通りすぎてフレーム100の側面にわたって流れることを可能にする流れおよび/または硬化特性を有する実施形態では、上方に延びるフランジ914は、ダムまたは保持具として作用して、施与された第2の材料の一部分がフレーム100の外周を通り過ぎて、フレーム100の側面にわたって流れるのを防止する。そのような実施形態では、第2の材料から形成されたキャップ910の上部は、上方に延びるフランジ914の上部と実質的に一致する。さらに他の実施形態では、第2の材料がフレーム100の上部に施与された後、上方に延びるフランジの上部をガイドとして使用して余分な接着剤を掻き取ることができる。施与された第2の材料をこのように掻き取ることにより、第2の材料がさらに均一に広がり、掻き取り前にまだ充填されていない隙間を充填する。
【0069】
第2の材料がフレーム100に施与された後の第2の材料の流れを制御する代替の実施形態では、フレーム100とフレーム100に着座した携帯型電気エネルギー貯蔵セル200との組み合わせを、第2の材料が施与されるフレームの表面と対合し、第2の材料の流れをキャップ910が形成される場所に限定するように成形されたジグまたは工具内に置くことができる。図10に示す例示的な実施形態では、そのような治具または装置は、6つのマンドレルまたはタブを含み、これらは、このマンドレルまたはタブが位置する場所に第2の材料がキャップ190を形成することを防止することによって、キャップ910内に開口部912を形成する。
【0070】
図10および図11に示す例示的な実施形態では、キャップ910は、フレーム100の外周まで延び、これと一致する。他の実施形態では、キャップ910は、フレーム100の外周を越えて延びることができ、またはフレーム100の外周まで完全に延びなくてよい。キャップ910は、シリコーンベースの材料またはシリコーンベースの接着剤を含む、上記で説明した第2の材料のいずれかから形成することができる。キャップ910はまた、プラグ112を形成するために使用されない材料から形成されてもよいが、そのような材料は、上記で説明した気密シールを提供することができ、防火性もしくは耐火性であるか、または上記で説明した熱障壁をもたらすことができるものとする。プラグ112を形成するために使用される第2の材料を参照し、プラグ112の形成と関連してキャップ910の形成を説明しているが、キャップ910を、第2の材料とは異なる材料から形成することができ、プラグ112を形成することなく形成できることも理解されたい。
【0071】
本明細書に説明するキャップ910の例示的な実施形態は、任意の特定の具体的な厚さに限定されないが、例示的な厚さは、フランジ914の高さに実質的に等しい厚さを含む。たとえば、例示的な厚さは、3ミリメートル未満、2ミリメートル未満または1ミリメートル未満である。厚さの例示的な範囲は、0.5〜3.0ミリメートル、1.0〜2.0ミリメートル、および1.5〜2.0ミリメートルを含む。キャップ910の厚さは、上記で説明した範囲外であってもよいことを理解されたい。フレーム100内に受け入れられた携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の長さに平行な方向に測定した、フレーム100およびキャップ910の厚さまたは高さは、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の長さの約1/3未満であることができる。たとえば、フレーム100とキャップ910の厚さまたは高さは、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の長さの1/5から1/3の間の範囲とすることができる。図10および図11を参照して上記で説明したキャップ910の実施形態は、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の上部を受け入れるフレーム100を示しており、キャップ910がそのようなフレーム100の上部に形成されているが、フレーム100を180度回転させ(すなわち、図10および図11に示す向きに対して反転させ)、これが携帯型電気エネルギー貯蔵セル200の底部を受け入れることができることを理解されたい。そのような構成では、携帯型電気エネルギー貯蔵セル200は、2つのフレームの間に挟まれてモジュールを形成する。そのような実施形態では、キャップ910をフレーム100の底部に設けることができ、これは、図10および図11に示すキャップ910の鏡像である構成を有する。
【0072】
図1および図3に示すフレーム100の例示的な実施形態では、複数のレセプタクルが参照文字Yによって特定される。参照文字Yによって特定するレセプタクルは、フレーム100の周囲に位置し、通路110を含むフレーム100の壁部分によって囲まれない。参照文字Yで特定するこれらのレセプタクルには、通路110を含むフレーム100の壁部分が設けられてもよいことを理解されたい。図1に示す具体的な実施形態では、参照文字Yで特定するレセプタクルは、フレーム100の周壁部分によって囲まれ、この場合、フレーム100の周壁部分のより薄い部分は、別のレセプタクルに隣接しない場所に配置され、たとえば、より薄い部分は、フレームが位置する携帯型電気エネルギー貯蔵装置のハウジングを向くフレームの外周に隣接する。したがって、特定の実施形態では、破損する可能性のある脆弱点をフレーム内に保持し、フレーム周囲に隣接するレセプタクル内の携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障した場合に高温ガスおよび炎のための通気孔としての役割を果たすためにこれらのより薄い部分内にプラグを組み込まないことが望ましい。携帯型電気エネルギー貯蔵セルモジュールと携帯型電気エネルギー貯蔵装置のハウジングとの間の空間内で、故障している携帯型電気エネルギーセルによって生成された熱エネルギーを消散させるという観点から、隣接するレセプタクルから離れた、これらの場所におけるフレームの破損が望ましい。
【0073】
プラグ112の利用は、故障しているセルを保持するレセプタクルに隣接するレセプタクル内の故障していないセルを、故障していないセルの温度が故障していないセルの故障が開始されるレベルまで上昇し得る熱エネルギーから保護するのに役立つ。さらに、プラグ112の利用は、故障していないセルを、これに衝突する高温ガスまたは炎に起因する物理的な外部損傷から保護するのに役立つ。たとえば、第1の壁部分106およびプラグ112は、好ましくは、故障しているセルに隣接する第1の壁部分106の側面および/またはプラグ112が、携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障した場合に起こり得る、約1200℃までの温度に約2〜5分間曝された場合、故障していないセルを保護する。第1の壁部分106の側面および/またはプラグ112が、隣接するレセプタクル内の携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障したときに起こり得る、約1200℃までの温度に約2〜5秒間曝された場合、故障していないセルの十分な保護が観察され、このときプラグまたは第1の壁部分の高さの少なくとも約75%は、約1200℃までの温度に約2〜5秒間曝された後残っている。あるいは、第1の壁部分106およびプラグ112は、好ましくは、故障しているセルに隣接する第1の壁部分106の側面および/またはプラグ112が、携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障した場合に起こり得る、約1000℃までの温度に約2〜5秒間曝された場合、故障していないセルを保護する。第1の壁部分106の側面および/またはプラグ112が、隣接するレセプタクル内の携帯型電気エネルギー貯蔵セルが故障したときに起こり得る、約1000℃までの温度に約2〜5秒間曝された場合、故障していないセルの十分な保護が観察され、このときプラグまたは第1の壁部分の高さの少なくとも約75%は、約1000℃までの温度に約2〜5秒間曝された後残っている。
【0074】
上記で説明したさまざまな実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本明細書で参照し、および/または出願データシート内に列挙する米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国語特許、外国語特許出願および非特許公報のすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、さらに別の実施形態を提供するために、必要に応じてさまざまな特許、出願および公報の概念を採用するように改変され得る。
【0075】
これらの変更および他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示する具体的な実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を持つ等価物の全範囲に沿うすべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
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図11