特許第6564533号(P6564533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564533センサ素子およびセンサ素子を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564533
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】センサ素子およびセンサ素子を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20190808BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   G01K7/22 N
   H01C7/04
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-522561(P2018-522561)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-535413(P2018-535413A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2016074942
(87)【国際公開番号】WO2017076631
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】102015118720.5
(32)【優先日】2015年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102016101248.3
(32)【優先日】2016年1月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イーレ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイデンフェルダー,アンケ
(72)【発明者】
【氏名】メアド,クリストル リザ
(72)【発明者】
【氏名】クロイバー,ゲラルド
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−093453(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/072123(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/024724(WO,A1)
【文献】 特開2012−129341(JP,A)
【文献】 特開平09−021707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/22
H01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定用のセンサ素子(1)であって、
1つのセラミック担体(2)と、
少なくとも1つのNTC層(3)と、
を備え、
前記担体(2)は前記NTC層(3)で印刷されており、
前記NTC層(3)は、前記担体(2)の1つの表面の少なくとも一部を覆っており、
前記NTC層(3)の抵抗は、印刷処理の回数によって決定されており、
前記センサ素子(1)は、ワイヤリング無しの接続用に構成されている、
ことを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ素子において、
前記センサ素子(1)は、少なくとも2つの電極(4)を備え、 前記電極(4)は、
前記NTC層(3)上に配設されており、
前記電極(4)は、1つの空き領域(5)によって互いに離間されている、
ことを特徴とするセンサ素子。
【請求項3】
前記NTC層(3)は、前記担体(2)の第1の表面を完全に覆っていることを特徴と
する、請求項1または2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
それぞれの前記電極(4)は、少なくとも1つのスパッタリングされた層を備えること
を特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項5】
前記スパッタリングされた層は、前記NTC層(3)上に直接取り付けられていること
を特徴とする、請求項に記載のセンサ素子。
【請求項6】
それぞれの前記電極(4)は、少なくとも1つの印刷された層を備えることを特徴とす
る、請求項1乃至のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項7】
前記印刷された層は、直接前記NTC層(3)上に印刷されていることを特徴とする、
請求項に記載のセンサ素子。
【請求項8】
前記NTC層(3)は、1つの凹部(6)を備え、当該凹部(6)は、前記NTC層(
3)の抵抗を調整するために設けられていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれ
か1項に記載のセンサ素子。
【請求項9】
センサ素子(1)を製造するための方法であって、
1つのセラミック担体材料を準備するステップと、
前記担体材料を少なくとも部分的に、NTC層(3)を形成するためのNTCペースト
を用いて印刷するステップであって、当該印刷が、少なくとも1回の印刷処理で行われる
ステップと、
担体材料およびNTCペーストからなる系を焼結するステップと、
複数の薄膜電極を前記NTC層(3)上にスパッタリングするステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記NTC層(3)の厚さおよび抵抗は、前記印刷処理の回数によって調整されること
を特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
請求項または10に記載の方法において、
前記方法はさらに、
所定の抵抗値に調整するために、レーザーアブレーションを用いて前記NTC層(3)
を部分的に除去するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記センサ素子(1)は、プリント基板の導電路上に接着、はんだ付け、または焼結されるように設計される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【請求項13】
前記電極(4)は、銀焼結可能なように構成され配設される、請求項2乃至8のいずれか1項に記載のセンサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ素子に関する。このセンサ素子は、特に温度の測定に用いることができる。たとえばこのセンサ素子は、NTCセンサ素子(negative temperature coefficient)、すなわち高温導体(Heissleiter)である。さらに本発明は、センサ素子を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、様々なアプリケーションにおけるモニタリングおよび制御のために主にセラミック高温導体サーミスタ素子(NTC),シリコン温度センサ(KTY),白金温度センサ(PRTD),または熱電対(TC)を用いて、温度が測定されていた。この際その低い製造コストのために、NTCサーミスタが最も広く普及している。NTCサーミスタ素子のもう1つの利点は、熱電対またはたとえばPt素子のような金属抵抗素子とは逆に、顕著に負の抵抗温度特性を有していることである。
【0003】
パワーモジュールにおける使用の場合には、主に表面実装デバイスのNTC温度センサ(複数)が用いられ、これらははんだ付けされる。低パワー用の制御モジュールでは、この代替として、NTCチップ(複数)も用いられ、これらはその下面で銀焼結,はんだ付け,または接着を用いて取り付けられており、そしてその上面でボンディングワイヤを介して接続される。
【0004】
このNTCセラミックの電気的接続のためには、金属電極が取り付けられなければならない。このため従来技術では、主に銀ペーストまたは金ペーストから成る厚膜電極がシルクスクリーン印刷およびこれに続く焼成によって取り付けられる。
【0005】
銀メタライジングは、とりわけはんだ結合に適している。増大する技術的な要求のため、ボンディングおよび溶接のような、最近の信頼性のある外部接続に関して、特に金ワイヤ、アルミニウムワイヤ、あるいは銅ワイヤを用いたボンディングの際には、もう1つの電極が必要であるが、これは銀への結合が充分な信頼性を全く備えないからである。
【0006】
金メタライジングの場合には、接続ワイヤへのはんだ付けは実現することができない。ボンディング接続は、費用的な理由から、金の細いワイヤを用いてのみ実現されている。金電極へのアルミニウムボンディングワイヤ接続は、上記の必要とされる信頼性を達成しない。
【0007】
使用温度および信頼性に関して増大する要求のため、さらにはんだ付け無しに回路基板へ取り付けることができ、かつ高い長時間安定性を備えるとともに、より高い温度での使用に適したNTC温度センサが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、改善された特性を備えるセンサ素子を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は独立請求項に記載のセンサ素子によって解決される。
【0010】
1つの態様によれば、温度測定用の1つのセンサ素子が提示される。このセンサ構成体は、好ましくは1つのセラミックのセンサ材料を備える。このセンサ材料は、たとえば少なくとも1つのNTC層の形態で上記のセンサ素子に配設されている。このセンサ素子は、好ましくは1つのNTCセンサチップである。とりわけ好ましくは、このセンサ素子は、1つのNTC厚膜センサである。
【0011】
このセンサ素子は、少なくとも1つのセラミックの担体を備える。この担体は、上記のNTC層を用いて少なくとも部分的に印刷されている。このNTC層はこの担体の1つの表面の少なくとも一部を覆っている。換言すれば、このNTC層は、この担体表面全部、またはこの担体表面の一部のみを覆っていてよい。たとえばこのNTC層は、この担体の下面を少なくとも部分的に覆っている。しかしながら、このNTC層は、この担体の第1の表面、たとえばこの担体の下面を完全に覆ってよい。このセンサ素子は、ワイヤリング無しの接続用に構成されている。
【0012】
1つの実施形態例によれば、本発明によるセンサ素子は、少なくとも1つの電極、好ましくは少なくとも2つの電極を備える。これらの電極は、上記のNTC層上に配設されており、たとえば2つの電極パッドの形態で配設されている。これよりこれらの電極は、好ましくはこのセンサ素子の同じ面上に、たとえば下面上に存在している。これらの電極は、空間的に互いに離間されている。たとえばこれらの部分領域は空き領域によって互いに離間されている。この空き領域は、たとえば1つのウェブの形態で形成されていてよい。上記の電極(複数)は、このウェブによって互いに離間されている。
【0013】
好ましくは、この空き領域は、セラミックのセンサ材料を備える。上記のセンサ素子は、このセンサ素子のワイヤリング無しの接続が可能であるように構成されている。具体的には、上記の電極(複数)は、これらの電極が銀焼結可能であるように構成され、そして配設されている。以上により柔軟に使用可能なセンサ素子が提供される。
【0014】
1つの実施形態例によれば、上記のNTC層の厚さあるいはこのNTC層の抵抗は、印刷処理の回数によって調整することができる。製造プロセス中のこの印刷処理の回数が多いほど、このNTC層は厚くなり、そしてその抵抗は大きくなる。製造プロセス中のこの印刷処理の回数が少ないほど、このNTC層は薄くなり、そしてその抵抗は小さくなる。
【0015】
1つの実施形態例によれば、それぞれの上記の電極は、少なくとも1つのスパッタリングされた層を備える。これらの電極は、たとえば薄膜電極である。このスパッタリングされた層は、好ましくは上記のNTC層上に直接取り付けられている。この少なくとも1つのスパッタリングされた層は、好ましくはニッケルを含む。さらにこの層は、バナジウム成分を含んでよい。もう1つの実施形態においては、上記の電極は2つの層を備え、ここで下側の層はクロムまたはチタンを含み、そして第2の層はニッケルを含み、ここでこの第2の層も同様にバナジウム成分を含んでよい。上述の実施形態(複数)には、上記のニッケル層上に1つのカバー層を取り付けると有利である。このカバー層は、たとえば銀または金のような1つの酸化しにくい金属から成っている。
【0016】
1つの実施形態によれば、それぞれの上記の電極は、少なくとも1つの印刷された層を備える。これらの電極は、たとえば厚膜電極である。この印刷された層は、好ましくは直接上記のNTC層上に印刷されている。この印刷処理によって、より厚い電極層を実現することができる。
【0017】
1つの実施形態例によれば、上記のNTC層は、1つの凹部を備える。この凹部は、このNTC層の抵抗を調整するために設けられている。極めてバラつきの少ない抵抗とする場合には、定格温度での抵抗の調整のために、いわゆるトリミング処理が行われてよい。この際部分的なレーザーアブレーションによって、1つの部分領域、たとえば上記のNTC層の1つの部分領域が除去され、こうして1つの凹部が生成される。このトリミング処理によって、この層の幾何形状が変更され、そしてその抵抗が所定の値に対応して調整される。
【0018】
上述のNTC厚膜センサの構造によって、このNTC厚膜センサは、たった1つの処理ステップにおいて(加圧焼結またははんだ付け)、プリント基板上に取り付けることができる。これにより、たとえばボンディングを用いたさらなる接続は必要でない。さらに1つの有利な点は、この製造プロセスにおけるこのNTCチップのより小さな熱応力である。このようにして安価な電極系を有する1つのNTC温度センサが提供され、これはさらに加えてこのNTC温度センサのワイヤリング無しの接続を可能とする。
【0019】
1つの態様によれば、1つのセンサ素子を製造するための方法が示される。好ましくは、この方法によって上述のセンサ素子が製造される。本センサ素子または本方法に関して開示された全ての特徴は、これに対応してそれぞれの他の態様に関しても開示されているものであり、そしてこの逆も成り立っている。またそれぞれの特徴がそれぞれの態様に関連して顕わに示されていない場合でこれらは成り立っているものである。
【0020】
本方法は、以下の処理ステップを備える。
−1つのセラミック担体材料を準備するステップ。担体材料として、たとえばAl23,ZrO2,ATZ材料,またはZTA材料,またはMgOをベースにした、セラミック基板が用いられる。
−この担体材料を少なくとも部分的に、NTC層を形成するためのNTCペーストを用いて印刷するステップ。このNTCペーストは、様々なドーピングを含むY−Ca−Cr−Al−O系のペロブスカイトをベースにして製造され、または様々なドーピングを含むNi−Co−Mn−O系のスピネルをベースにして製造される。この担体材料の印刷は、少なくとも1回の印刷処理において、好ましくは複数回の印刷処理において行われる。たとえば2回、3回、5回、または10回の印刷処理が行われる。上記のNTC層の厚さおよび抵抗は、好ましくはこの印刷処理の回数によって調整される。
−この担体材料およびNTCペーストからなる系を焼結するステップ。
−薄膜電極(複数)をこのNTC層上にスパッタリングするステップ。代替として、これらの電極は、このNTC層上に印刷されてもよい(厚膜電極)。
−所定の抵抗値に調整するために、レーザーアブレーションを用いてこのNTC層を部分的に除去するステップ。
【0021】
1つの態様によれば、以下のものを備える温度測定用の1つのセンサ素子が提示される。
−1つのセラミック担体。
−少なくとも2つの電極。
−少なくとも1つのNTC層。ここで上記の担体はこのNTC層を用いて印刷されており、このNTC層は、この担体の表面の少なくとも一部を覆っている。
ここで上記の電極(複数)は、このNTC層上に配設されており、これらの電極は空間的に互いに離間されており、そして上記のセンサ素子は、このセンサ素子のワイヤリング無しの接続が可能であるように構成されている。
【0022】
実施形態例とこれに付随する図を参照して、本発明によるセンサ素子を以下に詳細に説明する。
【0023】
以下に説明する図面は、寸法を正確に示すものではない。むしろより見易いように、個々の寸法は、拡大、縮小、または歪んで表示されていることがあり得る。
【0024】
互いに同じ要素、または同じ機能を担う要素は、同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】1つの第1の実施形態における、1つのセンサ素子を示す。
図2】もう1つの実施形態における、1つのセンサ素子を示す。
図3】もう1つの実施形態における、1つのセンサ素子を示す。
図4】もう1つの実施形態における、1つのセンサ素子を示す。
【0026】
図1は、1つのセンサ素子1、具体的には1つのセンサチップを示す。このセンサ素子1は、好ましくは温度の測定用に構成されている。このセンサ素子1は、1つのセラミックのセンサ材料を備える。このセラミックのセンサ材料は、1つのNTC層3の形態で形成されている。このセンサ素子1は、好ましくは1つのNTC厚膜センサである。このNTC層は、5μm〜200μmの厚さを有してよい。好ましくは、この層厚は、10μm〜100μmである。
【0027】
上記のセンサ材料は、1つのNTCセラミックである、例えばこのセラミックは1つのペロブスカイト構造を備える。具体的にはこのセラミックは、様々なドーピングを含むY−Ca−Cr−Al−O系をベースにするものであってよい。このようなセンサ素子1は、高温のアプリケーションにとりわけ適している。代替としてこのセンサ素子1は、特に適用温度が低い場合には、スピネル構造を有するセラミックを備えてよい。たとえばこのセラミックは、様々なドーピングを含むNi−Co−Mn−O系をベースにするものであってよい。
【0028】
上記のNTC厚膜センサは、その上に上記のNTC層3が印刷されている1つのセラミック担体2から成っている。担体材料として、たとえばAl23,ZrO2,ATZ材料,またはZTA材料,またはMgOをベースにした、セラミック基板が用いられる。これらの材料は、様々なドーピングを含むY−Ca−Cr−Al−O系のペロブスカイトまたは様々なドーピングを含むNi−Co−Mn−O系のスピネルをベースにしたNTCペーストを用いて印刷され、そして焼成される。
【0029】
上記のNTC層3上には、上記の焼成に続いて、電極(複数)4が取り付けられている。これらの電極4は、センサ1の同じ外面上に、たとえばこのセンサ1の下面上に、取り付けられている。具体的にはこれらの電極4は、上記のNTC層3の下面上に取り付けられている。これらの電極4は、空間的に離れて配設されている。これらの電極4は1つの空き領域5によって互いに離間されている。この空き領域5には、電極材料が無くなっているか、あるいは1つの保護層によって充填されていてよい。
【0030】
後で詳細に記載するように、上記のNTC層3上には、シルクスクリーン印刷またはスパッタリング技術(PVD)を用いて取り付けられる。
【0031】
図2は、空き縁部7を有する1つのセンサ素子1を示す。図1に示すセンサ素子1と異なり、この図2に示すセンサ素子1では、担体2を周回する縁部領域にはセンサ材料が無くなっている、すなわちNTC層3が無くなっている。これに対し図1においては、センサ材料(NTC層3)が、担体2の外面、たとえばこの担体2の下面を完全に覆っている。
【0032】
この実施形態例においては、上記の空き縁部7は周回している。しかしながらこの空き縁部7は、部分的にのみ周回していてもよい。
【0033】
上記のNTC層3の幾何形状、すなわちこのNTC層3によって担体2が覆われる程度は、このNTC層3を用いたこの担体2の印刷処理によって決定される。具体的には、NTCペーストを用いたこの担体2の印刷の際に、空き縁部7とするために、この担体2の対応する縁部でNTCペーストが無いままとされてよい。
【0034】
極めてバラつきの少ない抵抗とする場合には、定格温度での抵抗の調整のために、いわゆるトリミング処理が、たとえば部分的なレーザーアブレーションによって行われてよい。これに対応する実施形態例を図3および4に示す。具体的には、図3および4に示すセンサ素子1では、電極(複数)4の間のNTC層3の1つの部分領域がレーザーアブレーションによって部分的に除去されている。換言すれば、これらの電極(複数)4を互いに離間しているNTC層3の空き領域5から1つの領域が除去されている。このNTC層3は、この部位に1つの凹部6を備える。これはこのNTC層3の幾何形状の変更をもたらし、これによってこのNTC層3あるいはこのセンサ素子1の抵抗が調整される。
【0035】
さらに図4には再び1つの空き縁部7が示されている。具体的にはこの図4に示すセンサ素子1では、担体2を周回する縁部領域には、センサ材料が無くなっている。
【0036】
この結果本発明では、2つのセンサタイプが区別されており、1つの第1の実施例においては、NTC厚膜3が担体表面を完全に覆っており(図1および3)、そして1つの第2の実施例においては、このNTC厚膜3は基板表面の一部上にのみ取り付けられている(図2および4)。このNTC層3の厚さおよびこれによる抵抗は、印刷処理の回数によって調整することができる。
【0037】
上記の電極(複数)4の取り付けの際には、上記で示唆されているように、薄膜技術と厚膜技術とが区別されてよい。上記の薄膜電極の製造は、スパッタリングまたは蒸着によって行うことができる。この際1つの第1の実施例におけるこのベース電極は、ニッケル層から成っており、このニッケル層はバナジウム成分を含んでよい。ニッケルを含む層は、特にセラミックへのとりわけ良好な機械的および電気的結合を可能とする。バナジウム成分は、特にスパッタリング処理でのプロセス技術的な理由から、有利であり得る。たとえば上記のニッケルを含む層において、バナジウムは7%までの重量比で存在している。ニッケルは、例えば少なくとも93%の重量比で存在している。このニッケルを含む層の厚さは、たとえば0.3μm〜10μmの範囲にある。
【0038】
1つの第2の実施形態においては、上記のベース電極は、2つの層から成っており、ここで下側の層はクロムまたはチタンを含み、そして第2の層はニッケルから成っており、この第2の層も同様にバナジウム成分を含んでよい。
【0039】
このベース電極は、たとえば銀、金、銅、アルミニウム等の酸化しにくい1つの金属から成るカバー層によって保護されてよい。このカバー電極は、純粋にニッケルのベース電極の腐食保護(酸化)用にのみ用いられてよく、または接続用に有利なものあるいはむしろ必要なものであってもよい。
【0040】
微細分散した銀ペーストでの銀焼結を用いた結合の場合には、たとえば銀のカバー電極が必要である。1つのとりわけマイグレーション耐性のある、鉛フリーの銀結合とするために、1つの金カバー層が取り付けられてよい。
【0041】
NTC厚膜3上には、図1〜4に見て取れるように、2つの電極パッドが取り付けられ、これらは空き領域5によって空間的に互いに離間されている。このベース電極の厚さは、後の銀焼結またははんだ付けを用いた接続処理に依存して、10μmより小さくなっており、さらに有利には3μmより小さく、理想的には0.5μmより小さくなっている。上記のカバー電極の厚さは1μmまでであってよく、特別な場合は20μmまでであってよい。
【0042】
もう1つの変形例においては、電極(複数)4は、厚膜技術を用いて、NTC厚膜3上に印刷され、これによってより厚い電極層(複数)を実現することができる。
【0043】
このメタライジングされた基板は、電気的に事前測定される。この事前測定データを参照して、フリップチップセンサ素子の幾何形状が画定される。多くの場合、長さが固定されているので、調整パラメータとしては幅が、変化可能な寸法として残されている。
【0044】
定格温度でとりわけバラつきの少ない抵抗とするためには、上述したように、追加的なトリミング処理を用いて個々のデバイスの抵抗を調整することができる。この際セラミック材料または電極材料が、たとえばレーザー切断、グラインディング、ソーイングによって、部分的に除去されて、この抵抗の幾何形状の変更によって調整される。
【0045】
セラミックの長期安定性を改善するために、メタライジングされていない領域に渡って、たとえばセラミック,ガラス,プラスチック,または金属酸化物から成る、1つの薄い、非導電性の保護層が取り付けられてよい。これらは、スパッタリング,蒸着,リソグラフィー,または印刷および焼成によって実現されてよい。
【0046】
プリント基板への使用のために、このようにメタライジングされたNTC厚膜センサ1が導電路(複数)上に接着、はんだ付け、または焼結されてよい。銀焼結処理は、 圧力下でまたは無圧で行われてよい。ワイヤまたはボンディングを用いたさらなる接続は必要ではない。
【0047】
従来技術に対し、これに対応する上記のNTC厚膜センサ1は、2つの電極4への銀焼結可能性によって、そして微小損傷の虞があるボンディングによる大きな機械的応力の無い、高い使用温度でもより高度な信頼性を有する構造を可能とする。
【0048】
上記のNTC厚膜センサの構造によって、このNTC厚膜センサは、たった1つの処理ステップにおいて(加圧焼結またははんだ付け)、プリント基板上に取り付けることができる。これにより、たとえばボンディングを用いたさらなる接続は必要でない。
【0049】
さらに1つの有利な点は、この製造プロセスにおけるこのNTC厚膜センサ1のより小さな熱応力である。スパッタリングを用いた電極4の取り付けのおかげで、700−800℃でのメタライジングペーストの焼成は必要ではない。さらに、たとえばAl23,ZrO2,ATZ材料,またはZTA材料,またはMgOをベースにした、セラミックの担体材料の使用によって、センサ素子1の機械的剛性が高められる。
【0050】
バラつきの少ない抵抗を有する上記のフリップチップNTCの製造は、たとえば以下のようなやり方で行われる。
【0051】
第1のステップにおいて、NTC粉末の製造が行われる。このステップには、たとえば計量、湿式の一次造粒、乾燥、ふるい分け、か焼、湿式の二次造粒、乾燥、ふるい分け、および再度のふるい分けが含まれる。
【0052】
これに続いて、ペースト製造のために、このNTC粉末の計量が行われる。これに続いて、このペースト用の有機成分の計量が行われる。
【0053】
次のステップにおいて、これらのペースト成分が撹拌によって予備均質化される。続いて3ローラを用いてこれらのペースト成分の均質化が行われる。
【0054】
次のステップにおいて、このNTCペーストがシルクスクリーン印刷を用いて、セラミック担体材料が少なくとも部分的に印刷される。このステップにおいて、後のフリップチップNTCの幾何形状が決定される。
【0055】
続いてこのセラミック担体材料およびNTC層から成る系が脱炭される。次のステップにおいて、このセラミック担体材料およびNTC層から成る系が焼結される。
【0056】
続いてスパッタリング技術を用いて、Ni/Ag薄膜電極(複数)の上記の焼結されたフリップチップNTCへの取り付けが行われる。代替として厚膜電極(複数)が取り付けられてもよい。
【0057】
次のステップにおいて、個々のフリップチップNTCの定格温度での抵抗の電気的測定が、まだ裁断されていない担体材料上で行われる。続いて個々のNTC層が要求されている抵抗値となるまでレーザーアブレーションによってトリミングされる。
【0058】
最後にこの担体材料のソーイングによってフリップチップNTCの個々の分離が、印刷されたNTC領域(複数)の間で行われる。裁断処理によって、センサ1の最終的な幾何形状が生成される。続いて目視検査および抜き取り検査的な試験測定が行われる。
【0059】
ここで提示した物の記載は、個々の特定の実施形態に限定されるものではない。むしろこれらの個々の実施形態の特徴は、技術的に意味がある限り、任意に互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 : センサ素子
2 : 担体
3 : NTC層
4 : 電極
5 : 空き領域
6 : 凹部
7 : 空き縁部
図1
図2
図3
図4