【実施例】
【0065】
[MXene粒子材料の作製]
(実施例1)
TiC(3μm、レアメタリック)、TiN(3μm、レアメタリック)、Ti(35μm、高純度化学)、Al(30μm、高純度化学)のそれぞれの粉末を混合して混合粉末(TiC:TiN:Ti:Al=0.5:0.5:1:1モル)とした。得られた混合粉末を、1トン/cm
2で静水圧プレス(CIP)し、圧粉体破砕片を小型真空加圧焼結炉により、Ar気流中1350℃で固相反応させてTi
2AlC
0.5N
0.5組成のMAX相セラミックスを作製した。
【0066】
得られたMAX相セラミックスをアルミナ乳鉢で解砕した後、イソプロピルアルコール(IPA)中で直径5mmジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕(24h)、さらに直径0.5mmジルコニアボールを用いた遊星ボールミルにより粉砕(45分)を行った。真空中60℃の条件で、エバポレータを用いてIPAを除去した後、試料水平型多目的X線回折装置によりXRD分析した。XRD回折試験は、「シリカガラス製ホルダー、40KV/40mA、Scan Speed;8°/min、Sampling Step;0.01°、2θ(5−80°)、リガクUltimaIV R285」の条件で行った。XRDプロファイルを
図3示した。また、不純物であるTi
3結晶相のTi
2結晶相に対する比率、残留したTi
3AlC
0.5N
0.5やTiC
0.5N
0.5などの未反応物や中間生成物のTi
2結晶相に対する比率を表1に示した。
【0067】
得られたTi
2AlC
0.5N
0.5粉末5gを、LiFを4.5gと6MのHCLを300mLの混合水溶液(ポリテトラフルオロエチレンるつぼを氷で冷却)にゆっくり投入し、20℃から30℃に制御した水溶液温度で、18時間撹拌しながら放置した(前処理工程)。
【0068】
遠心分離により、10回 水洗した後、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返して、溶媒をエタノールに置換した。室温でエタノールスラリーを乾燥し、XRD分析を行い、XRDプロファイルを
図3に示した。また、エタノールスラリーを粒子濃度2mg/mLに希釈し、ビーズ径50μm(ニッカトーYTZ)を用いたビーズミル処理(3パス、周速 10m/sec、送液速度150mL/分、ビーズ充填率60%)を行った。
【0069】
剥離された薄片状の粒子材料のエタノールスラリー10mLをスピンコーター(ミカサ、MS−B100、600rpm)によりSi製ウエハ上に滴下して、SEM観察により、製造された粒子材料の大きさ(長辺と短辺の平均値)を、AFM分析で厚みをそれぞれ測定した。測定は、それぞれ100個の孤立した粒子を選択して平均の大きさと厚みを算出し、得られた結果を表2示した。剥離した状態のSEM写真を
図1に示した。SEM写真は走査型電子顕微鏡(日立製作所、SU8020)を用いた。AFMによる厚み測定は原子間力顕微鏡(ブルカー・エイエックス社製、Nano Scope/Dimension Icon、測定モード;タッピングモード、測定点数;512×512)を用いた。
【0070】
得られた粒子材料のエタノールスラリーを室温乾燥し、得られた粉末を用いて化学分析によるTi、Al、C、N量の測定、XRD分析を行った。
【0071】
化学分析についてはTi、Al、C、Nのatom%を用いて、Tiを2とした時のAl、C、N量を算出した。得られた結果を表2示した。化学分析は、試料を白金皿にはかりとり、硝酸+硫酸+フッ化水素酸を加えて、加熱(120℃程度)して溶解後、さらに高温(300℃)で加熱して硝酸とフッ化水素酸を飛ばして試料溶液(硫酸)を作製し、作製した試料溶液を適宜希釈してICPで定量分析を行った。さらにXRD分析し、XRDプロファイルを
図3に示した。Alの一部が溶解して形成された空隙層の層間距離を表2に示した。
【0072】
(実施例2)
TiC:TiN:Ti:Al=0.9:0.1:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2した。
【0073】
(実施例3)
TiC:TiN:Ti:Al=0.75:0.25:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0074】
(実施例4)
TiC:TiN:Ti:Al=0.25:0.75:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0075】
(実施例5)
TiC:TiN:Ti:Al=0.1:0.9:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0076】
(実施例6)
TiC(3μm、レアメタリック)、TiN(3μm、レアメタリック)、Ti(35μm、高純度化学)、Al(30μm、高純度化学)のそれぞれの粉末を混合して混合粉末(TiC:TiN:Ti:Al=1:1:1:1モル)とした。得られた混合粉末を、CIP2t/cm
2処理し、圧粉体破砕片をAr気流中1550℃で固相反応させてMAX相セラミックスを作製した。得られたMAX相セラミックスをアルミナ乳鉢で解砕した後、イソプロピルアルコール(IPA)中で直径5mmジルコニアボールを用いたボールミル粉砕(24h)、さらに直径0.5mmジルコニアボールを用いた遊星ボールミル粉砕(45分)を行った。
【0077】
真空中60℃の条件で、エバポレータを用いてIPAを除去した後、XRD分析し、Ti
3Al(C
0.5N
0.5)
2 単一相であることを確認した。結果を
図6に示した。得られたTi
3Al(C
0.5N
0.5)
2粉末10gを、LiFを18.0gと12MのHCLを300mLの混合水溶液(ポリテトラフルオロエチレンるつぼを氷で冷却)にゆっくり投入し、20℃から30℃に制御した水溶液温度で、24時間撹拌しながら放置した(前処理工程)。
【0078】
遠心分離により、10回 水洗した後、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返して、溶媒をエタノールに置換した。室温でエタノールスラリーを乾燥し、XRD分析を行い、結果を
図6に示した。また、エタノールスラリーを粒子濃度2mg/mLに希釈し、ビーズ径50μm(ニッカトーYTZ)を用いたビーズミル処理(3パス、周速 10m/sec、送液速度150mL/分、ビーズ充填率60%)を行った。
【0079】
剥離された薄片状の粒子材料のエタノールスラリー10mLをスピンコーター(ミカサ、MS−B100、600rpm)によりSi製ウエハ上に滴下して、SEM観察により、製造された粒子材料の大きさ(長辺と短辺の平均値)を、AFM分析で厚みをそれぞれ測定した。測定は、それぞれ100個の孤立した粒子を選択して平均の大きさと厚みを算出し、得られた結果を表3示した。AFMによる厚み測定は原子間力顕微鏡(ブルカー・エイエックス社製、Nano Scope/Dimension Icon、測定モード;タッピングモード、測定点数;512×512)を用いた。
【0080】
得られた粒子材料のエタノールスラリーを室温乾燥し、得られた粉末を用いて化学分析によるTi、Al、C量の測定、XRD分析を行った。結果を
図6に示した。
【0081】
化学分析についてはTi、Al、C、N量のatom%を用いて、Tiを3とした時のAl、C、N量を算出した。得られた結果を表3示した。化学分析は、試料を白金皿にはかりとり、硝酸+硫酸+フッ化水素酸を加えて、加熱(120℃程度)して溶解後、さらに高温(300℃)で加熱して硝酸とフッ化水素酸を飛ばして試料溶液(硫酸)を作製し、作製した試料溶液を適宜希釈してICPで定量分析を行った。
【0082】
(実施例7)
TiC:TiN:Ti:Al=1.8:0.2:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0083】
(実施例8)
TiC:TiN:Ti:Al=1.5:0.5:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0084】
(実施例9)
TiC:TiN:Ti:Al=0.5:1.5:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0085】
(実施例10)
TiC:TiN:Ti:Al=0.2:1.8:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0086】
(比較例1)
TiC:TiN:Ti:Al=1:0.0:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。剥離した状態を示すSEM像を
図2に示した。得られたTi2層のMAX相セラミックス及びTi2層のMXene粒子材料のXRDプロファイルを
図4に示す。また得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0087】
(比較例2)
TiC:TiN:Ti:Al=2:0.0:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られたTi3層のMAX相セラミックス及びTi3層のMXene粒子材料のXRDプロファイルを
図7に示す。また得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0088】
[MAX相セラミックス粒子材料の作製]
(実施例11)
焼成温度を1300℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを
図5に示した。
【0089】
(比較例3)
焼成温度を1250℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを
図5に示した。
【0090】
(比較例4)
焼成温度を1400℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを
図5に示した。
【0091】
(比較例5)
焼成温度を1450℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを
図5に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
(結果及び考察)
(1)Ti2層のMAX相セラミックスの作製方法について
(a)Ti2層のMAX相セラミックスの代表例であるTi
2AlCを例に反応メカニズムを説明する。出発原料にTiC、Ti、Al粉末を用い、その混合原料を不活性雰囲気中で1250℃以上の温度で焼成するとTi
2AlCが得られる。1300℃以下では、中間生成物であるTi
3AlCやTiCが残留する。しかし、1300℃ではTi
2AlCの大部分が分解してTi
3AlC
2が形成される。高純度であるTi
2AlCを得るためには、反応性を良くするために混合原料を1t/cm
2から3t/cm
2の圧力範囲でCIP処理や一軸加圧した圧粉体を作製した後、その破砕片を不活性雰囲気で熱処理する方法があるが、効果的ではなく、高純度であるTi
2AlCが得られなかった。また、理論量よりもTiやAl粉末を増量した、例えば理論量の1.2倍量に増量すると、理論量よりも高純度化されるが、十分に高純度化されたTi
2AlCが得られなかった。
【0096】
出発原料にTiC、TiN、Ti、Alを用いて、その混合原料を不活性雰囲気中で1300℃以上1400℃以下の温度で焼成すると高純度なTi
2Al(C
1−xN
x)、0<x<1、が得られることが分かった。混合原料を1t/cm
2から3t/cm
2の圧力範囲でCIP処理や一軸加圧した圧粉体を作製した後、その破砕片を不活性雰囲気で熱処理するとより高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。
【0097】
1200℃から1300℃の温度範囲でTi
3Al(C
1−xN
x)+Ti(C
1−xN
x)→2Ti
2Al(C
1−xNx)なる反応メカニズムで高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。1400℃を超えると、Ti
2Al(C
1−xN
x)が分解してTi
3Al(C
1−xN
x)
2が形成された。炭素サイトの半分のサイトを窒素で置換した組成であるTi
2AlC
0.5N
0.5で最も高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。
【0098】
(b)Ti3層のMAX相セラミックスについて、例えばTi
3Al(C
0.5N
0.5)
2については、混合原料をCIPで1t/cm
2から3t/cm
2の圧力範囲で圧粉体を作製し、その破砕片を1500℃から1550℃不活性雰囲気中で焼成することで得られた。焼成温度を1500℃以上とすることで未反応生成物の残留が抑制でき、1550℃以下にすることでMAX相セラミックスが分解せずに回収できた。
【0099】
(2)Ti2層のMXene粒子材料の作製
酸処理を行う前処理工程において、20℃から30℃で制御した水溶液温度範囲で、10%以上のHF水溶液に24時間以上浸漬するとAlは完全に除去された(従来技術)。また35℃あるいは45℃で、LiF+HClあるいはKF+HCl水溶液に、24時間以上浸漬してもAlは完全に除去された(従来技術)。いずれも酸処理工程で一部表面酸化が進行し、電気抵抗が増加した。
【0100】
20℃から30℃でLiF+HClあるいはKF+HCl水溶液に浸漬する条件においては、Alが残留するが、上記に比べると表面酸化の進行が緩く、得られる薄片状の粒子材料の電気抵抗が小さかった。したがって、Alが完全に除去されず残存する条件を採用すると、得られる薄片状の粒子材料の電気抵抗が低下することができるため好ましいことが分かった。
【0101】
Ti
2AlCあるいはTi
3AlC
2の炭素サイトの一部を窒素に置き換えたMAX相セラミックス粉末を用いて酸処理によるAlの溶解を行うと、形成される空隙層の層間距離がさらに広がった。炭素サイトの半分量を窒素に置き換えたTi
2AlC
0.5N
0.5あるいはTi
3Al(C
0.5N
0.5)
2由来のMXene粒子材料で最も空隙層の層間距離が広がった。明確な理由は明らかではないが、官能基を介した層間の結合力が弱くなり、原子間距離が大きくなって層間距離が広がったと説明できる。
【0102】
(3)粒子材料の剥離手法について
剥離する方法として従来は超音波照射やローラーによる方法を用いていた。超音波照射による剥離方法について検討を行うと、剥離して薄片状の粒子材料を製造するのは困難であることが分かった。超音波照射によって層間を剥離する速度は極めて遅い上に、超音波照射によっては剥離しない場合もあった。またローラーによる方法では剥離は十分に進行しなかった。
【0103】
また、湿式ジェットミルによる方法でも剥離が困難であった。ビーズ径10μmから300μmの範囲のビーズを用いたビーズミル処理することで、SEM像から得られる大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下、AFM分析によって得られる厚みの平均値が3.5nm以上で20nm以下の薄片が均一な状態で速やかに得られることが分かった。
【0104】
特にスラリーの粒子濃度を1から5mg/mLに調整して有機溶媒中で剥離工程を行うことにより、有機溶媒中で測定した凝集粒子径がD50%径で、50nm以上500nm以下で、かつ高分散のスラリーを得ることができた。一方、ビーズ径500μmのビーズを用いたビーズミル処理を行うと、粉砕が進行して剥離はほとんど起きなかった。