特許第6564553号(P6564553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564553MXene粒子材料、それらの粒子材料の製造方法、及び、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6564553
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】MXene粒子材料、それらの粒子材料の製造方法、及び、二次電池
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/56 20060101AFI20190808BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20190808BHJP
【FI】
   C04B35/56
   C04B35/00
   H01M4/58
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-522353(P2019-522353)
(86)(22)【出願日】2018年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2018048449
【審査請求日】2019年4月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁俊
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 友祐
(72)【発明者】
【氏名】冨田 亘孝
(72)【発明者】
【氏名】須田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】深野 達雄
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136136(WO,A1)
【文献】 特開2016−063171(JP,A)
【文献】 特開2017−076739(JP,A)
【文献】 特開昭11−279745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/56
C04B 35/00
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶格子内の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmである層を含むTiAl[C(1−y)(式中、xは0.02超、0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つ粒子材料。
【請求項2】
結晶格子内の空隙層の層間距離が0.44nmから0.55nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、yは0<y<1.0、zは1.80から2.60)で表される組成を持つ粒子材料。
【請求項3】
厚みの平均値が3.5nm以上20nm以下、大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下である請求項1又は2に記載の粒子材料。
【請求項4】
X線回折試験における、TiAl(C1−x)[0<x<1]の002面のピーク強度(A)を基準として、
TiAl(C1−x[0<x<1]の002面のピーク強度(B)の比率(B/A)が、0.03以上で0.07以下、
TiAl(C1−x)[0<x<1]及びTiAl(C1−x[0<x<1]以外の結晶相のピーク強度(C)の比率(C/A)が0.10以下であり、
Al(C1−x)[0<x<1]で表される組成を主成分とする粒子材料。
【請求項5】
請求項4に記載の粒子材料に対し、フッ化塩と塩酸との組み合わせでなる酸性物質を20℃から30℃の水溶液温度で反応させて、含有するAl元素の一部を除去することで原料を製造する前処理工程と、
前記原料から請求項1〜3の何れか1項に記載の粒子材料を製造する製造工程と
を有する粒子材料の製造方法。
【請求項6】
MAX相セラミックス粉末に対し、フッ化塩と塩酸との組み合わせでなる酸性物質を20℃から30℃の水溶液温度で反応させて、含有するAl元素の一部を除去することで原料を製造する前処理工程と、
(1)結晶格子内の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つ粒子を含む粒子材料、又は、
(2)結晶格子内の空隙層の層間距離が0.44nmから0.55nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは1.80から2.60)で表される組成を持つ粒子を含む粒子材料を製造する製造工程と
を有する粒子材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3うちの何れか1項に記載の粒子材料を含む負極活物質を有する二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子材料及びその製造方法、並びに二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より層状化合物であるTiAlCやTiAlCなどのMAX相セラミックス粉末から酸処理によりAlを除去して得られるMXene層状化合物からなる粒子材料(以下適宜「MXene粒子材料」と称したり、単に「粒子材料」と称したりすることがある。)が知られている(特許文献1、2、3、4)。
【0003】
これらのMXene層状化合物は、Al層が除去された空隙層にNaイオンやLiイオンが貯蔵/脱離可能であることから二次電池(蓄電池)の負極活物質材料への応用が期待されている。
【0004】
空隙層の層間距離が0.4nm以上と大きいため、Liより大きなイオン半径であるNaイオン二次電池として期待されている。さらにはTi3層のMXene粒子材料よりも容量などの電池特性が優れているためTi相のMXene粒子材料がさらに期待されている。
【0005】
MAX相セラミックスは層状化合物であり、一般式はMn+1AXと表される。式中のMは遷移金属(Ti、Sc、Cr、Zr、Nbなど)、AはAグループ元素(Al、Si、Ga、Geなど)、XはCか、[C(1.0−x)(0<x≦1.0) ]、nは1から3、で構成されている。
【0006】
その中、AをAlとした時、M−Xとの結合よりもM−AあるいはA−Xの結合が弱いため、酸処理で選択的にAl層が除去される。HF水溶液、あるいは35℃から45℃のLiF+HCl水溶液あるいはKF+HCl水溶液に15時間から30時間、浸漬することによってAl層を完全に溶解し、二次電池の負極活物質材料への利用が試みられている。Al層が空隙層となり、OHやハロゲンなどの官能基が空隙層に吸着して層間距離が0.4nm以上にまで広がる。
【0007】
Liイオン二次電池の負極活物質として広く使用されている黒鉛の層間距離は約0.3nmであり、リチウムイオン直径が約0.152nmであるため容易に層間に侵入可能であり、リチウム二次電池として優れた電池特性を示すが、ナトリウムイオン直径は約0.204nmであるため、従来から使用されている黒鉛においては、層間距離が狭すぎるため入り込みにくく極端に電池特性が劣る。
【0008】
特にナトリウムイオン二次電池については、層間距離が広いTi相のMXeneが最適である。Liイオンよりもイオン直径の大きなイオンが容易に貯蔵/脱離可能にするため、空隙層の層間距離がさらに広いTi2層のMXene粒子材料が期待されている。
【0009】
更に、水洗後の沈降物(MXeneクレイ)をエタノールなどのアルコールに置換した後、超音波照射し、その上澄み液を採取することで層間の剥離が進行した薄片状の形態を持つMXene粒子材料が得られることが報告され、二次電池の負極活物質材料への利用が試みられている。
【0010】
二次電池の負極活物質として用いる場合、MAX相セラミックス粉末としてTiAlCよりもTiAlCを用いたMXene粒子材料の方が、MXene粒子材料を構成する層の厚みが小さくなり、その分単位質量当たりの金属を層間に取り込める容量を大きくすることが可能となる。しかし、TiAlC粉末を得るため、出発原料を固相反応させる際に、不活性雰囲気中の焼成温度を1300℃以上に上げると、Ti/Al合金、TiAlC、TiCなどの未反応物や中間生成物は消失するが、TiAlC結晶相が分解してTiAlC結晶相が大量に形成される。
【0011】
一方、焼成温度を1300℃以下に下げるとTiAlC結晶相がない状態でTiAlC結晶相のみ形成されるが、Ti/Al合金、TiAlC、TiCなどの未反応物や中間生成物が大量に残留してしまうという課題があった。より高純度のTiAlCを得るための手法として、出発原料において理論量よりもTi及びAlを増量する方法が提案されているが、我々の検討では十分な高純度Ti2層のMAX相セラミックスが得られず課題を残した。
【0012】
さらに、二次電池の負極活物質として用いる場合のプロセス上、均一に剥離させたMXene粒子材料であり、有機溶媒中に高分散させたスラリーが必須となる。従来技術においては、TiAlCやTiAlC粉末を酸処理し、Al層を完全に除去した後、有機溶剤に置換した後、剥離を超音波照射による方法で行っている。
【0013】
本発明者らの検討では、従来から行われているHF水溶液、又は35℃から45℃のフッ化塩+塩酸への15時間から30時間の浸漬では、完全にAlを除去可能で、数層の単位格子まで剥離可能となるが、一方で表面の一部が酸化することが分かった。我々が鋭意検討した所、20℃から30℃のフッ化塩+塩酸水溶液に、12時間から30時間、浸漬すると、Alが残存するが、表面酸化のほとんどないMXene粒子材料が得られることが分かった。しかし、従来の超音波照射などの剥離方法ではほとんど剥離できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2016−63171号公報
【特許文献2】特開2017−76739号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0294546号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0088429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、二次電池の負極活物質材料に応用可能で、空隙層の層間距離が広く薄片状の層状化合物であるTi2層由来のMXene粒子材料、それを作製する際に必要な高純度であるTi2層のMAX相セラミックス粒子材料、Ti3層由来のMXene粒子材料、及びそれらの製造方法、並びに二次電池を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行い以下の知見を得た。すなわち、TiAlCの炭素サイトの一部を窒素に置換することにより高純度なTi相のMAX相セラミックス粉末を作製し、またTiAlCの炭素サイトの一部を窒素に置換し、製造条件を調節することにより、空隙層の層間距離のより大きな、所定の組成を有し、所定の厚みと大きさのMXene粒子材料を製造することで、容易にNaイオン、Liイオンを貯蔵/脱離可能な二次電池の負極活物質材料に好適な粒子材料を提供できることを見出した。
【0017】
層状化合物であるMXene粒子材料を負極活物質に応用する場合に、粉末状から剥離した薄片状の粉粒体とする必要がある。その場合に層状化合物は結晶構造的に、Al層を除去した時に形成される層間距離が大きな空隙層を有することにより、特許文献1〜4に示すように、二次電池の負極活物質材料への応用が可能な電気特性を持つことになる。
【0018】
従来技術においては、特許文献2に示すように、TiAlC粉末合成時の出発原料において、Ti粉末とAl粉末を理論量よりも増量することで、理論量とした時よりも高純度なTiAlC粉末が得られた。我々はこの手法よりも高純度なTi2層のMAX相セラミックス粉末を得る方法を検討した。その結果、TiAlCの炭素サイトの一部を窒素で置換させることにより、高純度なTi2層のMAX相セラミックス粉末を作製することに成功した。
【0019】
さらに、従来技術においては、特許文献3に示すように、粉末状MXene層状化合物から剥離させて薄片化させる方法として、液中での超音波照射による方法が採用されている。超音波照射することにより層状化合物粉末を衝突させて、極めて薄く剥離することができ、遠心分離などの方法で、薄片状の粉粒体を取り出すことができている。薄片状の粉粒体の製造方法として一般的な粉砕操作を採用すると、粉末状層状化合物粒子から薄片状に剥離することができず、1μmほどまで粒子径が小さくなった粉末状層状化合物粒子が得られるのみであった。
【0020】
上記課題を解決する本発明の粒子材料は以下の(1)及び(2)の少なくとも一方である。
【0021】
(1)結晶格子内の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmである層を含むTiAl[C(1−y)(式中、xは0.02超、0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つ粒子材料。
【0022】
(2)結晶格子内の空隙層の層間距離が0.44nmから0.55nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、yは0<y<1.0、zは1.80から2.60)で表される組成を持つ粒子材料。
【0023】
(3)これら(1)、(2)に開示の粒子材料は、厚みの平均値が3.5nm以上20nm以下、大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下であることができる。
【0024】
(4)上記(1)〜(3)の粒子材料の原料になり得る粒子材料として、
X線回折試験における、TiAl(C1−x)[0<x<1]の002面のピーク強度(A)を基準として、
TiAl(C1−x[0<x<1]の002面のピーク強度(B)の比率(B/A)が、0.03以上で0.07以下、
TiAl(C1−x)[0<x<1]及びTiAl(C1−x[0<x<1]以外の結晶相のピーク強度(C)の比率(C/A)が0.10以下であり、
TiAlC(1−x)[0<x<1]及びTiAl(C1−x)[0<x<1]の少なくとも一方で表される組成を主成分とする粒子材料が挙げられる。
【0025】
(5)上述の(1)〜(3)のうちの何れかの粒子材料を製造する方法として、(4)に開示の粒子材料に対し、フッ化塩と塩酸との組み合わせでなる酸性物質を20℃から30℃の水溶液温度で反応させて、含有するAl元素の一部を除去することで原料を製造する前処理工程と、
前記原料から上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の粒子材料を製造する製造工程と
を有する粒子材料の製造方法が開示される。
【0026】
(6)また、MAX相セラミックス粉末に対し、フッ化塩と塩酸との組み合わせでなる酸性物質を20℃から30℃の水溶液温度で反応させて、含有するAl元素の一部を除去することで原料を製造する前処理工程と、
結晶格子内の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つ粒子を含む粒子材料、又は、
結晶格子内の空隙層の層間距離が0.44nmから0.55nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは1.80から2.60)で表される組成を持つ粒子を含む粒子材料を製造する製造工程と
を有する粒子材料の製造方法が開示される。
【0027】
(7)上述の(1)〜(3)のうちの何れかに記載の粒子材料を含む負極活物質を有する二次電池が開示される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の粒子材料によれば、TiAlC結晶において、単位格子内の炭素サイトの一部を窒素に置き換えることにより、高純度なTi2層のMAX相セラミックス粉末を作製できる。それを酸処理することにより大きな空隙層を有したTi2層のMXene粒子材料を得ることができる。またTiAlC結晶において、単位格子内の炭素サイトの一部を窒素に置き換え、それを酸処理することにより大きな空隙層を有したTi3層のMXene粒子材料を得ることができる。そして、この大きさと厚みの薄片状の粒子材料とすることにより、Al層が除去されることで得られたより大きな層間距離を有した空隙層を持つ薄片状の粒子材料を二次電池の負極活物質材料として有効であった。
【0029】
そして本発明の製造方法によれば、TiAlC結晶格子において、炭素サイトを一部窒素に置き換えることで高純度なTi2層のMAX相セラミックス粉末、具体的にはTiAlC1−x(0<x<1.0)を得ることができる。また、TiAlCまたはTiAlC結晶格子において、炭素サイトを一部窒素に置き換えた粒子材料を酸処理した後、厚みと大きさが所定の範囲になるよう、ビーズの大きさを選択したビーズミル処理を行うことで、薄片状に効果的に剥離することが可能になった。従来から行われてきた超音波照射による剥離では、ほんの一部のみが剥離されるのみなので、遠心分離によって、分級して取り出すことが必須であったが、この手法によれば、Ti2層またはTi3層のMXene粒子材料が大量に剥離され、薄片化された粒子を多く含むTi2層またはTi3層のMXene粒子材料を製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1の粒子材料について剥離した状態を示すSEM像である。
図2】比較例1の粒子材料について剥離した状態を示すSEM像である。
図3】実施例1の粒子材料について測定したXRDプロファイルである。
図4】比較例1の粒子材料について測定したXRDプロファイルである。
図5】比較例3、実施例6、実施例1、比較例4、比較例5のMAX相セラミックス粒子材料について測定したXRDプロファイルである。
図6】実施例6の粒子材料について測定したXRDプロファイルである。
図7】比較例2の粒子材料について測定したXRDプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の粒子材料及びその製造方法並びに二次電池ついて実施形態に基づいて以下に詳細に説明を行う。本実施形態の粒子材料は、Al層が除去されて形成された、又は除去されることにより形成される、大きな空隙層を有することから、二次電池(Liイオン二次電池、Naイオン二次電池、キャパシタなど)の負極活物質材料への応用が可能である。本実施形態の粒子材料は、負極活物質材料への応用のために、TiAlCあるいはTiAlC結晶格子の炭素サイトの一部を窒素に置き換えた、高純度なTi2層またはTi3層のMAX相セラミックス粉末を酸処理により、Al層を一部溶解させた後、その空隙層の層間距離がさらに大きく、かつ薄片状に粒子化されている。薄片状のTi2層またはTi3層のMXene粒子材料は粉末状層状化合物である粒子材料を剥離することにより得られる。
【0032】
(粒子材料)
実施形態のTi2層あるいはTi3層のMXene粒子材料は、所定の組成式を持つ層状化合物からなる。この層状化合物は酸処理によってAl層の一部が除去されて大きな空隙層を有する。Ti3層よりもTi2層の方が電池特性(電池容量)の観点から優れる。
【0033】
Ti2層においては、TiAlC結晶格子における炭素サイトを一部窒素に置き換えることによって、酸処理後の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmまで広がる。所定の組成式としては、TiAl[C(1−y)(xは0.02超、yは0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つ。
【0034】
Ti3層においては、TiAlC結晶格子における炭素サイトを一部窒素に置き換えることによって、酸処理後の空隙層の層間距離が0.44nmから0.55nmまで広がる。所定の組成式としては、TiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは1.80から2.60)で表される組成を持つ。
【0035】
また、これらの元素以外にもO、OH、ハロゲン基を表面官能基として有することができる。粒子材料の表面層、また酸処理によってAl層の一部が除去された空隙層、具体的にはAが存在した層にO、OH、ハロゲン基が吸着するために、Al層が除去された後、層間が広がる。Ti2層であるTiAl(xは0.02超、zは0.80から1.20)については、酸処理後の空隙層の層間距離が0.58nmであるが、TiAl[C(1−y)(xは0.02超、やは0<y<1、zは0.80ら1.20)とすることによって0.59nmから0.70nmまでさらに広がる。
【0036】
Ti3層であるTiAl(xは0.02超、zは1.80から2.60)については、酸処理後の空隙層の層間距離が0.43nmであるが、TiAl[C(1−y)(xは0.02超、やは0<y<1、zは1.80から2.60)とすることによって0.44nmから0.55nmまでさらに広がる。
【0037】
層間距離が広がる理由は、明確ではないが、MAX相(TiAlCまたはTiAlC)において炭素サイトを一部窒素に置換させることにより、結合力が弱くなり原子間距離が大きくなるために層間距離が大きくなると説明できる。
【0038】
xは0.02超である。xの下限としては、0.03、0.04が採用でき、上限としては0.58、0.56が採用できる。yは0超、1.0未満である。yは0.6未満であることが好ましく、0.4超であることがさらに好ましい。Ti2層については0.8<z<1.20であることが好ましく、0.80<z<0.95であることがさらに好ましい。
【0039】
Ti3層については1.80<z<2.60であることが好ましく、1.80<z<1.90がさらに好ましい。これらx、y及びzについて提示した下限及び上限については、それぞれ任意に組み合わせて採用することができる。
【0040】
空隙層の層間距離は、Ti2層で、0.59nmから0.70nmであるが、0.63nmから0.70nmが好ましい。Ti3層では、0.44nmから0.55nmであるが、0.51nmから0.55nmが好ましい。
【0041】
本実施形態の粒子材料の粒子形状は、板状、葉状、薄片状などである。層状化合物の層の積層方向を「厚み」とし、厚みと直交する方向における最大値を「長辺」最小値を「短辺」とした場合に、大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下、厚みの平均値が3.5nm以上20nm以下である。
【0042】
大きさの下限としては50nm、70nm、100nm、上限としては300nm、250nmが採用できる。厚みの平均値としては、下限としては3.5nm、4.0nm、4.2nm、上限としては20nm、15nmが採用できる。これら「大きさ」「厚み」について提示した、下限及び上限については、それぞれ任意に組み合わせて採用することができる。
【0043】
(粒子材料の製造方法)
(その1)
Ti2層のMXene粒子材料はTi2層のMAX相セラミックス粉末からなる原料を酸処理してAl層を一部溶解して得られる。原料として好適な粒子材料としては、TiAlC(1−x)[0<x<1]及びTiAl(C1−x)[0<x<1]の少なくとも一方で表される組成を主成分とする。
【0044】
この粒子材料は、X線回折試験におけるTiAl(C1−x)、(0<x<1)の002面のピーク強度(A)に対するTiAl(C1−x、(0<x<1)の002面のピーク強度(B)の比率(B/A)が、0.03以上で0.07以下、TiAl(C1−x)、(0<x<1)とTiAl(C1−x、(0<x<1)以外の結晶相のピーク強度(C)の比率(C/A)が0.10以下であることができる。比率(B/A)は0.03以上で0.05以下、比率(C/A)は0.05以下がさらに好ましい。
【0045】
(その2)
本実施形態の粒子材料の製造方法は、上述の粒子材料を製造するのに好適な方法である。Ti2層のMAX相セラミックス粉末について、例えば、TiCとTiNとAlとTiの混合原料をCIP又は一軸加圧により1トン/cmから3トン/cmの範囲で加圧処理し、その圧粉体破砕片を1300℃から1400℃以下の不活性雰囲気中で熱処理することにより高純度なTi2層のMAX相セラミックスであるTiAl(C1−y)、yは0<y<1.0を得ることができる。Ti3層のMAX相セラミックス粉末について、例えば、TiCとTiNとAlとTiの混合原料をCIP又は一軸加圧により1トン/cmから3トン/cmの範囲で加圧処理した圧粉体破砕片を、あるいは加圧処理することなく、1450℃から1600℃以下の不活性雰囲気中で熱処理することにより高純度なTi3層のMAX相セラミックスであるTiAl(C1−x、(0<x<1)を得ることができる。
【0046】
この粒子材料を酸処理によってAlの一部を溶解し、Ti2層あるいはTi3層のMXene粒子材料にし、粉末状MXene粒子材料を10μmから300μmのビーズを用いたビーズミル処理する剥離工程により薄片状のTi2層またはTi3層のMXene 粒子材料にする。
【0047】
剥離工程に供する原料としては、TiAl[C(1−y)または、TiAl[C(1−y)であり、最終的に製造する粒子材料の組成と同じ組成のものを採用することができる。従って、x、y、zの値は上述した粒子材料にて説明したものがそのまま適用できるので詳細な説明は省略する。
【0048】
・前処理工程
剥離工程に供する原料は、MAX相セラミックス粉末に酸性物質を20℃から30℃に制御した温度にて接触させて、MAX相セラミックス粉末に含まれるAl元素の一部を除去することで製造することができる。前処理工程に供する原料は、Ti2層については、TiAlC(1−x)、xは0<x<1.0、で表される組成を有するMAX相セラミックス粉末である。MAX相セラミックスは、X線回折試験におけるTiAl(C1−x)、(0<x<1)の002面に対するTiAl(C1−x、(0<x<1)の002面のピーク強度の比率Aが、0.03以上で0.07以下、TiAl(C1−x)、(0<x<1)とTiAl(C1−x、(0<x<1)以外の結晶相のピーク強度の比率Bが0.10以下である、高純度なTi2層のMAX相セラミックス粉末を用いることが好ましい。Ti3層については、TiAl[C(1−x)、(0<x<1)で表される組成を有するMAX相セラミックス粉末である。
【0049】
さらに、Alを除去する量は酸性物質により酸処理されて製造されるMAX相セラミックス粉末中のAlの量(xに相当)が0.02超になる程度に残存するように調節する。なお、Alを全部除去することも可能であり、その場合にはAlを除去する以上にまで酸処理を進めないことが好ましい。
【0050】
除去されるAlの量は、酸性物質(酸水溶液など)と接触する時間(長くすると除去される量が増加する)、酸性物質の濃度(濃度が高い方が除去される量が増加する)、酸性物質の量(酸性物質の絶対量が多い方が除去され得る量を多くできる)、接触させる温度(温度が高い方が除去される量が増加する)を変化させることで調節できる。
【0051】
層状化合物であるMAX相セラミックス粉末(A元素がAl)に対して、酸処理を行うことによりAlの一部を除去して粒子材料を構成する空隙層を有する層状化合物とする。Al層の一部を除去するための酸としてはフッ酸と塩酸との組み合わせた酸性物質を採用する。フッ酸と塩酸との組み合わせを実現するためにはフッ酸の塩(KF、LiFなど)と塩酸とを混合してフッ酸と塩酸との混合物を得ることが好ましい。
【0052】
特に酸性物質としてはこれらの酸の水溶液を採用する。フッ化塩が完全に解離したと仮定した時に形成されるフッ酸と塩酸との混合濃度としては特に限定しない。フッ酸の濃度としては下限が1.7mol/L、2.0mol/L、2.3mol/L、上限が2.5mol/L、2.6mol/L、2.7mol/L程度にすることができる。塩酸の濃度としては下限が2.0mol/L、3.0mol/L、4.0mol/L、上限が13.0mol/L、14.0mol/L、15.0mol/L程度にすることができる。
【0053】
フッ化塩が完全に解離したと仮定した時に形成されるフッ酸と塩酸との混合比(モル比)についても特に限定しないが、フッ酸の下限として、1:13、1:12、1:11、上限として1:5、1:6、1:7程度を採用することができる。ここで示したフッ酸及び塩酸濃度、混合比についてはそれぞれ任意に組み合わせて採用することができる。酸処理温度については、20℃から30℃が好ましい。20℃から25℃がさらに好ましい。
【0054】
・剥離工程
1つの例として、剥離工程では剥離工程後に製造される薄片状の粒子が多く含まれる粒子材料が上述した粒子材料にて記載した形態になるようビーズ径、周速、スラリー送り速度、ビーズ充填量、スラリー粒子濃度を調節する。剥離工程は原料である層状化合物の層を剥離する工程である。10μm〜300μmの微小サイズのビーズを用いることで酸処理によってAl層の一部を除去した空隙層から剥離することが可能となる。微小サイズのビーズを層状化合物の層間に衝突させることによってナノレベルの厚みで剥離させることができる。
【0055】
剥離工程に供される原料は、前述の粒子材料を構成する材料と同じ組成のものが採用できる。剥離工程では組成は概ね変化しない。
【0056】
遠心分離で微小なビーズとスラリーを分級する機構を具備したビーズミルで剥離することが可能となる。例えばビーズの大きさの下限を10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、上限を300μm、200μm、100μmにすることができる。10μm以上であるとビーズとスラリーの分級が容易である。300μm以下のビーズを用いると粒子材料のサイズを小さくするよりも、剥離を優先して進行させることができる。これらの下限及び上限は任意に組み合わせて採用することができる。ビーズの大きさが適正な範囲であると付与するエネルギーが大きくでき、且つ、剥離を優先して進行できるため、50μm〜100μmのビーズを採用することが最も好ましい。
【0057】
ビーズの材質は特に限定しないが、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素などのセラミックスが採用できる。特に破壊靭性が大きい部分安定化ジルコニアが好ましい。一方、300μm超のビーズを用いる微小サイズの隙間でビーズとスラリーを分級させる一般的に用いられるビーズミルによると、粒子材料のサイズを小さくすることが、剥離に優先して進行する。また、300μm超のビーズやボールを用いた遊星ボールミルなどのボールミルによっても、粒子材料のサイズを小さくすることが剥離に優先する。
【0058】
剥離工程における周速は、6m/sec〜12m/secの周速が採用できる。8m/sec〜10m/secの周速が好ましい。6m/sec以上であると剥離効率が良く、12m/sec以下であると付与する過大なエネルギー付与が抑制され、得られる粒子材料の温度上昇が抑制できるため、得られる粒子材料の表面における酸化の進行が抑制でき、電気抵抗を低くできる。スラリー送り速度は100mL/分から300mL/分が採用できる。スラリー粒子濃度は5mg/mL〜1mg/mLが採用できる。
【0059】
5mg/mL以下の条件によると剥離が充分に進行でき、遠心分離などで分級することにより薄片状の粒子材料を選択する必要が低くなるため好ましい。さらに、スラリーの液中粒子径を小さく保つことが可能になる。1mg/mL以上にすると剥離の効率が良くなる。
【0060】
スラリー温度は35℃以下の温度範囲が好ましい。35℃以下にすると表面酸化が抑制でき、粒子材料の電気抵抗を低く保つことができる。
【0061】
ビーズの充填量は40%〜80%が採用できる。40%以上にすると剥離の効率が良くなり、80%以下にするとビーズとスラリーの分級が容易となる。目的の薄片状の粒子を多く含む粒子材料が製造されたかどうかは、SEM、TEMなどの観察によって判断できる。特に粒子材料の厚みについてはAFM分析することによって判断できる。剥離工程で得られた粒子材料は、必要に応じて遠心分離などの方法によって分級して使用することも可能である。剥離工程における最適な条件については、装置の大きさによって変化するので、これらの数値は限定されるものではない。
【0062】
XRD分析の結果から、TiAlCでは、MAX相セラミックス粉末(TiAlC)における(002)面の面間隔は0.68nmであったが、酸処理後の粒子材料、及び剥離後の薄片状の粒子材料では、(002)面の面間隔が1.26nmに広がった。これは、Al層の一部が溶解して得られた空隙層の層間距離が0.58nmであることを意味する。Ti2層のMAX相セラミックス粉末において、炭素サイトの一部を窒素に置き換えた、例えばTiAlC0.50.5の例で説明すると、MAX相セラミックス(TiAlC0.50.5)粉末における(002)面の面間隔は0.68nmであったが、本発明による酸処理後の粒子材料、及び剥離後の薄片状の粒子材料では、(002)面の面間隔が1.37nmに広がった。Al層の一部が溶解して得られた空隙層の層間距離が0.69nmであることを意味し、炭素サイトを一部窒素に置き換えることによって、空隙層の層間距離がさらに広がった。TiAlCでは、MAX相セラミックス粉末(TiAlC)における(002)面の面間隔は0.93nmであったが、酸処理後の粒子材料、及び剥離後の薄片状の粒子材料では、(002)面の面間隔が1.36nmに広がった。これは、Al層の一部が溶解して得られた空隙層の層間距離が0.43nmであることを意味する。Ti3層のMAX相セラミックス粉末において、炭素サイトの一部を窒素に置き換えた、例えばTiAl(C0.50.5の例で説明すると、MAX相セラミックス(TiAl(C0.50.5粉末における(002)面の面間隔は0.92nmであったが、本発明による酸処理後の粒子材料、及び剥離後の薄片状の粒子材料では、(002)面の面間隔が1.46nmに広がった。これは、Al層の一部が溶解して得られた空隙層の層間距離が0.54nmであることを意味する。空隙層の層間距離は、剥離後の薄片状の粒子材料における002面の面間隔から、MAX相セラミックス粉末の002面の面間隔を差し引くことによって算出できる。
【0063】
この空隙層表面にはOH基、ハロゲン基などの官能基が付着しており、LiイオンやNaイオンとの親和性に優れている。この空隙面にLiやNaイオンが容易に貯蔵/脱離される。このために、本開発品は二次電池の負極活物質として有効である。層間距離がさらに広がったために、容易にNaイオンなどのような大きなイオン直径を有するイオンが貯蔵・脱離が可能となる。なお、従来の剥離手法として、超音波照射や湿式ジェットミルやローラーを用いると、十分に剥離させることは困難であった。
【0064】
(二次電池)
本実施形態の二次電池は上述の本実施形態の粒子材料を負極活物質として含有する。リチウムイオン二次電池やナトリウムイオン二次電池が例示できる。その他の構成としては特に限定されない。なお二次電池の負極活物質に用いる用途においては、Ti2系MXene粒子材料の方が、Ti3系MXene粒子材料より、電池の容量の点でより好適である。
【実施例】
【0065】
[MXene粒子材料の作製]
(実施例1)
TiC(3μm、レアメタリック)、TiN(3μm、レアメタリック)、Ti(35μm、高純度化学)、Al(30μm、高純度化学)のそれぞれの粉末を混合して混合粉末(TiC:TiN:Ti:Al=0.5:0.5:1:1モル)とした。得られた混合粉末を、1トン/cmで静水圧プレス(CIP)し、圧粉体破砕片を小型真空加圧焼結炉により、Ar気流中1350℃で固相反応させてTiAlC0.50.5組成のMAX相セラミックスを作製した。
【0066】
得られたMAX相セラミックスをアルミナ乳鉢で解砕した後、イソプロピルアルコール(IPA)中で直径5mmジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕(24h)、さらに直径0.5mmジルコニアボールを用いた遊星ボールミルにより粉砕(45分)を行った。真空中60℃の条件で、エバポレータを用いてIPAを除去した後、試料水平型多目的X線回折装置によりXRD分析した。XRD回折試験は、「シリカガラス製ホルダー、40KV/40mA、Scan Speed;8°/min、Sampling Step;0.01°、2θ(5−80°)、リガクUltimaIV R285」の条件で行った。XRDプロファイルを図3示した。また、不純物であるTi結晶相のTi結晶相に対する比率、残留したTiAlC0.50.5やTiC0.50.5などの未反応物や中間生成物のTi結晶相に対する比率を表1に示した。
【0067】
得られたTiAlC0.50.5粉末5gを、LiFを4.5gと6MのHCLを300mLの混合水溶液(ポリテトラフルオロエチレンるつぼを氷で冷却)にゆっくり投入し、20℃から30℃に制御した水溶液温度で、18時間撹拌しながら放置した(前処理工程)。
【0068】
遠心分離により、10回 水洗した後、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返して、溶媒をエタノールに置換した。室温でエタノールスラリーを乾燥し、XRD分析を行い、XRDプロファイルを図3に示した。また、エタノールスラリーを粒子濃度2mg/mLに希釈し、ビーズ径50μm(ニッカトーYTZ)を用いたビーズミル処理(3パス、周速 10m/sec、送液速度150mL/分、ビーズ充填率60%)を行った。
【0069】
剥離された薄片状の粒子材料のエタノールスラリー10mLをスピンコーター(ミカサ、MS−B100、600rpm)によりSi製ウエハ上に滴下して、SEM観察により、製造された粒子材料の大きさ(長辺と短辺の平均値)を、AFM分析で厚みをそれぞれ測定した。測定は、それぞれ100個の孤立した粒子を選択して平均の大きさと厚みを算出し、得られた結果を表2示した。剥離した状態のSEM写真を図1に示した。SEM写真は走査型電子顕微鏡(日立製作所、SU8020)を用いた。AFMによる厚み測定は原子間力顕微鏡(ブルカー・エイエックス社製、Nano Scope/Dimension Icon、測定モード;タッピングモード、測定点数;512×512)を用いた。
【0070】
得られた粒子材料のエタノールスラリーを室温乾燥し、得られた粉末を用いて化学分析によるTi、Al、C、N量の測定、XRD分析を行った。
【0071】
化学分析についてはTi、Al、C、Nのatom%を用いて、Tiを2とした時のAl、C、N量を算出した。得られた結果を表2示した。化学分析は、試料を白金皿にはかりとり、硝酸+硫酸+フッ化水素酸を加えて、加熱(120℃程度)して溶解後、さらに高温(300℃)で加熱して硝酸とフッ化水素酸を飛ばして試料溶液(硫酸)を作製し、作製した試料溶液を適宜希釈してICPで定量分析を行った。さらにXRD分析し、XRDプロファイルを図3に示した。Alの一部が溶解して形成された空隙層の層間距離を表2に示した。
【0072】
(実施例2)
TiC:TiN:Ti:Al=0.9:0.1:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2した。
【0073】
(実施例3)
TiC:TiN:Ti:Al=0.75:0.25:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0074】
(実施例4)
TiC:TiN:Ti:Al=0.25:0.75:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0075】
(実施例5)
TiC:TiN:Ti:Al=0.1:0.9:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0076】
(実施例6)
TiC(3μm、レアメタリック)、TiN(3μm、レアメタリック)、Ti(35μm、高純度化学)、Al(30μm、高純度化学)のそれぞれの粉末を混合して混合粉末(TiC:TiN:Ti:Al=1:1:1:1モル)とした。得られた混合粉末を、CIP2t/cm処理し、圧粉体破砕片をAr気流中1550℃で固相反応させてMAX相セラミックスを作製した。得られたMAX相セラミックスをアルミナ乳鉢で解砕した後、イソプロピルアルコール(IPA)中で直径5mmジルコニアボールを用いたボールミル粉砕(24h)、さらに直径0.5mmジルコニアボールを用いた遊星ボールミル粉砕(45分)を行った。
【0077】
真空中60℃の条件で、エバポレータを用いてIPAを除去した後、XRD分析し、TiAl(C0.50.5 単一相であることを確認した。結果を図6に示した。得られたTiAl(C0.50.5粉末10gを、LiFを18.0gと12MのHCLを300mLの混合水溶液(ポリテトラフルオロエチレンるつぼを氷で冷却)にゆっくり投入し、20℃から30℃に制御した水溶液温度で、24時間撹拌しながら放置した(前処理工程)。
【0078】
遠心分離により、10回 水洗した後、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返して、溶媒をエタノールに置換した。室温でエタノールスラリーを乾燥し、XRD分析を行い、結果を図6に示した。また、エタノールスラリーを粒子濃度2mg/mLに希釈し、ビーズ径50μm(ニッカトーYTZ)を用いたビーズミル処理(3パス、周速 10m/sec、送液速度150mL/分、ビーズ充填率60%)を行った。
【0079】
剥離された薄片状の粒子材料のエタノールスラリー10mLをスピンコーター(ミカサ、MS−B100、600rpm)によりSi製ウエハ上に滴下して、SEM観察により、製造された粒子材料の大きさ(長辺と短辺の平均値)を、AFM分析で厚みをそれぞれ測定した。測定は、それぞれ100個の孤立した粒子を選択して平均の大きさと厚みを算出し、得られた結果を表3示した。AFMによる厚み測定は原子間力顕微鏡(ブルカー・エイエックス社製、Nano Scope/Dimension Icon、測定モード;タッピングモード、測定点数;512×512)を用いた。
【0080】
得られた粒子材料のエタノールスラリーを室温乾燥し、得られた粉末を用いて化学分析によるTi、Al、C量の測定、XRD分析を行った。結果を図6に示した。
【0081】
化学分析についてはTi、Al、C、N量のatom%を用いて、Tiを3とした時のAl、C、N量を算出した。得られた結果を表3示した。化学分析は、試料を白金皿にはかりとり、硝酸+硫酸+フッ化水素酸を加えて、加熱(120℃程度)して溶解後、さらに高温(300℃)で加熱して硝酸とフッ化水素酸を飛ばして試料溶液(硫酸)を作製し、作製した試料溶液を適宜希釈してICPで定量分析を行った。
【0082】
(実施例7)
TiC:TiN:Ti:Al=1.8:0.2:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0083】
(実施例8)
TiC:TiN:Ti:Al=1.5:0.5:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0084】
(実施例9)
TiC:TiN:Ti:Al=0.5:1.5:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0085】
(実施例10)
TiC:TiN:Ti:Al=0.2:1.8:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0086】
(比較例1)
TiC:TiN:Ti:Al=1:0.0:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例1と同様に行った。剥離した状態を示すSEM像を図2に示した。得られたTi2層のMAX相セラミックス及びTi2層のMXene粒子材料のXRDプロファイルを図4に示す。また得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表2に示した。
【0087】
(比較例2)
TiC:TiN:Ti:Al=2:0.0:1:1モルの混合粉末を出発原料として用いた以外は実施例6と同様に行った。得られたTi3層のMAX相セラミックス及びTi3層のMXene粒子材料のXRDプロファイルを図7に示す。また得られた空隙層の層間距離、薄片の厚みと大きさ、組成を表3に示した。
【0088】
[MAX相セラミックス粒子材料の作製]
(実施例11)
焼成温度を1300℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを図5に示した。
【0089】
(比較例3)
焼成温度を1250℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを図5に示した。
【0090】
(比較例4)
焼成温度を1400℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを図5に示した。
【0091】
(比較例5)
焼成温度を1450℃とした以外は実施例1と同様にしてMAX相セラミックス粒子材料を作製した。実施例1と同様にXRD分析し結果を表1に示した。プロファイルを図5に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
(結果及び考察)
(1)Ti2層のMAX相セラミックスの作製方法について
(a)Ti2層のMAX相セラミックスの代表例であるTiAlCを例に反応メカニズムを説明する。出発原料にTiC、Ti、Al粉末を用い、その混合原料を不活性雰囲気中で1250℃以上の温度で焼成するとTiAlCが得られる。1300℃以下では、中間生成物であるTiAlCやTiCが残留する。しかし、1300℃ではTiAlCの大部分が分解してTiAlCが形成される。高純度であるTiAlCを得るためには、反応性を良くするために混合原料を1t/cmから3t/cmの圧力範囲でCIP処理や一軸加圧した圧粉体を作製した後、その破砕片を不活性雰囲気で熱処理する方法があるが、効果的ではなく、高純度であるTiAlCが得られなかった。また、理論量よりもTiやAl粉末を増量した、例えば理論量の1.2倍量に増量すると、理論量よりも高純度化されるが、十分に高純度化されたTiAlCが得られなかった。
【0096】
出発原料にTiC、TiN、Ti、Alを用いて、その混合原料を不活性雰囲気中で1300℃以上1400℃以下の温度で焼成すると高純度なTiAl(C1−x)、0<x<1、が得られることが分かった。混合原料を1t/cmから3t/cmの圧力範囲でCIP処理や一軸加圧した圧粉体を作製した後、その破砕片を不活性雰囲気で熱処理するとより高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。
【0097】
1200℃から1300℃の温度範囲でTiAl(C1−x)+Ti(C1−x)→2TiAl(C1−xNx)なる反応メカニズムで高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。1400℃を超えると、TiAl(C1−x)が分解してTiAl(C1−xが形成された。炭素サイトの半分のサイトを窒素で置換した組成であるTiAlC0.50.5で最も高純度なTi2層のMAX相セラミックスが得られた。
【0098】
(b)Ti3層のMAX相セラミックスについて、例えばTiAl(C0.50.5については、混合原料をCIPで1t/cmから3t/cmの圧力範囲で圧粉体を作製し、その破砕片を1500℃から1550℃不活性雰囲気中で焼成することで得られた。焼成温度を1500℃以上とすることで未反応生成物の残留が抑制でき、1550℃以下にすることでMAX相セラミックスが分解せずに回収できた。
【0099】
(2)Ti2層のMXene粒子材料の作製
酸処理を行う前処理工程において、20℃から30℃で制御した水溶液温度範囲で、10%以上のHF水溶液に24時間以上浸漬するとAlは完全に除去された(従来技術)。また35℃あるいは45℃で、LiF+HClあるいはKF+HCl水溶液に、24時間以上浸漬してもAlは完全に除去された(従来技術)。いずれも酸処理工程で一部表面酸化が進行し、電気抵抗が増加した。
【0100】
20℃から30℃でLiF+HClあるいはKF+HCl水溶液に浸漬する条件においては、Alが残留するが、上記に比べると表面酸化の進行が緩く、得られる薄片状の粒子材料の電気抵抗が小さかった。したがって、Alが完全に除去されず残存する条件を採用すると、得られる薄片状の粒子材料の電気抵抗が低下することができるため好ましいことが分かった。
【0101】
TiAlCあるいはTiAlCの炭素サイトの一部を窒素に置き換えたMAX相セラミックス粉末を用いて酸処理によるAlの溶解を行うと、形成される空隙層の層間距離がさらに広がった。炭素サイトの半分量を窒素に置き換えたTiAlC0.50.5あるいはTiAl(C0.50.5由来のMXene粒子材料で最も空隙層の層間距離が広がった。明確な理由は明らかではないが、官能基を介した層間の結合力が弱くなり、原子間距離が大きくなって層間距離が広がったと説明できる。
【0102】
(3)粒子材料の剥離手法について
剥離する方法として従来は超音波照射やローラーによる方法を用いていた。超音波照射による剥離方法について検討を行うと、剥離して薄片状の粒子材料を製造するのは困難であることが分かった。超音波照射によって層間を剥離する速度は極めて遅い上に、超音波照射によっては剥離しない場合もあった。またローラーによる方法では剥離は十分に進行しなかった。
【0103】
また、湿式ジェットミルによる方法でも剥離が困難であった。ビーズ径10μmから300μmの範囲のビーズを用いたビーズミル処理することで、SEM像から得られる大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下、AFM分析によって得られる厚みの平均値が3.5nm以上で20nm以下の薄片が均一な状態で速やかに得られることが分かった。
【0104】
特にスラリーの粒子濃度を1から5mg/mLに調整して有機溶媒中で剥離工程を行うことにより、有機溶媒中で測定した凝集粒子径がD50%径で、50nm以上500nm以下で、かつ高分散のスラリーを得ることができた。一方、ビーズ径500μmのビーズを用いたビーズミル処理を行うと、粉砕が進行して剥離はほとんど起きなかった。
【要約】
新規MXene粒子材料及びその製造方法を提供する。
結晶格子内の空隙層の層間距離が0.59nmから0.70nmである層を含むTiAl[C(1−y)(xは0.02超、0<y<1.0、zは0.80から1.20)で表される組成を持つTi2層MXene粒子材料であって、厚みの平均値が3.5nm以上20nm以下、大きさ[(長辺+短辺)/2]の平均値が50nm以上300nm以下である粒子を含むTi2層のMXene粒子材料であり、二次電池の負極活物質に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7