(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性水相アルミナセメント成分Aと、硬化過程を開始するための水相状態にある開始剤成分Bとを含む2成分モルタル系留付け材であって、さらに成分Aはリン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスホン酸から成る群から選択される少なくとも1つの遮断剤、少なくとも1つの可塑剤及び水を含み、成分Bは開始剤と、少なくとも1つの抑制剤と、少なくとも1つの鉱物充填剤と、水とを含み、
i)前記開始剤は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩の混合物を含み、
ii)前記少なくとも1つの抑制剤はクエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、及びこれらの混合物から成る群から選択され、
iii)前記少なくとも1つの鉱物充填剤は石灰充填剤、砂、鋼玉石、ドロマイト、耐アルカリグラス、砕石、砂利、小石、及びこれらの混合物から成る群から選択される
ことを特徴とする2成分モルタル系留付け材。
前記少なくとも1つの鉱物充填剤が石灰充填剤又はいくつかの石灰充填剤の混合物である、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の2成分モルタル系留付け材。
成分Aと成分Bの混合により得られた物質において、水とアルミナセメントの比(W/CAC)又は水とスルホアルミン酸カルシウムセメントの比(W/CAS)が1.5未満である、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の2成分モルタル系留付け材。
前記第1の鉱物充填剤、前記第2の鉱物充填剤、及び前記第3の鉱物充填剤が3つの異なる炭酸カルシウム細骨材である、こと特徴とする請求項11に記載の2成分モルタル系留付け材。
【背景技術】
【0002】
パーツキット(kit-of-parts)とも呼ばれることのある、2成分モルタル系留付け材の多くは、鉱物質の面におけるアンカー手段の化学的な留付けのために、硬化過程を開始するにあたり使用前又は塗布中にその各成分がそれぞれ混合されるようになっている。例えば、ラジカル重合性樹脂をベースとする有機系留付け材は、迅速な硬化が望ましい場合に使用される。しかし、かかる系の留付け材は環境汚染をもたらし、高価で、環境及び取り扱う人に対し潜在的に有害及び/又は危険となることが一般的に知られているばかりか、そのことを明確に表記しなければならない場合も多い。さらに、有機系留付け材は、強い太陽光線に晒されて熱を持つ場合又は温度が上昇する場合に安定性が大幅に低下し、よってアンカー手段を化学的に留付けする際に機械的性能が低下する。
【0003】
これらの弱点を克服するため、アルミナセメントをベースとする主に無機質系の留付け材が開発された。アルミナセメントの主たる構成要素はモノカルシウムアルミネートであり、最終製品として長期間に渡って高水準の機械的性能を発揮するので、建築及び建設業界で広く用いられている。さらに、アルミナセメントは、塩基に耐性があり、ポルトランドセメントより速く最大強度に達し、硫酸塩溶液に耐えることができる。したがって、アルミナセメント系の留付け材は、化学的な留付けのために好んで用いられる。
【0004】
特許文献1は、ホウ酸とその塩により抑制された(retarded)水相アルミナセメントをベースとする部分Aと、硬化過程を開始するための部分Bとを含む、すぐに使用が可能な状態にある2成分系留付け材を記載している。部分Bの開始剤はリチウム塩のみからなる。この留付け材は、2成分を混合後5分以内に硬化する。さらに、特許文献2は、凝固が阻害された(set-inhibited)水性の高アルミナセメント組成物と再活性剤(reactivator)組成物とを含む2成分系留付け材を開示している。凝固阻害剤(set inhibitor)はホウ酸であり、再活性剤組成物はリチウム塩を含む。
【0005】
しかし、ホウ酸又はその塩により抑制されたこれらのアルミナセメント水性懸濁液は、使用前に保管するために必要な安定度を十分な時間保てないことが多い。さらに、ホウ酸は極めて毒性が強く、生態毒性でもある。
【0006】
特許文献3は、リンを含む化合物によって阻害され(inhibited)、十分な時間高温で保管が可能な、アルミナセメント及び/又はスルホアルミン酸カルシウムセメントを含む安定化された水性懸濁液を記載している。この安定化された水性懸濁液は、表面被覆のベースとしても役立つ。
【0007】
鉱物質の面(被留付け面)におけるアンカー手段の化学的な留付けには、5分未満の硬化といった迅速な硬化が必ずしも望ましいわけではない。さらに、ほとんどの既知の留付け材において、生成される組成物の実用的な用途の大半で流動性が欠如している。このような先行技術の組成物はしばしば、比較的短時間でひび割れが発生する傾向を示すか、又は温度上昇の影響により所要の機械的性能を発揮しなくなる。
【0008】
特許文献4は、酸化リチウム、水溶性リチウム塩、ヒドロキシル化有機酸、又はその塩若しくはエステルを含む、アルミナセメント及びモルタルの凝固及び硬化特性を改善するためのアジュバント(adjuvant)組成物を記載している。この流体は、製造過程で直接アルミナセメント又はモルタル及びコンクリートに取り込むか、塗布作業中にその混合水に加えてもよい。しかし、この系の留付け材の短所は、セメント組成物及び活性剤組成物をすぐに使用可能な状態で十分な時間保管できないことから、所望の凝固時間及び硬化時間によっては、使用直前に準備しなければならず、塗布作業前により多くの工程が必要となることである。
【0009】
そのため、すぐに使用できる状態にある、複数成分系留付け材、好ましくは2成分系留付け材であって、環境、健康、安全性、取扱い、保存時間、及びモルタルの凝固と硬化の良好なバランスにおいて先行技術の留付け材よりも優れたものが必要である。さらに、化学的な留付けのための取扱い、特性、及び機械的性能に悪影響を与えずに、鉱物質の面にアンカー手段を化学的に留付けするために用いることができる留付け材を提供することが望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、以下の用語と定義が用いられる。
【0017】
本発明において、単数形である「a」及び「an」という用語は、内容から明確ではない限り、それぞれ複数の状況も網羅している。従って、「a」又は「an」という用語は、明確な記載がない限り、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味する用語である。
【0018】
本発明における「アルミナセメント」という用語は、主に水硬性カルシウムアルミネートから成るカルシウムアルミネートセメントを指す。代替の用語としては、「高アルミナセメント」又はフランス語の「Cimentfondu」がある。カルシウムアルミネートセメントの主な有効成分は、モノカルシウムアルミネート(セメント化学者が用いる記号では、CaAl
2O
4、CaO・Al
2O
3、又はCA)である。
【0019】
本発明における「保存可能期間(shelf life)」という用語は、成分が多少なりとも個体物の流体水性懸濁液の形態にあり、凝固や反応性の低下を引き起こさずに機械的手段によって水性懸濁液の状態に戻る期間を指す。
【0020】
本発明における「開始剤」という用語は、特定の化学反応を開始させる化学環境を変化させる化合物又は組成物を指す。本発明において、開始剤はモルタル懸濁液のpH値を変化させ、よって最終混合物における水硬性結合材が遮断されない(de-blocking)。
【0021】
本発明における「抑制剤(retarder)」という用語は、特定の化学反応を遅延させるために化学環境を変化させる化合物又は組成物を指す。本発明において、抑制剤はモルタル懸濁液のカルシウムアルミネートセメントの水和能力を変化させ、よって最終混合物における水硬性結合作用を遅延させる。
【0022】
本発明において、「初期凝固時間」という用語は、成分Aと成分Bの混合物が混合後に凝固を開始する時間を指す。混合後のある時間、混合物は多少なりとも個体物のペースト又は流体水性懸濁液としての形態を保つ。
【0023】
本発明は、硬化性水相アルミナセメント成分Aと、硬化過程を開始するための水相状態にある開始剤成分Bとを含み、鉱物質の面におけるアンカー手段の化学的留付けのための2成分モルタル系留付け材に関する。特に、本発明では、成分Aはさらに、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスホン酸から成る群から選択される少なくとも1つの遮断剤(blocking agent)、少なくとも1つの可塑剤及び水を含み、成分Bは開始剤と、少なくとも1つの抑制剤(retarder)と、少なくとも1つの鉱物充填剤と、水とを含む。開始剤は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩の混合物を含み、該少なくとも1つの抑制剤はクエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、及びこれらの混合物から成る群から選択され、鉱物充填剤は石灰充填剤、砂、鋼玉石、ドロマイト、耐アルカリグラス、砕石、砂利、小石、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0024】
本発明の成分Aは、水相アルミナセメント(CA)又は水相スルホアルミン酸カルシウムセメント(CAS)をベースとする。本発明で用いることができるカルシウムアルミネートセメントは、迅速な凝固及び硬化、硫酸カルシウムと混合した際の迅速な乾燥及び収縮補償(shrinkage compensation)、並びに優れた耐腐食及び耐収縮性を特徴とする。本発明での使用に適したカルシウムアルミネートセメントとしては、例えばターナルホワイト(登録商標)(ケルネオス社、フランス)がある。
【0025】
成分Aがアルミナセメント(CAC)と硫酸カルシウム(CaSO
4)の混合物を含む場合、水分保持中にエトリンジャイトが迅速に生成される(ettringite formation)。コンクリート化学では、(CaO)
6(Al
2O
3)(SO
3)
3・32H
2O又は(CaO)
3(Al
2O
3)(CaSO
4)
3・32H
2Oの一般式で表されるヘキサカルシウムアルミネートトライサルフェートハイドレートは、カルシウムアルミネートと硫酸カルシウムの反応により生成され、迅速な凝固及び硬化並びに収縮補償(shrinkage compensation)に繋がることもあれば、又は膨張に繋がることさえある。硫酸塩の含有量の漸増により、収縮補償を実現することができる。
【0026】
本発明の成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約40wt.−%、好ましくは少なくとも約50wt.−%、より好ましくは少なくとも約60wt.−%、最も好ましくは少なくとも約70wt.−%、約40wt.−%乃至約95wt.−%、好ましくは約50wt.−%乃至約85wt.−%、より好ましくは約60wt.−%乃至約80wt.−%、最も好ましくは約70wt.−%乃至約75wt.−%.のアルミナセメントを含む。
【0027】
本発明の別の態様において、成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約20wt.−%、好ましくは少なくとも約30wt.−%、より好ましくは少なくとも約40wt.−%、最も好ましくは少なくとも約50wt.−%、約20wt.−%乃至約80wt.−%、好ましくは約30wt.−%乃至約70wt.−%、より好ましくは約35wt.−%乃至約60wt.−%、最も好ましくは約40wt.−%乃至約55wt.−%のアルミナセメントを含み、また成分Aの全重量に対して、少なくとも約5wt.−%、好ましくは少なくとも約10wt.−%、より好ましくは少なくとも約15wt.−%、最も好ましくは少なくとも約20wt.−%、約1wt.−%乃至約50wt.−%、好ましくは約5wt.−%乃至約40wt.−%、より好ましくは約10wt.−%乃至約30wt.−%、最も好ましくは約15wt.−%乃至約25wt.−%の硫酸カルシウム、好ましくは硫酸カルシウム半水化物を含む。本発明の2成分モルタル系留付け材の態様において、成分AのCaSO
4/CAC比は35:65以下とすべきである。
【0028】
本発明の成分Aに含まれる遮断剤(blocking agent)は、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、ホスホン酸から成る群から選択され、好ましくはリン酸又はメタリン酸、最も好ましくはリン酸、特にリン酸の85%水溶液である。本発明の成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約0.1wt.−%、好ましくは少なくとも約0.3wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.4wt.−%、最も好ましくは少なくとも約0.5wt.−%、約0.1wt.−%乃至約20wt.−%、好ましくは約0.1wt.−%乃至約15wt.−%、より好ましくは約0.1wt.−%乃至約10wt.−%、最も好ましくは約0.3wt.−%乃至約10wt.−%の該遮断剤を含む。本発明の好ましい態様において、成分Aは、成分Aの全重量に対して、約0.3wt.−%乃至約10wt.−%のリン酸の85%水溶液を含む。アルミナセメント及び/又はスルホアルミン酸カルシウムセメントの水硬性結合材の総重量に対する含有量が50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上又は100%であるのが好ましい。
【0029】
本発明の成分Aに含まれる可塑剤は、低分子(LMW)ポリアクリル酸系ポリマー、ポリホスホネートポリオックス及びポリカーボネートポリオックス群からの流動化剤、ポリカルボキシレートエーテル群からのエタクリル流動化剤、及びこれらの混合物から成る群から選択され、例えば、エタクリル(登録商標)G(コーテックス社、アルケマグループ、フランス)、アキューマ(登録商標)1051(ローム・アンド・ハース社、イギリス)、又はシーカ(登録商標)ビスコクリート(登録商標)−20HE(シーカ社、ドイツ)といった可塑剤である。これらの適した可塑剤は市販されている。成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約0.2wt.−%、好ましくは少なくとも約0.3wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.4wt.−%、最も好ましくは少なくとも約0.5wt.−%、約0.2wt.−%乃至約20wt.−%、好ましくは約0.3wt.−%乃至約15wt.−%、より好ましくは約0.4wt.−%乃至約10wt.−%、最も好ましくは約0.5wt.−%乃至約5wt.−%の該可塑剤を含む。
【0030】
本発明の態様において、成分Aは、以下の特性の何れか1つ又は組み合わせをさらに有する。
【0031】
成分Aは、増粘剤をさらに含んでよい。本発明で使用が可能な増粘剤は、キサンタンガム、ウェランガム又はDIUTAN(登録商標)ガム(シーピー・ケルコ社、アメリカ)等の有機物、澱粉由来エーテル、グアー由来エーテル、ポリアクリルアミド、カラギーナン、寒天、粘土等の鉱物、及びこれらの混合物から成る群から選択してよい。これらの適した増粘剤は市販されている。成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約0.01wt.−%、好ましくは少なくとも約0.1wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.2wt.−%、最も好ましくは少なくとも約0.3wt.−%、約0.01wt.−%乃至約10wt.−%、好ましくは約0.1wt.−%乃至約5wt.−%、より好ましくは約0.2wt.−%乃至約1wt.−%、最も好ましくは約0.3wt.−%乃至約0.7wt.−%の該増粘剤を含む。
【0032】
成分Aは、抗菌剤又は殺菌剤をさらに含んでよい。本発明に用いることができる抗菌剤又は殺菌剤は、メチルイソチアゾリノン(MIT)、オクチルイソチアゾリノン(OIT)、ベンゾイソチアゾリノン(BIT)、及びこれらの混合物等のイソチアゾリノン群の化合物から成る群から選択してよい。これらの適した抗菌剤又は殺菌剤は市販されている。特筆すべきは、エコサイドK35R(プロギブン社、フランス)及びニュオセプトOB03(アッシュランド社、オランダ)である。成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約0.001wt.−%、好ましくは少なくとも約0.005wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.01wt.−%、最も好ましくは少なくとも約0.015wt.−%、約0.001wt.−%乃至約1.5wt.−%、好ましくは約0.005wt.−%乃至約0.1wt.−%、より好ましくは約0.01wt.−%乃至約0.075wt.−%、最も好ましくは約0.015wt.−%乃至約0.03wt.−%の抗菌剤又は殺菌剤を含む。本発明の態様において、成分Aは、成分Aの全重量に対して、約0.015wt.−%乃至約0.03wt.−%のニュオセプトOB03を含む。
【0033】
本発明の別の態様において、成分Aは少なくとも1つの充填剤、特に有機充填剤又は鉱物充填剤を含む。本発明に用いることができる充填剤は、石英粉末、好ましくは平均粒子サイズ(d50%)が約16μmの石英粉末、石英砂、粘土、飛灰、フュームシリカ、カーボネート化合物、顔料、酸化チタン、光充填剤、及びこれらの混合物から成る群から選択してよい。適した鉱物充填剤は市販の製品である。特筆すべきは、石英粉末のミリシルW12又はW6(クオーツヴェルケ社、ドイツ)である。成分Aは、成分Aの全重量に対して、少なくとも約1wt.−%、好ましくは少なくとも約2wt.−%、より好ましくは少なくとも約5wt.−%、最も好ましくは少なくとも約8wt.−%、約1wt.−%乃至約50wt.−%、好ましくは約2wt.−%乃至約40wt.−%、より好ましくは約5wt.−%乃至約30wt.−%、最も好ましくは約8wt.−%乃至約20wt.−%の該少なくとも1つの充填剤を含む。
【0034】
成分Aに含まれる水分は、成分Aの全重量に対して、少なくとも約1wt.−%、好ましくは少なくとも約5wt.−%、より好ましくは少なくとも約10wt.−%、最も好ましくは少なくとも約20wt.−%、約1wt.−%乃至約50wt.−%、好ましくは約5wt.−%乃至約40wt.−%、より好ましくは約10wt.−%乃至約30wt.−%、最も好ましくは約15wt.−%乃至約25wt.−%である。
【0035】
可塑剤、増粘剤、及び抗菌剤又は殺菌剤が含まれていても、セメント成分Aの全体的な無機的性質は変わらない。
【0036】
アルミナセメント又はスルホアルミン酸カルシウムセメントを含む成分Aは水相の状態で、スラリー又はペーストの形態であると好ましい。
【0037】
本発明の成分Bは、開始剤と、少なくとも1つの抑制剤(retarder)と、少なくとも1つの鉱物充填剤と、水とを含む。初期の凝固時間を少なくとも5分とするための十分な処理時間を確保するため、モルタル組成物の早期の硬化を防ぐ少なくとも1つの抑制剤が、開始剤成分とともに、特定の濃度で用いられる。
【0038】
成分Bに含まれる開始剤は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩の混合物を含む活性剤成分と促進剤成分を含む。
【0039】
特に、活性剤成分は、水酸化物、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩を含む。活性剤成分は、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類金属塩、より好ましくは水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、若しくはリン酸カルシウム等のカルシウム金属塩、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム若しくはリン酸ナトリウム等のナトリウム金属塩、又は水酸化リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム、若しくはリン酸リチウム等のリチウム金属塩であって、最も好ましくは水酸化リチウムである。本発明の1つの好ましい態様において、成分Bで用いられる水酸化リチウムは、水酸化リチウムの10%水溶液である。
【0040】
成分Bは、成分Bの全重量に対して、少なくとも約0.01wt.−%、好ましくは少なくとも約0.02wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.05wt.−%、最も好ましくは少なくとも約1wt.−%、約0.01wt.−%乃至約40wt.−%、好ましくは約0.02wt.−%乃至約35wt.−%、より好ましくは約0.05wt.−%乃至約30wt.−%、最も好ましくは約1wt.−%乃至約25wt.−%の該活性剤を含む。特に好ましい態様において、活性剤は水と、水酸化リチウムとを含む。成分Bの水含有量は、成分Bの全重量に対して、少なくとも約1wt.−%、好ましくは少なくとも約5wt.−%、より好ましくは少なくとも約10wt.−%、最も好ましくは少なくとも約20wt.−%、約1wt.−%乃至約60wt.−%、好ましくは約5wt.−%乃至約50wt.−%、より好ましくは約10wt.−%乃至約40wt−%、最も好ましくは約15wt.−%乃至約30wt.−%である。成分Bの水酸化リチウム含有量は、成分Bの全重量に対して、少なくとも約0.1wt.−%、好ましくは少なくとも約0.5wt.−%、より好ましくは少なくとも約1.0wt.−%、最も好ましくは少なくとも約1.5wt.−%、約0.1wt.−%乃至約5wt.−%、好ましくは約0.5wt.−%乃至約4wt.−%、より好ましくは約1.0wt.−%乃至約3wt.−%、最も好ましくは約1.5wt.−%乃至約2.5wt.−%である。ほとんどの好ましい態様において、成分Bは、成分Bの全重量に対して、約2.0wt.−%乃至約20wt.−%の水酸化リチウムの10%水溶液を含む。
【0041】
促進剤成分は、水酸化物、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのアルカリ及び/又はアルカリ土類金属塩を含む。促進剤成分は、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類金属塩、さらに好ましくは水溶性のアルカリ又はアルカリ土類金属塩、より好ましくは水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、若しくはリン酸カルシウム等のカルシウム金属塩、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、若しくはリン酸ナトリウム等のナトリウム金属塩、又は水酸化リチウム、硫酸リチウム、硫酸リチウム一水和物、炭酸リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、若しくはリン酸リチウム等のリチウム金属塩であって、最も好ましくは硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物である。成分Bは、成分Bの全重量に対して、少なくとも約0.01wt.−%、好ましくは少なくとも約0.05wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.1wt.−%、最も好ましくは少なくとも約1.0wt.−%、約0.01wt.−%乃至約25wt.−%、好ましくは約0.05wt.−%乃至約20wt.−%、より好ましくは約0.1wt.−%乃至約15wt.−%、最も好ましくは約1.0wt−%乃至約10wt.−%の該促進剤を含む。
【0042】
特に本発明の成分Bの好ましい態様において、水酸化リチウムの10%水溶液/硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物の比は7/1又は6/1である。
【0043】
本発明の成分Bに含まれる該少なくとも1つの抑制剤(retarder)は、クエン酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、及びこれらの混合物から成る群から選択されるが、クエン酸と酒石酸の混合物が好ましい。成分Bは、成分Bの全重量に対して、少なくとも約0.1wt.−%、好ましくは少なくとも約0.2wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.5wt.−%、最も好ましくは少なくとも約1.0wt.−%、約0.1wt.−%乃至約25wt.−%、好ましくは約0.2wt.−%乃至約15wt.−%、より好ましくは約0.5wt.−%乃至約15wt.−%、最も好ましくは約1.0wt.−%乃至約10wt.−%の該抑制剤を含む。
【0044】
特に本発明の成分Bの好ましい態様において、クエン酸/酒石酸の比は1.6/1である。
【0045】
本発明の成分Bに含まれる少なくとも1つの鉱物充填剤は、石灰充填剤、砂、砕石、砂利、小石、及びこれらの混合物から成る群から選択されるが、様々な炭酸カルシウム等の石灰充填剤が好ましい。この少なくとも1つの鉱物充填剤は、石灰充填剤又は石英粉末であるミリシルW12又はW6(クオーツヴェルケ社、ドイツ)、石英砂等の石英充填剤から成る群から選択することが好ましい。成分Bの該少なくとも1つの鉱物充填剤は、炭酸カルシウム又は炭酸カルシウムの混合物が最も好ましい。成分Bは、成分Bの全重量に対して、少なくとも約30wt.−%、好ましくは少なくとも約40wt.−%、より好ましくは少なくとも約50wt.−%、さらにより好ましくは少なくとも約60wt.−%、最も好ましくは少なくとも約70wt.−%、約30wt.−%乃至約95wt.−%、好ましくは約35wt.−%乃至約90wt.−%、より好ましくは約40wt.−%乃至約85wt.−%、さらにより好ましくは約45wt.−%乃至約80wt.−%、最も好ましくは約50wt.−%乃至約75wt.−%の少なくとも1つの鉱物充填剤を含む。この少なくとも1つの鉱物充填剤は、アルミナセメントの粒子サイズを補完する粒子サイズを持つように選択される。
【0046】
この少なくとも1つの鉱物充填剤の平均粒子サイズは最大500μmであることが好ましく、より好ましくは最大400μm、最も好ましくは最大350μmである。
【0047】
本発明の好ましい態様において、成分Bに含まれる少なくとも1つの鉱物充填剤は、3つの異なる炭酸カルシウム、具体的には複数種のオミアカルブ(登録商標)(オムヤインターナショナル社、ドイツ)等の炭酸カルシウム細骨材(fine)の混合物である。第1の炭酸カルシウムは約3.2μmの平均粒子サイズ(d50%)を有し、45μm篩上で残分0.05%(ISO787/7に基づいて決定)を有することが最も好ましい。第2の炭酸カルシウムは約7.3μmの平均粒子サイズ(d50%)を有し、140μm篩上で残分0.5%(ISO787/7に基づいて決定)を有する。第3の炭酸カルシウムは約83μmの平均粒子サイズ(d50%)を有し、315μm篩上で残分1.0%(ISO787/7に基づいて決定)を有する。本発明の成分Bの好ましい態様において、第1の炭酸カルシウム/第2の炭酸カルシウム/第3の炭酸カルシウムの比は、1/1.5/2又は1/1.4/2.2である。
【0048】
特に本発明の別の好ましい態様において、成分Bに含まれる少なくとも1つの鉱物充填剤は3つの異なる石英充填剤の混合物である。第1の石英充填剤は、約240μmの平均粒子サイズ(d50%)を有する石英砂であることが最も好ましい。第2の石英充填剤は、約40μmの平均粒子サイズ(d50%)を有する石英粉末である。第3の石英充填剤は、約15μmの平均粒子サイズ(d50%)を有する石英粉末である。本発明の成分Bの好ましい態様において、第1の石英充填剤/第2の石英充填剤/第3の石英充填剤の比は、3/2/1である。
【0049】
好都合な態様において、成分Bは以下の特性の何れか1つ又は組み合わせをさらに含む。
【0050】
成分Bは、増粘剤をさらに含んでよい。本発明に用いられる増粘剤は、ベントナイト、二酸化ケイ素、石英、アルカリ可溶性又は膨潤性の乳化剤等のアクリレートをベースとする増粘剤、フュームシリカ、粘土、及びチタンキレート剤から成る群から選択してよい。特筆すべきは、ポリビニルアルコール(PVA)、疎水性変性アルカリ可溶性エマルジョン(HASE)、HEURとして知られる先行技術である疎水性変性エチレンオキサイドウレタンポリマー、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、カルボキシメチル2−ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2−ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2−ヒドロキシエチルメチルセルロース、2−ヒドロキシブチルメチルセルロース、2−ヒドロキシエチルエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルセルロース、アタパルジャイトクレー、及びこれらの混合物等のセルロース系増粘剤である。適した増粘剤は、オプティゲルWX(BYKケミー社、ドイツ)、レオレート1(エレメンティス社、ドイツ)、アクリゾールASE−60(ダウ・ケミカル社)等の市販の製品である。成分Bは、成分Bの全重量に対して、少なくとも約0.01wt.−%、好ましくは少なくとも約0.05wt.−%、より好ましくは少なくとも約0.1wt.−%、最も好ましくは少なくとも約0.3wt.−%、約0.01wt.−%乃至約15wt.−%、好ましくは約0.05wt.−%乃至約10wt.−%、より好ましくは約0.1wt.−%乃至約5wt.−%、最も好ましくは約0.3wt.−%乃至約1wt.−%の増粘剤を含む。
【0051】
抑制剤及び増粘剤が含まれていても、セメント成分Bの全体的な無機的性質は変わらない。
【0052】
開始剤と抑制剤とを含む成分Bは水相の状態で、スラリー又はペーストの形態であると好ましい。
【0053】
成分BのpH値は10以上であることが好ましく、より好ましくは11以上、最も好ましくは12以上、特にpH値の範囲は10乃至14、好ましくは11乃至13である。
【0054】
2つの成分に対する水の割合、具体的には成分Aと成分Bに対する水の割合は、成分Aと成分Bの混合により得られた物質において、水とアルミナセメントの比(W/CAC)又は水とスルホアルミン酸カルシウムセメントの比(W/CAS)が1.5未満、好ましくは0.3乃至1.2、最も好ましくは0.4乃至1.0になるように選択されることが特に好ましい。
【0055】
さらに、成分Bに対するリチウムの割合は、成分Aと成分Bの混合により得られた物質において、リチウムとアルミナセメントとの比(Li/CAC)及びリチウムとスルホアルミン酸カルシウムセメント(Li/CAS)の比が0.05未満、好ましくは0.001乃至0.05、最も好ましくは0.005乃至0.01になるように選択されることが特に好ましい。
【0056】
さらに、成分Bにおける抑制剤の割合は、成分Aと成分Bの混合により得られた物質において、クエン酸/酒石酸とアルミナセメントの比及びクエン酸/酒石酸とスルホアルミン酸カルシウムセメントが0.5未満、好ましくは0.01乃至0.4、最も好ましくは0.1乃至0.2になるように選択されることが特に好ましい。
【0057】
最も好ましい態様において、成分Aは以下の成分を含むか、以下の成分から成る。
70乃至80wt.−%のアルミナセメント、又は40乃至60wt.−%のアルミナセメントと15乃至25wt.−%の硫酸カルシウム、
0.5乃至1.5wt.−%のリン酸、
0.5乃至1.5wt.−%の可塑剤、
0.001乃至0.05wt.−%の抗菌剤又は殺菌剤、
任意に5乃至20wt.−%の鉱物充填剤、
15乃至25wt.−%の水。
【0058】
好ましい態様において、成分Bは以下の成分を含むか、以下の成分から成る。
0.1wt.−%乃至4wt.−%の水酸化リチウム、
0.1wt.−%乃至5wt.−%の硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物、
0.05wt.−%乃至5wt.−%のクエン酸、
0.05wt.−%乃至4wt.−%の酒石酸、
35wt.−%乃至45wt.−%の第1の鉱物充填剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の第2の鉱物充填剤、
10wt.−%乃至20wt.−%の第3の鉱物充填剤、
0.01wt.−%乃至0.5wt.−%の増粘剤、15wt.−%乃至25wt.−%の水。
【0059】
最も好ましい態様において、成分Bは以下の成分を含むか、以下の成分から成る。
1.5wt.−%乃至2.5wt.−%の水酸化リチウム、
1wt.−%乃至4wt.−%の硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物、
1wt.−%乃至3wt.−%のクエン酸、
0.5wt.−%乃至2wt.−%の酒石酸、
35wt.−%乃至45wt.−%の第1の鉱物充填剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の第2の鉱物充填剤、
10wt.−%乃至20wt.−%の第3の鉱物充填剤、
0.01wt.−%乃至0.5wt.−%の増粘剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の水。
【0060】
最も好ましい代替の態様において、成分Bは以下の成分を含むか、以下の成分から成る。
3wt.−%乃至4wt.−%の水酸化リチウム、
1wt.−%乃至10wt.−%の硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物、
1wt.−%乃至5wt.−%のクエン酸、
1wt.−%乃至3wt.−%の酒石酸、
25wt.−%乃至35wt.−%の第1の鉱物充填剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の第2の鉱物充填剤、
10wt.−%乃至20wt.−%の第3の鉱物充填剤、
0.01wt.−%乃至0.5wt.−%の増粘剤、
30wt.−%乃至40wt.−%の水。
【0061】
別の最も好ましい態様において、成分Bは以下の成分を含むか、以下の成分から成る。
0.2wt.−%乃至1.5wt.−%の水酸化リチウム、
0.1wt.−%乃至1.0wt.−%の硫酸リチウム又は硫酸リチウム一水和物、
0.1wt.−%乃至1.0wt.−%のクエン酸、
0.1wt.−%乃至0.5wt.−%の酒石酸、
35wt.−%乃至45wt.−%の第1の鉱物充填剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の第2の鉱物充填剤、
10wt.−%乃至20wt.−%の第3の鉱物充填剤、
0.01wt.−%乃至0.5wt.−%の増粘剤、
15wt.−%乃至25wt.−%の水。
【0062】
本発明の成分Aは、以下の通り生成することができる。リン光体(phosphor)を含む遮断剤に水を混ぜ、混合物のpH値を約2にする。可塑剤を加えて、混合物を均質にする。アルミナセメントと任意の硫酸カルシウムと任意の鉱物充填剤を撹拌速度を増加させると同時に予備混合し、段階的に混合物に加えると、結果的に生成される混合物のpH値は約4となる。最後に、増粘剤及び抗菌/殺菌剤を加え、混合物が完全に均質化するまで混ぜる。
【0063】
本発明の成分Bは、以下の通り生成することができる。促進剤を活性剤の水溶液で溶解し、続いて抑制剤を加えて混合物を均質化する。撹拌速度を増加させると同時に、混合物が均質化するまで充填剤を段階的に加える。最後に、混合物が完全に均質化するまで増粘剤を加える。
【0064】
成分A及び成分Bは水相の状態で、スラリー又はペーストの形態であると好ましい。特に成分A及び成分Bは、それぞれの組成においてペースト状から流体状である。好ましい態様において、成分A及び成分Bはペースト状であり、よって2つの成分が混合される際の垂れを防ぐ。
【0065】
成分Aと成分Bの重量比(A/B)は7/1乃至1/3が好適であるが、3/1が好ましい。混合物は、75wt.−%の成分Aと25wt.−%の組成であることが好ましい。代替の態様において、混合物は25wt.−%の成分Aと75wt.−%の成分Bの組成である。
【0066】
2成分系留付け材は鉱物の性質を有し、他の作用剤の追加の増粘剤の影響を受けない。
【0067】
2成分系留付け材の保存可能期間は各成分の個別の保存可能期間によって決まり、特に保管と供給の遅れから留付け材を保護するために、成分A及び成分Bの保存可能期間は常温で少なくとも6カ月である。成分A及び成分Bが個別に少なくとも6カ月安定していることが最も好ましい。成分A及び成分Bは、40℃で水分が蒸発しないように密閉された容器に保管され、一定期間経過後には、流動性、均質性、沈降の有無、及びpH値の変化を確認する。全ての成分の特性に6か月間変化がなければ、保存可能期間は40℃で少なくとも6か月となる。
【0068】
2成分モルタル系留付け材は、2つの成分である成分Aと成分Bの混合後、初期凝固時間が少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分で、特に5分乃至25分の範囲内、好ましくは10分乃至20分の範囲内であることが好ましい。
【0069】
多成分モルタル系留付け材、特に2成分モルタル系留付け材では、セメント成分Aと開始剤成分Bの体積比が1:1乃至7:1であり、3:1であると好ましい。別の態様においては、セメント成分Aと開始剤成分Bの体積比は1:3乃至1:2である。
【0070】
分けて製造された後、成分A及び成分Bは別々の容器に入れられる。その後機械装置によって容器から押し出され、混合器を介して案内される。本発明の2成分モルタル系留付け材は、好ましくはすぐに使用が可能な状態にある留付け材であって、成分A及び成分Bがお互いに分離された状態で多室(multi-chamber)カートリッジ及び/又は多室シリンダ等の多室機器又は2成分カプセル、好ましくは2室カートリッジ又は2成分カプセルに収容される。多室系の留付け材は、硬化性成分Aと開始剤成分Bを分離する2つ以上の箔袋を備えることが好ましい。混合機、好ましくは静的混合器(static mixer)」により混合される室又は袋の内容物は、掘削孔に注入することができる。多室カートリッジ又はペール若しくは複数組のバケツを組み合わせてもよい。
【0071】
アンカー手段の化学的な留付けに際しては、アンカー手段の留付けに必要な、静的混合器で生成した硬化しつつあるアルミナセメント組成物が、当初に鉱物質の面に設けられた掘削孔へ挿入される。その上で、例えばアンカーロッド等、留付けが行われる建設用部品が挿入、調整され、そのモルタル組成物が凝固、硬化する。特に、本発明の2成分系留付け材は、金属部材の留付け用の
接着系アンカ
ーとされる。
【0072】
理論にとらわれることなく、成分Aに含まれる遮断剤は、水中でのカルシウムアルミネートの可溶を阻害し、よって混合物を硬化させることとなるセメントの水和を防ぐ。開始剤成分Bを追加すると、pH値が変化し、コンクリート成分Aの阻害がなくなり、カルシウムアルミネートの水和反応が発生する。この水和反応がアルカリ金属塩、特にリチウム塩により触媒、加速されるため、初期凝固時間は5分未満である。急速な硬化時間(初期凝固時間)を抑制するため、本発明の成分Bに含まれる少なくとも1つの抑制剤は、成分Aと成分Bの混合後、初期凝固時間が少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分で、特に5分乃至25分の範囲内、好ましくは10分乃至20分の範囲内になるように選択されることが好ましい。
【0073】
特に成分Bにおける鉱物充填剤の役割は、機械的強度に係る最終的な性能及び長期的耐久性を調節することである。充填剤を最適化することによって、アルミナセメントの水和を効率的かつ迅速にできるように、水/アルミナセメント比を最適化することができる。
【0074】
本発明の2成分モルタル系留付け材は、煉瓦、コンクリート、透水性コンクリート、又は自然石からできた構造物等の鉱物質の面におけるアンカー手段、好ましくはアンカーロッド、特にネジ棒、ボルト、鉄筋等の金属部材の化学的留付けに用いることができる。特に、本発明の2成分モルタル系留付け材は、金属部材等のアンカー手段の掘削孔への化学的留付けに用いることができる。室温以上又は約80C以上の高温での耐加重の増加及び/又は硬化状態での付着応力の増加のための留付け目的に用いることができる。温度耐性の増加は、強い太陽光線に晒される状況下又は温度が上昇する状況下での外壁留付け物の掘削孔領域の温度等、高温での留付け目的のための作業性の向上に繋がる。
【0075】
さらに、本発明の2成分モルタル系留付け材は、特に構造物、例えば壁、天井、又は床の補強のために繊維、スクリム、織物、又は合成物、特に高弾性繊維、好ましくは炭素繊維を取り付けるために用いることができ、又は建物又は構造物に例えば、石、グラス、又はプラスチックでできたプレート又はブロック等の構成要素を装着するために用いることができる。それは特に煉瓦、コンクリート、透水性コンクリート、又は自然石からできた構造物等の鉱物質の面における掘削孔等の凹部に、アンカー手段、好ましくはアンカーロッド、特にネジ棒、ボルト、鉄筋等の金属部材を留付ける際に用いられる。ここで、本発明の2成分モルタル系留付け材の成分は、例えば、静的混合器の使用、カートリッジ若しくはプラスチックの袋の破壊、又は多室ペール又は複数組のバケツ内の成分の混合によって事前に混合される。
【0076】
以下の実施例では、本発明の技術的範囲を限定することなく本発明を説明する。
【実施例】
【0077】
1.成分A及び成分Bの生成
【0078】
比較例1及び本発明の実施例2乃至4のセメント成分A及び開始剤成分Bは、表1及び表2にそれぞれ示す構成要素の混合によって最初に生成される。与えられる比率は、wt.−%で表す。
【0079】
成分Aの混合の一般的要領は、以下の通り。必要な水量を重み付けし、ミキシングボールに水を入れる。pH値が約2になるまで撹拌下でリン酸をゆっくりと加え、可塑剤を加えて100rpm乃至200rpmで2分間均質化する。ターナルホワイト(登録商標)と充填剤を大きなバケツで予備混合し、塊化を防ぐために200rpmでゆっくりと撹拌する間にこの混合物を段階的に加え、撹拌速度を4000rpmに増加させる。得られるpH値は約4。増粘剤をゆっくりと加え、最後には抗菌剤又は殺菌剤を加え、5分間5000rpmで均質化を行う。
【0080】
【表1】
【0081】
成分Bの混合の一般的要領は、以下の通り。硫酸リチウムを水酸化リチウムの10%水溶液に溶解し、引き続きカルボン酸をこの混合液で溶解し、少なくとも30分間500rpmで十分に均質化する。5分間で撹拌速度を2000rpmに増加させる間に充填剤又は充填剤混合物を段階的に加え、10分間2000rpmで継続的に均質化する。最後に撹拌中に増粘剤を加え、3分間で撹拌速度を2500rpmに増加させる。最後に、5分間均質化を継続する。
【0082】
【表2】
【0083】
2.機械的性能の判定
【0084】
別々に生成された後、セメント成分Aと開始剤成分Bは高速混合器で3:1の体積比で混合され、C20/25コンクリートに形成された直径が14mm又は16mmの掘削孔に注入される。掘削孔は、ハンマードリル又はダイヤモンドコアリングにより形成された。
【0085】
硬化されたモルタル組成物の荷重値は、状態が異なるC20/25コンクリートにおいて、留付け深さが72mm又は60mmのM12アンカーロッドを直径が14mm又は16mmの掘削孔に挿入することにより判定される(表3)。
【0086】
【表3】
【0087】
平均破壊荷重は、高強度の鉄棒に強力に支持されたねじ付きのアンカーロッドを水圧工具で中心から引き抜くことにより判定される。それぞれの状況で、3つのねじ付きアンカーロッドは固定されており、それらの荷重値は24時間の硬化後に平均値として判定される。最大破壊荷重は、接着力として計算され、表4に単位N/mm
2で示されている。
【0088】
【表4】
【0089】
表4に見られる通り、本発明の全ての留付け材は硬化から24時経過後も接着力が大きく、特に高温での機械的性能が高い。有機酸を含まない比較例の留付け材は、初期凝固時間が5分未満であり、取扱時間が不足していたため、どの掘削孔に注入することも、金属要素を定着させることもできなかった。さらに、有機樹脂をベースとする注入モルタルと比較すると、注入モルタルは高温下では接着力は高いが、許容範囲を超えるほどの大きな荷重値の減少が発生し、有機系留付け材では250℃でゼロに近づくこともあるが、本発明の実施例では接着力が増加した。さらに、エトリンジャイト系のスラリーは、水を含む場合及びダイアモンドドリルによる掘削孔で高い性能を発揮する。
【0090】
3.硬化時間に基づく機械的性能の判定
【0091】
成分A1と成分A2はそれぞれ成分B1と成分B2と3:1の比で混合され、乾燥したコンクリートC20/25の14mmの掘削孔(ごみは完全に除去)で埋設深60mmにおいて鉄筋(reinforcement bar)とともに硬化し、異なる時間間隔において室温で水圧工具を用いて引き抜いた。
【0092】
【表5】
【0093】
表5に見られる通り、硬化後には著しい効果が表れ、1か月後には初期値がほぼ2倍に増加している。
【0094】
上記から分かる通り、本発明の2成分モルタル系留付け材は、硬化速度及び機械的強度が有機系留付け材と同等であるものの、その本質的な鉱物組成によりはるかに害が少なく、環境汚染を引き起こさないだけでなく、先行技術に基づく既知の系の留付け材よりも費用対効果に優れた生産が可能である。