【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例である棒状化粧料保持体100について、
図1乃至
図11(B)に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の実施例である棒状化粧料保持体100を備えた棒状化粧料容器MCの側断面図であり、
図2は、本発明の実施例である棒状化粧料保持体100の概略を示す透視斜視図であり、
図3は、
図2の符号3−3で観た側断面図であり、
図4(A)は、
図2の符号4Aで観た平面図であり、
図4(B)は、
図2の符号4Bで観た底面図であり、
図5(A)は、棒状化粧料SMの収縮時の様子を示す平面図であり、
図5(B)は、棒状化粧料SMの収縮時の様子を示す側断面図であり、
図6(A)は、棒状化粧料SMの膨張時の様子を示す平面図であり、
図6(B)は、棒状化粧料SMの膨張時の様子を示す側断面図であり、
図7(A)は、棒状化粧料SMの収縮時の様子を示す拡大側断面図であり、
図7(B)は、棒状化粧料SMの膨張時の様子を示す拡大側断面図であり、
図8(A)乃至
図11(B)は、溶融状態の化粧料LMを充填するときの様子を示す平面図である。
【0032】
本発明の実施例である棒状化粧料保持体100を備えた棒状化粧料容器MCは、
図1に示すように、樹脂製の容器外筒CCと、樹脂製の回転筒RCと、樹脂製の底蓋BCと、金属製のスリーブSLと、樹脂製の棒状化粧料保持体100と、樹脂製の外装キャップOCとを備えている。
このうち、容器外筒CCは、内部に棒状化粧料保持体100と、スリーブSLと、回転筒RCとを収容するように設けられている。
【0033】
回転筒RCは、容器外筒CCの内部に収容され、内周側に棒状化粧料保持体100の少なくともストローク分設けられた螺旋溝RC1と、螺旋溝RC1より上方で周方向に複数設けられた爪状突起RC2とを有している。
そして、底蓋BCの底蓋周壁BC1が回転筒RCと容器外筒CCとの間に入り込むとともに、底蓋周壁BC1の外周に設けられた凸部(図示しない)が容器外筒CCの内側の凹部(図示しない)に嵌合することにより、底蓋BCが回転筒RCを容器外筒CC内部に固定するように構成されている。
【0034】
スリーブSLは、回転筒RCの内側に配設され、棒状化粧料保持体100の少なくともストローク分設けられた保持体用ガイド溝SL1と、周方向に延設された環状リブSL2と、棒状化粧料SMが出入りするスリーブ上方端開口SL3とを有している。
そして、環状リブSL2が複数の爪状突起RC2と螺旋溝RC1の上端との間に係合することにより、スリーブSLが、回転筒RCに対して軸方向の移動を規制されるとともに周方向に回転自在に構成されている。
【0035】
また、棒状化粧料保持体100は、スリーブSLの内側に配設され、筒上方端開口113側で棒状化粧料SMをサポートする円筒状の筒状部分110と、筒上方端開口113側で棒状化粧料SMを保持する丸底状の底部分120と、保持体用ガイド溝SL1を介して螺旋溝RC1と係合する係合突起121とを有している。
外装キャップOCは、容器外筒CCに対して着脱自在に設けられ、装着時にスリーブSLを覆うように構成されている。
【0036】
そして、ユーザが、外装キャップOCを容器外筒CCから取り外し、スリーブSLと容器外筒CCとを相対的に周方向一方へ回転させることにより、棒状化粧料保持体100がスリーブSLと一体に回転筒RCに対して周方向一方に回転する。
すると、棒状化粧料保持体100の係合突起121が回転筒RCの螺旋溝RC1およびスリーブSLの保持体用ガイド溝SL1に案内されて、棒状化粧料保持体100がスリーブSLに対してスリーブ上方端開口SL3に接近移動する。
【0037】
同様に、ユーザが、スリーブSLと容器外筒CCとを相対的に周方向他方へ回転させることにより、棒状化粧料保持体100がスリーブSLと一体に回転筒RCに対して周方向他方に回転する。
すると、棒状化粧料保持体100の係合突起121が回転筒RCの螺旋溝RC1およびスリーブSLの保持体用ガイド溝SL1に案内されて、棒状化粧料保持体100がスリーブSLに対してスリーブ上方端開口SL3から離間移動する。
これにより、スリーブSL内の棒状化粧料SMがスリーブ上方端開口SL3から出入りする。
【0038】
続いて、棒状化粧料保持体100について詳しく説明する。
図2乃至
図4(B)に示すように、本実施例の棒状化粧料保持体100は、棒状化粧料SMの下方部分を正立状態で収容する円筒状の筒状部分110とこの筒状部分110の下方端で棒状化粧料SMを封止する丸底状の底部分120とを備えている。
そして、筒状部分110の筒上方端開口113から溶融状態の化粧料LMを充填・固化してなる棒状化粧料SMを保持するように構成されている。
【0039】
さらに、本実施例では、棒状化粧料保持体100は、底部分120から棒状化粧料SMに向けて突出して棒状化粧料SMを保持する複数の保持ピンの一例として4つの保持ピン122を有している。
本実施例の4つの保持ピン122は、一例として略円柱状であり、保持ピン122の直径は、0.5〜3.0mmであり、特に1.0〜2.0mm程度が好ましい。
【0040】
この4つの保持ピン122は、底部分120を周方向に沿って4等分するとともに底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間の中間領域または中間近傍領域にそれぞれ配設されている。
ここで、「底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間の中間領域または中間近傍領域」とは、底部分120の中心から筒状部分110の筒周壁111までの距離の1/3乃至2/3の範囲内の領域、すなわち、底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間を3等分した真ん中の領域をいう。
【0041】
これにより、
図5(A)および
図5(B)に示すように、棒状化粧料保持体100内で保持した棒状化粧料SMが経時的な温度変化によって膨張する際、棒状化粧料保持体100の径方向外側に向かって体積変化しようとする力FA1が、底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間の中間領域または中間近傍領域にそれぞれ配設されて棒状化粧料SMを保持するそれぞれ4つの保持ピン122の周側面で棒状化粧料保持体100の径方向内側に向かう保持ピン応力(内力)FB1で受け止められて分散抑制される。
さらに、棒状化粧料SMと保持ピン122の周側面との間で生じる相対的な摩擦力が増加する。
【0042】
また、
図6(A)および
図6(B)に示すように、棒状化粧料SMが経時的な温度変化によって収縮する際、膨張する際と同様、棒状化粧料保持体100の径方向内側に向かって体積変化しようとする力FA2が、底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間の中間領域または中間近傍領域にそれぞれ配設されて棒状化粧料SMを保持するそれぞれ4つの保持ピン122の周側面で棒状化粧料保持体100の径方向外側に向かう保持ピン応力(内力)FB2で受け止められて分散抑制される。
【0043】
また、本実施例では、棒状化粧料保持体100は、底部分120に形成して底部分120と棒状化粧料SMとの間に潜入した空気を底部分120の下方裏面側へ逃がす複数の脱気孔の一例として4つの脱気孔123を有している。
この4つの脱気孔123は、4つの保持ピン122同士の中間となる位置であって保持ピン122の全てに接する仮想外接円
Oの外周側領域A1となる位置にそれぞれ配設されいる。
【0044】
これにより、
図7(A)に示すように、経時的な温度変化によって棒状化粧料SMが収縮して棒状化粧料SMと底部分120との間に空気が潜入した状態から、
図7(B)に示すように、経時的な温度変化によって棒状化粧料SMが膨張した状態に変化したとき、棒状化粧料SMと底部分120との間の空気が脱気孔123を介して底部分120の下方裏面側へ逃げる。
すなわち、棒状化粧料SMと底部分120との間に潜入した空気の膨張・収縮の繰り返しによって間隙空間を肥大させるポンプ現象が回避される。
また、詳しくは後述するように、溶融状態の化粧料LMを注入ノズルNZで充填する際に注入ノズルNZから出たばかりの高温の溶融状態の化粧料LMが脱気孔123上に直に注がれることがない。
【0045】
さらに、本実施例では、棒状化粧料保持体100は、底部分120の上方表面側から筒状部分110の筒周壁111に沿って上方へ延びた複数のリブの一例として4つのリブ112を有している。
この4つのリブ112は、4つの保持ピン122と対向してそれぞれ配置されている。
これにより、
図5(B)に示すように、棒状化粧料保持体100内で保持した棒状化粧料SMが経時的な温度変化によって膨張する際、棒状化粧料保持体100の径方向外側に向かって体積変化しようとする力FC1が棒状化粧料SMと凹凸係合するリブ112の周側面で棒状化粧料保持体100の径方向内側に向かうリブ応力(内力)FD1で受け止められて抑制される。
また、4つのリブ112が周方向で間隔を空けて棒状化粧料SMと凹凸係合して、棒状化粧料SMと棒状化粧料保持体100との周方向の相対的な位置関係が規制される。
【0046】
また、本実施例では、棒状化粧料保持体100は、底部分120から突起して溶融状態の化粧料LMの流れを迂回させる迂回突起壁124を有している。
この迂回突起壁124は、脱気孔123より底部分120の中心寄りの位置で脱気孔123にそれぞれ対向して配置されている。
これにより、詳しくは後述するように、溶融状態の化粧料LMが底部分120の上方表面側の中心から径方向外側へ流れて保持ピン122間の迂回突起壁124に当たって溶融状態の化粧料LMの流れが左右に分散されたり迂回突起壁124を乗り越えるように上方へ分散される。
【0047】
続いて、棒状化粧料保持体100の底部分120への溶融状態の化粧料LMの注入充填について説明する。
溶融状態の化粧料LMの注入充填は、棒状化粧料容器MCが組み立てられる工程中の、外装キャップOCの装着前の段階で、スリーブSLのスリーブ上方端開口SL3に樹脂製の注入充填用キャップ(図示せず)が取付けられ、棒状化粧料保持体100がスリーブSL内で最も低い位置に位置する状態で、上方の注入ノズルNZから正立姿勢の棒状化粧料容器MCに対して注入充填用キャップを介して行われる。
【0048】
先ず、
図8(A)に示すように、仮想線で示す上方の注入ノズルNZの位置が棒状化粧料保持体100の底部分120の中心となるようにする。そして、注入ノズルNZから溶融状態の化粧料LMの注入充填を開始する。
すると、溶融状態の化粧料LMは、注入ノズルNZに対向する位置である底部分120の中心、すなわち、注入抵抗のない保持ピン122の全てに接する仮想内接円
Iの内周側領域A2に向けて注入される。
言い換えると、注入ノズルNZから出たばかりの高温の溶融状態の化粧料LMが直接脱気孔123上に注がれることがない。
【0049】
そして、
図8(B)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図8(A)の状態からさらに
底部分120の上方表面に形成される内周側領域A2に向けて注入されると、注入ノズルNZから底部分120
の内周側領域A2に到達した溶融状態の化粧料LMが、
底部分120の上方表面に形成された内周側領域A2から径方向外側に拡がるように移動する。
すなわち、底部分120の上方表面に形成された内周側領域A2が、溶融状態で注入された化粧料LMを受け止め、この受け止められた溶融状態の化粧料LMが、底部分120の上方表面に形成された内周側領域A2から径方向外側に拡がるように移動する。
このとき、溶融状態の化粧料LMは、4つの保持ピン122間を通って径方向外側へ移動する。
【0050】
図9(A)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図8(B)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは4つの保持ピン122間の迂回突起壁124に当たって、溶融状態の化粧料LMの流れが左右に分散される。
なお、溶融状態の化粧料LMの流れが、迂回突起壁124を乗り越えるように上方へ分散されてもよい。
本実施例では、迂回突起壁124が、脱気孔123を中心とした平面視円弧形状に形成されている。
これにより、溶融状態の化粧料LMが迂回突起壁124に当たって、溶融状態の化粧料LMの流れが左右に分岐して径方向外側へ向かって脱気孔123の傍を通過するように案内される。
【0051】
そして、
図9(B)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図9(A)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは、迂回突起壁124の左右両側に分岐して径方向外側へ向かってさらに移動する。
【0052】
図10(A)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図9(B)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは、迂回突起壁124の左右両側で周方向に拡がりながら径方向外側へ向かってさらに移動する。
【0053】
そして、
図10(B)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図10(A)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは、徐々に冷えて固化し始めた化粧料を順次乗り越えるようにして径方向外側へ向かって移動し、迂回突起壁124および脱気孔123の上方を覆う。
すなわち、溶融状態の化粧料LMが脱気孔123の孔内に浸入せず、溶融状態の化粧料LMが脱気孔123の上方で固化する。
また、溶融状態の化粧料LMは、4つの保持ピン122における棒状化粧料保持体100の径方向外側へ回り込むように移動する。
【0054】
本実施例では、上述したように、4つの脱気孔123が、保持ピン122同士の中間となる位置であって保持ピン122の全てに接する仮想外接円
Oの外周側領域A1となる位置にそれぞれ配設されている。
これにより、溶融状態の化粧料LMが、保持ピン122の全てに接する仮想内接円
Iの内周側領域A2に向けて充填され、この内周側領域A2から仮想外接円
Oの外周側領域A1へ流れて保持ピン122の相互間の狭い箇所を回り込むように通過して、流路が広くなり流速が遅くなったときに、脱気孔123に到達する。
【0055】
本実施例では、
図7(A)および
図7(B)に示すように、脱気孔123が、底部分120の上方表面側から下方裏面側へ向かって漸次広がるテーパ状に形成されている。
これにより、底部分120の上方表面側における脱気孔123の孔径を小さくすることができるため、溶融状態の化粧料LMが底部分120へ充填された際に、化粧料LM自体の粘性と表面張力によってより脱気孔123内に入りにくくなり、その結果、脱気孔123の内周面が化粧料LMと接触しにくくなる。
また、本実施例では、脱気孔123の最小孔径が、0.4mm未満である。
これは、空気が脱気孔123を通過するが、粘性のある溶融状態の化粧料LMが入り込まない大きさである。
【0056】
図11(A)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図10(B)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは、周方向に拡がりながら径方向外側へさらに移動するとともに4つの保持ピン122をそれぞれ囲む。
【0057】
そして、
図11(B)に示すように、溶融状態の化粧料LMが、
図11(A)の状態からさらに内周側領域A2に向けて注入されると、溶融状態の化粧料LMは、底部分120の上方表面を隙間無く覆うとともに徐々に冷えて固化していく。
【0058】
さらに、
図11(B)に示す状態で底部分120の上方表面から筒状部分110の筒周壁111に沿って上方の筒上方端開口113まで
溶融状態の化粧料
LMが
徐々に注入充填され、さらに、スリーブSLのスリーブ上方端開口SL3に取付けられた注入充填用キャップ内まで注入充填される。
そして、棒状化粧料保持体100内およびスリーブSL内の化粧料が固化して棒状化粧料SMとなった後、注入充填用キャップがスリーブ上方端開口SL3から取り外される。
その後、スリーブ上方端開口SL3近傍の棒状化粧料SM、すなわち、棒状化粧料SMの先端表面が、カット加工や加熱加工などによりきれいに整えられる。
【0059】
このようにして得られた本発明の実施例である棒状化粧料保持体100は、底部分120から棒状化粧料SMに向けて突出して棒状化粧料SMを保持する4つの保持ピン122が、底部分120を周方向に沿って4等分するとともにこの底部分120の中心と筒状部分110の筒周壁111との間の中間領域または中間近傍領域にそれぞれ配設され、底部分120に形成して底部分120と棒状化粧料SMとの間に潜入した空気を底部分120の下方裏面側へ逃がす4つの脱気孔123が、保持ピン122同士の中間となる位置であって保持ピン122の全てに接する仮想外接円
Oの外周側領域A1となる位置にそれぞれ設されていることにより、注入ノズルNZから高温の溶融状態の化粧料LMを充填注入する際に脱気孔123から下に溶融状態の化粧料LMが漏れ落ちることを防止することができ、棒状化粧料SMに生じがちな底部分120からの離反や浮き上がりを抑制することができるとともに、棒状化粧料SMと底部分120との間に潜入した空気のポンプ現象を防止して棒状化粧料SMの浮き上がりを阻止して従来のような棒状化粧料SMがキャップの内側天井部位と当接してキャップの内側天井部位を汚してしまう、所謂、天付き不良を確実に防止することができる。
【0060】
また、脱気孔123が、底部分120の上方表面側から下方裏面側へ向かって漸次広がるテーパ状に形成されていることにより、溶融状態の化粧料LMが脱気孔123に入り込んで脱気孔123の孔内を塞いでしまうことを防止することができる。
【0061】
さらに、底部分120から突起して溶融状態の化粧料LMの流れを迂回させる迂回突起壁124が、脱気孔123より底部分120の中心寄りの位置で脱気孔123にそれぞれ対向して配置されていることにより、溶融状態の化粧料LMが脱気孔123に入り込んで脱気孔123の孔内を塞いでしまうことをより一層抑制することができる。
【0062】
また、迂回突起壁124が、脱気孔123を中心とした平面視円弧形状に形成されていることにより、溶融状態の化粧料LM
を径方向外側へ向かって脱気孔123の傍を通過するように案内することができる。
【0063】
さらに、底部分120の上方表面側から筒状部分110の筒周壁111に沿って上方へ延びた4つのリブ112が、保持ピン122と対向してそれぞれ配置されていることにより、棒状化粧料SMをさらに保形しつつ確実に保持することができるとともに、棒状化粧料SMと棒状化粧料保持体100との周方向の相対的な回転を防止することができる。
また、脱気孔123の最小孔径が、0.4mm未満であることにより、容易に脱気孔123を設けることができるなど、その効果は甚大である。