特許第6564568号(P6564568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スタンレー電気株式会社の特許一覧

特許6564568車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム
<>
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000002
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000003
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000004
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000005
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000006
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000007
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000008
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000009
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000010
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000011
  • 特許6564568-車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564568
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】車両用前照灯ユニット、車両用前照灯システム
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/176 20180101AFI20190808BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20190808BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190808BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20190808BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20190808BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20190808BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20190808BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190808BHJP
【FI】
   F21S41/176
   F21S41/20
   F21S2/00 355
   B60Q1/14 D
   F21V7/00 570
   F21V9/08 300
   F21W102:00
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-250699(P2014-250699)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-115412(P2016-115412A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−079401(JP,A)
【文献】 特開2012−018208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00−45/00
F21S 2/00
B60Q 1/14
F21V 7/00
F21V 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用前照灯ユニットであって、
単波長である第1波長の光を放出する光源と、
前記光源からの前記第1波長の光を平行光にする平行光学系と、
前記平行光学系から出射する前記第1波長の光を互いの偏光方向が直交する2つの偏光に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第1面から出射する第1偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な反射型液晶素子と、
前記反射型液晶素子から反射されて再び前記偏光ビームスプリッターを通過した第2偏光により励起されて前記第1波長とは異なる第2波長の蛍光を発する蛍光体と、
前記蛍光体からの前記蛍光と前記蛍光体を通過した前記第2偏光との混色光を前記自車両の前方に投射する投射光学系と、
を含む、車両用前照灯ユニット。
【請求項2】
自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用前照灯ユニットであって、
単波長である第1波長の光を放出する光源と、
前記光源からの前記第1波長の光を平行光にする平行光学系と、
前記平行光学系から出射する前記第1波長の光を互いの偏光方向が直交する2つの偏光に分離する偏光ビームスプリッターと、
前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第1面から出射する第1偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な第1反射型液晶素子と、
前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第2面から出射する第2偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な第2反射型液晶素子と、
前記第1反射型液晶素子から反射されて再び前記偏光ビームスプリッターを通過した第3偏光及び前記第2反射型液晶素子から反射されて前記偏光ビームスプリッターで反射した第4偏光により励起されて前記第1波長とは異なる第2波長の蛍光を発する蛍光体と、
前記蛍光体からの前記蛍光と前記蛍光体を通過した前記第3偏光及び前記第4偏光との混色光を前記自車両の前方に投射する投射光学系と、
を含む、車両用前照灯ユニット。
【請求項3】
前記光源が偏光を発する光源である、
請求項1に記載の車両用前照灯ユニット。
【請求項4】
前記第1反射型液晶素子と前記第2反射型液晶素子の各々からの反射光の明暗パターンが同一であり、当該同一の明暗パターンが互いに重なるように前記偏光ビームスプリッターで合成される、
請求項2に記載の車両用前照灯ユニット。
【請求項5】
前記第1反射型液晶素子と前記第2反射型液晶素子の各々からの反射光の明暗パターンが異なっており、当該異なる明暗パターンが互いに重なるように前記偏光ビームスプリッターで合成される、
請求項2に記載の車両用前照灯ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車両等の位置に対応した選択的な光照射を行うための車両用前照灯ユニット並びに当該車両用前照灯ユニットを備える車両用前照灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の前方に存在する対向車両や先行車両(以下、これらを「前方車両」という。)の位置に応じて自車両の前照灯ユニットからの光の照射範囲と非照射範囲を設定する車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムに関する先行例は、例えば特開平7−108873号公報(特許文献1)に開示されている。この種の車両用前照灯システムでは、自車両の前方の所定位置(例えばフロントウィンドウ中央上部)にカメラを設置し、そのカメラによって撮像された前方車両の車体、もしくは尾灯や前照灯の位置を画像処理によって検出する。そして、検出された前方車両の部分に自車両の前照灯ユニットによる光が照射されないようにした配光制御が行われる。
【0003】
また、上記のような配光制御に適用し得る車両用前照灯の先行例として、例えば特表2009−534790号公報(特許文献2)には、液晶素子を利用するものが開示されている。この文献に開示される車両用アダプティブ・フロントライティングシステム用ランプユニットは、光源により放出される光を受けるように構成された液晶素子を含み、該液晶素子は、該液晶素子を光が通過するときに、入射光を実質的に屈折させること無く入射光を透過するように構成される第1の状態と、入射光を屈折させるように構成される第2の状態とを有し、この液晶素子は、アダプティブ・フロントライティングシステムから受ける信号に基づいて制御される、ランプユニットである。
【0004】
ところで、特許文献2に係る先行例では、液晶素子として屈折や散乱を利用したものを使用しているが、これらの液晶素子は液晶テレビジョンなどに使用される表示用液晶素子(液晶表示素子)に比べて明暗の比(コントラスト比)が低く、車両用前照灯の配光制御に利用した場合には必要な照明のカットが必ずしも十分に行えないという点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−108873号公報
【特許文献2】特表2009−534790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る具体的態様は、明暗光のコントラスト比が高く、照明のカットを十分に行える車両用前照灯ユニット等を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1態様の車両用前照灯ユニットは、自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用前照灯ユニットであって、(a)単波長である第1波長の光を放出する光源と、(b)前記光源からの前記第1波長の光を平行光にする平行光学系と、(c)前記平行光学系から出射する前記第1波長の光を互いの偏光方向が直交する2つの偏光に分離する偏光ビームスプリッターと、(d)前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第1面から出射する第1偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な反射型液晶素子と、(e)前記反射型液晶素子から反射されて再び前記偏光ビームスプリッターを通過した第2偏光により励起されて前記第1波長とは異なる第2波長の蛍光を発する蛍光体と、(f)前記蛍光体からの前記蛍光と前記蛍光体を通過した前記第2偏光との混色光を前記自車両の前方に投射する投射光学系を含む、車両用前照灯ユニットである。
【0010】
本発明に係る第2態様の車両用前照灯ユニットは、自車両の前方に対して選択的な光照射を行うための車両用前照灯ユニットであって、(a)単波長である第1波長の光を放出する光源と、(b)前記光源からの前記第1波長の光を平行光にする平行光学系と、(c)前記平行光学系から出射する前記第1波長の光を互いの偏光方向が直交する2つの偏光に分離する偏光ビームスプリッターと、(d)前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第1面から出射する第1偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な第1反射型液晶素子と、(e)前記偏光ビームスプリッターによって分離される前記2つの偏光のうち当該偏光ビームスプリッターの第2面から出射する第2偏光の偏光方向を回転させずに反射する第1状態と当該偏光方向を回転させて反射する第2状態を所定区分ごとに切り替え可能な第2反射型液晶素子と、(f)前記第1反射型液晶素子から反射されて再び前記偏光ビームスプリッターを通過した第3偏光及び前記第2反射型液晶素子から反射されて前記偏光ビームスプリッターで反射した第4偏光により励起されて前記第1波長とは異なる第2波長の蛍光を発する蛍光体と、(g)前記蛍光体からの前記蛍光と前記蛍光体を通過した前記第3偏光及び前記第4偏光との混色光を前記自車両の前方に投射する投射光学系を含む、車両用前照灯ユニットである。
【0011】
上記何れかの態様の構成によれば、明暗光のコントラスト比が高く、照明のカットを十分に行える車両用前照灯ユニットが得られる。また、第3態様および第4態様の構成によれば、上記効果に加え、光の利用効率をより高めることができる。
【0012】
上記した第1態様の車両用前照灯ユニットにおいて、前記光源が偏光を発する光源であることも好ましい。
【0013】
上記した第2態様の車両用前照灯ユニットにおいて、前記第1反射型液晶素子と前記第2反射型液晶素子の各々からの反射光の明暗パターンが同一であり、当該同一の明暗パターンが互いに重なるように前記偏光ビームスプリッターで合成される、ことも好ましい。
【0014】
上記した第2態様の車両用前照灯ユニットにおいて、前記第1反射型液晶素子と前記第2反射型液晶素子の各々からの反射光の明暗パターンが異なっており、当該異なる明暗パターンが互いに重なるように前記偏光ビームスプリッターで合成される、ことも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。
図2】第一実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。
図3】第二実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。
図4】第二実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。
図5】第三実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。
図6】第四実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。
図7】第四実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。
図8】配光パターンの重ね合わせを説明するための図である。
図9】配光パターンの重ね合わせを説明するための図である。
図10】第五実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。
図11】第五実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態の車両用ランプユニット(車両用前照灯ユニット)を説明するための模式図である。第一実施形態の車両用ランプユニット100は、光源1a、平行光学系2、偏光ビームスプリッター3a、反射型液晶素子4a、投射光学系5a、およびこれらを収容するランプユニット筐体6を含んで構成されている。
【0018】
この車両用ランプユニット100は、点灯制御装置200からの制御を受けて、自車両の前方に存在する前方車両等の位置に応じた配光パターンを形成するものである。点灯制御装置200は、自車両の前方を撮影するカメラ、このカメラにより得られる画像に基づいて前方車両等の位置を検出する画像処理部、画像処理部によって検出される前方車両等の位置に応じた光照射範囲を設定して車両用ランプユニット100を駆動する制御部などを備える。車両用ランプユニット100と点灯制御装置200を含んで車両用前照灯システムが構成されている(以下の各実施形態においても同様)。
【0019】
光源1aは、白色光を放出するものであり、例えば青色光を放出する発光素子(LED)に黄色蛍光体を組み合わせて構成された白色光LEDである。なお、光源1aとしてはLEDのほかに、レーザー、さらには電球や放電灯など車両用ランプユニットに一般的に使用されている光源が使用可能である(以下の各実施形態においても同様)。
【0020】
平行光学系2は、光源1aから放出される光を平行光にするものであり、例えば凸レンズを用いることができる。この場合、凸レンズの焦点付近に光源1aを配置することにより平行光を作り出すことができる。なお、平行光学系2としては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である(以下の各実施形態においても同様)。
【0021】
偏光ビームスプリッター3aは、平行光学系2からの出射光をP波とS波に分離するものである。偏光ビームスプリッター3aとしては、例えば波長領域の広いワイヤーグリッド型の物を使用することができる。このような偏光ビームスプリッター3aとしては、2個の直角プリズム間にワイヤーグリッド偏光子を接着固定したタイプの物(例えば、エドモンドオプティクス社製のワイヤーグリッドキューブ型偏光ビームスプリッター等)がある。
【0022】
反射型液晶素子4aは、点灯制御装置200によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて、偏光ビームスプリッター3aから出射する一方の偏光をその偏光方向を回転させずに反射し、又はその偏光方向を回転させて反射する。この反射型液晶素子4aとしては、例えば、上下基板の間に配置された液晶層を備え、液晶層の液晶分子が上基板と下基板の間で45度ねじれて水平配向した45度ツイストのツイストネマティック(TN)型液晶素子を用いることができる。反射型液晶素子の4aの背面側基板の外側(または内側)にはアルミニウムを材料とした反射膜が設けられている。
【0023】
ここで、反射型液晶素子4aとしてTN型液晶素子を使用するのは、液晶分子をツイスト配向させることにより広い波長帯の偏光方向を90回転させて反射させるためである。この反射型液晶素子4aは、偏光ビームスプリッター3aからの偏光を液晶層への電圧無印加時には略90度回転させて反射し、電圧印加時には回転させずに反射することができる。この2つの状態は、点灯制御装置200から受ける信号(液晶素子への印加電圧)に基づいて切り替えることができる。
【0024】
投射光学系5aは、反射型液晶素子4aによって反射され、再び偏光ビームスプリッター3aを通過した平行光を所定のヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射するものであり、適宜設計されたレンズが用いられる。なお、投射光学系5aとしては、レンズや反射鏡、さらにはそれらを組み合わせたものが使用可能である(以下の各実施形態においても同様)。
【0025】
図2は、第一実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。ここでは、車両用ランプユニット100の構成部材のうち、偏光ビームスプリッター3aと反射型液晶素子4aを抜き出して示し、これらによって照射光の明暗が切り替えられる原理を説明する。
【0026】
偏光ビームスプリッター3aに入射する平行光は、非偏光であるためP波とS波の両成分を有している。この平行光は、偏光ビームスプリッター3aの偏光分離部分であるワイヤーグリッド偏光子7において、真っ直ぐに通過して偏光ビームスプリッター3aの右側面から出射するP波と、反射により90度角度(光の進行方向)が変化して偏光ビームスプリッター3aの下側面から出射して反射型液晶素子4aへ入射するS波に分離される。
【0027】
反射型液晶素子4aの電圧無印加時には、反射型液晶素子4aへ入射したS波は液晶層を往復して通過することで偏光方向が90度回転してP波となって反射型液晶素子4aから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したP波は、ワイヤーグリッド偏光子7において真っ直ぐに通過する。このように反射型液晶素子4aの電圧無印加時には投射光学系5aを通して照射される光が明状態となる。
【0028】
一方、反射型液晶素子4aの電圧印加時には、反射型液晶素子4aへ入射したS波は液晶層を往復して通過しても偏光方向が変わることなくS波として反射型液晶素子4aから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したS波は、ワイヤーグリッド偏光子7において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、光源1a側に戻る。このように反射型液晶素子4aの電圧印加時には投射光学系5aを通して照射される光が暗状態となる。
【0029】
このように明状態、暗状態を反射型液晶素子4aの画素(所定区画)ごとに制御することによって所望の配光パターンが形成される。なお、偏光ビームスプリッター3aに入射する平行光のうちのP波は反射型液晶素子4aには入射せずに偏光ビームスプリッター3aを通過するので、偏光ビームスプリッター3aの外側には光吸収部材を設けておくことも好ましい。
【0030】
<第二実施形態>
図3は、第二実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。第二実施形態の車両用ランプユニット100aは、光源1b、平行光学系2、偏光ビームスプリッター3b、反射型液晶素子4b、投射光学系5b、蛍光体8およびこれらを収容するランプユニット筐体6を含んで構成されている。この車両用ランプユニット100aは、点灯制御装置200からの制御を受けて、自車両の前方に存在する前方車両等の位置に応じた配光パターンを形成するものである。
【0031】
光源1bは、単波長の光を放出するものであり、例えば青色光を放出する発光素子(LED)である。
【0032】
平行光学系2は、光源1bから放出される単波長の光を平行光にするものであり、例えば凸レンズを用いることができる。この場合、凸レンズの焦点付近に光源1bを配置することにより平行光を作り出すことができる。
【0033】
偏光ビームスプリッター3bは、平行光学系2からの出射光をP波とS波に分離するものである。偏光ビームスプリッター3bとしては、例えば光源1bの波長帯域に対応した誘電多層膜を用いた物を使用することができる。このような偏光ビームスプリッター3bとしては、例えばシグマ光機社製の偏光ビームスプリッターなどがある。
【0034】
反射型液晶素子4bは、点灯制御装置200によって与えられる液晶層への印加電圧の大きさに応じて、偏光ビームスプリッター3bから出射する一方の偏光をその偏光方向を回転させずに反射し、又はその偏光方向を回転させて反射する。この反射型液晶素子4bとしては、例えば、上下基板とその間に挟まれた液晶層を備え、液晶層の液晶分子が上基板と下基板の間で垂直に一軸配向した液晶素子を用いることができる。反射型液晶素子4bの背面側基板の外側(または内側)にはアルミニウムを材料とした反射膜が設けられている。
【0035】
ここで、反射型液晶素子4bとして垂直配向型液晶素子を使用するのは、液晶層への電圧無印加時のリターデーションがゼロであることから、入射した偏光を全く変化させることなく(偏光方向を回転させることなく)反射して出射させられるため、照明光の暗状態を最も暗くできるからである。また、液晶層への電圧印加時には、入射した偏光を90度回転させて反射して出射させられるため、照明光の明状態を作り出すことができる。この2つの状態は、点灯制御装置200から受ける信号(液晶素子への印加電圧)に基づいて切り替えることができる。垂直配向型である反射型液晶素子4bのリターデーションを4分の1波長に合わせることにより偏光を90度回転させることができるがその値は入射光の波長により異なる、つまり波長依存性を持っている。しかし、この実施形態では光源1bとして単波長の光を放出する光源を用いているため波長依存性を考慮する必要はない。
【0036】
蛍光体8は、偏光ビームスプリッター3bからの出射光が入射するように配置されており、入射した単波長の光によって励起されて生じる、この単波長の光とは異なる波長の光(蛍光)を発する。蛍光体8としては、例えば、YAG蛍光体と散乱物質を混合して焼き固めた蛍光体プレート、あるいは透明基板に蛍光物質を塗布したものを使用することができる。反射型液晶素子4bから反射されて再び偏光ビームスプリッター3bを通過した単波長の光(青色光)の一部成分は蛍光体8を励起して黄色光を発し、残り成分の青色光はそのまま蛍光体8を出射する。このとき、黄色光は蛍光体8からの散乱光になり、青色光は散乱物質により同じく散乱光になり、それらは混色されて白色の散乱光として蛍光体8から出射される。
【0037】
投射光学系5bは、蛍光体8を通過した散乱光を所定のヘッドライト用配光になるように広げて自車両の前方へ投射するものであり、適宜設計されたレンズが用いられる。
【0038】
図4は、第二実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。ここでは、車両用ランプユニット100aの構成部材のうち、偏光ビームスプリッター3b、反射型液晶素子4bおよび蛍光体8を抜き出して示し、これらによって照射光の明暗が切り替えられる原理を説明する。
【0039】
偏光ビームスプリッター3bに入射する平行光は、非偏光であるためP波とS波の両成分を有している。この平行光は、偏光ビームスプリッター3bの偏光分離部分である誘電体多層膜において、真っ直ぐに通過して偏光ビームスプリッター3bの右側面から出射するP波と、反射により90度角度(光の進行方向)が変化して偏光ビームスプリッター3bの下面側から出射して反射型液晶素子4bへ入射するS波に分離される。
【0040】
反射型液晶素子4bの電圧無印加時には、反射型液晶素子4bへ入射したS波は液晶層を往復して通過しても偏光方向が変わることなくS波として反射型液晶素子4bから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したS波は、偏光分離部分である誘電体多層膜において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、光源1b側に戻る。このように反射型液晶素子4bの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が暗状態となる。
【0041】
反射型液晶素子4bの電圧印加時には、反射型液晶素子4bへ入射したS波は液晶層を通過することで偏光方向が90度回転してP波となって反射型液晶素子4bから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したP波は、誘電体多層膜において真っ直ぐに通過する。このように反射型液晶素子4bの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が明状態となる。
【0042】
このように明状態、暗状態を反射型液晶素子4bの画素(所定区画)ごとに制御することによって所望の配光パターンが形成される。なお、偏光ビームスプリッター3bに入射する平行光のうちのP波は反射型液晶素子4bには入射せずに偏光ビームスプリッター3bを通過するので、偏光ビームスプリッター3bの外側には光吸収部材を設けておくことも好ましい。
【0043】
<第三実施形態>
第三実施形態の車両用ランプユニットの構成は基本的に上記した第一実施形態および第二実施形態と同様であるので、ここでは図示を省略する。第一実施形態等との相違点は、光源として偏光を発するもの(例えば、半導体レーザー素子)を用いている点である。なお、レーザー光は元々平行光であるがビーム系が小さいため、平行光学系2としてはビームエキスパンダー(例えばシグマ光機社製)を用いる。
【0044】
図5は、第三実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。ここでは、第二実施形態と同様の構成を前提とし(図3参照)、車両用ランプユニット100aの構成部材のうち、偏光ビームスプリッター3b、反射型液晶素子4bおよび蛍光体8を抜き出して示し、これらによって照射光の明暗が切り替えられる原理を説明する。
【0045】
偏光ビームスプリッター3bに入射する平行光はS波のみの偏光である。この平行光は、偏光ビームスプリッター3bの偏光分離部分である誘電体多層膜において反射により90度角度(光の進行方向)が変化して偏光ビームスプリッター3bの下面側から出射して反射型液晶素子4bへ入射する。
【0046】
反射型液晶素子4bの電圧無印加時には、反射型液晶素子4bへ入射したS波は液晶層を往復して通過しても偏光方向が変わることなくS波として反射型液晶素子4bから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したS波は、偏光分離部分である誘電体多層膜において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、光源1b側に戻る。このように反射型液晶素子4bの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が暗状態となる。
【0047】
反射型液晶素子4bの電圧印加時には、反射型液晶素子4bへ入射したS波は液晶層を通過することで偏光方向が90度回転してP波となって反射型液晶素子4bから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したP波は、誘電体多層膜において真っ直ぐに通過する。このように反射型液晶素子4bの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が明状態となる。
【0048】
偏光ビームスプリッター3bを出射した光(青色光)は蛍光体8に入射し、白色光に変換されて出射する。このように明状態、暗状態を反射型液晶素子4bの画素(所定区画)ごとに制御することによって所望の配光パターンが形成される。本実施形態のように入射する平行光の全てがS波であれば全ての光を使用することができるため光利用率を高めることができる。
【0049】
<第四実施形態>
図6は、第四実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。第四実施形態の車両用ランプユニット100bは、光源1a、平行光学系2、偏光ビームスプリッター3a、反射型液晶素子4c、4d、投射光学系5a、およびこれらを収容するランプユニット筐体6を含んで構成されている。この車両用ランプユニット100bは、上記した第一実施形態の車両用ランプユニット100に対してさらに1つの反射型液晶素子を追加した点のみが異なっているので、両者に共通する構成部材については説明を省略する。
【0050】
2つの反射型液晶素子4c、4dは、それぞれ上記した第一実施形態の車両用ランプユニット100における反射型液晶素子4aと同じ構成を有している。反射型液晶素子4c、4dとしてTN型液晶素子を使用するのは、液晶分子をツイスト配向させることにより広い波長帯の偏光方向を90回転させて反射させるためである。これらの反射型液晶素子4c、4dは、偏光ビームスプリッター3aからの偏光を液晶層への電圧無印加時には略90度回転させて反射し、電圧印加時には回転させずに反射することができる。この2つの状態は、点灯制御装置200から受ける信号(液晶素子への印加電圧)に基づいて切り替えることができる。
【0051】
詳細には、一方の反射型液晶素子4cは、偏光ビームスプリッター3aで分離されたS波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3aの下側面に配置されている。他方の反射型液晶素子4dは、偏光ビームスプリッター3aで分離されたP波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3aの右側面に配置されている。
【0052】
投射光学系5aは、2つの反射型液晶素子4c、4dのそれぞれから反射し、再度偏光ビームスプリッター3aで合成された後に出射した平行光を所定のヘッドライト用配光になるように広げる。
【0053】
図7は、第四実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。ここでは、車両用ランプユニット100bの構成部材のうち、偏光ビームスプリッター3aと2つの反射型液晶素子4c、4dを抜き出して示し、これらによって照射光の明暗が切り替えられる原理を説明する。
【0054】
偏光ビームスプリッター3aに入射する平行光は、非偏光であるためP波とS波の両成分を有している。この平行光は、偏光ビームスプリッター3aの偏光分離部分であるワイヤーグリッド偏光子7において、真っ直ぐに通過して偏光ビームスプリッター3aの右側面から出射するP波と、反射により90度角度(光の進行方向)が変化して偏光ビームスプリッター3aの下面側から出射して反射型液晶素子4cへ入射するS波に分離される。
【0055】
反射型液晶素子4cの電圧無印加時には、反射型液晶素子4cへ入射したS波は液晶層を往復して通過することで偏光方向が90度回転してP波となって反射型液晶素子4cから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したP波は、ワイヤーグリッド偏光子7において真っ直ぐに通過する。このように反射型液晶素子4cの電圧無印加時には投射光学系5aを通して照射される光が明状態となる。
【0056】
また、反射型液晶素子4dの電圧無印加時には、反射型液晶素子4dへ入射したP波は液晶層を通過することで偏光方向が90度回転してS波となって反射型液晶素子4dから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したS波は、ワイヤーグリッド偏光子7において反射により90度角度(光の進行方向)が変化し、照射光として偏光ビームスプリッター3aから出射する。このように反射型液晶素子4dの電圧無印加時には投射光学系5aを通して照射される光が明状態となる。
【0057】
一方、反射型液晶素子4cの電圧印加時には、反射型液晶素子4cへ入射したS波は液晶層を通過しても偏光方向が変わることなくS波として反射型液晶素子4cから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したS波は、ワイヤーグリッド偏光子7において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、光源1a側に戻る。このように反射型液晶素子4cの電圧印加時には投射光学系5aを通して照射される光が暗状態となる。
【0058】
また、反射型液晶素子4dの電圧印加時には、反射型液晶素子4dへ入射したP波は液晶層を通過しても偏光方向が変わることなくP波として反射型液晶素子4dから出射し、再び偏光ビームスプリッター3aに入射する。この偏光ビームスプリッター3aに入射したP波は、ワイヤーグリッド偏光子7において真っ直ぐに通過して光源1a側に戻る。このように反射型液晶素子4dの電圧印加時には投射光学系5aを通して照射される光が暗状態となる。
【0059】
このように明状態、暗状態を反射型液晶素子4c、4dの画素(所定区画)ごとに制御することによって所望の配光パターンが形成される。ここで、2つの反射型液晶素子4c、4dでそれぞれ反射された出射光は偏光ビームスプリッター3aで足し合わされることになる。このとき、2つの反射型液晶素子4c、4dとして配光パターンが全く同じものを用い、配光パターンを同位置で重ね合せれば、光の利用効率が高く明暗のコントラストが高い車両用ランプユニットが実現できる。図8(A)は一方の反射型液晶素子4cによる配光パターン例、図8(B)は他方の反射型液晶素子4dによる配光パターン例、図8(C)は合成配光パターン例を示す図である。
【0060】
また、2つの反射型液晶素子4c、4dとして配光パターンが異なるものを用いるか、あるいは配光パターンが全く同じものを用いて配光パターンの位置をずらして重ね合せれば、各配光パターンからの光が足し合わされて最も明るくなる部分と、片方のパターンから光のみで中間の明るさとなる部分と、両方の反射光パターンが届かない最も暗くなる部分の3種類の明るさを制御可能な車両用ランプユニットを実現できる。図9(A)は一方の反射型液晶素子4cによる配光パターン例、図9(B)は他方の反射型液晶素子4dによる配光パターン例、図9(C)は合成配光パターン例を示す図である。
【0061】
<第五実施形態>
図10は、第五実施形態の車両用ランプユニットを説明するための模式図である。第五実施形態の車両用ランプユニット100cは、光源1b、平行光学系2、偏光ビームスプリッター3b、反射型液晶素子4e、4f、投射光学系5b、蛍光体8およびこれらを収容するランプユニット筐体6を含んで構成されている。この車両用ランプユニット100cは、上記した第二実施形態の車両用ランプユニット100aに対してさらに1つの反射型液晶素子を追加した点のみが異なっているので、両者に共通する構成部材については説明を省略する。
【0062】
2つの反射型液晶素子4e、4fは、それぞれ上記した第二実施形態の車両用ランプユニット100aにおける反射型液晶素子4bと同じ構成を有している。ここで、反射型液晶素子4e、4fとして垂直配向型液晶素子を使用するのは、液晶層への電圧無印加時のリターデーションがゼロであることから、入射した偏光を全く変化させることなく(偏光方向を回転させることなく)反射して出射させられるため、照明光の暗状態を最も暗くできるからである。また、液晶層への電圧印加時には、入射した偏光を90度回転させて反射して出射させられるため、照明光の明状態を作り出すことができる。この2つの状態は、点灯制御装置200から受ける信号(液晶素子への印加電圧)に基づいて切り替えることができる。垂直配向型である反射型液晶素子4e、4fのそれぞれのリターデーションを4分の1波長に合わせることにより偏光を90度回転させることができるがその値は入射光の波長により異なる、つまり波長依存性を持っている。しかし、この実施形態では光源1bとして単波長光を放出する光源を用いているため波長依存性を考慮する必要はない。
【0063】
一方の反射型液晶素子4eは、偏光ビームスプリッター3bで分離されたS波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3bの下側面に配置されている。他方の反射型液晶素子4fは、偏光ビームスプリッター3bで分離されたP波を制御するためのものであり、図中において偏光ビームスプリッター3bの右側面に配置されている。
【0064】
図11は、第五実施形態の車両用ランプユニットの照射光の明暗が切り替えられる原理を説明するための図である。ここでは、車両用ランプユニット100cの構成部材のうち、偏光ビームスプリッター3b、反射型液晶素子4e、4fおよび蛍光体8を抜き出して示し、これらによって照射光の明暗が切り替えられる原理を説明する。
【0065】
偏光ビームスプリッター3bに入射する平行光は、非偏光であるためP波とS波の両成分を有している。この平行光は、偏光ビームスプリッター3bの偏光分離部分である誘電体多層膜において、真っ直ぐに通過して偏光ビームスプリッター3bの右側面から出射するP波と、反射により90度角度(光の進行方向)が変化して偏光ビームスプリッター3bの下面側から出射して反射型液晶素子4eへ入射するS波に分離される。
【0066】
反射型液晶素子4eの電圧無印加時には、反射型液晶素子4eへ入射したS波は液晶層を往復して通過しても偏光方向が変わることなくS波として反射型液晶素子4eから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したS波は、偏光分離部分である誘電体多層膜において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、光源1b側に戻る。このように反射型液晶素子4eの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が暗状態となる。
【0067】
また、反射型液晶素子4fの電圧無印加時には、反射型液晶素子4fへ入射したP波は液晶層を往復して通過しても偏光方向が変わることなくP波として反射型液晶素子4fから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したP波は、偏光分離部分である誘電体多層膜において真っ直ぐに通過して光源1b側に戻る。このように反射型液晶素子4fの電圧無印加時には投射光学系5bを通して照射される光が暗状態となる。
【0068】
反射型液晶素子4eの電圧印加時には、反射型液晶素子4eへ入射したS波は液晶層を往復して通過することで偏光方向が90度回転してP波となって反射型液晶素子4eから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したP波は、誘電体多層膜において真っ直ぐに通過する。このように反射型液晶素子4eの電圧印加時には投射光学系5bを通して照射される光が明状態となる。
【0069】
また、反射型液晶素子4fの電圧印加時には、反射型液晶素子4fへ入射したP波は液晶層を往復して通過することで偏光方向が90度回転してS波となって反射型液晶素子4fから出射し、再び偏光ビームスプリッター3bに入射する。この偏光ビームスプリッター3bに入射したS波は、誘電体多層膜において反射により90度角度(光の進行方向)が変わり、照射光として偏光ビームスプリッター3bから出射する。このように反射型液晶素子4fの電圧印加時には投射光学系5bを通して照射される光が明状態となる。
【0070】
このように明状態、暗状態を反射型液晶素子4e、4fの画素(所定区画)ごとに制御することによって所望の配光パターンが形成される。ここで、2つの反射型液晶素子4e、4fでそれぞれ反射された出射光は偏光ビームスプリッター3bで足し合わされることになる。このとき、2つの反射型液晶素子4e、4fとして配光パターンが全く同じものを用い、配光パターンを同位置で重ね合せれば、光の利用効率が高く明暗のコントラストが高い車両用ランプユニットが実現できる(上記した図8(A)、図8(B)、図8(C)参照)。
【0071】
また、2つの反射型液晶素子4e、4fとして配光パターンが異なるものを用いるか、あるいは配光パターンが全く同じものを用いて配光パターンの位置をずらして重ね合せれば、各配光パターンからの光が足し合わされて最も明るくなる部分と、片方のパターンから光のみで中間の明るさとなる部分と、両方の反射光パターンが届かない最も暗くなる部分の3種類の明るさを制御可能な車両用ランプユニットを実現できる(上記した図9(A)、図9(B)、図9(C)参照)。
【0072】
以上のような各実施形態によれば、明暗光のコントラスト比が高く、照明のカットを十分に行える車両用ランプユニット並びに車両用前照灯システムが得られる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態では反射型液晶素子の制御は電圧印加と電圧無印加というように2値の電圧しか用いていないが、印加する電圧をより細かく設定することで入射光の反射率を連続的に変化させることができる。それにより、照射領域ごとに明るさを自由に設定にした車両用ランプユニット並びに車両用前照灯システムを実現できる。
【符号の説明】
【0074】
1a、1b:光源
2:平行光学系
3a、3b:偏光ビームスプリッター
4a、4b、4c、4d、4e、4f:反射型液晶素子
5a、5b:投射光学系
6:ランプユニット筐体
7:ワイヤーグリッド偏光子
8:蛍光体
100、100a、100b、100c:車両用ランプユニット
200:点灯制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11