特許第6564569号(P6564569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6564569-医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564569
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20190808BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20190808BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20190808BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20190808BHJP
   A61J 1/03 20060101ALI20190808BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   C08K5/07
   C08L27/06
   C08J5/18CEV
   A61J1/03 370
   B65D75/36
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-265843(P2014-265843)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124574(P2016-124574A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第27回 インターフェックス ジャパン(平成26年7月2日〜4日、東京ビックサイト)に出品
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】矢野 幸博
(72)【発明者】
【氏名】藤島 豊
(72)【発明者】
【氏名】早野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】井口 博務
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−211908(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084834(WO,A1)
【文献】 特開2001−316549(JP,A)
【文献】 特開平08−092447(JP,A)
【文献】 特開平09−309993(JP,A)
【文献】 特開2001−288279(JP,A)
【文献】 特開昭63−072751(JP,A)
【文献】 特開2012−071051(JP,A)
【文献】 特開平10−212306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40
B65D67/00− 79/02
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
A61J 1/03
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)のみからなる、医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
(A):塩化ビニル系樹脂
(B):下記式(I)で表される化合物(I)またはその互変異性体
(C):
顔料、
ブチルアクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、ブチルアクリレート−スチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エポキシ変性エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体およびスチレン−エチレン−プロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1種の耐衝撃性改良樹脂、
エポキシ化エステル系可塑剤、
脂肪酸アルコールエステル、
アクリル系加工助剤、ならびに、
カルシウムの金属化合物、バリウムの金属化合物および亜鉛の金属化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤
から選ばれる少なくとも1種
【化1】
(式(I)中、R1およびR3はそれぞれ独立に、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、アルキル基の少なくとも1部がハロゲン原子または酸素原子で置換された基(但し、該基の炭素数は1〜18である。)、ヒドロキシ基、または、アリール基の少なくとも1部がアルコキシ基で置換された基(但し、該基の炭素数は7〜18である。)であり、R2は、単結合、炭素数1〜18のアルキレン基または炭素数7〜18のアラルキレン基であり、R1〜R3は互いに結合していてもよく、R2において2量体を形成してもよい。)
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂100質量部に対する前記化合物(I)またはその互変異性体の含有量が0.01〜2.0質量部である、請求項1に記載の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
【請求項3】
医薬品を包装するためのブリスターパック用シートである、請求項1または2に記載の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品の包装用シートとして、ポリ塩化ビニル(PVC)シートなどが用いられており、現在市場における医薬品包装用シートも、このPVCシートが主に使用されている。
【0003】
PVCは、成形加工時等の熱により、変色しやすい傾向にあるため、従来から前記PVCシートには、この変色を防止するために安定剤が使用されており、この安定剤として、有機スズ系安定剤が知られている(例えば、特許文献1)。
現在の市場で使用されている医薬品包装用PVCシートもその多くが、ジオクチルスズ等のスズ系安定剤を含むシートである。
【0004】
このような医薬品包装用シートには、安全性はもちろんのこと、成形性や透明性の他に、内容物の性質に応じて、様々な特性(低酸素透過性、防湿性、紫外線カット性など)などが求められている。
特に、医薬品という取扱いに繊細さが求められる用途に用いられるシートには、例えば、該シートに臭気がある場合には、該シートで包装される医薬品自体の性質に問題があるのではないかと医薬品の使用者に疑義が生じることになることもあるため、臭気が少ないことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−270930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートには、特有の臭気があった。また、特に従来の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートからブリスターパックを形成する際には、熱等を加える必要があるが、この際に、臭気が生じやすく、ブリスターパック作成者の衛生面や作業環境面などからも、臭気の発生を抑える必要があった。さらに、形成されたブリスターパックは、その形状から、ポケット内に臭気が残りやすく、このポケット内に医薬品が収容されるため、このポケット内の臭気残りを低減する必要もあった。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、従来と同程度の熱安定性等の安定性を維持したまま、臭気の少ない医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、特定の化合物を含む医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートによれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下のとおりである。
【0009】
[1] 下記式(I)で表される化合物(I)またはその互変異性体を含む、医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
【0010】
【化1】
(式(I)中、R1およびR3はそれぞれ独立に、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、アルキル基の少なくとも1部がハロゲン原子または酸素原子で置換された基(但し、該基の炭素数は1〜18である。)、ヒドロキシ基、または、アリール基の少なくとも1部がアルコキシ基で置換された基(但し、該基の炭素数は7〜18である。)であり、R2は、単結合、炭素数1〜18のアルキレン基または炭素数7〜18のアラルキレン基であり、R1〜R3は互いに結合していてもよく、R2において2量体を形成してもよい。)
【0011】
[2] 塩化ビニル系樹脂100質量部に対する前記化合物(I)またはその互変異性体の含有量が0.01〜2.0質量部である、[1]に記載の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
【0012】
[3] 医薬品を包装するためのブリスターパック用シートである、[1]または[2]に記載の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全性に優れることはもちろんのこと、従来と同程度の熱安定性等の安定性を維持したまま、低毒性の材料からなり、紫外線カット能および透明性に優れ、特に、臭気の少ない医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートを提供することができる。また、本発明の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートを用いることで、熱等を加えてブリスターパックを形成する場合であっても、臭気が発生し難く、ポケット内の臭気残りが生じ難いため、ブリスターパック作成者の衛生面や作業環境面で優れ、さらに、医薬品使用者にも、医薬品に対する疑義や不快な思いを生じさせにくいブリスターパックを提供することができる。さらに、本発明の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートによれば、低温でブリスターパックを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例1および比較例1で得られた樹脂シートの全光線透過曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート≫
本発明の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シート(以下単に「PVCシート」ともいう。)は、下記式(I)で表される化合物(I)またはその互変異性体(以下、化合物(I)およびその互変異性体を併せて「化合物(A)」ともいう。)を含み、具体的には、化合物(A)および塩化ビニル系樹脂(B)を含む。
【0016】
<化合物(A)>
従来の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートには、特有の臭気があった。本発明者がこの臭気を低減するために鋭意検討した結果、従来から使用されていた安定剤、特にスズ系安定剤が医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートの臭気の一因となっていることを発見した。そこで、本発明者が鋭意実験を行い、前記化合物(A)を用いることで、従来の安定剤が有していた、塩化ビニル系樹脂の熱による劣化等に対する優れた安定性と同程度あるいはそれ以上の安定性を有しながらも、低臭気のPVCシートが得られ、さらには、紫外線カット能および透明性にも優れるPVCシートが得られることを見出した。
もちろん、本発明者は、これらのことを見出しただけでなく、前記化合物(A)を用いても安全性に問題がなく、医薬品包装用として使用できることを確認している。
【0017】
また、スズ系安定剤は、PVCの熱安定性に対し優れた効果を発揮し、安価である等の点で使用されてきたが、近年その毒性が発見され、今後その使用量が制限される可能性がある。
しかしながら、医薬品を市場に投入する際には該医薬品の承認申請を得る必要があり、この場合、該医薬品の包装材とともに承認申請を受ける必要があるが、この承認を得るためには、莫大な金額がかかるため、スズ系安定剤を含んでいても特に問題の生じていない現状において、現在市場で使用されている医薬品包装用シートを変更することは行われてこなかった。
従って、スズ系安定剤の代わりに化合物(A)を用い、スズ系安定剤を用いた場合と同程度あるいはそれ以上の優れた安定性を有しながらも、安全性、低臭気、紫外線カット能および透明性に優れる本発明のPVCシートは、産業上、特に医薬品包装分野において有用である。つまり、本発明では、スズ系安定剤を用いないことが好ましい。
【0018】
前記化合物(A)は、本発明のPVCシートに含まれる塩化ビニル系樹脂(B)の安定化剤として使用され、具体的には、低臭気の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートのための樹脂安定化剤として使用される。
このような化合物(A)を用いることで、従来から使用されていたスズ系安定剤を用いなくても、従来と同程度あるいはそれ以上の熱安定性等の安定性を維持したまま、低毒性の材料からなり、特に、臭気が少なく、紫外線カット能、可視光透過性および透明性に優れる医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートを得ることができる。
さらに、このような化合物(A)を用いることで、低温でブリスターパックを形成できるPVCシートを得ることができる。
【0019】
ケトン類は、通常不快なにおいの元となる化合物の一種であるが、本発明では、理由は明らかではないが、このようなケトン類を用いても樹脂シートの臭気を低減することができる。
【0020】
【化2】
【0021】
前記式(I)中、R1およびR3はそれぞれ独立に、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数7〜18のアラルキル基、アルキル基の少なくとも1部がハロゲン原子または酸素原子で置換された基(但し、該基の炭素数は1〜18である。)、ヒドロキシ基、または、アリール基の少なくとも1部がアルコキシ基で置換された基(但し、該基の炭素数は7〜18である。)である。
【0022】
前記炭素数6〜18のアリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0023】
前記炭素数1〜18のアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基およびn−オクチル基等が挙げられる。
【0024】
前記炭素数7〜18のアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、ベンジル基、フェニルメチル基およびフェニルエチル基等が挙げられる。
【0025】
前記アルキル基の少なくとも1部がハロゲン原子または酸素原子で置換された基(但し、該基の炭素数は1〜18である。)としては、炭素数1〜12の基が好ましく、アルキル基の少なくとも1部がヒドロキシ基、カルボキシル基またはアシル基などの基で置換された基等が挙げられ、具体的には、−CF3、−CCl3、−O−CH3、−O−C25、−CH2COOCH3、−CH2COOC25等が挙げられる。
【0026】
前記アリール基の少なくとも1部がアルコキシ基で置換された基(但し、該基の炭素数は7〜18である。)としては、炭素数7〜12の基が好ましく、−Ph−O−CH3、−Ph−O−C25(但し、phはベンゼン環を表す。)等が挙げられる。
【0027】
前記式(I)中、R2は、単結合、炭素数1〜18のアルキレン基または炭素数7〜18のアラルキレン基である。
【0028】
炭素数1〜18のアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ジメチルメチレン基、ブチレン基、メチルプロピレン基、メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0029】
炭素数7〜18のアラルキレン基としては、炭素数7〜12のアラルキレン基が好ましく、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基等が挙げられる。
【0030】
前記式(I)において、R1〜R3は互いに結合していてもよく、R2において2量体を形成してもよい。このような化合物としては、シクロヘキサン−1,3−ジオン、ビスアセチルアセトン、5,5'−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン、2,2’−メチレンビスシクロヘキサン−1,3−ジオン、2−ベンジルシクロヘキサン−1,3−ジオン等が挙げられる。
【0031】
前記化合物(I)としては、熱安定性等により優れ、紫外線カット能に優れるPVCシートが得られる等の点から、R1およびR3が炭素数6〜12のアリール基であり、R2が炭素数1〜6のアルキレン基である化合物(i)が好ましく、さらには、低臭気、熱安定性および紫外線カット能に優れ、医薬品包装用のシートとしてより好適に用いることができる等の点から、R1およびR3がフェニル基であり、R2がメチレン基である化合物(ii)がより好ましい。
【0032】
前記化合物(I)の互変異性体としては、化合物(I)のケト−エノール互変異性により得られる異性体が挙げられる。
【0033】
前記化合物(A)としては、高熱安定性、低臭気および高紫外線カット能に優れるPVCシートを得ることができる等の点から、化合物(I)、さらには化合物(i)、特に化合物(ii)が好ましい。
【0034】
前記化合物(A)は、従来公知の方法で合成して得た化合物を用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0035】
本発明のPVCシートにおいて、前記化合物(A)の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜2.0質量部であり、より好ましくは0.01〜1.0質量部であり、さらに好ましくは0.01〜0.7質量部であり、特に好ましくは0.01〜0.5質量部である。
化合物(A)の含有量が前記範囲にあると、より、高熱安定性、低臭気、高紫外線カット能および高透明性にバランス良く優れるPVCシートを得ることができ、特に、ブリスターパック用として好適なPVCシートを得ることができる。
【0036】
本発明のPVCシートに含まれる化合物(A)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0037】
<塩化ビニル系樹脂(B)>
本発明のPVCシートに含まれる塩化ビニル系樹脂(B)としては、特に制限されず、従来公知の、医薬品包装用のシートに使用されてきた塩化ビニル系樹脂であればよい。
なお、本発明のPVCシートに含まれる樹脂(B)は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0038】
前記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを原料として得られる樹脂であれば特に制限されず、塩化ビニルの単独重合体または塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0039】
前記他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸またはそのエステル、アクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステルおよび塩化ビニリデンが挙げられる。
【0040】
また、前記塩化ビニル系樹脂としては、前記単独重合体または共重合体が部分的に架橋された樹脂であってもよい。また、塩化ビニル系樹脂のポリマーブレンド物、例えば、塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニリデンからなるポリマーブレンド物を用いてもよい。
これらのうち、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0041】
前記塩化ビニル系樹脂のJIS K 6720−2に基づいて測定した平均重合度は、熱安定性および成形性に優れるPVCシートが得られる等の点から、好ましくは500〜5000であり、より好ましくは500〜2000である。
【0042】
前記樹脂(B)は、従来公知の方法で合成して得た樹脂であってもよく、市販品でもよい。
【0043】
<他の成分(C)>
本発明のPVCシートは、必要に応じて、化合物(A)および樹脂(B)以外の他の成分(C)を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0044】
他の成分(C)としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤や耐光安定剤などの安定剤、紫外線散乱剤、顔料、帯電防止剤、滑剤、柔軟剤、可塑剤、加工助剤が挙げられる。
これらの他の成分(C)は、それぞれ、1種単独で本発明のPVCシートに使用してもよく、2種以上を本発明のPVCシートに使用してもよい。
【0045】
本発明のPVCシートは、化合物(A)を含むため、従来の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートに用いられてきた、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾエート系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤を含まなくても所望の紫外線カット能を有する。このため、安全性に優れ、ブリードアウト成分の少ないPVCシートが得られる等の点からは、本発明のPVCシートは、有機系紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。
また、本発明のPVCシートは、化合物(A)を含むため、さらに、安全性に優れ、ブリードアウト成分の少ないPVCシートを得ることを目的とする場合には、本発明のPVCシートは、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含まないことが好ましい。
【0046】
〈柔軟剤〉
前記柔軟剤としては、PVCシートに従来用いられてきた柔軟剤を使用することができ、特に制限されないが、得られるPVCシートの耐衝撃性を向上させる等の点から、ブチルアクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、ブチルアクリレート−スチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エポキシ変性エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体等の耐衝撃性改良樹脂が好ましい。
【0047】
〈可塑剤〉
前記可塑剤としては、PVCシートに従来用いられてきた可塑剤を使用することができ、特に制限されないが、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポシキ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等のリン酸エステル系可塑剤などが挙げられる。これらの中でも、PVCシートの成形性、加工性等の点から、エポキシ化エステル系可塑剤が好ましい。
【0048】
〈滑剤〉
前記滑剤としては、PVCシートに従来用いられてきた滑剤を使用することができ、特に制限されないが、ジメチルポリシロキサン、脂肪酸アルコールエステル、低分子ポリエチレンなどが挙げられ、PVCシートの加工性等の点から、脂肪酸アルコールエステルが好ましい。
前記脂肪酸アルコールエステルとしては、グリセリンと脂肪酸の1〜3価のエステル系化合物であることが好ましく、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド等のステアリン酸グリセライド滑剤、オレイン酸グリセライド滑剤、パルチミン酸グリセライド滑剤が挙げられる。
【0049】
〈加工助剤〉
前記加工助剤としては、PVCシートに従来用いられてきた加工助剤を使用することができ、特に制限されないが、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等のアクリル系加工助剤が好ましい。
【0050】
〈安定剤〉
前記安定剤としては、PVCシートに従来用いられてきた安定剤を使用することができ、特に制限されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛等の金属化合物、有機亜リン酸エステル、多価アルコール、フェノール系化合物、エポキシ系化合物、有機ホスファイト化合物が挙げられ、安全性および安定性に優れるPVCシートが得られる等の点から、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属化合物が好ましい。
【0051】
<PVCシートの物性等>
本発明のPVCシートの形状は特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明のPVCシートの厚みも特に制限されないが、ブリスターパックへの成形性等の点から、好ましくは30〜500μmであり、より好ましくは50〜300μmである。
【0052】
本発明のPVCシートの臭気は、好ましくは15ppc以下であり、より好ましくは10ppc以下である。
前記臭気は、本発明のPVCシートから2.0gの試験片を切り出し、該試験片を容量22mLの大きさの容器に入れ密封し、140℃で5分間加熱し、加熱により生じた気体600μLをGC/MSで測定した時に、空気のピーク面積を100とした場合の該試験片からの全発生ガス成分のピーク面積の合計割合を示し、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
臭気量が前記範囲にあるPVCシートは、従来の医薬品包装用ポリ塩化ビニル系シートに比べかなり臭気が改善されたシートであり、このようなPVCシートは、医薬品の包装用として特に好適に使用することができる。
【0053】
本発明のPVCシートは、厚みが250μmの場合に、分光光度計を用いて測定した波長220〜380nmの光の透過率の最大値が、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。前記波長220〜380nmの光の透過率の最大値は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
医薬品には、光、特に紫外線により、該医薬品の効能が変化してしまうものがあり、医薬品包装用のポリ塩化ビニル系シートには、高い紫外線カット能が要求されているが、透過率が前記範囲にあるPVCシートは、紫外線カット能に優れ、医薬品の包装用として特に好適に使用することができる。
【0054】
本発明のPVCシート(厚み250μm)を、温度230℃、圧力100kgfで加熱・加圧した時の、分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−2600d)を用いて測定したYI値(イエローインデックス)は、好ましくは20以下であり、より好ましくは14以下である。前記YI値は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
YI値が前記範囲にあるPVCシートは、安定性、特に熱安定性に優れ、医薬品の包装用として特に好適に使用することができる。
【0055】
<PVCシートの製造方法>
本発明のPVCシートは、化合物(A)、樹脂(B)および必要に応じて他の成分(C)を含む樹脂組成物を、例えば、溶融成形法など公知の手法によってシート状に成形することで製造することができる。
【0056】
<多層型シート>
本発明のPVCシートは、該シート単層で用いてもよいが、必要に応じて、本発明のPVCシートの片面または両面に、酸素バリア層などのガスバリア層、ガス吸収層、防湿層、遮光層、ブリードアウト防止層などの層が積層された多層型シートとして用いてもよい。
【0057】
前記多層型シートは、従来公知の積層体の製造方法と同様の方法で製造することができる。例えば、前記多層型シートは、本発明のPVCシートの片面または両面に、前記各層を形成するシートを重ね合せた後に熱融着したり、各層を形成するシートを接着剤層などを介して、貼着したりして製造することができる。ここで、得られる多層型シートの層間密着性を良くするために、多層型シートを形成するいずれかの層の表面を、予めコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などの方法で前処理しておいてもよい。
【0058】
また、前記多層型シートは、化合物(A)、樹脂(B)および必要に応じて他の成分(C)を含む樹脂組成物と、前記各層を形成する組成物とを用い、多層Tダイ法や多層インフレーション法等の共押出成形法、押出コーティング、ドライラミネーション、ヒートラミネーション、湿式流延法や乾式流延法等のキャスティング法、カレンダー法などの一般的な多層シート成形法により製造することもできる。
【0059】
前記多層型シートの厚さは、所望の用途により適宜選択すればよいが、通常150μm〜500μm、好ましくは180μm〜350μmの範囲である。このような厚さであれば、前記多層型シートから成形性よくブリスターパックを製造することができる。
【0060】
<ブリスターパック>
本発明のPVCシートは、熱安定性等の安定性に優れるため、また、低温での成形性に優れるため、ブリスターパックを容易に形成することができる。従って、本発明のPVCシートを用いることで、ブリスターパック製造時の製造コストが安く、透明性に優れる等のブリスターパックを容易に得ることができる。また、ブリスターパックを低温で成形できるため、高温成形の際に生じやすい臭気の発生やフィルム性能の低下を抑制することができる。
【0061】
本発明のPVCシートや前記多層型シートから、ブリスターパックを製造する方法は特に制限されないが、例えば、公知の成形方法でポケットを形成し、各ポケットに医薬品を装填し、装填された医薬品を密封するように、本発明のPVCシートや前記多層型シートとシール材(蓋材)とを接着することでブリスターパックを製造することができる。
【0062】
ここで、本発明のPVCシートや前記多層型シートにポケットを形成する方法は、具体的には、以下の方法等が挙げられる。
・加熱圧空成形法:本発明のPVCシートや前記多層型シートを高温、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、加熱軟化させながらエアーを供給してポケットを形成する方法
・プレヒーター平板式圧空成形法:本発明のPVCシートや前記多層型シートを加熱し軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、エアーを供給してポケットを形成する方法
・ドラム式真空成形法:本発明のPVCシートや前記多層型シートをポケット形状の凹部を有する加熱ドラムで部分的に加熱し軟化させた後、前記凹部を真空引きしてポケットを成形する方法
・ピン成形法:本発明のPVCシートや前記多層型シートを加熱し軟化させた後、ポケット形状の凹凸金型で圧着する方法
・プレヒータープラグアシスト圧空成形法:本発明のPVCシートや前記多層型シートを加熱し軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、エアーを供給してポケットを形成する方法であって、成形の際に、凸形状のプラグを上昇および降下させて成形を補助する方法。
【0063】
これらの中でも、本発明のPVCシートや前記多層型シートは、真空成形法のみならず、圧空成形法によっても成形不良を起こさないので、平板式圧空成形法やプラグアシスト圧空成形法などの圧空成形法で成形することができる。
【0064】
なお、前記ブリスターパックのポケット部の形状、大きさ、深さ、個数、配列等は医薬品の形状や用途によって適宜選択することができる。
【0065】
前記シール材(蓋材)としては、ヒートシール(加熱接着)によって、装填された内容物を密封できることから、ヒートシール性樹脂層を有するものが好ましい。ヒートシール性樹脂層とは、ヒートシールの際に、医薬品が装填された本発明のPVCシートや前記多層型シートと融着する層である限り特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタアクリル酸共重合体(EMA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMAA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタアクリル酸共重合体(EMMA)、アイオノマー(IO)などを、1種または2種以上含む層が挙げられる。
【0066】
また、シール材(蓋材)は、ガスバリア性が良好である点から、アルミニウム層などの金属蒸着膜層や金属箔層を有することが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。下記実施例および比較例の樹脂シートは、塩化ビニル系樹脂(B)、および、化合物(A)またはスズ系安定剤の他に、PVCシートにおいて従来より使用されてきた前記その他の成分(C)、特に、これらの中でも好ましい成分を用いて製造することができる。
【0068】
[実施例1]
ポリ塩化ビニル85.6質量%、耐衝撃性改良樹脂8質量%、可塑剤4質量%、滑剤1質量%、加工助剤0.6質量%、安定剤0.5質量%およびジベンゾイルメタン0.3質量%を混合することで樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、カレンダー成形により、厚みが約250μmの樹脂シートを作成した。
【0069】
[実施例2]
実施例1において、カレンダー成形の条件を、得られる樹脂シートの厚みが約200μmになるように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを作成した。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、ジベンゾイルメタン0.3質量%の代わりに、ジオクチルスズ0.3質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚みが約250μmの樹脂シートを作成した。
【0071】
[比較例2]
比較例1において、カレンダー成形の条件を、得られる樹脂シートの厚みが約200μmになるように変更した以外は、比較例1と同様にして樹脂シートを作成した。
【0072】
<安定性>
前記実施例1および比較例1の樹脂シートの熱安定性を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
ホットプレス機を用い、加熱温度220〜260℃、プレス圧力100kgfの条件にて、実施例1および比較例1の樹脂シートを3分間、加熱プレスし、プレス後のシートの状態を目視により確認し、熱プレス前後で変形や変色がない場合を「○」と評価し、変色が生じた場合を「×」と評価した。
その後、熱プレス後のシートのYI値を分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−2600d)を用いて測定した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から、実施例の樹脂シートは、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と比べ、同程度またはそれ以上の耐熱性を示すことが分かる。
【0075】
<臭気>
前記実施例2および比較例2の樹脂シートの臭気を以下の方法で測定した。
前記実施例2および比較例2の樹脂シートから、それぞれ2.0gの試験片を切り出し、該試験片をそれぞれ容量22mLの大きさのパーキンエルマー社製ガスクロマトグラフィー専用バイアルに入れて密封し、ヘッドスペースサンプラー(HSS)で140℃で5分間加熱し、加熱により生じた気体600μLをGC/MSに自動注入して、各試験片からの発生ガスを分析した。なお、GC/MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)の分析条件は下記表2に示すとおりである。
【0076】
臭気試験の結果を表3に示す。なお、表3中、各試験の左側欄の数値は各気体成分のピーク面積を示し、右側欄の数値は空気のピーク面積を100%とした場合の各発生ガス成分の割合(%)を示す。●や▲は臭気強度の大きい物質であり、●(有機酸)の方が▲(芳香族など)より100倍程強い。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
実施例2および比較例2の樹脂シートからは、いずれも臭気強度の強い硫化水素、硫化メチル、メルカプタン等の硫黄化合物は検出されなかった。
比較例2の樹脂シートからは、臭気強度の強い物質として2-Ethyl-hexanoic acidおよび2-Propyl-1-pentanolが検出されたが、実施例2の樹脂シートからは2-Ethyl-hexanoic acidが検出されず、また、2-Propyl-1-pentanolの発生量も1/3以下に減少し、ガスの全発生量についても10ppc以下に減少していた。
以上の分析結果から、実施例の樹脂シートは、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と比べ、臭気の発生が少ないことが分かる。
【0080】
<紫外・可視光透過性>
前記実施例1および比較例1の樹脂シートの全光線透過性を、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製V−560)を用いて測定した。具体的には、前記実施例1および比較例1の樹脂シートから、それぞれ10×40mmの大きさの試験片を切り出し、該試験片を用い、前記紫外可視分光光度計で220〜780nmの光の透過率を測定した。結果を図1に示す。
【0081】
図1から、実施例の樹脂シートは、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と比べ、紫外線(220〜380nm)を十分にカットできており、さらに、可視光(400〜780nm)透過性に優れることが分かる。
【0082】
<ヘイズ>
前記実施例1および比較例1の樹脂シートのヘイズを、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製V−560)を用いて測定した。具体的には、前記実施例1および比較例1の樹脂シートから、それぞれ10×40mmの大きさの試験片を切り出し、該試験片を用い、前記紫外可視分光光度計で全光線透過率および拡散光線透過率を測定し、これらの値からヘイズを算出した。
【0083】
実施例1の樹脂シートのヘイズは、約0.8%であり、比較例1の樹脂シートのヘイズは、約1.5%であった。
以上の結果から、実施例の樹脂シートは、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と比べ、ヘイズ値が小さく、透明性についても優れることが分かる。
【0084】
<安全性>
実施例1の樹脂シートの安全性を、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第3のDの2、合成樹脂製の器具又は容器包装(区分:使用温度、100℃以下)に基づいて測定した。
実施例の樹脂シートは、表4に示す分析結果となり、安全性に優れることが分かる。また、実施例の樹脂シートは、浸出用液として、ヘプタン、20%エタノール、水または4%酢酸のいずれの浸出用液を用いた場合でも、蒸発残留物試験による蒸発残留物量が、10μg/ml以下となり、ブリードアウト量が極端に少ないことが分かる。
【0085】
【表4】
【0086】
表4のような安全性についての分析試験を経て初めて、樹脂シートが医薬品包装用として使用できるか否かが決まる。医薬品を包装するためのシートには、それだけの安全性が求められる。
従来は、前記化合物(A)を含み、医薬品の包装用として使用できる樹脂シートについては、知られていなかった。
【0087】
<ブリスターパック成形性>
前記実施例1および比較例1で得られた樹脂シートのブリスターパック成形性を以下の方法で評価した。結果を表5に示す。
ブリスターパックの成形性は、PTP成形機(シー・ケー・ディー(株)製、FBP−M2)において、実施例1および比較例1の樹脂シートをピンポイント加熱板を用いて下記表5の温度で加熱した後、φ11.0×H4.0用錠剤型(直径11mmφ、深さ4.0mm)およびプラグアシスト機構を用いて成形し、各温度における得られた樹脂シートの成形型(錠剤型)への型追従性を評価した。なお、型追従性は、目視により、ポケット天部、コーナー部および側面部の外観ムラを評価した。
【0088】
さらに、前記(加熱温度120℃)で得られたポケット部を有する樹脂シートを、アルミ箔でシールし、得られたブリスターパックにスリットを入れた後、幅50mm、長さ108mm、コーナーR5mmに打ち抜いた。得られた成形品の、アルミ箔と樹脂シートの接着部であるダイス目の現れ方を外観評価した。
【0089】
【表5】
【0090】
表5より、実施例の樹脂シートは、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と比べ、低温で成形可能であることが分かり、低温成形性に優れていることが分かる。
また、ダイス目の現れ方、アルミ箔の破れもなく、従来の樹脂シート(比較例の樹脂シート)と同程度のアルミシール性を有することが分かる。
図1