特許第6564576号(P6564576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564576
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】自動車における近接体警報知装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20190808BHJP
   H04S 3/00 20060101ALI20190808BHJP
   H04S 5/02 20060101ALI20190808BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20190808BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20190808BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20190808BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   H04S3/00
   H04S5/02
   H04S7/00 330
   H04R1/40 310
   H04R3/00 310
   !B60R11/02 S
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-27143(P2015-27143)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-151770(P2016-151770A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515042421
【氏名又は名称】田山 修一
(73)【特許権者】
【識別番号】500322088
【氏名又は名称】株式会社イマージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】田山 修一
(72)【発明者】
【氏名】中島 保久
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−133596(JP,A)
【文献】 特開2012−146316(JP,A)
【文献】 特開2012−206700(JP,A)
【文献】 特開2004−062874(JP,A)
【文献】 特開2009−265883(JP,A)
【文献】 特開2012−048591(JP,A)
【文献】 特開2011−081736(JP,A)
【文献】 特開2013−057992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
H04R 1/40
H04R 3/00
H04S 3/00
H04S 5/02
H04S 7/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転する自己車両に対して前後左右の種々の方向から接近してくる自動車、自転車、人又は動物等(以下、「検知対象物」という)を検知する検知システムと、
自己車両の室内に配置された複数台のスピーカを備えたサラウンドステレオ音響システムと、
複数種類の警報音源を格納し、前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御する音響制御装置と、を有し、
前記検知システムは前記検知対象物を順次撮像するカメラ装置と、前記検知対象物の輪郭を含む画像特徴を予め記憶した基準データファイルと、前記カメラ装置が撮像した撮像画像において前記基準データファイルに基づいて前記検知対象物の輪郭を画像認識処理する画像認識装置とから成る映像撮像カメラシステムと、を備え、
前記検知システムは、前記順次撮像された前記撮像画像の前記検知対象物の輪郭の大きさの変化から当該自己車両に前記接近する前記検知対象物の危険性を判断し、
前記音響制御装置は、前記検知システムが前記接近する前記検知対象物の危険性を判断した時に、当該自己車両の運転者席位置において前記警報音源の内選択された一の警報音を前記検知システムが検知した検知対象物の当該自己車両への接近方向から立体的に聞こえるように前記サラウンドステレオ音響システムの音量を駆動制御する、ことを特徴とする近接体警報知装置。
【請求項2】
前記検知対象物の輪郭の大きさの変化に基づく当該自己車両に前記接近する前記検知対象物の危険性の判断は、前記検知対象物の当該輪郭が前記撮像画像に占める割合に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の近接対警報知装置。
【請求項3】
前記割合は当該検知対象物毎に定められていることを特徴とする請求項2に記載の近接対警報知装置。
【請求項4】
前記検知システムは、1又は複数の前記映像撮像カメラシステムと、さらにレーダセンサシステム及び/又は衛星画像処理システムの1つ又は複数の組み合わせから成り、
前記レーダセンサシステムは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザーレーダ、赤外線センサ、超音波センサの何れか一つ又はその組み合わせであって、
前記レーダセンサシステムは、
前記検知対象物を検知するレーダセンサと、
前記レーダセンサの検知出力と前記自己車両の速度から車間距離及び相対速度を演算して前記検知対象物の接近を判断する演算手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項5】
前記映像撮像カメラシステムは、前記自己車両の前方、後方、左側及び/又は右側の画像を撮像するよう配置された各々一対の前記カメラ装置を含むことを特徴とする請求項に記載の近接体警報知装置。
【請求項6】
前記映像撮像カメラシステムを構成する各々一対のカメラ装置は、所定の間隔を開けて配置され、
当該一対のカメラ装置からの二つの映像信号のズレを検知することにより前記検知対象物と自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定する演算手段を有することを特徴とする請求項5に記載の近接体警報知装置。
【請求項7】
前記衛星画像処理システムは、地球を周回する衛星から送信されてくる当該自己車両周辺の画像データにより、前記検知対象物と当該自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定する演算手段を有することを特徴とする請求項に記載の近接体警報知装置。
【請求項8】
前記音響制御装置は、前記検知対象物が接近するにつれて前記警報音の周波数を変化させるように前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項9】
前記音響制御装置は、前記検知対象物が接近するにつれて前記警報音の音量を変化させるように前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項10】
前記音響制御装置は、インターバルを置いて前記警報音を断続して発生させるときには、前記検知対象物の接近するにつれて前記インターバルが短くなるよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項11】
前記音響制御装置は、それぞれ異なる方向から接近してくる前記検知対象物を検知した時に、その方向に応じて基本波形の異なる前記警報音源を選択して、同時に異なる音色が聞こえるように前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項12】
前記音響制御装置は、前記サラウンドステレオ音響システムが音声再生中に前記検知システムが前記検知対象物の接近を検知した時、前記音声再生から前記警報音源の再生に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項13】
前記音響制御装置は、前記サラウンドステレオ音響システムが非駆動中に前記検知システムが前記検知対象物の接近を検知した時、前記警報音源の再生のために前記サラウンドステレオ音響システムを駆動することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項14】
前記音響制御装置は、前記検知システムが後方の左右の車線から前記検知対象物の接近を判断した時に自己車両が当該車線へ操舵されると、前記警報音源を発生するよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【請求項15】
前記音響制御装置は、自己車両のギアポジションがバックに入っている状態で前記検知システムが後方での前記検知対象物の存在を判断した時に、前記警報音源を発生するよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の近接体警報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されて、自己車両に対してその周囲から接近してくる他の自動車、自転車等の移動物体がある場合に、その接近する物体の存在を運転者に警報報知する自動車の近接体警報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の近接体警報知装置としては、自動車の左右の後側方の領域を2台のカメラで監視し、左右独立したそれぞれのモニタにリアルタイムで表示すると共に、自動車後部に設けたレーダセンサで後方からの接近自動車を監視して、それとの車間距離または相対速度あるいはその双方をもって危険な状態と判断したとき、例えば左側のモニタ画面に接近する自動車の存在による注意を促す画像をスーパーインポーズするものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。そして、この特許文献1には、スーパーインポーズと共に、ステレオ方式の左右のスピーカで後方からの接近自動車の存在を認識する一方の側のスピーカから警報音を音声出力することが示されている。
【0003】
また、進行方向の前方、特に両側方の障害物や自動車に関しては、レーダ波を照射して、その反射波から得られる物標情報に基づいて、危険を知らせる左右のランプとスピーカから注意を促すための報知情報を出力する装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214656号公報
【特許文献2】特開2012−216176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1及び2は、自己車両の周囲の危険性を検知したときスピーカから警報を発生するものの、危険の所在が自己車両の周囲のどの方向から、そしてどの程度の危険で迫っているのかを直ぐには認識できず、緊急時での判断が遅れることがある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、自己車両に接近する検知対象物の方向や位置を運転者に臨場感をもって認識させることができる近接体警報知装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る近接体警報知装置は、運転する自己車両に対して前後左右の種々の方向から接近してくる自動車、自転車、人又は動物等(以下、「検知対象物」という)を検知する検知システムと、自己車両の室内に配置された複数台のスピーカを備えたサラウンドステレオ音響システムと、複数種類の警報音源を格納し、前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御する音響制御装置と、を有し、前記検知システムは前記検知対象物を順次撮像するカメラ装置と、前記検知対象物の輪郭を含む画像特徴を予め記憶した基準データファイルと、前記カメラ装置が撮像した撮像画像において前記基準データファイルに基づいて前記検知対象物の輪郭を画像認識処理する画像認識装置とから成る映像撮像カメラシステム、を備え、前記検知システムは、前記順次撮像された前記撮像画像の前記検知対象物の輪郭の大きさの変化から当該自己車両に前記接近する前記検知対象物の危険性を判断し、前記音響制御装置は、前記検知システムが前記接近する前記検知対象物の危険性を判断した時に、当該自己車両の運転者席位置において前記警報音源の内選択された一の警報音を前記検知システムが検知した検知対象物の当該自己車両への接近方向から立体的に聞こえるように前記サラウンドステレオ音響システムの音量を駆動制御する、ことを特徴としている。
【0008】
前記検知対象物の輪郭の大きさの変化に基づく当該自己車両に前記接近する前記検知対象物の危険性の判断は、前記検知対象物の当該輪郭が前記撮像画像に占める割合に基づいて行い、前記割合は当該検知対象物毎に定められているとよい。
【0009】
ここで前記検知システムは、1又は複数の前記映像撮像カメラシステムと、レーダセンサシステム及び/又は衛星画像処理システムの1つ又は複数の組み合わせから成る。
そして、前記レーダセンサシステムは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザーレーダ、赤外線センサ、超音波センサの何れか一つ又はその組み合わせであるとよい。この場合のレーダセンサシステムにおいては、前記検知対象物を検知するレーダセンサと、前記レーダセンサの検知出力と前記自己車両の速度から車間距離及び相対速度を演算して前記検知対象物の接近を判断する演算手段と、を備える。
【0010】
一方、前記映像撮像カメラシステムは、自己車両の前方、後方、左側及び/又は右側の画像を撮像するよう配置された各々一対の前記カメラ装置を含むことを特徴とする。
【0011】
このとき、前記映像撮像カメラシステムを構成する各々一対のカメラ装置は、所定の間隔を開けて配置され、当該一対のカメラ装置からの二つの映像信号のズレを検知することにより前記検知対象物と自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定する演算手段を有するとよい。
【0012】
また、前記衛星画像処理システムは、地球を周回する衛星から送信されてくる当該自己車両周辺の画像データにより、前記検知対象物と当該自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定する演算手段を有する。
【0013】
前記音響制御装置は、前記検知対象物が接近するにつれて前記警報音の周波数や音量を変化させるように前記サラウンドステレオ音響システムを制御する。これにより、運転者には、検知対象物が接近を強く認識される音場が提供される。
【0014】
また、前記音響制御装置は、インターバルを置いて前記警報音を断続的に発生させることができ、この場合、前記検知対象物の接近するにつれて前記インターバルが短くなるよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御する。これによっても、運転者には、検知対象物が接近を強く認識される音場が提供される。
【0015】
そして、前記音響制御装置は、それぞれ異なる方向から接近してくる前記検知対象物を検知した時に、その方向に応じて基本波形の異なる前記警報音源を選択して、同時に異なる音色が聞こえるように前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御するこれにより、運転者は、複数の方向から接近してくる前記検知対象物をそれぞれ個別に認識することができる。
【0016】
そして、前記音響制御装置は、前記サラウンドステレオ音響システムが音声再生中に前記検知システムが前記検知対象物の接近を検知した時、前記音声再生から前記警報音源の再生に切り換えて、逆に、前記サラウンドステレオ音響システムが非駆動中に前記検知システムが前記検知対象物の接近を検知した時、前記警報音源の再生のために前記サラウンドステレオ音響システムを駆動する。
【0017】
また、前記音響制御装置は、前記検知システムが後方の左右の車線から前記検知対象物の接近を判断した時に自己車両が当該車線へ操舵されると、前記警報音源を発生するよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御する。これにより、危険を引き起こす運転操作を未然に防止できる。
【0018】
そして、前記音響制御装置は、自己車両のギアポジションがバックに入っている状態で前記検知システムが後方での前記検知対象物の存在を判断した時に、前記警報音源を発生するよう前記サラウンドステレオ音響システムを駆動制御する。これにより、バック走行時の安全を視覚的に確認できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による近接体警報知装置によれば、サラウンドステレオ音響システムによって、検知対象物が接近してくる方向及び検知対象物との間の距離に応じた遠近感を運転者に感じさせる音場を形成して警報音を出力するために、検知対象物が自己車両の至近距離に近づくと運転者に緊張感、警戒感を与えることができる。よって、運転者に対し臨場感をもって警告することができ、運転支援の効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る近接体警報知装置の構成ブロック図で示す。
図2】近接体警報知装置を備える自動車を平面図で示す。
図3】ディスプレイの画面例を模式的な説明図で示す。
図4】前方画像認識装置による前方検知の処理動作を説明するフローチャートを示す。
図5】後方画像認識装置による後方検知の処理動作を説明するフローチャートを示す。
図6】自動車の接近による危険性を判断するときの2フレームの画像の模式的な説明図を示す。
図7】前方正面の自動車との車間距離が接近しているときの警報動作の説明図を示す。
図8】GPSを利用した近接体警報知装置の動作を説明するシステム構成図を示す。
図9】近距離無線通信を利用した近接体警報知装置の動作を説明するシステム構成図を示す。
図10】道路又は道路際に配置された通信チップを利用した近接体警報知装置の動作を説明するシステム構成図を示す。
図11】道路又は道路際に配置された通信チップを利用した近接体警報知装置の動作を説明する別の例でのシステム構成図を示す。
図12】人に装着される通信チップを利用した近接体警報知装置の動作を説明するシステム構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本実施形態に係る近接体警報知装置1の各部の構成をブロック図で示し、図2は各部の配置場所を自動車の平面図で示している。これら図で示すように、近接体警報知装置1は、運転する自己車両14に対して前後左右の種々の方向から接近してくる自動車、自転車、人又は動物等(以下、「検知対象物」という)を検知するよう設けられるそれぞれ左右一対のフロントカメラ2及びリアカメラ3と、レーダセンサ4と、これらカメラ2、3による撮像画像を表示するディスプレイ12と、複数台のスピーカから成るサラウンドステレオ音響システム5と、制御部7とを備えている。また、制御部7は、自己車両14の走行系14aに備えられている操舵角センサ15、シフトポジションセンサ16及び速度センサ17からの各信号がそれぞれ入力するように接続されている。
【0022】
各カメラ2、3は、CCDカメラやCMOSカメラ等により構成されている。フロントカメラ2は、図2で示すように、自動車14のフロントガラス15の左右に取り付けられるステレオカメラであって、自動車14の前方の検知対象物を立体的に認識すると共に、カメラの画角を広角化することで前方の側方から飛び出してくる検知対象物も検知できるようにしている。また、リアカメラ3は、自動車14の左右の側部の後方視界を確保するために、例えば、左右のドアミラー16の下部にそれぞれ取り付けられる。そして、これらのカメラ2、3は予め定められた時間間隔で撮像し画像データを制御部7に出力するように構成されている。
【0023】
ディスプレイ12は、制御部7からの指令に基づいてフロントカメラ2及びリアカメラ3からの映像を表示する。表示は、画面を4分割して図3で模式的に示すように、上段の左右の表示エリア12a、12bには、それぞれ左と右のフロントカメラ2による撮像画像を表示し、下段の左右の表示エリア12c、12dには、それぞれ左と右のリアカメラ3による撮像画像を表示する。また、何れかの表示エリア12a、12b、12c、12dを選択することで、そのエリアに表示している画面のみを全画面で表示することもできる。
【0024】
レーダセンサ4は、自動車14のほぼ真後ろの領域を検知するために、自動車14の後部中央に配置されている。本例でのリアカメラ3の配置によれば、自己車両14の真後ろは死角となるために、レーダセンサ4を用いることで真後ろの領域をカバーしている。レーダセンサ4には、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザーレーダ、赤外線センサ、超音波センサなどが使用される。本例では、レーザー光を発生させるレーザーダイオードと、レーザー光を受光する受光部とから構成されるレーザーレーダを配置している。
【0025】
サラウンドステレオ音響システム5は、車室内に複数台のスピーカ6を、運転者を取囲むように配置している。制御部7は、これら複数のスピーカ6を用いたサラウンド方式により、カメラ2,3やレーダセンサ4が検知した検知対象物との距離やその位置に応じた立体的な音場を形成するように各スピーカ6から音声を出力させるよう制御する。なお、5.1chサラウンドステレオ音響システムを構築する場合、前部座席の右側及び左側と、後部座席の右側及び左側とにそれぞれ配置された4個のスピーカに加えてセンタースピーカの5台を配置し、6.1chサラウンドステレオ音響システムでは、リアスピーカを前方と同じように3台配置するが、本例ではフロントとリアに2台ずつの4台を配置した例を示している。
【0026】
制御部7は、CPU、ROM、RAMを含むマイクロコンピュータで構成されて、CPUは、ROMに格納されているプログラムを実行することで、音響制御装置8、前方画像認識装置9、後方画像認識装置10、後方検知装置11及び表示制御装置13としての処理を行う。そして、前方画像認識装置9、後方画像認識装置10及び後方検知装置11は、カメラ2、3やレーダセンサ4と共に検知システム18を構成する。
【0027】
前方画像認識装置9及び後方画像認識装置10は、それぞれのカメラ2,3が捉える撮像画像を画像認識処理することで、検知対象物の接近をそれぞれ判断する。よって、制御部7は、各種の自動車や自転車、およびオートバイなどの自動二輪車、歩行者などの検知対象物の画像特徴を基準データファイル(図示せず)に予め記憶していて、前方画像認識装置9及び後方画像認識装置10は、撮像画像から画像特徴を検出することで対象物を検知する。
【0028】
音響制御装置8は、上記したように複数台のスピーカ6によって、検知システム18が検知した検知対象物の自己車両14への接近方向から警報音が聞こえるように、運転者に対して立体的な音場を形成するサラウンド方式による音声出力を可能としている。音響制御装置8のメモリには、音質の相違する音声データによる複数の警報音源が記憶されており、音響制御装置8は、検出された検知対象物が接近する状況に応じて、警報音源を選択することにより、警報音の音質を変えて出力するようになっている。この場合の音質は、周波数や音量、または音色(基本波形の形)で表わされる。
【0029】
制御部7の詳細を説明しながら、以下、近接体警報知装置1の動作を説明する。
【0030】
先ず、図4のフローチャートによって、前方画像認識装置9による前方検知処理動作を説明する。前方画像認識装置9は、フロントカメラ2から出力される画像データをもとに、上記基準データファイルを参照して、既知の画像処理プログラムによるパターン認識等の画像認識処理を行い、検知対象物の輪郭を認識する(ステップS1)。
【0031】
具体的には、フロントカメラ2によって撮像された最新の画像データとこれ以前の画像データとを順次比較して、認識している検知対象物の輪郭の大きさの変化からその接近の有無を判定することで、危険性の有無を判断する(ステップS2)。すなわち、図3に示されている自動車20で説明すれば、図6で示すように最新の画像データによる画像(b)での自動車20の輪郭が、これ以前の画像データによる画像(a)での自動車20の輪郭よりも大きいときには、自動車20は自己車両14に接近していると判断し、逆に、小さいときには遠ざかっていると判断する。そして、接近していると判断したとき、自動車20の輪郭が画像全体に占める割合が第1の所定値を超えている場合には、衝突の危険性が有ると判定する。
【0032】
画像に占める自動車20の輪郭が大きくなるということは、その分、自己車両14と自動車20との距離が縮まることであり、自動車20が危険と判断される至近距離まで接近したとき、自動車20の輪郭が画像全体に占める割合の値が予め第1の所定値として設定されている。この第1の所定値は、検知対象物の種類に応じて複数設定されており、例えば、検知対象物が人や自転車であれば、第1の所定値は自動車と比べて小さいものとなる。また、自動車でもそのサイズに応じて複数通り設定されており、前方画像認識装置9は、検知対象物の輪郭の形状からバスやトラック等の大型車を識別するために、それに応じた第1の所定値を選択して参照することができる。
【0033】
図4のフローチャートの説明に戻って、前方画像認識装置9は、衝突の危険性が有ると判定すると(ステップS2の「YES」)、左右両方のフロントカメラ2が自動車20を捉えているかを判別する(ステップS3)。図3で示すように、この例では自動車20は表示エリア12aにしか撮像されておらず、左サイドからの自動車20の飛出しの危険性があることが判別できる。よって、前方画像認識装置9は、前方左サイドからの危険があることを示す信号を音響制御装置8に出力し(ステップS3の「NO」)、このサイドでの自動車20の接近があることを警告する処理を行う(ステップS4)。
【0034】
ステップS4での処理において、音響制御装置8は、警報音源を選択して、これによる警報音が前方左サイドの自動車20の位置に応じて接近してくる感覚を運転者の聴覚に訴える音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0035】
このとき、音響制御装置8は、自動車20が接近してくる距離に応じて、警報音の音質を変えていく。例えば、周波数で音質を変えるには、自動車20が遠くにあるときには低周波数とすることで低音の警報音とし、接近するにつれて、周波数を上げて高音とすることによって、運転者に危険を感じさせるようにする。また、音量は、自動車20が遠くにあるときには小さく、接近するにつれて音量を増大させる。
【0036】
警報音は、連続した音とは限らず、断続的に発生させてもよい。その場合、検知対象物の接近に応じてインターバルを調整することにより、運転者には緊張感をもたらすことができる。例えば、自動車20が接近するにつれて、インターバルを短くすることで運転者が危険を感じるようにすることもできる。
【0037】
そして、警報音は、周波数や音量による音質の組み合わせ、さらに警報音を断続した音で発生させるときには、さらにインターバルを組み合わせることで、音響制御装置8において、運転者がより認識しやすい警報音を生成できるように構成するとよい。
【0038】
これにより、対象物との距離の大小に応じた遠近感を運転者に感じさせることが可能となり、運転者に対して、より現実的且つ直感的な報知を行うことが可能となる。しかも、複数個のスピーカ6を、運転者を取囲むように設けて、サラウンド方式により、対象物の距離や位置に応じた立体的な音場を形成するように各スピーカ6から警報音を出力させるようにしたことにより、検知対象物の位置なども、運転者に対し臨場感をもって知らせることができる。よって、運転者は、自動車20が接近してきて衝突する危険性のあることを強く意識することができる。
【0039】
このとき、サラウンドステレオ音響システム5がオーディオ音源を再生している場合には、再生を中断して警報音を発するように音響制御装置8によって制御される。逆に、音響制御装置8は、サラウンドステレオ音響システム5が非駆動中に検知対象物の接近を検知した時、前記警報音源の再生のためにサラウンドステレオ音響システム5を駆動する。
【0040】
前方画像認識装置9は、左右両方のフロントカメラ2が捉える自動車21についても同様にして輪郭を検出し(ステップS1)、接近していると判断したとき、自動車21の輪郭が画像全体に占める割合が予め設定されている第2の所定値を超えている場合には、衝突の危険性が有ると判定する(ステップS2の「YES」)。この場合の第2の所定値は、自動車21との車間距離が危険と判断される至近距離まで接近したとき、自動車21の輪郭が画像全体に占める割合の値が予め第2の所定値として設定されている。この第2の所定値も、上記した第1の所定値と同様、検知対象物の種類に応じて複数設定されている。
【0041】
しかし、自動車21の場合は、左右両方のフロントカメラ2で捉えられているために、危険性があることを示す信号を音響制御装置8に出力し(ステップS3の「YES」)、正面からの危険性があることを警告する処理が行われる(ステップS5)。
【0042】
ステップS5の処理では、音響制御装置8は、選択した警報音源の警報音が前方の自動車21の位置に応じて接近してくる感覚を運転者に聴覚で訴える音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。これにより、前方の自動車21の位置などを、運転者に対し臨場感をもって意識させることができる。
【0043】
自動車21は、自己車両14に対しては真正面に位置するが、自己車両14が右ハンドル車であると運転者からは左前方に位置しているために、音響制御装置8は、このことを感じられる音場を運転者に提供する。すなわち、このとき前方画像認識装置9は、自動車21と自己車両14との相対位置も認識しており、例えば、図7で示すように、互いに進行方向での自己車両14の中心線l1と自動車21の中心線l2とが一致しているときには、自動車21が自己車両14の真正面に位置していることを示す信号を音響制御装置8に出力する。これにより、運転者23は自己車両14の進行方向の中心線上に自動車21が位置していることを聴覚上で認識できる。
【0044】
そして、前方画像認識装置9は、自動車21の走行位置が自己車両14の運転席側又は助手席側にあることを認識したときには、それに応じた位置信号を出力する。したがって、音響制御装置8が自動車21の走行位置に応じたサラウンド信号を生成して、サラウンドステレオ音響システム5に出力することで、運転者は、自動車21の位置を確認できる。
【0045】
また、前方画像認識装置9は、ステレオカメラである一対のフロントカメラ2からの二つの映像信号のズレを検知することにより検知対象物と自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定し、この接近スピード情報からも危険性を判断することも可能である。
【0046】
そして、表示制御手段13は、左右のフロントカメラ2が捉えた画像をディスプレイの表示エリア12a、12bに表示させており、運転者は、視覚的にも前方からの危険性を確認することができる。
【0047】
次に、図5のフローチャートによって、後方画像認識装置10による後方検知の処理動作を説明する。後方画像認識装置10は、前方画像認識装置9と同様に、リアカメラ3から出力される画像データをもとに、上記の基準データファイルを参照して画像認識処理を行い、自動車や歩行者などの輪郭を認識する(ステップS10)。そして、リアカメラ3によって撮像された最新の画像データとこれ以前の画像データとを比較して、認識している自動車や歩行者の輪郭の大きさの変化から検知対象物の接近の有無を常に判定することで、後方からの検知対象物の有無による危険性を判断する(ステップS11)。
【0048】
本例でのリアカメラ3は、ドアミラーに取り付けられているために、左右のリアカメラ3で同一の検知対象物は撮像されず、後方左側又は後方右側からそれぞれ別の検知対象物の接近の有無を判断することになる。そして、後方画像認識装置10は、左右の何れか又は両方から接近する検知対象物を検知すると、音響制御装置8は、サラウンド方式により、対象物の距離や位置に応じた立体的な音場を形成するようにサラウンドステレオ音響システム5を駆動制御する。
【0049】
後方画像認識装置10は、例えば、図3の表示エリア12cに撮像されている自動車22を検知対象物として捉えたとき、最新の画像データによる画像での自動車22の輪郭が、これ以前の画像データによる画像での自動車22の輪郭より大きいときには自己車両14に後方から接近していると判断する。そして、自動車22の輪郭が画像全体に占める割合が予め設定されている第3の所定値を超えている場合には、衝突の危険性が有ると判定する(ステップS11の「YES」)。なお、第3の所定値は、上記した第1及び第2の所定値と同様に、自動車22との車間距離が危険と判断される至近距離まで接近したときの自動車21の輪郭が画像全体に占める割合の値である。
【0050】
後方画像認識装置10が左後方から接近する自動車22が接近していると判断すると、音響制御装置8は、警報音源を選択して、それによる警報音がその方向から接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。そして、音響制御装置8は、接近する検知対象物との距離の大小に応じて警報音の周波数や音量、また断続音の場合にはインターバルを変えていく制御を行なうことで、遠近感を運転者に感じさせる。
【0051】
これにより、左後方からの自動車22の位置などを、運転者に対し臨場感をもって知らせることができる。この場合、後方画像認識装置10が右後方から接近する検知対象物を検知した時も同様であり、音響制御装置8は、その方向に応じた音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。この場合に、音響制御装置8は、左右それぞれからの警報音の音色が異なるように警報音源を選択することで、運転者は、左右いずれの側方から又は両側方から自動車が接近していることを認識できる。したがって、左右でそれぞれ使用する警報音源の音色は区別したものに予め固定しておくのがよい。
【0052】
また、後方画像認識装置10で判定される危険性は、自己車両14に対する隣の車線での検知対象物の接近を示すものであるが、運転者が、その方向にハンドルを切ろうとしたとき、音響制御装置8は、危険性を強調するために、さらに別の音質の警報を発生するようサラウンドステレオ音響システム5を制御する。
【0053】
このとき音響制御装置8は、操舵角センサ15によってハンドル操作を検知する(ステップS13)。そして、ステアリング操作により操舵角の変化を検知したときには(ステップS13の「YES」)、音響制御装置8は操舵方向の車線が危険であることを警告する(ステップS14)。このときの音響制御装置8が選択してサラウンドステレオ音響システム5に出力する警報音は、ステップS12で発生している警報音とは区別した警報となるが、明確に運転者に知らせるには音声合成による警告コメントを使用するのが好ましい。この場合の警告音も操舵方向に応じた音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力するが、ステップS12で発生している警報に変えて発生させても、或いは両方の警報を重ねて発生させてもよい。
【0054】
以上で述べた後方画像認識装置10の動作は、自己車両14のギアポジションの位置が前進のギアに入っていることがシフトポジションセンサ16から示されている場合であるシフトポジションセンサ16からギアがバックであることを示す信号が入力しているときは、後方画像認識装置10が検知対象物の存在を検知してそれとの間の距離を演算し、音響制御装置8は、そのとき速度センサ17によって検知されている後退速度とその方向に応じた音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力して警告する。したがって、自己車両14がバックしているときには、後方画像認識装置10は、リアカメラ3により検知対象物の存在を認識すると、対応する方向に応じた音場が運転者には示されて、危険性のある方向を認識できる。
【0055】
本例でのリアカメラ3の配置は自己車両の真後ろは死角となるために、自己車両14のほぼ真後ろの領域を検知するためにレーダセンサ4を配置している。後方検知装置11は、レーダセンサ4が自己車両14の真後ろからの接近する自動車の存在を検知したとき、レーダセンサ4の出力と自己車両14の速度センサ17からの速度信号とに基づき所定の演算を行う演算手段である。よって、後方検知装置11は、この演算によって車間距離及び相対速度を求めたとき、相対速度が予め設定されている所定値を超えていると、自己車両14の真後ろから接近してくる自動車の存在を示す信号を音響制御装置8に出力する。
【0056】
したがって、音響制御装置8は、真後ろの検知対象物の位置に応じて接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。これにより、真後ろの自動車21の位置などを、運転者に対し臨場感をもって知らせることができる。
【0057】
そして、レーダセンサ4により真後ろから接近する検知対象物を捉える一方で、同時に両方のリアカメラ3からもそれぞれ接近する検知対象物の存在を検知すると、すなわち、自車線も含めて後方の3車線から検知対象物が接近していることを検知したときには、音響制御装置8は、それぞれ音色の異なる3通りの警報音を選択して、その方向から接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。これにより、警報音は、前方の自動車21の位置などを、運転者に対し臨場感をもって意識させることができる。
【0058】
このようなレーダセンサ4は、フロントカメラ2やリアカメラ3に代用して、前方検知と後方検知とでそれぞれ左右一対設けてもよい。また、リアカメラ3の死角をカバーするのに、レーダセンサ4に限らず、自己車両14の真後ろを検知可能なように自動車の後部中央にカメラを配置してもよい。この場合は、真後ろから高速で接近する検知対象物の存在を後方画像認識装置10によって、上記した左右のリアカメラ3の場合と同様の方法で検知することができる。このとき後方画像認識装置10は真後ろからの自動車の接近を示す信号を音響制御装置8に出力することで、音響制御装置8は、警報音源を選択して、真後ろから接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。そして、音響制御装置8は、接近する検知対象物との距離の大小に応じて警報音の周波数や音量、また断続音の場合にはインターバルを変えていく制御を行なうことで、遠近感を運転者に感じさせる。
【0059】
検知システム18は、上述した実施形態においてフロントカメラ2やリアカメラ3、レーダセンサ4、前方画像認識装置9、後方画像認識装置10及び後方検知装置11により構成されるものに限定されるものではない。
【0060】
図8は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)を利用した衛星画像処理システムを利用した検知システム18の例を示している。衛星画像処理システムは、地球を周回する衛星から送信されてくる当該車両周辺の画像データが送信されてくると、検知対象物と自己車両14との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定する演算手段を有する。そして、音響制御装置8は、衛星画像処理システムが測定した接近スピードに基づいて、検知対象物が接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0061】
また、検知システム18は、自己車両からある一定の近距離範囲のエリア内に位置している他車両33との間で近距離無線通信を行うことによって、他車両33を検知対象物として検知することができる。そのために、車両14は、制御装置7若しくは検知システム18内に又はそれとは別個に、外部と無線通信するための通信装置35を備えている。この他車両33との近距離通信により、例えば他車両33が建物等の陰にあって、カメラやレーダセンサによっても検知できない場合にも、他車両33を認識することができる。
【0062】
この場合、各車両は、車両間での通信が可能な近距離無線通信装置に加えて、自己の現在の走行位置、走行速度、加減速又は制動動作、操舵状況、進路及びその変更、予定の走行ルート等の運転情報を、車両自体に搭載している各種センサやナビゲーション装置32等から取得し、近距離無線通信によってリアルタイムで他車両33に情報提供できるようになっていることが好ましい。それによって、例えば駐車中の車両がエンジンを始動して発進しようとしている場合にも、その行動を予測することが可能になる。尚、他車両33に提供する運転情報は、本発明の目的である危険性の検知、危険の所在及び程度を認識できるのに必要かつ十分なものを選択する。
【0063】
これら運転情報を他車両33から提供されることによって、検知システム18は、例えば走行中に当該他車両と遭遇又は接近する可能性を判定し、それと自己車両との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定することができる。そして、音響制御装置8は、リアルタイムで入手される他車両33の運転情報に基づいて測定した接近方向や離間距離、接近スピードに基づいて、検知対象物が接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0064】
このように車両が取得した自己の運転情報は、車両間の直接通信により提供されるだけでなく、図9で示すように、各車両14、34から例えばインターネット37を通じてクラウドサーバー38に収集し、必要に応じて処理してクラウドサーバー38から各車両にダウンロードすることもできる。この場合、例えば道路に沿って或る程度の間隔でアンテナ39を設置し、アンテナ39を通じて車両14、34とクラウドサーバー38との間で運転情報を通信することができる。
【0065】
クラウドサーバー38は或る範囲のエリア毎に設置すれば良い。検知システム18は、自己車両14が走行しているエリアのクラウドサーバー38から、検知対象物となり得る他車両33の必要な運転情報を入手し、同様に該他車両33と走行中に遭遇又は接近する可能性を判定し、それと自己車両14との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算することにより接近スピードを測定することができる。そして、音響制御装置8は、インターネット経由で入手される他車両33の運転情報に基づいて測定した接近方向や離間距離、接近スピードに基づいて、検知対象物が接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0066】
図10は、道路に沿って或る間隔で設置したチップ形状の通信装置40(以下、「通信チップ」という)を利用して車両の道路上の位置や走行状況等の情報を取得可能にしたシステムの例を示している。この通信チップ40は、例えば路面や路肩に埋設し、又は車道中央線や車線境界線上に設置した道路鋲、路肩や車線に沿って立設した各種ポール等に取り付けることができる。
【0067】
通信チップ40は、或る実施形態において、自己のメモリ内に記録されている個別のチップ設置位置情報を無線で周囲に発信する機能を有する。通信チップ40付近に位置する、即ち通過する又は停車している車両は、該通信チップ40から発信されているチップ設置位置情報を受信し、それに基づいて検知システム18は、自己車両14の位置を認識することができる。
【0068】
更に、通信チップ40の道路上の設置パターンによって、検知システム18は自己車両14が道路上をどのように走行しているか、をより正確に把握することができる。例えば、自己車両14と各通信チップ40との位置関係、離間距離を検出することによって、自己車両14が車線を真っ直ぐに走行しているかふらついているか、車道中央線や車線境界線又は路肩からどの位離れているか、等を判定することができる。
【0069】
そして、上記実施形態において検知システム18により検知した検知対象物の他車両33が、特に大型車両が隣の車線を後方から接近してくる場合に、それとの横幅方向の離間距離が十分で有り得るか、事前に避けられるか又は注意すべきか等を判定することができる。それにより、制御装置7が危険の有無、その程度及び回避の予測を行い、それを、先に検知システム18が検知している当該他車両33の接近方向や離間距離、接近スピードに加えて、その状況を運転者に認知させるような音場を得るように、音響制御装置8がサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0070】
また、車両が通信チップ40との無線通信により取得した自己の位置情報は、上述した車両間の近距離通信によってリアルタイムで、又はインターネット等を介してクラウドサーバー38から、あったとしても非常に僅かな時間遅れで、他車両33に提供することができる。
【0071】
通信チップ40の発信機能は、隣接する別の通信チップ40から発信される電波との間で混信が生じないように、通信チップ40から比較的近距離の範囲内にある車両が受信できる程度の出力で十分である。通信チップ40の電源は、例えば太陽光発電等により充電可能な電池を内蔵したり、外部の電源からケーブルで給電したり、付近を走行する車両が発信する電波により発電したりすることによって、確保できる。
【0072】
通信チップ40は、図11で示すように、上述した発信機能に加えて又はそれとは別に、無線で情報を受信する受信機能を備えることができる。そのような通信チップ40は、その上又は近傍を車両が通過したことを、該車両が発信している電波情報を受信することによって検知する。前記電波情報には、例えば当該車両の識別コード、任意によりその他の車両情報、現在及び今後の走行情報等を含むことができる。
【0073】
通信チップ40が車両から得た走行情報等は、例えば道路に沿って通信チップ40の設置間隔よりも広い間隔で設置されたアンテナを介して、そのエリアのサーバーに無線送信される。通信チップ40に接続されたケーブルを介して直接サーバーに、又は前記ケーブルに接続された中継局から無線でサーバーに送信することもできる。
【0074】
通信チップ40から車両の走行情報等を受信したサーバー側では、道路に沿って連続して配置された複数の通信チップ40が検知するタイミング、時間間隔等によって、その車両がどの方向にどの程度の速度で走行しているかを把握することができる。これにより、走行している車両が、上述した近距離無線通信装置や各種センサを搭載していなくても、その走行情報を収集することができる。
【0075】
検知システム18は、このような他車両33の走行情報を、自己車両14が搭載している通信機器を介して走行中のエリアのサーバーから入手する。そして、検知対象物となり得る他車両33を検知し、他車両33と走行中に遭遇又は接近する可能性を判定し、それと自己車両14との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値を計算して接近スピードを測定する。このように道路からインターネット経由で入手される他車両33の走行情報に基づいて測定した接近方向や離間距離、接近スピードに基づいて、音響制御装置8は、検知対象物が接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0076】
図12は、人がこのような通信チップが組み込まれたカード47を装着することによって、その装着者を検知システム18により検知対象物として認識するシステムを示している。通信チップカード47を装着した人47が道路やその付近に居たり移動していると、その存在が、例えば道路に沿って或る程度の間隔で設置されたアンテナ48を介して、そのエリアのサーバー44に送信される。この場合、通信チップは、自己の位置情報だけでなく、人に装着されていることが分かるような特定の識別コードを含めて発信することが好ましい。
【0077】
このようにして認識された人の存在情報は、検知システム18が、自己車両14が搭載している通信機器を介して走行中のエリアのサーバー38から入手する。そして、その通信チップ40の装着者と自己車両14との離間間隔値を計算し、当該計算された離間間隔値の微分値から接近スピードを測定し、音響制御装置8が、検知対象物の人が接近してくる音場を得るようなサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。
【0078】
また、通信チップ40の装着者が走ったり、自転車や自動車等に乗車している場合、その移動速度は通常の歩行速度よりも速くなる。例えば、通信チップ40装着者の移動速度が或る規定値よりも大きくなったり、急に速くなった場合には、それを自己車両14への接近方向、自己車両14との離間間隔等に加えて、その状況を運転者に認知させるような音場を得るように、音響制御装置8がサラウンド信号をサラウンドステレオ音響システム5に出力する。これにより、例えば人や自転車が建物の陰から急に飛び出したりする危険を事前に検知し、事故を回避することができる。
【0079】
また、検知システム18は、上記実施形態のフロントカメラ2、リアカメラ3、若しくはレーダセンサ4に代えて、又はそれらに加えて360°カメラを装備することができる。これにより、自己車両14を中心に全周囲映像を撮像し、全周囲の状況を視覚によって立体的に把握することができる。
【0080】
検知システム18は、このような衛星画像システム、車両間の近距離無線通信、インターネット等を利用したサーバーシステム、路面等に設置したり人が装着した通信チップ40等による検知システムを、それぞれ単独で又は組み合わせて用いることができ、更に上記したレーダセンサシステムや映像撮像カメラシステムと組み合わせて用いることで、より確実な近接体警報知装置を実現することができる。
【0081】
以上、本発明を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、自己車両の周囲から接近する検知対象物を検知し、接近を検知するとサラウンド方式により、対象物の距離や位置に応じた立体的な警報音を発生する近接体警報知装置に関し、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0083】
1 近接体警報知装置
2 フロントカメラ
3 リアカメラ
4 レーダセンサ
5 サラウンドステレオ音響システム
6 スピーカ
7 制御装置
8 音響制御装置
9 前方画像認識装置
10 後方画像認識装置
11 後方検知装置(演算手段)
14 自己車両
18 検知システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12