(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564585
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ゲル状食品用粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/231 20160101AFI20190808BHJP
【FI】
A23L29/231
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-43828(P2015-43828)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-158610(P2016-158610A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生澤 達也
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(72)【発明者】
【氏名】前島 敏一
【審査官】
千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04268533(US,A)
【文献】
国際公開第2012/050099(WO,A1)
【文献】
特開2015−000870(JP,A)
【文献】
特表2005−513077(JP,A)
【文献】
特開2003−274873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LMペクチン、リン酸塩およびカルシウム塩から構成することを特徴とする粉末組成物であって、各種飲料の100mLに添加する際に、
LMペクチン含量が0.426〜1.8g、
リン酸塩含量が0.25〜1.1g
及びカルシウム含量が次のA〜Cのいずれか一種以上となるように配合されてなる粉末組成物。
A.硫酸カルシウム0.4〜0.84g
B.クエン酸カルシウム0.84〜0.93g
C.炭酸カルシウム0.84〜1.8g
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペクチン粉末に各種リン酸塩およびカルシウム塩を配合した粉末組成物を、牛乳、各種ジュース、豆乳、酸性乳飲料、缶詰のシロップなどと混合することでゲル状食品を調製するための粉末組成物、いわゆる粉末デザートベースに関する。
【背景技術】
【0002】
デザートベースとは、「液状のベース」と市販の牛乳を混合するだけで手軽にミルクプリン風のゲル状食品をつくることができるものであり、各種商品が多数市販されている。このデザートベースには低メトキシルペクチン(LMペクチン)が含まれていて、牛乳と混ぜたときにLMペクチンが牛乳中のカルシウムなど2価イオンと反応してゲルを生成するという機構を利用している。簡便にデザートをつくることができるので、従来より各種デザートベースに関する特許が出願されている(特許文献1、2)。
【0003】
市販されているデザートベースは、パウチ等に詰めた液状の製品がほとんどで、粉末形態の製品はない。この理由として、LMペクチンを粉末のまま、例えば牛乳に添加すると、過剰なカルシウムがあるためペクチン粉末が溶解できなく、均質なゲルを生成することはできなかったためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−104309号公報
【特許文献2】特開2012−080799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の液状のデザートベースではなく、粉末のまま各種ジュース、牛乳、豆乳、酸性乳飲料、缶詰のシロップなどに添加してゲル化させる粉末組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、粉末形態のデザートベースの開発過程で、低メトキシルペクチン(LMペクチン)の粉末に、カルシウム塩、リン酸塩の粉末を適宜割合で混合した組成物が、牛乳、各種ジュース、豆乳、酸性乳飲料、缶詰のシロップなどに添加すると、均質でテクスチャーおよび風味のよいゲル状物となることを見出し、本発明をするに至った。すなわち、本発明は、LMペクチン、カルシウム塩、およびリン酸塩で構成される粉末形態のデザートベースである。
【0007】
デザートベースは、通常は液状で市販されている。これはペクチンを粉末のまま直接牛乳に添加しても容易に分散溶解しなくダマになってしまうためである。また、分散可溶化が容易なペクチンである冷水可溶性ペクチン(WO2012/050099「粉末ミックス」)を使用しても、均質なゲルは調製できない。これは牛乳のようなカルシウムの多い系にペクチン粉末を添加しても、ペクチンの溶解と、ペクチンとカルシウムイオンとの反応が十分に達成されないため、均質なゲルとならないためと考えられる。そこで、ペクチンとカルシウムイオンとの反応が十分に達成できるように、キレート剤としてのリン酸塩又はクエン酸塩、および溶解性の低いカルシウム塩を添加して、ペクチンの溶解とカルシウムとの反応を調整したところ、均質なゲル形成を達成することができた。
【発明の効果】
【0008】
本発明の特徴は:
(1)粉末形態のデザートベースであり、簡便にゲル状のデザート食品を調製することができる。
(2)粉末形態であるため、長期にわたる保存性に優れるとともに、製品としたときの輸送にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の粉末形態のデザートベースとは、粉末組成物を、牛乳、各種ジュース、豆乳、酸性乳飲料、缶詰のシロップなどに添加すると、均質でテクスチャーおよび風味のよいゲル状物を調製することができるものである。
【0010】
<ペクチン>
本発明で用いるペクチンは、低メトキシルペクチン(LMペクチン)である。LMペクチンであればいずれも用いることができる。LMペクチンはカルシウムなどの二価金属イオンの存在下でゲル化するという性質を持つ。特に本発明では、冷水可溶性ペクチンが好適に用いることができる。冷水可溶性ペクチンの例としては、前記WO2012/050099「粉末ミックス」に示されているペクチンが挙げられ、ペクチン中のカルシウム含量を500ppm以下、ナトリウム含量を5000ppm以上に、カリウム含量を5ppm以上に調節したことを特徴とするペクチンである。この冷水可溶性ペクチンは冷水に容易に溶解させることができ、このペクチン溶液を牛乳と混合するとゲルを形成することができる。だだし、冷水可溶性ペクチンを粉末のまま牛乳に添加しても、過剰なカルシウムイオンが存在するため溶解することができず、均質なゲルを調製することはできなかった。
【0011】
粉末組成物中のLMペクチンは、好ましくは20重量%〜60重量%である。飲料100mLに対して0.4g〜2.5g、好ましくは0.8g〜2.0g添加するのが適当である。
【0012】
<カルシウム塩>
本発明の粉末組成物に用いるカルシウム塩としては、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、などを好適に使用することができる。特に硫酸カルシウムが好適に用いることができる。これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
なお、リン塩でもあるリン酸カルシウムは、水に溶けやすく、均質なゲルを生成することができないので、ここでいう「カルシウム酸塩」には含めない。
【0013】
粉末組成物中のカルシウム塩含量は、飲料100mlにカルシウムとして10mg〜400mg、好ましくは90mg〜250mg程度になるよう添加することが望ましい。
【0014】
<リン酸塩>
本発明の粉末組成物に用いるリン酸塩としては、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウムなどを好適に使用することができる。これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。なお、リン酸塩又はクエン酸塩:ペクチン=1:1〜1:8、好ましくは1:1〜1:4の範囲で使用することが好ましい。
【0015】
本発明の粉末組成物には上記成分以外に、各種デンプン、デキストリン、食物繊維、甘味料、色素、香料、などの粉末原料を、ゲル化作用に影響しない範囲で適宜使用してもよい。
【0016】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
(実施例1〜10) 各種リン酸塩の効果(1/2)
LMペクチン(カーギル社製)および食品添加物規格の各種塩を用いて粉末組成物を調製した(表1)。ペクチンを1.8gおよび硫酸カルシウムを0.84gの一定として、それに各種リン酸塩を0.9gあるいは1.1gを粉粉混合して粉末組成物を調製した。冷蔵保存の牛乳100mL(温度10℃)に粉末組成物を添加してスパチュラによる手撹拌で分散溶解させた。実施例1から10では全てゲルを形成した。リン酸塩の種類と添加量を変えることで、角のしっかり立つ弾力のある硬いゲルから、やや離水のみられるゲルであるが良好な食感のゲルまで、それぞれテクスチャーの異なるゲルを調製することができた。
【0018】
【表1】
【0019】
(実施例11〜20) 各種リン酸塩の効果(2/2)
LMペクチン(カーギル社製)および食品添加物規格の各種塩を用いて、粉末組成物を調製した(表2)。ペクチンを1.8gおよび硫酸カルシウムを0.84gの一定として、それに各種リン酸塩を0.6gあるいは0.45gを粉粉混合して粉末組成物を調製した。冷蔵保存の牛乳100mL(温度10℃)に粉末組成物を添加してスパチュラによる手撹拌で分散溶解させた。実施例11から20では全て良好な食感のゲルを形成した。リン酸塩の種類と添加量を変えることで、角のしっかり立つ弾力のある硬いゲルから、やや離水のみられるゲルで良好な食感を持つゲルまで、テクスチャーの異なるゲルが調製することができた。
【0020】
【表2】
【0021】
(実施例21〜28、比較例1〜4)各種カルシウム塩の効果
LMペクチン(カーギル社製)および食品添加物規格の各種塩を用いて、粉末組成物を調製した(表3)。ペクチンを1.8gおよびメタリン酸ナトリウムを1.1gの一定として、それに各種カルシウム塩を濃度を変えて粉粉混合して粉末組成物を調製した。牛乳100mL(温度10℃)に粉末組成物を添加してスパチュラによる手撹拌で分散溶解させた。実施例21から28では全てゲルを形成した。乳酸カルシウムおよびグルコン酸カルシウムを添加した比較例1〜4では良好なゲルを調製することができなかった。これは、水への溶解度の高いカルシウム塩では良好なゲルを調製することができないことがわかった。
【0022】
【表3】
【0023】
(実施例29〜32、比較例5〜6)ペクチン、硫酸カルシウム、メタリン酸ナトリウムの効果
ペクチン、硫酸カルシウム、メタリン酸ナトリウムのそれぞれの量を変えて調製した粉末組成物を牛乳100mL(温度:10℃)と混合したときのゲルの性状を調べた(表4)。実施例29〜32では良好なゲルが調製できた。比較例5〜7に示した配合ではゲル化しなかった。これは粉末組成物中のペクチンの含量が低くいと良好なゲルが調製できないことを示している。
【0024】
【表4】
【0025】
(実施例33〜36) 成分無調整豆乳
成分無調整豆乳(温度:10℃)100mLに、ペクチン、硫酸カルシウム、およびメタリン酸ナトリウムからなる粉末組成物を添加混合してゲル状物を調製した。各成分の濃度を変えることで、角が立つ程度の離水のないゲルから、やや緩いゲルまで、テクスチャーの異なる各種食感のゲルが調製することができた。
【0026】
【表5】
【0027】
(実施例37〜40)ブラックコーヒー
市販のブラックコーヒー(温度10℃)100mLに、ペクチン、硫酸カルシウム、メタリン酸ナトリウムからなる粉末組成物を添加して、ゲルの性状を調べた。それぞれの成分の濃度を変えることで、離水のないゼラチン様の弾力のあるフレーバーリリースのよいゲルが調製できた。
【0028】
【表6】
【0029】
(実施例41〜44) オレンジジュース
冷蔵保存しておいてオレンジジュース(温度10℃)100mLに、ペクチン、硫酸カルシウム、メタリン酸ナトリウムからなる粉末組成物を添加して、ゲルの性状を調べた(表7)。それぞれの濃度を変えることで、オレンジジュースそのままの味のフレーバーリリースのよいゲルが調製できた。
【0030】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の粉末組成物は、牛乳、各種ジュース、豆乳、酸性乳飲料、缶詰のシロップなどの飲料に単に分散混合するだけで、簡便で容易に食感およびフレーバーリリースのよいデザートを調製することができる。また、粉末形態であるため、保存性や輸送性に優れる。