特許第6564598号(P6564598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564598
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20190808BHJP
   H01J 61/86 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01J61/073 F
   H01J61/86
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-71952(P2015-71952)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192325(P2016-192325A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(72)【発明者】
【氏名】早川 壮則
(72)【発明者】
【氏名】内山 満博
(72)【発明者】
【氏名】舘林 和人
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/033239(WO,A1)
【文献】 特開2014−063655(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
H01J 61/86 −61/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される陰極および陽極とを備え、
前記陰極が、テーパー部分を有し、エミッター物質を含有する先端側部材と、テーパー部分と円柱状部分を有し、導電性の電極支持棒によって支持される後端側部材と、を含む複数の金属部材を固相接合することによって形成されており、
少なくとも前記先端側部材のテーパー部分と前記後端側部材のテーパー部分とによって、前記陰極のテーパー部分が構成され、
前記先端側部材から前記後端側部材に向けて移動する熱量が、少なくとも一つの金属部材間の接合面付近を境に小さくなるように、前記後端側部材のテーパー部分は、前記先端側部材のテーパー部分のテーパー角度より小さいテーパー角度を有することを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記先端側部材は酸化トリウムが含有されているトリエーテッドタングステンであり、前記後端側部材はモリブデンまたはモリブデンを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記後端側部材の接合側端面の付近の少なくとも一部に、くびれが形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記陰極が、前記先端側部材と前記後端側部材との間に中間部材を介在させ、前記先端側部材、前記中間部材、前記後端側部材とを固相接合することにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項5】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される陰極および陽極とを備え、
前記陰極が、テーパー部分を有し、1wt%以下の酸化トリウムが含有されているトリエーテッドタングステンよりなる先端側部材と、テーパー部分と円柱状部分を有するモリブデンからなる後端側部材と、を含む複数の金属部材を固相接合することによって形成されており、
少なくとも前記先端側部材のテーパー部分と前記後端側部材のテーパー部分とによって、前記陰極のテーパー部分が構成され、
前記先端側部材から前記後端側部材に向けて移動する熱量が、部材間の接合面を境に小さくなるように、前記後端側部材のテーパー部分は、前記先端側部材のテーパー部分のテーパー角度より小さいテーパー角度を有することを特徴とする放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置等に利用される放電ランプに関し、特に、ショートアーク型放電ランプなどの高出力放電ランプの電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電ランプは、陰極にエミッター物質を添加して、電子放出特性を高めている。エミッターとして、酸化トリウム(ThO2)が代表的に用いられているが、酸化トリウムは放射性物質である。したがって、使用をできる限り控えるべく、特許文献1のように陰極の先端にのみエミッター物質(酸化トリウム)を含有させた放電ランプが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5316436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の陰極構造では、陰極先端の内部に含有されたエミッターを有効的に利用できていない。放電ランプの点灯中は、陰極先端の表面に比べて陰極先端の内部の温度が低く、陰極先端の内部に含有されたエミッターは熱拡散せず、陰極先端の表面にまでエミッターが供給されない。そのため、陰極先端の表面でエミッターが枯渇し、電子放出特性の低下によってチラツキが発生してしまう。
【0005】
したがって、エミッター量を減らした放電ランプにおいても、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放電ランプは、放電管と、放電管内に陰極と陽極とが対向配置され、陰極が、エミッター物質を含有する先端側部材と、導電性の電極支持棒によって支持される後端側部材と、を含む複数の金属部材を固相接合することによって形成されており、先端側部材から後端側部材に向けて移動する熱量が、複数の金属部材間の接合面付近を境に小さくなる。
【発明の効果】
【0007】
放電ランプの点灯中、陰極では先端が最も高温となり、その先端から比較的低温の後端側にかけて熱移動が生じる。この移動する熱量を部材間の接合面付近を境にして減少させることで、先端側部材の温度低下が抑制される。その結果、陰極先端側部材内部のエミッターが熱拡散し、先端表面へエミッターが供給され、エミッター不足を低減する。したがって、エミッター量を減らした放電ランプにおいても、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。
図2】陰極の電極間付近を拡大した概略的断面図である。
図3】第2の実施形態における陰極の接合面付近を拡大した概略的断面図である。
図4】第3の実施形態における陰極の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。
【0011】
ショートアーク型放電ランプ10は、パターン形成する露光装置(図示せず)の光源などに使用可能な放電ランプであり、透明な石英ガラス製の放電管(発光管)12を備える。放電管12には、陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置されている。
【0012】
放電管12の両側には、石英ガラス製の封止管13A、13Bが対向するように放電管12と一体的に設けられており、封止管13A、13Bの両端は、口金14A、14Bによって塞がれている。放電ランプ10は、ここでは、陽極30が上側、陰極20が下側となるように鉛直方向に沿って配置されている。
【0013】
封止管13A、13Bの内部には、金属製の陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒17A、17Bが配設され、金属リング(図示せず)と、モリブデンなどの金属箔16A、16Bを介して導電性のリード棒15A、15Bにそれぞれ接続される。封止管13A、13Bは、封止管13A、13B内に設けられるガラス管(図示せず)と溶着しており、これによって、水銀、および希ガスを封入した放電空間DSが封止される。
【0014】
リード棒15A、15Bは外部の電源部(図示せず)に接続されており、リード棒15A、15B、金属箔16A、16B、そして電極支持棒17A、17Bを介して陰極20、陽極30の間に電圧が印加される。放電ランプ10に電力が供給されると、電極間でアーク放電が発生し、水銀による輝線(紫外光)が放射される。
【0015】
図2は、電極間付近を拡大した概略的断面図である。
【0016】
陰極20は、陰極先端面20Sを有する金属部材(先端側部材)22と、電極支持棒17Aにより支持される金属部材(後端側部材)24から構成されている。円錐台形状の先端側部材22は、先端側テーパー部分22Aを有する。後端側部材24は、電極支持棒17Aと接合する円柱状部分24Bと、先端側部材22と接合する後端側テーパー部分24Aとを有する。先端側テーパー部分22Aと後端側テーパー部分24Aによって陰極20の縮径部(テーパー部)20Tが構成される。
【0017】
先端側部材22は、タングステン(W)に酸化トリウムを含ませたトリエーテッドタングステンを素材とした電極として構成されている。一方、後端側部材24は、先端側部材22よりも熱伝導率の小さい金属であるモリブデン(Mo)によって構成されている。
【0018】
トリエーテッドタングステンから成る先端側部材22の熱伝導率は、酸化トリウムの含有量が微小であることから(例えば、2wt%)、実質的にタングステンの熱伝導率(約177W/mk)と等しい。一方、モリブデンから成る後端側部材24の熱伝導率は、約139W/mk)となり、後端側部材24の熱伝導率は、先端側部材22の熱伝導率よりも小さい。
【0019】
陰極20は、先端側部材22、後端側部材24を接合することによって成形されており、ここでは放電プラズマ焼結(SPS)に基づいて製造されている。具体的には、金属紛体を焼結して固形化した円柱状の先端側金属素材122と後端側金属素材124(図2参照)を用意し、SPS装置に設置する。
【0020】
SPS装置では、先端側金属素材122の平坦な端面(接合側端面)122Jと後端側金属素材124の端面124Jとを密接させ、先端側金属素材122と後端側金属素材124の両端を加圧しながら電圧をかけ、プラズマ放電によって先端側金属素材122と後端側金属素材124を固相接合させる。このときの電圧値、加圧力、加圧時間は、電極サイズ等に基づいて定められる。この先端側金属素材122と後端側金属素材124が、それぞれ先端側部材22、後端側部材24となる。
【0021】
固相接合の場合、接合面付近において急激な結晶構造変化を起こさず、接合面強度を充分に確保できる。溶融接合やロウ付けでも接合は可能であるが、溶融接合では、金属の融点まで加熱する必要があるので、含有するエミッターが還元されてしまい、エミッターが枯渇する。また、ロウ付けでは、放電ランプ10の点灯中の温度でロウが融けて先端側部材22が後端側部材24から剥れる可能性がある。
【0022】
そして、固相接合後に切削加工などの加工処理を施すことにより、テーパー部20Tをもつ陰極20が形成される。所定の電極間距離に従って陰極20、タングステンから成る陽極30が対向配置される。
【0023】
陰極20の接合面Jは、電極軸Lに垂直な方向(ここでは90°)に沿って形成されており、接合面J全体に渡って隙間が実質的に生じてない。すなわち、先端側金属素材122、後端側金属素材124の端面122J、124Jがともに平坦であることから、あらかじめ意図的に形成された粗面や凹凸などに起因する隙間が接合面Jには生じていない。
【0024】
このような陰極20の構造により、先端側部材22にのみ酸化トリウム(エミッター物質)を含有させて酸化トリウム量を減らした放電ランプにおいても、チラツキの低減を実現することができる。
【0025】
放電ランプ10を点灯すると、陰極20では、先端面20Sが最も高温(1000℃以上)となる。熱は温度の高いところから低いところへと移動するため、陰極先端面20Sの熱は後端側部材24の電極支持棒17A側に向かって移動する。このとき、同種部材を接合して構成された陰極の場合、先端側部材と後端側部材の熱伝導率は同程度となるため、接合面付近において移動する熱量は変わらない。
【0026】
一方、本実施形態では後端側部材24の熱伝導率は先端側部材22の熱伝導率よりも僅かに小さいため、接合面J付近を境にして移動する熱量が小さくなる。そのため、先端側部材22の温度は、同種部材を接合した陰極の先端側部材に比べて後端側に移動する熱量が小さい分、低下しにくくなる。先端側部材22の温度低下が抑制され、先端面20Sと先端側部材22の内部との温度差が小さくなることで、先端側部材22の表面だけでなく先端側部材22の内部からも酸化トリウムが熱拡散する。
【0027】
これにより、陰極先端面20Sへの酸化トリウムの供給がなされ、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することができる。
【0028】
上述したように互いに平坦な金属素材端面同士を突き合わせて接合しているために、接合面Jには意図的に形成された粗面や凹凸が生じていない。粗面や凹凸の有無で伝熱量に差が生じず、接合面Jに沿って一様に移動する。そのため、熱伝導率の低い金属の後端側部材24を接合しても、接合面Jの局所的な過熱を防ぎ、急激な部分的電極消耗が生じる恐れがない。
【0029】
なお、ここでの「平坦」は、意図的に溝や凹凸が接合側端面に設けられておらず、粗面でないことを表し、平滑面や電極軸Lに対して厳密な垂直方向を要求するものではない。移動する熱量に差が生じず、局所的な過熱が起きない範囲で平坦であればよい。
【0030】
放電ランプ10は、陰極先端面20Sでは約2000℃になることもあるため、先端側部材22は高融点のタングステンが適している。そのタングステンの熱伝導率(約177W/mk)の関係から、後端側部材24はモリブデンが最も適している。先端側部材22と後端側部材24の熱伝導率の差が小さすぎると、伝熱量が小さくならず、本発明の効果が期待できない。逆に、先端側部材22と後端側部材24の熱伝導率の差が大きすぎると、接合面Jの周辺が過熱状態となってしまい、接合面強度の低下や電極の消耗を招く。
【0031】
例えば、後端側部材24をマグネシウムで構成した場合、熱伝導率は約157W/mkと適当だが、融点が約650℃のため放電ランプ10の陰極20には適用できない。また、後端側部材24をレニウムで構成した場合、融点は3180℃と高いが、熱伝導率が約47.9W/mkと低く、適用できない。
【0032】
なお、後端側部材24をモリブデンにすることで、1つのタングステン材で一体的に形成された電極に比べて重量が軽くなり、耐振性に優れるといった効果も期待できる。また、純モリブデンだけでなく、モリブデンを主成分とする合金で構成することも可能である。
【0033】
このように本実施形態によれば、陰極20、陽極30を備えたショートアーク型放電ランプ10において、トリエーテッドタングステンから成る先端側部材22と、モリブデンから成る後端側部材24とを固相接合することによって陰極20を形成し、先端面20Sから後端側部材24側に伝達する熱量を接合面付近において小さくした。
【0034】
次に、図3を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、接合面付近にくびれが形成されている。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じであるため、同一構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図3は、第2の実施形態における陰極の接合面付近の断面図である。
【0036】
陰極20は、先端側部材22と、後端側部材24とから構成されており、接合面Jが電極軸Lの垂直方向に沿って形成されている。さらに、後端側部材24の接合側端面付近に、電極軸L側に向けて窪んでいるくびれ部26が形成されている。くびれ部26の電極軸Lの垂直方向の直径は、先端側部材22の接合側端面の直径より小さくなっている。
【0037】
くびれ部26は、後端側部材24の接合側端面付近の全周に渡って形成されており、固相接合後に切削加工することによって形成可能である。また、始めから後端側素材124に窪みを設けてあってもよい。
【0038】
このようにくびれ部26を形成することにより、先端側部材22の接合側端面の直径に比べて、くびれ部26を設けた後端側部材24の接合側端面付近の直径が小さくなる。陰極先端面20Sから電極支持棒17A側に向って断面積が減ることになり、移動する熱量は減少する。これにより、先端側部材22の温度低下の抑制に貢献する。したがって、先端側部材22の内部からも酸化トリウムが熱拡散して、陰極先端面20Sへの酸化トリウムの供給がなされ、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することができる。
【0039】
くびれ部26を形成する場所は、陰極20の寸法によって実験等で適宜選択されるべきである。しかしながら、くびれ部26の形成位置が接合面Jよりも電極支持棒17A側に離れすぎると、深いくびれを形成しなければ、くびれ部26の電極軸Lの垂直方向の直径を、先端側部材22の接合側端面の直径よりも短くすることができない。これでは切削加工が煩雑となってしまう。逆に、くびれ部26の形成位置が接合面Jに近すぎると、接合面強度の低下を招く可能性がある。したがって、加工が煩雑にならずに接合面強度を維持できる位置にくびれ部26を設けるとよい。
【0040】
本実施形態では後端側部材24の接合側端面周辺の全周に渡ってくびれ部26を形成した。しかしながら、くびれ部26の直径を先端側部材22の接合側端面の直径より短くすることができれば、くびれ部26は後端側部材24の接合側端面付近の少なくとも一部に形成してもよく、全周に渡らなくともよい。なお、くびれ部26は、陰極20の表面積を増大させるためのねじ切り溝であってもよい。
【0041】
次に、図4を用いて、第3の実施形態である放電ランプについて説明する。第3の実施形態では、先端側部材のテーパー角度より、後端側部材のテーパー角度が小さく構成されている。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じであるため、同一構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
図4は、第3の実施形態における陰極の断面図である。
【0043】
陰極20は、先端側部材22と、後端側部材24とから構成されており、接合面Jが電極軸の垂直方向に沿って形成されている。さらに、後端側部材24のテーパー角度θ2は、先端側部材22のテーパー角度θ1より小さく構成されている。
【0044】
固相接合後に切削加工などの加工処理を施すことで、所望のテーパー角度を形成することができる。また、始めから所望のテーパー角度が形成された先端側金属素材122と後端側金属素材124を固相接合してもよい。例えば、先端側部材22のテーパー角度θ1を70°、後端側部材24のテーパー角度θ2を50°とすることができる。
【0045】
このように後端側部材24のテーパー角度θ2を、先端側部材22のテーパー角度θ1よりも小さく構成することで、先端側部材22のテーパー角度と後端側部材24のテーパー角度が同じ場合と比べて、伝熱可能な断面積が減ることになり、先端側部材22の温度低下の抑制に貢献する。したがって、先端側部材22の内部からも酸化トリウムが熱拡散して、陰極先端面20Sへの酸化トリウムの供給がなされ、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することができる。
【0046】
なお、第2、第3の実施形態のような構成に限らず、先端側部材22のテーパー角度よりも接合面J付近の後端側部材24の少なくとも一部を陰極20の軸L側に配設していればよい。陰極先端面20Sから移動する熱量を制限することができ、チラツキの低減につながる。また、移動する熱量を小さくすることができれば、後端側部材24をタングステンで構成することも可能である。
【0047】
また、先端側部材22と後端側部材24の接合強度向上のために、先端側部材22と後端側部材24との間に中間部材を挟み、先端側部材22、中間部材、後端側部材24とを固相接合することで、接合面間の密着化をすると好適である。伝熱量が小さくなることで接合面J付近に熱が溜まっても、接合強度を維持することができる。
【0048】
中間部材は、先端側部材22と後端側部材24との間の熱量移動の大小関係の影響を抑えるために約1mm以下の厚さが好ましい。例えば、レニウム、タンタル、モリブデン、またはこれらの合金を用いることが可能である。なお、厚みがある中間部材を使用する場合は、先端側部材22の温度低下が制限されるように、先端側部材と中間部材の接合面、もしくは中間部材と後端側部材の接合面を境に移動する熱量を小さくする必要がある。
【0049】
本発明の陰極20の構造により、先端側部材22の内部に含有された酸化トリウム(エミッター物質)を有効利用できることから、先端側部材22に含有する酸化トリウム量自体を減らすことも可能である。第1乃至第3の実施形態では先端側部材22に2wt%の酸化トリウムを含有させていたが、1wt%以下に減らすことができる。1wt%の酸化トリウムを含有したトリエーテッドタングステンからなる先端側部材22においても、第1乃至第3の実施形態のように構成することで、電子放出特性が低下することなく、チラツキを低減することができる。
【0050】
なお、第1〜第3実施形態では、陰極20をテーパー形状としたが、いわゆる砲弾型の円弧形状であってもよい。さらに、ショートアーク型放電ランプ以外の放電ランプにも適用可能である。また、エミッター物質は酸化トリウムに限らず、酸化バリウムや希土類元素などの電子放出特性を高める物質でもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 放電ランプ
12 発光管
20 陰極
22 先端側部材
24 後端側部材
30 陽極
J 接合面
L 電極軸
図1
図2
図3
図4