特許第6564603号(P6564603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564603
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20190808BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190808BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20190808BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/42
   A61K8/49
   A61K8/81
   A61Q19/10
   A61Q1/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-80414(P2015-80414)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-199494(P2016-199494A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219934
【氏名又は名称】エア・ウォーター・ゾル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】成田 健太
(72)【発明者】
【氏名】園部 望
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−317194(JP,A)
【文献】 特開2003−286130(JP,A)
【文献】 特開2006−151978(JP,A)
【文献】 特開2014−009203(JP,A)
【文献】 特開2001−172166(JP,A)
【文献】 特開2007−211080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)の各成分を含有しており、
(A)アルキルグルコシド系界面活性剤
(B)脂肪酸アルカノールアミド
(C)イミダゾリン型ベタイン
発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤が3〜6質量%であり、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドが3〜12質量%であり、前記(C)イミダゾリン型ベタインが3〜7質量%であり、
前記(A)から(C)の成分のうち、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドの含有量がもっとも大きく、
前記原液中の塩化物濃度が200ppm以下である
発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤がデシルグルコシドおよび/またはラウリルグルコシドであり、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドがコカミドDEAである請求項1に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(C)イミダゾリン型ベタインがココアンホ酢酸ナトリウムである請求項1または2に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【請求項4】
各成分の含有量を質量%で比較した場合、大きい方から前記(B)脂肪酸アルカノールアミド、前記(C)イミダゾリン型ベタイン、前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤の順である請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記(D)の成分を含有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
(D)ポリクオタニウム−4
【請求項6】
下記(E)の成分を含有している請求項5に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
(E)ポリクオタニウム−50
【請求項7】
発泡性エアゾール洗浄剤の原液100質量%に対して、前記(D)ポリクオタニウム−4の含有量が0.1〜2.0質量%であり、前記(E)ポリクオタニウム−50の含有量が0.05〜2.0質量%であり、かつ前記(D)ポリクオタニウム−4の含有量が(E)ポリクオタニウム−50の含有量よりも大きい請求項6に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射時の起泡性および使用時における泡立ちが良好な発泡性エアゾール洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン性界面活性剤は、洗浄力に優れていることから、シャンプー等の洗浄剤組成物における洗浄成分として一般に用いられている。しかし、その洗浄力が高いことから、シャンプー等に用いた場合、汚れと共に、髪、頭皮および皮膚に必要な成分まで洗い流してしまうおそれがある。髪、頭皮および皮膚に必要な成分まで洗い流してしまうことは、使用後において、髪にきしみが生じたり、頭皮や皮膚が乾燥したりする原因になりうる。このため、髪、頭皮および皮膚にやさしいシャンプー等として好適な、アニオン性界面活性剤を含有しない洗浄剤組成物が求められている。
【0003】
発泡性エアゾール洗浄剤組成物は、容器内の原液を噴射することによって洗浄剤組成物の泡を形成する点において、一般の洗浄剤組成物と異なっている。噴射により洗浄剤組成物を起泡させておくことにより、頭皮で洗浄剤組成物を泡立てる手間を省き、最初から泡を用いてやさしく髪を洗うことができる。このため、発泡性エアゾール洗浄剤組成物においては、噴射時における起泡性が良好である必要がある。また、十分な泡が維持されるように、使用時における泡立ちが十分であることも重要である。
【0004】
アニオン性界面活性剤を含有しない発泡するクレンジング用組成物が特許文献1に提案されている。同文献には、消費者が手にとり展伸した際、多量の剛性のある泡を発生させるために、水性媒体にa)アルキルアンホアセタール類から選択される少なくとも一つの両性または双性イオン性界面活性剤、b)グリセロール化ポリエチレングリコールエステルから選択される少なくとも一の非イオン性界面活性剤、c)少なくとも一の噴霧剤を含有せしめた、アニオン性界面活性を含有しない、発泡するクレンジング用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4156622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のクレンジング用組成物は、泡を手にとった際の剛性のみを問題としおり、例えばシャンプー等として用いる場合に重要な洗髪時等の使用時における泡立ちが何ら検討されていない。
そこで、本発明は、噴射時の起泡性および使用時の泡立ちが良好な、アニオン性界面活性剤を実質的に含有しない発泡性エアゾール洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
[1]下記(A)〜(C)の各成分を含有しており、
(A)アルキルグルコシド系界面活性剤
(B)脂肪酸アルカノールアミド
(C)イミダゾリン型ベタイン
発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤が3〜6質量%であり、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドが3〜12質量%であり、前記(C)イミダゾリン型ベタインが3〜7質量%であり、前記(A)から(C)の成分のうち、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドの含有量がもっとも大きく、前記原液中の塩化物濃度が200ppm以下である発泡性エアゾール洗浄剤組成物。
【0008】
[2][1]に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤がデシルグルコシドおよび/またはラウリルグルコシドであり、前記(B)脂肪酸アルカノールアミドがコカミドDEAである。
[3][1]または[2]に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、前記(C)イミダゾリン型ベタインがココアンホ酢酸ナトリウムである
【0009】
[4][1]〜[3]のいずれか一つに記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、各成分の含有量を質量%で比較した場合、大きい方から前記(B)脂肪酸アルカノールアミド、前記(C)イミダゾリン型ベタイン、前記(A)アルキルグルコシド系界面活性剤の順である。
【0010】
[5][1]〜[4]のいずれか一つに記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、下記成分(D)を含有している。
(D)ポリクオタニウム−4
【0011】
[6][5]に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、下記成分(E)を含有している。
(E)ポリクオタニウム−50
[7][6]に記載の発泡性エアゾール洗浄剤組成物であって、発泡性エアゾール洗浄剤の原液100質量%に対して、前記(D)ポリクオタニウム−4の含有量が0.1〜2.0質量%であり、前記(E)ポリクオタニウム−50の含有量が0.05〜2.0質量%であり、かつ前記(D)ポリクオタニウム−4の含有量が前記(E)ポリクオタニウム−50の含有量よりも大きい
【発明の効果】
【0012】
本発明により、アニオン性界面活性剤を実質的に含有しない、噴射時の起泡性および使用時の泡立ちが良好な発泡性エアゾール洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物(以下、適宜、洗浄剤組成物ともいう)は、(A)アルキルグルコシド系界面活性剤、(B)脂肪酸アルカノールアミド、および(C)イミダゾリン型ベタインを含有している。これら(A)〜(C)の成分を組み合わせることにより、アニオン性界面活性剤を実質的に含有することなく、噴射時の起泡性および使用時における泡立ちの良い洗浄剤組成物とすることができる。
【0014】
本実施形態において、洗浄剤組成物がアニオン性界面活性剤を「実質的に含有しない」とは、アニオン性界面活性剤を含有させたことに基づく顕著な特性変化が洗浄剤組成物の性能として発生しない程度に、洗浄剤組成物中のアニオン性界面活性剤の含有量が十分に低いことを意味する。
【0015】
[(A)アルキルグルコシド系界面活性剤]
アルキルグルコシド系界面活性剤としては、例えば、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、ドデシルグルコシド(ラウリルグルコシド)、ミリスチルグルコシド、パルミチルグルコシドが挙げられる。噴射時の起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、デシルグルコシドおよびドデシルグルコシドが好ましい。これらは一種のみを用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
アルキルグルコシド系界面活性剤の含有量は、噴射時の起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましく、3〜6質量%であることがさらに好ましい。
【0017】
[(B)脂肪酸アルカノールアミド]
(B)脂肪酸アルカノールアミドとしては、例えば、コカミドMEA(ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド)、コカミドDEA(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)、ラウラミドMEA(ラウリン酸モノエタノールアミド)、ラウラミドDEA(ラウリン酸ジエタノールアミド)、ラウラミドMIPA(ラウリン酸モノイソプロパノールアミド)、パルタミドMEA(パルミチン酸モノエタノールアミド)、パルタミドDEA(パルミチン酸ジエタノールアミド)、コカミドメチルMEA(ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド)等が挙げられる。噴射時の起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、コカミドDEAが好ましい。これらは一種のみを用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
脂肪酸アルカノールアミドの含有量は、起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、1〜20質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましく、3〜12質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
[(C)イミダゾリン型ベタイン]
(C)イミダゾリン型ベタインとしては、ココアンホ酢酸ナトリウム(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエルイミダゾリニウムベタイン)、ラウロアンホ酢酸ナトリウム(N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム)等が挙げられる。噴射時の起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、ココアンホ酢酸ナトリウムが好ましい。これらは一種のみを用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(C)イミダゾリン型ベタインの含有量は、起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、3〜7質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
上述した(A)〜(C)の成分の含有量(質量%)は、使用時における泡立ちを良好にする観点から、各成分の含有量を質量%で比較した場合、大きい方から(B)脂肪酸アルカノールアミド、(C)イミダゾリン型ベタイン、(A)アルキルグルコシド系界面活性剤の順であることが好ましい。
【0022】
同様の観点から、(A)〜(C)の成分のうち、最も含有量が大きい(B)脂肪酸アルカノールアミドの含有量(質量%)と、(C)イミダゾリン型ベタインおよび(A)アルキルグルコシド系界面活性剤を合計した含有量(質量%)とが、略等しいことが好ましい。具体的には、[(B)の含有量]/[(C)+(A)の含有量]が、0.7〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましく、0.9〜1.1であることがさらに好ましい。
【0023】
同様の観点から、(A)〜(C)の成分のうち、最も含有量が小さい(A)アルキルグルコシド系界面活性剤の含有量(質量%)は、(B)脂肪酸アルカノールアミドの含有量(質量%)を1とすると、0.2〜0.9であることが好ましく、0.3〜0.7であることがより好ましく、0.4〜0.5であることがさらに好ましい。
【0024】
同様の観点から、(A)〜(C)の成分のうち、最も含有量が小さい(A)アルキルグルコシド系界面活性剤の含有量(質量%)は、(C)イミダゾリン型ベタインの含有量(質量%)の、0.6〜1であることが好ましく、0.75〜1であることがより好ましく、0.85〜1であることがさらに好ましい。
【0025】
また、起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、洗浄剤組成物の原液中の(A)アルキルグルコシド系界面活性剤と(B)脂肪酸アルカノールアミドの質量とを合計した含有量と、(C)イミダゾリン型ベタインの含有量との比((A)+(B))/(C)が1〜10であることが好ましく、1.5〜5であることがより好ましく、2〜3.5であることがさらに好ましい。
【0026】
[感触改良剤(コンディショニング剤)]
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物は、シャンプーとして使用する場合に洗髪後のきしみを抑えて、指通りや感触の良好な仕上がりの髪とするための感触改良剤を含有していてもよい。感触改良剤としては、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、PPG−3カプリリルエーテル、ポリクオタニウム−52、カチオン化オリゴ糖、塩化セチルトリメチルアンモニウム、ステアルトリモニウムクロリド(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム)、ポリクオタニウム−107、(D)ポリクオタニウム−4(低窒素ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド)、(E)ポリクオタニウム−50(ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン液)等が挙げられる。これらは一種のみを用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
これらのうち、洗髪後の毛髪のきしみを抑制して髪の感触を良好にする観点から、ステアルトリモニウムクロリド、(D)ポリクオタニウム−4および(E)ポリクオタニウム−50が好ましい。特に、(A)アルキルグルコシド系界面活性剤、(B)脂肪酸アルカノールアミドおよび(C)イミダゾリン型ベタインを含有しており、アニオン性界面活性剤を実質的に含有しない洗浄剤組成物に配合する場合、(D)ポリクオタニウム−4および(E)ポリクオタニウム−50を併用することにより、これらが相乗的な効果を奏し、高いきしみ抑制(感触改善)効果を実現する。
【0028】
上記コンディショニング剤の含有量は、洗髪後の毛髪のきしみを抑制して感触を良好にする観点から、下記の範囲とすることが好ましい。
(D)ポリクオタニウム−4の含有量は、発泡性エアゾールシャンプーの原液100質量%に対して、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.2〜0.8質量%であることがさらに好ましい。
(E)ポリクオタニウム−50の含有量は、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液100質量%に対して、0.05〜2.0質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.2〜0.8質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
上述した(D)および(E)の含有量は、洗髪後の毛髪のきしみを抑制するとともに、噴射時の起泡性および使用時における泡立ちを良好にする観点から、(D)ポリクオタニウム−4の含有量(質量)が(E)ポリクオタニウム−50の含有量以上であることが好ましい。
より具体的には、(D)ポリクオタニウム−4と(E)ポリクオタニウム−50との質量比(D)/(E)が1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液は、上述した成分以外に、化粧品の分野で一般的に用いられている成分を含有してもよい。このような成分としては、水;クエン酸およびクエン酸ナトリウム等のpH調整剤;フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウムおよびパラベンなどの防腐剤;ベタイン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩、1,3ブチレングリコール、グリセリンなどの保湿剤;ビタミン類;無機フィラー;香料などが挙げられる。これら成分の含有量は、本実施形態の洗浄剤組成物の特性に悪い影響を与えない範囲とすればよい。
【0031】
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物は、原液および噴射剤を含んでいる。噴射剤としては、一般に用いられている、液化ガス、圧縮ガスおよびこれらの混合物等を用いることができる。液化ガスとしては、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素などが挙げられる。また、HFC−152a、HFO−1234ze(E)などを用いることもできる。
噴射剤は、単品で用いても、二つ以上を組み合わせて用いてもよい。原液と噴射剤との含有量(質量)比(原液/噴射剤)は、9〜200であることが好ましく、9〜100であることがより好ましく、9〜50であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物は、原液と噴射剤とが容器に充填されてなるものである。原液と噴射剤とを充填する容器としては、一般に用いられている耐圧容器を用いることができる。耐圧容器を構成する金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼等が挙げられる。
【0033】
本実施形態の発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液は、上述した成分を組み合わせることにより、塩化物イオン濃度を低くすることができる。塩化物イオンは耐圧容器を構成する金属に対する腐食性がある。耐圧容器が腐食することを防止する観点から、原液の塩化物イオン濃度は、500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0034】
原液中の塩化物イオン濃度を低くすることにより、耐圧容器に腐食防止のための樹脂層や内袋を設けることが不要となるから、製造費用を低く抑えることができる。また、髪、頭皮、および皮膚に対する影響を抑制する観点からも、塩化物イオン濃度を低くすることは好ましい。
【0035】
以上説明した実施形態に関する記載は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するためのものではない。したがって、実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[原液の調製]
表1は、実施例および比較例の発泡性エアゾール洗浄剤組成物に用いられた各原液の成分および含有量を示したものである。表1に示した各成分および含有量により、原液1〜18を調製した。原液1〜5および9〜18を用いて、実施例1〜16の発泡性エアゾール洗浄剤組成物を作製した。また、表1に示した原液6〜7を用いて比較例1〜2の発泡性エアゾール洗浄剤組成物を作製した。なお、表1に示した各成分の含有量は、水溶液における水のように他の成分を含む態様の製品を用いた場合、当該製品ではなく製品に含まれている各成分の量を示している。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示した各成分として、以下のものを用いた。
[ノニオン性界面活性剤]
デシルグルコシド(商品名:マイドール10、花王(株)製)
ラウリルグルコシド(商品名:マイドール12、花王(株)製)
コカミドDEA(A)(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、商品名:アミゾールCDE、川研ファインケミカル(株)製)
コカミドDEA(B)(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、商品名:アミゾールFDE、川研ファインケミカル(株)製)
[両性界面活性剤]
ラウラミドプロピルベタイン(ラウリン酸アミドプロピルベタイン液、商品名:ソフタゾリンLPB−R、川研ファインケミカル(株)製)
コカミドプロピルベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、商品名:ソフタゾリンCPB−R、川研ファインケミカル(株)製)
ココアンホ酢酸Na(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、商品名:ソフタゾリンCL−R、川研ファインケミカル(株)製)
アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCl(商品名:アミセーフLMA−60、味の素(株)製)
ラウロイルアルギニン(商品名:アミセーフAL−01、味の素(株)製)
[感触(きしみ)改良剤]
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなど(商品名:LUSPLAN SR−DM4、日本精化(株)製)
PPG−3 カプリリルエーテル(商品名:ソフケア GP−1、花王(株)製)
ポリクオタニウム−52(商品名:ソフケア KG−301W、花王(株)製)
ステアルトリモニウムクロリド(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、商品名:コータミン86Pコンク、花王(株)製)
ポリクオタニウム−107など(商品名:Alfeel−SD、油化産業(株)製)
ポリクオタニウム−4(ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、商品名:セルコートL−200、アクゾノーベル(株)製)
ポリクオタニウム−50(ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン液、商品名:プラスサイズL−410、互応化学工業(株)製)、ポリクオタニウム−50は両性界面活性剤でもある。
pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム等)
防腐剤(フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等)
保湿成分等(ベタイン、PCA−Na、アミノ酸、BG等)
【0039】
[評価方法]
実施例および比較例の発泡性エアゾール洗浄剤組成物を、下記に示す方法および基準を用いて評価した。
【0040】
[噴射時の起泡性]
噴射時に形成された泡を容積既知の容器にとって泡の重量を測定して、泡比重を求めた。下記の基準に基づいて、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の噴射時における起泡性を評価した。
◎:泡比重0.050g/mL以上0.070g/mL未満(密な泡)
○:泡比重0.030g/mL以上0.050g/mL未満(中間程度の泡)または0.070g/mL以上0.090g/mL未満(中間程度の泡)
×:泡比重0.030g/mL未満(粗い泡)または0.090g/mL以上(水っぽい泡)
【0041】
[使用時(洗髪時)の泡立ち]
(1)数値化の基準(評価点)
下記の基準を用いて、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の使用時(洗髪時)の泡立ち(起泡性)を数値化し、評価点とした。
5:使用時(洗髪時)、噴射により形成された泡がヘタらず、使用時に新たな泡が発生する。
3:使用時(洗髪時)、噴射により形成された泡はヘタらないが、使用時に新たな泡は発生しない。
1:使用時(洗髪時)、噴射により形成された泡がヘタって消えてしまう。
(2)泡立ちの評価
4名の専門家の評価点を平均した平均点を用いて、下記の基準に基づいて、発泡性エアゾール洗浄剤組成物を使用した時の泡立ちを評価した。
◎:平均点4.0以上
〇:平均点2.0以上4.0未満
×:平均点2.0未満
【0042】
[感触(きしみ)]
(1)数値化の基準(評価点)
下記の基準を用いて、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の使用後(洗髪後)の泡立ち感触(きしみ)を数値化し、評価点とした。
5:泡を濯いだ後、手ぐしで髪をとかした際に、抵抗が少ない。
3:泡を濯いだ際、手ぐしで髪をとかした際に、抵抗をやや感じるが、使用に差し支えるほどではない。
1:泡を濯いだ際、手ぐしで髪をとかした際に、抵抗を感じ、使用に差し支えるほどである。
(2)感触の評価
4名の専門家の評価点を平均した平均点を用いて、下記の基準に基づいて、発泡性エアゾール洗浄剤組成物を使用した後の感触を評価した。
◎:平均点4.0以上
〇:平均点2.0以上4.0未満
×:平均点2.0未満
【0043】
[塩化物イオン濃度(原液)(ppm)]
中和滴定により、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液中の塩化物イオン濃度を測定した。
【0044】
表1に示した各原液と、噴射剤としての液化石油ガスと炭酸ガスとを、耐圧容器に封入して、発泡性エアゾール洗浄剤組成物を作製した。原液と噴射剤との質量比(原液/噴射剤)が97/3〜90/10の範囲内となるようにした。
【0045】
参考例1〜7
原液番号1〜5および6〜7(表1参照)の原液を用いて、参考例1〜7の発泡性エアゾール洗浄剤組成物を作製した。得られた発泡性エアゾール洗浄剤組成物の噴射時の起泡性および使用時の泡立ちについて、上述した方法を用いて評価した。表2は各項目の評価結果を示している。
【表2】
【0046】
表2に示すように、(A)アルキルグルコシド系界面活性剤としてのデシルグルコシドおよび/またはラウリルグルコシド、(B)脂肪酸アルカノールアミドとしてのコカミドDEA、ならびにコカミドプロピルベタインまたはラウラミドプロピルベタインを含有する原液番号1〜5の原液を用いた参考例1〜5の発泡性エアゾール洗浄剤組成物はいずれも、噴射時の起泡性が非常に良好なものであった。この結果から、上記の界面活性剤を併用することにより、アニオン性界面活性剤を実質的に含有しない発泡性エアゾール洗浄剤組成物の噴射時の起泡性が良好になることが分かった。
また、参考例1〜5の発泡性エアゾール洗浄剤組成物はいずれも、噴射時の起泡性のみではなく、使用時の泡立ちも良好なものであった。この結果から、上記の界面活性剤を併用することにより、噴射時の起泡性および使用時の泡立ちが良好な発泡性エアゾール洗浄剤組成物として好適な原液が得られることが分かった。
【0047】
比較例1〜10、実施例1
原液番号8〜18(表1参照)の原液を用いて、比較例1〜10および実施例1の発泡性エアゾール洗浄剤組成物を作製した。得られた発泡性エアゾール洗浄剤組成物の噴射時の起泡性、洗髪時の泡立ちおよび感触(きしみ)について、上述した方法を用いて評価した。表3は各項目の評価結果を示している。
【0048】
【表3】

表3に示すように、ステアルトリモニウムクロリドを含有する原液(11)を用いた比較例4、(D)ポリクオタニウム−4を含有する原液(13)を用いた比較例6ならびに(D)ポリクオタニウム−4および(E)ポリクオタニウム−50を含有する原液(15〜18)を用いた比較例8〜10および実施例1の発泡性エアゾール洗浄剤組成物はいずれも、洗髪後における髪のきしみがなく指通りが良好なものとなった。この結果から、ステアルトリモニウムクロリドまたは(D)ポリクオタニウム−4を用いることにより、洗髪後における指通りがよく髪に良好な感触を与える洗浄剤組成物となることが分かった。
【0049】
(E)ポリクオタニウム−50は、単独で用いた場合、洗髪後における感触改善効果を奏さなかったが、(D)ポリクオタニウム−4と併用することにより、高い感触改善効果を奏した(比較例6〜8)。すなわち(D)ポリクオタニウム−4と(E)ポリクオタニウム−50とを併用することにより、両者の相乗的な感触改善効果によって、特に洗髪後における指通りがよく髪に良好な感触を与える洗浄剤組成物が得られることが分かった。
【0050】
また、実施例1の発泡性エアゾール洗浄剤組成物は、他の実施例と比較して、特に使用時の泡立ちが良好であった。この結果から、(A)〜(C)の界面活性剤を実施例1に用いた原液18の比率とすれば、使用時の泡立ちが特に良好になることが分かった。
【0051】
比較例4、8および実施例1
比較例4、8および実施例1の各発泡性エアゾール洗浄剤組成物に用いた各原液(11、15および18)中の塩化物イオン濃度を評価した。表4は各項目の評価結果を示している。
【0052】
【表4】

比較例8および実施例1に用いた原液(原液番号15および18)の塩化物イオン濃度は、比較例4の塩化物イオン濃度よりも低かった。したがって、容器に対する塩化物イオンの影響を抑制する観点から、感触改良剤として、(D)ポリクオタニウム−4および(E)ポリクオタニウム−50を併用することが、ステアルトリモニウムクロリドを用いることよりも好ましいといえる。
実施例1に用いた原液の塩化物イオン濃度は35ppmと非常に低かった。このように(C)イミダゾリン型ベタインとしてココアンホ酢酸ナトリウムを用いることにより、噴射時の起泡性および洗髪時の泡立ちが良好になるとともに、原液中の塩化物濃度をきわめて低くすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、噴射時の起泡性および洗髪時の泡立ちが良好な、発泡性エアゾール洗浄剤組成物の原液として好適な原液を作製することができる。
また、本発明によれば、原液中の塩化物イオン濃度を極めて低くすることできるから、容器の腐食防止に加えて、髪や頭皮や皮膚への塩化物イオンの影響が極力抑制された敏感肌用の発泡性エアゾール洗浄剤組成物としても有用である。