特許第6564606号(P6564606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564606
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】木・鋼重ね梁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20190808BHJP
   E04C 3/292 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   E04B1/58 506T
   E04C3/292
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-85330(P2015-85330)
(22)【出願日】2015年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-204896(P2016-204896A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395021066
【氏名又は名称】すてきナイスグループ 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】石丸 亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠義
(72)【発明者】
【氏名】平田 恒一郎
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】今泉 隆之
(72)【発明者】
【氏名】立花 伸之
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−213789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04C 3/292
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造軸組構法に用いられる小梁を、木製梁と鋼製梁とを相互に重ね合わせて構成した木・鋼重ね梁構造であって、
前記鋼製梁の上面に前記木製梁が重ね合わされ
記木製梁及び鋼製梁の端部は、直交する大梁等の横架材にそれぞれ接合されて成ることを特徴とする、木・鋼重ね梁構造。
【請求項2】
前記鋼製梁の端部は、前記直交する大梁等の横架材に、第1の接合部材を介して接合され、
前記木製梁の端部は、前記直交する大梁等の横架材に、第2の接合部材を介して接合されて成ることを特徴とする、請求項1に記載した木・鋼重ね梁構造。
【請求項3】
前記鋼製梁は、角形鋼管で構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した木・鋼重ね梁構造。
【請求項4】
前記木製梁は、断面の縦寸及び横寸がそれぞれ105mm以上の角材であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載した木・鋼重ね梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造軸組構法(在来工法)により構築される建築物であって、大梁等の横架材の間に設けられる小梁(特には、床荷重を支える小梁)を、木製梁と鋼製梁とで重ね梁として構成した木・鋼重ね梁構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造軸組構法によって構築される建築物の骨組みは、土台、柱材、梁材や筋交いなどの軸組を組み立てて構築される。前記建築物には、大梁、胴差等の横架材の間に床荷重を支える小梁が所定の間隔をあけて複数本設けられており、該小梁の両端部が大梁に、例えば金物等でなる接合部材を用いて強固に接合されている。
ところで、前記梁材には、鋼材と木材とを組み合わせて一体化した複合梁材が知られており、例えば特許文献1〜3に開示され、既に種々実用に供されている。前記複合梁材は、剛性、安定性、及び耐久性に優れており、その上、木製梁のみで構成した小梁と比べて断面寸法を小さく設計できるから、より広い空間を有する建築物を構築できる。
なお、前記小梁の上面には、床版として構造用合板が木材に釘打ちして設けられる。床面がない場合には、鋼材或いは木材に火打ち材をボルト等で止め付けている。
【0003】
前記特許文献1及び2には、H形鋼で構成した鋼材のフランジ面を上下方向に配置し、該上下フランジの外面に木材を重ね合わせ、該鋼材のフランジ面と木材とをボルト接合、かしめ接合、或いは接着材等で相互に接合して一体化させた構成の複合梁材が開示されている。
前記特許文献3には、角形鋼管で構成した鋼材の上面及び下面に、該上面及び下面よりも幅広の木材をボルト接合して一体化させた構成の複合梁材が開示されている。
因みに、前記特許文献1〜3に開示された複合梁材を構成する木材は、主に断熱効果を高める目的で設けているため大梁には接合していない。すなわち、前記複合梁材は、鋼材のみを大梁へ接合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−284310号公報
【特許文献2】特開平9−151568号公報
【特許文献3】特開平10−183860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3に開示された複合梁材は、鋼材と木材とをボルト接合又はかしめ接合等により相互に接合して一体化させる構成であるが故に、鋼材と木材とを相互に接合するための穴あけ加工や切り欠き加工等を行う必要があった。よって、製造コストが嵩むうえに、建築現場への搬入効率が悪いという問題があった。また、ボルト穴や切り欠きの形状、大きさによっては、断面欠損が生じるおそれがあるので、断面欠損が生じないように鋼材又は木材の断面形状を大きくする必要があり、不合理かつ不経済であった。
【0006】
ところで、木造軸組構法によって建築物を構築する場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、単に品確法という。)」で定められた所定の性能を発揮させる必要がある。
ここで、前記品確法により、前記梁材に要求される構造性能は、床版や屋根からの鉛直荷重を負担し、更に地震力や風等の水平荷重を負担してねじれを防止することである。前記複合梁材の場合は、鉛直荷重を鋼材のみで負担し、水平荷重に対しては複合梁材と同複合梁材の上面に設けた床版、又は火打ち材で負担している。しかし、前記複合梁材では、鋼材と木材の剛性が異なる理由から、前記品確法で定められた所定の性能を発揮する設計が難しく、同性能を発揮できない虞がある。これは、前記品確法が、木材のみで水平荷重を負担することを前提として定めているからである。更に、前記複合梁材は、床版、或いは火打ち材と組み合わせて水平荷重を負担するので、力の伝達が複雑になり、保有性能が不明瞭である。
そのため、前記特許文献1〜3に係る複合梁材を適用する場合、実際の仕様で構造性能試験を行う必要があることに加え、該試験結果により得られた保有床倍率の認証を取得する手続等も必要となり大変煩わしかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、鋼製梁として使用する鋼材と、木製梁として使用する木材とを相互に接合するための穴あけ加工や切り欠き加工が不要であり、両者を接合する必要もない、木・鋼重ね梁構造を提供することである。
また、鋼製梁と木製梁とを組み合わせてなる梁構造であっても、木製梁のみで水平荷重を負担することを前提とした構造設計を実現することにより、品確法により定められた存在床倍率を満足する設計を容易に行うことができる、木・鋼重ね梁構造を提供することである。
その結果、木造軸組構法の効率性と経済性を高めて、工期の短縮化及びコストダウンを図ることができる、木・鋼重ね梁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る木・鋼重ね梁構造は、木造軸組構法に用いられる小梁を、木製梁3と鋼製梁2とを相互に重ね合わせて構成した木・鋼重ね梁構造であって、
前記鋼製梁2の上面に前記木製梁3が重ね合わされ
記木製梁3及び鋼製梁2の端部は、直交する大梁10等の横架材にそれぞれ接合されて成ることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した木・鋼重ね梁構造において、前記鋼製梁2の端部は、前記直交する大梁10等の横架材に、第1の接合部材4(又は7)を介して接合され、
前記木製梁3の端部は、前記直交する大梁10等の横架材に、第2の接合部材8を介して接合されて成ることを特徴とする。
【0009】
請求項に記載した発明は、請求項1又は2に記載した木・鋼重ね梁構造において、前記鋼製梁2は、角形鋼管で構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した木・鋼重ね梁構造において、前記木製梁3は、断面の縦寸及び横寸がそれぞれ105mm以上の角材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る木・鋼重ね梁構造1によれば、鋼製梁2の上面に木製梁3を重ね合わせ、該鋼製梁2及び木製梁3の端部は、直交する大梁10等の横架材にそれぞれ接合してなる構成なので、下記する効果を奏する。
(1)前記鋼製梁2と木製梁3とを相互に接合するための穴あけ加工や切り欠き加工等が不要であり、また鋼材と木材とを別々に分けて効率良く建築現場へ搬入して施工できる。よって、工場等における製造工程の省力化、運搬工程のスリム化等を実現できるので非常に合理的かつ経済的である。
(2)前記木製梁3は、鋼製梁2に関係なく独立して水平荷重を負担する構成、すなわち、木製梁3のみで水平荷重を負担することを前提とした構造設計を実現できるので、前記品確法により定められた存在床倍率を満足する設計を容易に行うことができ、構造性能実験等を行う必要がない。更に言えば、荷重に対する役割分担を明確化した小梁構造を実現できると云える。
(3)まとめると、木造軸組構法の効率性と経済性を高めることができ、工期の短縮化及びコストダウンを図ることができる。また、非常に合理的、経済的な構造設計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】木造軸組構法による建築物の上方部分を概略的に示した立面図である。
図2】本発明に係る木・鋼重ね梁構造の実施例を示した斜視図である。
図3図1のA部の拡大図である。
図4】本発明に係る木・鋼重ね梁構造の異なる実施例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る木・鋼重ね梁構造1は、鋼製梁2の上面に木製梁3が重ね合わされ、鋼製梁2及び木製梁3の端部は、直交する大梁10等の横架材にそれぞれ接合されてなる。前記鋼製梁2は、角形鋼管で構成する。前記木製梁3は、断面の縦寸及び横寸が105mm以上の角材とする。
【実施例1】
【0014】
本発明に係る木・鋼重ね梁構造を図示した実施例に基づいて説明する。
本発明に係る木・鋼重ね梁構造1は、図1図3に示すように、木造軸組構法に用いる小梁(特には、構築される建築物の床荷重を支える小梁)を、鋼製梁2と木製梁3とを相互に重ね合わせて重ね梁とした構成である。具体的に、前記重ね梁構造1は、前記鋼製梁2の上面に前記木製梁3が重ね合わされ、鋼製梁2及び木製梁3の端部は、直交する大梁10等の横架材にそれぞれ接合されており、前記木製梁3が鋼製梁2から独立して水平荷重を負担する構成である。
【0015】
前記建築物は、詳細に図示することは省略したが、べた基礎の立ち上がり部または布基礎の上に土台を構築し、該土台に柱材12、大梁10、小梁或いは筋交いといった軸組を組み上げて骨組みを構築する。直交する大梁10、10の接合部には、補強材として火打ち材を設け、地震や風等による水平荷重を負担させる。但し、前記火打ち材を設けることなく、前記大梁10の上面に床合板を釘打ちして設け、当該床合板で前記水平荷重を負担させる場合もある。
なお、前記重ね梁構造1を構成する木製梁3の上面に、構造用合板が同木製梁3に釘打ち固定して設置されている。但し、前記構造用合板に代えて、火打ち材を、鋼製梁2又は木製梁3にボルト接合する場合もある。
以下、本発明に係る重ね梁構造1の構成要素である鋼製梁2、木製梁3についてそれぞれ説明した上で、両者の接合要領について説明する。
【0016】
前記鋼製梁2は、一例として縦寸が195mm程度、横寸105mm程度、厚さが3.2〜4.5mm程度の角形鋼管で構成されている。前記角形鋼管2は、例えばH形鋼と比較してねじれに強いので、大梁10、10間がロングスパンであっても補強が不要で、設計が容易であり、梁材として好適である。また、前記角形鋼管2の板厚を厚くすることにより、同鋼管2の断面寸法を小さくできるので、より広い空間を有する建築物を構築できる。
なお、前記鋼製梁2は、前記角形鋼管に限らない。例えば図4に示したように、H形鋼で構成することもできるし、C形鋼等(図示省略)で構成することもできる。
【0017】
前記木製梁3は、一例として木材の標準規格サイズである一辺が105mmの角材を用いている。前記木製梁3は、断面の縦寸及び横寸がそれぞれ105mm以上の角材が好ましい。例えば縦寸が105mm、横寸が120mmの角材でも良好に実施できる。但し、構造設計上、前記鋼製梁2の横寸と木製梁3の横寸をほぼ一致させて、重ね梁構造1の両側面をほぼ面一とする構成が好ましい。
因みに、前記木製梁3の縦寸及び横寸を105mm以上とする意義は、前記品確法で定められた存在床倍率を満たすことができ、構造性能試験等や構造解析等で性能確認等する必要がないからである。但し、前記木製梁3の縦寸及び横寸は、105mm以上に限定されない。構造性能試験や構造解析等で性能確認等した場合には、それぞれ105mm未満とした構成で実施することもできる。
【0018】
次に、前記鋼製梁2と木製梁3のそれぞれの両端部を直交する大梁10に接合する構成について説明する。
本発明に係る重ね梁構造1の施工は、図1に示すように、対向する配置に設けた大梁10等の横架材の間に、所要の高さまで吊り上げた鋼製梁2を下記する要領で接合した後、木製梁3を、前記大梁10間に接合した鋼製梁2の上面に載せ、該上面を作業台に利用して下記する要領で接合する手法で行われる。
【0019】
前記鋼製梁2(角形鋼管)は、図2及び図3に示すように、同鋼製梁2と直交する大梁10に接合部材(第1の接合部材)4を用いて接合されている。具体的には、対向配置に位置する左右の大梁10、10に接合部材4を用いて接合されている。前記接合部材4は、前方(大梁10側)に逆U字形状のフック部50を備えた板状の本体部5と、前記フック部50と結合される連結ピン6との組み合わせで構成されている。また、前記大梁10、10には予め、前記フック部50と対面する部位に該フック部50を上下に遊嵌するルーズ孔10bが形成され、反対側の面には前記連結ピン6を収納するピン孔10aが形成され、当該ルーズ孔10bとピン孔10aは立断面が略L字形状の連通する構成で実施されている。
【0020】
前記本体部5は、前記フック部50が大梁10に向かって鋼製梁2の外部へ突き出す配置で、前記鋼製梁2の内部(中空部)に位置決め固定されている。
具体的に本実施例では、前記本体部5の上下方向の3箇所にピン孔及びピン受けが形成され、前記鋼製梁2の両側面にも当該ピン孔及びピン受けと対応する部位に芯を一致させた略同一形状のピン孔が3つずつ形成(穿設)されている。そして、前記鋼製梁2の内部に本体部5を挿入し、該本体部5のピン孔及びピン受けの位置を、鋼製梁2に形成したピン孔の位置に合わせ、鋼製梁2の一方の側面から各ピン孔等にドリフトピン51…を共通に通し、該ドリフトピン51…の両端部を鋼製梁2の両側面に溶接等の接合手段で固定する。もとより、ドリフトピン51をある程度の長さ通しておいてこれを本体部5のピン孔及びピン受けの目印にする等の作業上の工夫は適宜行われるところである。こうして、前記本体部5は前記鋼製梁2の内部に位置決め固定される。
なお、前記本体部5は、予め鋼製梁2内に位置決め固定した状態で建築現場へ搬入しても良いし、現場で施工しても良い。また、前記ドリフトピン51と鋼製梁2との接合手段について、前記ドリフトピン51の両端部に雄ネジを形成し、前記鋼製梁2のピン孔に雌ネジを形成することにより、当該ドリフトピン51の両端部を鋼製梁2にねじ込み固定して実施することもできる。勿論、当該ねじ込み固定した後、更に溶接して実施することもできる。
【0021】
一方、前記連結ピン6は、図2及び図3に示すように、軸部60と頭部61(丸平板)とから成るいわゆる頭付きピンであり、前記大梁10に形成されたピン孔10aに差し込む構成で実施される。前記連結ピン6(軸部60)の先端側には外周に沿って凹溝部60aが形成されている。また、前記ピン孔10aは、前記連結ピン6がほぼぴったり嵌まって収納できる大きさに形成され、当該ピン孔10aに差し込んだ連結ピン6の頭部61の天端が大梁10の側面とほぼ面一となる構成で実施されている。
【0022】
かくして、前記鋼製梁2と大梁10は前記接合部材4を用いて下記する要領で接合されている。
すなわち、先ず、前記接合部材4を構成する連結ピン6を前記大梁10に形成したピン孔10aに、その全体が収納される(その天端が大梁10の側面とほぼ面一となる)まで差し込む。
次に、前記鋼製梁2の水平姿勢を適宜調整しつつ、同鋼製梁2に位置決め固定された前記本体部5のフック部50を前記大梁10に形成したルーズ孔10bに遊嵌させ、適時に落とし込む。
そうすると、前記連結ピン6の先端部に形成した凹溝部60aに前記本体部5の逆U字形状のフック部50が嵌まり込み本体部5と連結ピン6が連結され、ひいては鋼製梁2と大梁10とが強固に連結される。
前記ルーズ孔10bには必要に応じて予め接着材等の充填材52を充填しておいてもよい。
【0023】
次に、前記木製梁3を直交する前記大梁10に接合する構成について説明する。
前記木製梁3は、図2及び図3に示すように、接合部材(第2の接合部材)8を用いて大梁10に接合される。具体的には、対向配置に位置する左右の大梁10、10に接合部材8を用いて接合されている。前記接合部材8は、前記木製梁3の端部に形成されたスリット状の切り欠き溝30に差し込まれる板状の木製梁側接合部80と、前記大梁10の木製梁3側の側面に形成されたT字形スリット状の切り欠き溝31に差し込まれる平面視がT字形状の大梁側接合部81とで構成されている。
【0024】
前記木製梁側接合部80には、左右方向の2箇所にピン孔とピン受けが形成され、前記木製梁3の側面にも前記木製梁側接合部80のピン孔及びピン受けと対応する部位に芯を一致させた略同一形状のピン孔が2つずつ形成されている。
前記木製梁3に形成された切り欠き溝30は、同木製梁3の上面から前記木製梁側接合部80を差し込むことができ、差し込んだ木製梁側接合部80の上端が木製梁3の上面から突き出すことなくほぼぴったりと内部に嵌まって納まる形状、大きさに形成されている。
前記大梁10に形成された切り欠き溝31も、同大梁10の上面から前記大梁側接合部81を差し込むことができ、差し込んだ前記大梁側接合部81の上端が大梁10の上面から突き出すことなくほぼぴったりと内部に嵌まって納まる形状、大きさに形成されている。
前記木製梁3を前記鋼製梁2の上面に載せて位置合わせをした際に、図2に示すように、前記木製梁3に形成された切り欠き溝30と、大梁10に形成された切り欠き溝31とで、平面的に見て連通するT溝形状となる構成である。
【0025】
前記木製梁3と大梁10とを前記接合部材8を用いて接合する要領は、先ず、前記木製梁3を鋼製梁2の上面に載せて、同木製梁3の両側面と鋼製梁2の両側面とを略面一にするとともに、木製梁3に形成された切り欠き溝30の位置を、大梁10に形成された切り欠き溝31の位置に合わせて平面的に見て連通するT字状となるように配置する。
次に、前記接合部材8を、木製梁3及び大梁10の上面から前記切り欠き溝30及び31へ差し込む。そして、前記木製梁側接合部80のピン孔及びピン受けの位置を、同木製梁3のピン孔の位置に合わせる。
最後に、木製梁3の一方の側面から各ピン孔等にドリフトピン82、82…を共通に通して、前記接合部材8を木製梁3に固定し、前記木製梁3が大梁10に接合される。
【0026】
なお、前記木製梁3の切り欠き溝30に予め接合部材8の木製梁側接合部80を差し込み、各ピン孔等に通したドリフトピン82、82…で固定した状態で木製梁3を所要の高さまで吊り上げ、大梁側接合部81を大梁10の切り欠き溝31に差し込みつつ、前記木製梁3を鋼製梁2の上面に載せて接合する方法でも実施できる。
【0027】
本発明に係る木・鋼重ね梁構造1によれば、前記鋼製梁2と木製梁3とを、地震力等によるせん断力を負担するような接合を行わないことで、木製梁3が鋼製梁2から独立して水平荷重を負担することができる。また、前記大梁10、10間が6m程度である場合、木製梁のみで構成すると、品確法により梁成が420mm程度必要であるところ、縦寸が195mm程度の鋼管と、前記105mm角の木材とで300mm程度の梁成で構成できるので、木製梁のみで構成した小梁と比べて断面寸法を小さく設計でき、より広い空間を有する建築物を構築できる。
【0028】
なお、前記鋼製梁2又は木製梁3と、大梁10との接合手段は、図2及び図3に示した実施例に限らず、構造上必要とされる性能を満たす構成であれば、種々の接合方法で実施することが可能である。
【実施例2】
【0029】
図4に示す実施例2の木・鋼重ね梁構造1’は、鋼製梁2’をH形鋼で構成した実施例を示している。この重ね梁構造1’は、鋼製梁2’のフランジ面20、21を上下方向に配置し、該上側フランジ20の外面に木製梁3を接合することなく重ね合わせ、同鋼製梁2’及び木製梁3の端部は、直交する大梁10等の横架材にそれぞれ接合した構成である。
【0030】
前記鋼製梁2’を大梁10に接合するには、鋼製梁2’のウェブ面の両側にそれぞれ設けたアングル材で成る接合部材(第1の接合部材)7を用いて行う。具体的には、前記鋼製梁2’の端部を前記大梁10の側面に突き合わせた状態で、前記接合部材7の一側面を鋼製梁2’のウェブ面22に当接させ、該ウェブ面22と接合部材7の一側面をボルト7a…で接合する。なお、前記接合部材7を予め鋼製梁2’のウェブ面にボルト接合した状態で、鋼製梁2’の端部を大梁10の側面に突き合わせた構成で実施することもできる。
そして、前記接合部材7の他側面を前記大梁10の側面に当接させて、同大梁10と接合部材7の他側面をボルト7b…で接合する。
前記木製梁3を大梁10に接合する構成については、上記実施例1の重ね梁構造1を構成する木製梁3を大梁10に接合する構成と同じであるため、その説明を省略する。
なお、前記鋼製梁2’又は木製梁3と、大梁10との接合手段は、図4に示した実施例に限らず、構造上必要とされる性能を満たす構成であれば、種々の接合方法で実施することが可能である。
【0031】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、もとより本発明は実施例の構成に限定されるものではない。いわゆる当業者が必要に応じて行うであろう設計変更その他の応用、改変の範囲まで含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 重ね梁構造
10 大梁
2 鋼製梁(角形鋼管)
2’ 鋼製梁(H形鋼)
3 木製梁
4 接合部材(第1の接合部材)
7 接合部材(第1の接合部材)
8 接合部材(第2の接合部材)
図1
図2
図3
図4