特許第6564608号(P6564608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564608
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/06 20060101AFI20190808BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20190808BHJP
   A01F 12/10 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A01D69/06
   A01D67/00 D
   A01F12/10 K
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-88305(P2015-88305)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-202086(P2016-202086A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 滋昭
(72)【発明者】
【氏名】舟木 大輔
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−240211(JP,A)
【文献】 特開2006−296441(JP,A)
【文献】 特開2012−235762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00−69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前方に前処理部を昇降自在に支持し、前記走行機体に駆動源及びミッションケースを配置し、前記駆動源の動力を、前記ミッションケースに設けた油圧式無段変速装置を介して前記前処理部に伝達してなるコンバインにおいて、
前記ミッションケースは、減速装置を収納すると共に、前記油圧式無段変速装置を経由した回転が伝達される正転用出力軸と、前記油圧式無段変速装置及び前記減速装置を経由した回転が伝達される逆転用出力軸とを回転自在に支持し、
前記正転用出力軸の回転を正転クラッチを介して前記前処理部に伝達し、
前記逆転用出力軸の回転を逆転クラッチを介して前記前処理部に伝達し、
前記コンバインは、前記前処理部からの穀稈を挟持して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンで挟持された穀稈を脱穀する脱穀機とを備えた自脱型コンバインであり、
前記逆転用出力軸と同軸上に配置され、該逆転用出力軸に連動する駆動スプロケットにより前記フィードチェンが駆動されてなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記走行機体が停止状態にあることを条件として、前記逆転クラッチを接続して前記逆転用出力軸の回転を前記前処理部へ伝達することを可能としてなる、
請求項1記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈取りつつ脱穀するコンバインに係り、詳しくはその前処理部へ動力を伝達する伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、走行機体に、横筒(スリーブ軸)を中心として前処理部を昇降自在に支持しており、上記横筒内に配置された伝動軸を介して走行機体からの動力が前処理部へ伝達されている。従来、上記伝動軸の一端を前記横筒の外方に突出し、該突出部にスパナ,ラチェットレンジ等の工具を係合させて、前記伝動軸を逆転して、穀稈搬送装置に生じた藁詰まりを除去するものが案出されている(特許文献1)。
【0003】
また、穀稈搬送装置を含む前処理部への伝動系に油圧式無段変速装置(HST)を介在させて、走行速度に対応してHSTを変速し、前処理部の動作速度を走行速度にシンクロさせるコンバインも案出されている。該コンバインにあって、上記HSTに逆転迂回経路を備え、走行速度が0か又は限りなく0に近い所定低速以下及び後進状態になると、上記HSTが、油圧モータを逆転させる油圧ポンプからの逆転圧油を常時油圧ポンプ側に戻すように構成したものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−39092号公報
【特許文献2】特許第4301743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1のものは、穀稈搬送装置に藁詰りが発生して、前処理部を逆転しようとする際、オペレータは、伝動軸の突出部に工具を差込み、該工具により手動で伝動軸を逆回転して、穀稈搬送装置を逆転する必要があり、オペレータの負担が大きく、操作が面倒であった。
【0006】
前記特許文献2のものは、前処理部伝動系にHSTを介在し、走行速度に連動する多種の前処理部の駆動速度を得ることができ、かつ手扱ぎ作業の場合、フィードチェーンの駆動速度を上昇させて手扱ぎ作業の効率を向上させることがきるが、穀稈搬送装置が逆回転することは規制され、穀稈搬送装置を逆転して藁詰りを除去することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、ミッションケースに逆転用出力軸を設け、駆動源の動力を該逆転用出力軸を介して前処理部に伝達し、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行機体(3)の前方に前処理部()を昇降自在に支持し、前記走行機体(3)に駆動源(E)及びミッションケース(12)を配置し、前記駆動源(E)の動力を、前記ミッションケース(12)に設けた油圧式無段変速装置(13)を介して前記前処理部(5)に伝達してなるコンバイン(1)において、
前記ミッションケース(12)は、減速装置(25)を収納すると共に、前記油圧式無段変速装置(13)を経由した回転が伝達される正転用出力軸(21)と、前記油圧式無段変速装置(13)及び前記減速装置(25)を経由した回転が伝達される逆転用出力軸(23)とを回転自在に支持し、
前記正転用出力軸(21)の回転を正転クラッチ(51)を介して前記前処理部(5)に伝達し、
前記逆転用出力軸(23)の回転を逆転クラッチ(53)を介して前記前処理部(5)に伝達する、
ことを特徴とするコンバインにある。
【0009】
例えば図2図4を参照して、前記コンバイン(1)は、前記前処理部(5)からの穀稈を挟持して搬送するフィードチェン(62)と、該フィードチェンで挟持された穀稈を脱穀する脱穀機(6)とを備えた自脱型コンバインであり、
前記逆転用出力軸(23)と同軸上に配置され、該逆転用出力軸に連動する駆動スプロケット(61)により前記フィードチェン(62)が駆動されてなる。
【0010】
例えば図7を参照して、前記走行機体(3)が停止状態にあることを条件として、前記逆転クラッチ(53)を接続して前記逆転用出力軸(23)の回転を前記前処理部(5)へ伝達することを可能としてなる。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、通常のコンバイン作業時にあっては、正転(刈取)クラッチの接続により、駆動源の回転が油圧式無段変速装置及び正転用出力軸を介して前処理部に伝達され、前処理部に穀稈詰りが発生した場合、逆転クラッチを接続して、駆動源の回転が油圧式無段変速装置、減速装置及び逆転用出力軸を介して前処理部に低速・逆回転として伝達するので、前処理部の穀稈詰りの取除き作業等を容易にかつ高い作業性で処理することができる。
【0013】
また、上記前処理部への低速・逆回転の伝達は、油圧式無段変速装置からの回転を減速装置及び逆転用出力軸を介して伝達されるので、油圧式無段変速装置は、正転伝達時と同方向の出力回転でよく、油圧式無段変速装置は、逆転する必要がなく、油圧式無段変速装置の制御装置を含めた機構が簡単となり、油圧式無段変速装置の停止制御も容易となる。
【0014】
また、自脱型コンバインのフィードチェンは、ミッションケースから延びる逆転用出力軸と同軸上でかつ該逆転用出力軸に連動する駆動スプロケットで駆動されるので、減速装置により低速・逆回転された逆転用出力軸の回転がそのままフィードチェンに伝達され、伝動機構の構成を簡素化することができる。
【0015】
請求項に係る本発明によると、走行機体が停止されている状態で、始めて逆転クラッチが接続可能となって前処理部を逆転できるので、コンバインが前進して通常のコンバイン作業中に誤操作等により前処理部が逆転する不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コンバインを示す左側面図。
図2】コンバインの走行機体前部を示す左側面図。
図3】コンバインの走行機体前部を示す右側図。
図4】コンバインの伝動系を示す伝動経路図。
図5】伝動系の制御ブロック図。
図6】走行速度とHST速度の関係を示す速度線図。
図7】逆転クラッチ制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態である自脱型コンバインについて、図面に沿って説明する。コンバイン1は、図1に示すように、クローラ走行装置2により走行可能な走行機体3を有しており、該走行機体3の前部には前処理部5が昇降自在に支持されている。走行機体3には、その左側に脱穀機6及び排藁処理装置7が配置され、その右側に前方から運転席8,エンジン及びグレンタンク9が配置されている。前処理部5は、走行機体3の前部に一体に立設された支柱3aにスリーブ軸(横筒)10を枢支軸として回動自在に支持され、圃場の立毛穀稈を刈取って、脱穀機6に向けて搬送する。
【0018】
前記走行機体3における脱穀機6の前方でかつ支柱3aの後方にはミッションケース12が固設されている。図4を参照しつつ図2及び図3に沿って説明すると、ミッションケース12の左側にはポンプ13a及びモータ13bからなる搬送用の油圧式無段変速装置(搬送HST)13が一体に設けられており、また該搬送HST13の上部にポンプ13aの斜板制御用のモータ(HST制御モータ)15が一体に設けられている。ミッションケース12には、エンジンEからの動力が伝達される駆動軸16が貫通して回転自在に支持されていると共に、正転用出力軸21及び逆転用出力軸23が回転自在に支持されている。また、該ミッションケース12内には駆動軸16の回転を搬送用HST13の入力軸であるポンプ軸17に伝達するギヤ列19、及び搬送用HST13の出力軸であるモータ軸20の回転を正転用出力軸21に伝達するギヤ列22、更に逆転用出力軸23に伝達する減速ギヤ列25が収納されている。減速ギヤ列(減速装置)25は、ミッションケース12に支持されているカウンタ軸24に回転自在に支持されたスリーブ軸25aを有しており、該スリーブ軸25aに大歯車25b及び小スプロケット25cが固定されている。カウンタ軸24には、ギヤ列22の歯車22a,22bが固定され、また正転用出力軸21に大歯車22c、小歯車22dが固定され、逆転用出力軸23にスプロケット25dが固定されている。従って、搬送用HST13の出力軸20の回転は、ギヤ列22を介して正転方向の回転として正転用出力軸21に伝達され、更に減速ギヤ列25を介して逆転方向の減速(低速)回転として逆転用出力軸23に伝達される。
【0019】
前記駆動軸16には、ミッションケース12の左外側において、選別用プーリ24が一体に固定されている。脱穀機6は、図4に示すように、選別部5a及び脱穀部6bを有しており、かつ唐蓑ファン26を一体に固定した駆動軸27を有する。該駆動軸27に一体に固定されたプーリ29と上記選別用プーリ24との間にベルト30が巻掛けられており、該ベルト30にはテンションプーリ31が転接している。上記駆動軸27の上記プーリ29の更に左外側にはプーリ32が固定されており、また上記駆動軸27の唐蓑ファン26の右側(機体内側)にはプーリ33が固定されている。上記プーリ32からは、2番螺旋等の選別部6aに向けてベルト35が延びており、プーリ33からは、扱胴用のプーリ36に渡ってベルト37が張設されて、脱穀部6bを駆動し得る。
【0020】
エンジンEの出力軸には、走行用プーリ39及び作業機用プーリ40が固定されており、走行用プーリ39は、走行HST等の変速機を介して走行装置(走行部)2に向けて動力を伝達する。作業機用プーリ40は、前記駆動軸16のミッションケース12の左外側(機体内側)突出部に固定されているプーリ41との間にベルト42が巻掛けられており、該ベルト42には作業機(脱穀)クラッチ43を構成するテンションクラッチプーリが張緩自在に転接している。
【0021】
前記正転用出力軸21には、ミッションケース12の右外側(機体内側)に突出した突出部に正転プーリ45が固定されている。前記逆転用出力軸23は、上記正転プーリ45と同じ側であるミッションケース12の右外側(機体内側)に突出して、該突出部に逆転プーリ46が固定されている。また、前記前処理部5を回転自在に支持するスリーブ軸(横筒)10内には、走行機体3からの動力を前処理部5に伝達する伝動軸44が嵌挿されており、該伝動軸44のスリーブ軸10から右側(機体内側)に突出した突出部には正転用プーリ48及び逆転用プーリ49が固定されている。前記正転プーリ45と正転用プーリ48とに渡ってベルト50が巻掛けられており、該ベルト50にテンションクラッチプーリからなる正転クラッチ51が張緩自在に転接している。前記逆転プーリ46と逆転用プーリ49とに渡ってベルト52が巻掛けられており、該ベルト52にテンションクラッチプーリからなる逆転クラッチ53が張緩自在に転接している。
【0022】
上記正転クラッチ51を構成するテンションプーリは、正転用出力軸21に回転自在に支持されたアーム51aの先端に支持されており、該アーム51aは、正転クラッチ制御モータ(アクチュエータ)55(図5参照)にワイヤを介して連結されている。上記逆転クラッチ53を構成するテンションプーリは、逆転用出力軸23に回転自在に支持されたアーム53aの先端に支持されており、該アーム53aは、逆転クラッチ制御モータ(アクチュエータ)56(図5参照)にワイヤを介して連結している。なお、上記正転クラッチ51は、通常のコンバイン作業時に前処理部5への動力を断接する刈取クラッチを構成し、従って上記正転クラッチ用制御モータ55は、刈取クラッチ制御用モータを構成する。
【0023】
前記伝動軸44は、スリーブ軸10に直交する方向で一体に固定されたパイプ状の前処理部フレーム57内に挿通されている連動軸59にベベルギヤ60を介して連動しており、該連動軸59の回転は、前処理部5における穀稈搬送装置、刈刃等の各作動部に伝達される(刈取駆動部)。前記逆転用出力軸23は、ミッションケース12の左外側にも突出しており、該突出部は、連結軸を介して逆転用出力軸23と同軸上に配置された駆動スプロケット61に連結している。該駆動スプロケット61は、脱穀機6のフィードチェン62に噛合して、該フィードチェン62を駆動する。
【0024】
運転席には、主変速レバー等の各種操作レバー及び逆転スイッチ等の各種操作スイッチが配置されている。制御部65には、主変速レバーポテンショメータ66、車速センサである走行変速機(T/M)回転センサ67、刈取クラッチ、作業機クラッチを入切操作するパワークラッチスイッチ69、刈取クラッチの作動位置を検出する刈取クラッチ検出手段70、作業機クラッチの作動位置を検出する作業機クラッチ検出手段71、手扱スイッチ72の各信号が入力され、更に加えて、逆転スイッチ(逆転部スイッチ、刈取部スイッチ)73及び逆転クラッチ53の作動位置(ON,OFF位置)を検出する逆転クラッチ検出手段75からの信号が入力される。また、制御部65から、搬送HST制御モータ15、刈取クラッチ制御モータ55、作業機クラッチ制御モータ76、及び逆転クラッチ制御モータ56等の各種アクチュエータに信号を出力する。
【0025】
ついで、上述したコンバイン1の作動について説明する。通常のコンバイン作業にあっては、エンジンEの動力は、走行HST等の変速機(トランスミッションT/M)を介して走行装置2に伝達され、コンバイン1は、所定車速で走行する。一方、エンジンEの動力は、作業機クラッチ43の接続により駆動軸16に伝達され、唐蓑ファン26を回転すると共に、選別部6a、脱穀部6bに伝達され、脱穀機6が駆動される。
【0026】
また、上記駆動軸16の回転は、ギヤ列19を介して搬送HST13に入力される。搬送HST13は、図6に示すように、走行用変速機による走行速度に連動して操作されて所定速度を出力し、更にギヤ列22を介して正転用出力軸21に所定回転数を出力する。該コンバイン作業中にあっては、パワークラッチスイッチ69のONにより刈取クラッチ制御モータ55が正転(刈取)クラッチ51を接続した状態にあり、上記正転用出力軸21の回転は、ベルト50を介して伝動軸44に正回転として伝達され、前処理部5の穀稈搬送装置、刈刃等の各作動部が走行速度に連動した正転方向の回転にて駆動される。なお、上記正転クラッチ51による正転駆動状態にあっては、逆転クラッチ53は切断されている。
【0027】
これにより、コンバイン1は、所定速度で前進しつつ、脱穀機6が駆動されると共に、搬送HST13により上記走行速度に連動して変速され、走行速度に対応した速度で前処理部5が駆動され、圃場の立毛穀稈を刈取り、かつ該刈取られた穀稈を、穀稈搬送装置により集めてフィードチェン62に向けて搬送する。該穀稈は、フィードチェン62に挟やくされて脱穀機6で脱穀、選別され、排藁は、排藁処理装置7により走行機体3の後方に排出され、選別された穀粒は、グレンタンク9に貯留される。
【0028】
オペレータが手扱きスイッチ72をONして手扱き作業を選択すると、搬送HST13は、所定速度に設定される。この際、走行装置2への動力伝達は断たれて、コンバイン1は停止状態にある。上記搬送HST13の出力軸20の所定回転は、ギヤ列22及び減速ギヤ列25を介して逆転用出力軸23に減速、逆回転として伝達される。なお、逆転クラッチ53は切り状態にあり、前処理部5は停止状態にある。上記逆転用出力軸23の回転は、駆動スプロケット61に伝達され、フィードチェン62は駆動される。また、エンジンEの回転は、作業機クラッチ43の接続により、脱穀機6は駆動されており、オペレータは、フィードチェン62の入口部分に手刈りした穀稈を供給して、フィードチェン62に挟んで搬送して、脱穀機6により脱穀、選別する。
【0029】
ついで、図7に沿って、逆転クラッチ制御について説明する。前処理部5の穀稈搬送装置に穀稈詰りが発生し、オペレータがそれを取除く際、逆転スイッチ72がONされる(S1;ON)。この状態では、走行機体は停止しており(S2;YES)、かつ作業機クラッチ検出手段71により作業機クラッチ43が入っていることが検出される(S3;入り)。また、刈取(正転)クラッチ検出手段70により刈取(正転)クラッチ51が切り状態にあることが検出される(S4;切り)。この状態で、逆転クラッチ制御モータ(アクチュエータ)56が作動され、ワイヤを介してアーム53aを回動して、テンションクラッチ(逆転クラッチ)53がベルト52を緊張してクラッチ入りとする(S5)。なお、ステップS2における機体停止は、主変速レバーがポテンショメータ66により中立位置があることを検出するか、又は走行T/M回転センサ67が0を検出することにより機体停止と判断される。
【0030】
これにより、エンジンEからの駆動軸16の回転は、ギヤ列19を介して搬送HST13に伝達され、搬送HST13は、所定速度で出力する。出力軸20の回転は、ギヤ列22及び減速ギヤ列25を介して逆転用出力軸23に伝達され、更に入り状態の逆転クラッチ53を介して前処理部伝動軸44に低速逆回転が伝達される。該伝動軸44の回転は、前処理部5の穀稈搬送装置に伝達され、該穀稈搬送装置を低速逆回転して、詰り穀稈を搬送装置から容易に取除くことができる。なお、上記逆転クラッチ53による逆転駆動状態にあっては、正転(刈取)クラッチ51は切断されている。
【0031】
逆転スイッチ73をOFF操作すると(S1;OFF)、逆転クラッチ53が入りの場合(S6;入り)、逆転クラッチ制御モータ56により逆転クラッチ53が切り操作される(S7)。上記逆転スイッチがON状態にあって(S1;ON)、機体が走行している場合(S2;NO)又は作業機クラッチ43が切り位置にある場合(S3;切り)、逆転クラッチ制御が作動されない旨を報知する(S8)。また、刈取(正転)クラッチ51が入り状態にある場合(S4;入り)、刈取りクラッチ制御モータ(アクチュエータ)55が反対方向に回転して、アーム51aをテンションローラ51が弛緩する方向に回動する。これにより、刈取(正転)クラッチ51は切断される(S9)。この状態で、再度S1;ON→S2;YES→S3;入り→S4;切りが循環されて、逆転クラッチ入り作動し(S5)、前処理部5の穀稈搬送装置が低速逆転する。
【0032】
なお、上述した実施の形態は、自脱型のコンバインについて説明したが、汎用型コンバインにも同様に適用可能である。また、正転クラッチ51及び逆転クラッチ53は、テンションクラッチに限らず、摩擦板による摩擦クラッチでもよく、またワンウェイクラッチでもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 (自脱型)コンバイン
2 (クローラ)走行装置
3 走行機体
5 前処理部
6 脱穀機
12 ミッションケース
13 搬送油圧式無段変速装置(HST)
21 正転用出力軸
23 逆転用出力軸
25 減速装置(ギヤ列)
51 正転(刈取)クラッチ
53 逆転クラッチ
61 駆動スプロケット
62 フィードチェン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7