(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記緊急通知制御部の前記運転操作監視機能は、前記自車両のステアリングホイール操作、アクセル操作、ギアチェンジ操作、およびブレーキ操作の少なくとも1つを監視する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用緊急状態通知装置。
前記緊急通知制御部は、前記自車両のドアの開閉操作を検知するドア開閉監視機能を有し、前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を、前記ドア開閉監視機能により前記自車両のドア開の操作が検知されるまで継続する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用緊急状態通知装置。
前記緊急通知制御部の前記検出機能は、前記自車両に搭載した衝撃センサまたは加速度センサの出力信号、およびエアバッグの起動と関連する信号の少なくとも1つに基づいて、異常な状況を検知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用緊急状態通知装置。
前記緊急通知制御部は、前記検出機能が異常な状況を検知した後で、一定時間以内にドア開の操作または何らかのスイッチ操作を検知した場合には、前記運転操作監視機能が前記運転操作を検知しない状態であっても前記緊急通知動作を中止し且つ前記サポート動作を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用緊急状態通知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自車両による交通事故が発生した場合に、例えば自車両の運転手が意識不明であれば、他者による救助が必要になるので、自動的に緊急通報を行うことは非常に重要である。しかし、自車両の運転手に意識があり運転手が自分で動ける状況であれば、他者による救助が不要な場合もあるし、救助が必要な場合であっても、自車両の運転手自身の連絡により救助を要請した方が、詳しい状況の連絡が可能であるため、より適切な対応ができると考えられる。
【0008】
また、救助が不要であったり、運転手自身が連絡できる状況であるにもかかわらず、自動的に緊急通報を行った場合には、通報の連絡先が不要な行動を取らざるを得ず、連絡先にとって迷惑な状況が発生する。また、自動的に発信された緊急通報と、運転手自身の連絡による通報とが重複して発生し、連絡先で混乱が生じる可能性もある。
【0009】
例えば、特許文献1に示された車両用緊急通報装置を利用する場合には、自車両の運転手に意識がある状況であれば、通報を予告する警告に対して、運転手が警告中止スイッチを操作することで、自動通報動作を中止することができる。また車両のドアを開く操作を行うことにより自動通報動作を中止することもできる。
【0010】
しかしながら、自車両の運転手に意識があったとしても、事故の影響により精神的なショックを受けている可能性もあるため、限られた時間内に特別な警告中止スイッチを探して操作することが容易でない場合も考えられる。また、自車両の運転手が怪我を負っているような場合は、重量の大きいドアを開く操作が困難である可能性もある。
【0011】
一方、特許文献1の車両用緊急通報装置においては、緊急通報の連絡先として、公共センタや民間センタを想定している。同様に、特許文献2の技術では連絡先として、119番や、自宅の電話機、家族の携帯電話などを想定している。
【0012】
しかし、連絡先の所在地が事故発生地点から離れた場所にある場合には、緊急通報を実行してから救助者が事故発生地点に駆けつけるまでに比較的長い時間がかかる可能性もある。そして、救助の遅れにより深刻な状況に陥る可能性が考えられる。
【0013】
また、例えば救助のために救急車等が事故現場に到着した際に、事故車両の運転手が意識不明の状況であると、運転手の本人確認の情報や家族の連絡先等の情報を運転手本人から聞き出すことができないため、運転手の免許証やメモ等を探し出す必要があり、手間と時間がかかるのは避けられない。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、事故発生時の状況に応じてより適切な対応をすることが可能な車両用緊急状態通知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用緊急状態通知装置は、下記(1)〜(10)を特徴としている。
【0016】
(1) 車両上で自車両の事故発生と関連のある異常な状況を検知したときに、所定の緊急動作を実行する車両用緊急状態通知装置であって、
異常な状況を検出する検出機能と、前記自車両の運転操作と関連のある少なくとも1つの車上運転機器に対する操作の有無を監視する運転操作監視機能と、
前記自車両の運転手に意識がない場合を想定した所定の緊急通知動作を実行する緊急通知機能と、
前記自車両の運転手に意識がある場合を想定した所定のサポート動作を実行するサポート機能と、を有し、前記検出機能が異常な状況を検出した後に、前記運転操作監視機能が前記運転操作ありを検知した場合は前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を中止し
且つ前記サポート機能による前記サポート動作を実行し、前記運転操作監視機能が前記運転操作が一定時間ない状態を検知した場合は前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を実行する緊急通知制御部、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
この車両用緊急状態通知装置によれば、事故発生時に、自車両の運転手に意識がある場合は、特別なスイッチを探して操作しなくても、運転手が運転と関連のある通常の操作を行うことにより、緊急通知動作を中止することができる。また、自車両の運転手が意識不明の場合や、怪我等により身動きができず、他者による救助を必要とする場合には、所定の緊急通知動作を実行することができる。したがって、不要な緊急通知動作の発生を回避することができ、事故発生時の状況に応じてより適切な対応が可能である。
【0018】
(2) 前記(1)において、前記緊急通知制御部の前記運転操作監視機能は、前記自車両のステアリングホイール操作、アクセル操作、ギアチェンジ操作、およびブレーキ操作の少なくとも1つを監視する、こと。
【0019】
この車両用緊急状態通知装置によれば、事故車両の運転手に意識がある場合には、運転手が通常の運転操作の際に使用する箇所を操作するだけで、緊急通知動作を中止することができる。したがって、通常は使用しない特別なスイッチを運転手が探し出して操作する必要がなく、事故の影響で運転手が精神的なショックを受けている場合であっても、適切な対応が容易にできる。また、重量の大きいドアの開閉操作を行う必要がないので、怪我を負っている場合でも操作できる。
【0020】
(3) 前記(1)または(2)において、前記緊急通知制御部の前記緊急通知機能は、前記緊急通知動作として、前記自車両のライト点滅、およびクラクション鳴動の少なくとも一方の制御を実行する、こと。
【0021】
この車両用緊急状態通知装置によれば、事故車両の近傍に存在する他者や他の車両の運転者に対して、救助が必要な状況が生じていることを知らせることができる。したがって、救急車等の特別な救助者が遠方から駆けつけるよりも短い時間で、事故車両の近傍を通過する人が救助を開始できる可能性が高い。
【0022】
(4) 前記(3)において、前記緊急通知制御部は、前記自車両のドアの開閉操作を検知するドア開閉監視機能を有し、前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を、前記ドア開閉監視機能により前記自車両のドア開の操作が検知されるまで継続する、こと。
【0023】
この車両用緊急状態通知装置によれば、救助のために他者が駆けつけて事故車両のドアを開くまで緊急通知動作が継続される。したがって、救助が開始されるまで確実に緊急通知動作を実行できる。
【0024】
(5) 前記(1)において、緊急時の救助に役立つ運転者の緊急連絡先および個人情報の少なくとも一方の情報を保持する緊急情報保持部と、
前記情報の内容を表示する表示ユニットと、
を更に備え、
前記緊急通知制御部は、前記自車両のドアの開閉操作を検知するドア開閉監視機能を有し、前記緊急通知機能による前記緊急通知動作の実行の後で、前記ドア開閉監視機能が前記自車両のドア開の操作を検知した場合は、自動的に前記緊急情報保持部から情報を読み出して前記表示ユニットに前記情報の内容を表示する、こと。
【0025】
この車両用緊急状態通知装置によれば、緊急通知動作により駆けつけた救助者が救助を開始する際に、救助の役に立つ情報が自動的に表示される。したがって、救助者は表示された情報を利用して適切な対応を効率よく取ることができ、作業時間の短縮や効率化が可能になる。
【0026】
(6) 前記(5)において、前記表示ユニットは、前記自車両の走行状況をグラフィック表示するグラフィックメータにより構成され、
前記緊急通知制御部は、前記検出機能により異常な状況が検出された場合には、前記表示ユニットによる前記自車両の走行状況の表示を中止させ、前記情報を含む緊急通知を表示させる、こと。
【0027】
この車両用緊急状態通知装置によれば、緊急時の救助に役立つ運転者の緊急連絡先や個人情報を含む情報を、グラフィックメータに表示させることができる。このとき、グラフィックメータは自車両の走行状況の表示を中止しているので、必要な情報を円滑に表示させることができる。
【0028】
(7) 前記(6)において、前記表示ユニットは、前記自車両の電源が切れた場合に前記自車両に搭載されているバッテリから電力が供給される、こと。
【0029】
この車両用緊急状態通知装置によれば、事故によりイグニッションがOFFになった場合においても、バッテリから表示ユニットに電力が供給されるので、緊急時に必要な情報を確実に表示させることができる。
【0030】
(8) 前記(1)において、前記緊急通知制御部の前記検出機能は、前記自車両に搭載した衝撃センサまたは加速度センサの出力信号、およびエアバッグの起動と関連する信号の少なくとも1つに基づいて、異常な状況を検知する、こと。
【0031】
この車両用緊急状態通知装置によれば、自車両の交通事故等が発生したときに、異常な状況を自動的に検知して緊急通知動作を行うことができる。
【0032】
(9) 前記(1)において、前記自車両に搭載した無線通信部、を更に備え、
前記緊急通知制御部は、前記緊急通知動作を行う際に、前記無線通信部を利用して、事前に登録した連絡先への連絡を実行する、こと。
【0033】
この車両用緊急状態通知装置によれば、無線通信を利用して所定の連絡先へ連絡できるので、事故車両の近傍に他者や通過する他の車両が存在しないような状況であっても、確実に連絡できる。
【0034】
(10) 前記(1)において、前記緊急通知制御部は、前記検出機能が異常な状況を検知した後で、一定時間以内にドア開の操作または何らかのスイッチ操作を検知した場合には、前記運転操作監視機能が前記運転操作を検知しない状態であっても前記緊急通知動作を中止
し且つ前記サポート動作を実行する、こと。
【0035】
この車両用緊急状態通知装置によれば、事故の発生後に事故車両の運転手が運転操作を行わなくても、事故車両からの脱出(ドア開操作)や、何らかのスイッチ操作により緊急通知動作が中止される。つまり、事故車両の運転手に意識があり、他者の救助を必要としない程度に被害も少ないような状況であれば、運転手の行動を検知して不要な緊急通知動作を中止する。
【発明の効果】
【0036】
本発明の車両用緊急状態通知装置によれば、事故発生時の状況に応じてより適切な対応をすることが可能になる。すなわち、事故車両の運転手に意識がある場合には、運転手が通常の運転操作の際に使用する箇所を操作するだけで、緊急通知動作を中止することができる。したがって、通常は使用しない特別なスイッチを運転手が探し出して操作する必要がなく、事故の影響で運転手が精神的なショックを受けている場合であっても、適切な対応が容易にできる。また、重量の大きいドアの開閉操作を行う必要がないので、怪我を負っている場合でも操作できる。
【0037】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の車両用緊急状態通知装置に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0040】
<車両用緊急状態通知装置100の概要>
本発明の実施形態における車両用緊急状態通知装置100の構成例を
図1に示す。
図1に示した車両用緊急状態通知装置100は、自家用車、業務用車両など様々な車両に搭載した状態で使用される。
【0041】
車両用緊急状態通知装置100を搭載した車両(自車両)に交通事故が発生した場合に、自車両の運転手等を他人が救助する必要のある状況では、救助を求めるための緊急通報を行わなければならない。しかし、自車両の運転手が意識不明であったり、体を動かせないほどに負傷している状況では、運転手本人が緊急通報の発信操作を行うことができない。したがって、交通事故が発生した場合に、自動的に緊急通報を実行する必要がある。
【0042】
しかし、実際には救助が必要でないにもかかわらず自動的に緊急通報が実行されてしまうと、緊急通報を受け取った救助者に余計な負担がかかり迷惑になる。また、運転手本人の意識がはっきりしており、緊急通報の発信操作を運転手が自分でできるような状況においては、運転手の手動操作により緊急通報を実施した方が、詳しい状況を連絡することも可能であり、自動通報よりも適切、あるいは効率的な救助が可能になる。
【0043】
また、自動通報と運転手の手動操作による緊急通報とが重複して実行された場合には、緊急通報を受け取った救助者側で作業が重複して行われたり混乱が生じる場合がある。したがって、このような重複を避ける必要がある。
【0044】
また、例えば何らかの管理センター、警察署、消防署などを受信者として緊急通報を実施する場合には、救助者の出発地点と事故発生地点との距離が離れている場合があり、救助者が事故発生地点に到着するまでに時間がかかる可能性がある。そして、救助開始の遅延によって負傷者の治療が間に合わない場合も考えられる。
【0045】
図1に示した車両用緊急状態通知装置100においては、上述の様々な状況を考慮して、交通事故の発生時であって、本当に必要な場合にのみ必要な方法で自動的に緊急通報を発信できるように、様々な機能を搭載している。
【0046】
<車両用緊急状態通知装置100の構成>
図1に示すように、この車両用緊急状態通知装置100は、緊急通知制御部10、無線通信インタフェース21、表示ユニット22、および不揮発性メモリ23を備えている。尚、無線通信インタフェース21については省略することも可能である。
【0047】
緊急通知制御部10は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、車両用緊急状態通知装置100の全体を制御するための様々な機能を備えている。勿論、マイクロコンピュータ以外の一般的な論理回路を用いて緊急通知制御部10を構成することもできる。
【0048】
緊急通知制御部10は、
図1に示すように、事故発生検出機能11、運転操作監視機能12、ドア開閉監視機能13、スイッチ操作監視機能14、緊急度識別機能15、無線緊急通知機能16、ローカル緊急通知機能17、および緊急時表示制御機能18を含んでいる。これらの各機能は、事前に組み込まれたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより実現できる。
【0049】
無線通信インタフェース21は、緊急時に、車両上と車両外の特定の受信者、あるいは任意の受信者との間で通信するための無線通信回線を確保するための機能を備えている。具体的には、無線通信インタフェース21は携帯電話の無線通信網、あるいは専用の無線通信網を利用して通信回線を確保するように構成される。
【0050】
表示ユニット22は、緊急時に特定のメッセージなどの様々な情報を可視情報として表示可能なディスプレイを備えている。尚、車両用緊急状態通知装置100に専用の表示ユニット22を接続してもよいが、例えばカーナビゲーションシステムのようにディスプレイを備えた装置が車両に装備されている場合には、他の装置の該当するディスプレイを共通の表示ユニット22として利用することもできる。なお、後述するように、表示ユニット22は、速度メータやタコメータなどのメータ類をグラフィックで表示するグラフィックメータにより構成されていてもよい。
【0051】
不揮発性メモリ23は、緊急時に利用される様々な情報を予め保持している。具体的には、事故発生時に運転者本人に操作を促すための事故対応メッセージや、緊急連絡先情報や、免許証情報や、救助用個人情報(例えば血液型)等が不揮発性メモリ23に保持されている。
【0052】
図1に示すように、様々な信号SG11、SG12、SG13、SG21、SG22、SG23、SG24、SG31、およびSG41が車両側から緊急通知制御部10に入力される。これらの各信号は、実際には例えばCAN (Controller Area Network)のような車両上の通信ネットワークを経由して、図示しない他の電子制御装置(ECU)から入力される場合もあるし、専用の信号線を経由してセンサやスイッチから直接入力される場合もある。尚、これらの信号については、一部分を削減したり、更に別の信号を追加することも考えられる。
【0053】
衝撃センサの検知信号SG11は、車両に搭載された図示しない衝撃センサから出力される信号である。つまり、交通事故が発生した場合のように車両に大きな衝撃が加わると、これを衝撃センサが検知し、衝撃センサの検知信号SG11の信号レベルが通常レベル(例えば低レベル)からアクティブレベル(例えば高レベル)に切り替わる。尚、衝撃センサの代わりに加速度センサを利用することも考えられる。
【0054】
エアバッグ起動信号SG12は、車両に搭載されている図示しないエアバッグを起動する装置が、事故、すなわち衝撃を検知してエアバッグを起動(展開)するための信号を出力した時に通常レベル(例えば低レベル)からアクティブレベル(例えば高レベル)に切り替わる。
【0055】
車間距離異常検知信号SG13は、自車両に搭載され、自車両と前方車両との車間距離を計測する装置(図示せず)の計測した距離が、交通事故の発生に相当する所定値以下になった時に、通常レベル(例えば低レベル)からアクティブレベル(例えば高レベル)に切り替わる。
【0056】
緊急通知制御部10内の事故発生検出機能11は、衝撃センサの検知信号SG11、エアバッグ起動信号SG12、および車間距離異常検知信号SG13の少なくとも1つがアクティブレベルに切り替わると事故検出を表す信号を緊急度識別機能15に送る。あるいは、信頼性を高めるために、信号SG11、SG12、およびSG13のうち2つ又は3つがアクティブレベルに切り替わると事故検出を表す信号を緊急度識別機能15に送るように、事故発生検出機能11を構成することも考えられる。
【0057】
ハンドル操作検知信号SG21は、ユーザ(運転手)による車両上のステアリングホイール(ハンドル)の回動操作に伴って図示しない操舵センサから出力される信号であり、ハンドル操作量(例えば舵角変化)を表す。
【0058】
アクセル操作検知信号SG22は、車両のアクセルペダルの踏み込み量を検知する図示しないセンサから出力される信号であり、アクセルペダルの踏み込み量を表す。
【0059】
変速機操作検知信号SG23は、車両の変速機(トランスミッション)の変速状態を操作するための操作レバー(シフトレバー)の位置を検出する図示しないセンサから出力される信号であり、変速機のシフト位置を表す。
【0060】
ブレーキ操作検知信号SG24は、車両のブレーキペダルの踏み込み量を検知する図示しないセンサから出力される信号であり、ブレーキペダルの踏み込み量を表す。尚、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキスイッチから出力される信号であってもよい。
【0061】
緊急通知制御部10の運転操作監視機能12は、事故が発生した時に、入力される4つの信号SG21、SG22、SG23、およびSG24の状態を監視して、ユーザ(運転手)による運転操作の有無を識別し、運転操作の有無を表す信号を緊急度識別機能15に送る。
【0062】
ドア開閉状態信号SG31は、車両の運転席側方にあるドアの開閉状態を検知する図示しないスイッチから出力される信号であり、ドアの開閉状態に応じて低レベルまたは高レベルに変化する二値信号である。
【0063】
緊急通知制御部10のドア開閉監視機能13は、事故が発生した時に、入力されるドア開閉状態信号SG31の状態を監視して、開閉状態の変化を表す信号を緊急度識別機能15に送る。
【0064】
スイッチ操作検知信号SG41は、ユーザ(運転手)が操作可能な各種スイッチに対する操作の有無を表す信号である。代表例としては、カーナビゲーションシステムを操作するための図示しないタッチパネルに対する入力操作に応答して、あるいは何らかのユーザが利用可能なアプリケーションプログラムに対する入力操作に応答して、スイッチ操作検知信号SG41が出力される。
【0065】
緊急通知制御部10のスイッチ操作監視機能14は、事故が発生した時に、スイッチ操作検知信号SG41の状態を監視して、ユーザの入力操作有無を表す信号を緊急度識別機能15に送る。
【0066】
緊急通知制御部10の緊急度識別機能15は、事故発生検出機能11から出力される信号に基づいて事故発生を検知した時に、運転操作監視機能12の出力する信号、ドア開閉監視機能13の出力する信号、およびスイッチ操作監視機能14の出力する信号に基づいて緊急度の高低を自動的に識別し、緊急度に応じた処理を実行する。具体的な処理の内容は
図2に示す通りであり、これについては後で説明する。
【0067】
無線緊急通知機能16は、事故発生検出機能11により事故発生が検知されたときに、緊急度識別機能15の識別結果に基づき、無線通信による緊急通知を実行する。具体的には、事前に登録された緊急連絡先の電話機に対して電話をかけて音声通話が可能な状態にする。または、緊急連絡先のメールアドレスに対して電子メールで事前に登録したメッセージの内容を送信する。この場合の緊急連絡先の代表例としては、特別な管理センター、警察署、消防署、自宅、家族の携帯電話などが想定される。
【0068】
ローカル緊急通知機能17は、事故発生検出機能11により事故発生が検知されたときに、無線通信以外の方法を利用して、救助が可能な近くの人に救助を求めるために緊急状態のアピール動作を実行する。具体的には、ローカル緊急通知機能17が出力するライト点滅制御信号SG61により、自車両に搭載されているヘッドライトやハザードランプを用いて緊急状態を表す点滅動作を実行する。同時に、ホーン鳴動制御信号SG62により、自車両に搭載されている自動車用ホーン、すなわちクラクションを鳴動して緊急状態を音で周囲に知らせる動作を実行する。
【0069】
緊急時表示制御機能18は、事故発生検出機能11により事故発生が検知されたときに、表示制御信号SG7により表示ユニット22の画面上に必要な情報を文字などを用いて表示する。実際には、緊急時表示制御機能18が必要な情報を不揮発性メモリ23から読み出して表示ユニット22に送る。また、緊急度識別機能15が識別した状態に応じて、緊急時表示制御機能18は適切な情報を選択的に表示ユニット22に表示する。
【0070】
<車両用緊急状態通知装置100の動作>
本発明の実施形態における車両用緊急状態通知装置100の動作例を
図2に示す。この動作は、緊急通知制御部10の制御により実現する。
図2に示す車両用緊急状態通知装置100の動作について以下に説明する。
【0071】
自車両に事故が発生していないときには、緊急通知制御部10により通常運転時の処理が実行される(S11)。すなわち、特別な緊急通知機能は作動しないので、例えば表示ユニット22の画面上には必要に応じて様々な情報が表示される。また、ライトの点滅やホーンの鳴動については、運転者により所定の操作が行われたときのみ作動する。
【0072】
一方、自車両による交通事故が発生すると、自車両に大きな衝撃が加わる。これに伴って、衝撃センサの検知信号SG11、エアバッグ起動信号SG12、および車間距離異常検知信号SG13の1つ又は複数がアクティブになるため、事故発生検出機能11が事故を検出する。
図2のステップS12で事故を検出すると、次のステップS13に進む。
【0073】
ステップS13では、車両用緊急状態通知装置100の事故対応サポート機能が起動したことを自車両の運転手に知らせるための所定のメッセージを、表示ユニット22の画面上に表示すると共に、文字の点滅や文字の拡大表示を行う。同時に音の出力も行う。実際には、緊急度識別機能15が出力する信号に従って、緊急時表示制御機能18が不揮発性メモリ23から事故対応メッセージの情報を読み出して、この情報を表示制御信号SG7と共に表示ユニット22に出力する。
【0074】
続く各ステップS14、S15、およびS16は、緊急度を識別するための処理であり、緊急度識別機能15により実行される。ステップS14では、緊急度識別機能15は、ドア開閉監視機能13が出力する信号により、ドア開閉の変化および現在の開閉状態を把握する。そして、ドア閉からドア開への変化を検知した時のみステップS17に進み、それ以外の場合はステップS15に進む。
【0075】
ステップS15では、緊急度識別機能15は、運転操作監視機能12が出力する信号に基づき、ユーザ(自車両の運転手)による運転操作の有無を識別する。運転操作がない場合はステップS16に進み、運転操作ありの場合はステップS17に進む。
【0076】
尚、
図2の動作には示されていないが、スイッチ操作監視機能14がスイッチ操作ありを検知した場合に、緊急度識別機能15がステップS15で運転操作を検知した場合と同様に扱うことも想定される。
【0077】
ステップS16では、緊急度識別機能15は、事故発生を検知してからの経過時間の長さを計測すると共に、この経過時間を事前に定めた閾値と比較する。そして、一定時間を経過する前はステップS16からステップS14に戻り、一定時間を経過した後はステップS16からステップS18に進む。
【0078】
ステップS17では、ユーザ(自車両の運転手)に意識がある場合を想定した適切な処理を行うように緊急度識別機能15が制御する。すなわち、自動的な緊急通知の発信は中止すると共に、ユーザの入力操作に役立つ緊急連絡先情報の表示などによりユーザをサポートする。そして、ユーザが必要と考えた場合は、ユーザの入力操作に従い車両用緊急状態通知装置100が緊急通知の発信動作を行う。
【0079】
ステップS18以降の処理においては、ユーザ(自車両の運転手)が意識不明の状況であるか、あるいは重大な負傷により体を動かすことが困難な状況である場合を想定した適切な制御を緊急通知制御部10が実行する。
【0080】
ステップS18では、緊急度識別機能15は、現在の状況に対して無線緊急通知機能16が所定の自動発信機能を実行するように制御する。これにより、無線緊急通知機能16は、不揮発性メモリ23等に事前に登録した緊急連絡先への電話の発信、事前に登録したメールアドレスへの電子メールの送信、119番への電話の発信などの少なくとも1つを実行する。尚、無線通信インタフェース21を搭載していない車両の場合はステップS18の実行を省略してステップS19に進む。
【0081】
次のステップS19では、緊急度識別機能15はドア開閉監視機能13が出力する信号により、自車両ドアの開閉状態を把握する。そして、ドア閉のまま変化しない場合はステップS19からステップS20に進み、ドア開に変化した場合はステップS19からステップS21に進む。
【0082】
ステップS20では、緊急度識別機能15は、現在の状況に対してローカル緊急通知機能17が所定のアピール動作を実行するように制御する。これにより、ローカル緊急通知機能17は、ライト点滅制御信号SG61を用いて自車両ライトの点滅動作を実行し、同時にホーン鳴動制御信号SG62を用いてクラクションの鳴動を実行する。このアピール動作は、ドア開に変化するまで繰り返し、あるいは継続する。
【0083】
ステップS21では、緊急度識別機能15は、意識不明、もしくは体を動かすことができない自車両の運転者を他の救助者が救助する場合を想定した適切な制御を実行する。具体的には、救助に役立つ情報を表示ユニット22の画面上に表示するように、緊急度識別機能15が緊急時表示制御機能18を制御する。したがって、緊急時表示制御機能18は、緊急連絡先情報、免許証情報、救助用個人情報等を不揮発性メモリ23から自動的に読み出して、表示ユニット22に出力する。
【0084】
<車両用緊急状態通知装置100の利点>
事故が発生した時に、自車両の運転手に意識があり、自分で救助を求めることができるような状況を想定する。この場合は、自車両の運転手が自分で何らかの運転操作を行う可能性が高いので、車両用緊急状態通知装置100の動作は
図2のステップS15からステップS17に進む。したがって、自動的な緊急通報の発信は中止される。
【0085】
もしも、事故により運転手が精神的なダメージを受けている場合や、多少の負傷を負っている場合であっても、ハンドル操作、アクセル操作、変速機のシフト操作、ブレーキ操作のような一般的な運転操作については慣れているため容易にできると考えられる。
なお、運転手が意識不明になったり、自分で体を動かせない程に負傷したような状況においても、身じろぎなどに起因して運転手が意図せずハンドル操作やアクセル操作を行う場合が考えられる。したがって、複数の運転操作を複合して検出するようにすることにより、より高精度に運転手の意識の有無を推定することができる。
【0086】
また、運転手がほとんど負傷していないような状況であれば、運転手が自車両のドアを開いて車外に出ることもできる。その場合は、車両用緊急状態通知装置100の動作はステップS14からステップS17に進むので自動的な緊急通報の発信は中止される。
【0087】
一方、事故の発生により、自車両の運転手が意識不明になったり、自分で体を動かせない程に負傷したような状況を想定すると、
図2のステップS14でドア開が検出されず、ステップS15で運転操作なしの状態が長く継続することになる。したがって、車両用緊急状態通知装置100の動作はステップS16からステップS18に進む。そのため、電子メールや電話による緊急通報の発信が自動的に実行される。更に、無線通信が不可能な環境であったとしても、ステップS20で自動的にライトの点滅やクラクションの鳴動が実行されるため、救助可能な他の人が事故車両の近傍に存在する場合や、事故車両の近傍を他の車両で通過するような場合に、他の人は異常の発生に容易に気づくことができる。したがって、遠隔地から救急車等の緊急車両が到着するよりも早く、他の人が救助を開始することができる。
【0088】
また、ステップS20におけるライトの点滅やクラクションの鳴動は、事故車両のドアが開くまで継続されるので、交通量の少ない道路で事故が発生したような状況であっても、救助される可能性が高くなる。
【0089】
また、救助者が事故車両のドアを開くと、ステップS19からステップS21に進むので、救助に役立つ情報が自動的に表示ユニット22の画面上に表示される。これにより、救助の効率化および迅速化が可能になる。
【0090】
尚、事故発生検出機能11がエアバッグ起動信号SG12だけに基づいて事故発生を検知することもできるので、衝撃センサの検知信号SG11や車間距離異常検知信号SG13は必ずしも必要ではない。したがって、センサなどの特別なデバイスを新たに追加することなく車両用緊急状態通知装置100を構成できる。
【0091】
なお、以上の説明においては、車両用緊急状態通知装置100の表示ユニット22が一般的なディスプレイにより構成されている場合について説明したが、表示ユニット22は、速度メータやタコメータなどのメータ類をグラフィックで表示するグラフィックメータにより構成されていてもよい。
【0092】
グラフィックメータは、通常時はメータ類を表示するためにマイクロコンピュータ内の多くのメモリ領域やCPUによる演算時間を割り当てるようになっている。特に、表示ユニット22がフルグラフィックメータになると、この傾向は顕著になる。
【0093】
このような車両用緊急状態通知装置100において、事故発生検出機能11により事故の発生が検出されると、緊急通知制御部10は、表示ユニット22によるメータ類の表示を中止し、上記ステップS13における所定のメッセージやステップS21における救助に役立つ情報を表示させるようにする。つまり、CPUは、メータ類を表示するためのプログラムの実行を中止し、車両用緊急状態通知装置100の動作に関するプログラムのみを実行するようになる。
【0094】
また、表示ユニット22を車両のバッテリに直接接続することにより、事故により車両の電源がOFFとなった場合にも、上記ステップS13における所定のメッセージやステップS21における救助に役立つ情報などの必要な情報を表示させることができる。なお、バッテリに直接接続するとは、イグニッションなどを介さず、車両の電源がOFFとなった場合においてもバッテリから表示ユニット22に電力を供給可能な箇所に接続するという意味である。また、表示ユニット22が補助バッテリを有し、車両の電源がOFFとなった場合には、補助バッテリにより駆動するようにしてもよい。
【0095】
車両用緊急状態通知装置100がこのような構成を有することにより、フルグラフィックメータを備えた車両において事故が発生した場合に、このメータを用いて状況に応じた必要な情報を確実に表示することができる。
【0096】
ここで、上述した本発明に係る車両用緊急状態通知装置100の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[10]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両上で自車両の事故発生と関連のある異常な状況を検知したときに、所定の緊急動作を実行する車両用緊急状態通知装置(100)であって、
異常な状況を検出する検出機能(11)と、前記自車両の運転操作と関連のある少なくとも1つの車上運転機器に対する操作の有無を監視する運転操作監視機能(12)と、所定の緊急通知動作を実行する緊急通知機能(無線緊急通知機能16、ローカル緊急通知機能17)と、を有し、前記検出機能が異常な状況を検出した後に、前記運転操作監視機能が前記運転操作ありを検知した場合は前記緊急通知機能による緊急通知動作を中止し(S17)、前記運転操作監視機能が前記運転操作が一定時間ない状態を検知した場合は前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を実行する(S18)緊急通知制御部(10)、
を備えたことを特徴とする車両用緊急状態通知装置。
【0097】
[2] 前記緊急通知制御部の前記運転操作監視機能は、前記自車両のステアリングホイール操作、アクセル操作、ギアチェンジ操作、およびブレーキ操作の少なくとも1つを監視する
ことを特徴とする上記[1]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0098】
[3] 前記緊急通知制御部の前記緊急通知機能は、前記緊急通知動作として、前記自車両のライト点滅、およびクラクション鳴動の少なくとも一方の制御を実行する、
ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0099】
[4] 前記緊急通知制御部は、前記自車両のドアの開閉操作を検知するドア開閉監視機能(13)を有し、前記緊急通知機能による前記緊急通知動作を、前記ドア開閉監視機能により前記自車両のドア開の操作が検知されるまで継続する、
ことを特徴とする上記[3]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0100】
[5] 緊急時の救助に役立つ運転者の緊急連絡先および個人情報の少なくとも一方の情報を保持する緊急情報保持部(不揮発性メモリ23)と、
前記情報の内容を表示する表示ユニット(22)と、
を更に備え、
前記緊急通知制御部は、前記自車両のドアの開閉操作を検知するドア開閉監視機能(13)を有し、前記緊急通知機能による前記緊急通知動作の実行の後で、前記ドア開閉監視機能が前記自車両のドア開の操作を検知した場合は、自動的に前記緊急情報保持部から情報を読み出して前記表示ユニットに前記情報の内容を表示する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0101】
[6] 前記表示ユニットは、前記自車両の走行状況をグラフィック表示するグラフィックメータにより構成され、
前記緊急通知制御部は、前記検出機能により異常な状況が検出された場合には、前記表示ユニットによる前記自車両の走行状況の表示を中止させ、前記情報を含む緊急通知を表示させる、
ことを特徴とする上記[5]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0102】
[7] 前記表示ユニットは、前記自車両の電源が切れた場合に前記自車両に搭載されているバッテリから電力が供給される、
ことを特徴とする上記[6]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0103】
[8] 前記緊急通知制御部の前記検出機能は、前記自車両に搭載した衝撃センサまたは加速度センサの出力信号、およびエアバッグの起動と関連する信号の少なくとも1つに基づいて、異常な状況を検知する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0104】
[9] 前記自車両に搭載した無線通信部(無線通信インタフェース21)、を更に備え、
前記緊急通知制御部は、前記緊急通知動作を行う際に、前記無線通信部を利用して、事前に登録した連絡先への連絡を実行する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の車両用緊急状態通知装置。
【0105】
[10] 前記緊急通知制御部は、前記検出機能が異常な状況を検知した後で、一定時間以内にドア開の操作または何らかのスイッチ操作を検知した場合には、前記運転操作監視機能が前記運転操作を検知しない状態であっても前記緊急通知動作を中止する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の車両用緊急状態通知装置。