(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる地表面冷却構造について、図面を参照しつつ、詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0018】
図1に示す地表面冷却構造は、地表面となる表層1、表層1の直下に配置された冷却層2とを備える。冷却層2は、基盤3の上面に配置されている。
表層1は、熱伝導率が0.05〜0.5W/m・Kである。スポーツ施設やレジャー施設などに適用される表層の材料は、通常、熱伝導率が低く、例えば、陸上競技場のトラックで良く利用されるポリウレタン系樹脂の場合、0.3W/m・K程度である。その他の例も挙げれば、テニスコートのハードコートに用いられるアクリル樹脂も0.17〜0.25W/m・K程度である。本発明は、表層がこのように熱伝導率の低いものであっても、効率よくムラのない冷却効果を発揮する点で、従来にない優位性を備えている。
【0019】
表層1には、その熱伝導率を向上させるため、良熱伝導材料が添加されていても良い。良熱伝導材料としては、表層1の熱伝導率を向上させるに足る良好な熱伝導性を有するものであれば良く、例えば、酸化マグネシウム(熱伝導率45〜60W/m・K)、酸化アルミニウム(熱伝導率20〜35W/m・K)、六方晶窒化ホウ素(熱伝導率30〜60W/m・K)、窒化アルミニウム(熱伝導率150〜250W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率237W/m・K)粉、酸化アルミニウム(熱伝導率36W/m・K)、黒鉛(等方性:熱伝導率50〜126W/m・K)などが挙げられる。
【0020】
また、図示しないが、表層1の上面には、遮熱塗膜や反射塗膜が形成されていてもよい。従来においても、遮熱塗膜や反射塗膜の適用は検討されていたが、それ単独では、表層1の冷却効果はほとんど期待できないものであった。
本発明においても、遮熱塗膜や反射塗膜が表層1の表面温度を直接下げるということは期待し難いものの、日射による熱を地表面冷却構造の内部まで侵入させないことにより冷却層2による表層1下面からの冷却効果を促進するという本発明特有の作用が奏せられる。
【0021】
冷却層2は、複数の冷却管10が、固定治具20の上に一定の間隔で配設されている。
そして、表層1の厚みをt[mm]とし、冷却層2において隣り合う冷却管10,10の間隔をd[mm]とするとき、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たす。
上記両関係をともに満たす場合に、表層1の熱伝導率が悪いにもかかわらず、表層1が冷却層2により十分にかつムラなく冷却されるという本発明の効果が発揮される。
【0022】
表層1の厚みtは、冷却層2による冷却作用を十分に発揮させるという点から、40mm以下であることが好ましい。また、表層1の材質にもよるが、表層1に求められる性能の発揮と冷却層2による冷却作用の発揮を両立させる観点からは、表層1の厚みtが、15〜30mmの範囲であることがより好ましい。
【0023】
また、上述のとおり、冷却管10,10の間隔dを小さくするほど、冷却層2における冷却管10の占める割合が増し、冷却管10と充填材30との剥離リスクが高まる。
この剥離リスクを抑制する観点から、冷却管10,10の間隔dが0を超えていること、従って、充填材30が冷却層2内を貫通していることが好ましい。
特に、冷却管10,10の間隔dが、冷却管10の外径と同程度以上であること、及び/又は、12.5mm以上であることがより好ましい。
このように、冷却管10,10の間隔dが広くなっても、上記の(1)及び(2)に示す関係を満たす限りにおいて、十分かつムラのない冷却効果は発揮される。
【0024】
冷却管10は、特に限定するわけではないが、可撓性の管であれば、表層1への衝撃が冷却管10に伝わった場合でも、破損し難いという利点がある。このような観点から、例えば、ポリエチレン管、ポリブテン管などが好ましく挙げられる。ポリエチレン管としては、架橋ポリエチレン管も好適に用いることができる。
冷却管10の管径としては、特に限定するわけではないが、外径が7〜22mmであることが好ましく、10〜17mmであることがより好ましい。これは、冷却管10の冷却効果を高めるため、必要な流量を確保し、圧力損失を最小化するには、外径が大きい方が有利であり、また、競技者の走行による衝撃や、砲丸の落下による衝撃などで扁平する恐れを回避する意味では、外径はより小さい方が有利であるからである。
【0025】
冷却層2は固定治具20上に固定されている。冷却層2の冷却管10及び固定治具20以外の部分には、充填材30が充填されている。
充填材30としては、特に限定するわけではなく、熱伝導性、コスト、強度なども考慮して適宜決定すればよいが、例えば、ゴムチップ、樹脂モルタル、樹脂、アスファルト、コンクリートなどが挙げられる。
【0026】
前記ゴムチップとしては、表層1の衝撃吸収性を重視する場合に好適に用いられ、例えば、リサイクルゴムを細かく砕いたものと固着材とを混合したものが好適に用いられる。リサイクルゴムを細かく砕いたものの粒径としては、例えば、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。特に、1.0mm〜3.0mmの範囲が好ましく、0.5mm〜2.0mmの範囲がさらに好ましい。これは、より細かいものを使用することで、ゴムチップの塊としての空隙率を下げて熱伝導率を確保することを目的とすること、及び、粒径が大きすぎるとおよそ断面が円形状である冷却管の下部にゴムチップが回りこまないなど、冷却管間の充填材として粗過ぎるからということ、による。
前記樹脂モルタルとしては、表層1に過度な衝撃が加えられない場合の用途や、ボールに高いバウンドが求められる場合の用途などにおいて好適に用いられる。
前記樹脂としては、主に表層1と同種の材料(例えば、ポリウレタン系樹脂)を用いることができ、表層1と異なる材質を使用する場合に比べて1回の塗布で冷却層2と表層1を形成できるので、工期短縮が求められる場合に好適に使用される。
前記アスファルトやコンクリートは、材料としてのコストが重視される場合などに好適に用いることができる。
【0027】
表層1と冷却層2との剥離を防止する観点からは、例えば、表層1の材料としてポリウレタン系樹脂を用い、充填材30としてポリウレタン系の樹脂モルタルを用いるなど、表層1の材料と、充填材30とがある程度親和性を有することが好ましい。
【0028】
また、冷却効果の効率を向上させるためには、冷却管10の頂部が表層1下面に近接していることが好ましい。
ここで、冷却管10頂部と表層1下面との接近は、表層1と冷却層2との剥離を防止する観点を重視するならば、冷却管10の頂部が、充填材30により被覆されて冷却層2から露出しない限度であることが望ましい。冷却管10の頂部が、充填材30により被覆されずに冷却層2から露出している状態では、上述のように、一般に表層1と冷却管10との接着性は高くないので、剥離のリスクが生じる一方で、冷却管10の頂部が表層1下面から離れすぎると、冷却効果が低下するおそれがあるからである。
もっとも、冷却層2の施工において、冷却層2を冷却管10の外径とほぼ同等の厚みとする場合、例えば、充填材30を充填した後、表面を平滑にするためにこて等を用いて行うが、冷却管10の頂部を、厚みを均質化するガイドとして用いることがある。この場合、こてで冷却管10の頂部がなぞられるため、冷却管10の一部が図らずも露出することも有り得る。このような場合においても、当該露出部分が冷却管10の外周の概ね3分の1未満に留まっていれば、表層1と冷却層2との密着性は相当程度確保できる。
【0029】
なお、上では、冷却層2の冷却管10及び固定治具20以外の部分に充填材30が充填されたものについて説明したが、補強や冷却効果向上などを目的として、冷却層2内に、フライアッシュなどの補強材を用いてもよい(このような例については、後述の実施例5及び
図6参照。補強材は符号60で示されている。)。
【0030】
基盤3は、一般に基盤として適用されているものでよく、特に限定されるものではない。例えば、アスファルト、コンクリートなどが挙げられる。また、アスファルトを適用するとき、その目が粗い場合に上層の材料が浸み込んで失われることを防ぐ目的で、アスファルト表面に目止めとして樹脂モルタルを塗工しても良い。
【0031】
次に、冷却管10の配設状態について、
図2〜
図4を参照しつつ、詳説する。
冷却層2には、一定の間隔で複数の冷却管10が配設される。
冷却管10は、供給側ヘッダー管40の分岐口に一端が接続され、冷却層2の反対側でU字状に湾曲して折り返し、供給側ヘッダー管40の下を通って、他端において排出側ヘッダー管50に接続される。供給側ヘッダー管40に供給された冷媒液が分岐して冷却管10に供給され、U字状に沿って流れた後、排出側ヘッダー管50で再び合流し、排出される。
供給側ヘッダー管40から冷却層2の反対側でU字状に湾曲するまでの冷却管行き部10Aと、冷却層2の反対側でU字状に湾曲して排出側ヘッダー管50に戻るまでの冷却管戻り部10Bとが交互となるように配列されている。また、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bとは同一平面上に配置されている。
冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bでは、表層1との熱交換により、冷媒液の温度に差があることが予測されるが、上記のように、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bとが同一平面上に交互に配置されていることで、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10B内の冷媒液の温度差は全体として平準化される。
【0032】
冷却管10内に冷媒液を流すことによって表層1を冷却する作用を有する。
冷媒液としては、コスト面などを考慮すると、水が好ましく使用できる。
熱源としては、特に限定されず、図示しないが、例えば、チラー、地中熱、井戸水などを挙げることができる。これらを適宜組み合わせても良い。
【0033】
本発明の地表面冷却構造における冷却管10の配設状態としては、
図2に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図3や
図4に示す実施形態も採用できる。
図3や
図4に示す例では、
図2に示す例とは異なり、U字状に折り返さずに直線状の冷却管10が用いられている。その他は、概ね
図2と共通するので、重複する説明は割愛する。
図3と
図4の違いは、
図3では、冷媒液が図の下側から上側へと一方向に供給されているのに対し、
図4では、図の下側から上側へと供給されるものと、図の上側から下側に供給されるものとが交互に配列された状態となっている点にある。
冷媒液は、その供給側から排出側に行くほど表層1との熱交換により温度が上昇する可能性があるので、
図4に示す実施形態の方が、冷媒液の温度差が全体として平準化されることが期待される。
【0034】
次に、固定治具20について、
図5を参照しつつ、詳説する。
上述の通り、冷却管10は固定治具20により固定されている。
固定治具20は、冷却管10を保持して固定する保持部21を備えている。冷却管10の管軸方向の複数個所で冷却管10を保持できるように、複数(
図5の例では各冷却管10に対し3箇所ずつ)設けられている。
【0035】
固定治具20を用いることで、施工時に冷却管10を適切な位置に並べることができ、施工後においても安定する。従って、本発明の効果が確実にかつ安定的に発揮される。
さらに、固定治具20に冷却管10を嵌め込むという簡易な作業で冷却管10を適切な位置に並べることができるので、作業性が良い。
また、固定治具20は、連結部22により連結可能にユニット化されているが、このようにユニット化することで、全ての施工を現場で行うのではなく、事前に冷却管10の配設等を完了しておき、残りの作業を現場で行うことも可能であり、作業の高効率化が実現できる。
【0036】
固定治具20の貫通孔23において、基盤3に釘を打ち込むなどすることにより、固定治具20を基盤3に強固に固定することができる。
【0037】
固定治具20の材質としては、特に限定するわけではないが、強度、製造の容易性などの観点から、例えば、ポリプロピレンなどを好適に挙げることができる。
【0038】
以上に詳述した地表面冷却構造を施工する手順について、以下に詳説する。
まず、保持部21に冷却管10が嵌め込まれた固定治具20を、基盤3の上に敷設する。
この作業は、全てを現場で行うこととしても良い。すなわち、現場で、基盤3の上に、各ユニットを連結部22で連結するようにして固定治具20を敷設したのち、保持部21に冷却管10を嵌め込むこととしても良い。
あるいはまた、予め保持部21に冷却管10が嵌め込んでおいた固定治具20の各ユニットを現場に持っていって、現場では、冷却管10が嵌め込まれた各ユニットの連結22での連結及び基盤3への敷設のみを行うこととしてもよい。
なお、固定治具20は、その貫通孔23を通して基盤3に釘を打ち込むなどすることにより、基盤3に固定される。
【0039】
次に、充填材30の充填を行い、これを硬化させることにより、冷却層2を形成する。充填材30の充填は、好ましくは冷却管10の頂部の高さと略一致させるように行う。その後、こて等を用いて表面を平滑にすることが好ましく、この場合、冷却管10の頂部を、厚みを均質化するガイドとして用いてもよい。
充填材30の充填量が多すぎると、表層1と冷却管10の頂部との間に充填材30が多く介在することとなって、冷却管10による表層1の冷却効果が低下するおそれがある。他方、充填材30の充填量が少なすぎると、冷却管10の頂部が露出した状態となって、上述のとおり、冷却層2と表層1の密着性が低下して剥離などの問題を生じるおそれがあるので、このような観点からは、冷却管10の頂部を露出させないか、又は、露出しても当該露出部分が冷却管10の外周の概ね3分の1未満となるように調整することが好ましい。
【0040】
最後に、表層1を形成するのであるが、表層1の形成自体は従来技術と同様でよい。例えば、ポリウレタン系樹脂層を一例とすると、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ポリオールとを含む二液型ウレタン組成物を、上記冷却層2の上面に塗工し、硬化させることにより形成することができる。
さらに、表層1の上面に遮熱塗料や反射塗料を塗工、硬化させることにより、上述した遮熱塗膜や反射塗膜を形成してもよい。
【0041】
本発明の地表面冷却構造は、陸上競技場のトラックに好適に適用することができる。
トラックの全面にわたって本発明の地表面冷却構造を適用することは、施工時、稼動時のコスト、管理・維持のコストなどが高くなってしまうが、必要な箇所のみに適用すれば、これらのコストを低減することができる。例えば、トラックのうち、クラウチングスタートにおけるスタートラインでは、競技者が地表面に手をつけることになり、冷却の必要が大きいので、クラウチングスタートにおけるスタートラインを含む所定範囲に適用するようにしてもよい。
また、トラックと冷却管10との位置関係としては、トラックのコースに沿う方向に対し概ねこれと交差する方向として冷却管10が配設されているものであってもよいし、トラックのコースに沿う方向を管軸方向として冷却管10が配設されているものであってもよい。
上記いずれの位置関係とするかは、例えば、施工のしやすさや競技者間に競技条件の不平等・不公平を生じさせないかといった観点などを考慮して決定すればよい。
例えば、冷却管が、トラックのコースに沿う方向を管軸方向として配設されている場合には、各コースの競技者にとって、地表面下における冷却管の配設状態が共通のものとなり、競技者間の平等・公平が厳密に保たれると考えられる。
もっとも、
図2や
図4に示すように、冷媒液の温度差が全体として平準化されるように冷却管10が配設されたものであれば、トラックのコースに沿う方向に対し概ねこれと交差する方向として冷却管10が配設されているものであっても、競技者間の平等・公平はほとんど問題とならないと考えられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明にかかる地表面冷却構造について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、図面との対応関係を明示するため、下記実施例における各構成要素について、対応する符号を併記する。
【0043】
〔実施例1〕
以下のようにして、
図1に示す地表面冷却構造を備え、固定治具が
図5に示すものである実施例1にかかるサンプルを作製した。なお、冷却管の配設状態については、
図3に示すとおりとした。
具体的には、基盤3としてのアスファルト(縦300mm×横300mm×厚み70mm)の上に、固定治具20を各ユニットの各連結部22で連結して敷設し、貫通孔23を通して釘を打ち込んで固定治具20を基盤3に固定した。固定治具20としては、ポリプロピレン製のものを用いた。
冷却管10として、外径10mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス(登録商標、以下同様)」(積水化学工業社製)を用いて、固定治具20の保持部21に、冷却管10を嵌め込むようにして、冷却管10を配設した。隣り合う冷却管10,10の間隔dは20mmであった。固定治具20としては、冷却管10の配設状態に合わせて保持部21の位置等を設計したものを用いた。
次に、充填材30として、ゴムチップを充填し、硬化させた。ゴムチップとしては、粒径1.0〜3.0mmのリサイクルゴム粉砕品と、固着材「MS−185S」(美津濃社製)との混合物を用いた。配合割合は、重量比で、リサイクルゴム粉砕品:固着材=1.0:0.225とした。
充填材30の充填量は、冷却管10の頂部が丁度充填材30で被覆されて見えない状態となるようにした。
最後に、ポリウレタン系樹脂「グラントラック(登録商標)」(美津濃社製)に良熱伝導材料(酸化マグネシウム)を添加したものを塗工し、硬化させて、表層1を形成した。表層1の厚みは、15mmであった。
酸化マグネシウムの添加量は、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して酸化マグネシウム50重量部となる割合とした。
【0044】
〔実施例2〕
充填材30を樹脂モルタルに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2にかかるサンプルを作製した。
樹脂モルタルとしては、樹脂「ウルトラゾールCMX−43」(耐油モルタル混和用アクリルエマルジョン。ガンツ化成社製)、砂(5号珪砂)、セメント(普通ポルトランドセメント)及び水の混合物を用いた。これらの配合割合としては、重量比で、樹脂:砂:セメント:水=1.0:3.9:5.6:1.0とした。
【0045】
〔実施例3〕
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、表層1には酸化マグネシウムを添加しないこととし、隣り合う冷却管10,10の間隔dを104mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3にかかるサンプルを作製した。
【0046】
〔実施例4〕
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、隣り合う冷却管10,10の間隔dを104mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4にかかるサンプルを作製した。
【0047】
〔実施例5〕
充填材30を樹脂モルタルに変更し、隣り合う冷却管10,10の間隔dを44mmに変更し、隣り合う冷却管10,10の間に冷却管10と平行に補強材60としてフライアッシュ「アシェラウッド(登録商標)」(積水化学工業社製)を並べてから充填材30を充填するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5にかかるサンプルを作製した。
樹脂モルタルとしては、樹脂「ウルトラゾールCMX−43」(耐油モルタル混和用アクリルエマルジョン。ガンツ化成社製)、砂(5号珪砂)、セメント(普通ポルトランドセメント)及び水の混合物を用いた。これらの配合割合としては、重量比で、樹脂:砂:セメント:水=1.0:3.9:5.6:1.0とした。
なお、固定治具20としては、
図6に示すように、隣り合う冷却管10,10の間に補強材60(フライアッシュ)を配置できるように設計したものを用いた。
【0048】
〔比較例1〕
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、表層1には酸化マグネシウムを添加しないこととし、隣り合う冷却管10,10の間隔dを134mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1にかかるサンプルを作製した。
【0049】
〔性能評価試験〕
上記各実施例及び比較例にかかるサンプルについて、以下のようにして性能評価試験を行った。
屋外試験では、サンプルを太陽光に曝し、所定位置における表面温度の経時的変化を計測した。
屋内試験では、気温35℃、湿度50%に設定した恒温恒湿内にサンプルを置き、太陽光模擬ランプを照射し、所定位置における表面温度の経時的変化を計測した。
各実施例及び比較例にかかるサンプルについて、冷却層による冷却効果及びムラを評価するため、冷却水を供給したものと供給しないものを用意し、これらを同一条件で同時に試験した。
冷却水は、チラーにより冷却したもので、平均14.3(±0.5)℃の冷却水が供給されるようにチラーを設定した。
温度計測は、冷却水の供給側と排出側の中央となる位置で、冷却管直上及び冷却管間における表層の表面温度について行い、その測定は、T型ケーブルタイプの熱電対を用いて、データロガーにより記録した。
【0050】
各実施例及び比較例にかかるサンプルの結果を、各構成の概略とともに、下表1に示す。なお、表1中、基準表面温度(℃)は、各サンプルにおいて、冷却水を供給しない場合のピーク時における表面温度を指し、表面温度実測値(℃)は、各サンプルにおいて、冷却水を供給した場合の前記ピーク時における冷却管直上及び冷却管間の表面温度を指す。
【0051】
【表1】
【0052】
<結果の考察>
いずれの実施例においても、優れた冷却効果が得られ、かつ、ムラが生じていないことが分かる。
また、実施例2及び実施例5については、屋内試験、屋外試験双方での試験を実施し、屋内試験での結果が、屋外即ち実際使用される環境での結果と一致するかを検証したが、その結果、殆ど同等と判断できる結果を得ることができ、屋内試験が十分に実際使用される環境を再現しているといえることが判明した。
【0053】
なお、表層1を形成するためのポリウレタン系樹脂に、酸化マグネシウムを、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して酸化マグネシウム50重量部となる割合で添加した効果については、以下の評価にて熱伝導率の計測を行い、添加無し0.23W/m・Kから添加したもの0.37W/m・Kへと、材料としての熱伝導率向上を得ることができた。
測定方法:ASTM E 1530−4
測定機器:アルバック理工(株)製 定常法熱伝導率測定装置 GH−1
試験片形状:25mm×25mm、厚さ7mm
圧力:0.1MPa
熱板温度差:20℃
測定温度:60℃
この結果を踏まえ、実施例3と実施例4とを比較すると、冷却管10直上の冷却効果が約2℃向上し冷却効率が増していることが効果として判明した。
【0054】
〔シミュレーションによる検証〕
一定条件下において、冷却管10,10の間隔d、表層1の厚みt、表層1の熱伝導率の各条件のみを変更した場合に、冷却管10直上及び冷却管10,10間の表面温度がどのように変化するかを、汎用有限要素法解析ソフトウェア「ABAQUS6.14(アバカス)」(ダッソーシステム社製)を用いてシミュレーションした。
シミュレーションは、材料として比較的熱伝導率の悪いスポーツ施設やレジャー施設に用いられる代表的な表層材料をカバーできる範囲となるように、表層の熱伝導率を設定した。
【0055】
ところで、このシミュレーションは、日射量、地表からの放射、大気放射、大気への熱伝達、各層への熱伝達などによる表層表面における熱収支に基づき、所定の条件を入力することにより、表層における冷却管直上及び冷却管間の表面温度を出力するように構築したものであり、実測値と適合するように厳密に調整を行ったものであるから、実測値と同等の信頼性を有するものである。なお、このようなシミュレーションは、実測データに代わるものとして、従来から利用されているものであり、適宜実施可能である。
念のため、上記各実施例及び比較例の実測値に対応するシミュレーション結果を上述の表1の下部に併記している。さらに、実測値とシミュレーション結果との関係をグラフ化したものを
図7及び8に示す。
表1、
図7及び
図8から、冷却効果及びムラのいずれについても、実際に、実測値とシミュレーション結果とが信頼できる程度に一致していることが分かる。すなわち、シミュレーション値は実測値と同等に扱って差し支えないものである。
【0056】
シミュレーション結果を表2に示す。
また、上述の実測値とシミュレーション結果のデータを用いて、表層1の厚みtと冷却管10,10の間隔dとの関係をグラフ化したものを
図9に示す。
なお、表2において、基準表面温度は、冷却層による冷却効果がない場合の温度を指す。
また、表2においては、冷却効果の基準を基準表面温度に対して冷却管間の温度が7℃以上下回っていることとし、ムラの基準をムラが5℃以下であることとし、基準を満たす場合に「○」の評価としている。表2の効果判定における「総合」の項目における○の評価、及び
図9における「有効」とは、前記の基準を両方とも満たしているものを指す。
【0057】
【表2】
【0058】
<結果の考察>
表2及び
図9に示す結果から、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たす場合に、十分かつムラのない冷却効果が発揮されることが分かった。
特に、表層1の厚みtの値が小さい場合には、ムラの問題が起こりやすくなり、冷却管10,10の間隔dの値を正しく設定することが重要であることが示唆されている。
このように、本発明の効果を得る上では、表層1の厚みtと冷却管10,10の間隔dとをそれぞれ独立に検討するのではなく、両者と効果との関係について厳密に検討する必要があり、本発明はその必要性に初めて気づき、前記関係を上記数式として確立した点に高い産業的価値がある。
【0059】
〔基準の合理性についての付記〕
上記において、冷却効果の基準をピーク温度に対して7℃以上とし、ムラの基準を5℃以下としているが、これらの基準が合理的な基準であることを以下に付記する。
<冷却効果>
陸上競技経験の被験者10名に協力してもらい、ピーク温度62℃に対して、冷却効果の異なる種々の表層面について、手を当ててもらい、以下の判定基準で判定してもらった。
なお、以下の判定は、一定の時間間隔をあけて行ってもらうようにしたので、被験者における感覚の麻痺の影響はない。
0・・・熱い、長時間触っていられない
1・・・熱さを感じるものの、長時間触れていられる
2・・・熱さを感じない
3・・・冷たい
結果を下表3及び
図10に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3及び
図10に示すように、ピーク温度62℃に対し、5℃までの温度差では未だ長時間触っていられないが、7℃以上の温度差においては長時間触れていられることが示されている。従って、要求される冷却効果を発揮するものとして、7℃以上を基準に設定することは合理的である。
なお、上記結果は、ピーク温度62℃に対する温度差においての結果であるが、本発明を実際に実施する際においては、ピーク温度が62℃を超える場合も想定されない訳ではない。しかし、ピーク温度が62℃を超えるのは例外的な場合と考えて差し支えなく、仮にピーク温度が62℃を超える状況で本発明を実施する場合であっても、冷媒液の温度を下げるなどの対応も可能である。従って、上記のように、ピーク温度62℃に対する温度差において7℃以上の温度差をもって冷却効果ありと基準設定することの合理性が失われるものではない。
【0062】
<ムラ>
陸上競技経験の被験者10名に協力してもらい、ピーク温度62℃に対して、ムラの異なる種々の表層面について、手を当ててもらい、以下の判定基準で判定してもらった。
なお、以下の判定の際には、冷却管10に沿うように、指先から手のひらで接するように触れてもらい、また、指先のみでもその領域に触れてもらい、これらを総合的な判断により、冷却管10直上、冷却管10,10間の比較をしてもらった。また、一定の時間間隔をあけて判定を行ってもらうようにしたので、被験者における感覚の麻痺の影響はない。
0・・・差を感じる
1・・・殆ど感じない/気にならない
2・・・差を感じない
結果を下表4及び
図11に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表4及び
図11に示すように、冷却効果の程度に関わらず、ムラが5℃以内であれば、差を感じないか殆ど感じないという結果が示されている。従って、要求されるムラ抑止の効果を発揮するものとして5℃以下を基準に設定することは合理的である。