特許第6564654号(P6564654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564654
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/04 20060101AFI20190808BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F16K1/04 D
   F16K37/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-174834(P2015-174834)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48902(P2017-48902A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古居 聖浩
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5350941(JP,B2)
【文献】 特開昭60−116984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/04
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジングと、
前記バルブハウジングに形成された流路と、
前記流路の開度を調節するニードル弁体と、
前記ニードル弁体と一体回転する操作部材と、
前記バルブハウジング内で回転可能に支持されるとともに前記ニードル弁体の回転数を示す表示部を有する表示リングと、
前記バルブハウジングに形成されるとともに前記表示部を前記バルブハウジング外へ臨ませる表示窓と、を有し、
前記操作部材を操作して、前記ニードル弁体を前記バルブハウジングの軸方向へ移動させることにより、前記流路の開度を調節して、前記流路の流量を制御する流量制御弁であって、
前記表示リングの内側に配置され、前記操作部材及び前記ニードル弁体と一体回転する筒状の回転部材と、
前記表示リングにおける軸方向端部に設けられるギア部と、
前記バルブハウジングの内面に突設されるとともに前記バルブハウジングの軸方向に沿って延びる切換ギア部と、
前記回転部材の外面に突設されるとともに前記ギア部と噛合可能な噛合部と前記切換ギア部に当接可能な切換部を有する突設部と、を備え、
前記切換ギア部と前記切換部との当接によって、前記回転部材が、回転運動を維持しつつ、前記ニードル弁体の中心軸線に沿った方向へ直線運動し、前記噛合部と前記ギア部と噛合を介して前記回転部材の回転運動が前記表示リングに伝達されることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記切換ギア部及び前記切換部は、前記ニードル弁体の中心軸線を中心とした同一の同心円上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記回転部材は、前記回転部材の中心軸線が前記ニードル弁体の中心軸線と一致するように前記バルブハウジング内に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記表示リングは、前記表示リングの中心軸線が前記ニードル弁体の中心軸線と一致するように前記バルブハウジング内に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記切換部が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記バルブハウジングは、前記ギア部と係合可能な係合部を有していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【請求項7】
前記バルブハウジングは、前記表示窓が形成されたギアカバーと、前記流路が形成された流路形成ハウジングとを有し、
前記ギアカバーを前記流路形成ハウジングに対して回転可能とした状態で、前記ギアカバーと前記流路形成ハウジングとの抜け止めを規制する抜け止め部材と、
前記流路形成ハウジングに対する前記ギアカバーの回転を規制するロック部材とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードル弁体をバルブハウジングの軸方向へ移動させることにより、バルブハウジングに形成された流路の開度を調節して、流路の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流量制御弁としては、例えば、特許文献1のスピードコントローラが挙げられる。図13及び図14に示すように、特許文献1のスピードコントローラ100のバルブハウジング101には、螺子孔101aが形成されるとともに、螺子孔101aにはニードル弁体102の螺子部102aが螺合されている。バルブハウジング101には、ニードル弁体102と一体回転する操作部材103が回転可能に設けられている。操作部材103には、ニードル弁体102の軸部102bを一体回転可能に保持する保持部103aが形成されるとともに、保持部103aの外面には、操作部材103と一体回転する歯部103bが形成されている。バルブハウジング101には、歯部103bに噛合連結された歯車104が回転可能に支持されている。
【0003】
バルブハウジング101には、歯車104に噛合連結された表示リング105が回転可能に支持されている。表示リング105は円環状であるとともに歯車104の外側に配置されており、表示リング105の中心軸線が軸部102bの中心軸線と一致している。表示リング105の内周面には歯車104が噛合連結されるギア105aが形成されている。表示リング105の外周面には、ニードル弁体102の回転数を示す複数の第1目盛り106が等間隔置きに印字されている。バルブハウジング101には、第1目盛り106をバルブハウジング101外へ臨ませる表示窓101bが形成されている。操作部材103の先端面には、ニードル弁体102の1回転内での回転量を示す複数の第2目盛り107が操作部材103の周方向に等間隔置きに印字されている。
【0004】
そして、上記構成のスピードコントローラ100において、操作部材103を回転させると、操作部材103の回転量に応じてニードル弁体102の螺子部102aが一定量ずつ螺子孔101aに対して螺進又は螺退する。すると、操作部材103の回転に応じて流路110の開度が調節され、流路110の流量が制御される。
【0005】
操作部材103が1回転すると、歯部103bによって歯車104が二条分だけ回転するとともに、歯車104の回転に伴い、表示リング105が二条分だけ回転する。すると、表示窓101bには、操作部材103が1回転する前の第1目盛り106の値に1加算した値が表示され、操作部材103の回転数が目視可能になる。そして、表示窓101bに表示された第1目盛り106を目視することにより、操作部材103の回転数が表示されるとともに、この回転数に基づき流路110の開度が計数化される。
【0006】
また、操作部材103を1回転内で回転させたときは、第1目盛り106の値は変更されないが、その1回転内での回転量は第2目盛り107によって目視可能になる。そして、第2目盛り107を目視することにより、操作部材103の1回転内での回転量が表示されるとともに、この回転量に基づき流路110の開度が計数化される。よって、第1目盛り106及び第2目盛り107により、ニードル弁体102の回転数が正確に計数化され、流路110の開度が正確に把握可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5350941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のスピードコントローラ100において、歯車104の回転軸104aは、ニードル弁体102の軸部102bに対してオフセットした位置に配置されている。すなわち、歯車104は、その回転軸104aの中心軸線が、例えば、表示リング105のように、軸部102bの中心軸線と一致していない。そして、保持部103aの回転運動は、歯部103bを介して歯車104に伝達されるとともに、歯車104の回転運動がギア105aを介して表示リング105に伝達される。したがって、スピードコントローラ100では、保持部103aから表示リング105への回転運動の伝達は、ニードル弁体102の軸部102bの中心軸線に対して直交する方向へ順次伝達されていく構成である。このような構成は、スピードコントローラ100におけるニードル弁体102の軸部102bの中心軸線に対して直交する方向への体格の大型化を招く。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ニードル弁体の中心軸線に対して直交する方向への体格を小型化することができる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する流量制御弁は、バルブハウジングと、前記バルブハウジングに形成された流路と、前記流路の開度を調節するニードル弁体と、前記ニードル弁体と一体回転する操作部材と、前記バルブハウジング内で回転可能に支持されるとともに前記ニードル弁体の回転数を示す表示部を有する表示リングと、前記バルブハウジングに形成されるとともに前記表示部を前記バルブハウジング外へ臨ませる表示窓と、を有し、前記操作部材を操作して、前記ニードル弁体を前記バルブハウジングの軸方向へ移動させることにより、前記流路の開度を調節して、前記流路の流量を制御する流量制御弁であって、前記表示リングの内側に配置され、前記操作部材及び前記ニードル弁体と一体回転する筒状の回転部材と、前記表示リングにおける軸方向端部に設けられるギア部と、 前記バルブハウジングの内面に突設されるとともに前記バルブハウジングの軸方向に沿って延びる切換ギア部と、前記回転部材の外面に突設されるとともに前記ギア部と噛合可能な噛合部と前記切換ギア部に当接可能な切換部を有する突設部と、を備え、前記切換ギア部と前記切換部との当接によって、前記回転部材が、回転運動を維持しつつ、前記ニードル弁体の中心軸線に沿った方向へ直線運動し、前記噛合部と前記ギア部と噛合を介して前記回転部材の回転運動が前記表示リングに伝達される。
【0011】
上記流量制御弁において、前記切換ギア部及び前記切換部は、前記ニードル弁体の中心軸線を中心とした同一の同心円上に設けられていることが好ましい。
上記流量制御弁において、前記回転部材は、前記回転部材の中心軸線が前記ニードル弁体の中心軸線と一致するように前記バルブハウジング内に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記流量制御弁において、前記表示リングは、前記表示リングの中心軸線が前記ニードル弁体の中心軸線と一致するように前記バルブハウジング内に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記流量制御弁において、前記切換部が複数設けられていることが好ましい。
上記流量制御弁において、前記バルブハウジングは、前記ギア部と係合可能な係合部を有していることが好ましい。
【0014】
上記流量制御弁において、前記バルブハウジングは、前記表示窓が形成されたギアカバーと、前記流路が形成された流路形成ハウジングとを有し、前記ギアカバーを前記流路形成ハウジングに対して回転可能とした状態で、前記ギアカバーと前記流路形成ハウジングとの抜け止めを規制する抜け止め部材と、前記流路形成ハウジングに対する前記ギアカバーの回転を規制するロック部材とを備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ニードル弁体の中心軸線に対して直交する方向への体格を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)及び(b)は実施形態における流量制御弁を示す斜視図。
図2】流量制御弁の縦断面図。
図3】流量制御弁の分解斜視図。
図4】流量制御弁の一部を破断した断面斜視図。
図5】突設部を正面から見た正面図。
図6】流量制御弁の一部を破断した断面図。
図7】流量制御弁の平断面図。
図8】流量制御弁を分解した断面斜視図。
図9】(a)〜(d)はギアカバー及び表示リングを展開して示す模式図。
図10】(a)〜(c)はギアカバー及び表示リングを展開して示す模式図。
図11】別の実施形態における流量制御弁の一部分を示す縦断面図。
図12】別の実施形態におけるスライドギアの斜視図。
図13】従来例における流量制御弁の縦断面図。
図14】従来例における流量制御弁の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、流量制御弁を具体化した一実施形態を図1図10にしたがって説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、流量制御弁10のバルブハウジング11は、円筒状であるとともに樹脂製のギアカバー12と、円筒状であるとともに金属製の流路形成ハウジング13とを備えている。ギアカバー12と流路形成ハウジング13とは、ギアカバー12及び流路形成ハウジング13の軸方向が一致した状態で一体に組み付けられている。
【0018】
図2に示すように、流路形成ハウジング13におけるギアカバー12寄りには、ギアカバー12内に挿入される円筒状の挿入筒13fが突設されている。また、流路形成ハウジング13における挿入筒13fとは反対側には、流体としてのエアが導入される流路13aが形成されている。流路13aは、流路形成ハウジング13におけるギアカバー12とは反対側の端面に開口するとともに、流路形成ハウジング13の軸方向に沿って延びている。
【0019】
また、流路形成ハウジング13の内部には、流路13aに連通する弁室13bが形成されている。さらに、流路形成ハウジング13には、流路13aを通過したエアが導出される導出孔13cが形成されている。導出孔13cの一端は、流路形成ハウジング13の外周面に向けて開口するとともに他端は弁室13bに連通している。流路形成ハウジング13の外周面には、継手14が取り付けられている。継手14には、導出孔13cの一端に連通する通路14aが形成されている。そして、流路13aから供給されたエアは、弁室13b、導出孔13c及び通路14aを介して流体圧機器(図示せず)に供給される。
【0020】
流路形成ハウジング13の内部におけるギアカバー12寄りには、弁室13bにおける流路13aとは反対側に連通する収容孔13dが形成されている。収容孔13dは、弁室13bよりも拡径されている。収容孔13d内には、ナット15が収容されている。ナット15には雌ねじ孔15aが形成されている。
【0021】
バルブハウジング11内には、金属製のニードル弁体20が収容されている。ニードル弁体20の中心軸線Lが延びる方向(ニードル弁体20の軸方向)の一端部は、円錐形状の弁部20aとなっている。弁部20aは、弁室13b内に配置されている。弁部20aの外周面には円環状のフランジ20bが形成されている。フランジ20bの外周面には、円環状のシール部材20sが装着されている。弁室13bにおける流路13a寄りと弁室13bにおける収容孔13d寄りとの間は、シール部材20sによってシールされている。
【0022】
ニードル弁体20は、円柱状の螺子部20cを有する。螺子部20cの外周面には雄ねじ20dが形成されている。螺子部20cの雄ねじ20dは雌ねじ孔15aに螺合されている。さらに、ニードル弁体20の軸方向の他端部は、螺子部20cから延設された柱状の軸部20eとなっている。軸部20eは、一対の平面部20fを有する二面幅形状になっている。
【0023】
ギアカバー12内には、回転部材としての円筒状のスライドギア21が収容されている。スライドギア21は、スライドギア21の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lと一致するようにギアカバー12内に配置されている。スライドギア21には、一対の平面部21aを有する二面幅形状の挿通孔21hが形成されている。挿通孔21hは、スライドギア21の中心軸線が延びる方向(スライドギア21の軸方向)に沿って延びている。ニードル弁体20の軸部20eは、挿通孔21hに挿通されている。軸部20eの各平面部20fは、挿通孔21hの各平面部21aにそれぞれ対面している。
【0024】
ギアカバー12における流路形成ハウジング13とは反対側の端部には、樹脂製の操作部材22が回転可能に取り付けられている。操作部材22は、有蓋円筒状の蓋部22aと、蓋部22aの内面の中央部から突設された柱状の挿通部22bとを備える。挿通部22bは、一対の平面部22cを有する二面幅形状になっている。操作部材22の挿通部22bは、ギアカバー12における流路形成ハウジング13とは反対側の端部に形成された孔12aを介してギアカバー12内に挿通され、スライドギア21の挿通孔21hに挿通されている。挿通部22bの各平面部22cは、挿通孔21hの各平面部21aにそれぞれ対面している。挿通孔21h内において、挿通部22bと軸部20eとは、ニードル弁体20の軸方向において互いに離間している。
【0025】
操作部材22を回転操作すると、スライドギア21が操作部材22と一体回転するとともに、スライドギア21の回転に伴ってニードル弁体20もスライドギア21と一体回転する。すなわち、操作部材22は、スライドギア21を介してニードル弁体20と一体回転する。したがって、スライドギア21は、操作部材22及びニードル弁体20と一体回転する。
【0026】
ニードル弁体20が正方向へ回転すると、螺子部20cが雌ねじ孔15aに対して螺退して、ニードル弁体20が、バルブハウジング11の軸方向に沿って操作部材22に向けて移動する。これにより、弁部20aが流路13aに対して離間して、流路13aから弁室13bに流れ込むエアの流量が増大し、流路13aから弁室13b、導出孔13c及び通路14aを介して流体圧機器に供給されるエアの流量が増大する。
【0027】
一方、ニードル弁体20が正方向とは逆方向へ回転すると、螺子部20cが雌ねじ孔15aに対して螺進して、ニードル弁体20が、バルブハウジング11の軸方向に沿って操作部材22から離れる方向へ移動する。これにより、弁部20aが流路13aに対して接近して、流路13aから弁室13bに流れ込むエアの流量が減少し、流路13aから弁室13b、導出孔13c及び通路14aを介して流体圧機器に供給されるエアの流量が減少する。
【0028】
ナット15とスライドギア21との間には第1付勢ばね24が介在されている。第1付勢ばね24は、スライドギア21をギアカバー12における孔12a周りの内端面に向けて付勢している。ギアカバー12内におけるスライドギア21の周囲には、ニードル弁体20の回転数を示す表示部としての第1目盛り30a及び第2目盛り30bを有する円筒状の表示リング30が回転可能に支持されている。
【0029】
図3に示すように、表示リング30の外周面には、数字「0」〜「13」が、第1目盛り30aとして、表示リング30の周方向に並んで印字されている。また、表示リング30の外周面において、第1目盛り30aに対して表示リング30の軸方向にずれた位置には、数字「0」〜「13」が、第2目盛り30bとして、表示リング30の周方向に並んで印字されている。表示リング30は、表示リング30の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lと一致するようにギアカバー12内に配置されている。表示リング30における軸方向端部には、円環状のギア部31が設けられている。ギア部31は、表示リング30の周方向に沿って凹凸が連続する三角波形状である。
【0030】
図1(a)に示すように、ギアカバー12には、第1目盛り30aをギアカバー12外へ臨ませる表示窓としての第1表示窓16が形成されている。第1表示窓16は、略六角形状である。第1表示窓16の内周縁におけるギアカバー12の軸方向において対向する部位には、第1表示窓16の内方へ三角状に突出する指標部16aがそれぞれ形成されている。図1(b)に示すように、ギアカバー12には、第2目盛り30bをギアカバー12外へ臨ませる表示窓としての第2表示窓17が形成されている。第2表示窓17は、四角形状である。よって、第1表示窓16及び第2表示窓17は形状が異なっている。第1表示窓16及び第2表示窓17は、ギアカバー12の周方向において180度離れた位置であって且つ、ギアカバー12の軸方向においてずれた位置に配置されている。
【0031】
図4に示すように、ギアカバー12の軸方向において、ギアカバー12の内面における表示リング30のギア部31と対向する部位には、ギア部31と係合可能な円環状の係合部12bが形成されている。係合部12bは、ギアカバー12の内面におけるギア部31と対向する部位においてギアカバー12の周方向に沿って凹凸が連続する三角波形状である。
【0032】
図2に示すように、表示リング30と挿入筒13fとの間には第2付勢ばね25が介在されている。第2付勢ばね25は、表示リング30を係合部12bに向けて付勢している。そして、第2付勢ばね25の付勢力によって表示リング30が係合部12bに向けて付勢されて、ギア部31と係合部12bとが係合した状態では、表示リング30の回転が規制されている。
【0033】
スライドギア21の外周面には、突設部40が二つ突設されている。各突設部40は、ギアカバー12とスライドギア21との間に設けられている。各突設部40は、スライドギア21の外周面において、スライドギア21の周方向における180度間隔となる二箇所に配置されている。各突設部40は、ニードル弁体20の中心軸線Lを中心とした同一の同心円上に設けられている。また、各突設部40は、ギアカバー12の軸方向において、表示リング30よりも操作部材22寄りに配置されている。
【0034】
図5に示すように、突設部40は、噛合部41及び切換部42を有する。噛合部41及び切換部42は、スライドギア21の軸方向において互いに反対方向に先細っている。噛合部41は、ギア部31に対してニードル弁体20の中心軸線Lに沿った方向において対向配置されている。噛合部41は、切換部42から表示リング30のギア部31に向かうにつれて互いに接近しながら直線状に延びる一対の第1傾斜面41aを有する。切換部42は、噛合部41から操作部材22に向かうにつれて互いに接近しながら直線状に延びる一対の第2傾斜面42aを有する。第1傾斜面41aと第2傾斜面42aとは連続している。両第1傾斜面41aの長さL1は同じ長さである。両第2傾斜面42aの長さL2は同じ長さである。第2傾斜面42aの長さL2は、第1傾斜面41aの長さL1よりも長くなっている。
【0035】
図6に示すように、ギアカバー12の内周面には、一対の動作規制部51が、ギアカバー12の周方向において互いに間隔を置いて突設されている。一対の動作規制部51は、ニードル弁体20の中心軸線Lを中心とした同一の同心円上に設けられている。また、一対の動作規制部51は、ギアカバー12の軸方向において、表示リング30よりも操作部材22寄りに配置されている。さらに、一対の動作規制部51における表示リング30側の部位は、係合部12bの一部を形成している。一方の動作規制部51は、噛合部41の一方の第1傾斜面41aと摺接可能な摺接面51aを有するとともに、他方の動作規制部51は、噛合部41の他方の第1傾斜面41aと摺接可能な摺接面51aを有する。
【0036】
さらに、ギアカバー12の内周面には、ギアカバー12の軸方向に沿って延びる切換ギア部52が突設されている。切換ギア部52は、ギアカバー12とスライドギア21との間に設けられている。また、切換ギア部52は、ギアカバー12の軸方向において、一対の動作規制部51よりも操作部材22寄りであって、且つギアカバー12の周方向において一対の動作規制部51の間に配置されている。切換ギア部52における表示リング30側の端部には、表示リング30に向かうにつれて互いに接近しながら直線状に延びる一対のテーパ面52aが形成されている。一方のテーパ面52aは、切換部42の一方の第2傾斜面42aと摺接可能であるとともに、他方のテーパ面52aは、切換部42の他方の第2傾斜面42aと摺接可能である。切換ギア部52及び各突設部40は、ニードル弁体20の中心軸線Lを中心とした同一の同心円上に設けられている。
【0037】
図7に示すように、ギアカバー12と流路形成ハウジング13とは、ギアカバー12を挿入筒13fに対して回転可能とした状態で、ギアカバー12と挿入筒13fとの抜け止めを規制する抜け止め部材70によって互いに抜け止めが規制された状態で組み付けられている。抜け止め部材70は、互いに平行に延びる一対の挿入部70aと、各挿入部70aの端部同士を連結するとともに円弧状に延びる連結部70bとを備える。ギアカバー12には、各挿入部70aが挿入される一対の挿入溝12cが形成されている。また、ギアカバー12の外周面には、一対の挿入溝12cを繋ぐとともに円弧状に延びる係止溝12dが形成されている。係止溝12dには、抜け止め部材70の連結部70bが係止可能になっている。
【0038】
図8に示すように、ギアカバー12の内周面において、一対の挿入溝12c及び係止溝12dよりも流路形成ハウジング13寄りには、ローレット加工が施されたローレット部12eが設けられている。また、ギアカバー12における流路形成ハウジング13寄りの端部には、ギアカバー12の軸方向に延びる弾性片12kが複数突出している。複数の弾性片12kは、ギアカバー12の周方向に沿って配列される円弧形状である。各弾性片12kにおける流路形成ハウジング13寄りの端部には、外方に突出する鍔部12fが設けられている。
【0039】
図2に示すように、複数の弾性片12kの周囲には、挿入筒13fに対するギアカバー12の回転を規制するリング状のロック部材71が装着されている。ロック部材71の内周面には、流路形成ハウジング13に向かうにつれてテーパ状に拡径していく拡径部71aが形成されている。拡径部71aは、ロック部材71を流路形成ハウジング13に向けて移動させると、各弾性片12kの鍔部12fをギアカバー12の内方に向けて押圧可能になっている。
【0040】
図8に示すように、挿入筒13fの外周面には、一対の挿入部70aが係合可能な環状溝13gが形成されている。また、挿入筒13fにおける環状溝13gよりもギアカバー12とは反対側の外周面には、ローレット加工が施されたローレット部13eが設けられている。ギアカバー12のローレット部12eと挿入筒13fのローレット部13eとは互いに噛合可能になっている。
【0041】
そして、挿入筒13fをギアカバー12内に挿入し、各挿入部70aが各挿入溝12cに挿入されるとともに挿入筒13fの環状溝13gに係合することで、ギアカバー12と流路形成ハウジング13とが互いに抜け止めされている。ギアカバー12と流路形成ハウジング13とが抜け止め部材70によって抜け止めされた状態において、ロック部材71を流路形成ハウジング13から離れる方向へ移動させた状態では、ギアカバー12のローレット部12eと挿入筒13fのローレット部13eとは互いに噛合されておらず、挿入筒13fに対するギアカバー12の回転が許容される。
【0042】
一方、ギアカバー12と流路形成ハウジング13とが抜け止め部材70によって抜け止めされた状態において、ロック部材71を流路形成ハウジング13に向けて移動させた状態では、拡径部71aが、各弾性片12kの鍔部12fをギアカバー12の内方に向けて押圧し、各弾性片12kがギアカバー12の内方に撓む。これにより、ギアカバー12のローレット部12eと挿入筒13fのローレット部13eとが互いに噛合され、挿入筒13fに対するギアカバー12の回転が規制される。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図9(a)に示すように、操作部材22が正方向へ回転操作されると、スライドギア21が操作部材22と一体回転し、各突設部40が、ニードル弁体20の中心軸線Lを回転中心として回転する。
【0044】
図9(b)に示すように、スライドギア21の回転運動により、一方の突設部40が切換ギア部52に当接する。具体的には、切換部42の一方の第2傾斜面42aが、切換ギア部52の一方のテーパ面52aに当接する。さらに、スライドギア21の回転運動により、切換部42の一方の第2傾斜面42aが一方のテーパ面52aに摺接しながらスライドギア21が移動することで、スライドギア21が、一方のテーパ面52aに案内されて、回転運動を維持しつつも、第1付勢ばね24の付勢力に抗してニードル弁体20の軸方向へナット15に向けて直線運動する。切換部42の一方の第2傾斜面42aが一方のテーパ面52aに摺接し、且つ第1付勢ばね24の付勢力に抗しながらスライドギア21が回転運動しているとき、スライドギア21の回転方向に負荷トルクが生じる。
【0045】
図9(c)に示すように、スライドギア21が、回転運動を維持しつつもニードル弁体20の軸方向へナット15に向けて直線運動すると、噛合部41がギア部31と噛合する。このとき、第2傾斜面42aの長さL2は、第1傾斜面41aの長さL1よりも長くなっているため、第2傾斜面42aの長さL2が、第1傾斜面41aの長さL1と同じ、もしくは短い場合に比べると、一方の第2傾斜面42aと一方のテーパ面52aとの摺接が維持され易くなっている。
【0046】
図9(d)に示すように、スライドギア21が、回転運動を維持しつつもニードル弁体20の軸方向へナット15に向けてさらに直線運動すると、噛合部41が、ギア部31と噛み合った状態で表示リング30を押圧する。すると、表示リング30は、第2付勢ばね25の付勢力に抗して、ギア部31が係合部12bに対して離間する方向へ移動する。
【0047】
図10(a)に示すように、ギア部31と係合部12bとの係合が解除されると、スライドギア21の回転運動が噛合部41及びギア部31を介して表示リング30に伝達され、表示リング30が回転運動する。すなわち、スライドギア21から表示リング30への回転運動の伝達は、ニードル弁体20の中心軸線Lに沿った方向での噛合部41とギア部31との連結によって伝達される。さらに、スライドギア21が回転運動して、突設部40が切換ギア部52の頂点を越えると、噛合部41の一方の第1傾斜面41aが、一方の動作規制部51の摺接面51aに当接する。さらに、スライドギア21が第1付勢ばね24の付勢力によって弾かれるようにして、ニードル弁体20の軸方向へギアカバー12における孔12a周りの内端面に向けて一気に押し上げられるように直線運動する。そして、スライドギア21の回転運動により、噛合部41の一方の第1傾斜面41aが一方の動作規制部51の摺接面51aに摺接しながらスライドギア21が移動する。
【0048】
図10(b)に示すように、スライドギア21は、回転運動を維持しつつも、第1付勢ばね24の付勢力によって、切換部42の他方の第2傾斜面42aが他方のテーパ面52aに摺接しながら移動する。また、表示リング30は、回転運動を維持しつつも、第2付勢ばね25の付勢力によって係合部12bに向けて直線運動する。
【0049】
図10(c)に示すように、表示リング30が、第2付勢ばね25の付勢力によって係合部12bに向けて直線運動し、ギア部31が係合部12bに係合されると、表示リング30の回転が規制される。
【0050】
これにより、第1表示窓16内には、操作部材22の回転操作が行われる前の第1目盛り30aの値から0.5加算された値に相当する部位が、各指標部16aによって指し示される。そして、各指標部16aによって指し示された第1目盛り30aの部位を目視することにより、操作部材22の回転量が表示されるとともに、この回転量に基づく流路13aの開度が計数化される。また、第2表示窓17には、操作部材22の回転操作が行われる前の第2目盛り30bの値から0.5加算された値に相当する部位が、第2表示窓17内の中央部に表示される。そして、第2表示窓17内の中央部に表示された第2目盛り30bの部位を目視することにより、操作部材22の回転量が表示されるとともに、この回転量に基づく流路13aの開度が計数化される。なお、第1表示窓16及び第2表示窓17には同じ値に相当する部位の第1目盛り30a及び第2目盛り30bが表示されるようになっている。
【0051】
さらに、操作部材22が正方向へさらに半回転すると、スライドギア21の回転運動により、他方の突設部40が切換ギア部52に当接し、図9及び図10にしたがって説明した動作が再度行われる。つまり、本実施形態では、操作部材22の1回転内での表示リング30の回転動作回数が2回となっている。
【0052】
また、操作部材22が正方向とは逆方向へ回転操作されると、スライドギア21の回転運動により、切換部42の他方の第2傾斜面42aが、切換ギア部52の他方のテーパ面52aに当接する。さらに、スライドギア21の回転運動により、切換部42の他方の第2傾斜面42aが他方のテーパ面52aに摺接しながらスライドギア21が移動することで、スライドギア21が、他方のテーパ面52aに案内されて、回転運動を維持しつつも、第1付勢ばね24の付勢力に抗してニードル弁体20の軸方向へナット15に向けて直線運動する。
【0053】
そして、噛合部41がギア部31と噛合して、ギア部31と係合部12bとの係合が解除されると、スライドギア21の回転運動が噛合部41及びギア部31を介して表示リング30に伝達され、表示リング30が回転運動する。さらに、スライドギア21が回転運動すると、噛合部41の他方の第1傾斜面41aが、他方の動作規制部51の摺接面51aに当接する。そして、スライドギア21の回転運動により、噛合部41の他方の第1傾斜面41aが他方の動作規制部51の摺接面51aに摺接しながらスライドギア21が移動する。これにより、スライドギア21が、摺接面51aに案内されて、回転運動を維持しつつも、第1付勢ばね24の付勢力によってニードル弁体20の軸方向へギアカバー12における孔12a周りの内端面に向けて直線運動する。
【0054】
さらに、スライドギア21は、回転運動を維持しつつも、第1付勢ばね24の付勢力によって、切換部42の一方の第2傾斜面42aが一方のテーパ面52aに摺接しながら移動する。また、表示リング30は、回転運動を維持しつつも、第2付勢ばね25の付勢力によって係合部12bに向けて直線運動する。表示リング30が、第2付勢ばね25の付勢力によって係合部12bに向けて直線運動し、ギア部31が係合部12bに係合されると、表示リング30の回転が規制される。
【0055】
これにより、第1表示窓16内には、操作部材22の回転操作が行われる前の第1目盛り30aの値から0.5減算された値に相当する部位が、各指標部16aによって指し示される。また、第2表示窓17には、操作部材22の回転操作が行われる前の第2目盛り30bの値から0.5減算された値に相当する部位が、第2表示窓17内の中央部に表示される。
【0056】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)表示リング30における軸方向端部にギア部31を設けた。また、スライドギア21の外面に、ギア部31と噛合可能な噛合部41を突設した。さらに、ギアカバー12とスライドギア21との間に切換ギア部52及び切換部42を備え、切換ギア部52と切換部42との当接によって、スライドギア21が、回転運動を維持しつつ、ニードル弁体20の中心軸線Lに沿った方向へ直線運動し、噛合部41とギア部31とが噛合するようにした。これによれば、スライドギア21の回転運動が噛合部41及びギア部31を介して表示リング30に伝達される。すなわち、スライドギア21から表示リング30への回転運動の伝達は、ニードル弁体20の中心軸線Lに沿った方向での噛合部41とギア部31との連結によって伝達される。このため、従来技術のように、スライドギア21から表示リング30への回転運動の伝達が、ニードル弁体20の中心軸線Lに対して直交する方向へ伝達される構成に比べると、流量制御弁10におけるニードル弁体20の中心軸線Lに対して直交する方向への体格を小型化することができる。
【0057】
(2)切換ギア部52及び切換部42は、ニードル弁体20の中心軸線Lを中心とした同一の同心円上に設けられている。これによれば、切換ギア部52及び切換部42が、ニードル弁体20の中心軸線Lからオフセットした位置を中心とした同一の同心円上に設けられている場合に比べると、流量制御弁10におけるニードル弁体20の中心軸線Lに対して直交する方向への体格を小型化することができる。
【0058】
(3)スライドギア21は、スライドギア21の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lと一致するようにギアカバー12内に配置されている。これによれば、スライドギア21が、スライドギア21の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lに対してオフセットするようにギアカバー12内に配置されている場合に比べて、流量制御弁10におけるニードル弁体20の中心軸線Lに対して直交する方向への体格を小型化することができる。
【0059】
(4)表示リング30は、表示リング30の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lと一致するようにギアカバー12内に配置されている。これによれば、表示リング30が、表示リング30の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lに対してオフセットするようにギアカバー12内に配置されている場合に比べて、流量制御弁10におけるニードル弁体20の中心軸線Lに対して直交する方向への体格を小型化することができる。
【0060】
(5)切換部42が二つ設けられている。これによれば、操作部材22の1回転内での表示リング30の回転動作回数を増やすことができるため、流路13aの開度をより正確に計数化することができる。
【0061】
(6)ギアカバー12は、ギア部31と係合可能な係合部12bを有している。これによれば、ギア部31が係合部12bと係合することで、操作部材22を回転操作していないにも拘わらず、表示リング30が回転動作してしまうことを抑止することができる。
【0062】
(7)流量制御弁10は、ギアカバー12を流路形成ハウジング13に対して回転可能とした状態で、ギアカバー12と流路形成ハウジング13との抜け止めを規制する抜け止め部材70と、流路形成ハウジング13に対するギアカバー12の回転を規制するロック部材71とを備えた。これによれば、ギアカバー12が流路形成ハウジング13に対して抜け止め部材70によって抜け止めされた状態で、ギアカバー12を流路形成ハウジング13に対して回転させることができるため、第1表示窓16及び第2表示窓17の位置を容易に変更することができる。そして、第1表示窓16及び第2表示窓17の位置を変更した後、ロック部材71によって、流路形成ハウジング13に対するギアカバー12の回転を規制することで、第1表示窓16及び第2表示窓17の位置を固定することができる。
【0063】
(8)第1表示窓16及び第2表示窓17は形状が異なっている。これによれば、第1表示窓16もしくは第2表示窓17を目視するだけで、流量制御弁10の向きを把握することができるため、組み付け性や作業性を向上させることができる。
【0064】
(9)第2傾斜面42aの長さL2は、第1傾斜面41aの長さL1よりも長くなっている。このため、第2傾斜面42aの長さL2が、第1傾斜面41aの長さL1と同じ、もしくは短い場合に比べると、各第2傾斜面42aと各テーパ面52aとの摺接が維持され易くなる。その結果、スライドギア21が、回転運動しつつも、ニードル弁体20の軸方向へ安定的に直線運動し易くなる。
【0065】
(10)切換部42の一方の第2傾斜面42aが一方のテーパ面52aに摺接し、且つ第1付勢ばね24の付勢力に抗しながらスライドギア21が回転運動しているとき、スライドギア21の回転方向には負荷トルクが生じている。そして、スライドギア21が回転運動して、突設部40が切換ギア部52の頂点を越えると、スライドギア21が第1付勢ばね24の付勢力によって弾かれるようにして、ニードル弁体20の軸方向へギアカバー12における孔12a周りの内端面に向けて一気に押し上げられるように直線運動する。操作部材22を回転操作している操作者は、このスライドギア21が一気に押し上げられるように直線運動する感覚を感知することで、表示リング30の回転が行われたことを知ることができる。
【0066】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図11に示すように、操作部材22の挿通部22bに、一対の平面部22dを有する二面幅形状の挿入孔22hが形成されていてもよい。また、スライドギア21は、操作部材22の挿通部22bが挿入される円孔状の第1挿入部21bと、第1挿入部21bに連続するとともに一対の平面部21cを有する二面幅孔形状の第2挿入部21dとを有していてもよい。そして、ニードル弁体20の軸部20eが第2挿入部21dを貫通して、挿入孔22hに挿入されており、軸部20eの各平面部20fが、第2挿入部21dの各平面部21c及び挿入孔22hの各平面部22dにそれぞれ対面していてもよい。これによれば、操作部材22を回転操作すると、ニードル弁体20が操作部材22と一体回転するとともに、ニードル弁体20の回転に伴ってスライドギア21もニードル弁体20と一体回転する。
【0067】
図11に示すように、表示リング30の内側に、スライドギア21をギアカバー12における孔12a周りの内端面に向けて付勢する第1付勢ばね24が配置されていてもよく、第1付勢ばね24の配置位置は特に限定されるものではない。
【0068】
図11に示すように、ナット15と表示リング30との間に、表示リング30を係合部12bに向けて付勢する第2付勢ばね25が介在されていてもよく、第2付勢ばね25の配置位置は特に限定されるものではない。
【0069】
図12に示すように、噛合部41と切換部42とが互いに独立して配置されていてもよい。そして、噛合部41と切換部42とが、スライドギア21の周方向において互いに90度ずつずれた位置に配置されていてもよい。
【0070】
・ 実施形態において、切換ギア部52及び切換部42が、ニードル弁体20の中心軸線Lからオフセットした位置を中心とした同一の同心円上に設けられていてもよい。
・ 実施形態において、スライドギア21が、スライドギア21の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lに対してオフセットするようにギアカバー12内に配置されていてもよい。
【0071】
・ 実施形態において、表示リング30が、表示リング30の中心軸線がニードル弁体20の中心軸線Lに対してオフセットするようにギアカバー12内に配置されていてもよい。
【0072】
・ 実施形態において、突設部40の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
・ 実施形態において、第2傾斜面42aの長さL2が、第1傾斜面41aの長さL1と同じであってもよい。
【0073】
・ 実施形態において、第1表示窓16及び第2表示窓17の形状が同じであってもよい。
・ 実施形態において、ギアカバー12に第1表示窓16が形成されていなくてもよい。
【0074】
・ 実施形態において、ギアカバー12に第2表示窓17が形成されていなくてもよい。
・ 実施形態において、ギアカバー12に係合部12bが形成されていなくてもよい。
【0075】
・ 実施形態において、操作部材22が半回転すると、操作部材22の回転操作が行われる前の第1目盛り30a及び第2目盛り30bの値から1加算もしくは減算した値が、第1表示窓16及び第2表示窓17から表示されるようにしてもよい。
【0076】
・ 実施形態において、第1目盛り30a及び第2目盛り30bとして、アルファベットや記号等を用いてもよい。要は、操作部材22の回転量に基づく流路13aの開度が計数化できるものであればよい。
【0077】
・ 実施形態において、抜け止め部材70が設けられていなくてもよい。
・ 実施形態において、ロック部材71が設けられていなくてもよい。
・ 実施形態において、ニードル弁体20の軸部20eは、操作部材22及びスライドギア21を軸部20eに対して回転を規制する構成であれば、二面幅形状でなくてもよい。
【0078】
・ 実施形態において、表示リング30のギア部31を径方向に段差を有する構成にし、ギア部31の外周側がギアカバー12の係合部12bと噛み合い、ギア部31の内周側がスライドギア21の噛合部41と噛み合うようにしてもよい。
【0079】
・ 実施形態において、表示リング30のギア部31のギア形状が、ギアカバー12の係合部12b及びスライドギア21の噛合部41の形状と同じでなくてもよい。
・ 実施形態において、流体として、液体の流量を制御する流量制御弁10であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…流量制御弁、11…バルブハウジング、12…ギアカバー、12b…係合部、13…流路形成ハウジング、13a…流路、16…表示窓としての第1表示窓、17…表示窓としての第2表示窓、20…ニードル弁体、21…回転部材としてのスライドギア、22…操作部材、30…表示リング、30a…表示部としての第1目盛り、30b…表示部としての第2目盛り、31…ギア部、41…噛合部、42…切換部、52…切換ギア部、70…抜け止め部材、71…ロック部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14