(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1において採用されている動力伝達の手法としてのワイヤー駆動には次のような問題がある。
【0009】
第一に、ワイヤーは「伸び」や「切れ」等のおそれがあるため、頻繁に交換しなければならない。例えば上述した「da Vinci surgical system」では、約10回の手術につきワイヤー交換が必要となる。しかも、ワイヤーは複数のギアやプーリに巻回されているため、取り外しや装着に非常な手間を要する。これにより、ランニングコスト及びメンテナンス負荷の増大を招いている。
【0010】
第二に、ワイヤーは伸縮するため、関節や把持部の制御精度に限界がある。また、ワイヤーは一方向(引き方向)にしか動力を伝達できないという欠点もある。
【0011】
第三に、ワイヤーは滅菌・洗浄が難しいという問題がある。このため、従来の多自由度マニピュレータでは、術前、術後の滅菌・洗浄作業が非常に煩雑である。
【0012】
また、特許文献1において採用されている動力伝達の手法としてのリンク機構には次のような問題がある。
【0013】
第一に、複数のリンクからなる複数のリンク機構を備えた場合、部品点数が増え、小型化、軽量化が困難となり、製品コストが増大する。
【0014】
第二に、複数のリンク機構によって回転動作を行わせると、捕捉器具(例えば特許文献1の第1支持体16)の屈曲半径(言い換えると、首振り半径)が大きくなり、狭小な部位に対して行われる手術時の患部に近づくための滑らかな動きが困難となる。この不具合は、ギアやプーリを用いたワイヤー駆動においても同様に生じる。
【0015】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて案出され、患部への処置を施す先端部への動力伝達手段としてワイヤーを廃止でき、少ない部品点数で小型化、軽量化、コスト低減が可能であり、更に、患部への容易なアプローチが可能となるマニピュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、矩形状の横板ばねと、前記横板ばねの板面に垂直な板面を有して起立しかつ前記横板ばねの長手方向一端に基端が接続され、前記横板ばねの板幅方向の一方に突出するとともに、前記横板ばねの長手方向に沿って延在しかつ延在方向先端が前記突出の方向と反対方向に曲がる屈曲部となる湾曲縦板ばねと、前記屈曲部の先端に接続され、前記横板ばねの板面に垂直な回転中心で支持されて回転自在となる軸体と、前記軸体の外周から半径方向に突出して設けられた作動部と、を含む、可撓作動体を少なくとも1つ有する、マニピュレータを提供する。
【0017】
このマニピュレータによれば、横板ばねと、湾曲縦板ばねと、軸体とが、同一面上で直列的に配置されて、可撓作動体が構成される。湾曲縦板ばねは、横板ばねに対し、板面が起立する向きで接続される。可撓作動体は、横板ばねの長手方向他端が、長手方向に沿う方向で押圧されると、軸体が上記の同一平面内で移動不能に支持されている場合、湾曲縦板ばねが更に湾曲する方向に変形する。横板ばねと湾曲縦板ばねの板面とが直交するので、湾曲縦板ばねの変形方向が90°変わる。湾曲縦板ばねは、この変形によって蓄えられた内部応力の殆どが弾性復元力となる。この弾性復元力の一部は、軸体に対し、モーメントを生じさせる軸体外周の接線方向の分力として作用する。
【0018】
また、本発明は、前記横板ばねと前記湾曲縦板ばねとが接続された入隅の前記横板ばねに、一対の直交する辺部を有する補強部の一方の前記辺部が固定されるとともに、前記入隅の前記湾曲縦板ばねに前記補強部の他方の前記辺部が固定される、マニピュレータを提供する。
【0019】
このマニピュレータによれば、横板ばねと湾曲縦板ばねとの接続部が補強部によって補強され、剛性が高められる。これにより、横板ばねから伝わる力によって、湾曲縦板ばねに捩れが生じにくくなる。その結果、横板ばねから湾曲縦板ばねへ伝わる力の伝達効率を高めることができる。
【0020】
また、本発明は、一対の前記可撓作動体を、備え、一対の前記可撓作動体は、一方の前記可撓作動体の前記湾曲縦板ばねの湾曲の突出方向に対して他方の前記可撓作動体の湾曲の突出方向が反対となるように重ねられるとともに、一対の前記可撓作動体のそれぞれの前記軸体を貫通した同一のピンによって前記回転中心で回転自在に連結され、一対の前記可撓作動体における一対の前記横板ばねの長手方向他端から長手方向中間までが外筒の内部に収容される、マニピュレータを提供する。
【0021】
このマニピュレータによれば、一対の可撓作動体の湾曲縦板ばねの突出方向が逆向きとなるので、それぞれの横板ばねの長手方向他端(つまり、作動部側とは反対側)を同時に押したり引いたりすることにより、それぞれの作動部を接近離反させることができる。つまり、作動部が例えば腹腔鏡下手術における鉗子やピンセット等の捕捉器具であれば挟持が可能となる。また、このマニピュレータでは、一対の横板ばねの長手方向他端(つまり、作動部側とは反対側)を同時に逆方向に押したり引いたりすることにより、一対の作動部を軸体の回転中心を中心に同方向に回転させることができる。つまり、作動部が例えば腹腔鏡下手術における鉗子やピンセット等の捕捉器具であれば捕捉器具を閉じたまま正逆回転させることができる。
【0022】
また、本発明は、前記軸体の回転中心が、前記横板ばねの板幅方向の中央を通る軸線上に配置される、マニピュレータを提供する。
【0023】
このマニピュレータによれば、横板ばねの軸線の延長線上に1本のピンによってそれぞれの軸体の回転中心が共用的に配置されかつ固定される。これにより、マニピュレータは、一対の湾曲縦板ばねの湾曲方向突出端同士の突出幅を小さく抑制しながら、湾曲形状の確保が可能となる。
【0024】
また、本発明は、前記ピンの両端を支持するホルダ、を更に備え、前記ホルダには、一対の前記可撓作動体のそれぞれの前記横板ばねと平行に挟むとともに、前記横板ばねと同方向に延在する一対の外側横板ばねの一端が接続され、一対の前記外側横板ばねは、長手方向他端から長手方向中間までが前記外筒の内部に収容される、マニピュレータを提供する。
【0025】
このマニピュレータによれば、一対の横板ばねの外側に、これらを挟んで一対の外側横板ばねが配置される。つまり、外筒には、一対の横板ばねと、一対の外側横板ばねとが4層に配置される。これらの一対の横板ばねと一対の外側横板ばねとは、それぞれ独立して押し引きされる。一対の外側横板ばねは、長手方向一端(つまり、作動部側)がホルダに固定される。外筒とホルダとは離間して所定幅の空隙を介して配置される。従って、外筒とホルダとの間には、4層に重なる一対の横板ばねと、それらを挟む一対の外側横板ばねのみが露出する。マニピュレータは、一対の外側横板ばねがそれぞれ逆方向に押し引きされると、一対の外側横板ばねがともに一方の外側横板ばね側に傾く方向又は他方の外側横板ばね側に傾く方向に変形(屈曲)する。ホルダは、この一対の外側横板ばねの屈曲によって変位(傾動)する。この際、一対の外側横板ばねの間に配置されている一対の横板ばねも受動的に同方向に屈曲する。
【0026】
また、本発明は、前記ホルダには、一対の前記可撓作動体のそれぞれの前記湾曲縦板ばねの湾曲外面に接する一対のガイドが設けられている、マニピュレータを提供する。
【0027】
このマニピュレータによれば、湾曲縦板ばねの更に湾曲する方向の変形が、湾曲外面に接するガイドによって規制される。これにより、軸体からの反力による湾曲縦板ばねの湾曲方向の変形が規制される。その結果、軸体へ大きなモーメントを作用させることが可能となる。
【0028】
また、本発明は、前記外筒の内面には、一対の前記可撓作動体のそれぞれの前記横板ばねの長手方向に沿って、それぞれ一対の側端面に接する一対のスペーサが設けられている、マニピュレータを提供する。
【0029】
このマニピュレータによれば、横板ばねを押し引きする力が、軸体を回転させるモーメントに変換されて伝達される。この際、可撓作動体は、軸体からの反力によって横板ばねが板幅方向に移動する力を受ける。可撓作動体は、この横板ばねの板幅方向の移動がスペーサによって規制される。その結果、横板ばねから湾曲縦板ばねへの力の伝達効率を高め、軸体へ大きなモーメントを作用させることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ワイヤーを廃止でき、少ない部品点数で小型化、軽量化、コスト低減が可能であり、しかも、患部への容易なアプローチが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係るマニピュレータを具体的に開示した実施形態(以下、本実施形態という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。なお、以下の本実施形態において、本発明に係るマニピュレータは、例えば低侵襲手術手技における腹腔鏡下手術に用いるマニピュレータを例示して説明する。
【0033】
図1は、本実施形態のマニピュレータ11の外観斜視図である。
【0034】
本実施形態のマニピュレータ11は、マニピュレータ駆動ユニット13に取り付けられる。マニピュレータ駆動ユニット13は、リンクユニット(図示略)に固定される。マニピュレータ11は、リンクユニットに固定されるトロッカー(図示略)に、先端側が挿入される。マニピュレータ11は、トロッカーとともに、リンク駆動ユニット(図示略)により駆動されるリンクユニットによって、1つの回転中心を中心に、多自由度で移動する。
【0035】
マニピュレータ11は、マニピュレータ駆動ユニット13に設けられる回転駆動装置15によって、トロッカーの内側で回転する。また、マニピュレータ11の先端側に設けられた作動部17は、マニピュレータ駆動ユニット13に設けられたスライド駆動装置19によって多自由度で動作する。少なくとも1つの作動部17は、エンドエフェクタを構成する。エンドエフェクタとは、手術器具の実際の作業部分を意味し、例えばクランプ、捕捉器具、はさみ、ホッチキス、持針器を含む。一対の作動部17は、例えばクランプ、捕捉器具、はさみ、ホッチキスなどのエンドエフェクタとして用いることができる。1つの作動部17は、例えば持針器などのエンドエフェクタとして用いることができる。本実施形態において、エンドエフェクタは、1つの作動部17によって構成可能な捕捉器具としても使用可能ではあるが、より具体的に説明するために、一対の作動部17によって構成される捕捉器具を例示して説明する。
【0036】
例えば標準の腹腔鏡下手術において、マニピュレータ11は、腹部の小さい(およそ1/2インチ)切り口に通した上記のトロッカーを介して挿入が行われる。外科医は、マニピュレータ11を介して内部の手術部位に配置したエンドエフェクタを腹部の外側から操作する。外科医は腹腔鏡から内視鏡(図示略)によって撮像された手術部位の画像を表示するモニタ(図示略)で、処置を観察する。同様の内視鏡手技は、例えば、関節鏡、腹膜後腔鏡、骨盤鏡(pelviscopy)、腎盂鏡、膀胱鏡、脳槽鏡(cisternoscopy)、洞房鏡(sinoscopy)、子宮鏡、及び尿道鏡などにおいて採用される。
【0037】
マニピュレータ11は、外筒21を有する。外筒21は、例えばステンレス鋼管により構成され、外径6mmで形成される。上述した「da Vinci surgical system」システムにおける外径8.5mmの外筒よりも細径で形成されている。マニピュレータ11は、作動部17の先端からマニピュレータ駆動ユニット13までの距離が125〜300mmで形成される。なお、外筒21の外周は、更にシースによって覆われる。
【0038】
外筒21の挿入方向基端側(つまり、作動部17側とは反対側)には、エンドキャップ23が固定される。マニピュレータ11は、マニピュレータ駆動ユニット13に設けられた回転駆動装置15によりエンドキャップ23が回転することで、
図2のe方向に一体回転する。エンドキャップ23の挿入方向前側(つまり、作動部17側)には、ストッパ27が固定される。ストッパ27は、マニピュレータ駆動ユニット13に係合してマニピュレータ11の長手方向の移動を規制する。エンドキャップ23とストッパ27との間には、基端側(つまり、作動部17側とは反対側)より第1外側スライダ29、第1スライダ31、第2スライダ33、第2外側スライダ35の4つのスライダが外筒21の長手方向にそれぞれ移動自在に設けられている。これら4つのスライダ(つまり、第1外側スライダ29、第1スライダ31、第2スライダ33、第2外側スライダ35)は、外筒21に挿入されて先端(つまり、作動部17側)に向かって長尺となる第1外側スライダシャフト37、第1スライダシャフト39、第2スライダシャフト41、第2外側スライダシャフト43のそれぞれ(
図3参照)に連結される。
【0039】
第1外側スライダシャフト37、第1スライダシャフト39、第2スライダシャフト41、第2外側スライダシャフト43のそれぞれは、スライド駆動装置19のボールねじが移動することで、第1外側スライダ29、第1スライダ31、第2スライダ33、第2外側スライダ35の移動によりそれぞれが独立して長手方向に移動(つまり、押し引き)される。外筒21の先端(つまり、作動部17側)に設けられたエンドエフェクタは、これら4つのシャフトによって多自由度で動作する。
【0040】
図2は、
図1に示したマニピュレータ11の先端部の要部拡大斜視図である。
【0041】
マニピュレータ11は、先端部が、一対の可撓作動体と、一対の外側横板ばねと、ホルダ45と、ピン47と、によって構成される。本実施形態において、一対の可撓作動体は、第1可撓作動体49と、第2可撓作動体51とを有する。また、一対の外側横板ばねは、第1外側横板ばね53と、第2外側横板ばね55とを有する。第1外側横板ばね53、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51、及び第2外側横板ばね55は、外筒21との長手方向に沿って長尺となるように形成され、長手方向一端が外筒21の内部から延出する。なお、本明細書中、一端側の方向とは、マニピュレータ11の先端側(つまり、作動部17側)の方向である。第1外側横板ばね53、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51、及び第2外側横板ばね55は、長手方向他端から長手方向中間までが外筒21に収容される。
【0042】
図3は、
図2に示した可撓作動体と外側横板ばねの分解斜視図である。
【0043】
外筒21の内部において、第1外側横板ばね53は、第1外側スライダシャフト37に接続される。第1可撓作動体49は、第1スライダシャフト39に接続される。第2可撓作動体51は、第2スライダシャフト41に接続される。第2外側横板ばね55は、第2外側スライダシャフト43に接続される。
【0044】
図4は、
図3に示した可撓作動体の斜視図である。
【0045】
マニピュレータ11は、板ばね(例えば後述する横板ばね57、第1外側横板ばね53、第2外側横板ばね55又はこれらの組み合わせ)の押し引きに基づいて、第1可撓作動体49の一部及び第2可撓作動体51の一部をそれぞれ変形させることで、第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51のそれぞれの作動部17を多自由度で動作させる構成を有する。本実施形態において、エンドエフェクタは捕捉器具として説明するので可撓作動体として一対の第1可撓作動体49、第2可撓作動体51が用いられる。
【0046】
第1可撓作動体49、第2可撓作動体51は、同一の物体が上下反転させて用いられる。従って、以下では、第1可撓作動体49を可撓作動体の代表例として説明する。
【0047】
図4に示すように、第1可撓作動体49は、横板ばね57と、湾曲縦板ばね59と、軸体61と、作動部17とが一体で形成される。第1可撓作動体49の材質としては、例えば生体適合性、広い弾性域、耐腐食性に優れるNi−Ti(ニッケルチタン)が用いられる。横板ばね57は、外筒21の長手方向に沿って長い矩形状に形成される。横板ばね57は、溝付きの板ばね形状となっており、このような形状とすることで、変形の単一方向性が増加し、またねじれが抑制され、より高い位置決め精度でマニピュレータ11を動作させることが可能である。つまり、横板ばね57の形状により第1可撓作動体49の変形方向を制御し、エンドエフェクタの位置決めが可能である。横板ばね57は、例えば板厚を0.4mmで形成でき、溝部の板厚を0.2mmで形成できる。
【0048】
湾曲縦板ばね59は、横板ばね57の板面に垂直な板面を有して起立し、横板ばね57の長手方向一端に湾曲縦板ばね59の基端が接続される。湾曲縦板ばね59は、横板ばね57の板幅方向の一方(例えば
図4の紙面左上側に向かう方向)に突出するとともに、横板ばね57の長手方向に沿って延在する。湾曲縦板ばね59は、延在方向先端が、湾曲部63の突出方向と反対方向に曲がる屈曲部の一例としてのR部65となる。湾曲縦板ばね59は、軸体61との接続部分にR部65を設けることにより、第1可撓作動体49の変形動作時に効率的な動力伝達が可能となり、変形動作を行い易くしている。湾曲縦板ばね59は、例えば湾曲部63の板厚を0.3mmで形成できる。
【0049】
軸体61は、湾曲縦板ばね59のR部65の先端が軸体61の外周に接続される。軸体61は、横板ばね57の板面に垂直な回転中心67で支持されて回転自在となる。より具体的には、軸体61にはピン孔69が穿設される。このピン孔69に、回転中心67と同軸でピン47(
図2参照)が挿入される。ピン47の両端は、ホルダ45によって支持される。ホルダ45は、一対の外側横板ばね(つまり、第1外側横板ばね53、第2外側横板ばね55)によって支持される。
【0050】
軸体61は、回転中心67から湾曲部63が突出する側の半径位置を0°とした場合、
図4の反時計回りに略90°の位置の外周にR部65が接続される。R部65は、この外周の0°の位置から90°の位置で軸体61に接続されている。R部65は、例えば外周の0°の位置から120°の範囲で軸体61に接続することがスペース効率上、好ましい。
【0051】
作動部17は、軸体61の外周に回転半径(つまり、半径方向)の外側に突出して設けられる。本実施形態において、作動部17は、基端がR部65の接続位置と略一致する軸体61の外周に接続される。捕捉器具を構成する作動部17は、回転中心67に沿う板幅を有し、突出先端に向かって板幅と板厚とが徐々に減少する略角錐形状で形成される。
【0052】
また、
図3に示すように、マニピュレータ11は、一方の第1可撓作動体49の湾曲部63の突出方向に対して、他方の第2可撓作動体51の湾曲部63の突出方向が反対となるように重ねられる。第1可撓作動体49と第2可撓作動体51とは、一対の軸体61同士が回転中心67に沿う方向で重ねられることで、一対の軸体61と、作動部17とが回転中心67に沿う方向に同一高さとなって組み立てられる。
【0053】
第1可撓作動体49と第2可撓作動体51とは、双方の軸体61に貫通したピン47によって、同一の回転中心67で回転自在に連結される。一体に組み立てられた第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51は、第1可撓作動体49と第2可撓作動体51のそれぞれの横板ばね57の長手方向他端から長手方向中間までが外筒内に収容されている。
【0054】
第1可撓作動体49と第2可撓作動体51とは、軸体61同士が重ねられた状態で、それぞれの作動部17が、交差して配置される。従って、
図3に示す第1可撓作動体49の作動部17は、
図2に示す紙面右下側の作動部17となる。また、
図3に示す第2可撓作動体51の作動部17は、
図2に示す紙面左上側の作動部17となる。このため、一対の作動部17は、第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51が同時に引っ張られることで、相互に接近する(つまり、把持する)方向に回転される。これにより、把持動作の際に、横板ばね57や湾曲縦板ばね59に生じる座屈を回避して、大きな把持力が得られる。
【0055】
第1可撓作動体49は、横板ばね57と湾曲縦板ばね59とが接続された入隅に、直角三角形状の補強部71が固定される。補強部71は、一対の直交する辺部を有する。補強部71は、一方の辺部が横板ばね57に固定される。また、補強部71は、他方の辺部が湾曲縦板ばね59に固定される。これにより、横板ばね57からの力が湾曲縦板ばね59に加えられた際、湾曲縦板ばね59にねじれが生じにくくなっている。
【0056】
また、第1可撓作動体49は、軸体61の回転中心67が、横板ばね57の板幅方向の中央を通る軸線73の延長線上に配置される。つまり、第1可撓作動体49は、ほぼ直線状に配置された横板ばね57、軸体61及び作動部17から、湾曲縦板ばね59のみが片側から膨出した形状となる。
【0057】
図5は、
図3に示した外側横板ばねの斜視図である。
【0058】
マニピュレータ11は、一対の第1外側横板ばね53、第2外側横板ばね55を備えることができる。第1外側横板ばね53、第2外側横板ばね55は、同一の物体が上下反転させて用いることができる。以下、第1外側横板ばね53を外側横板ばねの代表例として説明する。なお、
図5に示す第1外側横板ばね53は、
図3に示した物体が上下反転して示されている。
【0059】
第1外側横板ばね53には、第1可撓作動体49と同様に、例えば生体適合性、広い弾性域、耐腐食性に優れるNi−Ti(ニッケルチタン)が用いられる。第1外側横板ばね53は、外筒21の長手方向に沿って長い矩形状に形成される。第1外側横板ばね53は、横板ばね57と同様に溝付きの板ばね形状となっており、このような形状とすることで、変形の単一方向性が増加し、また、ねじれが抑制され、より高い位置決め精度でマニピュレータ11を動作させることが可能である。つまり、第1外側横板ばね53の形状により第1可撓作動体49の変形方向を制御し、エンドエフェクタの位置決めが可能である。第1外側横板ばね53は、例えば板厚を0.4mmで形成でき、溝部の板厚を0.2mmで形成できる。
【0060】
マニピュレータ11は、重ねられた一対の軸体61を貫通したピン47の両端を支持するホルダ45を備える。ホルダ45には、一対の第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55の一端が接続される。
【0061】
ホルダ45は、
図2に示すように、離間する一対の平行な保持板75を有する。1つの保持板75は、長円を長軸で回転して得られる回転体を、長軸に沿う面で切った先端湾曲面の半筒状に形成される。離間する一対の保持板75同士は、両側がそれぞれ側板77によって接続される。これにより、ホルダ45は、正面視で角穴状の内部空間を有する。上記のピン47は、両端が一対の保持板75に固定される。ホルダ45は、この内部空間に、軸体61や、湾曲縦板ばね59、第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55の一部分を収容する。
【0062】
また、ホルダ45には、一対の平行なガイド79が、それぞれの側板77から外筒21に向かって突出して形成される。一対のガイド79は、一対の第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51における湾曲縦板ばね59のそれぞれの湾曲外面81(
図3参照)に接する。ガイド79は、湾曲縦板ばね59の湾曲外面81に外側から接することで、湾曲縦板ばね59の外側へ膨出する変形動作を規制するので、R部65へ動力を効果的に伝達することができ、変形動作が行い易くなる。
【0063】
また、マニピュレータ11は、外筒21の内面に、第1可撓作動体49と第2可撓作動体51のそれぞれの横板ばね57を、板幅方向両側から挟む一対のスペーサ83が固定されている。一対のスペーサ83は、一対の横板ばね57の長手方向に沿うそれぞれ一対の側端面に接する。これにより、一対のスペーサ83は、外筒内おける横板ばね57の板幅方向の移動を規制する。
【0064】
次に、マニピュレータ11のスライド駆動装置19及び回転駆動装置15を制御するコントロール部85について説明する。
【0065】
マニピュレータ11は、
図1に示すコントロール部85によって動作が制御される。コントロール部85は、制御コンピュータ87と、モータドライバ89とを有する。コントロール部85は、スライド駆動装置19と、回転駆動装置15との動作を制御する。スライド駆動装置19は、ボールねじ91と、DCモータ93とを備える。スライド駆動装置19は、
図1に示す外筒21の長手方向における4つの第1外側スライダ29、第1スライダ31、第2スライダ33及び第2外側スライダ35の位置をそれぞれ制御する。スライド駆動装置19は、コントロール部85からの指示に基づき動作する。
【0066】
回転駆動装置15は、ギヤユニット95と、DCモータ97とを備える。回転駆動装置15は、
図1に示す外筒21の長手方向後端におけるエンドキャップ23の回転方向及び回転角度を制御する。回転駆動装置15は、コントロール部85からの指示に基づき動作する。
【0067】
次に、マニピュレータ11の動作を説明する。
【0068】
マニピュレータ11は、作動部17が外筒21に対して多自由度で動作する。即ち、一対の作動部17を接近離反(開閉等)させる方向(
図2の矢印a方向)に移動できる。マニピュレータ11は、一対の作動部17を閉じたまま、軸体61の回転中心67を中心に正逆回転(
図2の矢印b方向に回転)することができる。ホルダ45を外側横板ばねの屈曲の方向(
図2の矢印c方向)に変位させることができる。ホルダ45を、外筒21の中心軸に沿う方向(
図2矢印d方向)へ進退させることができる。なお、マニピュレータ11は、回転駆動装置15により、更にホルダ45及び外筒21をエンドキャップ23を介して一体回転(
図2の矢印e方向)させることができる。
【0069】
図6は、作動部17の変位方向の説明図である。
【0070】
ここで、マニピュレータ11の先端部分における動作の説明を容易とするため動作の方向を定義する。なお、外筒21の先端面は、外筒21の中心軸に直交する面で、中心軸を中心とする円形状とする。このとき、外筒21の中心軸は、「Z軸」とする。ホルダ45が変位していない状態(
図2に示す状態)のマニピュレータ11において、外筒21の先端面を含む面で、Z軸を通り、ピン47の回転中心67と同方向の軸を「X軸」とする。外筒21の先端面を含む面で、Z軸を通り、X軸に直交する軸を「Y軸」とする。回転中心67を回転することで開いた一対の作動部17の挟角は、「θ」とする。板ばねがX軸方向に撓み、ホルダ45が変位(傾動)したとき、ピン47の回転中心67とX軸とが成す角は、「φ」とする。このとき、ピン47の回転中心67とX軸とが交わる点は、屈曲中心Bとする。
【0071】
マニピュレータ11は、外筒21の先端面とピン47までの距離が屈曲可能範囲となってエンドエフェクタを傾動する。外筒21の先端面からピン47の回転中心67までの距離P(
図2参照)は、例えば7.5mmに設定される。この距離Pは、上述した「da Vinci surgical system」における同等の距離9mmよりも短い。これにより、エンドエフェクタが傾動する際の屈曲半径を小さくできる。このことは、例えば腹腔鏡下手術等の狭小な部位(つまり、患部)への滑らかなアプローチの容易性に寄与する。
【0072】
図7は、一対の横板ばね57による作動部17の変位方向を表す動作説明図である。
図8は、一対の外側横板ばねによる作動部17の変位方向を表す動作説明図である。
図9は、作動部17が開いたマニピュレータ11の要部拡大斜視図である。
図10は、作動部17が−Y方向に回転したマニピュレータ11の要部拡大斜視図である。
【0073】
マニピュレータ11は、
図7に示すように、第1可撓作動体49の横板ばね57及び第2可撓作動体51の横板ばね57が同時に押される(つまり、作動部17側に押される)と、一対の軸体61が逆方向に回転する。即ち、
図9に示すように、一対の作動部17が開く。また、マニピュレータ11は、第1可撓作動体49の横板ばね57及び第2可撓作動体51の横板ばね57が同時に引っ張られる(つまり、作動部17側とは反対側に引かれる)と、一対の軸体61が開き時とは逆方向に回転する。即ち、
図2に示すように、一対の作動部17が閉じる。
【0074】
マニピュレータ11は、第1可撓作動体49の横板ばね57が引かれ、第2可撓作動体51の横板ばね57が押されると、
図10に示すように、一対の作動部17が、閉じたまま回転中心67を中心に
図2の時計回りに回転し、−Y軸側に傾動する。また、マニピュレータ11は、第1可撓作動体49の横板ばね57が押され、第2可撓作動体51の横板ばね57が引っ張られると、一対の作動部17が、閉じたまま回転中心67を中心に
図2の反時計回りに回転し、Y軸側に傾動する。
【0075】
マニピュレータ11は、
図8に示すように、第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55が同時に押されると、一対の作動部17がZ方向に進出する。また、マニピュレータ11は、第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55が同時に引っ張られると、一対の作動部17が−Z方向に後退する。なお、これらの進退動作時には、第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51は、従動又は同時に押し引きされる。
【0076】
図11は、作動部17がX方向に変位したマニピュレータ11の要部拡大斜視図である。
【0077】
マニピュレータ11は、第1外側横板ばね53が押され、第2外側横板ばね55が引っ張られると、
図11に示すように、一対の作動部17が、X軸側に傾動する。また、マニピュレータ11は、第1外側横板ばね53が引かれ、第2外側横板ばね55が押されると、一対の作動部17が、−X軸側に傾動する。
【0078】
図12は、作動部17が開いてX方向に変位したマニピュレータ11の要部拡大斜視である。
【0079】
マニピュレータ11は、第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55の押し引き量を変更することで、屈曲中心B(
図6参照)の移動が可能である。また、マニピュレータ11は、屈曲中心Bの移動と同時に、第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51の押し引き量を変更することで、
図12に示すように、一対の作動部17の開閉が可能である。
【0080】
マニピュレータ11は、目標の屈曲角φに対して、制御コンピュータ87でマニピュレータ11の第1外側スライダ29、第1スライダ31、第2スライダ33及び第2外側スライダ35の送り量の目標値を求め、モータドライバ89から制御信号を送信し、スライド駆動装置19において、DCモータ93によりボールねじ91を駆動することで、マニピュレータ11の先端(つまり、エンドエフェクタであってより具体的には一対の作動部17)を動作させる。これにより、マニピュレータ11は、
図12に示すように、エンドエフェクタを目標の屈曲角φに屈曲しながら、一対の作動部17を開閉することができる。更に、マニピュレータ11は、第1外側横板ばね53及び第2外側横板ばね55の押し引き量を変更しながら、第1可撓作動体49及び第2可撓作動体51の押し引き量を変更することで、エンドエフェクタの先端を、Z軸を中心に360°の任意な方向に旋回動作させることができる。
【0081】
次に、上記したマニピュレータ11の構成の作用及び当該作用による効果を具体的に説明する。
【0082】
本実施形態のマニピュレータ11では、横板ばね57と、湾曲縦板ばね59と、軸体61とが、同一面上で直列的に配置されて、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)が構成される。湾曲縦板ばね59は、横板ばね57に対し、板面が起立する向きで接続される。即ち、横板ばね57と湾曲縦板ばね59とは、板面が直交して接続される。軸体61は、横板ばね57の板面に垂直な回転中心67で回転自在に支持される。
【0083】
可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、横板ばね57の長手方向他端が、長手方向に沿う方向で押圧されると、軸体61が上記の同一平面内で移動不能に支持されている場合、湾曲縦板ばね59が更に湾曲する方向に変形する。この変形は、湾曲縦板ばね59の弾性限度内で起こる。このため、可撓作動体には、伸びや収縮(永久ひずみ)が生じない。横板ばね57と湾曲縦板ばね59の板面とが直交するので、湾曲縦板ばね59の変形方向が90°変わる。これにより、湾曲縦板ばね59は、上記の同一平面に沿う変形が可能となる。湾曲縦板ばね59は、この変形によって蓄えられた内部応力の殆どが弾性復元力となる。この弾性復元力の一部は、軸体61に対し、モーメントを生じさせる軸体外周の接線方向の分力として作用する。なお、ホルダ45に、一対のガイド79が設けられたマニピュレータ11では、湾曲縦板ばね59の変形が主にR部65で起こることになる。
【0084】
また、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、横板ばね57の長手方向他端が、長手方向に沿う方向で引っ張られると、湾曲縦板ばね59が湾曲を解消する方向(直線状に近づく方向)に変形する。湾曲縦板ばね59は、この変形によって蓄えられた弾性復元力の一部が、軸体61に対し、上記とは逆方向のモーメントを生じさせる軸体外周の接線方向の分力として作用する。その結果、軸体61は、横板ばね57の押し引きによって、軸体61に設けられた作動部17を、上記の回転中心67を中心に逆方向で回転動作させることが可能となる。
【0085】
更に、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、横板ばね57が、表裏の板面側に変位する方向(
図6のX軸側、−X軸側)の変形を許容する。これにより、可撓作動体は、作動部17の同方向の傾動を妨げることがない。
【0086】
このように可撓作動体を用いたマニピュレータ11は、従来の常套手段であったワイヤーを廃止し、作動部17を多自由度で動作させることができる。
【0087】
可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、ワイヤーのように伸びたり切れたりするおそれがない。よって、耐久性を向上でき、マニピュレータ11の交換回数を極めて少なくすることができる。可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、ワイヤーのように伸びないことから、作動部17の回転精度や位置精度を高めることができる。更に、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、単体の部材であるため、シンプルな機械構成が実現でき、滅菌や洗浄が極めて容易である。しかも、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、ワイヤーのようにギアやプーリに巻回する必要がないので、マニピュレータ11と駆動手段との着脱を簡易化・容易化できる。
【0088】
また、可撓作動体(つまり、第1可撓作動体49、第2可撓作動体51)は、リンク機構のように、複数のリンク、受動関節を用いる必要がない。よって、部品点数を少なくし、小型化、軽量化が容易となる。それに伴って製品コストの低減も容易となる。また、軽量化によってエンドエフェクタの移動質量が小さくなり、慣性力の低減が可能となる。これにより、エンドエフェクタの位置決め制御が容易となるとともに、位置決め精度を高めることができる。また、ワイヤーやプーリ、複数のリンクや受動関節を用いないので、作動部17を軸体61と共に変位させる際の屈曲半径を小さくできる。
【0089】
マニピュレータ11は、横板ばね57と湾曲縦板ばね59の接続部が補強部71によって補強され、剛性が高められる。これにより、横板ばね57から伝わる力によって、湾曲縦板ばね59に捩れが生じにくくなる。その結果、横板ばね57から湾曲縦板ばね59へ伝わる力の伝達効率を高めることができる。
【0090】
マニピュレータ11は、一対の可撓作動体の湾曲縦板ばね59の突出方向が逆向きとなるので、それぞれの横板ばね57の長手方向他端を同時に押したり引いたりすることにより、それぞれの作動部17を接近離反させることができる。つまり、作動部17が捕捉器具であれば挟持が可能となる。作動部17がはさみであれば、切断が可能となる。マニピュレータ11は、一対の横板ばね57の長手方向他端を同時に逆方向に押したり引いたりすることにより、一対の作動部17を軸体61の回転中心67を中心に同方向に回転させることができる。つまり、作動部17が捕捉器具であれば捕捉器具を閉じたまま正逆回転させることができる。
【0091】
また、マニピュレータ11は、一対の湾曲縦板ばね59が逆方向に突出する。これに対し、一対の可撓作動体のそれぞれの横板ばね57は、長手方向及び板幅方向にずれることなく重なる。マニピュレータ11は、横板ばね57の軸線73の延長線上に1本のピン47によってそれぞれの軸体61の回転中心67が共用的に配置されかつ固定される。これにより、マニピュレータ11は、一対の湾曲縦板ばね59の湾曲方向突出端同士の突出幅を小さく抑制しながら、湾曲形状の確保が可能となる。
【0092】
また、マニピュレータ11は、一対の横板ばね57が外筒21の中心軸を挟むようにして、一対の可撓作動体が重ねられる。マニピュレータ11は、更に、一対の横板ばね57の外側に、これらを挟んで一対の外側横板ばね(第1外側横板ばね53、第2外側横板ばね55)が配置される。つまり、外筒21には、一対の横板ばね57と、一対の外側横板ばねとが4層に配置される。これらそれぞれの板ばねは、独立して押し引きされる。一対の外側横板ばねは、長手方向一端がホルダ45に固定される。外筒21の先端面と、ホルダ45とは離間して配置される。従って、外筒21の先端面とホルダ45との間には、4層に重なる一対の横板ばね57と、それらを挟む一対の外側横板ばねとが露出する。
【0093】
マニピュレータ11は、一対の外側横板ばねが逆方向に押し引きされると、一対の外側横板ばねがともに一方の外側横板ばね側に傾く方向、及び一対の外側横板ばねが共に他方の外側横板ばね側に傾く方向に変形(屈曲)する。ホルダ45は、この一対の外側横板ばねの屈曲によって変位する(つまり、傾動する)。この際、一対の外側横板ばねの間に配置されている一対の横板ばね57も同方向の屈曲を許容する。
【0094】
このように、マニピュレータ11は、一対の可撓作動体における横板ばね57の長手方向他端を同時に押し引きすることにより、一対の作動部17を接近離反(開閉)させる方向a(
図2参照)に移動できる(1自由度)。
【0095】
一対の可撓作動体における横板ばね57の長手方向他端を逆方向に押し引きすることにより、一対の作動部17を、軸体61の回転中心67を中心に正逆方向b(
図2参照)に回転することができる(2自由度)。
【0096】
一対の外側横板ばねを逆方向に押し引きすることにより、ホルダ45(即ち、作動部17)を外側横板ばねの屈曲の方向c(
図2参照)に変位させることができる(3自由度)。
【0097】
また、一対の可撓作動体、及び一対の外側横板ばねの全てのばねを長手方向に沿って同方向へ押し引きすることにより、一対の作動部17を、外筒21の中心軸に沿う方向d(
図2参照)へ進退させることができる(4自由度)。
【0098】
即ち、マニピュレータ11は、ワイヤーやリンク機構を用いずに、弾性体の変形を応用し、機械的な動力変換を行うことで、作動部17を多自由度(具体的には4自由度)に動作可能としている。
【0099】
また、このマニピュレータ11では、湾曲縦板ばね59が更に湾曲する方向の変形が、湾曲外面81に接するガイド79によって規制される。これにより、軸体61からの反力による湾曲縦板ばね59の湾曲方向の変形が規制される。その結果、軸体61へ大きなモーメントを作用させることが可能となる。
【0100】
更に、このマニピュレータ11では、横板ばね57を押し引きする力は、軸体61を回転させるモーメントに変換されて伝達される。この際、可撓作動体は、軸体61からの反力によって横板ばね57が板幅方向に移動する力を受ける。可撓作動体は、この横板ばね57の板幅方向の移動がスペーサ83によって規制される。その結果、横板ばね57から湾曲縦板ばね59への力の伝達効率を高め、軸体61へ大きなモーメントを作用させることが可能となる。
【0101】
従って、本実施形態に係るマニピュレータ11によれば、ワイヤーを廃止でき、少ない部品点数で小型化、軽量化、コスト低減が可能であり、しかも、患部への容易なアプローチが可能となる。
【0102】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0103】
尚、上記実施形態では、マニピュレータが可撓作動体を3つ以上有してもよい。