特許第6564688号(P6564688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564688廃水処理および藻類生成に使用するためのデュアルコンパートメントバイオリアクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564688
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】廃水処理および藻類生成に使用するためのデュアルコンパートメントバイオリアクター
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20190808BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20190808BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20190808BHJP
   B01D 65/04 20060101ALI20190808BHJP
   C12P 5/02 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
   C12M1/00 E
   C02F3/12 S
   C02F1/44 F
   C02F1/44 A
   B01D65/04
   !C12P5/02
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-215818(P2015-215818)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2016-86816(P2016-86816A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】14/533,426
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】コーリー・ランカスター
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・イー・トレス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェイ・スティーヴンソン
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0151547(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0200496(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0021566(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルコンパートメントバイオリアクターシステムであって、
従属栄養性有機体を含む第1のコンパートメントと;
独立栄養性有機体を含む第2のコンパートメントと;
第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間に位置する膜サブシステムとを備え;
膜サブシステムは、第1のコンパートメントから第2のコンパートメントへの少なくとも1つの気体および溶質の輸送を可能にするような構成であり;
膜サブシステムは、液体透過性の一体化された疎水性/親水性膜を備え、該疎水性/親水性膜は、気体の輸送のみを可能にする疎水性領域と、流体、溶質および気体の輸送を可能にする親水性領域とを有する、デュアルコンパートメントバイオリアクターシステム。
【請求項2】
第2のコンパートメントが、可視光を通過させることができる透明外壁を備える、請求項1に記載のデュアルコンパートメントバイオリアクターシステム。
【請求項3】
膜サブシステムの少なくとも1つの膜の少なくとも1つの表面をきれいにするような構成の磁気により活性化される要素を含む洗浄デバイスをさらに備える、請求項1に記載のデュアルコンパートメントバイオリアクターシステム。
【請求項4】
膜サブシステムが、前記液体透過性の膜からなり、膜が、第1のコンパートメントおよび第2のコンパートメントと物理的に接触している、請求項1に記載のデュアルコンパートメントバイオリアクターシステム。
【請求項5】
第2のコンパートメントが、第1のコンパートメントの周囲を取り囲んでいる、請求項1に記載のデュアルコンパートメントバイオリアクターシステム。
【請求項6】
請求項1に記載されているデュアルコンパートメントバイオリアクターシステムを用いて、入力物を代謝する方法であって、
第1のコンパートメントに入力物を供給することと;
第1のコンパートメント中、入力物を代謝し、従属栄養性有機体を成長させることと;
第2のコンパートメント中、入力物を代謝し、独立栄養性有機体を成長させることと;
第1のコンパートメントから過剰な従属栄養性有機体を、または第2のコンパートメントから過剰な独立栄養性有機体回収することを含み;
第2のコンパートメントが、透明外壁を備える、方法。
【請求項7】
膜サブシステムが前記液体透過性の膜からなり;膜が、第1のコンパートメントの少なくとも第1の部分の周囲を取り囲んでおり;第2のコンパートメントが、膜の少なくとも第2の部分の周囲を取り囲んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
膜サブシステムが、前記液体透過性の膜からなり、膜が、第1のコンパートメントおよび第2のコンパートメントと直接接触する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
透明外壁に沿って磁石を動かすことによって膜サブシステムの膜を洗浄することをさらに含み、
第1の磁気ブラシが、膜の少なくとも1つの表面をきれいにするような構成である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
第1のコンパートメントの従属栄養性バイオマスを再循環させる方向に対して向流になるように、第2のコンパートメントの独立栄養性バイオマスを連続的に再循環させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理および藻類生成に使用するためのデュアルコンパートメントバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
廃水は、過去100有余年にわたり、種々の物理的手段、化学的手段および生化学的手段で処理されてきた。廃水処理は、典型的には、破片をふるい分け、小さな砂を沈降させる予備的な処理プロセスと、もっと大きな粒状物を物理的に除去する一次処理プロセスと、もっと小さな有機粒状物および溶解した有機物を生化学的に除去し、生物学的な成長物を回収する二次処理プロセスと、場合により、残留する固体を捕捉し、残留する栄養物を除去することによって、二次流出液を「さらに仕上げる」三次処理プロセスと、入ってくる水を放出する前の消毒プロセスとを含む。現在、二次プロセスの最も一般的な組み合わせは、溶解した有機物および粒状の有機物を酸化するための懸濁した生物学的な成長処理システムであり、生物学的成長のためのバイオリアクターと、バイオマスを回収するための重力によって沈降する清澄剤からなる。これらのシステムは、有機物質を酸化するための酸素を供給するためのブロワを必要とするため、エネルギー集約的である。
【0003】
懸濁した生物学的な成長処理(活性化したスラッジ)は、従来から、大量の酸素が供給され、通常は大気に開放された大きなバイオリアクター(タンク)内で行われている。米国の16,600箇所の公的に所有されている廃水処理設備の中で、非常に小さなもの(0.001mgd)から非常に大きなもの(>800mgd)まで約6,200箇所の活性化スラッジ設備が存在し、すべての水流のほぼ80%を処理している。活性化スラッジは、微生物群集(主に従属栄養性の細菌であるが、原生生物、動物プランクトンおよび環形動物、時には、独立栄養性硝化細菌もある)と、「フロック」または「活性汚泥浮遊物」(MLSS)と包括的に呼ばれる綿状の固体としての不活性で生分解性の有機固体からなる。微生物群集は、高速操作条件で、廃水における粒状物および可溶性炭素系物質の両方の酸化を担っている。フロックは、保持され、典型的には、重力による沈降によって、きれいな流出液から分離される。有機体の過剰な成長および固体の蓄積は、過剰な活性化スラッジとしてこの系から規則的に除去される。廃水処理は、廃水処理プラントで使用されるエネルギーの60%までが、生物学的処理のための酸素を与えるために用いられるため、この様式でエネルギー集約的なプロセスである。他の第2の処理プロセスは、膜バイオリアクター、捕捉するバッチ反応器、一体化された固定された膜活性化スラッジ、トリックリングフィルタ、酸化溝、処理ラグーンなどを含む。
【0004】
過剰な活性化スラッジバイオマス(廃棄物の活性化スラッジ、すなわちWAS)は、一次処理プロセス(主に固体)から集められた沈降した固体とともに、嫌気性消化によって消化することができ、ほとんどがメタンからなるバイオガスを生成する。メタンは、米国の国内廃水処理プラントで、熱電供給(CHP)システムのために燃焼する。CHPシステムから利益を受け得る理論的に最も小さな容量の廃水処理設備は、1mgdであり、今日の市場で最も小さなマイクロタービンを利用し得る(30kW)。米国で、嫌気性消化プロセスを用いる約2,900箇所の廃水処理設備が存在し、10mgdを超えるプラントの約60%が、嫌気性消化を含む。最近の数十年において、嫌気性消化から作られるバイオガスは、消化装置の前加熱のための熱のために、または米国でのもっと大きな国内廃水処理プラントの一部で、熱および電気の両方を生成する熱電供給(CHP)システムのために使用され始めている。歴史的に、バイオガスは、単純に燃やされていた。2004年に、この潜在的なエネルギー源がいくつかの様式(熱またはCHP)で組み入れられるほぼ250箇所の消化装置のガス利用設備が存在しており、2006年には、全国規模で76箇所に実際にCHPが組み込まれ、全体で220MWの電力を生成している。今日のエネルギー費用の上昇の結果として、CHPシステムの数が増加しつつあり、もっと小さなプラントでも実施される。従来の処理からのエネルギー回収は、典型的には、処理された廃水の0.15〜0.2kWh/mである。嫌気性消化およびCHPを備える設備は、典型的には、嫌気性消化およびCHPを備えていない設備と比較したとき、必要なエネルギーの50%までを相殺する。
【0005】
バイオ燃料のための藻類(典型的には、微細藻類)の生成および/またはエネルギー生成は、現在、種々の段階で研究および開発が進められている。ある種の藻類は、特定の成長条件、例えば、ストレスをかけた状態で脂質貯蔵化合物を合成する能力を有する。脂質含有量が高い藻類は、約20〜約50重量%の脂質を含有する。脂質含有量が高い藻類は、脂質含有量が低い藻類よりも成長速度が遅く、バイオ燃料製造プロセスで使用するのに適している。ほとんどの藻類は、(もっと多くの藻類および酸素を生成する無機炭素および光エネルギーを用いた)独立栄養性の代謝物を含み、ある種のものは、(エネルギーおよび成長のための有機炭素を用い、もっと藻類および二酸化炭素を生成するための酸素を用いる)従属栄養性の代謝物を含み、一方、他のものは、混合栄養代謝物を含む(同時に、または特定の条件に依存して独立栄養性および従属栄養性の両方の代謝物を示す)。
【0006】
ほとんどの市販の藻類の生成は、光合成をする独立栄養性種、例えば、Botryococcus brauniiに注目し、高率藻類池(HRAP)、光バイオリアクター(PBR)の管またはパネル、またはこれら2つのいくつかの組み合わせからなることが予想される。HRAPは、大気、屋外または温室に開放した浅い藻類池または軌道であり、単純な機械的混合を含む。HRAPは、典型的には、かなり多くのフットプリントにおいて、藻類と低脂質内容物の低濃度の混合培地からなり、蒸発による消失、汚染、望ましくない藻類株による競争、および細菌および動物プランクトンによる捕食を受けやすい。HRAPは、単純であり、操作のための必要なエネルギーが少ない。PBRは、囲まれており、室外または温室のいずれかで太陽光の曝露が最大限になるように密に構成された透明の管、パネルまたは袋である。PBRは、混合、流れる圧送、藻類の成長に毒性であり得る過剰な酸素のスパージングを必要とする。PBRは、HRAPよりかなり小さなフットプリントにおいて、もっと大きな脂質内容物を含む、高濃度の豊富に含むか、または純粋な藻類培養物を生成する。PBRは、蒸発も防ぎ、汚染、捕食および競争を最低限にする。PBRは、複雑であり、HRAPよりも操作するのに多くのエネルギーを必要とする。両方のシステムは、最適な藻類産物を十分に維持するために、追加的な炭素および/または栄養物の添加を必要とする。
【0007】
最近の研究は、発酵型バイオリアクターにおいて従属栄養性の藻類を成長させることに焦点をあてている。候補となる株の数は、光合成による成長のための株よりもかなり少なく、Chlorella属、Tetraselmis属およびNitzschia属の中の特定の種を含む。炭素源は、グルコース、グリセロール、アセテート、いくつかまたは他の炭素源、または廃棄炭素、例えば、廃水中のものであってもよい。栄養物(例えば、窒素およびリン)が必要であり、酸素の供給が重要である。成長のために光は必要ではなく、これらのシステムは、スケールを変えるのが簡単であり、操作が簡単である。光の透過が因子ではないため、培養濃度をもっと高くすることができ、成長速度を大きくすることができる。独立栄養性藻類種とよく似て、従属栄養性藻類種を誘発し、バイオ燃料および他のエネルギー商品の製造にとって価値が高い脂質の産生を刺激することができる。従属栄養性の藻類は、有機炭素の呼吸中に二酸化炭素を生成する。
【0008】
バイオ燃料エネルギーのための藻類の生成は、技術的問題および経済的問題のため、まだ大スケールの商業化に達していない。藻類は、次に多くを生成するバイオマス原料(パーム油、635ガロン/エーカー/年)よりも顕著に多くの潜在的な油を生成するため(1,000〜4,000ガロン/エーカー/年)、藻類に由来するバイオ燃料は、依然として魅力的である。商業的な藻類生成のための技術的問題は、主に、脱水技術の性能に関係がある。炭素および栄養物の追加を含め、藻類生成のための操作費用も高くなる場合がある。廃棄炭素源(例えば、独立栄養生物のための電力プラントからの気体の放出からの二酸化炭素;従属栄養生物のための産業廃水および家庭廃水中の有機物)は、操作費用を下げ、炭素を捕捉することを目的としている。藻類からの市販のバイオ燃料のための技術的課題は、主に、脱水した藻類の処理/乾燥および脂質の抽出に関係がある。脱水した藻類の直接的な発酵/消化および得られたバイオガスからの電気生成は、現在、藻類からエネルギーを回収する最も費用対効果が高い方法であることが理解される。
【0009】
有機物質の除去のための酸素追加の必要性を減らすか、またはなくす、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0010】
受け入れる水に放出される溶出物からの栄養物(例えば、窒素およびリン)を減らす、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0011】
受け入れる水に放出される溶出物からの金属(例えば、クロム、銅および亜鉛)を減らす、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0012】
エネルギーの使用を減らし、処理のために必要なエネルギーを相殺するエネルギーを生成するか、または処理に必要なエネルギーよりも多くのエネルギーを生成する、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0013】
廃水中のアンモニアの硝化に必要な追加の酸素を減らすか、またはなくす、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0014】
従属栄養性呼吸によって温室効果ガスの放出を減らすか、またはなくす、廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0015】
処理される廃水の容積単位あたり、バイオガスの生成を増やす廃水処理のための新しいシステムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0016】
独立栄養性藻類の生成のための炭素追加の必要性を減らすか、またはなくす、新しい藻類生成システムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0017】
従属栄養性藻類の生成のための酸素追加の必要性を減らすか、またはなくす、新しい藻類生成システムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0018】
独立栄養性藻類のための酸素毒性の可能性を減らすか、またはなくす、新しい藻類生成システムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【0019】
独立栄養性藻類および独立栄養性藻類の生成のための栄養物追加の必要性を減らすか、またはなくす、新しい藻類生成システムおよび方法を開発することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
デュアルコンパートメントバイオリアクターシステムは、主に光合成、独立栄養性呼吸を意図するバイオリアクターと、主に従属栄養性呼吸を意図する第2のバイオリアクターと、両バイオリアクターと操作上接触している膜サブシステムとを備える。独立栄養性バイオリアクターは、透明外壁を備える。膜を通って溶質および気体を輸送すると、それぞれの最適な成長および機能を確保するために集合を分離しつつ、他方の代謝産物の集合によって有益な使用が可能になる。
【0021】
デュアルバイオリアクターシステムを用いて入力物を代謝する(例えば、廃水を処理し、藻類を製造する)ための方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、廃水処理および藻類の成長用途の両方に適用可能な、本開示の管デュアルコンパートメントバイオリアクター構造の中の管の例示的な実施形態の断面図である。
図2図2は、2つのデュアルコンパートメントバイオリアクターを利用する廃水処理システムの例示的な実施形態の斜視図である。
図3図3は、本開示の廃水処理システムの管デュアルコンパートメントバイオリアクター構造の中の管の別の例示的な実施形態の断面図である。
図4A図4Aは、本開示の廃水処理システムのデュアルコンパートメントバイオリアクターの2つの例示的な実施形態の断面図である。
図4B図4Bは、本開示の廃水処理システムのデュアルコンパートメントバイオリアクターの2つの例示的な実施形態の断面図である。
図5図5は、2つのパネル型デュアルコンパートメントバイオリアクターを利用する廃水処理システムの例示的な実施形態の斜視図である。
図6図6は、システムの動力学を示すグラフである。
図7A図7Aは、膜洗浄のための機構を備える、本開示の廃水処理システムの例示的な実施形態の断面図である。
図7B図7Bは、図7Aの実施形態の斜視図である。
図8図8は、従来の廃水処理設備のためのプロセスフロー図である。
図9図9は、本開示の廃水処理方法の例示的な実施形態のためのプロセスフロー図である。
図10図10は、本開示の廃水処理方法の別の例示的な実施形態のためのプロセスフロー図である。
図11図11は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図12図12は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図13図13は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図14図14は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図15図15は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図16図16は、概念の演習の証明の一部として行われた計算を示す。
図17A図17Aは、本開示の例示的な反応器モジュールの斜視図である。
図17B図17Bは、本開示の例示的な反応器モジュールの斜視図である。
図17C図17Cは、本開示の例示的な反応器モジュールの斜視図である。
図18図18は、いくつかの本開示の実施形態に従って廃水を処理するための例示的なシステムおよび方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に開示する構成要素、プロセスおよび装置のもっと完全な理解は、添付の図面を参照することによって得られるだろう。これらの図は、本開示を示す簡便さおよび容易さに基づき、単なる模式図であり、従って、デバイスまたはデバイスの構成要素の相対的な大きさおよび寸法を示すことを意図しておらず、および/または例示的な実施形態の範囲を規定したり、限定したりしない。
【0024】
明確性のために、特定の用語を以下の記載で使用するが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を規定したり、または限定したりすることを意図していない。図面および以下の記載において、同じ数表示は、同じ機能を有する構成要素を指すことを理解すべきである。
【0025】
「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈からの明らかな別段の指示がない限り、複数への言及を含む。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」の実施形態を含んでいてもよい。「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「〜ことができる(can)」、「含有する(contain)」という用語およびこれらの変形語は、本明細書で使用する場合、記載されている構成要素/工程の存在を必要とし、他の構成要素/工程の存在を許容する包括的な(open−ended)移行句、用語または語句であることを意図している。しかし、このような記載は、記載されている組成物またはプロセスを、列挙する構成要素/工程「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」ものを記載するものとしても解釈すべきであり、このとき、述べられている構成要素/工程の製造から生じ得る任意の不純物ともに述べられている構成要素のみが存在することができ、他の構成要素/工程を除外する。
【0027】
明細書および本出願の特許請求の範囲の数値は、数値を決定するために本出願に記載される従来の測定技術の実験誤差より小さい値だけ、述べられている値とは異なる有効桁数および数値を有する同じ数まで小さくすると同じであるような数値を含むと理解すべきである。
【0028】
本明細書で開示されるすべての範囲は、引用されている終点と、独立して組み合わせ可能なものを含む(例えば、「約2〜約10」の範囲は、終点2および10と、その中間のすべての値も含む)。
【0029】
例えば、「約」および「実質的に」のような1つ以上の用語で修正されている値は、特定されている正確な値に限定されなくてもよい。近似を示す言語は、その値を測定するための装置の正確さに対応してもよい。修飾語「約」は、2つの終点の絶対値によって定義される範囲を開示しているものとも考えるべきである。例えば、「約2〜約4」という表現は、「2〜4」の範囲も開示している。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「操作上接触」は、直接的な接触を必要とせず、直接的な接触を排除しない。1つ以上の中間体要素(例えば、管、貯蔵タンクなど)は、場合により、操作上接触している構造の間にある。構造が、操作上接触している場合、輸送がその間で起こってもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「膜サブシステム」は、1つ以上の膜を含むサブシステムを指す。複数の膜が含まれる場合、膜は、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。膜は、直接的な接触を含め、操作上接触した状態であってもよい。
【0032】
既存の廃水処理技術とは異なり、本開示のシステムおよび方法は、(1)従属栄養性炭素酸化(廃棄物の分解)および光合成からの独立栄養性硝化のための光合成からの遊離酸素源を与え、(2)独立栄養性藻類の成長のための遊離二酸化炭素源を与える。この共存により、全体的な廃水処理設備のエネルギー要求を(例えば、50%)下げ、過剰な藻類(既存の過剰な活性化スラッジおよび主な固体消化原料に加えられる)の生成によって、廃水の単位体積あたりのバイオガスの可能性(従って、熱電供給による熱およびエネルギーの可能性)を(例えば、ほぼ2倍に)増やす。
【0033】
既存の藻類生成技術とは異なり、本開示のシステムおよび方法は、(1)従属栄養性藻類の成長のための光合成から遊離酸素源を与え;および(2)独立栄養性藻類の成長のための従属栄養性炭素酸化から遊離二酸化炭素源を与える。この共存により、エネルギーの要求が減り、藻類の生成が増える。
【0034】
既存の密閉系(フォトバイオリアクター、PBR)の藻類生成技術とは異なり、本開示のシステムおよび方法は、炭素酸化のための従属栄養性有機体によって発揮される酸素の需要に起因して、毒性のある酸素の蓄積を減らすか、または防ぐ。
【0035】
図1のシステム100は、ここでは、廃水処理用途および藻類生成用途のために示されており、膜110および外側透明壁120を備える。膜110は、主に従属栄養性呼吸を意図する(活性化スラッジまたは従属栄養性藻類による)内側のコンパートメントを規定し、従属栄養性バイオリアクター112である。外側透明壁120および膜110は、主に光合成を行う独立栄養性光合成(主に独立栄養性藻類による)のために意図されている外側のコンパートメントを規定し、独立栄養性バイオリアクター122である。入力物130(有機炭素廃棄物および廃棄栄養物を含有する、一次処理を受けた廃水(一次流出液)、製造された有機炭素基質および製造された栄養物またはそのいくつかの組み合わせを含有する製造された原料)が、内側コンパートメント/従属栄養性バイオリアクター112に供給され、プロセスに移され、従属栄養生物を分離し、回収する(例えば、浸漬した膜バイオリアクター(MBR)の中で使用されるのと同様の膜を用いる)。従属栄養性バイオリアクター112中の有機体114は、二酸化炭素116を生成する。膜110、処理操作および/または反応器の形状は、従属栄養性バイオリアクター112からの二酸化炭素116および栄養物118が、膜を介して光合成バイオリアクター122へと流れるような構成である。光(例えば、日光)140は、透明外壁120を通って独立栄養性藻類124に向かう。独立栄養性藻類124は、酸素126を生成する。膜110、処理操作または反応器の形状は、酸素126が独立栄養性バイオリアクター122から従属栄養性バイオリアクター112へと流れるような構成である。入力物130からの栄養物118も、膜110を介して独立栄養性バイオリアクター122へと流れる。
【0036】
従って、従属栄養性および独立栄養性の集合は、別個のコンパートメント中に含まれ、この2つの有機体の集合は、1つ以上の膜(例えば、シート膜または管膜)によって互いに分離される。
【0037】
示されている実施形態は、管構造の中に管を含むが、独立栄養性バイオリアクター122が光源(例えば、太陽)に面し、従属栄養性バイオリアクター112と光源との間に位置するように、コンパートメント112、122が交互に積み重なっていてもよい。
【0038】
従属栄養性バイオリアクター112と、独立栄養性バイオリアクター122の長さは、同じであってもよく、または異なっていてもよい。ある実施形態では、従属栄養性バイオリアクター112の長さは、少なくとも約2フィートであり、約1フィート〜約100フィート、約10フィート〜約50フィートを含む。ある実施形態では、独立栄養性バイオリアクターの長さは、少なくとも約2フィートであり、約1フィート〜約100フィート、約10フィート〜約50フィートを含む。
【0039】
管の実施形態の中の管において、従属栄養性バイオリアクターは、内径が約1インチ〜約5フィートであってもよく、約6インチ〜約3フィート、約1フィート〜約2フィートを含む。
【0040】
独立栄養性バイオリアクター122は、内径が約2インチ〜約6フィートであってもよく、約6インチ〜約3フィート、約1フィート〜約2フィートを含む。
【0041】
透明外壁は、厚みが約0.1インチ〜約1インチであってもよく、約0.25インチ〜約0.75インチ、約0.3インチ〜約0.6インチを含む。透明外壁は、光合成中の藻類によって使用される波長のような可視光(〜400から800nm)の波長に対し、完全または部分的に透明であろう。
【0042】
膜110は、基材層に固定または結合した主膜層または基材層を有さない主膜層を含むコンポジット膜であってもよい。主膜層は、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデンまたはPVDF)を含有していてもよい。基材層は、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)またはフッ素含有ポリマーを含有していてもよい。主膜層および基材層のフッ素含有ポリマーは、同じであってもよく、または異なっていてもよい。膜は、疎水性、親水性、またはこれらのいくつかの組み合わせであってもよい。膜は、外壁に対し、平行であってもよく、うねっていてもよく、湾曲していてもよく、ひだがあってもよく、球根状、らせん状または先細り形状であってもよい。
【0043】
膜110は、直径が約0.0001μm〜10μm(約0.1μm〜約1μm、約0.01μm〜0.1μmを含む)である孔を含んでいてもよい。
【0044】
透明外壁120は、一般的に、十分な機械特性を有する任意の透明材料から作られてもよい。非限定例としては、ポリカーボネート、アクリルポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマーおよびポリスチレン(例えば、高衝撃性ポリスチレン)またはガラスが挙げられる。ある実施形態では、1つ以上のこれらの要素をブレンドしてもよく、および/または一緒に共重合させてもよい。外壁は、膜に対し、うねっていてもよく、湾曲していてもよく、ひだがあってもよく、球根状、らせん状または先細り形状であってもよい。
【0045】
廃水処理および藻類の生成を具体的に開示しているが、本開示のシステムおよび装置を用いて他の入力物を代謝する方法も想定されることが理解されるべきである。この廃水処理方法において、入力物は、廃棄有機基材および廃棄栄養物を含んでいてもよく、廃水は、家庭廃水、産業廃水、食品加工廃水、または農業用(例えば、乳業、豚飼育および飼育場)の廃水であってもよい。この藻類生成方法において、入力物は、製造された有機基材と、製造された栄養物とを含んでいてもよい。本開示のシステムおよび方法を、廃水処理および藻類生成の両方に同時に使用してもよいことも注記すべきである。
【0046】
本開示のシステムおよび方法を既存の廃水処理設備に使用してもよく(すなわち、後付け)、または新しく構築してもよく(緑野)、排他的な第2の処理プロセスとして使用してもよく、および/または他の第2の処理プロセスを補助するために使用してもよい。
【0047】
本開示のシステムおよび方法は、インフラストラクチャー、例えば、屋上、駐車場の上、高速の端、または上の既存の廃水処理インフラストラクチャー(例えば、通気タンクまたは清澄剤)に設置または取り付けてもよい。
【0048】
本開示のシステムおよび方法は、単に、バイオ燃料のための原料を作成するという目的のために、デュアルコンパートメントバイオリアクターシステムの両方のコンパートメントにおいて、主に藻類からなっていてもよい。従属栄養性バイオリアクターは、酸素を用いて有機炭素を酸化し、もっと多くの従属栄養性藻類および二酸化炭素を生成する従属栄養性藻類を含んでいてもよく、外側コンパートメントは、二酸化炭素および光を使用し、もっと多くの独立栄養性藻類および酸素を生成する独立栄養性藻類を含んでいてもよい。膜を通って溶質および気体を輸送すると、それぞれの最適な成長および機能を確保するために集合を分離しつつ、他方の代謝産物の集合によって有益な使用が可能になる。
【0049】
本開示のシステムおよび方法によって、廃水処理、藻類生成、またはこの両方のための有機体の2つの異なる種類の混合培養物または純粋培養物の最適な共存が可能になる。
【0050】
本開示のシステムおよび方法を使用し、家庭廃水、都市廃水、産業廃水または農業用廃水を処理してもよい。
【0051】
本開示のシステムおよび方法は、排他的に天然光(太陽の放射線)に依存してもよく、部分的に天然光に依存し、部分的に人工光に依存してもよく、または人工光に排他的に依存してもよい。
【0052】
本開示のシステムおよび方法は、主な目的が藻類生成である場合、製造された基質、電子供与体および電子受容体、および/または栄養物に全体的に、または部分的に依存していてもよい。
【0053】
本開示のシステムおよび方法は、目的が廃水処理または藻類生成のいずれかである場合、廃棄基質、電子供与体および電子受容体、および/または栄養物に全体的に、または部分的に依存していてもよい。
【0054】
無機炭素の生成(従属栄養性呼吸による)または膜を通過する輸送が、十分な独立栄養性の成長には不十分である場合、本開示のシステムおよび方法は、追加の無機炭素(例えば、二酸化炭素)を供給する手段を含んでいてもよい。このような手段は、独立栄養性バイオリアクターおよび従属栄養性バイオリアクターの両方の中の溶解した無機炭素の監視と、自動化された無機炭素運搬機構を含んでいてもよい。
【0055】
酸素の生成(独立栄養性の光合成による)または膜を通過する酸素輸送が、十分な炭素酸化および従属栄養性成長に不十分である場合、本開示のシステムおよび方法は、追加の酸素を供給する手段を含んでいてもよい。このような手段は、独立栄養性バイオリアクターおよび従属栄養性バイオリアクターの両方の中の溶解した酸素の監視と、自動化された酸素運搬機構を含んでいてもよい。
【0056】
本開示のシステムおよび方法は、膜を通過する気体または溶質の輸送を制御する手段を含んでいてもよい。このような手段は、膜を通過する圧力の違い(圧力低下)を広げる意図で、従属栄養性バイオリアクターおよび独立栄養性バイオリアクターの再循環の流速を制御することを含んでいてもよい。ある実施形態では、圧力の差を制御し、変えるために弁を使用する。次いで、このような圧力差は、圧力が高い領域から圧力が低い領域へと膜を通過する液体(気体および溶質のための担体)の流れをもたらす。流速は、実際の圧力によってではなく、圧力低下によって速くなる。圧力の形態に依存して、従属栄養性バイオリアクターから独立栄養性バイオリアクターへ、または独立栄養性バイオリアクターから従属栄養性バイオリアクターへの輸送を促進してもよい。十分に大きな圧力低下は、種々の生物学的反応に必要な場合、十分な輸送を確保するだろう。再循環の流れは、これらの圧力差に影響を与えるために、向流または並流であってもよい。圧力差は、直列または並列でモジュールを接続することによって広げることもでき、モジュール間は、同じモジュールの従属栄養性バイオリアクター要素および独立栄養性バイオリアクター要素について同じであってもよく、または異なっていてもよい(例えば、従属栄養性バイオリアクターコンパートメントを直列に接続してもよいが、独立栄養性バイオリアクターコンパートメントを並列で接続してもよい)。藻類バイオリアクターおよび従属栄養性バイオリアクターの両方での溶解した酸素または二酸化炭素の監視は、酸素の追加または無機炭素の追加の速度に加え、溶解した酸素および/または溶解した無機炭素が、膜を通過して有利に輸送され、それぞれ、従属栄養生物による炭素酸化または独立栄養生物の成長に他の方法で必要であり得る酸素または無機炭素の量を減らすことを確認するための手段として使用することができた。無機炭素または酸素の追加速度の変化を止める(または一緒に止める)まで、再循環の流れを増加させることができ、膜を通過する生成物の輸送の最大速度を表している。
【0057】
本開示のシステムおよび方法は、膜を通過する気体および/または溶質の輸送を制御するための手段を含んでいてもよい。このような手段は、疎水性領域および親水性領域を組み込んだ新しい膜、またはいくつかのモジュールが親水性膜を含み、あるモジュールが疎水性膜を含むモジュールのシステムを含んでいてもよい。親水性膜によって、膜を通過する流体、溶質および気体の輸送を可能にし、一方、疎水性膜は、膜を通過する気体の輸送のみを可能にする。流体、溶質または気体のための輸送を促すことは、親水性膜の実施形態の再循環速度を変えることによって制御することができる圧力低下を確立することを必要とするだろう。
【0058】
本開示のシステムおよび方法は、膜を通過する気体および/または溶質の輸送を制御する手段を含んでいてもよい。このような手段は、反応器の幾何形状から得られる局所的な圧力低下を作り出すことによって、膜を通過して前後に向かわせる新しい反応器の幾何形状を含んでいてもよい。一実施形態は、平行であるが、上下にうねるプレート反応器形状であろう。従属栄養性バイオリアクターから独立栄養性バイオリアクターを分離する膜は、平坦であろう。従って、それぞれのバイオリアクターコンパートメントの断面は、他のバイオリアクターコンパートメントの対応する減少および増加に合わせて増減するだろう。この様式で、流れが、膜を通過して前後に強制される。
【0059】
本開示のシステムおよび方法は、膜を通過する気体および/または溶質の輸送のための浸透圧に全体的に、または部分的に依存してもよい。
【0060】
本開示のシステムおよび方法は、独立栄養性バイオリアクターおよび従属栄養性バイオリアクターの中のpHおよびアルカリ性を制御する手段を含んでいてもよい。このような手段は、独立栄養性バイオリアクターおよび従属栄養性バイオリアクターの両方のpHおよびアルカリ性の監視と、自動化された化学物質投薬機構を含んでいるだろう。
【0061】
本開示のシステムおよび方法は、光合成および酸素の生成を調整するための独立栄養性バイオリアクターへの露光を制御するための手段を含んでいてもよい。このような手段は、光の強度の監視と、例えば、ブラインド、ドレープ、カバー、不透明スリーブまたは他の光遮断デバイスを用いて露光を制御する能力を含むだろう。このような制御手段は、必要な場合に人工の光を供給する能力も含んでいてもよい。
【0062】
図2のシステム200は、ここでは廃水処理用途のために示され、処理された流出液から活性化スラッジを分離することによって、廃棄水230からきれいな流出液292を製造するために、既存の膜バイオリアクター(MBR)技術に対し、特徴および機能が同様の最終的な膜204に沿って2つのデュアルコンパートメントバイオリアクターモジュール202を備える。本明細書で提案される最終的な膜は、既存のMBR技術で使用されるモノと同様であるが、MBRと同じレベルの処理を与えるように、対応する設計要素(固体滞留時間、処理のための容積など)を有するMBRプロセス全体でなくてもよい。ここでの膜は、単純に、適切な囲いの中の膜であってもよい。システム200は、独立栄養性バイオリアクター294から過剰な有機体と、従属栄養性バイオリアクター296から過剰な有機体を製造する。最終的な膜が平坦なパネルであるか、または浸漬され/浸された種類である場合、最終的な膜は、平坦なパネル構造または中空の繊維構造を有していてもよく、これらの構造は、それぞれ、浸漬され/浸されたカートリッジのカセットを含んでいる。ある実施形態では、最終的な膜は、MBRまたはKubotaのフラットパネルの浸された膜単位(SMU)で使用するのと同様である。副流型の場合、最終的な膜は、管状の構造を有していてもよい。ある実施形態では、最終的な膜は、Porex TMFの直交流の管状膜モジュールである。
【0063】
図3のシステム300は、ここで、廃水処理用途のために示され、内側膜310と、外側膜311と、透明外壁320とを備える。外側膜311は、光合成を行わせるために、可視光に対して十分に透明性である。場合により、このシステムは、さらに、1つ以上の光源313および/または1つ以上の集光部315を備える。ある実施形態では、集光部315は、パラボラ集光部である。内側膜310は、内側コンパートメント/従属栄養性バイオリアクター312を規定する。内側膜310および外側膜311は、第2のコンパートメント/独立栄養性バイオリアクター322を規定する。外側膜311は、最終的な膜であり、図2に示される最終的な膜204としてのMBRの必要性をなくす。透明外壁320および外側膜311は、きれいな水のための経路321を規定する。膜310、処理操作および/または反応器の幾何形状は、二酸化炭素316および栄養物318を、従属栄養性バイオリアクター312から独立栄養性バイオリアクター322へと流し、酸素326を独立栄養性バイオリアクター322から従属栄養性バイオリアクター312に流すように構成することができる。
【0064】
別の実施形態では、ここでは、廃水処理用途のために示され、図4Aのパネル型の反応器モジュール400は、第1のコンパートメント/従属栄養性バイオリアクター412を第2のコンパートメント/独立栄養性バイオリアクター422から分離する膜410を備える。モジュール400は、さらに、透明外壁420を備える。場合により、きれいな処理された水は、独立栄養性バイオリアクターの内側に配置される膜管411によって除去され、図2に示されるMBR204のような最終的な膜の必要性をなくす。外側ケース423は、漏れを防ぐのに十分な特性を有する任意の材料から作られてもよく、透明である必要はない。ある実施形態では、外側ケース423は、ステンレスから作られる。膜410、処理操作、および/または反応器の幾何形状は、例えば、以前の実施形態について上に記載されたような圧力低下を調整することによって、二酸化炭素416および栄養物418を従属栄養性バイオリアクター412から独立栄養性バイオリアクター422へと流し、酸素426を独立栄養性バイオリアクター422から従属栄養性バイオリアクター412に流すような構成であってもよい。図4Bのモジュール400は、図4Aのモジュールと類似しているが、パネル型構造の代わりに、実質的に円筒形の構造を有する。
【0065】
図5のシステム500は、図4Aに示される構造と類似する2つのパネル型反応器モジュール502を備える。廃水530は、システム500に供給され、きれいな水532が回収される。過剰な従属栄養性の成長536および過剰な独立栄養性の成長534も回収されてもよい。
【0066】
ある実施形態では、本出願が廃水処理である場合、廃水中の炭素:窒素:リン(C:N:P)の比率は、最大の藻類生成に最適ではなく、目的が、藻類生成を最大限にするか、または細胞成長のための同化による栄養物の除去を最大限にすることである場合、さらなる無機炭素が加えられ(例えば、既知のプロセスによる二酸化炭素を豊富に含む気体の流れの注入によって、例えば、バイオガス燃焼による電気および熱の同時生成によって)、独立栄養性の成長を増加させる。
【0067】
他の実施形態では、本出願が廃水処理である場合、本開示のシステムおよび方法は、目的が、廃水から有機物を単に除去し、硝化を達成し、ある程度の栄養物を除去することである場合、さらなる無機炭素を必要としない。
【0068】
従属栄養性の集合が活性化スラッジである場合のいくつかの廃水処理の実施形態において、有機炭素が従属栄養性バイオリアクターに加えられ、酸素が失われたときに、硝酸から窒素ガスへの還元(脱硝化)が向上する。
【0069】
いくつかの廃水処理の実施形態において、細胞成長のための同化によるリン取り込みが、流出液の栄養物の基準を満たすのに十分ではない場合、オルトホスフェートの除去を高めるために、金属塩(三価金属イオン、例えば、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム)を独立栄養性バイオリアクターまたは従属栄養性バイオリアクターのいずれかに加えてもよい。
【0070】
いくつかの廃水処理の実施形態では、システムおよび方法は、エネルギーを含め、外側の入力物をなくすことを可能にする。過剰な独立栄養性の成長と従属栄養性の成長の組み合わせを使用し、エネルギーの明瞭さを達成するためのその場での嫌気性消化におけるバイオガスの収率を高めてもよい。
【0071】
藻類生成の実施形態では、独立栄養性および従属栄養性の集合は、単一株の純粋な培養物であってもよく、大部分が同じ株の豊富に含む培養物であってもよく、または異なる有機体の株の混合培養物であってもよい。
【0072】
ある実施形態では、藻類は、バイオソープションによって、重金属および他の混入物質を廃水から除去する。蓄積された重金属は、過剰な藻類の成長が除去されたときに、このシステムから除去される。
【0073】
ある実施形態では、藻類の光合成バイオリアクター内容物を、混合し、拡散を高めるために再循環させてもよい。藻類光合成バイオリアクターから、活性化スラッジバイオリアクターへの酸素の拡散は、浸透圧に依存してもよい。
【0074】
独立栄養性および従属栄養性の集合を分離すると、プロセス制御において柔軟性が作られ、廃水処理、過剰な独立栄養性の生成、または過剰な従属栄養性の生成のいずれかのプロセスを最適化する。このような分離によって、環境条件(例えば、pH、温度、圧力、流速、塩度、アルカリ性、固体の滞留時間、異なる集合の濃度、水圧による滞留時間など)の最適な制御を可能にする。
【0075】
独立栄養性および従属栄養性の集合は、独立栄養性有機体を、従属栄養性有機体による捕食から保護する。
【0076】
バイオリアクター間の相対的な容積の関係、それぞれのバイオリアクター内の再循環速度およびこのシステムを通る理想的な流速は、従属栄養性の炭素源が、廃棄物または原料であるか、および意図した用途(廃水処理、藻類生成、またはその両方)のいずれかによらず、使用される集合(従属栄養生物の種類および独立栄養生物の種類)の速度論および化学量論量の関係に依存するだろう。炭素源、電子供与体、電子受容対、pHおよびアルカリ性の間の複雑で動的な関係は、処理モデルを用いて探索することができる。1日にわたる従属栄養性バイオリアクター中の活性化スラッジおよび独立栄養性バイオリアクターの独立栄養性藻類を用いた廃水処理用途のためのこれらの変数の間の概算された関係は、光の強度552、アンモニウム濃度556、硝酸濃度558、pH 562、細菌の成長速度564および藻類の成長速度566によって示されるような図6のグラフ550によって示される。市販の刺激因子(例えば、BioWin、GPS−X)は、廃水処理の設計および評価のために存在する。このモデルは、Monod型速度論および関係に基づく部分的な微分方程式の成文化である。活性化スラッジバイオリアクターのための典型的な固体の滞留時間は、2〜20日であってもよく、固体の濃度は、2,000〜20,000mg/Lであってもよい。藻類バイオリアクターに典型的な固体の滞留時間は、2〜20日であってもよく、固体の濃度は、1,000〜8,000mg/Lであってもよい。それぞれのシステムの再循環速度は、流入物の流速の0.2倍および5倍であってもよい。藻類バイオリアクターの相対的な容積は、活性化スラッジバイオリアクターの容積の0.5倍〜5倍であってもよい。
【0077】
一般的に、膜内の孔径が小さくなると、ヘッドロスが増加し、圧送の必要性が増し、流速が低くなる。本開示のシステムおよび方法で使用される膜は、フラットパネル型の膜と同様であってもよく(例えば、Kubotaの浸された膜単位またはSMU)、管膜と同様であってもよい(例えば、Porex TMF直交流管膜モジュール)。KubotaのSMUマイクロ濾過パネルカートリッジは、名目上の空隙率が0.4μmであり、活性化スラッジおよび藻類の両方を保持するのに十分である。カートリッジは、MLSS10,000mg/Lで操作される場合、15gpd/sfの流速、0.7〜2psigの典型的な膜貫通圧で操作するように設計される。膜貫通圧は、膜を通る圧力における相対的な差であるが、この膜システムのための操作圧は、ポンプからわかるものであり、操作費用の計算にとって重要である。廃水処理で使用される典型的なマイクロ濾過MBRは、操作圧が20〜40psiである。本開示のシステムおよび方法の膜(例えば、活性化スラッジバイオリアクターを規定する管膜)は、膜貫通操作圧が1〜10psiであってもよい。この膜を流れる正味の流れは、流入物の流れの5%未満であってもよい。この膜を通過する流速の概算値は、典型的な浸漬したMBR膜を通る流速の約15%であってもよい。
【0078】
膜は、逆浸透圧膜、ナノ濾過膜、超濾過膜、および/またはマイクロ濾過膜であってもよい。これらの種類の膜の特性は、Water Environment Federation Manual of Practice 8番から、以下の表に与えられる。
【0079】
【表1】
【0080】
本開示のシステムおよび方法は、洗浄デバイスまたは膜を洗浄するための方法を使用してもよい。廃水産業における現在の膜を洗浄する方法は、間欠的な背圧による圧送、化学物質による所定位置での洗浄プロセスおよび間欠的な空気による洗毛が挙げられる。ある実施形態では、洗浄する方法は、間欠的な背圧による圧送または化学物質による所定位置での洗浄プロセスを含んでいてもよい。最も一般的な膜洗浄技術は、間欠的な空気による洗毛(膜通気)であり、膜バイオリアクター用途のための生物学的プロセスのために空気および酸素を提供する(バイオプロセスでの通気)のとほとんど同じ多くのエネルギーを必要とする。ある実施形態では、洗浄方法は、空気または廃棄物流の気体を用いた間欠的な通気を含んでいてもよく、藻類光合成のための追加の無機炭素も与えてもよい。
【0081】
ある実施形態では、洗浄デバイスは、システムに(例えば、膜の片側または両側に)永久的に配置される、磁気により活性化される要素(例えば、電磁気により活性化されるブラシ)を含んでいる。外部から取り付けられた磁石は、ブラシと係合してもよく、活性化スラッジバイオリアクターの長さにわたって移動し、ブラシを引っ張り、および/または回転させ、間欠的または連続的に、膜表面の内側および/または外側を洗浄してもよい。ある実施形態では、さらなるブラシが、生物の付着を減らすために、透明外壁の内側表面を洗浄するような構成であってもよい。
【0082】
図7Aおよび7Bは、洗浄デバイスを備えるシステム600の例示的な実施形態を示す。システム600は、膜610によって外側コンパートメント622と分離された内側コンパートメント612を備える。洗浄デバイスは、膜601の内側表面を洗浄するための内側磁石ブラシ650と、膜610の外側表面を洗浄するための外側磁石ブラシ652を備える。システム600は、さらに、透明外壁620と、磁石ブラシ650、652と係合し、回転させるための移動する磁石660とを備える。ある実施形態では、移動する磁石660は、太陽電池によって動く。
【0083】
図17A〜Cは、反応器モジュール900の3つの非限定例を示す。それぞれの反応器モジュールは、従属栄養性バイオリアクター912と独立栄養性バイオリアクター922の間に延びる膜910を備えている。図17Aにおいて、モジュール900は、実質的に円筒形の形状を有する。図17Bにおいて、モジュール900は、パネル型の構造を有する。図17Cにおいて、モジュール900は、曲がりくねった構造または波状の構造を有し、膜910を前後に通過する輸送を高めるためにどのような反応器の幾何形状を使用することができるかの一例である。
【0084】
従属栄養性バイオリアクターが活性化スラッジを含有する廃水処理の実施形態において、従属栄養性バイオリアクター中の固体の滞留時間が十分に長い場合には、ゆっくりと成長する好気性の独立栄養性硝化細菌(NitrosomonasおよびNitrobacter)が、活性化スラッジ群集の一部として増殖し、硝化を達成することができる。流入物の窒素保持量に依存して(合計Kjedahl窒素(TKN)および/またはアンモニア)、有機体を窒素と化合させて硝化を達成することによって機能する酸素の需要は、廃水処理系の全酸素需要の40%程度の高さである。もっと長い固体滞留時間でこのシステムの従属栄養性バイオリアクターの側を操作する利点は、活性化スラッジのもっと内因性の呼吸が起こり、多くの二酸化炭素を生成し、次いで、これを藻類成長を引き起こすために用いることができることである。米国での家庭廃水を処理するための活性化スラッジを硝化するプロセスの設計に使用される典型的な固体の滞留時間は、それぞれ15〜8℃の低温に維持される通気バイオリアクター中の固体の質量を考慮すると、7〜14日の範囲であろう。これは、通常は、米国で冬期にみられる廃水温度で有機体を硝化するときの洗い流しを防ぐのに十分である。硝化を維持するために必要なSRTの操作は、冬期および寒い季節には低い。
【0085】
夜に、藻類は不活性であり(光源が太陽である場合)、酸素は作られない。この時間中、いくつかの実施形態では、従属栄養性バイオリアクターが活性化スラッジを含む廃水処理のために脱硝化を達成することができる。細菌または藻類のいずれかの成長のために同化されていないアンモニアを硝酸へと酸化し(硝化)、これは、酸素が存在しない場合に、炭素酸化のための酸素の代わりに用いられる電子受容体である。従って、日中の周期は、好気性期間と嫌気性期間を交互に作り出し、処理の目的および廃棄の要求を満たすのに十分な、連続的な炭素酸化と、交互に起こる硝化および脱硝化を与える。
【0086】
予備的な概算は、化学量論量的に、従属栄養性廃水処理の間に放出される二酸化炭素に対する藻類の成長は、炭素が制限されており、光合成中に作られる過剰な酸素が存在し得ることを示唆する。従属栄養性の好気性炭素酸化中に使用した後に残る酸素は、従来の藻類フォトバイオリアクターよりも少ないだおう。ある実施形態では、従属栄養性バイオリアクターにおける従属栄養性炭素酸化は、独立栄養性バイオリアクターにおける藻類の酸素毒性を軽減するだろう。
【0087】
図8は、廃水処理設備のためのプロセスフロー図である。嫌気性消化に効率的な設備および熱電供給/熱電供給設備(CHP)でさえ、エネルギー要求が50%まで相殺されるだけであろう。ブロワを介して空気を供給するためのエネルギーは、その設備の電気需要の60%を構成するだろう。
【0088】
図9および10は、従属栄養性バイオリアクターが活性化スラッジを含み、独立栄養性バイオリアクターが藻類を含む廃水処理のための実施形態のシステムおよび方法の実施形態のプロセスフロー図である。システムおよび方法は、膜で分離された上述の従属栄養性および独立栄養性バイオリアクターを備える。このバイオリアクターの構造に加え、この図は、藻類脱水システムをさらに含み、独立栄養性バイオリアクターから過剰の藻類の塊を受け、これをその場での嫌気性消化または別の場所でのバイオ燃料精錬のために高い濃度で運ぶ。図9では、過剰の藻類を、その場での発熱および発電に使用する。図10では、過剰の藻類を、その場以外でのバイオ燃料生成のために使用する。図10は、炭素の捕捉と、藻類成長のための無機炭素源として独立栄養性バイオリアクターへの流れる気体824の再循環も含み、栄養物の除去が改良された。
【0089】
図9のプロセスおよびシステム700では、ふるい分けされた廃水701が、一次清澄剤702に供給される。一次清澄剤702は、従属栄養性バイオリアクター704に向かう一次流出液703を与える。酸化炭素および栄養物が、従属栄養性バイオリアクター704から独立栄養性バイオリアクター705に流れてもよく、酸素が、独立栄養性バイオリアクター705から従属栄養性バイオリアクター704に流れてもよいように、従属栄養性バイオリアクター704は、膜によって独立栄養性バイオリアクター705から分離している。光(例えば、日光)706は、独立栄養性バイオリアクター705の透明壁を通り、光合成を可能にする。従属栄養性バイオマス707は、最終的な膜708に供給され、処理される流出液709を製造する。最終的な膜の戻り流710も製造され、従属栄養性バイオリアクター704に再循環する。独立栄養性バイオリアクター705からの過剰な独立栄養性バイオマス711を、第1に、増粘段階712に提供してもよく、または嫌気性消化装置段階715に直接流れてもよい(矢印は示さない)。増粘段階712から、上澄み流713を反応器段階に再循環してもよく、増粘流714を嫌気性消化装置段階715に供給してもよい。過剰な従属栄養性バイオマス716は、最終的な膜708から、消化装置段階715に供給されてもよい。さらに、一次清澄剤からの一次スラッジ717を、嫌気性消化装置715に提供してもよい。土地用途/肥沃剤のために消化したスラッジ718を嫌気性消化装置から回収してもよい。消化物719を活性化スラッジバイオリアクター704に提供してもよい。嫌気性消化装置715中に生成するバイオガス720を熱電供給段階に721に供給してもよい。熱電供給段階721は、熱722、電気723および二酸化炭素724を発生する。熱722は、その場で(例えば、嫌気性消化装置715または現在の実施形態(704および705(矢印で示さない)のために)使用してもよい。
【0090】
図10のプロセスおよびシステム800において、ふるい分けられた廃水801が、一次清澄剤802に供給される。一次清澄剤802からの一次流出液803は、従属栄養性バイオリアクター804に提供される。一次清澄剤からの一次スラッジ817を嫌気性消化装置815に供給してもよい。従属栄養性バイオリアクター804は、二酸化炭素および栄養物が従属栄養性バイオリアクター804から独立栄養性バイオリアクター805に流れてもよく、酸素が独立栄養性バイオリアクター805から従属栄養性バイオリアクター804に流れてもよいように、膜によって、独立栄養性バイオリアクター805から分離している。光(例えば、日光)806は、独立栄養性バイオリアクター805の透明壁を通り、光合成を可能にする。独立栄養性バイオリアクター805中で作られる過剰な独立栄養性バイオマス811は、増粘ステージ812に提供されてもよい。その中で作られる増粘した独立栄養性バイオマス814は、その場で、または別の場所で、バイオ燃料精錬825に提供され、バイオ燃料826を製造してもよい。従属栄養性バイオマス807は、最終的な膜808に提供され、処理された流出液809を製造してもよい。最終的な膜の戻り流810も製造され、従属栄養性バイオリアクター804へと再循環する。過剰な従属栄養性バイオマス816も、最終的な膜808から消化装置段階815に提供されてもよい。嫌気性消化装置815は、土地用途/肥沃剤のために使用してもよい消化したスラッジ818、反応器段階に再循環させてもよい消化物819、熱電供給段階821に提供してもよいバイオガス820を製造してもよい。熱電供給段階821は、電気823、熱822を作り出してもよく、これをシステム815に提供してもよく(例えば、嫌気性消化物をあらかじめ加熱するために)、二酸化炭素824を独立栄養性バイオリアクター805に提供してもよい。
【0091】
廃水処理を意図した実施形態図18の900のプロセスおよびシステムにおいて、対応する矢印の厚みで、圧力および流れの相対的な大きさを示し、一次流出液Q1が、再循環された従属栄養性バイオマスQ4と一緒になり、従属栄養性バイオリアクターに入る。独立栄養性バイオマスを、当量で、但し向流Q6で独立栄養性バイオリアクターに再循環させる。得られた加圧液滴(特に、P1〜P6およびP3〜P4)は、高圧領域から低圧領域へと流れを反対方向に膜に通過させる。過剰な独立栄養性バイオマスQ7および過剰な従属栄養性バイオマスQ5は、このシステムから除去され、嫌気性消化物に送られる。きれいな流出液Q3を、最終的な膜から捨てる。
【0092】
流入液の廃水流速がQである場合、独立栄養性および従属栄養性の再循環速度は、約0.5Q〜約5Qの範囲であってもよく、約1.5Qを含む。ある実施形態では、Qは、1日あたり、1,000〜100,000,000ガロンである。
【0093】
廃水処理の実施形態の概念の演習の証明として計算が行われ、独立栄養性バイオリアクターは、光合成藻類を含み、従属栄養性バイオリアクターは、活性化スラッジを含んでいた。炭素、窒素およびリンの質量バランスを、本開示のシステムを用い、仮想の廃水処理設備を設計することによる概念の証明を確立するための設計式を作成するための標準的なプロセスを組み込みながら、公開されている細菌および藻類の速度論および化学量論値を用いて決定した。図11は、藻類成長の化学量論的関係を示す。図12は、活性化スラッジ(細菌)の成長について、化学量論的関係を示す。バランスの式を分子量に基づく質量に変換した。図13は、Menlo Park、Californiaの大きさの仮想の街からの廃水の特徴を示す。Menlo Parkの都市は、1日に約10,000mまたは1日に約2.65百万ガロン(mgd)の廃水を作り出し、これをこの実施例のシステムのために使用する。
【0094】
以下の表は、第1に、流入炭素の酸化および二酸化炭素の生成、細菌細胞の合成において用いられる窒素およびリンの量、および必要な酸素の量を決定するための計算を表す。次に、作られる藻類の量は、以前の工程からの二酸化炭素の量に基づいて計算され、1日に約6時間は、光合成のみが起こっていると考えられる。藻類細胞の合成で使用される窒素およびリンの量も計算する。次いで、光合成から作られる酸素の量を決定する。これを、炭素酸化および硝化に必要な酸素の合計量と比較し、十分な量を超えていることが決定される。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
【表9】
【0103】
【表10】
【0104】
【表11】
【0105】
過剰な従属栄養性バイオマスの量は、10℃での完全な硝化を確保する固体の滞留時間に基づいて計算される。次いで、電力は、一次スラッジの嫌気性消化から作られ、過剰な独立栄養性バイオマスおよび過剰な従属栄養性バイオマスは、提案されたシステムのための供給圧送に対する保存的に概算された必要電力に沿って、図15に示すように計算される。図16は、本開示の例示的な実施形態を用いたプラントおよび従来のプラントのプロセスあたりの必要電力を比較している。
【0106】
従属栄養性バイオリアクターが活性化スラッジを含み、独立栄養性バイオリアクターが光合成藻類を含む廃水処理を意図した実施形態について、藻類は、廃水処理設備から集めた過剰な活性化スラッジまたは一次固体と比較して、嫌気的に消化され、少ない収率ながらメタンを生成する(生産されたL CHのほぼ10〜30%未満/kg VSS消化した藻類に基づく)。作られる藻類の量(および従って潜在的なバイオガス生成)は、顕著であり、有益であろう。実施例の実施は、廃水基準で、単位あたり、一次固形分および過剰な活性化スラッジから典型的に回収されるのとほぼ同じ量の藻類の塊を生成することができることを示唆している。従来の廃水処理プロセスと比較したとき、開示されているシステムおよびプロセスから、約80%を超えるバイオガスが作られるだろう。
【0107】
今日の経済的および技術的な制限から、嫌気性消化およびCHPプロセスは、大きな廃水処理プラントで費用対効果が高い(理論的に、容量は1mgd程度であるが、典型的には、5mgdを超える容量)。既存の設備は、同時消化によって藻類バイオマスを容易に組み込むことができる。消化中に藻類バイオマスを加えることによって処理される単位あたりの廃水の潜在的なエネルギー生成量の増加(おそらく、3〜4kWh/m))は、嫌気性消化の後に、CHPの費用対効果が高くなる(1mgd〜0.5mgd)装置容量のブレークポイントで小さくなり(例えば、1mgd〜0.5mgd)、消化/CHPの市場で拡大する。
【0108】
現在の経済分析では、藻類バイオマスを用いた小スケールの生産および非集中的なバイオ燃料生産は費用対効果が高くないことがわかっているため、バイオ燃料生成ではなく、CHP生成のための既存の嫌気性消化における同時消化のための開示されるシステムおよび方法から集められた藻類バイオマスを用いることが、少なくとも第1に、廃水で成長する藻類の利点を最大にするために最も能率的であり、効果的な手法であろう。消化のためのさらなる有機物の保持により、もっと多くのバイオガスが得られ、これを、例えば、反応器、または反応器を包むもの(温室)のいずれかを加熱、冬季の寒い気候の間に安定な操作を確保するための熱に使用することができる。
【0109】
閉じたシステムで共通の膜によって分離された従属栄養性および独立栄養性の集合の理想的な共存を可能とする提案されたデュアルコンパートメントバイオリアクターシステムは、廃水処理および藻類生成の両方にとって利点である。
【0110】
本教示に従って、廃水処理のための態様は、以下のものが挙げられる。
・廃水から有機物質を除去するための酸素追加の必要性を減らすか、またはなくす。
・流出液から受け入れる水に放出される溶出物からの栄養物(例えば、窒素およびリン)を減らす。
・受け入れる水に放出される流出液からの金属(例えば、クロム、銅および亜鉛)を減らす。
・エネルギーの使用を減らし、処理のために必要なエネルギーを相殺するためエネルギーを生成するか、または、処理に必要なエネルギーよりも多くのエネルギーを生成する。
・廃水中のアンモニアの硝化に必要な追加の酸素を減らすか、またはなくす。
・従属栄養性呼吸によって温室効果ガスの放出を減らすか、またはなくす。
・処理される廃水の容積単位あたり、バイオガスの生成を増やす。
【0111】
本教示に従って、藻類生成のための態様は、以下のものが挙げられる。
・独立栄養性藻類の生成のための炭素追加の必要性を減らすか、またはなくす。
・従属栄養性藻類の生成のための酸素追加の必要性を減らすか、またはなくす。
・従属栄養性藻類および独立栄養性藻類の生成のための栄養物追加の必要性を減らすか、またはなくす。
・毒性のある酸素の蓄積を減らすか、またはなくす。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18