【文献】
高山浩一,煙点試験における自動試験器の適用〜JIS法との比較検討,石油製品討論会,日本,公益社団法人石油学会,2013年12月 6日,第28−32頁
【文献】
DC Scientific,SP10 AUTOMATED SMOKE POINT,YouTube,2011年 8月24日,[online][video]令和元年7月5日検索,URL,https://youtu.be/CzGuGVSWpyY
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化水素燃料を含浸させた灯心が差し込まれた灯心管を有し、当該灯心の所定長さ部分が当該灯心管の上端から突出しており、当該炭化水素燃料を燃焼させるキャンドルと、
前記キャンドルを垂直方向に昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置により昇降する前記キャンドルの前記灯心管を垂直方向に案内する中空の灯心管ガイドと、前記炭化水素燃料の炎から発生する煙を外部に排出するための煙筒とを有し、当該キャンドルが内部に配置されるランプ本体と、
前記灯心が前記灯心管ガイドの上端から露出しかつ点火された状態で、前記昇降装置により前記キャンドルを上昇させていくときに、前記煙筒から排出される所定濃度の煙を検知する煙検知手段と、
前記キャンドルの上昇開始より、前記灯心管ガイドの上端から露出する前記灯心の長さに応じて外形が変化する前記炭化水素燃料の炎を、連続的にカラー撮影し、かつ得られるカラー画像を出力するカメラと、
前記カラー画像を解析して、被測定試料としての炭化水素燃料の煙点を決定する煙点決定手段と、を備え、
前記昇降装置は、煙検知手段により所定濃度の煙が検知されたことを条件として、前記キャンドルの上昇を停止し、かつ続いて下降を開始することを特徴とする煙点測定装置。
【背景技術】
【0002】
灯油、航空タービン燃料油などの炭化水素燃料の燃焼性を示す指標の1つである煙点は、JIS K 2537に規定された試験器を用いて炭化水素燃料を燃焼させたときに、煙を生じない炎の最大高さをミリメートル(mm)単位で表したものである。
【0003】
JIS K 2537に規定された煙点の測定手順の概要は以下のとおりである。
(1)被測定試料としての炭化水素燃料を含浸させた灯心を、キャンドルの灯心管に差し込む。
(2)キャンドル内に被測定試料を20ミリリットル(ml)貯留する。
(3)キャンドルに灯心管をねじ込む。
(4)灯心の燃焼端を灯心管の上端から6mmの位置で切りそろえる。
(5)キャンドルをランプ内に下側から挿入し、キャンドルから突出している灯心の燃焼端に点火する。
(6)ランプ本体に対して上下方向にキャンドルを移動させることにより、炎の高さが10mmになるように、ランプの灯心管ガイドの上端から灯心が露出する長さを調節して、5分間被測定試料を燃やす。
(7)炎の先端から煙が出るまで、すなわち発煙点に到達するまでキャンドルを上げた後、炎の状態の変化を目視で観測しながらゆっくりとキャンドルを下げる。
(8)炎が規定の形状になったときの炎の高さを目視で読み取り、測定煙点として記録する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る煙点測定装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
本発明の実施形態としての煙点測定装置は、発煙点や煙点に近い炎の先端部分では赤成分が強い領域が大きくなり、煙点から遠い炎の先端部分では赤成分が強い領域が小さくなることを利用して、炭化水素燃料の煙点を測定するものである。
【0016】
図1に示すように、煙点測定装置1は、キャンドル11が内部に配置されるランプ本体12、昇降装置13、カメラ14、表示装置15、操作装置16、及び制御装置17を主に備える。キャンドル11及びランプ本体12は、JIS K 2537に規定された形状及び寸法を有している。
【0017】
キャンドル11は、
図2に示すように、炭化水素燃料を含浸させた灯心11aが差し込まれた灯心管11bを有し、灯心11aの所定長さ部分が灯心管11bの上端から突出しており、炭化水素燃料を燃焼させるようになっている。
【0018】
ランプ本体12は、
図2に示すように、煙筒12a、目盛板12b、通気室12c、通気口12d、キャンドル保持器12e、及び灯心管ガイド18を備える。さらに、本実施形態におけるランプ本体12は、炭化水素燃料の炎から放射される光をカメラ14が受光するための撮影用窓12fを側面に有している。また、ランプ本体12は、灯心11aに点火する点火手段としてのヒータを備えている。
【0019】
煙筒12aは、炭化水素燃料の炎から発生する煙を主に外部上方に排出するためのものである。さらに、煙筒12aは、側面部から突出する突出開口部12gを有している。
【0020】
昇降装置13は、キャンドル11を垂直方向に昇降させるようになっている。具体的には、昇降装置13は、被測定試料としての炭化水素燃料の煙点の測定前にキャンドル11をキャンドル保持器12eの下方から上昇させて、キャンドル11の灯心11aをランプ本体12の内部に配置させる。
【0021】
また、昇降装置13は、煙点の測定時には、炎の状態に応じてキャンドル11をランプ本体12内で昇降させる。キャンドル11の灯心11aの上昇に従って、炎の高さ(以下、「炎高」ともいう)は上昇する。また、昇降装置13は、キャンドル11を上昇させているときに、後述する煙検知手段により所定濃度の煙が検知されたことを条件として、キャンドル11の上昇を停止し、かつ続いて下降を開始する。また、昇降装置13は、煙点の測定後には、キャンドル11をランプ本体12内から下降させて、キャンドル保持器12eからキャンドル11を抜き出す。
【0022】
灯心管ガイド18は、中空であり、昇降装置13により昇降するキャンドル11の灯心管11bを垂直方向に案内するようになっている。
【0023】
表示装置15は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御装置17からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、カメラ14により撮影されたカラー画像、制御装置17から出力された測定結果などが含まれる。さらに、表示装置15は、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象を表示するものであってもよい。
【0024】
操作装置16は、キーボード、タッチパネル、又はマウスのような入力デバイスを含んで構成される。あるいは、操作装置16は、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象が表示装置15に表示される構成であってもよい。
【0025】
カメラ14は、キャンドル11の上昇開始より、灯心管ガイド18の上端から露出する灯心11aの長さに応じて外形が変化する炭化水素燃料の炎を、撮影用窓12fを通して連続的にカラー撮影し、かつ得られるカラー画像を出力するようになっている。カメラ14としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などを用いたイメージセンサを備えており、撮影したカラー画像をディジタルデータとして出力することが可能なディジタルカメラ又はディジタルビデオカメラを用いるのが好ましい。
【0026】
カメラ14から出力されるディジタルデータは、カメラ14の撮像素子上における各画素の階調情報(カラーデータ)を含んでいる。この階調情報には、例えばRGBの階調値が含まれる。ただし、階調情報は、RGB階調値に限定されるものではなく、その他の色情報を表現するデータ形式(YUV,YCrCbなど)であってもよい。なお、本実施形態では、階調情報としてRGB888のデータ形式を用いる場合を例に挙げて説明する。
【0027】
図3は、カメラ14により生成されるカラー画像のサイズと炎高との関係を説明するための図である。煙点測定装置1の組み立て・調整の際に、例えば以下の(1)〜(3)の手順でカメラ14の位置調整を行う。
【0028】
(1)
図3(a)に示すように、キャンドル11がランプ本体12内に配置されていない状態で、調整用のスケール50を設置する。このとき、スケール50の0mmを示す線を灯心管ガイド18の上端位置に一致させる。
(2)カラー画像におけるスケール50の0mmの線を、垂直方向の0ピクセルの位置(基準位置)としたときに、カラー画像における垂直方向の500ピクセルが、例えば炎の高さの50.0mmに相当するように(500ピクセル=50.0mm)、
図3(b)に示すようなカラー画像を表示装置15で確認しながらカメラ14の位置を調整する。
(3)500ピクセル=50.0mmの場合、1ピクセルは0.1mmに相当する。よって、カラー画像における炎の高さのピクセル数が123ピクセルの場合、制御装置17は炎の高さを12.3mmと計算することになる。
【0029】
さらに
図1に示すように、煙点測定装置1は、灯心11aが灯心管ガイド18の上端から露出しかつ点火された状態で、昇降装置13によりキャンドル11を上昇させていくときに、煙筒12aから排出される所定濃度の煙を検知する煙検知手段を備える。煙検知手段は、煙筒12aから排出される煙を検知する煙センサ41と、煙筒12a内の気体を煙センサ41に導入する導入部42と、導入部42を介して煙筒12a内の気体を吸引し、吸引した当該気体を煙センサ41に供給する吸気部43と、を備える。
【0030】
煙センサ41は、炭化水素燃料の炎から発生する煙を検知するものであり、公知の光電式センサや、イオン化式センサなどを用いることができる。煙センサ41は、煙の濃度に比例した電圧信号としての煙検知信号を制御装置17に出力するようになっている。
【0031】
導入部42は、例えば内径がφ7mm程度のシリコンチューブ42a〜42cからなる。
図1に示すように、シリコンチューブ42aの一端は煙筒12aの突出開口部12gに取り付けられ、シリコンチューブ42aの他端は煙センサ41の煙検知領域の流入口側に取り付けられる。また、シリコンチューブ42bの一端は煙センサ41の煙検知領域の流出口側に取り付けられ、シリコンチューブ42bの他端は吸気部43の吸気側に取り付けられる。また、シリコンチューブ42cの一端は吸気部43の排気側に取り付けられ、シリコンチューブ42cの他端は開放端となる。
【0032】
吸気部43は、例えば吸気ファン又はポンプからなり、導入部42(シリコンチューブ42a,42b)を介して、煙筒12a内から煙センサ41に向かう方向に気流を発生させるようになっている。なお、
図1は、吸気部43が煙センサ41の後段に配置される例を示しているが、本発明はこれに限定されず、吸気部43が煙センサ41の前段に配置されてもよい。
【0033】
この場合は、
図4に示すように、シリコンチューブ42aの一端は煙筒12aの突出開口部12gに取り付けられ、シリコンチューブ42aの他端は吸気部43の吸気側に取り付けられる。また、シリコンチューブ42bの一端は吸気部43の排気側に取り付けられ、シリコンチューブ42bの他端は煙センサ41の煙検知領域の流入口側に取り付けられる。また、シリコンチューブ42cの一端は煙センサ41の煙検知領域の流出口側に取り付けられ、シリコンチューブ42cの他端は開放端となる。
【0034】
図5は、制御装置17の機能構成を示すブロック図である。制御装置17は、例えばCPU、記憶部20を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータで構成され、煙点測定装置1を構成する上記各部の動作を制御する。さらに、制御装置17は、所定のプログラムを実行することにより、階調情報取得部21、先端位置決定部22、炎高算出部23、先端領域サイズ算出部24、煙点決定部25、及び発煙点判断部26をソフトウェア的に構成する。これにより、制御装置17は、カメラ14により撮影されたカラー画像を解析して、被測定試料としての炭化水素燃料の煙点を決定するようになっている。
【0035】
階調情報取得部21は、カメラ14によって撮影されたカラー画像について、ピクセルごとに例えばRGBの各値(階調値)のような階調情報を取得するようになっている。
図6(a)にカメラ14により撮影されたカラー画像の一例を示す。なお、
図6においては、x軸負方向が炎の高さ方向になっている。
【0036】
先端位置決定部22は、階調情報取得部21により取得されたRGBの各階調値に基づいて、所定の閾値以上の階調値を有するピクセルを、カラー画像において炎の領域を構成する複数のピクセルとして特定する。例えば、所定の閾値以上の階調値とは、R値が4以上、かつ、G値が2以上、かつ、B値が0以上となる階調値である。
【0037】
また、先端位置決定部22は、炎の領域を構成する複数のピクセルのうち、
図6(a)における最も左側のピクセル、すなわち、炎の先端位置に相当するカラー画像のピクセル位置(以下、「先端ピクセル位置」ともいう)を決定するようになっている。
【0038】
炎高算出部23は、先端位置決定部22により決定された先端ピクセル位置と、灯心管ガイド18の上端位置に相当するカラー画像のピクセル位置(以下、「炎の下端位置」ともいう)との炎の高さ方向(x軸方向)における位置の差と、カラー画像の1ピクセルと炎高の関係(例えば、1ピクセル=0.1mm)とに基づいて、実際の炎の高さを算出するようになっている。ここで、炎の下端位置は、
図3を用いて説明したカメラ14の位置調整時に決定されている。
【0039】
先端領域サイズ算出部24は、階調情報取得部21によって取得された階調情報に基づいて、カラー画像の炎の先端部分における特徴的な領域を決定し、決定した特徴的な領域のサイズを先端領域サイズとして算出するようになっている。ここで、先端領域サイズ算出部24は、カラー画像から先端ピクセル位置を含む帯状の画像データを抽出し、抽出した画像データにおいて特徴的な領域を決定するようになっている。
【0040】
記憶部20は、既知の煙点を有する炭化水素燃料の複数の標準試料について、煙点における先端領域サイズ、及び、当該先端領域サイズをもたらす炎の高さを用いてあらかじめ決定された、煙点を判定するための煙点閾値(先端領域サイズの閾値)を炎の高さに対応付けて記憶している。
【0041】
さらに、記憶部20は、先端領域サイズ算出部24によって算出された被測定試料としての炭化水素燃料の先端領域サイズを炎の高さに対応付けて記憶するようになっている。
【0042】
煙点決定部25は、被測定試料としての炭化水素燃料の先端領域サイズ、及び、当該先端領域サイズをもたらす炎の高さと、記憶部20に記憶された煙点閾値との比較により、被測定試料の煙点を決定するようになっている。
【0043】
発煙点判断部26は、煙センサ41により所定濃度の煙が検知された場合に、炭化水素燃料が発煙した(発煙点に到達した)と判断し、キャンドル11の上昇を停止させる信号を昇降装置13に出力するようになっている。具体的には、発煙点判断部26は、煙センサ41から入力された煙検知信号の電圧値を読み取り、読み取った電圧値があらかじめ決定された閾値以上である場合に、炭化水素燃料が発煙点に到達したと判断する。この閾値は記憶部20に記憶されている。
【0044】
なお、背景技術の欄に記載した(1)〜(7)の手順を任意の炭化水素燃料について手動で行い、目視により煙の発生を確認できたときの煙検知信号の電圧値を上記の閾値として用いてもよい。
【0045】
以下、先端領域サイズ算出部24の詳細な構成について説明する。先端領域サイズ算出部24は、階調情報取得部21によってRGBの各階調値が取得されたカラー画像について、炎の先端部分におけるR値の比率の大きい領域のサイズを、先端領域サイズとして算出するようになっており、
図5に示すように、画像データ抽出部31、合計値算出部32、ピクセル位置検出部33、及びサイズ算出部34を含む。
【0046】
画像データ抽出部31は、先端位置決定部22により決定された先端ピクセル位置を含む帯状の画像データを抽出するようになっている。この帯状の画像データにおいて、先端ピクセル位置は炎の幅方向のほぼ中心に存在する。
図6(b)に一例として、先端ピクセル位置のピクセル、及び、灯心管ガイド18の上端位置のピクセルを含み、炎の幅方向(y軸方向)に10ピクセル幅の画像データを示す。
【0047】
合計値算出部32は、画像データ抽出部31により抽出された画像データの水平方向(y軸方向)の各ピクセル列について、R値の合計値、及び、G値の合計値を算出するようになっている。
図7の上段は、
図6(b)の画像データを拡大して示すものである。ここでは、先端ピクセル位置のx軸方向の位置をx=0としている。
【0048】
図7の下段に示すように、x=10のピクセル列における10ピクセル分のR値の合計値は105、G値の合計値は48、B値の合計値は21である。また、x=18のピクセル列における10ピクセル分のR値の合計値は570、G値の合計値は160、B値の合計値は15である。x=30のピクセル列における10ピクセル分のR値の合計値は1727、G値の合計値は897、B値の合計値は286である。つまり、炎の先端に近いほど、GやBの成分に比べてRの成分が大きいことが分かる。
【0049】
図8は、発煙点に近い状態の炎について、各ピクセル列におけるR値、G値、B値の合計値を横軸をxとしてプロットしたグラフである。
図9は、煙点に至る前の状態の炎について、各ピクセル位置におけるR値、G値、B値の合計値を横軸をxとしてプロットしたグラフである。
図8,9では、先端ピクセル位置のx軸方向の位置をx=0としている。
【0050】
ピクセル位置検出部33は、合計値算出部32により算出されたR値の合計値が所定の閾値に到達するピクセル列の垂直方向(x軸方向)のピクセル位置、及び、合計値算出部32により算出されたG値の合計値が所定の閾値に到達するピクセル列の垂直方向(x軸方向)のピクセル位置を検出するようになっている。
【0051】
合計値2000を閾値とした場合、
図8の例では、R値の合計値がこの閾値に到達するピクセル列のピクセル位置は68である。また、G値の合計値がこの閾値に到達するピクセル列のピクセル位置は115である。
図9の例では、R値の合計値がこの閾値に到達するピクセル列のピクセル位置は22である。また、G値の合計値がこの閾値に到達するピクセル列のピクセル位置は45である。
【0052】
サイズ算出部34は、ピクセル位置検出部33により検出されたG値に関するピクセル位置からR値に関するピクセル位置を減じた値を、その時点での炎高における先端領域サイズ(以下、「GR値」ともいう)として算出するようになっている。
図8の例では、GR値は115−68=47となる。また、
図9の例では、GR値は45−22=23となる。
【0053】
以下、
図10のグラフと
図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態の煙点測定装置1を用いた煙点測定方法について説明する。なお、下記の処理の直前に、炎高が10mmの状態で5分間被測定試料を燃焼させる処理が実行されているものとする。また、下記の処理中、カメラ14は連続的に炎を撮影しているものとする。
【0054】
まず、制御装置17は、煙点の測定回数を示すインデックスmを1に初期化する(ステップS1)。次に、昇降装置13は、キャンドル11の上昇を開始する(ステップS2)。
【0055】
次に、発煙点判断部26は、煙センサ41から入力された煙検知信号の電圧値を読み取る(ステップS3)。
【0056】
次に、発煙点判断部26は、煙センサ41から入力された煙検知信号の電圧値があらかじめ決定された閾値以上であるか否かを判断する(ステップS4)。煙検知信号の電圧値が閾値未満の場合には、ステップS3に戻る。煙検知信号の電圧値が閾値以上の場合には、ステップS5に進む。
【0057】
ステップS5において、昇降装置13はキャンドル11の上昇を停止した後に下降を開始する。次に、制御装置17は、被測定試料について、炎高と、先端領域サイズとしてのGR値を算出する(ステップS6)。なお、
図10に示す点Aは発煙点を示している。
【0058】
次に、制御装置17は、ステップS6で算出された炎高におけるGR値が、同一の炎高においてあらかじめ決定された煙点閾値未満であるか否かを判断する(ステップS7)。なお、煙点閾値の詳細については後述する。GR値≧煙点閾値の場合には、ステップS6に戻る。GR値<煙点閾値の場合には、ステップS8に進む。
【0059】
なお、上記のステップS5〜S7の処理では、
図10の矢印の向きにGR値の測定が行われている。
【0060】
次に、煙点決定部25は、被測定試料の煙点を決定する(ステップS8)。具体的には、煙点決定部25は、
図10のグラフにおいて煙点閾値と被測定試料のGR値が交差する点(図中のB点)の炎高値を、m回目の測定における煙点と決定する。
【0061】
次に、表示装置15は、ステップS8で決定された煙点を表示する(ステップS9)。
【0062】
次に、制御装置17は、煙点の測定回数mが所定の回数Mに到達したか否かを確認する(ステップS10)。ここで、JIS K 2537に従えばM=3である。m<Mの場合には、制御装置17は、インデックスmをインクリメントし(ステップS11)、ステップS2に戻る。m=Mの場合には、処理を終了する。
【0063】
以後、制御装置17は、ステップS8で決定されたM個の煙点の測定値を用いて、JIS K 2537に規定された手順に従って被測定試料の最終的な煙点を決定して、決定した煙点を表示装置15に表示する。
【0064】
以下、
図12のフローチャートを参照しながら、
図11のステップS6における炎高及びGR値の算出処理について説明する。
【0065】
まず、階調情報取得部21は、カメラ14によって撮影されたカラー画像について、ピクセルごとにRGBの各階調値を取得する(ステップS21)。
【0066】
次に、先端位置決定部22は、炎の領域を構成する複数のピクセルから、先端ピクセル位置を決定する(ステップS22)。
【0067】
次に、炎高算出部23は、ステップS22で決定された先端ピクセル位置と炎の下端位置のx軸方向における位置の差と、カラー画像の1ピクセルと炎高の関係とに基づいて、実際の炎高を算出する(ステップS23)。
【0068】
次に、画像データ抽出部31は、ステップS22で決定された先端ピクセル位置を含む帯状の画像データを抽出する(ステップS24)。
【0069】
次に、合計値算出部32は、ステップS24で抽出された画像データの水平方向(y軸方向)の各ピクセル列について、R値の合計値、及び、G値の合計値を算出する(ステップS25)。
【0070】
次に、ピクセル位置検出部33は、ステップS25で算出されたR値の合計値が所定の閾値に到達するピクセル列の垂直方向(x軸方向)のピクセル位置、及び、合計値算出部32により算出されたG値の合計値が所定の閾値に到達するピクセル列の垂直方向(x軸方向)のピクセル位置を検出する(ステップS26)。
【0071】
次に、サイズ算出部34は、ステップS26で検出されたG値に関するピクセル位置からR値に関するピクセル位置を減じた値を、ステップS23で得られた炎高におけるGR値として算出する(ステップS27)。
【0072】
以下、煙点閾値について説明する。
図13は、JIS K 2537に規定された7種の標準試料について、本実施形態の煙点測定装置1を用いて測定したGR値を横軸を炎高として模式的にプロットしたグラフである。
【0073】
図13のグラフの左から順に、トルエン40%+イソオクタン60%、トルエン25%+イソオクタン75%、トルエン20%+イソオクタン80%、トルエン15%+イソオクタン85%、トルエン10%+イソオクタン90%、トルエン5%+イソオクタン95%、トルエン0%+イソオクタン100%のGR値を示している。
図13の括弧内の数字は、イソオクタン比率を示している。
図13から分かるように、GR値は炎高と試料の種類によって変化する。
【0074】
各標準試料のJIS K 2537に規定された煙点における炎のGR値は、本実施形態の煙点測定装置1を用いて測定することができる。このとき、各標準試料の煙点は、本実施形態の煙点測定装置1の炎高算出部23によっても、あるいは、目盛板12bを用いた目視による測定によっても確認することができる。
図13における破線は、各標準試料の煙点におけるGR値を補間して得られる、炎高ごとの煙点閾値を示している。既に述べたように、この煙点閾値は記憶部20に記憶されている。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の煙点測定装置1は、炭化水素燃料が発煙点に到達したことを精度良く検知するとともに、炭化水素燃料の煙点を精度良く自動的に計測することができる。
【0076】
また、本実施形態の煙点測定装置1は、炭化水素燃料から発生する煙を検出することによって、目視よりも精度良く発煙点を検知することができる。
【0077】
また、本実施形態の煙点測定装置1は、画像解析によって炎の先端部分の階調情報を取得することにより、炭化水素燃料の煙点を精度良く自動的に計測することができる。