【文献】
是津達也(外1名),3G網のH.264/RTPストリーミングに対するFECの効果,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,2007年 7月 1日,Vol.J90-D, No.7,p.1648-1650
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るコンテンツ配信システムの構成の一例を示す概略図である。
本実施形態に係るコンテンツ配信システム1は、多数の観客を収容可能な観客席を有する競技場に設置されるシステムである。コンテンツ配信システム1は、例えば、競技場で行われている競技の様子をカメラで撮影する。コンテンツ配信システム1は、撮影した映像を示すデータを、観客席の観客がそれぞれ保持するスマートフォンなどの携帯端末へ無線通信を介してライブストリーミング配信する。これにより、競技の様子を示す映像が、携帯端末においてリアルタイムに再生される。
【0020】
具体的には、コンテンツ配信システム1は、MPEG−DASH(Moving Picture Experts Group−Dynamic Adaptive Streaming over HTTP;エムペグ・ダッシュ)方式のストリーミング規格がサポートする数秒単位のセグメント形式の動画や音声のファイルを、IPデータキャストによって送受信することにより、ライブストリーミング配信を行う。
【0021】
MPEG−DASHとは、各種のデバイス端末へのHTTPプロトコルによる動画や音声のストリーミング配信を実現する国際標準規格である。従来のストリーミング技術では、映像をパケット単位に分割して送出するため、パケットを損失すると完全に元の映像を復元できず、ノイズなどの映像の乱れが発生する。一方で、IPデータキャスト技術とMPEG−DASH技術を組み合わせたライブストリーミングでは、映像の再生単位であるファイルごとに処理を行うといった特性上、映像の再生で画面にノイズが発生しない。加えて伝送路でのデータの損失時にもデータを復元しやすいため映像が途切れにくいといった、既存のストリーミング技術と比較して再生品質面でのメリットがある。
【0022】
図1に図示するように、本実施形態に係るコンテンツ配信システム1は、カメラ10と、エンコーダ20と、コンテンツ配信装置30と、Wi−Fiルータ40と、端末50と、を含んで構成される。
カメラ10は、動画撮影をすることができる。カメラ10は、例えば、レンズを通した映像を、CCD(Charge−Coupled Device;電荷結合素子)撮像板などの個体撮像素子に結像させ、それを電気信号であるビデオ信号としてエンコーダ20へ出力する放送用ビデオカメラを含んで構成される。
エンコーダ20は、カメラ10から入力されたビデオ信号を、MPEG−DASH形式のセグメントファイル(コンテンツデータ)に変換する。エンコーダ20は、変換したセグメントファイルを、コンテンツ配信装置30へ出力する。エンコーダ20は、例えば、ビデオ信号をセグメントファイルに変換することができるアプリケーションを含んで構成される。
【0023】
コンテンツ配信装置30は、エンコーダ20から入力されたMPEG−DASH形式のセグメントファイルに対し、IPデータキャストによる配信のための送出処理を行う。コンテンツ配信装置30は、送出処理後のデータをWi−Fiルータ40へ出力する。コンテンツ配信装置30は、例えば、汎用コンピュータ、またはPC(Personal Computer:パーソナルコンピュータ)などを含んで構成される。
Wi−Fiルータ40は、コンテンツ配信装置30から入力されたデータを無線LAN(Local Area Network;構内通信網)パケットとして、複数の端末50へ向けて同報配信する。
【0024】
端末50は、Wi−Fiルータ40から同報配信された無線LANパケットを受信する。端末50は、受信した無線LANパケットに対してIPデータキャストによる受信処理を行い、セグメントファイルを復号する。端末50は、復号したセグメントファイルによってライブストリーミング映像を再生する。端末50は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、またはPCなどを含んで構成される。
【0025】
図2は、IPデータキャストによるライブストリーミング配信にて用いられる通信プロトコルのプロトコルスタックの一例を示す図である。
図示するように、IPデータキャストによるFLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)/AL−FEC(Application Layer Forword Error Correction)処理が行われることで、複数映像の送受信と伝送路にて情報の欠落があっても映像の再生が可能になる。
【0026】
ユニキャスト通信においては、接続される端末が帯域を共有するため同時接続台数に限りがあり、また1つではなく複数の映像を同時に配信するとさらに同時接続台数が少なくなる。一方、本実施形態に係るコンテンツ配信システム1は、UDP/IPを用いたマルチキャスト配信を行うため、伝送路の帯域が狭い場合であっても多数の端末へ映像を同報配信することができる。マルチキャスト配信では、端末の同時接続台数に関わらず映像を配信することができるため、例えば、本実施形態のように競技場の観客席などの多数の端末が存在する場所でのライブストリーミング配信が可能である。なお、マルチキャスト配信では、伝送路として、放送波および通信網のどちらも利用されうる。
【0027】
次に、IPデータキャストによるライブストリーミング配信の処理手順について、図面を参照しながら説明する。
図3は、IPデータキャストによるライブストリーミングの処理手順の一例を示す概略図である。
図3の左側半分は、データの送出側(すなわち、カメラ10、エンコーダ20、コンテンツ配信装置30、およびWi−Fiルータ40)において行われる処理を、上から下に向かって順に表したものである。一方、
図3の右側半分は、データの受信側(すなわち、端末50)において行われる処理を、下から上に向かって順に表したものである。
【0028】
(ステップS001)カメラ10は、動画撮影を行うことにより非圧縮映像データを生成する。生成された非圧縮映像データは、エンコーダ20へ出力される。
【0029】
(ステップS002)エンコーダ20は、カメラ10から入力された非圧縮映像データを、数秒単位のセグメントファイルに分割し、エンコードを行う。
なお、エンコーダ20は、複数の映像レート(例えば、800kbps、1.2Mbps、および1.8Mbpsなどの映像ビットレート)でエンコードすることができる。エンコーダ20は、複数の映像レートのセグメントファイルをそれぞれ作成する。このうち、どの映像レートのセグメントファイルが選択されるかにしたがって、セグメントファイルのファイルサイズが決定される。セグメントファイルのファイルサイズが決定すると、IP送出レートには上限があることから、FEC付与率の最大値が決定する。
エンコーダ20は、複数の映像レートでエンコードしたそれぞれのセグメントファイルを、コンテンツ配信装置30へ出力する。
【0030】
(ステップS003)コンテンツ配信装置30は、エンコードしたセグメントファイルを、ソースブロックに分割した上で、ソースシンボルに分割する。コンテンツ配信装置30は、ソースシンボル単位で処理を行う。コンテンツ配信装置30は、数秒単位の1つのセグメントファイルに対して、複数のソースシンボルに分割する。
【0031】
(ステップS004)コンテンツ配信装置30は、FECシンボルを生成し、分割したソースシンボルにFLUTEヘッダを付与する。なお、FLUTEヘッダには、FLUTEパケットの順番を示す情報などが含まれている。
このように、送出側でFECシンボルが生成されることにより、伝送路にて損失したFLUTEパケットを受信側で復号することができる。但し、損失したパケットが多い場合には、受信側で復号ができない場合がある。その場合、FEC付与率をより高くすることによって復号できるようにする必要がある。また、FEC付与率は、上記のステップS002において選択された映像レートに基づいて決まるため、FEC付与率をより高くするためには、異なる映像レートを選択する必要がある。
【0032】
(ステップS005)コンテンツ配信装置30は、FECシンボル内でFLUTEパケットの順番をランダムに並べ替えるインターリーブを行う。
【0033】
(ステップS006)コンテンツ配信装置30は、パケットにUDP/IPヘッダを付与し、Wi−Fiルータ40を介して端末50へ向けてUDPパケットを配信する。
【0034】
(ステップS007)端末50は、Wi−Fiルータ40から配信されたUDPパケットを、端末50に備えられたアンテナ(図示せず)を介して受信する。
【0035】
(ステップS008)端末50は、受信したUDPパケットからFLUTEパケットへ復号する。
【0036】
(ステップS009)端末50は、FECデコードを行い、損失した復号FLUTEパケットを復号する。
【0037】
(ステップS010)端末50は、FLUTEパケットからソースシンボルへ復号する。
【0038】
(ステップS011)端末50は、ソースシンボルからセグメントファイルへ復号する。
【0039】
(ステップS012)端末50は、復号したセグメントファイルの順番に再生を行う。
【0040】
(コンテンツ配信装置の構成)
本実施形態に係るコンテンツ配信システム1が有するコンテンツ配信装置30は、複数の端末50それぞれにおけるセグメントファイルの受信成功率の情報(受信成功度情報)を取得し、かつ、Wi−Fi環境を示す値であるRSSI(Received Signal Strength Indication, Received Signal Strength Indicator;受信信号高度)およびSNR(Signal−to−Noise Ratio;信号対ノイズ比(または、S/N比とも言う))の値を取得する。
【0041】
コンテンツ配信装置30は、それぞれの端末50における受信成功率、RSSIおよびSNRの値を用いて環境全体における平均的な受信成功率を解析する。コンテンツ配信装置30は、解析した結果に基づいて送出側における制御パラメータを変更する。これにより、コンテンツ配信装置30は、通信環境の変化に応じて、受信成功率および映像品質を最適化することができる。
なお、ここでいう最適化とは、一定の映像品質を保ったうえで受信成功率を最も高くすること、または、一定の受信成功率を保ったうえで映像品質を最も高くすることである。
【0042】
以下に、コンテンツ配信装置30の機能構成について、図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るコンテンツ配信装置30の機能構成を示すブロック図である。
コンテンツ配信装置30は、配信データ取得部301(コンテンツデータ取得部)と、受信状況取得部302と、受信環境解析部303と、パラメータ決定部304と、配信レート切替部305と、FEC付与率切替部306と、配信データ送出部307と、を含んで構成される。
【0043】
配信データ取得部301は、エンコーダ20において生成され、エンコーダ20から出力された複数の映像レートのセグメントファイルを取得する。配信データ取得部301は、取得した複数の映像レートのセグメントファイルを配信レート切替部305へ出力する。
【0044】
受信状況取得部302は、端末50から出力された受信成功率を示すデータを取得する。ここでいう「受信成功率を示すデータ」とは、当該Wi−Fiルータ40と通信接続し、当該Wi−Fiルータ40を介して配信される映像を受信する端末50の一覧、および複数の端末50におけるそれぞれの受信成功率の値を含むデータ(すなわち、それぞれの端末50におけるデータ受信状態を示すログデータ)である。
【0045】
また、受信状況取得部302は、Wi−Fiルータ40から出力されたRSSIおよびSNRを示すデータを取得する。ここでいう「RSSIおよびSNRを示すデータ」とは、当該Wi−Fiルータ40と通信接続し、当該Wi−Fiルータ40を介して配信される映像を受信する端末50の一覧、および複数の端末50におけるそれぞれのRSSIの値およびSNRの値を含むデータ(すなわち、Wi−Fiの通信状況を示すログデータ)である。
受信状況取得部302は、取得した「受信成功率を示すデータ」、および取得した「RSSIおよびSNRを示すデータ」を、受信環境解析部303へ出力する。
【0046】
受信環境解析部303は、受信状況取得部302から出力された「受信成功率を示すデータ」、および取得した「RSSIおよびSNRを示すデータ」を取得し、取得したデータに基づいて、環境全体における平均的な受信成功率を解析することにより受信環境を解析する。受信環境解析部303は、受信環境を解析した結果を示すデータをパラメータ決定部304へ出力する。なお、受信環境解析部303による受信環境の解析処理の動作の詳細については、後述する。
【0047】
パラメータ決定部304は、受信環境解析部303から出力された「受信環境を解析した結果を示すデータ」を取得する。パラメータ決定部304は、取得したデータに基づいて、ライブストリーミング配信において用いる映像レートおよびFEC付与率を示すパラメータ値を決定する。
【0048】
例えば、受信環境の解析結果が良い受信環境を示しているほど、パラメータ決定部304は、映像レートをより高くするようにパラメータ値を決定し、かつ、FEC付与率をより低くするようにパラメータ値を決定する。また、例えば、受信環境の解析結果が悪い受信環境を示しているほど、パラメータ決定部304は、映像レートをより低くするようにパラメータ値を決定し、かつ、FEC付与率をより高くするようにパラメータ値を決定する。
【0049】
パラメータ決定部304は、決定した「映像レートを示すパラメータ値」を、配信レート切替部305へ出力する。また、パラメータ決定部304は、決定した「FEC付与率を示すパラメータ値」を、FEC付与率切替部306へ出力する。なお、パラメータ決定部304によるパラメータ値の算出処理の動作の詳細については、後述する。
【0050】
配信レート切替部305は、配信データ取得部301から出力された「複数の映像レートのセグメントファイル」を取得する。また、配信レート切替部305は、パラメータ決定部304から出力された「映像レートを示すパラメータ値」を取得する。
配信レート切替部305は、取得した「複数の映像レートのセグメントファイル」の中から、取得した「映像レートを示すパラメータ値」に該当する映像レートのセグメントファイルを選択する。
配信レート切替部305は、選択したセグメントファイルを配信データ送出部307へ出力する。
【0051】
FEC付与率切替部306は、パラメータ決定部304から出力された「FEC付与率を示すパラメータ値」を取得する。
FEC付与率切替部306は、取得した「FEC付与率を示すパラメータ値」に基づいてFEC付与率を決定する。FEC付与率切替部306は、決定したFEC付与率を示すデータを配信データ送出部307へ出力する。
【0052】
配信データ送出部307は、配信レート切替部305から出力されたセグメントファイルを取得する。また、配信データ送出部307は、FEC付与率切替部306から出力されたFEC付与率を示すデータ取得する。配信データ送出部307は、取得したセグメントファイルに、取得したデータに基づくFEC付与率でFECシンボルを付与する処理を行う。そして、配信データ送出部307は、セグメントファイルをWi−Fiルータ40へ出力することにより、Wi−Fiルータ40を介して複数の端末50へセグメントファイルを同報配信する。
【0053】
(受信環境解析部の動作)
次に、受信環境解析部303の動作について、図面を参照しながら説明する。
図5は、本発明の実施形態に係るコンテンツ配信装置30の受信環境解析部303の動作を示すフローチャートである。
本フローチャートは、受信環境解析部303が、受信状況取得部302から出力された、それぞれの端末50における受信成功率、RSSIおよびSNRの値を示すデータを取得した際に開始する。
【0054】
(ステップS101)受信環境解析部303は、それぞれの端末50におけるRSSIの値と、予め定められたRSSIの閾値とを比較する。また、受信環境解析部303は、それぞれの端末50におけるSNRの値と、予め定められたSNRの閾値とを比較する。
受信環境解析部303は、RSSIの値が閾値より大きく、かつ、SNRの値が閾値より大きい端末50を、通信環境を解析するための対象端末とする。
【0055】
これは、例えば、特定の端末が1台だけ離れた場所に持ち出された場合などに当該端末における受信成功率が極端に下がることによって(すなわち、例外とすべき端末も対象端末としたことによって)、パラメータが大きく変動することを避けるためである。このようなケースは、例えば、端末が固定されているような環境や、スタジアムの観客席のように観客が保持する端末があまり移動しない場所においては発生しにくいが、例えば、屋外イベントのように観客が保持する端末が頻繁に移動する場所においては発生することがある。このような場合に、通信環境を示すRSSIおよびSNRの値を用いて、例外とする端末を考慮する必要がある。
なお、RSSIまたはSNRのいずれか一方が閾値より大きい端末50が対象端末とされる構成であってもかまわない。
その後、ステップS102へ進む。
【0056】
(ステップS102)受信環境解析部303は、対象端末における受信成功率の平均値を計算する。
なお、それぞれの端末50における受信成功率は、「受信成功率=復号に成功したセグメント数/全セグメント数×100」の計算式によって計算されたものである。例えば、セグメントファイルが1秒間隔、取得間隔が2分間(すなわち、120秒間)であったとすると、合計セグメント数は120セグメントとなる。このとき、復号に成功したセグメント数が98セグメントであったとすると、「98(セグメント)/120(セグメント)×100=82(%)」となるため、受信成功率は82%となる。
【0057】
また、例えば、端末50が6台あり、それぞれの受信成功率、RSSI、およびSNRの値が、それぞれ「90%、−65、25」、「58%、−68、23」、「88%、−65、26」、「73%、−64、22」、「62%、−70、20」、および「25%、−80、15」であったとする。また、RSSIの閾値が「−75」、SNRの閾値が「18」であったとする。その場合、受信成功率、RSSI、およびSNRの値が「25%、−80、15」である端末は、RSSIおよびSNRの値がいずれも閾値以下の値であるため、受信環境解析部303は、当該端末を対象端末から除外する。そして、受信環境解析部303は、残りの5台の端末において受信成功率の平均値を計算する。これにより、「環境における受信成功率」は、「(90+58+88+73+64)/5=74.6」となり、74.6%となる。
【0058】
但し、「環境における受信成功率」は、上記のようにRSSIおよびSNRの値に基づいて例外とする端末を除いた対象端末における受信成功率の平均値でもよいし、環境下にある全ての端末50における受信成功率の平均値であってもよい。なお、「環境における受信成功率」を、「平均的な受信成功率(受信成功度)」ともいう。
【0059】
なお、複数の動画が端末50へ配信されるような場合など、配信される映像が1セッションではなく複数セッション配信されるような場合には、セッション毎に上記の受信成功率の計算がなされる。
【0060】
(ステップS103)受信環境解析部303は、ステップS102において計算した受信成功率の平均値を「環境における受信成功率」として、パラメータ決定部304へ出力する。
以上で本フローチャートの処理が終了する。
【0061】
(パラメータ決定部の動作)
次に、パラメータ決定部304の動作について、図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明の実施形態に係るコンテンツ配信装置30のパラメータ決定部304の動作の一例を示すフローチャートである。
本フローチャートは、パラメータ決定部304が、受信環境解析部303から出力された「環境における受信成功率」を示すデータを取得した際に開始する。
【0062】
(ステップS201)パラメータ決定部304は、受信環境解析部303から取得した「環境における受信成功率」の値と、予め設定された受信成功率の上限の閾値および下限の閾値とをそれぞれ比較する。
その後、ステップS202へ進む。
【0063】
(ステップS202)「環境における受信成功率」の値が、受信成功率の上限の閾値以上の値である場合、ステップS204へ進む。そうでない場合は、ステップS203へ進む。
【0064】
(ステップS203)「環境における受信成功率」の値が、受信成功率の下限の閾値以下の値である場合、ステップS206へ進む。そうでない場合は、ステップS205へ進む。
【0065】
(ステップS204)パラメータ決定部304は、現在のFEC付与率が必要以上に高い値になっていると判定する。パラメータ決定部304は、FEC付与率を現在より低くし、その分、映像レートを高くするようにパラメータの値を決定する。その後、ステップS207へ進む。
【0066】
(ステップS205)パラメータ決定部304は、「環境における受信成功率」の値が、
受信成功率の上限の閾値と下限の閾値との間に収まっていることにより、現在のパラメー
タ値が適切に設定されていると判
定する。したがって、パラメータ決定部304は、現
在のパラメータの値を維持するように決定する。その後、ステップS207へ進む。
【0067】
(ステップS206)パラメータ決定部304は、現在のFEC付与率が十分な値よりも低い値であると判定する。パラメータ決定部304は、FEC付与率を現在より高くし、その分、映像レートを低くするようにパラメータの値を決定する。その後、ステップS207へ進む。
【0068】
(ステップS207)パラメータ決定部304は、上記において決定した、映像レートを設定するパラメータを配信レート切替部305へ出力する。また、パラメータ決定部304は、上記において決定した、FEC付与率を設定するパラメータをFEC付与率切替部306へ出力する。
以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0069】
なお、例えば、上述した例のように「環境における受信成功率」の値が74.6%であり、受信成功率の上限の閾値および下限の閾値が、それぞれ95%および75%であるとする。この場合、「環境における受信成功率」の値が受信成功率の下限の閾値より小さいため、パラメータ決定部304は、現状よりも低い映像レートを選択するようにパラメータの値を決定する。パラメータ決定部304は、選択された映像レートの値とIP送出レートの上限値とからFEC付与率の値を計算する。
【0070】
例えば、現状の映像レートが3000kbps、現状のFEC付与率が60%、およびIP送出レートの上限値が4800kbpsであるとする。この場合、配信レート切替部305が配信データ取得部301から取得する複数の映像の映像レートのうち、一段低い映像レートが2400kbpsであった場合には、映像レートは2400kbpsに設定される。FEC付与率は、IP送出レートと映像レートから、「FEC付与率=(IP送出レート/映像レート)×100−100」の計算式によって計算される。これにより、FEC付与率は、「4800(kbps)/2400(kbps)×100−100=100(%)」となり、100%となる。よって、パラメータ決定部304は、映像レートを2400kbps、FEC付与率を100%に変更するようにそれぞれのパラメータの値を決定し、決定したパラメータの値をそれぞれ配信レート切替部305およびFEC付与率切替部306へ出力する。
【0071】
なお、上記の例においては、パラメータ決定部304は、「環境における受信成功率」の値に基づいて、まず映像レートを選択し、次に、決定した映像レートで配信する場合に設定可能なFEC付与率を計算する構成としたが、これに限られない。例えば、パラメータ決定部304が、まずFEC付与率を決定し、次に、決定したFEC付与率で配信する場合に選択可能な映像レートを選択する構成であってもかまわない。
【0072】
さらに、上記の例においては、パラメータ決定部304が、予め決められた複数の映像レートの中から映像レートを選択する構成としたが、これに限られない。例えば、パラメータ決定部304によって決定されたFEC付与率で配信される場合に設定可能な映像レートを配信レート切替部305が計算し、計算した映像レートでの映像データを、配信データ取得部301を介してエンコーダ20に要求するような構成にしてもよい。
【0073】
なお、複数の動画が端末50へ配信されるような場合など、配信される映像が1セッションではなく複数セッション配信されるような場合にも、例えば、パラメータ決定部304は、複数セッションそれぞれのIP送出レートの合計値をセッション数で除算することによってIP送出レートの上限値を設定し、それぞれのセッションについてパラメータの値を決定する。
例えば、IP送出レートの上限値が4800kbpsであり、セッション数が3である場合には、パラメータ決定部304は、セッション毎に1600kbps(すなわち、4800(kbps)/3)を上限値として、パラメータの値を決定する。
【0074】
また、パラメータ決定部304が、セッション毎に受信成功率の閾値を変更することができる場合には、例えば、特定のセッションの通信品質を高めることが可能になる。例えば、3つのセッションがある場合、パラメータ決定部304が、そのうち1つのセッションにおける受信成功率の閾値を85%から95%、および残りの2つのセッションにおける受信成功率の閾値を75%〜90%とすることによって、1つのセッションを高い受信成功率に収束させ、他の2つのセッションよりも受信成功率を高くする(すなわち、通信品質を高める)ことができる。
【0075】
または、コンテンツ配信装置30が、各セッションのIP送出レートの上限値を変更することによって、特定のセッションの通信品質を高くすることができるような構成であってもよい。例えば、IP送出レートの上限値が4800kbpsであり、3つのセッションがある場合、通信品質を高めたい特定のセッションのIP送出レートの上限値を2400kbpsとし、残りの2つのセッションのIP送出レートの上限値を1200kbpsとするように設定すればよい。
【0076】
以上、説明したように、本実施形態に係るコンテンツ配信装置30は、環境下にある端末50それぞれの受信状況を示すデータ(受信成功率)および通信環境を示すデータ(RSSIおよびSNR)を定期的に取得する。そして、コンテンツ配信装置30は、取得した受信状況を示すデータおよび通信環境を示すデータに基づいて、環境下にある複数の端末における平均的な受信成功度を計算する。計算した受信成功度が予め設定された許容範囲(上限の閾値と下限の閾値との間の範囲)から外れている場合には、コンテンツ配信装置30は、映像レートおよびFEC付与率を増減させることにより、受信成功率と映像品質とを最適化する。
以上により、本実施形態に係るコンテンツ配信装置30は、通信環境の変化に応じて受信成功率と映像品質とを最適化することができる。
【0077】
以上、この発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0078】
なお、上述した実施形態におけるコンテンツ配信装置30の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0079】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、コンテンツ配信装置30に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0080】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態におけるコンテンツ配信装置30を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。コンテンツ配信装置30の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。