特許第6564703号(P6564703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564703清涼剤包接錯体を含む喫煙物品マウスピース
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  • 特許6564703-清涼剤包接錯体を含む喫煙物品マウスピース 図000023
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564703
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】清涼剤包接錯体を含む喫煙物品マウスピース
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/14 20060101AFI20190808BHJP
   A24D 1/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A24D3/14
   A24D1/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-509519(P2015-509519)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-516816(P2015-516816A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】IB2013052097
(87)【国際公開番号】WO2013164706
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年2月23日
【審判番号】不服2017-16994(P2017-16994/J1)
【審判請求日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/640,237
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12166193.8
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】カディリック アレン
【合議体】
【審判長】 松下 聡
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表平9−510627(JP,A)
【文献】 特開平5−146285(JP,A)
【文献】 特許第4695741(JP,B2)
【文献】 米国特許第5165943(US,A)
【文献】 国際公開第2009/027331(WO,A2)
【文献】 特表2011−520925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を有するマウスピース、及び
その外表面に配置された清涼剤包接錯体
を含むことを特徴とする喫煙物品であって、
前記清涼剤包接錯体がシクロデキストリン及び清涼剤を含むシクロデキストリン清涼剤包接錯体であ
前記清涼剤が、カルボキサミド含有化合物及びメントキシ含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種のみからなり、且つ
前記メントキシ含有化合物が、構造 (III):
(式中、R3はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシである)
を有するか、或いは構造(III-A):
を有するか、或いは構造(III-C):
を有する、前記喫煙物品。
【請求項2】
清涼剤が25℃で約8.5 Pa未満である蒸気圧を有する、請求項1記載の喫煙物品。
【請求項3】
カルボキサミド含有化合物が構造 (I):
(式中、RはC1-C12直鎖又は分枝鎖アルキルもしくはアルコキシ、又はアリーレンもしくはピリジルである)
を有するか、或いは構造 (I-B):
を有する、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項4】
カルボキサミド含有化合物がN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド;エチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート;N-(エトキシカルボニルメチル)-p-メンタン-3-カルボキサミド;N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド;N-(4-アミノカルボニルフェニル)-p-メンタン;又はN-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド;又はN-(2-(ピリジン-2-イル)-エチル)-3-p-メンタンカルボキサミドである、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項5】
カルボキサミド含有化合物がN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド又はエチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートである、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項6】
カルボキサミド含有化合物が構造(II):
(式中、R1はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシであり、かつ夫々のR2は独立にC1-C3 直鎖又は分枝鎖アルキルからなる群から選ばれる)
を有するか、或いは構造(II-C):
を有する、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項7】
カルボキサミド含有化合物が2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブタンアミド、N-(2-エトキシエチル)-2,3-ジメチル-2-イソプロピルブタンアミド、又はN-(1-イソプロピル-1-メチルイソブチル)アニスアミド、又はN-エチル-2,2-ジイソプロピルブタンアミド、又はN-(2-ヒドロキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミドである、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項8】
カルボキサミド含有化合物が2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブタンアミドである、請求項1又は2記載の喫煙物品。
【請求項9】
喫煙物品のマウスピースの製造におけるシクロデキストリン清涼剤包接錯体の使用であって、前記包接錯体は、シクロデキストリンと、25℃で約8.5 Pa未満である蒸気圧を有する清涼剤とを含み、
前記清涼剤が、カルボキサミド含有化合物及びメントキシ含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種のみからなり、且つ
前記メントキシ含有化合物が、構造 (III):
(式中、R3はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシである)
を有するか、或いは構造(III-A):
を有するか、或いは構造(III-C):
を有する、前記使用。
【請求項10】
喫煙物品のマウスピースに安定な清涼感を与える方法であって、その方法がマウスピースにシクロデキストリン清涼剤包接錯体を含ませる工程を含み、
前記シクロデキストリン清涼剤包接錯体が、シクロデキストリンと清涼剤を含み、
前記清涼剤が、カルボキサミド含有化合物及びメントキシ含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種のみからなり、且つ
前記メントキシ含有化合物が、構造 (III):
(式中、R3はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシである)
を有するか、或いは構造(III-A):
を有するか、或いは構造(III-C):
を有する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマウスピースの外表面上に清涼剤包接錯体を含むマウスピースを含む喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙物品は典型的にはタバコ基質 (substrate)部分及びマウスピース部分を含む。マウスピース部分は消費者の口又は唇と接触する。多くの可燃性喫煙物品、例えば、シガレットは、“チッピング”ラッパーとして知られている、ラッパー層を利用してマウスピースをタバコ基質に接合する。このラッパー層は典型的には喫煙物品のマウスピース部分の外層、又は消費者の口又は唇と接触する層を形成する。その他の喫煙物品は熱、空気流、化学反応、又はこれらのメカニズムを使用してタバコ基質の成分を消費者に送出するように設計される。これらの非可燃性喫煙物品の多くはまたマウスピース部分のまわりにラッパー材料を含み、この場合、ラッパー材料が消費者の口又は唇と接触する。
幾つかの喫煙物質は清涼剤、例えば、メントールを利用することによりリフレッシュ感を追求する。これらの清涼剤はこれらの清涼剤が気化し、人体、特に口、鼻及び喉の粘膜と接触される場合に生理学的清涼感を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
或る種の喫煙物品について、安定な清涼剤を喫煙物品マウスピースの外表面に用意して清涼感をユーザーに与えることが望ましい。この清涼剤は清涼剤が予測可能な生理学的清涼感を喫煙体験中にユーザーの唇に与え得るように喫煙物品マウスピースの意図される表面に留まることが望ましい。また、安定な清涼剤が喫煙物品により与えられる予想された味覚経験を変える望ましくない揮発性味覚成分を与えないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示によれば、外表面及びその外表面に配置された清涼剤包接錯体(cooling agent inclusion complex)を有するマウスピースを含む喫煙物品が提供される。多くの実施態様において、清涼剤が不揮発性化合物又は非メントール化合物である。清涼剤はカルボキサミド含有化合物又はメントキシ含有化合物であってもよい。清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体はそれが配置される表面から離れて移動しない。多くの実施態様において、包接錯体(inclusion complex)は清涼剤及びシクロデキストリン化合物、例えば、ベータ−シクロデキストリン化合物を含む。喫煙物品のマウスピースの製造における清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体の使用が以下に更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1はマウスピースの外表面に配置された清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体を有する本開示の喫煙物品の略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の喫煙物品は予測可能な生理学的清涼感をユーザーの唇に与えるのに有効な方法を与える。喫煙物品のラッパー材料の上に配置された不揮発性清涼化合物は表面から離れて喫煙物品の内部に移動する傾向があるかもしれず、そこでそれは消費者の唇又は指と物理的に接触し得ない。本開示の清涼剤包接錯体は時間の延長された期間にわたって喫煙物品マウスピースの外表面に安定に、かつ適所に留まる。清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体は無臭であり、喫煙物品により与えられる予想された味覚体験を変える望ましくない揮発性味覚成分を与えない。清涼剤包接錯体はチッピング紙に配置でき、次いで清涼剤包接錯体の安定性に影響しないで製造プロセス及び喫煙物品組立プロセスに移動する。
【0007】
“清涼剤”という用語は人体、特に、消費者の唇及び指と接触される場合に生理学的清涼感を与える化合物を表す。
“チッピング”ラッパーという用語は紙もしくはポリマー又はその他の材料及びその他の任意の充填材から形成し得る包装材料を表す。チッピングラッパーは喫煙物品マウスピースの少なくとも一部のまわりに配置される。チッピングラッパーは典型的にはマウスピース(例えば、フィルター部材)をタバコ基質に接合する。
清涼剤は不揮発性であることが好ましい。“不揮発性”という用語は通常の室温及び圧力で直ぐに蒸発しない化合物又は材料を表す。メントール(これはその化学名により2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールと称し得る)は、本明細書では揮発性と見なされる。不揮発性という用語の一つの目安はメントールより小さい蒸気圧、即ち、約8.5 Pa未満、又は約5 Pa 未満、又は約2.5 Pa 未満(全て25℃で)の蒸気圧を有する化合物又は材料である。
“マウスピース”という用語は消費者の口と接触されるように設計される喫煙物品の部分を表す。通常の喫煙物品では、これがフィルターを含む喫煙物品の部分であってもよく、又は或る場合にはマウスピースがチッピング紙のエクステント(extent)により形成し得る。その他の場合には、マウスピースが喫煙物品のマウス端部から約40mm延び、又は喫煙物品のマウス端部から約30mm延びる喫煙物品の一部により形成し得る。
【0008】
本開示の喫煙物品は外表面に配置された清涼剤包接錯体を含むマウスピースを含む。清涼剤はあらゆる不揮発性清涼剤もしくは非メントール清涼剤、又は不揮発性清涼剤と非メントール清涼剤の両方であってもよい。多くの実施態様において、清涼剤がメントールの蒸気圧より小さく、即ち、25℃で約8.5 Pa未満である蒸気圧を有する。多くの実施態様において、清涼剤が25℃で約5 Pa未満である蒸気圧を有する。或る実施態様において、清涼剤が25℃で約2.5 Pa未満である蒸気圧を有する。
本明細書で同定された化学構造及び式化学名は特別な立体化学を示さない。夫々の化学構造又は化学式名の全ての立体異性体及び光学異性体は本明細書に含まれると推定されることが理解される。以下に記載される清涼剤を含む清涼剤の代表的なリスト及び記載はWO 2009/027331に提示されている。
多くの実施態様において、清涼剤がカルボキサミド含有化合物である。明瞭化のために、カルボキサミド基はまたアミノカルボニル基と称し得る。これらの実施態様の多くにおいて、カルボキサミド含有化合物は構造 (I)を有する。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、RはC1-C12直鎖又は分枝鎖アルキルもしくはアルコキシ、又はアリーレン基もしくはピリジル基である。これらのR基は独立に未置換であってもよく、又は置換されていてもよい。これらのR基は独立に未置換であってもよく、又は酸素、窒素もしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい。RがC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキルもしくはアルコキシ、又はアリーレン基もしくはピリジル基であることが好ましく、これらのいずれもが未置換であってもよく、又は上記のように置換されていてもよい。例示のカルボキサミド含有化合物構造として、下記の構造が挙げられる。
【0011】
【化2】
【0012】
カルボキサミド含有化合物の例示のリストとして、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(I-A 、またWS-3として知られている);エチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(I-B 、またWS-5として知られている);N-(エトキシカルボニルメチル)-p-メンタン-3-カルボキサミド;N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド;N-(4-アミノカルボニルフェニル)-p-メンタン;又はN-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(I-C 、またWS-12 として知られている);又はN-(2-(ピリジン-2-イル)-エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(I-D 、またFEMA 4549 として知られている)が挙げられる。好ましいカルボキサミド含有化合物として、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(I-A)又はエチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(I-B)が挙げられる。
その他の実施態様において、カルボキサミド含有化合物が構造(II)を有する。
【0013】
【化3】
【0014】
式中、R1はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシであり、かつ夫々のR2は独立にC1-C3 直鎖又は分枝鎖アルキルからなる群から選ばれる。R1がC1-C4 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシであり、かつ夫々のR2が独立にC1-C3 直鎖又は分枝鎖アルキルからなる群から選ばれることが好ましい。例示のカルボキサミド含有化合物構造として、下記の構造が挙げられる。
【0015】
【化4】
【0016】
カルボキサミド含有化合物の例示のリストとして、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブタンアミド(II-A、またWS-23 として知られている)、N-(2-エトキシエチル)-2,3-ジメチル-2-イソプロピルブタンアミド、又はN-(1-イソプロピル-1-メチルイソブチル)アニスアミド、又はN-エチル-2,2-ジイソプロピルブタンアミド(II-B、またFEMA 4557 として知られている)、又はN-(2-ヒドロキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミド(II-C、またFEMA 4602 として知られている)が挙げられる。好ましいカルボキサミド含有化合物として、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブタンアミド(II-A)が挙げられる。
多くの実施態様において、清涼剤がメントキシ含有化合物である。多くの実施態様において、清涼剤及びメントキシ含有化合物がメントールを含まない。これらの実施態様の多くにおいて、メントキシ含有化合物が構造 (III)を有する。
【0017】
【化5】
【0018】
式中、R3はC1-C6 直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルコキシである。R3は未置換であってもよく、又は置換されていてもよい。或る実施態様において、R3が酸素、窒素、又はヒドロキシルで置換されている。
例示のメントキシ含有化合物構造として、下記の構造が挙げられる。
【0019】
【化6】
【0020】
メントキシ含有化合物の例示のリストとして、メンチルラクテート(III-C 、またFEMA 3748 として知られている)、モノメンチルスクシネート、モノメンチルグルタレート、メンチルピロリジン-2-オン-5-カルボキシレート、4-(N,N-ジメチルアミノ)-4-オキソブタン酸のメンチルエステル、メンチル3-ヒドロキシブチレート、3-メントキシプロパン-1,2-ジオール、2-メントキシエタノール(III-A 、またFEMA 4154 として知られている)、メントングリセロールケタール、メンタン-3,8-ジオール、又はメンチルメチルエーテル(III-B 、またFEMA 4054 として知られている)が挙げられる。
多くの実施態様において、清涼剤包接錯体は清涼剤、例えば、上記された一種以上の清涼剤、及びシクロデキストリンを含むシクロデキストリン清涼剤包接錯体である。シクロデキストリンは清涼剤と合わされて清涼剤とシクロデキストリンの間に包接錯体を生成する。この包接錯体は清涼剤がシクロデキストリン中に分子レベルで含まれるクラスレート(clathrate)又はゲスト−ホスト錯体である。シクロヘキストリンが清涼剤のまわりに分子固定化により“トラップ”を形成し、清涼剤が喫煙物品マウスピースの表面を通って移動しないことを確実にする。ユーザーがそれらの唇を喫煙物品マウスピースに当て、その上に配置された包接錯体を湿らせる時に、包接錯体が解離し、清涼剤を放出して生理学的清涼感をユーザーの唇又は指に生じる。
【0021】
本開示における使用に意図されるシクロデキストリンは環状構造を有し、上記された清涼剤のいずれとも包接錯体を生成し得る。本開示が関係するシクロデキストリンとして、アルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリン及びこれらの混合物が挙げられる。アルファ−シクロデキストリンは六つのグルコピラノース単位を有する環構造化合物であり、ベータ−シクロデキストリンは七つのグルコピラノース単位を有する環構造化合物であり、またガンマ−シクロデキストリンは八つのグルコピラノース単位を有する環構造化合物である。多くの実施態様において、包接錯体中に利用されるシクロデキストリンは上記された清涼剤のいずれかとのベータ−シクロデキストリンである。シクロデキストリンについての更なる詳細が米国特許第4,751,095 号にある。シクロデキストリンは市販されており、例えば、変性しないで本開示に利用されてもよい。
一実施態様において、シクロデキストリンとの清涼剤の包接錯体の製造方法が提供される。シクロデキストリンはアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリン及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。シクロデキストリンがベータ−シクロデキストリンであることが好ましい。また、シクロデキストリンがベータ−シクロデキストリン又はガンマ−シクロデキストリンであってもよい。包接錯体はシクロデキストリンを包接錯体の生成に適した媒体に溶解することにより生成される。好適な媒体として、シクロデキストリンが可溶性であり、清涼剤が分散し得る水性液体が挙げられる。好ましい媒体は水である。しかしながら、少量のアルコールとともに主として水である水性液体が同様に好適である。例えば、シクロデキストリンが可溶性であるメタノール、エタノール又はイソプロパノールの水溶液が好適である。
一つの例示の実施態様において、シクロデキストリンがその溶解性限界の下のレベルで水性媒体に溶解される。この溶液に、清涼剤が添加されると同時にその溶液を撹拌して清涼剤を分散させ、清涼剤シクロデキストリン包接錯体を生成する。最終包接錯体生成物がその後に喫煙物品マウスピースの製造に利用される。
【0022】
多くの実施態様において、包接錯体が印刷、噴霧又は被覆によりチッピングラッパーに適用される。包接錯体は喫煙物品の製造中にチッピングラッパーの適用表面に残存する。或る実施態様において、包接錯体被覆チッピングラッパーがチッピングラッパーロール、ドラム、ブレーカー及びラッパー操作中を移動する。驚くことに、包接錯体は全てのこれらの操作中にチッピングラッパーの上に安定、活性かつ適所に留まる。次いでチッピングラッパーが喫煙物品、例えば、喫煙物品を形成するためのフィルター部材のマウスピースに適用し得る。その他の実施態様において、包接錯体が喫煙物品の製造中に喫煙物品マウスピースの外表面に適用される。例えば、チッピングラッパーが喫煙物品マウスピース上に適所にある時に、包接錯体がチッピングラッパーに噴霧又は印刷又は被覆される。
包接錯体は通常の可燃性喫煙物品のマウスピースの外表面に含まれてもよく、又はそれは熱、空気流又は化学反応を使用してタバコの成分を送出するように構成される非可燃性喫煙物品のマウスピースの外表面に含まれてもよい。
少なくとも一つの実施態様において、シクロデキストリンとの清涼剤の包接錯体が少なくとも6ヶ月にわたってチッピングラッパーの上に安定、活性かつ適所に留まることがわかった。こうして、付加的なバリヤー層又は被覆物を使用しなくても、清涼剤が喫煙物品の6ヶ月の貯蔵後にチッピングラッパーの適用表面から移動せず、生理学的清涼感をユーザーの唇に与えた。シクロデキストリンとの清涼剤の包接錯体はまた喫煙体験中に不快な味覚特徴を与えない。
シクロデキストリンとの清涼剤の包接錯体がシガレット喫煙物品とともに以下に説明されるが、清涼剤包接錯体はその他の喫煙物品で利用し得る。これらのその他の喫煙物品は熱、空気流、化学反応、又はこれらのメカニズムの組み合わせを使用して、タバコ基質の成分を消費者に送出するように設計される。これらの非可燃性喫煙物品の多くはまたマウスピース部分のまわりにラッパー材料を含み、この場合、ラッパー材料が消費者の口又は唇と接触する。シクロデキストリンとの清涼剤の包接錯体はこれらの喫煙物品のマウスピースに利用されて生理学的清涼感を消費者の唇もしくは指又はその両方に与え得る。
【0023】
好ましくは、喫煙物品は上記清涼剤約0.01mg〜約10mg、更に好ましくは約0.01mg〜約2mg、最も好ましくは約0.05mg〜約1mgを含む。多くの実施態様において、清涼剤が、例えば、外部ラッパーの全表面を横切って、喫煙物品のマウスピースの外部ラッパーの外表面に配置される。多くの実施態様において、清涼剤が消費者の唇及び指の両方と接触するように外部ラッパーに一様に配置される。
清涼剤がマウスピースの外表面の一部のみに配置されることが好ましい。例えば、或る実施態様において、清涼剤がマウスピースの外表面の最初の約15mmのマウス端部部分のみ、好ましくはマウスピースの外表面の最初の約12mmのマウス端部部分のみに配置される。これは喫煙物品が消費されるにつれて清涼剤が消費者の唇に接触することを可能にする。幾つかのその他の実施態様において、清涼剤が外部ラッパーの最初の約12mmのマウス端部部分を越えて、好ましくは外部ラッパーの最初の約15mmのマウス端部部分を越えてのみ配置される。これは喫煙物品が消費されるにつれて清涼剤が消費者の指先に接触することを可能にする。また、幾つかの更なる実施態様において、清涼剤がマウスピースの全外表面を横切って配置し得る。
その開示が添付図面を参照して、例のみとして、更に記載されるであろう。
図1はマウスピースの外表面に配置された清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体を有する本開示の喫煙物品の略断面図を示す。
図1に示された喫煙物品10はマウスピース14(ここではフィルター14として示される)に、軸方向に整列して、取り付けられたタバコ基質又はタバコロッド12を含む。マウスピース又はフィルター14はプラグラップ18中に包装された酢酸セルロースから形成し得るフィルタープラグ16を含む。チッピングラッパー19はタバコロッド12を軸方向に並べられたマウスピース又はフィルター14に接合する。
清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体20がマウスピース又はフィルター14の外表面に配置される。多くの実施態様において、清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体20がマウスピース外表面の少なくとも一部を形成するチッピングラッパー19に配置される。
図1に示されるように、清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体20は清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体20の移動を防止するためにバリヤー層又はあらゆるその他の層を必要としない。清涼剤及びシクロデキストリン包接錯体20は付加的な層又は被覆物を使用しないで時間の延長された期間にわたってチッピング紙の上に安定、活性かつ適所に留まる。
【実施例】
【0024】
官能研究を行なって、チッピング紙の上に配置された清涼剤包接錯体を有するシガレットが、6ヶ月だけ熟成された同じシガレットと較べて、一層強い清涼感を与えるか否かを測定した。
3種の異なるグループのシガレット(1P、2P、3P)を調製し、官能研究のためにパネリストのグループに提供した。夫々のグループはシガレットの非熟成バージョン及び6ヶ月だけ熟成されたシガレットの相当するバージョンからなっていた。夫々の場合に、シガレットをそのチッピング紙の上に等しい量の清涼剤で調製した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1−シガレット仕様
パネリストに彼らの唇を湿らせ、第一のシガレットのフィルター部分を彼らの口の左側に挿入し、次いでシガレットを除去する前に、火をつけられていないシガレットを2回取り出すように頼んだ。次いでパネリストに第二のシガレットを彼らの口の右側に挿入する以外は、このプロセスを繰り返すように頼んだ。両方のシガレットを除去した数秒後に、パネリストにその後にどのシガレットが一層強い清涼感を与えたのかを示すように頼んだ。夫々のシガレット対をランダムな順序でパネリストに7回提供した。夫々のシガレット対は表1に示された一つの非熟成シガレット及び一つの相当する熟成シガレットを含んでいた。
ペネリストにより与えられた回答を下記の表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2−パネリスト応答
行なった夫々の試験について非熟成シガレットと熟成シガレットの間に有意差がないことがわかった。すなわち、パネリスト研究はチッピング紙に配置された清涼剤包接錯体を有するシガレットが、6ヶ月だけ熟成された同じシガレットと較べて、一層強い清涼感を与えることを総合的に見い出せなかった。
図1