(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性物質がプロゲステロン、アロプレグナノロン、プレグナンジオール、プレグナノロン、プレグナンジオン、20−α−ジヒドロプロゲステロン、17−OH−プロゲステロン、5−α−ジヒドロプロゲステロン、6−デヒドロ−レトロプロゲステロン(ジドロゲステロン)、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチンドロンアセテート、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、クロルマジノン、メゲストロール、プロゲステロン構造に導入された6−α−メチル、6−メチル、6−エン、若しくは6−クロロ置換基部分を有するプロゲステロン誘導体、19−ノルプロゲステロン、又はプロゲステロンの17−α−OHエステルである、請求項1に記載の医薬組成物。
前記担体が微結晶性セルロース、結晶セルロース、セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシビニルポリマー又はその塩、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋デンプン、アミラーゼ、アミロペクチン、ペクチン、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、トラガカン
トゴム及びグルコマンナンからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成
物。
前記結合剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、そのポリアクリレート及び塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC−SL及びHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロース2910、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等のセルロースの低級アルキルエーテル、非結晶セルロース、オレイン酸、グリセリン、白色ワセリン、水素化ロジンのグリセロールエステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール400からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
前記活性物質が前記粒子の10wt%〜75wt%、40wt%〜75wt%、25wt%〜50wt%、又は1.0wt%〜25.0wt%、又は5wt%〜10wt%を占める、請求項1に記載の医薬組成物。
5.0%〜30.0%(wt/wt)の平均粒子径が30μm〜150μmの微結晶性セルロース、デンプン又はそれらの混合物と、0.1%〜10%(wt/wt)の第三リン酸カルシウムとを更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
前記活性物質がプロゲステロン、アロプレグナノロン、プレグナンジオール、プレグナノロン、プレグナンジオン、20−α−ジヒドロプロゲステロン、17−OH−プロゲステロン、5−α−ジヒドロプロゲステロン、6−デヒドロ−レトロプロゲステロン(ジドロゲステロン)、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチンドロンアセテート、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、クロルマジノン、メゲストロール、プロゲステロン構造に導入された6−α−メチル、6−メチル、6−エン、若しくは6−クロロ置換基部分を有するプロゲステロン誘導体、19−ノルプロゲステロン、又はプロゲステロンの17−α−OHエステル、又はモメタゾン若しくはフランカルボン酸モメタゾンであり、前記担体が微結晶性セルロース(MCC)を含み、前記結合剤がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
活性物質の鼻腔内投与又は膣内投与等の経粘膜投与に好適な乾燥医薬組成物が本明細書に記載される。乾燥組成物は活性物質ナノ粒子と、結合剤と、担体とから構成される噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子を含み、活性物質ナノ粒子は担体の粒子に結合する。下記でより詳細に論考されるように、噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子及び活性物質ナノ粒子のサイズは、鼻腔内送達を促進するように選択及び制御することができ、膣内投与及び他の投与経路にも好適である。
【0025】
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、他に規定のない限り本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。当業者に既知の様々な方法論が本明細書で言及される。言及されるこのような既知の方法論を記載している刊行物及び他の資料は、完全に記載されているかのように、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。当業者に既知の任意の好適な材料及び/又は方法を利用して本発明を実施することができる。しかしながら、具体的な材料及び方法が記載される。以下の説明及び実施例において言及される材料、試薬等は、他に指定のない限り商業的供給源から入手することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、数量を特定していない単数形(singular forms "a", "an"
and "the")は単数のみを指すことが明示的に述べられない限り、単数及び複数の両方を指す。
【0027】
「約」という用語及び範囲の使用は概して、「約」という用語で修飾されるか否かを問わず、包含される数値が本明細書に記載の正確な数値に限定されないことを意味し、本発明の範囲から逸脱することなく引用される範囲に実質的に含まれる範囲を指すことを意図するものである。本明細書で使用される場合、「約」は当業者に理解され、使用される文脈によって或る程度異なる。当業者に明らかでないこの用語が使用される場合、それが使用される文脈を考えると、「約」は特定の用語の最大±10%を意味する。
【0028】
本明細書で使用される「乾燥医薬組成物」という用語は、実質的に水を含まない医薬組成物を指す。本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、記載の組成物(例えば医薬組成物)が除外される成分(複数の場合もあり)(例えば水)を、問題となる組成物の総重量をベースとして約5重量%未満、約3重量%未満又は約1重量%未満しか含まないことを意味する。幾つかの実施形態では、乾燥医薬組成物は僅か約0.1重量%の水又は僅か約0.01重量%の水しか含まない。
【0029】
本明細書で使用される「乾燥粒子」という用語は医薬活性物質ナノ粒子と、結合剤と、担体とを含み、活性物質ナノ粒子が担体の粒子に結合した乾燥粒子を指す。
【0030】
本明細書で使用される「噴霧乾燥粒子」という用語は、医薬配合物の分野におけるその従来の意味を有し、医薬活性物質、結合剤及び担体の噴霧乾燥凝集物を含む粒子を指す。
【0031】
「医薬活性物質」、「活性物質」、「医薬品有効成分」及び「API」という用語は、本明細書で区別せずに使用される。
【0032】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、平均粒子径が約1μm以下の粒子を指す。ナノ粒子は、より大きな粒子から粉砕、篩分等を含む当該技術分野で既知の方法によって得ることができる。
【0033】
粒子サイズ測定は、当該技術分野で既知のようにレーザー回折を用いて行うことができる。レーザー回折法は、粒子によって回折した光の角度がその粒子のサイズに反比例するという現象に基づくものである。機器によりレーザー光源を用いて粒子の懸濁液を照射し、入射光に対して様々な角度で回折した光の強度を測定する。この強度データの分布に基づき、球体による電磁放射の散乱に関するマクスウェルの方程式に対するミー理論(Mie solution)に基づくアルゴリズムを機器で用いて、散乱光の強度パターンから粒子サイズ分布(粒度分布)を逆算する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という表現は、かかる治療を必要とする被験体に薬物を投与した場合に特定の薬理反応を生じる薬物の投与量を意味する。「治療的有効量」の薬物は、かかる投与量が当業者によって治療上有効量とみなされる場合であっても、所与の患者における本明細書に記載の病態/疾患の治療に効果的でない場合もある。便宜及び説明のために、成人ヒト被験体に関する例示的な投与量及び治療的有効量を本明細書で論考する。当業者であれば、特定の被験体及び/又は病態/疾患を治療するために必要に応じて、かかる量を標準的慣行に従って調整することができる。
【0035】
医薬組成物
活性物質の鼻腔内投与又は膣内投与等の経粘膜投与及び他の投与経路に好適な乾燥医薬組成物が本明細書に記載される。乾燥組成物は活性物質ナノ粒子と、結合剤と、担体とから構成され、活性物質ナノ粒子が担体の粒子に結合した噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子を含む
。幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子の少なくとも約50%、例えば少なくとも75%及び少なくとも80%が担体粒子に結合する。
【0036】
下記でより詳細に論考されるように、噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子及び活性物質ナノ粒子のサイズは鼻腔内送達を促進するように選択及び制御することができる。このため、例えば本明細書に記載の組成物の乾燥(例えば噴霧乾燥)粒子は、以下の1つ又は複数の粒子サイズ分布を有し得る:
噴霧乾燥粒子の最大10%が10μm未満の粒子サイズを有する;
噴霧乾燥粒子の少なくとも50%が少なくとも約15μmの粒子サイズを有する;及び、
噴霧乾燥粒子の少なくとも90%が最大約55μmの粒子サイズを有する。
【0037】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の組成物は例えば急速な活性物質の送達、生体接着(bioadherence)、貯蔵安定性の改善の達成及び即時使用可能な形態で包装しやすいという、1つ又は複数の有益な特徴を示す。
【0038】
活性物質ナノ粒子
本明細書に記載の医薬組成物は、活性物質ナノ粒子を含む噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子を含む。活性物質は局所作用若しくは全身作用のための鼻腔内投与に好適な任意の活性物質、又は活性物質と結合剤とを含む粒子を含む乾燥医薬組成物を調製することが望ましい任意の活性物質であり得る。幾つかの実施形態では、活性物質は全身作用のための鼻腔内投与に好適である。他の実施形態では、活性物質は全身作用のための膣内投与に好適である。
【0039】
幾つかの実施形態に応じて、活性物質は、プロゲステロン、又はその誘導体、代謝産物若しくはプロドラッグである。プロゲステロンの代謝産物の非限定的な代表例としては、アロプレグナノロン、プレグナンジオール、プレグナノロン、プレグナンジオン、20−α−ジヒドロプロゲステロン及び17−OH−プロゲステロンが挙げられる。プロゲステロンの誘導体の非限定的な代表例としては、5−α−ジヒドロプロゲステロン、6−デヒドロ−レトロプロゲステロン(ジドロゲステロン)、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、レボノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチンドロンアセテート、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、クロルマジノン、及びメゲストロール、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルが挙げられる。他の例示的なプロゲステロンの誘導体としては、プロゲステロン構造に導入された6−α−メチル、6−メチル、6−エン、又は6−クロロ置換基部分を有するプロゲステロン誘導体及び19−ノルプロゲステロンが挙げられる。プロゲステロンのプロドラッグの非限定的な代表例としては、プロゲステロンの17−α−OHエステルを含むプロゲステロンのエステルが挙げられる。
【0040】
他の実施形態によると、活性物質はモメタゾン、又はその誘導体、代謝産物若しくはプロドラッグである。幾つかの実施形態では、活性物質は化学名(11β,16α)−9,21−ジクロロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3,20−ジオキソプレグナ−1,4−ジエン−17−イル−2−フロエートのモメタゾンのプロドラッグであるフランカルボン酸モメタゾンである。フランカルボン酸モメタゾンは、皮膚又は気道の炎症を軽減するために使用される糖質コルチコステロイドである。
【0041】
他の実施形態によると、活性物質は活性物質と結合剤とを含む粒子を含む乾燥医薬組成物を調製することが望ましい任意の活性物質、例えば抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、癌の治療に有用な作用物質、制吐剤、心血管疾患及び病態の治療に有用な作用物質(例えば心臓脈管薬)、血管収縮剤、血管拡張剤、抗精神病剤、抗鬱剤、麻酔剤、ステロイド、
興奮剤、鎮静剤、気管支拡張剤、又はアレルギー及び他の病態を含む疾患若しくは病態の治療に有用な任意の他の作用物質である。
【0042】
幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子の噴霧乾燥(又は他の加工)前の平均粒子径は約1μm未満である。活性物質ナノ粒子は、より大きな活性物質粒子から当該技術分野で既知の方法によって得ることができる。例えば、より大きな粒子を(媒体粉砕又はジェット粉砕により)粉砕し、磨砕し、篩分し、及び/又は遠心分離して、平均粒子径が約1μm未満のナノ粒子を作製することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子を媒体粉砕、高圧粉砕又はジェット粉砕等の粉砕を含むプロセスによって調製する。
【0044】
媒体粉砕又は高圧粉砕のプロセスにおいては、活性物質を界面活性剤等の粉砕助剤(すなわち分散剤)を含み得る懸濁液中に配合する。本明細書で使用される場合、「粉砕助剤」及び「分散剤」という用語は区別せずに使用される。懸濁液は例えば有機液体(例えば油又はアルコール)を含む水性又は非水性のものであり得る。具体的な実施形態では、懸濁液は水性である。懸濁液を粉砕媒体、典型的には硬質の不活性材料の球状ビーズと合わせる。活性物質の粒子は、媒体ビーズの撹拌によって生じる機械摩耗でより小さなサイズへと破壊される。実験室規模の粉砕はローラーミルの容器内でのスラリーの回転等の低エネルギー手段、又は回転式撹拌機を用いた混合等の高エネルギー手段によって行うことができる。好適な粉砕装置としては、例えばNylacast(Nylacast Components,Leicester,UKから入手可能)、Netzsch(NETZSCH GmbH & Co. Selb,Germanyから入手可能)、Drais(Draiswerke, Inc,40 Whitney Road, Mahwah,N.J.07430,USAから入手可能)製の従来の湿式ビーズミル等が挙げられる。
【0045】
例として、活性物質ナノ粒子は、
(a)活性物質と、粉砕助剤と、水とを含む懸濁液を形成することと、
(b)懸濁液を第1の磨砕媒体で粉砕することと、
(c)懸濁液を第2の磨砕媒体で粉砕することであって、第1の磨砕媒体の直径が第2の磨砕媒体よりも大きいことと、
(d)粉砕された活性物質ナノ粒子を懸濁液から回収することであって、活性物質ナノ粒子の平均粒子径が約1μm未満であることと、
を含むプロセスによって調製することができる。
【0046】
例えば、第1の磨砕媒体の直径は約1mm〜約2mmであり、第2の磨砕媒体の直径は約0.1mm〜約0.5mmであり得る。
【0047】
上述のように、粉砕は界面活性剤等の粉砕助剤を用いて達成することができる。1つ又は複数の粉砕助剤を使用することで粉砕時の活性物質粒子の凝集を防止又は低減することができ、それにより所望のサイズの活性物質ナノ粒子の形成を促すことができる。逆に、媒体粉砕プロセスにおける結合剤の使用により粉砕懸濁液の粘度が増大し、活性物質粒子の凝集体の形成が促進又は増進され、それにより所望のサイズの活性物質ナノ粒子を得る能力が妨げられ得ることが見出されている。当業者であれば、本明細書に提示される指針を用いて粉砕プロセスの成分及び条件を選択及び調整し、所望のサイズの活性物質ナノ粒子を得ることができる。
【0048】
幾つかの実施形態によると、粉砕助剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば1つ又は複数の市販のTween(商標)、例えばTween 20(商標)及びTween 80(商標)(ICI Specialty Chemicals)等の界面活性剤である。幾つかの実施形態では、粉砕助剤はポリソルベート20、ポリソルベート80及び塩化ベンザ
ルコニウムからなる群から選択される。
【0049】
概して、界面活性剤はイオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であり得る。イオン性界面活性剤を使用する場合、イオン性界面活性剤はアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤であり得る。アニオン性界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、並びにアルキルカルボン酸塩、例えばステアリン酸カルシウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤の例としては、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。具体的な実施形態では、界面活性剤はDuponol P(商標)(DuPont)等のラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホン酸塩であるTriton X−200(商標)(Rohm and Haas)、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースとの混合物であるCrodesta F−110(商標)(Croda Inc.)である。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン(POE)アルキルフェノール、POE直鎖アルコール、POEポリオキシプロピレングリコール、POEメルカプタン、長鎖カルボン酸エステル、例えばグリセリル、及び天然の脂肪酸のポリグリセリルエステル、例えばモノステアリン酸グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びPOEソルビトールエステル、ポリオキシエチレングリコールエステル、ポロキサマー、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであるPluronic F68(商標)及びPluronic F108(商標)、ポロキサミン、例えばエチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの逐次付加に由来する四官能性ブロックコポリマーである、Poloxamine 908(商標)としても知られるTetronic 908(商標)(BASF Wyandotte Corporation,Parsippany,N.J.)が挙げられる。
【0050】
付加的又は代替的には、界面活性剤はリン脂質であってもよい。例示的なリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ポスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらは典型的には炭素原子数約4〜約22、例えば炭素原子数約10〜約18であり、飽和度は様々である。
【0051】
幾つかの実施形態では、粉砕懸濁液は約0.01%〜5.0%(wt/wt)、例えば約0.05%〜2.0%(wt/wt)、約0.5%〜1.0%(wt/wt)、例えば約0.5%(wt/wt)又は約1.0%(wt/wt)の界面活性剤等の粉砕助剤を含む。具体的な実施形態では、粉砕懸濁液における活性物質と粉砕助剤との重量/重量比は約10:1〜約20:1である。具体的な実施形態は下記実施例に説明される。
【0052】
界面活性剤等の粉砕助剤のタイプ及び量の選択は、医薬活性物質ナノ粒子の製造における標準的慣行に従って行われる。具体的な実施形態は下記実施例に説明される。
【0053】
付加的に又は代替的には、粉砕はジェット粉砕を含み得る。概して、ジェット粉砕には、円筒スチール粉砕チャンバ内で加圧ガス(例えば窒素)のサイクロン流を生成することが含まれる。粉砕する材料を、注入口の通気開口部(venture aperture)によって生じる真空によりチャンバに導入する。サイクロンガス流によって生じた遠心力により粒子がチャンバの内壁に押し付けられ、粒子が互いに衝突し、より小さな粒子に破壊される。粒子は流出するガス流によりそれらに働く空気力が遠心力によって生じる力を上回るサイズまで減少し、ミルから排出され、フィルター内に捕捉される。代表的なジェットミルとしては、スパイラルジェットミル、ループジェットミル及び流動床ジェットミルが挙げられる。
【0054】
付加的に又は代替的には、活性物質ナノ粒子は、平均粒子径が約1μm未満のナノ粒子を作製する高圧均質化、再結晶化、磨砕、篩分及び/又は遠心分離等の粒子サイズを低減する任意の他の方法を含むか又は更に含むプロセスによって作製することができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子は医薬活性物質からなり、例えば粉砕プロセスは粉砕助剤又は他の賦形剤を使用することなく達成される。幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子は医薬活性物質と粉砕助剤とからなり、例えば粉砕プロセスに粉砕助剤の使用が含まれる。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子における活性物質と粉砕助剤との重量/重量比は約10:1〜約20:1である。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子に担体は含まれない。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子に結合剤は含まれない。このため、活性物質ナノ粒子を任意の担体又は結合剤なしに調製し、担体又は結合剤材料を含まない平均粒子サイズが約1μm未満の活性物質ナノ粒子を得ることができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子の平均粒子径は約0.01μm、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、約1μm未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の平均粒子径である。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の平均粒子径は約0.1μm超かつ約1.0μm未満であり、具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の中央粒子径は約0.2μmである。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の最大約10%が約0.1μm以下の粒子径を有する。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の少なくとも約90%が最大約0.8μmの粒子径を有する。具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の少なくとも約80%が約0.1μm〜約0.8μmの粒子径を有する。極めて具体的な実施形態では、活性物質ナノ粒子の中央粒子径は約0.2μmであり、活性物質ナノ粒子の最大約10%が約0.1μm以下の粒子径を有し、活性物質ナノ粒子の90%が最大約0.8μmの粒子径を有するか、又は活性物質ナノ粒子の少なくとも約80%が約0.1μm〜約0.8μmの粒子径を有する。
【0057】
担体
本明細書に記載の任意の実施形態によると、担体は噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子、例えば経鼻投与又は膣内投与等の経粘膜投与用の乾燥医薬粉末配合物の担体としての使用に好適な任意の担体を含み得る。担体は、本明細書に記載の乾燥(例えば噴霧乾燥)粒子の標的粒子サイズ分布と一致する粒子サイズ分布を有するように選択することができる。例えば担体は、下記でより詳細に論考されるように、乾燥(例えば噴霧乾燥)粒子の標的粒子サイズ分布よりも小さい粒子サイズ分布を有するように選択することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、担体はpH約7.4及び温度約36℃で水を吸収するが、これらの条件下で明らかに水溶性であるわけではない。他の実施形態では、担体は水を吸収し、及び/又はこれらの条件下で明らかに水溶性である。
【0059】
例示的な担体としては、例えば、吸水及び水不溶性セルロース、例えば、結晶セルロース(微結晶性セルロースを含む)、セルロース、α−セルロース、及び架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ビニルポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシビニルポリマー又はその塩、架橋ポリビニルアルコール及びポリヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。更なる担体の例としては、例えば、吸水及び水不溶性デンプン、例えば、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、架橋デンプン、アミラーゼ、アミロペクチン、及びペクチン、吸水及び水不溶性タンパク質、例えば、ゼラチン、カゼイン、吸水及び水不溶性ガム、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、及びグルコマンナンが挙げられる。
【0060】
本明細書に記載の任意の実施形態によると、担体は微結晶性セルロース(MCC)であり得る。微結晶性セルロースは、PH−F20JPとして販売される製品を含む、Ceolus(商標)という商品名でAsahi Kasei Corporationから入手可能である。さらに、Avicel(商標) PH−105を含むAvicel(商標)という商品名で市販されているFMC CorporationのMCCが、本発明の組成物への使用に好適である。
【0061】
結合剤
本明細書に記載の任意の実施形態によると、結合剤は例えば経鼻投与のための乾燥医薬粉末配合物用の噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子の結合剤としての使用に好適な任意の結合剤を含み得る。幾つかの実施形態では、約1μm未満の平均粒子サイズを達成するように活性物質ナノ粒子を加工する(例えば粉砕する)前に、結合剤と活性物質ナノ粒子とを合わせる。このため、かかる実施形態では、活性物質ナノ粒子は結合剤の存在下で約1μm未満の平均粒子サイズを達成するように加工される。
【0062】
上述のように、幾つかの実施形態では、結合剤はpH約7.4及び温度約36℃で水を吸収し、概してこれらの条件下で水溶性である。
【0063】
代表的な結合剤としては、ポリアクリレート、及びそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム)、セルロースの低級アルキルエーテル、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC−SL、及びHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロース2910、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非微結晶セルロース、オレイン酸、グリセリン、白色ワセリン、水素化ロジンのグリセロールエステル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール(例えば、CarboWax 3350(商標)及びCarboWax 1450(商標)(The Dow Chemical co.)、及びCarbopol 934(商標)(Lubrizol Corp.))、ポリビニルピロリドン(非架橋)、アミラーゼ、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルコール(無水)、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ノルフルラン、ソルビタントリオレート、トリクロロモノフルオロメタン、塩化ベンザルコニウム、クエン酸ナトリウム、酢酸、ヒドロキシアニソール、クロロブタノール、クエン酸、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、塩酸、メチルパラベン、ポリエチレングリコール3350、第一リン酸カリウム、プロピルパラベン、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、無水第二リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム七水和物、ソルビトール、スクラロース、無水デキストロース、デキストロース、フェニルエチルアルコール、ポリソルベート80、硫酸、アリル−α−イオノン、無水クエン酸三ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、カフェイン、二酸化炭素、デキストロース、窒素、ステアリン酸ポリオキシル400、ポリソルベート20、ソルビン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム十二水和物、第二リン酸ナトリウム七水和物、無水第一リン酸ナトリウム(sodium phosphate monobasic anhydrous)、第一リン酸ナトリウム無水物(sodium phosphate monobasic dehydrate)、粘膜付着性ポリマー、例えば、Chaturvedi et al., J Adv. Pharm. Technol. Res. 2(4): 215-222 2011に記載のもの、F−127ゲル化剤、例えば、Khairnar et al., Int. J Pharm. Pharm. Sci. 3: 250 (2011)に記載のもの、誘導体化キトサン、例えば、米国特許出願公開第2010/0256091号に記載のもの、並びに米国特許第5,958,458号に記載の結合剤が挙げられる。
【0064】
例示的な結合剤としては、ポリアクリレート、及びそれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム)、セルロースの低級アルキルエーテル、例えば、カルボキシメ
チルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC−SL、及びHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロース2910、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶セルロース、オレイン酸、グリセリン、白色ワセリン、水素化ロジンのグリセロールエステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール並びにポリエチレングリコール400が挙げられる。
【0065】
噴霧乾燥粒子
上述のように、本明細書に記載の乾燥組成物は活性物質ナノ粒子と、結合剤と、薬学的に許容可能な担体とから構成される噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子を含み得る。
【0066】
噴霧乾燥粒子は、医薬配合物用の噴霧乾燥粒子を作製する当該技術分野で既知の方法によって作製することができる。例えば、Masters et al., THE SPRAY-DRYING HANDBOOK, 5th Ed., Longman Scientific & Technical (1991)を参照されたい。概して、噴霧乾燥では、材料の溶液又は懸濁液を加熱チャンバへとエアロゾル化することにより溶媒を蒸発させ、溶質の乾燥粒子を残すことによって比較的均一なサイズ分布を有する粒子が作製される。
【0067】
例えば噴霧乾燥時に、噴霧乾燥機(例えばBuchi B290)によって液体流を固体(溶質又は懸濁液成分)と蒸気(溶媒成分)とに分離することができる。固体は通常はドラム又は集塵器に回収される。投入液体流を、ノズルを通して熱蒸気流(例えば空気又は窒素)へと噴霧し、蒸発させる。水分としての固形分は、迅速に液滴を離れる。通常はノズルを使用して液滴を非常に小さくし、熱の移動及び水蒸発の速度を最大にする。例えば典型的な噴霧乾燥プロセスでは、液滴サイズはノズルに応じて約20μm〜180μm、約20μm〜100μm又は約20μm〜50μmの範囲であり得る。幾つかの実施形態では、高圧単一流体ノズル(50バール〜300バール)を使用する。他の実施形態では、一方の流体ノズルが乾燥させる液体用であり、第2の流体ノズルが圧縮ガス(概して1バール〜7バールの空気)用である二流体ノズルを使用する。
【0068】
例示的な方法では、活性物質ナノ粒子、結合剤及び薬学的に許容可能な担体を合わせて水性組成物(すなわち懸濁液)(すなわち原料)を形成し、噴霧乾燥して噴霧乾燥粒子を形成する。幾つかの実施形態では、水性組成物を任意に噴霧乾燥前に水で更に希釈することができる。例えば、例示的な一実施形態では下記表8に示されるように、プロゲステロン(20%(wt/wt))、PS20(1%(wt/wt))、MCC(10%(wt/wt))、HPMC(3%(wt/wt))及び水(66%(wt/wt))を含む水性組成物を調製し、この水性配合物を噴霧乾燥前に水(例えば50%〜75%(wt/wt))で更に希釈する。
【0069】
幾つかの実施形態では、活性物質ナノ粒子の調製には粉砕プロセスから存在し、噴霧乾燥プロセスにおいて分散剤として作用し得るような粉砕助剤が含まれる。任意に、上で論考されるポリソルベート20等の界面活性剤を含む当該技術分野で既知のもののような分散剤を水性懸濁液に添加することができる。
【0070】
一例として、活性物質ナノ粒子は水性噴霧乾燥組成物の約0.1%〜25.0%(wt/wt)を占めることができ、例えば約0.5%〜5.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子、例えば約1.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子である。具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約5.0%〜20.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子、例えば約5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10.0%、11.0%、12.0%、13.0%、14.0%及び15.0%(wt/wt)の活性物質ナノ
粒子、例えば9.0%、10.0%、15.0%又は20.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子を含む。他の具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約0.3%〜1.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子、例えば約0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%及び1.0%(wt/wt)の活性物質ナノ粒子を含む。
【0071】
一例として、担体(MCC等)は水性噴霧乾燥組成物の約0.1%〜25.0%(wt/wt)を占めることができる。具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約2.0%〜15.0%(wt/wt)の担体、例えば約2.5%〜5.0%(wt/wt)、約5.0%〜7.0%(wt/wt)、約7.0%〜12.0%(wt/wt)の担体、例えば8.0%、9.0%、10.0%及び11.0%(wt/wt)の担体、例えば9.0%又は10.0%(wt/wt)の担体を含む。他の具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約5.0%、6.0%、7.0%(wt/wt)の担体を含む。
【0072】
一例として、結合剤(HPMC又はNaCMC等)は水性噴霧乾燥組成物の約0.01%〜5.0%(wt/wt)を占めることができる。具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約0.3%〜4.0%(wt/wt)の結合剤、例えば0.375%、0.75%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%又は3.0%(wt/wt)の結合剤、例えば約1.0%(wt/wt)の結合剤を含む。他の具体的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は約1.8%〜3.0%(wt/wt)の結合剤を含む。
【0073】
活性物質、結合剤及び担体の相対量は、使用する具体的な活性物質、結合剤及び担体、並びに乾燥粒子及び乾燥医薬組成物の所望の組成に応じて変化させることができる。例示的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物における活性物質と担体との重量/重量比は約1:1〜約2:1、例えば約1.5:1であり、活性物質が担体よりも多い。例示的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物における活性物質と結合剤との重量/重量比は約5:1〜約20:1、例えば約10:1.5〜20:1.5、例えば約10:1である。他の例示的な実施形態では、水性噴霧乾燥組成物における活性物質と結合剤との重量/重量比は約1:2〜約1:20、例えば約1:5〜約1:15、例えば約1:10であり、活性物質が担体よりも少ない。
【0074】
具体的な実施形態では、活性物質、粉砕助剤、担体及び結合剤はそれぞれプロゲステロン、ポリソルベート20、MCC及びHPMCである。
【0075】
他の具体的な実施形態では、活性物質、粉砕助剤、担体及び結合剤はそれぞれフランカルボン酸モメタゾン、塩化ベンザルコニウム、MCC及びHPMCである。
【0076】
例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約10.0%〜75.0%(wt/wt)の活性物質(プロゲステロン等)、例えば約40%〜70.0%(wt/wt)の活性物質、例えば約45.0%(例えば45.5%)、約50.0%(例えば約52%)、約55%、約60%(例えば約59%、61%及び62%)及び約65%(wt/wt)の活性物質を含む。他の実施形態では、噴霧乾燥粒子は少なくとも約10%、25.0%、40.0%、45.0%、50.0%又は75.0%(wt/wt)以上の活性物質を含む。
【0077】
他の実施形態では、噴霧乾燥粒子は約1.0%〜25.0%(wt/wt)、例えば約5%〜約10%(wt/wt)、例えば約6.0%〜約7%(wt/wt)の活性物質を含む。これら後者の実施形態は、フランカルボン酸モメタゾンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0078】
例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約10.0%〜60.0%(wt/wt)の担
体(MCC等)、例えば約25.0%〜50.0%(wt/wt)の担体、又は約30.0%〜46.0%(wt/wt)の担体、例えば約31%、36%、又は45.5%(wt/wt)の担体を含む。更なる例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約30%、31%、34%、35%又は36%(wt/wt)の担体を含む。これらの実施形態は、プロゲステロンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0079】
更なる例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約60.0%〜80.0%(wt/wt)の担体(MCC等)、例えば約61.0%〜70.0%(wt/wt)の担体を含む。これらの実施形態は、フランカルボン酸モメタゾンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0080】
例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約1.0%〜15.0%(wt/wt)の結合剤(HPMC又はNaCMC等)、例えば約1.0%〜8.0%(wt/wt)、又は約2.5%〜5.0%(wt/wt)、例えば約3.1%(wt/wt)又は約3.7%(wt/wt)の結合剤を含む。更に例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約4.0%〜6.0%(wt/wt)、例えば約4.0%(wt/wt)、又は約4.5%(wt/wt)の結合剤を含む。他の例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子は約5.5%、約9%又は約10.5%(wt/wt)の結合剤を含む。これらの実施形態は、プロゲステロンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0081】
更なる例示的な実施形態では、噴霧乾燥粒子はより多量の結合剤、例えば約10.0%〜50.0%(wt/wt)の結合剤(HPMC又はNaCMC等)、例えば約20.0%又は約30.0%(wt/wt)の結合剤を含む。これらの実施形態は、フランカルボン酸モメタゾンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0082】
幾つかの実施形態では、結合剤(例えばHPMC)の量は、噴霧乾燥粒子の粒子径を選択及び制御するように選択及び制御される。例えば下記実施例4では、HPMC含量を約1.5%から約3.0%(wt/wt)まで増大させることによって、より粒子径の大きな噴霧乾燥粒子が得られた。これらの粒子はまた、より緩徐な薬物放出速度を示した。
【0083】
上で論考され、下記実施例で説明されるように、粉砕助剤又は界面活性剤を使用して活性物質ナノ粒子を調製することができ、この場合、噴霧乾燥粒子は粉砕助剤又は界面活性剤(塩化ベンザルコニウム、Tween 20(商標)又はTween 80(商標)等)を含むことができる。これらの実施形態では、かかる成分は水性懸濁液の最大約2.0%(wt/wt)及び/又は噴霧乾燥粒子の最大約5.0%を占めることができる。幾つかの実施形態では、かかる成分は水性懸濁液の最大約0.1%(wt/wt)、例えば約0.05%〜約0.07%(wt/wt)、及び/又は噴霧乾燥粒子の最大約1.0%、例えば約0.5%〜約0.7%(wt/wt)を占めることができる。これらの実施形態は、フランカルボン酸モメタゾンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0084】
幾つかの実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は重量/重量ベースで約9%の活性物質と、約9%の担体と、約0.9%の結合剤と、約0.9%の粉砕助剤と、水とを含む。他の実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は重量/重量ベースで約10%、15%又は20%の活性物質と、約10%の担体と、約1%、1.5%又は3%の結合剤と、約1%の粉砕助剤と、水とを含む。これらの実施形態は、プロゲステロンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0085】
他の実施形態では、水性噴霧乾燥組成物は重量/重量ベースで約0.6%又は0.7%の活性物質と、約6%〜7%の担体と、約1.8%〜3%の結合剤と、約0.06%〜0.07%の粉砕助剤と、水とを含む。これらの実施形態はフランカルボン酸モメタゾンを
活性物質として用いて下記に説明される。
【0086】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによると、活性物質は噴霧乾燥粒子の約40%〜約75%(wt/wt)、例えば約60%、約65%及び約70%(wt/wt)を占めることができる。具体的な実施形態では、担体は噴霧乾燥粒子の約25%〜約50%(wt/wt)(例えば約30%(wt/wt))を占めることができる。更なる具体的な実施形態では、結合剤は噴霧乾燥粒子の約1%〜約15%(wt/wt)(例えば約5%又は約10%(wt/wt))を占めることができる。具体的な実施形態では、粉砕助剤は噴霧乾燥粒子の約0.1%〜約5.0%(wt/wt)(例えば約2%及び約4%(wt/wt))を占めることができる。これらの実施形態はプロゲステロンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0087】
代替的には、本明細書に記載の実施形態のいずれかによると、活性物質は噴霧乾燥粒子の約6%〜7%(wt/wt)を占めることができる。具体的な実施形態では、担体は噴霧乾燥粒子の約60%〜約70%(例えば約61%〜約70%)(wt/wt)を占めることができる。更なる具体的な実施形態では、結合剤は噴霧乾燥粒子の約20%〜約30%(例えば約21%〜約31%)(wt/wt)を占めることができる。他の具体的な実施形態では、粉砕助剤は噴霧乾燥粒子の約0.6%〜0.7%(wt/wt)を占めることができる。これらの実施形態は、フランカルボン酸モメタゾンを活性物質として用いて下記に説明される。
【0088】
具体的な実施形態では、噴霧乾燥粒子のサイズは、肺送達を回避するか又は最小限に抑えながら活性物質の経鼻送達を達成するように選択及び制御される。例えば、平均粒子径が約100μmの粒子は鼻粘膜に首尾よく影響を与えるのに十分に大きいが、鼻粘膜から十分に吸収されない場合もある。一方、より小さな粒子(例えば平均粒子径が約2μmの粒子)は、あまりに容易に肺へと吸入される(肺送達)。概して、平均粒子径が約10μm以上の粒子は鼻腔内に吸収され、平均粒子径が約5μm以下の粒子は肺に吸収され得る。このため、例えば本明細書に記載の組成物の噴霧乾燥粒子は、以下の粒子サイズ分布を有し得る:
噴霧乾燥粒子の最大10%が10μm未満の粒子サイズを有する;
噴霧乾燥粒子の少なくとも50%が少なくとも約15μmの粒子サイズを有する;及び、
噴霧乾燥粒子の少なくとも90%が最大約55μmの粒子サイズを有する。
【0089】
具体的な実施形態では、噴霧乾燥粒子のサイズは当該技術分野で既知のように、上記の指針に従い、実施例に説明されるように噴霧乾燥パラメーターを選択及び制御することによって選択及び制御される。噴霧乾燥プロセス中に変更することができるパラメーターの非限定的な代表例としては、溶媒、出発原料濃度、注入する材料及び/又は空気の流量、並びにプロセス温度が挙げられる。付加的又は代替的には、噴霧乾燥粒子のサイズは、例えば篩分及び/又は遠心分離を含むか又は更に含むプロセスによって選択及び制御することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、噴霧乾燥粒子は活性物質の良好な放出を示す。例えば、溶出試験はUSP II(装置2、パドル)に従って75RPM、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中900mlの1.0%Tween(商標) 80の溶出媒体で行うことができる。幾つかの実施形態では、下記実施例に説明されるように、噴霧乾燥粒子は本方法により試験した場合に60分以内、30分以内、20分以内、15分以内、又はより短時間で90%超の活性物質の放出を示す。
【0091】
他の乾燥粒子
上記の論考は噴霧乾燥粒子に着目しているが、上述のように本明細書に記載の乾燥組成物は、噴霧乾燥以外の方法によって調製された乾燥粒子を含み得る。例えば、担体に結合した活性物質を含む乾燥粒子は、湿式造粒、乾式造粒及び流動床加工等の粒子を互いに物理的に結合する当該技術分野で既知の任意の方法によって調製することができる。
【0092】
噴霧乾燥以外の方法によって調製された乾燥粒子の活性物質、結合剤及び担体の同一性及び相対量は、噴霧乾燥粒子について上に記載したものと同じであってもよい。このため、噴霧乾燥粒子について上で論考される活性物質、結合剤及び担体の同一性及び相対量は、乾燥粒子が噴霧乾燥以外の方法によって調製される実施形態に適用されるものと理解されるが、かかる成分及び相対量は当該技術分野の慣行に従って変更され得る。
【0093】
湿式造粒では、顆粒(すなわち粒子)は、造粒液(例えば結合剤及び溶媒を含む)をインペラ(高剪断造粒機内のスクリュー又は流動床造粒機内の空気等)の影響下の粉体床に添加することによって形成される。幾つかの実施形態では、ナノ粒子を担体粒子とともに導入するか、又は造粒液(例えば結合剤を含む)に分散させる。湿式造粒加工の湿潤及び撹拌により、活性物質ナノ粒子が担体材料(例えばMCC)の粒子と結合する。造粒液の溶媒(典型的には水、又はエタノール若しくはイソプロパノール等の揮発性溶媒)を除去して、担体に結合した活性物質ナノ粒子を含む乾燥粒子を得る。
【0094】
乾式造粒では造粒液を使用しない。代わりに、例えば高圧を用いるような乾燥成分の圧縮及び高密度化によって顆粒を形成する。揺動造粒機又は高剪断ミキサー造粒機が乾式造粒に使用することができる機器の例である。このプロセスにより担体に結合した活性物質ナノ粒子を含む乾燥粒子が生じる。
【0095】
流動床加工では、乾燥粉末組成物の流動床を適切な条件下に置き、乾燥粉末組成物を流体として挙動させる。これは典型的には圧搾空気、ガス又は他の流体を乾燥粉末組成物床に送ることによって行われる。これにより乾燥粉末組成物が常流体と同様の特性及び属性を獲得し、いわゆる流動化が起こる。このようにして、担体に結合した活性物質ナノ粒子を含む乾燥粒子を形成するために流動床加工を用いることができる。
【0096】
任意の添加剤
本明細書に記載の組成物は、任意に1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。好適な賦形剤は、The American Pharmaceutical Association及びThe Royal Pharmaceutical Society of Great Britain発行のHandbook of Pharmaceutical Excipients, Pharmaceutical Press, 2012に記載されている。
【0097】
例示的な薬学的に許容可能な賦形剤としては、酸性化剤、アルカリ化剤、結合剤、キレート化剤、錯化剤及び/又は可溶化剤、防腐剤、保存料、例えば抗菌剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル、酸化防止剤、例えばa−トコフェロール又はパルミチン酸アスコルビル、安定剤、粘度調整剤、溶媒、希釈剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油等の潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、着香料、治療剤、ポリオール、緩衝剤並びに不活性充填剤が挙げられる。
【0098】
幾つかの実施形態では、例えば欧州特許第2116264号(その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載のように、噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子に乾燥組成物の流動性を改善するように選択された賦形剤を配合する。例えば、組成物は粒子径のより小さい微結晶性セルロース、粒子径のより大きい微結晶性セルロース及び第三リン酸カルシウムを含み得る。特に、配合物は潜在嵩密度が0.13g/cm
3〜0.29g/cm
3、比表面積が1.3m
2/g以上、平均粒径が30μm以下、安息角が55度以上の第1の結晶セルロース、潜在嵩密度が0.26g/cm
3〜0.48g/c
m
3、比表面積が1.3m
2/g以下、安息角が50度以下、平均粒径が150μm以下、例えば約30μm〜約150μm、例えば約30μm〜約100μm、例えば約40μm〜約75μmの第2の結晶セルロース、及び第三リン酸カルシウム、又はかかる成分のいずれか1つ又は複数を含み得る。特に、粒子径のより大きな微結晶性セルロースは組成物の流動性を改善すると考えられている。具体的な実施形態では、組成物は医薬組成物の総重量をベースとして約5.0%〜30.0%(wt/wt)の粒子径のより大きな微結晶性セルロース又はデンプン(又はそれらの混合物)、例えば約10%(wt/wt)の粒子径のより大きな微結晶性セルロース又はデンプン(又はそれらの混合物)、及び約0.1%〜10%(wt/wt)の第三リン酸カルシウム、例えば約1%(wt/wt)の第三リン酸カルシウムを含む。代替的には、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子に第1の微結晶性セルロース、第2の微結晶性セルロース及び第三リン酸カルシウムを含む流動性改善組成物を配合し、第三リン酸カルシウムの量は流動性改善組成物の約0.1%〜10%(wt/wt)を占め、第2の微結晶性セルロースは流動性改善組成物の約5%〜約30%(wt/wt)を占める。幾つかの実施形態では、第1の微結晶性セルロースは乾燥(例えば噴霧乾燥)粒子の成分として含まれるか又は任意に存在せず、例えば組成物は乾燥(例えば噴霧乾燥)粒子、平均粒子径が約30μm〜約150μmの微結晶性セルロース、及び第三リン酸カルシウムを含む。
【0099】
このため、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子等の乾燥粒子に1つ又は複数の任意の薬学的に許容可能な賦形剤を任意に配合し、最終乾燥医薬組成物を形成することができる。
【0100】
具体的な実施形態では組成物は滅菌されている。幾つかの実施形態では、組成物はUSP Chapter <71>(滅菌)、USP Chapter <85>(「細菌内毒素試験」)及びUSP Chapter <151>(「パイロジェン試験」)の1つ又は複数の要件を満たす。
【0101】
本発明の組成物は即時使用可能な形態で提供することができる。本明細書で使用される「即時使用可能な」とは、希釈又は複数の成分との混合等の更なる配合が必要とされないことを意味する。
【0102】
組成物は、乾燥配合物への使用に好適な密封包装で提供することができる。具体的な実施形態では組成物は密閉容器に包装される。容器は物理的環境からの保護をもたらすために上包みされていてもよい。
【0103】
幾つかの実施形態では、組成物は滅菌された即時使用可能な形態で提供され、室温で少なくとも1年、3年、5年又は7年の保存可能期間を有する。
【0104】
膣内投与
本明細書に記載の乾燥医薬組成物は当該技術分野で既知の方法、アプリケーター及び/又はデバイスを用いて膣内投与することができる。
【0105】
鼻腔内投与
本明細書に記載の乾燥医薬組成物は当該技術分野で既知の方法、アプリケーター及び/又はデバイスを用いて鼻腔内投与することができる。
【0106】
幾つかの実施形態では、乾燥組成物はAptar Inc.,(Crystal Lake,IL)から入手可能な経鼻粉末配合物用の単位用量システムを有する経鼻スプレーポンプ、OptiNose Inc.,(Yardley,Pennsylvania)から入手可能な呼吸式経鼻送達法、Trimel Inc.,(Mississauga,Ontario)から入手可能なTriVair(商標) 「鼻ストロー」送達法、MicroDoseTherapeutx Inc.,(Monmouth Junction,NJ)から入手可能なMicroDose(商標
) Dry Powder Inhaler(DPI)、MicroDose(商標) Dry Powder Nebulizer(DPN)及び「電動」噴霧鼻用アプリケーター、並びにMIAT S.p.A.(Milan,Italy)から入手可能な単一用量吹入器で使用するために配合される。
【0107】
幾つかの実施形態では、乾燥組成物はDPIデバイス、例えば上述のDPIで使用するために配合されるか、又は加圧定量吸入器(PMDI)で使用するために噴射剤中に分散される。DPIは通常、薬物投与量を送達するユニットを介して引き込まれた吸気の噴出によるものである。かかるデバイスは例えば、吸引ステージ及び注入ステージを有する空気圧式粉末エジェクターに関する米国特許第4,807,814号、並びに薬物の乾燥粉末送達デバイスに関する米国特許第5,785,049号に記載されている。PDMIでの使用については、組成物をハロゲン化炭化水素等の好適な噴射剤に懸濁液として配合してもよい。PMDIは例えば、Newman, S. P., Aerosols and the Lung, Clarke et al.,
eds., pp. 197-224 (Butterworth's, London, England, 1984)に記載されている。PMDIでは作動毎に定量が放出される。
【0108】
幾つかの実施形態では、組成物は鼻吹入器を用いて投与される。吹入器は実質的に一定用量の組成物を送達する一定用量分配機構を含み得る。
【0109】
他の投与経路
本明細書に記載の組成物は他の経路によっても投与することができる。例えば幾つかの実施形態では、本明細書に記載の乾燥医薬組成物は経口投与、口腔投与又は眼内投与に使用することができる。付加的又は代替的には、乾燥組成物は静脈内投与、皮下投与又は筋肉内投与等の注射又は点滴による投与のために調製することができる。
【0110】
治療方法
本明細書に記載の乾燥医薬組成物は、活性物質の経粘膜投与によって治療される任意の病態を治療する、例えば局所、局部又は全身作用のための経粘膜投与に好適である。さらに、上述のように本明細書に記載の乾燥医薬組成物は、活性物質によって治療される任意の病態を治療する局所、局部又は全身作用のための他の経路による投与に好適である。
【0111】
活性物質がプロゲステロンである具体的な実施形態では、乾燥医薬組成物はプロゲステロンが局所、局部又は全身作用に有用な任意の治療方法、例えばそれを必要とする被験体、例えば体外受精処置を受けた、早期陣痛が見られる又はそのリスクがある、月経周期調節を必要とする女性被験体における低プロゲステロンレベルの治療等において有用である。
【0112】
プロゲステロンを含む本明細書に記載の乾燥医薬組成物は、ヒト被験体を含む被験体における外傷性脳損傷又は脳卒中等の外傷性又は虚血性中枢神経系損傷を、例えば組成物を、それを必要とする被験体、例えば外傷性脳損傷又は脳卒中等の外傷性又は虚血性中枢神経系損傷を患う被験体に鼻腔内送達することによって治療する上でも有用である。
【0113】
活性物質がモメタゾン又はフランカルボン酸モメタゾンである具体的な実施形態では、乾燥医薬組成物は、モメタゾン又はフランカルボン酸モメタゾンが局所、局部又は全身作用に有用な任意の治療方法、例えば喘息又は副鼻腔炎症等の炎症性障害の治療等において有用である。
【0114】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の乾燥医薬組成物は入院中、例えば集中治療室内の患者への投与に好適である。他の実施形態では、本明細書に記載の乾燥医薬組成物は緊急状況、例えば負傷現場若しくは救急車内、又は外来状況、又は医療専門家のいない状
況(例えば自宅)の患者への投与に好適である。例えば、本明細書に記載の乾燥医薬組成物は、患者が入院する前、患者が退院した後、又は外来治療前、外来治療中若しくは外来治療後に診療所内、任意の臨床状況又は医療専門家のいない状況で患者に鼻腔内又は膣内投与することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の乾燥医薬組成物は患者をプロゲステロンの静脈内配合物、筋肉内配合物又は他の配合物を用いて病院内で治療した後、患者に対する追跡治療として鼻腔内又は膣内投与することができる。幾つかの実施形態では、患者は中枢神経系(CNS)損傷を患うが、入院を必要としない若しくは退院した、又は治療を受け、外来状況若しくは他の臨床状況から解放された外来患者である。
【0115】
「治療」は形態回復の改善(すなわち組織生存性の向上)及び/又は行動回復及び/又は寛解、軽減又は疾患若しくは病態からの回復を含む被験体における任意の改善を目標とする。改善は損傷又は事象又は疾患又は病態後の行動的及び/又は解剖学的及び/又は生理学的な回復の速度及び/又は程度の増大によって特性化することができる。治療は、完全な応答及び部分的な応答を含む「肯定的な治療応答」をもたらし得る。
【0116】
本方法は、治療的有効量のプロゲステロン等の活性物質を投与することを含み得る。「治療的有効量のプロゲステロン」とは、上で論考されるように治療効果を引き起こすのに十分なプロゲストゲンの量、例えばプロゲステロンの血清レベルを増大する及び/又は神経保護的効果を示すのに効果的な量を意味する。「治療的有効量のモメタゾン又はフランカルボン酸モメタゾン」とは、上で論考されるように治療効果を引き起こすのに十分なモメタゾン又はフランカルボン酸モメタゾンの量、例えばモメタゾンの血清レベルを増大する及び/又は抗炎症効果を示すのに効果的な量を意味する。
【0117】
概して、鼻孔当たり最大約20mg〜50mgの粉末を投与することができる。このため例えば、用量は鼻孔当たり約35mgの活性物質を含むことができ、例えば約70%の活性物質を含む約50mgの噴霧乾燥粒子が投与される。幾つかの実施形態では、用量は鼻孔当たり約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg若しくは約40mg、又はこれらの値のいずれかの範囲内の任意の量の活性物質を含む。これらの用量は活性物質がプロゲステロンである場合に特に好適であり得る。活性物質がモメタゾンである場合、例えば成人被験体で1日に鼻孔当たり約100μg(0.1mg)、小児被験体で1日に鼻孔当たり約50μg(0.05mg)というより低用量の活性物質が必要であり得る。
【0118】
これまで本発明を概略的に説明したが、例示のみを目的として本明細書に含まれ、本発明を限定することを意図するものではない幾つかの具体的な実施例を参照することによって本発明がより良く理解される。
【実施例】
【0119】
実施例1. ナノ粒子を形成するプロゲステロンの媒体粉砕
下記表1に示されるように、プロゲステロンナノ粒子(平均粒子径<1μm)を媒体粉砕によって形成する能力を評価するために幾つかの実験系を開発した。粒子サイズ測定ではレーザー回折試験(HoribaのLA−950 V2)によって特性化した。
【0120】
プロゲステロンの媒体粉砕は、イットリア安定化ジルコニア(YTZ)ビーズを用いて行った。懸濁液1〜9は0.5mmの媒体を使用して粉砕した。懸濁液10及び11は順次、初めに2mmの媒体を使用して粉砕した後、抽出し、0.5mmの媒体で粉砕した。かかる逐次粉砕により、所望に応じたプロゲステロンのナノ粒子を得た。
【0121】
ナノ粒子を0.5%塩化ベンザルコニウム(BAC)、又はポリソルベート20(PS20)若しくはポリソルベート80(PS80)等の1%ポリソルベート界面活性剤の存
在下で10%プロゲステロン懸濁液から調製した。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)等の結合剤を含む及び含まない懸濁液を評価した。1%NaCMC又はHPMCの存在により所望よりも大きい粒子サイズが得られた。懸濁液1、2、4、5、7及び8を参照されたい。結合剤を含まない懸濁液はナノ粒子又はほぼナノサイズの粒子を生じた。懸濁液3、6、9、10及び11を参照されたい。
【0122】
懸濁液10及び11はどちらも、所望に応じて平均粒子径が約1μm未満のプロゲステロンナノ粒子を生じた。ナノ粒子懸濁液10に次の噴霧乾燥工程を続けて行った。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例2. 噴霧乾燥粒子の形成
上述のように、懸濁液10について上記したように調製したナノ粒子を噴霧乾燥に使用した(これらのナノ粒子の粒子サイズ分布を
図1に示す)。ナノ粒子を抽出し、噴霧乾燥の前後の基準成分を示す下記表2に示す割合で噴霧乾燥のために微結晶性セルロース(例えばCeolusのPH−F20)、HPMC及び水と合わせた。噴霧乾燥粒子の2つのバッチA及びBを、表3に示す条件に従って調製した。
【0125】
【表2】
【0126】
表3に噴霧乾燥粒子の2つのバッチA及びBを調製するために用いられる噴霧乾燥プロセスパラメーターを示す。
【0127】
【表3】
【0128】
バッチA及びB、並びに微結晶性セルロース担体単独の対照バッチによる噴霧乾燥粒子の粒子サイズ分布の比較を下記表4に示す。相対粒子サイズ分布を、HPMC結合剤の溶出を防ぐためにポリジメチルシロキサンにおいて測定した。試験バッチAの噴霧乾燥粒子の一部を安定性試験に供した。−20℃、40℃/75%相対湿度又は60℃での1ヶ月の貯蔵の後、噴霧乾燥粒子の活性物質含量は全て貯蔵前と同様であり、検出限界内であった。本明細書で使用される場合、D10、D50及びD90はそれぞれ10パーセンタイル値、50パーセンタイル値(中央値)及び90パーセンタイル値にて粒子径をミクロンで表す。
【0129】
【表4】
【0130】
このため、バッチA及びBの両方について、噴霧乾燥粒子の僅か10%が10μm未満の粒子サイズを有し、噴霧乾燥粒子の少なくとも10%が少なくとも10μmの粒子サイズを有し、少なくとも50%が少なくとも約15μmの粒子サイズを有し、少なくとも90%が最大約55μmの粒子サイズを有する。
【0131】
実施例3. プロゲステロンのジェット粉砕
プロゲステロンを磨砕する方法としてジェット粉砕についても調査した。
【0132】
プロゲステロンバッチ材料Cを比較的高圧(100psi/95psi)で加工した。最初のジェット粉砕により生じた粒子サイズを表5にまとめる。その後のバッチ(バッチ材料D)はジェットミルで達成可能な最低圧力レベルで粉砕した。そのサイズ分布をバッチ材料Dの各々の後続加工工程(例えば篩分、スクリーニング及び遠心分離)後の粒子サイズデータとして表5に示す。付加的な2つのバッチ(E及びF)をプロゲステロンの低圧ジェット粉砕によって調製した後、ジェット粉砕した粒子を45ミクロンの篩に通した。バッチE及びFの粒子サイズ分布も表5に示す。これらの条件下で、ジェット粉砕はプロゲステロンナノ粒子を得るのに媒体粉砕ほど効果的ではなかった。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例4. プロゲステロンの溶出/放出
in vitro溶出アッセイ(USP II、装置2(パドル))を用いて、模擬生理条件下でプロゲステロンが試験組成物から溶出する/放出される速度を決定した。溶出アッセイパラメーターを表6に挙げる。
【0135】
【表6】
【0136】
放出アッセイを、プロゲステロンの紫外ピーク特性に一致する243nmの検出波長でHPLCによって行った。サンプル及び標準を、50/50(v/v)の水/アセトニトリルでおよそ50μg/mLの作用注入濃度まで希釈した。プロゲステロンは約4.4分に溶出する。全有機含量を用いたウォッシュオフ工程を用いて、界面活性剤の蓄積及びカラム汚染を回避した。アッセイパラメーターを表7に挙げる。
【0137】
【表7】
【0138】
プロゲステロンナノ粒子(平均粒径<1μm)及びMCCを含む本明細書に記載の噴霧乾燥粒子(平均粒径>1μm)(下記のサンプルFID−3207)からのプロゲステロンの放出を、微粉化プロゲステロン(平均粒径>1μm)とMCC PH−F20との1:1重量比での乾燥ブレンドを含む組成物(下記のFID−3237)と比較した。溶出試験の媒体は1.0%PS80を含むpH7.4のリン酸緩衝食塩水とした。結果を
図2に示す。
【0139】
図2に示されるように、噴霧乾燥粒子(FID−3207)は約15分〜20分でプロゲステロンの完全な放出を示したが、1:1混合物(FID−3237)は約60分まで完全な放出を示さなかった。
【0140】
付加的な噴霧乾燥粒子組成物を、噴霧乾燥前の水性組成物の配合、噴霧乾燥後の粒子径、並びに噴霧乾燥後の理論組成及び実際の組成を示す表8に記載のように調製した。
【0141】
【表8】
【0142】
サンプル5、6、7及び8からのプロゲステロンの放出を、微粉化プロゲステロン(平均粒径>1μm)とMCC PH−F20との1:1重量比での乾燥ブレンドを含む組成物からの放出(FID−3237)と比較した。結果を
図3に示す。図に示されるように、サンプル5及び6はより急速なプロゲステロンの放出を示し、レセプター液中でより高濃度のプロゲステロン(例えば、より大きな薬物放出)を達成する一方で、サンプル7及び8はより緩徐な放出及びレセプター液中でより低濃度のプロゲステロンを示すが、依然として1:1混合物よりも急速かつ高濃度である。
図4は放出されたプロゲステロンのパーセンテージとしての
図3の放出プロファイルデータを示し、サンプル5、6及び8が1:1混合物と比較してより急速に、より高いパーセンテージのプロゲステロン(約100%)を放出することを示す。
【0143】
サンプル5/6及び7/8を比較することで、結合剤の重量比を用いて本明細書に記載の噴霧乾燥粒子からのプロゲステロンの放出速度を調整することができることが示される。さらに、サンプル5、6、7及び8は各々、1:1混合物よりも高い濃度のプロゲステロン(例えば、より多量のプロゲステロンの放出)を達成した。
【0144】
実施例5. 鼻腔内プロゲステロンと静脈内プロゲステロンとのin vivo比較
本明細書に記載の噴霧乾燥組成物及び上記の1:1混合物を使用して、カニクイザルにおけるin vivo研究を行い、プロゲステロンの静脈内投与と鼻腔内投与との後のプロゲステロン血漿濃度を評価及び比較した。
【0145】
静脈内配合物投与では、脂質内配合物におけるプロゲステロン濃度は0.25mg/mLであった。配合物を投与の24時間前までに調製し、配合後に室温で保管し、遮光した。静脈内配合物を1mg/kgの用量、4mL/kgの投与容量で2mL/kg/時間の割合の点滴によって2時間にわたって投与したが、これは0.5mg/kg/時間の用量に対応する。
【0146】
鼻腔内投与用の乾燥粉末配合物を、単位用量吸入器を用いて25mg/鼻孔で投与した。
【0147】
動物に静脈内配合物を研究1日目に、1:1混合物を研究8日目に、噴霧乾燥配合物を研究15日目に投与した。
【0148】
血液サンプルを定期的に回収し、プロゲステロン濃度について分析した。
【0149】
図5は、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子を含む組成物(FID−3207)、又は微粉化プロゲステロン(平均粒径>1μm)と微結晶性セルロース(MCC PH−F20)とを1:1重量比で含む組成物(1:1混合物)の静脈内投与(i.v.)又は鼻腔内投与後のサルにおける血清プロゲステロンレベルを示す。データから経鼻投与後の急速な吸収及び排出、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子組成物からのより大きな薬物送達が示される。
【0150】
図6は
図5のサル研究による濃度曲線下面積(AUC)値を示す図である。データから、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子組成物からのプロゲステロン曝露が1:1混合物からよりも大きいことが示される(下記実施例5に論考されるように、用量が異なることから静脈内の値は直接比較可能ではない)。
【0151】
図7は
図5のサル研究による最大濃度(C
max)値を示す。観察された最大血漿濃度は群間で異なっていた(F(2,8)=22.86、p<0.01)。乾燥1:1混合物による鼻腔内治療は、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子組成物(FID−3207)(p<0.01)又はi.v.治療(p<0.01)よりもはるかに低い最大濃度を生じたが、噴霧乾燥粒子組成物とIV治療とでは有意差はなかった(p>0.05)。
【0152】
図8は
図5のサル研究による最大濃度値到達時間(T
max)を示す。統計分析は行わなかった。しかしながら、i.v.治療では短いT
max、両方の鼻腔内治療ではより長いT
maxという傾向がこのデータから明らかである。
【0153】
実施例6. 幾つかの配合物の単回鼻腔内投与後のカニクイザルの血漿におけるプロゲステロン濃度のin vivo評価
カニクイザルにおける同様のin vivo研究を行い、表8のサンプル5及び7の噴霧乾燥配合物を用いたプロゲステロンの鼻腔内投与後のプロゲステロン血漿濃度を比較した。結果からバイオアベイラビリティの評価が可能であった。
【0154】
表8のサンプル5及び7の噴霧乾燥配合物を、5匹のサルの左右の鼻孔に0.25mg/鼻孔の用量で単位用量吸入器を用いて投与した。特に、動物にサンプル5の鼻腔内噴霧乾燥配合物を研究8日目、サンプル7の噴霧乾燥配合物を研究15日目に投与した。血液を各々のサルから大腿静脈を介して投与後5分、10分、15分、30分及び45分、並びに1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間及び12時間の時点で回収し、プロゲステロン濃度を分析した。血液サンプルの分析を下記表9にまとめる。
【0155】
【表9】
【0156】
実施例7. フランカルボン酸モメタゾンの乾燥粒子
担体に結合したフランカルボン酸モメタゾンを含む乾燥粒子を、HPMCを結合剤として用いてナノ粉砕フランカルボン酸モメタゾンを微結晶性セルロース(MCC)上に噴霧乾燥することによって作製する。噴霧乾燥用の水性組成物(例えば噴霧乾燥原料)の組成及び噴霧乾燥条件を変更して、MCC担体へのナノ粒子付着の有効性を評価する。ナノ粉砕懸濁液の組成物及び噴霧乾燥原料を下記表に記載する。
【0157】
噴霧乾燥条件:入口温度=110℃;出口温度=54℃;吸引器=100%;ポンプ速度=20%;Qフロー=50%;ノズルキャップ=1.5mm。
【0158】
ローラー粉砕条件:フランカルボン酸モメタゾン−初期メジアン径−19.7μm。サンプルを250mL容のジャー内で0.5mmのYTZ媒体を用いて3時間粉砕する。3時間の粉砕後の粒子径(PSD)を水中で測定する。粉砕後に、懸濁液をジャーから抽出し(22Gニードル)、表及び表示の手順に従って混合する。
【0159】
噴霧乾燥懸濁液の調製手順:HPMC、MCC及びH
2Oの使用量は懸濁液の抽出量に基づくものである(表II)。HPMCをH
2O中で調製した溶液として添加する。HPMC溶液を、抽出した懸濁液に添加し、15分間混合する。MCC(Grade PH−F20JP、20μm)を添加し、15分間混合する。噴霧乾燥粉末を成分の非溶剤であり、粒子サイズを変化させず又は複合粒子の分解を引き起こさないパルミチン酸イソプロピル又はシリコーン油等の液体に分散させることによって粒子径(PSD)を噴霧乾燥後に測定する。
【0160】
材料:フランカルボン酸モメタゾン(Hovione,East Windsor, NJ);無水クエン酸(Fisher,Hampton, New Hampshire);塩化ベンザルコニウム(Fluka,St. Louis, Missouri);微結晶性セルロース(AsahKasei,Glenview, Illinois);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Colorcon,Harleysville, Pennsylvania)。
【0161】
機器:ローラーミル(US Stoneware,East Palestine, Ohio);バランス(Sartorius
,Bohemia, NY);レーザーPSD分析器(Horiba,Kyoto, Japan);Buchi B−290スプレー乾燥器(Buchi,Flawil, Switzerland)。
【0162】
乾燥粉末調製物(噴霧乾燥後)の光学顕微鏡写真から、フランカルボン酸モメタゾンがMCC粒子に結合していることが明らかである。MCC粒子と結合していないフランカルボン酸モメタゾンの一部の合体粒子も観察される。MCC粒子と結合するフランカルボン酸モメタゾンの相対的比率は噴霧乾燥条件によって影響を受ける可能性がある。
【0163】
【表10】
【0164】
【表11】
【0165】
【表12】
【0166】
【表13】
【0167】
【表14】