(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療において使用するためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストであって、前記アンタゴニストは、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を高め、前記アンタゴニストは、HVEMに対して作られたモノクローナル抗体又はそのフラグメントであり、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断し、前記モノクローナル抗体又はそのフラグメントは、
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変軽鎖(VL)鎖の全てのCDR、及び
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変重鎖(VH)鎖の全てのCDR
を含む、アンタゴニスト。
血液学的悪性病変、好ましくは、リンパ腫、より好ましくは、非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫のうちから選択されるリンパ腫の処置方法において使用するための、請求項1記載の使用のためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニスト。
前記固形腫瘍が、前立腺ガン、膵臓ガン、乳ガン、脳ガン、膀胱ガン、前立腺ガン、結腸ガン、腸ガン、肺ガン、胃ガン、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝ガン、皮膚ガン、結直腸ガン、子宮内膜ガン腫、唾液腺ガン腫、腎ガン、甲状腺ガン、種々の型の頭部、頸部ガン及び黒色腫からなる群より選択される、請求項3記載の使用のためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニスト。
前記抗体が、Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に、第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマから得ることのできるモノクローナル抗体である、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用のためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニスト。
前記BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する抗体のフラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びscFvのうちから選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用のためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニスト。
Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に、第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマ細胞株。
Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に、第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマから得ることのできるモノクローナル抗体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療において使用するための、BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストに関する。
【0002】
背景技術
抗菌剤及び腫瘍に対して広い反応性を呈するヒトにおいて、Vγ9Vδ2細胞は主たる末梢血T細胞サブセットを表す。それらVγ9Vδ2細胞は、HLAに制限されない様式で、実に様々な病原性生物及び腫瘍細胞に認められる分子である、リン酸化非ペプチド抗原(リン酸化抗原、PAg)を同時に認識及び応答する能力を有している。ゆえに、Vγ9Vδ2 T細胞は、顕著にガン腫及び血液系悪性病変に対する腫瘍免疫監視に関わっている。
【0003】
リンパ球集団サイズの維持は通常、新しい細胞の生成と、細胞死を伴うクローン展開とのバランスをとることによって成し遂げられる。しかしながら、Vγ9Vδ2 T細胞の恒常性は、あまり理解されないままになっている。Vγ9Vδ2 T細胞プールのサイズはIL−15及びIL−7の利用可能性によって調節され、それらの恒常性は、αβ T細胞及びNK細胞と競合して維持される。αβ及びγδ細胞型の両方が同数、TCRβ
−/−/δ
−/−マウスへ養子性に転移されると、αβ T細胞は速やかにγδ T細胞よりも増殖する。
【0004】
このようにγδ T細胞には、αβ T細胞と比較して、それらの増殖(expansion)の際に実質的な不都合がある。γδ T細胞の増殖及び恒常性を調節する分子経路は、依然として公知ではない。比較して、コレセプターは、αβ T細胞活性化、増殖及び生存を正又は負に制御することが広く受け入れられている。
【0005】
これらのコレセプターのうち、CD28:B7ファミリーの分子は、TCRを介した活性化に対して強力な調節効果を有している。PD−1など、これらのコレセプターのいくつかは、Vγ9Vδ2 T細胞増殖をモデュレーションすることもできる。
【0006】
BTLAは、CTLA−4及びPD−1と構造的に関連するCD28:B7ファミリーの近年報告されたメンバーであり、これはほとんどのリンパ球で発現される。そのリガンドである、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)は、T、B及びNK細胞、樹状細胞並びに骨髄系細胞によって発現されるTNFレセプタースーパーファミリーのメンバーである。BTLA欠損マウスは、正常なB及びT細胞発生を示す。しかしながら、これらのマウスからの成熟リンパ球は、高頻度で記憶T細胞を呈し、より多くの記憶様応答を生じる。さらに、BTLA欠損マウス、並びにアゴニスト抗BTLA抗体及びHVEM−Ig融合タンパク質を用いて得られたインビトロの観察で、自己及びアロ抗原に対する免疫応答、並びにCD4+及びCD8+ T細胞の抗原非依存的恒常性増殖の、負のモデュレーターとしてのBTLAが証明されている。
【0007】
実際、BTLA−HVEM経路の障害は、とりわけ炎症性疾患における先天免疫の機能障害での、種々の自己免疫及び新生物性疾患の病変形成において役割を果たすと推測される。ヒトでは、BTLAについてわずかな関数データ(functional data)が得られているに過ぎない。
【0008】
アゴニスト性mAbとのBTLAの架橋で、αβ T細胞増殖、並びに抗CD刺激に応答したIFN−γ及びIL−10の生成を阻害することができる。
【0009】
また、BTLA刺激は、ヒト黒色腫に特有のT細胞、及びCMVに特有のT細胞の両方の機能を阻害する。
【0010】
血液学的悪性病変のうち、本発明者らは以前、リンパ腫微小環境の種々の反応性免疫細胞はBTLA陽性であるものの、BTLAはB−CLLで新生物性細胞によって発現されるが、ほとんどのB−非ホジキンリンパ腫(NHL)では新生物性細胞によって発現されないことを示している。
【0011】
BTLAリガンドであるHVEMは、ヒトB細胞悪性病変において、とりわけTNFRSF14(HVEM)遺伝子の変異を高頻度に持つ濾胞性リンパ腫(FL)において頻繁に異常を呈する。これらの変異は、典型的にはTNFRSF14の切断をもたらし、また野生型対立遺伝子の欠失を伴い、これは腫瘍サプレッサー遺伝子としてのHVEMの役割の可能性を示唆するものである。
【0012】
本発明者らは、BTLA発現がVγ9Vδ2 T細胞分化の際のみならず、TCRを介した活性化に際しても調節されることを示している。BTLA遮断は、TCRシグナル伝達を高める。さらに本発明者らは、HVEMとBTLAの相互作用が、TCR非依存性及びTCR依存性Vγ9Vδ2 T細胞増殖を負に調節すること、そしてHVEM陽性FL細胞が効率的にVγ9Vδ2 T細胞増殖を阻害したことを立証した。
【0013】
発明の概要
本発明者らは、BTLAがVγ9Vδ2 T細胞増殖分化の調節に関与していること、そしてBTLA−HVEM経路がVγ9Vδ2 T細胞増殖の制御における主たる作用因子(actor)であることを初めて示している。それゆえ本発明者らは、治療において使用するための新しい非常に有望な手法を開発している。
【0014】
本発明の第一の目的はこのように、治療において使用するためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストに関し、前記アンタゴニストはVγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める。
【0015】
好ましくは、前記アンタゴニストは、血液学的悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患又は感染の処置方法において使用される。
【0016】
1つの実施形態では、前記アンタゴニストは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、HVEMに対して作られた抗体及びそのフラグメントから選択される。好ましくは、請求項1〜12のいずれか一項記載の使用のための、前記BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストであって、前記抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマから得ることのできるモノクローナル抗体である。
【0017】
別の実施形態では、前記アンタゴニストは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、BTLAに対して作られた抗体及びそのフラグメントから選択される。
【0018】
典型的には、前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体フラグメントのうちから選択される。
【0019】
BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、抗体の前記フラグメントは、選択されたFab(たとえば、パパイン消化によるもの)、Fab’(たとえば、ペプシン消化及び部分還元によるもの)及びF(ab’)2(たとえば、ペプシン消化によるもの)、facb(たとえば、プラスミン消化によるもの)、pFc’(たとえば、ペプシン又はプラスミン消化によるもの)、Fd(たとえば、ペプシン消化、部分還元及び再集合によるもの)、Fv又はscFv(たとえば、分子生物学技術によるもの)フラグメントである。
【0020】
本発明の第二の目的は、HVEMとBTLAとの間の相互作用を遮断し、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める抗HVEMモノクローナル抗体を得るのに好適なハイブリドーマ細胞株に関する。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の第一の目的は、治療において使用するためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストに関し、アンタゴニストはVγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める。
【0022】
Vγ9Vδ2細胞は、ヒト末梢血における主たるγδ T細胞サブセットであり、抗菌剤及び腫瘍に対して反応性を呈するT細胞サブセットを表す。Vγ9Vδ2 T細胞の生物学は、あまり理解されないままになっている。本発明者らは、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)とヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)との間の相互作用は、Vγ9Vδ2 T細胞増殖制御の主たるレギュレーターであることを示している。BTLAは、休止Vγ9Vδ2 T細胞の表面で強く発現され、T細胞分化と逆相関していた。
【0023】
本発明者らは、TCRシグナル伝達後に、TCR及びBTLAの近接した物理的膜局在を観察した。mAbによるBTLA−HVEM遮断の結果、Vγ9Vδ2 TCRを介したシグナル伝達の増強が引き起こされ、これに対しBTLA−HVEM相互作用は、部分的なS期停止を誘発することにより、リン酸化抗原を介した増殖の低減をもたらした。
【0024】
これらのデータは、BTLA−HVEMがγδ T細胞分化の制御に関係するかもしれないことも示唆している。加えて、リンパ腫細胞へ暴露後の自家γδ T細胞の増殖は、BTLA−HVEM相互作用によって著しく低減された。これらのデータは、HVEM調節不全がVγ9Vδ2細胞増殖と影響し合うことによりリンパ腫形成において役割を果たし得ることを示唆している。
【0025】
本発明はこのように、治療において使用するためのBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストに関し、前記アンタゴニストはVγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める。
【0026】
「HVEM」という用語は、本願明細書で使用する場合、「ヘルペスウイルス侵入メディエーター」、「HVEA」、「ヘルペスウイルス侵入メディエーターA」、「TNFRSF14」、「腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバー14」、「TNR14」、「LIGHTR」、「LIGHTレセプター」、「TR2」、「TNFレセプター様物質」、「ATAR」、「別のTRAF関連レセプター」を含む全ての同義語が含まれることが意図されるが、これらに限定されない。TNFRSF14は、HUGO(ヒトゲノム国際機構)遺伝子命名委員会(HGNC)で承認された記号である。HVEMに対するUniProtKB/Swiss-Prot「プライマリアクセッション番号」はQ92956である。「セカンダリアクセッション番号」は、Q8WXR1、Q96J31及びQ9UM65である。
【0027】
BTLAという用語は、HVEMのリガンドを称する。「リガンド」とは、レセプター分子と結合してレセプター−リガンド複合体を形成する化合物を意味する。これまでに、HVEMと結合するいくつかのリガンドが同定されている。
【0028】
これらのリガンドのうちの2つ、LIGHT及びLTαは、TNFファミリー分子のメンバーである(Morel, Y. et al., 2000; Mauri, D.N. et al., 1998及びHarrop, J.A. et al., 1998)。構造的には、TNFファミリーのメンバーは一般的に、一回膜貫通2型のホモトリマー又はヘテロトリマーの、糖タンパク質として発現される。それらは膜貫通型タンパク質として発現された後、タンパク質分解性作用により切断されてリガンドの可溶性フォームを生成する。
【0029】
HVEMに対する第3のリガンドであるBTLA、膜貫通1型の糖タンパク質は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー分子のメンバーであり、CD28に密接に関連している(Gonzalez, L.C. et al., 2005)。
【0030】
第4のリガンドである糖タンパク質D(gD)は、単純ヘルペスウイルス(HSV)エンベロープの構造成分であり、宿主細胞内へのHSV侵入にとって必須である(Montgomery, R.I. et al., 1996; Hsu, H. et al., 1997; Kwon, B.S. et al., 1997; Tan, K.B. et al., 1997; Marsters, S.A. et al., 1997; Wallach, D. et al., 1999; Collette, Y. et al., 2003; Harrop, J.A. et al., 1998; Gonzalez, L.C. et al., 2005及びWhitbeck, J.C. et al., 1997)。
【0031】
近年、CD160が、新しく同定されたHVEMに対するリガンドであることが示された。
【0032】
結合研究(Gonzalez, L.C. et al., 2005及びSedy, J.R. et al., 2005)は、後に結晶学により裏付けられ(Compaan, D.M. et al., 2005)、それらはBTLAがHVEMの最膜遠位のCRD領域と相互作用することを示唆している。HVEMの膜遠位のCRD1領域は、CRD2からのさらなる寄与と共にHSV−gDとの相互作用にも関与している(Compaan, D.M. et al., 2005及びCarfi, A. et al., 2001)。BTLAとHSV−gDとの間の配列及び構造の相違点にもかかわらず、結晶構造試験では、HVEM上のそれらの結合部位が、大部分重複する表面にわたっていることも示されている(Compaan, D.M. et al., 2005及びCarfi, A. et al., 2001)。
【0033】
1つの実施形態では、前記アンタゴニストは血液学的悪性病変の処置方法で使用される。血液系悪性病変は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫を含む白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、及びマントル細胞リンパ腫(MCL)などのリンパ性細胞新生物を含むが、これらに限定されない。より具体的には、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、B及びT非ホジキンリンパ腫を含む。さらに、細胞リンパ性新生物は、B、NK及びT細胞リンパ性新生物を含む。
【0034】
好ましくは、前記血液学的悪性病変はリンパ腫である。
【0035】
実際に、本発明者らは、Vγ9Vδ2 T細胞のBTLA刺激が、リンパ腫細胞による免疫逃避の非常に有望な機構であることを明らかにしている。
【0036】
より好ましくは、前記リンパ腫は非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫から選択される。
【0037】
本願明細書で使用する場合、「白血病」という用語は、白血球の異常な増殖によって特徴付けられる、血液又は骨髄の血液系悪性病変を定義するのに一般的に用いられている。白血病の主要な亜型は、リンパ性(たとえばT又はBリンパ球性系列)又は骨髄性(たとえば顆粒球性、赤血球性又は巨核球性系列)細胞にかかわる悪性病変、そして当該疾患が発症時に急性又は慢性のいずれであるか、に基づいて同定される(Freireich, E.J. et al., 1991)。
【0038】
本願明細書で使用する場合、「リンパ腫」」という用語は、リンパ性組織の新生物の異種起源の群を包含する。リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、並びにT細胞(T−NHL)及びB細胞(B−NHL)非ホジキンリンパ腫として広く分類されている。世界保健機関(WHO)分類が近年公表されており、(本願明細書にて後記する)、この分類に基づいて診断基準が確立されている(Jaffe, E.S. et al., 2004)。
【0039】
慢性リンパ球性白血病(CLL)は、骨髄及び血液中における、リンパ球の緩慢であるが進行性の蓄積によって特徴付けられる、リンパ球性白血病の1つの型である。疾患の段階に応じて、リンパ節及び脾臓の拡張が起こることが多い。CLLはT細胞又はB細胞起源であってもよいが、B細胞起源が症例の85%を超える。現在の理解ではCLLは、それらの活性化及び成熟状態並びに及び細胞の亜族が異なるBリンパ球を起源とする、異質性疾患であるということを示唆する(Kuppers, R., 2005参照)。この疾患は、アポトーシス低減と、白血病性B細胞の増殖が高まること、の両方に起因し得る。CLL細胞は通常、起源がクローン性であり、以下の細胞表面マーカー:CD19、CD20、CD21、及びCD24を発現する。加えて、それら細胞は、より典型的にT細胞上に見出されるCD5を発現する(Chiorazzi, N, and al., 2005参照)。
【0040】
CLLは、「非ホジキンリンパ腫」(NHL)の亜族と考えられ、密接に関連する疾患である、リンパ節内に種として現れる「小リンパ球性リンパ腫」(SLL)と共に、全てのNHL症例のおよそ20%に該当する。
【0041】
CLLは、米国と西欧のほとんどの国で、成人において最も一般的な白血病である。The National Cancer Institute(NCI)は、CLLの発生率につき、米国で1年あたり約10,000の新症例であると推定している。CLLの臨床所見は、主として55歳の年齢より後に生じる。男性の発生率が女性よりも高く、女性のほぼ2倍、男性がこの疾患に罹りやすい。
【0042】
CLLは、処置の選択肢が限られているので、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)がある。
【0043】
NHLに対する最も一般的な処置は、化学療法、特にCHOPと称される併用レジメン(シトキサン、ヒドロキシルビシン([アドリアマイシン]、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニゾン)、及び放射線療法である。場合によっては、外科手術及び骨髄移植も用いられている。さらに最近になって、とりわけモノクローナル抗体、リツキシマブ及びアレムツズマブなどの、バイオ医薬品の使用が増加してきた。他の併用アプローチは、化学療法と共に、リツキシマブなどのバイオ医薬の使用を含む。これらの処置は、B−リンパ性悪性病変の管理を有意に向上させているものの、それらの欠陥のうちに含まれるのは、これらのレジメンに対する多くの患者の非応答性(これらのアプローチのいくつか又は全てに不応性となる患者がいる)、並びにこれらの処置の使用に起因する副作用及び合併症である。化学療法の最も一般的な副作用として、吐き気及び嘔吐(一般的に制吐薬の使用で管理される)、脱毛症(一般的に、処置の完遂後経時的に逆転する)、及び白血球減少症、とりわけ好中球減少症が挙げられる。好中球減少症は一般的に、第2週に発症する。この期間中、多くの臨床医がシプロフロキサシンの予防的使用を勧める。好中球減少性の期間に熱が出ると、好中球数の低い患者では感染が速やかに進行し得るので、好中球減少性敗血症についての緊急の医学的評価が必要とされる。リツキシマブに関して、第1輸液反応、リンパ球減少症、B型肝炎及び進行性多病巣性白質脳症(PML)を含むウイルスの再活性化などの感染性合併症、粘膜皮膚反応、及び腎合併症が報告されている。アレムツズマブの場合、重篤な血液毒性が起こる可能性があり、これには汎血球減少症、骨髄形成不全、自己免疫性特発性血小板減少症、及び自己免疫性溶血性貧血が含まれる。ある場合には、これらの毒性が罹患率及び死亡率を促進する可能性がある。
【0044】
別の実施形態では、前記BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストは、固形腫瘍の処置方法において使用される。
【0045】
本願明細書で使用する場合、「固形腫瘍」という用語は、悪性又は良性にかかわらず、過剰な細胞分裂に起因する細胞の異常な腫瘤(mass)又は集団、並びに全ての前ガン性及びガン性細胞及び組織を称する。
【0046】
固形腫瘍の例として、前立腺ガン、膵臓ガン、乳ガン、脳ガン、膀胱ガン、前立腺ガン、結腸ガン、腸ガン、肺ガン、胃ガン、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝ガン、皮膚ガン、結直腸ガン、子宮内膜ガン腫、唾液腺ガン腫、腎ガン、甲状腺ガン、種々の型の頭部、頸部ガン及び黒色腫が挙げられる。
【0047】
好ましくは、前記固形腫瘍は、膵臓ガン、乳ガン、前立腺ガン、及び黒色腫からなる群において選択される。
【0048】
別の実施形態では、前記BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストは、自己免疫疾患の処置方法において使用される。
【0049】
免疫系は、自己組織の攻撃を防ぐ制御機構を有している。これらの機構が適切に機能しないと、又はこれらの機能が停止すると、自己免疫又は自己免疫疾患の発症を引き起こす可能性がある。自己免疫は、臓器特異的から臓器非特異的まで、疾患の広域スペクトラムを表す。スペクトラムの一端では、橋本甲状腺炎が臓器特異性の高い疾患の典型であり、この疾患では破壊的病変が1つの臓器のみに向けられる。スペクトラムの他端では、紅斑性狼蒼(SLE)が臓器非特異的疾患を表し、この疾患では関連組織が身体の至るところに行き渡っている。免疫生物学の向上、並びに分子及び診断ツールの進歩に伴い、ほとんどの臓器又は組織系が以下のリストに示すような自己免疫疾患の自己破壊潜在力の対象になる可能性があることが、次第に明らかになっている。このように、自己免疫疾患に含まれるのは、アジソン病、強直性脊椎炎、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性白血球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)、男性不妊症、混合性結合組織病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、類天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性粘液腫、ライター症候群、関節リウマチ(RA)、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、甲状腺中毒症、潰瘍性大腸炎、及びウェゲナー肉芽腫症である。
【0050】
自己免疫疾患の病因は、完全には理解されていない。いくつかの例で分子擬態の機構が提案されており、これにより生産的抗細菌性又は抗ウイルス性応答の結果、自己組織に対する免疫応答が綿密さを欠いて発生し得る。加えて、遺伝的又は遺伝子の素因が、これらの疾患のうち多くのものの発症に寄与することが公知である。
【0051】
リンパ性細胞及び骨髄系細胞の両方が、自己免疫疾患の発症に関与している。自己反応性T及びBリンパ球が、各疾患及び関連組織の主要な臨床病理的特徴を決定する。Tリンパ球は直接、自己組織を攻撃し得るが、これに対しB細胞は自己反応性抗体を分泌する。SLEにおいて、二本鎖DNAに対する抗体を含め、多量な自己反応性抗体が生成され、これらが腎臓損傷を惹起又は悪化させると考えられる。マクロファージなどの骨髄系細胞は、TNF−α及びIL−8などのサイトカイン及びケモカイン応答を提供することや、自己破壊プロセスのためのエフェクター細胞として働くことにより、自己組織に対する免疫攻撃を維持、増幅及び延長する助けをする。TNF−αについての役割はRA及びクローン病に対して明らかに確証されており、これらの疾患は現在、抗TNF−α治療に応じることが公知である。RAの場合、骨髄系細胞は破骨細胞へと分化し、こうして骨損傷、及び炎症性関節を伴う滑膜表層の破壊を惹き起こすと考えられる。RA患者はまた、抗CD20抗体治療など、B細胞に対して指向された処置に応じることも示されている。
【0052】
さらに別の実施形態において、前記BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストは、感染の処置方法において使用される。
【0053】
感染の例として、慢性肝炎、肺感染、下気道感染、気管支炎、インフルエンザ、肺炎及び性感染症などの、ウイルス性、細菌性、寄生虫又は真菌感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ウイルス感染の例として、肝炎(HAV、HBV、HCV)、単純ヘルペス(HSV)、帯状疱疹、HPV、インフルエンザ(Flu)、AIDS及びAIDS関連複合体、水痘(水疱瘡)、風邪、サイトメガロウイルス(CMV)感染、天然痘(痘瘡)、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、口蹄疫、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、感染性単核球症、流行性耳下腺炎、ノロウイルス、灰白脊髄炎、進行性多巣性白質脳症(PML)、狂犬病、風疹、SARS、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性肺炎、西ナイル熱及び黄熱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
細菌性感染の例として、肺炎、細菌性髄膜炎、コレラ、ジフテリア、結核症、炭疽、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、カンピロバクター症、チフス、淋病、リステリア症、ライム病、リウマチ熱、百日咳(pertussis)、ペスト、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、野兎病、腸チフス、及び尿路感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
寄生虫感染の例として、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、シャーガス病、クリプトスポリジウム症、肝蛭症、フィラリア症、アメーバ感染、ジアルジア症、蟯虫感染、住血吸虫症、条虫症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、及びトリパノソーマ症が挙げられるが、これらに限定されない。真菌性感染の例として、カンジダ症、アスペルギルス症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症及び足部白癬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
典型的には、アンタゴニストは放射線療法及びホルモン療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0058】
典型的には、前記アンタゴニストは、抗ガン剤、制吐薬、造血性コロニー刺激因子、鎮痛薬及び抗不安薬からなる群より選択される1種以上の薬剤とも組み合わせて使用されてもよい。
【0059】
1つの実施形態では、前記アンタゴニストは、HVEMリガンドからなる群において選択される。好ましくは、前記アンタゴニストは、可溶性HVEMリガンドである。当業者は、刊行物、Pasero et al., "The HVEM network: new directions in targeting novel costimulatory/co-inhibitory molecules for cancer therapy(ガン治療のための、新規共刺激/共阻害分子標的化における新しい方向性)", Current opinion in Pharmacology 2012; 12:478-485を参照してもよい。
【0060】
典型的には、前記リガンドは、BTLA、LIGHT、LTα、糖タンパク質D及びCD160からなる群において選択される。好ましくは、前記可溶性HVEMリガンドは、リコンビナントである。
【0061】
好ましくは、前記アンタゴニストは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、可溶性リコンビナントBTLA、可溶性リコンビナントLIGHT、可溶性リコンビナントLIGHT、可溶性リコンビナントCD160又はそのフラグメントからなる群より選択される。より好ましくは、前記アンタゴニストは、リコンビナントBTLAである。
【0062】
別の実施形態では、前記アンタゴニストは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、HVEMに対して作られた抗体、及びそのフラグメントから選択される。
【0063】
典型的には、前記アンタゴニストは、抗体である。好ましくは、前記抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体フラグメントのうちから選択される。
【0064】
好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
【0065】
「抗体」という用語はさらに、抗体、消化フラグメント、特定部分及びその変異体が含まれることが意図され、抗体若しくは特定フラグメント又はその部分の構造及び/又は機能を模倣した抗体模倣体又は抗体の部分を含んでおり、単鎖抗体及びそのフラグメントが含まれる。機能性フラグメントには、HVEMとBTLAとの間の相互作用を遮断する抗原結合フラグメントが含まれる。
【0066】
本願明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、抗体分子の実質部分が、ヒト起源由来の抗体のものとアミノ酸配列又は構造において類似する抗体を称する。「ヒト化抗体」という用語は、天然に存在するヒト抗体と構造又はアミノ酸配列が類似するように、遺伝子工学により、又は他の手段により改変されている抗体を称する。「ヒト抗体」又は「ヒト化抗体」は、治療、予防又は診断目的でヒトに投与するために抗体の免疫原性を低減することが望ましい場合に、より好適であると考えられ得る。
【0067】
HVEMに対して特異的に作られた抗体は、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、ブタ、ウシ、ウマ又は霊長動物などを含むがこれらに限定されない、いくつかの種由来であってよい。霊長動物(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)起源由来の抗体は、ヒト配列と最も高度な類似性があり、それゆえ免疫原性がより低いことが期待される。種々の種由来の抗体は、所望の抗原に結合するそれらの能力を保持したままで当該抗体のアミノ酸配列を改変することによって「ヒト化」され得る。抗体は、ヒト抗体を発現するようにヒト免疫グロブリン遺伝子座で遺伝子改変されているマウスを含む、遺伝子導入動物由来であってもよい。「ポリクローナル抗体」を産生させるための手法は、当該技術分野において周知である。たとえば、ポリクローナル抗体は、たとえば当業者に周知の標準方法に従い遺伝子工学によって生成され得る、HVEMに対して免疫化された動物の血清から得ることができる。典型的には、このような抗体は、先ず採血して前免疫血清を得ておいたニュージーランド白色ウサギの皮下にHVEMタンパク質を投与することにより産生させることができる。抗原は、6つの異なる部位にて、1つの部位あたり100μLの全量で注射できる。注射される各材料は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のタンパク質又はポリペプチドを含有する、粉砕されたアクリルアミドゲルを使用して又は使用せずに、アジュバントを含有してもよい。ウサギは次いで、第1回の注射後2週間で採血され、そして6週おきに3回、同じ抗原を用いて定期的に追加免疫される。次いで血清の試料を、各追加免疫の10日後に採取する。ポリクローナル抗体は次いで、抗体を捕獲する対応抗原を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより血清から回収される。ポリクローナル抗体を産生させるための当該手法及び他の手法は、(Harlow et al., 1988)により開示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0068】
歴史的にモノクローナル抗体は、クローン的に純粋な免疫グロブリンを分泌する細胞株の不死化によって生成されたが、抗体分子のモノクローン的に純粋な集団は、本発明の方法によっても調製できる。
【0069】
モノクローナル抗体を調製するための実験的方法は、当該技術分野において周知である(たとえば、Harlow et al., 1988参照)。
【0070】
「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、その種々の呼称で、特定のエピトープと免疫反応できる部位を備えている抗体の唯一の種を含有する抗体分子の集団を言う。モノクローナル抗体はこのように、典型的には、それと免疫反応するいずれかのエピトープに対して単一の結合親和性を呈する。モノクローナル抗体は、異なるエピトープに対して各々免疫的に特有の、複数の抗体結合部位を有する抗体分子も明示し得る。たとえば、二重特異性抗体は、各々が異なる相互作用分子、又は異なるエピトープを認識する、2つの抗原結合部位を有することになる。本願明細書で使用する場合、「抗体フラグメント」、「抗体部分」、「抗体変異体」などの用語には、免疫グロブリン分子の少なくとも部分を含む分子を、前記分子と抗原(たとえばHVEM)との間の特異的な相互作用を許容するように含有する何らかのタンパク質又はポリペプチドが含まれる。免疫グロブリン分子の当該部分は、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、骨格領域、又はその何らかの部分、又はリガンド若しくはカウンターレセプター(たとえば、LIGHT、BTLA又はHSV−gD)の少なくとも1つの部分であって、抗原(たとえば、HVEM)との相互作用を許容するように本発明の抗体に取り込まれることができるものを含み得るが、これらに限定されない。
【0071】
モノクローナル抗体(mAb)は、マウスなどの哺乳動物、ラット、霊長動物などを、精製されたHVEMタンパク質で免疫化することにより調製されてもよい。免疫化された哺乳動物からの抗体生成細胞は、単離し、骨髄腫又は異種ヘテロ骨髄腫細胞と融合させてハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を生成する。モノクローナル抗体を生成している当該ハイブリドーマ細胞は、所望のモノクローナル抗体の供給源として利用される。このハイブリドーマ培養の標準法は、(Kohler and Milstein, 1975)に記載されている。あるいは、免疫グロブリン遺伝子を単離して、特異的反応性抗体をスクリーニングするためのライブラリーを調製するのに使用してもよい。リコンビナントファージ及びその他の発現ライブラリーを含め、かかる技術の多くは当業者に公知である。
【0072】
mAbはハイブリドーマ培養によって生成され得るが、本発明はそのように限定されることはない。また、さらに企図されるのは、クローニングすること、及び本発明のハイブリドーマからクローニングされた核酸を転移させることによって生成されたmAbの使用である。すなわち、本発明のハイブリドーマによって分泌される分子を発現している核酸を、別の細胞株に転移させて形質転換体を生成することができる。その形質転換体は、元のハイブリドーマと遺伝子型で別異のものであるが、ハイブリドーマにより分泌されたものに対応する、抗体分子全体の免疫学的活性フラグメントを含む、本発明の抗体分子を生成することもできる。たとえば、U.S. Pat. No. 4,642,334 to Reading; PCT Publication No.; European Patent Publications No. 0239400 to Winter et al.及びNo. 0125023 to Cabilly et al.を参照のこと。
【0073】
特定の実施形態では、HVEMを認識するmAbは、それぞれのリコンビナントヒトFc−IgG1融合タンパク質でBalb−cマウスを免疫化することにより生成されてもよい。脾臓細胞をX−63骨髄腫細胞と融合させ、既に報告された手法に従い、クローニングした(Olive D, 1986)。次いでハイブリドーマ上清を、トランスフェクトされた細胞を染色することにより、及びトランスフェクトされなかった細胞との反応性の欠除につきスクリーニングした。
【0074】
免疫化を伴わない抗体生成技術も、たとえばファージディスプレイ技術を使用してナイーブライブラリー(非免疫化動物由来)を調べることなどが企図される。(Barbas et al., 1992、及びWaterhouse et al., 1993)を参照のこと。
【0075】
本発明の抗体は、たとえば、親和性、イオン交換及び/又はサイズ排除クロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手法によって培地から好適に分離される。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の抗体はヒトキメラ抗体であってよい。本発明の前記ヒトキメラ抗体は、VL及びVHドメインをコードする核酸配列を得て、それらをヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターに挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築して、その発現ベクターを動物細胞に導入することにより発現させることによって生成され得る。ヒトキメラ抗体のCHドメインは、ヒト免疫グロブリンに属するいずれの領域であってもよいが、IgGクラスのものが好適であり、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4などのIgGクラスに属しているサブクラスのいずれか1つも使用できる。また、ヒトキメラ抗体のCLは、Igに属するいずれの領域であってもよく、カッパクラス又はラムダクラスのものを使用できる。キメラ抗体を生成するための方法は、従来のリコンビナントDNAを含み、遺伝子形質移入技術は当該技術分野において周知である(Morrison SL. et al. (1984)並びに特許文献US5,202,238;及びUS5,204,244参照)。
【0077】
別の特定の実施形態において、前記抗体はヒト化抗体であってもよい。前記ヒト化抗体は、CDRドメインをコードする核酸配列を得て、それらをヒト抗体のものと同じ重鎖定常領域及びヒト抗体のものと同じ軽鎖定常領域をコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターに挿入して、その発現ベクターを動物細胞に導入することにより発現させることによって生成され得る。
【0078】
ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子、及び抗体軽鎖をコードする遺伝子が、別々のベクターの存在するタイプか、又は両遺伝子が同じベクターに存在するタイプ(タンデム型)のいずれかであり得る。ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易性、動物細胞への導入の容易性、及び動物細胞における抗体H鎖及びL鎖の発現レベル間のバランスに鑑み、ヒト化抗体発現ベクターのタンデム型がより好ましい(Shitara K et al. 1994)。タンデム型ヒト化抗体発現ベクターの例として、pKANTEX93(WO 97/10354)、pEE18などが挙げられる。従来のリコンビナントDNA及び遺伝子形質移入技術に基づきヒト化抗体を生成するための方法は、当該技術分野において周知である(たとえば、Riechmann L. et al. 1988; Neuberger MS. et al. 1985を参照のこと)。抗体は、たとえば、CDR移植(EP 239,400; PCT publication WO91/09967; U.S. Pat. Nos. 5,225,539; 5,530,101;及び5,585,089)、練付け(veneering)又はリサーフェイシング(resurfacing)(EP 592,106; EP 519,596; Padlan EA (1991); Studnicka GM et al. (1994); Roguska MA. et al. (1994))、及び鎖シャフリング(U.S. Pat. No.5,565,332)を含め、当該技術分野において公知の様々な技術を用いてヒト化され得る。このような抗体を調製するための一般的なリコンビナントDNA技術も公知である(European Patent Application EP 125023及びInternational Patent Application WO 96/02576参照)。
【0079】
好ましくは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、抗体の前記フラグメントは、Fab(たとえば、パパイン消化によるもの)、Fab’(たとえば、ペプシン消化及び部分還元によるもの)及びF(ab’)2(たとえば、ペプシン消化によるもの)、facb(たとえば、プラスミン消化によるもの)、pFc’(たとえば、ペプシン又はプラスミン消化によるもの)、Fd(たとえば、ペプシン消化、部分還元及び再集合によるもの)、Fv又はscFv(たとえば、分子生物学技術によるもの)フラグメントのうちから選択される。
【0080】
このようなフラグメントは、当該技術分野において公知のような、及び/又は本願明細書に記載されるような、酵素による切断、合成又はリコンビナント技術によって生成され得る。抗体はまた、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を用いて、様々な切断されたフォームでも生成され得る。抗体の種々の部分を、従来の技術によって化学的に繋げることができ、又は遺伝子工学技術を用い、近接したタンパク質として調製できる。
【0081】
本発明の前記Fabフラグメントは、ヒトHVEMと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼ、パパインで処理することにより得ることができる。また、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを、原核生物の発現系又は真核生物の発現系用のベクターに挿入して、そのベクターを原核生物又は真核生物に導入してFabを発現させることによって生成され得る。
【0082】
本発明の前記F(ab’)
2は、HVEMと特異的に反応する抗体を、プロテアーゼ、ペプシンで処理することにより得てもよい。また、F(ab’)
2は、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して下記Fab’を結合させることにより生成され得る。
【0083】
前記Fab’は、HVEMと特異的に反応するF(ab’)
2を、還元剤、ジチオトレイトールで処理することにより得てもよい。また、Fab’は、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを原核生物用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入して、そのベクターを原核生物又は真核生物に導入してその発現をもたらすことによって生成され得る。
【0084】
前記scFvフラグメントは、前記のとおりのV
H及びV
LドメインをコードするcDNAを得て、scFvをコードするDNAを構築して、そのDNAを原核生物用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入して、次いでその発現ベクターを原核生物又は真核生物に導入してscFvを発現させることにより生成してもよい。ヒト化scFvフラグメントを生成するのに、CDR移植と称される周知技術が使用されてもよく、この技術は、ドナーscFvフラグメントから相補性決定領域(CDR)を選択しそれらを公知の三次元構造のヒトscFvフラグメント骨格に移植することを含む(たとえば、W098/45322; WO 87/02671; US5,859,205; US5,585,089; US4,816,567; EP0173494参照)。
【0085】
特定の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、一価、二価、多価、単一特異性、二重特異性、又は多重特異性である。別の好ましい実施形態では、HVEMに対して作られた抗体は、結合性フラグメント又は結合体である。たとえば、本発明の抗体は、成長阻害剤、細胞傷害性薬物、又はプロドラッグを活性化する酵素に結合されてもよい。
【0086】
エフェクター機能に関して、たとえば、抗体の、抗原依存性細胞を介した細胞毒性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を増強するように、本発明の抗体を改変することも望ましいことがある。これは、一以上のアミノ酸置換を、抗体のFc領域に導入することによって成し遂げられてもよい。それに代えて又はそれに加えて、システイン残基(1又は複数)をFc領域に導入してもよく、これにより当該領域に鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。このように生成されたホモ二量体の抗体では、内部移行能の向上、並びに/又は補体を介した細胞死滅及び/若しくは抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の増加がなされ得る(Caron PC. et al. 1992; 及びShopes B. 1992)。
【0087】
本発明の抗体の、別の型のアミノ酸改変は、抗体の本来のグリコシル化パターンを変更するのに有用であり得る。
【0088】
「変更」とは、抗体に見出される一以上の炭水化物部分を削除すること、及び/又は抗体に存在しないグリコシル化部位を一以上付加することを意味する。
【0089】
抗体のグリコシル化は、典型的にはN結合型である。「N結合型」とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を称する。トリペプチド配列である、アスパラギン−X−セリン、及びアスパラギン−X−トレオニン(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付加のための認識配列である。このように、ポリペプチドにこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することで、潜在的グリコシル化部位が生じる。抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N結合型グリコシル化部位の場合)前記のトリペプチド配列の一以上を含むようにアミノ酸配列を変更することにより、好都合に成し遂げられる。
【0090】
別の型の共有結合性の改変は、化学的に又は酵素により、抗体にグリコシドをカップリングさせることを含む。これらの手法は、N結合型又はO結合型グリコシル化のためにグリコシル化能を有する宿主細胞で抗体を生成する必要がないという点で有利である。用いられるカップリング態様に応じて、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、若しくはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、若しくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミド基に、糖(1又は複数種)を付着させてもよい。たとえば、このような方法はWO87/05330に記載されている。
【0091】
抗体に存在する炭水化物部分のいずれをも除去することは、化学的に又は酵素によりなされ得る。化学的脱グリコシルでは、化合物、トリフルオロメタンスルホン酸、又は同等の化合物に、抗体を暴露する必要がある。この処理の結果、結合している糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除きほとんど又は全ての糖の切断が起こり、抗体は完全体のままである。化学的脱グリコシルは、Sojahr H. et al. (1987)及びEdge, AS. et al. (1981)により報告されている。抗体の炭水化物部分の酵素による切断は、様々なエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって、Thotakura, NR. et al. (1987)により報告されたように成し遂げることができる。
【0092】
抗体の、別の型の共有結合性の改変は、様々な非タンパク質性のポリマー、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレン類の1つに、US Patent Nos. 4,640,835; 4,496,689; 4,301,144; 4,670,417; 4,791,192又は4,179,337に記載されているように結合させることを含む。
【0093】
好ましい実施形態では、前記抗HVEM抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15, France)へ、ブダペスト条約の規定に従って、2013年5月16日に、第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマから得ることのできるモノクローナル抗体である。
【0094】
本願明細書で使用する場合、「HVEM 18.10」という表現は、CNCM寄託番号I−4752でアクセス可能なハイブリドーマから得ることのできる単離されたHVEM抗体を言う。
【0095】
好ましい実施形態では、前記抗HVEM抗体は、
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変軽鎖(VL)鎖の全てのCDR、及び
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変重鎖(VH)鎖の全てのCDR
を含むモノクローナル抗体である。
【0096】
さらに好ましい実施形態では、前記抗HVEM抗体は、
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体のVL鎖の全てのCDRを含む可変軽鎖(VL)、及び
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体のVH鎖の全てのCDRを含む可変重鎖(VH)
を含むモノクローナル抗体である。
【0097】
さらに別の実施形態では、前記アンタゴニストは、BTLAとHVEMとの間の相互作用を遮断する、BTLAに対して作られた抗体及びそのフラグメントから選択される。
【0098】
好ましくは、前記抗体は、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める。それゆえ、前記抗体は、血液系悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患及び感染を処置するための方法において非常に効率的である。
【0099】
これまでに開示された技術的特徴は、BTLAに対して作られた前記抗体に当てはまる。
【0100】
好ましくは、前記アンタゴニストは、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15, France)へ、ブダペスト条約の規定に従って、2009年2月4日に、第CNCM I−4123号で寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体である。
【0101】
本願明細書で使用する場合、「BTLA8.2」という表現は、CNCM寄託番号I−4123でアクセス可能なハイブリドーマから得ることのできる単離されたHVEM抗体を言う。
【0102】
本発明のさらなる目的は、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める、HVEMに対して作られたモノクローナル抗体を得るために好適なハイブリドーマ細胞株に関する。
【0103】
好ましくは、前記ハイブリドーマ細胞株は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマ細胞株である。
【0104】
「ハイブリドーマ」という用語は、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫化することにより調製されたB細胞を、抗原特異性を有する所望のモノクローナル抗体を生成する、マウス等由来の骨髄腫細胞との細胞融合に付すことによって得られる細胞を意味する。
【0105】
本発明のさらなる目的は、
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変軽鎖(VL)鎖の全てのCDR、及び
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体の可変重鎖(VH)鎖の全てのCDR
を含むモノクローナル抗体に関する。
【0106】
これまでに記載した全ての技術的データを、ここに当てはめることができる。
【0107】
本発明のさらなる目的は、
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体のVL鎖の全てのCDRを含む可変軽鎖(VL)、及び
− CNCM I−4752として寄託されたハイブリドーマから得ることのできる抗体のVH鎖の全てのCDRを含む可変重鎖(VH)
を含むモノクローナル抗体に関する。
【0108】
これまでに記載した全ての技術的データを、ここに当てはめることができる。
【0109】
本発明のさらなる目的は、HVEMとBTLAとの間の相互作用を遮断し、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を高める、HVEMに対して作られたモノクローナル抗体に関する。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismesへ、2013年5月16日に、第CNCM I−4752号で寄託されたハイブリドーマから得ることができる。
【0110】
本発明のさらなる目的は、血液系悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患及び感染を処置する方法であって、それを必要とする被験者に治療上有効量のアンタゴニストを上で定義されたとおり投与することを含む、方法に関する。
【0111】
本発明に関連して、「処置すること」又は「処置」という用語は本願明細書で使用する場合、かかる用語が適用される障害若しくは状態を、又はかかる障害若しくは状態の一以上の症候を、逆転させること、緩和すること、進行を阻害すること、又は予防することを意味する。
【0112】
本願明細書で使用する場合、「被験者」という用語は、齧歯動物、ネコ科の動物、イヌ科の動物、及び霊長動物などの哺乳動物を意味する。好ましくは、本発明に係る被験者はヒトである。
【0113】
本発明によれば、「患者」又は「それを必要とする患者」という用語で、血液系悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患又は感染に冒された、又は冒されている可能性が高いヒト又は非ヒト哺乳動物が意図される。
【0114】
本発明に係るBTLA/HVEMのアンタゴニストの「治療上有効量」によって、いずれの医療的処置にも適用可能である妥当な効果/リスク比で、前記血液悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患、又は感染を処置するのに十分なBTLA/HVEMのアンタゴニストの量を意味する。しかしながら、本発明のHVEMのリガンド及び組成物の一日の使用合計は、信頼できる医学的判断の範囲内で主治医により決定されることになる点は理解されよう。特定の患者のいずれかに対する具体的な治療上有効な用量のレベルは、処置すべき障害及び障害の重症度、用いられる具体的なBTLA/HVEMのアンタゴニストの活性;用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性及び食生活、投与の時間、投与経路、及び用いられる特異抗体の排泄の速度、処置の継続期間;用いられる具体的なポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬物、並びに医学分野で周知の類似因子を含む様々な因子に左右されよう。たとえば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルの化合物の用量で開始し、所望の効果が成し遂げられるまで投薬量を徐々に増加させることが、当該技術分野の技術の範囲内で周知である。
【0115】
本発明のBTLA/HVEMのアンタゴニストは、前記のような障害又は状態を処置するための他の治療的手法(たとえば、外部放射線療法、化学療法又はサイトカイン治療)のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。
【0116】
本発明のさらなる目的は、BTLA/HVEMのアンタゴニストの有効用量を含む医薬組成物に関する。
【0117】
前記のような本発明の治療薬のいずれも、薬学的に許容し得る賦形剤、及び任意に、生分解性ポリマーなどの持続放出マトリクスと組み合わせて、治療用組成物を形成してもよい。
【0118】
「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」とは、哺乳動物、とりわけヒトに、適宜投与された場合、有害な、アレルギー性の又は他の副作用を生じない分子実体及び組成物を称する。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤とは、無毒な固体、半固体若しくは液体の充填剤、希釈剤、封入材又は各種処方助剤を言う。
【0119】
医薬組成物の剤形、投与経路、投薬量及びレジメンは本来、治療されるべき状態、疾病の重症度、患者の年齢、体重、及び性などに左右される。
【0120】
本発明の医薬組成物は、局所、経口、鼻腔内、眼内、静脈内、筋肉内又は皮下投与などのために処方され得る。
【0121】
好ましくは、医薬組成物は、注射されることができる製剤用の、薬学的に許容し得る媒質を含有する。これらは、特に等張、滅菌生理食塩水溶液(リン酸1ナトリウム若しくはリン酸2ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は乾燥、とりわけ凍結乾燥された組成物で、場合により滅菌水又は生理食塩水の追加に際し、注射剤の構成を可能とするものであってもよい。
【0122】
投与に用いられる分量は、種々のパラメータの関数として、特に使用される投与方法の、関連病理の、又は代わりに処置の望ましい継続期間の関数として、適合させることができる。
【0123】
医薬組成物を調製するために、BTLA/HVEMのアンタゴニストの有効量を薬学的に許容し得る担体又は水系媒体に溶解又は分散させるとよい。
【0124】
注射剤への使用に好適な医薬剤形は、滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、且つ容易な注射可能性のある程度に流体でなければならない。それは製造及び貯蔵の条件下に安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して守られなければならない。
【0125】
遊離塩基又は薬理学的に許容し得る塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製することができる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、これらの混合物中で、及び油中で調製することができる。貯蔵及び使用の通常の条件下にあっては、これらの調剤は微生物の成長を防ぐために防腐剤を含有する。
【0126】
本発明のBTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストは、中性又は塩の形態で組成物へと処方されることができる。薬学的に許容し得る塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基とで形成)で、たとえば塩化水素酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸とで形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第2鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来することも可能である。
【0127】
担体もまた、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、並び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどの種々の抗細菌及び抗真菌薬によりもたらされることができる。多くの場合、等張剤、たとえば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤、たとえば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンを組成物中で使用することによって、注射用組成物の長期の吸収をもたらすことができる。
【0128】
滅菌注射剤は、必要量の活性化合物を、上に列挙した種々の他の成分と共に適切な溶媒中に取り込ませ、その後必要に応じて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、滅菌された種々の有効成分を、基本分散媒と上に列挙したものから必要とされる他の成分とを含有する無菌媒質に取り込ませることによって調製される。滅菌注射剤を調製するための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術で、有効成分に加え、その予め濾過滅菌された溶液からの追加の所望成分との粉末を生成するものである。
【0129】
直接注射用の、より濃縮された溶液又は高濃縮溶液の調製も企図され、溶媒としてのDMSOを使用して、結果的に高濃度の活性薬剤をきわめて迅速に浸透させ、小さな腫瘍領域へ送達させることが想定される。
【0130】
処方に際し、剤形に適合する方法で、且つ治療上有効な量で、液体が投与されることになる。製剤は、前記の注射剤の型など、様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども採用できる。
【0131】
水溶液で非経口投与するためには、たとえば、溶液を好適に緩衝させてもよく、その液体希釈剤は先ず、十分な生理食塩水又はグルコースで等張にしておかれる。これらの特定の水溶液は、とりわけ静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に好適である。これに関し、用いることができる滅菌水系媒体は、本開示に鑑みれば当業者にとって公知であろう。たとえば、1回の投薬量は、等張のNaCl溶液 1mLに溶解させ、そして皮下点滴治療液 1000mLに添加するか、又は注入の推奨部位に注射され得るであろう(たとえば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580参照)。投薬量のある程度のばらつきが、処置を受ける被験者の状態に応じて必然的に起こるであろう。投与への責任がある人物は、いずれにしても、個々の被験者に対する適切な用量を決定することになろう。
【0132】
静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与用に処方された化合物に加えて、他の薬学的に許容し得る剤形として、たとえば錠剤又は経口投与用の他の固形剤、逐次継続放出カプセル、及び現在使用されている他のいずれかの剤形が挙げられる。
【0133】
本発明の組成物は、さらなる治療活性薬剤を含んでもよい。本発明は、上で定義されたとおりのHVEMのリガンド、及びさらなる治療活性薬剤を含むキットにも関する。
【0134】
1つの実施形態では、前記治療活性薬剤は抗ガン剤である。たとえば、前記抗ガン剤として、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキセート、タキソール、タキソテール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンなどの白金複合体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン(procarbizine)、エトポシド、テニポシド、カンプトセシン(campathecins)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L−アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピルビシン(epimbicm)、5−フルオロウラシル、ドセタキセル及びパクリタキセルなどのタキサン類、ロイコボリン、レバミゾール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、ナイトロジェンマスタード、BCNU、カルムスチン(carmustme)及びロムスチンなどのニトロソウレア、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンなどのビンカアルカロイド類、イマチニブメシラート(imatimb mesylate)、ヘキサメチレンアミン(hexamethyhnelamine)、トポテカン、キナーゼインヒビター、ホスファターゼインヒビター、ATPaseインヒビター、チロホスチン、プロテアーゼインヒビター、インヒビター・ハービマイシン(herbimycm)A、ゲニステイン、エルブスタチン、及びラベンダスチンAが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、追加の抗ガン剤は、以下のクラスの薬剤の1つ又はそれらの組み合わせである:アルキル化剤、植物アルカロイド、DNAトポイソメラーゼインヒビター、抗葉酸剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、DNA代謝拮抗物質、タキサン類、ポドフィロトキシン、ホルモン治療剤、レチノイド、光線感作物質又は光線力学治療剤、血管形成阻害剤、抗有糸分裂剤、イソプレニル化インヒビター、細胞周期インヒビター、アクチノマイシン、ブレオマイシン、アントラサイクリン、MDRインヒビター及びCa2+ ATPaseインヒビターから選択され得るが、これらに限定されない。
【0135】
追加の抗ガン剤は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、成長阻害因子、ホルモン、可溶性レセプター、デコイレセプター、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単一特異性、二重特異性又は多重特異性抗体、モノ体(monobodies)、ポリ体(polybodies)から選択され得るが、これらに限定されない。
【0136】
追加の抗ガン剤は、エリスロポエチン及びトロンボポエチンなどの成長又は造血因子、並びにそれらの成長因子模倣体から選択されるが、これらに限定されない。
【0137】
ガンを処置するための本発明の方法において、さらなる治療活性薬剤は、制吐薬であり得る。好適な制吐薬として、メトクロプロミド(metoclopromide)、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン(acethylleucine monoemanolamine)、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン(bietanautine)、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート(dunenhydrinate)、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタラタール、メトピマジン、ナビロン、オキシペンジル(oxypemdyl)、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルペラジン、チオプロペラジン及びトロピセトロンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、制吐薬はグラニセトロン又はオンダンセトロンである。
【0138】
別の実施形態では、さらなる治療活性薬剤は、造血コロニー刺激因子であり得る。好適な造血コロニー刺激因子として、フィルグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム及びエポエチンアルファが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
さらに別の実施形態では、他の治療活性薬剤は、オピオイド又は非オピオイド鎮痛薬であり得る。好適なオピオイド鎮痛薬として、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、オキシコドン、メトポン、アポモルフィン、ノミオイフィン(nomioiphine)、エトイプビン(etoipbine)、ブプレノルフィン、メペリジン(mepeddine)、ロペラミド(lopermide)、アニレジン(anileddine)、エトヘプタジン、ピミニジン、ベタプロジン、ジフェノキシレート、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、レボルファノール、デキストロメトルファン、フェナゾシン(phenazodne)、ペンタゾシン、シクラゾシン、メタドン、イソメタドン及びプロポキシフェンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な非オピオイド鎮痛薬として、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフェナク、ジフルシナル(diflusinal)、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム及びスリンダクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
さらに別の実施形態では、さらなる治療活性薬剤は、抗不安薬であり得る。好適な抗不安薬として、ブスピロン、並びにジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、クロラゼパート、クロナゼパム、クロルジアゼポキシド及びアルプラゾラムなどのベンゾジアゼピンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明は、以下の実施例、図面及び表により、さらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【
図1】
図1は、活性化後のVγ9Vδ2TCRとのBTLA共局在化を示す図である。BTLA遮断(全長BTLA 8.2又はそのFabフォームを使用)は、Zap−70及びErk1/2のリン酸化を高める。1x10
6の、HV由来の精製したγδ T細胞を、BrHPP(50nM)及びアイソタイプ対照、又は抗PD−1.3.1 mAb、又は抗BTLA 8.2で5分間刺激した。全細胞性タンパク質を10% SDS−PAGE 544で分離し、及びホスホ−Zap−70又はホスホ−Erk1/2抗体を使用してウエスタンブロット解析により明らかにした。
【
図2】
図2は、BTLA−HVEM相互作用が、γδ T細胞増殖を阻害したことを示す図である。HV由来の循環しているγδ T細胞を精製して、IL−2±25〜1000nM BrHPPを用いて5日間(n=3)培養した。増殖は、CFSE希釈によって定量化し、当該γδ T細胞のうちの分裂細胞の百分率として表した。
【
図3】
図3は、BTLA−HVEM相互作用がγδ T細胞増殖を阻害したことを示す図である。4 HVからの精製したγδ T細胞におけるCellTrace希釈物を、低用量BrHPP(50nM)を使用して又は使用せずに、特定のmAb又はFC−タンパク質で5日間刺激した。結果は、平均±SEMで表し、統計的有意性はノンパラメトリックpaired Wilcoxon U検定を使用して立証した。*p<0.05;**0.001<p<0.01;***p<0.001。
【
図4】
図4は、BTLA−HVEM会合が、部分的なS期停止を誘発することを示す図である。IL2+BrHPP±IgG1又はHVEM 11.8(n=12)を使用した培養3日後の、S期(上方パネル)又はG2/M期(下方パネル)にあるナイーブVγ9Vδ2 T細胞の百分率。2つの増殖段階の間の移行中であり得る細胞は除外した。結果は、平均±SEMで表し、統計的有意性はノンパラメトリックpaired Wilcoxon U検定を使用して立証した。p<0.05;
**0.001<p<0.01;
***p<0.001。
【
図5】
図5は、BTLA遮断が、HVEM+リンパ腫細胞との共培養においてγδ T細胞増殖を回復させたことを示す図である。炎症性リンパ節(IF−LN)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、及びホジキンリンパ腫(HL)の患者からのVγ9Vδ2 T細胞のうち、BTLA陽性細胞の百分率。
【
図6】
図6は、BTLA遮断が、HVEM+リンパ腫細胞との共培養においてγδ T細胞増殖を回復させたことを示す図である。節内(intra-nodal)γδ T細胞(n=11)でゲート設定されたCellTrace希釈物を、IL−2及び特定のmAbで5日間刺激した。結果は、平均±SEMで表し、統計的有意性はノンパラメトリックpaired Wilcoxon U検定を使用して立証した。*p<0.05;**0.001<p<0.01;***p<0.001。
【
図7】
図7は、QRT−PCRにより、前立腺、黒色腫及び乳ガン細胞株でのHVEM発現を示す図である。HVEM遺伝子発現を、前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145及びLNCaP)につき;本発明者らの実験室(Blanc, Dagon, Dartevelle, Farjon, Gerlach, Gouteland, Patault, Roddie)の黒色腫患者から樹立した黒色腫細胞株につき、及び乳房腫瘍細胞株(BT474、T47D、SUM159、SUM225、SKBR3、MCF7、MDA−MB−157)につき、QRT−PCRによって評価した。デルタCtは、(遺伝子のCt−GAPDHハウスキーピング遺伝子のCt)を表し、ここでCtは、遺伝子を検出するのに必要とされるサイクルの数として定義される)。デルタCtが低い場合に、遺伝子発現は高い。右側パネルは、各腫瘍型に対して得られたデルタCtの平均を表す。
【
図8】
図8は、フローサイトメトリーにより、前立腺腫瘍細胞株でのHVEM発現を示す図である。HVEMタンパク質発現及びそのリガンド(BTLA、CD160、LIGHT)を、前立腺腫瘍細胞株(PC3及びDU145)につき、フローサイトメトリーにより測定した。点線dは、アイソタイプの対照を表す。
【
図9】
図9は、HVEM/BTLA遮断が、γδ T細胞の増殖を増強することを示す図である。γδ T細胞は、健康なドナーから精製し、Cell Trace Violetで染色して、200UI/ml IL2を使用し、低用量BrHPP(50nM)、±20μg/ml 抗BTLA 8.2、HVEM 18.10、若しくはアイソタイプの対照を使用して又は使用せずに、5日間培養した。5日目に、γδ T細胞増殖をCell Trace Violet希釈(フローサイトメトリー)によって定量して、γδ T細胞のうち分裂細胞の百分率として表した。(n=10)。
【
図10】
図10は、HVEM/BTLA遮断が、異なる前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145及びLNCaP)に対して効果的であることを示す図である。Cell Trace Violet染色後に、γδ T細胞を前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145及びLNCaP)と共培養した以外は、
図9(A)に示すものと同じプロトコルに従った。手短に言えば、γδ T細胞を健康なドナーから精製し、Cell Trace Violetで染色して、200UI/ml IL2、±前立腺腫瘍細胞株、±20μg/ml 抗BTLA 8.2、HVEM 18.10又はアイソタイプ対照と共に5日間培養した。5日目に、γδ T細胞増殖をCell Trace Violet希釈(フローサイトメトリー)によって定量して、γδ T細胞のうち分裂細胞の百分率として表した。(n=10)。
【0143】
実施例
実施例1:コレセプターであるBTLAは、ヒトVγ9Vδ2 T細胞増殖を負に調節する
材料及び方法
患者
リンパ腫患者からの11のリンパ節を評価すると、9のNHL及び3のホジキンリンパ腫(HL)が含まれており、NHL試料は、B細胞濾胞性リンパ腫(FL、n=7)及びびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL、n=1)に分類された。HL試料は、古典型に属していた。ヘルシンキ宣言に従い、全ての参与者からインフォームドコンセントを得た。本研究は、Institut Paoli Calmettesの施設内審査委員会(institutional review boards)によって承認された。対照群は、Marseille Blood Bankにより提供された7名の健康なボランティアからなっていた。リンパ節からの単核細胞を、機械的破壊の後に単離した。HVからの末梢血単核球は、密度勾配遠心分離(Lymphoprep、Abcys)によって単離された。単離された細胞は、使用まで10%ジメチルスルホキシド(Sigma−Aldrich)を含有するウシ胎仔血清(PAN Biotech)中で生存状態で凍結された。
【0144】
試薬及び抗体
ブロモヒドリンピロホスファート(BrHPP)は、Innate Pharma(Marseille, France)から得た。リコンビナントヒトIL2(rIL2)は、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)より購入した。機能性実験及び免疫蛍光分析に用いたmAb及びFCタンパク質は、表Iに補充データで列挙する。
【0145】
抗ヒトHVEM、BTLA及びPD−1モノクローナル抗体(mAbs)の生成
BTLA(クローン 8.2);HVEM(HVEM 11.8、HVEM 18.10)及びPD−1(PD 1.3.1)を認識するmAbは、これまでに記載されたとおりに生成された。Fabフラグメントは、Fab調製キット(Thermo Scientific Pierce)を用い、供給者のプロトコルに従って生成された。
【0146】
新しいHVEM特異mAb(HVEM−11.8及び18.10)の特性解析
安定なLTK−HVEM(2x10
5細胞)トランスフェクト体は、BTLA−Fc 10μg/ml及び所定濃度範囲(0.001〜30μg/ml)のHVEM−11.8又は18.10 mAbの混合物で1時間、4℃で処理された。次いで細胞をPBSで洗浄し、R−PE−結合AffiniPure F(ab’)2 131フラグメントヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Immunotech)を用い30分、4℃で染色した。阻害活性を測定するため、PD1−3 mAbを非遮断対照として同じ条件に含めた。HVEM−11.8又は18.10 mAbのいずれかの、HVEM−Fcの結合及び遮断活性を、BD FACScan血球計算器でフローサイトメトリーにより求めた。HVEM−Fcタンパク質については、ヒトI 135 gG1のFcタンパク質に融合させたHVEMの細胞外ドメイン(Met1−Val202)を、発現ベクターCos Fc Link(SmithKline Beecham Pharmaceuticals)にクローニングした。HVEM ΔCRD1−Fcタンパク質については、そのCRD1ドメインから欠失された細胞外ドメインをヒトIgG1のFcタンパク質に融合させたものを発現ベクターCos Fc Linkへクローニングした(SmithKline Beecham Pharmaceuticals)。HVEM V74A−Fcタンパク質では、Val74はアラニンに変異されていた。
【0147】
細胞培養
エフェクター−γδ T細胞は、これまでに記載されたとおりに樹立及び維持された。手短に言えば、PBMCをBrHPP(3μM)及びrIL2(100IU/ml)によって刺激した。rIL−2は、2日ごとに更新され、1.5x10
6細胞/mlで細胞は維持された。FL細胞株であるRL及びKarpas−422は、熱失活させたFCS10%を補った完全RPMI 1640培地中で培養された(0.5x10
6/ml)。
【0148】
フローサイトメトリー
2.10
5 PBMCをPBS(Cambrex Bio Science)で洗浄して、特定のmAb結合体と共に4℃で20分間インキュベーションした。インキュベーション及び洗浄の後、試料をLSRFortessa(Becton Dickinson)にて、DIVAソフトウェア(BD bioscience, Mountain View, CA)を用いて分析した。
【0149】
増殖アッセイ
精製されたγδを2.5μM CFSE(Molecular Probes, LifeTech)で10分間、37℃にて、又はCellTrace Violet(Molecular Probes, LifeTech)で10分間、37℃にてラベルした。CellTrace又はCFSEでラベルされた細胞2x10
5は、示されたmAb又は増加用量のBrHPPを使用して又は使用せずに、96穴プレート中で培養された。200U/mL IL−2の存在下の培養から5日後に、フローサイトメトリーによってCellTrace又はCFSE希釈を評価した。
【0150】
細胞周期分析
IL−2+BrHPPで培養して3日及び4日後に、精製されたγδ T細胞は15μM BrdUと共に1時間培養され、次いで固定、透過処理され、そしてBrdU及び7−AADに対し製造業者の説明書に従って染色された(FITC BrdU Flowキット、BD Pharmingen)。精製されたγδ T細胞における、BrdUを取り込んだ細胞(FITC 抗BrdUを使用)、及び総DNA含量(7−AADを使用)のフローサイトメトリー分析によって、アポトーシスのもの(7−AADneg)、又は細胞周期のG0/G1(BrDU+、4−AADlow)、S(BrDU+)若しくはG2/M(BrDUneg、7AADbright)期にある細胞サブセットの識別が可能になった。
【0151】
免疫蛍光
ポリ−L−リジンで前処理されたカバーガラス上で30分間沈降させた後、HVからの精製されたγδを、メタノールで−20℃にて6分間固定させてPBSで洗浄した。10%SVFのPBSでブロッキングした後、細胞を一次抗体:TCRVδ2 mAb及びBTLAmAbと共に1時間インキュベーションした。PBS、0.1% Tween20で洗浄した後、シアニン5(Cy5)に結合された抗IgG二次抗体(Jackson Laboratories)を用いてBTLA染色を検出した。二次抗体に起因する人為的な共局在を防ぐために、連続的な染色を使用した。二次染色の際、DNAは250ng/ml DAPI(Roche diagnostics)で染色された。細胞をProlong Gold退色防止剤(Invitrogen)中でマウントさせ、LSM−510 Carl Zeiss共焦点顕微鏡にてX63 NA1.4、Plan Apochromat対物レンズで調べた。
【0152】
ウエスタンブロット
10%血清を含むRPMI培地中の低用量BrHPPで、1.106 γδ T細胞を5分間処理した。次いで細胞を氷上に置き、PBSで洗浄して、プロテアーゼインヒビター(Roche Applied Science)及び100μM Na
3VO
4の存在下、20μLの氷冷したHNTG緩衝液(50mM HEPES pH7、50mM NaF、1mM EGTA、150mM NaCl、1% Triton X−100、10%グリセロール、及び1.5mM MgCl
2)に溶解させた。タンパク質を10%SDS−PAGEにより分離させ、その後ウエスタンブロットを行った。使用した一次抗体は、細胞シグナル伝達より、ウサギ抗ホスホ−Zap70抗体及びウサギ抗ホスホ−Erk1/2抗体であった。一次抗体は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギ抗体(Jackson Laboratory)で検出された。免疫反応性バンドは、高感度化学発光(enhanced chemiluminescent)試薬(Pierce)を用いて検出された。
【0153】
統計
結果は、中央値±SEMで表される。統計解析を、Wilcoxon検定及びMann−Whitney t検定を用いて実施した。P値<0.05を有意と考えた。GraphPad Prism統計解析プログラムを使用した。
【0154】
結果
BTLA発現は、Vγ9Vδ2 T細胞分化と逆相関する
本発明者らは、HVからのPBMCにつきエキソビボ多色フローサイトメトリー分析を実施することにより、Vγ9Vδ2 T細胞中のBTLAの発現を判定した。以前に示されたとおり最低レベルしか発現されなかったPD−1や、存在していなかったCTLA−4及びICOSなどの他の共シグナル伝達分子と異なり、BTLAは、休眠しているVγ9Vδ2 T細胞(52.5%±5)の表面で強く発現されていた。次に、CD45RA及びCD27発現によって明らかにされるVγ9Vδ2 T細胞の発達状態に応じてBTLA発現が変動するかを検証し、BTLAはナイーブ(N;CD45RA+CD27+)及びセントラル記憶T細胞(CM;CD45RA−CD27+)で主に発現され、またより少ない程度ではあるがエフェクター記憶T細胞(EM、CD45RA2 CD27−)で発現されていた。よって、BTLAがナイーブT細胞に見出され、記憶細胞及び分化したエフェクター型細胞で進行的にダウンレギュレーションされるという、CD8+ αβ T細胞で得られたデータを踏まえ、BTLA発現はVγ9Vδ2 T細胞分化と逆相関している。対照として、本発明者らは種々のγδ T細胞サブセットにおけるPD−1の発現を調べ、これは全てのサブセットに存在し、エフェクター記憶集団(TemH1;CD45RA−CD27−)で優先的に発現していた。
【0155】
BTLA及びTCRは、活性化の間に同時進行的にダウンレギュレーションされる
本発明者らは次に、Vγ9Vδ2 T細胞活性化の間にBTLA発現が調節されるかを判定した。IL−2単独で又はIL−2と合成PAg BrHPPとを組み合わせてVγ9Vδ2 T細胞を刺激し、5日間にわたってモニターした。BTLA発現の強度は、IL−2で処理した細胞では一定であり、これに対しIL−2+BrHPP刺激後24時間で発現は有意に低下した(p=0.002;72時間でベースラインに復帰)。本発明者らは、BrHPPによって誘発される、BTLA及びTCRの同時進行ダウンレギュレーションを見出したが、IL−単独では見出されず、αβT細胞での以前の研究で、PD−1発現がBrHPP刺激下、24時間で有意にアップレギュレーションされることと矛盾しなかった。
【0156】
活性化に際し、BTLAはTCR近傍でクラスター形成し、TCRを介したシグナル伝達を低減させる
Vγ9Vδ2 T細胞の表面での、TCR及びBTLA発現の相関した調節の観察は、物理的な関連性の潜在性を示唆している。したがって、本発明者らは次に、TCRを介した活性化に際してのBTLAの細胞内局在を調べた。本発明者らは先ず、Vγ9Vδ2 T細胞をPAgで活性化し、その後共焦点顕微鏡法によりTCR及びBTLAを限局化した。予想のとおり、BTLAはTCRの近傍に局在していた。これは、HVEM+リンパ腫細胞株により誘発される極性化の後でさえも同様である。Vγ9Vδ2 T細胞と標的細胞との間のシナプスでBTLAとTCRがクラスター形成していることが観察された。注目すべきは、DIC画像に示される2つのVγ9Vδ2 T細胞はBTLA発現に関して相違するようであり、これは本発明者らがBTLA発現の異なるレベルにある、全ての分化段階を含むVγ9Vδ2 T細胞のバルク集団を用いたという事実によって説明できる。TCRとBTLAとの近接した局在は、BTLA会合がTCR依存性のシグナル伝達に影響を及ぼし得るということを示唆した。Vγ9Vδ2 T細胞はその後、PAg刺激を用い、抗BTLA遮断抗体の存在下又は非存在下でTCRを介して刺激された。
図1に認められるとおり、ZAP−70及びErk1/2のリン酸化は、BTLA遮断後に増加していた。
これらのデータは、BTLAがTCRを介した活性化を負に調節することを示唆している。
【0157】
BTLAはそのリガンドであるHVEMによる会合でVγ9Vδ2 T細胞増殖能を減じる
Vγ9Vδ2 T細胞のTCRを介した活性化は通常、細胞毒性及びサイトカイン生成を結果的に引き起こす。驚くべきことに、BTLA遮断は、PAgで刺激されたVγ9Vδ2 T細胞の脱顆粒にも炎症性サイトカイン(IFN−γ、TNFα)の生成にも影響を及ぼさなかった。エフェクター機能の活性化及び誘発の後、Vγ9Vδ2 T細胞は速やかな増殖を行う。次に、BTLAがこの増殖に影響を及ぼし得るかを調べた。高度に精製されたVγ9Vδ2 T細胞を、IL−2+BrHPPによって刺激し、それらの増殖能を、BTLA発現のモニタリングと共にCFSE希釈によって評価した。興味深いことに、最高の増殖潜在性を有するVγ9Vδ2 T細胞のサブセットは、
図2で「γδ BTLA−」と命名されたBTLA陰性の集団であった。本発明者らは次に、BTLAに対して作られたmAb、又はそのリガンドである、本発明者らにより生成されたHVEMを用いて、増殖に関するBTLA−HVEM相互作用の役割を調べた。HVEM 11.8 mAbは、HVEM発現細胞へのBTLAの結合を効率的に高めたが、HVEM 18.10 mAbはこの相互作用を効率的に遮断するその能力(
図3)で選択されたものであり、それゆえこれまでに記載されたアンタゴニストのBTLA 8.2と同様の効果を有している。BTLAに対するHVEM結合部位はほぼ排他的にCRD1からの残基を含んでいるので、本発明者らは2つのHVEM−FC変異体、すなわち、BTLAと相互作用能力を喪失したものであるHVEM−ΔCRD1(CRD1ドメインを欠失)、及び変異の結果BTLA親和性の10倍低下を起こしたものであるHVEM−V74A(HVEM残基Val36のアラニンへの変異)を生成した。BTLAをそのリガンドであるHVEM(HVEM−Fc)により会合させると、本発明者らはIL−2+BrHPP 261によって誘発されるVγ9Vδ2 T細胞増殖の有意な阻害を観察した(
図3)。逆に、BTLA−HVEM相互作用をアンタゴニストであるmAb(BTLA 8.2及びHVEM 18.10)で遮断すると、IL−2+BrHPPによって誘発される増殖の有意な増加が引き起こされる結果となった(
図3、右側ヒストグラム)。重要なことに、BTLA 8.2又はHVEM 18.10 mAbの遮断効果は、BrHPPによるTCR刺激なしでも観察され(IL−2単独、
図3、左側ヒストグラム)、BTLAの負の役割は、TCRシグナル伝達経路に依存的でないかもしれないことを強調している。対照として、HVEM−Fcの2つの変異体には、Vγ9Vδ2 T細胞増殖に対して効果がなかった。これらのデータは、BTLA−HVEM相互作用がVγ9Vδ2 T細胞増殖の負の調節に関与する主たる経路であることを示した。BTLA発現はVγ9Vδ2 T細胞分化の間にモジュレーションを受けたので、本発明者らは、BTLAによる増殖の阻害がVγ9Vδ2 T細胞の異なる分化段階間で相違し得ると仮定した。Vγ9Vδ2 T細胞全体をCD45RA及びCD27発現に基づくフローサイトメトリーにより選別して、IL−2+BrHPPと5日間培養した。BTLA−HVEM相互作用は同様に、ナイーブ細胞、及び既にAgと遭遇している細胞の増殖及び活性化共の影響を及ぼした。興味深いことに、BTLAへのHVEMのより良好な結合は、ナイーブ及びCM細胞の転移をエフェクター細胞に限定していた。
【0158】
まとめると、これらのデータは、Vγ9Vδ2 T細胞増殖、活性化及び分化のレギュレーターとしてのBTLAの役割を裏付けるものである。
【0159】
BTLA−HVEM相互作用は部分的なS期停止を誘発する
前記の結果は、B7−CTLA−4経路のように、BTLA−HVEM相互作用は細胞周期の調節を介してVγ9Vδ2 T細胞免疫応答に対して主たる効果を奏するのかもしれないことを示唆していた。IL−2+BrHPPで刺激されたVγ9Vδ2 T細胞の、アゴニスト性の抗HVEM mAbでの処理の結果、抗IgG1で処理されたVγ9Vδ2 T細胞と比べて、S期の表現型的にナイーブ細胞の百分率が有意に高くなった(p=0.0024;
図4)。subG0細胞(アポトーシスを起こした細胞)の百分率はBTLAの会合により影響を受けず、mAbに72時間暴露した後、Vγ9Vδ2 T細胞はアポトーシスを行わないことを示唆している。逆に、BTLA会合の遮断の結果、S期の細胞の百分率の僅かであるが有意な(p=0.0049)減少と、G2/M期の細胞の百分率の増加(p=0.0005)が引き起こされた(
図4)。まとめると、これらのデータは、BTLA会合が部分的なS期停止の結果、Vγ9Vδ2 T細胞増殖能を減じることを示していた。
【0160】
BTLA−HVEM遮断は、HVEM+リンパ腫細胞との共培養におけるVγ9Vδ2 T細胞増殖を高める
HVEMが他の免疫細胞によって(とりわけB細胞によって、また腫瘍細胞によっても)広く発現される限りにおいて、本発明者らは次に、HVEMを発現している腫瘍細胞がVγ9Vδ2 T細胞増殖に影響を及ぼし得るかにつき疑問視した。先ず最初に、本発明者らは2種のFL細胞株、すなわち、RL及びKarpas−422を用いた。これらの2種の細胞株は、HVEMを発現したがCD160及びLIGHTは発現しなかった。照射を受けたFL細胞株を使用して又は使用せずに、CellTraceでラベルしたVγ9Vδ2 T細胞を、IL−2+BrHPPの非存在下又は存在下で5日間共インキュベーションした。本発明者らは先ず、BrHPPで処理されたVγ9Vδ2 T細胞単独(p=0.0117)の場合と比較して、BrHPPで処理されたVγ9Vδ2 T細胞におけるCellTrace希釈の有意な減少をリンパ腫細胞株が誘発することを観察した。アンタゴニストmAbでのBTLAの遮断は、Vγ9Vδ2 T細胞の増殖を著しく高めた。B細胞は大量のFcレセプターを発現しているが、抗BTLA 8.2のFabには、増殖と同様の増加がもたらされた。腫瘍微小環境におけるBTLA−HVEM相互作用を精査するために、本発明者らは、いくつかの型のリンパ腫の患者11名からのリンパ節を機械的に破壊して細胞を再懸濁させ、マルチパラメータのフローサイトメトリー分析を実施した。各試料につき、本発明者らは、新生物性細胞でのHVEM発現(NHLで69.3%±6.88)(
図5)、並びにNK細胞、αβT細胞及びγδ T細胞などの腫瘍微小環境に存在する細胞傷害性エフェクターでのBTLA、CD160及びLIGHTの発現(
図5)を評価した。本発明者らは、BTLAはT細胞区画に限局され(αβT細胞及びγδ T細胞でそれぞれ、59%±5.3及び57.7%±7.4)、これに対してCD160及びLIGHTは存在しないことを認めた。Vγ9Vδ2 T細胞はほとんどCM表現型のものであり、それらのBTLA発現プロファイルはHVのものと一致した。このように、BTLAは、腫瘍微小環境に存在するHVEMに対する主たるリガンドとして現れる。本発明者らは次に、Vγ9Vδ2 T細胞をCellTraceで染色して、HVEM又はBTLAに対して作られた遮断mAbの存在下又は非存在下で、自家リンパ腫細胞及びIL−2と共に5日間の共培養した後のそれらの増殖能を評価した。BTLA−HVEM相互作用の遮断の結果、Vγ9Vδ2 T細胞増殖の有意な増加がもたらされた(HVEM 18.10 p=0.0029;BTLA 8.2 p=0.0049又はFab BTLA 8.2 p=0.0078)。明らかに、本発明者らはαβ T細胞と同様の結果を認めた(
図6)。
【0161】
まとめると、これらのデータは、HVEM陽性リンパ腫細胞が、節内Vγ9Vδ2 T細胞の増殖をBTLA依存的に減じる潜在力を有することを示した。
【0162】
結論
コレセプターであるBTLAは、従来のαβ T細胞につき大規模に研究されており、T細胞活性化及び増殖を減じるものである。本発明者らは、BTLAがVγ9Vδ2 T細胞増殖分化の調節に関与することを初めて示した。加えて、BTLA−HVEM経路は、リンパ腫B細胞に対するVγ9Vδ2 T細胞増殖の制御の主たる作用因子である。これらの知見は、種々の疾患、ウイルス感染、及びガンの進行の経過途中のγδ T細胞応答の理解に対して強い意義を有する。これらの経路の操作は有効な腫瘍免疫療法を開発するのに重大である。
【0163】
本発明者らは、異なるヒト末梢血γδ T細胞サブセットでのBTLAの発現を初めて調べた。本発明者らは、休眠しているγδ T細胞が、特にナイーブ集団にてBTLAを高レベルで発現されることを観察した。しかしながらこの発現は、γδナイーブT細胞と比較して、CM及びEM段階でダウンレギュレーションされた。対照的に、PD−1は、Temh1 γδ T細胞サブセットで優先的に発現されている。さらに、PD−1発現は、TCR会合後にアップレギュレーションされ、これに対しBTLAの場合は急激にダウンモジュレーションされた。これらのデータは、BTLA及びPD−1の発現の異なる調節を明らかにし、これは異なる機能を反映し得る。たとえば、PD−1のアップレギュレーションは、免疫抗原接種後に続くT細胞免疫応答の収縮に関与し得ることを示唆している。対照的に、BTLAはICOS及びB7分子と同様に免疫応答開始のレギュレーターをもたらし得る。たとえば、アゴニスト性mAbとのBTLA−HVEMの相互作用を増強した結果、IL−2+BrHPP刺激後にアイソタイプ対照と比べてエフェクター細胞の百分率の25%の低減がもたらされた。この結果は、このコシグナル伝達経路が、ヒトγδ T細胞分化を制御し得ることを示す。したがって、最近のデータで、Th17分化に対するB7/CTLA−4相互作用の直接的な役割が示された。
【0164】
機能的観点から、本研究はBTLAはヒトγδ T細胞活性化に対する新しい阻害分子であることの証拠を提供する。このように、本発明者らは、BTLAは活性化されたγδ T細胞の表面でTCRに密接し、且つγδ T細胞とHVEM+標的細胞との間のシナプスで発現されることを示している。ウエスタンブロット解析で、γδ TCR近位シグナル伝達はBTLA遮断後に向上することが示され、γδ TCRシグナル伝達についてこれまでに記載されたとおり、γδ TCRシグナル伝達のリプレッサーとしてのBTLAを明らかにしている。決定的に、これらの新しい観察は、種々の自己免疫疾患の経過の間のγδ T細胞応答の反応速度論の理解を助け得るものであり、また反応中の炎症応答を支配するようにモジュレーションすることに着眼した治療的アプローチを開発するための基礎を提供し得る。この点、γδ T細胞によってHVEMも発現されていることに注目するのが重要である。それゆえ、γδ T細胞間のBTLA−HVEM相互作用は、「標的細胞」の非存在下で起こる。さらに、最近の研究で、HVEMとBTLAとはシスで相互作用し得ることが明らかになっている。それゆえ、遮断性抗BTLA抗体の単一試薬としての使用が、HVEM陽性パートナー細胞の非存在下に応答を誘発すると考えられる。
【0165】
TCRシグナル伝達に対するBTLA機能の結果として、本発明者らはBTLAγδ T細胞増殖を負に調節すること、及びγδ T細胞活性化の間のBTLA会合はS期での部分的な停止を誘発することを観察している。これらのデータは、γδ T細胞での以前に得られたデータと矛盾しない。γδ T細胞応答の誘導は、αβ T細胞の場合と同様、強い増殖に関連している。
【0166】
これらの データは、BTLAが、この初期事象の調節に関与し得ることを示している。
【0167】
Vγ9Vδ2 T細胞は、強く活性化されてリンパ腫細胞を殺傷する。γδT細胞の抗腫瘍性活性は、細胞間細胞接触に大きく依存し、共刺激性及び阻害性シグナルによるそれらの調節は、腫瘍に対するγδ T細胞応答を防ぐうえで役割を果たし得る。本発明者らはリンパ腫組織試料中でVγ9Vδ2 T細胞の存在数は少なく、したがっておそらくは、腫瘍進行の効率的な制御を行うために高度の増殖が必要であることを観察した。本発明者らは、BTLA−HVEM相互作用の遮断によって、同種異系及び自系のHVEM+リンパ腫細胞との共培養状態のγδT細胞の、より良好な自発的又はTCR誘発性の増殖が可能とすることを見出した。
【0168】
これらのデータは、リンパ腫細胞が、BTLA−HVEM依存性の経路を用いてγδ T細胞増殖に対する制御力を発揮し得ることを示す。注目すべき近年の報告は、濾胞性リンパ腫組織におけるHVEM/TNFRSF14での機能変異の頻回喪失を報告している。Launay et al.は、より良好な予後と相関する、TNFRSF14 遺伝子におけるいくつかの変異を同定している。これらのデータは、腫瘍微小環境におけるBTLA−HVEM相互作用の喪失が、T細胞増殖に遊離に働き得ることを示している。しかしながら、リンパ腫患者におけるTNFRSF14変異の診断的価値は依然として意見のわかれるところであるので、この推定モデルを確かなものとするには、さらなる研究が必要とされる。HVEM変異リンパ腫患者と非変異リンパ腫患者との間の腫瘍内γδ T細胞の増殖能を比較する統計的解析を実施するのに、さらに大きな系も必要である。結局、これらのデータは、腫瘍細胞がγδ T細胞媒介性免疫応答から逃れるための、新規な以前には報告されたことのない経路を示す。
【0169】
このように、本発明は血液学的悪性病変、固形腫瘍、自己免疫疾患又は感染を処置するための非常に有望な手法を提供する。
【0170】
実施例2:HVEMは固形腫瘍上で発現される
1.A.前立腺、黒色腫及び乳ガン細胞株でのQRT−PCRによるHVEM発現
本発明者らは、異なる固形腫瘍の大きな範囲を示している、固形腫瘍の種々の及び異なる系を試験した。
【0171】
より具体的には、本発明者らは以下からの種々の細胞株を使用した。
− 前立腺ガン、
− 乳ガン、及び
− 黒色腫。
【0172】
QRT−PCRを使用することにより、本発明者らはHVEM転写物が固形腫瘍(前立腺ガン、黒色腫及び乳ガンからの種々の細胞株を試験した)に不均一に発現されていることを観察した。
【0173】
デルタCtが低いほど、遺伝子発現は高い。
図7の左パネルは、各細胞株に対し、HVEM デルタCt対ハウスキーピング遺伝子GAPDHを示す。
図7の右パネルは、病状による平均の発現を示す。
【0174】
結論として、HVEM転写物は、黒色腫、次いで前立腺ガン及び乳ガンで示されるように、腫瘍細胞株で異なって発現される。
【0175】
2.免疫組織化学によるHVEM発現
本発明者らはさらに、抗HVEM 12.13抗体を用い、膵臓腫瘍、乳房腫瘍及び前立腺腫瘍からのTissue Micro ArrayでのHVEMタンパク質発現を評価する。本発明者らはこのようにして、免疫組織化学により、HVEMタンパク質が膵臓ガン、乳ガン及び前立腺ガン患者からの腫瘍細胞で発現されていることを観察した。
【0176】
3.フローサイトメトリーによるHVEM発現
細胞株でのフローサイトメトリーにより、本発明者らはHVEMは2種の前立腺腫瘍細胞株(PC3及びDU145)の細胞表面で発現されることを観察した。本発明者らはさらに、HVEMリガンド(BTLA、CD160及びLIGHT)の発現を分析したが、これらは非常に低いか又は検出されなかった(
図8)。
【0177】
4.患者からの原発性前立腺腫瘍(生検切裂後)でのHVEM発現
HVEMタンパク質発現を、組織切裂後の原発性前立腺腫瘍で評価した。前立腺腫瘍 生検は、RPMI培地中でメスを使用して機械的に破壊した。得られた細胞懸濁液を、70μm及び30μm セルストレーナー(Miltenyi Biotec)を連続的に通して濾過した。抗HVEM 11.8抗体を用い、腫瘍細胞(第細胞CD3−)をHVEMの発現につきフローサイトメトリーにより分析した。
【0178】
患者からの腫瘍でのフローサイトメトリーにより、本発明者らは、CD3発現に対して陰性の大FSC/SSC細胞として定義される腫瘍細胞でHVEMが発現される(リンパ球を除く)ことを観察した。
【0179】
実施例3:γδ T細胞増殖に対するHVEM/BTLA遮断の効果
1.HVEM/BTLA遮断はγδ T細胞の増殖を増強する
本発明者らは、健康なドナーからのγδ T細胞を単離及び精製し、Cell Trace Violetで染色して、200UI/ml IL2を使用し、低用量BrHPP(50nM)、±20μg/ml 抗BTLA 8.2、HVEM 18.10、若しくはアイソタイプの対照を使用して又は使用せずに5日間培養した。第5日に、γδ T細胞増殖をCell Trace Violet希釈(フローサイトメトリー)により定量し、γδ T細胞のうち分裂細胞の百分率として表した(n=10)。
【0180】
本発明者らは、HVEM/BTLAの抗BTLA 8.2又はHVEM 18.10抗体との相互作用の遮断が、有意にγδ T細胞の増殖を高める(
図9)ことを観察した。
【0181】
これは、HVEM/BTLA経路がγδ Tリンパ球の増殖を阻害することにより、それらの調節に関与すること、遮断mAbの使用がγδ T増殖を回復又は増強させ得ることを示す。
【0182】
2.HVEM/BTLA遮断は、異なる前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145及びLNCaP)で効率的である
前記と同じプロトコルを適用するが、Cell Trace Violet染色の後、γδ T細胞を前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145及びLNCaP)と共培養した。
【0183】
本発明者らは、γδ T細胞でHVEM/BTLA相互作用を遮断することはそれらの増殖を高め、そしてこの効果はγδ T細胞単独の条件よりも前立腺腫瘍細胞株(PC3、DU145又はLNCaP)との共培養条件でなお一層大きいことを示した(
図10)。
【0184】
以上の結果、本発明者らは、BTLA/HVEM相互作用のアンタゴニストは、固形腫瘍の処置に非常に有用であることを示している。