(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564774
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ブレーキシステム及びブレーキ制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/30 20060101AFI20190808BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20190808BHJP
B62D 61/12 20060101ALI20190808BHJP
B62D 43/06 20060101ALI20190808BHJP
B62D 53/06 20060101ALI20190808BHJP
B62D 53/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
B60T8/30 H
B60T8/30 G
B60T17/00 B
B62D61/12
B62D43/06
B62D53/06 Z
B62D53/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-529603(P2016-529603)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2015068069
(87)【国際公開番号】WO2015199083
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-128763(P2014-128763)
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】湊 一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】除田 和也
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−205524(JP,A)
【文献】
特開2011−162128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/30
B60T 17/00
B62D 43/06
B62D 53/04
B62D 53/06
B62D 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えた車両を制動するサービスブレーキ及びパーキングブレーキを備えるブレーキシステムにおいて、
前記リフトアクスルを有する車軸に作用するサービスブレーキへの圧縮空気の供給とパーキングブレーキへの圧縮空気の供給との少なくとも一方を遮断するブレーキ遮断装置と、
前記ブレーキ遮断装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記リフトアクスルによって車軸が上昇位置にあるときに、前記ブレーキ遮断装置を作動させる
ことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキシステムにおいて、
前記制御装置は、相互接続された機器のデータを転送する車載ネットワークに接続され、当該車載ネットワークを経由して前記リフトアクスルの作動情報を取得する
ことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、ブレーキシステムに供給される圧縮空気を乾燥するエアドライヤに設けられる
請求項1又は2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記サービスブレーキを制御するための、電子制御ブレーキシステムの制御装置、アンチロックブレーキシステムの制御装置、トラクションコントロールシステムの制御装置のいずれかを共用する
請求項1又は2に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記パーキングブレーキを制御する電動パーキングブレーキの制御装置を共用する
請求項1又は2に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記ブレーキ遮断装置は、サービスブレーキ又はパーキングブレーキに圧縮空気を供給する供給路に設けられるソレノイドバルブである
請求項1〜5のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えた車両を制動するサービスブレーキ及びパーキングブレーキを備えるブレーキシステムのブレーキ制御方法であって、
前記ブレーキシステムは、前記リフトアクスルを有する車軸に作用するサービスブレーキへの圧縮空気の供給とパーキングブレーキへの圧縮空気の供給との少なくとも一方を遮断するブレーキ遮断装置と、
前記ブレーキ遮断装置を制御する制御装置と、を備え、
前記リフトアクスルによって車軸が上昇位置にあるときに、前記制御装置が前記ブレーキ遮断装置を作動させる
ことを特徴とするブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えた車両用のブレーキシステム及びブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物輸送用の車両には、駆動源を備えたトラクタと、トラクタに牽引されるトレーラとを備えた連結車両がある。トレーラは、カプラによってトラクタに連結される。
大型のトレーラには、両端に車輪が設けられた車軸が複数本設けられている。これにより、トレーラの荷台に最大積載量の貨物が積載されたときなど積載量が多い状態でトレーラが走行するときには、各車輪の接地圧を所定値以下にすることができる。しかしながら、貨物が積載されていない状態や積載量が少ない状態でトレーラが走行するときには、全ての車輪を接地させて走行することは、燃費増大や路面摩耗が発生することになる。
【0003】
そこで、トレーラに設けられた複数本の車軸のうちいずれかの車軸として昇降可能な車軸を採用し、この昇降可能な車軸を貨物の積載量に応じて上昇させて、その車軸に設けられた車輪を路面から引き上げるリフトアクスルが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−27324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のリフトアクスルを備えたトレーラでは、上昇可能な車軸の車輪が接地しない状態でも、上昇可能な車軸のサービスブレーキやパーキングブレーキに対し圧縮空気の充填と排気とが行われている。このため、上記のリフトアクスルを備えた車両のブレーキシステムでは、制動力を発生させない車軸においても圧縮空気が無駄に消費されている。そこで、リフトアクスル時の無駄な圧縮空気の消費を抑制することが求められている。なお、こうした課題は、トレーラに限らず、リフトアクスルを備えた車両においては概ね共通したものである。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リフトアクスル時の無駄な圧縮空気の消費を抑制することができるブレーキシステム及びブレーキ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決するブレーキシステムは、車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えた車両を制動するサービスブレーキ及びパーキングブレーキを備えるブレーキシステムにおいて、前記リフトアクスルを有する車軸に作用するサービスブレーキへの圧縮空気の供給とパーキングブレーキへの圧縮空気の供給との少なくとも一方を遮断するブレーキ遮断装置と、前記ブレーキ遮断装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記リフトアクスルによって車軸が上昇位置にあるときに、前記ブレーキ遮断装置を作動させることをその要旨としている。
【0008】
上記課題を解決するブレーキ制御方法は、車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えた車両を制動するサービスブレーキ及びパーキングブレーキを備えるブレーキシステムのブレーキ制御方法であって、前記ブレーキシステムは、前記リフトアクスルを有する車軸に作用するサービスブレーキへの圧縮空気の供給とパーキングブレーキへの圧縮空気の供給との少なくとも一方を遮断するブレーキ遮断装置と、前記ブレーキ遮断装置を制御する制御装置と、を備え、前記リフトアクスルによって車軸が上昇位置にあるときに、前記制御装置が前記ブレーキ遮断装置を作動させることをその要旨としている。
【0009】
上記構成もしくは方法によれば、リフトアクスルによって上昇位置にある車軸に対してブレーキ遮断装置を作動させ、サービスブレーキとパーキングブレーキとの少なくとも一方への圧縮空気の供給を遮断する。車軸の上昇により接地していない車輪に対して制動力は必要ないので、上昇した車軸のブレーキに対する圧縮空気の供給を遮断することで無駄な圧縮空気の消費を抑制することができる。
【0010】
上記ブレーキシステムについて、前記制御装置は、相互接続された機器のデータを転送する車載ネットワークに接続され、当該車載ネットワークを経由して前記リフトアクスルの作動情報を取得することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、車載ネットワークを介して制御装置がリフトアクスルの作動情報を容易に取得することができる。
上記ブレーキシステムについて、前記制御装置は、ブレーキシステムに供給される圧縮空気を乾燥するエアドライヤに設けられることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、ブレーキシステムの近傍に位置するエアドライヤに設けられる制御装置がエアドライヤを制御することに加えてブレーキ遮断装置も制御するので、ブレーキシステム及びエアドライヤを同一の制御装置でまとめて制御することができる。
【0013】
上記ブレーキシステムについて、前記制御装置として、前記サービスブレーキを制御するための、電子制御ブレーキシステムの制御装置、アンチロックブレーキシステムの制御装置、トラクションコントロールシステムの制御装置のいずれかを共用することが好ましい。
【0014】
上記構成では、電子制御ブレーキシステムの制御装置、アンチロックブレーキシステムの制御装置、トラクションコントロールシステムの制御装置のいずれかがブレーキ遮断装置を制御する。このため、既設のサービスブレーキの制御システムを利用して、サービスブレーキへの圧縮空気の供給を遮断することができる。
【0015】
上記ブレーキシステムについて、前記制御装置として、前記パーキングブレーキを制御する電動パーキングブレーキの制御装置を共用することが好ましい。
上記構成では、電動パーキングブレーキの制御装置がブレーキ遮断装置を制御する。このため、既設の制御システムを利用して、パーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断することができる。
【0016】
上記ブレーキシステムについて、前記ブレーキ遮断装置は、サービスブレーキ又はパーキングブレーキに圧縮空気を供給する供給路に設けられるソレノイドバルブであることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ソレノイドバルブに制御装置が通電することで容易に圧縮空気の供給を遮断することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リフトアクスル時の無駄な圧縮空気の消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態におけるブレーキシステムの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1を参照して、ブレーキシステム及びブレーキ制御方法を連結車両のブレーキシステムに具体化した一実施形態について説明する。ブレーキシステムは、圧縮乾燥空気を駆動源とするエアブレーキとしてパーキングブレーキとサービスブレーキとの両方を備えている。連結車両は、トラクタ1にトレーラ2が連結された車両である。
【0021】
図1に示すように、トレーラ2を牽引するトラクタ1には、前輪の車軸WF及び後輪の車軸WRが設けられている。トラクタ1の前輪の車軸WFの各車輪には、サービスブレーキ(SB:Service Brake)のみを提供するサービスブレーキチャンバー6が設置されている。後輪の車軸WRの各車輪には、サービスブレーキ(SB)及びパーキングブレーキ(PB:Parking Brake)を提供するスプリングブレーキチャンバー7が設置されている。トレーラ2には、第1の車軸W1と第2の車軸W2との2個の車軸が設けられている。トレーラ2の各車輪には、サービスブレーキ(SB)及びパーキングブレーキ(PB)を提供するスプリングブレーキチャンバー7が設置されている。
【0022】
また、トラクタ1は、エアドライヤ5を備えている。エアドライヤ5は、図示しないコンプレッサから供給される圧縮空気を乾燥させ、図示しないタンクを介してサービスブレーキチャンバー6やスプリングブレーキチャンバー7に圧縮乾燥空気を供給する。
【0023】
各車軸WR,W1,W2には、パーキングブレーキを動作させる駆動部12が設けられている。駆動部12は、エアドライヤ5に設けられた制御装置としてのエアドライヤECU(Electronic Control Unit)11によって制御され、エアドライヤ5から圧縮乾燥空気が供給される。駆動部12は、ソレノイドバルブを備える。エアドライヤECU11がソレノイドバルブに通電することで駆動部12は制御される。なお、トレーラ2の駆動部12には、トレーラ制御バルブTCVを介してエアドライヤ5から圧縮乾燥空気が供給される。トレーラ制御バルブTCVは、サービスブレーキを制御する圧縮乾燥空気と、パーキングブレーキを制御する圧縮乾燥空気とをトレーラ2に送出するバルブである。
【0024】
駆動部12には、スプリングブレーキチャンバー7のパーキングブレーキを制御する第2制御室7bが接続されている。駆動部12は、スプリングブレーキチャンバー7の第2制御室7bに圧縮乾燥空気を供給する。スプリングブレーキチャンバー7では、第2制御室7bに圧縮乾燥空気が充填されるとパーキングブレーキが解除される一方、第2制御室7bから圧縮乾燥空気が排出されると、ばねによってパーキングブレーキが作動される。
【0025】
エアドライヤ5には、圧力制御バルブPCVを介してスプリングブレーキチャンバー7のサービスブレーキを制御する第1制御室7aが車軸毎に接続されている。エアドライヤ5は、スプリングブレーキチャンバー7の第1制御室7aに圧縮乾燥空気を供給する。スプリングブレーキチャンバー7では、第1制御室7aに圧縮乾燥空気が充填されるとサービスブレーキが作動される一方、第1制御室7aから圧縮乾燥空気が排出されるとサービスブレーキが解除される。
【0026】
圧力制御バルブPCVは、圧力を制御することでサービスブレーキの効き具合を制御することができる。圧力制御バルブPCVは、電子制御ブレーキシステム(EBS:Electronic Brake System)の制御装置であるEBSECU30によって制御される。圧力制御バルブPCVは、ソレノイドバルブを備える。EBSECU30がソレノイドバルブに通電することで圧力制御バルブPCVは制御される。EBSECU30は、ブレーキペダルが踏まれると、前後輪の回転数や旋回状態に基づいて制動力を車輪に対して最適に制御及び配分するように、圧力制御バルブPCVを制御する。
【0027】
エアドライヤECU11及びEBSECU30は、相互接続された機器のデータを転送するCAN等の車載ネットワークNWを介して接続されている。また、表示ECU20は、車載ネットワークNWを介してエアドライヤECU11及びEBSECU30に接続されている。表示ECU20は、表示装置22を制御する。例えば、表示ECU20は、パーキングブレーキが作動しているときには、パーキングブレーキの作動を示すマーク等の表示を表示装置22に表示させる。表示ECU20には、電動パーキングブレーキスイッチ(EPBSW)21が接続されている。EPBSW21は、EPBSW21が操作されると、電気信号を表示ECU20に出力する。表示ECU20は、EPBSW21の操作に応じた電気信号をEBSECU30に出力する。EBSECU30は、EPBSW21の操作に応じてサービスブレーキを制御する。
【0028】
本実施形態のトレーラ2は、車輪が接地しない上昇位置と車輪が接地する下降位置との間で車軸を昇降可能なリフトアクスルを備えている。リフトアクスルは、貨物が積載されていない状態や積載量が少ない状態であるときに、昇降可能な車軸を上昇させて、その車軸に設けられた車輪を路面から引き上げる。昇降可能な車軸は、トレーラ2の第1の車軸W1である。トレーラ2に設けられたリフトアクスルSW40が操作されると、第1の車軸W1が上昇し、第1の車軸W1の車輪が接地しなくなる。リフトアクスルSW40は、EBSECU30に電気的に接続されている。エアドライヤECU11は、車載ネットワークNWを介してリフトアクスルの作動情報を取得する。
【0029】
本実施形態のブレーキシステムでは、リフトアクスルを有する第1の車軸W1に作用するサービスブレーキへの圧縮乾燥空気の供給とパーキングブレーキへの圧縮乾燥空気の供給とをそれぞれ遮断するブレーキ遮断装置と、ブレーキ遮断装置を制御する制御装置と、を備えている。すなわち、サービスブレーキへの圧縮乾燥空気を供給するブレーキ遮断装置はスプリングブレーキチャンバー7の第1制御室7aに圧縮乾燥空気を供給する圧力制御バルブPCVであり、ブレーキ遮断装置である圧力制御バルブPCVを制御する制御装置はEBSECU30である。また、パーキングブレーキへの圧縮乾燥空気を供給するブレーキ遮断装置はスプリングブレーキチャンバー7の第2制御室7bに圧縮乾燥空気を供給する駆動部12であり、ブレーキ遮断装置である駆動部12を制御する制御装置はエアドライヤECU11である。
【0030】
昇降可能な第1の車軸W1の車輪が接地しているときには、EBSECU30は、ブレーキペダルの踏み込み操作に応じて、各車軸WF,WR,W1,W2の圧力制御バルブPCVを介してサービスブレーキを作動させる。エアドライヤECU11は、EPBSW21の操作に応じて、各車軸WR,W1,W2の駆動部12を介してパーキングブレーキを作動させる。
【0031】
一方、車載ネットワークNWを介して取得したリフト作動情報に基づき、昇降可能な第1の車軸W1が上昇されて第1の車軸W1の車輪が接地していないと判断したときには、EBSECU30は、ブレーキペダルの踏み込み操作に関係なく、第1の車軸W1の圧力制御バルブPCVからサービスブレーキを制御する第1制御室7aへの圧縮乾燥空気の供給を遮断させる。なお、EBSECU30は、第1の車軸W1以外の各車軸WF,WR,W2においては、ブレーキペダルの踏み込み操作に応じて圧力制御バルブPCVからサービスブレーキを制御する第1制御室7aへ圧縮乾燥空気を供給させ、サービスブレーキを作動させる。また、車載ネットワークNWを介して取得したリフト作動情報に基づき、昇降可能な第1の車軸W1が上昇されて第1の車軸W1の車輪が接地していないと判断したときには、エアドライヤECU11は、EPBSW21の操作に関係なく、第1の車軸W1の駆動部12からパーキングブレーキを制御する第2制御室7bへの圧縮乾燥空気の供給を遮断させる。なお、エアドライヤECU11は、第1の車軸W1以外の各車軸WF,WR,W2においては、EPBSW21の操作に応じて駆動部12からパーキングブレーキを制御する第2制御室7bへ圧縮乾燥空気を供給させ、パーキングブレーキを作動させる。
【0032】
このように、本実施形態のブレーキシステムでは、リフトアクスルを有するトレーラ2の第1の車軸W1が上昇した際に、第1の車軸W1のサービスブレーキ及びパーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断するので、接地していない車輪を有する車軸における無駄な圧縮空気の消費を抑制することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)リフトアクスルによって上昇位置にある第1の車軸W1に対してブレーキ遮断装置である圧力制御バルブPCVと駆動部12とを作動させ、サービスブレーキ及びパーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断する。車軸の上昇により接地していない車輪に対して制動力は必要ないので、上昇した車軸のブレーキに対する圧縮空気の供給を遮断することで無駄な圧縮空気の消費を抑制することができる。
【0034】
(2)車載ネットワークNWを介してEBSECU30とエアドライヤECU11とがリフトアクスルの作動情報を容易に取得することができる。
(3)ブレーキシステムの近傍に位置するエアドライヤに設けられる制御装置がエアドライヤを制御することに加えてブレーキ遮断装置も制御するので、ブレーキシステム及びエアドライヤを同一の制御装置でまとめて制御することができる。
【0035】
(4)EBSECU30が圧力制御バルブPCVを制御する。このため、EBSECU30が有するサービスブレーキの制御機構を使って、サービスブレーキへの圧縮空気の供給を遮断することができる。
【0036】
(5)電動パーキングブレーキ(EPB)の制御装置であるエアドライヤECU11が駆動部12を制御する。このため、エアドライヤECU11が有するパーキングブレーキの制御機構を使って、パーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断することができる。
【0037】
(6)駆動部12のソレノイドバルブにエアドライヤECU11が通電することで容易に圧縮空気の供給を遮断することができる。また、圧力制御バルブPCVのソレノイドバルブにEBSECU30が通電することで容易に圧縮空気の供給を遮断することができる。
【0038】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・昇降可能な第1の車軸W1が上昇したとき、第1の車軸W1の車輪にサービスブレーキ又はパーキングブレーキによって制動力が付与された後に、第1制御室7a及び第2制御室7bへの圧縮乾燥空気の供給が遮断されるようにしてもよい。このようにすることで、上昇位置にある車輪の回転を抑制することができる。例えば、リフトアクスルスイッチSWが操作されて第1の車軸W1が上昇したとき、EBSECU30は、第1の車軸W1の第1制御室7aに圧縮乾燥空気が充填されてサービスブレーキが作動しているか否かを判断する。EBSECU30は、サービスブレーキが作動していると判断した場合には、そのまま第1制御室7aに対する空気の供給及び排出を停止する。また、EBSECU30は、サービスブレーキが作動していないと判断した場合には、第1制御室7aへ圧縮乾燥空気を充填した後、第1制御室7aに対する空気の供給及び排出を停止する。なお、第1制御室7aに対する空気の供給及び排出を停止する前に、第1の車軸W1の車輪の制動力がサービスブレーキによる最大の制動力よりも小さい所定の制動力になるように、第1制御室7aの空気の充填量を調整してもよい。所定の制動力は、例えば、リフトアクスルした車輪が突状に盛り上がった路面に当たった場合に回転することができるような制動力である。このようにすると、リフトアスクルした車輪が路面に当たっても、当該車輪が回転することによってサービスブレーキ機構を構成する部品にかかる負荷を低減することができる。或いは、リフトアクスルスイッチSWが操作されて第1の車軸W1が上昇したとき、エアドライヤECU11は、第1の車軸W1の第2制御室7bから圧縮乾燥空気が排出されてパーキングブレーキが作動しているか否かを判断する。エアドライヤECU11は、第2制御室7bから圧縮乾燥空気が排出されておりパーキングブレーキが作動していると判断した場合には、そのまま第2制御室7bに対する空気の供給を停止する。また、エアドライヤECU11は、パーキングブレーキ11が作動していないと判断した場合には、第2制御室7bから圧縮乾燥空気を排出した後、第2制御室7bに対する空気の供給を停止する。なお、パーキングブレーキが作動していなければリフトアスクルスイッチSWが操作できない場合など、サービスブレーキ又はパーキングブレーキの作動状態を判断する必要がない場合には、これを省略してもよい。また、通常、リフトアスクルスイッチSWが操作された後、リフトアスクルの動作が開始してから、第1の車軸W1の車輪にサービスブレーキ又はパーキングブレーキによって制動力が付与される。しかしながら、例えば、車両が停車している場合には、第1の車軸W1のリフトアスクルの動作が開始される前に第1の車軸W1の車輪に制動力が付与されてもよい。
【0039】
・スプリングブレーキチャンバー7の第1制御室7aは、圧縮乾燥空気を排出することによってサービスブレーキを作動させ、圧縮乾燥空気が充填されることによってサービスブレーキが解除される構成であってもよい。また、スプリングブレーキチャンバー7の第2制御室7bは、圧縮乾燥空気を充填することによってパーキングブレーキを作動させ、圧縮乾燥空気が排出されることによってパーキングブレーキを解除する構成であってもよい。
【0040】
・上記実施形態では、エアドライヤECU11が駆動部12によってパーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断したが、他のECUが駆動部12によってパーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断してもよい。例えば、EBSECUや、別途設けられた電動パーキングブレーキシステム(EPB)用のECU、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)のECU、トラクションコントロールシステム(TCS:Traction Control System)のECUが駆動部12によってパーキングブレーキへの圧縮空気の供給を遮断する。
【0041】
・上記実施形態では、EBSECU30が圧力制御バルブPCVによってサービスブレーキへの圧縮空気の供給を遮断したが、他のECUが圧力制御バルブPCVによってサービスブレーキへの圧縮空気の供給を遮断してもよい。例えば、エアドライヤECUや、別途設けられた電動パーキングブレーキシステム(EPB)用のECU、アンチロックブレーキシステム(ABS)のECU、トラクションコントロールシステム(TCS)のECUが圧力制御バルブPCVによってサービスブレーキへの圧縮空気の供給を遮断する。
【0042】
・上記実施形態では、各車軸W1,W2,WF,WRのサービスブレーキチャンバー6やスプリングブレーキチャンバー7に対して車軸W1,W2,WF,WR毎にまとめてブレーキを制御したが、各車軸W1,W2,WF,WRの左右のブレーキを別々に制御してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、2個の車軸W1,W2を備えたトレーラ2の第1の車軸W1を上昇させたが、3個以上の車軸を備えたトレーラにおいて複数の車軸が上昇する場合には、当該上昇する車軸の少なくとも1つのサービスブレーキ及びパーキングブレーキへの圧縮乾燥空気の供給を停止してもよい。このようにすれば、無駄な圧縮空気の消費を抑制することができる。
【0044】
・上記実施形態では、上昇する車軸に設置されたサービスブレーキとパーキングブレーキとの両方に対して上昇位置にあるときに圧縮乾燥空気の供給を停止した。しかしながら、上昇する車軸に設置されたサービスブレーキとパーキングブレーキとのいずれか一方に対してのみ上昇位置にあるときに圧縮乾燥空気の供給を停止してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、リフトアクスルを有するトレーラ2の上昇する第1の車軸W1においてサービスブレーキとパーキングブレーキを有するスプリングブレーキチャンバー7を備えた。しかしながら、トレーラ2の上昇する第1の車軸W1においては、パーキングブレーキを有さず、サービスブレーキのみを有するサービスブレーキチャンバー6を備えてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、リフトアクスルを有するトラクタ1であれば、トラクタ1の上昇する車軸において、サービスブレーキ及びパーキングブレーキの少なくとも一方に対して上昇位置にあるときに圧縮乾燥空気の供給を停止してもよい。
【0047】
・上記実施形態では、車載ネットワークNW経由でリフトアクスルの作動情報を取得したが、車載ネットワークNWを介さずリフトアクスルの作動情報を直接取得してもよい。例えば、リフトアクスルを実行する制御装置から作動情報を直接取得する。また、車輪の近傍に設けられ、車輪の接地を検出するセンサ等から作動情報を取得してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、ブレーキシステム及びブレーキ制御方法を、牽引車であるトラクタ1及び被牽引車であるトレーラ2を備えた連結車両に適用したが、リフトアクスルを備えている車両であれば、牽引車と被牽引車とに分割されない一体型の車両、例えば、バス、トラックなどに適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…トラクタ、2…トレーラ、3…エンジン、4…コンプレッサ、5…エアドライヤ、6…サービスブレーキチャンバー、7…スプリングブレーキチャンバー、7a…第1制御室、7b…第2制御室、11…エアドライヤECU、12…駆動部、20…表示ECU、21…EPBSW、22…表示装置、30…EBSECU、40…リフトアクスルSW、NW…車載ネットワーク、PCV…圧力制御バルブ、TCV…トレーラ制御バルブ、W1…第1の車軸、W2…第2の車軸、WF…前輪の車軸、WR…後輪の車軸。