特許第6564779号(P6564779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564779電気化学的リチウム電池の容量を再生するための方法、ならびに関連する電池筐体および電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564779
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】電気化学的リチウム電池の容量を再生するための方法、ならびに関連する電池筐体および電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20190808BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190808BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20190808BHJP
【FI】
   H01M10/42 P
   H01M2/02 F
   H01M10/48 P
   H01M10/0525
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-549128(P2016-549128)
(86)(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公表番号】特表2017-509110(P2017-509110A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】IB2015050611
(87)【国際公開番号】WO2015114517
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2018年1月15日
(31)【優先権主張番号】1450778
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド・ブラン−ビュイッソン
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・ジュニエ
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161625(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096834(WO,A1)
【文献】 特表2014−502006(JP,A)
【文献】 特開2008−171649(JP,A)
【文献】 特開2012−211075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0105007(US,A1)
【文献】 特開2013−191532(JP,A)
【文献】 特表2010−539657(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0075913(KR,A)
【文献】 特表2009−543294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0003490(US,A1)
【文献】 特開平08−167401(JP,A)
【文献】 特開2000−106152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00− 2/08
H01M 10/05−10/0587
H01M 10/36−10/39
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード(2)、アノード(3)、および前記アノードと前記カソードとの間の、電解質を含浸させたセパレータ(4)を含む少なくとも1つの電気化学セルと、電流コネクタの1つ(50)が前記アノードに接続され、電流コネクタのもう1つ(40)が前記カソードに接続される2つの電流コレクタと、出力端子を形成する前記電流コレクタの一部分が貫通しながらシール密封性を備えて前記電気化学セルを収納するように配置されるケーシング(6)とを含む、Liイオン蓄電池などのリチウム電気化学的蓄電池の容量を再生するための方法であって、
(a)リチウムイオンの総量を評価するステップと、
(b)リチウムイオンの前記評価された総量が、しきい値以下であるとき、前記ケーシングの脱リチオ化を引き起こすように、前記カソードまたはアノードと前記ケーシングとの間に電流を印加するステップとを含み、
前記ケーシングはさらに、一方では前記電気化学セルの前記アノードおよびカソード電極との、他方では前記ケーシングとの間に、電気絶縁性でもありかつイオン伝導性でもある要素(7)を収納するように配置され、前記ケーシングは、リチウムイオンを蓄えるための少なくとも1つのゾーン(61)を含む、方法。
【請求項2】
前記評価ステップ(a)は、参照電極の電位を測定することによって実行される、請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
前記評価ステップ(a)は、前記蓄電池の初期容量に関して容量差を測定することによって実行される、請求項1に記載の再生方法。
【請求項4】
前記評価ステップ(a)は、電気化学的インピーダンスを測定することによって実行される、請求項1に記載の再生方法。
【請求項5】
前記電流の前記印加ステップ(b)は、電子デバイスを用いた調節により実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の再生方法。
【請求項6】
前記電子デバイスは、再生される容量を決定するために、時間の関数として前記電流の積分を計算するのに適している、請求項5に記載の再生方法。
【請求項7】
カソード(2)、アノード(3)および前記アノードとカソードとの間の、電解質を含浸させたセパレータ(4)を含む少なくとも1つの電気化学セルCと、
電流コネクタの1つ(50)が前記アノードに接続され、電流コネクタのもう1つ(40)が前記カソードに接続される2つの電流コレクタと、
出力端子を形成する前記電流コレクタの一部分が貫通しながらシール密封性を備えて前記電気化学セルを収納するように配置されるケーシング(6)と
を含む、Liイオン蓄電池などのリチウム電気化学的蓄電池(A)であって、
前記ケーシングはさらに、一方では前記電気化学セルの前記アノードおよびカソード電極との、他方では前記ケーシングとの間に、電気絶縁性でもありかつイオン伝導性でもある要素(7)を収納するように配置され、前記ケーシングは、リチウムイオンを蓄えるための少なくとも1つのゾーン(61)を含む、リチウム電気化学的蓄電池(A)。
【請求項8】
前記ケーシングの材料は、xが0から1の間に含まれる化学式LiAlのリチウムアルミニウム合金である、請求項7に記載の蓄電池。
【請求項9】
化学式LiAlの前記リチウムアルミニウム合金は、アルミニウムで作られている基板の電気化学的リチオ化のプロセスによって得られる、請求項8に記載の蓄電池。
【請求項10】
前記ケーシングは、リチウムイオンの拡散に対する障壁を形成する拡散障壁層を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項11】
前記拡散障壁層は、酸化アルミニウムまたはアルミナAlで作られている、請求項10に記載の蓄電池。
【請求項12】
前記電気絶縁性でかつイオン伝導性の要素は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシエチレン(POE)およびポリエチレンテレフタレート(PET)から選択されるポリマー、またはポリプロピレン、ポリエチレンもしくはセルロースなどのポリオレフィンから選択されるポリマーで作られている少なくとも1つのフィルムから成る、請求項7から11のいずれか一項に記載の蓄電池。
【請求項13】
前記電気絶縁性でかつイオン伝導性の要素は、前記ケーシングの前記基板の内面に堆積される保護層である、請求項7から11のいずれか一項に記載の蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電極へのリチウムの挿入もしくは脱挿入、または言い換えればインターカレーション−デインターカレーションの原理に従って動作するリチウム電気化学的発電装置の分野に関する。
【0002】
本発明はより詳しくは、電解質を含浸させたセパレータの両側のアノード(負電極)およびカソード(正電極)から成る少なくとも1つの電気化学セルと、その1つがアノードに接続され、もう1つがカソードに接続される2つの電流コレクタと、また極とも呼ばれる出力端子を形成する電流コレクタの一部分が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルを収納するように配置されるケーシングとを含むLiイオン型のリチウム電気化学的蓄電池に関する。
【0003】
セパレータは、1つまたは複数のフィルムから成ることもある。
【0004】
本発明は、電気化学的発電装置の容量を再生するための方法を提供することを目標とする。
【0005】
「容量再生」によって、ここでかつ本発明の文脈で意味されるものは、その構成セルの電極の材料によって最初に設定される蓄電池の容量、すなわち1時間内に取り出し可能な初期電力レベルの再構成である。
【0006】
Liイオン蓄電池を参照して述べられるが、本発明は、任意のリチウム電気化学的蓄電池に当てはまる。
【背景技術】
【0007】
図1および図2に概略的に例示されるものなど、リチウムイオン蓄電池または電池Aは通常、正電極またはカソード2と負電極またはアノード3との間の、構成電解質を含浸させたセパレータ1から成る少なくとも1つの電気化学セルCと、カソード2に接続される電流コレクタ4と、アノード3に接続される電流コレクタ5と、最後に、出力端子を形成する電流コレクタ4、5の一部分が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルを含むように配置されるパッケージ6とを含む。
【0008】
従来のリチウムイオン電池のアーキテクチャは、アノード、カソードおよび電解質を含む単一の電気化学セルを有するので、単極性として認定されることもあるアーキテクチャである。いくつかの種類の単極性アーキテクチャの幾何学的形状は、知られており、
− 米国特許出願公開第2006/0121348号明細書において開示されるものなど円筒状の幾何学的形状、
− 米国特許第7348098号明細書および米国特許第7338733号明細書において開示されるものなどプリズム状の幾何学的形状、ならびに
− 米国特許出願公開第2008/060189号明細書および米国特許出願公開第2008/0057392号明細書ならびに米国特許第7335448号明細書において開示されるものなど積み重ねられた幾何学的形状である。
【0009】
構成電解質は、固体、液体またはゲルのこともある。液体またはゲルの形では、構成要素は、リチウムイオンが充電のためにカソードからアノードにかつ放電のためにその逆に移動することを可能にし、それによって電流を生成する、有機または液体イオン性電解質を吸収したポリマーまたは細孔性複合材料で作られている1つまたは複数のフィルムの形を取るセパレータを備えることもある。電解質は一般に、リチウム塩、典型的にはLiPFが追加される有機溶媒、例えば炭酸塩の混合物である。
【0010】
正電極またはカソード2は、リン酸鉄リチウムLiFePO、コバルト酸リチウムLiCoO、任意選択で置換リチウムマンガン酸化物LiMnもしくはLiNiMnCoただしx+y+z=1に基づく材料、例えばLiNi0.33Mn0.33Co0.33、またはLiNiCoAlただしx+y+z=1に基づく材料、LiMn、LiNiMnCoOもしくはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物LiNiCoAlOなどの、一般に複合材料であるリチウムカチオンの挿入材料から成る。
【0011】
負電極またはアノード3は非常にしばしば、カーボン、グラファイトから成り、またはLiTiO12(チタン酸塩材料)で作られているが、また任意選択でシリコンもしくはリチウムに、またはスズおよびその合金もしくはシリコンベースの複合材料にも基づいている。
【0012】
リチウム挿入材料で作られているアノード3およびカソード2は、電流コレクタを形成する金属シート上に活性層の形で従来技法を使用して堆積されることもある。
【0013】
正電極に接続される電流コレクタ4は、一般にアルミニウムで作られている。
【0014】
負電極に接続される電流コレクタ5は、一般に銅、ニッケル被覆銅またはアルミニウムで作られている。
【0015】
リチウムイオン蓄電池または電池は非常に明瞭に、順に積み重ねられる複数の電気化学セルを含むこともある。
【0016】
従来は、Liイオン蓄電池または電池は、高電圧レベル、典型的には約3.6ボルトにおいて動作することを可能にする一対の材料をアノードおよびカソードに使用する。
【0017】
目標とされる応用の種類に応じて、薄くかつ柔軟なリチウムイオン蓄電池か、または堅固な蓄電池を作成することが試みられ、パッケージはその時、柔軟かまたは堅固であり、堅固な場合には、いわばケーシングを形成する。
【0018】
柔軟なパッケージは通常、接着結合によって積層された1つまたは複数のポリマーフィルムで覆われたアルミニウム層の堆積から成る多層複合材料から製造される。
【0019】
図3は、この種の柔軟なパッケージ6を例示し、それは、極を形成し、電気化学セルの平面内に延びる2つのストリップ4、5の一部分40、50が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルCを含むように配置される。図3が示すように、ポリオレフィンベースのポリマー補強材60が、ストリップ4、5の周りでのパッケージ6のヒートシールを改善するために提供されることもある。柔軟なパッケージの主な利点は、それらの軽さである。最高エネルギー密度を有するLiイオン蓄電池はしたがって、柔軟なパッケージを含む。これらの柔軟なパッケージの主な欠点は、作成されるシールに化学的抵抗力がないために、それらのシール密封性が、時間とともに大きく劣化することである。
【0020】
Liイオン蓄電池または電池は、目標とされる応用が制約的(constraining)であるとき、例えば非常に高い圧力に耐えなければならず、より厳しいシール密封性レベル(典型的には10−6mbar.l/sヘリウムよりも低い)が必要とされる、もしくは長寿命が求められるとき、または宇宙もしくは航空分野などの高度に制約的な環境においては、堅固なパッケージまたはケーシングを含む。堅固なパッケージの主な利点は、その高いシール密封性であり、それは、ケーシングが溶接によって、一般にはレーザ溶接によって閉じられるので、長時間持続される。
【0021】
それ故に、現時点においては、使用される1つの堅固なパッケージは、一般に軽くかつ安価な金属で作られ、典型的にはステンレス鋼(316Lもしくは304ステンレス鋼)またはアルミニウム(1050もしくは3003Al)で、またはチタンでも作られている、金属ケーシングから成る。さらに、アルミニウムは一般に、以下で説明されるようなその高い熱伝導率係数のために望ましい。銅/ニッケルで作られたバイメタルコーティングのステンレス鋼で作られているケーシングは、すでに国際公開第2010/113502号において構想されている。
【0022】
特に一体的にポリマーで作られている、プラスチックケーシングもまた、特に米国特許出願公開第2010/316094号明細書においてすでに構想されている。それらは、高い機械的強度を有するが、これらのケーシングは、それらの構成材料の価格のために、経済的に実行可能である見込みはほとんどない。
【0023】
混成のポリマー/ファイバ材料で作られているケーシングもまた、構想されている。
【0024】
堅固なパッケージの主な利点は、それらの高いシール密封性であり、それは、ケーシングが溶接によって、一般にレーザ溶接によって閉じられるので、長時間持続される。
【0025】
大部分のLiイオン蓄電池ケーシングの幾何学的形状は、大部分の蓄電池電気化学セルが、スプーリングによって円筒状の幾何学的形状に巻かれるので、円筒状である。プリズム形状のケーシングもまた、すでに作成されている。
【0026】
10年よりも長い寿命の高容量Liイオン蓄電池のために通常製造される円筒形状の堅固なケーシングの種類の1つが、図4に例示される。
【0027】
長手方向軸Xのケーシング6は、円筒状の側部ジャケット7、1つの端部における底部8、およびもう1つの端部におけるカバー9を含む。カバー9は、電流がそれを通って出力される端子または極40、50を担持する。出力端子(極)の1つ、例えば正端子40は、カバー9に溶接され、一方もう1つの出力端子、例えば負端子50は、負端子50をカバーから電気的に絶縁するシール(図示されず)の介在がある状態でカバー9を貫通する。
【0028】
パッケージが柔軟であるか堅固であるかに関係なく、今日に至るまでに構想されたすべてのケーシングにおいて、電気化学セルは実際には、外部に関して完全にシール密封性であるチャンバに含まれる。
【0029】
リチウムイオン(Liイオン)蓄電池または電池の動作は、その中へ/そこからのリチウムイオンの挿入/脱挿入による、アノード(負電極)およびカソード(正電極)を構成する材料の可逆的酸化還元の原理に基づいている。この特性は、電池がエネルギーを電気化学的な形で蓄えることを可能にする。
【0030】
例えば、充電中は、リチウムイオンは、カソードから脱挿入され、同じ量をアノードに挿入され、放電中は逆である。これらの挿入プロセスに使用されるリチウムイオンの量は、蓄電池または電池の容量に正比例する。
【0031】
グラファイトで作られているアノードを有するLiイオン蓄電池の特定の場合には、充電状態においてこの電極に挿入されるリチウムのいくらかは、その表面と反応することもあることが、知られている。これは、不動態化フィルム(固体−電解質−相間(SEI))を生成し、交換可能なリチウム、すなわち挿入/脱挿入されることが可能であるリチウムを消費する効果を有する。それ故に、蓄電池の容量は、リチウムのこの消費量に比例して下がる。
【0032】
図5Aおよび図5Bは、100%の充電状態に対応する初期容量および交換可能なリチウムイオンの欠如によって生じる負電極におけるx%の充電損失による100−x%の充電状態に対応するより低い容量において、それらの充電の関数としてLiイオン蓄電池の電極の電位の曲線(上がカソードおよび下がアノード)をそれぞれ示す。
【0033】
図5Aと比較されるとき、図5Bに例示されるように、活性電極材料の電位は、交換可能なリチウムイオンの欠如のために、リチオ化/脱リチオ化による蓄電池の充電の極限状態の初期値(0および100%)に達する能力はもはやない。
【0034】
電池管理システム(BMS)は特に、しきい電圧値、すなわち2つの活性挿入材料間の電位差に達した後で、電流の印加を停止する機能を有する。
【0035】
充電の極限状態が、交換可能なリチウムイオンの欠如のためにx%だけ減少した値を有する場合には、BMSは、十分早期に電流の印加を停止せず、それによって活性挿入材料への過電圧を誘発し、それによってそれらの劣化を引き起こす。その上、容量の生じる損失は、これらの材料の劣化を引き起こす他の影響の出現を誘発する。
【0036】
ある従来技術の文書は、交換可能なリチウムイオンの欠如に起因するLiイオン蓄電池での容量の損失の問題をすでに確認している。提案される解決法は、この欠如を補償するためにリチウムイオンが注入されることを可能にする。
【0037】
特開2012−089471号公報は、Liイオン蓄電池の外部から、そのパッケージを通って、Liリチウムイオンを注入するのに適した注射器の形を取る1つの機器を挿入することを提案する。より正確には、注射器は、電解質充填によって電解質生成物(electrolyte product)と活性電池材料との間のイオン連続性を得ることを可能にする注入チューブと接触する電解質生成物それ自体を含むチャンバを含む。注入チューブは、活性蓄電池材料と電解質生成物との間での電子の交換を可能にするために電子伝導性である。電解質生成物は、蓄電池の2つの電極の活性材料の1つとの反応を自発的に生じさせるために、低い酸化還元電位を有する。生成物は、酸化還元反応に参加するリチウムイオンを含有する。それ故に、電極の1つの活性挿入材料および生成物を接触させることによって、イオン伝導および電子伝導を介してリチウムイオンを活性材料に挿入することが可能である。注射器を用いて外部からリチウムイオンを注入するこの解決法は、パッケージを通って注入チューブの侵入を可能にする部材を統合する蓄電池設計を必要とする。したがって、蓄電池の脆弱性は、増加し、漏えいのリスクは、無視できない。
【0038】
国際公開第2012/24211号、欧州特許第2595235号および特開2011−076930号公報は、それらに関する限り、電気化学セルのアノードおよびカソードに加えて、第3の電極、すなわち付加電極をLiイオン蓄電池に統合するための準備をする。このようにして統合される第3の電極は、リチウムイオンを蓄電池の活性挿入材料に注入するために取り出すことが可能であるリチウムイオンを含有するのに適している。この動作は、この第3の電極と蓄電池のアノードまたはカソードから選択される電極との間に電流を印加することによって電気化学的に実行される。この解決法はしたがって、付加電極の追加を必要とし、これは、蓄電池に体積および重量を追加するという欠点を有する。また第3の出力端子を蓄電池のアーキテクチャに追加することも必要であり、その端子は、この第3の電極と初期容量を再生するためにリチウムイオンが注入される電極との間に電流を印加するために、第3の電極に電気的に接続される。この第3の出力端子は、シール密封性であるフィードスルーを形成することによって、すなわち導電性要素がパッケージの壁から絶縁される状態で必ず作成されなければならない。この解決法はしたがって、Liイオン蓄電池のアーキテクチャを複雑にするという主な欠点を有する。
【0039】
したがって、特にその中での過電圧の出現を防ぎ、その寿命を向上させるために、Liイオン蓄電池などのリチウム蓄電池の容量を再生するための既存の解決法をさらに改善する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0121348号明細書
【特許文献2】米国特許第7348098号明細書
【特許文献3】米国特許第7338733号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/060189号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0057392号明細書
【特許文献6】米国特許第7335448号明細書
【特許文献7】国際公開第2010/113502号
【特許文献8】米国特許出願公開第2010/316094号明細書
【特許文献9】特開2012−089471号公報
【特許文献10】国際公開第2012/24211号
【特許文献11】欧州特許第2595235号明細書
【特許文献12】特開2011−076930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明の目的は、この必要性を少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
これを行うために、その態様の最初のものによる本発明の主題は、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間の、電解質を含浸させたセパレータを含む少なくとも1つの電気化学セルと、その1つがアノードに接続され、もう1つがカソードに接続される2つの電流コレクタと、出力端子を形成する電流コネクタの一部分が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルを収納するように配置されるケーシングとを含む、Liイオン蓄電池などのリチウム電気化学的蓄電池の容量を再生するための方法であり、
(a)リチウムイオンの総量を評価するステップと、
(b)リチウムイオンの評価された総量が、しきい値以下であるとき、ケーシングの脱リチオ化を引き起こすように、カソードまたはアノードとケーシングとの間に電流を印加するステップとを含み、
ケーシングはさらに、一方では電気化学セルのアノードおよびカソード電極との、他方ではケーシングとの間に、電気絶縁性でもありかつイオン伝導性でもある要素を収納するように配置され、ケーシングは、リチウムイオンを蓄えるための少なくとも1つのゾーンを含む。
【0043】
前文で述べられるように、リチウム蓄電池の電極(Liイオン蓄電池についてはアノード)におけるリチウムの消費は、交換可能なリチウムイオンの欠如を生じさせ、したがって容量の損失および時間とともに挿入材料のますます速くなる経年劣化につながる過電圧効果の出現を引き起こす。
【0044】
本発明による解決法は、リチウム蓄電池の容量を再生し、電極の劣化を引き起こす過電圧の、充電または放電の終わりでの出現を防ぐために、リチウムイオンが活性材料の1つに注入されることを可能にするが、しかしながら、複雑でかつ制約的である、従来技術の解決法とは対照的に、本発明による解決法は、蓄電池の既存の構成要素、すなわちケーシングの中でリチウムイオンの貯蔵を実施する。それ故に、本発明による容量を再生するための解決法は、蓄電池のアーキテクチャを複雑にしないという最も重要な利点を有する。
【0045】
本発明は最初に、失われたリチウムの総量、すなわち交換可能なリチウムイオンの欠如を評価することにある。
【0046】
本発明による方法は、特定のLiイオン蓄電池アーキテクチャだけを必要とする。
【0047】
それ故に、ケーシングは、蓄電池のアノードからもカソードからも電気的に絶縁される。追加される要素は、ケーシングの材料と活性リチウム挿入材料との間のイオン伝導、およびこれらの材料の電気絶縁を両方とも可能にする。本発明によると、2つの端子は、ケーシングから電気的に絶縁されることに気付くであろう。有利には、追加される要素については、アノードのリチウム挿入材料とカソードのそれとの間に配置される電解質含浸セパレータの材料と同じ材料を使用することが可能である。
【0048】
最後に、ケーシングの構成材料は、電子伝導性であり、その結晶構造内にリチウムイオンを蓄えるために少なくとも1つのゾーンを含む。それ故に、本発明によると、蓄電池の最終組み立ての前に、交換可能なリチウムイオンの欠如を補償することができるリチウムの量をケーシングの中に直接統合するための準備がなされる。
【0049】
本発明に従って提供される交換可能なリチウムの欠如の評価ならびにリチウム蓄電池およびリチウムを蓄えるための少なくとも1つのゾーンを有するそのケーシングのアーキテクチャの変更は、BMSかまたは蓄電池の維持を担当するオペレータが蓄電池のカソードまたはアノードとケーシングとの間に電流を印加することによってそのケーシングの脱リチオ化を実行することを可能にする。ケーシングの中のそれらの貯蔵ゾーンから取り出されるリチウムイオンは、次いで活性リチウム挿入材料に挿入され、それによって交換可能なリチウムが回復されることを可能にする。蓄電池の容量は、それによって直接再生される。
【0050】
3つの変形が、本発明による評価ステップ(a)について構想されてもよく、すなわち、
− 参照電極の電位を測定するステップ。具体的には、電極の電位は、いわゆる単相材料である活性挿入材料については、挿入されるリチウムの総量の熱力学的表現であり、
− 蓄電池の初期容量に関して容量差を測定するステップ、ならびに
− 電気化学的インピーダンスを測定するステップ。具体的には、そのような測定は、リチウム消費反応によって作成された不動態化フィルム(SEI)の総量の相関による推定を可能にする。
【0051】
したがって、交換可能なリチウムの欠如量を計算することが可能である。
【0052】
ステップ(b)における電流の印加は、好ましくは電子デバイスを用いた調節によって実行される。電子デバイスは有利には、活性材料に注入されるリチウムの総量に正比例する再生容量を決定するために、時間の関数として電流の積分を計算するのに適している。
【0053】
本発明はまた、その態様の別のものによると、
− アノード、カソードおよびアノードとカソードとの間の、電解質を含浸させたセパレータを含む少なくとも1つの電気化学セルCと、
− その1つがアノードに接続され、もう1つがカソードに接続される2つの電流コレクタと、
− 出力端子を形成する電流コレクタの一部分が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルを収納するように配置されるケーシングと
を含む、Liイオン蓄電池などのリチウム電気化学的蓄電池(A)にも関し、
ケーシングはさらに、一方では電気化学セルのアノードおよびカソード電極との、他方ではケーシングとの間に、電気絶縁性でもありかつイオン伝導性でもある要素を収納するように配置され、ケーシングは、リチウムイオンを蓄えるための少なくとも1つのゾーンを含む。
【0054】
ケーシングがそれから作られる材料、好ましくは金属は、良好な機械的性能を提供しなければならないだけでなく、またリチウムを蓄えることもできなければならない。
【0055】
その良好な機械的強度のために、アルミニウムは、蓄電池ケーシングを作成するための有利な材料である。その上、本発明者らは、アルミニウムで作られている基板が、電気化学的にリチオ化されてもよく、xが0から1の間に含まれる化学式LiAlのリチウムアルミニウム合金の取得につながることを示すことを可能にする試みを実行した。合金はそれ故に、ケーシングの厚さのいくらかを通って形成されてもよく、リチウム濃度は、ケーシングの全内部領域にわたって一様に深さとともに減少する。
【0056】
リチウムイオンが、電池の寿命にわたって、それらが蓄えられるケーシングの中に拡散する場合には、リチウムイオンがケーシングの外側に拡散するのを防止するための方策が、有利には取られる。そのような状況では、蓄電池のケーシングは有利には、リチウムイオンの拡散に対する障壁を形成する拡散障壁層を含んでもよい。この障壁層は、ケーシング基板の外周部にまたはケーシング基板の厚さ内に作成されてもよい。拡散障壁層は好ましくは、酸化アルミニウムまたはアルミナ(Al)で作られている層である。
【0057】
第1の変形によると、電気絶縁性かつイオン伝導性の要素は有利には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシエチレン(POE)およびポリエチレンテレフタレート(PET)から選択されるポリマー、またはポリプロピレン、ポリエチレンもしくはセルロースなどのポリオレフィンから選択されるポリマーで作られている少なくとも1つのフィルムから成る。
【0058】
第2の変形によると、電気絶縁性かつイオン伝導性の要素は、ケーシングの基板の内面に堆積される保護層である。例として、この保護層は、酸化物層、炭酸塩層、その他であってもよい。
【0059】
どんな変形であっても、電気絶縁性かつイオン伝導性の要素は、2つの端子をケーシングから絶縁しなければならない。
【0060】
表現「リチウム挿入材料で作られているアノードまたはカソード」は、少なくとも1つのリチウム挿入材料およびポリマーで作られている少なくとも1つの結合剤を備える電極を意味すると理解される。任意選択で、電極はその上、電子伝導体、例えばカーボンファイバまたはカーボンブラックを備えてもよい。
【0061】
表現「リチウム挿入材料」は、特に正電極については、マンガンを含有するとげ状の(spinal)リチオ化酸化物、薄板状のリチオ化酸化物、およびその混合物、ならびに化学式LiM(XOのポリアニオン系枠組みのリチオ化酸化物から選択される材料を意味すると理解され、ただしMは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、BおよびMoから選択される元素を表し、Xは、P、Si、Ge、SおよびAsから選択される元素を表し、y、zおよびnは、正の整数である。
【0062】
表現「リチウム挿入材料」はまた、特に負電極については、リチオ化または非リチオ化酸化チタン、例えばLiTi12またはTiOから選択される材料を意味すると理解される。より詳しくは、負電極材料は、炭酸化材料、非リチオ化酸化チタンおよびそれらの誘導体ならびにLiTi12などのリチオ化酸化チタンおよびそれらの誘導体、ならびにその混合物から選択されてもよい。
【0063】
表現「リチオ化誘導体」は、化学式Li(4−x1)x1Ti12およびLiTi(5−y1)y112の化合物を意味すると理解され、ただしx1およびy1はそれぞれ、0から0.2の間に含まれ、MおよびNはそれぞれ、Na、K、Mg、Nb、Al、Ni、Co、Zr、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、SiおよびMoから選択される化学元素である。
【0064】
表現「非リチオ化誘導体」はここでは、Ti(5−y1)y112を意味すると理解され、ただしy1は、0から0.2の間に含まれ、Nは、Na、K、Mg、Nb、Al、Ni、Co、Zr、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、SiおよびMoから選択される化学元素である。
【0065】
一変形実施形態によると、すべてのアノードは、LiTi12で作られており、カソードは、LiFePOで作られている。
【0066】
用語「セパレータ」は、ここではかつ本発明の文脈では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシエチレン(POE)もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)などの少なくとも1つのポリマー材料、またはポリプロピレン、ポリエチレンもしくはセルロースなどのポリオレフィンから選択されるポリマーによって形成される電気絶縁性のイオン伝導体を意味すると理解される。
【0067】
本発明による電解質は、炭酸塩および少なくとも1つのリチウム塩の混合物によって形成される液体であってもよい。表現「リチウム塩」は、好ましくはLiPF、LiClO、LiBFおよびLiAsFから選択される塩を意味すると理解される。
【0068】
別法として、電解質は、リチウムイオンに基づく1つまたは複数のイオン液体、すなわち室温で液体であるという特性を有する、有機または無機アニオンと錯体を形成するリチウムカチオンから形成される塩を備えてもよい。イオン液体は、アニオンの性質に応じて、親水性または疎水性であってもよい。イオン液体の例として、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド[(CFSON]およびトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)メチド[(CFSOC]などの疎水性アニオンに基づくイオン液体に言及されてもよい。
【0069】
他の利点および特徴は、実例としてかつ下記の図を参照して与えられる詳細な説明を読むことでより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】リチウムイオン蓄電池の様々な要素を示す概略分解斜視図である。
図2】従来技術によるその柔軟なパッケージを有するリチウムイオン蓄電池を示す正面図である。
図3】従来技術によるその柔軟なパッケージを有するリチウムイオン蓄電池の透けて見える斜視図である。
図4】ケーシングから成るその堅固なパッケージを有する従来技術による円筒状リチウムイオン蓄電池の斜視図である。
図5A】100%の充電状態に対応する初期容量において、その充電の関数としてLiイオン蓄電池の電極の電位の曲線(上がカソードおよび下がアノード)を例示する図である。
図5B】交換可能なリチウムイオンの欠如によって生じる負電極におけるx%の充電損失による100−x%の充電状態に対応するより低い容量において、その充電の関数としてLiイオン蓄電池の電極の電位の曲線(上がカソードおよび下がアノード)を例示する図である。
図6】ケーシングから成るその堅固なパッケージを有する本発明によるリチウムイオン蓄電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
明確にするために、同じ参照番号が、図1から図6のすべてにおいて従来技術および本発明によるLiイオン蓄電池の同じ要素を指定するために使用されている。
【0072】
本発明による様々な要素は、単に明確にするために示され、それらは、一定の縮尺でないことに気付くであろう。
【0073】
図1から図5Bは、すでに前文において詳細に論評された。それらはしたがって、以下で述べられない。
【0074】
本発明による蓄電池は、図6に示される。それは、カソード2とアノード3との間の、構成電解質を含浸させたセパレータ4から成る少なくとも1つの電気化学セルCと、カソード2に接続される電流コレクタ40と、アノード3に接続される電流コレクタ50と、最後に、出力端子を形成する電流コレクタ40、50の一部分が貫通しながらシール密封性を備えて電気化学セルを含むように配置されるパッケージとしてのケーシング6とを含む。
【0075】
長手方向軸Xのケーシング6は、円筒状の側部ジャケット7、1つの端部における底部8およびもう1つの端部におけるカバー9を含む。カバー9は、電流がそれを通って出力される極または端子40、50を担持する。出力端子(極)の各々、すなわち正端子40および負端子50は、正および負端子40、50をそれぞれカバー9から電気的に絶縁するシール41、51の介在がある状態でカバー9を貫通する。言い換えれば、2つの端子40、50は、ケーシング6から電気的に絶縁される。
【0076】
ケーシング6は、アルミニウムで作られている。
【0077】
ケーシング6は、リチウムイオンを蓄えるためのゾーン61を含み、そのゾーンは、ケーシングの厚さのいくらかを通って形成されるリチウム含有合金の形で作成され、そのリチウム濃度は、ケーシング6の内面からこの領域の全体にわたって一様に減少する。
【0078】
蓄電池はさらに、電気化学セルのアノード3およびカソード2とケーシング6との間に、電気絶縁性でもありかつイオン伝導性でもある、フィルムの形を取る要素7を含む。
【0079】
最後に、ケーシング6は、端子62を形成する突出部分を含み、それは、蓄電池の容量が以下で説明されるように再生されることを可能にする。第3の電極に接続される第3の端子を備える従来技術の蓄電池とは対照的に、前記端子は、ケーシング6への外部接続に役立つので、本発明による端子62を密封する必要がない。
【0080】
本発明による例示的蓄電池は、セルをスプーリングすることによって円筒状の幾何学的形状を備えて作成され、前記蓄電池は、直径50mm、高さ125mm、および約18Ahの初期容量である。
【0081】
ケーシング6は、アルミニウムシートから作成され、その重量は、75gである。
【0082】
電極材料は、アノード3についてはグラファイトであり、カソード2についてはリン酸鉄リチウム(LiFePO)である。
【0083】
初期容量は知られているため、蓄電池に含有される交換可能なリチウムイオンの総量を下記の計算式、
C*3600*MLi/F
によって計算することが可能であり、ただし下記のそれぞれの値、
Li=6.9g/mol(リチウムのモル質量)、
F=96500C/mol(ファラデー定数)、および
C=18Ahを有する。
【0084】
蓄電池は、4.63gに等しい交換可能なリチウムイオンの量を含有する。
【0085】
またアルミニウムケーシングの完全なリチオ化またはLi−Al合金の場合には、この蓄電池のケーシング6に蓄えることができるリチウムイオンの総量を下記の計算式、
M*MLi/MAl
によって計算することも可能である。
【0086】
75gに等しいケーシング6の質量Mおよび27g/molに等しいアルミニウムのモル質量MAlを用いると、19.17gに等しい貯蔵可能なリチウムの量が、得られ、すなわち蓄電池によって最初に使用される交換可能なリチウムイオンの総量よりも4倍以上高い値である。
【0087】
ケーシング6はしたがって、リチウム貯蔵ゾーンとして全く十分である。具体的には、本発明者らは、Liイオン蓄電池の容量を再生するために、交換可能なリチウムの総量の約半分を蓄えることが妥当であると考える。リチウムのこの量よりも多くを蓄電池に注入することは、他の劣化の影響が優勢になることにつながることもあり、その時、本発明に従って蓄電池を再生することは、不可能であることが判明する。その上、ケーシング6の完全なリチオ化は、その機械的特性が蓄電池の目標とされる応用にとって不満足であることになる材料を作成することになる。
【0088】
それ故に、交換可能なリチウムの総量の半分、すなわち2.32gを詰め込まれた貯蔵ゾーンの場合には、得られる合金は、化学式Li0.12Al(ケーシング6のバルクの一様なリチオ化について)である。
【0089】
実際には、そのケーシング6が、2つの電極2、3から絶縁され、その製造中にリチオ化される、そのような蓄電池の使用は、交換可能なリチウムの総量を増加させるためにLiイオンが注入されることを可能にする。この動作は、ケーシング6の再生端子62と2つの電極2または3の1つとの間に電流を通すことによって実行される。
【0090】
蓄電池の初期容量は、このようにして再生される。
【0091】
本発明による一例では、Liイオンをカソード2に挿入することによってLiイオン蓄電池の容量を再生することが可能である。Liイオンはまた、アノード3に挿入されてもよい。
【0092】
再生すべき容量の総量が、計算された後、ケーシング6およびカソード2は、電流を調節するのに適した電子デバイス(図示されず)に電気的に接続される。具体的には、正電極の酸化還元電位は、リチオ化アルミニウムのそれよりも高く、本アーキテクチャは、イオンがこれらの2つの構成要素の間で交換されることを可能にするので、交換可能なリチウムの注入の望ましい効果につながる負電流が、確立されてもよい。
【0093】
電子デバイスは、ケーシング6とカソード2との間の電流が調節されることを可能にする。
【0094】
有利には、このデバイスはまた、再生容量を計算するために、時間の関数として電流を積分することもできる。好ましくは、電流は、活性材料へのリチウムイオンの一様な挿入を可能にするために、またケーシング6の金属の構造を破壊しないためにも、非常に低くなければならない。
【0095】
このデバイスは、BMSに統合されてもよく、または蓄電池を再生したい外部オペレータによって制御されてもよい。
【0096】
制限される電流が、ケーシングに統合されるリチウムイオンの容量に対して計算される。2.32gのリチウムが、ケーシングに挿入される、すなわち9Ahの容量である、先の例の場合には、C/100以下の電流領域が、使用される(9Ah/100hすなわち90mA)。
【0097】
挿入すべきリチウムの総量が挿入された後で、蓄電池を充電する/放電することの繰り返しは、再生が有効であることを検証するために実行されてもよい。
【0098】
その内面61に蓄えられたリチウムイオンを含有するケーシング6は、蓄電池の設計前に、リチオ化プロセスによって得られてもよい。例えば、電気化学的リチオ化を行うことが、構想できる。またリチウム含有アルミニウム合金を冶金学的に作成することが、構想されてもよい。
【0099】
本発明は、今しがた述べられた例に限定されず、示される例の特徴は、例示されない変形において一緒に組み合わされてもよい。
【0100】
Liイオン蓄電池を参照して述べられたが、本発明は当然、Liリチウムイオンの挿入−脱挿入の原理に基づいて動作する任意の電気化学的発電装置に同様に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 セパレータ
2 カソード、正電極
3 アノード、負電極
4 電流コレクタ、ストリップ、セパレータ
5 電流コレクタ、ストリップ
6 パッケージ、ケーシング
7 側部ジャケット、要素
8 底部
9 カバー
40 部分、極、端子
41 シール
50 部分、極、端子
51 シール
60 補強材
61 ゾーン
62 端子
A リチウム電気化学的蓄電池
C 電気化学セル
X 長手方向軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6