(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなグリルシャッタは、フラップ部材がエンジンルームへの外気の流入を抑止する姿勢(閉姿勢)である場合には、フラップ部材同士の隙間が減少し、エンジンルーム内への異物の侵入も抑止できる。しかしながら、フラップ部材がエンジンルームへの外気の流入を許容する姿勢(開姿勢)である場合には、従来のグリルと同様に、エンジンルームへの侵入経路が広いことから、異物の侵入抑止効果が得られない。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、回動可能なフラップ部材を備えるグリルシャッタにおいて、フラップ部材が開姿勢である場合でもエンジンルームへの異物の侵入を抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、軸部を中心として回動されることにより姿勢変更されるフラップ部材を備えるグリルシャッタであって、上記フラップ部材が、第1姿勢のときに空気の流入方向に対して正対されると共に上記空気を通過可能な開口部を有する通気壁と、上記第1姿勢と異なる第2姿勢のときに上記空気の流入方向に対して正対されると共に上記通気壁よりも開口率が小さな遮蔽壁とを有するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記通気壁と上記遮蔽壁とが屈曲して接続されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記遮蔽壁が、上記第2姿勢における位置よりも、上記第1姿勢における位置の方が下方となるように配置されているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記遮蔽壁の上記空気の流入方向に対して正対される面が意匠面とされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、フラップ部材が、空気を通過可能な開口部を有する通気壁と、通気壁よりも開口率が小さな遮蔽壁とを備えている。このため、フラップ部材の姿勢を、空気の流入方向に対して通気壁を正対させる姿勢(開姿勢)とすることによって、エンジンルームへの外気の流入を許容することができる。一方、フラップ部材の姿勢を、空気の流入方向に対して遮蔽壁を正対させる姿勢(閉姿勢)とすることによって、エンジンルームへの外気の流入を抑制することができる。このような本発明によれば、フラップ部材が開姿勢であっても、通気壁によってエンジンルームへの異物の侵入を抑制することができ、通気壁を備えない場合よりもエンジンルームへの異物の侵入を抑止することができる。したがって、本発明によれば、回動可能なフラップ部材を備えるグリルシャッタにおいて、フラップ部材が開姿勢である場合でもエンジンルームへの異物の侵入を抑止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るグリルシャッタの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本実施形態のグリルシャッタ1が設置される車両100の正面図である。この図に示すように、車両100の前面には、エンジンルーム内に外気を取り込むためのグリル開口101が設けられている。本実施形態のグリルシャッタ1は、このようなグリル開口101に設けられている。なお、グリルシャッタ1の設置位置は、
図1に示す位置とは限られるものではない。例えば、グリルの下方にバンパ開口が設けられている場合には、このバンパ開口にグリルシャッタ1を設置するようにしても良い。
【0015】
図2は、本実施形態のグリルシャッタ1を模式的に示す正面図であり、(a)がフラップ部材3の姿勢が開姿勢である場合を示し、(b)がフラップ部材3の姿勢が閉姿勢である場合を示している。
図2に示すように、本実施形態のグリルシャッタ1は、フレーム2と、フラップ部材3と、リンク部材4と、アクチュエータ5とを備えている。
【0016】
フレーム2は、外枠部2aと、支柱2bとを備えており、フラップ部材3、リンク部材4及びアクチュエータ5を直接的あるいは間接的に支持する。外枠部2aは、グリル開口101の縁に沿って設けられる環状の部位である。この外枠部2aは、
図2に示すように、車両100の前方側から見て、左側に配置される左側壁2a1と、右側に配置される右側壁2a2と、上側に配置される上壁2a3と、下側に配置される下壁2a4とを有する略矩形状とされている。このうち、左側壁2a1と右側壁2a2とには、フラップ部材3を軸支するための軸孔が設けられている。
【0017】
支柱2bは、フレーム2の車幅方向の中央部に配置されており、外枠部2aの上壁2a3と下壁2a4とを接続するよう上下方向に延在して設けられている。この支柱2bは、外枠部2aで囲まれた領域を左領域R1と、右領域R2とに分割している。このような支柱2bの側面(車幅方向を向く面)には、フラップ部材3を軸支するための軸孔が設けられている。
【0018】
なお、フレーム2は、一部が他の部位に対して着脱可能とされており、部分的に分解が可能な構造となっている。このようなフレーム2に対してフラップ部材3を取り付ける場合には、フレーム2を分解した状態でフラップ部材3を取り付け、その後、フレーム2を組み立てるようにする。これによって、フラップ部材3を回動可能にフレーム2に対して取り付けることができる。
【0019】
図3は、フラップ部材3の斜視図である。フラップ部材3は、通気壁3aと、遮蔽壁3bと、端部片3cと、軸部3dと、リンク部材接続軸3eとを備えている。通気壁3aは、車幅方向に長尺な板状の部位であり、複数の六角形状の開口部3a1が表裏方向に貫通して設けられたハニカム形状とされている。このような通気壁3aは、開口部3a1を通じて、表裏方向に空気を通過可能としている。なお、開口部3a1の形状は特に六角形状に限定されるものではない。他の多角形状や円形状の開口部であっても良く、全ての開口部が同一の形状である必要もない。
【0020】
遮蔽壁3bは、通気壁3aに対して略直角に屈曲して接続された板状の部位であり、通気壁3aと同一の長さ寸法とされている。この遮蔽壁3bは、通気壁3aのような開口部3a1を有しておらず、空気が通過可能な領域を有していない。つまり、本実施形態において遮蔽壁3bは、開口率が0%とされており、通気壁3aよりも開口率が小さく設定されている。なお、遮蔽壁3bの開口率は0%に限定されるものではない。例えば、遮蔽壁3bに小さな開口部を設け、少量の空気が通過可能とする構成とすることも可能である。
【0021】
また、遮蔽壁3bの通気壁3aと反対側の面(遮蔽壁3bが外気の流れ方向に正対する場合に正面側を向く面)は、装飾が施された意匠面3b1とされている。この意匠面3b1には、印刷や凹凸加工が施されることによって意匠が形成されている。本実施形態においては、
図2(b)に示すように、遮蔽壁3bの意匠面3b1には、通気壁3aと同様のハニカム形状の装飾が施されている。このように遮蔽壁3bの意匠面3b1にハニカム形状の装飾を施すことにより、遮蔽壁3bが外気の流れ方向に正対する場合における意匠と、通気壁3aが外気の流れ方向に正対する場合における意匠とを近づけることができる。したがって、外部から車両100を視認する者に与える印象が変化することを抑制することができる。また、逆に、意匠面3b1に通気壁3aの形状と異なる意匠を施すことにより、外部から車両100を視認する者にグリルシャッタ1の動作を印象付けることも可能である。
【0022】
端部片3cは、通気壁3aと遮蔽壁3bとの端部とを覆うように設けられた板状の部位であり、フラップ部材3の両端に設けられている。軸部3dは、各々の端部片3cから側方に突出して設けられており、フレーム2の軸孔に挿入される部位である。一方の端部片3cに設けられた軸部3dと、他方の端部片3cに設けられた軸部3dとは、同軸上に配置されている。フラップ部材3は、これらの軸部3dを中心として回動されることによって姿勢変更が可能とされている。
【0023】
リンク部材接続軸3eは、一方の端部片3cのみに設けられており、リンク部材4に形成された軸孔に挿入されている。つまり、リンク部材接続軸3eは、フラップ部材3の2つの端部片3cのうち、リンク部材4側の端部片3cに設けられており、端部片3cからリンク部材4側に突出するように設けられている。このリンク部材接続軸3eによって、フラップ部材3とリンク部材4とが回転可能に接続されている。
【0024】
また、
図2に示すように、フラップ部材3は、フレーム2の左領域R1と右領域R2とに各々2つずつ設けられ、合計4つ設けられている。これらのフラップ部材3のうち、右領域R2の上側に設けられたフラップ部材3は、アクチュエータ5に直接接続される駆動フラップ部材3Aとされている。駆動フラップ部材3Aの軸部3d(以下、駆動軸部3A1)は、他のフラップ部材3の軸部3dに対して長い。このような駆動軸部3A1は、フレーム2の外部まで延在されており、先端部がアクチュエータ5と嵌合される。
【0025】
これらのフラップ部材3は、同じ姿勢で、フレーム2及びリンク部材4と接続されており、アクチュエータ5から動力を伝達されることによって同期して回動される。このようなフラップ部材3は、通気壁3aが外気の流入方向(車両100の前後方向)に正対しかつ遮蔽壁3bの意匠面3b1が下方に向く姿勢(開姿勢)と、遮蔽壁3bが外気の流入方向に正対しかつ通気壁3aの表裏面が上下方向に向く姿勢(閉姿勢)との間で回動されることによって姿勢変更が可能とされている。つまり、フラップ部材3は、開姿勢(第1姿勢)のときに空気の流入方向に対して正対される通気壁3aと、閉姿勢(第1姿勢と異なる第2姿勢)のときに空気の流入方向に対して正対される遮蔽壁3bとを備えている。なお、通気壁3aが空気の流入方向に対して正対されるとは、通気壁3aの表裏面が車両走行時の空気の流れ方向(車両100の前後方向)に対して略垂直となる状態を意味している。また、遮蔽壁3bが空気の流入方向に対して正対されるとは、遮蔽壁3bの表裏面が車両走行時の空気の流れ方向(車両100の前後方向)に対して略垂直となる状態を意味している。
【0026】
また、フラップ部材3は、閉姿勢である場合の遮蔽壁3bの位置よりも、開き姿勢である場合の遮蔽壁3bの位置が下方となるように形状設定されている。このため、仮にフラップ部材3に外力が作用していない場合には、フラップ部材3は自重により開姿勢となる。
【0027】
リンク部材4は、
図3に示すように、各々のフラップ部材3のリンク部材接続軸3eが挿入される4つの軸孔4aを有している。このようなリンク部材4は、駆動フラップ部材3Aと他のフラップ部材3とを連結しており、駆動フラップ部材3Aの動きを他のフラップ部材3に伝達する。これによって、全てのフラップ部材3が同期して回転駆動される。アクチュエータ5は、モータやソレノイドを備えており、駆動フラップ部材3Aの駆動軸部3A1と直接接続されている。このアクチュエータ5は、フラップ部材3を回転駆動するための動力を生成する。
【0028】
このような構成の本実施形態のグリルシャッタ1では、不図示のエンジンコントロールユニットによってアクチュエータ5が制御され、アクチュエータ5で生成された動力がフラップ部材3に伝達されることによってフラップ部材3が開閉される。これによって、エンジンルームへの外気の供給状態が変更される。
【0029】
図4は、フラップ部材3を含む断面図であり、(a)がフラップ部材3の姿勢が開姿勢である場合を示し、(b)がフラップ部材3の姿勢が閉姿勢である場合を示している。
図4(a)に示すように、不図示のエンジンコントロールユニットの制御の下、アクチュエータ5によってフラップ部材3が開姿勢とされると、通気壁3aが空気の流れ方向に対して正対され、空気が通気壁3aの開口部3a1を通じてエンジンルームの内部に流入する。一方、アクチュエータ5によってフラップ部材3が閉姿勢とされると、遮蔽壁3bが空気の流れ方向に対して正対され、空気がエンジンルームの内部に流入することが防止される。
【0030】
以上のような本実施形態のグリルシャッタ1においては、フラップ部材3が、空気を通過可能な開口部3a1を有する通気壁3aと、通気壁3aよりも開口率が小さな遮蔽壁3bとを備えている。このため、フラップ部材3の姿勢を、空気の流入方向に対して通気壁3aを正対させる姿勢(開姿勢)とすることによって、エンジンルームへの外気の流入を許容することができる。一方、フラップ部材3の姿勢を、空気の流入方向に対して遮蔽壁3bを正対させる姿勢(閉姿勢)とすることによって、エンジンルームへの外気の流入を抑制することができる。このような本実施形態のグリルシャッタ1によれば、フラップ部材3が開姿勢であっても、通気壁3aによってエンジンルームへの異物の侵入を抑制することができ、通気壁3aを備えない場合よりもエンジンルームへの異物の侵入を抑止することができる。
【0031】
また、本実施形態のグリルシャッタ1においては、通気壁3aと遮蔽壁3bとが屈曲して接続されており、フラップ部材3の断面形状が略L型とされている。このため、軸部3dを中心としてフラップ部材3を90°回動させることのみで、フラップ部材3を閉姿勢と開姿勢との間で姿勢変更することができる。したがって、本実施形態のグリルシャッタ1によれば、簡易な構造で容易にフラップ部材3の姿勢を変更することができる。
【0032】
また、本実施形態のグリルシャッタ1においては、遮蔽壁3bが、空気の流入方向に対して正対される位置(すなわち閉姿勢での位置)よりも、通気壁3aが空気の流入方向に対して正対される位置(すなわち開姿勢での位置)の方が、遮蔽壁3bの位置が下方となるように配置されている。このため、万が一、車両事故によって軸部3dの損傷が生じ、アクチュエータ5からの動力がフラップ部材に伝達されない場合には、必ず自重によってフラップ部材3が開姿勢となる。このため、非常時にエンジンルーム内への外気の取り込みができなくなることを防止できる。
【0033】
なお、アクチュエータ5等が損傷するような事態が生じていない場合であっても、非常時には、フラップ部材3が常に開姿勢となることが好ましい。このため、エンジンコントロールユニットによる制御においては、何らかの非常時にはフラップ部材3が開姿勢となるようにアクチュエータ5を制御することが好ましい。
【0034】
また、本実施形態のグリルシャッタ1においては、遮蔽壁3bの空気の流入方向に対して正対される面が意匠面3b1とされている。このため、フラップ部材3が開姿勢の場合の意匠と閉姿勢の場合の意匠とを、意図的に近づけたり、遠ざけたりすることができる。したがって、本実施形態のグリルシャッタ1によれば、車両100の印象を意図的にコントロールすることが可能となる。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、通気壁3aと遮蔽壁3bとが略直角に接続された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。通気壁3aが鋭角や鈍角にて接続された構成を採用することも可能である。
【0037】
また、上記実施形態においては、フラップ部材3同士の干渉を避ける必要があることから、通気壁3aや遮蔽壁3bの大きさが制限され、上下のフラップ部材3の間に大きな隙間が生じる場合がある。このため、このような隙間を隠すための突出部をフラップ部材3やフレーム2に設けることも可能である。
【0038】
また、上記実施形態においては、左領域R1と右領域R2との各々に上下に2つ配列されるフラップ部材3を設けた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば左領域R1と右領域R2との各々に1つのみのフラップ部材が設置されるグリルシャッタや、左領域R1と右領域R2との各々に3つ以上のフラップ部材が配列されるグリルシャッタに適用することも可能である。