【文献】
MOCHIZUKI, H. et al.,Effect of desilication of H-ZSM-5 by alkali treatment on catalytic performance in hexane cracking,Applied Catalysis A: General,2012年,Vol. 449,p. 188-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流動接触分解による分解物混合物の製造方法であって、前記流動接触分解を流動接触分解触媒および請求項1または2に記載の流動接触分解触媒用添加物の存在下で行う製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る低級オレフィン製造用流動接触分解触媒用添加物等をより詳細に説明する。
<FCC触媒用添加物>
本発明に係るFCC触媒用添加物は、
(1)MP法による細孔容積測定における細孔径2nm以下の細孔容積が0.15〜0.20ml/gの範囲にあり、
(2)BJH法による細孔容積測定における細孔径2.4〜50nmの細孔容積が0.05〜0.15ml/gの範囲にあり、
(3)アンモニア吸着量が、1.0〜2.0mmol/gの範囲にある
変性ZSM−5型ゼオライトを20〜70質量%と、
充填材と
前記変性ZSM−5型ゼオライトおよび前記充填材の粒子を結合する、リンおよびアルミニウム含有成分を含有してなるバインダーとを含有し、
リンの含有量がP
2O
5に換算して5〜20質量%である
FCC触媒用添加物である。
【0017】
(変性ZSM−5型ゼオライト)
前記変性ZSM−5型ゼオライトは、
(1)MP法による細孔容積測定(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)における、細孔径2nm以下の細孔容積が0.15〜0.20ml/gの範囲にあり、
(2)BJH法による細孔容積測定(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)における、細孔径2.4〜50nmの範囲にある細孔容積が0.05〜0.15ml/gの範囲にあり、
(3)アンモニア吸着量(測定方法の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)が、1.0〜2.0mmol/gの範囲にある
ZSM−5型ゼオライトである。
【0018】
MP法による細孔容積測定における細孔径2nm以下の細孔容積は、0.15〜0.20ml/gであり、0.16〜0.20ml/gであることが好ましい。0.15ml/g未満であると、反応場が減少し、低級オレフィンの生成量が低下するおそれがある。0.20ml/gを超えると、変性ZSM−5型ゼオライトを製造する際の後述するNaOH等による処理が十分に行われておらず、反応物の拡散性が低下するため期待する効果が得られないおそれがある。
【0019】
BJH法による細孔容積測定における、細孔径2.4〜50nmの範囲にある細孔容積は、0.05〜0.15ml/gであり、0.05〜0.14ml/gであることが好ましい。0.05ml/g未満であると、反応物の拡散性が低下するため、低級オレフィンの生成量が低下するおそれがある。0.15ml/gを超えると、変性ZSM−5型ゼオライトを製造する際の後述するNaOH等による処理が過度に行われており、ミクロ細孔容積、アンモニア吸着量が下限を下回り、活性向上効果が得られない。また、触媒調製時の粘度上昇により成形性が低下し嵩密度や耐摩耗率等の物性が悪化する。
【0020】
アンモニア吸着量が、1.0〜2.0mmol/gであり、1.0〜1.8mmol/gであることが好ましい。1.0mmol/g未満であると、反応に必要な酸点が不足し、活性が低下するおそれがある。2.0mmol/gを超えると、変性ZSM−5型ゼオライトを製造する際の後述するNaOH処理等によるが十分に行われておらず、反応物の拡散性が低下するため期待する効果が得られないおそれがある。
前記変性ZSM−5型ゼオライトは、本発明に係るFCC触媒用添加物中に通常20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%含まれる。
【0021】
(充填材)
前記充填材は、かさ増材として配合される。
前記充填材としては、カオリン、メタカオリン、ハイドロタルサイト、およびモンモリロナイト等の粘土物質などが挙げられ、好ましくはカオリンが挙げられる。
前記充填材は、本発明に係るFCC触媒用添加物中に通常20〜73質量%、好ましくは25〜60質量%含まれる。
【0022】
(バインダー)
前記変性ZSM−5型ゼオライトおよび前記充填材の粒子を結合する、前記バインダーは、リンおよびアルミニウムを含有してなる。
【0023】
前記リンおよびアルミニウム含有成分としては、リン、アルミニウムおよび酸素を含有する化合物が挙げられる。前記リン、アルミニウムおよび酸素を含有する化合物としては、リンおよびアルミニウムを含む酸化物(たとえば、リンおよびアルミニウムの複合酸化物)が挙げられる。
【0024】
前記バインダーは、本発明に係るFCC触媒用添加物中に通常7〜25質量%、好ましくは9〜20質量%、より好ましくは9〜15質量%含まれる。
また、前記バインダーは、リンをP
2O
5換算で好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは6〜15質量%、より好ましくは6〜12質量%(本発明に係るFCC触媒用添加物の量を100質量%とする。)含む。
【0025】
(FCC触媒用添加物)
本発明に係るFCC触媒用添加物の形態は、粒子状であることが好ましい。
本発明に係るFCC触媒用添加物中の、ICP発光分光分析法によって測定される(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)リンの含有量は、P
2O
5換算で5〜20質量%、好ましくは6〜15質量%である。含有量がこの範囲にあると耐熱性や反応物の拡散性も高く、十分な活性が得られる。また、触媒の見かけ嵩密度や耐摩耗性等の物性も優れる。
【0026】
本発明に係るFCC触媒用添加物は、好ましくは以下の物性(i)〜(vi)のうち1つ以上を備え、より好ましく以下の物性(iii)〜(vi)のうち1つ以上を備え、さらに好ましくは以下の物性(iii)、(iv)、(v)および(vi)を備える。
【0027】
(i)後述する実施例で採用された方法で測定される平均粒子径が30〜200μm、好ましくは50〜150μmである。
平均粒子径がこの範囲にあるとFCC反応において十分な流動性を持ち、反応性が良好となる。
平均粒子径は、たとえば、後述する工程(e)にて、アトマイザー回転数や噴霧圧等を変更することによって、増減させることができる。
【0028】
(ii)後述する実施例で採用された方法で測定される比表面積が70〜250m
2/g、好ましくは100〜250m
2/g、より好ましくは100〜200m
2/g、さらに好ましくは100〜175m
2/gである。
比表面積がこの範囲にあると、反応物の十分な反応場が確保され、良好な活性が得られる。また、FCC反応において耐え得る物性を持つ。
比表面積は、たとえば、変性ZSM−5型ゼオライトの含有量を増減することによって、増減させることができる。
【0029】
(iii)後述する実施例で採用された、水銀圧入法で測定される細孔径50〜500nmの範囲の細孔容積が0.3〜0.5ml/g、好ましくは0.30〜0.45ml/gである。
細孔容積がこの範囲下回ると反応物の拡散性が低下して、低級オレフィン生成量が低下する。また、この範囲を上回ると触媒のABDが低下し、FCC反応中での流動性が悪化し、更には耐摩耗性も低下する。
細孔容積は、たとえばバインダーの原料として用いる重リン酸アルミの含有量を調整することによって、増減させることができる。
【0030】
(iv)細孔直径(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)が、2.5〜5.0nmの範囲にある。
【0031】
(v)MP法による細孔容積測定(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)における、細孔径2nm以下の細孔容積が0.020〜0.130ml/gの範囲にある。
【0032】
(vi)BJH法による細孔容積測定(測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載のとおりである。)における、細孔径2.4〜50nmの範囲にある細孔容積が0.010〜0.070ml/gの範囲にある。
【0033】
<FCC触媒用添加物の製造方法>
本発明に係るFCC触媒用添加物は、たとえば、
ZSM−5型ゼオライトとアルカリ金属含有アルカリ性溶液とを、ZSM−5型ゼオライト中のSiO
2とアルカリ金属とのモル比(SiO
2:アルカリ金属)が15:1〜3:1となる条件で接触させてスラリー(A)を得る工程(a)、
前記スラリー(A)から固形分を分離し、該固形分を洗浄して洗浄物(B)を得る工程(b)、
前記洗浄物(B)を水に分散させ、次いでアルカリ金属イオンをイオン交換法により除去して、変性ZSM−5型ゼオライトのスラリー(C)を得る工程(c)、
前記変性ZSM−5型ゼオライトのスラリー(C)と、リンおよびアルミニウムを含有してなるバインダー原料と、充填材とを混合してスラリー(D)を得る工程(d)、および
前記スラリー(D)を噴霧乾燥し、次いで得られた固形物を焼成する工程(e)
を含む流動接触分解触媒用添加物の製造方法。
によって製造することができる。
【0034】
(工程(a))
工程(a)では、ZSM−5型ゼオライトとアルカリ金属含有アルカリ性溶液とを接触させる。
【0035】
前記ZSM−5型ゼオライトの合成においては、テンプレートを用いる方法(例えば、H. Mochizuki et al., Microporous and Mesoporous Materials, 145 (2011) 165-171など)やテンプレートを用いない方法(例えば特開2011−213525号公報など)で様々なSi/Al
2比のZSM−5型ゼオライトを製造することができる。
【0036】
前記ZSM−5型ゼオライトの平均粒子径は、好ましくは0.5〜10μmであり、Si/Al
2比(モル比)は、好ましくは25以上であり、その上限値はたとえば100である。
ZSM−5型ゼオライトは、好ましくはZSM−5型ゼオライトの水分散液として供される。
【0037】
前記アルカリ金属含有アルカリ性溶液は、好ましくはアルカリ金属水酸化物の水溶液である。前記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0038】
一方、アルカリ金属含有アルカリ性溶液に替えてアルカリ金属を含有しないアルカリ性溶液、たとえば水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)の水溶液を使用すると、前記変性ZSM−5型ゼオライトを得ることができない。
【0039】
ZSM−5型ゼオライトとアルカリ金属含有アルカリ性溶液とを接触させる際の条件は、たとえば以下のとおりである。
スラリーAの濃度:5〜30重量%
ZSM−5型ゼオライト中のSiO
2とアルカリ金属とのモル比(SiO
2:アルカリ金属):15:1〜3:1
時間:0.5〜5時間
温度:70〜90℃
ZSM−5型ゼオライトとアルカリ金属含有アルカリ性溶液とを接触させることにより、アルカリ金属で変性されたZSM−5型ゼオライトを含むスラリー(A)が得られる。
【0040】
(工程(b))
工程(b)では、前記スラリー(A)から固形分を分離し、該固形分を洗浄する。
固形分の分離には、ろ過等、従来公知の方法を適用することができる。
前記固形分の洗浄は、好ましくは水による洗浄である。
前記水の温度は、好ましくは25〜70℃である。
【0041】
(工程(c))
工程(c)では、前記工程(B)で得られた洗浄物(B)を水に分散させ、次いでアルカリ金属イオンをイオン交換法により除去して、変性ZSM−5型ゼオライトのスラリーを得る。
この工程では、たとえば、前記洗浄物(B)の水分散スラリーに硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等を加え反応させ、固形分を分離し、該固形分を洗浄することを繰り返えし、前記洗浄物(B)に含まれる、アルカリ金属で変性されたZSM−5型ゼオライトのイオン交換を行う。
【0042】
イオン交換の際の条件は、たとえば以下のとおりである。
時間:10分〜2時間
温度:25〜70℃
ゼオライト中のAl
2O
3とアンモニウム塩(NH
4+として)とのモル比(Al
2O
3:NH
4+):1:1〜1:10
繰り返し回数:1〜5回
【0043】
(工程(d))
工程(d)では、前記変性ZSM−5型ゼオライトのスラリーと、上述した充填材と、リンおよびアルミニウムを含有するバインダー原料とを混合してスラリー(D)を得る。
【0044】
前記バインダー原料は、本発明に係るFCC触媒用添加物に含まれる前記バインダーの原料である。前記バインダー原料としては、たとえばリン、アルミニウムおよび酸素を含有する化合物が挙げられる。前記リン、アルミニウムおよび酸素を含有する化合物としては、重リン酸アルミニウム(Al(H
2PO
4)
3)、第二リン酸アルミニウム(Al
2(HPO
4)
3)、リン酸アルミニウム(AlPO
4)が挙げられ、好ましくは重リン酸アルミニウムが挙げられる。
【0045】
前記変性ZSM−5型ゼオライトのスラリー、前記充填材、および前記バインダー原料の配合割合は、それぞれ本発明に係るFCC触媒用添加物に含まれる前記変性ZSM−5型ゼオライト、前記充填材、および前記バインダーの割合に対応するように適宜設定される。たとえば、前記変性ZSM−5型ゼオライトを20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、前記充填材を20〜73質量%、好ましくは25〜60質量%、前記バインダー原料を7〜25質量%、好ましくは9〜20質量%、より好ましくは9〜15質量%(これら3成分の合計量を100質量%とする。)としてもよい。また、前記バインダー原料については、たとえば、リンがP
2O
5換算で5〜20質量%、好ましくは6〜15質量%、より好ましくは6〜12質量%となる量としてもよい。
【0046】
各成分の混合は、従来公知の方法によって行うことができる。
スラリー(D)中の固形分濃度は、次の工程(e)の噴霧乾燥操作等を考慮すると、好ましくは25〜45質量%である。この固形分濃度を調節するために、上記の各成分と共に水を混合してもよい。スラリーはホモジナイザー等で分散処理を行ってもよい。
【0047】
(工程(e))
工程(e)では、前記スラリー(D)を噴霧乾燥し、次いで得られた固形物を焼成する。噴霧乾燥で得られた固形物は、好ましくは、焼成の前に分級される。
工程(e)の各操作は、従来公知の方法によって行うことができ、たとえば以下の条件で行うことができる。
【0048】
〜噴霧乾燥〜
噴霧乾燥はスプレー入口温度200〜450℃の範囲、出口温度110〜350℃の範囲で設定される。
〜分級〜
平均粒子径が30〜200μm、好ましくは50〜150μm程度となるように分級することが好ましい。
〜焼成〜
温度:400〜800℃
時間:0.5〜5時間
【0049】
<流動接触分解による分解物混合物の製造方法>
本発明に係る流動接触分解による分解物混合物の製造方法は、前記流動接触分解をFCC触媒および本発明に係るFCC触媒用添加物の存在下で行うことを特徴としている。
流動接触分解に供する原料炭化水素としては、未脱減圧軽油、水素化処理減圧軽油(DSVGO)、残油などが好ましい。
【0050】
FCC触媒用添加物として、併用するFCC触媒と嵩密度が同程度のものを用いるとで、FCC反応装置内での流動性を良好にすることができる。
分解物混合物の製造条件は、FCC触媒用添加物として本発明に係るFCC触媒用添加物を使用する点を除いて、従来技術を参照して適宜設定することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するがこれらの実施例に本発明は何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(工程(a)〜(c))
特開2011−213525号公報の実施例1に従って製造したZSM−5型ゼオライトを純水に加えて、濃度10質量%のZSM−5型ゼオライトの水分散スラリー10,000gを調製した。このスラリーに48質量%のNaOH水溶液166.7gを加え撹拌混合した。得られた混合物を80℃に昇温し、80℃で2時間保持した後、濾過し、ケーキを得た。洗浄は、得られたケーキに60℃の温水20,000gを4回に分けて掛けることにより行った。
【0052】
次いで、洗浄後のケーキを純水に懸濁させて10,000gのスラリーを調製し、これに硫酸アンモニウムを116.7g加え、これらを60℃に昇温し、60℃で30分撹拌混合した後、濾過し、ケーキを洗浄した。この操作、すなわち硫酸アンモニウムでのイオン交換は合計2回実施した。また、洗浄はケーキに60℃の温水20,000gを4回に分けて掛けることにより行った。
【0053】
硫酸アンモニウムでのイオン交換後の洗浄ケーキを純水に懸濁させ、濃度25質量%の変性されたZSM−5型ゼオライトのスラリー(以下「NaOH処理(a)ZSM−5スラリー」ともいう。)を調製した。NaOH処理(a)ZSM−5の物性等を表1に示す。
【0054】
(工程(d)〜(e))
前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400g(目的物(触媒用添加物。以下同様。)の質量を基準としてNaOH処理(a)ZSM−5が40質量%となる量)秤量し、これにカオリン(19.5質量%水分含有)885.5g(目的物の質量を基準として、カオリン(水分を含まない。)が47.5質量%となる量)を混合し、アルミニウムをAl
2O
3に換算して8.5質量%、リンをP
2O
5に換算して33.5質量%を含む重リン酸アルミニウム(Al(H
2PO
4)
3)水溶液(多木化学(株)製)を447.2g(目的物の質量を基準として重リン酸アルミニウムが12.5質量%となる量)となるように加え、さらに、純水を553.0g加えて濃度35質量%の混合スラリーを得た。この混合スラリーを噴霧乾燥(スプレー入口温度:260℃、出口温度:150℃)し、目開き212μmの篩にて分級して平均粒子径80μmの微小球状粒子を調製し、この粒子を600℃で2時間焼成して触媒FCC触媒用添加物Aを得た。FCC触媒用添加物Aの物性等を表2に示す。
【0055】
[比較例1]
特開2011−213525号公報の実施例1に従って製造したZSM−5型ゼオライトを純水に懸濁し、ビーズミルにより平均粒子径2.5μm以下に粉砕し、濃度25質量%のZSM−5のスラリー(以下「ZSM−5粉砕スラリー」ともいう。)を調製した。
【0056】
前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400gの前記ZSM−5粉砕スラリーに変更したこと以外は実施例1の工程(d)〜(e)と同様の操作を行いFCC触媒用添加物Bを得た。FCC触媒用添加物Bの物性等を表2に示す。
【0057】
[実施例2]
NaOH水溶液の量を250.0gに変更したこと以外は実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って濃度25質量%のスラリー(以下「NaOH処理(b)ZSM−5スラリー」ともいう。)を調製した。前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400gの前記NaOH処理(b)ZSM−5スラリーに変更したこと以外は実施例1の工程(d)〜(e)と同様の操作を行ってFCC触媒用添加物Cを得た。FCC触媒用添加物Cの物性等を表2に示す。
【0058】
[実施例3]
NaOH水溶液の量を333.4gに変更したこと以外は実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って濃度25質量%のスラリー(以下「NaOH処理(c)ZSM−5スラリー」ともいう。)を調製した。前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400gの前記NaOH処理(c)ZSM−5スラリーに変更したこと以外は実施例1の工程(d)〜(e)と同様の操作を行ってFCC触媒用添加物Dを得た。FCC触媒用添加物Dの物性等を表2に示す。
【0059】
[比較例2]
NaOH水溶液の量を583.5gに変更したこと以外は実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って濃度25質量%のスラリー(以下「NaOH処理(d)ZSM−5スラリー」ともいう。)を調製した。前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400gの前記NaOH処理(d)ZSM−5スラリーに変更したこと以外は実施例1の工程(d)〜(e)と同様の操作を行ってFCC触媒用添加物Eを得た。FCC触媒用添加物Eの物性等を表2に示す。
【0060】
[比較例3]
ZSM−5ゼオライトに加える純水の量を変更して33.3質量%のZSM−5型ゼオライトの水分散スラリー3000gを調製し、NaOH水溶液の量を75gに変更したこと以外は実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って濃度25質量%のスラリー(以下「NaOH処理(e)ZSM−5スラリー」ともいう。)を調製した。前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを2,400gの前記NaOH処理(e)ZSM−5スラリーに変更したこと以外は実施例1の工程(d)〜(e)と同様の操作を行って、FCC触媒用添加物Fを得た。FCC触媒用添加物Fの物性等を表2に示す。
【0061】
[比較例4]
実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って、濃度25質量%のNaOH処理(a)ZSM−5スラリーを調製した。
SiO
2濃度17質量%の水ガラスに濃度25質量%の硫酸を連続的に加えて、pH1.6、温度40℃、SiO
2濃度12.5質量%のシリカヒドロゾルを調製した。目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準としてSiO
2含有量が17.5質量%となるようにこのシリカヒドロゾルを秤量し、このシリカヒドロゾルに、カオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを、それぞれカオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5の含有量が、目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準として42.5質量%および40質量%となるように加え、pH1.88、35℃の混合スラリーを得た。この混合スラリーに濃度20質量%の水酸化マグネシウムスラリーを添加し、pH3.60、35℃の混合スラリーを調製した。この混合スラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径80μmの微小球状粒子を調製した後、微小球状粒子を、Na
2O含有量が0.1質量%以下、MgO含有量が0.1質量%以下になるまで5質量%硫酸アンモニウム水溶液で洗浄し、次いで135℃の乾燥機内で10時間乾燥させた。乾燥した微小球状粒子に対して、目的物の質量を基準として、P
2O
5に換算したリンの割合が6質量%になるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸させて得られたものを135℃で一晩乾燥させ、次いで600℃で2時間焼成してFCC触媒用添加物Gを得た。FCC触媒用添加物Gの物性等を表2に示す。
【0062】
[比較例5]
実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って、25質量%のNaOH処理(a)ZSM−5スラリーを調製した。
目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準として含有量が20質量%となるようにシリカゾル(日揮触媒化成(社)製 カタロイドSI-30)を秤量し、このシリカゾルにカオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを、それぞれカオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5の含有量が、目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準として40質量%および40質量%となるように加え、pH9.0、25℃の混合スラリーを得た。この混合スラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径80μmの微小球状粒子を調製した後、微小球状粒子を、Na
2O含有量が0.1質量%以下になるまで5質量%硫酸アンモニウム水溶液で洗浄し、次いで135℃の乾燥機内で10時間乾燥させた。乾燥した触媒粒子に対して、目的物の質量を基準として、P
2O
5に換算したリンの割合が6質量%になるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸させて得られたものを135℃で一晩乾燥し、次いで600℃で2時間焼成してFCC触媒用添加物Hを得た。FCC触媒用添加物Hの物性等を表2に示す。
【0063】
[比較例6]
実施例1の工程(a)〜(c)と同様の操作を行って、前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを調製した。
目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準として塩化アルミニウムの含有量が15質量%となるように、アルミニウム濃度がAl
2O
3濃度に換算して23.4質量%の塩基性塩化アルミニウム溶液を秤量し、この塩基性塩化アルミニウム溶液にカオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを、それぞれカオリンおよび前記NaOH処理(a)ZSM−5の含有量が、目的物の質量(ただし、P
2O
5の質量を含めない。)を基準として45質量%および40質量%となるように加え、pH3.11、36℃の混合スラリーを得た。この混合スラリーに濃度20質量%の水酸化マグネシウムスラリーを添加し、pH5.6、35℃の混合スラリーを得た。この混合スラリーを噴霧乾燥して、平均粒子径80μmの微小球状粒子を調製した後、微小球状粒子を、Na
2O含有量が0.1質量%以下、MgO含有量が0.1質量%以下になるまで5質量%硫酸アンモニウム水溶液で洗浄し、次いで135℃の乾燥機内で10時間乾燥させた。乾燥した微小球状粒子に対して、目的物の質量を基準として、P
2O
5に換算したリンの割合が10質量%になるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液を含浸したものを135℃で一晩乾燥させ、600℃で2時間焼成してFCC触媒用添加物Iを得た。FCC触媒用添加物Iの物性等を表2に示す。
【0064】
[実施例4]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを目的物の質量を基準として前記NaOH処理(a)ZSM−5が20質量%となるように秤量し、重リン酸アルミニウム溶液を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が12.5質量%となるように加え、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Jを調製した。FCC触媒用添加物Jの物性等を表2に示す。
【0065】
[実施例5]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記NaOH処理(a)ZSM−5スラリーを目的物の質量を基準として前記NaOH処理(a)ZSM−5が60質量%となるように秤量し、重リン酸アルミニウム溶液を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が12.5質量%となるように加え、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Kを調製した。FCC触媒用添加物Kの物性等を表2に示す。
【0066】
[実施例6]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記重リン酸アルミニウム溶液の量を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が9.0質量%となる量に変更し、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Lを調製した。FCC触媒用添加物Lの物性等を表2に示す。
【0067】
[比較例7]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記重リン酸アルミニウム溶液の量を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が5.0質量%となる量に変更し、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Mを調製した。FCC触媒用添加物Mの物性等を表2に示す。
【0068】
[実施例7]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記重リン酸アルミニウム溶液の量を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が20.0質量%となる量に変更し、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Nを調製した。FCC触媒用添加物Nの物性等を表2に示す。
【0069】
[比較例8]
実施例1の工程(d)〜(e)において、前記重リン酸アルミニウム溶液の量を、目的物の質量を基準として、Al
2O
3およびP
2O
5に換算したアルミニウムおよびリンの濃度の合計が30.0質量%となる量に変更し、カオリン含有量をバランスとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、FCC触媒用添加物Oを調製した。FCC触媒用添加物Oの物性等を表2に示す。
【0070】
<評価方法>
(各元素の含有量の測定方法)
各元素の質量分析は、Naは原子吸光光度計、Na以外は誘導結合プラズマ分光分析装置にて化学分析を行った。具体的には、ゼオライト(ZSM−5)または触媒は硫酸とフッ化水素酸を加え加熱し、乾固させ、乾固物を濃塩酸に溶解し、水で濃度10〜100質量ppmに希釈した溶液に調製し、株式会社 日立ハイテクサイエンス社製の原子吸光光度計(Z−2310)、 株式会社 島津製作所製 誘導結合プラズマ分光分析装置(ICPS−8100)にて分析した。波長は、Na:589.6nm,Al:396.2nm,Si:251.6nm,P:178.3nmである。
【0071】
また、SiO
2溶出量は、ゼオライト中のSiO
2含有量に対する、NaOH処理でろ液中に溶出したSiO
2量の割合を示した。ろ液は水で希釈してICPS−8100にて分析した。
【0072】
(ゼオライトの平均粒子径)
試料の粒度分布の測定を、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA−950V2)にて行った。具体的には、光線透過率が70〜95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度 2.8L/min,超音波 3min、反復回数 30で測定した。メディアン径(D50)を平均粒子径として採用した。
【0073】
(ゼオライトおよびFCC触媒用添加物の細孔直径、比表面積、細孔容積)
比表面積(SA)、細孔径が50nm以下の細孔の細孔容積の測定は、マイクロトラック・ベル株式会社製のBELSORP−mini Ver2.5.6にて行った。具体的にはゼオライトまたは触媒を500℃で1時間前処理した試料を用い、吸着ガスには窒素を用いて測定した。ゼオライト(ZSM−5)とFCC触媒用添加物の比表面積(SA)はBET法、ゼオライト(ZSM−5)の外表面積とFCC触媒用添加物のマトリックスSA(MSA)はt−plot法、FCC触媒用添加物のゼオライトSA(ZSA)はSAとMSAの差にて算出した。また、ゼオライト(ZSM−5)とFCC触媒用添加物の細孔径が2nm以下のマイクロポアの容積はMP法、細孔径が2.4〜50nmのメソポアの容積はBJH法にて算出した。
【0074】
(ゼオライトのアンモニア吸着量)
ゼオライトのアンモニア吸着量は、マイクロトラック・ベル株式会社のBELCAT Version2.5.5にて昇温脱離(TPD)法にて測定した。具体的にはゼオライトは500℃で1時間前処理した試料を用いた。前処理した試料0.2gをTPD装置内にて500℃で1時間、ヘリウム流通下で熱処理し、その後100℃まで冷却した。100℃で30分間アンモニアを吸着させ、同温度、ヘリウム流通下で30分間脱気させた。その後100℃から600℃まで10℃/分で昇温する際のアンモニア脱離量をTCDにて検出し、その脱離量より、アンモニア吸着量を算出した。
【0075】
(FCC触媒用添加物のマクロ細孔分析)
FCC触媒用添加物のマクロ細孔径とマクロ細孔容積の測定は、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製の水銀ポロシメーター(POREMASTER Ver7.01)にて行った。具体的にはFCC触媒用添加物を500℃で1時間前処理した試料を水銀圧入法で水銀の接触角130°、表面張力480dyn/cmの値を用いて測定した。平均細孔直径(PD
A)はFCC触媒用添加物の細孔分布を累積細孔分布曲線で表し、細孔径50〜500nmの範囲の全細孔容積(PV
T)の50%に該当する累積細孔分布曲線上の点に対応する細孔直径をいう。
【0076】
(FCC触媒用添加物の平均粒子径)
試料の粒度分布の測定は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA−300)にて行った。具体的には、光線透過率が70〜95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度 2.8L/min,超音波 3min、反復回数 30で測定した。メディアン径(D50)を平均粒子径として採用した。
【0077】
(見かけ嵩密度)
内容積100mlの円筒型シリンダーに、シリンダーの上端から高さ10cmの位置から流動接触分解触媒を落下、充填し、上面を平坦化したときのFCC触媒用添加物の質量(W)gを計測し、W/100(g/ml)として見かけ嵩密度を求めた。
【0078】
(平均摩耗率)
FCC触媒用添加物を前処理として、600℃で2時間焼成した後、篩いにより40μm以下の微粉を除去した微小球状粒子を測定用試料とした。次いで、「大石義昭、"触媒の摩耗強度法"触媒化成技報、Vol.13、No.1、65−66頁(1996)」に記載の装置を用い、前記装置を構成する触媒管内に微小球状粒子を流動させ、開始後12時間から20時間経過する間の摩耗量を測定し、1時間当たりの摩耗量を表記した。
【0079】
(触媒性能)
実施例および比較例のFCC触媒用添加物A〜OをACE−MATを用い、同一原料油、同一反応条件下で触媒の評価試験を行った。触媒の評価試験を行う前に、各触媒は、750℃で13時間、100℃スチーム雰囲気下で前処理をした。
【0080】
FCC平衡触媒に前処理したFCC触媒用添加物を、混合触媒中のZSM―5量が0.96質量%の一定量となるようにブレントして混合触媒を調製し、ACE−MAT活性試験装置で混合触媒の評価をした。0.96%の一定量とは、たとえばZSM−5含有量または変性されたZSM−5の含有量が20%のFCC触媒用添加物の場合には混合触媒中にFCC触媒用添加物が4.8質量%となる量であり、ZSM―5含有量または変性されたZSM−5の含有量が40%のFCC触媒用添加物の場合には2.4質量となる量である。
【0081】
反応条件は、以下のとおりであった。
・反応温度:510℃
・原料油: 脱硫減圧軽油(DSVGO)100質量%の油
・WHSV:8hr
-1
・触媒/油比:5質量%/質量%
更に、生成液について、Agilent社製ガスクロマトグラフィー〔GC System HP6890A〕によりガソリン留分を分析した。
評価結果を表3−1、3−2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3-1】
【0085】
【表3-2】