【文献】
European Journal of Pharmaceutical Sciences,2011年,44,pp. 522-533
【文献】
平山令明,「有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−」,丸善株式会社,2008年 7月25日,pp. 57-58
【文献】
Pharmaceutical Research,2008年,25(10),pp. 2283-2291
【文献】
Crystal Growth & Design,2008年,8(8),pp. 2753-2764
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0.001%〜5%の濃度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロピオン酸フルチカゾンのナノ結晶の懸濁液と、薬学的に許容される水性の賦形剤とを含む、局所製剤の形態の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0089】
発明の詳細な説明
本発明は、投与(例えば、局所用または鼻腔内投与)の医薬品規格を満たすように最適化された疎水性治療剤(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)の無菌ナノ結晶(場合によってナノ懸濁液)を生成するための方法および組成物について記載している。本方法により生成された組成物は、理想的には、炎症性障害、例えば、眼の障害および皮膚の障害の局所的処置に適している。本方法により生成された組成物はまた、理想的には、例えば、
炎症性障害、呼吸障害、自己免疫性疾患およびがんに対して、組成物中の疎水性薬物が使用される、障害の全身性または非全身性処置に適している。
【0090】
本発明の方法により作製された薬物ナノ結晶は、それを必要とする対象に投与される場合、特定の投与経路、例えば、点眼剤、ゲル剤、軟膏剤、乾燥粉末、ゲル剤、エアゾール剤、またはコロイド状懸濁液(例えば液体懸濁液)の形態に対して適切である様々な形態にすることができる。例えば、薬物ナノ結晶は、「連続的」相であるもう1つの相の中に懸濁されている「分散した」相である。ナノ懸濁液とは、適切な方法で生成され、適切な安定剤または表面安定剤で安定化されている、ナノサイズの薬物粒子のコロイド状分散液として定義することができる。特に明記しない限り、「安定剤」、「表面安定剤」および「立体安定剤」という用語は、本明細書中で交換可能なように使用される。一実施形態では、薬物は、全身性または局所的経路を介する送達に対して、送達または製剤化される。例えば、薬物は、直接送達または塗布器(例えば、ブラシまたはスワブ)を介する送達に対して、送達または製剤化される。例えば、薬物は、組織、例えば、眼組織および/または付属器への局所的経路を介する送達に対して、送達または製剤化される。薬物は、眼内、硝子体内、網膜下、嚢内、上脈絡膜内、テノン嚢下、結膜下、腔内、眼窩内、カルデサク眼球後部、または球周囲の注射を介する送達に対して送達または製剤化することができる。薬物はまた、組織、例えば、眼組織および/または付属器への局所用適用を介する送達に対して送達または製剤化することができる。薬物はまた、移植可能または外科的(例えば薬物送達)デバイスを介する送達に対して送達または製剤化することができる。
【0091】
不溶性の薬物のナノ懸濁液、例えばナノ結晶懸濁液は、バイオアベイラビリティーを強化することによって、その有効濃度を劇的に低下させることができる。「バイオアベイラブル」とは、細胞による吸収に対して分子的に利用可能である、溶解された薬物を意味する。
【0092】
プロピオン酸フルチカゾンは、0.14マイクログラム/mlの溶解度を有し、水にほぼ不溶性である。大部分の眼用懸濁液は水性であるため、不溶性薬物の粒径が、溶解した薬物(またはバイオアベイラブルな薬物)への任意の所与の時点におけるその溶解速度を決定する。バイオアベイラビリティーを増強させるための1つの方法は、完全に溶解した薬物溶液を確保することである。不溶性薬物に対して、水不溶性薬物のバイオアベイラビリティーを増強させるための方式は、微粉化したまたはナノサイズの剤形の利用である。プロピオン酸フルチカゾンの場合、溶解速度は、粒径を低下させることによって劇的に増強する。サイズ800〜900nmのプロピオン酸フルチカゾン粒子の放出速度は、10ミクロンより大きな粒子の放出速度の数倍である。よって、プロピオン酸フルチカゾンのナノ懸濁液は、有害な副作用を引き起こさない濃度で効果的である強力な医薬を生成する潜在能力を有する。より高い濃度において、プロピオン酸フルチカゾンは、緑内障および白内障をもたらす眼内圧の上昇を引き起こす可能性がある。プロピオン酸フルチカゾンの効果的製剤は、薬物がナノ粒子、またはより水溶性である定形形態である場合、より低い濃度で想定することができる。プロピオン酸フルチカゾンについて、商業化された薬物製品の有効濃度は、0.005%(Cutivate)および0.5%(Flonase)の範囲である。よって、その適応症に対して以前に想定していなかった濃度で薬物を「効果的」にすることは、驚くべきかつ予期しない結果である。同様に、もう1つの疎水性薬物であるトリアムシノロンアセトニドについては(28℃において17.5μg/mLの水溶性)、薬物が、例えば、本発明の方法を介して生成されたナノ粒子形態である場合、TAの効果的な製剤は、ある特定の適応症に対して以前に想定されていなかったTAのより低い濃度で予想外に得ることができる。
【0093】
よって、即時的解決、次いで持続的解決を必要とする局所用医薬の設計において、生体接着性もあるナノ結晶(nanocrystaline)懸濁液は、同時にバイオアベイラビリティーを増
加しながら、薬物の滞留時間の強化を支援することが推測される。本発明において記載されている例において、プロピオン酸フルチカゾン懸濁液は、眼瞼の炎症および感染を特徴とする眼瞼炎の処置のために開発された。しかし、本明細書に記載されているプロピオン酸フルチカゾン組成物はまた、他の眼の炎症状態の予防または処置に対しても利用することができる。例えば、本発明に記載されている組成物は、手術後に術後のケアのために使用することができる。例えば、本発明の組成物は、手術後の疼痛を制御するため、手術、アルゴンレーザー線維柱帯形成術(trabceuloplasty)およびフォトリフラクティブ手術の
後の炎症を制御するために使用することができる。さらに、プロピオン酸フルチカゾン組成物は、他の眼の障害、例えば、眼のアレルギー、アレルギー性結膜炎、嚢胞様黄斑浮腫ブドウ膜炎、またはマイボーム腺機能障害を処置するために使用することができる。さらに、プロピオン酸フルチカゾン組成物は、皮膚の障害、例えば、アトピー性皮膚炎、皮膚の病変、湿疹、乾癬、または発疹を処置するために使用することができる。
【0094】
疎水性薬物の安定なナノ結晶の製作の難題
ナノ懸濁液の製作の成功には、2つの主要な難題がある。第1の難題は、所望のサイズである粒子の生成である。水に不溶性である大部分の薬物に対して、所望の粒径は、低いnmから高いnmの範囲にわたる(10〜990nm)サブミクロンである。第2のステップは、粒径を長期的に維持することである。両ステップとも困難である。
【0095】
薬物懸濁液は、通常「トップダウン」技術により調製され、このトップダウン技術により分散液は力学的に破壊されてより小さな粒子になる。湿式ミリング、超音波処理、顕微溶液化および高圧均質化などの技術は、微粉化したおよびナノサイズの粒子を作り出すためのこの技法の例である。高圧均質化において、このプロセスから生成されるナノ結晶サイズは、薬物材料の硬度ばかりでなく、均質化の圧力およびサイクル数にも依存する。しかし、高圧均質化は、安定剤の種類には依存しない。よって、安定剤の効率、すなわち、安定剤が粒子の凝集を防止することができるかどうかは、プロセシング後および貯蔵中に示される。したがって、使用される特定のプロセスにおける粒子形成に関与する現象を理解することが非常に重要である。
【0096】
ミリングまたは機械的な粒径減少法の間、2つの反するプロセスがミリング容器内で相互作用している:材料のより小さな粒子へのフラグメント化および粒子間衝突を介する粒子の増大。これら2つの反対の現象の出現は、プロセスパラメーターに依存する。多くの場合ある時間点の後で、粒径は一定のレベルに達成し、ミリングを継続しても粒径はさらに低減しない。ある場合には粉砕時間の増加は、ミリング速度の低減により粒径の低減を達成する一方で、材料の粒径および不均質性のゆっくりとした増加さえもたらすこともある。物理的形態の変化または非晶質化もまたミリング中に起こり得る。ある重要な圧力値より上の機械的な圧力は、格子振動を増加させ、結晶格子を不安定にする。欠陥の数が増加し、非晶質状態への変換が、重要な欠陥濃度より上で生じる。粒子減少技法の間に薬物結晶に課された高いストレスが結果として、結晶構造の不安定化、結晶化度の消失、および時には、より安定性の低い多形形態へのシフトを生じる。結晶構造内の非晶質領域の形成は、懸濁液が安定な、結晶性形態へとシフトして戻るにつれて、粒径のゆっくりとした増加をもたらす。
【0097】
ナノ結晶製作に対するもう1つの難題は、粒子のサイズのゆっくりとした増大である、これはまた「オストワルド熟成」とも呼ばれている。コロイド状懸濁液における結晶増大は、オストワルド熟成として一般的に公知であり、粒径およびサイズ分布における変化に関与している。オストワルド熟成は、粒子のサイズに対するこれらの溶解依存性から生じる。Ostwald−Freundlich方程式によると、小さな結晶は、より大きな結晶より高い飽和溶解度を有し、小さな結晶と大きな結晶との間に薬物濃度勾配を作り出す。その結果、分子は、小さな結晶の周辺のより高い濃度から、より低い薬物濃度を有す
るより大きな結晶の周りの領域へと拡散する。これによって、大きな結晶の周りに過飽和溶液状態が生成し、大きな結晶への薬物結晶化をもたらす。この拡散プロセスにより、小さな結晶の周辺には不飽和溶液が残り、小さな結晶からバルクメディア(medium)への薬物分子の溶解を引き起こす。この拡散プロセスは、全ての小さな結晶が溶解するまで継続する。オストワルド熟成は、基本的に、大きな粒子結晶が小さな結晶を犠牲にする工程である。これは続いて、結晶サイズおよびコロイド状懸濁液のサイズ分布を、より高い範囲へシフトさせる。連続相内に溶解した薬物を有する分散液もまた粒径における不安定さを常にもたらす。
【0098】
ナノ結晶でのもう1つの難題は、凝集または粒子の群がりである。安定剤は、分散液の安定化に決定的役割を果たす。安定剤は、粒子表面を吸着することによって、整然とした、適切な安定化を達成しなければならない。さらに、吸着は、長時間持続するだけの十分な強さを有するべきである。安定剤の吸着は、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールスもしくはイオン双極子相互作用により、または疎水性効果により生じ得る。
【0099】
安定剤の官能基と薬物材料との間に可能な相互作用は、薬物と安定剤のペア選択する前に常に考慮する必要がある。多くの薬物は、フェノール、アミン、ヒドロキシル基、エーテルまたはカルボン酸基などの官能基を含有する構造を有し、これらは相互作用することが可能である。強いイオン性相互作用、水素結合、双極子誘発性の力、および弱いファンデルワールスまたはロンドン相互作用は、粒子形成を増強または撹乱し得る。安定剤の濃度レベルもまた重要である。吸着/領域は、普通粒径に依存しない表面特性である。吸着される量は表面積に相関するので、これは、安定剤の総量が結晶サイズに直接関係することを意味する。吸着による遊離エネルギーの減少が付随的なエントロピー損失を埋め合わせる際に、ポリマー分子の結晶表面への吸着が生じる。立体安定化は吸着/脱離プロセスに基づくので、プロセスの変動要素、例えば、安定剤濃度、粒径、溶媒などは安定剤の有効性に対して重要な因子である。
【0100】
結晶サイズを安定化させるもう1つの方式は、特定の安定剤の存在下で粒子状懸濁液をスプレー乾燥させるという、プロピオン酸フルチカゾンのエアゾール化微小粒子を生成するために使用されてきた技法である。トップダウン法の組合せもまた、所望のサイズの粒子を生成するために使用されている。粒径を安定化させるためのまたもう1つの方法は、粒子状懸濁液を凍結乾燥させることである。
【0101】
ナノ懸濁液を作り出すために一般的に使用されている他の方法は、貧溶媒沈殿法であり、この場合、薬物溶液はナノ結晶として貧溶媒中に沈殿させる。この手法は「ボトムアップ」結晶化手法と呼ばれ、この場合、ナノ結晶はインサイチュー(in situ)で生成される
。ナノ結晶としての薬物の沈殿は普通、均質化または超音波処理が付随して起こる。薬物が、沈殿以前にアセトンなどの有機溶媒中に溶解している場合、有機溶媒は、粒子の形成後に除去しなければならない。これは普通、溶媒の蒸発により実施される。この蒸発ステップは粒子形成のこの方法に難題を提示する。これは、蒸発プロセスは粒子安定化のダイナミクスを変化させる可能性があるからで、多くの場合粒径の急速な増加が見られる。さらに、残留レベルの有機溶媒は、多くの場合、製剤に使用された添加剤に結合したままである。よって、この方法は探究されてきたにもかかわらず、その難題を有し、一般的には好ましくない。
【0102】
本発明において定義されたプロセスにより生成された疎水性薬物のナノ結晶は、除去する必要がある有毒性有機溶媒を使用せず、上記セクションにおいて定義された粒子の不安定さを示さない。
【0103】
本発明の中心的特徴
本発明は、薬物のナノ結晶(例えば疎水性薬物)またはナノ結晶を含有する懸濁液を生成することができる超音波結晶化/精製プロセスを提供する。本プロセスは、(a)ナノ結晶の生成前に全て成分の滅菌濾過を取り込み、(b)所望のサイズの結晶を生成し、(c)特定の立体安定化組成物を、特定の温度でのアニーリングと組み合わせて使用することによって、ナノ結晶を安定化させ、(d)元の連続相をもう1つの連続相で置き換えることによって、粒子を精製するための柔軟性を処方者に提供し、(d)最終の製剤媒体中の薬物の所望の最終濃度を達成するための柔軟性を提供する。ステップ(d)では、粒子を所望のサイズで生成および安定化させる組成物は、イオン強度、ポリマー分子量および構造およびpHのパラメーターに特別な意味合いを持たせ、これらに依存するので、精製ステップの意義が本発明の主要および重要な態様となり得る。粒子を作り出すために使用される組成物は普通、最終製剤または最終薬物の濃縮物として処方者が心に描く組成物ではない。これはスプレー乾燥または凍結乾燥により対処される。このプロセスで生成されたナノ結晶は、100nm〜500nm、500〜900nm、400〜800nmおよび900nm〜10000nmの範囲のサイズである。好ましくは、ナノ結晶は400〜800nm(例えば、400〜600nm)の範囲のサイズである。本発明のナノ結晶のサイズおよびサイズ分布は、従来の方法、例えば、動的光散乱(DLS)、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、およびX線パワー回折(XRPD)により決定することができる。本発明において、ナノ結晶は、最終の生体適合性の、組織適合性のある緩衝液と交換することにより精製される。
【0104】
2部プロセス:本プロセスは、ステップ1およびステップ2として定義される、ナノ結晶を調製するための2部プロセスであることを特徴とする。場合によって、このプロセスは一ステップであり、この場合最終製剤は一ステップで(ステップ1のみ)で調製される。この2ステッププロセス(ステップ1、続いてステップ2)に対して、本プロセスの第1の部分は、所望のサイズのナノ結晶生成である(ステップ1)。本プロセスの第2の部分は、所望の薬物濃度で懸濁された高度に純粋なナノ結晶、および最終製剤に対して最適化された添加剤組成物を生成するためのナノ結晶の精製である(ステップ2)。
【0105】
薬物濃度:好ましい実施形態では、初期のナノ結晶濃度(ステップ1の後)は薬物0.1%(例えばコルチコステロイド、例えばFP)であるが、最終製剤は10%まで高くてもよい(ステップ2の後)。懸濁液の初濃度は0.1%未満であってよく(ステップ1)、同じ媒体組成物または異なる媒体組成物を用いて、精製プロセス中に10%に濃縮し得る(ステップ2)。懸濁液の初濃度は、0.1%または0.1%未満、好ましくは0.06%であってよい。初期の懸濁液は、同じ媒体組成物または異なる媒体組成物を用いて、より低い濃度へと精製されてもよい(ステップ2)。好ましい組成物の中で、初期の懸濁液は、0.06%で形成し(ステップ1)、同じ初期の媒体組成物または異なる媒体組成物を用いて、0.06%以下に精製してもよい(ステップ2)。ナノ懸濁液の初濃度は、1%、1%〜0.5%、0.5%〜0.1%、0.1%〜0.05%、0.05%〜0.01%、0.01%〜0.005%、0.005%〜0.001%、0.001%〜0.0005%、0.0005%〜0.0001%、0.0001%〜0.00001%であってよい。
【0106】
ステップ1は、FDA認可された添加剤中に薬物を溶解させて、第I相を作り出すことを含む。次いで、溶液(第I相)を、0.22ミクロンPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルタを介して滅菌濾過する。ある粘度、pHおよびイオン強度で、立体安定剤の特定の組成物を含有する溶液を調製する。これが第II相である。一実施形態では、薬物はステロイド性薬物である。好ましい実施形態では、薬物はプロピオン酸フルチカゾンである。別の好ましい実施形態では、薬物はフロ酸フルチカゾンである。別の実施形態では、薬物はプロピオン酸フルチカゾンの任意の塩形態である。
【0107】
一実施形態では、ステップ1は以下を含む:
疎水性治療剤と疎水性治療剤の溶媒とを含む第I相溶液(例えば滅菌溶液)を準備するステップ;
少なくとも1種の表面安定剤と疎水性治療剤の貧溶媒とを含む第II相溶液(例えば滅菌溶液)を準備するステップ;
第I相溶液と第II相溶液とを混合して、第III相混合物を得るステップであって、この混合が25℃以下の第1の温度で実施されるステップ;
ある期間(T
1)、例えば、疎水性治療剤の複数のナノ結晶を含む第III相懸濁液を生成するための期間の間、第1の温度を超える第2の温度で第III相混合物をアニーリングするステップ、および
例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーション、中空繊維カートリッジ濾過、または遠心分離(例えば連続流遠心分離)により、ナノ結晶を場合によって精製するステップ。
【0108】
場合によって、遠心分離は、約39,000×g、約1.6L/分で実施する。
【0109】
場合によって、ステップ1は、アニーリングステップ後および精製ステップ前に、溶液で希釈するステップを含む。例えば、この希釈ステップは、ナノ結晶を溶液中に再分散させることを含む。希釈のために使用される溶液は、約0.002〜0.01%の(例えば
50ppm±15%)塩化ベンズアルコニウム、0.01〜1%のポリソルベート80(例えば約0.2%)、0.01〜1%のPEG40ステアレート(例えば約0.2%)、緩衝
剤(例えば、クエン酸塩緩衝剤、pH6.25)、および水を含むことができる。精製中
に(例えば遠心分離中)に形成されたペレットは、最終製剤中に再分散させる(例えば図
38を参照)。ペレットを適切な水溶液に加えることによって、混合器(例えば、Silverson Lab Mixer)内に含有されたナノ結晶を再分散させることができる。再分散を、6000RPMで、室温で約45分間以上(例えば約60分間以上)実施することによって、眼または皮膚の投与に対してFDA基準を満たしている最終製剤を得ることができる。製剤は、1種または複数の薬学的に許容される添加剤を含有してもよい。
【0110】
例えば、疎水性治療剤はステロイドである。
【0111】
例えば、疎水性治療剤はプロピオン酸フルチカゾンまたはトリアムシノロンアセトニドである。
【0112】
例えば、少なくとも1種の表面安定剤は、セルロース系表面安定剤、例えばメチルセルロースを含む。
【0113】
例えば、メチルセルロースは100kDa以下の分子量を有する。
【0114】
例えば、第II相溶液に使用されるセルロース系安定剤(例えばメチルセルロース)は、4cP〜50cPの間、例えば、15〜45cPの粘度を有する。
【0115】
例えば、第1の温度は、例えば20℃以下、8℃以下、例えば<4℃であるか、または<2℃であるか、または0〜4℃である。
【0116】
例えば、第2の温度、すなわちアニーリング温度は、20℃〜60℃の間である。
【0117】
例えば、アニーリングステップは、ナノ結晶の粒径を低減させるため、および/またはナノ結晶を硬化させるため(例えば、ナノ結晶の硬度を増加させるため)に必要である。
【0118】
例えば、連続流遠心分離は、約39,000xg、約1.6L/分で実施する。
【0119】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、10nm〜10000nmの間(例えば、50〜5000nm、80〜3000nm、100〜5000nm、100〜2000nm、100〜1000nm、または100〜800nm)の平均サイズを有する。
【0120】
例えば、本明細書に記載されている方法により生成されたナノ結晶は、ミクロ針(すなわち、27〜41ゲージ)による送達に対して適切な粒径を有する。例えば、眼の上脈絡膜の空間に注入する場合、ナノ結晶は眼の後方に効率的に送達することができるか、または薬物が、眼の最前部組織、例えば、レンズ、毛様体の本体、硝子体などにまつわりつくことなく標的組織を処置するように、よりゆっくりと溶解することによって、眼の副作用、例えば、高い眼内圧(IOP)または白内障の形成を最小限に抑える。
【0121】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、狭い範囲のサイズ分布を有する。言い換えると、ナノ結晶はサイズが実質的に均一である。
【0122】
例えば、ナノ結晶のD90とD10値の比率は、10より低い、例えば、5より低く、4より低く、3より低く、2より低くまたは1.5より低い。例えば、ナノ結晶は、50〜100nm、100〜300nm、300〜600nm、400〜600nm、400〜800nm、800〜2000nm、1000〜2000nm、1000〜5000nm、2000〜5000nm、2000〜3000nm、3000〜5000nm、または5000〜10000nmのサイズ分布を有する。
【0123】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、5000nm以下(例えば、4000nm以下、3000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、または80nm以下)D90値を有する。
【0124】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、メチルセルロースでコーティングされている。
【0125】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたメチルセルロースコーティングされたナノ結晶は安定しており、例えばこれらは凝集しない。
【0126】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、400〜600nmのサイズ分布を有するプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶である。
【0127】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、300〜400nmのサイズ分布を有するトリアムシノロンアセトニドナノ結晶である。
【0128】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、液体懸濁液またはドライパウダーのいずれかの形態である。
【0129】
例えば、本明細書に記載されている方法で生成されたナノ結晶は、0.0001%から10%まで、20%まで、30%まで、40%まで、50%まで、60%まで、70%まで、80%まで、90%まで、99%まで、または99.99%までの濃度を有する。
【0130】
例えば、第I相溶液を第II相溶液と混合する際に超音波処理が適用される。
【0131】
例えば、メチルセルロースは、第II相溶液中で、0.1%〜0.5%(例えば、0.2〜0.4%)の濃度範囲である。
【0132】
例えば、第II相溶液は、第2の安定剤、例えば塩化ベンズアルコニウムを、0.005%〜0.1%(例えば、0.01〜0.02%)の濃度範囲でさらに含む。
【0133】
例えば、疎水性薬物がプロピオン酸フルチカゾンである場合、第II相溶液はpH5.5を有する。
【0134】
例えば、疎水性薬物がトリアムシノロンアセトニドである場合、第II相溶液はpH約4を有する。
【0135】
例えば、第I相溶液の溶媒はポリエーテルを含む。
【0136】
例えば、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびこれらの混合物から選択される。
【0137】
例えば、ポリエーテルは、PEG400、PPG400、PEG40ステアレート、およびこれらの混合物から選択される。
【0138】
例えば、PEG400は、第I相溶液中で、約20〜35%の濃度である。
【0139】
例えば、PPG400は、第I相溶液中で、約65%〜75%の濃度である。
【0140】
例えば、第I相溶液の溶媒は、1種または複数のポリオール、例えば、モノマー性ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール)およびポリマー性ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール)を含む。
【0141】
例えば、第I相溶液の溶媒は、1種または複数のモノマー性ポリオールを含む。
【0142】
例えば、第I相溶液は表面安定剤をさらに含む。
【0143】
例えば、第I相溶液中の表面安定剤は、例えば、第I相溶液中で約7.0%〜15%の濃度のTween80である。
【0144】
例えば、第I相溶液中での疎水性薬物の濃度は、約0.1〜10%、例えば、0.1〜5.0%、0.2〜2.5%または0.4〜10%である。
【0145】
例えば、疎水性薬物がFPである場合、第I相溶液中のFPの濃度は約0.1〜10%、例えば0.4〜1.0%である。
【0146】
例えば、第I相溶液と第II相溶液との容量比は、1:10〜10:1(例えば、1:3〜3:1、または1:2〜2:1、または約1:1)の範囲である。
【0147】
例えば、セルロース系表面安定剤は、100kDa以下の分子量を有するメチルセルロースであり、第1の温度は0℃〜5℃の間の温度であり、第2の温度は10℃〜40℃の間の温度であり、T
1は少なくとも8時間である。
【0148】
本発明の方法は、極小サイズ(例えば<75nm)からより大きなサイズ(例えば5,000nm)までの狭い粒径分布(PSD)範囲の薬物結晶の製造を可能にし、特定のサイズの粒子を、単独で、あるいは、本明細書に記載されている方法を介して作製された同じ薬物結晶のより小さなサイズもしくはより大きなサイズの粒子と組み合わせて、または異なる形態の薬物(例えば、均質化により得たストック材料または形態)または放出、分布、代謝もしくは排除を制御するための、またはこのような薬物の組織浸透または組織滞留時間を増強するための他の添加剤(例えば、溶媒、粘滑薬、粘膜接着剤)と組み合わせて使用することを可能にする。
【0149】
一実施形態では、薬物懸濁液は、貧溶媒中で沈殿する薬物を分散させるために、音波処理(例えば超音波処理)または超均質化を使用して、静的なバッチ式反応器内で調製する。一実施形態では、超音波処理プロセスは、超音波処理槽内に配置して、流体全体に超音波エネルギーを提供することによって遂行される。別の実施形態では、超音波処理プロセスは、プローブのソノトロードを使用して遂行する。さらに別の実施形態では、薬物の貧溶媒中への沈殿中の分散ステップは高圧均質化である。
【0150】
別の実施形態では、薬物懸濁液は、超音波処理または超均質化中にフロー型反応器の中で調製する。溶液の温度は摂氏0〜4度または2〜8度であってよい。別の実施形態では、溶液の温度は摂氏22〜30度であってよい。フロー型反応器は、温度制御のためジャケット付きであってよい。
【0151】
薬物溶液(第I相)は、シリンジポンプを用いて反応器内に計量する。別の実施形態では、薬物懸濁液は、他の自動化されたポンプデバイスを用いて反応器内に計量する。第I相の流量は、0.1ml/分〜40ml/分の範囲であってよい。フロースルー反応器(またはフロー反応器)内で、第I相の流量は、0.1ml/分〜40ml/分または0.5〜900ml/分(例えば、0.5〜2.0ml/分、10〜900ml/分、12〜700ml/分、50〜400ml/分、100〜250ml/分、または110〜130ml/分)の範囲であってよい。フロースルー反応器内で、第II相の流量は、0.1ml/分〜40ml/分または2.5〜2100ml/分(例えば、2.5〜900ml/分、2.5〜2.0ml/分、10〜900ml/分、12〜700ml/分、50〜400ml/分、100〜250ml/分、または110〜130ml/分)の範囲であってよい。
【0152】
ステップ1の第I相および第II相の成分:第I相中の溶液を作り出すための薬物を溶解するために使用される添加剤は、第II相の中でこれらが混和性および可溶性であるように選択される。第II相成分は、薬物に対してのみ貧溶媒としてこの相が作用するような成分である。第I相が超音波処理の存在下で第II相に加えられると、薬物は沈殿してナノ結晶となる。第II相は、0.22ミクロンPVDFフィルタを介して滅菌濾過し、0〜4℃または2〜8℃で維持された保持容器に入れる。第II相を計量し、ソノトロード、または超音波処理プローブを備えたセルに入れる。次いで第I相溶液を計量し、超音波処理しながら、セルへ滴下して第II相となる。ステップ1で生成されたナノ結晶は、2〜8℃、22〜25℃または30〜40℃で保持タンク内に保持することができる。この「保持する」プロセスはアニーリングと呼ばれ、ステップ1で生成されたナノ結晶を安定化させる。
【0153】
ステップ1で生成したナノ懸濁液のアニーリング、または物理的なエイジングは、薬物分子が「リラックスする」こと、およびその最も安定した熱力学的状態に配列することを可能にする。アニーリング温度の選択は、薬物の生理化学的特徴に依存する。アニーリングの継続時間もまた重要である。一実施形態では、アニーリングの継続時間は30分間である。別の実施形態では、アニーリングの継続時間は30分間〜90分間の間である。別
の実施形態では、アニーリングの継続時間は90分間〜12時間の間である。別の実施形態では、アニーリングの継続時間は12時間〜24時間の間である。
【0154】
第I相および第II相の成分は低い粘度であり、これによって、各相は、0.22ミクロンフィルタを介して無菌化濾過することができる。代わりに、無菌化濾過は、他の殺菌手段、例えば、オートクレーブする、ガンマ線照射、エチレンオキシド(ETO)照射により遂行することができる。
【0155】
初期のナノ懸濁液のために第I相を作り出すための溶媒は、これらに限定されないが、PEG400、PEG300、PEG100、PEG1000、PEG−ステアレート、PEG40−ステアレート、PEG−Laureate、レシチン、ホスファチジルコリン、PEG−オレイン酸塩、PEG−グリセロール、Tweens、スパン、ポリプロピレングリコール、DMSO、エタノール、イソプロパノール、NMP、DMF、アセトン、塩化メチレン、ソルビトールから選択することができる。
【0156】
初期のナノ懸濁液のために第II相として使用される立体安定化溶液は、これらに限定されないが、メチルセルロース、PVP、PVA、HPMC、セルロース、Pluronic F127、Pluronic F68、カルボマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PEG、レシチン、ホスファチジルコリン、ポリクオタニウム(polyquarternium)−1、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、グア
ーガム、キサンタンガム、キトサン、アルジネート、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、tween20、tween80、スパン、ソルビトール、アミノ酸の水溶液から選択することができる。好ましい実施形態では、立体安定剤は粘度15cPのメチルセルロースである。別の実施形態では、第II相の立体安定剤は粘度4cPのメチルセルロースである。別の実施形態では、立体安定剤は粘度50cPのメチルセルロースである。別の実施形態では、立体安定剤は粘度4000cPのメチルセルロースである。別の実施形態では、立体安定剤は粘度100,000cPのメチルセルロースである。メチルセルロースの濃度は0.10%〜0.20%、0.20%〜0.40%および0.40%〜0.50%である。好ましい実施形態では、第II相中のメチルセルロースの濃度は0.20%である。別の好ましい実施形態では、第II相中のメチルセルロースの濃度は0.39%である。一実施形態では、第II相中の立体安定剤は、0.1〜1%、1%〜10%の濃度のカルボマー940である。別の実施形態では、第II相中の立体安定剤は、0.1%〜1%の間および1%〜10%の間の濃度のカルボキシメチルセルロースである。別の実施形態では、第II相中の立体安定剤は、カルボマー940と組み合わせたカルボキシメチルセルロースである。別の実施形態では、第II相中の立体安定剤は、0.1%〜1%の間および1〜10%の間の濃度のPVAである。別の実施形態では、第II相中の立体安定剤は、0.1%〜10%の間の濃度のPVPである。
【0157】
立体安定剤はまた、カチオン性であることもできる。有用なカチオン性の表面安定剤の例として、これらに限定されないが、ポリマー、バイオポリマー、多糖、セルロース系、アルギン酸塩、リン脂質、および非ポリマー性化合物、例えば、両性イオン安定剤、ポリ−n−メチルピリジニウム、アントリルピリジニウムクロリド、カチオン性リン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェート、1,2ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)2000](ナトリウム塩)(DPPE−PEG(2000)−アミンNaとしても公知)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)として
も公知)、リゾチーム、長鎖ポリマー、例えば、アルギン酸およびカラギーナンが挙げられる。他の有用なカチオン性安定剤として、これらに限定されないが、カチオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および第4級アンモニウム化合物、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリドまたはココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはココナツメチルジヒロドキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチル塩化アンモニウムまたはデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、C
12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはC
12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドまたはラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)
4アンモニウムクロリドまたはラウリルジメチル(エテノキシ)
4アンモニウムブロミド、N−アルキル(C
12〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C
14〜18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジル(tetradecylidmethylbenzyl)アンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキルおよび(C
12〜14)ジメチル1−ナフチルメチル(napthylmethyl)アンモニウムクロリド、トリメ
チルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩およびジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシ化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム(alkyamidoalkyldialkylammonium)塩および/また
はエトキシ化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、クロリド一水和物、N−アルキル(C
12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C
12、C
15、C
17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲナイド、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336(商
標))、POLYQUAT 10(商標)、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジル
トリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル(例えば、脂肪酸のコリンエステル)、塩化ベンズアルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(例えば、ステアリルトリモニウムクロリドおよびジステアリルジモニウムクロリド)、臭化セチルピリジニウムまたは塩化セチルピリジニウム、4級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、MIRAPOL(商標)およびALKAQUAT(商標)、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノルアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート、およびビニルピリジンなど、アミン塩、例えば、酢酸ラウリルアミン、酢酸ステアリルアミン、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩など、ならびにアミンオキシド;イミドアゾリニウム塩;プロトン化第4級アクリルアミド;メチル化第4級ポリマー、例えば、ポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ−[N−メチルビニルピリジニウムクロリド];ならびにカチオン性グアーが挙げられる。
【0158】
ステップ2の成分:ステップ2の成分は、前のステップで調製したナノ結晶を精製するという作業課題が遂行されるように選択される。精製プロセスは、タンジェンシャルフロ
ーフィルトレーション(TFF)、または限外濾過を遂行するための垂直な流れの濾過(NFF)、透析濾過または精密濾過法である。別の実施形態では、ステップ2は遠心分離により遂行される。フィルタの選択は、生成されるナノ結晶のサイズに依存する。フィルタの細孔サイズは、0.1μm、0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、10μmまたは20μmとすることができる。ナノ粒子のサイズ分布が0.5μmをピークとする場合、PVDFフィルタの細孔サイズは0.1μmとなる。好ましくは、ナノ粒子のサイズは、0.5μmをピークとする。このステップにおいて、ナノ結晶懸濁液は、初期の連続的なステップが新規連続相で完全に置き換えられるように精製する。新規連続相は、薬物の中での溶解度が最小となるように選択する。これにより、オストワルド熟成は、最小限に抑えられるか、または排除される。
【0159】
精製プロセスの成分は、これらに限定されないが、HPMC、MC、カルボマー、セルロース、PEG、キトサン、アルギン酸塩、PVP、F127、F68、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸の水溶液を含有する群から選択することができる。
【0160】
ステップ2の成分は、部位においてナノ結晶の滞留時間を増強し、続いて治療の有効性を長引かせる組織接着剤成分を有し得る。組織接着剤成分は、カチオン性またはアニオン性であってよい。カチオン性の組織接着剤分子は、polyquad−1、ポリエチレンイミン、PAMAMデンドリマー、PEIデンドリマー、キトサン、アルギン酸塩およびこれらの誘導体である。
【0161】
定義されたプロセスで生成される薬物ナノ結晶(場合によってナノ懸濁液)は、眼の炎症性の状態を処置するための免疫調節物質とすることができる。免疫調節物質は、ステロイドに耐性がある様々な炎症性の状態において、またはステロイドの慢性使用がステロイドに関連する場合、効果的であることが証明済みである。現在利用可能な薬剤は、リンパ球の増殖を遮断する細胞毒性剤として、またはリンフォカインの合成を遮断する免疫調節物質として作用する。シクロスポリンAは、本発明において定義されたプロセスを使用して調製することができる好ましい免疫調節物質である。
【0162】
薬物ナノ懸濁液は、同じプロセスを使用して製剤化される2種の薬物の組合せとすることができる。よって、両方の薬物を共通の添加剤に同時に溶解させ、次いで、本発明において特定された技法を使用して沈殿させることを想定することができる。
【0163】
疎水性治療剤
本明細書中で使用されている「疎水性治療剤」または「疎水性薬物」という用語は、水中への可溶性が乏しい、例えば約10mg/mL未満(例えば、1mg/mL未満、0.1mg/mL未満、または0.01mg/mL未満)の水溶性を有する治療剤を指す。
【0164】
本発明の方法は、ナノ結晶および/または新規定形形態の疎水性薬物の生成に適用することができる。疎水性薬物の例として、これらに限定されないが、ROCK阻害剤、SYK特異的阻害剤、JAK特異的阻害剤、SYK/JAKまたはマルチ−キナーゼ阻害剤、MTOR、STAT3阻害剤、VEGFR/PDGFR阻害剤、c−Met阻害剤、ALK阻害剤、mTOR阻害剤、PI3Kδ阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤、p38/MAPK阻害剤、NSAID、ステロイド、抗生剤、抗ウイルス剤、抗真菌性、駆虫剤(antiparsitic)、降圧剤、がん薬物または抗悪性腫瘍剤、免疫調節性薬物(例えば、免疫抑制剤)、精神科の医薬、皮膚科の薬、脂質低下剤、抗抑制剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗甲状腺剤、抗不安薬、鎮静剤、睡眠薬、神経弛緩薬、β−遮断剤、強心剤、コルチコステロイド、利尿剤、抗パーキンソン剤、胃腸剤、ヒスタミンH−受容体アンタゴニスト、脂質調整剤、硝酸塩および他の抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、性ホルモン、なら
びに刺激剤が挙げられる。
【0165】
本発明の方法に対して適切な疎水性薬物は、ステロイドであることができる。ステロイドとして、例えば、フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルニソリド、フルオロメトロン、クロベタゾールプロピオネート、ロテプレドノール、メドリゾン、リメキソロン、ジフルプレドネート、ハルシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、シクレソニド、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾン二プロピオン酸、吉草酸ベタメタゾン、二プロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、フルオレニリデンアセテート(fluprednidene acetate)、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、フルオロメトロン(fluoromethalone)、酢酸フルオロメタロン、エタボン酸ロテプレドノール、および
リン酸ベタメタゾン(これらのエステルおよび薬学的に許容される塩を含む)が挙げられる。
【0166】
本発明の方法に対して適切な疎水性薬物は、非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ブロムフェナク、ジクロフェナクナトリウム、フルルビプロフェン、ケトロラクトロメタミン、マプラコラト、ナプロキセン、オキサプロジン、イブプロフェン、およびネパフェナク(
これらのエステルおよび薬学的に許容される塩を含む)であることができる。
【0167】
本発明の方法に対して適切な他の疎水性薬物として、ベシフロキサシン、DE−110(Santen Inc.)、レバミピド、アンドロゲン(DHEA、テストステロン、水溶性の乏しい類似体および誘導体)、エストロゲン(エストラジオール、エストリオール、およびエストロンの誘導体である、水溶性の乏しい化合物;例えば、エストラジオール、レボノルゲストレル(levonorgesterol)、その類似体、異性体または誘導体)、水溶
性の乏しいプロゲステロンおよびプロゲスチン(第1世代から第4世代)(例えば、ノルエチンドロン、その類似体および誘導体、メドロキシプロゲステロン、またはタナプロゲット(tagaproget))、およびプレグネノロンが挙げられる。様々な世代のプロゲスチンの例として、以下が挙げられる:第1世代(エストラン)例えば、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、酢酸ノルエチンドロン、および二酢酸エチノジオール;第2世代(ゴナン)、例えば、レボノルゲストレル、ノルエチステロン、およびノルゲストレル;第3世代(ゴナ
ン)、例えば、デソゲストレル、ゲストデン、ノルゲスチメート、およびドロスピレノン
;および第4世代、例えば、ジエノゲスト、ドロスピレノン、ネストロン、酢酸ノメゲストロールおよびトリメゲストン。
【0168】
疎水性薬物の他の例として、例えば、10−アルコキシ−9−ニトロカンプトテシン、17b−エストラジオール、3’−アジド−3’−デオキシチミジンパルミテート、5−アミノレブリン酸、ABT−963、アセクロフェナク、アクラシノマイシン A、アルベンダゾール、アルカンニン/シコニン、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、アルファ酢酸トコフェリル、AMG517、アンプレナビル、アプレピタント、アーテミシニン、アザジラクチン、バイカレイン、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾポルフィリン、ベンゾピリミジン誘導体、ビカルタミド、BMS−232632、BMS−488043、ブロマゼパム、ブロピリミン、カルバマゼピン、カンデサルタンシレキセチル、カルバマゼピン、カルベンダジム、カルベジロール、セフジトレン、セフォチアム、セフポドキシムプロキセチル、セフロキシムアクセチル、セレコキシブ、セラミド、シロスタゾール
、クロベタゾールプロピオネート、クロトリマゾール、コエンザイムQ10、クルクミン、シクロスポリン(Cyclcoporine)、ダナゾール、ダプソン、デクスイブプロフェン、ジアゼパム、ジピリダモール、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、エコナゾール、ER−34122、エソメプラゾール、エトリコキシブ、エトラビリン、エベロリムス、エクセメスタン、フェロジピン、フェノフィブラート、フルルビプロフェン、フルタミド、フロセミド、ガンマ−オリザノール、グリベンクラミド、グリクラジド、ゴナドレリン、グリセオフルビン、ヘスペレチン、HO−221、インドメタシン、インスリン、イソニアジド、イソトレチノイン、イトラコナゾール、ケトプロフェン、LAB687、リマプロスト、ロピナビル(Liponavir)、ロペラミド、メベンダゾール、メゲストロール
、メロキシカム、MFB−1041、ミフェプリストーン、MK−0869、MTP−PE、ナビロン、ナリンゲニン、ニコチン、ニルバジピン、ニメスリド、ニモジピン、ニトレンジピン、ニトログリセリン、NNC−25−0926、ノビレチン、オクタフルオロプロパン、オリドニン、オキサゼパム、オキシカルバゼピン、オキシベンゾン、パクリタキセル、パリペリドンパルミテート、ペンシクロビル、PG301029、PGE2、フェニトイン、ピロキシカム、ポドフィロトキシン、ブタ膵臓リパーゼおよびコリパーゼ、プロブコール、ピラジナミド、ケルセチン、ラロキシフェン、リスベラトロール、レイン、リファンピシン、リトナビル、ロスバスタチン、サキナビル、シリマリン、シロリムス、スピロノラクトン、スタブジン、スルフイソキサゾール、タクロリムス、タダラフィル、タンシノン、ティーポリフェノール、テオフィリン、チアプロフェン酸、チプラナビル、トルブタミド、酒石酸トルテロジン、トラニラスト、トレチノイン、トリアムシノロンアセトニド、トリプトリド、トログリタゾン、バラシクロビル、ベラパミル、ビンクリスチン、ビノレルビン酒石酸水素塩、ビンポセチン、ビタミン−E、ワルファリン、およびXK469が挙げられる。さらなる例として、例えば、アムホテリシンB、ゲンタマイシンおよび他のアミノグリコシド抗生剤、セフトリアキソンおよび他のセファロスポリン、テトラサイクリン、シクロスポリンA、アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、メクロフェナム酸、メファナミン酸、ナブメトン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、スリンダク、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキネート、ジヨードヒドロキシキノリン、ジロキサニドフロエート、ジニトルミド、フルゾリドン、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾール、およびチニダゾールが挙げられる。
【0169】
本発明の方法に対して適切な疎水性薬物はまた、5以上のcLogPを有するFDA認可薬物、例えば、以下の表に列挙したものなどとすることもできる。
【0175】
本発明の方法に対して適切な疎水性薬物はまた、5以上のALogPを有するFDA認可薬物、例えば、以下の表に列挙されたものなどとすることもできる。
【0181】
本発明の方法に対して適切な他の薬物として、長期作用性気管支拡張剤(例えば、キシナホ酸サルメテロールおよびホルモテロール)、抗炎症剤(スタチン、例えばアトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチンおよびロスバスタチン)、マクロライド系抗生物質(例えばアジスロマイシン)、制嘔吐剤、初回通過代謝により高度に代謝される薬物(例えば、イミプラミン、モルヒネ、ブプレノルフィン、プロプラノロール、ジアゼパムおよびミダゾラム)、タンパク質治療薬(例えば、ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリバーセプト)、リロナセプト、および以下の表に列挙されたものが挙げられる。
【0184】
疎水性薬物の追加的例はまた、例えば、これらのそれぞれの内容が、その全体において本明細書中に参照により組み込まれている、Therapeutic systems Research Laboratory、Inc.、Ann Arbor、MI(www.tsrlinc.com)による、Biopharmaceutics Classification System(BCS)データベース(http://69.20.123.154/services/bcs/search.cfm);M Linderbergら、「Classification of Orally Administered Drugs on the WHO Model List of Essential Medicines According to the Biopharmaceutics Classification System」Eur J
Pharm & Biopharm、58巻:265〜278頁(2004年);NA Kasimら、「Molecular properties of WHO Essential Drugs & Provisional Biopharmaceutical Classification」Molec Pharm,、1巻(1号):85〜96頁(2004年);A Dahan & GL Amidon、「Provisional BCS Classification of the Leading Oral Drugs on the Global Market」 in Burger’s Medicinal Chemistry、Drug Discovery & Development、2010年;Elgart Aら、Lipospheres and pro−nano lipospheres for delivery of poorly water soluble compounds.Chem.Phys.Lipids.2012年5月;165巻(4号):438〜53頁;Parhi Rら、Preparation and characterization of
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le drugs.Drug Discov.Today.2011年4月;16巻(7〜8号):354〜60頁;Kleberg Kら、Characterising the behaviour of poorly water soluble drugs in the intestine:application of biorelevant media for solubility、dissolution and transport studies.J.Pharm.Pharmacol.2010年11月;62巻(11号):1656〜68頁;およびHe C−Xら、Microemulsions as drug delivery systems to
improve the solubility and the bioavailability of poorly water−soluble drugs.Expert Opin Drug Deliv.2010年4月;7巻(4号):445〜60頁;において見出すことができる。
【0185】
本方法で生成された疎水性薬物のナノ結晶は、理想的には、疎水性薬物が使用される障害、例えば、炎症性障害、呼吸障害、自己免疫性疾患、循環器疾患およびがんの全身性または非全身性処置に適している。例えば、本発明のナノ結晶は、関節リウマチ、ループス(例えば、ループス腎炎および全身性エリテマトーデスを含む)、アレルギー性喘息、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病を含む)、免疫性血小板減少性紫斑病、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、痛風、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、天疱瘡(水疱性類天疱瘡を含む)、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギランバレー症候群、ヴェグナー肉芽腫症、および/または糸球体腎炎を処置するために使用することができる。本発明のナノ結晶はまた、冠動脈疾患を有する患者における主要な心臓の有害事象の主要な予防において使用することができる。
【0186】
新規定形形態
本発明の方法の1つの予期しない利点は、本方法を介して生成される疎水性薬物のナノ結晶は、市販のストック材料の形態または疎水性薬物の公知の形態とは異なる新規の形態を有することである。より高いタップ密度、および/またはさらなる結晶性を有する新規の形態は、さらに安定し得る(例えば、熱的に安定)。
【0187】
一態様において、本発明は、プロピオン酸フルチカゾンの新規の定形形態、すなわち、形態Aを提供し、この形態は、約7.8、15.7、20.8、23.7、24.5、および32.5度2θでのピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0188】
例えば、形態Aは、約9.9、13.0、14.6、16.0、16.9、18.1、および34.3度2θでの追加的ピークを含む粉末X線回折パターンをさらに特徴とする。
【0189】
例えば、形態Aは、以下の表Aに列挙したピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0191】
例えば、形態Aは、長いプレートまたはブレードの形態を有するナノ結晶を特徴とする。
【0192】
例えば、形態Aは、不純物を実質的に含まない。
【0193】
例えば、形態Aは、90%を超える、92%を超える、95%を超える、96%を超える、97%を超える、98%を超えるまたは99%を超える純度を有する。
【0194】
例えば、形態Aは、0.5786g/cm
3のタップ密度を有する。対照的に、プロピオン酸フルチカゾンストックのタップ密度は0.3278g/cm
3である。
【0195】
例えば、形態Aに対する融解熱は有意により高く(54.21J/g)、前者形態Aがさらに結晶性の材料であり、分子間結合、例えば、イオン結合および水素結合を破壊する
ためにより多くのエネルギーを必要とすることを示している。
【0196】
例えば、形態Aは、10℃の溶融範囲を有し、また高度に秩序化したミクロ構造も示す。対照的に、プロピオン酸フルチカゾンストック材料は、わずかにより広い範囲(11.1℃)にわたり融解する。
【0197】
例えば、形態Aは、ストック材料または均質化された材料よりゆっくりと溶解する。形態Aが水溶媒中で6週間のインキュベーション後飽和溶解に到達するのに対して、ストック材料または均質化された材料は、水媒体中での2週間のインキュベーション内に飽和溶解に到達する。
【0198】
例えば、形態Aは、室温での水における約1μg/g/日の水媒体(例えば、水または水溶液)への溶解速度を特徴とする。
【0199】
例えば、形態Aの単位格子構造は、単斜の、P21、a=7.7116Å、b=14.170Å、c=l1.306Å、ベータ=98.285、容量1222.6である。
【0200】
例えば、形態Aは、ストック材料(多形体1)の融点297.3℃とは対照的に、299.5℃の融点を有する。
【0201】
例えば、形態Aは、約10〜10000nm、(例えば、100〜1000nmまたは300〜600nm)の平均サイズを有するナノプレートを特徴とする。
【0202】
例えば、形態Aは、狭い範囲のサイズ分布を有するプロピオン酸フルチカゾンナノプレートを特徴とする。例えば、形態Aは、50〜100nm、100〜300nm、300〜600nm、400〜600nm、400〜800nm、800〜2000nm、1000〜2000nm、1000〜5000nm、2000〜5000nm、2000〜3000nm、3000〜5000nm、または5000〜10000nmのサイズ分布を有するプロピオン酸フルチカゾンナノプレートを特徴とする。
【0203】
例えば、ナノプレートは、それぞれ5nm〜200nm(例えば、10〜150nmまたは30〜100nm)の間の厚さを有する。
【0204】
例えば、ナノプレートは、ナノプレートの厚さを規定する表面に実質的に垂直な[001]結晶軸を有する。
【0205】
別の態様では、本発明は、トリアムシノロンアセトニドの新規の定形形態、即ち形態Bを提供し、この形態Bは、約11.9、13.5、14.6、15.0、16.0、17.7、および24.8度2θでのピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0206】
例えば、形態Bは、約7.5、12.4、13.8、17.2、18.1、19.9、27.0および30.3度2θでの追加的ピークを含む粉末X線回折パターンをさらに特徴とする。
【0207】
例えば、形態Bは、以下の表Bに列挙したピークを含む粉末X線回折パターンであることを特徴とする。
【0209】
例えば、形態Bは、
図39の中の赤色のプロファイルと実質的に同様の粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0210】
例えば、形態Bは実質的に不純物を含まない。
【0211】
例えば、形態Bは、90%を超える、92%を超える、95%を超える、96%を超える、97%を超える、98%を超える、または99%を超える純度を有する。
【0212】
医薬組成物
本発明はまた、疎水性薬物が使用される障害、例えば炎症性障害、例えば眼の障害および皮膚の障害など、呼吸障害、例えば喘息またはCOPDなど、またはがん、例えばリンパ腫などの全身性もしくは非全身性処置または軽減に対して有用な、本明細書に記載されている疎水性薬物のナノ結晶の有効量と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を特徴とする。
【0213】
一実施形態では、本発明は、眼瞼炎およびまたはマイボーム腺機能障害(MGD)の徴候もしくは症状の処置または軽減、およびこれらの予防に対して有用な、疎水性薬物(例えばフルチカゾン)のナノ結晶の有効量と、薬学的に許容される担体とを含む新規の局所用医薬組成物を特徴とする。本発明の製剤の有効量を使用して、眼瞼縁の炎症を低減することができ、これによって眼瞼炎およびまたはMGDを処置する。
【0214】
例えば、本発明に記載されている組成物は、手術後の術後のケアのため使用することができる。例えば、本発明の組成物は、手術後の疼痛の制御、手術、アルゴンレーザー線維柱帯形成術およびフォトリフラクティブ手術の後の炎症の制御に使用することができる。さらに、組成物は、他の眼の障害、例えば眼のアレルギー、アレルギー性結膜炎、嚢胞様黄斑浮腫またはマイボーム腺機能障害を処置するために使用することができる。
【0215】
さらに、本発明に記載されている組成物は、皮膚の障害、例えば、アトピー性皮膚炎、皮膚の病変、湿疹、乾癬、または発疹の徴候もしくは症状の全身性もしくは非全身性処置または軽減およびこれらの予防のために使用することができる。
【0216】
眼瞼炎に関連する徴候および症状として、例えば、眼瞼の赤み、眼瞼腫脹、眼瞼の不快感、眼瞼のそう痒、眼瞼皮膚の剥離および眼の赤みが挙げられる。
【0217】
異常な瞼板の分泌物の徴候および症状として、これらに限定されないが、瞼板分泌物粘度の増加、不透明さ、色、ならびに腺分泌の間の時間(不応期)の増加が挙げられる。異常なマイボーム腺(例えばMGD)分泌物に関連する疾患の徴候および症状として、これらに限定されないが、ドライアイ、眼の赤み、眼瞼縁のそう痒および/または刺激ならびに浮腫、身体の違和感、およびまつ毛のもつれが挙げられる。
【0218】
活性剤成分は、眼瞼炎および/またはMGDの徴候および症状を改善、処置、緩和、阻害、予防する、またはさもなければ低減する。本発明の組成物は、対象の眼、眼蓋、まつ毛、または眼瞼縁への適用の際に心地良く、急性もしくは慢性の眼瞼炎および/またはMGDの解決のために使用することができ、特に断続的使用および長期使用の両方に対して適切である。
【0219】
また、本発明に記載されている組成物は、呼吸障害(例えば、喘息またはCOPD)、自己免疫性疾患(例えば、ループスまたは乾癬)、およびがん(例えば、リンパ腫)の全身性もしくは非全身性処置、これらの徴候もしくは症状の軽減およびこれらの予防のために使用することができる。
【0220】
エステルおよびその薬学的に許容される塩を含むフルチカゾン。プロピオン酸フルチカゾンは、好ましい薬学的に許容される塩である。プロピオン酸フルチカゾンは、S−フルオロメチル−6−α−9−ジフルオロ−11−β−ヒドロキシ−16−α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17−β−カルボチオエートとしても公知であり、17−プロピオネートは合成の、トリフルオロ化した、化学式C
25H
31F
3O
5Sを有するコルチコステロイドである。これは、500.6g/モルの分子量を有する白色からオフホワイト色の粉末である。プロピオン酸フルチカゾンは、水(0.14μg/ml)に実質的に不溶性であり、ジメチルスルホキシドおよびジメチル−ホルムアミド中で自由に溶解でき、メタノールおよび95%エタノール中でわずかに溶解する。
【0221】
医薬眼用製剤は典型的に、眼の障害および皮膚の障害を処置または予防する、短期または長期の使用に対して適切な有効量、例えば、約0.0001%〜約10%wt/vol、好ましくは約0.001%〜約5%、より好ましくは約0.01%〜約3%、さらにより好ましくは約0.01%〜約1%の眼用の薬物(例えばフルチカゾン)を含有する。眼の薬物(例えばフルチカゾン)の量は、特定の製剤および適応された使用と共に変動することになる。
【0222】
好ましくは、製剤中に存在する疎水性薬物(例えばフルチカゾン)のナノ結晶の有効量は、炎症性障害、呼吸障害またはがんを処置または予防するのに十分な量であるべきである。
【0223】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は徐放性組成物である。他の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、速放性組成物である。理論に制約されることを望むことなく、本発明の組成物の薬物放出速度は、薬物粒子の特定の定形形態またはサイズを選択することにより制御することができる。例えば、組成物は、プロピオン酸フルチカゾンを形態Aの定形形態だけの形で含むことができるか、または形態AとFPの多形体1および/または多形体2との混合物を含むことができる。もう1つの例として、組成物は、異なるサイズおよび/またはサイズ分散の薬物のナノ結晶、例えば、300〜600nm(すなわちD10〜D90)のナノ結晶と約800〜900nm(すなわちD10〜D90)のナノ結晶との組合せを含むことができる。
【0224】
記載されている本発明の医薬組成物は、単独でまたは他の治療法と組み合わせて投与することができる。例えば、上記本発明の医薬組成物は、これらに限定されないが、血管収縮剤、抗アレルゲン剤、麻酔剤、鎮痛剤、ドライアイ剤(例えば、分泌促進物質、粘液模倣物質、ポリマー、脂質、酸化防止剤)などを含めた他の活性成分(場合によって、本発明の方法を介してナノ結晶の形態で)をさらに含んでもよいし、または、これらに限定されないが、血管収縮剤、抗アレルゲン剤、麻酔剤、鎮痛剤、ドライアイ剤(例えば分泌促進物質、粘液模倣物質、ポリマー、脂質、酸化防止剤)などを含めた他の活性成分を含む医薬組成物と共に(同時にまたは逐次的に)投与してもよい。
【0225】
製剤
本発明の医薬組成物は、疎水性薬物が使用される障害、例えば、炎症性障害、例えば眼の障害および皮膚の障害など、呼吸障害、例えば喘息など、またはがん、例えばリンパ腫などの全身性もしくは非全身性処置または軽減に対して適切な様々な剤形で製剤化することができる。本明細書に記載されている組成物は、特定の投与経路、例えば局所用、経口用(例えば経口の吸入を含む)、鼻腔内、経腸または非経口(循環系への注入)に対して適切な形態で製剤化することができる。
【0226】
特定の実施形態では、本明細書に記載されている製剤は徐放性製剤である。他の実施形
態では、本明細書に記載されている製剤は速放性製剤である。
【0227】
特定の実施形態では、本発明による局所用組成物は、液剤、懸濁剤、軟膏剤、乳濁剤、ゲル剤、点眼剤、および眼および皮膚への局所的投与に対して適切な他の剤形として製剤化する。他の実施形態では、本発明による組成物は、乾燥パワー、エアゾール剤、液剤、懸濁剤、軟膏剤、乳濁剤、ゲル剤および鼻腔内または経口投与に対して適切な他の剤形として製剤化する。
【0228】
好ましくは、眼の局所用組成物は、眼蓋、まつ毛、眼瞼縁、皮膚、または眼の表面への投与に対して調製する。さらに、改質、例えば、持続性放出、安定化、および容易な吸収特性などをこのような調製物にさらに適用してもよい。これらの剤形は、例えば、微生物分離フィルタを介する濾過、加熱殺菌などにより滅菌する。
【0229】
製剤化の容易さ、ならびに患者が眼蓋、まつ毛および眼瞼縁に製剤を適用することによって、このような組成物を容易に投与できることから、水溶液が一般的に好ましい。適用は、塗布器、例えば、患者の指、Wek−Cel、Q−tip、コットンスワブ、ポリウレタンスワブ、ポリエステルスワブ、25−3318−Uスワブ、25−3318−Hスワブ、25−3317−Uスワブ、25−803 2PDスワブ、25−8061−PARスワブ、ブラシ(例えばLatissie(登録商標)ブラシ)または製剤を眼蓋、まつ毛または眼瞼縁に送達することが可能な他のデバイスを用いて実施することができる。
【0230】
しかし、組成物はまた、懸濁剤、粘性または半粘性のゲル剤、または他の種類の固体または半固体の組成物であってもよい。一実施形態では、本発明の製剤(例えばフルチカゾン製剤)は水性の製剤である。本発明の水性の製剤は、典型的に、50重量%を超える、好ましくは75重量%を超える、最も好ましくは90重量%を超える水である。別の実施形態では、製剤は凍結乾燥された製剤である。
【0231】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、懸濁剤として製剤化する。このような製剤は一般的に、800nm以下の粒径を有する。さらに本発明の懸濁製剤は、懸濁化剤および分散剤を含むことによって、粒子の凝集を防止し得る。
【0232】
特定の実施形態では、担体は非水性である。非水性の担体は、油、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、マカデミアナッツ油、クルミ油、アーモンド油、カボチャ種油、綿実油、ゴマ油、コーン油、ダイズ油、アボカド油、パーム油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、アマニ油、ブドウ種油、キャノーラ油、低粘度シリコーン油、軽油、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0233】
製剤が軟膏剤である実施形態では、本発明の眼用の軟膏剤を調製するために使用される好ましい軟膏基剤は、従来の眼の軟膏剤に使用されてきたものであってよい。特に基剤は、流動パラフィン、白色ワセリン、精製したラノリン、ゲル化炭化水素、ポリエチレングリコール、親水性軟膏基剤、白色の軟膏基剤、吸収性軟膏基剤、マクロゴール(商標名)軟膏基剤、単一軟膏基剤などであってよい。例えば、制限なしで、本発明の軟膏製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、ワセリンおよび鉱油を含有する。
【0234】
製剤がgelementである実施形態では、本発明の眼用の軟膏剤を調製するために使用される好ましいgelement基剤は、従来の眼のgelmentに使用されてきたもの、例えばGenteal Gelであってよい。
【0235】
製剤がクリーム剤である実施形態では、本発明の眼用のクリーム剤を調製するために使用される好ましいクリーム剤基剤は、従来の眼のクリーム剤に使用されてきたものであっ
てよい。例えば、制限なしで、本発明のクリーム剤製剤は、プロピオン酸フルチカゾン、PEG400、油および界面活性剤を含有する。
【0236】
局所用製剤は、特に活性成分または不活性成分が懸濁液または乳濁液を形成する傾向にある場合、可溶化剤の存在をさらに必要とすることがある。上記に関係した組成物に対して適切な可溶化剤は、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えばアルファ−、ベータ−またはガンマ−シクロデキストリン、例えばアルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化またはアルキルオキシカルボニル−アルキル化誘導体、またはモノ−またはジグリコシル−アルファ−、−ベータ−または−ガンマ−シクロデキストリン、モノ−またはジマルトシル−アルファ−、ベータ−またはガンマ−シクロデキストリンまたはパノシル−シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80またはこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に好ましい可溶化剤の具体例は、ヒマシ油とエチレンオキシドの反応生成物、例えばCremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標)などの商品である。ヒマシ油とエチレンオキシドの反応生成物は、眼に極めて十分に許容される特に良好な可溶化剤であることが立証されている。別の好ましい可溶化剤は、チロキサポールおよびシクロデキストリンから選択される。使用される濃度は、特に活性成分の濃度に依存する。添加量は典型的には、活性成分を可溶化させるのに十分な量である。例えば、可溶化剤の濃度は、活性成分の濃度の0.1〜5000倍である。
【0237】
他の化合物もまた担体の粘度を調整する(例えば増加させる)ために本発明の製剤に加えることができる。粘性増強剤の例として、これらに限定されないが:多糖、例えば、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー;ビニルポリマー;およびアクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0238】
別の実施形態では、本発明の局所用製剤は保存剤を含まない。このような製剤は、保存剤への曝露を制限することがより望ましいこともある、コンタクトレンズを装着する患者、またはいくつかの局所用点眼剤を使用する患者、および/または眼の表面にすでに欠陥がある(例えばドライアイ)患者に対して有用である。
【0239】
様々な担体のいずれかを本発明の製剤において使用することができる。担体の粘度は、約1cP〜約4,000,000cP、約1cP〜約3,000,000、約1cP〜約2,000,000cP、約1cP〜約1,000,000cP、約1cP〜約500,000cP、約1cP〜約400,000cP、約1cP〜約300,000cP、約1cP〜約200,000cP、約1cP〜約100,000cP、約1cP〜約50,000cP、約1cP〜約40,000cP、約1cP〜約30,000cP、約1cP〜約20,000cP、約1cP〜約10,000cP、約50cP〜約10,000cP、約50cP〜約5,000cP、約50cP〜約2500cP、約50cP〜約1,000cP、約50cP〜約500cP、約50cP〜約400cP、約50cP〜約300cP、約50cP〜約200cP、約50cP〜約100cP、約10cP〜約1000cP、約10cP〜約900cP、約10cP〜約800cP、約10cP〜約700cP、約10cP〜約600cP、約10cP〜約500cP、約10cP〜約400cP、約10cP〜約300cP、約10cP〜約200cP、または約10cP〜約100cPの範囲である。
【0240】
粘度は、剪断速度約22.50+/−約10(1/秒)を有する、CP40もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield Coneおよびプレート粘度計モデル
VDV−III Ultra
+、または剪断速度約26+/−約10(1/秒)を有する、SC4−18もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、温度20℃+/−1℃で測定することができる。もしくは、粘度は、剪断速度約22.50+/−約10(1/秒)を有する、CP40もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield Coneおよびプレート粘度計モデルVDV−III Ultra
+、または剪断速度約26+/−約10(1/秒)を有する、SC4−18もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、25℃+/−1℃で測定することもできる。
【0241】
他の化合物もまた、担体の粘度を調整する(例えば増加させる)ために本発明の製剤に加えることができる。粘性増強剤の例として、これらに限定されないが、多糖、例えば、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー;ビニルポリマー;およびアクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0242】
本発明の結晶(例えばプロピオン酸フルチカゾン結晶)は、外科的または移植可能なデバイスへコーティングまたは含浸させることができる。一部の実施形態では、外科的または移植可能なデバイスへ結晶(例えばプロピオン酸フルチカゾン結晶)をコーティングまたは包埋することによって、高度に局所的な薬物送達を提供しながら薬物の放出時間を延長させる。この投与モードの利点は、さらに正確な濃度およびわずかな副作用を達成することができることである。一実施形態では、移植可能なデバイスは、薬物送達のための眼の移植可能なデバイスである。他の実施形態では、移植可能なデバイスは、外科的な手段で移植可能な貯蔵式移植である。別の実施形態では、移植可能なデバイスは生分解性であり、例えば生分解性の微小粒子である。さらなる実施形態において、移植可能なデバイスは、ケイ素、例えば、ナノ構造化した多孔質ケイ素で作製される。例示的外科的なデバイスとして、これらに限定されないが、ステント(例えば、自己拡張型ステント、バルーン拡張式コイルステント、バルーン拡張式管状ステントおよびバルーン拡張式ハイブリッドステント)、血管形成バルーン、カテーテル(例えば、ミクロカテーテル、ステントデリバリーカテーテル)、シャント、アクセス機器、ガイドワイヤ、グラフト系、血管内画像化デバイス、血管閉鎖デバイス、内視鏡検査付属品が挙げられる。例えば、本発明の方法または組成物で使用されるデバイスは、iScienceデバイス、iVeenaデバイス、Clearsideデバイス、またはOcusertデバイスである。外科的なデバイス上へのコーティングは、当技術分野で公知の標準的方法、例えば、その内容が本明細書に参照により組み込まれているUS20070048433A1に参照されているものなどを使用して実施することができる。
【0243】
添加剤
一部の実施形態では、本発明の製剤は、1種または複数の薬学的に許容される添加剤を含む。添加剤という用語は、本明細書で使用する場合、製剤の活性剤と組み合わせて使用される生物学的に不活性な物質を幅広く指す。添加剤は、例えば、可溶化剤、安定化剤、界面活性剤、緩和薬、粘度剤、希釈剤、不活性担体、保存剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香味剤、または着色剤として使用することができる。好ましくは、製剤に対して1種または複数の有利な物理的特性、例えば、活性剤の安定性および/または溶解度の増加などを提供するために、少なくとも1種の添加剤が選ばれる。「薬学的に許容される」添加剤は、動物での使用に対して、好ましくはヒトでの使用に対して州または連邦の規制当局により認可されたもの、または動物での使用に対して、好ましくはヒトでの使用に対して、米国薬局方(Pharmacopia)、欧州薬局方または別の一般的に認識された薬局方に
列挙されているものである。
【0244】
本発明の製剤において使用することができる担体の例として、水、水と水混和性溶媒の
混合物、例えば、C
1〜C
7−アルカノールなど、植物油または鉱油(0.5〜5%の無毒性水溶性ポリマーを含む)、天然物、例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガント、インドゴム、キサンタンガム、カラギーナン(carrageenin)、寒天およびアカ
シアなど、デンプン誘導体、例えば、デンプンアセテートおよびヒドロキシプロピルデンプンなど、ならびにまた他の合成生成物、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシドなど、好ましくは架橋したポリアクリル酸、例えば、中性カーボポール、またはこれらのポリマーの混合物などが挙げられる。担体の濃度は、典型的には、活性成分の濃度の1〜100000倍である。
【0245】
添加剤のさらなる例として、ある不活性なタンパク質、例えばアルブミンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばアスパラギン酸(あるいは代わりにアスパラギン酸塩と呼ばれることもある)、グルタミン酸(代わりにグルタミン酸塩と呼ばれることもある)、リシン、アルギニン、グリシン、およびヒスチジン;脂肪酸およびリン脂質、例えば、スルホン酸アルキルおよびカプリル酸塩など;界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートなど;非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)など、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)、200、300、400、または600で表されているもの;Carbowax、1000、1500、4000、6000、および10000で表されるもの;炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、マンノース、マルトース、トレハロース、およびデキストリンなど(シクロデキストリンを含む);ポリオール、例えば、マンニトールおよびソルビトールなど;キレート剤、例えばEDTAなど;ならびに塩形成対イオン、例えばナトリウムなどが挙げられる。
【0246】
特定の実施形態では、担体はポリマー性、粘膜付着性のビヒクルである。本発明の方法または製剤における使用に対して適切な粘膜付着性のビヒクルの例として、これらに限定されないが、制限なしでデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル剤、Gelrite(登録商標)、セルロース系ポリマー、およびカルボキシ含有ポリマー系を含む1種または複数のポリマー性懸濁剤を含む水性ポリマー性懸濁剤が挙げられる。特定の実施形態では、ポリマー性懸濁剤は、架橋したカルボキシを含有するポリマー(例えばポリカルボフィル)を含む。別の特定の実施形態では、ポリマー性懸濁剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。本発明の局所用の安定な眼の製剤における使用に対して適切な架橋カルボキシを含有するポリマー系の例として、これらに限定されないが、NoveonAA−1、Carbopol(登録商標)、および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が挙げられる。
【0247】
他の特定の実施形態では、本発明の製剤は、以下の中から選択される1種または複数の添加剤を含む:代用涙液、張度増強剤、保存剤、可溶化剤、粘性増強剤、粘滑薬、乳化剤、湿潤剤、封鎖剤、および充填剤。添加剤の添加量および種類は、製剤の特定の必要性により、一般的に約0.0001重量%〜90重量%の範囲である。
【0248】
代用涙液
一部の実施形態に従い、製剤は、人工の代用涙液を含み得る。「代用涙液」または「湿潤剤」という用語は、潤滑し、「湿らせ」、内因性の涙液の一貫性に近づけ、天然の涙液の蓄積を補助し、またはさもなければ眼への投与の際にドライアイの徴候または症状および状態の一時的解決を提供する分子または組成物を指す。様々な代用涙液が当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、以下が挙げられる:モノマー性ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールなど;ポリマー性ポリオール、例えばポリエチレングリコールなど;セルロースエステル、例えば、このようなヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロース;デキストラン、例えばデキストラン70など;水溶性
タンパク質、例えばゼラチンなど;ビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポビドンなど;ならびにカルボマー、例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974Pなど。多くのこのような代用涙液が市販されており、これらに限定されないが、以下が挙げられる、セルロースエステル、例えば、Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Systane(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Tears Natural II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標);ならびにポリビニルアルコール、例えば、Akwa Tears(登録商標)、HypoTears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、およびVisineTears(登録商標)、Soothe(登録商標)など。代用涙液はまた、パラフィン、例えば、市販のLacri−Lube@軟膏剤を含み得る。代用涙液として使用される他の市販の軟膏剤として、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture Eyes
PM(登録商標)およびRefresh PM(登録商標)が挙げられる。
【0249】
本発明の好ましい一実施形態では、代用涙液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。ある実施形態によると、HPMCの濃度は、約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。ある実施形態によると、HPMCの濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。ある実施形態によると、HPMCの濃度は、約0.1%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。ある実施形態によると、HPMCの濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。好ましい実施形態では、HPMCの濃度は、約0.1%〜約1.0%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8−0.9%、0.9〜1.0%;約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0250】
例えば、制限なしで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む代用涙液は、GenTeal(登録商標)潤滑点眼剤である。GenTeal(登録商標)(CibaVision−Novartis)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3mg/gを含有する無菌の潤滑点眼剤であり、過ホウ酸ナトリウムで維持される。HPMCベースの涙液の他の例が提供される。
【0251】
別の好ましい実施形態では、代用涙液は、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。例えば、制限なしで、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む代用涙液は、Refresh(登録商標)Tearsである。Refresh(登録商標)Tearsは、普通の涙液と類似の潤滑製剤であり、使用した時点で天然の涙液の成分へと最終的に変化する、穏やかな非感作保存剤である安定化オキシクロロ複合体(Purite(商標))を含有する。
【0252】
一部の実施形態では、代用涙液または1種または複数のその成分は、適切な塩(例えばホスフェート塩)を用いて、pH5.0〜9.0、好ましくはpH5.5〜7.5、より
好ましくはpH6.0〜7.0(または前記範囲内の任意の特定の値)に緩衝させる。一部の実施形態では、代用涙液は、1種または複数の構成成分をさらに含み、これら構成成分には、制限なしで、グリセロール、プロピレングリセロール、グリシン、ホウ酸ナトリウム、塩化マグネシウムおよび塩化亜鉛が含まれる。
【0253】
塩、緩衝剤、および保存剤
本発明の製剤はまた、薬学的に許容される塩、緩衝剤または保存剤を含有し得る。このような塩の例として、以下の酸から調製したものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ素、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。このような塩はまた、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などとして調製することもできる。緩衝剤の例として、リン酸、クエン酸、酢酸、および2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が挙げられる。
【0254】
本発明の製剤は緩衝系を含むことができる。この用途に使用される場合、「緩衝剤」または「緩衝系」という用語は、普通少なくとも1種の他の化合物と組み合わせて、緩衝化能力、すなわち、元のpHからの比較的小さな変化で、または変化を起こさずに、酸または塩基(アルカリ)のいずれかを制限内で中和する能力を示す、溶液中の緩衝系を提供する化合物を意味する。一部の実施形態によると、緩衝成分は、0.05%〜2.5%(w/v)または0.1%〜1.5%(w/v)存在する。
【0255】
好ましい緩衝剤として、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、カルシウム緩衝液、ならびにこれらの組合せおよび混合物が挙げられる。ホウ酸緩衝液として、例えばホウ酸およびその塩、例えばホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムが挙げられる。ホウ酸緩衝液としてまた、例えば、溶液中でホウ酸またはその塩を生成する四ホウ酸カリウムまたはメタホウ酸カリウムなどの化合物が挙げられる。
【0256】
リン酸緩衝液系として、好ましくは、1種または複数の一塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸塩などが挙げられる。特に有用なリン酸緩衝液は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のリン酸塩から選択されるものである。適切なリン酸緩衝液の例として、二塩基性リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)、一塩基性リン酸ナトリウム(NaH
2PO
4)および一塩基性リン酸カリウム(KH
2PO
4)のうちの1種または複数が挙げられる。リン酸緩衝液成分は、頻繁に、リン酸イオンとして計算した0.01%または0.5%(w/v)の量で使用される。
【0257】
好ましい緩衝系は、ホウ酸/ホウ酸塩、一塩基性および/または二塩基性のリン酸塩/リン酸、または合わせたホウ酸/リン酸緩衝液系に基づく。例えば、合わせたホウ酸/リン酸緩衝液系は、ホウ酸ナトリウムとリン酸の混合物、またはホウ酸ナトリウムと一塩基性リン酸塩の組合せから製剤化することができる。
【0258】
合わせたホウ酸/リン酸緩衝液系において、溶液は、約0.05〜2.5%(w/v)のリン酸またはその塩および0.1〜5.0%(w/v)のホウ酸またはその塩を含む。リン酸緩衝液は、0.004〜0.2M(モル)、好ましくは0.04〜0.1Mの濃度で使用される(総量で)。ホウ酸塩緩衝剤(総量で)は、0.02〜0.8M、好ましくは0.07〜0.2Mの濃度で使用される。
【0259】
他の公知の緩衝剤化合物、例えば、クエン酸塩、炭酸水素ナトリウム、TRISなどをレンズケア組成物に場合によって加えることができる。溶液中の他の構成成分は、他の機能を有するが、これらもまた緩衝能力に影響を及ぼし得る。例えば、EDTAは多くの場合錯化剤として使用されるが、EDTAは溶液の緩衝能力に顕著な効果を生じることがで
きる。
【0260】
一部の実施形態によると、眼用水溶液のpHは、生理学的pHまたはこれに近いpHである。好ましくは、眼用水溶液のpHは、約5.5〜約8.0の間または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、眼用水溶液のpHは、約6.5〜7.5の間または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5)である。一部の実施形態による、眼用水溶液のpHは約7である。当事者であれば、製剤内に含まれる活性成分の安定性に応じてさらに最適なpHへと調整し得ることを認識されよう。一部の実施形態によると、pHは、塩基(例えば1Nの水酸化ナトリウム)または酸(例えば1Nの塩酸)で調整する。
【0261】
pHの調整、好ましくは生理学的なpHへの調整のため、緩衝剤が特に有用となり得る。本発明の溶液のpHは、5.5〜8.0、より好ましくは約6.0〜7.5、より好ましくは約6.5〜7.0(または前記範囲内の任意の特定の値)の範囲内に維持するべきである。適切な緩衝剤、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、炭酸水素ナトリウム、TRIS、および様々な混合したリン酸緩衝液(Na
2HPO
4、NaH
2PO
4およびKH
2PO
4の組合せを含む)、ならびにこれらの混合物を加えてもよい。ホウ酸塩緩衝剤が好ましい。一般的に、緩衝剤は、約0.05〜2.5重量パーセント、好ましくは0.1〜1.5重量パーセントの範囲の量で使用される。
【0262】
好ましい実施形態によると、本発明の製剤は保存剤を含有しない。特定の実施形態では、眼用製剤は保存剤をさらに含む。保存剤は、典型的には、第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゾキソニウムなどから選択し得る。塩化ベンズアルコニウムは、N−ベンジル−N−(C
8〜C
18アルキル)−N,N−塩化ジメチルアンモニウムとしてより詳細に記載される。保存剤のさらなる例として、酸化防止剤、例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、およびセレンなど;アミノ酸システインおよびメチオニン;クエン酸およびクエン酸ナトリウム;ならびに合成保存剤、例えば、チメロサール、およびアルキルパラベンなど(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む)が挙げられる。他の保存剤として、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、m−クレゾール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール、例えば、クロロブタノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコールまたはフェニルエタノールなど、グアニジン誘導体、例えば、クロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアナイドなど、過ホウ酸ナトリウム、Germal(登録商標)II、ソルビン酸および安定化オキシクロロ錯体(例えば、Purite(登録商標))が挙げられる。好ましい保存剤は、第四級アンモニウム化合物、特に塩化ベンズアルコニウムまたはその誘導体、例えば、Polyquad(米国特許第4,407,791号を参照)、アルキル水銀塩、パラベンおよび安定化オキシクロロ錯体(例えば、Purite(登録商標))である。適切な場合には、十分な量の保存剤を眼用組成物に加えて、細菌および真菌により引き起こされる使用中の二次汚染に対する保護を徹底する。
【0263】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、以下の中から選択される保存剤を含む:塩化ベンズアルコニウム、0.001〜0.05%;塩化ベンゼトニウム、0.02%まで;ソルビン酸、0.01%〜0.5%;ポリヘキサメチレンビグアナイド、0.1ppm〜300ppm;ポリクオタニウム−1(Omamer M)−0.1ppm〜200ppm;次亜塩素酸塩化合物、パークロライト(perchlorite)化合物または亜塩素酸塩化合
物、500ppm以下、好ましくは10〜200ppmの間);安定化過酸化水素溶液、
適切な安定剤と共に0.0001〜0.1%の重量%の過酸化水素が結果と得られる過酸化水素供給源;p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルおよびその混合物、好ましくはメチルパラベンおよびプロピルパラベン、0.01%〜0.5%;クロルヘキシジン、0.005%〜0.01%;クロロブタノール、0.5%まで;ならびに安定化したオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))0.001%〜0.5%。
【0264】
別の実施形態では、本発明の眼用製剤は保存剤を含まない。このような製剤は、保存剤への曝露を制限することがさらに望ましいこととなり得る、コンタクトレンズを装着する患者、またはいくつかの局所用点眼剤を使用する患者および/または眼の表面にすでに欠陥がある患者(例えばドライアイ)に対して有用である。
【0265】
粘性増強剤および粘滑薬
特定の実施形態では、粘性増強剤を本発明の製剤に加えてもよい。このような薬剤の例として、多糖、例えば、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマーが挙げられる。
【0266】
様々な粘性増強剤が当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ポリオール、例えば、グリセロール、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、およびエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、およびポリビニルピロリドンなど;セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースおよびHPMCとしても公知)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロース;デキストラン、例えばデキストラン70など;水溶性タンパク質、例えばゼラチンなど;カルボマー、例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940およびカルボマー974Pなど;ならびにガム、例えばHP−グアーなど、またはこれらの組合せ。担体粘度を増加させるために、他の化合物もまた本発明の製剤に加えることができる。粘性増強剤の例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:多糖、例えば、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー;ビニルポリマー;およびアクリル酸ポリマー。上記薬剤の組合せおよび混合物もまた適切である。
【0267】
一部の実施形態によると、粘性増強剤または薬剤の組合せの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、粘性増強剤または薬剤の組合せの濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、粘性増強剤または薬剤の組合せの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、粘性増強剤または薬剤の組合せの濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、粘性増強剤または薬剤の組合せの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0268】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、以下のうちの1種または複数から選択される眼用粘滑薬および/または粘度強化ポリマーを含む:セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース(methycellulose)(0.01〜5%)、ヒドロキシエチルセルロース
(0.01%〜5%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒプロメロース(0.01%〜5%)、およびメチルセルロース(methylcelluose)(0.02%〜5%);デキストラン40/70(0.01%〜1%);ゼラチン(0.01%〜0.1%);ポリオール、例えば、グリセリン(0.01%〜5%)、ポリエチレングリコール300(0.02%〜5%)、ポリエチレングリコール400(0.02%〜5%)、ポリソルベート80(0.02%〜3%)、プロピレングリコール(0.02%〜3%)、ポリビニルアルコール(0.02%〜5%)、およびポビドン(0.02%〜3%);ヒアルロン酸(0.01%〜2%);およびコンドロイチン硫酸(0.01%〜2%)。
【0269】
本発明の好ましい一実施形態では、粘度強化成分はヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。HPMCは所望のレベルの粘度を提供し、粘滑活性を提供するために機能する。一部の実施形態によると、HPMCの濃度は、約0%〜約2%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、HPMCの濃度は約0%〜約1.5%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。一部の実施形態によると、HPMCの濃度は約0%〜約0.5%w/vの範囲、または前記範囲内の任意の特定の値である。
【0270】
別の好ましい実施形態では、粘度強化成分はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0271】
本発明の眼用製剤の粘度は、当技術分野で公知の標準的方法、例えば、粘度計またはレオメーターの使用により測定することができる。当業者であれば、温度および剪断速度などの要素が粘度測定を実行し得ることを認識されよう。特定の実施形態では、本発明の眼用製剤の粘度は、剪断速度約22.50+/−約10(1/秒)を有する、CP40もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield Coneおよびプレート粘度計モデルVDV−III Ultra
+、または剪断速度約26+/−約10(1/秒))を有する、SC4−18もしくは相当するスピンドルを備えたBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して20℃+/−1℃で測定する。
【0272】
張度増強剤
張度は、必要である場合、典型的には張度増強剤で調整する。このような薬剤は、例えば、イオン性および/または非イオン性のタイプでよい。イオン性張度増強剤の例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物、例えば、CaCl
2、KBr、KCl、LiCl、Nal、NaBrまたはNaCl、Na
2SO
4またはホウ酸などがある。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコールまたはデキストロースである。本発明の水溶液は典型的に、等張化剤で調整することによって、塩化ナトリウムの0.9%溶液またはグリセロールの2.5%溶液に相当する正常な涙液の浸透圧に接近させる。約200〜1000mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、より好ましくは200〜500mOsm/kg、または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、200mOsm/kg、210mOsm/kg、220mOsm/kg、230mOsm/kg、240mOsm/kg、250mOsm/kg、260mOsm/kg、270mOsm/kg、280mOsm/kg、290mOsm/kg、300mOsm/kg、310mOsm/kg、320mOsm/kg、330mOsm/kg、340mOsm/kg、350mOsm/kg、360mOsm/kg、370mOsm/kg、380mOsm/kg、390mOsm/kgまたは400mOsm/kg)である。特定の実施形態では、本発明の眼用製剤は、約240〜360mOsm/kg(例えば300mOsm/kg)の範囲の重量オスモル濃度に等張化剤で調整する。
【0273】
本発明の製剤は、等張化剤または等張化剤の組合せをさらに含み得る。一部の実施形態
によると、本発明の製剤は、有効量の張度調整成分を含み得る。中でも、使用することができる適切な張度調整成分は、コンタクトレンズケア製品に慣例的に使用されている、例えば様々な無機塩などである。ポリオールおよび多糖もまた、張度を調整するために使用することができる。200mOsmol/kg〜1000mOsmol/kgの重量オスモル濃度、または前記範囲内の任意の特定の値を提供する張度調整成分の量が効果的である。
【0274】
好ましくは、張度成分は、涙液の鉱物組成を模倣している生理学的平衡塩類溶液を含む。一部の実施形態によると、張度は、例えば、イオン性および/または非イオン性タイプである薬剤を含む張度増強剤により調整し得る。イオン性張度増強剤の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物、例えば、CaCl
2、KBr、KCl、LiCl、Nal、NaBrまたはNaCl、Na
2SO
4またはホウ酸などである。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコールまたはデキストロースである。
【0275】
一部の実施形態によると、張度成分は、NaCl、KCl、ZnCl
2、CaCl
2およびMgCl
2のうちの2種以上を、上記のような重量オスモル濃度範囲が得られる比率で含む。一部の実施形態によると、本発明の製剤の重量オスモル濃度範囲は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgである。一部の実施形態によると、張度成分は、NaCl、KCl、ZnCl
2、CaCl
2およびMgCl
2のうちの3種以上を、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で含む。一部の実施形態によると、張度成分は、NaCl、KCl、ZnCl
2、CaCl
2およびMgCl
2のうちの4種以上を、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で含む。一部の実施形態によると、張度成分は、NaCl、KCl、ZnCl
2、CaCl
2およびMgCl
2を、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で含む。
【0276】
一部の実施形態によると、NaClは、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/vの範囲、より好ましくは約0.39%w/vである。一部の実施形態によると、KClは、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/vの範囲、より好ましくは約0.14%w/vである。一部の実施形態によると、CaCl
2は約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%w/vである。一部の実施形態によると、MgCl
2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。一部の実施形態によると、ZnCl
2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。
【0277】
一部の実施形態によると、本発明の眼用製剤は、等張化剤で調整することによって、塩化ナトリウムの0.9%溶液またはグリセロールの2.5%溶液に相当する正常な涙液の浸透圧に接近させることができる。約225〜400mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、より好ましくは280〜320mOsmである。
【0278】
可溶化剤
局所用製剤は、特に構成成分の1種または複数が懸濁液または乳濁液を形成する傾向にある場合、可溶化剤の存在をさらに必要とし得る。適切な可溶化剤として、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキスト
リン(例えばアルファ−、ベータ−またはガンマ−シクロデキストリン、例えば、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化またはアルキルオキシカルボニル−アルキル化誘導体、またはモノ−もしくはジグリコシル−アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−シクロデキストリン、モノ−もしくはジマルトシル−アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−シクロデキストリンまたはパノシル−シクロデキストリン)、ポリソルベート20、ポリソルベート80またはこれらの化合物の混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、可溶化剤は、ヒマシ油とエチレンオキシドの反応生成物、例えば、Cremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標)などの商品である。ヒマシ油とエチレンオキシドの反応生成物は、眼に極めて十分に許容される特に良好な可溶化剤であることが立証されている。別の実施形態では、可溶化剤はチロキサポールまたはシクロデキストリンである。使用される濃度は特に活性成分の濃度に依存する。添加量は典型的に、活性成分を可溶化するのに十分な量である。例えば、可溶化剤の濃度は、活性成分の濃度の0.1〜5000倍である。
【0279】
粘滑剤
本発明で使用される粘滑薬は、粘滑効果を得るための、すなわち、粘膜表面を潤滑し、乾燥および刺激を緩和するのに十分な有効量(すなわち「粘滑化量」)で使用する。適切な粘滑薬の例として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールを挙げることができるが、具体的には、他の成分、例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリアクリル酸などは除外される。さらなる他の実施形態では、他のまたは追加的粘滑薬を、グリセリンおよびプロピレングリコールと組み合わせて使用することができる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールもまた使用することができる。
【0280】
本発明で使用される粘滑薬の具体的な量は、用途に応じて変動することになる;しかし、典型的には、いくつかの粘滑薬の範囲が提供される:グリセリン:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w);プロピレングリコール:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w);セルロース誘導体:約0.2〜約3%であるが、好ましくは約0.5%(w/w)。追加的粘滑薬が使用される場合、これらは典型的に、上記で引用された市販薬のモノグラフで特定された量で使用する。好ましいセルロース誘導体は、医薬品等級のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0281】
安定性
本発明の製剤は、製剤化された疎水性薬物(例えばステロイド)および製剤の他の場合による活性剤の化学的安定性を提供する。この文脈において「安定性」および「安定な」とは、疎水性薬物(例えばステロイド)および他の場合による活性剤の化学分解および物理的変化、例えば、所与の製造条件、調製条件、輸送条件および保存条件下での沈降または沈殿などに対する耐性を指す。本発明の「安定な」製剤はまた、好ましくは、所与の製造条件、調製条件、輸送条件および/または保存条件下での出発量または基準量の少なくとも90%、95%、98%、99%、または99.5%を保持する。疎水性薬物(例えばステロイド)および他の場合による活性剤の量は、任意の当技術分野において承認されている方法、例えば、UV−Vis分光光度法および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などを使用して決定することができる。
【0282】
特定の実施形態では、製剤は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、または少なくとも7週間安定である。他の実施形態では、製剤は、約20〜30℃範囲の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、または少なくとも12カ月間安定である。一実施形態では、製剤は、20〜25℃で少な
くとも3カ月間安定である。
【0283】
他の実施形態では、製剤は、約2〜8℃の範囲の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも14カ月間、少なくとも16カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも20カ月間、少なくとも22カ月間、または少なくとも24カ月間安定である。一実施形態では、製剤は、2〜8℃で少なくとも2カ月間安定である。
【0284】
他の実施形態では、製剤は、約−20℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも14カ月間、少なくとも16カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも20カ月間、少なくとも22カ月間、または少なくとも24カ月間安定である。一実施形態では、製剤は−20℃で少なくとも6〜12カ月間安定である。
【0285】
特定の実施形態では、本発明の疎水性薬物製剤は、約20〜30℃の温度で、0.10%までの濃度で、少なくとも3カ月間安定である。別の実施形態では、製剤は、約2〜8℃の温度で、0.10%までの濃度で、少なくとも6カ月間安定である。
【0286】
一部の実施形態では、製剤は、0.001%〜5%の間の(例えば、0.01〜1%、または約0.25%、0.1%または0.05%)本発明のFPナノ結晶の懸濁剤、および薬学的に許容される水性添加剤を含有する、無菌の局所用ナノ結晶プロピオン酸フルチカゾン製剤である。
【0287】
一部の実施形態では、この製剤は、約0.002〜0.01%(例えば50ppm+15%)の塩化ベンズアルコニウム(BKC)をさらに含有する。
【0288】
一部の実施形態では、製剤は、1種または複数のコーティング分散剤(例えば、チロキサポール、ポリソルベート80、およびPEGステアレート、例えばPEG40ステアレートなど)、1種または複数の組織湿潤剤(例えばグリセリン)、1種または複数のポリマー安定剤(例えばメチルセルロース4000cP)、1種または複数の緩衝剤(例えば、二塩基性リン酸ナトリウムNa
2HPO
4およびリン酸一ナトリウムNaH
2PO
4、および/または1種または複数の等張性調整剤(例えば塩化ナトリウム)をさらに含有する。
【0289】
一実施形態では、製剤は、0.01%〜1%の間の本発明のFPナノ結晶(例えば、約0.25%、0.1%または0.05%)、塩化ベンズアルコニウム(例えば、0.002〜0.01%または約0.005%)、ポリソルベート80(例えば、0.01〜1%または約0.2%)、PEG40ステアレート(例えば、0.01〜1%または約0.2%)、グリセリン(例えば、0.1〜10%または約1%)、メチルセルロース4000cP(例えば、0.05〜5%または0.5%)、塩化ナトリウム(例えば、0.05〜5%または0.5%)、二塩基性リン酸ナトリウムNa
2HPO
4およびリン酸一ナトリウムNaH
2PO
4および水を含み、製剤は約6.8〜7.2のpHを有する。別の実施形態では、製剤は、0.01%〜1%の間の本発明のFPナノ結晶(例えば、約0.25%、0.1%または0.05%)、塩化ベンズアルコニウム(例えば、0.002〜0.01%または約0.005%)、チロキサポール(例えば、0.01〜1%または約0.2%)、グリセリン(例えば、0.1〜10%または約1%)、メチルセルロース4000cP(例えば、0.05〜5%または0.5%)、塩化ナトリウム(例えば、0.05〜5%または0.5%)、二塩基性リン酸ナトリウムNa
2HPO
4およびリン酸一ナト
リウムNaH
2PO
4、および水を含み、製剤は約6.8〜7.2のpHを有する。
【0290】
一部の実施形態では、製剤は、20℃で40〜50cPの間の粘度を有する。一部の実施形態では、製剤の重量オスモル濃度は約280〜350(例えば約285〜305)mOsm/kgである。一部の実施形態では、製剤のpHは約6.8〜7.2である。一部の実施形態では、製剤は20℃で40〜50cPの間の粘度を有する。
【0291】
一部の実施形態では、製剤中のFPナノ結晶は、300〜600nmの中央値サイズ、500〜700nmの平均サイズ、300〜600nmのD50値、および/または2μm未満のD90値を有する。
【0292】
一部の実施形態では、製剤は、眼瞼炎を処置するための治療有効量が、例えば、塗布器(例えばブラシ、例えば、Latisse(登録商標)ブラシまたはスワブ、例えば25−3317−Uスワブ)を介して投与される。一実施形態では、2滴(約40μLの滴径)の製剤を、塗布器、(例えば、ブラシまたはスワブ)に充填し、次いで、例えば、塗布器を下眼瞼に(1回または2回)滑らせ、次いで上眼瞼に(1回または2回)滑らせることで、それを必要とする対象に送達し、必要であれば、上記ステップを新しい塗布器を用いて他の眼に対して繰り返す。
【0293】
使用方法
本発明はまた、疎水性薬物が使用される障害、例えば、炎症性障害、呼吸障害、自己免疫性疾患またはがんの症状の全身性もしくは非全身性処置、これらの予防または軽減に対して本明細書に記載されている製剤の使用を提供する。
【0294】
実施形態では、投与モードに応じて、プロピオン酸フルチカゾンを使用して、例えば、呼吸器の関連の病気、例えば、喘息、肺気腫、呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、後天性免疫不全症候群(AIDS関連の肺炎を含む)、季節性もしくは通年性鼻炎、季節性もしくは通年性アレルギー性および非アレルギー性(血管運動神経性)鼻炎、または局所用コルチコステロイドで治療可能な皮膚の状態を処置することができる。他の局所用コルチコステロイドと同様に、プロピオン酸フルチカゾンは、抗炎症、かゆみ止めおよび血管収縮を引き起こす特性を有する。
【0295】
エアゾール剤で投与した場合、プロピオン酸フルチカゾンは、肺の中で局所的作用する;したがって、血漿レベルからは治療効果は予期されない。標識されたおよび標識されていない従来のプロピオン酸フルチカゾンの経口投薬を使用した実験により、プロピオン酸フルチカゾンの経口の全身性バイオアベイラビリティーは、主に、腸および肝臓における不完全な吸収および体循環前代謝によりごくわずかな(<1%)であることが実証された。
【0296】
局所用コルチコステロイドの経皮的吸収の程度は、ビヒクルおよび表皮性バリアの完全性を含めた多くの因子により決定される。閉鎖包帯は浸透を高める。局所用コルチコステロイドは、正常な、そのままの状態の皮膚から吸収され得る。皮膚における炎症および/または他の疾患プロセスは、経皮的吸収を増加させる。
【0297】
送達経路
特定の実施形態では、本発明に開示された処置の方法は、眼組織および付属器への全ての局所的(非全身性)送達経路を含む。送達経路は、これらに制限されないが、局所用製剤、例えば、点眼剤、ゲル剤または軟膏剤および任意の眼内、硝子体内、網膜下、嚢内、上脈絡膜、テノン嚢下、結膜下、腔内、眼窩内、カルデサク眼球後部および球周囲の注射または移植可能もしくは外科的なデバイスなどを含む。
【0298】
プロピオン酸フルチカゾンは、酢酸エチル中に粗生成物(例えば、英国特許第2088877号に記載されているように得た)を溶解し、次いで再結晶させることによって、形態1と命名された結晶形態で得られた。標準的なスプレー乾燥技法を用いれば、プロピオン酸フルチカゾンの公知の形態1だけがもたらされることも示されている。Cooperらの米国特許第6,406,718号を参照されたい。超臨界流体技術を使用して調製された、第2の多形形態のプロピオン酸フルチカゾンが、Cooperらにおいて記載されている。
【0299】
Cooperらは、溶液中または懸濁液中の超臨界流体と少なくともプロピオン酸フルチカゾンを含有するビヒクルとを粒子形成容器へ同時導入することを含む、粒子状プロピオン酸フルチカゾン生成物を形成する方法について記載しており、この容器内の温度および圧力は、ビヒクルの分散および抽出が超臨界流体の作用で実質的に同時に生じるように制御されている。超臨界流体として有用であると記載されている化学物質は、二酸化炭素、亜酸化窒素、硫黄六フッ化物、キセノン、エチレン、クロロトリフルオロメタン、エタンおよびトリフルオロメタンを含む。超臨界流体は、1種または複数の改質剤、例えば、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリルまたはこれらの任意の混合物などを場合によって含有する。超臨界流体改質剤(または共溶媒)は、超臨界流体に加えた場合、臨界点において、または臨界点の周辺において超臨界流体の内因性特性を変化させる化学物質である。Cooperらによると、超臨界流体を使用して生成されたプロピオン酸フルチカゾン粒子は、1〜10ミクロン、好ましくは1〜5ミクロンの範囲の粒径を有する。
【0300】
Cooperらのフルチカゾン組成物に関連していくつかの欠点が存在する。第1に、1ミクロン未満の粒径が望ましい。なぜなら、より小さな粒径は、投与の際にさらに急速な溶解を伴うことができ、より迅速な作用の開始、ならびにより大きなバイオアベイラビリティーが結果として生じるからである。さらに、極小フルチカゾン粒子、すなわち約150nm未満の直径が望ましく、これによって組成物を滅菌濾過することができる。さらに、Cooperらのフルチカゾン粒子は、超臨界流体残渣を含む可能性があり、この超臨界流体残渣は、薬学的特性を有せず、有害反応を潜在的に引き起こす可能性があるので望ましくない。
【0301】
プロピオン酸フルチカゾンは、いくつかの異なる商業的な形態で市販されている。ADVAIR DISKUS(登録商標)(GlaxoSmithKline、Research Triangle Park、N.C.)は、超微粒プロピオン酸フルチカゾンとサルメテロールキシナホ酸塩の組合せの吸入粉末であり、これは、高度に選択的なベータ
2−アドレナリン作動性気管支拡張剤である。剤形は、プロピオン酸フルチカゾンの3種の用量:100mcg、250mcg、および500mcgで市販されている。
【0302】
ADVAIR(登録商標)DISKUS(登録商標)の健康な対象者への投与後に、プロピオン酸フルチカゾンのピーク血漿中濃度は、1〜2時間で達成された。Physicians’ Desk Reference、第57版、1433頁(Thompson
PDR、N.J.2003年)を参照されたい。ADVAIR(登録商標)DISKUS(登録商標)500/50(500mcgのプロピオン酸フルチカゾンおよび50mcgのサルメテロールキシナホ酸塩を含有)の投与の際に、プロピオン酸フルチカゾン粉末500mcgおよびサルメテロール粉末50mcgを同時に提供するか、またはプロピオン酸フルチカゾン粉末500mcgを単独で提供すると、プロピオン酸フルチカゾンの定常状態の平均ピーク血漿中濃度は、それぞれ平均して57、73および70pg/mLであった。(同文献)。成人患者(n=11)における定常状態のプロピオン酸フルチカゾンのピーク血漿中濃度は、DISKUS(登録商標)デバイスを使用したプロピオン酸フ
ルチカゾン吸入粉末の1日2回の500mcgの投薬後、検出不能な濃度から266pg/mLまでの範囲であった。プロピオン酸フルチカゾンの平均血漿中濃度は110pg/mLであった。DISKUS(登録商標)デバイスを使用した健康なボランティアにおけるプロピオン酸フルチカゾン吸入粉末の全身性バイオアベイラビリティーは、平均して18%であった。ADVAIR DISKUS(登録商標)は、長期的な、1日2回の喘息の維持療法に適応される。
【0303】
FLOVENT(登録商標)DISKUS(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、ラクトース中の超微粒プロピオン酸フルチカゾン(50mcg、100mcg、および250mcg)の経口の吸入粉末である。標準化されたインビトロ試験条件下で、FLOVENT(登録商標)DISKUS(登録商標)は、FLOVENT(登録商標)DISKUS(登録商標)50mcg、100mcgおよび250mcgから、47、94または235mcgのプロピオン酸フルチカゾンをそれぞれ送達する。健康な成人ボランティアにおいて、DISKUS(登録商標)デバイスからのプロピオン酸フルチカゾンの全身性バイオアベイラビリティーは、平均して約18%である。FLOVENT(登録商標)DISKUS(登録商標)は、予防的治療としての喘息の維持療法に対して、および喘息に対する経口のコルチコステロイド治療を必要とする患者に対して適応される。
【0304】
FLOVENT(登録商標)ROTADISK(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、ラクトースとブレンドされた、超微粒プロピオン酸フルチカゾン(50mcg、100mcgおよび250mcg)の経口の吸入粉末である。標準化されたインビトロの試験条件下で、FLOVENT(登録商標)ROTADISK(登録商標)は、FLOVENT(登録商標)ROTADISK(登録商標)50mcg、100mcgまたは250mcgから、それぞれ44、88または220mcgのプロピオン酸フルチカゾンを送達する。(同文献)。健康な成人ボランティアにおいて、ROTADISK(登録商標)デバイスからのプロピオン酸フルチカゾンの全身性バイオアベイラビリティーは、平均して約13.5%である。(同文献)。FLOVENT(登録商標)ROTADISK(登録商標)は、予防的治療としての喘息の維持療法に対して、および喘息に対して経口のコルチコステロイド治療を必要とする患者に対して適応される。
【0305】
FLOVENT(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、2種のクロロフルオロ炭素噴霧剤(トリクロロフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタン)とレシチンとの混合物中のプロピオン酸フルチカゾン(44mcg、110mcgまたは220mcg)の微結晶性懸濁剤の経口の吸入エアゾール剤である。吸入器をそれぞれ作動すると、50、125または250mcgのプロピオン酸フルチカゾンが弁から送達され、それぞれ44、110または220mcgのプロピオン酸フルチカゾンがアクチュエータから送達される。健康なボランティアにおいて、プロピオン酸フルチカゾン吸入エアゾール剤の全身性バイオアベイラビリティーは、平均して、アクチュエータから送達された用量の約30%である。880−mcgの用量が吸入された後のピーク血漿中濃度は、0.1〜1.0ng/mlの範囲であった。(同文献)。FLOVENT(登録商標)は、予防的治療として喘息の維持療法に適応される。
【0306】
FLONASE(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、計量噴霧ポンプを用いて投与される超微粒プロピオン酸フルチカゾン(50mcg/用量)の水性懸濁剤の点鼻薬である。この剤形はまた、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース、0.02%w/wの塩化ベンズアルコニウム、ポリソルベート80および0.25%w/wのフェニルエチルアルコールを含有する。間接的計算から、鼻腔内経路により送達されたプロピオン酸フルチカゾンは、平均2%未満の絶対的バイオアベイラビリティーを有することが示されている。アレルギー性鼻炎を有する患者に3週間鼻腔内の処置を施した後のプロピオン酸フルチカゾン血漿中濃度は、推奨された用量
を超えた場合にのみ、次いで血漿レベルが偶然の低かった試料においてのみ、検出レベル(50pg/mL)を超えた。鼻腔内経路による低いバイオアベイラビリティーにより、薬物動態学的データの大部分は、他の投与経路を介して得られた。放射標識された薬物の経口投薬を使用した実験により、プロピオン酸フルチカゾンは血漿から高度に抽出され、吸収が低いことが実証された。経口バイオアベイラビリティーはごくわずかであり、循環する放射能の大部分は不活性な代謝物によるものである。経口投薬および鼻からの投薬の効果を比較した実験により、FLONASE(登録商標)の治療効果は、鼻粘膜に適用したプロピオン酸フルチカゾンの局所用効果に起因し得ることが実証された。FLONASE(登録商標)点鼻薬は、季節性および通年性アレルギー性および非アレルギー性鼻炎の鼻の症状の管理に対して適応される。
【0307】
CUTIVATE(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、局所的皮膚病用のプロピオン酸フルチカゾンクリーム剤または軟膏剤(0.05%および0.005%濃度)である。クリーム剤および軟膏剤は、コルチコステロイド反応性の皮膚病の炎症性およびそう痒性の出現の解決に対して適応される中程度の効力のコルチコステロイドである。12.5gの0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム剤を1日2回3週間与えられた12名の健康な男性のヒト実験において、血漿レベルは、定量化レベル(0.05ng/ml)よりも全般的に下であった。閉塞下で5日間25gの0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム剤を投与された6名の健康な男性の別の実験において、フルチカゾンの血漿レベルは0.07〜0.39ng/mlの範囲であった。1日2回5日間までの間、胴部および脚に、閉塞下で26gのプロピオン酸フルチカゾン軟膏剤0.005%を塗布した6名の健康なボランティアの実験において、フルチカゾンの血漿レベルは、0.08〜0.22ng/mLの範囲であった。
【0308】
本発明は、上に記載されている新規の製剤の使用を含む、対象における眼の障害、例えば眼瞼炎および/またはMGDなどの症状、を処置、予防または軽減する方法を特徴とする。例えば、眼の障害(例えば、眼瞼炎またはMGD)を処置または予防する方法は、それを必要とする対象の眼、眼蓋、まつ毛または眼瞼縁に、上記新規の製剤を含む製剤を投与することを含み得る。
【0309】
本発明は、本明細書に記載されている新規の製剤の使用を含む、対象において皮膚の障害を処置する方法をさらに特徴とする。
【0310】
本発明は、本明細書に記載されている製剤を、それを必要とする対象に投与することによって、呼吸器疾患(例えば、喘息またはCOPD)、鼻炎、皮膚炎または食道炎を処置する方法をさらに特徴とする。
【0311】
本発明はまた、本明細書に記載されている製剤を、それを必要とする対象に投与することによって、がん(例えばリンパ腫)を処置する方法を特徴とする。
【0312】
本発明はまた、本明細書に記載されている製剤を、それを必要とする対象に投与することによって、自己免疫性疾患(例えば、ループスまたは乾癬)を処置する方法を特徴とする。
【0313】
所与の製剤に含まれる活性剤の有効量、および標的障害、例えば、眼瞼炎および/またはMGDの症状を処置、予防または軽減するための製剤の効力は、以下のうちの1種または複数により査定することができる:スリットランプ評価、フルオレセイン染色、涙液層破壊時間およびマイボーム腺分泌物の質の評価(分泌物粘度、分泌物の色、腺アライメント、血管分布パターン、血管分布の赤み、過角化、後方蓋の端、まつ毛、皮膚と粘膜の接合点、腺周囲の赤み、腺形状および腺の高さのうちの1種または複数を評価する)。
【0314】
製剤中の活性剤(複数可)の有効量は、薬物の吸収、不活化、および排出速度、ならびに活性剤(複数可)の製剤からの送達速度に依存することになる。用量値はまた、軽減すべき状態の重症度により変動し得ることに注目されたい。任意の特定の対象に対して、具体的な投与計画は、時間の経過と共に、個々の必要性および組成物の投与を管理または指導する人間の専門的判断により、調整されるべきであることをさらに理解されたい。典型的には、当業者に公知の技法を使用して、投薬は決定されることになる。
【0315】
任意の本発明の化合物の用量は、患者の症状、年齢および他の物理的な特徴、処置または予防するべき障害の性質および重症度、所望する快適さの程度、投与経路、ならびに補充物の形態に応じて変動することになる。対象製剤のいずれも、単回用量または分割用量で投与してもよい。本発明の製剤に対する用量は、当業者に公知の技法または本明細書中で教示されたように容易に決定することができる。実施形態では、眼瞼炎を処置するために、約1〜100μg(例えば10〜100μg)のFPナノ粒子を、各眼瞼に投与する。一実施形態では、FPナノ結晶を含有する(例えば0.01〜1%、または約0.25%、0.1%または約0.05%)製剤2滴(総量約80μL)を各眼に適用する。例えば、2滴の製剤を、最初に塗布器(例えば、ブラシまたはスワブ)に充填し、次いで、例えば、塗布器を下眼瞼に(1回または2回)滑らせ、次いで上眼瞼に(1回または2回)滑らせることでそれを必要とする対象に送達し、必要であれば、新規塗布器を用いて上記ステップを他の眼に対して繰り返す。
【0316】
有効用量または量、および製剤の投与のタイミングに対する任意の可能な効果が、本発明の任意の特定の製剤に対して特定される必要がある。これは、本明細書に記載されているような慣用的な実験により遂行することができる。任意の製剤および処置または予防の方法の有効性は、製剤を投与し、本明細書に記載されているように、組成物の効力および患者への快適さの程度に関連する1種または複数の指標を測定することによって投与の効果を評価し、これらの指標の処理後の値を、処置前の同じ指標の値と比較することによって、またはこれらの指標の処理後の値を、異なる製剤を使用した同じ指標の値と比較することによって、査定することができる。
【0317】
所与の患者において最も効果的な処置を生じることになる任意の特定の製剤の投与の正確な時間および量は、ある特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティー、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患のタイプおよび段階、一般的な健康状態、所与の用量および医薬のタイプに対する反応性を含む)、投与経路などに依存する。本明細書中に提示されているガイドラインを使用して、処置を最適化する、例えば、最適時間および/または投与の量を決定することができるが、これは対象のモニタリングならびに用量および/またはタイミングの調整からなる慣用的な試験を行うだけである。
【0318】
本発明の組成物へと製剤化されるいくつかの活性剤を組み合わせて使用することによって、任意の個々の成分に対して必要とされる用量を減少させることができる。これは、異なる成分の効果の開始および継続時間は、優遇し得るからである。このような併用療法において、異なる活性剤は、一緒にまたは別々に、同時にまたはその日の異なる時間に送達されてもよい。
【0319】
包装
本発明の製剤は、単回用量の製品または複数回用量の製品のいずれかとして包装することができる。単回用量の製品は、包装の開封前に無菌であり、包装内の組成物の全てが、患者の片眼または両眼への単回適用において消費されることが意図されている。包装を開封した後の組成物の滅菌性を維持するための抗菌保存剤の使用は、一般的に必要ない。製剤が軟膏製剤である場合、当業者には公知のように、必要に応じて、軟膏剤用に包装する
ことができる。
【0320】
複数回用量の製品も包装の開封前に無菌である。しかし、容器内の組成物の全てを消費する前に組成物の容器を何度も開封し得るので、複数回用量の製品は、確実に容器の反復開封および取扱いの結果として組成物が微生物によって汚染されないように、十分な抗菌活性を有していなければならない。この目的のために必要とされる抗菌活性のレベルは当業者に周知であり、公式刊行物、例えば米国薬局方(「USP」)および食品医薬品局による他の刊行物、ならびに他の国の対応する刊行物などの中で特定されている。微生物汚染に対する眼科医薬品の保存に対する仕様および特定の製剤の保存剤の効力を評価する手順の詳述な説明は、これらの刊行物により提供される。米国では、保存剤の効力の基準は、一般的に「USP PET」要件と呼ばれている(頭文字「PET」は、「保存剤効力試験(preservative efficacy test)」を表す)。
【0321】
単回用量包装のアレンジメントの使用により、組成物中に抗菌保存剤を含める必要がなくなり、医学的見解から有意な利点である。これは、眼用組成物(例えば塩化ベンズアルコニウム)を保存するために利用する従来の抗菌剤は、特にドライアイ状態に罹患した患者または眼の刺激が予め存在する患者において眼の刺激を引き起こし得るからである。しかし、現在利用可能な単回用量包装のアレンジメント、例えば、「製袋充填包装」として公知のプロセスを用いて調製された少量のプラスチックバイアルなどは、製造業者および消費者に対していくつかの欠点を有する。単回用量包装システムの主な欠点は、莫大な量の包装材料が必要であること(無駄が多く、高価である)、消費者に対して不便であることである。また、指導された通りに眼に1滴または2滴を適用した後に消費者が単回用量容器を廃棄せず、代わりに、後で使用するために開封した容器および容器中に残存する任意の組成物を保存するというリスクがある。単回用量製品のこの不適切な使用により、単回用量製品の微生物汚染のリスク、および汚染した組成物を眼に適用した場合の関連する眼の感染リスクが生まれる。
【0322】
本発明の製剤は、「使える状態にある」水溶液として製剤化されるのが好ましい一方で、本発明の範囲内で代替の製剤が想定される。よって、例えば、活性成分、界面活性剤、塩、キレート剤または眼用溶液の他の成分、またはこれらの混合物を凍結乾燥させるか、またはさもなければ、水での(例えば、脱イオン水または蒸留水中での)溶解の準備が整った乾燥粉末または錠剤として提供することができる。溶液の自己保存性のために、滅菌水は必要ない。
【0323】
眼用軟膏剤は以下の通り生成することができる:必要に応じて、防腐剤、界面活性剤、安定剤、アルコール、エステルまたは油を、軟膏基剤、例えば、乳鉢または軟膏剤用混合機器の中に配置した流動パラフィンまたは白色ワセリンなどとブレンドすることによって、混合物を形成する。こうして調製した軟膏剤を、軟膏剤用ボトルまたはチューブに充填する。
【0324】
キット
さらなる別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されている製剤を包装および/または保存および/または使用するためのキット、ならびに本明細書に記載されている方法を実施するためのキットを提供する。したがって、例えば、キットは、1種または複数の本発明の眼用溶液、軟膏懸濁剤または製剤、錠剤またはカプセル剤を含有する1種または複数の容器を含み得る。キットは、出荷、使用および保存の1種または複数の態様を促進することを目的とすることができる。
【0325】
キットはまた、本明細書中に提供されている製剤の投与を促進する局所用塗布器を場合によって含み得る。一部の態様では、製剤は局所用塗布器に予め充填されている。局所用
塗布器は、例えば、スワブまたは棒を含む。
【0326】
キットは、本明細書中に提供されている製剤を使用する手段を開示する(すなわちプロトコル)指示を含有する説明書の資料を場合によって含み得る。キットはまた、本明細書中に提供されている製剤の投与を促進するための局所用塗布器を場合によって含み得る。説明書の資料は書面または印刷物を典型的に含むが、これらはこのようなものに限定されるわけではない。このような使用説明書を保存することおよびこれらをエンドユーザーに伝えることが可能な任意のメディアが本発明により想定される。このようなメディアとして、これらに限定されないが電子記憶メディア(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学的メディア(例えばCDROM)などが挙げられる。このようなメディアは、このような説明書の資料が得られるインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0327】
本明細書中に記述されている全ての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照により取り込まれるように、まるで具体的および個々に適応されているかのように、これら全体が参照により本明細書に組み込まれている。矛盾する場合、本明細書中に任意の定義を含む本出願が優先される。本明細書中で使用されている全てのパーセンテージおよび比率は、特に示さない限り、重量による。本明細書中で使用されている全ての平均は、特に示さない限り、数平均である。例えば、本明細書に記載されているナノ結晶の平均サイズは数の平均サイズである。さらに、本明細書に記載されているポリマーの分子量は、特に示さない限り、前記ポリマーの数平均モル質量である。本明細書で使用する場合、ナノ粒子の粒径または厚さの範囲/分布は、ナノ粒子の平均サイズの範囲を除いて、D10およびD90値により定義された範囲である。
【0328】
定義
「D10」または「D10値」という用語は、集団の10%がこの値より下に位置する値を指す。同様に、「D90」または「D90値」とは、集団の90パーセントがこのD90より下に位置する値を指し、「D50」または「D50値」とは、集団の50パーセントがD50より下に位置する値を指す。
【0329】
「統計的モード」または「モード」という用語は、1セットのデータに最も頻繁に出現する値を指す。1つのデータセットに対して、2つ以上のモードを有することも珍しくはない。2つのモードを有する分布を二峰性と呼ぶ。3つのモードを有する分布を三峰性と呼ぶ。連続的なランダムな変動要素を有する分布モードは関数の最大値である。離散した分布と同様に、2つ以上のモードが存在し得る。
【0330】
「中央値」または「統計的中央値」という用語は、データ試料、集団、または可能性分布の上半分を、下半分から分離する数値である。
【0331】
「異常なマイボーム腺分泌」という用語は、粘度の増加、不透明性、色および/または腺分泌の間の時間(不応期)の増加を伴うマイボーム腺分泌を指す。
【0332】
「水性」という用語は、典型的には、担体が、重量に基づき、>50%、より好ましくは>75%、および特に>90%の範囲の水である水性組成物を意味する。
【0333】
「眼瞼炎」という用語は、炎症が眼瞼赤み、眼瞼腫脹、眼瞼不快感、眼瞼そう痒、眼瞼皮膚の剥離、および眼の赤みをもたらしている、眼瞼の炎症を含む障害を指す。異常なマイボーム腺分泌は、ある役割を果たし、眼瞼の角化、眼瞼縁の丸み、グレイラインのオブスキュレーション、眼瞼縁の透明性の増加、および血管分布の増加が観察される。マイボーム腺機能障害(MGD)およびマイボーム腺炎という用語は、大部分の研究者に眼瞼炎
と一般的に呼ばれているが、これらは異常なマイバム(すなわちマイボーム腺分泌物)に関連する異なる疾患であり、この用語は互換性がないことに注意することが重要である。眼瞼炎は慢性のマイボーム腺機能障害を引き起こし得る。次に、マイバムが涙液層の最外部層として作用し、涙液の蒸発を遅らせるように作用する場合、質が乏しいことから、MGDはドライアイ症状を引き起こす。
【0334】
「心地良い」という用語は、本明細書で使用する場合、疼痛、火傷、刺すような感覚、かゆみ、刺激の物理的な感覚、または、肉体的不快感に関連する他の症状とは対照的に、肉体的に満足した状態または安堵という感覚を指す。
【0335】
「心地良い眼用製剤」という用語は、本明細書で使用する場合、眼瞼縁炎症に関連する徴候もしくは症状および/または眼の不快感からの肉体的解決が得られ、眼に注入した場合、許容されるレベルの疼痛、火傷、刺すような感覚、かゆみ、刺激、または眼の不快感に関連する他の症状しか生じない眼用製剤を指す。
【0336】
「有効量」という句は、当技術分野において承認されている用語であり、本発明の医薬組成物に取り込まれた場合、任意の医学的処置に適用可能な妥当な損益比で一部の所望の効果を生じる薬剤の量を指す。特定の実施形態では、この用語は、眼瞼縁の刺激の症状を排除、減少、または維持する(例えば拡散を防止する)、または眼瞼縁炎症を予防するもしくは処置するのに必要なまたは十分な量を指す。有効量は、処置を受けている疾患または状態、投与されている特定の組成物、または疾患もしくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。当業者であれば、不当な試験を必要とせずに、ある特定の薬剤の有効量を経験的に決定することができる。
【0337】
「薬学的に許容される」という句は、当技術分野において承認されており、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を生じることなく、妥当な損益比に見合うような、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに適切な、組成物、ポリマーおよび他の材料および/もしくはその塩および/もしくは剤形を指す。
【0338】
「薬学的に許容される担体」という句は、当技術分野において承認されており、例えば、薬学的に許容される材料、組成物または媒体、例えば、液体(水性のまたは非水性の)または固体の充填剤、希釈剤、添加剤、溶媒または封入材料を指し、これらは、任意の補充物もしくは組成物、もしくはその成分を、身体の1つの器官、もしくは部分から、身体の別の器官、もしくは部分まで保持もしくは輸送すること、または薬剤を眼の表面まで送達することに関与している。各担体は、組成物の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は非発熱性である。薬学的に許容される担体としての役目を果たすことができる材料の一部の例として、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロースなど;(2)デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプンなど;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)添加剤、例えば、ココアバターおよび坐剤ワックスなど;(9)油、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、マカデミアナッツ油、クルミ油、アーモンド油、カボチャ種油、綿実油、ゴマ油、コーン油、ダイズ油、アボカド油、パーム油、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、アマニ油、ブドウ種油、カノーラ油、低粘度シリコーン油、軽油、もしくはこれらの任意の組合せなど;(10)グリコール、例えばプロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど;(13)寒天;(14)
緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)ガム、例えば、HP−グアーなど;(22)ポリマー;および(23)医薬製剤に利用されている他の無毒性、適合性のある物質。
【0339】
「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野において承認されており、制限なしで、治療剤、添加剤、他の材料などを含めた本発明の組成物または任意のその成分の、比較的無毒性の無機酸および有機酸の付加塩を指す。薬学的に許容される塩の例として、鉱酸、例えば塩酸および硫酸などからから導かれる塩、および有機酸、例えば、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などから導かれる塩が挙げられる。薬学的に許容される塩には、従来の無毒性の塩、または例えば無毒性無機酸もしくは有機酸由来の、形成された親化合物の第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような従来の無毒性塩として、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸などから導かれる塩;ならびに有機酸、例えば、酢酸、フロン酸(fuoric)、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸(tolunesulfonic)、メタンスルホン酸、エタン二スルホン酸、シュウ酸、およびイセチオン酸などから調製した塩を含む。
【0340】
「局所用」という用語は、投与経路、すなわち、薬物を、身体の表面、例えばそれを必要とする対象の皮膚、組織または粘膜などに投与することを指す。例えば、局所用医薬は、眼蓋、まつ毛、眼瞼縁、皮膚、または眼(例えば眼の表面、例えば結膜に適用される点眼剤など)に投与することができる。局所用医薬はまた、吸入によるもの、例えば喘息医薬、または歯の表面に適用される医薬であってよい。
【0341】
「眼内の」という用語は、本明細書で使用する場合、眼球内の任意の箇所を指す。
【0342】
「硝子体内」という用語は、本明細書で使用する場合、眼の後方のゲル内部を指す。例えば、Lucentis注射は硝子体内に投与される。
【0343】
「網膜下」という用語は、本明細書で使用する場合、網膜と脈絡膜との間の領域を指す。例えば、iScienceデバイスは網膜下に投与される。
【0344】
「嚢内」という用語は、本明細書で使用する場合、レンズカプセル内を指す。例えば、iVeenaデバイスは嚢内に投与される。
【0345】
「上脈絡膜」という用語は、本明細書で使用する場合、脈絡膜と強膜の間の領域を指す。例えば、Clearsideデバイスは上脈絡膜に投与される。
【0346】
「テノン嚢下」という用語は、本明細書で使用する場合、眼窩隔膜の後方、強膜の外側、テノン嚢の下の領域を指す。例えば、トリアムシノロン注射はテノン嚢下に投与される。
【0347】
「結膜下」という用語は、本明細書で使用する場合、結膜と強膜との間の領域を指す。例えば、Macusightラパマイシン注射は結膜下領域に投与される。
【0348】
「腔内」という用語は、本明細書で使用する場合、眼の「腔所へ入れる」、例えば、眼の前方または後方腔所へ入れることを指す。例えば、白内障手術中の任意の注射は腔内に
投与される。
【0349】
「眼窩内」という用語は、本明細書で使用する場合、眼瞼へ入れることを指す。例えば、Botox注射は眼窩内に投与される。
【0350】
「カルデサク」という用語は、本明細書で使用する場合、眼瞼と球との間の空間を指す。例えば、Ocusertデバイスは、カルデサクに投与される。
【0351】
「眼球後部」という用語は、本明細書で使用する場合、眼の眼窩の後を指す。「球周囲」という用語は、本明細書で使用する場合、眼窩内または眼に隣接することを指す。例えば、眼手術前の麻酔剤遮断は、眼球後部または球周囲の空間に投与される。
【0352】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする対象」とは、本明細書に記載されている疎水性薬物を処置のために使用することが意図されている障害、例えば、炎症性障害、呼吸障害、自己免疫性疾患またはがんを有する対象である。「対象」は哺乳動物を含む。哺乳動物は、例えば、ヒトまたは適当な非ヒト哺乳動物、例えば、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタなどであってよい。対象はまた、トリまたは家禽であってよい。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0353】
「予防する」という用語は、眼瞼炎などの状態に関して使用される場合、当技術分野において承認されており、組成物を与えられなかった対象と比べて、対象の医学的状態の頻度を減少させ、または開始、徴候および/または症状を遅らせる組成物の投与を指す。
【0354】
「処置する」という用語は、任意の状態または疾患の少なくとも1種の症状を治癒および改善することを指す、当技術分野において承認されている用語である。
【実施例】
【0355】
(例1)0.1%プロピオン酸フルチカゾンナノ粒子の調製
方法:プロピオン酸フルチカゾンの濃度を決定するためのHPLC方法を開発し、詳細をAに提供した。
【0356】
第I相の具体的な組成は、この相における薬物の溶解性に依存する。FDAに認可された溶媒および賦形剤中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解性を、薬物10mgを各溶媒中に溶解し、激しくボルテックスにかけ、25℃で一夜、平衡にすることにより決定した。懸濁液を10000rpmで遠心分離し、上清をRP−HPLCにより239nmで分析した。各溶媒中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解性および相溶性を評価した。
【0357】
A.HPLC法の開発
プロピオン酸フルチカゾン(クリーム剤、軟膏剤)を分析するためのUSP方法は全て、カラムを分解またはブロックし得る賦形剤が存在し、ピーク分離に対する分解能が低く、ピーク高さがない可能性が高いため、移動相で希釈する前にヘキサンで抽出する方法を利用するものである。抽出方法では、分解生成物、特に予め特徴付けられていなかったものが失われる結果となる。API、および賦形剤との潜在的な不適合性により生じ得る分解生成物の定量化をもたらす方法を開発することが必要であると思われた。
【0358】
試料調製方法
1.試料400μl(1mg/ml薬物懸濁液)を移動相1.6mlと合わせ、ボルテックスで混合した(試料は現在0.2mg/mlである)
2.試料2mlを5mlシリンジ中に回収し、次いで、シリンジMillex GVフィルタ(Millipore、直径33mm、0.22um、Durapore(PVD
F)、カタログ番号:SLGV033RB、黄色)を通して、手圧(hand pressure)によ
り濾過した。この努力には中程度の量の手圧が必要である
3.濾過した試料を、イソクラティック方法を用いてHPLC上に直接注入した。
【0359】
カラム洗浄:
新たな希釈/濾過方法を用いて、処理加工した製剤を含んでいた試料を数回注入した後、カラム圧を222バールから230バールまでわずかに上昇させた。カラムを移動相、またはメタノールとpH=7の0.1Mの酢酸アンモニウム溶液との組合せで洗浄すると、カラム圧を元の圧力の約222バールに下げるのに有用であることが見出された。毎分1.5mlの現在のカラム流速、および長さ250mmのカラムでは、圧力は、流速がより低く、カラム長さのより短い同様の方法よりも高いことが予想される。HPLCは、400バールのカットオフ圧力を有する。カラム圧のモニタリングは、HPLC方法が今度はスキャンとともに圧力を記録するのに、カラム洗浄が必要とされる時期を決定するのに不可欠である。製剤を含んでいないさらなる希釈液の注入も、さらに頻繁に加えて、カラムを洗浄し、過剰な加圧、不十分なピーク形状、および高さの損失を防ぐ。
【0360】
試料の準備
複数の試料の製剤を流すための順序は、カラム圧の増大を防ぐためのブランクの注入を含んでいるべきである。精度試料をHPLC上に流す場合、圧力を221バールから230バールに上げ、ビヒクルを12回注入した。次いで、これらの注入の後、いかなるビヒクルも含んでいない試料を8回続け、圧力を228バールに落とした。圧力をより低いレベルに落とす順序の後、さらなる洗浄を行った。これらの結果に基づいて、記載した通りに調製した製剤を合計6から8回注入した後は、移動相を2回から4回注入するべきである。必要である場合には、別の調合の順序の前に、さらなるカラム洗浄を考慮するべきである。
【0361】
クロマトグラフィー条件:
機器:オートサンプラーおよびDAD検出器付きAgilent1200HPLC。
移動相:イソクラティック、50%メタノール、35%0.01Mリン酸アンモニウムpH=3.5、15%アセトニトリル。
流速:1.5ml/分
分析時間:20分
カラム:Phenomenex Luna C18 5ミクロン 100A 250−4.6mm P/N 00G−4041−EO
カラム温度:40℃
試料トレイ:室温
注入体積:50マイクロリットル
DAD検出:239nm
試料の準備:確実にキャリーオーバーがないように、ブランクを実験のセット間の順序で流した。
標準品の調製:フルチカゾンの固体を秤量し100%アセトニトリル中に溶解することにより、フルチカゾンの5mg/ml標準ストック溶液を調製した。このストックの希釈を、検量線試料用に、試料希釈液において行った(50%アセトニトリル/水)。
試料希釈液:50%アセトニトリル/水。
【0362】
方法開発の態様
特異性
FPおよびその不純物の、ピーク形状および高さ、ならびに保持時間は、ビヒクルまたは希釈剤として移動相を含んでいる試料と同様であるべきである。以下の表1は、
図2に示す、ビヒクル、または移動相だけを含んでいるHPLC試料に対するピーク面積および
高さの比較を示す。
【0363】
【表6】
【0364】
製剤ビヒクルのある試料とない試料との間に極めて良好な適合がある。表2は、これら試料の面積および高さを示す。
【0365】
【表7】
【0366】
不純物B、CおよびD:
また、ビヒクル注入からの不純物B、CおよびDを、ビヒクルを含んでいない試料からの同じ不純物と比較した。以下の表3は、2つの試料間の当量を示す。希釈液は移動相である。
【0367】
【表8】
【0368】
保持時間
プロピオン酸フルチカゾン、ならびに不純物B、CおよびDの保持時間は、以下の通りである。
【0369】
【表9】
【0370】
直線性
新たな試料調製物の直線性を、ブランクのビヒクルの試料に、アセトニトリル中に溶解した既知量のプロピオン酸フルチカゾンをスパイクすることにより評価した。5.11mg/mlプロピオン酸フルチカゾンの300μl、400μlおよび500μlスパイクを、ビヒクル2グラム中に溶解し、移動相(MP)で10mlに希釈した。移動相は、50%メタノール、pH=3.5の35%0.01Mリン酸アンモニウム、および15%アセトニトリルであった。結果を以下の表5に示す。x軸の単位はFPのmg/mlである。相関係数またはR2の値が0.999以上である場合、方法に直線性があるとみなされる。
【0371】
【表10】
【0372】
100%移動相を用いて同じスパイクをやはり行った。これら試料の直線性を、以下の表6に示す。この場合のx軸は、プロピオン酸フルチカゾンのmg/mlである。
【0373】
【表11】
【0374】
同じ濃度のビヒクルおよび希釈液の試料から上記の試料のクロマトグラムを重ね合わせ、プロピオン酸フルチカゾンならびに不純物B、CおよびDに対して同一のピーク形状および高さを示す。
【0375】
精度
懸濁液の試料から調製した0.2mg/ml試料を10回注入することにより、精度を
評価した。結果を以下の表7に提供する。
【0376】
【表12】
【0377】
精度を評価するための標的の相対的標準偏差(RSD)は≦1.0%である。値は、全て十分にこの範囲内にあった。
【0378】
正確さ
新たな試料調製での3つのレベルでの方法の正確さを、既知量のプロピオン酸フルチカゾンをビヒクル約2グラム中にスパイクし、計算値を実際の結果と比較することにより評価した。以下の表8は、表5に示す検量線を用いた回収率を示す。
【0379】
【表13】
【0380】
この場合に対する合格基準は、スパイク回収率99%から101%である。この場合、実測値と計算値との間に良好な相関が存在する。
【0381】
LODおよびLLOQ
この方法のブランクから、ノイズはおよそ0.1吸収単位であり、これはこの報告のパートAにおけるLODおよびLLOQの計算に対して同じである。LLOQおよびLODはそれぞれ、この高さの10×および3×であるべきである。ピーク高さは、ビヒクルの存在ありおよびなしで非常に類似するため、LODおよびLLOQをこの報告のパートAと同じ濃度範囲に調製したが、この場合、スパイク濃縮を移動相中で調製し、ビヒクル2
グラム中にスパイクし、LODおよびLLOQの濃度に対して移動相で10mlに希釈した。試料を2×注入し、平均を以下に示す。511ng/mlの試料により、再現性のある面積/高さ、31.4/1.7(LLOQ)がもたらされた。LODに対して、153.3ng/mlの試料により、面積/高さ、8.1/0.44がもたらされた。LLOQおよびLOD両方の高さはおよそ、測定したノイズに基づいて計算されたものであった。
【0382】
B.プロピオン酸フルチカゾンの溶解性の決定
プロピオン酸フルチカゾンの溶解性を表9に示す。第I相の具体的な組成は、この相における薬物の溶解性に依存する。FDAに承認された溶媒および賦形剤中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解性を、薬物10mgを各溶媒中に溶解し、激しくボルテックスにかけ、25℃で一夜、平衡にすることにより決定した。懸濁液を10000rpmで遠心分離し、上清をRP−HPLCにより239nmで分析した。各溶媒中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解性および相溶性を評価した。
【0383】
【表14】
【0384】
C.超音波処理中の貧溶媒結晶化によるナノ結晶の調製(1ステッププロセス)
プロセスは
図3に示す通りであり、精製ステップはない。プロピオン酸フルチカゾンの場合は、薬物を以下の組成において溶解した:プロピオン酸フルチカゾン(0.45%)、Tween80(7.44%)、PEG400(23%)、ポリプロピレングリコール400(69.11%)。この組成は第I相であった。プロピオン酸フルチカゾンの溶解性は、これらの各溶媒中で最大となった。表9を利用して第I相の組成に到達した。最終
組成物(第I相を第II相に加えた後)は、0.1%w/wの薬物、および眼科医薬に認可された濃度の賦形剤を含んでいた。
【0385】
第I相および第II相を、両方とも、0.22ミクロンPVDFフィルタを通して滅菌濾過した後、混合した。第I相におけるプロピオン酸フルチカゾンのフィルタに対する薬物結合の動力学を調査する実験において、FPにはPVDFフィルタとの結合が殆どまたは全く存在しないことが見出された。
【0386】
滅菌した第I相を、滅菌した連続相(第II相溶液)中に、超音波処理をしながら滴下添加した。第I相4.3gを、第II相15.76gに滴下添加した。超音波処理を、Sonic Rupture 400(Omni International,Inc.)で行った。超音波処理条件は以下の通りであった:(a)チップサイズ(12.7mm)、温度2〜4℃、出力10W、持続時間:1.5分、バッチサイズは20mlであった。これを、50mlビーカーを用いて遂行した。第I相を第II相に加える速度が、形成される結晶の粒子サイズを決定する。20mlバッチでは、第I相を第II相に加える速度は2.15ml/分であった。
【0387】
第II相の構成成分は、ナノ結晶が形成されるときに液滴に対する安定化相として作用するため、この相の具体的な組成にはとりわけ微妙な差異がある。安定化剤の有効性は、安定化ポリマーの分子量および化学構造、安定化剤の薬物表面に対する付着、ならびにナノ結晶の表面エネルギーを低減する能力に依存する。さらに、連続相におけるポリマーの濃度は、懸濁液の粒子サイズに効果を及ぼすと考えられる。安定化相の機能はまた、ナノ粒子が形成する前に、液滴の癒着を防ぐことである。0.1%プロピオン酸フルチカゾンの調製物に対して、第II相の最終組成は、0.013%塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)、0.25%メチルセルロール、および99.7%水であった。プロ
ピオン酸フルチカゾンに対して、ステップ1の終わりに得られた懸濁液は、FDA認可の眼科医薬に許容される規制された量の賦形剤を含んでいる。0.1%プロピオン酸フルチカゾンナノ粒子懸濁液は、0.1%の薬物、3.23%のTween80、4.97%のPEG400、14.95%のPPG400、0.010%の塩化ベンズアルコニウム、0.38%のメチルセルロース、および十分量の精製水を含んでいる。このステップの粒子サイズ範囲は400〜800nmである。pHは5.8、重量モル浸透圧濃度は546mOsm/Kgであった。
【0388】
眼瞼炎を処置するには高浸透圧溶液が容認され得るが、適用するのは眼瞼と眼の表面との界面であるため、等張懸濁液が常に望ましい。
【0389】
薬物濃度0.06%では、ビヒクル組成物は等張である(316mOsm/kg)。この薬物濃度では、連続相における賦形剤のそれぞれの濃度は、2.57%のTween80、2.99%のPEG400、8.97%のPPG400、0.010%の塩化ベンズアルコニウム、および精製水(十分量)である。この溶液のpHは6.5である。pHを中性のpHに調節するために、NaOHを加えてもよい。次いで、これを希釈して、ビヒクル中に懸濁されるプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶の濃度を低減することができる。表10は、0.06%〜0.001%の濃度で調製したプロピオン酸フルチカゾンの製剤を示す。
【0390】
【表15】
【0391】
溶液は、pH、賦形剤組成、および重量モル浸透圧濃度の眼科基準を満たしている。0.06%を超える濃度の製剤は、重量モル浸透圧濃度値>350mOsm/kgを有する。この製剤での問題点の一つは、「オストワルド熟成」、すなわち粒子サイズの成長である。溶解したプロピオン酸フルチカゾンが存在する場合、粒子サイズの成長が観察される。製剤中に存在する賦形剤は、連続相中に薬物をいくらか溶解する。これにより、長期間の貯蔵にわたって粒子の不安定がもたらされる。
【0392】
a.第II相のポリマー組成の初期の粒子サイズに対する効果
第II相の組成は極めて重大であり、当業者には予想ができない。粒子を形成するステップは、沈殿する前の液滴の分散と癒着との間の協同的現象である。さらに、薬物の性質は、粒子安定化ポリマーの性質と適合している必要がある。
【0393】
図5に示す通り、HPMC、PVA、PVP、プルロニック、およびこれらの混合物の使用により、平均直径が1ミクロンを超える粒子が生成された。第II相の溶媒として水中、2%のtween20と0.5%のCMCとの組合せにより、より小型の(0.4〜0.6ミクロン)粒子が生成されると思われた。これらの粒子は、しかし、経時的に1.2ミクロンのサイズに成長した。0.5%のキサンタンゴムなどの高粘度ポリマーの使用により、非常に大型である(>20ミクロン)粒子が生成された。
【0394】
第III相(第I相+第II相の組合せ):第II相において0.12%塩化ベンズアルコニウム/0.25%メチルセルロース(15cP)/水の組合せは、最小の粒子を再現性よく(400〜600nm、15バッチ)生成する組成と思われた。第I相と第II相とを組み合わせると第III相となり、第III相において超音波処理の間にナノ結晶が形成される。
【0395】
この第III相組成物も、40℃で4週間を超えて化学的に安定であった。この組合せのポリマーも、5〜14日間、粒子サイズを元のサイズに維持する。
【0396】
b.トップダウン技術により得られるバッチの粒子サイズ
顕微溶液化、ジェット粉砕、超音波処理(湿式磨砕)、および均質化などの、トップダウン技術により生成された粒子の比較を行った。
図6に示す通り、これらの技術により生成されたバッチは、全てが2ミクロンを超えた微粒子を生成する。いくらかの粒子はサイズ8ミクロンであった。顕微鏡下の粒子は破壊され、デブリ様に見えた。
【0397】
c.第II相のpHの初期の粒子サイズに対する効果
図7に示す通り、pHは、初期の粒子サイズにおいて極めて重大な役割を果たすと考えられる。第II相を、0.1%w/wのリン酸バッファーでpH7〜7.2にpHを合わせた場合、初期の粒子サイズは一貫して高かった(1.0〜1.3ミクロン)。pHを合わせないままでいると、粒子サイズは一貫して500〜800nmの間であった。
図7は、生成された、pHを釣り合わせたバッチ、およびpHを釣り合わせなかったバッチの平均粒子サイズを示す。pH不釣り合いのバッチ(n=3)は、0.1%プロピオン酸フルチカゾンでは5.5であり、0.06%プロピオン酸フルチカゾン(n=3)では6.5であった。粒子サイズに対するpHの効果は、当業者には予期されないものであり、予測できないものであった。
【0398】
d.第II相における立体安定化ポリマーの分子量の粒子サイズに対する効果
第II相における立体安定化ポリマーの分子量は、
図8に示す通り、ナノ結晶の粒子サイズにおいて重大な役割を果たす。例えば、4000センチポアズのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、45センチポアズのHPMCを用いた場合に生成される粒子よりも大型である粒子を一貫して生成する。
【0399】
e.pHの粒子サイズ安定性に対する効果
ナノ結晶の安定性は、第I相と第II相との組合せにより形成される第III相のpHによって制御される。20グラムバッチのナノ結晶をpH5.5で生成し、25℃の安定性上に配置した。別の20グラムバッチをpH7.5で生成し、安定性を25℃で30日間決定した。意外なことに、7.5の粒子は1ミクロンを超える平均粒子サイズに速やかに成長した。
図9を参照されたい。この現象を、50グラムスケールのバッチに対して検証した。
【0400】
f.第III相生成物(第I相+第II相)の最終組成
第III相の組成は、0.1%のプロピオン酸フルチカゾン、1.63%のTween80、5%のPEG400、15%のPPG400、0.01%の塩化ベンズアルコニウム、0.2%のメチルセルロース、および77.95%の水である。この相のpHは5.5である。
【0401】
g.プロピオン酸フルチカゾンのナノ結晶の精製
プロピオン酸フルチカゾンのナノ結晶を、タンジェンシャルフローフィルトレーション、またはホローファイバーカートリッジフィルトレーションのいずれかにより、連続相を交換することによって精製した。ハイフローメンブレンを濾過に用いる。孔サイズ0.22ミクロン以下のPVDF、PESなどのフィルタが、この目的に適する。Millipore(Pellicon XL 50システム)からのタンジェンシャルフロー装置を、この目的に用いることができる。
【0402】
250gのバッチサイズに対して、ナノ結晶懸濁液(第III相)を、ポンプ速度3の下に、30psiを決して超えない圧力で、500ml容器中に注いだ。ナノ懸濁液を洗い流して10mlにしたら、洗浄液を加えた。洗浄液は0.1%のtween80であり、30℃の容器中に送り込んだ。洗浄液を2度交換して、バッファーが完全に交換するのを確実にした。次いで、濃縮物を、薬物濃度に対してアッセイした。アッセイ結果に基づき、再構成の体積を調節して所望の濃度を実現した。さらに、メチルセルロース、塩化ナトリウムおよびホスフェートを加えて、重量モル浸透圧の組成に到達させた。
【0403】
図10に示す通り、精製したプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶は、経時的にいかなる集塊も示さなかった。
【0404】
(例2)例示的なナノ結晶の製造プロセス
サイズ範囲400〜600nmのプロピオン酸フルチカゾンの、精製された、安定な、無菌のナノ結晶を製造するためのプロセスは以下を含む:
PEG400、PPG400、およびTween80中プロピオン酸フルチカゾンの滅菌した第I相溶液を、超音波の下で、流速1〜1.4ml/分の間で、15cP〜45cPの間のメチルセルロース、塩化ベンズアルコニウム、ならびに比0.2〜1およびpH5〜6の間の精製水を含んでいる、滅菌した第II相溶液と混合して、滅菌した第III相懸濁液を生成する、インサイチュー結晶化ステップ、ならびに
第III相のプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶を、30分から24時間の範囲の持続時間の間、25〜40℃の範囲の温度の保持タンク中に維持するアニーリングステップ、ならびに
プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶を、0.1〜0.5%のTween80を含む滅菌水溶液により、孔サイズ0.1〜0.22ミクロンのメンブレンを通して交換濾過することにより洗浄する、精製ステップ、ならびに
プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶を0.0001%〜10%の間の範囲に濃縮する、濃縮ステップ、ならびに
さらなる賦形剤を滅菌形態に加えて、特定の生成物および臨床適応症に適するとみなされる、重量モル浸透圧濃度、pH、粘度、生体適合性および透過性の、FDAおよび薬物生成基準を満たす、最終の調合ステップ。
【0405】
(例3)ナノ結晶製造プロセス−バッチプロセス
本例に記載するプロセスを適用して、サイズ範囲400〜600nmのFP結晶を生成した。このプロセスを用いた粒子サイズの最適化は、第I相および第II相の組成、超音波処理の出力エネルギー、第I相の流速、第I相および第II相の温度の関数である。全てのバッチ(20〜2000g)に対する第I相の流速は、1.43ml/分であった。
【0406】
第I相の組成:FP:0.45%w/w;Tween80:7.67%w/w;PEG400:23.18%w/w、PPG400(PPG=ポリプロピレングリコール):68.70%w/w。第II相の組成:塩化ベンズアルコニウム:0.020%w/w、メチルセルロース15cp 0.40%w/w、水(100%にする十分量)。第III相分散液の組成:FP:0.225%w/w、Tween80:3.796%w/w、PEG400:11.577%w/w、PPG400:34.41%w/w、塩化ベンズアルコニウム0.01%、メチルセルロース(MC15cP):0.2%w/w、水100%にする十分量。第I相の第II相に対する体積比は、このバッチプロセスでは1:1であった。
【0407】
第I相および第II相各々の温度は0〜1℃(氷水スラリー)であった。超音波出力エネルギーは、3/4”プローブおよびOmni Cellruptor Sonicatorを用いて25%であった。第II相のpHは5.5であった。pHが高いほど粒子が大きい結果となった。pH<5では、粒子サイズは150〜220nmの間であったが、低いpHでは薬物が分解を始めたことも観察された。
【0408】
例1同様、FP結晶のサイズは、第II相溶液の適切な安定化剤およびpH値を選択することにより制御されることが見出された。例えば、
図7および
図8を参照。
【0409】
400〜600nmの範囲の粒子サイズは、より低い温度で実現された(
図11)。室温で生成された粒子は大型であり、凝集し、柔軟な非晶質領域が示された。
【0410】
プロピオン酸フルチカゾン結晶を超音波結晶化により調製した後、分散液(第III相)を25℃でアニーリングした。粒子は、少なくとも8時間のアニーリング時間後、安定
な粒子サイズに平衡化した(
図12および
図13)。このアニーリングステップは、意外なことに、粒子サイズを低減した。
図12および
図13に示す通り、平衡化された粒子サイズは8時間で横ばい状態となり、異なるアニーリング温度、すなわち4℃、25℃および40℃の間に統計学的な差は存在しない。さらに、アニーリング効果は、0.1%および10%の濃度のFPに対して一貫している。
【0411】
上記のプロセスにより生成した結晶を、タンジェンシャルフローフィルトレーションまたは連続遠心分離のいずれかにより精製した。実験室規模のPellicon XL50濾過装置を用いて、濾過条件を開発した。このステップの目的は、先のステップにおいて生成された結晶を精製することであった。
図14および
図15は、孔サイズ0.1ミクロンのPVDFフィルタを用いた薬物の損失が最小であったことを示したものである。液体を0.1%w/wの溶液と交換することにより、遠心分離による精製を遂行した。
【0412】
プロピオン酸フルチカゾンの最終組成は、0.0001〜10%w/w、メチルセルロース0.2%w/w(4000cP)、塩化ベンズアルコニウム0.01%、および水(十分量)であった。最終製剤は、適応症に応じて、さらなる賦形剤を製剤に加えることができるという点で柔軟である。
【0413】
(例4)バッチプロセスからのナノ結晶の分散性
例3において生成されたFPの最終組成物または製剤は、少なくとも8時間を超えて依然として分散していたことが観察された。とりわけ、ナノ懸濁液5mlを、その全てが最終組成物中に0.1%FPナノ懸濁液を含んでいる10mlガラス製スクリューキャップ付バイアル中に配置した。各バイアルを、10回、上下を逆さにして振盪し、試料を十分に分散させた。振盪後、各バイアルを25℃で貯蔵し、経時的に24時間まで試料採取した。
【0414】
各試料を24時間後に再分散し、再び試料採取した(
図16および
図17における青色矢印によって示す)。試料採取を、製剤の中央部から試料0.5mlを採取することにより行った。試料を、HPLCによるアッセイによって分析した。
図16および
図17に示す通り、最終製剤は少なくとも8時間、依然として分散し、振盪すると十分に再分散した。また、0.005%〜10%濃度のFPは全て十分に再分散し、再分散性はバッチスケール(20g〜2000g)にわたって再現性があった。全ての濃度が、RTで24時間に80%を超えて分散した。全ての濃度がバイアルの振盪で再分散し、綿毛状の頑強な懸濁液を示した。濃度が高いほど定着の速度が速いわけではないことが結論付けられた。
【0415】
(例5)バッチプロセスからのナノ結晶の安定性
FPの最終組成物または製剤は、試験した全ての濃度、すなわち、0.005%、0.01%、0.1%および10%にわたって安定であることも観察された。試料を、4℃、25℃、40℃の安定性チャンバー中に配置した。安定性の時間点:T=0d、T=1週間、T=2週間、T=4週間。
【0416】
HPLCによるアッセイは、4℃、25℃では99〜101%、および40℃では106%であることを示した。T=0dから試験した試料において、不純物B、CおよびDに変化はなかった。試験した製剤のpH(6.5〜6.8)はT=0dから変化しなかった。さらに、FP粒子サイズ(505〜620nm)も、T=0dから変化しなかった。
【0417】
(例6)ナノ結晶組成物の均一性
塩化ナトリウム、ホスフェート、メチルセルロース、tween80、塩化ベンズアルコニウム、および水を含んでいるプロピオン酸フルチカゾン(FP)に対する新しい懸濁製剤を、懸濁溶液の上部、中央部および底部を試料採取することにより、経時の含量の均
一性に対して試験した。目的は、懸濁液の粒子が振盪後の溶液中に依然として等しく分散している時間の長さを決定することであった。
【0418】
0.07%FP懸濁液約20mlをバイアル中に入れ、10回上下に振盪して、FP粒子を懸濁させた。0時間、0.5時間、1時間、3時間、6.5時間および23時間に、上部、中央部および底部の試料200μlを採取した。試料を全て、HPLCにより、検量線を用いて分析した。試料を直接HPLCバイアル中に採取し、希釈液800μlで希釈した(75/25アセトニトリル/水)。試料200μlおよび希釈液800μlの重量を記録し、各試料中のFPの量の最終的な計算において用いた。
【0419】
結果は、最初の6.5時間に、上部、中央部および底部の試料間に差が殆ど、または全く存在しなかったことを示していた。しかし、23時間の試料は、肉眼的に定着し、HPLCの結果によって支持された。
【0420】
上記希釈に基づいて、3点の較正範囲を0.056から0.45mg/mlまで選択した。以下の表11を参照されたい。FPの標準溶液を3つ、ストック標準品0.5787mg/mlから調製した。
【0421】
【表16】
【0422】
検量線を、上記に記載したストック溶液の3つの既知濃度およびブランクビヒクル200ulを用いて調製して、ビヒクルが標準品に対して有し得るあらゆるマトリックス効果に対して補正した。
【0423】
濃度に対する計算は以下の式に基づくものであった:
(ストックの重量)×(ストック標準品)/(試料の合計重量)
検量線を以下の表12に示す。標準品は全て、溶液1グラムあたりのFPのmgにおけるものである。
【0424】
【表17】
【0425】
表12における検量線を用いて、時間点の試料を、勾配および切片を用いて分析した。以下の表13は、時間点の試料分析から得たデータを示す。
【0426】
【表18】
【0427】
データをまた、時間点の範囲全体にわたってグラフで表し、
図18に示した。
【0428】
(例7)ナノ結晶製造プロセス−フロープロセス(FLOW PROCESS)
また、粒子サイズ範囲400〜600nmのプロピオン酸フルチカゾンのナノ懸濁液を、フロープロセススキームを用いて調製した。
【0429】
プロピオン酸フルチカゾンナノ懸濁液を、
図19に示すフローリアクターを用いて調製した。
図4における流れ図に示す通り、第I相および第II相をフローリアクター中に計量した。
【0430】
これらナノ懸濁液の粒子サイズを、Malvern Zetasizer S90で測定した。ナノ懸濁液を作成するのに用いた、第I相および第II相の両方の溶液とも、超音波処理器のフローシステム中に連続的にポンプで汲み入れた。試料25バッチを様々な条件下で調製した。両方の相の流速、第III相のアニーリング温度、および超音波処理
器の振幅の、粒子サイズに対する効果を分析した。例1および例3に記載した「バッチプロセス変数」の殆どの局面(例えば、2つの相を混合する温度、第II相におけるセルロース系安定化剤のタイプおよび粘度/分子量、第II相のpH、ならびにアニーリング温度および時間)が、やはり当てはまった。
【0431】
材料と装置
(A)生の成分を以下の表14に列挙した
(B)Malvern Nanosizer S90
(C)フローリアクター
(D)超音波処理器プローブ、サイズ25mm。プローブエクステンダー付で1”
(E)ポンプI(NE−9000、New Era Pump Systems Inc.)
(F)ポンプII(Console Drive、Cole−Palmer)。
【0432】
【表19】
【0433】
第I相および第II相の両方の溶液を前もって調製した後、これらを1:1の比でフローシステム中にポンプで汲み入れた。調製の詳細および両方の相の組成を、500gバッチを一例として以下に記載する。
【0434】
第I相の調製(500gバッチ)
プロピオン酸フルチカゾン2.28gを、tween80 38.34g、PEG400 116g、およびPPG400 344gの溶液中に徐々に加えた。溶液の全ての構成成分をボルテックスにかけ、標準の超音波水浴を用いて、全ての固体が溶液になるまで超音波処理した。
【0435】
【表20】
【0436】
第II相の調製(500gバッチ)
10%塩化ベンズアルコニウム溶液1gを、水299gと1%メチルセルロース(15cP)200gとの混合物中に加えた。混合物をボルテックスにかけた。第II相の組成は以下の通りであった:塩化ベンズアルコニウム0.020%、メチルセルロース15cp 0.4%、水99.58%。
【0437】
第I相および第II相の混合条件(各相に対して500g、第III相合計1000g)
混合ステップに対する条件を以下に列挙する:
第I相および第II相の混合物の温度:0〜5℃
超音波チップのサイズ:直径25mm
超音波の振幅:25〜75%(具体的な実験に応じて)
第I相の流速:12〜700ml/分(具体的な実験に応じて)
第II相の流速:12〜700ml/分
冷却装置の温度:0〜−10℃
冷却空気:5psi
実験の持続時間:2〜8分
混合手順(各相に対して500gバッチ)。
【0438】
第II相250gを超音波処理器中に搭載した。次いで、冷却装置(0〜−10℃)および冷却空気(5psi)のスイッチを入れた。第I相500gを、氷/水混合浴中にある1000mlビーカー中に加えた。第II相の残りの250gを、氷/水混合浴中にある別の1000mlビーカー中に加えた。各相の温度を、少なくとも30分間安定化させた。各2相のポンプの流速を12〜700ml/分に設定した。次いで、超音波処理器のスイッチを入れ、振幅を調節した。ポンプのスイッチを入れた。両方の相が汲み入れられたら、超音波、ポンプおよびエアジェネレータを停止した。
【0439】
試料25バッチを様々な条件下で調製した。比較的高い流速(例えば、各相に対して700ml/分、および各相に対して250ml/分)で調製した3つのバッチ以外、殆どのバッチは、1ミクロン未満のピーク平均粒子サイズを有する。
【0440】
両方の相の流速の粒子サイズに対する効果
両方の相を、同じ実流速で汲み入れた(第I相:第II相の比は1であった)。
図20において、粒子サイズ(
図20における四角の点によって表される)を、第III相の最終の流速(
図20における垂直なバーによって表される)に対してプロットした。200ml/分で調製した試料3つは、約400〜600nmの最小の粒子サイズを有する。
【0441】
これらの実験は、プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶は、
図4に示すフロープロセスの模式図を用いて調製することができることを実証するものであった。顕微鏡検査により、結晶に対する平面様の形態が実証された。フロープロセスを用いて調製された製剤に対する予備的な安定性試験(25℃および40℃での4週間の安定性)により、粒子サイズの安定性および化学的完全性が示された。
【0442】
全般的に、粒子サイズを制御するプロセス変数に関して、傾向が注目された。第I相および第II相の温度を<2℃に制御すると、均一にサイズ分けされた粒子の、一貫したかつ頑強な生成がもたらされる。他の変数は、超音波処理の出力エネルギー、ならびに第I相および第II相の流速であった。流速は、均一な範囲の粒子サイズを産生する上で制御的な変数であると思われた。現在の超音波処理器のプローブのデザインでは、400〜600nmの範囲の粒子サイズを実現する最高の流速は、約200ml/分/ポンプ、また
は第III相に対して400ml/分であった。
【0443】
(例8)バッチプロセスにより製造されるナノ結晶のさらなるキャラクタリゼーション
FPのナノ結晶を、例1または例3に記載したものと同様の1000gバッチプロセスを用いて調製した。懸濁液を、遠心分離により固体中に回収し、真空オーブンで12時間乾燥させた。さらなる2バッチ(すなわち、bおよびc)を、同じプロセスを用いて調製した。
【0444】
均一化したFP粒子を、水性分散液中速度設定4のPolytron(Kinematica)を用いて調製した。試料を、遠心分離プロセスを用いて洗浄し、真空オーブン中で乾燥させた。
【0445】
製造元から受け取ったプロピオン酸フルチカゾンストック液を用いた。
【0446】
粒子サイズの評価
バッチプロセスによって調製されたFPナノ結晶の粒子サイズを、Malvern ZetaSizer S90により測定した。バッチ(b)および(c)の粒子サイズを、Malvern MasterSizer Sにより測定した。
図21に示す通り、バッチプロセスにより生成されたナノ結晶は、サイズ範囲400〜600nm内の、狭い分布の結晶を生成したが、FPストック材料および均質化されたFP材料は、広範な粒子サイズ分布を有した(それぞれ
図21Bおよび
図21C)。
【0447】
プロピオン酸フルチカゾン結晶懸濁液は高度に安定性である
バッチプロセスにより調製されたナノ結晶を安定性に対して試験して、粒子サイズ分布が依然として400〜600nmの狭い範囲であるか否かを評価した。ナノ粒子を、0.1%w/vのFP、0.90%w/vの塩化ナトリウム、0.51%w/vのメチルセルロース(MC4000cP)、0.10%w/vのリン酸ナトリウム、0.20%w/vのTween80、0.01%w/vの塩化ベンズアルコニウム、および98.18%w/vの水を含む最終ビヒクル中に調合した。製剤を、25℃および40℃の安定性インキュベーターに配置した。
【0448】
試料を、粒子サイズ、pH、重量モル浸透圧濃度およびアッセイに対して測定した。全ての試料が、25℃および40℃で75日にわたって、pH、重量モル浸透圧濃度、粒子サイズおよびアッセイ[FP]を維持した。
図22は、40℃でも75日を超えた粒子サイズの安定性を示すものである。
【0449】
このデータは、本発明のプロセスによって調製したプロピオン酸フルチカゾンは、高度に結晶性の結晶を含み、経時的な結晶成長(オストワルド熟成)の非存在により証明される、安定な形態学的微細構造を含むことを示唆するものである。
【0450】
飽和溶解度および溶解速度
FPの飽和溶解度を、本発明のバッチプロセスにより生成されたナノ結晶、均質化されたFP、およびFPストック材料に対してHPLCにより測定した。3つの材料全てに対する飽和溶解度は、40〜45μg/mlであった。別の一試験において、ナノ結晶(サイズ範囲400〜600nm)の溶解速度を、サイズ範囲1〜5ミクロンの懸濁化および微粉化されたプロピオン酸フルチカゾンを含んでいるバッチと比較した。比較上の溶解速度を
図23に示す。
【0451】
プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶の純度を評価し、製造元から受け取ったFPストック材料の純度と比較した。
図24Aに示すのは、プロピオン酸フルチカゾン原薬(保持時
間:13.388分)および既知のその不純物(保持時間6.457分および9.720分に示される)のクロマトグラムである。
図24Bに示すのは、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶のクロマトグラムである。ストック原薬に比べて、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶は、純度がより高く、6.457分および9.720分の不純物の非存在が顕著であった。バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶に対するHPLCクロマトグラムに対するスケールは0〜500mAUであり、それに対してストック材料では0〜1200mAUであったことに留意されたい。したがって、本発明のナノ結晶化および精製のプロセスにより、プロピオン酸フルチカゾンのより純粋なナノ結晶が作り出されることが結論付けられる。
【0452】
FPナノ結晶の形態
図25Aおよび
図25Bに示すのは、バッチプロセスにより調製され、ストック材料のFPと比較した、乾燥プロピオン酸フルチカゾン結晶の光学顕微鏡写真(Model:OMAX、1600×)である。ナノ結晶化プロセスにより生成されたFP結晶の見かけは、ストック材料であるプロピオン酸フルチカゾン原薬と明らかに区別される。
図25Aに見られる通り、プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶は桿状であり、輪郭のはっきりした定方向の形状寸法を有する。それとは対照的に、プロピオン酸フルチカゾンのストック材料は、いかなる特定の形状または形状寸法を支持しないと考えられる。
【0453】
バッチプロセスにより調製されたFP結晶の外部の見かけおよび形態を、ストック材料のFPと比較した。走査型電子顕微鏡写真を、Hitachi SEM装置を用いて、10000×倍率で収集した。実験はMicrovision,Inc.、Chelmsford、MAで行った。
【0454】
視覚的に、バッチプロセスにより生成された結晶と他の試料との間の差は顕著である。バッチプロセスにより調製されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、刃物様平面、または輪郭のはっきりした定方向の形状寸法を有する桿状であった(
図26Aおよび
図26B)。これとは対照的に、プロピオン酸フルチカゾンストック結晶の形態は、平面様ではなく丸型のように見え、またはバッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶のように角度のある縁を有していた(
図27A)。
【0455】
図27Bは、均一化したFP粒子(トップダウンプロセス)の走査型電子顕微鏡写真である。視覚的に、これらの粒子はストック材料と同様に見える。
【0456】
熱的特性
プロピオン酸フルチカゾンの各検体に対する熱的性質を測定するために、各検体からおよそ10mgを収集し、清浄なアルミナ製るつぼに配置した。以下の表は、同時熱分析試験に対する試験条件およびパラメーターを概要するものである。試料は、(a)プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶、および(b)プロピオン酸フルチカゾンストック材料であった。検体を、30℃で開始し、最終温度350℃に到達するまで、10℃/分の加熱速度の下で試験した。このプロセスを各検体に対して繰り返した。実験は、EBATCO、LLC、Eden Prairie、MNで行った。
【0457】
【表21】
【0458】
熱分析試験の結果を、以下の表16において、各試料に対して示す。物質が軟化する温度は、ガラス転移温度としても知られており、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶に比べて、プロピオン酸フルチカゾンストック材料では著しく低かった(57.6℃)。さらに、新たなプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶に対する融解熱は、FPストック材料(48.44J/g)よりも著しく高く(54.21J/g)、新たなプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、より結晶性の材料であり、イオン結合および水素結合などの分子間結合を切断するのにより多くのエネルギーを必要とすることを指摘するものであった。
【0459】
【表22】
【0460】
図28Aは、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶のDSC/TGAの組合せを示す。プロピオン酸フルチカゾンストック材料の熱的特性に比べて(
図28B)、FPナノ結晶の溶融の開始は、プロピオン酸フルチカゾンストックの溶融の開始よりも高かった:開始
溶融(バッチプロセスからのFPナノ結晶)299.5℃>開始
溶融(FP、ストック)297.3℃。さらに、熱重量分析(TGA)により証明される通り、開始温度
質量放出(バッチプロセスからのFPナノ結晶)299℃は、開始温度
質量放出(FP、現状)250℃よりも高かった。データは、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、プロピオン酸フルチカゾンストック材料よりも結晶性であり秩序正しい材料であることを示す熱的挙動を有することを示唆するものである。
【0461】
バッチプロセスにより調製されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は溶媒和化合物でも水和物でもない
理論上、溶媒が結晶構造に捕捉される場合、これらは「溶媒和化合物」と呼ばれる。具体的な溶媒が水である場合、結晶は「水和物」と呼ばれる。特定の結晶形態の溶媒和化合
物および水和物は、例えば、溶解、密度など、様々な性質を示す。示差走査熱量測定(DSC)を用いて、加熱されると結晶格子から逸脱するように誘導され得る、捕捉された溶媒の存在を検出することができる。バッチプロセスを利用して調製された結晶には、さらなる溶融転移(DSC)または多相性の質量放出(TGA)は存在せず(
図28A)、結晶が純粋な結晶であり、溶媒和化合物または水和物ではないことを意味する。プロピオン酸フルチカゾンストック材料も、溶媒和化合物でも水和物でもないが、予想通り、結晶構造である(
図28B)。
【0462】
バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶はプロピオン酸フルチカゾンストック材料に比べて高いバルクのタップ密度を有する
バッチプロセスにより調製された乾燥プロピオン酸フルチカゾン結晶のタップ密度は、0.5786g/cm
3であった。これとは対照的に、プロピオン酸フルチカゾンストックのタップ密度は、0.3278g/cm
3であった。データは、バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、ストックプロピオン酸フルチカゾンよりも高い充填を有することを示唆する。
【0463】
バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は非晶質性でも部分的に非晶質性でもない
バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、「冷結晶化」、すなわち溶融前の結晶化または非晶質相を示さないことに留意されたい。299.5℃に単一の、鋭い溶融転移が存在することで、材料に非晶質相または無定形相(amorphic phase)がないことが示唆される。溶融転移の鋭さ(溶融範囲10℃)はまた、高度に秩序正しい微細構造を意味する。これとは対照的に、プロピオン酸フルチカゾンストック材料は、わずかに広い範囲にわたって溶融した(11.1℃)。
【0464】
バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶、およびプロピオン酸フルチカゾンストック材料を、Nicoletフーリエ変換赤外線分光光度計を用いて、これらの赤外振動周波数(FTIR)に関して相互に比較した。特定の結合および官能基は既知の周波数で振動するため、既知の有機物質の同一性を確認/検証するのにFTIRが利用される。バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶のFTIRスペクトルは、プロピオン酸フルチカゾンの既知のFITRスペクトルに比べた場合(
図30)、いかなるさらなる振動周波数の存在も示さなかった(
図29)。
【0465】
本発明のプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン対2つの既知の形態のプロピオン酸フルチカゾンの結晶構造
多形1および多形2は、以前に公開されたプロピオン酸フルチカゾンの2つの結晶形態である。例えば、米国特許第6,406,718B1号(特許文献1)、ならびにJ.Cejka、B.Kratochvil、およびA.Jegorov.、2005年、「Crystal Structure of Fluticasone Propionate」、Z.Kristallogr.NCS220巻(2005年)143〜144頁を参照。公開されている文献から、それが最も大量にあるという点で、多形1がプロピオン酸フルチカゾンの最も安定な既知の形態である。多形1は、中度に極性の溶媒(アセトン、酢酸エチル、およびジクロリメタン(dichlorimethane))からフリー結晶化により形成
される。多形2は、超臨界流体から結晶化し、米国特許第6,406,718B1号に記載されているにすぎず、他に公開された記事はない。
【0466】
多形1の結晶構造はCejkaらによって提供されており、以下の単位格子の特徴を有する:C
25H
31F
3O
5S、単斜晶、P12
11(no.4)、a=7.6496Å、b=14.138Å、c=10.9833Å。
【0467】
多形2の結晶構造は、米国特許第6406718B1号、およびKariukiら、1999年、Chem.Commun.、1677〜1678に提供されている。単位格子パラメーターは、a=23.2434Å、b=13.9783Å、およびc=7.65Åである。単位格子は斜方晶と記載されていた。Kariukiらにおいて注目される通り、2つの結晶構造の間に顕著な類似性が存在した。参照のため、多形1(赤色)および多形2(青色)の計算されたXRPD粉末パターンを
図31Bに示す。
【0468】
バッチプロセスにより調製されたプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶の結晶構造を決定してプロピオン酸フルチカゾンストック材料の結晶構造と比べるための第1セットの試験において、両方の材料の粉末X線回折(XRPD)のパターンを、40KVおよび30mAで操作するX線回折装置(Shimadzu XRD6000回折計)により収集した。試料を分析用に分割し、微粉砕した。試料を、1ステップあたり2秒で、10度から65度まで2シータ0.02°ステップでスキャンした。回折したX線を、0.05°受光スリットを用いて平行にし、固体状態シンチレーション検出器で検出した。ピーク強度および分解能キャリブレーションを、固体石英標準品640dを用いて検証した。これらの試験は、XRD Laboratories、ILで行った。
【0469】
バッチプロセスにより調製されたプロピオン酸フルチカゾン結晶およびプロピオン酸フルチカゾンストック材料両方のXRPDパターンを、公開されている多形1および2の結晶構造から計算されたXRPDパターンと比較した。プロピオン酸フルチカゾンストックおよびプロピオン酸フルチカゾン多形1のXRPDパターンの上重ねにより、FPストック材料は、最も大量にあり安定な多形である多形1として存在することが指摘された。
【0470】
均一化によるFP結晶(「トップダウン」プロセスの例)およびFPストック材料のXRPDパターンの上重ねは、パターン間の、さらに強度間の、「ピーク対ピーク」の優れた一致を実証するものであった。プロピオン酸フルチカゾンの均一化された試料は、プロピオン酸フルチカゾンストック(多形1)と同一の多形のものであると結論付けることができる。これとは対照的に、プロピオン酸フルチカゾン結晶(バッチプロセス)のXRPDパターンは、公開されている多形1(赤色)および多形2(青色)上に上重ねされ(黒色)、
図31Bに示す回折パターンに明らかな相違が存在した。Triclinic Labs,Inc.で行ったさらなる実験により、バッチプロセスにより生成された結晶の単位格子構造、および標準の多形1との微細構造の相違が決定された。データは、新たなプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶は、標準の多形1よりも新規かつ区別された微細構造を有していたことを示唆している。
【0471】
バッチプロセスにより調製されたプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶の単位格子構造
試料ホルダーの空隙を粉末で充填し、試料をやさしく押して平坦な基準表面をもたらすことにより、全ての試料を調製した。あらゆる過剰な材料を除去し、元の容器に戻した。測定した全てのデータセットを予め処理加工してバックグラウンドを取り除き、通常の測定範囲にわたって100000カウントの共通領域によって評価した。指数付けは、測定した回折ピーク位置を用いた結晶単位格子の決定である。提供されたXRPDのデータファイルに対するピーク位置を、Winplot Rを用いて最初に決定した。
【0472】
XRPDのデータセット(バッチプロセスおよび多形1のFP)間のピーク強度の相違をモデル化するために、結晶高調波選択配向関数(crystalline harmonic preferred orientation function)を結晶構造の記述に加えて、FP(バッチプロセス)は新規の結晶性の晶癖であるという仮説を試験した。膨張における高調波項(harmonic term)8を用いて
、許容される高調波の対称性は2/mおよび「ファイバー(fiber)」であった。選択配向
関数を標準の多形1の結晶構造の記述に加えると、標準の多形1、およびバッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶のXRPDパターンは一致し得た。これ
により、FP(バッチプロセス)は、多形1の新規の結晶の晶癖であることが証明された。
【0473】
定義上、既知の多形の晶癖は、様々な形状および見かけをもたらし得る配向性の平面など(ミラー指数)、様々な微細構造を有する一方で、同じ単位結晶格子構造およびタイプを有する。バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾンの場合、結晶は、ストック材料(
図27)とは異なる見かけを有していた(
図26におけるSEMにより示される)。
【0474】
FP結晶の微細化および自社バッチに対して収集したXRPDデータ間の相違は、回折ピーク強度において本質的に異なっていた。ゼロ以外の「1」のミラー指数を有するピークは、自社材料に対する強度において著しい増大が見られた。自社材料のリートベルトモデリングにより、回折粉末試料内で、バッチプロセスからのFPナノ結晶は、試料表面に対して垂直な結晶学的方向で[001](c軸)に強力に整列したことが確認された。これは、明確に規定された晶癖が自社の生成方法によって生成され、ハビット(habit)は平面または刃物様の性質である可能性が高いことを示唆している。自社材料は、一貫した癖のため、XRPD試料ホルダーに異なって充填され、選択配向(preferred orientation)(PO)の観察がもたらされた。一方、ストック材料は、いかなる著しい選択配向(PO)を表さなかった。
【0475】
自社材料に由来する効果的な結晶構造は、結晶学的なa−b平面が最大に暴露された表面に対して殆ど平行に横たわる、刃物様または平面様の癖をさらに示唆するものである。効果的な結晶構造を用いて、刃物の癖の最大の結晶面によって暴露されるAPIの官能基を調査することができる。
【0476】
バッチプロセスにより生成されたプロピオン酸フルチカゾン結晶の単位格子構造は、単斜晶、P21、a=7.7116Å、b=14.170Å、c=11.306Å、ベータ=98.285、体積1222.6である。比べると、多形1の結晶構造は、Cejkaらにおいて提供されており、以下の単位格子の特徴を有する:C
25H
31F
30
5S、単斜晶、P12
11(no.4)、a=7.6496Å、b=14.138Å、c=10.9833Å。
【0477】
このように、プロピオン酸フルチカゾン(バッチプロセスによる)は、これまでに公表されている最も安定で最も大量にある結晶状態である多形1と同様の、単位格子タイプを占める新規の晶癖であると述べることができる。最も安定な多形は理論的に最も高い融点を有するので、新規の晶癖(本発明のプロセスによるプロピオン酸フルチカゾン)はこれまでに発明された原薬の中で最も安定な結晶構造であり得ると推定することができる。上記に述べたが、
図28Aおよび
図28Bに示す通り、新規の結晶の融点は299.5℃であり、これに対してストック材料(多形1)では297.3℃であった。また、本発明のプロセスにより生成されたFPナノ結晶における新規の晶癖の存在には、再現性があった。
【0478】
MAUDは、リートベルトモデリングの間に派生する選択配向パラメーターに基づいて、特定の結晶学的方向に対する「極点図」を生成することができる。選択された結晶学的な各軸に対して、極点図は、反射試料ホルダーの表面周囲のその結晶軸の角分布を図示するものである。理想的な粉末では、結晶学的な軸は全てランダムに配向され、均一な色を有する極点図がもたらされる。単結晶の試料では、結晶学的な軸は各々、単一の方向に配向される。その方向が試料表面に対して垂直であれば、極点図は、プロットの中心に単一の高強度点を示す。バッチプロセスによるFPナノ結晶に対して収集したXRPDデータに由来する極点図は、[001]の結晶学的な軸に対して単一の高強度の中心極を示した
。これは、結晶学的なc軸が粉末試料の表面に対して垂直である、強力な選択配向を示すものである。この強力な選択配向に対する可能な一推進力は、晶癖が平面様または刃物様である場合に生じる。反射ホルダー中に充填し、平らに押した場合、結晶の平らな表面は、試料表面と平行に整列する傾向がある(数枚の紙のように)。これは、バッチプロセスからのFPナノ結晶では、結晶学的なc軸は、最大の平らな結晶面を通って、垂直に近いことを示唆する。これとは対照的に、FPストック材料に対して計算した極点図は、関連するランダムに配向した試料により特有である、結晶学的配向の一般的な分布を示した。
【0479】
(例9)トリアムシノロンアセトニド(TA)結晶の製造プロセス−バッチプロセス
トリアムシノロンアセトニドは、様々な皮膚状態を処置し、口腔潰瘍(mouth sores)の
不快感を軽減するのに用いられ、点鼻薬形態において大衆薬としてアレルギー性および通年性のアレルギー性鼻炎を軽減するのに用いられる、合成コルチコステロイドである。これはトリアムシノロンのより強力な誘導体であり、プレドニゾンの約8倍強力である。このIUPAC名は(4aS,4bR,5S,6aS,6bS,9aR,10aS,10bS)−4b−フルオロ−6b−グリコロイル−5−ヒドロキシ−4a,6a,8,8−テトラメチル−4a,4b,5,6,6a,6b,9a,10,10a,10b,11,12−ドデカヒドロ−2H−ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2−d][1,3]ジオキソール−2−オンであり、分子式C
24H
31FO
6、分子量434.5g・mol
−1である。
【0480】
トリアムシノロンアセトニドの溶解性
トリアムシノロンアセトニド(TA)は、製造元から受け取ったストックを使用した。トリアムシノロンアセトニド(TA)の溶解性を、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、Tween20、Tween80、PEG400において測定した。
【0481】
最初に、TA5mgを溶媒10gに加え、混合物を5分間ボルテックスにかけ、水浴中で10分間超音波処理した。最初の量が溶媒に完全に溶解(溶媒中TAの澄明な溶液)したら、TA1〜5mgを加えた。飽和溶解度に到達するまでこのプロセスを続けた。最高の溶解性をもたらす溶媒を、第I相としてさらなる開発のために選んだ。
【0482】
第I相を調製するために、TAの溶解性を、様々な純粋な非水系において評価した。TAは、実際に水に不溶性である。プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、PEG400、Tween20、およびTween80におけるTAの溶解性を評価した。最初に、TA5mgをこれらの溶媒に加え、懸濁液をボルテックスにかけ、37℃の水浴中で15分間超音波処理した。API(すなわちTA)が溶解したら、薬物1mgをバイアルに加えた。全ての溶媒における薬物の予備的な推定が実現するまで、このプロセスを続けた。TAの、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、PEG400、Tween20、およびTween80における溶解性は、それぞれ14、8、7、5.5および4mg/mLであった。
【0483】
TAナノ結晶の調製
第I相
これは、薬物がその中に溶解されている相である。第I相を、選んだ溶媒中最高濃度のAPIで調製した。プロピレングリコールがよりよい溶媒として示されたので、これをさらなる開発のために選んだ。第I相の最終組成:TA:1.4%w/w、PG(PG=プロピレングリコール)。バッチサイズは50グラムであった。
【0484】
第II相
第II相の組成:塩化ベンズアルコニウム0.0125%w/w、メチルセルロース15cp 0.257%w/w、水(100%まで適量)。TAはpHが高くなると分解す
るため(例えば、Ungphaiboon Sら、Am J Health Syst Pharm.、2005年3月1日;62巻(5):485〜91頁を)、0.1%クエン酸を加えて溶媒のpHを下げた。第II相の最終pHは3.91であった。バッチサイズは100グラムであった。第II相を氷−水スラリー中0℃に冷却した。
【0485】
第III相の産生およびアニーリング
この手順により第III相150グラムが産生される。第I相および第II相の組合せにより、ビヒクル中に分散したAPIのナノ結晶が生成される。この分散系が第III相である。
【0486】
第III相を、第I相50gを第II相100g中に測定することにより調製した。
【0487】
第I相50グラムを、ニードルを装着した長さ6インチおよび18ゲージの針を取り付けた60mlシリンジ中に充填した。第II相100gを250mlビーカー中に注ぎ、氷−水スラリーを用いて0℃に冷却した。Sonic Ruptor(商標)超音波ホモジナイザー(Omni International)を、強度20%に設定し、直径3/4インチのチタニウムプローブを用いて、超音波処理を行った。第I相の流速を1.43ml/分に維持した。第III相を250mlパイレックスビーカーに回収した。得られた第III相は、乳白色分散系であった。分散系を、パラフィルムで覆いをした250mlビーカー中、25℃で4時間アニーリングした。第III相分散系の組成:TA:0.41%w/w、PG:32.86%w/w、塩化ベンズアルコニウム0.01%、メチルセルロース(MC15cP):0.2%w/w、水66.93%w/w。
【0488】
精製
このスラリーを、引き続き10000rpmおよび4℃で遠心分離にかけた(3×)。以下のステップを行った:
スラリーを、各25ml、50mlポリプロピレン製遠心チューブ6本に分割した。各チューブに「洗浄」溶液25mlを加えた。洗浄溶液は、蒸留水中、0.01w/w%塩化ベンズアルコニウムおよび0.2%w/wTween80を含んでいた。したがって、希釈は1:1であった。
希釈したスラリーを、Thermo−Scientific IEC CL31R Multi−Speedを用いて、4℃、10000rpmで90分間遠心分離した。
ペレット化した後、ペレットを洗浄溶液で再分散し、50mlの印まで充填した。分散系を、先に記載した通りに遠心分離した。
2回洗浄した後、ペレットを、2本の1.5ml遠心チューブ中に合わせ、約1mlの洗浄溶液で再分散した。分散系を、Eppendorf遠心分離機5415Dを用いて、12000RPMで12分間、再び遠心分離した。
ペレットを回収し、50ml遠心チューブ中に合わせ、洗浄溶液40ml中に再分散した。ボルテックスにかけ、次いで室温で15分間、水浴中で超音波処理することにより、分散を実現した。分散系を10000RPMで10分間遠心分離した。
上清をデカントし、ペレットを、真空オーブン(VWR International、Oregon、USA)を用いて室温で72時間乾燥させた。
【0489】
(例10)プロセスフローのプロセスによって製造されたTA結晶のキャラクタリゼーション
粒子のサイズ分けを、上記例9で作成した第III相分散系に対して、アニーリング後に行った。Malvern動的光散乱装置(Model S90)を用いて、ナノ結晶のサイズおよびサイズ分布を決定した。粒子サイズを測定するために、懸濁液40マイクロリットルを、0.1%塩化ベンズアルコニウム(BKC)2960マイクロリットル中にピペッティングした。5×10
4〜1×10
6カウント/sの強度が実現された。製剤の
粒子サイズ分布を3回ずつ測定した。例9からのTA粒子の平均サイズは、300〜400nmのサイズ範囲であった(n=3)。
図32を参照。
【0490】
TAナノ結晶対TAストック材料の熱的特性
例9からのTA粒子の熱的性質を、Shimadzu DSC−60およびTGA−50を用いて調査した。
【0491】
試料およそ10mgを、アルミニウム製オープンパン中で分析し、室温から320℃まで10℃・分
−1のスキャン速度で加熱した。
図33は、TA APIの示差熱測定スキャンを示す。融解熱のピークは、289.42℃で、ΔH
m=83.5J/gであった。比べると、例9に記載したプロセスにより生成されたナノ結晶に対する融解熱のピークは275.78℃であり、ΔH
m=108.45J/gである(
図34)。データは、より高い融解熱によって証明される通り、TAナノ結晶は著しくより結晶性であることを示唆している。さらに、ナノ結晶では(APIに比べて)融点が大きく移行し、内部結晶構造における相違が示唆される。
【0492】
図35および
図36は、それぞれTAストック材料およびTAナノ結晶のTGAスキャンである。比べてみると、これらの材料は両方とも、加熱すると非常に似通った重量損失のプロファイルを有すことが明らかであり、物質を加熱すると同じ分子結合が切断することが指摘される。しかし、DSCプロファイル同様、材料間の各相の重量損失の開始に著しい相違が存在し、結晶構造および形態における相違が示唆される。
【0493】
TAナノ結晶対TAストック材料の形態
例9において作成したTAナノ結晶の形態を、走査型電子顕微鏡(SEM)(PGT(Princeton Gamma Tech)でアップグレードしたAmray 1000AのSpirit EDS/画像化システムで調査した。試料に、金(約200Å)でアルゴンスパッタコーティングした(AnatechからのHummer V)。試料を両面テープ上に搭載した。
図37Aおよび
図37Bは、異なる2つの倍率のTAストック材料のSEM画像である。
図37C〜EはTAナノ結晶のSEM画像である。SEM画像に見られる通り、本発明のプロセスにより調製されたナノ結晶の形態は、製造元からのストック材料の形態と著しく異なる。
【0494】
本発明のプロセスにより調製したTAナノ結晶はその純度および完全性を維持する
トリアムシノロンアセトニドの測定を、Matysovaら(2003)、「Determination of methylparaben,propylparaben,triamcinolone」から適応し、行った唯一の修正は、アッセイに用いた本発明者らのより長いカラムを補償するための作動時間の増大であった。あらゆる汚染物質のピーク対TAピークを増幅しようと(フルチカゾン分析においてみられる効果)、低濃度の試料を流した。得られたクロマトグラムは非常にきれいであり、28.9分にTAピークの溶出が見られた。条件は以下の通りであった:
HPLCシステム:Agilent 1100 Chemstationソフトウエア付カラム:Phenomenex Luna;C18、孔サイズ5μm、100Å、寸法:250×4.60mm
移動相:40/60v/vアセトニトリルおよびHPLCグレードの水
注入体積:20μL
分析時間:30分
検出波長:240nm
TAナノ結晶のHPLCの痕跡をTAストック材料のHPLCの痕跡と比較し、本発明のプロセスにより生成されたナノ結晶は、本発明のプロセスの結果として分解しないことが実証された。
【0495】
本発明のプロセスにより生成されたトリアムシノロンアセトニド対ストック材料のトリアムシノロンアセトニドの結晶構造
本発明の方法により調製されたトリアムシノロンアセトニド結晶(すなわち形態B)は、
図39における異なるXRPDパターンにより証明される通り、ストック材料と異なる晶癖を有する。換言すれば、トリアムシノロン分子は単位格子内で、ストック材料のものとは異なって充填される。フルチカゾンのナノ結晶(形態A)同様、この新しい定形形態のトリアムシノロンは、トリアムシノロンのストック材料に比べて異なる物理学的性質を有し得る。
【0496】
(例11)ナノ結晶製造プロセス−修正されたフローおよび精製のプロセス
(a)キュムラント平均サイズおよそ500nm(±200nm)のナノ結晶を再現性良く産生し、(b)安定性が化学的安定性および物理的安定性によって規定される、安定な結晶を再現性良く産生し、(c)高遠心力で精製後、結晶サイズを再現性良く維持するプロセス条件を産生するように、実験をデザインした。
【0497】
例7に記載したフロープロセスに対して、いくつかの修正を行った。特に、結晶形成とアニーリングとの間に混合ステップを加えた。加えた他のステップには、(a)アニーリングと遠心のステップとの間の「洗浄溶液」での希釈、(b)さらなる精製のための洗浄溶液中のペレットの再分散、(c)ペレットの回収および最終製剤組成物中へのペレットの再分散が含まれる。この修正されたフロープロセスを用いて、3500g/分で0.09%の薬物のナノ懸濁液を生成し、商業的に関連のある体積のナノ懸濁液を製造することができる。フローリアクターに、高圧蒸気滅菌するようデザインされた衛生器具を装着した。
図38に規定したステップにより、キュムラント平均サイズ500nm(±200nm)の、高度に純粋な薬物結晶の最終的な生成がもたらされた。
【0498】
プローブデザインの役割
効率を増強する目的でのスケールアップ実験を、プローブの底部に単一のアクティブチップを有する標準1”超音波処理用プローブ、および杖上に複数の超音波処理用チップを有する「バンスティック(bump−stick)」プローブの両方で行った。
【0499】
標準のプローブ実験
プロピオン酸フルチカゾンのパーセント値、流速、温度および超音波処理の振幅の様々な組合せを試験して、結晶の平均サイズに対するこれらの効果を決定した。プロピオン酸フルチカゾンのパーセント値は、0.224%から0.229%の範囲であった。第I相の流速は0から825mL/分の範囲であった。第II相の流速は10から900mL/分であった。第III相の流速は25から1400mL/分の範囲であった。第II相/第I相の流速比の範囲は1であった。温度は、第I相に対して0〜22℃、第II相に対して0〜22℃、第III相に対して10〜40℃であった。第III相の平均温度は12.5℃から40℃までの範囲であった。超音波処理の振幅は、出力25%から75%までの範囲であった。得られた結晶の平均サイズ(例えば、d50、すなわち質量中央値径)は、0.413μmから7μmまでの範囲であった。
【0500】
約500nmのd50サイズの粒子を産する第I相および第II相の最高の流速は、全ての出力エネルギーで(25%出力、75%出力)250ml/分であった。第I相および第II相に対して700ml/分のより高い流速(第II相/第I相比=1)により、>7μmの大型の粒子サイズがもたらされた。
【0501】
バンスティックプローブでの実験により、第I相および第II相のより高い流速を実現でき、よってフロープロセスの有効性が多数倍増強されることが実証された。バッファー
の選択、第II相のpH、または超音波処理の出力エネルギーなど、他のパラメーター変数と一緒に用いた場合、d50≦500nmの粒子サイズを実現することができた。この例に記載する他の実験は全て、バンスティックプローブで行った。
【0502】
第II相におけるバッファーおよびpHの役割
第II相のpHは粒子サイズに効果を及ぼした。第II相のpHは約8であり、第I相および第II相の混合後は、pH約7となった。pH4およびpH5のアスコルビン酸バッファーおよびクエン酸バッファーを、第II相に対するバッファーとして調査した。粒子サイズは、Malvern S90を用いて測定した。Malvern S90(商標)は動的光散乱(DLS)により粒子サイズを測定するものである。このプロセスによって生成される自社のプロピオン酸フルチカゾン結晶として針形状の結晶では、DLSにより測定される粒子サイズに最も関連のある値は、ピーク平均またはキュムラント平均である。したがって、全ての粒子サイズの値は、キュムラント平均として報告される。一例を表17に示す。
【0503】
【表23】
【0504】
25℃および40℃の両方とも、アニーリング温度として適切である。さらなる温度もアニーリングに適切であり得る。第II相において用いたアスコルビン酸バッファー、pH5により、500〜800nm(d50)の間の粒子が産生された。pH4およびpH5のクエン酸バッファーを、複数のフローリアクターバッチにおいて、第II相における緩衝化剤として調査した。代表的な例を表18〜19に示す。
【0505】
【表24】
【0506】
【表25】
【0507】
全般的に、クエン酸バッファーおよびアスコルビン酸バッファーの両方とも適切であり、統計的に差は認められなかった。クエン酸バッファーは多数の医薬品製剤中に存在するため、これを最適なバッファーとして選択した。pH4で調製し25℃でアニーリングしたナノ懸濁液において、不純物のわずかな増大が示されため、第II相の最適なpHとしてpH5を選択した。第II相においてpH5で調製したナノ懸濁液は、アニーリングの間、クエン酸バッファーは不純物の増大を示さなかった。
【0508】
超音波処理の出力エネルギーの役割
超音波処理の出力エネルギーを、キュムラント平均値500nm(±200nm)を有する粒子サイズのナノ結晶の産生における変数として調査した。粒子サイズに対する、詳細な、統計学的に意味のあるデータを得るために、分析した各バッチの統計学的な平均値、中央値および最頻値を提供する、Horiba LA−950レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(Laser Diffraction Particle Sizer)を利用した。
【0509】
表21は、出力エネルギー40%、第I相:第II相比1:4で調製したバッチの一例である。第II相の組成は、クエン酸バッファー、pH5中、0.4%15センチポアズメチルセルロース(MC)、0.005%塩化ベンズアルコニウム、0.1%PEG40ステアレート、および蒸留水であった。表22〜表24に示すデータは、出力エネルギー50%、60%および70%で生成したバッチを代表するものであり、他のパラメーターは全て、同一であり、またはできるだけ類似する。したがって、第I相、第II相および第III相の組成は同じであり、各バッチにおける各相の温度およびアニーリングの温度は類似する。インキュベーターのアニーリング温度は25〜28℃の範囲であり、相対湿度65%〜75%である。各バッチに対する第III相の流速は3250g/分(±200g/分)であった。ナノ結晶を生成した後、各バッチを室温で、250RPMのScilogixミキサーで混合した。バッチサイズはおよそ3500グラムであった。各バッチの第III相の組成を表20に表として示す。
【0510】
【表26】
【0511】
粒子サイズのデータを、平均値、中央値および最頻値に関して提供した。定義上、粒子サイズの最頻値は、そのサイズでの粒子の最高数を意味し、粒子サイズの中央値は、分布の「中央」にある粒子の数を意味し、粒子サイズの平均値は、分布全体に対する全てのサイズの平均である。完全な一峰性のガウス分布では、平均値、中央値および最頻値は、全て類似する。歪んでいる分布においては、これらの値は広範囲に異なる。少なくとも24時間のアニーリング後では、平均値、中央値および最頻値の値は、全て250nmの範囲内にある。
【0512】
【表27】
【0513】
【表28】
【0514】
【表29】
【0515】
【表30】
【0516】
【表31】
【0517】
このように、超音波処理の存在下の結晶化によって産生された初期の粒子サイズ(T=0値)は、出力エネルギーに殆ど直接的に相関し、すなわち、出力エネルギーが高いほど統計学的最頻値(最も頻繁に生じるサイズ)は小さい。
【0518】
アニーリングにより、粒子はより低いエネルギー状態に落ち着くことができる。粒子は、出力エネルギーが増大するとともに高い表面エネルギーを有し、粒子の凝集をもたらす。これは表24において証明されており、表24は出力エネルギー70%で産生されるバッチの粒子サイズの動力学を記述するものである。T=0では、バッチは平均粒子サイズ2.93ミクロン、および最頻値(「最も頻繁な」値)0.3631ミクロンを有し、殆どの粒子が<500nmであっても、平均値を歪める大型の粒子がいくらか分布中に存在したことが指摘される。25℃のアニーリングT=96時間には、平均値、中央値および最頻値は相互に250nm以内であり、平均を歪める大型の粒子が凝集塊であったことが証明された。バッチをアニーリングすると、表面エネルギーは平衡の基底状態に低下し、ゆえに粒子を脱凝集(de-aggregating)した。
【0519】
粒子サイズはアニーリングとともに低減する
アニーリングは、先のデータで示した通り、バッチプロセスの極めて重大な部分であることが示されている。連続フロープロセスによって産生された結晶をアニーリングすることは、先のセクションで論じた通り、プロセスの重要な部分であることも証明されている。
【0520】
アニーリングの動力学が重要であることも、上記で実証された。様々な実験において、25℃、40℃および60℃でアニーリングしたバッチの粒子サイズは、粒子サイズに関して相互に著しく異ならないと思われた。しかし、アニーリングには別の目的がある。結晶化はアニーリングにより「完了」し、よって結晶を「硬化」することができる。この見地から、分解せずにアニーリングする温度が高いほど、粒子はより結晶性になる。
【0521】
表26は、2つの異なる温度でアニーリングした、アスコルビン酸塩で緩衝化した第II相、pH5で調製したバッチを示す。これらのバッチは、アスコルビン酸バッファー、pH5、第I相:第II相:1:3、出力エネルギー60%で調製されたものである。粒子サイズはMalvern S90によって測定した。2つの異なる温度でアニーリングした同じバッチの粒子は、この装置によって測定して、異なる平均ピークサイズを示す。しかし、両方のセットともアニーリングとともに粒子サイズの低減を示す。
【0522】
【表32】
【0523】
【表33】
【0524】
ミキシングヘッドのデザインの役割
ミキシングヘッドのデザインは、フローリアクターにおける結晶化の直後にナノ懸濁液を混合するのに重要である。ミキシングヘッドを複数の実験において試験した。Silverson(商標)ミキシングヘッドを評価した。中程度および低いせん断のミキシングヘッド(同軸およびパドル)により、最善の粒子サイズが提供された。全てのバッチに対する最適のミキシングヘッドとして、パドルミキサーが選択された。
【0525】
塩化ベンズアルコニウムの役割
塩化ベンズアルコニウムは、統計学的最頻値約500nmを有する粒子を産生するのに必要とされる。
【0526】
表28は、第II相において塩化ベンズアルコニウムなしで調製されたバッチを代表するものである。平均値、中央値および最頻値の分散は、250nm以内であった。最頻値は1.07ミクロンであった。約1ミクロン以上の粒子サイズが、塩化ベンズアルコニウムなしで生成された全てのバッチに対して得られたことから、統計学的最頻値が約500nmのサイズの粒子を産生するために、第II相に塩化ベンズアルコニウムが存在することが必要であると思われる。表28、表29、表30Aおよび表30Bに記載するバッチは、Horiba LA−950レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で分析したものである。
【0527】
【表34】
【0528】
表29は、第II相において20ppm(0.002%)塩化ベンズアルコニウムで調製された代表的なバッチである。第II相はまた、クエン酸塩、pH5で緩衝化された。第III相の流速は3250±200nmであった。バッチは1:4比のバッチであった。ゆえに、第III相におけるBAK濃度は16ppmであった。このバッチは、統計学的最頻値<500nm(±200nm)のT=0粒子サイズの規格を満たす。
【0529】
【表35】
【0530】
表30Aおよび表30Bは、第II相において50ppm(0.005%)塩化ベンズアルコニウムで調製された代表的なバッチである。第II相はまた、クエン酸塩、pH5で緩衝化した。第III相の流速は3250±200nmであった。バッチは1:4比のバッチであった。ゆえに、第III相におけるBAK濃度は40ppmであった。バッチは、統計学的最頻値<500nm(±200nm)のT=0粒子サイズの規格を満たす。これらのバッチは、安定化分子としてPEG40−ステアレートも含んでいた。
【0531】
【表36】
【0532】
【表37】
【0533】
PEG40−ステアレートの役割
0.01%のPEG40−ステアレートを、クエン酸バッファー第II相、1:3の第I相/第II相比、60%AMPにおける唯一の安定化剤として用いた。このデータをMalvern S90によって分析した。示した粒子サイズはキュムラント平均である。表31に示す通り、キュムラント平均500nmを満たす粒子サイズの規格が満たされた。PEG40−ステアレートのレベルは、塩化ベンズアルコニウムフリーのバッチが調製されるか否かに応じて変動する。
【0534】
【表38】
【0535】
連続フロー遠心分離により精製したプロピオン酸フルチカゾンナノ結晶
結晶を精製する好ましい手段として、連続フロー遠心分離を実演した。精製により、第III相の連続相を遠心分離で除いた。ペレットを洗浄溶液中濃縮物として再分散し、分散系を再び遠心分離する。連続遠心分離をSorvall遠心分離機により行い、またはBeckman CoulterのJI−30をJCF−Zローターとともに用いることができる。
【0536】
全般的に、ナノ懸濁液を一夜アニーリングした後、次いで、バッチを0.1%PEG40−ステアレート、0.1%Tween80、および50ppm塩化ベンズアルコニウムで1:1希釈した。ナノ懸濁液の希釈により、第III相の粘度が低下して遠心分離を容易にすることができる。
【0537】
Beckman遠心分離機を4℃に冷却し、懸濁液を39000G、1.6L/分で遠心分離した。上清は澄明で、粒子がないように見えた。粒子サイズ分布を表32に示す。このバッチは、塩化ベンズアルコニウムなしで調製したものである。したがって、粒子サイズは、通常の500nm統計学的最頻値よりも大きい。驚くべきことに、精製後、最頻値は<500nmに移行する。これは、遠心分離により凝集した粒子が分解することを示す。これは大型の粒子を排除する一方法である。
【0538】
【表39】
【0539】
粒子サイズにおいて役割を果たすフロープロセスの変数は、第I相および第II相の温
度、第II相のpH、第II相の組成、出力エネルギー、プローブデザイン、流速、第II相の第I相に対する比、アニーリング温度、粒子が生成した後の混合条件、および精製前の洗浄溶液の組成である。これらの結果は、初めて、製造のフロープロセスはプロピオン酸フルチカゾンナノ懸濁液結晶の商業的な体積を生成し、結晶は高流動連続遠心分離を用いて精製することができることを実証するものである。
【0540】
(例12)FPナノ結晶の製剤および評価
プロピオン酸フルチカゾンナノ結晶を、様々なFP含量(例えば、0.25%±0.0375%(0.21〜0.29%)、0.1%±0.015%(0.085〜0.115%)、および0.05%±0.0075%(0.043〜0.058%))で含んでいる製剤を調製し、評価した。各製剤の以下のパラメーターを評価した:製剤の皮膚上ののび(接触角が最小であるのが好ましい)、(他の成分の)FPとの化学的相溶性、投与量の均一さおよび再分散性、粒子の安定性(例えば、粒子のサイズが変わらないのが好ましい)、ならびに液滴のサイズ(好ましい液滴サイズを最大にする、粘性および分子間表面張力の関数)。
【0541】
以下の表33および表34は、眼瞼炎などを処置するのに用いるように調製された、異なる2つの医薬製剤(各々0.25%FPを含む)の構成成分を列挙するものである。
【0542】
【表40】
【0543】
【表41】
【0544】
製剤Iの成分を上記の表33に列挙し、製剤Iを評価し、以下の性質を有していた:粘度=45+4.1cP;pH=6.8〜7.2;重量モル浸透圧濃度=290〜305mOsm/kg;粒子サイズ:統計学的最頻値:400nm、中央値:514nm、平均値:700nm、d50:400nm、d90:1.4μm;および液滴サイズ=40±2μL。さらに、製剤Iは振盪すると再分散性であり、振盪後少なくとも1時間、均一な投与量を示し、粒子サイズは、25℃と40℃との間の温度で、少なくとも21日間安定であった。
【0545】
製剤IIの成分を上記の表34に列挙し、製剤IIを評価し、以下の性質を有していた:粘度=46±3.2cP;pH=6.8〜7.2;重量モル浸透圧濃度=290〜305mOsm/kg;粒子サイズ:統計学的最頻値:410nm、中央値:520nm、平均値:700nm、d50:520nm、d90:1.4μm;および液滴サイズ=40±2.3μL。さらに、製剤IIは振盪すると再分散性であり、振盪後少なくとも1時間、均一な投与量を示し、粒子サイズは、25℃と40℃との間の温度で、少なくとも18日間安定であった。
【0546】
異なるFP含量(すなわち、約0.25%、0.1%、0.05%および0%)を有する他の製剤の平均液滴サイズを試験し、以下の表35に概要する。試験は、5mLを充填し、ドロップチップが垂直に下方を示す7mLドロップチップ点眼剤ボトルを用いて行った。1滴あたりのFPの量をHPLCにより決定した。
【0547】
【表42】
【0548】
上記の表35に示す通り、液滴のサイズは試験した全ての製剤にわたって一定していた。
【0549】
様々な塗布器の薬物送達効率を試験するために、上記に言及した0.25%FP製剤Iに、スワブおよびブラシなど、様々な塗布器を搭載し(例えば、Foamec−1スワブ、ポリウレタンスワブ、ポリエステルスワブ、25−3318−Uスワブ、25−3318−Hスワブ、25−3317−Uスワブ、25−803 2PDスワブ、25−806
1−PARスワブ、コットンスワブ、およびLatisse(登録商標)ブラシ)、次いで、FPを搭載した各塗布器をポリプロピレンメンブレンに対して強打して、メンブレン上に移されたFPの量を決定した。
【0550】
より具体的には、各塗布器に対して、製剤I 2滴を塗布器上に搭載した後、塗布器をポリプロピレンメンブレン上に2回強打した。次いで、メンブレン上に移されたFPを、HPLC分析に用いる移動相で抽出して、メンブレン上に移されたFPの量を決定した。各種類の塗布器に対して、同じ測定を3〜8回繰り返した。Latisse(登録商標)ブラシが、他の塗布器よりもポリプロピレンメンブレンへのより良好な薬物送達を実証した(すなわち、平均で約56%のFPが移された)ことが観察された。2番目にランク付けされたのは、25−3317−Uスワブであった(すなわち、平均で約34%のFPが移された)。試験した他の各々の塗布器によりポリプロピレンメンブレンに送達されたFPの平均パーセント値を、以下の表36に列挙する。
【0551】
【表43】
【0552】
ポリエステルスワブおよびコットンスワブは、製剤の液滴を速やかに吸収し、メンブレン上を強打した場合、FPは殆ど移らないことも観察された。一方、ポリウレタンスワブは液滴を「数珠状にし」、液滴は落下した。Latisse(登録商標)ブラシが第1の液滴を吸収するのに2秒かかり、25−3317−Uスワブが第1の液滴を吸収するのに1.3秒かかった。使いやすさの点では、Latisse(登録商標)ブラシは、試験した他の塗布器に比べて使いやすい。
【0553】
同等物
当業者であれば、日常の実験を用いるだけで、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または確認することができよう。本発明の具体的な実施形態を論じてきたが、上記の明細書は説明的なものであり、限定的なものではない。
本発明の多くの変形は、当業者には、本明細書を検討すれば明らかになろう。本発明の完全な範囲は、同等物の完全な範囲とともに特許請求の範囲を、およびこのような変形とともに明細書を参照することにより決定されるべきである。このような同等物は、以下の特許請求の範囲により包含されるものとされる。