【文献】
LAURENTI, E. et al.,Cell Stem Cell,2008年,Vol.3,p.611-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被験者が、悪性血液疾患、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、無痛性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経芽腫、網膜芽腫、シュバッハマン・ダイアモンド症候群、脳腫瘍、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、再発胚細胞腫瘍、血液疾患、異常ヘモグロビン症、自己免疫疾患、若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、重症複合免疫不全、不良な幹細胞を伴う先天性好中球減少症、重度の再生不良性貧血、鎌状赤血球症、骨髄形成異常症候群、慢性肉芽腫症、代謝障害、ハーラー症候群、ゴーシェ病、大理石骨病、乳児性悪性大理石骨病、心臓病、HIV、又はAIDSを有する、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、必要としている被験者に対し、MYC組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質)を含む組成物、Bcl−2組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−Bcl−2(PTD−Bcl−2)融合タンパク質)を含む組成物、又はこれら両方を投与することにより、造血コンパートメント細胞の形成を増進することに一部関する。特定の態様において、本開示は、MYC組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質)を含む組成物、Bcl−2組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−Bcl−2(PTD−Bcl−2)融合タンパク質)を含む組成物、又はこれら両方を投与することにより、HSC移植レシピエントにおける造血幹細胞(HSC)生着及び造血コンパートメント再構築を加速することに関する。いくつかの実施形態において、HSC移植レシピエントは更に、MYC組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質)を含む組成物、Bcl−2組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−Bcl−2(PTD−Bcl−2)融合タンパク質)を含む組成物、又はこれら両方を投与されることによって、HSC移植レシピエント体内でのHSC生着及び造血コンパートメント再構築の維持及び/又は更なる加速がなされる。本明細書で使用されるとき、HSC移植は骨髄移植を含むがこれに制限されない。
【0035】
更に、本開示は少なくとも部分的に、MYCポリペプチド及びPTD(例えばHIV TATタンパク質導入ドメイン)を含む融合タンパク質を有する組成物を骨髄移植後に投与することで、骨髄移植後の成熟した造血系の回復に要する時間が短縮されるという発見に基づいている。例えば、致死レベルに放射線照射されたマウスに骨髄移植を行ってからMYC組成物を投与した場合、T細胞回復に要する時間は、約9週間だったものが約4週間に短縮され、B細胞回復に要する時間は、約10週間だったものが約4週間に短縮された。したがって、本開示の一態様は、被験者における造血幹細胞(HSC)移植後の造血コンパートメント再構築を加速する方法を提供し、これは、a)HSCを含む第1の組成物の治療的有効量を投与することにより、必要としている被験者において造血コンパートメント再構築を達成する工程と、b)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を含む第2の組成物を被験者に投与する工程とによるものであり、ここにおいて第2の組成物の投与により、第2の組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメント再構築に比べて、少なくとも50%加速された造血コンパートメント再構築が達成される。
【0036】
別の態様において、本開示は、タンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質を有する組成物を投与することにより、必要としている被験者の体内での、造血コンパートメントの自家再構築を増進することに関する。本開示は更に、MYC組成物の投与が、化学療法及び/又は放射線治療を受けた患者において、その治療による造血コンパートメント細胞の減少が生じた後の回復を増進しうるという新発見に少なくとも部分的に基づいている。例えば、化学療法薬5−フルオロウラシル治療後の患者に、MYC組成物を投与することにより、5−フルオロウラシル治療による造血コンパートメント細胞(例えばCD8
+T細胞)の減少の後の、造血コンパートメント細胞の回復が加速されたことが示されている(
図14)。
【0037】
本開示の別の一態様は、被験者における造血コンパートメントの自家再構築を増進する方法を提供し、これは、造血コンパートメントの自家再構築を必要としている被験者に対し、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方の治療的有効量を投与する工程によって行われ、ここにおいてMYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方が、内因性造血幹細胞(HSC)を誘導して被験者体内の造血コンパートメントを自家再構築させ、造血コンパートメントの自家再構築は、組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメント自家再構築に比べて増進されている。
【0038】
別の態様において、本開示は部分的に、造血幹細胞移植を必要としている被験者に、HSCを投与する前に、MYC組成物(例えばタンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質)、Bcl−2組成物(PTD−Bcl−2融合タンパク質)、又はこれら両方でHSC群を前処理することにより、被験者の体内における造血コンパートメント再構築を増進することに関する。特定の態様において、本開示は、被験者にHSCを投与する前に、タンパク質導入ドメイン−MYC(PTD−MYC)融合タンパク質、タンパク質導入ドメイン−Bcl−2(PTD−Bcl−2)融合タンパク質、又はこれら両方でHSCを前処理することによって、HSC移植レシピエント体内における造血幹細胞(HSC)生着及び造血コンパートメント再構築を加速することに関する。驚くべきことに、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方については、移植前に少なくともわずか1時間(更に、恐らくはわずか約10分間)HSCを前処理することで、造血コンパートメント再構築の増進を達成するのに充分である。
【0039】
したがって、特定の好ましい実施形態は、造血幹細胞移植を必要としている被験者に対する、造血コンパートメント再構築を増進する方法に関するものであり、これは、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方で、造血幹細胞群を、約13日間未満にわたって処理する工程と、処理した造血幹細胞群の治療的有効量を被験者に投与して、被験者の造血コンパートメントを再構築させる工程とを含み、ここにおいて、造血コンパートメントの再構築は、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方によって処理されていない造血幹細胞群を投与された被験者における造血コンパートメント再構築に比べて、増進されている。いくつかの実施形態において、造血幹細胞群は、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方で、約12日間以下〜約1日間以下、例えば、約12日間以下、約11日間以下、約10日間以下、約9日間以下、約8日間以下、約7日間以下、約6日間以下、約5日間以下、約4日間以下、約2日間以下、又は約1日間以下、処理される。いくつかの実施形態において、造血幹細胞群は、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方で、約24時間以下〜約1時間以下、例えば、約24時間以下、約23時間以下、約22時間以下、約21時間以下、約20時間以下、約19時間以下、約18時間以下、約17時間以下、約16時間以下、約15時間以下、約14時間以下、約13時間以下、約12時間以下、約11時間以下、約10時間以下、約9時間以下、約8時間以下、約7時間以下、約6時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、又は約1時間以下、処理される。いくつかの実施形態において、造血幹細胞群は、MYC組成物を含む組成物、Bcl−2組成物を含む組成物、又はこれら両方で、約60分以下〜約10分以下、例えば、約60分間以下、約55分間以下、約50分間以下、約45分間以下、約40分間以下、約35分間以下、約30分間以下、約29分間以下、約28分間以下、約27分間以下、約26分間以下、約25分間以下、約24分間以下、約23分間以下、約22分間以下、約21分間以下、約20分間以下、約19分間以下、約18分間以下、約17分間以下、約16分間以下、約15分間以下、約14分間以下、約13分間以下、約12分間以下、約11分間以下、又は約10分間以下、処理される。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「造血コンパートメント」は、全ての血液細胞系を含む被験者体内の細胞コンパートメントを指し、これは骨髄系(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、及び樹状細胞を含むがこれらに限定されない)並びにリンパ系(T細胞、B細胞、NKT細胞、及びNK細胞を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない。「造血コンパートメント」は、組織固有及び特殊な種類を含め、未熟、成熟、未分化、及び分化した全ての白血球群及び下位群を含みうる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、被験者体内における用語「造血コンパートメント細胞形成」は、造血幹細胞(HSC)分化、HSC増殖、及び/又はHSC生存による、造血コンパートメント内の造血コンパートメントの任意の血球系列の1つ以上を産生及び/又は増殖させることを指す。「造血コンパートメント細胞形成」は、例えばHSC移植レシピエント体内の造血コンパートメント再構築などの、外因性HSCによるHSC生着の結果でありうる。あるいは、「造血コンパートメント細胞形成」は、例えば被験者体内での造血コンパートメントの自家再構築による、内因性HSC分化、内因性HSC増殖、及び/又は内因性HSC生存の結果でありうる。いくつかの実施形態において、「造血コンパートメント細胞形成」は、骨髄系形成、骨髄系前駆細胞形成、単球形成、マクロファージ形成、好中球形成、好塩基球形成、好酸球形成、赤血球形成、巨核球形成、血小板形成、樹状細胞形成、リンパ系形成、リンパ系前駆細胞形成、T細胞形成、B細胞形成、NKT細胞形成、及びNK細胞形成の1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用されるとき、被験者体内における「造血コンパートメント細胞形成の増進」は、i)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内のHSCからの造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、造血コンパートメント細胞形成の速度を、約5%以上〜約500%以上増加させること(例えば外因性HSCによる造血コンパートメント再構築の加速、又は内因性HSCによる自家再構築の加速);ii)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与されていない被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、外因性又は内因性HSCのいずれかにより被験者の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量を、約5%以上〜約500%以上増加させること;又は、iii)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与されていない被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、被験者体内の造血コンパートメント細胞の喪失を、約5%以上〜約500%以上減少させること;のうち1つ以上を指す。更に、被験者体内における「造血コンパートメント細胞形成の増進」は、外因性HSCによる造血コンパートメント再構築の増進(例えばHSC生着)、及び内因性HSCによる造血コンパートメントの自家再構築の増進を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用されるとき、被験者体内における「造血コンパートメント細胞の喪失」は、細胞壊死、アポトーシス、及び同様物による造血コンパートメント細胞の減少を指す。
【0043】
同様に、被験者体内における造血コンパートメント細胞形成は、次の場合に増進される:i)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内のHSCからの造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、造血コンパートメント細胞形成の速度が、例えば約5%以上〜約500%以上増加している(例えば外因性HSCによる造血コンパートメント再構築が加速されている、又は内因性HSCによる自家再構築が加速されている);ii)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、被験者の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量が、例えば約5%以上〜約500%以上増加している;及び/又は、iii)MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、被験者体内の造血コンパートメント細胞の喪失が、例えば約5%以上〜約500%以上減少している。
【0044】
HSCの造血コンパートメント細胞形成(例えば造血コンパートメント再構築又は自家再構築)の速度の測定、被験者体内の造血コンパートメントで形成される造血コンパートメント細胞の量の測定、及び/又は被験者体内における造血コンパートメント細胞の喪失の測定には、当該技術分野で周知の方法、及び本明細書で開示されている方法の任意のものが使用されうる。1つの非限定的な実施例において、血球系列に固有の蛍光標識抗体マーカーと蛍光活性化フローサイトメトリー(FACS)分析が利用される。
【0045】
特定の実施形態において、造血コンパートメント細胞形成の速度は、造血コンパートメント細胞形成の速度が、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内のHSCからの造血コンパートメント細胞形成速度に比べて、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%以上、又はそれ以上増加している場合に、増加していると見なされる。
【0046】
特定の実施形態において、被験者の造血コンパートメントで形成される造血コンパートメント細胞の量は、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内の造血コンパートメント内で形成される造血コンパートメント細胞の量に比べて、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上増加している場合に、増加していると見なされる。
【0047】
特定の実施形態において、被験者体内での造血コンパートメント細胞の喪失は、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で処理されていない外因性HSCを投与された被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、あるいはMYC組成物を投与されていない被験者体内で失われる造血コンパートメント細胞の量に比べて、例えば、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上減少している場合に、減少していると見なされる。
【0048】
MYC組成物
本開示の特定の態様は、造血幹細胞群(HSC)を、MYC組成物を含む組成物で処理することにより、造血コンパートメント再構築を増進することに関する。本開示のHSCは、MYC組成物単独で、又は本開示のBcl−2組成物と組み合わせて処理されうる。当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の方法を用いて、組成物(例えば融合タンパク質)で細胞を処理することができる。例えば、造血幹細胞群は、MYC組成物の存在下で培養されうる。本開示の他の態様は、必要としている被験者に対し、MYC組成物を含む組成物を投与することによって、被験者体内の造血コンパートメント形成を増進することに関する。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「MYC組成物」は、MYCポリペプチド;MYCポリペプチドの変種又は変異体、修飾MYCポリペプチド、MYCポリペプチドの相同体;MYCポリペプチドの類似体;MYCポリペプチドの生物学的に活性なフラグメント;MYCポリペプチドの下流標的、その相同体、その類似体、その生物学的に活性なフラグメント;並びに、MYCポリペプチドを含む融合タンパク質、その相同体、その類似体、及びその生物学的に活性なフラグメントを指す。本開示のMYC組成物は、当該技術分野で周知の任意のMYCポリペプチド、その変種、その変異体、その相同体、その類似体、又はその生物学的に活性なフラグメントを含む(例えば、米国特許公開第US2007/0116691号、米国特許公開第US2009/0291094号、米国特許公開第US2010/0047217号、米国特許公開第US2010/0055129号、及び米国特許公開第US2010/0279351)。
【0050】
特定の好ましい実施形態において、本開示のMYC組成物は、タンパク質導入ドメイン(PTD)に連結されている(例えば融合され)MYCポリペプチド、その変種、その変異体、その相同体、その類似体、又はその生物学的に活性なフラグメントを含む、融合タンパク質である。
【0051】
MYCポリペプチド
いくつかの実施形態において、本開示のMYC組成物はMYCポリペプチドである。本開示のMYCポリペプチドは、完全長MYCタンパク質の1つ以上の活性を有する任意のポリペプチドを含むがこれに限定されない。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「MYC」及び「MYCタンパク質」は互換的に使用され、bHLH(塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス)転写因子のMYCファミリーの一員であるタンパク質を指す。本開示のMYCタンパク質は、MYC応答遺伝子の発現を調節する転写因子であり、よって、転写因子として細胞の核を機能させる必要がある。MYC活性は特定のMYC応答遺伝子の発現を活性化させ、同時に、他のMYC応答遺伝子の発現を抑制することができる。MYC活性は、細胞増殖、細胞成長、及びアポトーシスを含むがこれらに限定されない様々な細胞機能を調節することができる。
【0053】
本開示のMYC組成物は、内因性MYCの過剰発現、又は遺伝子操作によるMYCの遺伝子組み換え発現の必要なしに、MYCの外因性添加によって、造血コンパートメント細胞形成を必要としている被験者の体内においてMYC活性を増加させることができる。
【0054】
本開示のMYCポリペプチドは、完全長MYCタンパク質、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持するフラグメント、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持する相同体、及び完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持する類似体を含むがこれらに限定されない。本開示のMYCポリペプチドは、当該技術分野で周知の任意の好適な方法によって作製されうる。例えば、MYCポリペプチドは、天然源から精製することができ、遺伝子組み換えにより発現させることができ、又は化学的に合成することができる。
【0055】
MYCタンパク質
本開示の方法の任意のものにおいて使用するのに好適な完全長MYCタンパク質の例としては、c−MYC、N−MYC、L−MYC、及びS−MYCが挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
特定の好ましい実施形態において、MYCポリペプチドは完全長c−MYCポリペプチドである。c−MYCポリペプチドは、下記の特徴のうち1つ以上を有しうる:このポリペプチドは439個のアミノ酸のポリマーであり得、このポリペプチドは分子量48,804kDaを有し得、このポリペプチドは塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックスロイシンジッパー(bHLH/LZ)ドメインを含み得、あるいはこのポリペプチドはCACGTGを含む配列(すなわちEボックス配列)に結合しうる。好ましくは、c−MYCポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_002458.2を有するヒトc−MYCポリペプチドである。更に、本開示のc−MYCポリペプチドは、翻訳後修飾を受けていないc−MYCポリペプチドでありうる。あるいは、本開示のc−MYCポリペプチドは、翻訳後修飾を受けているc−MYCポリペプチドでありうる。
【0057】
いくつかの実施形態において、MYCポリペプチドは、タンパク質導入ドメイン(PTD)を含む融合タンパク質である。特定の実施形態において、MYCポリペプチドは、本開示のTATタンパク質、又はそのフラグメントを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、このMYCポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:1)を有するTAT−MYC融合タンパク質である:
MRKKRRQRRRMPLNVSFTNRNYDLDYDSVQPYFYCDEEENFYQQQQQSELQPPAPSEDIWKKFELLPTPPLSPSRRSGLCSPSYVAVTPFSLRGDNDGGGGSFSTADQLEMVTELLGGDMVNQSFICDPDDETFIKNIIIQDCMWSGFSAAAKLVSEKLASYQAARKDSGSPNPARGHSVCSTSSLYLQDLSAAASECIDPSVVFPYPLNDSSSPKSCASQDSSAFSPSSDSLLSSTESSPQGSPEPLVLHEETPPTTSSDSEEEQEDEEEIDVVSVEKRQAPGKRSESGSPSAGGHSKPPHSPLVLKRCHVSTHQHNYAAPPSTRKDYPAAKRVKLDSVRVLRQISNNRKCTSPRSSDTEENVKRRTHNVLERQRRNELKRSFFALRDQIPELENNEKAPKVVILKKATAYILSVQAEEQKLISEEDLLRKRREQLKHKLEQLRKGELNSKLEGKPIPNPLLGLDSTRTGHHHHHH
【0058】
配列番号:1のTAT−MYCポリペプチドにおいて、アミノ酸2〜10はHIV TATタンパク質導入ドメインに対応し、アミノ酸11〜454はc−MYCのアミノ酸配列に対応し、アミノ酸455〜468は14個のアミノ酸V5エピトープに対応し、及びアミノ酸472〜477は6個のヒスチジンタグに対応する。
【0059】
生物学的に活性なMYCフラグメント
他の実施形態において、本開示のMYC組成物は、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持する、完全長MYCタンパク質の生物学的に活性なフラグメントである。MYCポリペプチドは、c−Myc、N−Myc、L−Myc、又はS−Mycのフラグメントでありうる。
【0060】
本開示のMYCフラグメントは、MYCタンパク質のアミノ酸配列のうち、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、少なくとも400個、又はそれ以上の連続するアミノ酸残基を含みうる。
【0061】
MYC相同体
他の実施形態において、本開示のMYC組成物は、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持する、MYCタンパク質の相同体、又はそのフラグメントの相同体である。
【0062】
例えば、本開示のMYCポリペプチドは、MYCタンパク質又はそのフラグメントに、少なくとも40%〜100%同一、例えば少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約40%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、アミノ酸配列を含みうる。特定の実施形態において、MYCポリペプチドは、c−Myc、N−Myc、L−Myc、S−Myc、又はそのフラグメントの相同体である。
【0063】
本開示のMYCポリペプチドは更に、NCBIアクセッション番号NP_002458.2を有するヒトc−Mycポリペプチドの機能性相同体又は類似体、又はそのフラグメントを含む。特定の実施形態において、c−Myc相同体又は類似体は、NCBIアクセッション番号NP_002458.2のc−Mycポリペプチド配列又はそのフラグメントに、少なくとも40%〜100%同一、例えば少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約40%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、アミノ酸配列を含む。
【0064】
他の実施形態において、c−Mycの相同体又は類似体は、NCBIアクセッション番号NP_002458.2のc−Mycポリペプチド配列又はそのフラグメントに、少なくとも50%〜100%同一、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約50%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも150個のアミノ酸、少なくとも200個のアミノ酸、少なくとも250個のアミノ酸、少なくとも300個のアミノ酸、少なくとも350個のアミノ酸、少なくとも400個のアミノ酸、又はそれ以上の長さであるポリペプチド配列を含む。
【0065】
本明細書で使用されるとき、「相同体」は、参照配列と、第2の配列の少なくともフラグメントとの間に、アミノ酸配列の類似性を有するタンパク質又はポリペプチドを指す。相同体は、当該技術分野で周知の任意の方法によって、好ましくはBLASTツールを使用することによって、参照配列を、単一の第2配列若しくは配列のフラグメントと、又は配列データベースと比較して、同定することができる。後述されるように、BLASTは、同一性及び類似性のパーセントに基づいて配列を比較する。
【0066】
2つ以上の配列(例えばアミノ酸配列)の文脈における用語「同一」又は「同一性」パーセントは、同じである2つ以上の配列又はサブ配列を指す。2つの配列は、比較ウィンドウにわたって、又は測定される指定領域にわたって、後述の配列比較アルゴリズムのうち1つを使用して、又は手動位置合わせと視覚的検査によって、比較し、最も一致するように整合させた場合、指定されたパーセンテージ(すなわち、指定領域にわたって、又は指定されていない場合は配列全体にわたって、29%同一、所望により30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%同一)の同じアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する場合に、実質的に同一である。所望により、同一性は、少なくとも約10個のアミノ酸長さである領域にわたって、またより好ましくは、20個、50個、200個、又はそれ以上のアミノ酸長さである領域にわたって、存在する。
【0067】
配列比較のため、典型的には1つの配列が参照配列として用いられ、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分列座標が指定され、配列アルゴリズムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、あるいは、別のパラメータを指定することができる。配列比較アルゴリズムは次に、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。2つの配列の同一性を比較する際、配列は必ずしも連続的である必要はなく、任意のギャップをペナルティとして有し得、これが全体の同一性パーセントから差し引かれうる。blastpのデフォルトパラメータは、ギャップ開きペナルティ=11、ギャップ延長ペナルティ=1である。blastnのデフォルトパラメータは、ギャップ開きペナルティ=5、ギャップ延長ペナルティ=2である。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「比較ウィンドウ」は任意の数、例えば20〜600個、一般には約50〜約200個、より一般には約100〜約150個の連続位置のセグメントに対する参照を含み、ここにおいて配列は、2つの配列が最適に位置合わせされた後に、同じ数の連続位置の配列と比較されうる。比較のための配列位置合わせの方法は当該技術分野で周知である。比較のための最適な配列位置合わせは、例えば、局所的相同性アルゴリズム(Smith and Waterman(1981))、相同性位置合わせアルゴリズム(Needleman and Wunsch(1970)J Mol Biol 48(3):443〜453)、類似性検索方法(Pearson and Lipman(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85(8):2444〜2448)、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin GeneticsソフトウェアパッケージのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison、WI)、又は、手動位置合わせと視覚的検査[例えばBrent et al.,(2003)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc.(Ringbou Ed)を参照]によって、実施することができる。
【0069】
配列同一性及び配列類似性のパーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例が、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res 25(17):3389〜3402及びAltschul et al.(1990)J.Mol Biol 215(3)−403〜410に記載されている。BLAST解析を実行するソフトウェアは、米国バイオテクノロジー情報センターから公開入手できる。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列内の同じ長さのワードと整合させたときに、一致するか又はある程度のプラス値の閾値スコアTを満たす、クエリ配列における長さWの短いワードを特定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,前述)。これらの初期隣接ワードのヒットが、それを含むより長いHSPを見つけるための検索開始のきっかけとなる。ワードヒットは、累積位置合わせスコアが増加しうる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基ペアの報酬スコア。常に>0)、及びN(一致しない残基のペナルティスコア。常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列については、スコア行列を使用して、累積スコアが計算される。各方向でのワードヒットの延長は、次の場合に停止される:累積位置合わせスコアが、最大達成値から量X下がった場合;1つ以上のマイナススコア残基位置合わせの累積により、累積スコアが0以下になった場合;又は配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、位置合わせの感度及び速度を決定する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムはwordlengthが3、expectation(E)が10、及びBLOSUM62スコア行列[Henikoff and Henikoff,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89(22):10915〜10919を参照]位置合わせ(B)が50、expectation(E)が10、M=5、N=−4、及び両ストランドの比較をデフォルトとして使用する。ヌクレオチド配列については、BLASTNプログラムは、wordlength(W)が11、expectation(E)が10、M=5、N=−4、及び両ストランドの比較をデフォルトとして使用する。
【0070】
BLASTアルゴリズムは更に、2つの配列間の類似性の統計的解析を実施する(例えばKarlin and Altschul,(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90(12):5873〜5877を参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの測定値は、最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の一致がたまたま一致する確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸を参照核酸と比較したときの最小和確率が0.2未満、より好ましくは0.01未満、最も好ましくは0.001未満の場合に、参照配列と類似であると見なされる。
【0071】
上述の配列同一性パーセンテージ以外に、2つのポリペプチドが実質的に同一であることを示す別の指標は、第1のポリペプチドが、第2のポリペプチドに対して生成される抗体に対して、免疫学的に交差反応性であることである。よって、例えば、2つのペプチドの違いが保存的置換のみである場合、ポリペプチドは典型的に、第2のポリペプチドに実質的に同一である。
【0072】
本明細書に記述されるように、好適なMYCポリペプチドは更に、本開示のMYCポリペプチドの保存的に修飾された変異体を含む。本明細書で使用されるとき、「保存的に修飾された変異体」は、あるアミノ酸が化学的に類似のアミノ酸で置換されるような、コードされたアミノ酸配列に対する個々の置換、欠失、又は付加を含む。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野において周知である。下記の8つの群が、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えばCreighton,Proteins(1984)を参照)。
【0073】
MYC類似体
他の実施形態において、本開示のMYC組成物は、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持する、MYCタンパク質の類似体、又はそのフラグメントの類似体である。特定の実施形態において、MYCポリペプチドは、c−Myc、N−Myc、L−Myc、S−Myc、又はそのフラグメントの類似体である。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「類似体」は、例えばMYCポリペプチドなどの、関心対象のタンパク質に構造的又は機能的に似たタンパク質を指す。開始タンパク質に比較して、類似体は、同じ、類似、又は改善された活性及び/又は機能を呈しうる。類似体のスクリーニング及び/又は類似体の合成の方法は、当該技術分野において周知である。
【0075】
本開示の好適なMYC類似体には、HIF−1a及びICN−1が挙げられるがこれらに限定されない。
【0076】
MYCの下流タンパク質
他の実施形態において、本開示のMYC組成物は、MYC経路におけるMYCの下流のタンパク質である。当該技術分野において周知の任意の下流タンパク質が、本開示の方法と共に使用するのに好適である。MYCの下流である好適なタンパク質の例としては、AKT及びAKT関連タンパク質(例えばPDK−1、mTORC2、PI3K−δ)が挙げられるがこれらに限定されない。MYCの下流タンパク質は更に、タンパク質導入ドメイン(PTD)を含みうる。したがって、特定の実施形態において、MYCの下流タンパク質は、AKT−PTD融合タンパク質、PTD−PDK−1融合タンパク質、PTD−mTORC2融合タンパク質、又はPTD−PI3K−δ融合タンパク質である。
【0077】
他の実施形態において、造血コンパートメント再構築は、必要としている被験者に、HSCの生存及び/又は増殖に拮抗し、かつMYCの下流であるタンパク質を阻害する阻害剤(例えば遺伝的、化学、小分子など)で前処理されたHSCを投与することにより、増進される。同様に、造血コンパートメント形成は、必要としている被験者に、HSC生存及び/又は増殖に拮抗し、かつMYCの下流であるタンパク質を阻害する阻害剤(例えば遺伝的、化学、小分子など)を含む組成物の治療的有効量を投与することにより、増進される。組成物(例えば阻害剤を含むもの)の治療的有効量を投与する方法、及び治療的量を決定する方法は、当該技術分野で周知であり、本明細書に記載される。HSCの生存及び/又は増殖に拮抗し、かつMYCの下流であるタンパク質の例としては、pTEN、PP2A、PHLPP、CTMPが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記述される方法を含むがこれに制限されることなく、タンパク質及び/又は遺伝子の発現、活性、及び/又は機能を阻害するための当該技術分野で周知の任意の方法を使用することができる。非限定的な例としては、遺伝的阻害剤、小分子阻害剤、RNA干渉、及び抗体が挙げられる。
【0078】
完全長MYCタンパク質の活性
他の実施形態において、本開示のMYC組成物は、少なくとも1つのMYC活性を有する完全長MYCポリペプチド、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持するMYCタンパク質のフラグメント、完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持するMYCタンパク質の相同体、又は完全長MYCタンパク質の少なくとも1つの活性を保持するMYCタンパク質の類似体を含む。
【0079】
本開示の完全長MYCタンパク質は、数多くの活性を有する。そのような活性の例としては、転写因子活性、たんぱく結合活性、核酸結合活性、細胞増殖調節活性、細胞成長調節活性、アポトーシス調節活性、形態形成調節活性、発生調節活性、及び増進された造血コンパートメント再構築活性が挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態において、本開示のMYC組成物は、HSC移植レシピエント(骨髄移植レシピエントを含むがこれに限定されない)における造血コンパートメント再構築を増進するMYC活性を有する。理論に束縛されるものではないが、MYC活性は、レシピエント体内の骨髄ニッチへの移植されたHSCの生産的定着を増進すると考えられる。HSC移植後の成熟した造血系の回復時間は、投与されたHSCが骨髄ニッチに定着する能力に大きく依存する。HSCは、一旦骨髄ニッチに到達した後、ニッチ在住細胞との分子クロストークを確立する必要がある。この分子クロストークは、HSC内の細胞内因性信号の性質及びレベルを調節して、HSCの生存、増殖、自己複製、及び分化を調節すると考えられている。骨髄ニッチとHSCとの間の定着及び分極細胞分裂プロセスを調節する表面分子の完全な状態については完全に明らかにはなっていないが、いくつかの接着分子(例えばP−セレクチン及びE−セレクチン)がこのプロセスに関与していることは明らかである。理論に束縛されるものではないが、MYCは、骨髄ニッチでのHSCの定着及び維持において、PSGL1、VLA4、VLA5、LFA1及びCD26に加えて、P−セレクチン及びE−セレクチンの発現の主要なレギュレータであると考えられる。また、MYCはHSC内の生存及び分化のレギュレータである。更に、MYCは、HSC多能性及び自己複製の維持に関与するいくつかの追加の経路(例えばWnt経路)の発現及び/又は機能を調節すると考えられる。この分子相互作用により、HSCは、不等細胞分裂を支持するほぼ静止の状態を再開することができ、これにより、成熟した造血系を生じさせる短期的HSCの生成が可能になり、またHSC移植レシピエントの生涯にわたって造血系の再構築成功を実現する長期的HSCコンパートメントが形成される。よって、本開示のMYC組成物をHSC移植レシピエント投与することにより、レシピエント体内の骨髄ニッチに生産的に定着するHSCの、少なくとも50%の増加がもたらされる。
【0081】
更なる実施形態において、本開示のMYC組成物は、造血コンパートメントの自家再構築を必要とする被験者において、造血コンパートメントの自家再構築を増進する活性をもつMYCポリペプチドを含む。理論に束縛されるものではないが、MYC活性は、内因性HSCが自己再生する能力と、全ての造血コンパートメント系列に分化する能力を増進し、これによって造血コンパートメントの自家再構築を増進すると考えられる。理論に束縛されるものではないが、MYC活性は更に、骨髄ニッチへのHSC定着を増進すると考えられる。
【0082】
有利な点として、MYC組成物の形態でのMYCの投与は、被験者体内での一過性MYC活性をもたらす。この一過性MYC活性は、長期的なMYC活性(例えば発がん性)の潜在的な悪影響を回避する。
【0083】
加えて、本開示のMYC組成物は、内因性及び外因的に移植されたHSC及び前駆系統の両方のMYCの細胞内レベルを増加させることができる。よって、特定の実施形態において、造血コンパートメントの自家再構築を必要としている被験者に本開示のMYC組成物を投与することで、内因性HSCの増殖がもたらされる。他の実施形態において、本開示のMYC組成物をHSC移植レシピエント(例えば骨髄移植レシピエント)に投与することで、移植されたHSCの増殖がもたらされる。
【0084】
本明細書に記述されるように、本開示のMYC組成物の治療的有効量は、約0.5μ/mL以上〜約100μ/mL以上であり、例えば、約0.5μ/mL以上、約0.6μ/mL以上、約0.7μ/mL以上、約0.8μ/mL以上、約0.9μ/mL以上、約1μ/mL以上、約2μ/mL以上、約3μ/mL以上、約4μ/mL以上、約5μ/mL以上、約6μ/mL以上、約7μ/mL以上、約8μ/mL以上、約9μ/mL以上、約10μ/mL以上、約15μ/mL以上、約20μ/mL以上、約25μ/mL以上、約30μ/mL以上、約35μ/mL以上、約40μ/mL以上、約45μ/mL以上、約50μ/mL以上、約55μ/mL以上、約60μ/mL以上、約65μ/mL以上、約70μ/mL以上、約75μ/mL以上、約80μ/mL以上、約85μ/mL以上、約90μ/mL以上、約95μ/mL以上、又は約100μ/mL以上のMYC組成物である。
【0085】
Bcl−2組成物
本開示の特定の態様は、造血幹細胞群(HSC)を、Bcl−2組成物を含む組成物で処理することにより、造血コンパートメント再構築を増進することに関する。本開示のHSCは、Bcl−2組成物単独で、又は本開示のMYC組成物と組み合わせて処理されうる。当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の方法を用いて、組成物(例えば融合タンパク質)で細胞を処理することができる。例えば、造血幹細胞群は、Bcl−2組成物の存在下で培養されうる。いくつかの実施形態において、造血幹細胞群は、本開示のMYC組成物と本開示のBcl−2組成物との組み合わせで処理されうる。本開示の他の態様は、必要としている被験者に対し、Bcl−2組成物を含む組成物を投与することによって、被験者体内の造血コンパートメント形成を増進することに関する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示のBcl−2組成物を含む組成物を、必要としている被験者に対して投与することによって、被験者体内の造血コンパートメント形成を増進することができる。理論に束縛されるものではないが、Bcl−2組成物は、造血細胞コンパートメント形成(例えば、外因性HSC、又は内因性HSCの自家再構築による、造血コンパートメント再構築及び/又は生着)を増進させるのに充分な期間、外因性及び/又は内因性造血幹細胞の生存を持続(すなわち、細胞生存を増加)させることができる。造血細胞コンパートメント形成を測定する代表的な方法は本明細書に開示され、また当該技術分野において周知である。Bcl−2組成物は、本開示のMYC組成物に加えて、又はこの代わりに、投与することができる。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「Bcl−2組成物」は、Bcl−2ポリペプチド;Bcl−2ポリペプチドの変種又は変異体、修飾Bcl−2ポリペプチド、Bcl−2ポリペプチドの相同体;Bcl−2ポリペプチドの類似体;Bcl−2ポリペプチドの生物学的に活性なフラグメント;Bcl−2ポリペプチドの下流標的、その相同体、その類似体、又はその生物学的に活性なフラグメント;並びに、Bcl−2ポリペプチドを含む融合タンパク質、その相同体、その類似体、及びその生物学的に活性なフラグメントを指す。本開示のBcl−2組成物は、当該技術分野で周知の任意のBcl−2ポリペプチド、その変種、その変異体、その相同体、その類似体、又はその生物学的に活性なフラグメントを含む(例えば、米国特許公開第US2007/0116691号、米国特許公開第US2010/0047217号、及び米国特許公開第US2010/0279351号)。
【0088】
特定の好ましい実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、タンパク質導入ドメイン(PTD)に連結されている(例えば融合され)Bcl−2ポリペプチド、その変種、その変異体、その相同体、その類似体、又はその生物学的に活性なフラグメントを含む、融合タンパク質である。
【0089】
Bcl−2ポリペプチド
いくつかの実施形態において、本開示のBcl−2組成物はBcl−2ポリペプチドである。本開示のBcl−2ポリペプチドには、Bcl−2タンパク質活性を有する任意のポリペプチドが含まれるがこれに限定されない。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「Bcl−2」、「Bcl−2ポリペプチド」及び「Bcl−2タンパク質」は互換的に使用され、1つ以上及び/又は全てのBcl−2相同性(BH)ドメイン(例えばBH1、BH2、BH3、及びBH4を含むがこれらに限定されない)を有するBcl−2タンパク質ファミリーの一員であるタンパク質を指す。Bcl−2タンパク質ファミリーの構成員は典型的に、ヘテロダイマー又はホモダイマーを形成し、アポトーシスのレギュレータとして機能する。特定の好ましい実施形態において、本開示のBcl−2ポリペプチドは抗アポトーシス活性を有する。
【0091】
本開示のBcl−2組成物は、内因性Bcl−2の過剰発現、又は遺伝子操作によるBcl−2の遺伝子組み換え発現の必要なしに、Bcl−2の外因性添加によって、造血コンパートメント細胞形成を必要としている被験者の体内においてBcl−2活性を増加させることができる。
【0092】
本開示のBcl−2ポリペプチドは、完全長Bcl−2タンパク質、完全長Bcl−2タンパク質の活性を保持するフラグメント、その相同体、及びその類似体を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、完全長Bcl−2タンパク質の活性を保持するBcl−2フラグメントには、構造化されていないループドメインが欠失している短縮形状のBcl−2が含まれる(Anderson、M.,et al.(1999).Refolding、purification and characterization of a loop deletion mutant of human Bcl−2 from bacterial inclusion bodies.Prot Expr.Purif.15、162〜70)。本開示のBcl−2ポリペプチドは、当該技術分野で周知の任意の好適な方法によって作製されうる。例えば、Bcl−2ポリペプチドは、天然源から精製することができ、遺伝子組み換えにより発現させることができ、又は化学的に合成することができる。
【0093】
Bcl−2タンパク質
本開示の任意の方法において使用するのに好適な完全長Bcl−2タンパク質の例としては、Bcl−2、Bcl−x、Bcl−XL、Mcl−1、CED−9、Bcl−2関連タンパク質A1、Bfl−1、及びBcl−wが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
特定の好ましい実施形態において、Bcl−2ポリペプチドは、構造化されていないループドメインが欠失している完全長ヒトBcl−2ポリペプチドである。ヒトBcl−2ポリペプチドは下記の特徴のうち1つ以上を有しうる:このポリペプチドは239個のアミノ酸のポリマーであり得、このポリペプチドは分子量26.3kDaを有し得、又はこのポリペプチドは少なくとも1つのBcl−2相同性(BH)ドメイン(例えばBH1、BH2、BH3、及びBH4)を含みうる。好ましくは、このヒトBcl−2ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_000624.2を有するBcl−2ポリペプチドである。更に、本開示のBcl−2ポリペプチドは、翻訳後修飾を受けていないBcl−2ポリペプチドでありうる。あるいは、Bcl−2ポリペプチドは、翻訳後修飾を受けているBcl−2ポリペプチドでありうる。
【0095】
いくつかの実施形態において、Bcl−2ポリペプチドは、タンパク質導入ドメイン(PTD)を含む融合タンパク質である。特定の実施形態において、Bcl−2ポリペプチドは、本開示のTATタンパク質、又はそのフラグメントを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、Bcl−2ポリペプチドは、TAT−Bcl−2Δ融合タンパク質であり、ここにおいてBcl−2ポリペプチドは、構造化されていないループドメインの欠失を有する。特定の実施形態において、TAT−Bcl−2Δ融合タンパク質は下記のアミノ酸配列(配列番号:3)を有する:
MRKKRRQRRRMAHAGRSGYDNREIVMKYIHYKLSQRATSGISIEAAGPALSPVPPVVHLTLRQAGDDFSRRYRRDFAEMSSQLHLTPFTARGCFATVVEELFRDGVNWGRIVAFFEFGGVMCVESVNREMSPLVDNIALWMTEYLNRHLHTWIQDNGGWDAFVELYGPSMRPLFDFSWLSLKTLLSLALVGACITLGAYLSHKKGELNSKLEGKPIPNPLLGLDSTRTGHHHHHH
【0096】
配列番号:3のTAT−Bcl−2Δポリペプチドにおいて、アミノ酸2〜10はHIV TATタンパク質導入ドメインに対応し、アミノ酸11〜212はBcl−2Δのアミノ酸配列に対応し、アミノ酸213〜226は14個のアミノ酸V5エピトープに対応し、及びアミノ酸230〜235は6個のヒスチジンタグに対応する。
【0097】
生物学的に活性なBcl−2フラグメント
他の実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、完全長Bcl−2タンパク質の少なくとも1つの活性を保持する、完全長Bcl−2タンパク質の生物学的に活性なフラグメントである。Bcl−2ポリペプチドは、Bcl−2、Bcl−x、Bcl−XL、Mcl−1、CED−9、Bcl−2関連タンパク質A1、Bfl−1、又はBcl−wのフラグメントでありうる。
【0098】
本開示のBcl−2フラグメントは、Bcl−2のアミノ酸配列の、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個、少なくとも160個、少なくとも170個、少なくとも180個、少なくとも190個、少なくとも200個、少なくとも210個、少なくとも220個、少なくとも230個、又はそれ以上の連続するアミノ酸残基を含みうる。
【0099】
Bcl−2相同体及び類似体
他の実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、Bcl−2タンパク質の相同体若しくは類似体又はそのフラグメントである。例えば、本開示のBcl−2ポリペプチドは、Bcl−2タンパク質又はそのフラグメントに、少なくとも40%〜100%同一、例えば少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約40%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、アミノ酸配列を含みうる。特定の実施形態において、Bcl−2ポリペプチドは、Bcl−2、Bcl−x、Bcl−XL、Mcl−1、CED−9、Bcl−2関連タンパク質A1、Bfl−1、Bcl−w、又はそのフラグメントの相同体又は類似体である。
【0100】
本開示のBcl−2ポリペプチドは更に、NCBIアクセッション番号NP_00624.2を有するヒトBcl−2ポリペプチドの相同体又は類似体、又はそのフラグメントを含む。特定の実施形態において、Bcl−2の相同体又は類似体は、NCBIアクセッション番号NP_00624.2のBcl−2ポリペプチド配列又はそのフラグメントに、少なくとも40%〜100%同一、例えば少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約40%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、アミノ酸配列を含みうる。
【0101】
他の実施形態において、Bcl−2の相同体又は類似体は、NCBIアクセッション番号NP_00624.2のBcl−2ポリペプチド配列又はそのフラグメントに、少なくとも50%〜100%同一、例えば少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、90%、91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約50%〜約100%の任意の他のパーセンテージで同一の、少なくとも10個のアミノ酸、少なくとも20個のアミノ酸、少なくとも30個のアミノ酸、少なくとも40個のアミノ酸、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも60個のアミノ酸、少なくとも70個のアミノ酸、少なくとも80個のアミノ酸、少なくとも90個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、少なくとも110個のアミノ酸、少なくとも120個のアミノ酸、少なくとも130個のアミノ酸、少なくとも140個のアミノ酸、少なくとも150個のアミノ酸、少なくとも160個のアミノ酸、少なくとも170個のアミノ酸、少なくとも180個のアミノ酸、少なくとも190個のアミノ酸、少なくとも200個のアミノ酸、少なくとも210個のアミノ酸、少なくとも220個のアミノ酸、少なくとも230個のアミノ酸、又はそれ以上の長さであるポリペプチド配列を含む。
【0102】
本明細書に記述されるように、好適なBcl−2ポリペプチドは更に、本開示のBcl−2ポリペプチドの保存的に修飾された変異体を含む。
【0103】
完全長Bcl−2タンパク質の活性
他の実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、少なくとも1つのBcl−2活性を有する完全長Bcl−2ポリペプチド、完全長Bcl−2タンパク質の少なくとも1つの活性を保持するBcl−2タンパク質のフラグメント、完全長Bcl−2タンパク質の少なくとも1つの活性を保持するBcl−2タンパク質の相同体、又は完全長Bcl−2タンパク質の少なくとも1つの活性を保持するBcl−2タンパク質の類似体を含む。
【0104】
本開示の完全長Bcl−2タンパク質は、数多くの活性を有する。そのような活性の例としては、アポトーシス調節活性、細胞生存調節活性、タンパク質結合活性、ミトコンドリア膜浸透性調節活性、カスパーゼ調節活性、電位依存性アニオンチャネル調節活性、G2チェックポイント調節活性、ミトコンドリア外膜チャネル(VDAC)調節活性、ミトコンドリア膜電位調節活性、タンパク質チャネル活性、及びシトクロムC調節活性が挙げられるがこれらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、単独又はMYC組成物と組み合わせて、HSC移植前にHSCをこの組成物で処理した場合に、HSC移植レシピエント(骨髄移植レシピエントを含むがこれに限定されない)の体内における造血コンパートメント再構築を増進するBcl−2活性を有する。
【0106】
本明細書に記述されるように、本開示のBcl−2組成物の治療的有効量は、約0.5μ/mL以上〜約100μ/mL以上であり、例えば、約0.5μ/mL以上、約0.6μ/mL以上、約0.7μ/mL以上、約0.8μ/mL以上、約0.9μ/mL以上、約1μ/mL以上、約2μ/mL以上、約3μ/mL以上、約4μ/mL以上、約5μ/mL以上、約6μ/mL以上、約7μ/mL以上、約8μ/mL以上、約9μ/mL以上、約10μ/mL以上、約15μ/mL以上、約20μ/mL以上、約25μ/mL以上、約30μ/mL以上、約35μ/mL以上、約40μ/mL以上、約45μ/mL以上、約50μ/mL以上、約55μ/mL以上、約60μ/mL以上、約65μ/mL以上、約70μ/mL以上、約75μ/mL以上、約80μ/mL以上、約85μ/mL以上、約90μ/mL以上、約95μ/mL以上、又は約100μ/mL以上のMYC組成物である。
【0107】
タンパク質導入ドメイン
本開示の特定の態様は、タンパク質導入ドメインを含む融合タンパク質に関する。いくつかの実施形態において、本開示のMYC組成物は、MYCポリペプチドに融合されたタンパク質導入ドメインを含む融合タンパク質である。他の実施形態において、本開示のBcl−2組成物は、Bcl−2ポリペプチドに融合されたタンパク質導入ドメインを含む融合タンパク質である。
【0108】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド導入ドメイン」、「タンパク質導入ドメイン」、及び「PTD」は互換的に使用され、哺乳類細胞内への、及び/又は哺乳類細胞内のコンパートメントへのタンパク質浸透を促進するペプチド配列又はタンパク質のドメインを指す。1つの非限定的な例において、PTDは、連結したペプチド及び/又はタンパク質の、細胞核への浸透を促進する。
【0109】
本開示のPTDは、当該技術分野で周知のタンパク質ドメインを分離する任意の方法、例えば標準的な分子生物学及び生化学的技法によって、PTD含有タンパク質から分離することができる。あるいは、本開示のPTDは合成することができる。本開示の好適なPTDは、長さが約8〜約30個のアミノ酸残基であり、塩基性アミノ酸残基(例えばアルギニン(Arg)及びリシン(Lys))が豊富に存在している。
【0110】
本開示の好適なPTDは、強い免疫原性ではなく、また同様に、被験者に投与された場合に、強い免疫反応を誘導しない。更に、本開示のPTDは、免疫不全状態の被験者(例えば骨髄又はHSC移植を受けたか、現在受けようとしているか、これから受ける被験者)に投与された場合に、免疫反応を誘導しない。
【0111】
本明細書に記述されるように、本開示のPTDは、哺乳類細胞内への、及び/又は哺乳類細胞内のコンパートメントへの、ペプチド及び/又はタンパク質浸透を促進するために、ペプチド及び/又はタンパク質に連結される(例えば融合、接合、架橋など)。例えば、特定の実施形態において、本開示のPTDはMYCタンパク質に連結される。
【0112】
本開示の任意の方法において使用するのに好適なタンパク質導入ドメインは、当該技術分野で周知の任意のPTDを含む(例えば米国特許公開第US2007/0116691号及び米国特許公開第US2010/0055129号)。例えば、好適なPTDは、レンチウイルスTAT(転写のトランス活性化因子)タンパク質、レンチウイルスVPRタンパク質、ヘルペスウイルスVP22タンパク質、及びホメオタンパク質を含むがこれらに限定されないタンパク質から取得又は誘導されうる。
【0113】
レンチウイルスTATタンパク質から取得又は誘導される好適なPTDの例としては、TATタンパク質含有ウイルスのTATタンパク質由来のPTD、TATタンパク質含有レンチウイルスのTATタンパク質由来のPTD、HIV−1 TATタンパク質由来のPTD、HIV−2 TATタンパク質由来のPTD、SIV TATタンパク質由来のPTD、霊長類レンチウイルスTATタンパク質由来のPTD、ヒツジレンチウイルスTATタンパク質由来のPTD、ウシレンチウイルスTATタンパク質由来のPTD、ウマレンチウイルスTATタンパク質由来のPTD、ネコレンチウイルスTATタンパク質由来のPTD、HIV、SIV、霊長類レンチウイルス、ヒツジレンチウイルス、ウシレンチウイルス、ウマレンチウイルス、又はネコレンチウイルスの亜種のTATタンパク質由来のPTD、及びこれらの相同体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、PTDは、HIV TATタンパク質のアミノ酸残基48〜57である(TAT
[48〜57])。他の実施形態において、PTDは、HIV TATタンパク質のアミノ酸残基57〜48である(TAT
[57〜48])。
【0114】
レンチウイルスVPRタンパク質から取得又は誘導されうる好適なPTDの例としては、VPRタンパク質含有ウイルスのVPRタンパク質由来のPTD、VPRタンパク質含有レンチウイルスのVPRタンパク質由来のPTD、HIV−1 VPRタンパク質由来のPTD、HIV−2 VPRタンパク質由来のPTD、SIV VPRタンパク質由来のPTD、霊長類レンチウイルスVPRタンパク質由来のPTD、ヒツジレンチウイルスVPRタンパク質由来のPTD、ウシレンチウイルスVPRタンパク質由来のPTD、ウマレンチウイルスVPRタンパク質由来のPTD、ネコレンチウイルスVPRタンパク質由来のPTD、HIV、SIV、霊長類レンチウイルス、ヒツジレンチウイルス、ウシレンチウイルス、ウマレンチウイルス、又はネコレンチウイルスの亜種のVPRタンパク質由来のPTD、及びこれらの相同体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
ヘルペスウイルスVP22タンパク質から取得又は誘導されうる好適なPTDの例としては、ヒトヘルペスウイルス1(HSV−1)VP22タンパク質由来のPTD、ヒトヘルペスウイルス2(HSV−2)VP22タンパク質由来のPTD、BHV−1 VP22タンパク質由来のPTD、オウムヘルペスウイルス1VP22タンパク質由来のPTD、ウマヘルペスウイルス1 VP22タンパク質由来のPTD、ウマヘルペスウイルス4 VP22タンパク質由来のPTD、トリヘルペスウイルス2 VP22タンパク質由来のPTD、水痘・帯状疱疹ウイルスVP22タンパク質由来のPTD、及びこれらの相同体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0116】
ホメオドメイン転写因子から取得又は誘導されうる好適なPTDの例としては、ショウジョウバエAntennapedia(Antp)タンパク質由来のホメオドメイン(HD)、ショウジョウバエFushi tarazu(Ftz)タンパク質由来のHD、ショウジョウバエEngrailed(En)タンパク質由来のHD、トリEngrailed−2タンパク質由来のHD、哺乳類ホメオタンパク質由来のHD、ヒトホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−A5ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−A4ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−B5ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−B6ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−B7ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHox−D3ホメオタンパク質由来のHD、ヒトGOXホメオタンパク質由来のHD、ヒトMOX−2ホメオタンパク質由来のHD、ヒトHoxc−8ホメオタンパク質由来のHD、ヒトIslet−1(Isl−1)ホメオタンパク質由来のHD、及びこれらの相同体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0117】
加えて、好適なPTDには、Kaposi−FGF(K−FGF又はFGF−4)由来のPTD、FGF−2由来のPTD、FGF−1由来のPTD、及び、FGFファミリータンパク質の他の構成員由来のPTDが挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
他の好適なPTDには、合成PTDが挙げられる(例えばBeerens、AMJ et al.Curr Gene Ther.2003 Oct;3(5):486〜94)。
【0119】
更に好適なPTDには、CHARIOT(商標)ペプチド(Active Motif、Carlsbad、CA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示のPTDは遺伝子組み換えにより作製され、一方他の実施形態において、PTDは合成されるか、天然源から精製される。
【0121】
PTD融合タンパク質の修飾
いくつかの実施形態において、本開示のPTD含有融合タンパク質は、PTDをMYC又はBcl−2ポリペプチドに連結させる1つ以上の分子を含む、PTD−MYC融合タンパク質及びPTD−Bcl−2融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のリンカー分子は、アミノ酸ペプチドである。
【0122】
本開示のPTD含有融合タンパク質は更に、融合タンパク質の精製を促進する少なくとも1つのアミノ酸配列を含みうる。例えば、PTD−MYC融合タンパク質は、タンパク質標識(例えばポリヒスチジン標識、例えば6個のヒスチジンエピトープ標識)を含みうる。あるいは、PTD含有融合タンパク質は、V5ドメインを含みうる。したがって、特定の実施形態において、本開示のPTD含有融合タンパク質は更に、ポリヒスチジン標識を含む。好ましくは、このポリヒスチジン標識は6個のヒスチジン標識である。より好ましくは、このヒスチジン標識は配列HHHHHHを含む。
【0123】
加えて、このヒスチジン標識は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法により、本開示のPTD含有融合タンパク質に付加されうる。例えば、この配列はポリヒスチジン標識をコードする発現ベクター内にクローン化されうる。あるいは、ポリヒスチジン標識はPCRにより付加されうる(すなわち、PCRプライマーがポリヒスチジン配列を含む)。
【0124】
更に、本開示のPTD含有融合タンパク質は、少なくとも1つのタンパク質標識も含みうる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのタンパク質標識は、エピトープ標識である。好ましくは、このエピトープ標識はV5エピトープ標識である。いくつかの実施形態において、このV5エピトープ標識は、アミノ酸配列:GKPIPNPLLGLDSTを含み、一方他の実施形態において、このV5エピトープ標識は、アミノ酸配列:IPNPLLGLDを含む。このアミノ酸は、D型又はL型のいずれかでありうる。いくつかの実施形態において、第1の複数のアミノ酸がD型、第2の複数のアミノ酸がL型である。加えて、本開示のV5エピトープ標識は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法により、本開示のPTD含有融合タンパク質に付加されうる。例えば、PTD含有融合タンパク質配列は、V5エピトープ標識をコードする発現ベクター内にクローン化されうる。あるいは、V5エピトープ標識は、PCRにより付加されうる(すなわち、PCRプライマーがV5エピトープ配列を含む)。
【0125】
特定の実施形態において、本開示のPTD含有融合タンパク質は、ポリヒスチジン標識とエピトープ標識を含む。好ましくは、このPTD含有融合タンパク質は、6個のヒスチジン標識とV5エピトープ標識とを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示のPTD含有融合タンパク質は任意の望ましい順序に配列することができる。いくつかの実施形態において、PTD含有融合タンパク質は、a)MYC又はBcl−2ポリペプチドにインフレームで接続されるタンパク質導入ドメイン、b)V5ドメインにインフレームで接続されるMYC又はBcl−2ポリペプチド、及びc)6個のヒスチジンエピトープ標識にインフレームで接続されるV5ドメイン、の順で配列されうる。いくつかの実施形態において、PTD含有融合タンパク質は、a)タンパク質導入ドメインにインフレームで接続されるMYC又はBcl−2ポリペプチド、b)V5ドメインにインフレームで接続されるタンパク質導入ドメイン、及びc)6個のヒスチジンエピトープ標識にインフレームで接続されるV5ドメイン、の順で配列されうる。いくつかの実施形態において、各配列それぞれの間に、付加的に介在するアミノ酸配列を含めることができる。いくつかの実施形態において、追加のアミノ酸配列を、配列の開始位置及び/又は終了位置に含めることができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、PTD含有融合タンパク質は、タンパク質導入ドメイン、MYC又はBcl−2ポリペプチド、及び短いペプチドドメインを含む。この短いペプチドドメインは可変でありうる。いくつかの実施形態において、この短いペプチドドメインは、V5、ヒスチジン標識、HA(血球凝集素)標識、FLAG標識、CBP(カルモジュリン結合ペプチド)、CYD(共有結合性でありながら分離可能なNorpDペプチド)、StrepII、又はHPC(タンパク質Cの重鎖)のうち少なくとも1つから選択される。いくつかの実施形態において、短いペプチドドメインは、約10又は20個のアミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、短いペプチドドメインは、2〜20個、例えば6〜20個のアミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、上述に列記したもののうち2つ(例えば、V5とヒスチジン標識)は、一緒に短いペプチドドメインとして使用することができる。
【0128】
PTD含有融合タンパク質の構築
本開示のPTD含有融合タンパク質は、当該技術分野で周知の任意の好適な方法によって構築することができる(例えば米国特許公開第US2010/0055129号)。
【0129】
1つの非限定的な例において、本開示のPTD−MYC融合タンパク質をコードする核酸配列は、PCRにより作製されうる。これは、インフレームPTD配列(例えばTATのRKKRRQRRRの9個アミノ酸配列)を含むMYC配列のためのフォワードプライマーと、終止コドンを除去するよう設計されたMYC配列のためのリバースプライマーとを設計することによって達成されうる。そのようなプライマーを使用したPCR反応によるPCR生成物は、次に、当該技術分野で周知の好適な発現ベクターにクローン化される。
【0130】
1つの非限定的な例において、本開示のPTD−Bcl−2融合タンパク質をコードする核酸配列は、PCRにより作製されうる。これは、インフレームPTD配列(例えばTATのRKKRRQRRRの9個アミノ酸配列)を含むBcl−2配列のためのフォワードプライマーと、終止コドンを除去するよう設計されたBcl−2配列のためのリバースプライマーとを設計することによって達成されうる。そのようなプライマーを使用したPCR反応によるPCR生成物は、次に、当該技術分野で周知の好適な発現ベクターにクローン化される。Bcl−2の構造化されていないループは、部位特異的突然変異誘発キットを使用して、Bcl−2コーディング配列から除去されうる。
【0131】
PTD含有組成物
他の実施形態において、本開示のPTD含有融合タンパク質は、組成物中に含まれる。治療法のために、そのような融合タンパク質含有組成物は、製薬的に許容される担体を含み得、これには、被験者(例えばHSC移植レシピエント)にPTD含有融合タンパク質を送達するための、製薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクルが含まれる。
【0132】
いくつかの実施形態において、PTD含有融合タンパク質はPTD−MYCであり、PTD−MYC融合タンパク質含有組成物(PTD−MYC組成物)の治療的有効量が被験者に投与されて、第2の組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメント再構築に比較して、造血コンパートメント再構築の少なくとも50%加速が達成される。他の実施形態において、PTD−MYC組成物の治療的有効量が被験者に投与されて、PTD−MYC組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメントの自家再構築に比較して、増進された造血コンパートメントの自家再構築が達成される。有利な点として、本開示のPTD−MYC組成物は、被験者に投与されたときに低毒性を有する。したがって、PTD−MYC組成物は、被験者の体重に対して約0.1〜約50mg/kgの範囲の量で投与されうる。特定の実施形態において、PTD−MYC融合タンパク質を含む組成物の治療的有効量は、被験者の体重に対して、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.3mg/kg、少なくとも0.4mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも0.6mg/kg、少なくとも0.7mg/kg、少なくとも0.8mg/kg、少なくとも0.9mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも4mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも6mg/kg、少なくとも7mg/kg、少なくとも8mg/kg、少なくとも9mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも30mg/kg、少なくとも40mg/kg、又は少なくとも50mg/kgである。
【0133】
他の実施形態において、PTD含有融合タンパク質はPTD−Bcl−2であり、PTD−Bcl−2融合タンパク質含有組成物(PTD−Bcl−2組成物)の治療的有効量が被験者に投与されて、第2の組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメント再構築に比較して、造血コンパートメント再構築の少なくとも50%加速が達成される。他の実施形態において、PTD−Bcl−2組成物の治療的有効量が被験者に投与されて、PTD−Bcl−2組成物を投与されていない被験者における造血コンパートメントの自家再構築に比較して、増進された造血コンパートメントの自家再構築が達成される。有利な点として、本開示のPTD−Bcl−2組成物は、被験者に投与されたときに低毒性を有する。したがって、PTD−Bcl−2組成物は、被験者の体重に対して約0.1〜約50mg/kgの範囲の量で投与されうる。特定の実施形態において、PTD−Bcl−2融合タンパク質を含む組成物の治療的有効量は、被験者の体重に対して、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.3mg/kg、少なくとも0.4mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも0.6mg/kg、少なくとも0.7mg/kg、少なくとも0.8mg/kg、少なくとも0.9mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも3mg/kg、少なくとも4mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも6mg/kg、少なくとも7mg/kg、少なくとも8mg/kg、少なくとも9mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも30mg/kg、少なくとも40mg/kg、又は少なくとも50mg/kgである。
【0134】
本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、少なくとも1日4回、少なくとも1日5回、又はそれ以上、投与することができる。あるいは、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、少なくとも2日に1回、少なくとも3日に1回、少なくとも4日に1回、少なくとも5日に1回、又は少なくとも6日に1回、少なくとも1週間に1回、少なくとも2週間に1回、少なくとも3週間に1回、又は少なくとも4週間に1回、投与することができる。
【0135】
有利な点として、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、HSC移植の約5日間以上前〜約12時間以上前に、又はHSC移植と同時に、又はHSC移植の約12時間以上後〜約3週間以上後に、被験者に投与されたときに、HSC移植(例えばHSC生着)(例えば骨髄移植)による造血コンパートメント再構築を加速することができる。本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、HSC移植が行われる同じ場所、及びHSC移植が行われる場所とは別の医院又は診療所、及びHSC移植を受ける被験者の自宅又は居住場所を含む、任意の好適な場所で投与することができる。本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物を投与するには、当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の方法が使用されうる。いくつかの実施形態において、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物は、当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の好適な製薬的に許容される担体と一緒に投与される。他の実施形態において、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物は、静脈注射製剤を含むがこれに限定されない、該技術分野で周知の好適な製剤として投与される。
【0136】
本明細書で使用されるとき、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物の投与は、移植されるHSCと同じ混合物及び/又は製剤中、あるいは、移植されるHSCとは別の混合物及び/又は製剤中で投与される際に、HSC移植と「同時」に起こる。PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物が別の混合物及び/又は製剤中で投与される際、HSC移植と「同時に」起こる本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物の投与には、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物をHSC移植の約11時間以上前〜約1分以上前に投与すること、あるいは、HSC移植の約1分以上後〜約11時間以上後に投与することが含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用されるとき、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物の投与は、HSC移植の約5日間以上前〜約12時間以上前に別の混合物及び/又は製剤中で投与される際に、HSC移植の「前に」起こる。本明細書で使用されるとき、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物の投与は、HSC移植の約12時間以上後〜約3週間以上後に別の混合物及び/又は製剤中で投与される際に、HSC移植の「後に」起こる。
【0137】
したがって、特定の実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、被験者に対して、HSC移植の前、後、又は同時に投与される。いくつかの実施形態において、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物は、HSC移植の約5日間以上前、約4日間以上前、約3日間以上前、約2日間以上前、約1日以上前、約23時間以上前、約22時間以上前、約21時間以上前、約20時間以上前、約19時間以上前、約18時間以上前、約17時間以上前、約16時間以上前、約15時間以上前、約14時間以上前、約13時間以上前、又は約12時間以上前に投与される。他の実施形態において、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物は、HSC移植と同時に投与される。更なる実施形態において、PTD−MYC組成物及び/又はPTD−Bcl−2組成物は、HSC移植の約12時間以上後、約13時間以上後、約14時間以上後、約15時間以上後、約16時間以上後、約17時間以上後、約18時間以上後、約19時間以上後、約20時間以上後、約21時間以上後、約22時間以上後、又は約23時間以上後上、約1日間以上後、約2日間以上後、約3日間以上後、約4日間以上後、約5日間以上後、約6日間以上後、約1週間以上後、約2週間以上後、又は約3週間以上後に投与される。
【0138】
治療用途
本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、様々な病状、疾病、及び症候群の治療において、数多くの治療用途がある。そのような用途には、HSC移植レシピエント(例えば骨髄移植レシピエント)における造血コンパートメント再構築の加速;造血コンパートメントの自家再構築の増進;化学療法又は放射線治療による造血コンパートメント減少の治療;骨髄不全症候群の治療;及び長期的HSC生着不全の治療が挙げられるがこれらに限定されない。
【0139】
本明細書で使用されるとき、化学療法、放射線治療、及び/又はその他の造血コンパートメント細胞喪失をもたらす病状による「造血コンパートメント細胞の減少の防止」とは、化学療法、放射線治療、骨髄不全、及び/又はその他の造血コンパートメント細胞喪失をもたらす病状の結果として、細胞壊死、アポトーシス、又は同様物によって失われる、本開示の何らかの造血コンパートメント細胞の量の減少を低減及び/又は阻害することを指す。細胞喪失の定量(例えば細胞壊死、アポトーシスなどの定量)のために、当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の方法が使用されうる。1つの非限定的な実施例において、DNAインターカレーション染料を使用して、細胞喪失を定量する。いくつかの実施形態において、「造血コンパートメント細胞の減少の防止」とは、化学療法、放射線治療、骨髄不全、及び/又はその他の造血コンパートメント細胞喪失をもたらす病状の結果としての、造血コンパートメント細胞喪失が、約25%以上〜約99%以上、又はそれ以上減少することを含みうる。
【0140】
特定の実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、レシピエント体内の造血コンパートメント再構築を加速することにより、HSC移植レシピエントにおける生着不全及び日和見感染症のリスクを低減するのに使用されうる。
【0141】
あるいは、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、被験者の骨髄不全症候群を治療するのに使用されうる。骨髄不全症候群は、遺伝性の場合があり、又は、例えば感染症、又は慢性疲労症候群の結果として起こる場合がある。加えて、HSC移植レシピエントにおける骨髄不全は、例えば、HSCの数が不充分な移植、不適合HSCの移植、又はレシピエントの健康状態の結果として起こり得る。
【0142】
後天性骨髄不全症候群には、再生不良性貧血及び湾岸戦争症候群が含まれうるがこれらに限定されない。
【0143】
遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)には、無巨核球性血小板減少症、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性角化不全症、ファンコーニ貧血、ピアソン症候群、重度の先天性好中球減少症、シュバッハマン・ダイアモンド症候群、及び血小板減少性橈骨欠損、IVIC症候群、WT症候群、橈尺骨癒合症、及び運動失調−汎血球減少症が挙げられうるがこれらに限定されない。
【0144】
更なる実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、移植されたHSCの初期生着の後に、造血キメラ化が不首尾となった(すなわち、長期的HSC生着不全)HSC移植レシピエントを治療するのに使用することができる。
【0145】
毒物(例えば化学物質、化学療法薬、又は放射線)への曝露は、被験者の造血コンパートメントの減少又は喪失をもたらしうる。本明細書で使用されるとき、造血コンパートメントの減少は、造血コンパートメント内の全細胞量の減少、あるいは、造血コンパートメント内の特定の細胞群又は細胞亜群の減少があった場合に起こり得る。造血コンパートメント内の特定の細胞群又は細胞亜群の例としては、骨髄細胞、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、樹状細胞、リンパ球、T細胞前駆細胞、プロT細胞、プレT細胞、ダブルポジティブT細胞、未熟T細胞、成熟T細胞、B細胞前駆細胞、プロB細胞、早期プロB細胞、後期プロB細胞、大型プレB細胞、小型プレB細胞、未熟B細胞、成熟B細胞、NKT細胞、及びNK細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
したがって、特定の実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物は、そのような毒物に曝露した被験者を治療するのに使用されうる。いくつかの実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物で被験者を治療することによって、化学療法又は放射線治療を現在受けているか又は過去に受けた被験者の造血コンパートメント細胞の減少又は喪失を防止する。他の実施形態において、本開示のPTD−MYC組成物及び/又は本開示のPTD−Bcl−2組成物で被験者を治療することによって、化学療法又は放射線治療を現在受けているか又は過去に受けた被験者の内因性HSCの量の減少又は喪失を防止する。
【0147】
造血幹細胞
本開示の他の態様は、造血コンパートメント再構築を増進するため、必要としている被験者にHSCを移植する前に、造血幹細胞群(HSC)を、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方で処理することに関する。本開示の他の態様は、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を投与してHSCによる造血コンパートメント細胞の生成を誘導することにより、必要としている被験者体内の造血コンパートメント細胞形成を増進することに関する。本開示の方法により治療される「被験者」、「患者」、又は「宿主」は、造血コンパートメント細胞形成(例えば造血コンパートメント再構築又は自家再構築)の増進を必要としている、ヒト、又は非ヒト(例えば本明細書で開示される非ヒト動物の任意のもの)でありうる。本明細書で開示されるように、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方で前処理された本開示のHSCは、造血コンパートメント再構築を必要としている患者に投与する前に洗浄することができる。
【0148】
あるいは、MYC組成物及び/又はBcl−2組成物の一過性効果が被験者に対して有害ではないため、前処理されたHSCは、投与前に洗浄することなしに被験者に投与されうる。本明細書で開示される当該技術分野で周知の任意の好適な溶液を使用して、前処理されたHSCを洗浄することができる。1つの非限定的な例において、pH調整済み生理食塩水を使用して、被験者にHSCを投与する前に、前処理されたHSCを洗浄する。前処理されたHSCは、被験者に投与する約1分間以上前〜約1時間前、約6時間前、約8時間前、約12時間前、約24時間前、又はそれ以上前に、洗浄することができる。
【0149】
本開示のHSCは、造血コンパートメントの全細胞タイプを生成させることができ、これは、骨髄系(単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、及び樹状細胞を含むがこれらに限定されない)並びにリンパ系(T細胞、B細胞、NKT細胞、及びNK細胞を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態において、本開示のMYC組成物は、HSC移植レシピエントの体内での造血コンパートメント再構築を加速する。本明細書に記述されるように、HSC移植レシピエントは、骨髄移植、HSCの豊富な骨髄移植、臍帯血移植、HSCの豊富な臍帯血移植、胎盤由来血移植、精製又は部分的に精製されたHSC移植、HSC細胞株由来のHSC移植、又は条件的に不死化されたHSC移植を受け得る。そのような実施形態において、HSCはHSC移植術のプロセスの一工程として投与されうる。本明細書に記述されるように、HSCは、移植骨髄、移植臍帯血、又は移植細胞株内に含まれうるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態において、移植レシピエントはヒト被験者である。好適なHSCは、当該技術分野で周知の任意の好適な技法により取得することができる。例えば、HSCは、大腿骨、骨盤、肋骨、胸骨、及びその他の骨を含む、ドナーの骨髄中に見出すことができる。骨髄細胞を抽出又は採取するための当該技術分野で周知の任意の方法を使用することができる。1つの非限定的な例において、HSCは、針及び注射器を用いて骨盤の髄腔から直接、細胞を吸引することによって取得することができる。複数の小さな吸引を実施することで、骨盤から豊富な量の骨髄を取得することができる。
【0151】
本開示の方法に使用するのに好適なHSCは、胚性幹(ES)細胞及び/又は誘導多能性幹(iPS)細胞から作製されうる。当該技術分野で周知のES細胞及び/又はiPS細胞からHSCを作製する任意の方法を使用することができる(例えばKeller、G.Genes Dev.2005 19:1129〜1155;及びPapapetrou Sadelain、F1000 Med Rep.2010 Jun 16;2)。例えば、HSCは、早期胎芽における造血前駆におけるES細胞培養の造血発生をパターニングすることにより、ES細胞から作製されうる(例えばKeller、G.Genes Dev.2005 19:1129〜1155)。
【0152】
加えて、本開示の方法に使用するのに好適なHSCは、当該技術分野で周知の任意の好適な技法によって取得することができる。例えば、HSCは、大腿骨、骨盤、肋骨、胸骨、及びその他の骨を含む、ドナーの骨髄中に見出すことができる。骨髄細胞を抽出又は採取するための当該技術分野で周知の任意の方法を使用することができる。1つの非限定的な例において、HSCは、針及び注射器を用いて骨盤の髄腔から直接、細胞を吸引することによって取得することができる。複数の小さな吸引を実施することで、骨盤から豊富な量の骨髄を取得することができる。
【0153】
好適なHSCは、しばしば、ドナーの骨髄コンパートメントからのHSC放出を誘導するサイトカイン(例えばG−CSF(顆粒球コロニー刺激性因子))で前処理した後に、ドナー血液中に見出される末梢血細胞から取得されうる。HSCは、HSCを豊富にするためにアフェレーシス手順を行った末梢血からも取得することができる。当該技術分野で周知の任意のアフェレーシス手順を使用することができる。特定の実施形態において、このアフェレーシス手順は白血球除去法である。
【0154】
加えて、好適なHSCは、臍帯血、胎盤、及び動員された末梢血から取得することができる。実験目的では、動物の胎児肝臓、胎児脾臓、及びAGM(大動脈−生殖腺−中腎)も、HSCの有用な取得源である。加えて、HSCは、ドナーの骨髄、末梢血、臍帯、又は胎児組織から取得したHSC源から獲得することができる。あるいは、HSCは、ドナーの骨髄、末梢血、臍帯、又は胎児組織サンプル中に含まれうる。
【0155】
いくつかの実施形態において、HSCはヒト臍帯又は胎盤から取得される。利用可能な他のHSC源は、動物胎児の発生途中の血液産生組織である。ヒトにおいては、HSCは約12〜18週までに、ヒト胎児の循環血液中に見出されうる。いくつかの実施形態において、ヒトHSCは例えば、血液型A+、A−、B+、B−、O+、O−、AB+、及びAB−の、骨髄、臍帯、末梢血、又は胎児血液組織などの任意の供給源から取得される。他の実施形態において、ヒトHSCは例えば、万能ドナー又は稀な血液型を有するドナーの、骨髄、臍帯、末梢血、又は胎児血液組織などの任意の供給源から取得される。稀な血液型は当該技術分野で周知であり、これには、Oh、CDE/CDE、CdE/CdE、C
wD−/C
wD−、−D−/−D−、Rh
null、Rh:−51、LW(a−b+)、LW(a−b−)、S−s−U−、S−s−U(+)、pp、Pk、Lu(a+b−)、Lu(a−b−)、Kp(a+b−)、Kp(a−b−)、Js(a+b−)、Ko、K:−11、Fy(a−b−)、Jk(a−b−)、Di(b−)、I−、Yt(a−)、Sc:−1、Co(a−)、Co(a−b−)、Do(a−)、Vel−、Ge−、Lan−、Lan(+)、Gy(a−)、Hy−、At(a−)、Jr(a−)、In(b−)、Tc(a−)、Cr(a−)、Er(a−)、Ok(a−)、JMH−、及びEn(a−)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
他の実施形態において、ヒトHSCは例えば、自己免疫疾患、免疫不全、又はHSC移植で利益がありうる任意の他の疾病又は疾患を有するドナーの、骨髄、臍帯、末梢血、又は胎児血液組織などの任意の供給源から取得される。そのようなドナーはレシピエントでもありうる。有利な点として、そのようなドナーから取得されたHSCは、パーソナライズされたHSC治療に使用することができる。
【0157】
1つの非限定的な例において、ヒトHSCは、幹細胞ドナーに麻酔を行い、腸骨稜の後側上方に針を刺し、注射器で骨髄細胞を吸引することによって取得することができる。別の非限定的な例において、ヒトHSCは、ドナーの末梢血から取得することができ、ここにおいて、末梢血から幹細胞を採取する数日前に、ドナーにはG−CSFが注入され、これにより幹細胞を末梢血中に動員させる。
【0158】
したがって、いくつかの実施形態において、HSCは自家ドナーから取得され、すなわち、ドナーは、そのようなHSCに由来するHSCのレシピエントでもある。当該技術分野で周知及び本明細書に記述される任意の方法を使用して、自家ドナーからHSCを取得することができる。HSC及び/又はこれから誘導又は作製された任意の治療産物が次に、移植、投与、及び/又は輸注により元のドナーに戻される。同様に、HSCは、例えばHSC移植を必要としている被験者のきょうだい、親、又はその他の近親者などの同種ドナーから取得することができる。1つの非限定的な例において、同種HSCは、異なる血液型、又は主要組織適合性(MHC)又はヒト白血球抗原(HLA)マッチの供給源からHSCを採取することによって取得される。自家及び/又は同種HSC移植は、例えば提供の数日後、数か月後、又は更には数年後の、任意の時点で行われうる。自家提供は、HSCを必要としている被験者が、他のドナー(同種及び/又は万能ドナーを含む)からのHSC移植及び/又は輸注に対して、不良な、悪化させる、又は有毒な反応を有しうる場合に、特に有用でありうる。自家及び/又は同種提供により利益が得られる可能性がある患者の例は当該技術分野で周知であり、これには、自己免疫疾患、血液疾病又は疾患、免疫疾病又は疾患、又はその他の関連する疾病又は病状を被っている患者が挙げられるがこれらに限定されない。
【0159】
例えば、骨髄、末梢血、又は臍帯血から取得された細胞は、典型的に、抽出又は採取後に加工される。抽出又は加工された細胞を処理するための当該技術分野で周知の任意の方法が使用できる。加工工程の例としては、濾過、遠心分離、血液病理学的スクリーニング、ウイルス及び/又は微生物感染スクリーニング、赤血球除去、同種幹細胞移植レシピエントにおいて移植片対宿主病の発生を低減するためのT細胞除去、体積減量、細胞分離、後の加工に好適なように培地又は緩衝液中に細胞を再懸濁、非幹細胞からの幹細胞の分離(例えば幹細胞富化)、増殖因子、サイトカイン、及び/又はホルモンと共にエクスビボ又はインビトロでの幹細胞増殖、並びに冷凍保存が挙げられるがこれらに限定されない。
【0160】
幹細胞富化のために任意の好適な方法を使用することができる。幹細胞富化の方法の例としては、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び磁気活性化細胞選別(MACS)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0161】
したがって、特定の実施形態において、本開示の方法における使用に好適なHSCはヒトHSCである。他の実施形態において、本開示の方法における使用に好適なHSCは、被験者に対して自家のものである。更に他の実施形態において、本開示の方法における使用に好適なHSCは、被験者に対して同種のものである。
【0162】
ドナーから取得されたHSCは、当該技術分野で周知の任意の好適な幹細胞同定及び富化の方法によって(例えば特定の表現型又は遺伝子型マーカーを利用することによって)同定及び/又は豊富にされうる。例えば、いくつかの実施形態において、HSCの同定は、HSCに関連付けられている、又は系統の最終的に分化した細胞に特異的に関連付けられている、細胞表面マーカーを使用することを含む。好適な表面マーカーには、c−kit、Sca−1、CD4、CD34、CD38、Thy1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD43、CD45、CD59、CD90、CD105、CD133、CD135、ABCG2、NK1.1、B220、Ter−119、Flk−2、CDCP1、エンドムシン、Gr−1、CD46、Mac−1、Thy1.1、及び、受容体のシグナルリンパ球活性化分子(SLAM)ファミリーのうち1つ以上を含むがこれらに限定されない。SLAM受容体の例としては、CD150、CD48、及びCD244が挙げられるがこれらに限定されない。
【0163】
加えて、ドナーから取得されるHSCは、当該技術分野で周知の任意の好適な方法によって非幹細胞から分離することができ、これには、蛍光活性化細胞選別(FACS)及び磁気活性化細胞選別(MACS)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0164】
1つの非限定的な例において、ヒト末梢血細胞は、c−kit、Sca−1、CD34、CD38、Thy1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD43、CD45、CD59、CD90、CD105、CD133、ABCG2、NK1.1、B220、Ter−119、Flk−2、CDCP1、エンドムシン、又はGr−1を認識する抗体とともにインキュベーションされる。CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、NK1.1、B220、Ter−119、及びGr−1に対する抗体は、磁気ビーズに結合される。CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、NK1.1、B220、Ter−119、又はGr−1を発現する細胞が、磁気ビーズを保持するよう装備されたカラム内に入れられ、細胞が、磁気ビーズに結合した抗体に付着する。MACSカラムによって捕捉されなかった細胞は、FACS解析の対象となる。c−kit、Sca−1、CD34、CD38、Thy1に対する抗体が、当該技術分野で周知の蛍光材料に結合される。CD34
+、CD38
low/−、c−kit
−/low、Thy1
+である細胞は、細胞に関連付けられる蛍光抗体のタイプのおかげで、サンプルの他の部分から分離される。これらの細胞は、本開示の任意の方法で使用するのに好適な、ヒト長期的HSCとして提供される。
【0165】
他の非限定的な一実施例において、被験者から採取された細胞が、上述の磁気ビーズに結合された抗体(CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、NK1.1、B220、Ter−119、又はGr−1の1つ以上に対する抗体)と同じセットで標識付けられ、次に蛍光結合されたCD150、CD244及び/又はCD48抗体で標識付けられる。磁気ビーズ結合抗体によって捕捉された細胞をサンプルから除去した後、サンプルは、FACSによって解析され、CD150
+、CD244
−及びCD48
−細胞が長期的HSCとして保持される。
【0166】
いくつかの実施形態において、本開示の方法に利用されるHSCは、c−kit
+、Sca−1
+、CD34
low/−、CD38
+、Thy1
+/low、CD34
+、CD38
low/−、c−kit
−/low、及び/又はThy1
+のマーカーのうち1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法に利用されるHSCは、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、NK1.1、B220、Ter−119、及び/又はGr−1のマーカーのうち1つ以上を欠いている。特定の実施形態において、本開示の方法に利用されるHSCは、A
+、A
−、B
+、B
−、O
+、O
−、AB
+、AB
−型のものである。
【0167】
あるいは、好適なHSCは、非ヒト供給源から取得されうる。好適な非ヒトHSCは、実験/研究動物、齧歯類、ペット、家畜、農場動物、使役動物、荷物を運ぶ動物、希少又は絶滅危惧種、競走用動物、及び動物園動物を含むがこれらに限定されない非ヒト動物の、大腿骨、骨盤、肋骨、胸骨、及びその他の骨から分離されうる。更なる好適な非ヒト動物の例としては、サル、霊長類、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びニワトリが挙げられるがこれらに限定されない。例えばHSCは、ネズミの骨髄細胞から、例えばc−kit、Sca−1、CD34、CD38、Thy1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD43、CD45、CD59、CD90、CD105、CD133、ABCG2、NK1.1、B220、Ter−119、Flk−2、CDCP1、エンドムシン、又はGr−1の1つ以上などの細胞表面分子を認識する抗体と共に、骨髄細胞をインキュベーションすることによって、取得することができる。CD2、CD3、CD4、CD5、CDS、NK1.I、B220、Ter−119、及びGr−1に対する抗体は、磁気ビーズに結合される。MACS装置内で、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、NK1.1、B220、Ter−119、又はGr−1を表面に搭載する細胞が、磁気ビーズを保持するよう装備されたカラム内に入れられ、細胞が、磁気ビーズに結合した抗体に付着する。MACSカラムによって捕捉されなかった細胞は、FACS解析の対象となる。FACS解析では、例えばc−kit、Sca−1、CD34、CD38、Thy1などの表面分子の抗体が、蛍光剤量に結合される。c−kit
+、Sca−1
+、CD34
low/−、CD38
+、Thy1
+/lowである細胞は、細胞に関連付けられる蛍光抗体のタイプのおかげで、サンプルの他の部分から分離される。これらの細胞は、本開示の任意の方法で使用するのに好適な、ネズミ長期的HSCとして提供される。他の実施形態において、骨髄、臍帯血、胎児組織、及び末梢血の細胞から、ネズミ長期的HSCを分離するのに、異なるセットのマーカーが使用される。
【0168】
いくつかの実施形態において、骨髄からHSCを取得するには、最初にHSCドナー(例えばマウス)に、ドナーの骨髄中のHSCを豊富にするために、5−フルオロウラシル(5−FU)を注入してHSCの増殖を誘導させる。
【0169】
更に、本開示の任意の方法で使用するための好適なHSCは、臍帯血、骨髄、末梢血、若しくはその他の供給源から取得されたものであっても、又はこれらの中に存在するものであっても、望ましいように、血清と共に又は血清なしで、任意の好適な、市販又はカスタム定義の培地中で、成長又は増殖させることができる(例えばHartshorn et al.,Cell Technology for Cell Products、p.221〜224、R.Smith、Editor;Springer Netherlands、2007)。例えば、無血清培地は、アルブミン及び/又はトランスフェリンを利用することができ、これは無血清培地においてCD34
+細胞の成長及び増殖に有用であることが示されている。また、例えば中でもFlt−3リガンド、幹細胞因子(SCF)、及びトロンボポチエン(TPO)などのサイトカインを含めることができる。HSCは、バイオリアクターなどの容器内で増殖させることもできる(例えばLiu et al.,Journal of Biotechnology 124:592〜601、2006)。HSCのエクスビボ増殖に好適な培地は更に、間質細胞(例えばリンパ細網間質細胞)などのHSC支持細胞を含み得、これは例えば、リンパ性組織の離解から誘導することができ、これはインビトロ、エクスビボ、及びインビボでのHSCの維持、成長、及び分化、並びにその子孫を支持することが示されている。
【0170】
HSC成長又は増殖は、当該技術分野で周知の慣例的技法に従って、インビトロ又はインビボで測定することができる。例えば、国際特許第WO 2008/073748号は、HSCのインビボ及びインビトロ増殖を測定するための方法、並びに、例えば中間前駆細胞などの潜在的に異質性の群(例えば骨髄)における、HSCの成長/増殖と他の細胞の成長/増殖とを区別する方法を記述している。
【0171】
HSC細胞株
他の実施形態において、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、HSC細胞株に由来するものでありうる。好適なHSC細胞株には、当該技術分野で周知の任意の培養された造血幹細胞株が含まれる。非限定的な例としては、米国特許公開第US2007/0116691号及び米国特許公開第US2010/0047217号に記述されている条件的に不死化した長期的幹細胞株が挙げられる。
【0172】
特定の実施形態において、本開示の方法における使用に好適なHSCは、被験者に対してHSCを投与する前に、条件的に不死化されている。例えば、本明細書に記述される任意の方法によって取得されたHSCは、調節可能な(例えば誘導可能、制御可能な)がん原遺伝子(例えばMYCなどのように、細胞生存及び増殖を促進する)で処理され、及び/又はHSCのアポトーシスを阻害するタンパク質(例えばBcl−2)で処理されうる(例えば米国特許公開第US2007/0116691号)。いくつかの実施形態において、この調節可能がん原遺伝子はMYC組成物である。好ましくは、このMYC組成物はTAT−MYC融合タンパク質である。HSCのアポトーシスを阻害するタンパク質も、調節可能でありうる。例えば、この調節可能タンパク質は、PTD−Bcl−2融合タンパク質、例えばTAT−Bcl−2融合タンパク質でありうる。
【0173】
他の実施形態において、本開示の方法における使用に好適なHSCは、被験者にHSCを投与する前に、本開示のMYC組成物(例えばTAT−MYCタンパク質融合)、本開示のBcl−2組成物(例えばTAT−Bcl−2タンパク質融合)、又はこれら両方の存在下で培養される。好ましくは、MYC組成物及び/又はBcl−2組成物の存在下での第1の組成物の培養によって、HSCが条件的に不死化され、これによって培養HSCの膨張がもたらされる。
【0174】
本明細書で使用されるとき、「造血幹細胞の増殖」又は「HSCの増殖」は、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方と共に培養又はこれらで処理されていないHSCに比べて、細胞増殖及び/又は細胞生存において増加していることを指す。例えば、HSC増殖は、HSC増殖、HSC生存、又はこれら両方が約10%以上〜約500%以上増加した場合に起こる。HSC増殖及び/又は生存の増加を測定するための当該技術分野で周知及び本明細書に開示される任意の方法を使用することができる。
【0175】
したがって、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、骨髄から、アフェレーシス手順から、末梢血細胞から、白血球除去法を行った末梢血細胞から、臍帯血から、羊水から、培養HSC細胞から、不死化HSC細胞株から、又は条件的不死化HSC細胞株から取得することができる。あるいは、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、骨髄中、末梢血細胞中、白血球除去法を行った末梢血細胞中、臍帯血中、羊水中、及び培養HSC細胞中に存在しうる。
【0176】
遺伝子導入アプローチ
いくつかの実施形態において、本開示の方法に使用するための条件的不死化HSCは、当該技術分野で周知の任意の遺伝子導入アプローチを用いて確立されている(例えば米国特許公開第US2007/0116691号及び米国特許公開第US2010/0047217号)。例えば、HSCは、HSCの増殖群を取得し、例えばMYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチド(例えば誘導可能及び/又は制御可能)をコードするベクターをHSCにトランスフェクト(形質導入)し、MYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチドをコードするベクターをHSCにトランスフェクト(形質導入)し、かつ、MYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチドが誘導されたか及び/又は活性である条件下で、幹細胞増殖因子の組み合わせの存在下で、トランスフェクトされたHSCを増殖させることによって、不死化することができる。
【0177】
MYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチドは調節可能であり(例えば誘導可能又は制御可能)、これによって、ポリペプチドは、HSCを不死化抗体に維持するか又は望ましい細胞タイプに分化させたい場合に、ポリペプチドを活性化及び不活性化することができる(すなわち、オンにするか又はオフにすることができる)。
【0178】
いくつかの実施形態において、MYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチドは、活性が誘導可能又は抑制可能になるように修飾されている。例えば、MYCポリペプチド及び/又はBcl−2ポリペプチドは更に、誘導可能受容体を含みうる。特定の実施形態において、組み換えタンパク質はエストロゲン受容体(ER)を含む。特定の実施形態において、細胞の生存及び/又は増殖を促進し、かつエストロゲン受容体を含む組み換えタンパク質は、MYC−ERポリペプチド及び/又はBcl−2−ERポリペプチドである。特定の実施形態において、エストロゲン受容体を含むタンパク質は、4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)によって誘導される。あるいは、このタンパク質は、グルココルチコイド受容体(GR)、例えばミフェプリストン(MIFEPREX)に感受性のグルココルチコイド受容体を含みうる。特定の実施形態において、グルチココルチコイド受容体を含むタンパク質は、MYC−GRポリペプチド及び/又はBcl−2−GRポリペプチドである。
【0179】
当該技術分野で周知のHSCの増殖群を取得するための任意の当該技術分野で周知の方法を使用することができる。例えば、HSCは、細胞増殖及び/又は細胞分裂を促進する1つ以上の増殖因子と共に培養することができる。
【0180】
好ましくは、ベクターは組み込み型ベクターであり、これは細胞のゲノム内に組み込まれる能力を有する(例えばレトロウイルスベクター)。HSCは、細胞(特に哺乳類細胞)をトランスフェクトする任意の好適な方法(技法の組み合わせを用いることを含む)を用いて、ベクターでトランスフェクト及び/又は変換することができる。好適なベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、コロナウイルスベクター、カリシウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フラビウイルスベクター、オルトミクソウイルスベクター、トガウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、アデノウイルスベクター、並びに修飾及び弱毒化されたヘルペスウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない。そのようなウイルスベクターは更に、HSCに対してこれらを標的付けるための特定の表面発現分子で修飾することができ、例えば膜結合SCF、又はその他の幹細胞特異的増殖因子リガンドで修飾することができる。哺乳類細胞のトランスフェクションの他の方法としては、哺乳類発現ベクターの直接エレクトロポレーション、例えばNUCLEOFECTOR(商標)技術(AMAXA Biosystems)を用いることが挙げられるがこれに限定されない。この技術は、多くの初代細胞及びトランスフェクトが難しい細胞株において、非常に効率的な非ウイルス遺伝子導入である。これは、長い間知られているエレクトロポレーションが改善されたもので、電流と溶液との細胞タイプ固有の組み合わせを使用して、多陰イオン性マクロ分子を直接核内に移入することに基づいている。加えて、トランスフェクションの好適な方法には、当該技術分野で周知の、細菌、酵母、及びその他の人工的な遺伝子送達方法が含まれうる。
【0181】
内因性発現の増進
いくつかの実施形態において、本開示の方法で使用するための条件的不死化HSCは、本開示の任意のMYCタンパク質を含むがこれに限定されない、細胞生存及び/又は増殖を促進する内因性タンパク質の発現を増進することによって達成されうる。加えて、本開示の方法で使用するための条件的不死化HSCは、本開示の任意のBcl−2タンパク質を含むがこれに限定されない、アポトーシスを阻害する内因性タンパク質の発現を増進することによっても達成されうる。
【0182】
タンパク質形質導入アプローチ
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される任意の方法によって取得及び/又は産生されるHSCは、細胞生存及び/若しくは増殖を促進する遺伝子産物(本開示のMYCタンパク質を含むがこれに限定されない)、並びに/又はHSCのアポトーシスを阻害するタンパク質(本開示のBcl−2タンパク質を含むがこれに限定されない)で処理されうる。いくつかの実施形態において、このMYCタンパク質はPTDを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、このBcl−2タンパク質はPTDを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される任意の方法によって取得及び/又は産生されたHSCは、本開示のMYCタンパク質の少なくとも1つの機能を一時的にアップレギュレーションすることができる1つ以上の化合物(所望により外因性タンパク質)で処理されうる。いくつかの実施形態において、このMYCタンパク質はPTD−MYC融合タンパク質である。特定の実施形態において、このPTD−MYC融合タンパク質はTAT−MYC融合タンパク質である。
【0183】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される任意の方法によって取得されたHSCは、本開示のBcl−2タンパク質の少なくとも1つの機能を一時的にアップレギュレーションすることができる1つ以上の化合物(所望により外因性タンパク質)で処理されうる。いくつかの実施形態において、この外因性Bcl−2タンパク質はPTD−Bcl−2融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、このPTD−Bcl−2融合タンパク質はTAT−Bcl−2融合タンパク質である。
【0184】
他の実施形態において、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、PTDに融合した本開示のMYCタンパク質を含む融合タンパク質(例えばPTD−MYC融合タンパク質)を含む組成物、PTDに融合した本開示のBcl−2タンパク質を含む融合タンパク質(例えばPTD−Bcl−2融合タンパク質)を含む組成物、又はこれら両方で処理される。
【0185】
したがって、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、胚性幹細胞(ES細胞)、胎児幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、骨髄、末梢血、アフェレーシスを行った末梢血細胞、白血球分離を行った末梢血細胞、臍帯血、羊水、培養HSC細胞、不死化HSC細胞株、又は条件的不死化HSC細胞株から取得されうる。
【0186】
HSC組成物
他の実施形態において、本開示の任意の方法において使用するための好適なHSCは、組成物中に含まれる。好適なHSC含有組成物は、単離された及び/又は精製されたHSC;全骨髄;HSCの豊富な骨髄(例えば5−FU処理した骨髄);末梢血;及び臍帯血を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、そのような組成物は製薬的に許容される担体を含む。好適な製薬的に許容される担体は、被験者(例えば患者)にHSCを送達するために、製薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクルを含みうる。加えて、製薬的に許容される担体は、HSCの生存性を支持する細胞培地を含みうる。この培地は一般に、レシピエントの免疫反応を刺激しないようにするため、無血清である。担体は一般に、緩衝されているか、及び/又は発熱物質を含まない。
【0187】
いくつかの実施形態において、HSCを含む組成物の治療的有効量が、被験者の造血コンパートメント再構築を達成するために被験者に投与される。一般に、10
4〜10
6個のHSCの投与が、造血コンパートメント再構築を達成するのに充分である。特定の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方をHSC移植レシピエントに投与することによって、造血コンパートメント再構築を達成するのに必要なHSCの数を減らすことができる。例えば、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方の治療的有効量をHSC移植レシピエントに投与することによって、MYC組成物及び/又はBcl−2組成物を投与されていないHSC移植レシピエントにおける造血コンパートメント再構築に必要なHSCの量に比べて、造血コンパートメント再構築を達成するのに必要な本開示のHSC組成物中のHSCの治療的有効量を、約10%以上〜約75%以上減らすことができる。
【0188】
特定の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方の治療的有効量をHSC移植レシピエントに投与することによって、MYC組成物及び/又はBcl−2組成物を投与されていないHSC移植レシピエントにおける造血コンパートメント再構築の達成に必要なHSCの量に比べて、造血コンパートメント再構築を達成するのに必要な本開示のHSC組成物中のHSCの治療的有効量を、約10%以上〜約75%以上、例えば、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、又はそれ以上のパーセンテージで、減らすことができる。
【0189】
特定の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方の治療的有効量で移植群を処理することによって、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方で前処理されたHSCを受け取っていないHSC移植レシピエントにおける造血コンパートメント再構築の達成に必要なHSCの量に比べて、造血コンパートメント再構築を達成するのに必要なHSCの治療的有効量を、約10%以上〜約75%以上、例えば、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、又はそれ以上のパーセンテージで、減らすことができる。
【0190】
本開示のHSC組成物及びHSC群は一般に、被験者(例えば患者)の体内に、任意の好適な方法(注入及び移植を含むがこれらに限定されない)によって投与される。例えば、HSCは、本開示のHSC組成物が入った注射器を使用して、作用が意図される組織内に直接注入されうる。あるいは、本開示のHSC組成物は、HSC組成物が入った注射器に取り付けられたカテーテル(例えば中心静脈カテーテル)を経由して送達されうる。
【0191】
HSC移植
更なる実施形態において、本開示のHSC組成物及びHSC群は一般に、HSC移植術のプロセスにおける一工程として、造血幹細胞(HSC)移植を必要とする被験者に投与される。特定の好ましい実施形態において、この被験者は、HSC移植を必要としているヒト被験者である。他の実施形態において、この被験者は任意の非ヒト動物であり、実験/研究動物、齧歯類、ペット、家畜、農場動物、使役動物、荷物を運ぶ動物、希少又は絶滅危惧種、競走用動物、動物園動物、サル、霊長類、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びニワトリを含むがこれらに限定されない。
【0192】
HSC移植術は、骨髄破壊的HSC移植でありうる。骨髄破壊は一般に、HSC移植レシピエントの内因性造血コンパートメントのアブレーション又は抑制を指す。骨髄破壊はHSC移植の前に行われる。血液疾患(例えば血液のがん)を患うHSC移植レシピエントにおいて、骨髄破壊は、その疾患の根絶を助けるために実施されうる。骨髄破壊はまた、移植されたHSCの拒絶のリスク(例えば移植片対宿主病)を低減する一助とするために、HSC移植レシピエントの内因性免疫系を抑制するために実施されうる。当該技術分野で周知の骨髄破壊の任意の方法を使用することができる。骨髄破壊手順の例としては、化学療法、放射線照射、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0193】
あるいは、HSC移植術は非骨髄破壊的でありうる。非骨髄破壊的手順では、HSC移植前に、より低用量の化学療法及び/又は放射線をレシピエントに使用する。
【0194】
HSC移植を必要とする被験者は、HSC移植適応を呈する被験者を含む。HSC移植適応の例としては、悪性血液疾患、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ腫、無痛性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経芽腫、網膜芽腫、シュバッハマン・ダイアモンド症候群、脳腫瘍、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、再発胚細胞腫瘍、血液疾患、異常ヘモグロビン症、自己免疫疾患、若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、重症複合免疫不全、不良な幹細胞を伴う先天性好中球減少症、重度の再生不良性貧血、鎌状赤血球症、骨髄形成異常症候群、慢性肉芽腫症、代謝障害、ハーラー症候群、ゴーシェ病、大理石骨病、乳児性悪性大理石骨病、心臓病、HIV、及びAIDSが挙げられるがこれらに限定されない。加えて、HSC移植を必要とする被験者には、臓器移植を受けた被験者も含まれうる。
【0195】
造血コンパートメント細胞形成の増進
本開示の他の態様は、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与することにより、及び/又は、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理したHSC群を投与することにより、これらを必要としている被験者の体内の造血コンパートメント細胞形成を増進することに関する。いくつかの実施形態において、造血コンパートメント細胞形成の増進は、造血コンパートメント再構築の増進を含む。いくつかの実施形態において、造血コンパートメント細胞形成の増進は、造血コンパートメント自家再構築の増進を含む。
【0196】
造血コンパートメント再構築の増進
特定の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方で前処理されたHSC群を、HSC移植を必要としている被験者に投与することによって、被験者の造血コンパートメント再構築が増進される。他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を、HSC移植を受けたか又はこれから受ける被験者に投与することによって、被験者の造血コンパートメント再構築が増進される。例えば、HSCを、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で前処理してから、このHSCを投与することによって、あるいは、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与することによって、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方で前処理していないHSCを投与された被験者、あるいは、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与されていない被験者に比べて、被験者体内での、造血コンパートメント再構築の速度を改善し、形成される造血コンパートメント細胞の量を増加させ、あるいは造血コンパートメント細胞の喪失を減少させる。
【0197】
好ましくは、HSCを被験者に投与する前にMYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方でHSCを前処理すること、あるいは、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を被験者に投与することによって、前処理されたHSCを投与されていない、あるいはMYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与されていない被験者における造血コンパートメント再構築に比べて、被験者体内の造血コンパートメント再構築が加速される(すなわち速度が増大する)。
【0198】
本明細書で使用されるとき、「造血コンパートメント再構築の加速」は、造血コンパートメント内の1つ以上の血球系列を約25%以上〜約100%以上再構築するのに必要な時間の短縮を指し、この血球系列には、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、及び樹状細胞;並びにリンパ系(T細胞、B細胞、NKT細胞、及びNK細胞を含むがこれらに限定されない)が含まれるがこれらに限定されない。例えば、造血コンパートメントの再構築に必要な時間を8週間から4週間へと短縮すると、50%の加速を達成したことになる。
【0199】
本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方での前処理、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方の投与によって、HSC移植を受けたか又はこれから受ける被験者の体内における造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における造血コンパートメント再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージでの加速が達成されうる。
【0200】
本明細書に記述される際、造血コンパートメント再構築は、T細胞コンパートメント再構築、B細胞コンパートメント再構築、NK細胞コンパートメント再構築、骨髄系細胞コンパートメント再構築、及び好中球回復を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用されるとき、用語「T細胞コンパートメント」は、未熟、成熟、未分化、及び分化した全てのT細胞を含む、被験者体内の細胞コンパートメントを指す。「T細胞コンパートメント」には、T細胞前駆細胞、プロT細胞、プレT細胞、ダブルポジティブT細胞、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞毒性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、及びガンマデルタT細胞が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用されるとき、用語「B細胞コンパートメント」は、未熟、成熟、未分化、及び分化した全てのB細胞を含む、被験者体内の細胞コンパートメントを指す。「B細胞コンパートメント」には、B細胞前駆細胞、プロB細胞、早期プロB細胞、後期プロB細胞、大型プレB細胞、小型プレB細胞、未熟B細胞、成熟B細胞、形質B細胞、メモリーB細胞、B−1細胞、B−2細胞、辺縁帯B細胞、及び濾胞B細胞が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用されるとき、用語「NK細胞コンパートメント」は、未熟、成熟、未分化、及び分化した全てのナチュラルキラー(NK)細胞を含む、被験者体内の細胞コンパートメントを指す。「NK細胞コンパートメント」にはNK細胞が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「骨髄系細胞コンパートメント」は、未熟、成熟、未分化、及び分化した全ての骨髄系細胞を含む、被験者体内の細胞コンパートメントを指す。「骨髄系細胞コンパートメント」には、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、及び樹状細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0201】
したがって、特定の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者におけるT細胞コンパートメント再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速されたT細胞コンパートメント再構築をもたらす。
【0202】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者におけるNKT細胞再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速されたNKT細胞再構築をもたらす。
【0203】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者におけるB細胞コンパートメント再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速されたB細胞コンパートメント再構築をもたらす。
【0204】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者におけるNK細胞コンパートメント再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速されたNK細胞コンパートメント再構築をもたらす。
【0205】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における骨髄系細胞コンパートメント再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された骨髄系細胞コンパートメント再構築をもたらす。
【0206】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における単球再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された単球再構築をもたらす。
【0207】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者におけるマクロファージ再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速されたマクロファージ再構築をもたらす。
【0208】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における好塩基球再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された好塩基球再構築をもたらす。
【0209】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における好酸球再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された好酸球再構築をもたらす。
【0210】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における赤血球再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された赤血球再構築をもたらす。
【0211】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における巨核球再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された巨核球再構築をもたらす。
【0212】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における血小板再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された血小板再構築をもたらす。
【0213】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における樹状細胞再構築に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された樹状細胞再構築をもたらす。
【0214】
他の実施形態において、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方で前処理されたHSCを投与された、又は本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与された、HSC移植レシピエントにおける、加速された造血コンパートメント再構築は、前処理されたHSCを投与されていない、又はMYC組成物、Bcl−2組成物、若しくはこれら両方を投与されていない被験者における好中球回復に比べて、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%、又はそれ以上のパーセンテージで加速された好中球回復をもたらす。
【0215】
増進された造血コンパートメントの自家再構築
他の実施形態において、自家再構築を必要としている被験者に本開示のMYC組成物を投与することによって、造血コンパートメントの自家再構築が増進される。例えば、MYC組成物の投与によって、MYC組成物を投与されていない被験者に比べて、被験者体内の自家再構築の速度を改善し、形成される造血コンパートメント細胞の量を増加させ、又は造血コンパートメント細胞の喪失を減少させることができる。
【0216】
本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を投与することによって、MYC組成物、Bcl−2組成物、又はこれら両方を投与されていない被験者における造血コンパートメントの自家再構築に比べ、約25%以上〜約500%以上、例えば、約25%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約400%以上、約500%以上、又はそれ以上、被験者体内の造血コンパートメントの自家再構築を増進することができる。
【0217】
本明細書に記述されるように、造血コンパートメントの自家再構築には、T細胞コンパートメントの自家再構築、B細胞コンパートメントの自家再構築、NKT細胞の自家再構築、及びNK細胞コンパートメントの自家再構築;骨髄系細胞コンパートメントの自家再構築、例えば単球自家再構築、マクロファージ自家再構築、好塩基球自家再構築、好酸球自家再構築、赤血球自家再構築、巨核球自家再構築、血小板自家再構築、及び樹状細胞自家再構築;並びに好中球回復が挙げられるがこれらに限定されない。
【0218】
組成物製剤
本開示の特定の態様は、本開示のHSCの前処理のため、及びHSC移植を必要としている被験者の処理のための、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を含む組成物に関する。他の態様は、必要としている被験者の造血コンパートメント再構築を達成するためのHSCを含む第1の組成物、及び、被験者の造血コンパートメント再構築を増進するための本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を含む第2の組成物に関する。本開示の他の態様は、必要としている被験者体内の造血コンパートメントの自家再構築を増進するための、本開示のMYC組成物、本開示のBcl−2組成物、又はこれら両方を含む組成物に関する。
【0219】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体を用いて従来の方法で製剤され、この担体には例えば、活性化合物の製薬的使用に好適な調製への加工を促進する賦形剤及び助剤が挙げられる。好適な製薬的に許容される担体には、生理食塩水、緩衝水溶液、溶媒、及び/又は分散媒体が挙げられるがこれらに限定されない。そのような担体の使用は当該技術分野で周知である。この担体は好ましくは無菌である。いくつかの実施形態において、担体は、製造及び保管条件下で安定であり、微生物(例えば細菌及び真菌)の混入操作を防ぐように、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、又はチメロサール(これらに限定されない)を使用して保存される。
【0220】
製薬的に許容される担体として使用できる材料及び溶液の例としては、(1)糖(例えばラクトース、グルコース及びショ糖)、(2)デンプン(例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン)、(3)セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース)、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)賦形剤(例えばココアバター及び座薬用ろう、(9)油(例えばピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油)、(10)グリコール(例えばプロピレングリコール)、(11)ポリオール(例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール)、(12)エステル(例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、(13)寒天、(14)緩衝剤(例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、及び/又はポリ無水物、並びに(22)その他の製薬的製剤に採用される無毒性の適合性物質、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0221】
本開示の組成物の適切な製剤は、選択される投与経路に依存しうる。本明細書に記述される製薬的組成物の要約は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Nineteenth Ed(Easton、Pa.:Mack Publishing Company、1995);Hoover、John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,Easton、Pa.1975;Liberman、H.A.and Lachman、L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.,1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に記載されている。
【0222】
本開示の組成物は、本開示の化合物(例えばHSC又はMYC組成物若しくはBcl−2組成物)の被験者又は細胞への投与を促進しうる。本開示の方法の特定の実施形態において、本明細書に記述される化合物の治療的有効量は、治療される疾患、疾病又は病状を有する患者に対し、製薬的組成物中で投与される。いくつかの実施形態において、この被験者はヒト患者である。他の実施形態において、被験者は非ヒト動物であり、これには、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サル、ラット、マウス、及び同様物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0223】
本開示のHSC組成物、MYC組成物含有組成物、及び/又はBcl−2組成物含有組成物は、単独で、又は1つ以上の追加治療薬と組み合わせて利用することができる。例えば、HSC移植後に成熟した造血系を再構築するのに必要な時間を短縮するのに役立つことが知られている、サイトカイン、増殖因子、抗体、及び/又は小分子を、HSC、MYC組成物含有組成物、及び/又はBcl−2組成物含有組成物と組み合わせて投与することができる。例えば、E−セレクチン発現に影響する酵素を標的とするモノクローナル抗体及び/又は小分子調節因子は、HSC移植後の骨髄ニッチへのHSC定着を改善しうる。その他の例としては、接着タンパク質に影響する抗体又は小分子(β6インテグリン、G−MCSF、G−CSF(is the same)、及びEpo)が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、本開示の方法の特定の実施形態は更に、少なくとも1つのサイトカイン、増殖因子、抗体、及び/又は小分子調節因子を含む第3の組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、このサイトカイン及び/又は増殖因子組成物は更に、製薬的に許容される担体を含む。
【0224】
本開示の組成物は、被験者に対し、任意の好適な方法で投与することができ、これには例えば、経口、非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内)、経鼻、経頬、経直腸、又は経皮の、複数の投与経路のうち1つ以上が含まれるがこれらに限定されない。
【0225】
本開示の組成物製剤には、水性液体分散液、油性乳剤、自己乳化分散液、固溶体、リポソーム分散液、エアロゾル、固体投与形態、粉末、即時放出製剤、制御放出製剤、急速溶解製剤、錠剤、カプセル、ピル、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、マルチパーティクル製剤、及び急速放出製剤と制御放出製剤の混合が挙げられるがこれらに限定されない。
【0226】
本開示の製薬的組成物(例えばPTD−MYC組成物、PTD−Bcl−2組成物、又はサイトカイン及び/若しくは増殖因子組成物)は、所望により、従来の方法で製造され、これには従来の混合、溶解、顆粒化、ドラジェ製造、粉末化(levigating)、乳化、カプセル化、トラップ、又は圧縮プロセスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0227】
いくつかの実施形態において、本開示の製薬的組成物(例えばPTD−MYC組成物、PTD−Bcl−2組成物、又はサイトカイン及び/若しくは増殖因子組成物)は、正確な用量を単回投与するのに好適な単位用量形態にされる。単位用量形態においては、この製剤は、適切な量の1つ以上の化合物を含む単位用量に分けられる。いくつかの実施形態において、単位用量は、分離した量の製剤を含むパッケージの形態である。非限定的な例としては、パッケージされた錠剤又はカプセル、及びバイアル又はアンプル内の粉末が挙げられる。水性懸濁液組成物は所望により、再封止できない単回用量容器にパッケージされる。いくつかの実施形態において、複数用量の再封止可能容器が使用される。特定の実施形態において、複数用量容器は、組成物中に保存剤を含む。非経口的注入の製剤は、単回用量形態(アンプルが挙げられるがこれに制限されない)で提供することができ、又は、保存剤添加を伴って複数用量容器で提供することができる。
【0228】
下記の実施例は単に例示目的であり、本開示の態様をいかなる意味でも制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0229】
実施例1:マウスにおける造血再構築の加速
下記の実施例は、増殖させた骨髄細胞(例えばタンパク質形質導入長期造血幹細胞(ptlt−HSC))を移植した後、TAT−MYC融合タンパク質でマウスを処理した結果を示す。
【0230】
材料及び方法
週齢4〜6週の雌のC57BL/6Jマウスのコホートを、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から入手した。マウスを、経静脈的に5mg/マウスの5−フルオロウラシル(5FU)で処理した。5FU処理から5日後に、骨髄(BM)細胞を脛骨及び大腿骨から採取した。5mLの滅菌TAC緩衝液中でインキュベーションすることによって、赤血球を溶解させた(135mM NH4CL、17mM Tris pH 7.65)。骨髄細胞を、5μg/mLの組み換えTat−MYC、及び10μg/mLの組み換えTat−Bcl−2を添加したBM培地(15% FCS、100単位/mLのPenn/Strep、MEM NEAA(Gibco)、10mM HEPES、組み換えマウスIL−3、IL−6、及びSCFを含むDMEM)中で増殖させた。Tat−融合タンパク質を補給するために48時間ごとにBM培地を交換して細胞を21日間培養した。
【0231】
150mmプレート内で、D10培地(DMEM、10% FBS、100単位/mLのPenn/Strep、MEM NEAA(Gibco)、2mMのL−グルタミン(Gibco))中、プレート当たり12×10
6個の細胞となるように293FT細胞を接種することによりサイトカイン類を調製した。リン酸カルシウムを用い、10μgのpcDNA3.1−SCF、10μgのpcDNA3.1−IL3、及び10μgのpcDNA3.1−IL6又は10μgのpcDNA3.1−TPO、10μgのpcDNA3.1−Flt3−L、及び10μgのpcDNA3.1−GM−CSFを含む、プレート当たり全体で30μgのDNAで細胞をトランスフェクトした(Young、R.M.,et al.(2008).Future Oncology、4、591〜4.)。翌日、培地を除去し、100mL D10培地に交換した。細胞を37℃/5% CO2で4〜5日間インキュベーションした。培地を採取し、無菌的に濾過し、30mLアリコートに分けて−20℃で冷凍した。
【0232】
21日後、5×10
3の増殖させた骨髄細胞を、直前に350Radの線量で致死レベル未満の放射線を照射した、C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウス(Jackson Laboratory)に尾静脈経由で骨髄細胞を注入することによって移植した。増殖させた細胞は、3回PBSで洗浄してから、200μL PBS中で尾静脈経由で注入した。
【0233】
24時間後、マウスの1コホートに、コーン油中に乳化させた10μgのTAT−MYCを筋肉注射した。この乳剤は、1mLのコーン油に30μgのTat−MYCを添加することにより調製した。注入の直前に、Tat−MYCを含むコーン油を、第1の注射器から第2の注射器へと、2ウェイストップコックを通して数回通過させた。10μgのTat−MYCを含む乳剤300μLを、尾の側面からマウスに筋肉注射した。
【0234】
リンパ系コンパートメントの再構築を、移植から4週間後及び8週間後に尾の静脈穿刺によって採取された末梢血サンプルのフローサイトメトリー解析(FACS)によって観察した。末梢血単核細胞(PBMC)を、FACSにより、TCRβ及びB220の発現について観察した。
【0235】
結果
図1及び3に示すように、TAT−MYCで処理したマウスでは、エクスビボで増殖させた骨髄細胞を骨髄移植した後に、T細胞の加速した発生が認められた。Rag−1
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、5×10
3個の増殖させた骨髄細胞を移植した(
図1のC及びD;
図3のC及びD)。各コホートで照射及び移植を行ったマウスの半数に、移植から24時間後に10μgのTAT−MYCを注入した(
図1のD及び
図3のD)。野生型(非処理及び放射線非照射)のRag−1
−/−マウス(
図1のA、0.9% TCRβ
+細胞、及び
図3のA、0.8% TCRβ
+細胞)及びC57BL/6マウス(
図1のB、34.3% TCRβ
+細胞、及び
図3のB、34.3% TCRβ
+細胞)のFACS解析も、コントロールとして行った。
【0236】
4週間後(
図1)及び8週間後(
図3)にT細胞再構築について末梢血のFACS解析によりマウスを試験した。
図1のDは、TAT−MYCで処理したマウス(5.6% TCRβ
+細胞)の末梢血中のT細胞の4週間後のレベルを、TAT−MYCを注入していないコントロール(
図1のC)(0.2% TCRβ
+細胞)と比較して示す。
図3のDは、TAT−MYCで処理したマウス(13.1% TCRβ
+細胞)の末梢血中のT細胞の8週間後のレベルを、TAT−MYCを注入していないコントロール(
図3のC)(4.2% TCRβ
+細胞)と比較して示す。4週間後、TAT−MYCを注入したマウスは、TAT−MYCを注入していないコントロールマウスの8週間後と同様のT細胞レベルを示した。T細胞回復までの平均時間は8〜10週間であるため、このことは約50〜60%の加速を示す。
【0237】
図2及び4に示すように、TAT−MYCで処理したマウスでは、増殖させた骨髄細胞を骨髄移植した後に、B細胞の発生の加速も認められた。C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、5×10
3個の増殖させた骨髄細胞を移植した。各コホートの照射及び移植を受けたマウスの半数に、移植から24時間後に10μgのTAT−MYCを注入した(
図2のD及び
図4のD)。野生型(非処理及び放射線非照射)のRag−1
−/−マウス(
図2のA、1.15% B220
+細胞、及び
図4のA、1% B220
+細胞)及びC57BL/6マウス(
図2のB、21.4% B220
+細胞、及び
図4のB、34.3% B220
+細胞)のFACS解析もコントロールとして行った。
【0238】
4週間後(
図2)及び8週間後(
図4)に末梢血のFACS解析によりB細胞再構築についてマウスを試験した。
図2のDは、TAT−MYCで処理したマウス(12.1% B220
+細胞)の末梢血中のT細胞の4週間後のレベルを、TAT−MYCを注入していないコントロール(
図2のC)(0.3% B220
+細胞)と比較して示す。
図4のDは、TAT−MYCで処理したマウス(5.4% B220
+細胞)の末梢血中のT細胞の8週間後のレベルを、TAT−MYCを注入していないコントロール(
図4のC)(1.2% B220
+細胞)と比較して示す。4週間後、TAT−MYCを注入したマウスは、TAT−MYCを注入していないコントロールマウスの8週間後よりも高いB細胞レベルを示した。B細胞回復までの平均時間は8〜12週間であるため、このことは約50〜67%の加速を示している。
【0239】
実施例2:マウスにおける造血系再構築の加速
以下の実施例は、新たに分離した全骨髄の移植後に、TAT−MYC融合タンパク質でマウスを処理した結果を示す。
【0240】
材料及び方法
マウスの全骨髄移植において、ドナー及びレシピエントはいずれもC57/BL6を遺伝的背景とするものを用いた。
【0241】
2匹のドナー野生型C57/BL6マウスから得た大腿骨及び脛骨から骨髄細胞を流し出して採取した。採取した細胞をD10完全培地(DMEMに、10%の加熱不活性化ウシ胎児漿液、100単位/mLのペニシリン/ストレプトマイシン、10μg/mLのL−グルタミン、及びMEM NEAAを添加したもの)に移した。骨髄の吸引物を解離させて単細胞懸濁液にし、遠心分離によりペレットにした。低張性緩衝液(135mMのNH
4Cl、17mMのTris、pH 7.65)中で、細胞懸濁液をインキュベーションすることにより、赤血球を溶解させた。残りの細胞を次にD10培地で洗浄した後、PBSで2回洗浄し、同日にRag−1
−/−マウスに移植するまで冷温に保った。
【0242】
レシピエントのRag−1
−/−マウスを、350Radで放射線照射した(全身照射)。レシピエントマウスに1×10
6個の全骨髄細胞を尾静脈注入により注入した。骨髄細胞移植から24時間後、実施例1で述べたように300μLのコーン油に乳化させた10μgのTAT−MYCをマウスに投与した。TAT−MYCは、筋肉注射により投与した。
【0243】
リンパ系コンパートメントの再構築を、尾の静脈穿刺によって採取した末梢血サンプルのフローサイトメトリー解析(FACS)によって観察した。具体的には、CD4又はCD8発現T細胞(TCRβ)、及びB細胞(CD19及びB220発現細胞)の出現について試料を観察した。
【0244】
キメラマウスから採取した脾臓細胞試料も、分裂促進刺激に応答する能力について測定した。脾臓由来のT細胞及びB細胞を、CFSEで標識し、CD3(T細胞)に対する抗体、又はIgM及びCD40(B細胞)に対する抗体のいずれかで活性化させた。細胞を、刺激から72時間後に、FACSを使用してCFSEシグナルの希釈によって測定される分裂について評価した。
【0245】
結果
マウス5匹(Rag−1
−/−マウス)ずつのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、雌のC57/BL6マウスから採取した10
6個の全BM細胞を移植した。移植レシピエントマウスには、24時間後にTAT−MYCを注入するか、又は処理を行わなかった。キメラマウスは飼育施設に保持し、4週間観察した。4週間後、マウスを安楽死させ、PBMC及び脾臓を採取した。この脾臓を使用して、単細胞懸濁液を作製した。この細胞を、ネズミCD4及びCD8に対する蛍光抗体で染色し、フローサイトメトリーで解析した。
【0246】
図5及び6は、新たに分離された全骨髄移植後にTAT−MYCで処理したマウスにおけるT細胞の発生の加速を示している。C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウスのコホートに致死レベル未満の放射線を照射し、1×10
6個の全骨髄細胞を移植した。移植を行ったコホートの半数に、移植24時間後にTAT−MYCを注入した。
【0247】
図5のAは、放射線照射も、細胞移植も、Tat−MYC処理も行わなかったコントロールRag−1
−/−マウスにおける末梢血CD4及びCD8のT細胞のレベルを示す(0.03% CD4
+及び0.8% CD8
+細胞)。
図5のBは、コントロールとしての、非処理及び放射線非照射の野生型C57BL/6マウスの末梢血CD4及びCD8のT細胞のレベルを示す(13.1% CD4
+及び11.1% CD8
+細胞)。
図5のDは、TAT−MYCで処理したマウスの末梢血中のCD4及びCD8発現T細胞の検出(14.9% CD4
+及び8.6% CD8細胞)を、TAT−MYCを注入していないマウス(
図5のC)と比較して示す(4.2% CD4
+及び3.2% CD8細胞)。4週間後では、全骨髄移植から24時間後にTAT−MYCで処理しマウスは、野生型C57BL/6マウスとほぼ同じレベルのCD4及びCD8発現T細胞を有している。
【0248】
図6は、上記及び
図5に示されるマウスの全コホートについてT細胞のパーセンテージをグラフで示したものである。
図6のAは、野生型C57BL/6(第1列)、放射線照射及び移植を行ったがTAT−MYC処理は行わなかったRag−1
−/−マウス(第2列)、並びに、放射線照射、移植を行い、10μg TAT−MYCを注入したRag−1
−/−マウス(第3列)における移植4週間後の末梢血中のCD4
+細胞のパーセントを示す。
図6のBは、野生型C57BL/6(最初の列)、放射線照射及び移植を行ったがTAT−MYC処理は行わなかったRag−1
−/−マウス(第2列)、並びに、放射線照射、移植を行い、10μg TAT−MYCを注入したRag−1
−/−マウス(第3列)における移植4週間後の末梢血中のCD8
+細胞のパーセントを示す。
【0249】
図7及び8は、新たに分離された全骨髄移植の後にTAT−MYCで処理したマウスにおけるB細胞の発生の加速を示している。C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、1×10
6個の全骨髄細胞を移植した。移植コホートの半数に、移植から24時間後にTAT−MYCを注入した。
【0250】
図7のAは、放射線照射も、細胞移植も、TAT−MYC処理も受けなかったコントロールRag−1
−/−マウスにおける末梢血CD19×B220 B細胞のレベルを示す(0.2% CD19
+×B220
+細胞)。
図7のBは、コントロールとしての、非処理及び放射線非照射の野生型C57BL/6マウスの末梢血CD19×B220 B細胞のレベルを示す(25.8% CD19
+×B220
+細胞)。
図7のDは、TAT−MYCで処理されたマウスの末梢血中のCD19×B220発現B細胞検出(5.2% CD19
+×B220
+細胞)を、TAT−MYCを注入されていないマウス(
図7のC)と比較して示す(1.4% CD19
+×B220
+細胞)。4週間後では、全骨髄移植から24時間後にTAT−MYCで処理したマウスは、TAT−MYCで処理していない移植コントロールマウスと比較して有意に高いCD19×B220 B細胞のレベルを有している。
【0251】
図8は、上記及び
図7に示されるマウスの全コホートについてB細胞パーセンテージをグラフで示したものである。
図8のAは、野生型C57BL/6(第1列)、放射線照射及び移植を行ったがTAT−MYC処理は行わなかったRag−1
−/−マウス(第2列)、並びに、放射線照射、移植を行い、10μg TAT−MYCを注入したRag−1
−/−マウス(第3列)における移植4週間後の末梢血中のCD19×B220
+細胞のパーセントを示す。
【0252】
図9は、全骨髄を移植し、移植24時間後にTAT−MYCで処理したキメラマウスの体内で発生したT細胞及びB細胞が、それらの抗原受容体の刺激後に機能的でありかつ増殖したことを示す。脾臓由来のT細胞及びB細胞をCFSEで標識し、CD3(T細胞)に対する抗体、又はIgM及びCD40(B細胞)に対する抗体のいずれかで活性化した。細胞を、刺激から72時間後に、FACSを使用してCFSEシグナルの希釈によって測定される分裂について評価した。
【0253】
図9のAに示すように、1×10
6個の全骨髄細胞を移植したがTAT−MYCによる処理を行っていないマウスの脾臓細胞の33.3%が、抗CD3の刺激によりT細胞芽球化を示している。1×10
6個の全骨髄細胞を移植し、TAT−MYCによる処理を行ったキメラマウスの脾臓細胞では、CD3刺激後に36.6%のT細胞芽球化を示している(
図9のC)。同様に、
図9のBは、1×10
6個の全骨髄細胞を移植したがTAT−MYCによる処理を行わなかったマウスの脾臓細胞の6.92%が、抗CD40及び抗IgMの刺激によりB細胞芽球化を示したことを示している。1×10
6個の全骨髄細胞を移植し、TAT−MYCによる処理を行ったキメラマウスの脾臓細胞は、CD40及びIgMによる刺激後に15.8%のB細胞芽球化を示している(
図9のD)。これらのデータは、TAT−MYC処理を行ったHSCキメラマウスから得られた成熟リンパ系細胞が、抗原受容体を介した活性化後、芽球化して細胞分裂を行う能力を有したことを示している。
【0254】
実施例3:5−フルオロウラシルで処理したマウスにおける造血再構築の誘導
以下の実施例は、造血コンパートメントに対して毒性を示すことが知られている化学療法薬5−フルオロウラシル(5−FU)を投与した後に、TAT−MYC融合タンパク質でマウスを処理した結果を示す。
【0255】
緒言
様々な環境的障害又は疾病等により生じる骨髄不全を回復させるための現行の手法は、支持療法としての増殖因子の投与及び赤血球輸液に基本的に依存している。これらの手法の最終的な目標は、残存する内因性HSCに造血コンパートメントを動員して再増殖させる(自家再構築)ように促すことである。しかしながら現行の手法は非効率的であり、多くの場合、骨髄破壊的骨髄移植を行う必要を遅らせるだけのものである。
【0256】
加えて、化学療法薬及び放射線照射に対するHSCの感受性が高いため、例えば固形腫瘍の患者に適用可能な各治療の用量は、これまで限定的であった。HSC及び造血コンパートメントの喪失は、がん患者における治療にともなう毒性の初期徴候の1つである。がんに使用される治療薬からHSCコンパートメントを保護することができれば、そのような治療を送達するのに現在用いられている手法を大幅に変えることができる。
【0257】
少数のドナー細胞によるHSC移植との関連において、TAT−MYCを用いた実施例1及び2の上記の結果は、TAT−MYCが骨髄不全症候群患者の体内の造血コンパートメントの自家再構築を促進するうえでも有用でありうることを示している。理論に拘束されるものではないが、TAT−MYCによる処理は、残存する少数の常在(resident)HSCを標的とし、そのようなHSCの分裂を誘導して分化した造血系を生じさせうると考えられる。
【0258】
材料及び方法
この実験では、週齢4〜6週の雌のC57/BL6野生型(WT)マウスを使用した。マウス5匹のコホートを、5−フルオロウラシル(5mg/匹)単独で経静脈注入により処理するか、又はその後に10μg/匹のTAT−MYC又は10μg/匹のTAT−CREで処理した(5FUチャレンジの24時間後)。これらのタンパク質はいずれも、筋肉注射の直前にコーン油中に乳化した。いくつかの実験において、マウスは10μg/匹のTAT−MYC又はTAT−CREのいずれかで前処理した(5FUチャレンジの48時間前)。
【0259】
尾の静脈穿刺によって採取した末梢血サンプルのフローサイトメトリー解析(FACS)によってリンパ系コンパートメントの再構築を観察した。具体的には、CD4又はCD8発現T細胞(TCRβ)、及びB細胞(CD19及びB220発現細胞)の出現について試料を観察した。
【0260】
結果
環境的障害のモデルとして、またより広くは任意の骨髄不全の治療モデルとして5−フルオロウラシルによるチャレンジを用いた。
図10、11及び12は、5−フルオロウラシルチャレンジから24時間後にTAT−MYCで処理したマウスの、2週間後におけるT細胞の自家再構築の加速を示している。C57BL/6マウスのコホートを、5FUでチャレンジし、次いで処理を行わないままとするか(
図10のA)、又は5FUチャレンジから24時間後にコントロールタンパク質TAT−CRE(
図10のB)若しくはTAT−MYC(
図10のC)を筋肉注射した。
【0261】
図10のAは、5FUチャレンジ後にTAT−CRE又はTAT−MYC処理を行わなかった、5FUチャレンジしたC57/BL6マウスにおける2週間後の末梢血CD4及びCD8陽性T細胞のレベルを示す(3.9% CD4
+及び2.4% CD8
+細胞)。
図10のBは、5FUチャレンジ後に10μg TAT−CRE処理を行った、5FUチャレンジしたC57/BL6マウスにおける末梢血CD4及びCD8陽性T細胞のレベルを示す(5.5% CD4
+及び2.55% CD8
+細胞)。
図5のCは、5FUチャレンジ後に10μg TAT−MYC処理を行った、5FUチャレンジしたC57/BL6マウスにおける末梢血CD4及びCD8陽性T細胞のレベルを示す(14.9% CD4
+及び9.69% CD8
+細胞)。
【0262】
図11及び12は、上記及び
図10に示されるマウスの全コホートのT細胞パーセンテージをグラフで示したものである。
図11は、いずれのタンパク質でも処理していないC57BL/6マウス(第1列)、10μg TAT−MYCを注入したC57BL/6マウス(第2列)、及び10μg TAT−CREを注入したC57BL/6マウス(第3列)における、5FUチャレンジから2週間後の末梢血中のCD4
+細胞のパーセントを示す。
図12は、いずれのタンパク質でも処理していないC57BL/6マウス(第1列)、10μg TAT−MYCを注入したC57BL/6マウス(第2列)、及び10μg TAT−CREを注入したC57BL/6マウス(第3列)における、5FUチャレンジから2週間後の末梢血中のCD8
+細胞のパーセントを示す。
【0263】
他の実験において、5−フルオロウラシルによるチャレンジは、化学療法又は放射線治療の副作用に対するHSCの保護を含む、環境的障害に対する保護のモデルとして使用される。
【0264】
C57BL/6マウスのコホートを、非処理のままとするか、TAT−MYCの筋肉注射による処理を行うか、又はコントロールタンパク質(TAT−CRE)の筋肉注射による処理を行う。5mgの5−FUを24時間後に経静脈投与する。5FUチャレンジ後の異なる時点で(所望により3日目、5日目、7日目又はそれ以降)、末梢血サンプルのFACS解析により、血中のT細胞(CD4
+及びCD8
+ T細胞)の頻度を評価する。TAT−MYCで前処理したマウスと、コントロールタンパク質TAT−CREで前処理したマウスとの間の比較により、TAT−MYCが造血系に化学的保護を与えるか否かが示される。
【0265】
実施例4:遺伝毒性ストレス剤で処理したマウスにおける造血再構築の誘導
以下の実施例では、HSCに対する、化学的及び放射線による2つの形態の遺伝毒性ストレスを用いる。週齢及び性別が一致したC57/BL6マウスを、TAT−MYC又はコントロールタンパク質のいずれかで処理し、次に(5FU)若しくはシクロホスファミド(CTX)などの化学療法薬、又は致死的用量未満の放射線に曝露する。それぞれの刺激に曝露した5〜7日後から、マウス末梢血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度の変動を観測する。
【0266】
インビボでの造血系への化学的保護を与えるためのTAT−MYCの使用
10匹のC57/BL6マウスのコホートに、TAT−MYCを注入するか、ネガティブコントロール(例えばTAT−CRE)を注入するか、又は非処理のままとする。24、48、又は72時間後(所望により1〜72時間の間の任意の時点)、各コホートの5匹のマウスを、5mg/匹の5FU又は4mg/匹のシクロホスファミド(CTX)で処理する。コホートの他の5匹は、TAT−MYC、TAT−CRE、又は無注入の初期処理のみのままとする。末梢血を静脈穿刺により採取し、血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度をFACSで解析する。
【0267】
5FU、ブスルファンA又はシクロホスファミド(CTX)のチャレンジの前にTAT−MYCで処理したマウスの末梢血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度の変化が、これら化学療法薬に曝露した他のすべてのマウスで観察される成熟T細胞及びB細胞の頻度の顕著な低下と比べて、小さくなっていることについて評価を行う。あるいは、5FU、ブスルファンA又はCTXのチャレンジの前にTAT−MYCで処理したマウスの末梢血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度を回復するまでの回復時間が、これら化学療法薬に曝露した他のすべてのマウスで観察される成熟T細胞及びB細胞の頻度の回復に要する時間長さと比べて、短縮されていることについて評価を行う。
【0268】
付加的な研究としては、TAT−MYCで処理したマウスに対する、5FU、ブスルファンA又はCTXいずれかの用量漸増(又は用量漸減)が挙げられ、これによりTAT−MYC処理により可能になる化学療法薬の用量増加パラメータが決定される。
【0269】
インビボで造血系に放射線保護を与えるためのTAT−MYCの使用
実験の構成は本質的に上記と同じである。唯一の相違点は、TAT−MYCで処理、TAT−CREで処理、又は非処理の後、化学療法剤ではなく、一定の用量範囲の放射線照射にマウスを曝露する点である。すなわち、350Rad及び600Radを、C57/BL6Jマウスに使用することができる。FACSにより、末梢血の成熟リンパ系細胞又は骨髄系細胞の変動を観察する。
【0270】
致死量未満又は致死量の放射線照射によるチャレンジの前にTAT−MYCで処理したマウスの末梢血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度の変化が、これら放射線に曝露した他のすべてのマウスで観察される成熟T細胞及びB細胞の頻度の顕著な低下と比べて、低下していることについて評価を行う。あるいは、致死量未満又は致死量の放射線照射のチャレンジの前にTAT−MYCで処理したマウスの末梢血中の成熟T細胞及びB細胞の頻度を復元するまで回復時間が、これら放射線に曝露した他のすべてのマウスで観察される成熟T細胞及びB細胞の頻度の回復に要する時間長さと比べて、短縮されていることについて評価を行う。
【0271】
付加的な研究としては、TAT−MYCで処理したマウスに対する、放射線照射量の用量漸増(又は用量漸減)が挙げられ、これによりTAT−MYC処理により可能になる放射線照射用量の増加パラメータ、及び放射線と化学療法剤との可能な組み合わせが決定される。
【0272】
実施例5:異なる経路による投与後のマウスにおける造血再構築の加速
以下の実施例は、新たに分離された全骨髄移植後の、筋肉注射又は静脈注射のいずれかにより投与したTAT−MYC融合タンパク質でマウスを処理した結果を示す。
【0273】
材料及び方法
実験は、TAT−MYCを異なる投与経路を用いて投与した点以外は実施例2に述べたのと同様にして行った。
【0274】
簡単に述べると、マウスドナー及びレシピエントはいずれも、C57BL/6を遺伝的背景とするものを用いた。2匹のドナー野生型C57/BL6マウスから得た大腿骨及び脛骨から流し出して骨髄細胞を採取した。骨髄吸引物を解離させて単細胞懸濁液にし、遠心分離によりペレットにし、赤血球を溶解した。次いで、残りの細胞を洗浄した後、同日にRag−1
−/−マウスに移植するまで低温に維持した。
【0275】
レシピエントのRag−1
−/−マウスを、350Radの放射線を照射した(全身照射)。レシピエントマウスに、尾静脈注入により、1×10
6個の全骨髄細胞を注入した。骨髄細胞移植から24時間後、マウスに、200μLのPBSに溶かした10μgのTAT−MYCの静脈注射、又は、実施例1で述べた300μLのコーン油に乳化させた10μgのTAT−MYCの筋肉注射を投与した。
【0276】
尾の静脈穿刺によって採取された末梢血試料のフローサイトメトリー解析(FACS)によってリンパ系コンパートメントの再構築を観測した。具体的には、CD4又はCD8発現T細胞(CD4×TCRβ)、及びB細胞(IgM×CD19発現細胞)の出現について試料を観測した。
【0277】
結果
マウス5匹(Rag−1
−/−マウス)ずつのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、雌のC57/BL6マウスから採取した10
6個の全骨髄細胞を移植した。この後、移植レシピエントマウスに、24時間後にTAT−MYCを注入するか、又は処理を行わなかった。キメラマウスを飼育施設で維持し、少なくとも4週間観察下に置いた。4週間後、末梢血を静脈穿刺により採取し、T及びB細胞のレベルをFACSで評価した。
【0278】
図13及び14は、新たに分離された全骨髄移植の後にTAT−MYCで処理したマウスのT細胞の発生の加速を示している。C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、1×10
6個の全骨髄細胞を移植した(
図13のC、D、及びE)。コホートの移植マウスの3分の2に、移植から24時間後に10μg TAT−MYCの静脈注射(
図13のD)又は筋肉注射(
図13のE)を行った。コントロールとして、野生型(非処理及び放射線非照射)のRag−1
−/−マウス(
図13のA、0.579% CD4×TCRβ
+細胞)及びC57BL/6マウス(
図13のB、17.5% CD4×TCRβ
+細胞)のFACS解析も行った。
【0279】
図13のD及びEは、TAT−MYCを注射していないコントロール(
図13のC)(6.39% CD4×TCRβ
+細胞)と比較した、TAT−MYCを静脈注射したマウス(32.8% CD4×TCRβ
+細胞)又はTAT−MYCを筋肉注射したマウス(18.2% CD4×TCRβ
+細胞)の末梢血中のCD4×TCRβ
+ T細胞の検出を示す。いずれの経路でTAT−MYCを注射したマウスも、野生型C57BL/6マウスとほぼ同じレベルのCD4×TCRβ
+ T細胞を有していた。
【0280】
図14は、上記及び
図13に示されるマウスの全コホートのT細胞パーセンテージをグラフで示したものである。グラフは、移植から4週間後の、野生型Rag−1
−/−マウス(NT)、放射線照射、移植を行い、TAT−MYCの静脈注射を行ったRag−1
−/−マウス(IV)、及び、放射線照射、移植を行い、TAT−MYCの筋肉注射を行ったRag−1
−/−マウス(IM)における末梢血中のCD4
+細胞のパーセントを示している。
【0281】
図15及び16は、新たに分離された全骨髄移植の後にTAT−MYCで処理したマウスのB細胞の発生の加速を示している。C57/BL6を遺伝的背景とするRag−1
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線を照射し、1×10
6個の全骨髄細胞を移植した(
図15のC、D、及びE)。コホートの移植マウスの3分の2に、移植から24時間後に10μg TAT−MYCの静脈注射(
図15のD)又は筋肉注射(
図15のE)を行った。コントロールとして、野生型(非処理及び放射線非照射)のRag−1−/−マウス(
図15のA、0.071% IgM×CD19
+細胞)及びC57BL/6マウス(
図15のB、23.5% IgM×CD19
+細胞)のFACS解析も行った。
【0282】
図15のD及びEは、TAT−MYCを注射しないコントロール(
図15のC)(1.49% IgM×CD19
+細胞)と比較した、TAT−MYC静脈注射を行った(
図15のD、2.41% IgM×CD19
+細胞)、又はTAT−MYC筋肉注射を行った(
図15のE、6.53% IgM×CD19
+細胞)マウスの末梢血中のIgM×CD19
+ B細胞の検出を示す。いずれの経路でTAT−MYCを注射した場合にも、全骨髄を移植したがTAT−MYCで処理しなかったRag−1
−/−マウスと比べて、マウスのIgM×CD19
+ B細胞レベルは高くなった。
【0283】
図16は、上記及び
図15に示されているマウスの全コホートのB細胞パーセンテージをグラフで示したものである。グラフは、移植から4週間後の、野生型Rag−1
−/−マウス(NT)、放射線照射、移植を行い、TAT−MYCの静脈注射を行ったRag−1
−/−マウス(IV)、及び、放射線照射、移植を行い、TAT−MYCの筋肉注射を行ったRag−1
−/−マウス(IM)における末梢血中のCD19×B220
+細胞のパーセントを示している。
【0284】
実施例6:TAT−MYC及びTAT−Bcl−2で増殖させたヒト臍帯血由来HSCを移植したマウスにおける造血再構築の加速
以下の実施例は、TAT−MYC及びTAT−Bcl−2を用いてインビトロで下臍帯血由来HSCを増殖させることによって、タンパク質形質導入された長期造血幹細胞(ptlt−HSC)を形成した後、致死レベル未満の放射線照射を行ったマウスに移植を行った場合の結果を示す。
【0285】
材料及び方法
地域の臍帯血バンクで処分された試料から新鮮な臍帯血細胞を入手した。ヒト細胞はすべて個人識別情報を消去し、治験審査委員会(IRB)の監視免除となるようにした。臍帯血量全量を20mLのアリコートに分け、PBSで1:1に希釈した。希釈した臍帯血(20mL)を、20mLのFicoll−Paque Plus(Amersham Biosciences、カタログ番号17−1440−03)の上に静かに置いた。細胞を60分間、900×gでスピンした。ガラス製ピペットでバフィーコートを除去し、PBSで2回洗浄した。細胞をFCB培地(Iscove(Gibco)に、10%ヒト血漿、100単位/mLペニシリン/ストレプトマイシン、SCF、IL3及びIL6を含有する培地30mL、並びに、実施例1で上記に述べたTPO、FLT3−L、及びGM−CSFを含む培地30mLを添加したもの)中に再懸濁した。
【0286】
2つのFCB増殖培養を開始した。一方の培養物はFCB培地のみを含むものとし、第2の培養物はFCB培地に5μg/mLの組み換えTat−MYC及び10μg/mLの組み換えTat−Bcl−2を添加したものとした。両方の培養物の培地を、14日間の増殖期間にわたって3日ごとに交換した。インビトロで増殖させたヒトHSCの表面表現型を、ヒト抗原CD45、CD34及びCD38に対する抗体を用いてFACS解析で評価した。
【0287】
FCB培地、又はTat−MYC及びTat−Bcl2を添加したFCB培地中で増殖させた胎児臍帯血細胞(FCB)を、直前に180Radの放射線照射を行ったNOD/SCID/γc−/−マウス(NSG)(Jackson Laboratory)に注射した。増殖させたFCBはPBSで3回洗浄し、200μL PBS中で、尾静脈経由で注入した。
【0288】
移植から8週間後、移植NSGマウスの脛骨及び大腿骨から骨髄細胞を採取した。5mLの滅菌TAC緩衝液(135mM NH
4CL、17mM Tris pH 7.65)中でインキュベーションして赤血球を溶解してからD10培地で2回洗浄した。BM細胞を、ヒト抗原CD45、CD34、CD38、CD3、CD19、CD11b及びCD33に対する抗体を用いて、フローサイトメトリーで解析した。
【0289】
安楽死させたNSGマウスから脾臓及び胸腺を採取し、機械的解離により単細胞懸濁液を作製した。細胞をTAC緩衝液(135mM NH
4CL、17mM Tris pH7.65)で処理し、赤血球細胞を溶解した。
【0290】
発明者らは、MethoCult Optimum(StemCell Technologies)上に細胞を接種し、BFU−E、CFU−M、CFU−G及びCFU−GMコロニーを生じる能力を調べることにより、NSGマウスのBMから採取したヒトHSCの機能的試験を行った。BM採取の日に、300μLのD10中に入れた10,000個のBM細胞を、4mLのMethoCultに加えた。BM細胞を含む4mLを、2つの30mMの培養皿に均等に分け、それぞれが5000個の細胞を含むようにした。この培養皿を37℃、5% CO
2中で14日間インキュベーションした。倒立顕微鏡を使用してコロニーを数え、細胞形態に基づいて識別した。
【0291】
結果
図17に示すように、Tat−MYC及びTat−Bcl2を添加したFCB培地中で増殖させたHSC(ptlt−HSC)を移植することによって作製された異種キメラNSGマウスは、BM生着の増加を示した。移植から8週間後、FCB培地単独で増殖された1×10
6個のCD34+/CD38lo細胞を注入したNSGマウスは、0.03%の移植細胞由来の骨髄コンパートメントを有していた(
図17のA、第1パネル)。Tat−MYC及びTat−Bcl2を添加したFCB培地で増殖された1×10
6個のCD34+/CD38lo細胞を注入したNSGマウスは、18.2%の移植細胞由来の骨髄コンパートメントを有していた(
図17のA、第2パネル)。5×10
6個の新鮮な臍帯血細胞を移植したNSGマウスを生着のコントロールとして使用し(
図17のA、第3パネル)、これは移植細胞の2.7%生着を示した。
【0292】
Tat−MYC及びTat−Bcl2を添加したFCB培地で増殖されたHSCを移植することによって作製された異種キメラNSGマウスのBM、脾臓及び胸腺から得たヒトCD45+細胞を分析した。FACS解析では、BM中の6.8%のヒトCD45+群も、造血幹細胞マーカーCD34について陽性に染色されることが示された(
図17のB、第1パネル)。これらのマウスの脾臓及び胸腺から得たヒトCD45+細胞を、B細胞マーカーCD19及びT細胞マーカーCD3について評価した。T細胞マーカーCD3と比較して(
図17のB、第2パネル、7.7%)、脾臓から得たヒトCD45+細胞の大半が、B細胞マーカーCD19について陽性に染色された(
図17のB、第2パネル、69.2%)。B細胞マーカーCD19と比較して(
図17のB、第3パネル、1.2%)、胸腺のCD45+群の大半が、CD3 T細胞マーカーについて陽性に染色された(
図17のB、第3パネル、91.3%)。
【0293】
ptlt−HSCを移植した異種キメラNSGマウスの脾臓から得たヒトCD45+CD19+細胞をCFSEで標識し、ヒトCD40及びIgMに対するモノクローナル抗体で活性化させた。この細胞をCFSEの希釈について、フローサイトメトリーで72時間分析した。
図17のCは、異種キメラNSGマウスにおいてインビボで発生したヒトB細胞の増殖プロファイルを示す。これらの結果は、Tat−MYC及びTat−Bcl2による前処理を行った移植HSCに由来するB細胞が、それらのB細胞受容体を介して活性化されうることを示している。
【0294】
ptlt−HSCを移植した異種キメラNSGマウスの骨髄から得たヒトCD45+、CD34+CD38lo HSCを用いてMethoCult Optimumに接種し、骨髄赤芽球幹細胞の存在について評価を行った。培地のみで増殖させた細胞を移植したコントロールNSGマウスから得た細胞と比較して(
図17のD、FCB)、ptlt−HSCを移植したNSGマウスから得たこれらの細胞は、MethoCultプレートでより多くのコロニーを生じた(
図17のD、FCB TMTB)。赤血球系(BFU−E)、骨髄系(CFU−M)、顆粒球(CFU−G)、及び顆粒球マクロファージ(CFU−GM)系に対して選択的な条件下でコロニー形成が認められたが、より多くの骨髄系及び顆粒球の増殖が認められた。加えて、一部のコロニーは、これに続いて連続して再播種した場合にも依然認められた(
図17のE)。コロニーの数は、両方の場合で、Tat−MYC及びTat−Bcl−2と共に14日間培養したヒト臍帯血細胞によって再構築されたNSGマウスにおいて、新鮮な無操作のヒト臍帯血細胞により再構築されたNSGマウスから得られた細胞よりも大幅に多かった。
【0295】
これらの結果は、移植を行ったマウスの骨髄から得たCD45+、CD34+CD38lo HSCが、MethoCult培地において4つのコロニータイプのすべてを生じることができる造血幹細胞であることを示している。更に、Tat−MYC及びTat−Bcl2を含むFCB培養物を移植したNSGマウスから得られた骨髄を播種したプレート上で認められたコロニー数の増加は、骨髄ニッチに存在する造血幹細胞の数がより多いことを反映している。
【0296】
更に、Tat−MYC及びTat−Bcl−2を添加したサイトカインカクテル中であらかじめインビトロで増殖させた10
6個の臍帯血細胞を移植した異種キメラマウスのコホート(黒い四角)を、骨髄系細胞及びリンパ系細胞の分化について評価した。骨髄細胞(
図17のF)及び脾臓細胞(
図17のG)のCD45陽性群を、CD11b、CD33、CD3、及びCD19発現について分析した。これらの異種キメラマウスの骨髄及び脾臓において、骨髄系細胞及びリンパ系細胞の両方の分化が観察された。
【0297】
実施例7:新たに分離されたヒト全臍帯血を移植し、TAT−MYCを注射したマウスにおける造血再構築の加速
下記の実施例は、新鮮なヒト臍帯血細胞の移植後に、TAT−MYC融合タンパク質でマウスを処理した結果を示す。
【0298】
材料及び方法
実施例6に述べたのと同様にしてヒト臍帯血細胞を入手及び調製した。簡単に述べると、臍帯血をFicoll−hypaque及び遠心分離を用いて分離し、バフィーコート分画を得た。バフィーコート細胞を取り出し、2回洗ってから、PBS中に再懸濁し、同日中にマウスに移植されるまで低温に維持した。
【0299】
NOD/SCID/γc
−/−(NOG)マウスにFCB細胞を注入する前に、マウスに180Radの放射線を照射した(全身照射)。次いで、各レシピエントマウスに、尾静脈注入経由で、5×10
5個、1×10
6個、又は5×10
6個のヒトFCB細胞からなる移植を行った。骨髄細胞移植から24時間後、マウスに、300μLのコーン油中に乳化させた10μgのTAT−MYC又は10μgのTAT−CREの筋肉注射を行った。
【0300】
フローサイトメトリーで生着を監視することによって、移植8週間後に、異種キメラマウスの末梢血、骨髄、及び脾臓中のヒトCD45陽性細胞の存在について評価を行った。
【0301】
結果
図18、19及び20に示すように、ヒトの新鮮な胎児臍帯血細胞の異種移植後にTAT−MYCで処理した異種キメラNOD/SCID/γc
−/−マウスの、末梢血(
図18)、骨髄(
図19)、及び脾臓(
図20)において、ヒト細胞の発生の加速が認められた。NOD/SCID/γc
−/−マウスのコホートに、致死量未満の線量の放射線照射を行った後、5×10
5個(
図18のA及びD;
図19のA及びD;
図20のA及びD)、1×106個(
図18のB及びE;
図19のB及びE;
図20のB及びE)、又は5×106個(
図18のC及びF;
図19のC及びE;
図20のC及びE)の臍帯血細胞の移植を行った。移植から24時間後、各コホートの半数のマウスに、TAT−MYCを注射し(
図18のD、E、及びF;
図19のD、E、及びF;
図20のD、E、及びF)、残りの半数にはコントロールタンパク質TAT−CREを注射した(
図18のA、B、及びC;
図19のA、B、及びC;
図20のA、B、及びC)。
【0302】
図18は、コントロールの、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスにヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−CREで処理した場合、8週間後の末梢血中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が0%(
図18のA)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.2%(
図18のB)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.7%(
図18のC)であったことを示している。致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc−/−マウスにヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−MYCで処理した場合、8週間後の末梢血中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.09%(
図18のD)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.1%(
図18のE)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が9.3%(
図18のF)であった。したがって、
図18のFは、移植8週間後にキメラマウスの末梢血中にヒトT細胞(hCD45陽性細胞)が検出されることを示している。T細胞回復までの平均時間は12〜20週間であるため、このことは約33〜60%の加速を示している。
【0303】
図19は、コントロールの、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、ヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−CREで処理した場合、8週間後の骨髄中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.02%(
図19のA)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が7.7%(
図19のB)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が11.3%(
図19のC)であったことを示している。致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc−/−マウスに、ヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−MYCで処理した場合、8週間後の骨髄中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.04%(
図19のD)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が8.6%(
図19のE)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が20.7%(
図19のF)であった。
【0304】
図20は、コントロールの、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、ヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−CREで処理した場合、8週間後の脾臓中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が0.9%(
図20のA)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が13.9%(
図20のB)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が27.6%(
図20のC)であったことを示している。致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、ヒト全臍帯血細胞を異種移植した後、TAT−MYCで処理した場合、8週間後の骨髄中において、5×10
5個の細胞を移植した後ではCD45
+が1.2%(
図20のD)、1×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が4.9%(
図20のE)、5×10
6個の細胞を移植した後ではCD45
+が58%(
図20のF)であった。
【0305】
実施例8:TAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理した、新たに分離したヒト臍帯血細胞を移植したマウスにおける造血再構築の加速
以下の実施例は、マウスへの移植に先立って新鮮なヒト臍帯血細胞をTAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理した結果を示す。
【0306】
材料及び方法
実施例6で述べたのと同様にしてヒト臍帯血細胞を入手及び調製した。簡単に述べると、臍帯血をFicoll−hypaque及び遠心分離を用いて分離してバフィーコート分画を得た。バフィーコートを取り出し、2回洗浄してから、PBS中に再懸濁させた。
【0307】
マウスに注入する前に、分離した臍帯血細胞を、5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl−2に1時間曝露した。融合タンパク質に曝露した後、細胞をPBSで2回洗浄し、次にPBS中に再懸濁して5×10
6個/200μLとし、マウスに注入するまでの間、低温に維持した。
【0308】
NOD/SCID/γc
−/−(NOG)マウスにFCB細胞を注入する前に、マウスに180Radの放射線を照射した(全身照射)。次いで、各レシピエントマウスに、尾静脈注入経由で、200μL PBS中に5×10
6個のヒトFCB細胞を含む移植を行った。
【0309】
フローサイトメトリーで生着を観測し、異種キメラマウスの末梢血中のCD45陽性細胞の存在について評価した。FCB移植から8週間後に、最初の採血を行った。
【0310】
8ヶ月後、マウスを安楽死させ、異種キメラNSGマウスの脛骨及び大腿骨から骨髄細胞を採取した。脾臓及び胸腺も採取し、細胞を無菌ワイヤメッシュスクリーンに強制的に通過させることによって単細胞懸濁液とした。BM、脾臓及び胸腺からの赤血球を、5mL滅菌TAC緩衝液(135mM NH
4CL、17mM Tris pH 7.65)中で溶解し、次いでD10培地で2回洗浄した。BM、脾臓細胞及び胸腺細胞を、FACS分析用に調製し、ヒトCD45陽性細胞の存在について評価した。
【0311】
結果
図21及び22は、NOD/SCID/γc
−/−(NOG)マウスに移植を行う1時間前に、新鮮なヒト全臍帯血細胞をTAT−MYCで前処理することにより、マウスの末梢血中のヒトCD45細胞の発生が加速され、また、マウスの骨髄、脾臓及び胸腺中のヒトCD45細胞の長期的な生存率が増大することを示している。NOD/SCID/γc
−/−マウスのコホートに、致死レベル未満の放射線照射を行い、次いで5×10
6個の臍帯血細胞を投与した。各コホートの半数のマウスについて、この細胞を、FCB培地中5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl−2で前処理した(
図21のB;
図22のB、D、及びF)。残りの半数のマウスについては、細胞はFCB培地のみで前処理した(
図21のA;
図22のA、C、及びE)。
【0312】
図21は、コントロールの、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、FCB培地単独で前処理を行ったヒト全臍帯血細胞の異種移植を行った場合、8週間後の末梢血中で、CD45
+細胞が0.89%であったことを示している(
図21のA)。一方、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、FCB培地中5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl−2で前処理を行ったヒト全臍帯血細胞の異種移植を行った場合、8週間後の末梢血中で、CD45
+細胞は15.7%であった(
図21のB)。
【0313】
図22は、コントロールの、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、FCB培地単独で前処理を行ったヒト全臍帯血細胞の異種移植を行った場合、8週間後時点での骨髄中でCD45
+細胞が0.04%(
図22のA)、脾臓中でCD45
+細胞が0.03%(
図22のC)、及び胸腺中でCD45
+細胞が0.5%(
図22のE)であったことを示している。これに対して、致死レベル未満の放射線照射を行ったNOD/SCID/γc
−/−マウスに、FCB培地中5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl−2で前処理を行ったヒト全臍帯血細胞の異種移植を行った場合、8週間後時点での骨髄中でCD45
+細胞が0.37%(
図22のB)、脾臓中でCD45
+細胞が25.2%(
図22のD)、及び胸腺中でCD45
+細胞が5.4%(
図22のF)であった。
【0314】
他の実験として、5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl−2を使用して別々のヒト臍帯血細胞群を前処理してから異なるNOGマウスのコホートに移植する。発明者らは、TAT−MYC及びTAT−Bcl−2と共に別々の細胞インキュベーションを行うことで、前処理なしで同じ細胞を移植する場合よりも良好な生着及び再構築の結果が得られるものと予想する。
【0315】
実施例9:Tat−Myc及びTat−Bcl−2と共に培養したヒトG−CSF動員化末梢血HSCによる生着の加速
自家HSC移植のためにG−CSFによる動員化を行った5人の患者から瀉血した血液1mL中にG−CSF動員化細胞を得た。G−CSF試料はすべて個人識別情報を消去したため、これらの研究では細胞には更なる個人識別情報は伴わない。この細胞を、10mLのFCB培地に滴下した。細胞をFCB培地で2回洗浄し、10mL容量中、5μg/mL組み換えTat−Myc及び5μg/mL組み換えTat−Bcl−2で処理した。この細胞を12日間培養した。
【0316】
細胞を、サイトカインと、Tat−MYC及びTat−Bcl2を添加した培地中で、12日間増殖させた。12日目に、半数の細胞に、5μg/mL Tat−MYC及び5μg/mL Tat−Bcl2による追加処理を行った。残り半数の細胞は、FCB培地単独のままで置かれた。この細胞を37℃のインキュベーター中で60分間インキュベーションした。細胞をPBSで3回洗浄し、200μL当たり5×10
6個の細胞となるように再懸濁した。フローサイトメトリーで生着を観察し、異種キメラマウスの末梢血中のCD45陽性細胞の存在について評価した。HSC移植から8週間後に、最初の採血を行った。
【0317】
図23のAは、コントロールNSG(
図23のA)、8週間前に1×10
6個の増殖させたG−CSF動員化HSC(
図23のB)又は1×10
6個の増殖させたG−CSF動員化HSCをTat−MYC/Tat−Bcl−2で処理したもの(
図23のC)を移植したNSGマウスから得られた末梢血のCD45
+染色のFACS解析を示す。末梢血で示されるように、発明者らは、TAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理されたG−CSF動員化細胞を生着させたマウスのBM、脾臓及び胸腺は、前処理なしで同じ細胞を移植した場合よりも、より良好な生着及び再構築が得られるものと予想する。
【0318】
実施例10:TAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理したヒトG−CSF動員化細胞を移植した後にTAT−MYCで処理したマウスにおける造血再構築の加速
以下の実施形態は、マウスへの移植に先立ってTAT−MYC及びTAT−Bcl−2でヒトG−CSF動員化細胞を前処理し、次いで24時間後にTAT−MYCでマウスを処理した場合の結果を示す。
【0319】
材料及び方法
自家HSC移植のためにG−CSF動員化を行った5人の患者から瀉血した血液1mL中にG−CSF動員化細胞を得た。G−CSF試料はすべて個人識別情報を消去したため、これらの研究では細胞には更なる個人識別情報は伴わない。この細胞を、10mLのFCB培地に滴下した。細胞をFCB培地で2回洗浄し、10mL容量中5μg/mL組み換えTat−MYC及び5μg/mL組み換えTat−Bcl−2で処理した。この細胞を12日間培養した。
【0320】
12日目に、NSGマウスに注入する1時間前に、増殖させたG−CSF動員化細胞に対し、5μg/mL TAT−MYC及び5μg/mL TAT−Bcl2による2回目の処理を行った。この細胞をPBSで3回洗浄し、次に200μL PBS中5×10
6個/匹の細胞を、尾静脈経由で注入した。NOD/SCID/γc
−/−(NOG)マウスにHSC細胞を注入する前に、マウスに180Radの放射線を照射した(全身照射)。増殖されたHSCを注入してから24時間後、マウスに、コーン油中の10μg Tat−MYC又は10μg Tat−CREを筋肉注射するか、又は何も注入しなかった。8週間後、マウスから血液を採取した。
【0321】
フローサイトメトリーで生着を観察し、異種キメラマウスの末梢血中のCD45陽性細胞の存在について評価した。HSC移植から8週間後に、最初の採血を行った。
【0322】
8週間後、マウスを安楽死させ、異種キメラNSGマウスの脛骨及び大腿骨から骨髄細胞を採取する。脾臓及び胸腺も採取し、細胞を無菌ワイヤメッシュスクリーンに強制的に通過させることによって単細胞懸濁液とした。BM、脾臓及び胸腺からの赤血球を、5mL滅菌TAC緩衝液(135mM NH
4CL、17mM Tris pH 7.65)中で溶解し、次いでD10培地で2回洗浄する。BM、脾臓細胞及び胸腺細胞を、FACS分析用に調製し、ヒトCD45陽性細胞の存在について評価する。
【0323】
結果
データは、NOD/SCID/γc
−/−(NOG)マウスに移植する1時間前にTAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理したHSCを移植してから24時間後にTAT−MYCを注入した場合、TAT−CREを注入したか、又はTat−融合タンパク質を注入しなかったが、TAT−MYC及びTAT−Bcl−2で前処理したHSCをやはり移植したコントロールマウスの場合と比べて、マウスの末梢血中のヒトCD45細胞の発生加速は見られなかったことを示している。
【0324】
8週間後では、末梢血中のCD45
+細胞レベルにおいて、TAT−MYC処理したマウスとTAT−CREで処理したマウスとの間にデータの差は見られない。これより前又は後の時点での影響が存在するかどうか、またBM、脾臓、及び胸腺において影響が存在するかどうかを決定するには、更なる研究が必要である。現時点で、これらのデータは、TAT−MYCによる細胞の前処理が、移植後にTAT−MYCをマウスに注入した場合と同程度の効果を有しうることを示している。現在までのところ、本発明者らは、細胞を前処理することによる効果の増大、及び、処理済みの細胞を移植した後にマウスにTat−MYCを注入することによる効果の増大は観察していない。
【0325】
実施例11:生物学的活性を有するTat−MYC及びTat−Bcl−2融合タンパク質の作製
HIV−1 Tatタンパク質導入ドメイン(PTD)とヒトMycのORF又は構造化されていないループドメインが欠失させられたヒトBcl−2の短縮形とを有する融合タンパク質が作製されている(Anderson、M.,et al.(1999).Prot Expr.Purif.15、162〜70)。この組み換えタンパク質は更に、検出及び精製を促進するためにV5ペプチドタグ及び6−Hisタグをコードしている(
図24及び
図25)。
【0326】
pTAT−MYC−V5−6xHis(Amp
R)及びpTAT−Bcl2Δ−V5−6xHis(Amp
R):HIVのインフレームTATタンパク質導入ドメイン(RKKRRQRRR)(配列番号:5)をコードした順方向プライマーを用いて、ヒトcMYC又はヒトBcl2をコードしたcDNAをPCR増幅することによりプラスミドを作製した。PCR産物を、pET101/D−Topo(Invitrogen)ベクターにクローニングした。Quick Change部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene #200521−5)を使用して、構造化されていないループ(アミノ酸27〜80)をBcl−2のコーディング配列から除去した。
【0327】
タンパク質は大腸菌に合成させ、均質となるまで精製した。SDS−PAGE電気泳動及びクマシー染色を行ったところ、本研究に使用する最終産物の純度レベルが明らかになった(
図1のB)。pTAT−MYC−V5−6xHisをBL21−STAR(DE3)細胞(Invitrogen)に導入し、0.5mM IPTGと共に37℃で3時間置いて、タンパク質を誘導した。この細胞を細胞溶解緩衝液(8M尿素、100mM NaH
2PO
4、10mM TrisでpH 7.0、10mMイミダゾール、pH 7.2)中で溶解した。この溶解物を6M尿素で希釈し、450mM NaCl、50mM NaH
2PO
4、5mM Tris pH 7.0とした。この溶解物を、室温で1時間ベンゾナーゼ(500単位)で処理し、12,000RPMで60分間遠心して透明とし、0.22μMフィルターで濾過した。MYC−V5−6xHisを、GE AKTA purifier 10 FPLCを使用してニッケル親和性カラム(GE)で精製した。透析緩衝液(450mM NaCl、50mM NaH
2PO
4、5mM Tris pH 7.0、5%グリセロール、1mM DTT)中に透析することにより、MYC−V5−6xHisを再折り畳みさせた。精製したタンパク質をActiclean Etoxカラム(Sterogen)に通すことにより、内毒素を低減させた。
【0328】
Bcl2Δ−V5−6xHisタンパク質は、上記と同様にして誘導した。細胞を、1Lの誘導タンパク質当たり、50mLの透析緩衝液(200mM NaCl、200mM KCL、50mM NaH
2PO
4、5mM Tris pH 7.0、5%グリセロール、1mM DTT)に500単位のベンゾナーゼ、1mM PMSF、2μg/mLのロイペプチン、0.015単位/mLのアプロチニン、5μMの鶏卵リゾチーム(HEL)中で溶解し、直ぐに氷浴に移し、1時間置いた。細胞を氷浴上で、2分間で2セット、超音波処理した(デューティサイクル=50%、出力=5)。この溶解物を12,000RPMで60分間遠心して透明とし、0.22μMフィルターで濾過した。Bcl2Δ−V5−6xHisを、上記で述べたようにニッケル親和性カラム(GE)で精製して内毒素を除去した。