(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、
図1に示すように、クライミングロボットEが鉛直面で清浄や吹き付けなどの作業を行う時、クライミングロボットEと屋上Bの間の距離が100メートルである場合、クライミングロボットEは以下の問題がある。
【0005】
(1)クライミングロボットE自身が貯水タンクや塗料タンクや制御部品(例えば、制御弁)を備える場合、クライミングロボットEの重量が非常に重くなるので、大きな重力作用によりクライミングロボットEが落ちることを招く。
【0006】
(2)貯水タンクや塗料タンクなどの原料供給Aが屋上Bに設けられる場合、水やペンキなどの原料がかなり長いチューブDを介してクライミングロボットEに輸送されなければならない。これによって、原料供給量についての制御が困難である。原料の制御部品(流量弁、圧力弁など)が屋上に設けられる場合、チューブ及びケーブルの長さ(例えば、100メートル)により深刻な時間遅延をもたらすので、制御失効、不安定などの問題を起こす。そして、原料が長いチューブを介してクライミングロボットEに輸送される時、長いチューブで極大のフリクションロスを生じ,延いてはロボットユニット側での圧力及び流量が不足になることを招く。また、原料の制御部品をクライミングロボットEに設置すれば、クライミングロボットEの重量が大幅に増加することになり、クライミングロボットEに対して非常に不利である。
【0007】
(3)動力供給Aが屋上に設けられる場合、動力流(電流など)が非常に長いケーブルを介してロボットユニットに輸送されなければならなくなる。これによって、動力に対する制御が困難である。動力の制御部品(変圧器等)が屋上に設けられる場合、ケーブルの長さ(例えば、100メートル)により深刻な時間遅延をもたらすので、制御不能、不安定等の問題を起こす。そして、動力流が長いケーブルを介してロボットユニットに輸送される場合、長いケーブルで極大のフリクションロスを生じ、延いてはクライミングロボットEの動力が不足になることを招く。動力の制御部品をクライミングロボットEに設置すれば、クライミングロボットEの重量が大幅に増加することになり、クライミングロボットEに対して非常に不利である。
【0008】
(4)
図2を例として、クライミングロボットEを位置Xから位置Yまでに横移動すると、ケーブルDの位置も相応に変更する。ケーブルDの重量により横方向の引っ張り力がロボットユニットに付与される。つまり、クライミングロボットEが位置Xから位置Yまで移動する場合、この移動に伴ってケーブルDも移動しなければならない。ケーブルDは非常に長いものであれば、その質量が重い。移動中のクライミングロボットEにとって、ケーブルDがとても大きな慣性負荷になり、クライミングロボットEの運動性能に深刻な影響を及ぼす。そして、不測の横方向の引っ張り力を抵抗するために、クライミングロボットEにおける吸着装置が、常に最大吸着力の状態で作業しなければならない。これにより、吸着装置のエネルギー消耗が大きすぎる。
【0009】
(5)クライミングロボットEと屋上供給設備Aとを連結する長いケーブルDが高空にかかる。
図1に示すように、高空における激しい横風によりケーブルに作用力をかけることで、ケーブルが揺れる。そして、該作用力が、ケーブルDによりクライミングロボットEに直接的に作用し、クライミングロボットEを横方向に引っ張る力を形成する(以下、横風引っ張り力という)。さらに、該横風引っ張り力が高空での横風の状態によって変更し、不安定で予測し難い作用力である。ケーブルDが非常に長ければ(百メートル或いは百メートル以上)、該作用力がより一層大きくなり、クライミングロボットEの安定性に深刻な影響を与える。
【0010】
(6)作業を行う過程中で、クライミングロボットEの移動に応じてケーブルDを繰る必要がある。理想的な状況で、ケーブルDが繰られる長さ及び速度は、クライミングロボットEと屋上Bの供給ユニットAとの相対位置に基づいて計算してよい。しかし、クライミングロボットEと屋上の供給ユニットAとの間の接続ケーブルDは、両端が固定されたフレキシブルなラインの問題に係り、ケーブルDが重力、横風作用力などの要素の影響を受け、そして、ケーブルDが長いほど、影響が著しくなる。そこで、上述のフレキシブルなラインの問題が複雑になって、解決することが困難であり、延いてはロボットの移動によりケーブルDの繰られる長さ及び速度を正確に制御し難いことを招く。ケーブルDを繰ることが適宜ではなければ、クライミングロボットEの移動に深刻な影響を与えずにはおかない。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決し、ロボットの荷重を軽くしつつ、ケーブルDの影響を受けることの少ない作業ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の作業ロボットシステムは、以下の構成を有している。
(1)作業面上を移動して、前記作業面に対して所定の作業を行うロボットユニットを有する作業ロボットシステムにおいて、動力源を供給する動力供給装置を備え、作業面上を移動可能な供給ステーションと、1台または複数のロボットユニットと、供給ステーションを牽引して移動させる牽引装置を有すること、供給ステーションが接続ケーブルを介してロボットユニットに接続され、動力供給装置が接続ケーブルを介してロボットユニットに動力を供給し、ロボットユニットには、作業面に対して所定の作業を行う作業実行装置と、ロボットユニットを作業面に吸着させるロボット吸着装置と、ロボットユニットを作業面上を移動させるロボット移動装置を有すること、を特徴とする。
【0013】
(2)(1)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記供給ステーションと前記ロボットユニットが、着脱自在に係合されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記供給ステーションは、前記供給ステーションを移動させる供給ステーション移動装置、及び前記供給ステーションを前記作業面に吸着させる供給ステーション吸着装置を有すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、前記ロボットユニットが複数であること、前記供給ステーションは、複数の前記ロボットユニットの各々に動力を供給するための動力分岐部を有すること、を特徴とする。
【0014】
(5)(4)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記供給ステーションは、複数の前記ロボットユニットの各々に作業用流体を供給するための作業用流体分岐部を有すること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、前記供給ステーションは、展開可能なアプローチスパンプレートを有すること、
前記アプローチスパンプレートは、展開状態にある場合、少なくとも一端面が作業面と接触し、前記ロボットユニットが、前記アプローチスパンプレート上を移動可能であること、を特徴とする。
【0015】
(7)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、前記供給ステーションは、前記ロボットユニットを収容する回収カプセルを有し、
前記ロボットユニットは作業面から回収カプセルの内に移動して回収されると共に、前記回収カプセルの中から作業面に移動可能であること、を特徴とする。
(8)(6)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記アプローチスパンプレートは、前記ロボットユニットを収容する回収カプセルを有し、前記ロボットユニットは作業面から回収カプセルの内に移動して回収されると共に、前記回収カプセルの中から作業面に移動可能であること、を特徴とする。
【0016】
(9)(7)または(8)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記回収カプセルは、前記ロボットユニットの落下を防ぐための落下防止装置を有すること、を特徴とする。
(10)(1)乃至(9)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、前記ロボットユニットが、壁面清掃用装置を有し、前記作業面が建物の鉛直壁面や傾斜壁面であり、前記牽引装置が、建物の屋上に設置される巻き上げ機であり、前記巻き上げ機は吊りロープにより、供給ステーションを吊り下げ上下に移動させること、前記供給ステーションは、前記ロボットユニットに洗浄水を供給すること、を特徴とする。
【0017】
(11)(1)乃至(10)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、前記ロボットユニットは、GPS装置及び無線発信装置を有し、前記GPS装置のGPS信号を、前記無線発信装置により遠隔コントロールシステムに発信すること、前記遠隔コントロールシステムは、受信した前記GPS信号により、前記ロボットユニットの位置を確認し、前記ロボットユニットの移動を制御すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比べて、本発明の作業ロボットシステムは、単独の供給ステーションを設置することで、ロボットの実行装置とその駆動装置及び供給装置とを分離させるので、供給ステーションによりロボットに原料及びエネルギーを絶えずに供給し、ロボット側の重量及び体積を低減させ、その一回の作業時間を延ばし、作業効率及びロボットユニットの安定性、制御性を向上させることができ、エネルギー消耗の低下も可能である。
【0019】
また、作業面に大きな凹部が存在する場合に、供給ステーション吸着装置の吸着力が低下するため、ロボットユニットが自重により落下する恐れがあった。
本発明では、アプローチスパンプレートが凹部を塞ぐことにより、ロボットユニットは、アプローチスパンプレートの表面上を移動できるため、供給ステーション吸着装置の吸着力が低下することがなく、ロボットユニットが自重により落下する恐れがない。
また、回収カプセルを有しているので、作業を行う作業面まで、ロボットユニットを収納した状態で供給ステーションを下降させ、その後ロボットユニットを回収カプセルから送り出すことができ、また、作業終了後も、ロボットユニットを回収カプセルに収納した状態で供給ステーションを上昇できるため、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の解決しようとする技術課題、技術案及び優れた効果を明らかにするために、以下、図面及び実施例を結び付けて、本発明についてさらに詳しく説明する。ここに記載の具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。
【0022】
(実施例1)
図3及び
図4を参照すると、本発明の作業ロボットシステムの好ましい実施例は、移動可能な供給ステーション1と、複数のロボットユニット2と、供給ステーション1を牽引し移動させるための牽引装置6とを備える。屋上Bに設置された牽引装置6が供給ステーション1を牽引し移動させる。牽引装置6がロープ7により供給ステーション1を牽引する。上記供給ステーション1は自発的に移動する能力がないので、牽引装置6の牽引により移動する。本実施例では、牽引装置6により、供給ステーション1は、上下方向に移動するのみであるが、例えば、屋上Bにレールを敷設して、牽引装置6をレール上に移動可能な走行車上に載置すれば、図中横方向の移動も可能である。
【0023】
供給ステーション1には動力供給システムが配置される。ロボットユニット2にはロボット駆動装置と、作業実行装置8(本実施例では、清掃用ブラシ)と、ロボット吸着装置4(吸着装置は、特許文献1で本発明者が提案したシステムを使用しているので、詳細な説明を省略する。)とロボット移動装置13(4個の車輪)が配置される。供給ステーション1が接続ケーブル3により各ロボットユニット2にそれぞれ接続される。上記ロボット駆動装置はロボット移動装置13を回転駆動することでロボットユニット2を作業面上で移動させる。上記動力供給システムは接続ケーブル3により各ロボットユニット2に動力流をそれぞれ供給する。ここで、動力流としては電源、高圧気源、液圧源および高圧水源等を含む。ロボット吸着装置4により、ロボットユニット2はその位置している作業面5に吸着されながら、作業面5を移動することができる。
【0024】
複数のロボットユニット2が、鉛直面や傾斜面で移動したり作業してもいいし、天井で移動したり作業してもよい。供給ステーション1が複数のロボットユニット2に従って移動する。複数のロボットユニット2が供給ステーション1を中心とする範囲内において走行する。例えば、複数のロボットユニット2の作業実行装置8は撮像作業をする撮像機であってもいい。例えば、複数のロボットユニット2の作業実行装置は作業表面について探傷作業を実施する超音波探傷器であってもいい。
【0025】
供給ステーション1には動力供給システムが配置される。動力供給システムは輸送ケーブル14を介して下方或いは上方から持続的動力流を得るものである。
図3に示す例において、動力供給システムが輸送ケーブル14を介して下方(例えば、地上に配置された空気圧縮機等)から持続的動力流を得る。動力供給システム自体が、動力源、例えば、バッテリー等を具備してもいい。動力流が接続ケーブル3を介して動力源からロボットユニット2に輸送される。
【0026】
例えば、超音波探傷器を使用する場合、作業実行装置は超音波プローブである。通常、超音波信号増幅部品及び記録処理部品が重いので、これらの重い部品が供給ステーション1に配置される。こうして、ロボットユニット2の重量を減少し、背景技術に記載の問題(1)を解決することができる。
【0027】
また、作業面5である壁面の清浄を例とする場合、作業実行装置8はブラシ装置であり、壁面清浄のための洗浄水を提供する装置が原材料供給装置(ここでの原材料は洗浄水を指す)である。原材料供給装置は通常加圧ポンプ及び制御弁等の部品を含むため、重いものである。作業実行装置8をロボットユニット2に、原材料供給装置を供給ステーション1に設けている。輸送ケーブル14には原材料の支管路が含まれ、洗浄水が供給ステーション1における原材料供給装置に輸送される。接続ケーブル3には原材料の支管路が含まれ、当該支管路を介して洗浄水がロボットユニット2における作業実行装置8に供給される。本実施例では、接続ケーブル3の長さを十数メートルとしている。その理由は、十数メートルの接続ケーブル3により原材料流を輸送する場合、著しい時間遅れ及びフリクションロスをもたらさないので、原材料流の十分供給及び有効制御を確保することができるからである。これによって背景技術に記載の問題(2)を解決することができる。
【0028】
本実施例では、供給ステーション1の動力供給システムが接続ケーブル3によりロボットユニット2に動力流を提供する。接続ケーブル3の長さが通常十数メートルしかないので、十数メートルの接続ケーブルで動力流を輸送する場合、著しい時間遅れ及びフリクションロスをもたらさないので、動力流の十分供給及び有効制御を確保することができる。これによって背景技術に記載の問題(3)を解決することができる。
【0029】
そして、ロボットユニット2は移動の際に十数メートルの接続ケーブル3だけを牽引すればいい。これは、ロボットユニット2にとって軽い慣性負荷に過ぎず、ロボットユニット2の移動性に影響を与えない。よって、背景技術に記載の問題(4)を解決することができる。
【0030】
(実施例2)
図3及び
図4を参照すると、実施例1の変形例として、供給ステーション1に供給ステーション吸着装置及び供給ステーション移動装置(
図3に示されていない)が更に配置される。高空作業の場合、供給ステーション1を吊るすためのロープ7は数十メートル、乃至百メートルの長さに達する場合がある。高空における激しい横風によりロープ7に作用力が付加された結果、ロープ7が揺れ、延いては供給ステーション1が揺れることになる。揺れている供給ステーション1が接続ケーブル3によりロボットユニット2を引っ張るので、ロボットユニット2の安定性に深刻な影響を与える場合がある。
上記供給ステーション移動装置は複数の車輪を含む。供給ステーション吸着装置(ロボットユニット2の吸着装置と原理は同じであるが大型で強力な吸着力を有する。)により供給ステーション1を作業面に吸着することで、供給ステーション移動装置の車輪と作業面との間に接触及び摩擦力が発生する。この追加された摩擦力によりロープ7による横風引っ張り力に抗するため、想定外の強い横風が吹いても、引っ張り力が接続ケーブル3に伝達されず、ロボットユニット2にも伝達されない。これによって、予測できない横風引っ張り力による影響を解消し、ロボットユニット2の安定性を確保することできる。予測できない横風引っ張り力による影響が解消されたので、ロボットユニット2の吸着装置4が常に最大吸着力の状態で作業する必要はないので、吸着装置4のエネルギー消耗が小さくなる。これにより、背景技術に記載の問題(5)がよく解消される。
【0031】
本実施例では、上記供給ステーション吸着装置により供給ステーション1が作業面において吸着されるので、横風引っ張り力等のランダム変化する外力が供給ステーション1と作業面との間の摩擦力により相殺される。このため、ロボットユニット2と供給ステーション1と接続ケーブル3とからなる両端が固定されたフレキシブルなラインの問題が簡単になり、ロボットユニット2が接続ケーブル3の長さ範囲内において自由に移動できる。これにより、背景技術に記載の問題(6)がよく解消される。
【0032】
(実施例3)
図5は、実施例2の変形例である。上記供給ステーション1には供給ステーション移動装置及び供給ステーション吸着装置(図には示されていない)が配置される。上記供給ステーション移動装置は複数の車輪を含む。上記供給ステーション1に一つのアプローチスパンプレート15が設置されている。アプローチスパンプレート15は、その少なくとも一部が収納展開可能(回転軸15cを中心に回転可能である。)に供給ステーション1に設置されている。本実施例では、
図6に示すように、アプローチスパンプレート15は、折り曲げ部分により側面部15bと底面部15aに分かれている。回転軸15cには、回転駆動用のモータが取り付けられている。折り曲げられた底面部15aは、作業面5にほぼ全面接触している。
アプローチスパンプレート15が展開状態にある場合、アプローチスパンプレート15の少なくとも一方の側辺(底面部15a)が作業面に置かれ、当該一方の側辺から上記ロボットユニット2がアプローチスパンプレート15に移動し、他方の側辺からアプローチスパンプレート15に移出する。
図6に示すように、供給ステーション1には一つのアプローチスパンプレート15が設置される。アプローチスパンプレート15は一方の側辺が供給ステーション1に回転軸15cを中心にして回動可能に取り付けられ、当該側辺を軸線にして収納展開可能に回動する。アプローチスパンプレート15が展開状態にある場合、アプローチスパンプレート15の折り曲げられた平面部は、作業面5に存在する凹部である溝Fを跨いで位置している。
【0033】
図6に示すように、アプローチスパンプレート15の複数の側辺が作業面5に接触する。
図5における2本の点線Gに示す移動路線の通り、ロボットユニット2がアプローチスパンプレート15の一方の側辺からアプローチスパンプレート15に移動し、他方の一つの側辺からアプローチスパンプレート15に移出する。これにより、ロボットユニット2は、落下することなく、溝Fを乗り越えることができる。
ロボットユニット2が溝Fを乗り越えた後、アプローチスパンプレート15がある角度回動して収納状態になり、アプローチスパンプレート15の側辺が作業面5から離れて、供給ステーション1が移動する場合にアプローチスパンプレート15の側辺と作業面5に摩擦を発生することを避ける。
【0034】
本実施例は、作業面に深くて幅広い溝Fや段差(例えば、多くのビルにある内陥の装飾溝)がある場合に適用する。なぜなら、作業面5が溝Fや段差部により不連続になる場合、実施例1及び実施例2のロボットユニット2が溝Fや段差部を乗り越えることができず、作業を行うことができないからである。これに対して、本実施例では、アプローチスパンプレート15の橋渡し作用により、ロボットユニット2を溝Fや段差部の他方側の作業面5に移動することで、ロボットユニット2の連続作業を実現することができる。
【0035】
(実施例4)
実施例4は実施例3の変形例であり、具体的に
図7及び
図8を参照する。
図7における供給ステーション1には左右方向及び下方向に3個のアプローチスパンプレート15が設置されている。アプローチスパンプレート15はその一方側が供給ステーション1に回転軸15cを中心として回転可能に取り付けられ、回転軸15cを中心に回転することで、収納及び展開をすることができる。実施例3と相違するのは、アプローチスパンプレート15が折り曲げ部を有していない点である。この場合には、ロボットユニット2は、1個のアプローチスパンプレート15により供給ステーション1の上面に乗り上げ、その後他のアプローチスパンプレート15により供給ステーション1から降りることになる。
アプローチスパンプレート15が展開状態にある場合、アプローチスパンプレート15の他方側が作業面5と接触する。
図7における点線に示す移動路線の通り、ロボットユニット2が一つのアプローチスパンプレート15に移動し、そしてもう一つのアプローチスパンプレートから移出する。ロボットユニット2が溝Fを乗り越えた後、アプローチスパンプレート15がある角度回動して収納状態になることで、アプローチスパンプレート15の側辺が作業面5から離れ、これによって、供給ステーション1が移動する場合にアプローチスパンプレート15の側辺と作業面5との間に摩擦を生じることを避ける。
【0036】
本実施例では、アプローチスパンプレート15による橋渡し作用により、ロボットユニット2を作業面に存在する溝Fや段差部の他方の側の作業面に移動することができるため、ロボットユニット2の連続作業を達成でき、作業時間を短縮することができる。
【0037】
(実施例5)
図9に示すように、実施例5は、実施例2のもう一つの変形例である。
図9は、供給ステーション1の断面図である。上記供給ステーション1には供給ステーション移動装置及び供給ステーション吸着装置が配置される。上記供給ステーション移動装置が複数の車輪17を備える。上記供給ステーション1には、少なくとも一つのロボットユニット2を収納する回収カプセル16が配置され、上記ロボットユニット2が作業面5から回収カプセル16内に移動して回収され、或いは回収カプセル16の中から作業面5に移動することができる。上記回収カプセル16の外側部に、収納・展開可能に構成されるアプローチスパンプレート15が設置される。展開状態にある場合、アプローチスパンプレート15の少なくとも一方の側辺が作業面5上に置かれ、作業面5と接触する。上記ロボットユニット2がアプローチスパンプレート15により回収カプセル16内に移動する。回収カプセル16が作業面に非常に近くするように設置される場合、アプローチスパンプレート15が必要なく、ロボットユニット2が直接的に回収カプセル16に入ることができる。
【0038】
本実施例は、作業面に深くて幅広い溝Fがある場合だけでなく、作業面に凸部Gがある場合にも適当である。本実施例における障害物を越える作業原理は具体的に以下の通りである。
回収カプセル16のアプローチスパンプレート15が展開状態にあり、アプローチスパンプレート15の一方の側辺が作業表面と接触する。ロボットユニット2がアプローチスパンプレート15により供給ステーション1の回収カプセル16に移動した後、アプローチスパンプレート15が収納され、収納状態になる。ロボットユニット2を載せている供給ステーション1は、牽引装置及び供給ステーション移動装置により、溝Fや凸部G等の障害物を乗り越える作業を完成する。
図10に示すように、凸部Hである障害物の高さが供給ステーション移動装置の車輪17の半径よりも小さい場合、車輪17が非駆動輪である従動輪であってもよい。凸部Gである障害物の高さが供給ステーション移動装置の車輪17の半径よりも大きい場合、車輪17が駆動可能な主動輪でなければならない。
図11に示すように、主動輪と凸部Gとの間に摩擦力を発生することで、供給ステーション1に凸部Gである障害物を乗り越えさせることができる。供給ステーション1が凸部Gである障害物を乗り越えた後、アプローチスパンプレート15が再び展開して、ロボットユニット2が作業表面に移動し、引き続き作業する。
【0039】
実施例3及び実施例4における橋渡し案は、ロボットユニット2に凹陷溝Fである障害物を乗り越えさせることができる一方、以下の二つの場合において効果を出せない。(1)溝Fがかなり幅広い場合(例えば、幅5メートルの溝)、橋渡し案は少なくとも5メートル長さのアプローチスパンプレート15が必要である。しかし、長さ5メートルのアプローチスパンプレート15が供給ステーション1にとって大きすぎ、供給ステーション1のサイズ及び重量を大幅に増加せずにはおかない。(2)ロボットシステムがかなり高い凸部Hである障害物を乗り越えようとすると、
図10に示すように、橋渡し案におけるアプローチスパンプレート15が凸部H障害物により上げられてしまって、アプローチスパンプレート15の側辺が作業表面と接触することができず、よって、ロボットユニット2がアプローチスパンプレート15に移入・移出することができない。本実施例に係る上記方案により上述の二つの問題をよく解決することができる。
【0040】
また、回収カプセル16には、さらに制御可能な位置決め装置(図面に示さない)が配置されてもよい。ロボットユニット2が回収カプセル16に入った後、位置決め装置をオンにして、ロボットユニット2が回収カプセルの内に制限される。そうすると、供給ステーション1の移動過程中で、ロボットユニット2が回収カプセル16から落ちてしまうことがなく、ロボットユニット2の安全を確保することができる。例えば、
図12に示すように、位置決め装置20はソレノイド21により駆動された一つのノックピン22であってもよく、ノックピン22が伸出することにより位置制限を実現する。
【0041】
(実施例6)
図13に示す実施例は、実施例5の変形例である。
図13は、供給ステーション1の平面断面図である。回収カプセル16がアプローチスパンプレート15の上に設置される。ロボットユニット2を回収する時、アプローチスパンプレート15及び回収カプセル16を一緒に展開し、アプローチスパンプレート15の一端を作業表面と接触させる。
【0042】
(実施例7)
図3と
図4を同時に参照すると、本発明の一つの特別な応用として、ロボットシステムを建物壁面清掃分野に応用する。複数のロボットユニット2が壁面清掃ロボットとして、作業実行装置8が壁面清掃装置として用いられる。複数のロボットユニット2の走行作業面5は鉛直或いは傾斜の建物壁面であり、牽引装置6は巻き上げ機を含む。本実施例では、供給ステーション1及び複数のロボットユニット2の走行表面は建物壁面である作業面5である。上記建物トップ部Bに配置される巻き上げ機は、吊りロープ7により、供給ステーション1を作業面5に沿って上下に移動するように牽引する。複数のロボットユニット2が、建物壁面である作業面5に対して洗浄作業を行う壁面清掃ロボットであり、該壁面清掃ロボットに清掃用ブラシ8が設置される。複数のロボットユニット2がその吸着装置4により作業面5に吸着されながら走行する。供給ステーション1には給水源(図には示さず)が設置される。給水源は、供給ステーション1に設置される貯水タンクや加圧水ポンプであってもよく、加圧水ポンプにより貯水タンク中の水が加圧されてロボットユニット2に輸送される。また、給水源は、原材料輸送管路により外部(例えば、屋上)から加圧水源を持続的に得た後、供給ステーション1における原材料中継管路を介して該水源をロボットユニット2に輸送するように構成されてもよい。接続ケーブル3は、分岐路動力ケーブル及び分岐路水管を含み、供給ステーション1が分岐路水管を介してそれぞれのロボットユニット2に清潔水を供給する。
【0043】
複数のロボットユニット2には、さらに撮像装置9及びロボット無線測距信号ステーション10が配置される。上記撮像装置9が撮った映像は無線発信装置により遠隔コントロールシステムに発信され、操作員の監視とコントロールを補助的に用いられる。上記建物には、ロボット無線測距信号ステーション10と通信する若干の無線定位装置(GPS装置)11が設置され、無線定位装置11のGPS信号によりロボットユニット2の位置の取得に用いられる。
ロボットユニット2は、GPS装置及び無線発信装置を有し、GPS装置のGPS信号を、無線発信装置により遠隔コントロールシステムに発信すること、遠隔コントロールシステムは、受信したGPS信号により、ロボットユニット2の位置を確認し、ロボットユニット2の移動を制御することができる。
【0044】
(実施例8)
実施例5と実施例6では、ロボットユニットを供給ステーションに収納して一体になるように構成されている。しかし、回収カプセルとアプローチスパンプレートの設計により供給ステーションの構造が複雑になり、重量が増えてしまう。本実施例は変形の実施形態を提供する。供給ステーションとロボットユニットに互いに接続する機構が設置されている。互いに接続する機構によって供給ステーション1とロボットユニット25を互いに接続・脱離させることができる。
図14は設計の一例である。供給ステーション1に回動可能なフック18が設置され、ロボットユニット25にフックリング26が設置されている。ロボットユニット25が供給ステーションに近接した時、フック18が回動してフックリング26に掛けて、供給ステーション1とロボットユニット25を互いに接続させる。互いに接続している状態では、供給ステーション1がロボットユニット25を連れて窪んだ溝Fを通ることができ、ロボットユニット25が動力を失う場合又は故障があった場合においてもロボットユニット25を落とさないように確保することができる。互いに接続する機構は様々な設計形態がある。もう1つの例を挙げると、ロボットユニット25にフックが設置されていると共に、供給ステーション1にフックリングが設置されている。更に例を挙げると、供給ステーション1とロボットユニット25とのそれぞれに磁性吸着部材が設置されており、磁性吸着により互いに接続させる。この実施例によれば、ロボットユニット25を供給ステーション1に搭載する必要がないため、供給ステーション1の構造を簡略化できると共に、軽量化することができる。
【0045】
第1から第7実施例によれば、次のような作用・効果を奏する。
(1)作業面上を移動して、前記作業面に対して所定の作業を行うロボットユニットを有する作業ロボットシステムにおいて、動力源を供給する動力供給装置を備え、作業面上を移動可能な供給ステーションと、1台または複数のロボットユニットと、供給ステーションを牽引して移動させる牽引装置を有すること、供給ステーションが接続ケーブルを介してロボットユニットに接続され、動力供給装置が接続ケーブルを介してロボットユニットに動力を供給し、ロボットユニットには、作業面に対して所定の作業を行う作業実行装置と、ロボットユニットを作業面に吸着させるロボット吸着装置と、ロボットユニットを作業面上を移動させるロボット移動装置を有すること、を特徴とするので、単独の供給ステーション1を設置することで、ロボットユニット2の実行装置とその駆動装置及び供給装置とを分離させるので、供給ステーション1によりロボットユニット2に原料及びエネルギーを絶えずに供給し、ロボット側の重量及び体積を低減させ、その一回の作業時間を延ばし、作業効率及びロボットユニットの安定性、制御性を向上させることができ、エネルギー消耗の低下も可能である。
【0046】
(2)(1)に記載する作業ロボットシステムにおいて、供給ステーション1とロボットユニット25が、着脱自在に係合されていること、を特徴とするので、ロボットユニット25を供給ステーション1に搭載する必要がないため、供給ステーション1の構造を簡略化でき、かつ供給ステーション1を軽量化できる。
【0047】
(3)(1)または(2)に記載する作業ロボットシステムにおいて、供給ステーション1は、供給ステーション1を移動させる供給ステーション移動装置、及び供給ステーション1を作業面に吸着させる供給ステーション吸着装置を有すること、を特徴とするので、強い横風が吹いた場合でも、供給ステーション1自体が壁面に吸着しているため、ロボットユニット2が安定して作業することができる。
【0048】
(4)(1)乃至(3)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、ロボットユニット2が複数であること、供給ステーション1は、複数のロボットユニット2の各々に動力を供給するための動力分岐部を有すること、を特徴とするので、作業面積に対するロボットユニット2の個数を増加できるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0049】
(5)(4)に記載する作業ロボットシステムにおいて、供給ステーション1は、複数のロボットユニット2の各々に作業用流体を供給するための作業用流体分岐部を有すること、を特徴とするので、複数のロボットユニット2に対する作業用流体の供給を効率よくでき、余分な配管等を減らすことができるため、全体の構成を単純化してコストを低減することができる。
【0050】
(6)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、供給ステーション1は、展開可能なアプローチスパンプレート15を有すること、アプローチスパンプレート15は、展開状態にある場合、少なくとも一端面が作業面と接触し、ロボットユニット2が、アプローチスパンプレート15上を移動可能であること、を特徴とするので、作業面5に溝Fが存在する場合でも、落下することなくロボットユニット2を溝Fの反対側に移動させることができる。
【0051】
(7)(1)乃至(5)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、供給ステーション1は、ロボットユニット2を収容する回収カプセル16を有し、ロボットユニット2は作業面から回収カプセル16の内に移動して回収されると共に、回収カプセル16の中から作業面に移動可能であること、を特徴とするので、ロボットユニット2を長い距離移動させる場合等に、短時間で安全に移動させることができる。
【0052】
(8)(6)に記載する作業ロボットシステムにおいて、前記アプローチスパンプレートは、前記ロボットユニットを収容する回収カプセルを有し、前記ロボットユニットは作業面から回収カプセルの内に移動して回収されると共に、前記回収カプセルの中から作業面に移動可能であること、を特徴とするので、ロボットユニット2の移動を容易に行うことができる。
【0053】
(9)(7)または(8)に記載する作業ロボットシステムにおいて、回収カプセル16は、ロボットユニット2の落下を防ぐための落下防止装置を有すること、を特徴とするので、供給ステーションを移動させている途中で、ロボットユニット2が回収カプセル16から脱落することがなく、安全に供給ステーション1を移動することができる。
【0054】
(10)(1)乃至(9)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、ロボットユニット2が、壁面清掃用装置を有し、作業面5が建物の鉛直壁面や傾斜壁面であり、牽引装置6が、建物の屋上に設置される巻き上げ機であり、巻き上げ機は吊りロープにより、供給ステーション1を吊り下げ上下に移動させること、供給ステーション1は、ロボットユニット2に洗浄水を供給すること、を特徴とするので、ビル等の外壁を効率的に清掃、洗浄することができる。
【0055】
(11)(1)乃至(10)に記載するいずれか1つの作業ロボットシステムにおいて、ロボットユニット2は、GPS装置及び無線発信装置を有し、GPS装置のGPS信号を、無線発信装置により遠隔コントロールシステムに発信すること、遠隔コントロールシステムは、受信した前記GPS信号により、ロボットユニットの位置を確認し、ロボットユニットの移動を制御すること、を特徴とするので、常時監視していなくても、作業対処の区画を指定しておけば、供給ステーション1及びロボットユニット2を自動的に移動して指定区画内の作業を行うことができる。
【0056】
上記の内容は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。本発明の主旨及び原則の範囲内で修改、等同置換や改良等を行って得たものは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。