【実施例】
【0018】
図1は実施例1に係る身体装着型冷却装置の全体構成を示す模式図である。
図1において、10は箱形の容器(本体ケース)であり、いずれも矩形の幅広の表側側面、裏側側面、底面、上面、および幅が狭い左右一対の側面を有して構成されている。この略6面体箱形の容器10の内部には液体、例えば水が注入されている。
この容器10は、例えばアルミニウムなどの熱伝導率が大きい薄い金属板で作製されている。そのサイズは、例えば縦200mm、横100mm、厚さ20mmとする。その表側側面または裏側側面は緩やかに湾曲させることもできる。この湾曲側面により身体への密着性を高めるためである。
容器10においては、上記一対の幅狭の側面の一方に開口(給水口)が形成され、この側面開口は板材である蓋11により開閉可能に配設され、側面から内部に液体を注入可能に構成されている。容器10の蓋11とは反対側の側面においてその下方位置には高さを変えて水位センサ12A、水位センサ12Bが固定されている。これらの水位センサ12A,12Bは、容器10が底面を最下方にて水平に位置させるとともに各側面が底面から直立した垂直に保持した状態での容器10内の液体の水位、すなわち液体残量を告知するものである。さらに、低い位置の水位センサ12Aに近接して(または一体化して)水温センサ13が配設されている。これらのセンサ12A,12B,13からの各出力信号は後述する制御機構に入力される。
また、容器10の上面(矩形)の一部には蒸気の排出口が形成されており、この排出口には弁14を介して排出管15の一端部が接続・連通されている。排出管15の一端部は垂直に(上方に向かって)延びて直角に屈曲して水平部となり、さらにその他端部は垂直に(下方に向かって)直角に屈曲して液体の排水分離部16に接続・連通している。
【0019】
排出管15は、垂直に配置された一端部15Aと、水平に配置された中間部15Bと、垂直に配設された他端部15Cとで構成されている。一端部15Aは容器10に接続されるとともに、他端部15Cは真空ポンプ24に弁23を介して接続されている。中間部15Bには金属パイプ19が外嵌されており、この金属パイプ19にはヒートポンプ(またはヒートパイプ)29より熱伝導シートなどを介して冷却媒体が送給される。すなわち、金属パイプ19は排出管15内部を通流する水蒸気を冷却し、液化する機能を有している。金属パイプ19、ヒートポンプ29が水蒸気の液化手段を構成している。
また、排出管15の一端部15Aには、容器10側に配置した弁14より離間して(発生した蒸気の排出における下流側に)空気口(空気孔とも記載する)17が形成されており、この空気口17を介して排出管15内外が連通可能な構成とされている。この空気口17は弁18により開閉される。
排出管15の中間部15Bは断面が同一径の円管であって直線状に延びており上述した金属パイプ19を挟んでその上流側である一端部15Aとの連結部分(屈曲部)には当該配管内を移動(摺動)可能なスイーパ20が配設されている。スイーパ20は先端に円板を固着したロッドをモータ駆動により往復動させる構成とすることができる。また、金属パイプ19よりも下流側部分には配管内に突出するセンサ(スイーパ当接検知器)21が配設されている。スイーパ20はこの直線状の中間部15B内をセンサ21との間で往復動し、管内の水滴、水蒸気を排出管15の他端部15C側に排出するよう構成されている。
排出管15の他端部15Cには上記排水分離部16との間に開閉弁22が配設されており、開閉弁22の下流側で真空ポンプ24の吸入口側には弁23が配設されている。なお、排水分離部16の下端部は液体排出管となって回収用の排水ケース25に接続されている。この排水ケース25も厚さの薄い箱状の容器であって蓋26により開閉自在とされている。
【0020】
真空ポンプ24のON/OFF、ヒートポンプ29のON/OFF、スイーパ20のON/OFF、および各弁の開閉は、制御機構により制御されている。なお、制御機構はCPU,RAM,ROM,I/Oを備えたマイクロチップを有して構成されている。すなわち、制御機構は、上記センサ出力を得て、あらかじめ設定したプログラムに基づき信号処理を行い、上記アクチュエータ類(ポンプ、スイーパ、弁など)の作動・稼働をコントロールしている。
図中、28はスイッチ、警報ブザーなど、また制御回路(制御機構)などが配設、内蔵された操作パネルであって、この操作パネル28、真空ポンプ24の電源であるDCバッテリ27は、以上の各部材(容器、排出管、ヒートポンプ、排水ケースなど)とともに、装着手段であるベストまたはベルト(単数または複数)にあって例えばそのポケットなどに挿入されることにより保持される構成である。なお、装着手段としては上記以外にも容器外面に面状ファスナを固着し、この面状ファスナにより装着者の衣服に装着することも考えられる。
この装着手段により、冷却の対象となる身体の任意の部分(例えば背中、腰、上腕など)に容器10が配置されるように身体に装着される。また、操作パネル28は、操作可能な位置に、例えば身体前面側の上腕、腹部、胸部などに配置されるように装着手段により装着されるものとする。
【0021】
図7(A),(B)は、この装着手段の一例としてのベストを示す。
これらの図において、100は、身体冷却装置の各部材を保持するとともに、身体(人体)の上半身に装着することができるベストである。
ベスト100は、これを身体に装着したとき内側に位置する薄い内布104と、人体に装着した時に外側に位置する外布106とで形成され、これらの内布104と外布106との間に形成された複数のポケット105を有している。
これらの内布104および外布106は、例えば通気性のあるメッシュ生地で形成されている。このように胸部および背部にポケット105を形成することにより、内臓等の熱を発生する部位、さらには褐色脂肪を有する部位を効果的に冷却し、かつ、胸筋や背筋等の大きな筋肉から熱を外部に逃すことができる。
身体への着用では、各ポケット105に液体容器、真空ポンプなどを配置・収納した後に衣服の上から着用する。
【0022】
この実施例1に係る身体装着型冷却装置の使用方法について以下説明する。
まず、冷却を必要とする身体部位、例えば背中(背部)に対して容器10の裏側側面が密着・当接するようにベスト100のポケット105に容器10を収納・固定する。容器10では排出管15の一端部15Aとの連結部が上方に位置し、底面が最下方に位置する。このとき、真空ポンプ24、回収ケース25などは別のポケット105に収納・固定する。操作パネル28については身体前面(腹部)などの操作が可能な位置(ポケットまたは衣服表面)に装着する。
この状態においては、容器10内には、水(体温より低い温度の例えば氷水)がその上限とされるまで満たされている。また、弁18により空気口(空気孔)17は閉止され、開閉弁22は閉とされている。さらに、ヒートポンプ29からは冷媒が金属パイプ19に供給されている。スイーパ20は原位置(中間部15Bの端部)にて待機している。
ここに、温度センサ13が所定温度を検知した場合、弁14および弁23は開放され、排出管15を介して容器10内と真空ポンプ24とは連通する。とともに、真空ポンプ24がONとなり、稼働する。この場合の真空ポンプ24の稼働開始温度は、例えば身体表面温度32℃に近い28℃とするが、急速冷却の場合は20℃、ゆっくりと冷却する場合は30℃とし、これら運転開始温度の設定を切り替え可能とする。
真空ポンプ24の稼働により、排出管15を介して容器10内は減圧され、容器10内の液体(水)は設定温度にて沸騰する。沸騰により蒸発した水蒸気は、排出管15Aを通り上昇し、水平部15Bから金属パイプ19が外嵌めされた部分を通過する際ここで冷却されて液体、大部分が水となる。水は残りの水蒸気とともに他端部15Cより排出される。真空ポンプ24の稼働により水温が28℃より低下した場合、真空ポンプ24を停止する。同時に空気孔17を開けることで排出管15内が大気圧に戻り、取り込まれた空気によって、排出管15内にとどまっていた水蒸気が液化し、かつ付着していた水滴を排水分離部16の方向に移動させる。仕上げに排出管15内に溜まる水滴についてはスイーパ20を駆動して排水分離部16方向にスイープする(押し出す)。押し出した後、スイーパ20は原位置に復帰させる。このとき、弁14,弁23は閉じる。
この水が減圧沸騰することにより水蒸気が発生するが、この水蒸気の発生により気化潜熱が外部すなわち身体表面から奪われることとなる。例えば沸騰温度が25℃では584cal/gの潜熱が必要とされる。よって、この容器10および排出管15を介して身体表面は冷却されることとなる。
そして、沸騰が進み容器10内の水位が低下した場合水位センサ12Bが信号を出力すると、操作パネル部28にて警報音(ブザー)が例えば数秒間だけ鳴らされる。さらに水位が低下すると、水位センサ12Aが検知し、警報音とともに、真空ポンプ24などの作動は停止する。
なお、排出管15の他端部15Cからの水の排水ケース25への回収は、弁23を閉じ、開閉弁22を開いて行う。
【0023】
図2は、この発明に係る身体装着型冷却装置の他の実施例(実施例2)を示す。
この実施例2に係る冷却装置にあっては、容器30内に布帛(繊維質吸水材)31を配置し、かつ、容器30内に水を追加供給するためのリザーバ32をこれに付設した点が、実施例1のそれとは異なる構成である。以下、この2点について詳細に説明し、他の構成要素については実施例1のそれと同等でありその重複説明は省略する。
第1に、薄い箱形の容器30の内部は仕切り壁33により液体である水の注入室30Aと、布帛31が内部に保持された設置室30Bとに分離されている。これらの隣接する2室30A,30Bは、設置室30Bの最下方位置に設けたスリット乃至小孔34を介して連通しており、この小孔34を介して繊維である布帛31の下端部が注入室30Aに進出して設置された構成とされている。
布帛31は繊維(天然繊維または化学繊維)を織り上げた例えば所定大きさの4角形状であって、下端が注入室30A内に、上端部が注入室30Aの上端側に給水孔35(水蒸気排出用)を介して設置されている。布帛31の残りの大部分が設置室30Bの蓋36との間に形成された隙間部分に垂直方向に延びてセットされている。よって、注入室30A内の水はこの布帛31に毛管現象により吸い上げられて保持されることとなる。布帛31は水平な上端側部分、垂直な中間部分および下部についても水を含むように構成されている。蓋36は容器30の側面部分を開閉し、布帛31の交換などを可能としてある。
また、容器30の注入室30A内には高さ位置に応じて4つの水位センサ41,42,43,44が下から上に向かって略等間隔でこの順番に配置されており、最下部のセンサ41部分には温度センサ(水温検出用)も配置されている。
さらに、容器30の天井部分に形成した複数の小孔からなる給水孔35は、弁または開閉板などにより開閉される構造である。
【0024】
第2の点として、この容器30の上端面には同じく略直方体形状の箱形容器であるリザーバ45が付設(直立した状態で)されている。リザーバ45は容器30よりもわずかに小容量であって、その下端面には連通孔とこれを開閉する弁46が配設されている。
また、その中間高さよりわずかに下方位置には水位センサ47が配設されている。
図中、45Aは箱(リザーバ45)の上面を形成する蓋であり、この蓋45Aを取り外して給水をリザーバ45に行える構成である。さらには、このリザーバ45の一側面には金属板48が密着・配置されており、この金属板48から熱伝導度の高い素材を使用した熱伝導シート49などにより上記金属パイプ19を冷却することができる構成である。
その他の構成については実施例1のそれと同等であるが、ヒートポンプについては上記リザーバ45の側面に密着させた金属板48がその機能を代替する。すなわち、リザーバ45内の水で比較的低温とされた金属板48が熱伝導シート49により金属パイプ19を介して排出管15内の比較的高温の水蒸気を冷却・液化する役割を果たすこととなる。
【0025】
この実施例に係る身体装着型冷却装置にあっては、容器30内に布帛31を付加することにより液体(水)の蒸発面積を増大させている。この結果、単位時間当たりの水蒸気量が増す結果となる。すなわち、蒸発潜熱についても短時間での吸熱作用が発生し、冷却時間の短縮が図ることができる。
なお、水位センサ41〜44により水位の検出を行い、水位が低下したとき、警報を発するとともに、この実施例2にあっては、弁46を開いてリザーバ45から容器30への給水を行う。このとき、注水室30Aへの給水用小孔群35は開口されている。
リザーバ45への給水はその中間高さよりやや下方位置のセンサ47により水量を検出して蓋45Aを開けて行う。
その他の作用効果については、真空ポンプ24の作動により容器30内を減圧して水を沸騰させて水蒸気とする際の気化潜熱により身体各部位の冷却を行うことは上記実施例1の場合と同等である。
【0026】
図3は実施例3に係る身体装着型冷却装置の全体構成を模式図として示す。
この実施例3にあっては、実施例1の装置に対してペルチェ素子51を追加したものであり、その他の構成については実施例1のそれと同等である。
すなわち、液体容器52についてその一側面に、この側面と同等のサイズの板材で構成した異なる金属製の2枚の金属板を積層してなるペルチェ素子51を熱伝導性良好なシール材で貼付したものである。ペルチェ素子51の外面には金属板53が同様にシール材を介して貼り付けられている。
この結果、ペルチェ素子51の外面が金属板(アルミなどの熱伝導度の高い金属を使用する)53で覆われるため、金属板53が身体各部位に直接に、または、衣服を介して(間接に)接触するため、ペルチェ素子51を操作パネル28の操作でONとした場合、この金属板53を介して吸熱作用、すなわち冷却作用が行われることとなる。
一方、ペルチェ素子51の放熱側は容器52外面に接しているため、真空ポンプ24のON動作で減圧された容器52内部の水が沸騰する温度をこのペルチェ素子51の放熱によりコントロールすることができる。ペルチェ素子51からの加熱により水が沸騰し、水蒸気を発生させる。この結果、気化潜熱(蒸発潜熱)によりさらに身体各部における冷却効果を得ることができる。
なお、実施例3に係る装置にあっては、温度センサが設定温度を超えるとき、真空ポンプ24を作動させる。そして、この真空ポンプ24の稼働により発生した水蒸気を例えばセンサで検知したとき、真空ポンプ24の運転を停止する。そして、弁18により空気口17を開いて排出管15内に外気を取り込み、管内で液化していない水蒸気をその圧力差により液化する。管内に残る水とこの液化した水はスイーパ20で(または流入空気の流れで)弁22を介して排水ケース25内に排出する(このとき弁23は閉じている)。
【0027】
図4は実施例4に係る身体装着型冷却装置を示す。
この実施例にあっては、実施例2における繊維質吸水材(布帛)を備えた液体入り容器、そのリザーバに対して実施例3に係るペルチェ素子64を付設した例である。すなわち、図中62は容器で、注入室と設置室とを備え、布帛61がこの設置室に介挿されている。リザーバ63は容器62の上面に付設されている。ペルチェ素子64はこの容器62の後側面に密着して配設されている。
なお、繊維質吸水材は、布帛,紐を複数本並列に設けたもの、またはネット状に編んだものを含む。
この冷却装置の作用については上記各実施例2,3のそれと同等とする。
すなわち、ペルチェ素子64で冷却し、減圧沸騰による気化潜熱での冷却を併せて行う。水蒸気は液化して水として回収する。さらに、装着手段を駆使して必要な身体の部位に容器62を直接にまたは間接に密着させる。
なお、上記各実施例にて使用する冷却用のヒートパイプ29は、熱伝導性が高い材質からなるパイプ中に揮発性の液体(作動液)を封入したもので、パイプ中の一方を加熱し、もう一方を冷却することで、作動液の蒸発(潜熱の吸収)作動液の凝縮(潜熱の放出)のサイクルが発生し熱を移動する。
【0028】
図5は実施例5に係る身体装着型冷却装置を示す。
この実施例5にあっては、実施例1に係る冷却装置について容器(本体ケース)52の一側面に保冷剤パック55を密着して配設してある。容器内部には液体が注入されており、液体が沸騰して蒸発した蒸気は、通路15を通って回収容器16に排出される構成である。その際、通路15の一部は金属パイプ19でその外面が取り囲まれており、蒸気は冷却されて液体となり回収される。
上記容器52の外面に接して設けられた保冷剤パック55は、冷凍された状態で使用が開始される。保冷剤55の冷却効果とともに、上記各実施例と同様に容器内液体の減圧沸騰による気化潜熱による冷却効果をも併せて発揮することとなる。
その他の構成、作用については、その説明は重複をさけるため、省略する。
【0029】
図6はこの発明の実施例6に係る身体装着型冷却装置を示す。
この実施例では、液体が注入された容器52の一側面にペルチェ素子51を配設し、さらにこのペルチェ素子51の側面に保冷剤パック55を密着して配設したものである。その他の部材などは上記実施例5の場合と同様に構成されている。
この実施例にあっては、冷凍された保冷剤パック55による冷却効果とこれをペルチェ素子51の吸熱作用とが相俟って、さらには減圧沸騰による気化潜熱により身体各装着部位における冷却効果を高めることができる。例えば装着手段であるベストの背部ポケットにこの三層構造の保冷剤パック55,ペルチェ素子51,容器52を収納して褐色脂肪部分を効率的に冷却することができる。
その他の作用については上記各実施例と同等とする。