(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
通常、洗濯機、特に集合住宅に設置される洗濯機は防水パンの上に配置されている。
【0003】
防水パンは洗濯機が載置される台座を四隅に備えるとともに、外周に壁部が形成された箱状であって、底面に開口を有している。当該開口には排水トラップと呼ばれる排水機器を取り付けられており、防止パン上に生じた排水を下水へと排出するための排水口を形成している。
上記防水パンに取り付けられる排水トラップは、洗濯機からの排水を排出する第一流路と、防水パンからの排水を排出する第二流路を形成しており、排水トラップ内部で第一流路と第二流路が合流するように形成されている。又、排水トラップは内部に排水を貯留可能な封水部を有しており、貯留された排水によって排水流路を満水/水封状態にすることで、下流側から屋内に臭気や害虫が侵入することを防ぐトラップ機能を形成する。
上記構造により、防水パンは、洗濯機の故障や接続不良等により排水が生じた際、室内が水浸しになることを防ぐことができるとともに、排水トラップを通じて排水を下水へと排出することができる。
【0004】
しかし、上記排水トラップは、洗濯機からの排水を排出する第一流路において多量の排水が生じた際、該排水が第二流路へと逆流してしまい、防水パン上に溢れ出しまうという問題があった。
【0005】
上記問題の解決のために、第二流路に逆止め弁と呼ばれる逆流防止装置を設けた排水トラップが知られている。
逆止め弁は一方へと流れようとする気体、液体、泡等の流体が生じた際はその圧力に対して第二流路を開口し、流体を下流側へと排出することが可能であり、逆に、他方へと流れようとする流体が生じた際はその圧力に対して第二流路を閉塞し、流体が上流側へと逆流することを防ぐ構造となっている。
【0006】
特許文献1には第二流路にフロート式逆止め弁を設けた排水トラップが記載されている。フロート式逆止め弁はフロートと呼ばれる、水よりも比重の軽い弁体を利用し、下流側からの流体が生じた際には弁体が排水によって上昇し、第二流路を閉塞することで逆流を防ぐことができる。しかし、洗濯機から排出される排水は洗剤によって泡立てられた、泡混じりの排水であることが多い。当該泡混じりの排水は内部に空気を含んでいることから体積あたりの質量が小さく、弁体が逆止め弁が正常に作動しないことが多く、排水の逆流を確実に防ぐことは困難であった。
特許文献2には第二流路に自封式逆止め弁を設けた排水トラップが記載されている。自封式逆止め弁は略筒体状であって可撓性を有するゴムやシリコン等の素材から成り、端部において筒体の内面同士が当接することによって流路を閉塞する構造となっている。特許文献2に記載の自封式逆止め弁は第二流路に対して水密に接続されており、下流側からの流体が生じた際には、筒体の端部が閉塞を維持して第二流路を閉塞することで逆流を防ぐことができる。そして、上流側からの流体が生じた際には、当該流体の圧力によって端部が押し広げられて開口し、排水を下水側へと排出する構造となっている。しかし、特許文献2に記載の自封式逆止め弁はその端部が封水内に浸されており、劣化が激しいという問題があった。自封式逆止め弁が劣化した場合、端部が常に開口状態となってしまうことがあり、当該状態においては下流側からの逆流を防ぐことが困難であった。
特許文献3には第二流路にスイング式逆止め弁を設けた排水トラップが記載されている。スイング式逆止め弁は板状の弁体を有し、当該弁体の一端が回動可能に固定(軸支)されており、下流側からの流体が生じた際には弁体が第二流路を閉塞することで逆流を防ぐことができる。そして、上流側からの流体が生じた際には、当該流体の圧力によって弁体が回動して開口し、排水を下水側へと排出する構造となっている。しかし、特許文献3に記載のスイング式逆止め弁は、その上方が回動可能に固定されており、上流側及び下流側から正圧も負圧も付与されていない状態において閉塞状態を維持している。しかし、当該閉塞状態においては弁体の下端が自重によって下方を向いているだけである。従って、弁体は容易に開口可能であり、下流側からの流体が生じた際には弁体が閉塞できないことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、洗濯機用防水パンに取り付けられる、第二流路に各種逆止め弁を設けた排水トラップは、それぞれにおいて何らかの問題点を有している。そこで、本発明においては、従来の第二流路に各種逆止め弁を設けた排水トラップが有する、1.逆流防止機能の向上、2.逆止め弁の劣化防止、等の課題を解決するための排水トラップの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、洗濯機の下方に配置された防水パンに取り付けられる排水トラップにおいて、
洗濯機からの排水が流入する第一流路と、
防水パンからの排水が流入する第二流路と、
第一流路及び第二流路からの排水が排出される排出口と、
前記第一流路又は第二流路から流入した排水を貯留して封水を形成する封水部と、
前記第二流路に設けられて、下流側からの排水等の逆流を防止する逆流防止機構を備える逆止め弁と、から成り、
前記逆止め弁は、略筒体状にして可撓性を有する素材からなり、筒体の一方へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して弾性変形して筒体内部を開口して流体を通過させると共に、筒体の他方へ流れようとする流体の圧力に対しては筒体が閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する逆止め弁であって、
前記逆止め弁は、平時には筒体の一部において内面同士が当接することで筒体が閉塞している状態を維持し、且つその下端が封水よりも上方に位置し
、
第二流路からの排水は、封水部を通過しなくとも排出口から排出可能に構成されていることを特徴とする排水トラップである。
【0010】
請求項
2に記載の本発明は、洗濯機の下方に配置された防水パンに取り付けられる排水トラップにおいて、
洗濯機からの排水が流入する第一流路と、
防水パンからの排水が流入する第二流路と、
第一流路及び第二流路からの排水が排出される排出口と、
前記第一流路又は第二流路から流入した排水を貯留して封水を形成する封水部と、
前記第二流路に設けられて、下流側からの排水等の逆流を防止する逆流防止機構を備える逆止め弁と、から成り、
前記逆止め弁は、一方へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して弁体が回動することによって開口して流体を通過させると共に、他方へ流れようとする流体の圧力に対しては弁体が閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する逆止め弁であって、
前記逆止め弁は、平時には第二流路に設けられた当接部と弁体が当接することで閉塞している状態を維持するよう、当接部に向けて力が加えられている
と共に、
第二流路からの排水は、封水部を通過しなくとも排出口から排出可能に構成されていることを特徴とする排水トラップである。
【0011】
請求項
3に記載の本発明は、洗濯機の下方に配置された防水パンに取り付けられる排水トラップにおいて、洗濯機からの排水が流入する第一流路と、
防水パンからの排水が流入する第二流路と、
第一流路及び第二流路からの排水が排出される排出口と、
前記第一流路又は第二流路から流入した排水を貯留して封水を形成する封水部と、
前記第二流路に設けられて、下流側からの排水等の逆流を防止する逆流防止機構を備える逆止め弁と、から成り、
前記逆止め弁は、弁体を当接部に向けて付勢する付勢機構を有し、平時には第二流路に設けられた当接部と弁体が当接することで閉塞している状態を維持し、一方へ流れようとする気体、液体、泡などの流体の圧力に対して弁体が上下又は左右に可動することによって開口して流体を通過させると共に、他方へ流れようとする流体の圧力に対しては弁体が閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する逆止め弁である
と共に、
第二流路からの排水は、封水部を通過しなくとも排出口から排出可能に構成されていることを特徴とする排水トラップである。
【0012】
請求項
4に記載の本発明は、前記付勢機構が弾性体又は磁力によるものであることを特徴とする請求項
3に記載の排水トラップである。
【0013】
請求項
5に記載の本発明は、前記逆止め弁が第二流路から着脱可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項
4のいずれか1つに記載の排水トラップである。
【0014】
請求項6に記載の本発明は、前記排水トラップにおいて、第二流路からの排水は、封水部に流入した後、封水によって流路が満水状態となっている部分を通過しなくとも封水部の外側に排出されることが可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の排水トラップである。
【発明の効果】
【0015】
請求項
1に記載の本発明によれば、逆止め弁が平時において第二流路を閉塞していることにより、第一流路より泡混じりの排水等、比重の軽い流体が流入しても、第二流路より逆流することを防ぐことができる。又、逆止め弁の下端が封水よりも上方に位置していることから、逆止め弁の劣化を抑えることができる。
請求項
2に記載の本発明によれば、逆止め弁が平時において第二流路を閉塞していることにより、第一流路より泡混じりの排水等、比重の軽い流体が流入しても、第二流路より逆流することを防ぐことができる。
請求項
3及び請求項
4に記載の本発明によれば、逆止め弁が平時において第二流路を閉塞していることにより、第一流路より泡混じりの排水等、比重の軽い流体が流入しても、第二流路より逆流することを防ぐことができる。
請求項
5に記載の本発明によれば、逆止め弁を第二流路から着脱可能とすることにより、逆止め弁の清掃性を向上させることができる。
【0016】
尚、ここにいう「平時」とは、上流からの流体の流入や、下流からの流体の逆流等の生じていない普段の状態を指す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の排水トラップを説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。又、以下の実施形態においては
図2、図4、図6に示す状態を基準として位置関係を説明する。
【0019】
以下に、本発明の第
一実施形態について
図1、図2及び図3を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る排水トラップ1は、設備機器としての洗濯機100の下方に配置された防水パン200の開口に取り付けられている。
【0021】
防水パン200は平面視略正方形であって、その四隅に洗濯機100を載置するための台座部を備えるとともに、外周が壁部によって覆われた略箱状であり、底面において円形の開口を有している。当該開口には排水トラップ1が取り付けられている。
【0022】
図
2に示すように、排水トラップ1は、洗濯機100及び防水パン200上の排水を下水側へと排出処理するための部材であって、フランジ部4、本体部7、封水部9、蓋部材11、逆止め弁20、エルボ21より構成されている。又、排水トラップ1は、洗濯機100からの排水が流入する第一流路2と、防水パン200からの排水が流入する第二流路3を有している。
上記排水トラップ1は封水部9の内部に排水が貯留可能であり、当該封水部9に貯留された排水を「封水」という。そして、当該封水が貯留されている状態において、下流からの臭気、害虫等が屋内へと逆流することを防ぐトラップ機能を形成することができる。
【0023】
フランジ部4は円筒状であって、その上端において外側に延出された外フランジ5を有するとともに、下端において内側に延出された内フランジ6を有している。又、フランジ部4は外周において雄螺子が形成されており、後述する本体部7と螺合されている。尚、フランジ部4の外周は前記防水パン200の開口よりも小径であり、外フランジ5は防水パン200の開口よりも大径に形成されている。
【0024】
本体部7は有底略円筒状にして側面に排出口8を備えるとともに上方に開口部を備え、当該開口部において上記フランジ部4の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成されている。
【0025】
封水部9は有底筒状であってその上方が開口された箱状であって、側面上部において、周方向に複数の切り欠き10が形成されている。切り欠き10は略四角形であって、封水部9は切り欠き10下端まで排水(封水)を貯留することができる。尚、封水部9はその上端がフランジ部4の下端に設けられた内フランジ部分に載置されている。
【0026】
蓋部材11は第一開口12、第二開口13、防臭筒14、逆止め弁20より構成された円形の蓋体であって、本体部7の上方を閉塞するとともに、その上端がフランジ部4の上端と略面一となるようにフランジ部4内部に配置されている。
第一開口12は後述するエルボ21が取り付けられて、洗濯機100からの排水を流出させる第一流路2を形成する開口であって、裏面より防臭筒14が延設されている。
第二開口13は防水パン200上に生じた排水を流出させる第二流路3を形成する開口であって、逆止め弁20を形成する弁体19が取り付けられている。
防臭筒14は第一開口12の裏面より垂設された円筒部であって、施工完了状態において、防臭筒14の下端は、前記封水部9の底面よりも上方且つ切り欠き10の下端よりも下方に配置されている。
逆止め弁20は取付部22、弁体19から構成され、第二開口13の上方から差し込まれることによって着脱可能に取り付けられている。取付部22は円筒状であって、外径が第二開口13の内径と略同一に形成され、下端には弁体19が取り付けられている。弁体19は円筒形の略筒体状にして可撓性を有するシリコンやゴム等の素材から成り、その正面及び背面において、上流側から下流側に向かうにつれて漸次近接する傾斜面を有し、当該傾斜面の内面同士が当接することで筒体が閉塞している状態を維持している。従って、逆止め弁20に対して上流からの流体の流入や、下流からの流体の逆流が生じていない状態(以下、「平時」)において逆止め弁20は閉塞状態を維持している。
又、逆止め弁20は第二開口13の上方から差し込まれることで着脱可能に取り付けられており、弁体19の端部が上記封水部9の切り欠き10下端よりも上方に位置するように配置されている。従って、封水部9の内部に排水が貯留された状態であっても、弁体19は排水に浸されない位置に配置されている。上記逆止め弁20は上流側から流体の圧力に対しては弁体19が弾性変形し、逆止め弁20の内面同士の当接が押し広げられることによって開口するが、下流側からの流体の圧力に対しては内面同士の当接による閉塞が維持されることによって流体の通過を防止する。
【0027】
エルボ21は側面視略L字状の配管であって、上流側において洗濯機100と連結されたジャバラ状の可撓管(図示せず)と連結し、その下方において後述する蓋部材11の第一開口12と連結している。即ち、エルボ21は洗濯機100からの排水が流入する第一流路2を構成する。
【0028】
ここで、上記排水トラップ1は第一開口12により洗濯機100からの排水流路である第一流路2を形成するとともに、第二開口13により防水パン200からの排水流路である第二流路3を形成し、封水部9において第一流路2と第二流路3が合流する構造となっている。
【0029】
上記構成から成る排水トラップ1は、防臭筒14の下端が封水内に配置されるため、防臭筒14の内外の流路は排水によって満水状態となっており、下流側から屋内に臭気や害虫が侵入することを防ぐことができるトラップ機能を形成している。
【0030】
上記の排水トラップ1において、洗濯機100より排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0031】
まず、洗濯機100より生じた排水は可撓管、エルボ21を通じて、第一流路2である第一開口12より、防臭筒14封水部9内へと流入する。この時、第一開口12より流入した排水は防臭筒14の内部を下方へ向けて流れ、封水部9の底面にてその流れを反転させ、防臭筒14の外周と封水部9の内周によって形成された流路を上昇する。そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
この時、防臭筒14を通過した排水の一部は第二流路3へと流入しようとするが、第二流路3に設けられた逆止め弁20は弁体19の内面同士が当接した状態となっており、第二流路3が閉塞されていることから、排水が防水パン200上に溢れることはない。さらに、逆止め弁20は平時において第二流路3を閉塞していることから、洗濯機100からの排水に多量の泡が含まれている場合であっても、当該排水が第二流路3から逆流してしまうことはない。
そして、洗濯機100からの排水が終了した際、当該排水の一部は封水部9の中に貯留され、再び封水を形成する。
【0032】
次に、防水パン200上に排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0033】
まず、防水パン200上に排水が生じた際、当該排水は防水パン200上を流れ、第二流路3である第二開口13を通じて封水部9内へと流入する。
この時、図
3に示すように、排水の自重/勢いにより弁体19の内面が押し広げられ、第二流路3が開口されることにより、防水パン200上に生じた排水は排水トラップ1内部へと流入する。(尚、図
3においては参考として逆止め弁20と排水の流れのみを記載し、排水の流れを2点鎖線にて記載している。)そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
そして、防水パン200上の排水が終了した際には、弁体19は自身の弾性力によって再び閉塞状態となる。
【0034】
即ち、本実施形態に設けられた逆止め弁20は、略筒体状にして可撓性を有する素材からなり、一方へと流れようとする気体、液体、泡等の流体の圧力に対して弾性変形して筒体内部を開口して流体を通過させると共に、筒体の他方へと流れようとする流体の圧力に対しては逆止め弁20の内面同士が当接して閉塞した状態を維持して流体の通過を防止する自封式逆止め弁20として機能する。
【0035】
本発明の第
一実施形態は以上であるが、上記第
一実施形態に係る排水トラップ1の逆止め弁20は、平時において第二流路3を閉塞している状態を維持している。従って、洗濯機100からの排水中に多量の泡が混入していたとしても、当該排水を防水パン200上へと逆流させることはない。又、逆止め弁20の下端は封水水面よりも上方に位置していることから、長期使用に伴う劣化が生じ難い。
又、逆止め弁20は第二流路3より着脱可能であり、その清掃を容易に行うことができる。
【0036】
次に、本発明の第
二実施形態について
図1、図
4及び図
5を用いて説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る排水トラップ1は、設備機器としての洗濯機100の下方に配置された防水パン200の開口に取り付けられている。
【0038】
防水パン200は平面視略正方形であって、その四隅に洗濯機100を載置するための台座部を備えるとともに、外周が壁部によって覆われた略箱状であり、底面において円形の開口を有している。当該開口には排水トラップ1が取り付けられている。
【0039】
図
4に示すように、排水トラップ1は、洗濯機100及び防水パン200上の排水を下水側へと排出処理するための部材であって、フランジ部4、本体部7、封水部9、蓋部材11、逆止め弁20、エルボ21より構成されている。又、排水トラップ1は、洗濯機100からの排水が流入する第一流路2と、防水パン200からの排水が流入する第二流路3を有している。
上記排水トラップ1は封水部9の内部に排水が貯留可能であり、当該封水部9に貯留された排水を「封水」という。そして、当該封水が貯留されている状態において、下流からの臭気、害虫等が屋内へと逆流することを防ぐトラップ機能を形成することができる。
【0040】
フランジ部4は円筒状であって、その上端において外側に延出された外フランジ5を有するとともに、下端において内側に延出された内フランジ6を有している。又、フランジ部4は外周において雄螺子が形成されており、後述する本体部7と螺合されている。尚、フランジ部4の外周は前記防水パン200の開口よりも小径であり、外フランジ5は防水パン200の開口よりも大径に形成されている。
【0041】
本体部7は有底略円筒状にして側面に排出口8を備えるとともに上方に開口部を備え、当該開口部において上記フランジ部4の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成されている。
【0042】
封水部9は有底筒状であってその上方が開口された箱状であって、側面上部において、周方向に複数の切り欠き10が形成されている。切り欠き10は略四角形であって、封水部9は切り欠き10下端まで排水(封水)を貯留することができる。尚、封水部9はその上端がフランジ部4の下端に設けられた内フランジ部分に載置されている。
【0043】
蓋部材11は第一開口12、第二開口13、防臭筒14、逆止め弁20より構成された円形の蓋体であって、本体部7の上方を閉塞するとともに、その上端がフランジ部4の上端と略面一となるようにフランジ部4内部に配置されている。
第一開口12は後述するエルボ21が取り付けられて、洗濯機100からの排水を流出させる第一流路2を形成する開口であって、裏面より防臭筒14が延設されている。
第二開口13は防水パン200上に生じた排水を流出させる第二流路3を形成する開口であって、上方より逆止め弁20が挿通されている。
防臭筒14は第一開口12の裏面より垂設された円筒部であって、施工完了状態において、防臭筒14の下端は、前記封水部9の底面よりも上方且つ切り欠き10の下端よりも下方に配置されている。
逆止め弁20は取付部22、弁体19から構成された筒体であって、第二開口13の上方から差し込まれることで着脱可能に取り付けられている。取付部22は円筒状であって、下端には弁体19が当接する当接部16が形成されているとともに、弁体19が回動可能に軸支されている。弁体19は板体であって、一端側において当接部16と当接する弁部分を有すると共に、軸支部分を挟んだ他端において重り23が取り付けられている。ここで、逆止め弁20が取り付けられた状態において、弁体19は一端側に設けられた重り23によって、他端側が上方へと持ち上げられて当接部16と当接し、第二流路3を閉塞するよう力が加えられている。従って、逆止め弁20に対して上流からの流体の流入や、下流からの流体の逆流が生じていない状態(以下、「平時」)において逆止め弁20は閉塞状態を維持している。
【0044】
エルボ21は側面視略L字状の配管であって、上流側において洗濯機100と連結されたジャバラ状の可撓管(図示せず)と連結し、その下方において後述する蓋部材11の第一開口12と連結している。即ち、エルボ21は洗濯機100からの排水が流入する第一流路2を構成する。
【0045】
ここで、上記排水トラップ1は、第一開口12により洗濯機100からの排水流路である第一流路2を形成するとともに、第二開口13により防水パン200からの排水流路である第二流路3を形成し、封水部9において第一流路2と第二流路3が合流する構造となっている。
【0046】
上記構成から成る排水トラップ1は、防臭筒14の下端が封水内に配置されるため、防臭筒14の内外の流路は排水によって満水状態となっており、下流側から屋内に臭気や害虫が侵入することを防ぐことができるトラップ機能を形成している。
【0047】
上記の排水トラップ1において、洗濯機100より排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0048】
まず、洗濯機100より生じた排水は可撓管、エルボ21を通じて、第一流路2である第一開口12より、防臭筒14を通り封水部9内へと流入する。この時、第一開口12より流入した排水は防臭筒14の内部を下方へ向けて流れ、封水部9の底面にてその流れを反転させ、防臭筒14の外周と封水部9の内周によって形成された流路を上昇する。そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
この時、防臭筒14を通過した排水の一部は第二流路3へと流入しようとするが、第二流路3に設けられた逆止め弁20の弁体19は当接部16に当接した状態となっており、逆止め弁20によって第二流路3が閉塞されていることから、排水が防水パン200上に溢れることはない。又、洗濯機100から多量の排水が生じた際には、当該排水は弁体19を上方へ向けて付勢する方向に流れることから、弁体19が当接部16から離間することはない。さらに、逆止め弁20は平時において第二流路3を閉塞していることから、洗濯機100からの排水に多量の泡が含まれている場合であっても、当該排水が第二流路3から逆流してしまうことはない。
そして、洗濯機100からの排水が終了した際、当該排水の一部は封水部9の中に貯留され、再び封水を形成する。
【0049】
次に、防水パン200上に排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0050】
まず、防水パン200上に排水が生じた際、当該排水は防水パン200上を流れ、第二流路3である第二開口13を通じて封水部9内へと流入する。
この時、図
5に示すように、排水の自重/勢いにより弁体19が押し下げられて回動し、第二流路3が開口され、防水パン200上に生じた排水は排水トラップ1内部へと流入する。(尚、図
5においては参考として逆止め弁20と排水の流れのみを記載し、排水の流れを2点鎖線にて記載している。)そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
そして、防水パン200上の排水が終了した際には、排水によって押し下げられていた弁体19が重り23の重みによって回動し、当接部16に当接することによって第二流路3を再び閉塞する。
【0051】
即ち、本実施形態に設けられた逆止め弁20は、一方へと流れようとする気体、液体、泡等の流体の圧力に対して弁体19が回動することによって開口して流体を通過させると共に、他方へと流れようとする流体の圧力に対しては弁体19が第二流路3を閉塞した状態を維持して流体の通過を防止するスイング式逆止め弁20として機能する。
【0052】
本発明の第
二実施形態は以上であるが、上記第
二実施形態に係る排水トラップ1の逆止め弁20は、平時において第二流路3を閉塞している状態を維持している。従って、洗濯機100からの排水中に多量の泡が混入していたとしても、当該排水を防水パン200上へと逆流させることはない。
【0053】
又、上記第
二実施形態においては、重り23を設けることにより平時において弁体19と当接部16を当接させていたが、重り23の代わりにスプリングを用いて弁体19を当接部16と当接させても良い。又、磁石を用いて磁力により弁体19を当接部16と当接させても良い。
又、逆止め弁20は第二流路3より着脱可能であり、その清掃を容易に行うことができる。
【0054】
次に、本発明の第
三実施形態について
図1、図
6及び図
7を用いて説明する。
【0055】
図1に示すように、本実施形態に係る排水トラップ1は、設備機器としての洗濯機100の下方に配置された防水パン200の開口に取り付けられている。
【0056】
防水パン200は平面視略正方形であって、その四隅に洗濯機100を載置するための台座部を備えるとともに、外周が壁部によって覆われた略箱状であり、底面において円形の開口を有している。当該開口には排水トラップ1が取り付けられている。
【0057】
図
6に示すように、排水トラップ1は、洗濯機100及び防水パン200上の排水を下水側へと排出処理するための部材であって、フランジ部4、本体部7、封水部9、蓋部材11、逆止め弁20、エルボ21より構成されている。又、排水トラップ1は、洗濯機100からの排水が流入する第一流路2と、防水パン200からの排水が流入する第二流路3を有している。
上記排水トラップ1は封水部9の内部に排水が貯留可能であり、当該封水部9に貯留された排水を「封水」という。そして、当該封水が貯留されている状態において、下流からの臭気、害虫等が屋内へと逆流することを防ぐトラップ機能を形成することができる。
【0058】
フランジ部4は円筒状であって、その上端において外側に延出された外フランジ5を有するとともに、下端において内側に延出された内フランジ6を有している。又、フランジ部4は外周において雄螺子が形成されており、後述する本体部7と螺合されている。尚、フランジ部4の外周は前記防水パン200の開口よりも小径であり、外フランジ5は防水パン200の開口よりも大径に形成されている。
【0059】
本体部7は有底略円筒状にして側面に排出口8を備えるとともに上方に開口部を備え、当該開口部において上記フランジ部4の雄螺子部と螺合する雌螺子部が形成されている。
【0060】
封水部9は有底筒状であってその上方が開口された箱状であって、側面上部において、周方向に複数の切り欠き10が形成されている。切り欠き10は略四角形であって、封水部9は切り欠き10下端まで排水(封水)を貯留することができる。尚、封水部9はその上端がフランジ部4の下端に設けられた内フランジ部分に載置されている。
【0061】
蓋部材11は第一開口12、第二開口13、防臭筒14、逆止め弁20より構成された円形の蓋体であって、本体部7の上方を閉塞するとともに、その上端がフランジ部4の上端と略面一となるようにフランジ部4内部に配置されている。
第一開口12は後述するエルボ21が取り付けられて、洗濯機100からの排水を流出させる第一流路2を形成する開口であって、裏面より防臭筒14が延設されている。
第二開口13は防水パン200上に生じた排水を流出させる第二流路3を形成する開口であって、上方より逆止め弁20が挿通されている。
防臭筒14は第一開口12の裏面より垂設された円筒部であって、施工完了状態において、防臭筒14の下端は、前記封水部9の底面よりも上方且つ切り欠き10の下端よりも下方に配置されている。
逆止め弁20は取付部22、弁体19、当接部16から構成された筒体であって、第二開口13の上方から差し込まれることで着脱可能に取り付けられている。取付部22は円筒状であって、下端には弁体19が当接する当接部16が形成されているとともに、弁体19が上下動可能に軸支されている。弁体19は板状であって、下方より付勢機構として弾性体であるスプリング24によって上方の当接部16へと付勢されている。ここで、逆止め弁20が取り付けられた状態において、弁体19は付勢機構によって当接部16と当接し、第二流路3を閉塞するよう力が加えられている。従って、逆止め弁20に対して上流からの流体の流入や、下流からの流体の逆流が生じていない状態(以下、「平時」)において逆止め弁20は閉塞状態を維持している。
【0062】
エルボ21は側面視略L字状の配管であって、上流側において洗濯機100と連結されたジャバラ状の可撓管(図示せず)と連結し、その下方において後述する蓋部材11の第一開口12と連結している。即ち、エルボ21は洗濯機100からの排水が流入する第一流路2を構成する。
【0063】
ここで、上記排水トラップ1は第一開口12により洗濯機100からの排水流路である第一流路2を形成するとともに、第二開口13により防水パン200からの排水流路である第二流路3を形成し、封水部9において第一流路2と第二流路3が合流する構造となっている。
【0064】
上記構成から成る排水トラップ1は、防臭筒14の下端が封水内に配置されるため、防臭筒14の内外の流路は排水によって満水状態となっており、下流側から屋内に臭気や害虫が侵入することを防ぐことができるトラップ機能を形成している。
【0065】
上記の排水トラップ1において、洗濯機100より排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0066】
まず、洗濯機100より生じた排水は可撓管、エルボ21を通じて、第一流路2である第一開口12より、防臭筒14を通り封水部9内へと流入する。この時、第一開口12より流入した排水は防臭筒14の内部を下方へ向けて流れ、封水部9の底面にてその流れを反転させ、防臭筒14の外周と封水部9の内周によって形成された流路を上昇する。そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
この時、防臭筒14を通過した排水の一部は第二流路3へと流入しようとするが、第二流路3に設けられた逆止め弁20の弁体19は当接部16に当接した状態となっており、逆止め弁20によって第二流路3が閉塞されていることから、排水が防水パン200上に溢れることはない。又、洗濯機100から多量の排水が生じた際には、当該排水は弁体19を上方へ向けて付勢する方向に流れることから、弁体19が当接部16から離間することはない。さらに、逆止め弁20は平時において第二流路3を閉塞していることから、洗濯機100からの排水に多量の泡が含まれている場合であっても、当該排水が第二流路3から逆流してしまうことはない。
そして、洗濯機100からの排水が終了した際、当該排水の一部は封水部9の中に貯留され、再び封水を形成する。
【0067】
次に、防水パン200上に排水が生じた際の排水の流れは以下のようになる。
【0068】
まず、防水パン200上に排水が生じた際、当該排水は防水パン200上を流れ、第二流路3である第二開口13を通じて封水部9内へと流入する。
この時、図
7に示すように、排水の自重/勢いにより弁体19が下降し、第二流路3が開口され、防水パン200上に生じた排水は排水トラップ1内部へと流入する。(尚、図
7においては参考として逆止め弁20と排水の流れのみを記載し、排水の流れを2点鎖線にて記載している。)そして、封水部9の側面に設けられた切り欠き10まで達した排水は封水部9の外側へと排出され、本体部7の排出口8より下水側へ向けて排出される。
そして、防水パン200上の排水が終了した際には、排水によって押し下げられていた弁体19が付勢機構によって上昇し、当接部16に当接することによって第二流路3を再び閉塞する。
【0069】
即ち、本実施形態に設けられた逆止め弁20は、弁体19を当接部16に向けて付勢する付勢機構を有し、一方へと流れようとする気体、液体、泡等の流体の圧力に対して弁体19が下降することによって開口して流体を通過させると共に、他方へと流れようとする流体の圧力に対しては弁体19が第二流路3を閉塞した状態を維持して流体の通過を防止するリフト式逆止め弁20として機能する。
【0070】
本発明の第
三実施形態は以上であるが、上記第
三実施形態に係る排水トラップ1の逆止め弁20は、付勢機構により平時において第二流路3を閉塞している状態を維持している。従って、洗濯機100からの排水中に多量の泡が混入していたとしても、当該排水を防水パン200上へと逆流させることはない。
【0071】
又、上記第
三実施形態においては、付勢機構としてスプリング24を用いたが、その他の弾性体を使用しても良く、又、磁力による反発を利用して付勢機構を構成しても良い。
又、逆止め弁20は第二流路3より着脱可能であり、その清掃を容易に行うことができる。
【0072】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明の排水トラップは上記実施形態の形状に限られるものではない。例えば、図
8及び図
9に示すように、弁体19として球体状のフロートを使用したフロート式且つスイング式逆止め弁20である等、各実施形態において用いた構造を組み合わせる等、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々を加えても良い。