(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6565009
(24)【登録日】2019年8月9日
(45)【発行日】2019年8月28日
(54)【発明の名称】集団移送装置
(51)【国際特許分類】
B60L 50/60 20190101AFI20190819BHJP
G06Q 50/28 20120101ALI20190819BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20190819BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20190819BHJP
【FI】
B60L50/60
G06Q50/28
B62D53/00 B
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-147558(P2014-147558)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-25712(P2016-25712A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】武藤 一浩
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康太
(72)【発明者】
【氏名】赤石 和幸
(72)【発明者】
【氏名】木通 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮内 洋宜
(72)【発明者】
【氏名】小幡 京加
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第1998/040263(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0303397(US,A1)
【文献】
特開2001−222790(JP,A)
【文献】
特開2014−008945(JP,A)
【文献】
特開2013−184584(JP,A)
【文献】
特開2009−176295(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0193153(US,A1)
【文献】
特開2013−246701(JP,A)
【文献】
特開2011−080490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60L 50/00 − 58/40
B62D 53/00 − 53/12
B62D 63/00 − 63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を駆動源とする複数の移動体を移送する集団移送装置であって、
前記複数の移動体と通信を行う通信手段と、
前記複数の移動体を牽引する牽引手段と、
自らの駆動源となる走行用バッテリと、
前記複数の移動体のバッテリを牽引走行中に充電する充電用バッテリと、
前記牽引手段で前記複数の移動体を牽引する際の走行状況を判定する判定手段と、
前記通信手段により前記複数の移動体のそれぞれと通信を行い、前記走行用バッテリから前記複数の移動体の前記バッテリへの充電が実現されない態様で、前記判定手段で判定された前記走行状況に応じて、前記充電用バッテリから前記複数の移動体の前記バッテリへのそれぞれの充放電制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする集団移送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記走行用バッテリの電気容量と前記充電用バッテリの電気容量とを、前記判定手段で判定される前記走行状況に応じて可変に制御することを特徴とする請求項1に記載の集団移送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段により第1の走行状況が判定された場合、前記走行用バッテリで走行を行ない、第2の走行状況が判定された場合、前記走行用バッテリと、前記複数の移動体のバッテリとにより走行させることを特徴とする請求項2に記載の集団移送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記判定手段により第3の走行状況が判定された場合、前記充電用バッテリを制御して、前記複数の移動体のバッテリ残量に応じて充電を行い、かつ、前記移動体の回生ブレーキを利用して充電させることを特徴とする請求項2又は3に記載の集団移送装置。
【請求項5】
電気を駆動源とする複数の移動体を移送する集団移送装置であって、
前記複数の移動体と通信を行う通信手段と、
前記複数の移動体を牽引する牽引手段と、
自らの駆動源となる走行用バッテリと、
前記複数の移動体のバッテリを牽引走行中に充電する充電用バッテリと、
前記牽引手段で前記複数の移動体を牽引する際の走行状況を判定する判定手段と、
前記通信手段により前記複数の移動体のそれぞれと通信を行い、前記判定手段で判定された前記走行状況に応じて、前記充電用バッテリから前記複数の移動体の前記バッテリへのそれぞれの充放電制御を行う制御手段と、
を備え
前記牽引手段は、
進行方向に延びる主軸と、
前記主軸に略直交する方向又は一定の角度の方向に伸び、前記主軸に対して所定の間隔で配置され、前記複数の移動体を連結する連結手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記充電用バッテリから前記連結手段を介して、前記連結された前記移動体の前記バッテリを充電することを特徴とする集団移送装置。
【請求項6】
前記牽引手段は、牽引する前記移動体の数、及び前記移動体の車長に応じて、前記主軸が伸縮する機構を有することを特徴とする請求項5に記載の集団移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集団移送装置に関し、特に電気を駆動源とする複数の移動体を移送する集団移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通手段である自動車の技術は、動力機能がガソリンエンジンから電気モータに代わり、制御機能として自動走行や自動ブレーキに関する技術の実用化が進み、個々の自動車がネットワークを介して他の機器と接続できるネットワーク機能の発達が著しい。一方、環境への配慮、維持費の高騰、高齢者の増加等の問題により、個人における自動車の所有台数は、年々、減少している。
【0003】
しかしながら、例えば、自宅から駅や店舗等への人の移動、或いは荷物の運搬等、人や物が移動する手段に対する需要が減少しているわけではない。そこで、より便利で手軽な移動体と、ユーザの都合と目的に合わせた時間と場所に、移動体を柔軟かつスムーズに運行することができる交通システムが望まれている。
【0004】
このようなユーザの要請に応じて移動体を配車する交通システムは、基本的に地域密着型であり、所定範囲の地域で運用される。そして、ある地域で運用されている交通システムを他の地域でも有効であるかを試験的に導入し、有効である場合には上記の交通システムを正式に導入することが想定される。また、交通の需要が一時的に増大し、ある地域から別の地域に移動体を応援として派遣したり、地域間にまたがって移動体を運用したりする場合も想定される。このような場合、ある地域に複数の移動体をまとめて移送する必要がある。ここでは、移動体のサービス地域の拡張又はサービス地域間の協調が必要となる場合がある。このため、発明者らは、特願2014−066987号において、新しい地域密着型の交通システムにおける移動体群編成装置を提案している。
【0005】
一方、特許文献1には、遠隔地域に複数の移動体をまとめて輸送する輸送システムが提案されている。特許文献1によれば、輸送システムは、高速自動車道を走行する牽引車と、牽引車に連結され、複数の車両を輸送する複数の被牽引車とからなり、被牽引車は、車両を積載するための車両積載手段と、車両を固定するための車両固定手段と、車両を降車させるための車両降車手段とを備える。この構成により、被牽引車に車両を複数積載することができ、車両は自走する必要がなく、地球環境温暖化の元凶とされるCO2の発生を削減することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、牽引車は、複数の被牽引車を牽引して走行するため、牽引車の運転負荷が増大する。また、ガソリンエンジンを搭載した車両では問題はないが、電気モータ駆動の車両では、遠隔地に移送される場合、バッテリを充電しておく必要があり、目的地到着後に車両の充電を行うと、充電に時間を要してしまい、即座に稼働できないといった課題がある。
【0007】
他方、特許文献2には、最小限の乗用車両と走行移動能力付加車両を組み合わせて一体構成が可能な可変構成自動車であって、走行移動方法と乗車人数に応じて最適で必要最小限な車両構成とする車両システムが提案されている。特許文献2の車両システムは、牽引車に相当する公共乗入母車と、被牽引車に相当する子車とを含み、子車は、乗入地点で公共乗入母車に乗込んで公共乗入母車の統括の基に走行し、離脱地点で離脱し、以後は単独走行で目的地へ移動することができる。また、子車は、公共乗入母車からエネルギー補給を受け、あるいは回生エネルギーを返すこともできる。このような構成にすることで、公共乗入母車の運転負荷が減少し、また、子車は、公共乗入母車からエネルギー補給を受けることができるため、特許文献1の課題を解決することも考えられる。しかしながら、特許文献2には、子車が公共乗入母車からエネルギー補給を受けるために必要な具体的な構成については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−008945号公報
【特許文献2】特開2009−176295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、牽引中の移動体の充電を効率的に行うことができる移動体の集団移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の移動体の集団移送装置は、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
本発明の集団移送装置は、電気を駆動源とする複数の移動体を移送する集団移送装置であって、前記複数の移動体と通信を行う通信手段と、前記複数の移動体を牽引する牽引手段と、自らの駆動源となる走行用バッテリと、前記複数の移動体のバッテリを牽引走行中に充電する充電用バッテリと、前記牽引手段で前記複数の移動体を牽引する際の走行状況を判定する判定手段と、前記通信手段により前記複数の移動体のそれぞれと通信を行い、前記判定手段で判定された前記走行状況に応じて前記複数の移動体の前記バッテリのそれぞれの充放電制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記の集団移送装置において、前記制御手段は、前記走行用バッテリの電気容量と前記充電用バッテリの電気容量とを、前記判定手段で判定される前記走行状況に応じて可変に制御してもよい。
【0013】
また、上記の集団移送装置において、前記制御手段は、前記判定手段により第1の走行状況が判定された場合、前記走行用バッテリで走行を行ない、第2の走行状況が判定された場合、前記走行用バッテリと、前記複数の移動体のバッテリとにより走行させてもよい。
【0014】
また、上記の集団移送装置において、前記制御手段は、前記判定手段により第3の走行状況が判定された場合、前記充電用バッテリを制御して、前記複数の移動体のバッテリ残量に応じて充電を行い、かつ、前記移動体の回生ブレーキを利用して充電させてもよい。
【0015】
また、上記の集団移送装置において、前記牽引手段は、進行方向に延びる主軸と、前記主軸に略直交する方向又は一定の角度の方向に伸び、前記主軸に対して所定の間隔で配置され、前記複数の移動体を連結する連結手段と、を有し、前記制御手段は、前記充電用バッテリから前記連結手段を介して、前記連結された前記移動体の前記バッテリを充電してもよい。
【0016】
また、上記の集団移送装置において、前記牽引手段は、牽引する前記移動体の数、及び前記移動体の車長に応じて、前記主軸が伸縮する機構を有してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、牽引走行中に移動体の充電を効率的に行うことができる移動体の集団移送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る集団移送装置の概念を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る牽引車100の機能ブロックを示した図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る牽引車100に移動体を搭載した上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る牽引車100に移動体を搭載した斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る牽引車100の牽引手段の主軸が伸縮した一例を示す例である。
【
図6】本発明の実施形態に係る牽引車100の充放電処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と言う)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る集団移送装置の概念を説明する図である。本発明に係る交通システムは、地域における交通の利便性を向上し、当該地域における住民やサービサ(サービス提供者、例えば、宅配業者、移動店舗、公共交通機関、役所、病院、地域企業、スーパやコンビニ等の小売店等)における人や物の移動需要を喚起し、当該地域を活性化することを目的としたものである。
【0021】
上記の交通システムにおける移動体40は、自動運転に関する周知のシステムを備えた電気自動車であり、サーバ(図示せず)から受信した配車指示情報に示された日時において、配車指示情報に示されたルートを自動運転により、ユーザ又は荷物等を運び走行する。移動体40は、例えば、前述の特願2014−066987号で説明した各種の形態の自動走行可能な移動体40a、この移動体40aに客車又は荷台を備えた形態の移動体40bの他、一般的な小型電気自動車の形態の移動体40cであってもよい。
【0022】
本実施形態の集団移送装置は、例えば、複数の移動体40を牽引する手段を備えた牽引車であり、以降では牽引車100と呼ぶことにする。牽引車100は、サーバから受信した配車指示情報に基づき、移動元で複数の移動体40と連結して、所定の地域(移動先)に配車を行う。移動体40は、電池残量が所定値以下となった場合、牽引車100のバッテリを経由して、充電される。そして、移動体40は、所定地域に移送された後に、牽引車100から分離して、その地域においてユーザや荷物等を運ぶ役割を果たす。
【0023】
このような構成により、牽引車100は、図示を省略したサーバから、所定地域に複数の移動体40を配車するよう指示を受けると、所定地域の環境及び所定地域までの経路の状況(特に坂道の長さや勾配等の道路情報)を示す情報を収集する。そして、牽引車100は、これらの情報に基づき、複数の移動体40の車種や連結の態様を決定し、所定地域に移動体40を集団で移送する。
【0024】
(牽引車100の構成)
図2は、本実施形態に係る牽引車100の機能ブロックを示した図である。また、
図3、
図4は、牽引車100の上面図及び斜視図である。これらの図で図示するように、牽引車100は、牽引車本体50と、牽引車本体50の後部に結合された牽引部(牽引手段)60と、を備える。
【0025】
牽引車本体50は、
図3及び
図4に示すように、四角形状のボディの下側に4つの車輪が設けられ、ボディの前面の上部には、内部及び外部から視認可能な窓が備えられており、ボディの前面の下部には、ライトが備えられ、ボディの左右側には、人が乗り入れ可能なドアが備えられている。なお、牽引車本体50は、単独でも走行可能であり、自動運転か人間による運転かは特に限定されない。牽引車本体50は、後部の連結部62に備えられている連結機構(図示せず)によって、牽引部60と連結される。牽引部60は、さらに主軸61、連結部62、接続部63で構成される。また、牽引車本体50の屋根には、太陽光パネル70を備えるようにしてもよい。
【0026】
図2に戻り、牽引車本体50は、移動体40又はサーバ(図示省略)との通信手段として機能する無線通信部51と、移動体40との有線通信手段として機能する電力線通信部52と、移送中の道路情報からの走行状況を検出する走行状況検出部53と、走行状況に応じて牽引時の走行方法や充放電の方法を判定する判定部(判定手段)54と、走行用のバッテリと充電用のバッテリを含むバッテリ部55と、制御部(制御手段)58と、から構成される。
【0027】
無線通信部51は、図示を省略したサーバや、移動体40との間を無線で通信を行う通信インタフェースである。
【0028】
電力線通信部52は、電源用の配線又はその他の有線ケーブルを利用して通信を行う通信インタフェースである。牽引車100は、牽引車本体50に結合されている牽引部60に移動体40が連結されることによって、移動体40と有線で通信が可能になり、かつ、移動体40の充放電制御を行う。
【0029】
走行状況検出部53は、図示を省略したサーバから、所定の地域に複数の移動体40を配車するように指示を受けると、所定の地域の環境、及び所定地域までの経路の状況を示す道路情報を収集し、現在の走行状況を検出する。
【0030】
判定部54は、走行状況検出部53が検出した道路情報からの走行状況及びその他の情報に基づいて、牽引車本体50に移動体40の牽引時の走行方法及び充放電に適する方法を判定する。すなわち、走行状況検出部53が検出した道路情報及び移動体40の情報(移動体の数、充電量、重量等)から、牽引車本体50と牽引されている移動体40に対して駆動命令や充電命令を発行する。なお、ここでは、3つの走行状況(第1の走行状況、第2の走行状況、第3の走行状況)を判定するものとする。なお、判定部54は、走行状況検出部53と一体に構成してもよい。
【0031】
第1の走行状況とは、牽引車100の充電用バッテリ57により移動体40に安定的に充電が可能な状態である。すなわち、第1の走行状況は、牽引車100の走行用バッテリ56単独で走行が可能であり、例えば、定速走行状態若しくは平地走行状態であり、又はその他同様の状態(牽引する移動体40の数が少なく、総重量も比較的軽いとき等)も含む。
【0032】
第2の走行状況とは、移動体40に充電を行うことができず、逆に、選択された移動体40のバッテリ41を消費して移動体40から駆動力を補助的に受けて全体が走行する状態である。このとき、補助的な駆動力として選択される移動体40は、牽引されている移動体40全体であってもよいし、一部の移動体40のみであってもよい。すなわち、第2の走行状況は、牽引車100の走行用バッテリ56単独では牽引が困難な状況であり、例えば、所定時間以上の加速状態若しくは所定距離又は所定勾配以上の登り坂での走行状態であり、走行用バッテリ56の残量が十分でない状態、又はその他同様の状態(牽引する移動体40の数が多く、総重量も比較的重いとき等)も含む。
【0033】
第3の走行状況とは、牽引車100が単独で走行が可能であり、かつ走行の負荷が少ない状態であり、移動体40に第1の走行状況に比べ、安定的ではないが、多くの充電が可能な状態である。例えば、所定時間以上の減速若しくは所定距離又は所定勾配以上の下り坂での走行状態であり、又はその他同様の状態(天候がよく、搭載する太陽光パネル等からの充電量が多いとき等)も含む。すなわち、第3の走行状況は、牽引車100の充電用バッテリ57を充電可能で、更に移動体40を充電可能な状態である。
【0034】
バッテリ部55は、走行用バッテリ56と、充電用バッテリ57とからなる。また、バッテリ部55は、走行用バッテリ56と充電用バッテリ57の容量比を可変とする手段を備えてもよい。例えば、バッテリ部55全体に備えたバッテリの数を、一部を走行用に割り当て、残りの部分を充電用に割り当てる手段を有するようにしてもよい。
【0035】
走行用バッテリ56は、牽引車本体50が走行するため、すなわち自らの駆動源となるバッテリである。充電用バッテリ57は、牽引された複数の移動体40のバッテリを走行中に充電するために必要な電力を蓄積するバッテリである。なお、走行用バッテリ56も必要時には充電用バッテリ57からも電力の供給を受けることができる。また、牽引車100には、充電用バッテリ57に自然エネルギーで電力を供給するための太陽光パネル等を備えていてもよい。牽引車100は、移動先に到着後は、移動体40の充電ステーションとして機能させることも可能とし、そのための外部電源への接続手段を備えてもよい。
【0036】
制御部58は、無線通信部51、又は電力線通信部52を介して移動体40のそれぞれと通信を行い、判定部54で判定された走行状況に応じて移動体40のバッテリのそれぞれの充放電制御を行う。判定部54によって、第1の走行状況が判定された場合は、走行用バッテリ56で走行を行ない、第2の走行状況が判定された場合は、自らの走行用バッテリ56を使った駆動力に、選択された複数の移動体40の駆動力を加えて走行する。判定部54により第3の走行状況が判定された場合は、充電用バッテリ57を制御して、複数の移動体40のバッテリ残量に応じて充電を行い、かつ、移動体40の回生ブレーキを利用して充電させる(回生充電)。回生充電をする際には、回転抵抗が発生するため、牽引部60の主軸61に対して左右の抵抗がバランスよく制御されることが望ましい。そこで、回生充電するときは、左右で隣り合った移動体40をセットで充電するとよい。更にその充電制御を効率よく行うために、連結する際に充電量の近い移動体40同士を左右に配置するように連結するとよい。また、制御部58は、牽引している移動体40からそれぞれのバッテリ41のバッテリ残量を移動体との通信手段によって取得し、バッテリ残量が所定値未満(例えば、フル充電時の50%未満)の移動体40を選出して、選出した複数の移動体40のバッテリ41の充電を行う。あるいは、バッテリ残量が所定値未満かどうかにかかわらず、バッテリ残量の少ない移動体40ほど優先して充電を行うようにしてもよい。なお、図示を省略しているが、牽引車100は、電気で駆動するために必要な公知の駆動手段(バッテリ、インバータ、モータ、ブレーキ等)を備えており、それらの制御を行う。
【0037】
牽引部60は、
図3及び
図4に示すように、進行方向に延びる主軸61と、主軸61に略直交する方向又は一定の角度の方向に伸び、主軸61に対して所定の間隔で配置され、複数の移動体40を連結する連結部(連結手段)62とを有し、充電用バッテリ57から連結部62を介して、連結された移動体40のバッテリ41を充電する。なお、連結部62には、接続部63が設けられており、牽引時に接続部63によって、牽引部60と、移動体40とを結合する。
【0038】
図5は、本発明の実施形態に係る牽引車100の牽引手段の主軸が伸縮した一例を示す例である。
図5に示すように、
図5(a)は、牽引部60の主軸61が伸びている状態(例えば、移動体40の牽引前)を示し、
図5(b)は、
図5(a)に対して、主軸61が短くなっている状態を示している。また、
図5(c)は、
図5(b)の状態からさらに連結部62及び後部の車輪が横方向に短くなっている状態を示している。牽引部60は、牽引する移動体40の数及び移動体40の車長に応じて、主軸61が伸縮可能となる機構を有している。なお、各連結部62において、上記条件に応じて伸縮可能となる機構を有していてもよい。このようにすることで、様々なサイズの移動体40を牽引することができ、かつ牽引を行わないときは、コンパクトに折りたたむことができる。
【0039】
移動体40は、駆動用のバッテリ41を備える。また、図示を省略しているが、移動体40は、電気で駆動するために必要な公知の駆動手段(バッテリ、インバータ、モータ、ブレーキ等)を備える。
【0040】
図6は、本実施形態に係る牽引車100の充放電処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、必ずしもこのフローチャートで示した順で処理される必要はなく、各処理ブロックの入力データと出力データの関係が損なわれない限り、処理順序を変更してもよい。
【0041】
まず、ステップS11において、牽引車本体50の制御部58は、サーバ又は移動体40から移動体40の移送先、及び移動体40の接続台数を受信する。なお、予め、サーバの指示又は牽引を希望する移動体40より無線通信部51から移動体40の接続台数を取得してもよいし、移動体40が牽引部60の接続部63に結合することで電力線通信部52を介して、接続台数を取得してもよい。
【0042】
次に、ステップS12において、制御部58は、取得した移動体40の接続台数に基づき、バッテリ部55に搭載されている走行用バッテリ56と充電用バッテリ57の容量比B1:B2の設定を行う。
【0043】
続いて、ステップS13において、牽引車100が指定された地域へ移送(走行)を開始すると、ステップS14の処理に進み、制御部58は、ステップS12で設定されたバッテリ部55の容量比に基づき、充放電を開始する。
【0044】
ステップS15において、走行状況検出部53は、図示を省略したサーバ、又は移動体40から受信した移送先までの環境情報及び経路情報(走行状況)を取得し、判定部54に送信する。
【0045】
続いて、ステップS16において、判定部54は、走行状況検出部53が検出した走行状況及び移動体40の情報(移動体の数、充電量、重量など)に基づき、現在走行中の充放電に適した状況が下記3つの走行状況のうちのどれに該当するかを判定する。
【0046】
制御部58は、判定部54で第1の走行状況と判定された場合(ステップS16“第1の走行状況”)、ステップ17の処理に移り、自車両(牽引車100)の駆動力のみによる移送に切替え、牽引車100の走行用バッテリ56によってのみ走行する。
【0047】
制御部58は、判定部54で第2の走行状況と判定された場合(ステップS18“第2の走行状況”)、通信手段を介して、接続された各移動体40のバッテリ41の残容量を取得する。
【0048】
次に、制御部58は、移動体40をバッテリ41の残容量が多い順にn台選出し(ステップS19)、例えば、高負荷となる坂道や、天候による悪路等の状況に応じて牽引車100の走行用バッテリ56による駆動力と、選択したn台の移動体40のバッテリ41による駆動力を合わせて移送を行う(ステップS20)。
【0049】
制御部58は、判定部54で第3の走行条件と判定された場合(ステップS21“第3の走行状況”)、各移動体40に回生制御(回生ブレーキ)を利用して充電を行う指示を送る。このことにより、各移動体40のバッテリ41の充電が可能になる(ステップS21)。
【0050】
このとき、制御部58は、通信手段を介して各移動体40のバッテリ41の残容量を取得し(ステップS22)、例えば、残容量が少ない移動体40を優先して充電制御を行う(ステップS23)。
【0051】
(実施形態の効果)
以上の説明のように本実施形態に係る牽引車100は、電気を駆動源とする複数の移動体40を移送する集団移送装置であって、複数の移動体40と通信を行う通信部(51、52)と、複数の移動体40を牽引する牽引部60と、自らの駆動源となる走行用バッテリ56と、複数の移動体40のバッテリ41を牽引走行中に充電する充電用バッテリ57と、牽引部60で複数の移動体40を牽引する際の走行状況を判定する判定部54と、を備える。そして、通信部(51、52)により複数の移動体40のそれぞれと通信を行い、判定部54で判定された走行状況に応じて複数の移動体40のバッテリ41のそれぞれの充放電制御を行う制御部58を備える。これにより、移動体40のエネルギー補給(バッテリ41の充電)を、迅速、かつ効率的に行うことができる。
【0052】
また、制御部58は、走行用バッテリ56の電気容量と充電用バッテリ57の電気容量とを、判定部54で判定される走行状況に応じて可変に制御する。また、制御部58は、判定部54により第1の走行状況が判定された場合、走行用バッテリ56で走行を行なう。そして、第2の走行状況が判定された場合、走行用バッテリ56と、複数の移動体40のバッテリ41とにより走行させる。また、第3の走行状況が判定された場合、充電用バッテリ57を制御して、複数の移動体40のバッテリ残量に応じて充電を行い、かつ、移動体40の回生ブレーキを利用して充電させる。これにより、配車する移動体40の数、配車先の距離、及び、移動先までの走行状況に応じて、電気容量を可変にできるため、無駄のない電気容量の配分が可能となる。
【0053】
また、牽引部60は、進行方向に延びる主軸61と、主軸61に略直交する方向又は一定の角度で伸び、主軸61に対して所定の間隔で配置され、複数の移動体40を連結する連結部62と、を有する。そして、制御部58は、充電用バッテリ57から連結部62を介して、連結された移動体40のバッテリ41を充電する。また、牽引部60は、牽引する移動体40の数、及び移動体40の車長に応じて、主軸61が伸縮する機構を有する。これにより、牽引中にバッテリ充電ができるとともに、牽引予定の移動体40の数や車長に応じて牽引車100全体の車長を可変にすることができる。そして、それぞれの移動体40が単独で指定された地域に走行せずに、牽引車100でまとめて移動することで、道路の渋滞緩和やエネルギー消費の削減にもつながる。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
40 移動体
41 バッテリ
50 牽引車本体
51 無線通信部(通信手段)
52 電力線通信部(通信手段)
53 走行状況検出部
54 判定部(判定手段)
55 バッテリ部
56 走行用バッテリ
57 充電用バッテリ
58 制御部(制御手段)
60 牽引部(牽引手段)
61 主軸
62 連結部(連結手段)
63 接続部
70 太陽パネル
100 牽引車(集団移送装置)